説明

2線式伝送器、補正回路

【課題】2線の伝送路から信号を受ける後段の受信機がレシオメトリック特性を有する場合でも、受信機が受けるアナログ電圧信号の精度が低下しない2線式伝送器を提供する。
【解決手段】センサ信号をアナログ電圧信号に変換して伝送路に出力する2線式伝送器であって、伝送路1と基準伝送路2との間の中間電位に関する中間電位信号を生成する抵抗素子103、104と、センサ信号と中間電位信号とが供給されるオペアンプ102と、オペアンプ102によって出力される信号に基づいて、アナログ電圧信号を生成する演算器111と、センサ信号がレシオメトリック特性を持つようにセンサ信号を補正する電流源106、アナログ電圧信号分圧器107、測定器108、電圧生成器109、演算器110と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2線式伝送器、補正回路にかかり、特にセンサによって検出されたセンサ信号を、レシオメトリック特性を有するアナログ電圧信号として出力する2線式伝送器、補正回路に関する。
【背景技術】
【0002】
2線式伝送器は、流量や圧力といった物理量を検出し、検出値(以降、センサ信号と記す)を出力する機器である。センサ信号をアナログ電圧信号に変換して出力する2線式伝送器としては、例えば、特許文献1に記載されたものが挙げられる。
図6は、特許文献1に記された2線式伝送器の従来技術を説明するための図である。図示した2線式伝送器610は、センサSによって出力されるセンサ信号M1、M2を増幅するオペアンプ61と、オペアンプ61から出力されたセンサ信号Vsnsの電圧値に応じて接続先が切り替えられるスイッチ63と、スイッチ63に接続された抵抗素子65、66、67を備えている。また、2線式伝送器610は、基準電圧発生部64と、スイッチ63に接続される抵抗素子66、抵抗素子67の大きさによって出力電流Ioutが変化するオペアンプ62を備えている。センサSは、例えば、磁気、温度、圧力といった物理量を検出するセンサである。
【0003】
図6に示した2線式伝送器610は、以下のように動作する。
オペアンプ61は、連続的に変化するセンサ信号Vsnsを出力する。センサ信号Vsnsが所定の閾値を超えると、スイッチ63の接続先が抵抗素子66から抵抗素子67に切り替わる。オペアンプ62の出力信号Voutとグラウンド(GND)の電位差は、抵抗素子65、スイッチ63に接続されている抵抗素子66または抵抗素子67によって分圧される。分圧された電位に応じた信号は、フィードバック信号Vfbとしてオペアンプ62に入力される。オペアンプ62は、基準電圧発生部64によって生成されると基準電圧Vrefとフィードバック信号Vfbの電圧値を等しくするように動作する。
【0004】
このため、オペアンプ62は、フィードバック信号Vfbの電圧値が上昇すると、出力電流Ioutを増加させるように動作する。このとき、出力信号Voutは、基準電圧Vrefとフィードバック信号Vfbの電圧値とが等しくなるように低下する。
一方、フィードバック信号Vfbが低下すると、オペアンプ62は出力電流Ioutを減少させるように動作する。この結果、オペアンプ62の出力信号Voutは、基準電圧Vrefとフィードバック信号Vfbとが等しくなるように上昇する。
本願発明の発明者らは、上記した特許文献1の、センサ信号Vsnsが連続的に変化するにも関わらず、出力信号Voutが離散的に変化することに鑑みて、センサ信号Vsnsの変化に伴って出力信号Voutが連続的に変化するアナログ電圧信号を出力する2線式伝送器を発明した。
【0005】
図7は、本願発明の発明者らが発明した2線式伝送器を説明するための図である。図示した2線式伝送器は、温度センサ、磁気センサ、圧力センサ等のセンサSと、センサSの出力信号Vsnsを増幅するオペアンプ71と、オペアンプ71の出力信号によって出力電流Ioutが変化する第1の電流源72と、第1の抵抗素子73(抵抗値R0)及び第2の抵抗素子74(抵抗値R1)によって構成されている。なお、第2の電流源75からは、アナログ電圧信号Voutが出力される伝送路1からグラウンドGNDに流れる電流のうち、第1の電流源72に流れる電流以外のすべての電流の総和が流れている。
図7に示した受信機77は、2つの伝送路から信号を受けるCPU等の受信機77を備えていて、受信機77は、伝送路の一方から抵抗素子76を介して電源から電源電圧Vccの供給を受けている。
【0006】
次に、このように構成された2線式伝送器の動作について説明する。アナログ電圧信号VoutとグラウンドGNDの電位差を第1の抵抗素子73及び第2の抵抗素子74によって分圧した電圧をフィードバック電圧Vfbとするとき、オペアンプ71はセンサ信号Vsnsとフィードバック信号Vfbの電圧が等しくなるように動作する。具体的には、センサ信号Vsnsが上昇するとオペアンプOPは出力電流Ioutを減少させるように動作し、センサ信号Vsnsとフィードバック信号Vfbが等しくなるようにアナログ電圧信号Voutが上昇する。センサ信号Vsnsが低下するとオペアンプOPは出力電流Ioutを増加させるように動作し、センサ信号Vsnsとフィードバック信号Vfbが等しくなるようにアナログ電圧信号Voutが低下する。
【0007】
したがって、センサ信号Vsnsが連続的に変化するとき、アナログ電圧信号Voutも連続的に変化する。すなわち、センサ信号Vsnsが連続的なアナログ電圧信号に変換される。この2線式伝送器のセンサ信号Vsnsとアナログ電圧信号Voutの関係は、次の式(1)で表される。
Vout=(1+(R0/R1))・Vsns …式(1)
【0008】
ところで、センサ信号をアナログ電圧信号に変換して出力する伝送器には、出力信号がレシオメトリック特性を有するアナログ電圧信号のもの(以下、本明細書ではレシオメトリック型の2線伝送器と記す)と、出力信号が非レシオメトリック特性を有するアナログ電圧信号のもの(以下、本明細書では非レシオメトリック型の2線伝送器と記す)がある。ここで、レシオメトリック特性とは、センサに与えられる電源電圧の変動に比例して信号の電圧レベルが変動する特性であり、非レシオメトリック特性とは、信号の電圧レベルが電源電圧の変動に比例しない特性である。図7に示した本願発明の発明者らが発明した2線式伝送器は、非レシオメトリック型の2線式伝送器である。
【0009】
非レシオメトリック型の2線式伝送器では、2線式伝送器の2つの伝送路から信号を受ける後段の受信機77も非レシオメトリック特性を有するものを用いることが望ましい。この理由は、電源電圧Vccが変動すると受信機側の入力特性は変動するが、アナログ電圧信号は変動しないため、受信機が受けるアナログ電圧信号の精度が低下するという問題が発生するためである。
【0010】
非レシオメトリック型の2線式伝送器にレシオメトリック特性を有する受信機77を用いる場合、2線伝送器の非レシオメトリック特性を有する信号を補正してレシオメトリック特性を有する信号を出力するレシオメトリック補正回路がある。レシオメトリック補正回路の従来技術としては、例えば、特許文献2に記載のレシオメトリック補正回路が上げられる。図8は、特許文献2に記載されているレシオメトリック補正回路を含む回路のブロック図である。このようなレシオメトリック補正回路81は、センサ素子82に直接印加された電源電圧VDDの変動を検出して補正量を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US 6437581 B1
【特許文献2】特開2010−85319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図7に記載の非レシオメトリック型の2線伝送器では、抵抗素子76を介して電源電圧Vccが受信機77に供給される構成であるからレシオメトリック補正回路を使って電源電圧Vccの変動を直接検出することができない。また、前記したように、図7に記載の2線式伝送器は、非レシオメトリック型の2線伝送器であることから、電源電圧Vccが変動しても出力信号Voutは変動せず、レシオメトリック補正回路が電源電圧Vccの変動を検出することができない。
【0013】
このため、図7に記載の2線式伝送器では、レシオメトリック補正回路を使って信号を補正することができず、レシオメトリック型の受信機を適用することができなくなる。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであって、レシオメトリック特性を有する信号を出力することによって、2線の伝送路から信号を受ける後段の受信機(例えばCPU等)がレシオメトリック特性を有する場合でも、受信機が受けるアナログ電圧信号の精度が低下しない、2線式伝送器、補正回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決するため、本発明の2線式伝送器は、センサ信号をアナログ電圧信号に変換して伝送路に出力する2線式伝送器であって、前記伝送路(例えば図1に示した伝送路1)と基準伝送路(例えば図1に示した基準伝送路2)との間の中間電位に関する中間電位信号を生成する中間電位信号生成手段(例えば図1に示した抵抗素子103、104)と、前記センサ信号と前記中間電位信号とが供給される増幅器(例えば図1に示したオペアンプ102)と、前記増幅器によって出力される信号に基づいて、前記アナログ電圧信号を生成するアナログ電圧信号生成手段(例えば図1に示した演算器111)と、前記センサ信号がセンサに与えられる電源電圧の変動に比例して信号の電圧レベルが変動する特性であるレシオメトリック特性を持つように、前記センサ信号を補正するレシオメトリック特性補正手段(例えば図1に示した電流源106、アナログ電圧信号分圧器107、測定器108、電圧生成器109、演算器110)と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の2線式伝送器は、上記した発明において、前記レシオメトリック特性補正手段が、前記センサ信号がセンサに与えられる電源電圧の変動に比例して信号の電圧レベルが変動する特性であるレシオメトリック特性を持つように、前記アナログ電圧信号の補正演算を行う補正演算手段と、前記補正演算手段による補正に使用される補正量を算出する補正量算出手段と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の2線式伝送器は、上記した発明において、前記補正量算出手段が、前記センサ信号をアナログ電圧信号に変換して伝送路に出力する2線式伝送器としての動作が行われていないとき、前記補正演算手段による補正に使用される補正量を算出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の2線式伝送器は、上記した発明において、前記レシオメトリック特性補正手段が、バイアス電流生成手段(例えば図1に示した電流源106)と、前記アナログ電圧信号を分圧する手段(例えば図1に示したアナログ電圧信号分圧器107)と、前記アナログ電圧信号の分圧を検出し、前記バイアス電流と前記アナログ電圧信号の分圧に基づいて電源電圧の分圧を算出する算出手段(例えば図1に示した測定器108)と、理想的な電源電圧の分圧に相当する電圧を生成する手段(例えば図1に示した電圧生成器109)と、前記電源電圧の分圧の算出値と理想的な電源電圧の分圧に相当する電圧に応じて前記アナログ電圧信号の補正量を算出する演算手段と、前記補正量に基づき前記アナログ電圧信号の補正演算を行う演算手段(例えば図1に示した演算器110)と、を含むことが望ましい。
【0017】
また、本発明の2線式伝送器は、上記した発明において、前記レシオメトリック特性補正手段は、第1の電流を流して測定された第1の検出電圧と、第2の電流を流して測定された第2の検出電圧と、に基づき、電源電圧の分圧を算出することが望ましい。
また、本発明の2線式伝送器は、上記した発明において、前記レシオメトリック特性補正手段は、前記算出された電源電圧の分圧と理想的な電源電圧の分圧に相当する電圧に応じてアナログ電圧信号の補正量を算出することが望ましい。
【0018】
また、本発明の2線式伝送器は、上記した発明において、前記レシオメトリック特性補正手段が、前記補正量と前記センサ信号を乗算することが望ましい。
また、本発明の2線式伝送器は、上記した発明において、前記増幅器が、前記センサ信号と前記中間電位信号とが供給され、入力された前記センサ信号と前記中間電位信号とが等しくなるように、前記伝送路と前記基準伝送路との間の電位を制御する信号を出力することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の2線式伝送器は、上記した発明において、前記センサ信号がアナログ信号である場合、前記センサ信号をデジタル信号に変換する第1の変換回路(例えば図5に示したアナログ・デジタル変換器501)と、前記アナログ電圧信号の分圧をデジタル信号に変換する第2の変換回路(例えば図5に示したアナログ・デジタル変換器502)と、前記第1及び第2の変換回路によって変換されたデジタル信号に基づいてレシオメトリック特性に補正されたデジタル信号を出力する加工回路(例えば図5に示したデジタル演算回路500)と、前記加工回路によって補正されたデジタル信号をアナログ信号に変換して前記増幅器に出力するデジタル・アナログ変換回路(例えば図5に示したデジタル・アナログ変換器503)と、をさらに含むことが望ましい。
【0020】
また、本発明の補正回路は、伝送路と基準伝送路との間の中間電位に関する中間電位信号を生成する中間電位信号生成手段と、センサ信号と前記中間電位信号とが供給される増幅器と、前記増幅器によって出力される信号に基づいて、アナログ電圧信号を生成するアナログ電圧信号生成手段と、を含み、前記センサ信号を前記アナログ電圧信号に変換して前記伝送路に出力する2線式伝送器の補正回路であって、前記センサ信号がセンサに与えられる電源電圧の変動に比例して信号の電圧レベルが変動する特性であるレシオメトリック特性を持つように、前記センサ信号を補正するレシオメトリック特性補正手段と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる2線式伝送器によれば、レシオメトリック特性を有するアナログ電圧信号を出力することができる。このため、2線の伝送路から信号を受ける後段のCPU等の受信機がレシオメトリック特性を有する場合でも、受信機が受けるアナログ電圧信号の精度の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態1の2線式伝送器を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態1の2線式伝送器の動作を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態1の検出電圧と電源電圧の分圧との関係を示した図である。
【図4】本発明の実施形態1のアナログ電圧信号と電源電圧との関係を示した図である。
【図5】本発明の実施形態2の2線式伝送器を説明するための図である。
【図6】特許文献1の2線式伝送器の従来技術を説明するための図である。
【図7】本願発明の発明者らが発明した2線式伝送器を説明するための図である。
【図8】特許文献2のレシオメトリック補正回路を含む回路のブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1、実施形態2について説明する。
(実施形態1)
1 回路構成
図1は、実施形態1の2線式伝送器を説明するための図であって、2線式伝送器の回路構成を示している。この2線式伝送器は、センサ101と、センサ101の出力信号Vsnsを増幅するオペアンプ102と、オペアンプ102の出力信号によって出力電流Ioutが変化する電流源114と、抵抗素子103(抵抗値R0)及び抵抗素子104(抵抗値R1)と、電流源105及び電流源106と、アナログ電圧信号分圧器107と、アナログ電圧信号の分圧を検出し、電源電圧の分圧を算出する測定器108と、理想的な電源電圧の分圧を生成する電圧生成器109と、算出された電源電圧の分圧と理想的な電源電圧の分圧からセンサ信号Vsnsの補正量を算出する演算器110と、算出された補正量に基づいてセンサ信号Vsnsの補正演算を行う演算器111と、を含んでいる。
【0024】
センサ101は、温度センサ、磁気センサ、圧力センサ等のいずれとして構成されたものであってもよい。また、図1に示した2線式伝送器は、電源電圧Vccを二線式伝送器に供給する電源とグランドGNDとの間に、受信機112が抵抗素子113を介して接続されている。受信機112は、レシオメトリック特性を有するCPUとして構成されている。
【0025】
センサ101は、2線式伝送器と一体的に組み込まれるものであっても、別体として出荷後に2線式伝送器に接続されるものであってもよい。また、受信器112は、2線伝送器の出荷後、2線伝送器の後段に接続される2線伝送器とは別体の回路である。
受信機112にアナログ電圧信号を入力する伝送路には、二線式伝送器の出力信号であるアナログ電圧信号Vout1またはアナログ電圧信号Vout2が出力される。本明細書では、アナログ電圧信号Vout1、アナログ電圧信号Vout2の両方を指す場合、単にアナログ電圧信号Voutとも記す。
【0026】
電流源105を流れる電流は、電源電圧Vccを供給する電源からグラウンドGNDに流れる電流のうち、電流源114を流れる電流及び電流源106を流れる電流以外の電流の総和を示している。
図1に示した二線式伝送器において、電源電圧Vccを供給する電源に直接接続された伝送路を伝送路1、グラウンドGNDに直接接続された伝送路を基準伝送路2と記す。オペアンプ102にアナログ信号Vrと共に入力されるフィードバック信号Vfbは、伝送路1と基準伝送路2との中間電位信号となる。アナログ信号Vr、フィードバック信号Vfbについては後述するものとする。
【0027】
2 動作
次に、このように構成された2線式伝送器の動作について図1と共に、図2のフローチャートを用いて説明する。先ず、実施形態1に2線式伝送器がとり得る状態I〜状態VIの6つの状態について説明する。図2のフローチャートの各ステップは、状態I〜状態VIの各々を実現するための動作を示している。実施形態1では、2線式伝送器が先ず状態Iを実現するように動作し(ステップS1)、続いて状態IIを実現するよう動作する(ステップS2)。そして、以降、ステップS3〜S5を順に実行することにより、状態III〜状態VIが実現される。以下、状態I〜状態VIの各々について、実施形態1の2線式伝送器の動作を説明する。
【0028】
状態I
状態Iでは、電流源114の出力電流Ioutの出力が停止され、かつ電流源106に電流Ibias1が流される。このとき、アナログ電圧信号Vout1がアナログ電圧信号分圧器107によって1/N倍に分圧された検出電圧Vdet1が測定器108によって測定される(ステップS1)。
【0029】
状態II
状態IIでは、電流源114の出力電流Ioutの出力が停止され、かつ電流源106に電流Ibias2が流される。このとき、アナログ電圧信号Vout2がアナログ電圧信号分圧器107で1/N倍に分圧された検出電圧Vdet2が測定器108によって測定される。
検出電圧Vdet1は、次の式(2)で表される。式(2)においてIcc1は電流源105に流れる電流である。検出電圧Vdet2は次の式(3)で表される。式(3)において、Icc2は電流源105に流れる電流である(ステップS2)。
Vdet1=Vout1/N=(Vcc−Rload×(Icc1+Ibias1))/N …式(2)
Vdet2=Vout2/N=(Vcc−Rload×(Icc2+Ibias2))/N …式(3)
【0030】
状態III
状態IIIでは、測定器108が、検出電圧Vdet1と検出電圧Vdet2とに基づいて、電源によって印加される電源電圧Vccを1/N倍に分圧した電圧V1の大きさを算出する。算出は、式(2)及び式(3)によって行われる(ステップS3)。また、電圧V1は、以下の式(4)によって算出される。
V1=Vcc/N
=Vdet1+(Vdet1−Vdet2)×(Icc1+Ibias1)/(Icc2−Icc1+Ibias2−Ibias1) …式(4)
【0031】
ここで、電流源105に流れる電流Icc1とIcc2が等しく、次の式(5)で表されるとき、電源電圧Vccを1/Nに分圧した電圧V1は次の式(6)で表される。
Icc1=Icc2=Icc …式(5)
V1=Vdet1+(Vdet1−Vdet2)×(Icc+Ibias1)/(Ibias2−Ibias1)
…式(6)
【0032】
図3は、検出電圧Vdet1、検出電圧Vdet2、及び電源電圧の分圧V1との関係を示した図である。図3の縦軸はVout/N(すなわち検出電圧)を示している。横軸は、電流源105、106に流れる電流の和を示している。すなわち、図3によれば、電流源105、106に流れる電流の和がIcc+Ibias1のとき、Vout/N=Vout1/N=Vdet1となる。また、電流源105、106に流れる電流の和がIcc+Ibias2のとき、Vout/N=Vout2/N=Vdet2となる。そして、電流源105、106に流れる電流の和が0のとき抵抗素子113の両端の電位が等しくなるため、Vout/N=Vcc/N=V1となることが分かる。
【0033】
状態IV
状態IVでは、演算器110により、電源の電圧Vccの分圧V1と理想的な電源電圧の分圧V0に応じてセンサ信号Vsnsの補正量Vcが算出される(ステップS4)。電圧生成器109によって理想的な電源電圧Vcc0を1/N倍に分圧した電圧V0が生成されるとき、センサ信号Vsnsの補正量Vcは次の式(7)で表される。
Vc=V1/V0=Vcc/Vcc0 …式(7)
なお、理想的な電源電圧の分圧V0、センサ信号Vsnsの補正量Vcの算出は、2線式伝送器の出荷後、センサや電源、外部制御装置となるコンピュータ等に2線式伝送器を接続し、未だ2線式伝送器が2線式伝送器として動作していないとき等に行われる。そして、算出された補正量Vcは演算器110の図示しないRAM等に書き込まれ、以降繰返しセンサ信号Vsnsの補正に使用される。
【0034】
状態V
状態Vでは、演算器111が、センサ信号Vsnsと補正量Vcとを乗算し、アナログ信号Vrを算出する(ステップS5)。アナログ信号Vrは次の式(8)で表される。
Vr=Vsns×Vc=Vsns×Vcc/Vcc0 …式(8)
式(8)によれば、アナログ信号Vrが電源電圧Vccに比例していることがわかる。すなわち、アナログ信号Vrはレシオメトリック特性を有することが明らかである。
【0035】
状態VI
状態VIでは、オペアンプ102がアナログ信号Vrとフィードバック信号Vfbが等しくなるように電流源114の出力電流Ioutを制御する。出力電流Ioutが制御されることにより、アナログ電圧信号Voutが出力される(ステップS6)。センサ信号Vsnsとアナログ電圧信号Voutの関係は次の式(9)で表される。
Vout=(1+(R0/R1))×Vr
=(1+(R0/R1))×Vsns×Vcc/Vcc0 …式(9)
【0036】
式(9)によれば、アナログ電圧信号Voutが電源電圧Vccに比例していることがわかる。図4は、アナログ電圧信号Voutと電源電圧Vccとの関係を示した図であって、縦軸にアナログ電圧信号Vout、横軸に電源電圧Vccが示されている。図4によれば、アナログ電圧信号Voutが電源電圧Vccに比例して変化する、レシオメトリック特性を有することが明らかである。
【0037】
以上説明した実施形態1によれば、レシオメトリック型の2線式伝送器を提供することができるので、レシオメトリック特性を有する受信機を適用した場合であっても、レシオメトリック補正回路を用いることなく受信機にレシオメトリック特性を有するアナログ電圧信号を出力し、受信機における信号処理の精度が低下することを防ぐことができる。
【0038】
(実施形態2)
図5は、実施形態2の2線式伝送器を説明するための図である。なお、実施形態2では、図5中に示した構成のうち、図2に示した構成と同様の構成については同様の符号を付し、説明を一部略するものとする。
実施形態2の2線式伝送器は、図1に示した実施形態1の2線式伝送器に、アナログ・デジタル変換器501、502、デジタル演算器500、デジタル・アナログ変換器503を追加して構成されている。デジタル演算器500は、図1に示した電源電圧の分圧を算出する測定器108、理想的な電源電圧の分圧を生成する電圧生成器109、算出された電源電圧の分圧と理想的な電源電圧の分圧からセンサ信号Vsnsの補正量を算出する演算器110、算出された補正量に基づいてセンサ信号Vsnsの補正演算を行う演算器111によって構成されている。
【0039】
実施形態2のアナログ電圧信号Voutはアナログ・デジタル変換器502によってデジタル信号に変換される。変換後のデジタル信号は測定器108と電圧生成器109と演算器によって補正量Vcに変換される。センサ信号Vsnsはアナログ・デジタル変換器ADC1によってデジタル信号に変換される。変換後のデジタル信号は演算器111によって補正量Vcと乗算された後、デジタル・アナログ変換器503によってアナログ信号Vrに変換される。このような実施形態2によれば、センサ信号Vsnsをアナログ信号Vrに変換した後に、実施形態1と同様の処理をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上説明した本発明は、センサによって検出された検出値を反映して連続的に変化する、レシオメトリック特性を有する信号を得ることが望ましい2線式伝送器であれば、どのような2線式伝送器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
101 センサ
102 オペアンプ
103,104,113 抵抗素子
104 抵抗素子
105,106,114 電流源
107 アナログ電圧信号分圧器
108 測定器
109 電圧生成器
110 演算器
112 受信機
500 デジタル演算器
501,502 アナログ・デジタル変換器
503 デジタル・アナログ変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ信号をアナログ電圧信号に変換して伝送路に出力する2線式伝送器であって、
前記伝送路と基準伝送路との間の中間電位に関する中間電位信号を生成する中間電位信号生成手段と、
前記センサ信号と前記中間電位信号とが供給される増幅器と、
前記増幅器によって出力される信号に基づいて、前記アナログ電圧信号を生成するアナログ電圧信号生成手段と、
前記センサ信号がセンサに与えられる電源電圧の変動に比例して信号の電圧レベルが変動する特性であるレシオメトリック特性を持つように、前記センサ信号を補正するレシオメトリック特性補正手段と、
を含むことを特徴とする2線式伝送器。
【請求項2】
前記レシオメトリック特性補正手段は、
前記センサ信号がセンサに与えられる電源電圧の変動に比例して信号の電圧レベルが変動する特性であるレシオメトリック特性を持つように、前記アナログ電圧信号の補正演算を行う補正演算手段と、
前記補正演算手段による補正に使用される補正量を算出する補正量算出手段と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の2線式伝送器。
【請求項3】
前記補正量算出手段は、
前記センサ信号をアナログ電圧信号に変換して伝送路に出力する2線式伝送器としての動作が行われていないとき、前記補正演算手段による補正に使用される補正量を算出することを特徴とする請求項2に記載の2線式伝送器。
【請求項4】
前記補正演算手段は、
バイアス電流生成手段と、
前記アナログ電圧信号を分圧する手段と、
前記アナログ電圧信号の分圧を検出し、前記バイアス電流と前記アナログ電圧信号の分圧に基づいて電源電圧の分圧を算出する算出手段と、
理想的な電源電圧の分圧に相当する電圧を生成する手段と、
前記電源電圧の分圧の算出値と理想的な電源電圧の分圧に相当する電圧に応じて前記アナログ電圧信号の補正量を算出する演算手段と、
前記補正量に基づき前記アナログ電圧信号の補正演算を行う演算手段と、
を含むことを特徴とする請求項2または3に記載の2線式伝送器。
【請求項5】
前記レシオメトリック特性補正手段は、第1の電流を流して測定された第1の検出電圧と、第2の電流を流して測定された第2の検出電圧と、に基づき、電源電圧の分圧を算出することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の2線式伝送器。
【請求項6】
前記レシオメトリック特性補正手段は、前記算出された電源電圧の分圧と理想的な電源電圧の分圧に相当する電圧に応じてアナログ電圧信号の補正量を算出することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の2線式伝送器。
【請求項7】
前記レシオメトリック特性補正手段は、前記補正量と前記センサ信号を乗算することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の2線式伝送器。
【請求項8】
前記増幅器は、前記センサ信号と前記中間電位信号とが供給され、入力された前記センサ信号と前記中間電位信号とが等しくなるように、前記伝送路と前記基準伝送路との間の電位を制御する信号を出力することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の2線式伝送器。
【請求項9】
前記センサ信号がアナログ信号である場合、前記センサ信号をデジタル信号に変換する第1の変換回路と、
前記アナログ電圧信号の分圧をデジタル信号に変換する第2の変換回路と、
前記第1及び第2の変換回路によって変換されたデジタル信号に基づいてレシオメトリック特性に補正されたデジタル信号を出力する加工回路と、前記加工回路によって補正されたデジタル信号をアナログ信号に変換して前記増幅器に出力するデジタル・アナログ変換回路と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の2線式伝送器。
【請求項10】
伝送路と基準伝送路との間の中間電位に関する中間電位信号を生成する中間電位信号生成手段と、センサ信号と前記中間電位信号とが供給される増幅器と、前記増幅器によって出力される信号に基づいて、アナログ電圧信号を生成するアナログ電圧信号生成手段と、を含み、前記センサ信号を前記アナログ電圧信号に変換して前記伝送路に出力する2線式伝送器の補正回路であって、
前記センサ信号がセンサに与えられる電源電圧の変動に比例して信号の電圧レベルが変動する特性であるレシオメトリック特性を持つように、前記センサ信号を補正するレシオメトリック特性補正手段と、
を含むことを特徴とする補正回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−73937(P2012−73937A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219748(P2010−219748)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】