説明

2線4線変換回路

【課題】
2線の電話回線と4線の無線機(無線機の出力に2線、無線機の入力に2線の計4線)を接続するための2線4線変換回路において、最近は、小型化等のためハイブリッドトランスを使用せず、オペアンプなどの増幅素子と抵抗やコンデンサなどの受動素子の組み合わせで変換回路を構成するようになってきた。この場合、2線4線変換回路を介して無線機出力から無線機入力への漏れを防止するために電子回路で工夫しているが充分でないため無線機出力から無線機入力の漏れを防止できず、無線機内での発振等の不具合が発生している。
【解決手段】
2線4線変換回路に抵抗で構成されるハイブリッド結合回路を使用して、この結合回路による電話回線と無線機間の減衰量をこの結合回路による無線機出力から無線機入力に漏れる量の半分以上にすることにより無線機出力から無線機入力への漏れによる無線機における発振等の不具合を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向通信を行う入出力端子(2線)と、信号送信を行う出力端子ならびに信号受信を行う入力端子(4線)を持つ2線4線変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
無線機を電話回線に接続する場合、電話回線は双方向通信を行っているため2線で外部と接続する構成になっているのに対し、無線機は信号を送信するのに2線、信号を受信するのに2線の計4線で外部と接続する構成となっている。よってこの場合で双方向通信を行うには2線4線変換回路を設ける必要がある。
【0003】
無線機を電話回線に接続する場合の従来の2線4線変換を図5に示す。図5に示すようにハイブリッドトランスT31を用いて2線4線変換をしていた。
【0004】
このハイブリッドトランスT31の動作原理を図6に示す。図6に示すように、ポート1に入力した信号はポート2とポート4に分岐されて出力されるが、ポート3には出力されない特性を持つ。また、ポート2に入力された信号はポート1とポート3に分岐されて出力されるが、ポート4には出力されない特性を持つ。よってポート1を4線入力端子69、ポート2を2線入出力端子61、ポート3を4線出力端子68とし、ポート4をポート1、ポート2の線路インピーダンスと同じインピーダンスで終端すると以下のように動作する。
【0005】
(1)4線入力端子69の信号はポート1に入力され、ポート2とポート4に現れるが、ポート4の信号は整合回路66により消去される。ポート3には信号が現れないので、ポート2の2線入出力端子61のみに出力される。
(2)2線入出力端子61の信号はポート2に入力され、ポート1とポート3に現れるが、ポート1は信号入力端子69なのでその先に接続する回路、例えば図5の増幅回路A31の出力側に接続されるのでこの信号はA31を通過することができずここでストップとなる。ポート4には信号が現れず、ポート3の4線出力端子68のみに現れる。
【0006】
前記(1)、(2)の動作により2線4線変換を実現していた。なお、ポート4の整合回路66は原理的には線路インピーダンスと同じ値の抵抗で実現できるが、実際には電話回線は周波数特性を持つため抵抗のみでは完全に整合することができず、抵抗とコンデンサを組み合わせて周波数帯域を広げて電話信号全体に対して整合するようにしている。
【0007】
また、ポート3の特性インピーダンスは他のポートに対して半分になるので、インピーダンス整合のためにポート3に1:2のインピーダンス特性を持つ整合トランス(図示せず)を設けることもある。
【0008】
この回路ではハイブリッドトランス65が1個は必須で、必要に応じて整合トランス(図示せず)が必要となるが、ハイブリッドトランス65や整合トランス(図示せず)は構造上幅、奥行、高さの3方向ともある程度の寸法が必要となり回路が小型化できない。またトランスの特性インピーダンスは誤差が大きいため、整合回路66で完全に整合できず他のポートに信号が漏洩することがある。更に材料費や製作コストがかかり安価にならない欠点があった。
【0009】
このため最近ではハイブリッドトランス65を使用せずにオペアンプなどの増幅素子と抵抗やコンデンサなどの受動素子の組み合わせで変換回路を構成するようになってきた。この変換回路の一例のブロック図を図1に、その詳細図を図3に示す。図1において無線機出力18と電話回線入出力11との間に結合回路(ハイブリッドトランスレス)13設け、無線機出力18が電話回線入出力11側に送出されるとともに電話回線入出力11側からの信号が無線機入力20に受信されるようにしている。
【0010】
このとき、無線機出力18が結合回路(ハイブリッドトランスレス)13を介して無線機入力20として入力される漏洩信号Xを防ぐため以下のような対策を行っている。
(1)結合回路(ハイブリッドトランスレス)13で無線機出力18として出力する際に出力の位相を位相反転回路14で反転させる。(2)無線機出力18が結合回路(ハイブリッドトランスレス)13に入力される前にその信号の一部を取り出し、取り出した信号の強度(振幅)を利得調整回路15で調整して前記結合回路(ハイブリッドトランスレス)13からの漏話信号Xと同強度(振幅)とする。
【0011】
位相反転回路14と無線機入力20との間に加算回路16を設け、前記漏洩信号Xと利得調整回路15からの信号を加算回路16で加算する。2つの信号は同振幅でお互いに逆相であるため打ち消し合い、結果とし無線機入力20には入力されない。このようにして無線機出力18からの結合回路(ハイブリッドトランスレス)13を介しての無線機入力20への漏れを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特実−3067319
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
現在行われている上記方式では無線機の入出力インピーダンスと、無線機に接続される中継機器や電話回線の線路インピーダンスの違いにより発生するミスマッチによって生じる漏洩信号を完全に無くすことはできず、そのまま無線機に入力されることになるので対策が必要となる。
【0014】
最近の無線機では外部に入出力される信号(アナログ信号)は無線機内部でデジタル変換処理を行っているが、安定した変換処理をするためにはアナログ/デジタル変換処理される入力信号のレベルはデジタル/アナログ変換処理された出力信号のレベルよりも小さくする必要がある。仮に出力信号のレベルが入力信号より大きい場合は無線機内で信号が発振する可能性があるので対策が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
2線の電話回線と4線の無線機(無線機の出力に2線、無線機の入力に2線の計4線)を接続するための2線4線変換回路において、前記2線4線変換回路が抵抗で構成されるハイブリッド抵抗結合回路を有し、前記2線の電話回線と4線の無線機間のハイブリッド抵抗結合回路における減衰量が前記無線機出力と無線機入力間のハイブリッド抵抗結合回路における漏洩量の半分以上に設定する。
【0016】
また、前記ハイブリッド抵抗結合回路からの漏洩信号を位相反転する位相反転回路を有し前記無線機出力信号を利得調整する利得調整回路を有し、前記位相反転回路からの出力信号と利得調整回路からの出力信号を加算する加算回路を有し、前記利得調整回路は前記加算回路からの出力信号が最小になるように調整でき、無線機出力が無線機入力に漏れることを防ぐ。
【発明の効果】
【0017】
上記手段により、従来の結合回路(ハイブリッドトランスレス)の2線4線変換回路で生じる漏洩信号を低減させて漏洩信号の抑圧ができる。無線機入力レベルを無線機出力レベルよりも小さくでき、無線機内での信号処理を安定して行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の結合回路(ハイブリッドトランスレス)の2線4線変換回路のブロック図
【図2】本発明の結合回路(ハイブリッド抵抗)の2線4線変換回路のブロック図
【図3】従来の結合回路(ハイブリッドトランスレス)の2線4線変換回路図
【図4】本発明の結合回路(ハイブリッド抵抗)の2線4線変換回路図
【図5】ハイブリッドトランスを使用した2線4線変換回路図
【図6】ハイブリッドトランスの動作原理図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0019】
図2は本発明の結合回路(ハイブリッド抵抗)25を使用した2線4線変換回路のブロック図である。図2に示すように無線機出力18のライン上に抵抗で構成された結合回路(ハイブリッド抵抗)25を使用する。
【0020】
ここで、無線機出力18のレベルをAとし、無線機入力20のレベルをBとする。無線機入力20への漏洩信号XのレベルをXとし、本発明の結合回路(ハイブリッド抵抗)25を信号が通過することにより減衰する信号のレベルをYとする。
【0021】
図1の従来の回路における無線機出力18のレベルAは結合回路(ハイブリッドトランスレス)13を通過して電話回線入出力11に入力されるが、結合回路(ハイブリッドトランスレス)13単体では信号減衰は微小であるためないものとして取り扱うため電話回線入出力11の入力レベルはAとなる。電話回線入出力11では入力信号と出力信号のレベルは等しいものとして取り扱うため電話回線入出力11の出力レベルはAとなる。これが前述の結合回路(ハイブリッドトランスレス)13に入力されて無線機入力20のラインに出力される。その際の信号レベルは結合回路(ハイブリッドトランスレス)13での漏洩信号Xが加わるので、A+Xとなる。よって、無線機入力20のレベルはB=A+Xとなる。
【0022】
図1に示す従来の方式では漏洩信号Xが存在するのでX>0となり、B>Aとなりこの信号が無線機入力20に入力されると発振する可能性がある。
【0023】
一方、図2に示す本発明では無線機出力18のラインの信号レベルAは、結合回路(ハイブリッド抵抗)25を通過する際に抵抗ハイブリット回路で構成されているのでこの分での信号減衰がある。
【0024】
そのため電話回線入出力11の入力レベルは、A−Yとなる。前述のとおり電話回線入出力11では入力信号と出力信号のレベルは等しいため電話回線入出力11の出力レベルはA−Yとなり、再び結合回路(ハイブリッド抵抗)25に入力されて無線機入力20のラインに出力される。
【0025】
その際の信号レベルは結合回路(ハイブリッド抵抗)25での減衰分に結合回路(ハイブリッド抵抗)25での漏洩信号Xが加わり (A−Y)+(-Y)+(X)=A+(X−2Y)となる。ここでX>0、Y>0であるので本発明の結合回路(ハイブリッド抵抗)25の減衰量を適切に設定、すなわちX−2Y<0を満たすようにすれば、B<Aとなり、無線機の出力信号レベルは入力信号レベルより小さくなり安定したデジタル/アナログ変換処理をすることができる。
【0026】
すなわち、Y>X/2を満たせはよく、結合回路(ハイブリッド抵抗)25での減衰設定量を結合回路(ハイブリッド抵抗)25での漏洩量Xの半分以上にすれば良いことになる。
【0027】
ちなみに結合回路(ハイブリッド抵抗)25内の抵抗R54、R55、R56、R57の値は以下のようにして決定できる。
無線機入力20への漏洩信号Xを−4dB(≒0.63)、結合回路(ハイブリッド抵抗)25の入出力インピーダンスZを600Ωであると仮定する。Y>X/2を満たすことが本発明における結合回路(ハイブリッド抵抗)25の成立条件であることより、Y>0.63/2=0.315を満たす抵抗値にすればよい。
【0028】
ここで結合回路(ハイブリッド抵抗)25の入力信号と出力信号の電力比の平方根をKとすると、KはYと同じとなる。結合回路(ハイブリッド抵抗)25内の抵抗R54、R55の値をCとし、R56、R57の値をDとすると、C=Z×|K−1|/4K=600×|0.315−1|/(4×0.315)≒429Ω。
D=Z×|(k+1)/(k−1)|=600×|(0.315+1)/(0.315−1)|
≒1152Ωとなる。
【0029】
したがってR54、R55の値を429Ω以上で、R56、R57の値を1152Ω以下にすれば、本発明における結合器の成立条件を満たすことができる。このようにして、結合器内の抵抗R54、R55、R56、R57の値を求めることができる。
【0030】
本発明である結合回路(ハイブリッド抵抗)25を使用した場合の2線4線変換回路の詳細な実施例を図4に示す。図4において、結合回路(ハイブリッド抵抗)25は抵抗R54からR57で構成される。A41は増幅回路であり、無線機出力18が接続されることによって本発明の2線4線変換回路に影響を及ぼさないための緩衝(バッファ)機能を持たせると共に無線機出力18を増幅している。
【0031】
このA41の増幅回路で増幅された出力はA42で構成された反転増幅回路で信号位相を180度回転させて抵抗R42を経て前述の結合回路(ハイブリッド抵抗)25の入力端子25Dに入力されるものと、抵抗R41を経てそのまま結合回路(ハイブリッド抵抗)25の入力端子25Cに入力されるものに分けている。
【0032】
ハイブリッド抵抗結合回路25に入力された無線機出力18は結合回路(ハイブリッド抵抗)25を構成する4つの抵抗の値により決定される減衰量によって減衰され電話回線入出力11に出力される。一方、電話回線入出力11からの出力は上記信号と逆向きに進行して結合回路(ハイブリッド抵抗)25の25A端子と25B端子に入力される。結合回路(ハイブリッド抵抗)25は可逆性の特性を有するため前述の減衰量で減衰して結合回路(ハイブリッド抵抗)25の25C端子と25D端子から抵抗R41、R42側に出力されるがA41、A42が増幅器であるため無線機出力18には入力されず、A43の増幅器のみに進む。
【0033】
A43は差動増幅回路であり、A43の2つの入力信号(この信号は電話回線入出力11から無線機入力20へ向かう信号の他に、無線機出力18から電話回線入出力11へ向かう信号の一部がR41、R42の左側で分岐されて加わる)は、振幅の大きさが等しくて位相が逆相になっているのでこの差動増幅回路A43で2倍に増幅され、出力される。
【0034】
これがA44で構成された反転増幅回路で増幅されて無線機入力20となるが、ここで反転増幅回路A44の入力信号にA41で構成された反転増幅回路の出力の一部を加えると、A43の差動増幅回路の出力信号と互いに逆相であり振幅が同じであればA43の差動増幅回路の入力で混入した無線機の出力信号を打ち消すことができる。この振幅を調整するためR43で構成された減衰器を設けてある。
【0035】
本明細書では最近の無線機ということでデジタル信号処理するものとして述べたが、従来からのアナログ信号をそのまま取り扱う無線機でも全く同様に適用することができる。また、説明の際に無線機は1つのものとして述べたが送信機、受信機と各々別に設けても全く同様に適用することができる。

【符号の説明】
【0036】
11 電話回線入出力
12 2線
13 結合回路(ハイブリッドトランスレス)
14 位相反転回路
15 利得調整回路
16 加算回路
18 無線機出力
19 4線
20 無線機入力
25 結合回路(ハイブリッド抵抗)
61 2線入力端子
65 ハイブリッドトランス
66 整合回路
68 4線出力端子
69 4線入力端子
25A、25B、25C、25D 結合回路(ハイブリッド抵抗)の端子
A31、A32 増幅回路
A41 増幅回路
A42、A44 反転増幅回路
A43 差動増幅回路
R31、R41、R42 抵抗
R43 抵抗
R54、R55,R56,R57 結合回路(ハイブリッド抵抗)を構成する抵抗
T31 ハイブリッドトランス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2線の電話回線と4線の無線機(無線機の出力に2線、無線機の入力に2線の計4線)を接続するための2線4線変換回路において、前記2線4線変換回路が抵抗で構成されるハイブリッド抵抗結合回路を有し、前記2線の電話回線と4線の無線機間のハイブリッド抵抗結合回路における減衰量が前記無線機出力と無線機入力間のハイブリッド抵抗結合回路における漏洩量の半分以上に設定することを特徴とする2線4線変換回路。
【請求項2】
請求項1の2線4線変換回路において、前記ハイブリッド抵抗結合回路からの漏洩信号を位相反転する位相反転回路を有し、前記無線機出力信号を利得調整する利得調整回路を有し、前記位相反転回路からの出力信号と利得調整回路からの出力信号を加算する加算回路を有し、前記利得調整回路は前記加算回路からの出力信号が最小になるように調整でき、無線機出力が無線機入力に漏れることを防ぐことを特徴とする2線4線変換回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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