説明

2軸容積式回転ポンプを用いた炭酸泉生成装置

【課題】炭酸泉を安定して容易に得られる簡素な構造の「2軸容積式回転ポンプを用いた炭酸泉生成装置」を提供すること。
【解決手段】 炭酸泉を貯留する水槽と、その水槽へ循環経路を介して湯を送り込むポンプユニットと、炭酸ガスボンベを備えた炭酸泉生成装置において、ポンプユニットPは、吸込口と吐出口を設けたポンプケーシング4内に収められた一対のルーツロータ26を駆動モータにより回転駆動されるルーツポンプ3と、炭酸ガスボンベ61から供給される炭酸ガスを該吸込口側に導く炭酸ガス導入管51からなり、ルーツポンプ3の運転により水槽70から湯を吸い込むと共に炭酸ガス導入管51から取り込まれる炭酸ガスの気泡を当該ポンプ3の圧縮作用によって微細化し、その微細化された炭酸ガスの気泡が含まれた湯を水槽70内へ放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴や足湯等に供される炭酸泉を容易に得られる家庭用や業務用に適する「2軸容積式回転ポンプを用いた炭酸泉生成装置」に関する。
【背景技術】
【0002】
血行促進による疲労回復や疼痛緩和に効果があるとして、約1000ppmの濃度の炭酸ガス(二酸化炭素ガス)を温水に溶解させた炭酸泉が入浴や足湯等に使用されている。
【0003】
特許文献1には、炭酸ガスを溶解した溶解水を製造する溶解水製造手段と、溶解水製造手段から供給される溶解水から炭酸ガスのマイクロバブルを発生させるバブル発生ノズルを備え、浴槽と溶解水製造手段とを接続する吸引路に分岐接続した接続路に、炭酸ガスと空気の供給とを切換える切換手段を備えた炭酸泉生成装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、水槽内に一端を夫々接続した吸入管と吐出管の他端同士を、炭酸泉生成装置の通水管により循環可能に連結し、その通水管に介装したポンプと炭酸ガスボンベとを管路により接続し、ポンプの作動により炭酸ガスが溶解して所定圧力に加圧された水を吐出管の先端に設けた吐出弁に導いて当該弁から水槽内の水に噴射させることにより、炭酸ガスの微細気泡を水中に溶解させる炭酸泉生成装置が開示されている。
【0005】
ところが、特許文献1の生成装置においては、溶解水に混入した異物等がバブル発生ノズル内に設けられたオリフィスに付着してバブルの発生を低下させ、或いはオリフィスの小孔通路を閉塞してバブルの発生を妨げる危惧がある。また、特許文献2の生成装置においても、ポンプのシリンダヘッドに形成された吸入通路や吐出通路が狭いことから、水に混入した異物等が通路に付着して水の流れを妨げるという不具合が生ずると思われる。
【0006】
特許文献2の装置は、ピストンポンプ等で0.7MPa程度の高圧力に加圧されるため、動力が大きくなる。さらに、特許文献1,2の装置とも、炭酸ガスの微細気泡を得て、公知の療養泉ライン(CO:1000mg/l)<図5のグラフ参照>に達しても、短時間で大気中へ放散されることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4134233号公報
【特許文献2】特開2009−11446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、炭酸泉を安定して容易に得られる簡素な構造の「2軸容積式回転ポンプを用いた炭酸泉生成装置」を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために請求項1に記載した発明は、炭酸泉を貯留する水槽と、その水槽へ循環経路を介して湯を送り込むポンプユニットと、炭酸ガスボンベを備えた炭酸泉生成装置において、
前記ポンプユニットは、吸込口と吐出口を設けたポンプケーシング内に収められた一対のロータを駆動モータにより回転駆動される2軸容積式回転ポンプと、前記炭酸ガスボンベから供給される炭酸ガスを該吸込口側に導く炭酸ガス導入管からなり、
前記2軸容積式回転ポンプの運転により前記水槽から湯を吸い込むと共に前記炭酸ガス導入管から取り込まれる炭酸ガスの気泡を当該ポンプの圧縮作用によって微細化し、その微細化された炭酸ガスの気泡が含まれた湯を前記水槽内へ放出するようにしたことを特徴とする。
【0010】
同様の目的を達成するために請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の2軸容積式回転ポンプを用いた炭酸泉生成装置において、前記2軸容積式回転ポンプのハウジングの吸込み側の内側面に、ロータ軸を挿入する軸穴を中心として半径方向に延びる複数のせん断用溝を設け、前記ポンプケーシング内に混入して該せん断用溝に流入する夾雑物が前記ロータのローブの側縁と該せん断用溝の角縁とによるせん断作用によってせん断されるように構成したことを特徴とするものである。
【0011】
湯に混入する毛屑やゴミ等の夾雑物は、2軸容積式回転ポンプのロータのローブの側縁とせん断用溝の角縁とによるせん断作用によってせん断されて湯と一緒に排出されるため、ポンプのメカニカルシール部に夾雑物が付着しにくくなり、ポンプが安定して作動する。
【0012】
同様の目的を達成するために請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載の2軸容積式回転ポンプを用いた炭酸泉生成装置において、前記炭酸ガス導入管に流量調整弁を介装したことを特徴とするものである。
【0013】
流量調整弁により炭酸ガスの流量を調整することができるので、2軸容積式回転ポンプに供給する炭酸ガスの調整作業が行い易い。
【発明の効果】
【0014】
(請求項1の発明)
この2軸容積式回転ポンプを用いた炭酸泉生成装置によれば、炭酸ガス導入管から取り込まれる炭酸ガスが混入した湯を2軸容積式回転ポンプによる圧縮作用によって微細化し、微細化された炭酸ガスの気泡が混入した湯を水槽内の底部に向けて放出させることにより、炭酸ガスを湯中に効率よく溶解させることができる。さらに、この装置は、2軸容積式回転ポンプを用いることにより湯中の気泡の微細化を促進可能であるため簡素な構造となり、炭酸泉を安定して容易に得ることができる。また、湯に混入する毛屑やゴミ等の夾雑物によってポンプの作動が妨げられないという優れた利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る2軸容積式回転ポンプを用いた炭酸泉生成装置
【図2】ルーツポンプの一部破断側面図
【図3】ルーツポンプの一部破断正面図
【図4】流量調整弁の縦断正面図
【図5】炭酸ガス濃度の変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の最良の形態例を図面に基づいて説明する。
【0017】
本発明に係る2軸容積式回転ポンプを用いた炭酸泉生成装置(以下、単に「炭酸泉生成装置」という)Aは、炭酸泉を貯留する水槽70と、水槽70へ循環経路65を介して湯を送り込むポンプユニットPと、炭酸ガスボンベ61を備えている。
【0018】
ポンプユニットPは、水槽70に隣接して設置された架台1の上に、駆動モータ38により回転駆動される2軸容積式回転ポンプとしてのルーツポンプ3と、炭酸ガスボンベ61から供給される炭酸ガスを該ポンプ3の吸込口側に導く炭酸ガス導入管51とからなる。
【0019】
ルーツポンプ3は、図2に示すように、吸込口5と吐出口6を設けたポンプケーシング4の内部に、吸込口部8を斜め上方に、吐出口部9を斜め下方に設けたロータケーシング7が45度傾けて配置されている。ロータケーシング7の吸込口部8の上隅部7aとポンプケーシング4の吸込口5側の天部4aとは、壁10により連接されている。また、吐出口部9の下隅部7bから横方向へ凹円弧壁11が一体に形成され、その凹円弧壁11のほぼ中間部とポンプケーシング4の底部4bとは、縦壁12により連接されている。13は縦壁12に設けられたバイパス穴である。
【0020】
14,14はポンプケーシング4の周壁に設けられたドレン用穴、15はポンプケーシング4の天部4aに設けられた給水穴である。17は一方のドレン用穴14に螺着されたキャップ、21は給水穴15に螺着されたキャップである。他方のドレン用穴14に螺着されるキャップ18には、前記バイパス穴13に先端部を挿入するロッド19が中心部に突設されている。
【0021】
吸込口5には、逆止弁22を介装して配管のためのフランジ金具23が取り付けられている。また、吐出口6には、フランジ金具25を取り付けている。
【0022】
ロータケーシング7には、一対の2葉式ルーツロータ26を収めている。図3に示すように、ルーツロータ26のロータ軸27は、ポンプケーシング4の両側に夫々固定されたハウジング30,31に装着したベアリング32,32により回転自由に支持するように設けられている。下方のロータ軸27のハウジング30から突出する一端にはプーリ34を取付け、駆動モータ装置38により伝動ベルト39を介して該プーリ34を回転駆動するように設けられている(図1)。ロータ軸27の他端にはタイミングギア35を夫々固定し、それらのタイミングギア35,35を噛合するように設けている。36はハウジング31の開口部に取り付けたギアカバーである。
【0023】
ハウジング30,31には、ロータ軸27を支持するベアリング32の奥に、公知のメカニカルシールを収納したスタッフィングボックス33が設けられている。
【0024】
ルーツロータ26については、ロータ軸27を除いて形成された芯金部26bの外側にポリウレタンゴム材(又はニトリルゴム材)によりライニング加工を施している。
【0025】
なお、この実施例のルーツポンプ3では、2葉式ルーツロータ26を採用しているが、これに限定されることなく、多葉式ルーツロータを適用することもできる。
【0026】
ハウジング30の内側面の吸い込み側に相当する箇所には、ロータ軸27が挿入される軸穴30aを中心として半径方向に延びる複数の、例えば3個のせん断用溝30bを設ける。せん断用溝30bの大きさについては、幅:5〜15mm、長さ:15〜25mm、深さ:5〜10mmとする。また、せん断用溝30bの長さについては、1個目は軸穴30aの内端縁からロータケーシング7の内径の中間位置まで、2個目は軸穴30aの内端縁からロータケーシング7の内径の3/4の位置まで、3個目は軸穴30aの内端縁近くからロータケーシング7の内径から若干突出する位置までというように、ルーツロータ26の回転方向に合わせて変化させるように設けることもできる。
なお、他方のハウジング31についても、同様のせん断用溝((図示せず))を設ける。
【0027】
しかして、湯と一緒にロータケーシング7内に流入してせん断用溝30bに入り込む毛屑やゴミ等の夾雑物は、ルーツロータ26のローブ26aの側縁とせん断用溝30bの角縁とによるせん断作用によってせん断され、吐出口6から外へ排出される。
【0028】
フランジ金具23の上部に設けた炭酸ガス導入口(図示せず)には、炭酸ガス導入管51の一端51aが接続されている。52は炭酸ガス導入管51に介装された開閉弁、53は炭酸ガス導入管51に介装された流量調整弁である。炭酸ガスボンベ61のガス出口側には、圧力調整弁62と、流量計63が取り付けられている。炭酸ガス導入管51の他端51bは、流量計63に連結されている。
【0029】
図4に示すように、流量調整弁53は、逆T字形の弁本体54に入口部55aと出口部55bが形成された流路55を設け、流路55のほぼ中間位置の折返し部55cに連通するように流路55よりも4倍程度の大径のネジ穴56を形成し、ネジ穴56に螺合された駒片57の円錐形の先端部57aを折返し部55cに臨むように設けている。58はネジ穴56に螺合されたキャップである。
【0030】
しかして、駒片57を進退させて折返し部55cに生ずる隙間の大きさを変更することにより、流路55を通過する炭酸ガス流量を調整可能な流量調整弁53が構成される。
【0031】
前記循環経路65については、ポンプユニットPのフランジ金具23に接続された吸込みパイプ66と、同ポンプユニットPのフランジ金具25に取り付けられた排出管67と、水槽70を含めた一連の湯の流れる通路をいう。
【0032】
以上により、駆動モータ装置38の駆動によりルーツポンプ3の2葉式ルーツロータ26が回転することにより、吸込口5から湯を吸い込むと共に炭酸ガス導入口からエジェクタ作用によって取り込まれる炭酸ガスの気泡をルーツポンプ3による圧縮作用により微細化し、微細化された気泡が含まれた湯を吐出口6から排出するポンプユニットPが構成される。
【0033】
しかして、ポンプユニットPの運転により水槽70内の湯が吸込みパイプ66内に吸い込まれると共に炭酸ガス導入口からエジェクタ作用により取り込まれる炭酸ガスの気泡をルーツポンプ3による圧縮作用により微細化し、微細化された気泡が含まれた湯を排出管67から水槽70の底部に向けて放出させることにより、炭酸ガスを湯中に効率よく溶解させる本発明に係る炭酸泉生成装置Aが構成される。
【0034】
(実験)
図1に示す本発明に係る炭酸泉生成装置Aについて、運転時間経過による水中への炭酸ガス(CO)溶解量の変化を測定した。その結果を図5のグラフに示す。
(実験条件)
ルーツポンプの諸元
ルーツポンプの口径:50mm
吐出量:200リットル/分
ポンプ吐出圧力:50kPaG
吸込揚程:2m
回転速度:650rpm
モータ出力:1.5Kw
炭酸ガス供給量:25リットル/分と、5リットル/分の場合について測定
水槽容積:1.0m
水温:20℃
(測定器)
COガス溶解量測定器: 株式会社東興化学研究所 Ti−9004
【0035】
実験の結果、運転時間60分経過時における炭酸ガス(CO)溶解量は、炭酸ガス供給量が25リットル/分の場合に約1750mg/リットル、炭酸ガス供給量が5リットル/分の場合に約250mg/リットルとなり、いずれも多量の炭酸ガスが水中に溶解することが確認された。また、炭酸ガスの供給を停止し長時間放置しても炭酸ガスの放散量は少ないことが確認された。炭酸ガス供給量が25リットル/分の場合には、公知の療養泉ライン(CO:1000mg/l)を超えることも可能であり、炭酸ガス供給量が5リットル/分の場合には容易に炭酸泉ライン(CO:250mg/l)を得られる。
【符号の説明】
【0036】
A・・・本発明に係る2軸容積式回転ポンプを用いた炭酸泉生成装置
P・・・ポンプユニット
3・・・ルーツポンプ(2軸容積式回転ポンプ)
4・・・ポンプケーシング
5・・・吸込口 6・・・吐出口
26・・・ルーツロータ(ロータ)
26a・・・ローブ
27・・・ロータ軸
30,31・・・ハウジング
30b・・・せん断用溝
51・・・炭酸ガス導入管
53・・・流量調整弁
61・・・炭酸ガスボンベ
65・・・循環経路
70・・・水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸泉を貯留する水槽と、その水槽へ循環経路を介して湯を送り込むポンプユニットと、炭酸ガスボンベを備えた炭酸泉生成装置において、
前記ポンプユニットは、吸込口と吐出口を設けたポンプケーシング内に収められた一対のロータを駆動モータにより回転駆動される2軸容積式回転ポンプと、前記炭酸ガスボンベから供給される炭酸ガスを該吸込口側に導く炭酸ガス導入管からなり、
前記2軸容積式回転ポンプの運転により前記水槽から湯を吸い込むと共に前記炭酸ガス導入管から取り込まれる炭酸ガスの気泡を当該ポンプの圧縮作用によって微細化し、その微細化された炭酸ガスの気泡が含まれた湯を前記水槽内へ放出するようにしたことを特徴とする2軸容積式回転ポンプを用いた炭酸泉生成装置。
【請求項2】
前記2軸容積式回転ポンプのハウジングの吸込み側の内側面に、ロータ軸を挿入する軸穴を中心として半径方向に延びる複数のせん断用溝を設け、前記ポンプケーシング内に混入して該せん断用溝に流入する夾雑物が前記ロータのローブの側縁と該せん断用溝の角縁とによるせん断作用によってせん断されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の2軸容積式回転ポンプを用いた炭酸泉生成装置。
【請求項3】
前記炭酸ガス導入管に流量調整弁を介装したことを特徴とする請求項1又は2に記載の2軸容積式回転ポンプを用いた炭酸泉生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−90964(P2012−90964A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201909(P2011−201909)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000127123)株式会社アンレット (41)
【Fターム(参考)】