説明

2連式吐出器

【課題】着脱が容易であり、かつ耐久性に優れたキャップを備えた2連式吐出器を提供する。
【解決手段】2連式吐出器1は、種類の異なる内容物をそれぞれ充填した2つの容器7、8を保持するカバー3と、ポンプ9、10と、内容物をそれぞれ個別に排出する注出ノズル11と、その先端部分に着脱自在に適合するキャップ17とを備える。キャップ17は、本体部分と、これに一体連結し該注出ノズル17の両側外側壁に沿って伸延する一対のアーム部材からなり、この先端側から後端側に向けて注出ノズル11の軸心に沿って開口する長孔を設け、注出ノズル11の外側壁に、各長孔27に嵌まり込み、注出ノズル11の軸心に沿ってスライド可能に抜け止め保持する軸部を設け、位置決めされた該軸部25を基点として、アーム部材23の回動にて係合凹部と係合してその回動姿勢をそのまま維持する係合凸部を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、種類の異なる内容物をそれぞれ個別に注出ノズルから排出する2連式吐出器に関し、特に、かかる注出ノズルの先端部分に着脱自在に適合して該注出ノズルの送給経路を閉塞するキャップを設けてなる2連式吐出器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化粧料、特にヘアーカラーリング剤においては組成の異なる2種類の内容物を使用直前に混合して使用するものが多数流通している。このような2種類の内容物を注出する装置としては、特許文献1に開示されているように、それぞれの内容物をそれぞれ個別の容器に充填し、各容器の口部にポンプ装置の吸引口を接続し該ポンプ装置を手動により駆動することで各容器から同時に内容物を吸引、加圧及び圧送し、圧送された各内容物を注出ノズルを介して外界に向けて排出する2連式の吐出器が知られている。
【0003】
また、使用後に注出ノズルの開口部を介して容器内の内容物が周囲の空気に曝され、該内容物が酸化又は固化するのを防止すべく、特許文献2には、注出ノズルの先端部分に、該注出ノズルの送給経路を閉塞するキャップが設けられたポンプ式液体注出容器が記載されている。このようなキャップは、蓋部を、注出ノズルの先端部分に嵌着された筒体にヒンジ部を介して開閉自在に設けてなる、いわゆるヒンジキャップであり、構造が単純で安価に製作することができることから広く使用されている。
【特許文献1】特開2007−137466号公報
【特許文献2】特開2001−278315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、化粧料等に用いる2連式吐出器の注出ノズルのように、その外径が比較的小さい場合は、キャップ自体のサイズも小さくなり、それに伴い開蓋用の指掛けも小さくなる。その結果、蓋部を開放する際に十分な指掛けを確保することができないとともに、かかる指掛けは、ヒンジ部に対向する位置にのみ設けられるものであり、蓋部の開放に際して、通常は親指又は人差し指の何れか一方の指しか用いることができないことから、蓋部の開放が困難になるという問題がある。さらに、蓋部を繰り返し開閉することによりヒンジ部が疲労し、かかるヒンジ部が早期に破損するおそれがある。
【0005】
したがって、この発明は、これらの問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、着脱が容易であり、かつ耐久性に優れたキャップを備えた2連式吐出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、この発明は、種類の異なる内容物をそれぞれ充填した2つの容器に連通し、該容器内の内容物を吸引、加圧、圧送するポンプと、該ポンプにより圧送された内容物をそれぞれ個別に外界へ向けて排出する注出ノズルと、この注出ノズルの先端部分に着脱自在に適合して該注出ノズルの送給経路を閉塞するキャップとを備えた2連式吐出器であって、前記キャップは、前記注出ノズルの先端部分に適合する凹所を備えた本体部分と、この本体部分に一体連結し該注出ノズルの両側外側壁に沿って伸延する一対のアーム部材からなり、前記アーム部材のそれぞれに、その先端側から後端側に向けて前記注出ノズルの軸心に沿って開口する長孔を設け、前記注出ノズルの外側壁に、各長孔に嵌まり込みその誘導下に前記アーム部材を、前記本体部分とともに前記注出ノズルの軸心に沿ってスライド可能に抜け止め保持する軸部を設け、前記長孔に、該長孔の後端域でその開口幅を局所的に狭める狭窄部位を形成し、該狭窄部位での前記軸部の強制的な通過によって該軸部の位置決めを行い、位置決めされた該軸部を基点として前記アーム部材を回動可能に保持する位置決め突起を設け、少なくとも一方の前記アーム部材の内側壁に係合凹部を設け、前記注出ノズルの外側壁に、前記位置決め突起により位置決めされた前記軸部を基点とした前記アーム部材の回動にて前記係合凹部と係合してその回動姿勢をそのまま維持する係合凸部を設けたことを特徴とする2連式吐出器である。かかる構成を採用することにより、キャップの本体部分の外側壁を指で把持し、該本体部分とともにアーム部材を注出ノズルに対して該アーム部材の先端側に引っ張ると、アーム部材は、長孔を介して注出ノズルの軸部に誘導され、これら本体部分及びアーム部材は、上記先端側にスライドし、注出ノズルの送給経路は開放される。さらに注出ノズルの軸部が、長孔の後端域に形成された位置決め突起を強制的に通過することより、アーム部材とともに本体部分は位置決めされ、注出ノズルの送給経路は開放されたまま保持される。さらに、かかる位置決め突起により位置決めされた軸部を基点としてアーム部材を回動させることにより、注出ノズルから排出された内容物の排出経路を確保することが可能となる。さらに、アーム部材の係合凹部と、注出ノズルの係合凸部とを係合させることにより、位置決め突起に保持された軸部を基点として回動するアーム部材の回動姿勢は保持される。一方、注出ノズルの送給経路が開放保持された状態から、キャップを注出ノズルに対して該アーム部材の後端側に押し込むと、位置決め突起により位置決めされた軸部は、その位置決めから解除され、アーム部材は、長孔を介して注出ノズルの軸部に誘導され、これら本体部分及びアーム部材は、上記後端側にスライドし、本体部分の凹所が注出ノズルの先端部分に適合し、注出ノズルの送給経路は閉塞される。なお、ここでいうアーム部材の「先端側」とは、アーム部材の、本体部分に連結される側を指し、アーム部材の「後端側」とは、アーム部材の、本体部分から離間する側、すなわち末端側を指すものとする。また、「長孔の後端域」とは、長孔の、アーム部材の後端側寄りの領域を指すものとする。
【0007】
さらに、長孔に、該長孔の前端域でその開口幅を局所的に狭める狭窄部位を形成し、該狭窄部位での軸部の強制的な通過によって、本体部分の凹所と注出ノズルの先端部分とが適合し注出ノズルの送給経路が閉塞した状態にて該軸部を係止する係止突起を設けることが好ましい。なお、ここでいう「長孔の前端域」とは、長孔の、アーム部材の前端側寄りの領域を指すものとする。
【0008】
さらに、係合凸部は、注出ノズルの外側壁にドーム状に突出形成されていることが好ましい。
【0009】
さらに、係合凸部を、軸部と同一軸線上に配設し、アーム部材の内側壁に、長孔から後方に延び、アーム部材を注出ノズルに対してスライドさせた際に係合凸部を通過させる通路を設けることが好ましい。
【0010】
しかも、本体部分は、その外側壁上に外方へ向けて突出する指掛け部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、キャップを着脱する際にキャップの本体部分の外側壁を複数本の指で把持することができ、また、キャップと注出ノズルとは、アーム部材の長孔及び注出ノズルの軸部を介して連結されていることから、着脱が容易であり、かつ耐久性に優れたキャップを備えた2連式吐出器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の形態を詳細に説明する。ここに、図1は、この発明に従う代表的な2連式吐出器を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図であり、図2(a)〜(c)は、図1(a)〜(c)に示すキャップの拡大図であり、図3(a)、(b)は、図2(a)〜(c)に示すキャップの動作を説明するための図であり、図4は、注出ノズル及びキャップの分解斜視図であり、図5は、図1(c)のA−A線に沿う断面図であり、図6は、図5のB−B線に沿う断面図であり、図7は、図5のC−C線に沿う断面図である。
【0013】
図1(a)〜(c)に示すように、この2連式吐出器1は、カバー3と、カバー3の外側上部に嵌め込まれたホルダー5とを有する。カバー3内には、種類の異なる内容物がそれぞれ充填された2つの容器7、8及び該容器7、8内の内容物を吸引、加圧、圧送する、並列配置された2つのポンプ9、10が収容されている。また、ポンプ9、10の吐出側には、ポンプ9、10により圧送された内容物をそれぞれ個別に外界へ向けて排出する注出ノズル11が配設されており、この注出ノズル11は、上記ポンプ9、10を手動にて駆動する際に握るレバー13に穿設された開口部15を通って外方に延びる。さらに、注出ノズル11の先端部分には、かかる先端部分に着脱自在に適合して、該注出ノズル11の送給経路を閉塞するキャップ17が設けられている。
【0014】
このキャップ17は、図2(a)、(b)に示すように、注出ノズル11の先端部分に適合する、すなわち注出ノズル11の先端部分を覆うように嵌められる凹所19を備える本体部分21と、この本体部分21に一体連結し、注出ノズル11の両側壁面に沿って伸延する一対のアーム部材23とからなる。
【0015】
それぞれのアーム部材23には、その先端側(図2(a)では上側)から後端側(図2(a)では下側)に注出ノズル11の軸心xに沿って開口するとともにアーム部材23内で終端し、注出ノズル11の外側壁に設けられた軸部25と係合する長孔27が形成されている。
【0016】
また、長孔27の後端域(長孔27の後端側の領域)には、長孔27の開口幅Wが軸部25の直径Dよりも狭い狭窄部位を形成し、軸部25の位置決めを行う位置決め突起29、31が設けられている。図3(a)に示すように、図2(a)に示す状態から注出ノズル11に対してキャップ17を矢印α方向に引き上げ、後端域の狭窄部位が軸部25に達したとき、かかる突起29、31は若干の弾性変形が可能であり、軸部25は、狭窄部位を通過して長孔27の後端部33(後方停止端)に当接して停止する。軸部25が停止した後には、軸部25は突起29、31と後端部33との間に回動可能に保持される。これにより、図3(b)に示すように、キャップ17は、軸部25を基点として前後方向に(図では後方(矢印β方向)に回動した状態を示す)回動可能となる。
【0017】
一方、図2(a)に示すように、長孔27の前端域(長孔27の前端側の領域)には、長孔27の開口幅Wが軸部25の直径Dよりも狭い狭窄部位を形成し、該狭窄部位での軸部25の強制的な通過によって、本体部分21の凹所19と注出ノズル11の先端部分とが適合し、すなわち本体部分21の凹所19の内のりが注出ノズル11の先端部分の大きさと略一致し注出ノズル11の送給経路が閉塞した状態にて軸部25を係止する係止突起35、37が設けられている。図3(a)に示す状態から注出ノズル11に対してキャップ17を図3(a)に示す矢印γ方向に押し込み、前端域の狭窄部位が軸部25に達したとき、かかる突起35、37は若干の弾性変形が可能であり、軸部25は、狭窄部位を通過して長孔27の前端部39(前方停止端)に当接して停止する。これにより、キャップ17は、その本体部分21の凹所19が注出ノズル11の先端部分に適合した状態にて保持される。
【0018】
また、図2(b)に示すようにアーム部材23の内側壁(注出ノズル11の外側壁に面する側壁)には、係合凹部41が設けられており、注出ノズル11の外側壁には、長孔27の後端域に位置決めされた軸部25を基点としてアーム部材23を回動させた際に、図3(b)に示すように、係合凹部41と係合してその回動姿勢を維持する係合凸部43が設けられている。すなわち、アーム部材23の内側壁に係合凹部41を設け、軸部25が長孔27の後端部33と突起29、31との間に回動可能に支持された状態(図3(a)に示す状態)にて、かかる係合凹部41の回動軌跡T(図3(a)参照)上に該係合凹部41と係合する係合凸部43を設けている。さらに、かかる係合凸部43は、図2(b)に示すように、注出ノズル11の外側壁に突出形成されたドーム状の形状を有している。さらに、係合凸部43は、軸部25と同一軸線上、すなわち、図2(a)に示すように、キャップ17の凹所19を注出ノズル11の先端部分に適合させた状態にて、係合凸部43と軸部25とが注出ノズル11の軸心xに平行に沿う同一の軸線x1上に存在するよう配置されている。
【0019】
さらに、図4に示すように、アーム部材23の後端側の内側壁には、注出ノズル11に対してキャップ17を引き上げたとき、係合凸部43を通過させる通路として、係合凸部43の直径以上の幅を有する溝45が長孔27の後端部33から後方に向けて後端縁まで形成されている。なお、係合凸部43を通過させる通路は、注出ノズル11に対してキャップ17を引き上げたとき、注出ノズル11の軸部25を通過させることなく、係合凸部43のみを通過させることができればよいので、係合凸部43の直径を軸部25のそれよりも小さくする場合には、この図示例の溝45に代えて、長孔27から連続して後方に開口する貫通溝とすることもできる。
【0020】
図1〜4に示すように、本体部分21には、その外側壁上に左右外方へ突出し、キャップ17を注出ノズル11に対して引き上げる際に指を掛けることができる一対の指掛け部47が形成されている。また、図示は省略するが、この指掛け部47は、本体部分21の外側壁から前後外方に突出させて設けても良く、本体部分21の全周に亘って設けても良い。
【0021】
次いで、この発明に適用可能なポンプについて以下説明する。前述のように、この2連式吐出器1は、種類の異なる内容物をそれぞれ充填した2つの容器7、8内と連通し、該容器7、8内の内容物を吸引、加圧、圧送する、並列配置された2つポンプ9、10を備える。なお、各ポンプ9、10及び容器7、8において、同一の構成を有するものには同一の符号を付して説明する。
【0022】
図5及び6に示すように、各ポンプ9、10は、外周面に容器7、8の口部7a、8aが装着された外筒50とその内周側に嵌め込まれた内筒52とからなるシリンダ53と、シリンダ53内に摺動可能に配されたピストン55と、シリンダ53に対してピストン55をポンプ9、10の軸心に沿って離間する方向に付勢する、すなわち、ピストン55をシリンダ53に対して上方に押し上げる付勢手段57とを備えており、シリンダ53内に配したピストン55をレバー13からの押し込み力および付勢手段57からの抗力によって摺動させて、ピストン55およびシリンダ53間に形成されたポンプ室Sの容積を増減することにより容器7、8内の内容物の吸入および排出を行うものであり、シリンダ53内でのピストン55の押し込み動作は、このピストン55がシリンダ53の底部に当接することによって規制される。
【0023】
シリンダ53は、有底円筒状をなし、底部に形成された吸入口59付近に吸入弁61を有する。この吸入弁61は、シリンダ53の吸入口59付近の内側壁に支持固定された環体63とこの環体63に弾性支持された弁体65とから構成されており、各容器7、8内の内容物を吸引するときのみシリンダ53の吸入口59を開放し、ポンプ室Sと容器7、8内とを連通するものである。
【0024】
ピストン55は、円筒状のピストンロッド67と該ピストンロッド67に一体に成形された皿状のピストンヘッド69とを有するピストン本体71、前述のレバー13からの押し込み力をピストンロッド67に伝達する、内部に流体の流通路Pが形成された中空ステム73、及び、中空ステム73とピストン本体71との間に配置され、ポンプ室Sの圧力と連動してシリンダ53の内面に沿って摺動し、ピストンロッド67の外周面に形成された流通孔75を開閉する弁体77を有する。ピストンロッド67は、その上部にて中空ステム73の内周面に形成された複数のリブに一体に固定されている。
【0025】
付勢手段57は、シリンダ53の内周面に固定された第1支持体79、中空ステム73の外周面に固定された第2支持体81、及び、これら支持体79、81間に配置されるとともにこれらを相互に離間する方向に付勢するコイル状のスプリング83を備えてなる。また、第1支持体79の下面は、レバー13を開放した状態にて中空ステム73の鍔部73aと当接し、ピストン55がシリンダ53から引き抜けないよう軸心方向の移動を規制する。
【0026】
また、図7に示すように、ポンプ9、10の排出口、すなわち中空ステム73の排出口73bには、ポンプ9、10と注出ノズル11との間を連結するジョイント85が配設されている。ジョイント85内部には、各中空ステム73の排出口73bから注出ノズル11につながる2つの出側経路P1、P2が形成されている。さらに、注出ノズル11内には、該注出ノズル11内を軸心に沿って2分割し、2つの出側経路P1、P2を経た内容物を個別に通す通路を形成する仕切り板87が設けられている。
【0027】
かかる構成のポンプ9、10を用いて容器7、8内の内容物を排出するには、ホルダー5に取り付けられたレバー13の握り操作を行い、レバー13の押圧部90にてジョイント85を介して中空ステム73を下方に押し込めばよく、このようにすれば、ピストン本体71がスプリング83の付勢力に抗して下方にスライドする。その行き止まり状態で押し込みにかかる力を取り除くと、スプリング83の復元力にてレバー13はピストン本体71とともに初期位置へと復帰し、この時、シリンダ53内(ポンプ室S)が負圧となるため容器7、8内の内容物が吸入口59を通ってシリンダ53内へと吸引される。
【0028】
レバー13の握り操作により再びピストン本体71を下方へスライドさせるとシリンダ53内に存在する内容物は加圧されて、ピストンロッド67の流通孔75から中空ステム73の内部通路Pを経て中空ステム73の排出口73bへと圧送されることとなり、圧送された内容物は各出側経路P1、P2を経て注出ノズル11の先端からそれぞれ個別に外界へと排出される。
【0029】
かかる実施例の2連式吐出器にあっては、キャップ17の本体部分21とともにアーム部材23を上方(先端側)に引っ張ると、アーム部材23は、長孔27を介して注出ノズル11の軸部25に誘導され、これら本体部分21及びアーム部材23は、上記先端側にスライドし、注出ノズル11の送給経路は開放される。さらに軸部25の、長孔27の後端域に形成された位置決め突起29、31の強制的な通過により、アーム部材23は軸部25を介して位置決めされ注出ノズル11の送給経路は開放されたまま保持される。さらに、かかる突起29、31により位置決めされた軸部25を基点としてアーム部材23を回動させることにより、注出ノズル11から排出される内容物の排出経路を確保することが可能となる。さらに、アーム部材23の係合凹部41と、注出ノズル11の係合凸部43を係合させることにより、位置決め突起29、31に保持された軸部25を基点として回動するアーム部材23は、吐出器1がどのような状態にあろうともその回動姿勢がそのまま維持される。
【0030】
一方、注出ノズル11の送給経路が開放保持された状態から、キャップ17の本体部分21とともにアーム部材23を下方(後端側)に押し込むと、位置決め突起29、31により位置決めされた軸部25は、その位置決めから解除され、アーム部材23は、長孔27を介して注出ノズル11の軸部25に誘導され、これら本体部分21及びアーム部材23は、上記後端側にスライドし、本体部分21の凹所19が注出ノズル11の先端部分に適合し、注出ノズル11の送給経路は閉塞される。
【0031】
従って、この実施例の2連式吐出器によれば、キャップ17を着脱する際に複数本の指でキャップ17の外側壁を把持可能であることから、化粧料等に用いる2連式吐出器の注出ノズル11のように、その外径が比較的小さく、キャップ17自体のサイズが小さくなる場合でも、着脱を容易に行うことができる。また、ヒンジに代えて、アーム部材23の長孔27及び注出ノズル11の軸部25を介してキャップ17と注出ノズル11とを抜け止め可能に連結したことから、キャップ17が注出ノズル11から脱落することがなく、また特に繰り返し疲労する部位がないので耐久性に優れる。
【0032】
さらに、この実施例の2連式吐出器によれば、長孔27に、該長孔27の前端域でその開口幅を局所的に狭める狭窄部位を形成し、該狭窄部位での軸部25の強制的な通過によって、本体部分21の凹所19と注出ノズル11の先端部分とが適合した状態にて該軸部25を係止する係止突起35、37を設けたことから、かかる軸部25と係止突起35、37との係合によりキャップ17を注出ノズル11に固定することができる。
【0033】
さらに、この実施例の2連式吐出器によれば、係合凸部43を、注出ノズル11の外側壁にドーム状に突出形成したことから、係合凸部43をアーム部材23の係合凹部41に滑らかに係合させることができる。
【0034】
さらに、この実施例の2連式吐出器によれば、係合凸部43を、軸部25と同一軸線(x1)上に配設し、アーム部材23の内側壁に、長孔27から後方に延び、アーム部材23を注出ノズル11に対してスライドさせた際に係合凸部43を通過させる溝45を形成したことから、キャップ17を注出ノズル11に対して注出ノズル11の軸心xに沿って押し引きしても、係合凸部43は長孔27内に沿って移動するか、あるいは溝45内を通過することから、係合凸部43とアーム部材23とが干渉することがなく、キャップ17の押し引き動作を滑らかに行うことができる。
【0035】
しかも、この実施例の2連式吐出器によれば、キャップ17の本体部分21の外側壁上に外方へ向けて突出する指掛け部47を設けたことから、キャップ17を注出ノズル11に対して押し引きする際に確実に指を掛けることができ、一層容易にキャップ17を注出ノズル11に対して押し引きすることができる。
【0036】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば、注出ノズル11の断面形状は、円形や楕円形、矩形、多角形等でも良い。また、上述の実施例では、位置決め突起として2つの突起29、31を用いているが、軸部25の位置決めを行い、位置決めされた軸部25を基点としてアーム部材23を回動可能に保持できれば、かかる突起は1つでもそれ以上でも良い。同様に、係止突起として2つの突起35、37を用いているが、本体部分21の凹所19と注出ノズル11の先端部分とが適合し注出ノズル11の送給経路が閉塞した状態にて軸部25を係止できれば、かかる突起は1つでもそれ以上でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明により、着脱が容易であり、かつ耐久性に優れたキャップを備えた2連式吐出器を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明に従う代表的な2連式吐出器を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図である。
【図2】(a)〜(c)は、図1(a)〜(c)に示すキャップの拡大図である。
【図3】(a)、(b)は、図2(a)〜(c)に示すキャップの動作を説明するための図である。
【図4】注出ノズル及びキャップの分解斜視図である。
【図5】図1(c)のA−A線に沿う断面図である。
【図6】図5のB−B線に沿う断面図である。
【図7】図5のC−C線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 2連式吐出器
3 カバー
5 ホルダー
7、8 容器
9、10 ポンプ
11 注出ノズル
13 レバー
17 キャップ
19 凹所
21 本体部分
23 アーム部材
25 軸部
27 長孔27
29、31 位置決め突起
33 後端部
35、37 係止突起
39 前端部
41 係合凹部
43 係合凸部
45 溝
47 指掛け部
53 シリンダ
55 ピストン
57 付勢手段
59 吸入口
61 吸入弁
73 中空ステム
75 流通孔
77 弁体
85 ジョイント
87 仕切り板
90 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種類の異なる内容物をそれぞれ充填した2つの容器に連通し、該容器内の内容物を吸引、加圧、圧送するポンプと、該ポンプにより圧送された内容物をそれぞれ個別に外界へ向けて排出する注出ノズルと、この注出ノズルの先端部分に着脱自在に適合して該注出ノズルの送給経路を閉塞するキャップとを備えた2連式吐出器であって、
前記キャップは、前記注出ノズルの先端部分に適合する凹所を備えた本体部分と、この本体部分に一体連結し該注出ノズルの両側外側壁に沿って伸延する一対のアーム部材からなり、
前記アーム部材のそれぞれに、その先端側から後端側に向けて前記注出ノズルの軸心に沿って開口する長孔を設け、
前記注出ノズルの外側壁に、各長孔に嵌まり込みその誘導下に前記アーム部材を、前記本体部分とともに前記注出ノズルの軸心に沿ってスライド可能に抜け止め保持する軸部を設け、
前記長孔に、該長孔の後端域でその開口幅を局所的に狭める狭窄部位を形成し、該狭窄部位での前記軸部の強制的な通過によって該軸部の位置決めを行い、位置決めされた該軸部を基点として前記アーム部材を回動可能に保持する位置決め突起を設け、
少なくとも一方の前記アーム部材の内側壁に係合凹部を設け、
前記注出ノズルの外側壁に、前記位置決め突起により位置決めされた前記軸部を基点とした前記アーム部材の回動にて前記係合凹部と係合してその回動姿勢をそのまま維持する係合凸部を設けたことを特徴とする2連式吐出器。
【請求項2】
前記長孔に、該長孔の前端域でその開口幅を局所的に狭める狭窄部位を形成し、該狭窄部位での前記軸部の強制的な通過によって、前記本体部分の凹所と前記注出ノズルの先端部分とが適合し前記注出ノズルの送給経路が閉塞した状態にて該軸部を係止する係止突起を設けてなる、請求項1に記載の2連式吐出器。
【請求項3】
前記係合凸部は、前記注出ノズルの外側壁にドーム状に突出形成されている、請求項1又は2に記載の2連式吐出器。
【請求項4】
前記係合凸部を、前記軸部と同一軸線上に配設し、前記アーム部材の内側壁に、前記長孔から後方に延び、前記アーム部材を前記注出ノズルに対してスライドさせた際に前記係合凸部を通過させる通路を設けてなる、請求項1〜3の何れか一項に記載の2連式吐出器。
【請求項5】
前記本体部分は、その外側壁上に外方へ向けて突出する指掛け部を有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の2連式吐出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−126568(P2009−126568A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306070(P2007−306070)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】