説明

2,3,5−トリメチルヒドロキノンの製造方法

【課題】出発原料として、フェノールをメタノールでジアルキル化することにより、工業的に安価に大量生産出来る2,6-ジメチルフェノールを用いて、ビタミンEの原料として有用な2,3,5-トリメチルヒドロキノンを収率よく、高純度で得る方法を提供する。
【解決手段】2,6-ジメチルフェノールを酸素酸化して2,6-ジメチル-P-ベンゾキノンを作り、2,6-ジメチル-P−ベンゾキノンを水素化して2,6-ジメチル-ヒドロキノンとし、得られた2,6-ジメチル-ヒドロキノンをアミノメチル化してマンニッヒ塩とし、得られたマンニッヒ塩を水素化分解して2,3,5-トリメチルヒドロキノンを得る工程によって2,3,5-トリメチルヒドロキノンを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンEの原料として有用な2,3,5-トリメチルヒドロキノンを高収率、高純度で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンEの原料として有用な2,3,5-トリメチルヒドロキノンは、一般には2,3,6-トリメチルフェノールから工業的に製造されている。しかしながらこの原料の2,3,6-トリメチルフェノールは、従来、工業的にはm-クレゾールを出発原料としているが、m-クレゾールはサイメン法(特許文献:(1)特公昭51-025011号公報、(2)米国特許第2728797号公報等)で得られたm/p-クレゾールをブチル化し、分離後、脱ブチル化する(特許文献:(3)米国特許第2297588号公報)方法等によって生産されている。m-クレゾールがビタミンE向けに需要が増加し、必然的に併産されるp-クレゾール又はその誘導体が過剰となり、そのバランスが問題になっている。
また、2,3,5-トリメチルヒドロキノンは、ヒドロキノンやメチルヒドロキノンを原料として製造する方法も知られている。すなわち、これらの原料化合物とホルムアルデヒドとのマンニッヒ塩を生成し、これを水素化分解して製造する方法(特許文献:(4)特開昭50-123632号公報、(5)特開昭51-0004973号公報、(6)ドイツ特許第2025579号公報、(7)ドイツ特許第2006525号公報)である。しかしながら、これらの方法では原料のヒドロキノン類が高価である上に工程が煩雑であることもあって工業的には実施されていない。
そこで、m-クレゾールを原料とせず、かつ、工業的に実施容易で、高効率なトリメチルヒドロキノンの製造方法が求められていた。
【0003】
【特許文献1】特公昭51-025011号公報
【特許文献2】米国特許第2728797号公報
【特許文献3】米国特許第2297588号公報
【特許文献4】特開昭50-123632号公報
【特許文献5】特開昭51-004973号公報
【特許文献6】ドイツ特許第2025579号公報
【特許文献7】ドイツ特許第2006525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、2,3,5-トリメチルヒドロキノンの製造における上述した問題を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、m-クレゾールを原料とせず、工業的に容易に入手し得る原料を用いると共に、工業的に実施容易な反応条件下に反応を行って、2,3,5-トリメチルヒドロキノンを高収率、高純度で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、2,6-ジメチルフェノールを酸素酸化して2,6-ジメチル-P−ベンゾキノンを得る工程(第1工程)、
得られた2,6-ジメチル-P-ベンゾキノンを水素化して2,6-ジメチル-ヒドロキノンを得る工程(第2工程)、
次いで、得られた2,6-ジメチル-ヒドロキノンをアミノメチル化してマンニッヒ塩を得る工程(第3工程)、
更に、得られたマンニッヒ塩を水素化分解して2,3,5-トリメチルヒドロキノンを得る工程(第4工程)を順次行うことを特徴とする下記化学式1の2,3,5-トリメチルヒドロキノンの製造方法が提供される。
【0006】
【化2】


(化学式1)
【0007】
本発明の2,3,5-トリメチルヒドロキノンの製造方法によれば、出発原料として、2,6-ジメチルフェノールを用いる。本発明の原料である2,6-ジメチルフェノールは、フェノールをメタノールでジアルキル化することにより、容易に製造出来る為、耐熱性樹脂等の中間原料として、現在、工業的に多量に製造されている。本発明の2,3,5-トリメチルヒドロキノンの製造方法においては、このような2,6-ジメチルフェノールを出発原料とし、前記4つの工程を順次行うことにより、目的とする2,3,5-トリメチルヒドロキノンを収率よく、高純度で得ることが出来る。また、各工程において、その反応生成物は、精製することなく、粗製物のまま次工程の原料として用いることができるので、工業的に実施容易である。
【0008】
本発明における、2,6-ジメチルフェノールを原料として4つの反応工程を経て2,3,5-トリメチルヒドロキノンを製造する方法を反応式で例示すると、下記反応式で表される。
【0009】
【化3】

【0010】
上記第1工程においては、2,6-ジメチルフェノールを酸素酸化して2,6-ジメチル-P-ベンゾキノンを得る。2,6-ジメチルフェノールの酸素酸化の方法としては、特に制限はなく、例えば、酸素を酸化剤とし、有機溶媒中、コバルト錯体を触媒とする方法(特公昭56-026647号公報)、ハロゲン化銅を触媒とする方法(特開昭49-36641号公報)、銅系触媒の存在下に、酸素又は空気等の酸素含有ガスで酸化する方法(特開昭48-000434号公報あるいは特開平03-081249号公報)などの、従来公知の方法を用いることが出来る。しかしながら、本発明の製造方法においては、第1工程の反応生成物から、2量体以上の高沸点副生物を除去した後、精製することなく、第2工程の反応の原料として用いる事が好ましく、そのため、例えば、特開平03-081249号公報記載のように、銅化合物及びヒドロキシルアミン類と無機酸の塩又はオキシム類と無機酸の塩の混合物よりなる触媒の存在下に、有機溶媒中で酸素酸化する方法が好ましく用いられる。
【0011】
反応は、例えば、反応容器に、原料の2,6-ジメチルフェノール、トルエン及びイソプロピルアルコール等の有機溶媒を仕込み、塩化第一銅、塩化第二銅などの銅化合物及び硫酸ヒドロキシルアミンなどのヒドロキシルアミン類と無機酸の塩よりなる混合触媒を添加し、酸素含有ガス、例えば空気等の気相の酸素酸化剤を通気しながら、酸化反応を行う。酸化反応終了後、反応終了混合物にアルカリ水溶液を加えて中和した後、水相を分離し、触媒を濾別して粗製の反応終了混合液を得る。得られた粗製反応終了混合液には、目的物である2,6-ジメチル-P-ベンゾキノン、原料2,6-ジメチルフェノール、副生物、及び溶媒を含んでいる。この反応混合液を分留して、2,6-ジメチル-P-ベンゾキノンを含む留分(粗生成物)を得る。一方、これにより次工程以降の反応や製品純度に悪影響を及ぼすテトラメチルビフェノールなどの2量体を含む高沸点の副生物は、例えば、蒸留残渣として分離することができる。
【0012】
第1工程の反応に用いられる酸化触媒としては、具体的には、好ましくは、硫酸第一銅、硫酸第二銅、硝酸第一銅、塩化第一銅、塩化第二銅などの銅化合物で、特に好ましくは塩化第二銅である。また、それらの銅化合物と共にヒドロキシルアミン、N,N-ジメチルヒドロキシルアミンなどのヒドロキシルアミン類又はそれらの硫酸塩、塩酸塩などの無機酸塩を用いてもよい。銅化合物の使用量は、原料の2,6-ジメチルフェノール1モルに対し、好ましくは、0.01〜0.2モル倍である。また、銅化合物と共に用いられてもよいヒドロキシルアミン類又はそれらの無機酸塩は、銅化合物1モルに対し、0.2〜5モル倍である。
さらに、反応溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば、特に制限はないが、好ましくは、例えばt-ブタノール、i-ブタノール、イソプロパノール等の脂肪族アルコール又はこれらとトルエン等の芳香族炭化水素との混合溶剤が用いられる。反応温度は室温〜80℃の範囲が好ましく、酸化反応に用いられる酸素又は空気等の酸素含有ガスの反応圧力は、好ましくは常圧〜10kg/cm2程度である。
【0013】
本発明の製造方法における第2工程は、前記第1工程で得られた2,6-ジメチル-P-ベンゾキノンを水素化して2,6-ジメチル-ヒドロキノンを得る。
2,6-ジメチル-P-ベンゾキノンの水素還元反応の方法としては、特に制限はなく、例えば、特開昭48-049732号公報に記載のように、有機溶媒中、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウムなどの水素化触媒の存在下に水素化反応を行うなどの、従来公知の方法を用いることが出来る。しかしながら、本発明の製造方法においては、第2工程の原料として、第1工程の反応において得られた粗製の2,6-ジメチル-P-ベンゾキノンを用いることが好ましく、また、第2工程の反応生成物は、反応生成混合物から、触媒を濾別し、溶媒等を留去した後、目的物である2,6-ジメチル-ヒドロキノン、出発原料の2,6-ジメチルフェノール及びその他第1工程由来の副生物を含む粗製の反応生成物であり、これを精製することなく、第3工程の反応の原料として用いることが設備簡略、操作簡易となり、経済的な点で好ましい。
【0014】
反応は、例えば、加圧反応容器に、原料の、第一工程で得られた粗製2,6-ジメチル-P-ベンゾキノン、酢酸ブチルなどの有機溶媒及びラネーニッケルなどの水素化触媒を仕込み、水素ガスを通気しながら、加温、加圧下に、水素化反応を行う。水素化反応終了後、触媒を濾別して反応終了混合液を得る。得られた反応終了混合液には、目的物である2,6-ジメチル-ヒドロキノン、出発原料2,6-ジメチルフェノール、副生物及び溶媒を含んでいる。この反応混合液を分留して、有機溶媒を回収し、必要に応じて2,6-ジメチルフェノールも回収すると共に、2,6-ジメチル-ヒドロキノンを含む残留液(粗生成物)を得る。
【0015】
第2工程の反応に用いられる、水素化触媒としては、ラネーニッケル等のニッケル触媒、パラジウム等の貴金属触媒が好ましく用いられ、これらの貴金属はカーボン等の担体に担持されていてもよい。これらの触媒は、原料の2,6-ジメチル-P-ベンゾキノンに対して、好ましくは、5〜15重量%の範囲で用いられる。
反応溶媒は反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、2-プロパノール等のアルコール、酢酸ブチル等のアルキルエステル、ジエチルエーテル等のエーテルが好ましく用いられる。
反応温度は、好ましくは50〜150℃の範囲、また、水素ガスの圧力は、好ましくは1〜5kg/cm2程度である。
【0016】
本発明の製造方法における第3工程及び第4工程は、前記第2工程で得られた2,6-ジメチル-ヒドロキノンをアミノメチル化してマンニッヒ塩を得(第3工程)、ついで、得られたマンニッヒ塩を水素化分解して本発明の目的物である2,3,5-トリメチルヒドロキノンを得る(第4工程)。
アミノメチル化反応及び水素化分解反応の方法は、特に制限はなく、例えば、ドイツ特許第2006525号公報、ドイツ特許第2025579号公報などに記載の従来公知の方法を用いることが出来る。
【0017】
第3工程の反応は、例えば、反応容器に、第2工程で得られた粗製の2,6-ジメチル-ヒドロキノン、トルエン等の有機溶媒及びモルホリンなどの2級アミンを仕込み、これにホルマリンやパラホルムアルデヒドなどを添加、反応させてマンニッヒ塩を得る。マンニッヒ塩としては、例えば、モルホリンとホルムアルデヒドからは3-モルホリノメチル-2,6-ジメチル-ヒドロキノンを得る。得られた反応生成混合物は室温に冷却することにより3-モルホリノメチル-2,6-ジメチル-ヒドロキノンが析出してくるので、これを濾過することにより、粗製の3-モルホリノメチル-2,6-ジメチル-ヒドロキノンであるマンニッヒ塩を得ることができる。
第3工程の反応に用いられる原料の2,6-ジメチル-ヒドロキノンの純度は、高純度である必要はなく、例えば、原料の2,6-ジメチルフェノールや酸化工程由来の低沸点副生物が含まれていてもよく、40〜95%の範囲、好ましくは80〜95%の範囲でも用いることができる。また、アミノメチル化に用いられる2級アミンとしては、ジメチルアミン等のジアルキルアミン、メチルシクロヘキシルアミン等のシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピペコリン、モルホリン等の環状2級アミンが挙げられるが、これらのうち、環状2級アミンが好ましく、モルホリンが特に好ましい。また、ホルムアルデヒドとしては、ホルマリンやパラホルムアルデヒドなどがあげられる。
【0018】
原料の2,6-ジメチル-P-ヒドロキノン1モルに対する2級アミンの量は1.0〜2.0モルの範囲が好ましく、同様に、低級アルデヒドの量は、1.0〜2.0モルの範囲が好ましい。
反応に用いられる溶媒としては多量の原料(2,6-ジメチルフェノール)や、酸化工程由来の副生物を含んでいても反応終了後のこれらを溶解したままで、目的物が高純度、高収率で濾別によって容易に取得でき、さらに、反応中に目的のマンニッヒ塩が析出することにより、副生物であるジアミノメチル化物の生成を抑制することができるという点で、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒が好ましく、溶媒の量は、通常、原料の粗2,6-ジメチル-ヒドロキノンに対し2〜4倍量が好ましい。
【0019】
反応温度は、65℃以上になると、アミノメチルの2モル付加体量が増加する理由で、40〜60℃の範囲が好ましい。また、反応中に生成し、析出したマンニッヒ塩を濾別するに際し、目的物であるアミノメチル1モル付加体(3-モルホリノメチル-2,6-ジメチルヒドロキノン)以外に、若干のアミノメチル2モル付加体(3,5-ジモルホリノメチル-2,6-ジメチルヒドロキノン)が生成するため、原料の2,6-ジメチル-ヒドロキノンに対し1〜5重量%程度のメタノール等の低級脂肪族アルコールを加えてこれらの2モル付加体を溶解した後に、目的のマンニッヒ塩を濾別することが好ましい。
【0020】
次いで、本発明の製造方法における第4工程では、前記第3工程で得られた粗製のマンニッヒ塩、例えば、3-モルホリノメチル-2,6-ジメチル-ヒドロキノンを原料とし、例えば、これを加圧反応容器に入れ、メタノールなどの有機溶媒及びカーボン担持パラジウム触媒などの貴金属触媒を添加し、水素ガスを通気しながら、加温、加圧下に、水素化分解を行う。水素化反応終了後、触媒を濾別して反応終了混合液を得る。得られた反応終了混合液から常法の後処理操作により、例えば、得られた反応終了混合液から、蒸留等により、有機溶媒及び分解生成物、例えばモルホリンを分離し、残留液にメチルイソブチルケトンなどの溶媒を加えて加温溶解し、ついで、これにトルエン等の晶析溶媒を加えて冷却、晶析、濾過、乾燥して、本発明の目的物である2,3,5-トリメチルヒドロキノンを高純度品として得ることができる。
【0021】
第4工程の反応において、水素化分解反応触媒としては、パラジウム、ロジウム、プラチナ等の貴金属触媒が好ましく、これらはカーボン等の担体に担持されていてもよい。これらの内、パラジウムカーボン触媒が特に好ましい。反応に際し用いられる溶媒は、反応に不活性のものであれば特に制限はないが、メタノール、2-プロパノール等の低級脂肪族アルコール、酢酸ブチル等のアルキルエステル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテルが好ましく用いられる。
反応温度は、50〜150℃の範囲が好ましく、また、水素ガスの圧力は、5〜15kg/cm2程度が好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の2,3,5-トリメチルヒドロキノンの製造方法によれば、2,6-ジメチルフェノールを出発原料とし、4つの反応工程を順次行うことにより目的とする2,3,5-トリメチルヒドロキノンを収率よく、高純度で得ることが出来る。また、各工程において、その反応生成物は、精製,単離することなく、粗製物のまま次工程の原料として用いることができるので、工業的に実施容易である。
2,6-ジメチルフェノールを出発原料として、上記4つの反応工程を順次行うことにより、高純度の2,3,5-トリメチルヒドロキノンを工業的に容易な反応操作で得るが、消費された出発原料の2,6-ジメチルフェノールに対する総合収率は25〜35%程度である。本発明の製造方法においては、各工程において、未反応の2,6-ジメチルフェノール、反応に際し用いた溶媒、2級アミン等は回収し循環使用することができるので、経済的にも有利である。
【実施例1】
【0023】
1)2,6-ジメチル-P-ベンゾキノン(DMBQ)の合成(第1工程)
還流冷却器及び撹拌機付きの1L容量の四つ口フラスコに、2,6-ジメチルフェノール61.1g(0.5mol)を仕込み、ついで322.5gのトルエン及び97.5gのイソプロピルアルコールを添加して、温度約20℃で撹拌溶解した。
これに硫酸ヒドロキシルアミン10.1g(62.5mmol)と塩化第二銅二水和物 10.6g(62.5mmol)を添加し、空気を約500cc/min.の流量で流しながら温度20℃で2時間、撹拌下に反応する。その後、空気を供給しながら、40℃に昇温して更に2時間、撹拌下に反応する。そのときの2,6-ジメチルフェノールの転化率(ガスクロマトグラフィー分析法による)は66.7%、DMBQの選択率は78.3%であった。
反応終了後、反応終了混合液に75%燐酸 0.3gと10%ソーダ灰水溶液 92.0gを加えることによりpH=6〜7に中和し、これを水洗、濾過して触媒及び無機塩を除去して、赤褐色透明の反応終了液を得た。
得られた反応終了液を蒸留して、トルエンとイソプロピルアルコールを回収し、その後更に0.5KPa(約4mmHg)の条件で100℃まで昇温し蒸留して、44.8gの留分を得た。
得られた留分の組成は、2,6-ジメチルフェノール 33.30%、DMBQ 61.50%、その他不純物5.20%(ガスクロマトグラフィー分析による)であり、ガスクロマトグラフィー検量線による定量値分析によると、2,6-ジメチルフェノールが41.07%、目的中間物の2,6-ジメチル-P-ベンゾキノン(DMBQ)が48.21%であった。2量体のテトラメチルビフェノールは含まれていなかった。
【0024】
2)2,6-ジメチル-ヒドロキノン(DMHQ)の合成(第2工程)
500mL容量のSUS製オートクレーブに第1工程で得た留分を40.7g仕込み、酢酸ブチル122.1gを添加し、更にラネーニッケルを1.0g添加した。
添加終了後、温度 120℃に昇温し、水素圧 3.5〜5Kg/cm2で水素を供給し、撹拌下に4時間反応した。その後、反応終了混合液を室温まで冷却後、濾過してラネーニッケル触媒を除去し、反応終了液を160.5g得た。
得られた反応終了液を蒸留して、2,6-ジメチルフェノールと酢酸ブチルを留去し、残渣液22.3gを得た。残渣液の組成は2,6-ジメチル-ヒドロキノン(DMHQ)89.10%、2,6-ジメチルフェノール 2.94%、その他7.96%であった(ガスクロマトグラフィー)。
【0025】
3)3-モルホリノメチル-2,6-ジメチル-ヒドロキノンの合成(第3工程)
還流冷却器及び撹拌機付き500mL容量の四つ口フラスコに、窒素ガス雰囲気下で、第2工程で得られた残液 13.8gを仕込み、これにトルエン41.4g及びモルホリン 10.4g(0.12mol)を添加し、撹拌下に溶解する。得られた溶解液を30℃に保持し、これに35%ホルマリン溶液 10.2g(0.12mol)を30分程度で滴下する。滴下終了後、反応液を30℃に保ちながら18時間、撹拌下に反応する。反応中に3-モルホリノメチル-2,6-ジメチルヒドロキノンが析出してくる。その後、更に温度55〜60℃で6時間、撹拌下で反応した後、メタノール0.3gを加えてから反応混合液を室温まで冷却し、これを濾過することにより、純度98.8%(高速液体クロマトグラフ分析による)の3-モルホリノメチル-2,6-ジメチル-ヒドロキノンの粗結晶20.1gを得た。また、得られた結晶は、質量分析による分子量の確認及びプロトン核磁気共鳴分析により3-モルホリノメチル-2,6-ジメチル-ヒドロキノンであることを確認した。
【0026】
4)2,3,5-トリメチルヒドロキノン(TMHQ)の合成(第4工程)
500mL容量のSUS製オートクレーブに第3工程で得られた結晶 17.8g(0.075mol)を仕込み、これにメタノール 109.8g及びカーボン担持パラジウム触媒をDry換算で0.91g添加する。
添加終了後、温度を 120〜130℃に昇温し、水素圧 9〜10Kg/cm2で水素を供給しながら、撹拌下に9時間反応した。反応終了後、反応終了混合液を室温まで冷却後、濾過してカーボン担持パラジウム触媒を除去し、反応終了液を119.1g得た。反応終了液のTMHQ濃度は98.20%(高速液体クロマトグラフィー分析による)であった。
この反応終了液を蒸留して、メタノールとモルホリンを留去し、蒸留残渣液を得た。これにメチルイソブチルケトン11.4g を加え、温度100℃程度に加熱して溶解する。その後、これにトルエン17.1gを添加して、冷却し、析出した結晶を、濾過、乾燥し、純度99.4%(高速液体クロマトグラフィーによる)2,3,5-トリメチルヒドロキノン(TMHQ)の白色結晶7.1g(メトラーによる融点171.5℃)を得た。また、得られた結晶は、質量分析による分子量の確認及びプロトン核磁気共鳴分析により2,3,5-トリメチルヒドロキノンであることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,6-ジメチルフェノールを酸素酸化して2,6-ジメチル-P-ベンゾキノンを得る工程(第1工程)、
得られた2,6-ジメチル-P-ベンゾキノンを水素化して2,6-ジメチル-ヒドロキノンを得る工程(第2工程)、
ついで、得られた2,6-ジメチル-ヒドロキノンをアミノメチル化してマンニッヒ塩を得る工程(第3工程)、
更に、得られたマンニッヒ塩を水素化分解して2,3,5-トリメチルヒドロキノンを得る工程(第4工程)を順次行うことを特徴とする下記化学式1に示す2,3,5-トリメチルヒドロキノンの製造方法。
【化1】


(化学式1)
【請求項2】
第1工程が、有機溶媒中、銅化合物触媒の存在下に酸素含有ガスで酸化することを特徴とする請求項1記載の2,3,5-トリメチルヒドロキノンの製造方法。
【請求項3】
第2工程が、有機溶媒中、水素化触媒の存在下に加圧下に水素化反応することを特徴とする請求項1記載の2,3,5-トリメチルヒドロキノンの製造方法。
【請求項4】
第2工程で使用する2,6-ジメチル-P-ベンゾキノンが、酸化反応混合物から2量体を含む高沸点副生物が除去された粗生成物である請求項1又は3記載の2,3,5-トリメチルヒドロキノンの製造方法。
【請求項5】
第3工程が、芳香族炭化水素溶媒中、環状2級アミンとホルムアルデヒドを反応させてマンニッヒ塩を得ることを特徴とする請求項1又は4記載の2,3,5-トリメチルヒドロキノンの製造方法。
【請求項6】
第4工程が、有機溶媒中、水素化触媒の存在下に加圧下に水素化分解反応することを特徴とする請求項1記載の2,3,5-トリメチルヒドロキノンの製造方法。

【公開番号】特開2006−249036(P2006−249036A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70793(P2005−70793)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000243272)本州化学工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】