説明

2,7−ビスハロメチルフルオレンの製造方法

【課題】一般式(1)の2,7−ビスハロメチルフルオレンを高選択率で合成でき、再結晶という簡便な方法により高純度の上記フルオレンを単離、精製できる方法を提供する。
【解決手段】一般式(2)の9,9−ジアルキルフルオレンを、溶媒中、酸触媒の


[式中、R及びRは、水素原子又はC1−4アルキル基を示す。]存在下に、ホルムアルデヒド類及びハロゲン化水素と反応させて、一般式(1)の化合物を


[式中、R及びRは前記に同じ。Xはハロゲン原子を示す。]製造する方法であって、一般式(2)の化合物1モルに対してホルムアルデヒド類を5〜20モル使用し且つ反応を40〜80℃で行う、2,7−ビスハロメチルフルオレンの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,7−ビスハロメチルフルオレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオレン骨格を有する化合物は、化学反応によりフルオレン骨格を形成させて製造した例が殆どなく、専ら原油の精製により得られるフルオレンから製造されている。
【0003】
ハロフルオレンを重合させた化合物であるポリフルオレン化合物は、例えば、エレクトロルミネッセンス素子、液晶材料、光配向性膜等に広く利用されている(特許文献1、特許文献2及び特許文献3)。
【0004】
一般に、ポリフルオレン化合物は、フルオレン骨格を有する化合物からハロフルオレンを経て製造される。しかしながら、ハロフルオレンからポリフルオレン化合物に誘導する際には、高価でかつ廃棄物の問題が生じる遷移金属化合物を用いる必要がある。ここでハロフルオレンは、芳香環に直接ハロゲンが結合した化合物である。
【0005】
一方、ハロメチルフルオレンは、脂肪族の炭素原子にハロゲンが結合した化合物である。ハロメチルフルオレンは、ハロゲンが芳香環上ではなく、脂肪族炭素原子に結合しているので、各種の化学反応が容易に進行する。そのため、周知の基礎的な反応を用いることにより、ハロメチルフルオレン前駆体からハロメチルフルオレンを経由して容易に他の化合物へと誘導することができる。
【0006】
しかしながら、ハロメチルフルオレンの研究例は未だ少ないのが現状であり、僅かに非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4及び特許文献4に、ハロメチルフルオレンの合成方法が開示されているに過ぎない。ところが、非特許文献1〜3に記載されている合成法は反応工程数が多く、また非特許文献4に記載されている合成法はハロゲン化水素の連続的な吹き込みを必要とする等、いずれも工業化に耐え得るものではない。また、特許文献4の方法は、非特許文献1〜4に記載されている方法のような欠点を有しないものの、目的とする化合物の選択率が低く、その結果、目的化合物の収率も低いものとならざるを得ず、工業的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−302650
【特許文献2】特開2007−091934
【特許文献3】特開2007−073814
【特許文献4】WO2004−083194 A1
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Macromolecules,39巻,3494−3499頁,2006年
【非特許文献2】Macromolecules,36巻,3841−3847頁,2003年
【非特許文献3】Macromolecules,36巻,6970−6975頁,2003年
【非特許文献4】Macromolecules,35巻,7532−7534頁,2002年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、2,7−ジハロメチルフルオレンを工業的に有利に製造し得る新規な方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、下記一般式(2)で表される9,9−ジアルキルフルオレンから下記一般式(1)で表される2,7−ビスハロメチルフルオレン(以下、単に「化合物(1)」という場合がある)を製造するに当たり、特定の反応条件下で反応を行うことにより、目的とする化合物(1)を高選択率で合成でき、再結晶という簡便な方法により高純度の化合物(1)を反応系内から単離、精製することに成功した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0011】
本発明は、項1〜3に示す2,7−ジハロメチルフルオレンの製造方法を提供する。
項1.下記一般式(2)
【0012】
【化1】

【0013】
[式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はC1−4アルキル基を示す。]
で表される9,9−ジアルキルフルオレンを、溶媒中、酸触媒の存在下に、ホルムアルデヒド類及びハロゲン化水素と反応させることにより、下記一般式(1)
【0014】
【化2】

【0015】
[式中、R及びRは前記に同じ。Xはハロゲン原子を示す。]
で表される2,7−ビスハロメチルフルオレンを製造する方法であって、一般式(2)で表される9,9−ジアルキルフルオレン1モルに対して、ホルムアルデヒド類を5〜20モル使用し、前記反応を40〜80℃で行う、2,7−ビスハロメチルフルオレンの製造方法。
項2.ホルムアルデヒド類がパラホルムアルデヒドである、項1に記載の製造方法。
項3.反応を45〜55℃程度で行う、項1に記載の製造方法。
【0016】
本明細書において、R及びRで示されるC1−4アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル基等の直鎖状又は分枝鎖状のC1−4アルキル基が挙げられる。
【0017】
Xで示されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子等が挙げられる。
【0018】
一般式(1)で表される2,7−ビスハロメチルフルオレンは、上記一般式(2)で表される9,9−ジアルキルフルオレンを溶媒中、酸触媒の存在下に、ホルムアルデヒド類及びハロゲン化水素と反応させることにより製造される。
【0019】
該反応において用いられる溶媒は、具体的には1,4−ジオキサン、氷酢酸、プロピオン酸等を例示できる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用され得る。好ましい溶媒は1,4−ジオキサン及び氷酢酸であり、より好ましい溶媒は氷酢酸である。溶媒の使用量は、上記一般式(2)で表される9,9−ジアルキルフルオレンの通常2〜30倍容量、好ましくは15〜20倍容量であるが、これに限定されるものではない。
【0020】
上記反応で用いられるホルムアルデヒド類としては、具体的には、ホルムアルデヒドガス、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド水溶液、ホルムアルデヒドジエチルアセタール、トリオキサン等を例示できる。これらのホルムアルデヒド類は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。好ましいホルムアルデヒド類はパラホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド水溶液であり、より好ましいホルムアルデヒド類はパラホルムアルデヒドである。
【0021】
本発明では、ホルムアルデヒド類の使用量を、9,9−ジアルキルフルオレン1モル当たり、5〜20モル程度とすることを必須としている。ホルムアルデヒド類の使用量が前記範囲に該当する場合に限り、本願発明の効果が発現される。即ち、ホルムアルデヒド類の使用量が前記範囲を逸脱する場合には、目的とする化合物(1)を高選択率で合成することができず、その結果、再結晶という簡便な方法により高純度の化合物(1)を反応系内から単離、精製することが不可能になる。本発明では、ホルムアルデヒド類の使用量を、9,9−ジアルキルフルオレン1モル当たり、8〜15モル程度とするのが好ましい。
【0022】
本発明の反応において、ハロゲン化水素としては、具体的には塩酸、臭化水素酸、臭化水素酸酢酸溶液、沃化水素酸、塩化水素ガス、臭化水素ガス等を例示できる。これらのハロゲン化水素は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。好ましいハロゲン化水素は塩化水素ガス及び塩酸であり、より好ましいハロゲン化水素は塩酸である。ハロゲン化水素の使用量は、9,9−ジアルキルフルオレン1モル当たり、通常8〜20モル程度、好ましくは9〜15モル程度である。
【0023】
本発明の反応において使用される酸触媒は、具体的には、燐酸、硫酸、ポリ燐酸、ナフィオン(Nafion、 登録商標)等が例示される。これらの酸触媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。好ましい酸触媒は燐酸及び硫酸であり、より好ましい酸触媒は硫酸である。酸触媒の使用量は、9,9−ジアルキルフルオレン1モル当たり、通常5〜20モル程度、好ましくは8〜13モル程度である。
【0024】
本発明では、上記反応を40〜80℃で行うことが必須である。反応温度が前記範囲に該当する場合に限り、本願発明の効果が発現される。即ち、反応温度が前記範囲を逸脱する場合には、目的とする化合物(1)を高選択率で合成することができず、その結果、再結晶という簡便な方法により高純度の化合物(1)を反応系内から単離、精製することが不可能になる。本発明では、反応を45〜55℃程度で行うのが望ましい。
【0025】
本発明においては、(1)ホルムアルデヒド類の使用量を9,9−ジアルキルフルオレン1モル当たり、5〜20モル程度とすること及び(2)反応を40〜80℃で行うことが必須であり、上記(1)及び(2)の要件のいずれかを欠いた場合には、本発明の上記効果は到底発現されない。
【0026】
上記反応の反応時間は、反応温度等の反応条件により異なり一概には言えないが、通常10〜30時間程度、好ましくは15〜25時間程度、より好ましくは17〜23時間程度である。
【0027】
上記反応により、目的とする化合物(1)を高い選択率で製造することができる。そのため、単に再結晶を行うという極めて簡便な方法により高純度の化合物(1)を反応系内から容易に且つ簡便に単離、精製することができる。再結晶に用いる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶剤、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素溶剤又はこれらとベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤との混合溶剤、或いはこれらの溶剤の混合物等を挙げることができる。
【0028】
本発明の方法で製造される化合物(1)の具体例としては、例えば、2,7−ビスクロロメチルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジメチルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジエチルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジ−n−プロピルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジイソプロピルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジ−n−ブチルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジイソブチルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジ−sec−ブチルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジ−tert−ブチルフルオレン、2,7−ビスブロモメチルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジメチルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジエチルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジ−n−プロピルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジイソプロピルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジ−n−ブチルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジイソブチルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジ−sec−ブチルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジ−tert−ブチルフルオレン、2,7−ビスヨードメチルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジメチルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジエチルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジ−n−プロピルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジイソプロピルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジ−n−ブチルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジイソブチルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジ−sec−ブチルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジ−tert−ブチルフルオレンなどが挙げられる。
【0029】
本発明において、出発原料として用いられる上記一般式(2)で表される9,9−ジアルキルフルオレンは、例えば、フルオレンを塩基の存在下、非プロトン性極性溶媒中でアルキルハライドと反応させることにより製造される。
【0030】
ここで使用される非プロトン性極性溶媒としては、公知の非プロトン性極性溶媒を広く使用できる。具体的にはテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、1,4−ジオキサン等を例示できる。これらの非プロトン性極性溶媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用され得る。好ましい非プロトン性極性溶媒はジメチルスルホキシド及びN,N−ジメチルホルムアミドであり、より好ましい非プロトン性極性溶媒はN,N−ジメチルホルムアミドである。
【0031】
上記反応で使用される塩基としては、具体的には水素化ナトリウム等の水素化アルカリ金属、ナトリウムメトキシド、tert−ブトキシナトリウム、tert−ブトキシカリウム等のアルカリ金属アルコラート等を例示できる。これらの塩基は、1種単独で又は2種以上混合して使用され得る。好ましい塩基はtert−ブトキシナトリウム及びtert−ブトキシカリウムであり、より好ましい塩基はtert−ブトキシカリウムである。斯かる塩基の使用量は、フルオレン1モル当たり、通常2〜7モル程度、好ましくは3〜5モル程度である。
【0032】
上記反応で用いられるアルキルハライドとしては、具体的には、沃化メチル、沃化エチル、沃化n−プロピル、沃化イソプロピル、沃化n−ブチル、沃化イソブチル、沃化sec−ブチル、沃化tert−ブチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化n−プロピル、臭化イソプロピル、臭化n−ブチル、臭化イソブチル、臭化sec−ブチル、臭化tert−ブチル、塩化メチル、塩化エチル、塩化n−プロピル、塩化イソプロピル、塩化n−ブチル、塩化イソブチル、塩化sec−ブチル、塩化tert−ブチル等を例示できる。アルキルハライドの使用量は、フルオレン1モル当たり、通常2〜6モル程度、好ましくは3〜4モル程度である。
【0033】
この反応の温度は、アルキル化剤として用いるアルキルハライドの沸点が上限であるが、通常30〜50℃程度、好ましくは35〜45℃程度である。また、反応時間は、通常3〜40時間程度、好ましくは5〜35時間程度である。
【0034】
上記反応は不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。また、フルオレンの非プロトン性極性溶媒溶液中に塩基を投入した後に、アルキルハライドを投入するのが望ましい。

本発明で製造される化合物(1)は、ポリエステル及びポリエーテルの原料として有用なフルオレン骨格含有ジオール;ポリスルフィド及びポリスルホンの原料として有用なフルオレン骨格含有ジチオール;ポリアミド及びポリイミドの原料として有用なフルオレン骨格含有ジアミン;ポリアミド、ポリイミド、ポリチオアミド及びポリエステルの原料として有用なフルオレン骨格含有ジシアン;ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル及びポリオレフィンの原料として有用なフルオレン骨格含有ジアルデヒド等の製造原料として好適に使用され得る。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、化合物(1)を工業的に有利に製造し得る新規な方法を提供することができる。
【0036】
即ち、一般式(2)で表される9,9−ジアルキルフルオレンから化合物(1)を製造するに当たり、特定の反応条件下で反応を行うことにより、目的とする化合物(1)を高選択率で合成でき、再結晶という極めて簡便な方法により高純度の化合物(1)を反応系内から容易に単離し、精製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に参考例、実施例及び比較例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。なお、参考例及び実施例で得られた化合物の構造はH−NMR及びGC−MSにより決定した。
【0038】
H−NMRによる構造決定:
参考例及び実施例で得られた化合物の構造は、該化合物を重溶媒(重クロロホルム)に溶解し、H−NMRにより決定した。装置は、日本電子株式会社製の核磁気共鳴装置LA−500を用いた。
【0039】
GC−MSによる構造決定:
参考例及び実施例で得られた化合物の構造をGC−MSによる構造決定により決定した。GCMS装置は、島津製作所製のGC−2010+GCMS−QP2010 plusを用いた。測定条件は、次の通りである。カラム:Restec社製のRtx−5(内径0.25mm、膜厚0.25μm、長さ30m)、カラム温度:50℃〜300℃、昇温速度:10℃/分。
ガスクロマトグラフィーによる純度測定:
参考例及び実施例で得られた化合物の純度をガスクロマトグラフィーにより測定した。装置は、島津製作所製のGC−14Aを用いた。測定条件は、次の通りである。カラム:アジレント・テクノロジー社製のDB−5(内径0.53mm、膜厚1.5μm、長さ15m)、カラム温度:150℃〜280℃、昇温速度:5℃/分。
【0040】
参考例1
9,9−ジメチルフルオレンの合成
容量3リットルの四口フラスコに、フルオレン249.3g(1.50mol)、沃化メチル851.6g(6.00mol)及びN,N−ジメチルホルムアミド1200mlを入れて、窒素ガスを通じながら撹拌した。この溶液にtert−ブトキシカリウム505.0g(4.50mol)を9〜22℃において5時間要して添加した。35℃において22時間撹拌した後に、tert−ブトキシカリウム105.0g(0.94mol)を36℃において2時間要して添加した。36℃において2時間撹拌した後、この反応混合物を室温まで冷却した。反応液を大過剰の水道水に撹拌しながらパージし、濾過し、水洗により白色固体を得た。これをイソプロピルアルコールから再結晶化させると、白色の粉末としてガスクロマトグラフィー純度99.8%の9,9−ジメチルフルオレン253.9g(収率87.1%)が得られた。
【0041】
得られた化合物のH−NMRの解析データは以下の通りである。
H−NMR(CDCl,ppm):
1.5(s,6H),7.3(m,4H),7.4(dd,HH=7.5Hz,HH=1.5Hz,2H),7.7(dd,HH=8.0Hz,HH=1.0Hz,2H)。
【0042】
得られた化合物のGCMSのデータは以下の通りである。
194M(+)、179、165、152、139。
【0043】
実施例1
2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジメチルフルオレンの合成
容量100mlの四口フラスコに、9,9−ジメチルフルオレン3.0g(0.015mol)、パラホルムアルデヒド4.9g(0.15mol)、35%塩酸16.1g(0.15mol)及び酢酸60mlを入れて撹拌した。この懸濁物に98%硫酸15.5g(0.15mol)を滴下し、50℃において18時間撹拌した。この反応混合物を室温まで冷却し、トルエンで抽出した。このトルエン抽出液を水で洗浄し、3%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに水で洗浄してpHを4以上に調整した後に、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去すると白色の固体が得られ、これをイソプロピルアルコールから再結晶化させると、白色の粉末としてガスクロマトグラフィー純度98.4%の2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジメチルフルオレン2.4g(収率52.9%)が得られた。
【0044】
得られた化合物のH−NMRの解析データは以下の通りである。
H−NMR(CDCl,ppm)
1.5(s,6H),4.7(s,4H),7.4(dd,HH=8.0Hz,HH=1.5Hz,2H),7.4(s,2H),7.7(d,HH=8.0Hz,2H)。
【0045】
得られた化合物のGCMSのデータは以下の通りである。
292M(+)、290、275、255、240、220、205、191。
【0046】
実施例2
2,7−ビスクロロメチルフルオレンの合成
原料化合物にフルオレン66.5g(400mmol)を使用し、再結晶溶媒をトルエン−イソプロピルアルコール(1:3)としたこと以外は実施例1と同様にして、白色の粉末としてガスクロマトグラフィー純度98.4%の2,7−ビスクロロメチルフルオレン38.1g(収率36.2%)が得られた。
【0047】
得られた化合物のH−NMRの解析データは以下の通りである。
H−NMR(CDCl,ppm)
3.9(s,2H),4.7(s,4H),7.4(d,HH=9.5Hz,2H),7.6(s,2H),7.7(d,HH=7.5Hz,2H)。
【0048】
得られた化合物のGCMSのデータは以下の通りである。
262M(+)、227、192、178、165、152、139。
【0049】
比較例1
特許文献4の実施例6に記載された方法に従って、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジメチルフルオレンを合成することを試みた。即ち、容量300mlの四口フラスコに、9,9−ジメチルフルオレン2.0g(10mmol)、ポリ燐酸12.3g(126mmol)、37%ホルムアルデヒド水溶液1.59g(3.09mol)、酢酸14.7ml、35%塩酸15.2ml(173mmol)を入れて撹拌した。この四口フラスコ内の溶液をよく撹拌した後、シリコンオイルバスで115℃に加熱し、7時間反応させた。反応終了後、この反応混合物を室温まで冷却し、トルエンで抽出した。このトルエン抽出液を水で洗浄し、10%炭酸カリウム水溶液で洗浄し、さらに水で洗浄してpHを4以上に調整した後に、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去すると、黄白色の粘性物2.1gが得られた。ガスクロマトグラフィーによると目的物の含有率は24.6%であった。また、イソプロピルアルコールで処理しても、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジメチルフルオレンを結晶として取り出すことができなかった。
【0050】
比較例2
パラホルムアルデヒド使用量を9,9−ジアルキルフルオレン1モル当たり2.5モルとする以外は、実施例1と同様にして、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジメチルフルオレンの合成を試みた。即ち、容量100mlの四口フラスコに、9,9−ジメチルフルオレン3.0g(0.015mol)、パラホルムアルデヒド1.5g(0.046mol)、35%塩酸16.1g(0.15mol)及び酢酸60mlを入れて撹拌した。この懸濁物に98%硫酸15.5g(0.15mol)を滴下し、50℃において24時間撹拌した。この反応混合物を室温まで冷却し、トルエンで抽出した。このトルエン抽出液を水で洗浄し、3%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに水で洗浄してpHを4以上に調整した後に、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去すると、黄白色軟固体4.1gが得られた。ガスクロマトグラフィーによると目的物の含有率は70.5%であった。しかし、イソプロピルアルコールで処理しても粘土状の物体が得られただけで、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジメチルフルオレンを結晶として取り出すことができなかった。
【0051】
比較例3
反応温度を30℃、反応温度を36時間とする以外は、実施例1と同様にして、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジメチルフルオレンの合成を試みた。即ち、容量100mlの四口フラスコに、9,9−ジメチルフルオレン3.0g(0.015mol)、パラホルムアルデヒド4.9g(0.15mol)、35%塩酸16.1g(0.15mol)及び酢酸60mlを入れて撹拌した。この懸濁物に98%硫酸15.5g(0.15mol)を滴下し、30℃において36時間撹拌した。この反応混合物を室温まで冷却し、トルエンで抽出した。このトルエン抽出液を水で洗浄し、3%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに水で洗浄してpHを4以上に調整した後に、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去すると、黄白色の粘性物3.9gが得られた。ガスクロマトグラフィーによると目的物の含有率は31.6%であった。また、イソプロピルアルコールで処理しても、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジメチルフルオレンを結晶として取り出すことができなかった。
【0052】
比較例4
反応温度を80℃とする以外は、実施例1と同様にして、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジメチルフルオレンの合成を試みた。即ち、容量100mlの四口フラスコに、9,9−ジメチルフルオレン3.0g(0.015mol)、パラホルムアルデヒド4.9g(0.15mol)、35%塩酸16.1g(0.15mol)及び酢酸60mlを入れて撹拌した。この懸濁物に98%硫酸15.5g(0.15mol)を滴下し、80℃において90分間撹拌した。この反応混合物を室温まで冷却し、トルエンで抽出した。このトルエン抽出液を水で洗浄し、3%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに水で洗浄してpHを4以上に調整した後に、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去すると、黄白色の粘性物4.8gが得られた。ガスクロマトグラフィーによると目的物の含有率は71.7%であった。また、イソプロピルアルコールで処理しても、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジメチルフルオレンを結晶として取り出すことができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(2)
【化1】

[式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はC1−4アルキル基を示す。]
で表される9,9−ジアルキルフルオレンを、溶媒中、酸触媒の存在下に、ホルムアルデヒド類及びハロゲン化水素と反応させることにより、下記一般式(1)
【化2】

[式中、R及びRは前記に同じ。Xはハロゲン原子を示す。]
で表される2,7−ビスハロメチルフルオレンを製造する方法であって、
一般式(2)で表される9,9−ジアルキルフルオレン1モルに対して、ホルムアルデヒド類を5〜20モル使用し、
前記反応を40〜80℃で行う、
2,7−ビスハロメチルフルオレンの製造方法。
【請求項2】
ホルムアルデヒド類がパラホルムアルデヒドである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
反応を45〜55℃程度で行う、請求項1に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−195722(P2010−195722A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43451(P2009−43451)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000116817)旭化学工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】