説明

3α−ヒドロキシ−3β−メチル−5α−プレグナン−20−オン(ガナキソロン)の製造法

出願者らは、5α−プレグナン−3,20−ジオンを不活性溶媒中の有機金属メチル化剤と反応させ、次の構造式で示される化合物を生成する工程を含む、3α−ヒドロキシ−3β−メチル−5α−プレグナン−20−オン(ガナキソロン)の、立体選択的および位置選択的合成法を発見した。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多くの3α−ヒドロキシ−3β−置換−5α−プレグナン−20−オン類ステロイド誘導体は、in vitroにおいてGABA受容体塩化物イオノフォア複合体(GR複合体)の調節に有効であることが立証されており、ヒトCNS障害の動物モデルにおいて有用な治療効果を示す。その中でも特に、3α−ヒドロキシ−3β−メチル−5α−プレグナン−20−オン(ガナキソロン、GNX、1)は、GR複合体を刺激することが分かっており、in vivoで様々な有益な生理作用を示す。ガナキソロン1は、先進的な臨床試験でてんかんに関して試験中であり、他の多くのCNS障害にも有用と考えられる。ガナキソロンは、ヒトでの効果的な治療に必要な用量が多い(>1g/日)ため、効率的で低コストの製造法が求められている(Nohria and Giller, J. Am. Soc. Exp. Neurotherapeutics, (2007) 4: 102-105)。
【0002】
【化1】

【0003】
ガナキソロン合成の最も直接的な方法は、メチルグリニャールやメチルリチウムなどの有機金属メチル化剤による、5α−プレグナン−3,20−ジオン(ジオン2)のC3カルボニルへの位置選択的および立体選択的攻撃によるものである。メチルリチウムまたはメチルグリニャールを用いた5α−プレグナン−3,20−ジオンの直接メチル化によるガナキソロンの調製は、C3カルボニル基とC20カルボニル基の両方が炭素アニオンにより不可逆的に攻撃されて生成物の複合混合物が生じるため、不可能であった。
【0004】
【化2】

【0005】
ジオン2のメチル化による好ましくない生成物はガナキソロンと同じ物理的性質を持つため、多くの精製工程を避けるためには、ジオン2の有機金属メチル化反応によって得たガナキソロンに含まれる単一の不純物がいずれも10%より少なくなければならない。この精製工程はまた、有効収率を下げ、薬剤として純粋なガナキソロン(>0.1%の単一の不純物を含まない)を得るための製造コストを押し上げる。
【0006】
ガナキソロン1の標準的な合成法には、酸化の前に3α−ヒドロキシ−5β−プレグナン−20−オンのC20カルボニルを保護し、3位置に有機金属メチル化剤を反応させて3β−メチル基を導入し、次に、C20のケタールを加水分解する工程が含まれる(Hogenkampら, J. Med. Chem., (1997) 40: 61-72)。この方法の欠点は、全合成のために少なくとも2つの追加工程、始めのC20カルボニルの保護と、3β−メチル基導入後の保護基の除去が加わることである。
【0007】
より重要なのは、立体選択性が非常に乏しく、ほぼ等量の3α異性体と3β異性体が生じることである。これにより合成コストと複雑さが増し、工程の全収率が低下してしまう。
【0008】
ガナキソロン(1)の別の合成法は、米国特許第5,319,115号および文献(Heら, Zhongguo Xinyao Zazhi (2005), 14(8),1025-1026)に提示されており、そこでは、ジオン2を、テトラヒドロフラン中でコーリーの試薬(トリメチルスルホキソニウムヨージド)およびカリウムt−ブトキシドと反応させ、熱力学的に制御された可逆反応(Johnson et al., J. Am. Chem. Soc., (1973), 95 (22), 7424-7431)を経て、C3に、より安定なエポキシド異性体(1−((2’R,5S,8R,9S,10S,13S,14S,17S)−10,13−ジメチルヘキサデカヒドロスピロ[シクロペンタ[a]フェナントレン−3,2’−オキシラン]−17−イル)エタノン)を生じさせるものである。このエポキシドを様々な条件下で還元し、例えば、ヨウ化カリウムでエポキシドを求核的に開裂し、得られたヨウ化物を水素化還元してガナキソロン1を得る。この合成法では、中間体エポキシドの単離と精製が必要であり、更に、多くの操作や、費用のかかる水素化工程も必要で、その全てによってコストがかさみ、工程が長くなってしまう。コーリー試薬をジオン2と反応させた後、エポキシドを還元すると、除去の困難な副生物の17−ヒドロキシガナキソロン8が生じる。コーリー試薬を用いた径路で得られる精製ガナキソロンには、しばしば製造レベルで、>0.1%(HPLCによる)の17−ヒドロキシガナキソロンが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,319,115号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Nohria and Giller, J. Am. Soc. Exp. Neurotherapeutics, (2007) 4: 102-105
【非特許文献2】Hogenkampら, J. Med. Chem., (1997) 40: 61-72
【非特許文献3】Heら, Zhongguo Xinyao Zazhi (2005), 14(8),1025-1026
【非特許文献4】Johnson et al., J. Am. Chem. Soc., (1973), 95 (22), 7424-7431
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高純度のガナキソロンを製造する、効率が良くて費用効果の高いガナキソロン合成法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、5α−プレグナン−3,20−ジオンからガナキソロンを製造するための、簡単で費用効果の高い方法を提示する。
【発明の効果】
【0013】
発明者らは、驚くべきことに、予想以上に良好な位置選択性および立体選択性の両方で、3,20−ジオン(2)への有機金属付加を行えることを発見した。発明者らは、試薬と反応条件を適切に選択することで、C20カルボニルでの反応を起こさず、または僅かしか起こさずに、ジオン2のC3カルボニル位置に位置選択的反応を行えることを発見した。発明者らは更に、試薬と条件を適切に選択すると、メチル化剤のエクアトリアル攻撃によって高い立体選択性が得られ、所望のβ−メチル異性体ガナキソロンができることを立証した。つまり、第1の態様において、本発明は、5α−プレグナン−3,20−ジオン(ジオン2)を不活性溶媒中の有機金属メチル化剤と反応させて、次の構造式で示される化合物を生成する工程を含む、ガナキソロンの製造法を提示する。
【0014】
【化3】


(ガナキソロン)
このとき、ガナキソロンの純度は、HPLCによる純度で80%より大きい。
【0015】
本発明には、ガナキソロンを高い収率で、また反応不純物を実質的に含まずに生成するという長所もある。有機金属メチル化剤を適切に使用すると、高い位置選択的および立体選択的制御を行いつつ、予想以上に高い化学的収率でこの変換を行うことができる。本発明を用いれば、C20カルボニルの保護が無用で、いかなる中間体も分離する必要がなく、全変換を1つの化学工程で行える。
【0016】
本発明は更に、5α−プレグナン−3,20−ジオンを不活性溶媒中の有機金属メチル化剤と反応させて、HPLCによる純度が少なくとも99.5%であるガナキソロンを生成する工程を含む、ガナキソロンの製造法を提示する。いくつかの実施の形態において、精製工程を1回行った後に得られるガナキソロンに含まれる、次の構造で示される反応不純物のHPLCの面積は、いずれも0.1%より少ない。
【0017】
【化4】


または
【化5】


または
【化6】


または
【化7】


または
【化8】


または
【化9】

【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ジオン2の有機金属付加から生じる可能性のある生成物を示す図であり、ジオン2のC3ケトンの直接メチル化によってガナキソロンを調製する以前の方法では、ガナキソロンと、ここに示すような様々な反応不純物が生じていたことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[専門用語]
本発明を詳細に述べる前に、文中で用いられるいくつかの用語の定義を行うことは有用であろう。本発明の化合物は標準命名法を用いて記述する。別に定義のない限り、文中で用いられている全ての技術および科学用語は、本発明の属する技術の当業者が一般的に理解しているものと同じ意味を持つ。
【0020】
用語“a”および“an”は、量の限定を示すものではなく、言及されている項目が少なくとも1つ存在することを意味する。用語“or”は“および/または”を意味する。用語“含む(comprising)”、“持つ(having)”、“含む(including)”、および“含む(containing)”は、非制限的用語(即ち、“〜を含むが、これに限定されない(including, but not limited to)”を意味する)と解釈されるべきである。値の範囲が挙げられているものは、文中に別に示されていない限り、その範囲内にある個々のそれぞれの値を個別に示すための略記法として使用するだけであり、個々のそれぞれの値は、文中で個別に挙げられているように本明細書に含まれている。全ての範囲の終点はその範囲に含まれ、独立して結合可能である。本件に記載の全ての方法は、文中に別に示されていない限り、または文脈により別の方法で明らかに否定されていない限り、適当な順序で行うことができる。一部および全ての実施例の使用、または例示的な語(例えば、“など(such as)”)は、本発明をより明らかに示すためのもので、別に主張されていない限り、本発明の範囲に制限を与えるものではない。明細書中の言葉は、請求項に挙げられていない要素が、文中で用いられているように、本発明の実施において必須であることを指していると解釈すべきではない。別に定義のない限り、文中で用いられている技術および科学用語は、本発明の属する技術の当業者が一般的に理解しているものと同じ意味を持つ。
【0021】
“アルコキシ”は、酸素橋(−O−)を経て結合した、示されている数の炭素原子を含む、先に定義したアルキル基を指す。“低級アルコキシ”は、一般に1個から約6個の炭素原子を含み、いくつかの望ましい実施の形態では、1個から約3個の炭素原子を含む。“塩錯体(Ate Complex)”は、ルイス酸と塩基との反応から生成した塩であり、塩錯体中の中心原子の価数は大きくなる。塩錯体の例としては、(CHFeLiおよび(CHFeMgClが挙げられる。
【0022】
本件で用いる“ハロゲン化物”とは、塩化物、臭化物、またはヨウ化物である。
【0023】
本件で用いるHPLCは、実施例の項に記載の方法で屈折率検出を利用した高速液体クロマトグラフィーである。
【0024】
百分率純度(%純度)は、ガナキソロンのHPLCピークの面積を、ガナキソロンのHPLCピークとそれぞれの反応不純物のHPLCピークとの面積の和で割り、この被除数(dividend)に100を乗じて得られる、面積百分率を指す。
【0025】
“百分率収率または単離収率(%収率)”は、単離した生成物の重さを、ガナキソロンの分子量で割り、反応に使用した出発物質のモル数で割ったものである。
【0026】
“反応不純物”は、工程に関連する不純物(副生物)、例えば、全ての残留出発物質、残留中間体、およびHPLCで検出されるガナキソロン以外の反応生成物である。FDAでは、用語“工程関連不純物”を、製造工程に由来する不純物を記述するために使用する。
【0027】
“位置選択的”とは、図1に識別されているC20付加物6の生成が10%より少なくなるような、5α−プレグナン−3,20−ジオンとの全ての直接有機金属メチル化反応である。
【0028】
“立体選択的”とは、図1の望ましくないエピマー副生物3の生成が10%より少なくなるような、5α−プレグナン−3,20−ジオンへの全ての直接有機金属メチル化反応である。
【0029】
移行句“を含む(comprising)”、“基本的に〜から成る(consisting essentially of)”、および“〜から成る(consisting of)”は、現行特許法でこれらの語句に認められている意味を持つ。移行句のいずれかを用いて主張されている全ての実施の形態は、別の移行句を用いても主張できる。例えば、移行句として“〜を含む”を用いて主張されている実施の形態には、“基本的に〜から成る”または“〜から成る”の移行句を用いて主張されている実施の形態も含まれ、またその逆も言える。
【0030】
[化学的記述]
既存のガナキソロン合成法に伴う問題点を考えた場合、最も費用効果の高いガナキソロン製造法は、ジオン2のC3ケトンの直接メチル化によるものである。可逆的な熱力学過程を経由する、コーリー試薬でのC3の立体選択的および位置選択的攻撃が、ジオン2への有機金属試薬の不可逆的直接付加に応用できるとは予想されなかったであろう。この反応からは生成物の混合物ができると予想される。この予想は実施例の項の実施例1から生じたもので、ジオン2をテトラヒドロフラン中でメチルリチウムと反応させると生成物の複合混合物が得られ(図1参照)、この混合物には所望する生成物のガナキソロンが約11%しか含まれない。工程関連不純物7は、工程関連不純物4および5を、C21ヒドロキシ基の脱水を起こすことのできる酸性環境に曝すと生じる可能性のあるオレフィン脱水生成物を示したものである。工程関連不純物9は、酸を加えて構造6からC21ヒドロキシ基が脱水すると生じる可能性のあるオレフィン位置を示している。
【0031】
発明者らは、ガナキソロンを調製するための、単一工程の位置選択的および立体選択的 ガナキソロン合成法を発見した。この方法の出発物質は5α−プレグナン−3,20−ジオンであって、その効率的な費用効果の高い合成法は既知である。不活性溶媒中の望ましい有機金属メチル化試薬を、5α−プレグナン−3,20−ジオンと反応させると、単離可能な中間体を生じることなく、1つの化学工程で対応するガナキソロンが得られる。望ましい有機金属メチル化剤は、純度が高く性質の明確な物質、またはその場で発生させた有機金属種の混合物である。反応はどのような不活性溶媒(または、不活性溶媒の組み合わせ)中で行っても良いが、最も望ましくは、テトラヒドロフラン、グリム、t−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチルエーテルなどのエーテル溶媒中で行う。ハロゲン化リチウムなどの無機塩を反応混合物に加えることも有益であり、こうすると反応収率が更に向上し、反応物の粘度が低下して、不活性溶媒を減らすことができ、また反応容器内のバッチサイズを大きくすることができる。一般に、反応の位置選択性および立体選択性は、溶媒、温度、有機金属メチル化試薬の組成に影響される。
【0032】
ある実施の形態において、本発明には、5α−プレグナン−3,20−ジオンを不活性溶媒中の有機金属メチル化剤と反応させる工程を含む、ガナキソロンの製造法が含まれる。いくつかの実施の形態において、ガナキソロンの%収率は、少なくとも45%、少なくとも55%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%収率である。いくつかの実施の形態において、3α−ヒドロキシ−3β−メチル−5α−プレグナン−20−オン生成物の純度は、HPLCによる面積で、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%である。いくつかの実施の形態において、HPLCで求め、全反応生成物に対する百分率で示した、図1の反応不純物3から反応不純物8のそれぞれの量は、20%未満(Not More Than:NMT)、10%未満、5%未満、2%未満、または1%未満である。不純物の収率は、HPLCの面積で、それぞれ2%未満が望ましく、より望ましくはそれぞれ1%未満、更により望ましくは0.1%未満である。更に、不純物5および不純物6の収率が共に1%未満であることが望ましい。
【0033】
ある実施の形態において、有機金属メチル化剤は、2から5当量のメチルマグネシウムハロゲン化物またはメチルリチウムを、不活性溶媒系中の無水塩化第二鉄(FeCl)(Reetz, M.ら, Tetrahedron Lett.,(1192)33(46):6963-6966 および Reetz, M.T.ら, J. Chem. Soc., Chem. Comm.,(1993)328-330.)、または無水FeCl(Kauffmann, T.ら, Chem. Ber. (1992)125:163-169)に加えて発生させる。こうすると、化学量論に従っていくつもの異なるメチル化試薬が生じ、特に、試薬の生成にメチルマグネシウムハロゲン化物またはメチルリチウムのどちらを(あるいは、組み合わせて)用いるかによって、MeFeCl、MeFe、MeFe−Y+、およびMeFe(2−)2Y+(式中、Yは、Liおよび/またはMgX(X=Cl、Br、またはI))が生じる。これらの試薬の性質は、有機金属試剤を塩化第二鉄溶液に加える前または後に、塩化リチウムなどの無機塩を反応物に加えることで、有利なように変えることができる。
【0034】
別の実施の形態では、0から3当量の塩化リチウム(FeClに対して)を含む無水塩化第二鉄のテトラヒドロフラン溶液に、3〜4当量のメチルマグネシウムハロゲン化物を加えて、鉄−メチル化錯体を発生させる。1当量のメチルマグネシウムハロゲン化物は、FeClをFeClに還元する。4当量のメチルマグネシウムハロゲン化物を用いる場合(FeClに対して)、試薬や対イオンのより複雑な混合物がメチル化剤であることも可能であるが、メチル化剤は、恐らく錯体(MeFe−MgX+)である。有機金属メチル化剤の発生に最適な反応温度は−40℃と35℃の間である。
【0035】
本発明の別の望ましい実施の形態において、有機金属メチル化剤は、0.5から2当量の塩化第二鉄(ジオン2に対して)、3〜4当量のメチルマグネシウム塩化物(FeClに対して)を、0〜2当量のLiCl(FeClに対して)のテトラヒドロフラン溶液に加え、温度を約−15℃以下に保って発生させる。
【0036】
本発明の別の望ましい実施の形態において、有機金属メチル化剤は、約−15℃以下の温度で、無水塩化第二鉄のテトラヒドロフラン溶液/懸濁液に、3当量のメチルマグネシウムハロゲン化物またはメチルリチウムを加えて発生させる。いくつかの実施の形態では、反応が終了するまで、反応温度を約−35℃から約−15℃に保つ。メチル化剤は恐らく錯体(MeFe)であるが、より複雑な鉄種の混合物であっても良い。ジオン2との最適反応温度は約−25℃と約40℃の間である。
【0037】
別の実施の形態において、有機金属メチル化剤は、加えられる有機金属試薬の当量の最大数が、最初のチタン試薬中のハロゲンの数を超えないという条件で、1から4当量のメチルマグネシウムハロゲン化物またはメチルリチウムを、チタン試薬(TiXYZT 式中、X、Y、Z、およびTは、同じまたは異なっており、ハロゲンまたはアルコキシである)に加えて発生させる。それに続くジオン2との反応は、不活性溶媒中、−40℃と70℃の間の反応温度で行う。
【0038】
いくつかの実施の形態において、ガナキソロンの合成法には、約2から約4当量のメチルマグネシウムハロゲン化物またはメチルリチウムを、無水ハロゲン化第二鉄または無水ハロゲン化第一鉄の有機溶媒溶液に加えることにより、有機金属メチル化剤を生成する工程が更に含まれる。
【0039】
いくつかの実施の形態において、ガナキソロンの合成法には、3〜4当量のメチルマグネシウム塩化物(FeClに対して)を不活性溶媒に加える前に、約0.1から約4当量の塩化リチウム(FeClに対して)を不活性溶媒に加える工程が更に含まれる。
【0040】
いくつかの実施の形態において、ガナキソロンの合成法には、約1当量のメチルマグネシウムハロゲン化物またはメチルリチウム(チタンに対して)を、トリ(C〜Cアルコキシ)チタン塩化物の有機溶媒溶液に加えることにより、有機金属メチル化剤を発生させる工程が更に含まれる。
【0041】
いくつかの実施の形態において、有機金属メチル化剤は、ジメチル鉄(MeFe)、メチルトリエトキシチタン、メチルクロロジエトキシチタン((CH)Cl(CHCHO)Ti)、メチルトリクロロチタン(CHClTi)、テトラメチルチタン((CHTi)、ジメチルジクロロチタン((CHClTi)、トリメチルクロロチタン((CHClTi)、またはメチル鉄塩化物(CHFeCl)である。
【0042】
別の実施の形態において、有機金属メチル化剤は、(CHFeアニオンと、カチオンとしてリチウムまたはMgX(式中、Xはハロゲン化物)のいずれかとを含む、“塩錯体”である。
【0043】
いくつかの実施の形態において、ガナキソロンの合成法には、約1当量のメチルマグネシウムハロゲン化物またはメチルリチウムを、無水ジ(C〜Cアルコキシ)チタン二塩化物の有機溶媒溶液に加えることにより、有機金属メチル化剤を発生させる工程が更に含まれる。
【0044】
いくつかの実施の形態において、3α−ヒドロキシ−3β−メチル−5α−プレグナン−20−オンの合成法には、約1から約4当量のメチルマグネシウムハロゲン化物またはメチルリチウムを、TiClの有機溶媒溶液に加えてメチル化剤を生成する工程が更に含まれる。
【0045】
本発明の別の望ましい実施の形態では、0.75から4モル当量の鉄有機金属メチル化剤(ジオン2に対して)をジオン2と不活性溶媒中で反応させる。
【0046】
本発明の別の望ましい実施の形態では、粗生成物を熱酢酸エチル中で撹拌して効果的に反応不純物を除くことにより、粗製ガナキソロンを精製する。
【0047】
実施例の項の表1に、様々な反応条件と様々な有機金属試薬の化学量論的量とをまとめた。ジオン2のガナキソロンへの有用な変換は、様々な反応条件下、様々な有機金属試薬を用いて行うことができる。表2に、粗製ガナキソロンの精製に関するパラメータの最適化についてまとめた。
【実施例】
【0048】
<分析法>
[質量分析]
質量スペクトルは、Thermo Finnigan LCQ−Deca質量検出器を取り付けた、HP 1100 LC 分離モジュールから成るLC/MS装置で得た。イオン源はESI+/MSである。LC条件を以下に示す。
カラム:Waters Sunfire C18、4.6(ID)×250(L)mm、5μm
移動相:ACN/MeOH/HO=65/5/30(アイソクラチック)
ランタイム:40分
流速:1ml/分
カラム温度:周囲温度
検出器:RI
検出器温度:40℃
注入量:50μl
【0049】
[HPLC]
HPLC分析は、日立L−2000シリーズ、または、Waters 2414 屈折率(RI)検出器を取り付けた Waters 2695分離モジュールで行った。条件を以下に示す。
カラム:Waters Sunfire C18、4.6(ID)×250(L)mm、5μm
移動相:ACN/MeOH/HO=65/5/30(アイソクラチック)
保持時間:40分
流速:1ml/分
温度:周囲温度
検出器温度:40℃
注入量:50μl
注入試料濃度は、メタノール中0.1から1mg/mlである。
【0050】
[NMR分光法]
NMRスペクトルは、CDClまたは他の重水素化溶媒中、Bruker Avance 400 または Oxford 300 NMRスペクトロメーターで得た。
【0051】
[純度]
粗製および精製ガナキソロンの純度は、HPLC分析により、それぞれの反応不純物についての面積百分率と、所望の生成物に対する相対保持時間(relative Retention Time:RRT)で表す。%収率は、単離収率として表す。
【0052】
<実施例1>
窒素気流中、乾いた250mlの3つ口丸底フラスコに、無水テトラヒドロフラン(190g)と5α−プレグナン−3,20−ジオン(1.0g、3.16mmol)を入れ、透明溶液とする。次に、フラスコを−30℃(内部温度)まで冷却し、この温度で、メチルリチウムのジエトキシエタン溶液(3M、1.1ml、3.3mmol)を注射器から加える。窒素気流中、−25℃から−20℃で1時間、反応物を撹拌する。一部を取って3N HClで反応を止め、酢酸エチルで抽出する。有機層を3N NaOHと水で洗う。溶媒を除くと白色固体が得られる。これをメタノールに溶解し、HPLCで分析する(表1、項目1)。
【0053】
<実施例2>
良くかき混ぜた5α−プレグナン−3,20−ジオン(1.9g、6mmol)の懸濁液に、−10℃に冷却したtert−ブチルメチルエーテル(無水、30ml)を滴下して加える。反応混合物を0℃と10℃の間で4時間保った後、10〜15℃で12時間保つ。反応混合物に100mlの2N HClを加えて反応を止め、生成物を200mlの酢酸エチルで抽出する。有機層を2N NaOHと塩水で洗い、溶媒を減圧留去すると、30.1%のガナキソロン1(HPLC)を、0.99%の開始物質の5α−プレグナン−3,20−ジオン2と共に含む、生成物の複合混合物が得られる(表1、項目2)。
【0054】
<実施例3>
0℃に冷やした、チタンテトラエトキシド(2.42g、10.6mmol)のテトラヒドロフラン(無水、30ml)溶液に、四塩化チタン(350μl、3.2mmol)を滴下して加える。0℃で20分間撹拌後、温度を5℃以下に保ちながら、メチルマグネシウム塩化物のテトラヒドロフラン溶液(3M、4.3ml、12.9mmol)を滴下して加える。5℃で更に20分間撹拌後、5α−プレグナン−3,20−ジオン(2.53g、8mmol)を一度に加えた。反応物を40℃に温め、4時間撹拌する。20mlのメタノールで反応混合物の反応を止め、溶媒を減圧留去する。反応混合物を100mlの3N HClと100mlの酢酸エチルの間で分配する。有機層を1N 水酸化ナトリウムと塩水で洗い、溶媒を減圧留去すると、ガナキソロンの純度75.9%(HPLCによる)の白色固体として、粗製ガナキソロンが得られる(表1、項目3)。
【0055】
<実施例4>
塩化第二鉄(無水、2.14g、13.2mmol)のテトラヒドロフラン(無水、40ml)溶液を−50℃まで冷却する。この混合物に、内部温度を−40℃以下に保ちながら、テトラヒドロフランに加えたメチルマグネシウム塩化物(3M、17.6ml、52.8mmol)を滴下して加える。−40℃で10分間置いた後、撹拌しながら、5α−プレグナン−3,20−ジオン(3.48g、11mmol)を一度に加える。30分かけて温度を−20℃まで上げ、2時間撹拌する。100mlの2N HClで反応混合物の反応を止め、生成物を100mlの酢酸エチルで抽出する。有機層を2N NaOHと塩水で洗い、溶媒を減圧留去すると、粗製ガナキソロン(HPLCによる純度は80.2%)が得られる(表1、項目4)。
【0056】
<実施例5>
塩化第二鉄(無水、1.63g、10.06mmol)をテトラヒドロフラン(無水、35ml)に加えた混合物を、窒素気流中、−50℃まで冷却する。塩化第二鉄混合物に、温度を−40℃以下に保ちながら、ジエトキシメタンに加えたメチルリチウム(3M、3.4ml、10.2mmol)を加える。この添加の完了後、内部温度を−40℃以下に保ちながら、メチルマグネシウム塩化物のテトラヒドロフラン溶液(3M、10.1ml、30.18mmol)を加える。−40℃で10分置いた後、撹拌しながら5α−プレグナン−3,20−ジオン(2.84g、9mmol)を一度に加える。温度を−20℃まで上げ、3.5時間撹拌する。3mlの酢酸を加えて反応を止め、テトラヒドロフランを減圧留去した。残分を100mlの3N HClと200mlの酢酸エチルの間で分配する。有機層を1N水酸化ナトリウムと塩水で洗い、溶媒を減圧留去すると、粗製ガナキソロン(HPLCによる純度94.8%)が得られる(表1、項目5)。
【0057】
<実施例6>
反応フラスコに無水塩化リチウムのテトラヒドロフラン溶液(0.5M、100ml、50mmol)を入れる。反応混合物を0℃まで冷やし、温度を10℃以下に保ちながら、無水塩化第二鉄(5.61g、34.6mmol)を少しずつ加える。得られた淡緑色の溶液を−35℃まで冷却し、温度を−30℃以下に保ちながら、メチルマグネシウム塩化物のテトラヒドロフラン溶液(3M、47ml、141mmol)を加える。添加完了後、反応混合物を−35℃まで冷却し、温度を−25℃以下に保って撹拌しながら、5α−プレグナン−3,20−ジオン(10g、31.65mmol)を加える。反応物を−20℃に温まるまで置き、−18℃から−22℃で3時間撹拌する。この時点で、HPLCによると、出発物質が0.96%、ガナキソロンが94.46%であった(表1、項目6)。温度を25℃以下に保ちながら、225mlの3N HClをゆっくりと加えて反応を止める。添加完了後、得られたガナキソロンの懸濁液を、窒素雰囲気中で一晩、粒状化させる。反応物を濾過し、濾過ケークを順に、50mlの20%THF/3N HCl、50mlの3N HCl、50mlの水(×2)で洗う。濾過ケークを減圧オーブン中70℃で乾燥すると、純度99%のガナキソロン1が白色固体として得られる(9.54g、収率91%)。
【0058】
<実施例7>
テトラヒドロフラン(無水、35ml)を10℃まで冷やし、907mg(21.4mmol)の塩化リチウム(無水)を一度に加える。混合物を10分間混合すると透明溶液となる。この混合物に塩化第二鉄(無水、1.62g、10mmol)を一度に加え、更に5分間撹拌する。次に、反応混合物を−35℃まで冷却し、内部温度を−35℃と−30℃の間に保ちながら、テトラヒドロフランに加えたメチルマグネシウム塩化物(3M、13.3ml、40mmol)を滴下して加える。添加完了後、−30℃で10分間撹拌を続け、撹拌しながら、5α−プレグナン−3,20−ジオン2(2.85g、9mmol)を一度に加える。内部温度が−20℃に上がるまで置き、−15℃と−20℃の間で2時間保つ。一部をHPLC分析したところ、出発物質が1.2%、ガナキソロンが95.3%であった(表1、項目7)。
【0059】
<実施例8>
10℃で、塩化リチウム(1.43g、33.8mmol)をテトラヒドロフラン(無水、40ml)に加え、溶液となるまで撹拌する。塩化第二鉄(無水、1.63g、10.06mmol)を加えて5分間撹拌する。次に、反応混合物を−35℃まで冷却し、内部温度を−35℃と−25℃の間に保ちながら、メチルマグネシウム塩化物のテトラヒドロフラン溶液(3M、13.4ml、40.24mmol)を加える。添加後、−30℃で10分間撹拌を続け、撹拌しながら、5α−プレグナン−3,20−ジオン(3.0g、9.5mmol)を一度に加える。内部温度が−20℃に上がるまで置き、−15℃と−20℃の間で2時間撹拌する。一部をHPLC分析したところ、出発物質が1.47%、ガナキソロンが94.25%であった(表1、項目8)。温度を−10℃以下に保ちながら、2.4ml(42mmol)の酢酸をゆっくりと加えて反応を止める。添加完了後、激しく撹拌しながら、反応混合物が室温に温まるまで置く。次に、テトラヒドロフランを減圧留去し、得られた残分を3N HClと酢酸エチルの間で分配する。有機層を2N NaOHと塩水で洗い、溶媒を減圧留去すると、3.5gの粗製ガナキソロン(HPLCで純度98%)ができる。
【0060】
<実施例9>
乾いた500mlの3つ口丸底フラスコに、窒素気流中、THF(無水、190g)と、LiCl(無水、4.2g、0.100mol)と、FeCl(無水、10.8g、0.066mol)を入れる。内部温度を0℃と15℃の間に保ちながら、テトラヒドロフランに加えたMeMgCl(3M、84.4ml、0.253mol)を加える。添加完了後、5α−プレグナン−3,20−ジオン(20g、0.0633mol)を一度に加え、得られた混合物を、N気流中、0℃と15℃の間で撹拌する。次のように、HPLCで反応をモニタする。一部を取って3N HClで反応を止め、酢酸エチルで抽出する。有機層を3N NaOHと水で洗う。溶媒を除くと白色固体が得られ、これをメタノールに溶解してHPLCで分析する(表1、項目9)。
【0061】
<実施例10>
乾いた500mlの3つ口丸底フラスコに、THF(無水、80g)とLiCl(無水、2.12g、50mmol)を入れる。フラスコを−10℃まで冷却し、FeCl(無水、5.63g、34.8mmol)を加える。窒素気流下中、混合物を−35℃まで冷却する。添加の間、内部温度を−27℃と−35℃の間に保ちながら、MeMgClのテトラヒドロフラン溶液(3M、58ml、174mmol)をゆっくりと加える。添加後、5α−プレグナン−3,20−ジオン(10g、31.6mmol)を一度に加え、得られた混合物を、窒素気流中、−25℃と−20℃の間で撹拌する。次のように、HPLCで反応をモニタする。一部を取って3N HClで反応を止め、酢酸エチルで抽出する。有機層を3N NaOHと水で洗い、蒸発乾固する。白色の残分をメタノールに溶解してHPLCで分析する(表1、項目10)。
【0062】
<実施例11>
乾いた500mlの3つ口丸底フラスコに、THF(無水、120g)とLiCl(無水、2.12g、50mmol)を入れる。フラスコを−10℃まで冷却し、FeCl(無水、1.28g、7.9mmol)を加えた。窒素気流中、混合物を−35℃まで冷却した。添加の間、内部温度を−27℃と−35℃の間に保ちながら、MeMgClのテトラヒドロフラン溶液(3M、13.3ml、39.9mmol)をゆっくりと加えた。添加後、5α−プレグナン−3,20−ジオン(10g、31.6mmol)を一度に加え、得られた混合物を、窒素気流中、−25℃と−20℃の間で撹拌した。次のように、HPLCで反応をモニタした。一部を取って3N HClで反応を止め、酢酸エチルで抽出した。有機層を3N NaOHと水で洗い、蒸発乾固した。白色の残分をメタノールに溶解してHPLCで分析した(表1、項目11)。
【0063】
【表1】

【0064】
<実施例12A>
パージした50リットルのHastelloy反応器に、THF(無水、9.65kg)とLiCl(無水、0.21kg)を入れる。N気流中で混合物を撹拌し、1時間かけて−10℃まで冷却する。撹拌しながら、反応器にFeCl(無水、0.515kg)を加え、反応混合物を−35℃まで冷却する。撹拌し、内部温度を目標の−35℃に保ちながら、テトラヒドロフランに加えたMeMgCl(3.0M、4.04kg)をゆっくりと反応器に加える。添加完了後、反応物を−35℃で1時間撹拌する。内部温度を約−35℃に保ちながら、5α−プレグナン−3,20−ジオン(1.00kg)を反応器に加える。添加後、反応物を約1時間の間に−21℃まで暖め、同温度で1時間撹拌する。氷酢酸(3.36kg)をゆっくりと反応器に加え(1時間)、反応物を約25℃まで温める(1時間)。ジャケット温度を35℃に設定して減圧蒸留を行い、最終反応物体積が7.8リットルとなるまでTHFを除く。残分を約0℃まで冷した後、内部温度を25℃以下に保ちながら、3N HCl(13.86kg)をゆっくりと加える。反応混合物を25℃で6時間撹拌する。濾過して固体を集め、生成物ケークを25%THF/水(w/w、4.89kg)で1回、水(5.0kg)で4回洗った後、最後に25%THF/水(w/w、4.86kg)で洗う。ウェットケークを減圧下50℃で乾燥すると、HPLCによる純度が95.5%の粗製ガナキソロン(0.983kg)が得られる(表2、項目1)。
【0065】
<実施例12B>
撹拌機と、500mlの目盛り付き添加漏斗と、低温温度計とを取り付けた2リットルの3つ口丸底フラスコに、窒素気流中で無水テトラヒドロフラン(THF)(950g)を入れる。フラスコを冷浴中で冷やし、約0℃(内部温度)になったら塩化リチウム(無水、21.2g、0.5001mol)を一度に加える。混合物を撹拌しながら−10℃まで冷却し、塩化第二鉄(無水、51.3g、0.3165mol)を一度に加える。混合物を−30℃まで冷却しながら、撹拌して固体を溶解する。内部温度を−30℃と−25℃の間に保ちながら、テトラヒドロフランに加えたメチルマグネシウム塩化物(3M、394.2g、1.171mol)をゆっくりと添加漏斗から加える。5α−プレグナン−3,20−ジオン(100g、0.3165mol)を一度に加え、反応終了まで(5時間)(HPLCによる面積<3%)、窒素気流中、反応物を−25℃と−20℃の間で撹拌する。
【0066】
反応終了後、酢酸(320ml)を加える。溶液となるまで混合物を撹拌する。THFを減圧留去してスラリー(1016g)とし、これを3N HCl(1250ml)中で6時間撹拌する。得られた懸濁液を氷水浴中で2時間冷却し、減圧濾過する。ウェットケークを、20%THF/水の冷溶液(v/v、100ml)と水(200ml×3)で洗うと、湿った白色固体(144g)として、HPLCによる純度が97.33%の粗製ガナキソロンが得られる(表2、項目4)。
【0067】
<実施例12C>
乾いた250mlの3つ口丸底フラスコに、THF(無水、106ml)と、LiCl(無水、2.1g、0.050mol)と、FeCl(無水、5.1g、0.0317mol)とを入れる。約−25℃に冷却しながら、窒素気流中で混合物を撹拌する。出発物質の5α−プレグナン−3,20−ジオン(10g、0.0316mol)を一度に加え、得られた懸濁液を5分間撹拌する。内部温度を−25℃と−20℃の間に保ちながら、テトラヒドロフランに加えたグリニャール MeMgCl(3M、39ml、0.117mol)をゆっくりと加える。添加後、暗褐色の反応混合物を、窒素気流中、同温度で一晩撹拌する。HPLC分析によって反応終了がわかり、ジオンが1.37%より少なく、ガナキソロンが92.71%であった。
【0068】
酢酸(32ml)を加えて反応を止める。温めながら暗褐色混合物を撹拌すると、淡褐色溶液となる。この溶液をロータリーエバポレータで濃縮すると、緑色を帯びた残分(82g)が得られ、これを3N HCl(125ml)と共に周囲温度で1時間撹拌する。懸濁液を減圧濾過する。ウェットケークを水(50ml×2)で洗い、吸引して乾燥する。湿った粗製ガナキソロンを周囲温度でTHF(100ml)に溶解する。この溶液を0.45μmのメンブランフィルタで濾過して清澄にする。濾液を大気圧下で蒸留して濃縮し、大部分のTHF(約70%)を除く。還流しながら水(150ml)を加える。白色懸濁液を還流しながら10分間撹拌する。次に、これを氷水浴中で1時間冷やす。濾過して固体を集めて水で洗い、吸引して乾燥する。
【0069】
湿った固体を、70℃で8時間、酢酸エチル(50ml)中でスラリーとし、氷水浴中で1時間冷やす。固体を濾過し、冷酢酸エチル(10ml)で洗う。減圧下、50℃で乾燥後、精製ガナキソロンが得られる(8.3g、収率79%)。HPLCによる純度:99.59%。
【0070】
<実施例13A>粗製ガナキソロンの精製:
実施例12Aの粗製ガナキソロン(20g)を、70℃で18時間、酢酸エチル(120ml)中でスラリーとする。粗製物のスラリーを熱源から外し、懸濁液を氷水浴中で1時間冷やす。濾過して生成物を集め、20mlの2−プロパノール/水混合物(1:1、v/v)で洗い、乾燥すると、16.6gのガナキソロンが得られる。精製ガナキソロンの純度は99.71%であり、単一の最も多い反応不純物は0.07%であった(表2、項目2)。
【0071】
<実施例13B>精製ガナキソロン:
実施例13Aに示した方法で得られた精製ガナキソロン(100g)を熱THF(700ml)に溶解する。この溶液を熱いうちに0.45μmのフィルタで濾過して(不溶性物質を除くため)清澄にする。溶液を濃縮して約370mlのTHFを除き、残分を加熱還流して透明溶液とする。還流しながらゆっくりと水(450ml)を加えて沈殿させる。熱源を外し、反応物を25℃で2時間撹拌する。反応物を更に0℃で2時間撹拌する。濾過して固体を集め、乾燥して、純度97.2%のガナキソロン、96gを得る。上記の浄化したガナキソロン(20g)の一部を、70℃で19時間、酢酸エチル(100ml)中で撹拌して精製する。このガナキソロンを冷やし、約5℃で2時間撹拌して濾過する。乾燥後、純度99.83%、含まれる単一の最も多い反応不純物が0.07%の、純粋なガナキソロン(17g)が得られる(表2、項目3)。
【0072】
<実施例13C>
実施例12Bで得られた湿った粗製ガナキソロン(140g)を、酢酸エチル(630ml)と2−プロパノール(70ml)との混合物中、55℃で8時間撹拌し、周囲温度まで冷まして更に氷水浴中で2時間冷却する。懸濁液を減圧濾過し、50mlの酢酸エチル/2−プロパノール/水(9:1:0.7、v/v/v)の冷混合物で洗い、減圧オーブン中60℃で恒量となるまで乾燥する(76.2g、収率74.4%)。HPLCによる純度は99.81%であり、0.1%を超える単一不純物はない(表2、項目5)。
【0073】
<実施例13D>
実施例12Aに記載の方法と同じ方法で調製した、表2の項目6に示す純度プロフィールを持つ粗製ガナキソロン(9g)を、酢酸エチル(27ml)と2−プロパノール(63ml)との混合物に、還流しながら溶解する。精製水(45ml)を加え、得られた懸濁液を還流しながら10分間撹拌する。熱源を外し、懸濁液を氷水浴中で1時間冷やす。濾過して固体を集める。ウェットケークを、40mlの2−プロパノール/水混合物(1/2、v/v)で洗い、減圧下60℃で63時間乾燥して、7.78gの精製ガナキソロンを得る。その純度は99.69%、単一の最も多い不純物は0.08%である(表2、項目7)。
【0074】
<実施例13E>
より少ないFeClを加える以外は、実施例12Aに記載の方法と同じ方法で、表2の項目8に示す純度プロフィールを持つ粗製ガナキソロンを調製する。還流しながら、粗製物(30g)をテトラヒドロフラン(210ml)に溶解する。この溶液を濾紙で熱濾過し、不溶性物質を除く。透明な濾液を、テトラヒドロフランの残量が約100gとなるまで減圧濃縮する。スラリーを加熱還流して溶解する。還流しながら水(135g)をゆっくりと加える。白色懸濁液を還流しながら30分間撹拌し、熱源から外す。懸濁液を室温まで冷やし、更に氷水浴中で1時間冷却する。濾過して固体を集め、減圧下50℃で一晩乾燥すると、28.5gの生成物が得られる。
【0075】
上記の固体(28.5g)を、70℃で4時間、酢酸エチル(285ml)中で撹拌する。固体を室温で2時間撹拌し、氷水浴中で2時間冷却する。濾過して固体を集め、冷酢酸エチル(10ml)で洗い、減圧下50℃で一晩乾燥して、21.5gの生成物を得る。更に2回、この物質を酢酸エチル中で撹拌(5ml/g固体、70℃で4時間撹拌した後、10℃まで冷やして濾過)すると、17.5g(収率58.3%)の精製ガナキソロンが得られる。その純度は99.86%で、単一の最も多い反応不純物は0.06%である(表2、項目9)。
【0076】
【表2】

【0077】
<実施例14>
無水テトラヒドロフラン(200ml)中、−25℃で3時間、FeCl(5.2g)とMeMgCl(FeClに対して4当量)とを反応させて得た試薬を、5α−プレグナン−3,20−ジオン(10g)と反応させる。酢酸(32ml)で反応を止める。反応混合物を減圧濃縮し、残分を3N HClと共に6時間撹拌する。濾過して固体を集めて水で洗い、減圧下50℃で乾燥して粗製ガナキソロンを得る。還流しながら粗生成物をTHF(33ml)に溶解し、熱濾過する。濾液に水(45ml)を加えて懸濁させ、これを濾過して集めて水で洗い、乾燥する。乾燥した生成物を更に、酢酸エチル(50ml)中、70℃で19時間、スラリーとする。懸濁液を0℃まで冷やして濾過し、冷酢酸エチルで洗い、乾燥してガナキソロンを得る。
【0078】
<実施例15>
ジオキサン(無水、200ml)中、−25℃で5時間、FeCl(5.2g)とMeMgCl(FeClに対して4当量)とを反応させて得た試薬を、5α−プレグナ−3,20−ジオン(10g)と反応させる。酢酸(32ml)で反応を止める。反応混合物を減圧濃縮し、残分を3N HClと共に6時間撹拌する。濾過して固体を集めて水で洗い、減圧下50℃で乾燥して粗製ガナキソロンを得る。還流しながら粗生成物をTHF(33ml)に溶解し、熱濾過する。濾液に水(45ml)を加えて懸濁させ、これを濾過して集めて水で洗い、乾燥する。乾燥した生成物を更に、酢酸エチル(50ml)中、70℃で19時間、スラリーとする。懸濁液を0℃まで冷やして濾過し、冷酢酸エチルで洗う。酢酸エチルスラリー工程をもう一度繰り返して精製ガナキソロンを得る。
【0079】
<実施例16>
t−ブチルメチルエーテル(無水、200ml)中、−25℃で3時間、FeCl(5.2g)とMeMgCl(FeClに対して4当量)とを反応させて得た試薬を、5α−プレグナン−3,20−ジオン(10g)と反応させる。酢酸(32ml)で反応を止める。反応混合物を減圧濃縮し、残分を3N HClと共に6時間撹拌する。濾過して固体を集めて水で洗い、減圧下50℃で乾燥して粗製ガナキソロンを得る。還流しながら粗生成物をTHF(33ml)に溶解し、熱濾過する。濾液に水(45ml)を加えて懸濁させ、これを濾過して集めて水で洗い、乾燥する。乾燥した生成物を更に、酢酸エチル(50ml)中、70℃で19時間、スラリーとする。懸濁液を0℃まで冷やして濾過する。酢酸エチルスラリー工程をもう一度繰り返して精製ガナキソロンを得た。
【0080】
<実施例17>
窒素気流中、−25℃において、THF(無水、200ml)中で塩化第一鉄(4g)をMeMgCl(FeClに対して3当量)と反応させる。次に、この混合物に5α−プレグナン−3,20−ジオン(10g)を加える。混合物を−25℃で4時間撹拌し、酢酸(32ml)を加えて反応を止める。混合物を減圧濃縮し、残分を3N HCl(200ml)中で6時間撹拌する。濾過して固体を集めて水で洗い、乾燥する。還流しながら粗生成物をTHF(33ml)に溶解し、熱濾過する。濾液に水(45ml)を混合し、濾過して固体を集めて水で洗い、乾燥する。固体を更に、酢酸エチル(50ml)中、70℃で19時間、スラリーとする。これを5℃まで冷やして濾過し、冷酢酸エチルで洗い、乾燥してガナキソロンを得る。
【0081】
<実施例18>
窒素気流中、−25℃において、トルエン(無水、200ml)中で塩化第一鉄(4g)をMeLi(FeClに対して3当量)と反応させる。次に、この混合物に5α−プレグナン−3,20−ジオン(10g)を加える。混合物を−25℃で5時間撹拌する。これに酢酸(32ml)を加えて反応を止める。混合物を減圧濃縮し、残分を3N HCl(200ml)中で6時間撹拌する。濾過して固体を集めて水で洗い、乾燥する。還流しながら粗生成物をTHF(33ml)に溶解し、熱濾過する。濾液に水(45ml)を混合し、濾過して固体を集めて水で洗い、乾燥する。固体を更に、酢酸エチル(50ml)中、70℃で8時間、スラリーとする。これを5℃まで冷やして濾過し、冷酢酸エチルで洗い、乾燥してガナキソロンを得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3α−ヒドロキシ−3β−メチル−5α−プレグナン−20−オン(ガナキソロン)の製造法であって、前記製造法は、5α−プレグナン−3,20−ジオン(ジオン2)を不活性溶媒中の有機金属メチル化剤と反応させることによりガナキソロンを得る工程を含み、前記ガナキソロンの純度は、HPLCによる面積比で80%より大きいことを特徴とする、3α−ヒドロキシ−3β−メチル−5α−プレグナン−20−オン(ガナキソロン)の製造法。
【請求項2】
3α−ヒドロキシ−3β−メチル−5α−プレグナン−20−オン(ガナキソロン)の製造法であって、前記製造法は、5α−プレグナン−3,20−ジオン(ジオン2)を不活性溶媒中の有機金属メチル化剤と反応させてガナキソロンを精製する工程を含み、前記ガナキソロンの収率は、80%より大きいことを特徴とする、3α−ヒドロキシ−3β−メチル−5α−プレグナン−20−オン(ガナキソロン)の製造法。
【請求項3】
反応不純物を実質的に含まない、3α−ヒドロキシ−3β−メチル−5α−プレグナン−20−オンを得るための方法であって、前記方法は、5α−プレグナン−3,20−ジオンを不活性溶媒中の有機金属メチル化剤と反応させてガナキソロンを得る工程を含み、得られた前記ガナキソロンに含まれる反応不純物はいずれも、HPLCによる面積比で2%より少ないことを特徴とする、3α−ヒドロキシ−3β−メチル−5α−プレグナン−20−オンを得るための方法。
【請求項4】
得られた前記ガナキソロンを有機溶媒中で加熱して、精製したガナキソロンを得る工程を更に含み、前記精製ガナキソロンに含まれる反応不純物はいずれも、HPLCによる面積比で0.1%より少ないことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
得られた前記ガナキソロンに含まれる、次の構造式で示される不純物は、HPLCによる面積比で0.1%より少ないことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【化1】


または
【化2】

【請求項6】
得られた前記ガナキソロンに含まれる、次の構造式で示される不純物は、HPLCによる面積比で0.1%より少ないことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【化3】



【化4】



【化5】



【化6】



【化7】


または
【化8】

【請求項7】
得られた前記ガナキソロンに含まれる、次の構造式で示される不純物は、HPLCによる面積比で0.5%より少ないことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【化9】

【請求項8】
前記不活性溶媒は酢酸エチルであり、使用する前記酢酸エチルの量は、精製される前記ガナキソロンの重量の4〜15倍であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
得られた前記ガナキソロンを有機溶媒中で加熱する工程を更に含み、得られた精製ガナキソロンのHPLCによる純度は、99%より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の製造法。
【請求項10】
得られた前記ガナキソロンを有機溶媒中で加熱する工程を更に含み、得られた精製ガナキソロンの%収率は、55%より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の製造法。
【請求項11】
約2から約4当量のメチルマグネシウムハロゲン化物またはメチルリチウムを、無水ハロゲン化第二鉄または無水ハロゲン化第一鉄の有機溶媒溶液に加えることにより、前記有機金属メチル化剤を生成する工程を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造法。
【請求項12】
前記有機金属メチル化剤を加える前に、約0.1から約4当量の塩化リチウム(FeClに対して)を、前記不活性溶媒中のハロゲン化鉄に加える工程を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造法。
【請求項13】
約1当量のメチルマグネシウムハロゲン化物またはメチルリチウムを、トリ(C〜Cアルコキシ)チタン塩化物の有機溶媒溶液に加えて有機金属メチル化剤を発生させることにより、有機金属メチル化剤を発生させる工程を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造法。
【請求項14】
前記有機金属メチル化剤は、ジメチル鉄(MeFe)、メチルトリエトキシチタン、メチルクロロジエトキシチタン((CH)Cl(CHCHO)Ti)、メチルトリクロロチタン(CHClTi)、テトラメチルチタン((CHTi)、ジメチルジクロロチタン((CHClTi)、トリメチルクロロチタン((CHClTi)、またはメチル鉄塩化物(CHFeCl)であることを特徴とする、請求項1に記載の製造法。
【請求項15】
前記有機金属メチル化剤は、(Me)Feアニオンと、カチオンとしてリチウムまたはMgX(式中、Xはハロゲン化物)のいずれかとを含む、塩錯体(ate complex)であることを特徴とする、請求項1に記載の製造法。
【請求項16】
約1当量のメチルマグネシウムハロゲン化物またはメチルリチウムを、無水ジ(C〜Cアルコキシ)チタン二塩化物の有機溶媒溶液に加えることにより、前記有機金属メチル化剤を発生させる工程を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造法。
【請求項17】
約1から約4当量のメチルマグネシウムハロゲン化物またはメチルリチウムを、TiClの有機溶媒溶液に加えることにより、前記有機金属メチル化剤を発生させる工程を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造法。
【請求項18】
前記不活性溶媒は、テトラヒドロフラン、グリム、t−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、またはジエチルエーテルであることを特徴とする、請求項1に記載の製造法。
【請求項19】
メチルマグネシウム塩化物を用いて前記メチル化剤を発生させることを特徴とする、請求項1に記載の製造法。
【請求項20】
メチルリチウムを用いて前記メチル化剤を発生させることを特徴とする、請求項1に記載の製造法。
【請求項21】
前記反応の間、前記不活性溶媒を、約−40℃から約35℃の温度に保つことを特徴とする、請求項1に記載の製造法。
【請求項22】
前記不活性溶媒はテトラヒドロフランであり、前記反応の間、前記不活性溶媒温度を、約−15℃未満の温度に保つことを特徴とする、請求項1に記載の製造法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−501803(P2013−501803A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524841(P2012−524841)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/045176
【国際公開番号】WO2011/019821
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(509031132)マリナス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】