説明

3次元プリンタおよびそれを用いた印刷方法

【課題】比較的簡易な構成でコストを抑えつつ、3次元形状表面を有する印刷対象物に対してUVインクを用いた印刷が可能な3次元プリンタを提供する。
【解決手段】3次元プリンタは、印刷対象物80を保持する保持装置と、複数のプリンタヘッド43を搭載するメインキャリッジ41と、表面81における印刷面とプリンタヘッド43とが対向するように互いの位置関係を保ちながら、保持装置およびキャリッジ41を3次元空間内において相対移動させる制御を行う移動制御装置と、それぞれのプリンタヘッド43を独立して移動可能なヘッド保持装置42と、プリンタヘッド43に対して紫外線照射装置45を左右に移動可能なサブキャリッジ44とを備え、サブキャリッジ44は、移動されたプリンタヘッド43と表面81との隙間を通り、印刷面と対向したプリンタヘッド43の側方に隣接するように紫外線照射装置45を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元形状表面を有する印刷対象物の表面に対して所定の印刷を施す3次元プリンタに関し、さらに詳細には、プリンタヘッドからインクを吐出させるとともに紫外線照射装置からの紫外線を照射して印刷を施す3次元プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
紙等の印刷対象物に文字、図柄等を印刷するプリンタ装置は従来種々のものが知られており、例えば、コンピュータに繋がって紙面
に印刷するプリンタ装置等は業務用、家庭用として広く用いられている。従来のプリンタ装置は、印刷対象物となる紙もしくはシート材を所定方向に送るとともに、プリンタヘッドをこの送り方向と直角に走査移動させながらインクを吐出させることで、印刷を行う形式のものが一般的であった。このようなプリンタ装置(インクジェットプリンタ)には、紫外線が照射されて硬化する性質を有した紫外線硬化型インク(以下、UVインクと称す)を、プリンタヘッドから吐出させて印刷を行うものがある。
【0003】
上記UVインクは、耐候性および耐水性に優れているため、印刷物を例えば屋外広告宣伝ビラ等に用いることが可能となり、水溶性インクを用いた場合と比較して印刷物の使用用途が格段に広がるという利点がある。このUVインクを用いたプリンタ装置は、一般的に、UVインクを硬化させるための紫外線照射装置が搭載されて構成される。例えば特許文献1の図1には、色毎の記録ヘッド2を搭載したキャリッジ1の周囲に、紫外線光源4a,4bを備えた紫外線照射装置3a,3bを配設した構成が開示されている。
【0004】
図7(a)および図7(b)に、従来のUVインクを用いたプリンタ装置における印刷ユニット500を示す。印刷ユニット500は、例えばマゼンダ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)、ブラック(K)からなるプリンタヘッド520M,520Y,520C,520K、および紫外光源が内部に配設された紫外線照射装置530を、キャリッジ510に搭載して構成される。印刷時には、この印刷ユニット500を左右へ移動させながら、各プリンタヘッドから下方に向けてUVインクを吐出させるとともに、紫外線照射装置530から下方に向けて紫外線を照射させて、印刷対象物の表面に印刷を施すようになっている。図7(a)は、上記印刷対象物として平面状の印刷シート800を用いた場合を示しており、各プリンタヘッドと印刷シート800との距離、および紫外線照射装置530と印刷シート800との距離が、それぞれほぼ等しい印刷間隔aおよび照射間隔cに設定される。こうすることにより、吐出されたUVインクを確実に印刷シート800に付着させることができるとともに、十分な強度の紫外線が照射されて付着したUVインク同士が滲まない程度に硬化させることができる。
【特許文献1】特開2005−313445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで最近においては、平面状のものばかりでなく、3次元形状表面を有する印刷対象物(例えば、円筒、半球および球等)に印刷を施したいという要求がある。上記印刷ユニット500を用いて、紙面奥から手前に延びた円筒状の円筒印刷物900の表面に印刷を施す場合を図7(b)に示している。例えば、所定点Gを中心に円筒印刷物900を反時計回りに回転させながら、印刷間隔aに設定されたプリンタヘッド520CからUVインクを吐出させる場合、円筒印刷物900の径によっては、紫外線照射装置530と円筒印刷物900との距離(照射間隔b)が、印刷間隔aよりもはるかに大きくなることがある。
【0006】
この場合、プリンタヘッド520CからのUVインクを、確実に円筒印刷物900の表面に付着させることができる一方、付着したUVインク同士が滲まない程度に硬化させる照射強度(照射量)の紫外線を照射するためには、例えば紫外線紫外光源を高出力に設定する必要がある。そのため、消費電力増加に伴うランニングコストの増加、および高負荷状態で使用することにより紫外光源の寿命が短くなるという課題があった。さらに、紫外光源としてメタルハライドランプを用いた場合、高出力に設定することで発熱量が一気に増加しやすいため、紫外線照射装置530の冷却構成を強化する必要があり、より一層コストの増加を招くという課題もあった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、比較的簡易な構成でコストを抑えつつ、3次元形状表面を有する印刷対象物に対してUVインクを用いた印刷が可能な3次元プリンタ、およびその印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明に係る3次元プリンタは、3次元形状表面を有する印刷対象物の表面に対してプリンタヘッドからインクを吐出するとともに紫外線照射装置から紫外線を照射して、前記表面に所定の印刷を施す3次元プリンタであって、印刷対象物を保持する保持装置(例えば、実施形態における保持シャフト25、保持チャック26)と、複数の前記プリンタヘッドを略直線状に第1の方向に並んだ状態で搭載するヘッドキャリッジ(例えば、実施形態におけるメインキャリッジ41)と、前記保持装置により保持された前記印刷対象物の表面における印刷面と前記プリンタヘッドとが対向するように互いの位置関係を保ちながら、前記保持装置および前記ヘッドキャリッジを3次元空間内において相対移動させる制御を行う移動制御装置(例えば、実施形態における第1制御装置6、第2制御装置7、第1支持部材10、第2支持部材15、第3支持部材20)と、
前記ヘッドキャリッジ上において、前記表面に対して複数のそれぞれの前記プリンタヘッドを離れる方向に独立して移動可能なヘッド移動装置(例えば、実施形態におけるヘッド保持装置42)と、前記プリンタヘッドに対して前記紫外線照射装置を前記第1の方向に移動可能な照射ユニット移動装置(例えば、実施形態におけるサブキャリッジ44)とを備え、前記ヘッド移動装置により前記表面から離れる方向に移動された前記プリンタヘッドと前記表面との隙間を通り、前記表面から離れる方向に移動されることなく前記印刷面と対向した前記プリンタヘッドの前記第1の方向における側方に隣接するように、前記照射ユニット移動装置により前記紫外線照射装置を移動させる。
【0009】
なお、上記3次元プリンタにおいて、前記第1の方向は前記印刷面に対して略平行となっており、前記ヘッドキャリッジは、前記保持装置に保持された前記印刷対象物の上方を通って前記第1の方向に直線移動可能に構成されており、前記ヘッド移動装置は、前記第1の方向に対して直交する第2の方向に前記プリンタヘッドを移動させて前記表面から前記プリンタヘッドを離れるように移動させることが好ましい。
【0010】
また、前記照射ユニット移動装置が、前記ヘッドキャリッジに搭載されて構成されたことが好ましい。
【0011】
さらに、前記ヘッド移動装置は、印刷に用いない前記プリンタヘッドを前記表面から離れる方向に移動させ、印刷に用いる前記プリンタヘッドを前記印刷面に対向させることが好ましい。
【0012】
また、前記保持装置が、保持した前記印刷対象物の表面形状に応じて設定される回転軸を中心として、前記印刷対象物を回転可能に構成されたことが好ましい。
【0013】
本発明に係る印刷方法は、上述のように構成された3次元プリンタを用いて行う印刷方法であって、3次元形状表面を有する印刷対象物の表面における印刷面に対して、プリンタヘッドからインクを吐出するとともに紫外線照射装置から紫外線を照射して、前記表面に所定の印刷を施すように構成されており、第1の方向に並んだ複数のそれぞれの前記プリンタヘッドを前記表面に対して離れる方向に独立して移動可能なヘッド移動装置により、前記表面から離れるように前記プリンタヘッドを移動させる第1のステップと、前記紫外線照射装置を前記第1の方向に移動可能な照射ユニット移動装置により、前記第1のステップにおいて移動された前記プリンタヘッドと前記表面との隙間を通り、前記表面から離れる方向に移動されることなく前記印刷面と対向した前記プリンタヘッドの前記第1の方向における側方に隣接するように前記紫外線照射装置を移動させる第2のステップと、前記印刷面と対向した前記プリンタヘッドからインクを吐出させるとともに、前記第2のステップにおいて移動された前記紫外線照射装置から前記表面に紫外線を照射して印刷を施す第3のステップとを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に関する3次元プリンタは、ヘッドキャリッジ上で、印刷対象物の表面に対してプリンタヘッドを離れる方向に独立して移動可能なヘッド移動装置、および移動されたプリンタヘッドと表面との隙間を通り、印刷面と対向したプリンタヘッドの側方に隣接するように紫外線照射装置を移動させることが可能な照射ユニット移動装置を備えている。この構成より、ヘッド移動装置によりプリンタヘッドを移動させ、例えば印刷に用いるプリンタヘッドの側方に照射ユニット移動装置により紫外線照射装置を位置させることが可能となる。よって、3次元形状表面を有する印刷対象物の表面と紫外線照射装置との距離を、印刷対象物の表面と印刷に用いるプリンタヘッドとの距離に対して略同一となるように、縮めることが可能である。そのため、紫外線照射装置を比較的低出力に設定した状態でも、印刷対象物の表面に十分な強度の紫外線を照射可能となって、ヘッド移動装置および照射ユニット移動装置を設けるという比較的簡易な構成としてコストを抑えつつ、3次元形状表面を有する印刷対象物に対してUVインクを用いた印刷が可能となる。
【0015】
なお、ヘッドキャリッジは、印刷対象物の上方を通って印刷面と略平行な第1の方向に移動可能に構成され、ヘッド移動装置は、第1の方向に対して直交する第2の方向にプリンタヘッドを移動させる構成が好ましい。このように構成した場合、各構成部材の移動方向を第1の方向、またはこの第1の方向に直交する第2の方向に設定できるので、各構成部材における移動機構構成を簡易に形成することができ、且つこれらの移動制御が容易になる。
【0016】
また、照射ユニット移動装置が、ヘッドキャリッジに搭載された構成が好ましい。上述のようにヘッドキャリッジには、プリンタヘッドがヘッド移動装置により移動可能な状態で搭載されているため、ヘッド移動装置および照射ユニット移動装置を制御するという比較的簡易な方法により、プリンタヘッドと紫外線照射装置との位置関係を高精度に制御可能となる。
【0017】
ヘッド移動装置は、印刷に用いないプリンタヘッドを表面から離れる方向に移動させる一方、印刷に用いるプリンタヘッドを印刷面に対向させることが好ましい。このように構成した場合には、ヘッド移動装置により印刷に用いないプリンタヘッドは表面から離れる方向に移動されるので、照射ユニット移動装置により印刷に用いるプリンタヘッドの近傍に紫外線照射装置を確実に位置させることが可能となる。よって、紫外線照射装置を比較的低出力に設定した状態でも、印刷対象物の表面に十分な強度の紫外線を照射できて高品質な印刷が可能となる。
【0018】
さらに、保持装置が、印刷対象物の表面形状に応じて設定される回転軸を中心として、印刷対象物を回転させる構成が好ましい。このように構成した場合、例えばヘッドキャリッジを固定しておき、保持装置が印刷対象物を回転させることで、保持装置およびヘッドキャリッジを3次元空間内において相対移動させることが可能となるので、移動制御装置による相対移動制御が容易になる。また、例えば円筒状または球状の印刷対象物に印刷を施す場合には、特に有効となる。
【0019】
本発明に関する印刷方法は、プリンタヘッドを印刷対象物の表面から離れるように移動させる第1のステップと、第1のステップにおいて移動されたプリンタヘッドと表面との隙間を通って、印刷面と対向したプリンタヘッドの側方に隣接するように紫外線照射装置を移動させる第2のステップと、印刷面と対向したプリンタヘッドからインクを吐出させるとともに、第2のステップにおいて移動された紫外線照射装置から紫外線を照射して印刷を施す第3のステップとを有する。この構成により、表面と紫外線照射装置との距離を、表面とインクを吐出するプリンタヘッドとの距離に対して略同一となるように縮めることができる。よって、紫外線照射装置を比較的低出力に設定した状態においても、印刷対象物の表面に十分な強度の紫外線を照射可能となり、ランニングコスト等を抑えつつ、3次元形状表面を有する印刷対象物に対してUVインクを用いた高品質な印刷が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。説明の便宜上、各図面に示す矢印方向を左右、前後および上下と定義して説明を行う。まず、図1および図2を参照して、本発明を適用した3次元プリンタ30の構成について説明する。図1は3次元プリンタ30を前方から見た図を、図2は3次元プリンタ30を左方から見た図をそれぞれ示している。
【0021】
3次元プリンタ30は、図1に示すように、ベース1の上に左支持脚2aおよび右支持脚2bが設けられ、これらの上端を繋いで左右に延びた支持桁2cとからなる門型支持フレーム2が固設されている。支持桁2cの上面に前後一対の左右ガイドレール3a,3bが、左右に延びて設けられており、この上に左右へ移動自在に後述する印刷ユニット40が取り付けられている。また、左支持脚2bに隣接して操作盤6aを有する第1制御装置6が設けられ、右支持脚2aに隣接してメンテナンスステーション8を有する第2制御装置7が設けられている。なお、第1および第2制御装置6,7は、後述する第1支持部材10、第2支持部材15、第3支持部材20、保持シャフト25および印刷ユニット40等の、各種部材の移動および回転作動制御を行う移動制御装置からなるとともに、プリンタヘッド43からのインクの吐出制御、ヘッド保持装置42の作動制御およびサブキャリッジ送り機構(図示せず)の作動制御を行うメイン制御部等の、各種制御装置からなる。
【0022】
ベース1の上に、左支持脚2aと右支持脚2bとの間に位置して、前後に延びる一対の前後ガイドレール1a,1bが設けられており、これらの上に前後へ移動自在に第1支持部材10が設けられている。図2に示すように、第1支持部材10の上に、垂直に起立した状態で垂直支持部材11が固設されており、この垂直支持部材11の前面に垂直方向に延びる一対の上下ガイドレール12a,12bが設けられている。この上下ガイドレール12a,12bに支持されて、上下へ移動自在に第2支持部材15が設けられている。上記第1支持部材10を前後移動させるため、およびこの第2支持部材15を上下移動させるために、ボールネジ機構等の送り機構が設けられており、その駆動制御によりこれらの移動を制御できるが、このような送り機構は周知なのでその構成説明は省略する。
【0023】
第2支持部材15の前面は、第2支持部材15に対して定まる所定点Gを通り、左右方向に延びる第1回転軸Yを中心とする円筒面形状に形成されている。この第2支持部材15の前面に対して接合可能に後面が形成された第3支持部材20が、第2支持部材15の前面に沿って摺動自在に設けられている。すなわち、第3支持部材20は、第2支持部材15に対して第1回転軸Yを中心として、矢印Bで示す方向に回転自在に支持される。
【0024】
図1に示すように、第2支持部材15の右側前面に駆動モータ16が取り付けられており、この駆動モータ16の駆動シャフトに取り付けられた駆動ピニオン17が、第3支持部材20の右側前面に第1回転軸Yを中心として形成された内歯車21と噛合している。このため、駆動モータ16を回転駆動すれば内歯車21が回転駆動され、第3支持部材20を第1回転軸Yを中心として回転させることができるようになっている。
【0025】
図2に示すように、第3支持部材20の前面に、保持シャフト25が上記所定点Gを通る第2回転軸Xを中心として回転自在に設けられて前方に突出しており、その前端に印刷対象物を保持するための保持チャック26が取り付けられている。保持シャフト25は、第3支持部材20の内部に配設された駆動モータ(図示せず)により回転駆動制御されるようになっており、保持チャック26は印刷対象物を保持可能な構成を有している。このため、保持チャック26により印刷対象物を保持した状態で保持シャフト25を回転駆動させることで、印刷対象物を第2回転軸Xを中心として回転させることができるようになっている。
【0026】
印刷ユニット40の構成について、図3および図4を追加参照して説明する。図3は印刷ユニット40を前方から見た図を、図4は図3中のIV−IV部分の断面図をそれぞれ示している。
【0027】
印刷ユニット40は、図3および図4に示すように、メインキャリッジ41、プリンタヘッド43、ヘッド保持装置42、サブキャリッジ44、紫外線照射装置45を主体に構成される。プリンタヘッド43は、例えばマゼンダ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)、ブラック(K)からなるプリンタヘッド43M,43Y,43C,43Kにより構成される。このプリンタヘッド43はそれぞれ、下面に複数の吐出ノズル(図示せず)が形成されており、この吐出ノズルから下方に向けてインクを吐出可能となっている。ヘッド保持装置42は、上記プリンタヘッド43のそれぞれに対応して、メインキャリッジ41の前面に取付けられており、プリンタヘッド43を左右から挟むようにして保持する構成となっている。また、ヘッド保持装置42は、例えばサーボモータ駆動機構を備えており、この機構により、メインキャリッジ41に対してそれぞれのプリンタヘッド43を独立して上下移動できるように構成されている。
【0028】
サブキャリッジ44は、左右に延びた本体部44a、およびその上面に取付けられた左右に延びる左右ガイドレール44bから構成され、この本体部44aの前部下面側に、紫外線照射装置45が取付けられている。紫外線照射装置45は、略直方体となっており、その内部に紫外線を発射可能な紫外光源(図示せず)が配設されており、この紫外光源からの紫外線を、下面から下方に向けて一定の照射角度で照射可能に構成されている。本実施においては、この紫外光源として、紫外線を発射する発光ダイオード(UVLED)を用いた場合を例示している。
【0029】
メインキャリッジ41は、図4から分かるように略L字状となっており、印刷ユニット40を構成する上記構成部材の取付ベースとなっている。メインキャリッジ41の前方側下部には、左右に延びた移動空間41dが形成されており、この移動空間41dの上面に、上記左右ガイドレール44bと嵌合可能なガイド溝41cが左右に延びて形成されている。また、メインキャリッジ41の後部下面には、左右ガイドレール3a,3bと嵌合可能なガイド溝41a,41bが左右に延びて形成されている。
【0030】
上述のように構成された印刷ユニット40は、ボールネジ機構等から構成されるメインキャリッジ送り機構(図示せず)により、支持桁2cに対して、メインキャリッジ41が左右にスライド移動可能となっている。また、上記メインキャリッジ送り機構とは別に設けられた、ボールネジ機構等のサブキャリッジ送り機構(図示せず)により、メインキャリッジ41に対して、サブキャリッジ44(紫外線照射装置45)が左右にスライド移動可能となっている。つまり、支持桁2cに対するメインキャリッジ41のスライド移動と、メインキャリッジ41に対するサブキャリッジ44のスライド移動とを独立させて行うことができるようになっている。なお、印刷が行われていない待機状態において、サブキャリッジ44(紫外線照射装置45)は、例えば図3に示すようにプリンタヘッド43Mの右方に位置している。よって、特許請求の範囲に記載された側方方向および直交方向が、実施形態における左右方向および上下方向にそれぞれ該当する。
【0031】
以上ここまでは、3次元プリンタ30の構成について説明したが、以下において、この3次元プリンタ30により印刷対象物に所望の印刷を施すときの作動について、図3〜図6を参照しながら説明する。図5は印刷ユニット40を前方から見た図を、図6は図5中のVI−VI部分の断面図をそれぞれ示している。
【0032】
なお、本発明を適用した3次元プリンタ30の特徴を分かりやすく説明するために、以下において印刷ユニット40の作動を中心に説明する。また、以下の説明では、切頭円錐形状の印刷対象物80の表面81に印刷を施す場合を例示して説明するが、3次元プリンタ30により切頭円錐形状以外(例えば球形状)の印刷対象物の表面に対しても、所定の印刷を施すことができる。
【0033】
一般に、プリンタヘッドからインクを吐出させて、所望のパターンで付着させて印刷を施す場合(いわゆる、インクジェットタイプの場合)、複数の色(例えば、上記マゼンダ、イエロー、シアン、ブラック)を重ねて付着させることにより、所望の印刷を施すようになっている。以下の説明では、表面81に対して最初にマゼンダのUVインクを付着させた後、この表面81に対してイエロー、シアン、ブラックの順にUVインクを付着させて印刷を施す印刷方法を例示して説明する。このように、1色毎にUVインクを付着させることで、UVインクを吐出するプリンタヘッド43の下面と表面81とを精度良く対向させることができるので、吐出されたインクを制御通りの位置に付着させることが可能となり、高品質な印刷が可能となる。
【0034】
印刷対象物80の表面81に印刷を施すに際して、まず、この表面81とプリンタヘッド43の下面とが対向し且つその間隔が印刷間隔aとなるように、上記移動制御装置により各構成部の移動制御が行われる。例えば、表面81の形状に応じて、水平面に対する第2回転軸Xの傾斜角度が設定されることで、図3に示すように、例えば表面81とプリンタヘッド43Mの下面とが印刷間隔aを隔てて対向した状態となる。このとき、紫外線照射装置45は、プリンタヘッド43Mの右方に隣接して位置しているため、紫外線照射装置45の下面から表面81までの距離(照射間隔c)は、印刷間隔aとほぼ同程度であって比較的小さい。この状態で、プリンタヘッド43Y,43C,43KからはUVインクを吐出させず、プリンタヘッド43Mの吐出ノズルからUVインクをさせるとともに、紫外線照射装置45から紫外線を照射させながら、所定点Gを中心に印刷対象物80を反時計回りに回転させる。こうすることにより、図4に示すように、印刷対象物80を取り巻くように形成された帯状領域82にマゼンダのUVインクを付着させることができるとともに、照射間隔cが比較的小さいため帯状領域82に十分な強度の(照射量の)紫外線を照射して、付着したUVインクを滲まない程度に硬化させることができる。
【0035】
次に、プリンタヘッド43YからイエローのUVインクを吐出させて、上記帯状領域82に付着させる。このとき、図5に示すように、メインキャリッジ送り機構を駆動させることで、支持桁2cに対してメインキャリッジ41を右方にスライド移動させて、表面81とプリンタヘッド43Yの下面とが印刷間隔aに設定される。そして、プリンタヘッド43Mを保持するヘッド保持装置42のサーボモータ駆動機構を駆動させて、プリンタヘッド43Mを上方に移動させた後、サブキャリッジ送り機構を駆動させ、メインキャリッジ41に対してサブキャリッジ44を左方へスライド移動させる。そうすることにより、上記サーボモータ駆動機構を駆動させることで形成されたプリンタヘッド43Mと表面81との隙間に、紫外線照射装置45をプリンタヘッド43Yの右方に隣接するように位置させることができる。上記サーボモータ駆動機構は、この紫外線照射装置45がスライド移動する際に、プリンタヘッド43Mと干渉しないように、プリンタヘッド43Mを上方へ移動させる構成となっている。
【0036】
図5には、プリンタヘッド43Mの真下に紫外線照射装置45を移動させた場合を例示しており、このように紫外線照射装置45をスライド移動させることで、上記照射間隔cを印刷間隔aとほぼ同等までに小さくすることができる。この状態で、上述のマゼンダの場合と同様にして、プリンタヘッド43YからイエローのUVインクを吐出させて帯状領域82に付着させるとともに、照射間隔cが比較的小さいため帯状領域82に十分な強度の紫外線を照射して、付着したイエローのUVインクを滲まない程度に硬化させることができる。また、プリンタヘッド43Yの右方に紫外線照射装置45が隣接しているため、イエローのUVインクは、帯状領域82に付着した直後に紫外線が照射され、UVインク同士の滲みが防止されて高品質な印刷が可能となる。
【0037】
ところで、本発明の特徴構成である紫外線照射装置45をスライド移動させる構成を備えていない従来のプリンタにおいては、例えばプリンタヘッド43Mからプリンタヘッド43Yへと、UVインクを吐出させるプリンタヘッド43が切り替わっても、図5の紫外線照射装置45'のように、常にプリンタヘッド43Mの右方に位置した状態で紫外線を照射する構成となっていた。そのため、例えばプリンタヘッド43YからUVインクを吐出させる場合、紫外線照射装置45'の下面から表面81までの照射間隔bは、印刷間隔aや照射間隔cよりもはるかに大きくなってしまい、帯状領域82に付着したUVインク同士を滲まない程度に十分な強度の紫外線を照射して硬化させるためには、紫外線照射装置45'に配設されている紫外光源を高出力に設定する必要があった。
【0038】
このように、紫外光源を高出力に設定して使用すると、紫外光源における消費電力が増大することに伴い、3次元プリンタのランニングコストの増大に繋がったり、紫外光源が高負荷の状態で使用されるために寿命が短くなるという問題があった。また、紫外光源として、メタルハライドランプを用いた構成の場合、紫外線照射装置45'における発熱量が一気に増大しやすく、紫外線照射装置45'の冷却構造を強化する必要があった。さらに、プリンタヘッド43からのUVインクの吐出制御によっては、UVインクを吐出するプリンタヘッド43と紫外線照射装置45'とが左右に離れて位置する場合があり、帯状領域82のUVインクに対して付着直後に紫外線を照射することが困難となって紫外線の照射タイミングが遅れるため、UVインク同士が滲みやすいという問題もあった。
【0039】
上記の従来構成に対し、本発明を適用した3次元プリンタ30においては、左右へ移動可能となった紫外線照射装置45を、UVインクを吐出させるプリンタヘッド43に隣接するようにスライド移動させる構成となっている。このようにスライド移動させることで、UVインクを吐出させるプリンタヘッド43に応じて、常に照射間隔cを印刷間隔aとほぼ同一にすることができるので、紫外光源を比較的低出力に設定した状態でありながら、帯状領域82に付着したUVインク同士が滲まないように十分な強度の紫外線を照射することができる。よって、消費電力の増大や冷却構造強化にともなうコスト増大の問題が解決されてコスト低減が図れるとともに、紫外光源の寿命を延ばすことが可能となる。
【0040】
一般にUVインクは、粒状に盛り上がった状態で印刷媒体に付着した後、時間の経過とともに徐々に平らに平滑化していく特性を有している。そのため、紫外線の照射タイミングが早すぎる場合、十分に平滑化せず粒状に盛り上がった状態で硬化されることになり印刷品質の低下を招く一方で、紫外線の照射タイミングが遅すぎる場合、印刷媒体に付着したUVインク同士が混ざり合って滲みが発生して印刷品質の低下に繋がる。このように、印刷品質を向上させるためには、紫外線の照射強度のみならず照射タイミングも重要である。この点に関して、本発明を適用した3次元プリンタ30においては、紫外線照射装置45を左右へ移動させることにより、紫外線の照射タイミングを制御できる構成となっており、よって、滲みの発生を抑えつつ平滑化した状態で硬化させることができ、印刷品質を高めることが可能である。
【0041】
続いて、プリンタヘッド43CからシアンのUVインクを吐出させて、帯状領域82に付着させる。このとき、上述と同様に、メインキャリッジ41を右方にスライド移動させて、表面81とプリンタヘッド43Cの下面とが印刷間隔aに設定される。そして、プリンタヘッド43Yを保持するヘッド保持装置42のサーボモータ駆動機構を駆動させて、プリンタヘッド43Yを上方に移動させた後、サブキャリッジ44を左方へスライド移動させて、プリンタヘッド43Cの右方に隣接する位置(例えば、プリンタヘッド43Yの真下)に紫外線照射装置45を移動させる。こうすることで、紫外線照射装置45の下面から表面81までの照射間隔cを、印刷間隔aとほぼ同等にすることができる。この状態で、プリンタヘッド43CからシアンのUVインクを吐出させて帯状領域82に付着させるとともに、紫外線照射装置45からの紫外線により、帯状領域82に付着したシアンのUVインクを滲まない程度に硬化させることができる。
【0042】
次に、プリンタヘッド43KからブラックのUVインクを吐出させて、帯状領域82に付着させる。このときも上述と同様に、メインキャリッジ41を右方にスライド移動させて、表面81とプリンタヘッド43Kの下面とが印刷間隔aに設定される。そして、プリンタヘッド43Cを保持するヘッド保持装置42のサーボモータ駆動機構を駆動させて、プリンタヘッド43Cを上方に移動させた後、サブキャリッジ44を左方へスライド移動させて、プリンタヘッド43Kの右方に隣接する位置(例えば、プリンタヘッド43Cの真下)に紫外線照射装置45を移動させる。こうすることで、紫外線照射装置45の下面から表面81までの照射間隔cを、印刷間隔aとほぼ同等にすることができる。この状態で、プリンタヘッド43CからブラックのUVインクを吐出させて帯状領域82に付着させるとともに滲まない程度に硬化させて、この帯状領域82に対する印刷は完了となる。上述のような印刷を、印刷対象物80を前後に移動させて表面81の全体に施すことで、印刷対象物80への印刷が終了する。
【0043】
上述の実施形態において、1色毎にUVインクを吐出して付着させる制御を説明したが、この制御方法に限定されない。例えば、まず、図3に示すプリンタヘッド43Mの右方に紫外線照射装置45が位置した状態で、プリンタヘッド43M,43Yから2色のUVインクを吐出させて付着させるとともに、紫外線照射装置45から紫外線を照射させる。続いて、プリンタヘッド43M,43Yを上方に移動させた後、サブキャリッジ44を左方へスライド移動させて、プリンタヘッド43Cの右方に隣接する位置(例えば、プリンタヘッド43Yの真下)に紫外線照射装置45を移動させる。その後、プリンタヘッド43C,43KからUVインクを吐出させて付着させるとともに、紫外線照射装置45から紫外線を照射させて印刷を施しても良い。このようにして印刷を施すことで、印刷時間の短縮が可能となる。
【0044】
上述の実施形態において、プリンタヘッド43の左右配設間隔で紫外線照射装置45を左右にスライドさせる制御を例示したが、この構成に限定されない。例えば、印刷に用いるUVインクの特性(例えば、粘度や硬化速度)等に応じて、紫外線照射装置45の左右へのスライド移動制御を行うことにより、より一層最適な照射タイミングで紫外線を照射することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る3次元プリンタを示した正面図である。
【図2】上記3次元プリンタの側面図(一部断面図)である。
【図3】印刷ユニット近傍の正面図である。
【図4】図3中のIV−IV部分の断面図である。
【図5】印刷ユニット近傍の正面図である。
【図6】図5中のVI−VI部分の断面図である。
【図7】従来の構成における印刷ユニット近傍の正面図で、(a)は平面状印刷対象物の表面に印刷を施す場合を、(b)円筒状印刷対象物の表面に印刷を施す場合を示す。
【符号の説明】
【0046】
6 第1制御装置(移動制御装置)
7 第2制御装置(移動制御装置)
10 第1支持部材10(移動制御装置)
15 第2支持部材15(移動制御装置)
20 第3支持部材20(移動制御装置)
25 保持シャフト(保持装置)
26 保持チャック(保持装置)
30 3次元プリンタ
41 メインキャリッジ(ヘッドキャリッジ)
42 ヘッド保持装置(ヘッド移動装置)
43 プリンタヘッド
44 サブキャリッジ(照射ユニット移動装置)
45 紫外線照射装置
80 印刷対象物
81 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元形状表面を有する印刷対象物の表面に対してプリンタヘッドからインクを吐出するとともに紫外線照射装置から紫外線を照射して、前記表面に所定の印刷を施す3次元プリンタであって、
印刷対象物を保持する保持装置と、
複数の前記プリンタヘッドを略直線状に第1の方向に並んだ状態で搭載するヘッドキャリッジと、
前記保持装置により保持された前記印刷対象物の表面における印刷面と前記プリンタヘッドとが対向するように互いの位置関係を保ちながら、前記保持装置および前記ヘッドキャリッジを3次元空間内において相対移動させる制御を行う移動制御装置と、
前記ヘッドキャリッジ上において、前記表面に対して複数のそれぞれの前記プリンタヘッドを離れる方向に独立して移動可能なヘッド移動装置と、
前記プリンタヘッドに対して前記紫外線照射装置を前記第1の方向に移動可能な照射ユニット移動装置とを備え、
前記ヘッド移動装置により前記表面から離れる方向に移動された前記プリンタヘッドと前記表面との隙間を通り、前記表面から離れる方向に移動されることなく前記印刷面と対向した前記プリンタヘッドの前記第1の方向における側方に隣接するように、前記照射ユニット移動装置により前記紫外線照射装置を移動させることを特徴とする3次元プリンタ。
【請求項2】
前記第1の方向は前記印刷面に対して略平行となっており、
前記ヘッドキャリッジは、前記保持装置に保持された前記印刷対象物の上方を通って前記第1の方向に直線移動可能に構成されており、
前記ヘッド移動装置は、前記第1の方向に対して直交する第2の方向に前記プリンタヘッドを移動させて前記表面から前記プリンタヘッドを離れるように移動させることを特徴とする請求項1に記載の3次元プリンタ。
【請求項3】
前記照射ユニット移動装置が、前記ヘッドキャリッジに搭載されて構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の3次元プリンタ。
【請求項4】
前記ヘッド移動装置は、印刷に用いない前記プリンタヘッドを前記表面から離れる方向に移動させ、印刷に用いる前記プリンタヘッドを前記印刷面に対向させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の3次元プリンタ。
【請求項5】
前記保持装置が、保持した前記印刷対象物の表面形状に応じて設定される回転軸を中心として、前記印刷対象物を回転可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の3次元プリンタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の3次元プリンタを用いて行う印刷方法であって、
3次元形状表面を有する印刷対象物の表面における印刷面に対して、プリンタヘッドからインクを吐出するとともに紫外線照射装置から紫外線を照射して、前記表面に所定の印刷を施すように構成されており、
第1の方向に並んだ複数のそれぞれの前記プリンタヘッドを前記表面に対して離れる方向に独立して移動可能なヘッド移動装置により、前記表面から離れるように前記プリンタヘッドを移動させる第1のステップと、
前記紫外線照射装置を前記第1の方向に移動可能な照射ユニット移動装置により、前記第1のステップにおいて移動された前記プリンタヘッドと前記表面との隙間を通り、前記表面から離れる方向に移動されることなく前記印刷面と対向した前記プリンタヘッドの前記第1の方向における側方に隣接するように前記紫外線照射装置を移動させる第2のステップと、
前記印刷面と対向した前記プリンタヘッドからインクを吐出させるとともに、前記第2のステップにおいて移動された前記紫外線照射装置から前記表面に紫外線を照射して印刷を施す第3のステップとを有することを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−94882(P2010−94882A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266806(P2008−266806)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】