説明

3次元プリンタ

【課題】凹凸が形成された3次元形状の表面に対してプリンタヘッドからインクを吐出して、所望の印刷を施す3次元プリンタを提供する。
【解決手段】印刷対象物80の表面81に対してプリンタヘッド85からインクを吐出して所定の印刷を施す3次元プリンタであって、印刷対象物を保持する保持チャック26と、保持チャックを空間内で移動可能に支持する第1〜第3支持部材10,15,20と、プリンタヘッドを保持する前端部4aを保持チャックにより保持された印刷対象物に対して直線移動可能に支持するプリンタヘッドキャリッジ4と、プリンタヘッドキャリッジに対してプリンタヘッドを直線移動方向に直交する方向に移動可能に支持するヘッド駆動装置88と、プリンタヘッドからのインクの吐出制御を行うプリント制御装置とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元形状表面を有する印刷対象物に対してプリンタヘッドからインクを吐
出して前記表面に所定の印刷を施す3次元プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
紙等のプリント対象物に文字、図柄等を印刷するプリンタ装置は従来種々のものが知られており、例えば、コンピュータに繋がって紙面に印刷するプリンタ装置等は業務用、家庭用として広く用いられている。従来のプリンタは、プリント対象物となる紙もしくはシート材を所定方向に送りながら、プリンタヘッドをこの送り方向と直角に走査移動させながら印刷を行う形式のものが一般的であった。例を挙げれば、特許文献1および2に記載のプリンタ装置がある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−191455号公報
【特許文献2】特開2004−148666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のプリンタ装置は、平面状のシート材もしくは固体物の平面に対して所定の印刷を行うものであり、全て2次元の印刷を行うものであったが、最近において3次元形状の表面(例えば、円筒面、球面、その他のさまざまな曲面)を有する対象物に対して印刷を行うことができるようなプリンタが要求されている。さらには、この3次元形状の表面に凹凸が形成されているものも存在し、このような印刷対象物に対しては、プリンタヘッドと印刷表面との距離を一定に保ちにくく、そのため所望の印刷を施すことが困難であるという課題があった。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、凹凸が形成された3次元形状の表面に対してプリンタヘッドからインクを吐出して、この3次元形状の表面に所望の印刷を施すことができる3次元プリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明に係る3次元プリンタは、3次元形状表面を有する印刷対象物に対してプリンタヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物の表面に所定の印刷を施す3次元プリンタであって、前記印刷対象物を保持する対象物保持装置と、前記対象物保持装置を3次元空間内において移動可能に支持する3次元移動支持装置と、前記プリンタヘッドを保持するヘッド保持装置を、前記対象物保持装置により保持された前記印刷対象物に前記プリンタヘッドが対向する位置を通って直線移動可能に支持するヘッド移動支持装置と、前記ヘッド移動支持装置に対して前記プリンタヘッドを前記直線移動方向に直交する方向に移動可能に支持するヘッド駆動装置と、前記3次元移動支持装置による前記対象物保持装置の3次元移動制御、前記ヘッド移動支持装置による前記ヘッド保持装置の直線移動制御、および前記ヘッド駆動装置による前記プリンタヘッドの前記直交する方向の移動制御に応じて、前記プリンタヘッドからのインクの吐出制御を行うプリント制御装置とを備えて構成される。
【0007】
上記構成の3次元プリンタにおいて、前記プリンタヘッドは平面状に配列された多数の吐出ノズルを有している。そして、前記ヘッド駆動装置は、前記対象物保持装置に保持された前記印刷対象物の表面における前記多数の吐出ノズルが対向する印刷箇所と前記多数の吐出ノズルとの距離に基づいて、前記プリンタヘッドを前記直交する方向に移動させる構成が好ましい。
【0008】
また、上記構成の3次元プリンタにおいて、前記プリンタヘッドは、複数のプリンタヘッド構成体を平面状に並べて構成され、前記複数のプリンタヘッド構成体のそれぞれは、平面状に配列された前記多数の吐出ノズルを有している。そして、前記ヘッド駆動装置は、前記対象物保持装置に保持された前記印刷対象物の表面における前記多数の吐出ノズルが対向する前記印刷箇所と前記多数の吐出ノズルとの距離に基づいて、前記複数のプリンタヘッド構成体のそれぞれを前記直交する方向に移動させる構成が好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に関する3次元プリンタによれば、印刷インクを印刷対象物に向けて吐出するプリンタヘッドが、ヘッド移動支持装置により印刷対象物と対向する位置を通って直線移動可能に構成されるとともに、ヘッド駆動装置によりヘッド移動支持装置に対してプリンタヘッドを上記直線移動方向に直交する方向に移動可能に支持されて構成されている。この構成より、凹凸が形成された3次元形状の印刷対象表面に対して、プリンタヘッドを常に所定の間隔を有した状態となるように(すなわち、プリンタヘッドから吐出されるインクを印刷対象表面に付着させて印刷を施すのに適した間隔となるように)相対移動させることが可能となる。このようにして相対移動させる際に、プリント制御装置によりこの移動に応じてプリンタヘッドからのインクの吐出制御を行えば、凹凸が形成された3次元形状の印刷対象表面に対して、所望の印刷を簡単に且つ自動的に行うことができる。
【0010】
ここで、ヘッド駆動装置が印刷対象物の表面における印刷箇所と多数の吐出ノズルとの距離に基づいて、プリンタヘッドを上記直交する方向に移動させる構成が好ましい。このように構成した場合、3次元移動支持装置およびヘッド移動支持装置により、凹凸が形成された3次元形状の印刷対象表面と吐出ノズルとの距離が変化する場合においても、印刷対象表面と吐出ノズルとの距離を上記印刷に適した所定の間隔となるように、ヘッド駆動装置がプリンタヘッドを移動させることができる。よって、凹凸が形成された3次元形状の印刷対象表面に対して高精度な印刷が可能となる。
【0011】
また、プリンタヘッドは複数のプリンタヘッド構成体を平面状に並べて構成され、ヘッド駆動装置は印刷対象物の表面における印刷箇所と多数の吐出ノズルとの距離に基づいて、複数のプリンタヘッド構成体のそれぞれを、上記直交する方向に独立して移動させる構成が好ましい。このように構成した場合、3次元形状の印刷対象表面に形成されたより微小な凹凸に対しても、印刷対象表面と吐出ノズルとの距離を上記印刷に適した所定の間隔となるように、ヘッド駆動装置が複数のプリンタヘッド構成体のそれぞれを独立して移動させることができる。よって、プリンタヘッドを高精度に移動制御できることにより、凹凸が形成された3次元形状の印刷対象表面に対してより高精度な印刷が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。まず、図1を参照
して、本発明のプリンタ装置における保持装置により保持された印刷対象物80と、プリンタヘッド85との相対移動制御および印刷制御の概要を説明する。図1に示す印刷対象物80は切頭円錐形状の部材であり、その円錐状の外表面81にプリンタヘッド(インクジェットヘッド)85からインクを吐出して所望の印刷を行うように構成されたプリンタの作動原理について、図1を用いて説明する。
【0013】
このプリンタは、図示しないが、印刷対象物80を支持する支持装置を有し、この支持装置は、切頭円錐の中心軸Xが前後に延びるとともに、この軸Xを中心として回転自在(矢印Aで示す回転)に印刷対象物80を支持し、この状態で軸X上の点O1を通り軸Xと直交して左右に延びる軸Yを中心として、印刷対象物80が回転自在(矢印Bで示す回転)となるように支持し、さらに、この印刷対象物80をX軸方向に沿って前後に移動(矢印D(x)で示す移動)可能で、且つX軸およびY軸に直交して垂直に延びるZ軸に沿って、上下に移動(矢印D(z)で示す移動)可能に支持するように構成されている。
【0014】
このように図示しない支持装置により支持された印刷対象物80の上方に、プリンタヘッド85がY軸方向に移動(矢印D(y)で示す移動)可能になって配設されている。さらに、図示しないヘッド駆動装置により、プリンタヘッド85がZ軸方向に移動(矢印D(z)で示す移動)可能になって配設されている。なお、プリンタヘッド85は下面86に多数のインク吐出孔を有し、図示しないインク供給装置から供給されるインクを、プリント制御装置により各インク吐出孔毎に制御して吐出させ、印刷対象物80の表面81に所定の印刷を行うようになっている。
【0015】
このように、支持装置により支持された印刷対象物80の円錐状の表面81に対して、プリンタヘッド85の下面86に形成されたインク吐出孔から、インクを吐出して所望の印刷を行う。このとき、インク吐出孔を印刷対象物80の表面81の印刷対象位置に、所定の印刷間隔を有する接近した位置(インク吐出孔から吐出するインクを表面81に付着させて印刷を行うのに最適な間隔を有する位置)に位置させる必要がある。さらに、印刷対象位置の表面81に対して、プリンタヘッド85の下面に形成されたインク吐出孔が正面を向くように、すなわち、インク吐出孔からのインクの吐出方向が表面81に対して直交するように向ける必要がある。例えば、印刷対象物80の表面81における、図示の印刷対象点P0にプリンタヘッド85からインクを吐出して印刷を行うには、印刷対象点P0の位置における表面81が、プリンタヘッド85の下面86と所定印刷間隔だけ離れた位置まで接近させ、且つ印刷対象点P0の位置における表面81が、プリンタヘッドの下面86と平行になるように位置決めする必要がある。
【0016】
このため、図1に示すように印刷対象物80を支持した状態から、印刷対象物80をX軸方向に沿って前後に移動(矢印D(x)で示す移動)させて、印刷対象点P0がプリンタヘッド85の直下位置まで移動させる。そして、軸Xを中心として回転(矢印Aで示す回転)させて、印刷対象点P0を真上に位置させ、軸Yを中心として回転(矢印Bで示す回転)させて印刷対象点P0を通る稜線L1が水平に延びるように位置させる。そして、プリンタヘッド85の下面86(のインク吐出孔)が、印刷対象点P0の真上に位置するようにプリンタヘッド85をY軸方向に移動(矢印D(y)で示す移動)させる。そして、プリンタヘッド85の下面86が、印刷対象点P0と所定印刷距離だけ離れた接近位置に位置するように、Z軸に沿って移動(矢印D(z)で示す移動)させる。なお、この移動および回転の順序は、印刷対象物80とプリンタヘッド85とが干渉しない限りどのような順序でも良い。
【0017】
このようにして、プリンタヘッド85の下面86が印刷対象点P0と所定印刷距離だけ離れ、且つ正面を向いて対向する位置に位置した状態において、プリンタヘッド85の下面86のインク吐出孔からプリント制御装置による制御に基づいてインクの吐出が行われ、点P0に対する印刷が行われる。そして、例えば、印刷対象物80の表面81における周方向に沿って印刷を行うには、印刷対象物80の外表面における周方向に沿った点P1,P2,P3・・・が、プリンタヘッド85の下面86と所定印刷距離だけ離れて正面を向いて対向するように、上述した支持装置による印刷対象物80の支持位置を変更しながら、プリント制御装置により制御してインク吐出を行わせる。さらにこのとき、点P1,P2,P3・・・が印刷対象点P0に対して凹または凸となっている場合には、凹凸形状に応じてヘッド駆動装置がプリンタヘッド85をZ軸に沿って上下(矢印D(z))方向に移動させる。こうすることにより、点P1,P2,P3・・・が、プリンタヘッド85の下面86と所定印刷距離だけ離れて正面を向いて対向することが可能となり、点P1,P2,P3・・・に対して所望の印刷が行われる。
【0018】
以上説明した作動原理に基づいて、3次元プリントを行うための具体的なプリンタ装置構成を、以下に示す2つの実施例(実施例1および実施例2)を挙げて、図2〜図6を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0019】
図2〜図5に、第1の実施例に係るプリンタ装置30を示す。このプリンタ装置30は、図2に示すように、ベース1の上に、左右一対の支持脚2a,2bおよびこれら支持脚2a,2bの上端を繋いで左右に延びた支持桁2cとからなる門型支持フレーム2が固設されている。また、右支持脚2bに隣接して操作盤6aを有する第1制御装置6が設けられ、左支持脚2aに隣接してメンテナンスステーション8を有する第2制御装置7が設けられている。なお、第1および第2制御装置6,7は、後述する各種部材の移動および回転作動制御を行う移動制御装置、プリンタヘッドからのインク吐出制御を行うプリント制御装置および電源制御装置等の、各種制御装置からなる。
【0020】
支持桁2cの上面に前後一対の左右ガイドレール3a,3bが、左右方向(Y軸方向)に延びて設けられており、この上に左右に移動自在(矢印D(y)方向に移動自在)にプリンタキャリッジ4が取り付けられている。このプリンタキャリッジ4を左右に移動させるために、ボールネジ機構等の送り機構が設けられており、その駆動制御によりプリンタキャリッジ4の左右方向移動を制御できるが、このような送り機構は周知なのでその構成説明は省略する。
【0021】
プリンタキャリッジ4は、図3に示すように、左右ガイドレール3a,3bにより支持される部分から前方に延びて下方に折れ曲がるとともに前方に延びた、側面視クランク形状の部材である。このプリンタキャリッジ4の前端部4aに対して、複数のプリンタヘッドモジュール85が一体となって、上下に移動自在(矢印D(z)方向に移動自在)に取り付けられている。プリンタヘッドモジュール85は、インクジェットヘッドモジュールとも称され、下面86に多数のインク吐出孔(図示せず)が形成されており、例えば、それぞれ異なる色のインクをインク吐出孔から吐出させるように構成されている。前端部4aは、プリンタヘッドモジュール85の下面86と対向する部分が上下に開口しており、下面86に形成されたインク吐出孔から前端部4aの下方に位置する印刷対象物80に向けてインクが吐出されることにより、所望の印刷が行われる。なお、このインクの吐出制御は、プリント制御装置によりインク吐出孔毎になされるが、この制御は周知なのでその説明は省略する。
【0022】
さらに、プリンタヘッドモジュール85の上方には、プリンタヘッドモジュール85と連結されて、プリンタヘッドモジュール85を上下に移動可能(矢印D(z)方向に移動可能)に構成されたヘッド駆動装置88が設置されている。このヘッド駆動装置88の駆動系として、例えばサーボモータ駆動機構を用いることにより、プリンタヘッドモジュール85を所望の(上下)位置に連続的に移動させるように構成されている。このようにプリンタヘッドモジュール85が搭載されたプリンタヘッドキャリッジ4が、左右ガイドレール3a,3b上を左右に移動可能であるが、図2に示すように、左端部に位置した状態で、メンテナンスステーション8が上動してプリンタヘッドモジュール85の下面86の、インク吐出孔の乾燥防止および清掃が行われるようになっている。
【0023】
ベース1の上に、門型支持フレーム2の左右支持脚2a,2bの間位置して、前後方向(X軸方向)に延びる一対の前後ガイドレール1a,1bが設けられており、この前後ガイドレール1a,1bの上に前後に移動自在(矢印D(x)方向に移動自在)に第1支持部材10が設けられている。この第1支持部材10を前後に移動させるために、ボールネジ機構等の送り機構が設けられており、その駆動制御により第1支持部材10の前後方向移動を制御できるが、このような送り機構は周知なのでその構成説明は省略する。
【0024】
第1支持部材10の上に、垂直に起立した状態で垂直支持部材11が固設されており、この垂直支持部材11の前面に垂直方向(Z方向)に延びる一対の上下ガイドレール12a,12bが設けられている。この上下ガイドレール12a,12bに支持されて、上下に移動自在(矢印D(z)方向に移動自在)に第2支持部材15が設けられている。この第2支持部材15を上下に移動させるために、ボールネジ機構等の送り機構が設けられており、その駆動制御により第2支持部材15の上下方向移動を制御できるが、このような送り機構は周知なのでその構成説明は省略する。
【0025】
第2支持部材15の前面15aは、第2支持部材15に対して定まる所定点O1(後述するように印刷対象物80が位置し得る位置に設定された点)を通り、Y軸方向に延びる第1回転軸Y0を中心とする円筒面形状に形成されており、この円筒面形状の前面15aに接合する円筒面形状の後面20aを有した第3支持部材20が、前面15aに沿って摺動自在に設けられている。すなわち、第3支持部材20の後面20aが第2支持部材15の前面15aと摺接移動可能であり、これにより、第3支持部材20は第2支持部材15に対して第1回転軸Y0を中心として回転(矢印Bで示す回転)自在となって支持される。
【0026】
このように支持した第3支持部材20を、第2支持部材15に対して第1回転軸Y0を中心として回転移動させるために、第3支持部材20の図2における左側部の前面に第1回転軸Y0を中心とした内歯車21が形成されている。そして、第2支持部材15の左側部の前面に駆動モータ16が取り付けられ、この駆動モータ16の駆動シャフトに取り付けられた駆動ピニオン17が内歯車21と噛合している。このため、駆動モータ16により駆動ピニオン17を回転駆動すれば、これに噛合する内歯車21が回転駆動され、第3支持部材20を第1回転軸Y0を中心として回転させることができる。
【0027】
第3支持部材20の前面側に、保持シャフト25が前後方向(X軸方向)に延びるとともに、上記所定点O1を通る第2回転軸X0を中心として回転自在に設けられて前方に突出しており、その前端に印刷対象物を保持するための保持チャック26が取り付けられている。保持シャフト25は、第3支持部材20の内部に配設された駆動モータ(図示せず)により回転駆動制御されるようになっており、保持チャック26は印刷対象物80を保持可能な構成を有している。このため、保持チャック26により印刷対象物80を保持した状態で保持シャフト25を回転駆動すれば、印刷対象物80を第2回転軸X0を中心として回転させることができるようになっている。
【0028】
上述のように第3支持部材20は第1回転軸Y0を中心として回転自在であるため、第3支持部材20が所定回転位置(図3に示す回転位置)に位置したときに第2回転軸X0は前後方向(X軸方向)に延びるが、第3支持部材20の回転位置に応じて第2回転軸X0は上下に振られる。また、図示のように第1回転軸Y0および第2回転軸X0はともに所定点O1を通り互いに交差しているが、これは交差せずにずれていても良い。但し、交差している方が、印刷対象物80の位置演算が容易であり、移動制御装置による制御が簡単である。
【0029】
以上の構成のプリンタ装置において、保持シャフト25の回転中心となる第2回転軸X0が、図1に示す作動原理構成における軸Xに該当し、第3支持部材20の回転中心となる第1回転軸Y0が図1の作動原理構成の軸Yに該当する。この第3支持部材20を支持する第2支持部材15は、第1支持部材10によりZ軸方向(上下方向)に移動(矢印D(z)で示す移動)可能に支持され、第1支持部材10は、ベース1上にX軸方向(前後方向)に移動(矢印D(x)で示す移動)可能に支持されている。また、プリンタヘッド85は、印刷対象物80の上方においてベース1に対して、Y軸方向(左右方向)に移動(矢印D(y)で示す移動)可能に支持されるとともに、Z軸方向(上下方向)に移動(矢印D(z)で示す移動)可能に支持されている。すなわち、図1に示す作動原理と同一の作動を行うことができるように構成されている。
【0030】
なお、本明細書における前端部4aが、請求の範囲に規定するヘッド保持装置に該当し、同様に、プリンタヘッドキャリッジ4がヘッド移動支持装置、プリンタヘッドモジュール85がプリンタヘッドにそれぞれ該当する。また、本明細書における保持シャフト25および保持チャック26により、請求の範囲に規定する対象物保持装置が構成される。本明細書における第1支持部材10、第2支持部材15および第3支持部材20を主体として、請求の範囲に規定する3次元移動支持装置が構成される。
【0031】
以上ここまでは、プリンタ装置30の構成部材について説明したが、以下において、上記のプリンタ装置30を用いて、印刷対象物80に所望の印刷を行うときの各構成部材の作動について説明する。ここで、本発明の特徴構成を分かりやすく説明するために、プリンタヘッドモジュール85、ヘッド駆動装置88および保持チャック26に保持された印刷対象物80の作動を中心に説明する。
【0032】
図1に示すような作動原理に基づき、印刷対象物80の表面81における周方向に沿って印刷を行う場合には、印刷を行う前段階として、例えば各移動制御装置が原点に位置した状態において、印刷対象物80の表面81の形状データを取得し、取得された形状データがプリンタ装置30の演算処理部(図示せず)に記憶されている。また、各移動制御装置が駆動した場合にもその駆動量を検出することにより、印刷対象物80の表面81の各位置を算出できる構成となっている。ここで、各移動制御装置を駆動させて、印刷対象点P0がプリンタヘッドモジュール85の直下に位置するように移動させる。
【0033】
このとき、上記形状データより印刷対象点P0の位置が算出されるとともに、例えば図5に示すように、印刷対象点P0と所定印刷距離d1だけ離れた接近位置にプリンタヘッドモジュール85の下面86が位置するように、上記形状データを基にヘッド駆動装置88がプリンタヘッドモジュール85をZ軸に沿って矢印D(z)方向に連続的に移動制御する(実線で示したプリンタヘッドモジュール85)。上記位置において、印刷対象点P0に対して所望の印刷を行った後、第2回転軸X0を中心として印刷対象物80が回転されることにより、次の印刷対象点P1が下面86の下方に位置する(2点破線で示したプリンタヘッドモジュール85)。
【0034】
ここで、印刷対象点P0に対して印刷対象点P1は下方に向けて凹んでいるために、表面81と下面86との距離は印刷対象物80の回転に伴って変化する。このとき、上記形状データを基にヘッド駆動装置88が、表面81と下面86との距離を常に所定印刷距離d1に保つように、プリンタヘッドモジュール85をZ軸に沿って矢印D(z)方向に連続的に移動制御する。このように、プリンタヘッド85の直下に順次印刷対象点を位置させるとともに、ヘッド駆動装置88がプリンタヘッドモジュール85に対して移動制御を行いながら、プリント制御装置に制御されて印刷用インクを吐出することにより、所望の印刷が行われる。つまり、上記形状データを基にヘッド駆動装置88が、プリンタヘッドモジュール85をZ軸に沿って矢印D(z)方向に連続的に移動制御することにより、インク吐出孔は常に所定印刷距離d1だけ離れた位置から、プリント制御装置に制御されて印刷用インクを吐出可能となり、印刷対象物80の表面81に形成された凹凸に関わらず所望の印刷を行うことができる。
【0035】
ここで、第1の実施例に係るプリンタ装置30の効果について簡単にまとめると、印刷対象物80の表面81における印刷対象点とインク吐出孔との距離を、常に所定印刷距離d1に保つように、ヘッド駆動装置88がプリンタヘッドモジュール85を移動制御する構成となっている。よって、インク吐出孔は常に所定印刷距離d1だけ離れた位置から印刷用インクを吐出可能となり、印刷対象物80の表面81に形成された凹凸に関わらず、高精度な印刷を行うことができる。
【実施例2】
【0036】
図2〜図4および図6に、第2の実施例に係るプリンタ装置40を示す。このプリンタ装置40は、第1の実施例に係るプリンタ装置30とほぼ同一構成となっており、以下においてプリンタ装置30と異なる構成部分を中心に説明する。なお、プリンタ装置30と同一番号が付された部材は、上述の第1の実施例で説明した構成となっている。
【0037】
プリンタキャリッジ4の前端部4a上に対して、複数のプリンタヘッドモジュール85c,85m,85y,85k(以下において、プリンタヘッドモジュール85c〜85kと称す)が、それぞれ独立して上下に移動自在(矢印D(z)方向に移動自在)に取り付けられている。ここで、例えばプリンタヘッドモジュール85cはシアン、85mはマゼンダ、85yはイエロー、85kはブラックのように、それぞれ異なる色のインクをインク吐出孔から吐出するように構成されている。なお、上記複数のプリンタヘッドモジュール85c〜85kをまとめて、単にプリンタヘッドモジュール85aと称する。さらに、プリンタヘッドモジュール85aの上方には、各プリンタヘッドモジュール85c〜85kと連結されて、各プリンタヘッドモジュール85c〜85kをそれぞれ独立して上下に移動可能(矢印D(z)方向に移動可能)に構成されたヘッド駆動装置89が設置されている。上記ヘッド駆動装置89の駆動系として、例えばサーボモータ駆動機構を用いることにより、各プリンタヘッドモジュール85c〜85kを独立して所望の(上下)位置に、連続的に移動させることができるように構成されている。
【0038】
以上ここまでは、プリンタ装置40のプリンタヘッド部分の構成について説明したが、以下において、上記のプリンタ装置40を用いて印刷対象物80に所望の印刷を行うときの各構成部材の作動について説明する。ここで、本発明の特徴構成を分かりやすく説明するために、プリンタヘッドモジュール85a、ヘッド駆動装置89および保持チャック26に保持された印刷対象物80の作動を中心に説明する。
【0039】
図1に示すような作動原理に基づき、印刷対象物80の表面81における周方向に沿って印刷を行う場合には、上記第1実施例と同様に、印刷対象物80の表面81の形状データを取得した上で、各移動制御装置を駆動させて、印刷対象点P0がプリンタヘッドモジュール85aの直下に位置するように移動させる。このとき、上記形状データより印刷対象点P0の位置が算出されるとともに、例えば図6に示すように、印刷対象点P0と所定印刷距離d1だけ離れた接近位置に、プリンタヘッドモジュール85c〜85kのそれぞれの下面86c,86m,86y,86k(以下において、下面86c〜86kと称す)を位置させる。ここで、上記形状データを基にヘッド駆動装置89がプリンタヘッドモジュール85c〜85kのそれぞれを、Z軸に沿って矢印D(z)方向に連続的に移動制御する(実線で示したプリンタヘッドモジュール85a)。上記位置において、印刷対象点P0に対して所望の印刷を行った後、第2回転軸X0を中心として印刷対象物80が回転されることにより、次の印刷対象点P1が各下面86c〜86kの下方に位置する(2点破線で示したプリンタヘッドモジュール85a)。
【0040】
ここで、印刷対象点P0に対して印刷対象点P1は下方に向けて凹んでいるために、表面81と各下面86c〜86kとの距離は印刷対象物80の回転に伴って変化する。このとき、上記形状データを基にヘッド駆動装置89が、表面81と下面86c〜86kとの距離を常に所定印刷距離d1に保つように、プリンタヘッドモジュール85c〜85kのそれぞれを、Z軸に沿って矢印D(z)方向に連続的に移動制御する。このように、プリンタヘッドモジュール85aの直下に順次印刷対象点を位置させるとともに、ヘッド駆動装置89がプリンタヘッドモジュール85aに対して移動制御を行いながら、プリント制御装置に制御されて印刷用インクを吐出することにより、所望の印刷が行われる。つまり、上記形状データを基にヘッド駆動装置89が、プリンタヘッドモジュール85aのそれぞれをZ軸に沿って矢印D(z)方向に連続的に移動制御することにより、インク吐出孔は常に所定印刷距離d1だけ離れた位置から、プリント制御装置に制御されて印刷用インクを吐出可能となり、印刷対象物80の表面81に形成された凹凸に関わらず所望の印刷を行うことができる。
【0041】
ここで、第2の実施例に係るプリンタ装置40の効果について簡単にまとめると、印刷対象物80の表面81における印刷対象点と各下面86c〜86kに形成されたインク吐出孔との距離を、常に所定印刷距離d1に保つようにヘッド駆動装置89が、各プリンタヘッドモジュール85c〜85kを、それぞれ独立してZ軸に沿って矢印D(z)方向に連続的に移動制御する構成となっている。よって、印刷対象物80の表面81に形成された凹凸に応じて、各プリンタヘッドモジュール85c〜85kごとに細かな移動制御ができ、より微小な凹凸に対しても高精度な印刷が可能となる。
【0042】
上述の第1および第2の実施例において、ヘッド駆動装置88における駆動系として、サーボモータ駆動機構を用いてプリンタヘッドモジュール85(85a)を連続的に上下移動させる構成となっているが、このような構成に限定されず、例えば、エアシリンダを用いてプリンタヘッドモジュール85(85a)を段階的に上下移動させる構成でも良い。
【0043】
上述の第1および第2の実施例において、例えばプリンタヘッドモジュール85の下面86に、表面81と下面86との距離を連続検出可能である距離検出器(図示せず)を設置する構成も可能である。この距離検出器において検出された距離および表面81の形状データに基づいて、ヘッド駆動装置88(89)がプリンタヘッドモジュール85を移動制御するように構成することにより、プリンタヘッドモジュール85のより高精度な移動制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るプリンタの作動原理を説明する概略図である。
【図2】本発明に係るプリンタ装置を示した正面図である。
【図3】このプリンタ装置の側面図(一部断面図)である。
【図4】このプリンタ装置の一部を取り出して示した斜視図である。
【図5】第1の実施例に係るヘッド駆動装置の作動を説明する模式図である。
【図6】第2の実施例に係るヘッド駆動装置の作動を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0045】
4 プリンタヘッドキャリッジ(ヘッド移動支持装置)
4a 前端部(ヘッド保持装置)
10 第1支持部材(3次元移動支持装置)
15 第2支持部材(3次元移動支持装置)
20 第3支持部材(3次元移動支持装置)
25 保持シャフト(対象物保持装置)
26 保持チャック(対象物保持装置)
30 プリンタ装置(3次元プリンタ)
80 印刷対象物
85 プリンタヘッドモジュール(プリンタヘッド)
85c,85m,85y,85k プリンタヘッドモジュール(プリンタヘッド構成体)
88 ヘッド駆動装置
P0 印刷対象点(印刷箇所)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元形状表面を有する印刷対象物に対してプリンタヘッドからインクを吐出して前記印刷対象物の表面に所定の印刷を施す3次元プリンタであって、
前記印刷対象物を保持する対象物保持装置と、
前記対象物保持装置を3次元空間内において移動可能に支持する3次元移動支持装置と、
前記プリンタヘッドを保持するヘッド保持装置を、前記対象物保持装置により保持された前記印刷対象物に前記プリンタヘッドが対向する位置を通って直線移動可能に支持するヘッド移動支持装置と、
前記ヘッド移動支持装置に対して前記プリンタヘッドを前記直線移動方向に直交する方向に移動可能に支持するヘッド駆動装置と、
前記3次元移動支持装置による前記対象物保持装置の3次元移動制御、前記ヘッド移動支持装置による前記ヘッド保持装置の直線移動制御、および前記ヘッド駆動装置による前記プリンタヘッドの前記直交する方向の移動制御に応じて、前記プリンタヘッドからのインクの吐出制御を行うプリント制御装置とを備えた3次元プリンタ。
【請求項2】
前記プリンタヘッドは平面状に配列された多数の吐出ノズルを有し、
前記ヘッド駆動装置は、前記対象物保持装置に保持された前記印刷対象物の表面における前記多数の吐出ノズルが対向する印刷箇所と前記多数の吐出ノズルとの距離に基づいて、前記プリンタヘッドを前記直交する方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の3次元プリンタ。
【請求項3】
前記プリンタヘッドは、複数のプリンタヘッド構成体を平面状に並べて構成され、
前記複数のプリンタヘッド構成体のそれぞれは、平面状に配列された前記多数の吐出ノズルを有し、
前記ヘッド駆動装置は、前記対象物保持装置に保持された前記印刷対象物の表面における前記多数の吐出ノズルが対向する前記印刷箇所と前記多数の吐出ノズルとの距離に基づいて、前記複数のプリンタヘッド構成体のそれぞれを前記直交する方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の3次元プリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−184119(P2009−184119A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23230(P2008−23230)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】