説明

3次元仮想環境におけるオブジェクトの動きの制御方法

本発明は、3次元仮想環境をブラウズしているユーザのヒューマンインタフェースデバイスによって3次元仮想環境におけるオブジェクトの動きを制御する方法、システムおよびデバイスに関する。ヒューマンインタフェースデバイスは、3次元仮想環境にアクセスするためのクライアントデバイスに結合されている。3次元仮想環境は、少なくとも1つのアプリケーションサーバに配置されている。クライアントデバイスと少なくとも1つのアプリケーションサーバとは通信リンクを介して結合されている。この方法は、最初に、2次元表面においてポインタの位置を検出することによって2次元表面における始点を決定し、次に、始点に基づいて、始点を包囲する表面における第1の内部領域と、第1の領域を包囲する表面における第2の領域と、第2の領域を包囲する表面における第3の領域とを配分する。更に、ポインタの動きと動きが検出された領域に関連するオブジェクト動き制御関数とに基づいて、オブジェクト動き制御命令が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載されている3次元仮想環境におけるオブジェクトの動きを制御する方法と、請求項5のプリアンブルに記載されているシステムとに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、オブジェクトを3次元仮想環境において正確に滑らかに直感的に動かすためには、HIDとも称され仮想現実のために特別に作成されたヒューマンインタフェースデバイスと、アナログ入力デバイス上で2つの自由度をそれぞれの手が制御する人間の2つの手の協調との両方またはいずれか一方が要求される。
【0003】
3次元仮想環境におけるオブジェクトの動き制御のために用いられ、2つのアナログジョイスティックを備え広く知られているコンソールパッドが、古典的な家庭用ゲームシステムにおいて実現された解決策である。それぞれのアナログジョイスティックは、それぞれ2つの自由度を可能にしている。対話方式は、ターゲットアプリケーションのユーザビリティ要件に左右されるが、3次元仮想世界におけるアバタのための典型的な制御方式は、一方の(通常は左側の)ジョイスティックがアバタの直線運動を制御し、他方の(通常は右側の)ジョイスティックがカメラアングルの動きを制御するというものである。
【0004】
任天堂のWiiが備えているような更なる混乱を誘う制御デバイスでも、3次元世界における動きをキャプチャするのに両手の協調が要求されるのであって、ヌンチャクに設けられたアナログスティックを介して2つの自由度を一方の手で制御し、他方の手でWiiのリモコンを傾斜させることにより更に2つの自由度を制御することになる。
【0005】
また、2004年12月23日に公開され出願公開番号が第2004/0260507号である米国特許出願公開には角速度および直線速度を測定するための専用センサハードウェアが開示されており、他方で、専門家向けの仮想現実VRシステムで用いられているより高度なトラッキング技術では高い忠実度で6つの自由度すべてがキャプチャされるのであるが、高価で複雑な専用機器が用いられる。
【0006】
また、2009年8月20日に公開され出願公開番号が第2009/0209343号である米国特許出願公開には、手および身体の動きをセカンドライフにおけるアバタの動きに変換することによって動作するカメラシステムが開示されている。すこし前方にチップするとアバタが歩き、より速くチップするとアバタが走り、速くチップしすぎるとアバタが転倒する。
【0007】
3次元仮想環境におけるオブジェクトの動きを制御する上述のシステムは、それぞれが、そのような動きを制御するのに比較的複雑なシステムを要する点で短所を有する。なお、ここで複雑というのは要求されるシステム内部についていえることであり、すなわち、人の動作を分析するためのカメラ設定および処理環境や、3次元世界におけるオブジェクトの動きを制御するのに要求される身体協調のレベルのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0260507号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0209343号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述の知られているタイプの3次元仮想環境におけるオブジェクトの動き制御方法を提供することであるが、本発明ではそのような3次元仮想環境においてオブジェクトを制御するシステムの複雑性が軽減されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載された方法と、請求項5に記載されたシステムと、請求項7に記載されたオブジェクト動き制御モジュールと、請求項9に記載された関連するクライアントデバイスと、請求項10に記載された関連するヒューマンインタフェースデバイスとによって達成される。
【0011】
実際には、2次元表面におけるポインタの初期位置を検出することによって2次元表面における始点をまず決定し、決定されたこの始点に基づいて、始点を包囲する2次元表面における第1の領域を配分し、前記第1の領域を包囲する2次元表面における第2の領域を配分し、今度は第2の領域を包囲する表面における第3の領域を配分し、更に、表面におけるポインタの連続的な動きに基づいてオブジェクト動き制御関数をそれぞれの配分された領域に割り当て、オブジェクト動き制御関数は動きが検出された領域と関連するようにすることによって、オブジェクト動き制御命令が生成される。
【0012】
第2の配分された領域は第1の配分された領域を含まないように配分された領域であり、第3の配分された領域は第1および第2の配分された領域を含まないように配分された領域である。
【0013】
本発明の追加的な効果としては、片手による操作だけしか要求されず、市販されているハードウェア(たとえば、タッチ感応表面など)を用いて容易に実装可能なソリューションであって、自由度3が与えられ、3次元環境においてオブジェクトの角速度および直線速度の制御が可能になるという、ごく普通のゲーム愛好家にとって十分であり、または直感的な仕方で3次元仮想環境をナビゲートするのに十分な効果がある。
【0014】
本発明の別の特徴的な特色が、請求項2、請求項6および請求項8に記載されている。
【0015】
ポインタの動きが第1の配分された領域の内部で生じる場合には、オブジェクト動き制御関数は、3次元仮想環境におけるオブジェクトの動きが生じないことを示す。ポインタの動きが第2の領域の内部で検出される場合には、オブジェクト動き制御関数は、3次元仮想環境におけるオブジェクトの動きとしては角運動だけが含まれる/指示されることを示す。なお、この場合に、角速度はポインタの動きから導かれる。あるいは、ポインタの動きが第3の領域の内部で検出される場合には、オブジェクト動き制御関数は、3次元仮想環境におけるオブジェクトの動きは回転および直線運動が含まれる/指示されることを示す。なお、この場合に、角速度および直線速度はポインタの動きから導かれる。
【0016】
特許請求の範囲において用いられる「備える、含む」(comprising)という用語はその用語に続いて列挙される手段に限定されるように解釈されるべきではないことに注意してほしい。したがって、「手段Aと手段Bとを備えている装置」という表現の範囲は、コンポーネントAおよびBだけから構成される装置に限定されるべきではない。この表現は、本発明に関し当該装置において意味のあるコンポーネントはAおよびBだけであることを意味する。
【0017】
同様に、特許請求の範囲において「結合された」(coupled)という用語が用いられているが、この用語は直接的な接続だけに限定されると解釈されるべきではないことにも注意してほしい。したがって、「装置Bに結合された装置A」という表現の範囲は、装置Aの出力が装置Bの入力に直接的に接続されている装置やシステムに限定されるべきではない。この表現は、Aの出力とBの入力との間に経路が存在していて、この経路は他の装置や手段を含む経路でありうることを意味する。
【0018】
実施形態に関する以下の説明を添付の図面と共に参照することによって、本発明の上述したおよびそれ以外の目的並びに特徴がより明らかになり、本発明それ自体が最もよく理解されるはずである。添付の図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】3次元仮想環境におけるオブジェクトの動きをデバイスと結合ネットワークを用いて制御する本発明の実施形態が実現されているシステムを表す図である。
【図2】本発明による3次元仮想環境におけるオブジェクトの動き制御システムにおいて用いられるオブジェクト動き制御モジュールの機能構造を表す図である。
【図3a】始点と、第1、第2および第3の領域とが配分される2次元表面を表す図である。
【図3b】始点と、第1、第2および第3の配分された領域とに対する関係で2次元表面におけるポインタの動きを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に続く段落では、図面を参照しながら、本発明による3次元仮想環境におけるオブジェクトの動きを制御するシステムの実装と関連の装置とについての説明がなされる。この説明の第1の段落では、このネットワークの主要な構成要素について、対応する図面である図1および図2に示されているその機能部分と共に、説明がなされる。第2の段落では、それまでに言及されたネットワーク構成要素と説明された機能部分との間のすべての接続が定義される。それ以降の段落では、3次元仮想環境におけるオブジェクトの動きを制御するシステムの実際の実行についての説明がなされる。
【0021】
図1に示されている本発明のこの実施形態の本質的な構成要素は、セカンドライフセカンドライフ、ワンダーランド、オープンクロック、ソリプシス、または任意のそれ以外の3次元仮想環境/世界などの3次元仮想環境3DVEを配置するアプリケーションサーバ3D−ASである。簡潔とするためにアプリケーションサーバ3D−ASがただ1つだけ示されているが、通常はそのようなアプリケーションサーバが複数個存在する。更に、3次元仮想環境にアクセスするためのクライアントデバイスCLDが存在し、ここで、クライアントデバイスCLDはパーソナルコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタントなどのモバイルPC、または携帯電話その他であるのが通常であり、クライアントデバイスCLDはDSL、ケーブル、WiFiまたはそれ以外などを経由してのインターネットアクセスを有する。また、クライアントデバイスCLDは、セカンドライフなどの3次元仮想環境3DVEにアクセスするためのクライアントアプリケーションを実行するのが通常である。
【0022】
そのような3次元仮想環境3DVEにおけるユーザアバタなどのオブジェクトの動きを制御するためにヒューマンインタフェースデバイスHIDが存在し、本発明ではタッチスクリーンを有するモバイル通信デバイスであるが、それとは異なり、ラップトップコンピュータのタッチパッドや、クライアントデバイスCLDを制御するのに用いられるマウスでもかまわない。本発明において開示されている対話機構はヒューマンインタフェースデバイスHIDにおける3次元環境のレンダリングを要しないし、エンドユーザとヒューマンインタフェースデバイスHIDとの間での直接的なアイコンタクトも要しないということに注意するのが重要である。
【0023】
ヒューマンインタフェースデバイスHIDは、有線または無線接続を介してクライアントデバイスCLDに結合されうる。有線接続は、USB、ファイアワイア、シリアルポート、イーサネット(登録商標)、光ファイバ、または任意のそれ以外の接続でありうる。無線接続技術としては、wifi、wimax、ブルートゥース、赤外線、3G、LTE、または任意のそれ以外の接続が含まれる。クライアントデバイスCLDは、インターネット接続を介して、または、イントラネット、ブルートゥース、wifi、wimax、3Gネットワークなどの任意のそれ以外の適切な接続を介して、直接的にまたはアクセスネットワークを介して結合されるなど間接的に、アプリケーションサーバ3D−ASに結合されうる。
【0024】
更に、クライアントデバイスCLDまたはアプリケーションサーバ3D−ASは、HIDからの入力データを3次元世界の中でのオブジェクトの意図する動きに変換するオブジェクト動き制御モジュールOMCMを含みうる。あるいは、オブジェクト動き制御モジュールOMCMの機能を、クライアントデバイスCLD、アプリケーションサーバ3D−ASおよび任意のそれ以外の中間デバイスの間に配分することも可能である。
【0025】
オブジェクト動き制御モジュールOMCMは、2次元表面における始点を当該2次元表面におけるポインタの位置を検出することによって決定することができる初期ポインタ検出部IPDPを第1に含む。ただし、ここで、2次元表面は、ラップトップコンピュータデバイスのタッチパッドや、PDAのタッチ感応スクリーンである。あるいは、2次元表面としての机やそれ以外の表面の上を移動するヒューマンインタフェースデバイスHIDとしてマウスを用いる場合には、マウスのボタンを押下することにより、対話の始点が指示される。
【0026】
更に、決定された始点に基づいて、表面の上で始点を包囲する第1の(円形の)領域と、表面の上で第1の領域を包囲する第2の(円形の)領域と、表面の上で第2の領域を包囲する第3の(円形の)領域とを配分するように構成されているゾーン配分部ZAPと、ポインタの動きに基づいて、また、前記動きが生じる配分された領域のそれぞれと関連するオブジェクト動き制御関数に追加的に基づいて、オブジェクト動き制御命令を生成することができるオブジェクト動き制御命令生成部IGPとが存在する。
【0027】
図3aおよび3bにおいて配分された領域I、IIおよびIIIは円形のものとして与えられているが、これらの領域はそれぞれが代わりに三角形や矩形や任意のそれ以外の適切な形状を有することが可能であることに注意すべきである。この実施形態では、これらの配分された領域は、代わりにそれ以外の適切な形状を選択することができるが、円形であるものと想定する。
【0028】
この方法およびシステムにおいて意図されているオブジェクト動き制御関数は、次を意味する。
1.ポインタの動きが第1の(円形の)領域の内部で検出される場合には、3次元仮想環境におけるオブジェクトの動きは存在しないこと、
2.ポインタの動きが第2の(円形の)領域の内部で決定される/検出される場合には、3次元仮想環境におけるオブジェクトの動きは角運動であり、オブジェクトの動きの角速度はポインタの動きから導かれること、または
3.ポインタの動きが第3の領域の内部で検出される場合には、3次元仮想環境におけるオブジェクトの動きは回転および直線運動であり、動きの直線および回転速度はポインタの動きから導かれること。
【0029】
オブジェクト動き制御モジュールOMCMは入力端子Iを有する。同時に、この入力端子Iは、ゾーン配分部ZAPに結合されている初期ポインタ検出部IPDPの入力端子でもある。ゾーン配分部ZAPは、更に、オブジェクト動き制御命令生成部IGPに結合されている。オブジェクト動き制御命令生成部IGPは、同時にオブジェクト動き制御モジュールOMCMの出力端子でもある出力端子を有する。
【0030】
本発明の実行を説明するため、ユーザは、セカンドライフまたはワンダーランドのような3次元仮想環境3DVEをブラウズし、自分のヒューマンインタフェースデバイスHID、たとえばPDAのタッチ感応表面や、更にはたとえばパーソナルコンピュータである自分のクライアントデバイスCLDに結合されたタッチスクリーンや、ゲーム機や、スクリーンを備えたパブリック端末を用い、3次元仮想環境3DVEをブラウズするためのクライアントアプリケーションを用いると想定する。
【0031】
ユーザはセカンドライフのブラウズを開始し自分のアバタを用いてセカンドライフの中をさまようことを希望すると想定する。セカンドライフにおいてアバタの動きを制御するため、ユーザは、意図している対話に応じて、手の指またはポインティングデバイスを用いて、タッチ感応表面のある位置をタッチし始める。初期ポインタ検出部IPDPは、2次元表面すなわちタッチスクリーンにおけるポインタの初期位置を検出することによって、最初のタッチに基づいて2次元表面における始点を決定する。この決定された始点に基づき、ゾーン配分部ZAPは、タッチスクリーン表面の上で始点を包囲する第1の領域と、タッチスクリーン表面の上で第1の領域を包囲する第2の領域と、タッチスクリーン表面の上で第2の領域を包囲するaとを配分する。
【0032】
これらの領域はそれぞれが円形、三角形若しくは矩形であるかまたは任意のそれ以外の適切な形状を有することが可能であることに注意すべきである。この実施形態では、これらの領域は、他の適切な形状を代わりに選択することができるけれども、円形であると想定される。
【0033】
これらの3つの上述した配分された感応領域の位置はタッチ感応領域の上の位置から導かれるのであるが、ポインタすなわち指がタッチ感応表面の上に最初におかれ、これらの配分された感応領域は、ポインタすなわち指が表面の上をドラッグされる限り同じ位置に留まる。
【0034】
これは必須ではないが電池の寿命を節約するために通常のタッチスクリーンにおけるようにグラフィクスを表示することができる場合には、これらの配分された領域すなわちこの実施形態では円によって限界が画定された領域は、タッチ感応表面における視覚的フィードバックとして現れうる。
【0035】
更に、タッチ感応表面における指またはポインティングデバイスの動きはトラッキングされ、オブジェクト動き制御命令生成部IGPが、この動きとこの動きが生じる領域に関連するオブジェクト動き制御関数とに基づいて、オブジェクト動き制御命令を生成する。
【0036】
ユーザの指またはポインティングデバイスが第1の(円形の)領域の内部を動く場合には、オブジェクト動き制御命令生成部IGPによってどのようなオブジェクト動き制御命令も生成されない。ユーザの指またはポインティングデバイスが第1の(内部の)領域の外にスライドした後で再び第1の領域の中に戻る場合、または、タッチ感応表面との接触を失う(たとえば、指を持ち上げる)場合には、オブジェクト動き制御命令がIGPによって生成され、オブジェクトの動きが停止される。
【0037】
このオブジェクト動き制御命令生成部IGPは、3次元仮想環境3DVEに、オブジェクトの動きがまったく存在しないように命令するオブジェクト動き制御命令を生成する。
【0038】
その後でユーザの指またはポインティングデバイスが第1の領域から第2の円領域の内部へ移動された場合には、3次元仮想環境におけるオブジェクトの動きは、この領域と関連するオブジェクト動き制御関数によると、角運動である。第2の領域(第1の領域の外部であり第3の領域の外部)と関連するオブジェクト動き制御関数は、角運動のみが3次元仮想環境3DVEのオブジェクトに強制されるということであり、正規化された角速度は、ΔΘの振幅と符号との変動から導かれる。ここで、ΔΘは、第1の領域の外部にある指の現在の位置と、円の中心と、ドラッグされた指が第1の円の境界を最初に横切った点とによって形成される角度である(図3aを参照のこと)。ΔΘの振幅が増大すると、角速度が増加する。ΔΘの振幅が縮小すると、角速度が低下する。ΔΘの符号が変化すると、角回転の向きが変化する。
【0039】
この後で、ユーザは、自分の指またはポインティングデバイスを第2の領域の外から第3の領域の中へドラッグすることがある。第3の領域は、最も外側にある「回転および直線運動感応領域」と称されることもある。
【0040】
オブジェクト動き制御命令生成部IGPは、次に、第3の領域における動きとこの第3の領域に関連するオブジェクト動き制御関数とに基づいて、追加的な直線オブジェクト動き制御命令を生成する。なお、このオブジェクト動き制御関数は、ポインティングデバイスが最も内側の円を離れたときに導かれた回転運動に加え、正規化された直線運動成分を必然的に伴う。指が第2の円の外部へドラッグされると、オブジェクトの現在の向きに対する直線運動の方向が、方向v(図3bを参照のこと)から導かれる。ここでvは、円の中心から指が第1の円を最初に離れた点までのベクトルである。この相対的方向は、ポインティングデバイスが表面の上を第1の円の外部にドラッグされる限り、固定されている。この相対的方向は、指が表面の上でそれ以上ドラッグされない場合、または、第1の円の内部に戻る場合に、リセットされる。第2の領域(円)の外部では、正規化された速度が、指が現在ドラッグされている点と第2の円との間の距離を表す線分ΔRの長さの変動から導かれる。指が中心から離れる方向にドラッグされればされるほど、アバタはそれだけますます速く動く。指が第2の円に近づく方向にドラッグされればされるほど、アバタはそれだけますますゆっくりと動く。指がドラッグされて第2の円の内部に戻る場合には、オブジェクト動き制御関数は、直線運動を停止するように命令する。
【0041】
たとえば、指が第3の領域の中にドラッグされると:
− ベクトルvが北方向を向いていてΔR>0およびΔΘ=0であると、前方向に歩いているアバタに対応する。
− ベクトルvが北方向を向いていてΔR>0およびΔΘ>0であると、前方向に歩きながら同時に左向きに回転するアバタに対応する。
− ベクトルvが北方向を向いていてΔR>0およびΔΘ<0であると、前方向に歩きながら同時に右向きに回転するアバタに対応する。
− ベクトルvが東方向を向いていてΔR>0およびΔΘ=0であると、右方向に銃撃するアバタに対応する。
【0042】
オブジェクト動き制御関数によって生成される正規化された動きの感度は、ユーザのユーザビリティの要求に適合するようにユーザインタフェースを介して構成することが可能であり、生成された関連データは、3次元アプリケーションに特有のCLDインタフェースによって受け入れられる特定のデータ表現とプロトコルとに適合させることが可能である。
【0043】
ヒューマンインタフェースデバイスHIDの追加的なボタンは、3次元仮想環境3DVEの中の地上面から、たとえばジャンプまたは飛び上がるオブジェクトの動きを強制するのに割り当てることができる。
【0044】
最終的な注意は、以上の記載では本発明の実施形態が機能ブロックに関して説明されているということである。以上でなされたようなこれらのブロックの機能的な記載から、電子デバイスを設計する技術分野の当業者には、これらのブロックの実施形態が広く知られている電子コンポーネントを用いてどのように製造することができるかが明らかであろう。したがって、機能ブロックの内容の詳細なアーキテクチャは、与えられていない。
【0045】
本発明の原理を特定の装置との関係において以上で説明したが、ここでの説明は単に実施例によってなされたものであり、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲に対する限定としてなされたものではないことは明確に理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元仮想環境をブラウズしているユーザのヒューマンインタフェースデバイス(HID)により前記3次元仮想環境におけるオブジェクトの動きを制御する方法であって、前記ヒューマンインタフェースデバイス(HID)は前記3次元仮想環境にアクセスするためのクライアントデバイス(CLD)に結合されており、前記3次元仮想環境は少なくとも1つのアプリケーションサーバ(3D−AS)に配置されており、前記クライアントデバイス(CLD)と前記少なくとも1つのアプリケーションサーバ(3D−AS)とは通信リンクを介して結合されている、方法において、
a.2次元表面における始点を、前記2次元表面におけるポインタの位置を検出することによって決定するステップと、
b.前記始点に基づき、前記始点を包囲する前記表面における第1の領域(I)と、前記第1の領域を包囲する前記表面における第2の領域(II)と、前記第2の領域を包囲する前記表面における第3の領域(III)とを配分するステップと、
c.前記ポインタの前記動きと前記動きが検出された領域に関連するオブジェクト動き制御関数とに基づいて、オブジェクト動き制御命令を生成するステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記方法における前記オブジェクト動き制御関数が、
d1.前記ポインタの前記動きが前記第1の領域(I)の内部で検出される場合には、前記3次元仮想環境における前記オブジェクトの動きは存在せず、
d2.前記ポインタの前記動きが前記第2の領域(II)の内部で検出される場合には、前記3次元仮想環境における前記オブジェクトの前記動きは角運動だけであり、前記角速度は前記ポインタの前記動きから導かれ、
d3.前記ポインタの前記動きが前記第3の領域(III)の外部で検出される場合には、前記3次元仮想環境における前記オブジェクトの前記動きは回転および/または直線運動であり、前記回転および/または直線運動の速度は前記ポインタの前記動きから導かれることを特徴とする、請求項1に記載の3次元仮想環境におけるオブジェクトの動き制御方法。
【請求項3】
前記ヒューマンインタフェースデバイス(HID)がタッチ感応表面を有するクライアントデバイスであり、2次元表面で前記始点を決定する前記ステップが前記タッチ感応表面の前記2次元表面で前記ポインタの位置を検出するステップであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の3次元仮想環境におけるオブジェクトの動き制御方法。
【請求項4】
前記ヒューマンインタフェースデバイス(HID)がコンピュータマウスであり、2次元表面で前記始点を決定する前記ステップがマウスボタンのクリックにより2次元表面において動く前記マウスの最初の始点を検出するステップであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の3次元仮想環境におけるオブジェクトの動き制御方法。
【請求項5】
前記3次元仮想環境アプリケーションにおけるオブジェクトの動きを制御するシステムであって、前記3次元仮想環境をブラウズしているユーザの、前記オブジェクトの前記動きを制御するためのヒューマンインタフェースデバイス(HID)を備え、前記3次元仮想環境アプリケーションを配置するための少なくとも1つのアプリケーションサーバ(3D−AS)を更に備えているシステムにおいて、
a.2次元表面における始点を前記2次元表面におけるポインタの位置を検出することによって決定するように構成された始点検出部(IPDP)と、
b.決定された前記始点に基づき、前記始点を包囲する前記表面における第1の領域(I)と、前記第1の領域(I)を包囲する前記表面における第2の領域(II)と、前記第2の領域(II)を包囲する前記表面における第3の領域(III)とを配分するように構成されたゾーン配分部(ZAP)と、
c.前記ポインタの動きと前記動きが生じる領域に関連するオブジェクト動き制御関数とに基づいて、オブジェクト動き制御命令を生成するように構成されたオブジェクト動き制御命令生成部(IGP)と
を備えていることを特徴とする、システム。
【請求項6】
前記システムにおける前記オブジェクト動き制御関数が、
d1.前記ポインタの前記動きが前記第1の領域(I)の内部で検出される場合には、前記3次元仮想環境における前記オブジェクトの動きは存在せず、
d2.前記ポインタの前記動きが前記第2の領域(II)の内部で検出される場合には、前記3次元仮想環境における前記オブジェクトの前記動きは角運動だけであり、前記角運動は前記ポインタの前記動きから導かれ、
d3.前記ポインタの前記動きが前記第3の領域(III)の内部で検出される場合には、前記3次元仮想環境における前記オブジェクトの前記動きは回転および/または直線速度であり、前記回転および/または直線速度は前記ポインタの前記動きから導かれることを特徴とする、請求項5に記載の3次元仮想環境におけるオブジェクトの動き制御システム。
【請求項7】
a.2次元表面における始点を前記2次元表面におけるポインタの位置を検出することによって決定するように構成された始点検出部(IPDP)と、
b.決定された前記始点に基づき、前記始点を包囲する前記表面における第1の領域(I)と、前記第1の領域(I)を包囲する前記表面における第2の領域(II)と、前記第2の領域(II)を包囲する前記表面における第3の領域(III)とを配分するように構成されたゾーン配分部(ZAP)と、
c.前記ポインタの動きと前記複数の領域の中の前記動きが生じる領域に関連するオブジェクト動き制御関数とに基づいて、オブジェクト動き制御命令を生成するように構成されたオブジェクト動き制御命令生成部(IGP)と
を備えることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載のシステムにおいて用いられる、オブジェクト動き制御モジュール(OMCM)。
【請求項8】
前記システムにおける前記オブジェクト動き制御関数が、
d1.前記ポインタの前記動きが前記第1の領域(I)の内部で検出される場合には、前記3次元仮想環境における前記オブジェクトの動きは存在せず、
d2.前記ポインタの前記動きが前記第2の領域(II)の内部で検出される場合には、前記3次元仮想環境における前記オブジェクトの前記動きは角運動だけであり、前記角運動は前記ポインタの前記動きから導かれ、
d3.前記ポインタの前記動きが前記第3の領域(III)の内部で決定/検出される場合には、前記3次元仮想環境における前記オブジェクトの前記動きは回転および/または直線運動であり、前記回転および直線速度は前記ポインタの前記動きから導かれることを特徴とする、請求項7に記載のオブジェクト動き制御モジュール(OMCM)。
【請求項9】
請求項5または請求項6に記載のシステムにおいて用いられ、請求項7または請求項8に記載のオブジェクト動き制御モジュールを含むことを特徴とする、クライアントデバイス(CLD)。
【請求項10】
請求項5または請求項6に記載のシステムにおいて用いられ、請求項5または請求項6に記載のオブジェクト動き制御モジュールを含むことを特徴とする、ヒューマンインタフェースデバイス(HID)。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2013−520736(P2013−520736A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554292(P2012−554292)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052287
【国際公開番号】WO2011/104154
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(391030332)アルカテル−ルーセント (1,149)
【Fターム(参考)】