説明

3次元CAD/CAMシステム

【課題】設計作業工数を簡素化して加工工数を削減する。
【解決手段】3次元CAD/CAMシステム11は、3次元CAD121で作成された製品の3次元データを、3次元CAD121と3次元CAM221との間で受け渡し可能にフォーマット変換して出力するもので、3次元CAD121は、3次元データに含まれる製品の形状情報をフォーマット変換して中間データ132を作成する中間データ出力プログラム122と、3次元データに含まれる製品に関する加工属性情報をフォーマット変換して加工属性データ133を作成する付加データ出力プログラム123と、加工属性データ133を中間データ132と関連付けて個別に格納する記憶部115とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IGESやSTEP等にフォーマット変換された3次元データを用いて3次元CAD装置とCAM装置との間でのデータの受け渡しを可能とする3次元CAD/CAMシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品設計に基づいて被加工物を切削加工する一般的な製造プロセスにおいては、まず設計部門で3次元CAD装置により設計を行い、製品の形状情報を3次元データで、また製品の加工に必要な情報を2次元図面に書き込み、次にその形状情報や2次元図面を製造部門へ渡すことが行われている。
【0003】
この製造部門では、3次元CAD装置で作成された3次元データをCAM装置で読み込み、2次元図面を見ながら、公差、表面処理等の加工情報をCAM装置上で追加し、NCプログラム(Numerical Control Program 数値制御プログラム)を作成し、切削加工を行って製品設計したものを現物としている。
【0004】
このため、設計部門においては、3次元データ及び2次元図面の両方を用意しなければならず、多くの手間を要していた。また、製造部門においては、図面を見ながら加工情報の入力を行わなければならず、多大な労力及び入力ミスなどの課題が発生した。
【0005】
これに対し、例えば特許文献1には、3次元CADモデルを直接使用して被加工物の加工箇所及び加工方法、公差等の情報を製造部門へ受け渡すために、3次元CADモデルの色属性に加工箇所及び加工方法、公差等の情報を関連付けた技術が提案されている。
【0006】
この製品開発工程では、まず製品の設計専用の3次元CAD装置を用いて3次元CADモデルを作成する。この3次元CAD装置は、複数の面で構成された3次元CADモデルの面に対して、特定の色を選択して付加する機能を有している。
【0007】
すなわち、例えば、図5及び図6に示すように、選択可能な色は、加工タイプ、面の表面粗さ、寸法公差などの加工に必要な情報と紐付いている(リンクしている)。さらに、色(青、緑、橙など)の識別が可能なCAM装置を用いることで、3次元CADモデルを直接使用して、加工箇所、加工方法、公差等の情報を受け渡すことを可能としている。
【0008】
なお、色の識別には、青、緑、橙などのテキストデータを指定する方法や、RGB(赤緑青)の濃淡による指定方法を利用している。
【特許文献1】特開2001−8418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、加工に必要な膨大な情報を色と関連付けて記憶させておくためには、データテーブル(記憶部)の作成に多大な工数を要する。また、寸法公差などの数値情報を色と関連付けて表示するのは直感的ではなく、実用性に欠けていた。すなわち、作業者が色を見ただけで、その色と関連する数値情報を直接的に結びつけることは難しい。
【0010】
本発明は斯かる課題を解決するためになされたもので、設計作業工数を簡素化して加工工数を削減することができる3次元CAD/CAMシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
3次元CAD装置で作成された製品の3次元データを、前記3次元CAD装置と3次元CAM装置との間で受け渡し可能にフォーマット変換して出力する3次元CAD/CAMシステムにおいて、
前記3次元CAD装置は、
前記3次元データに含まれる製品の形状情報をフォーマット変換して中間データを作成する中間データ出力プログラムと、
前記3次元データに含まれる製品に関する付加情報をフォーマット変換して付加データを作成する付加データ出力プログラムと、
前記付加データを前記中間データと関連付けて個別に格納するCAD側記憶部と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の3次元CAD/CAMシステムにおいて、
前記3次元CAM装置は、
前記CAD側記憶部にて格納された前記中間データと前記付加データを関連付けて個別に格納するCAM側記憶部と、
前記CAM側記憶部にて格納した前記中間データを読み込む中間データ入力プログラムと、
前記CAM側記憶部にて格納した前記付加データを読み込む付加データ入力プログラムと、を備え、
読み込んだ前記中間データ及び前記付加データを前記CAM装置による加工に反映させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、3次元データに含まれる製品の形状情報をフォーマット変換して中間データを作成する中間データ出力プログラムと、3次元データに含まれる製品に関する付加情報をフォーマット変換して付加データを作成する付加データ出力プログラムと、付加データを中間データと関連付けて個別に格納するCAD側記憶部とを備えていることにより、数値データも簡易的に3次元CAD装置から3次元CAM装置へ受け渡すことができる。これにより、設計作業工数を簡素化することができ、加工工数を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態の3次元CAD/CAMシステムの構成を示すブロック図である。
3次元CAD/CAMシステム11は、製品設計用コンピュータ101と加工準備用コンピュータ201で構成されている。
【0015】
製品設計用コンピュータ101は、CPU111、ディスプレイ112、入力機器113、主記憶装置114、外部記憶装置115、ネットワークインターフェース116を備えている。
【0016】
CPU111は、主記憶装置114に実装されたプログラムを実行することにより、後述のような中間データ及び加工属性データの入出力処理を実現する。
主記憶装置114には、CPU111が実行するプログラムやデータが格納されている。本実施形態の場合には、3次元CAD121、中間データ出力プログラム122、加工属性出力プログラム123が格納されている。
【0017】
外部記憶装置115には、主記憶装置114に格納されたプログラムに基づいてCPU111が実行した結果がデータとして格納される。本実施形態の場合には、3次元CAD121が有する3次元データ131、中間データ132、加工属性データ133が格納されている。
【0018】
加工準備用コンピュータ201は、CPU211、ディスプレイ212、入力機器213、主記憶装置214、外部記憶装置215、ネットワークインターフェース216を備えている。
【0019】
CPU211は、主記憶装置214に実装されたプログラムを実行することにより、後述のような中間データ及び加工属性データの入出力処理を実現する。
主記憶装置214には、CPU211が実行するプログラムやデータが格納されている。本実施形態の場合には、3次元CAM221、中間データ入力プログラム222、加工属性入力プログラム223が格納されている。
【0020】
外部記憶装置215には、主記憶装置214に格納されたプログラムに基づいてCPU211が実行した結果がデータとして格納されている。本実施形態の場合には、3次元CAM221が有する3次元データ231が格納されている。また、この外部記憶装置215には、製品設計用コンピュータ101から受け取った中間データ132、加工属性データ133も格納されている。
【0021】
製品設計用コンピュータ101と加工準備用コンピュータ201は、各々ネットワークインターフェース116及びネットワークインターフェース216で接続され、中間データ132、加工属性データ133の受け渡しが行えるようになっている。
【0022】
また、予め3次元CAD121には、中間データ出力プログラム122と加工属性出力プログラム123が組み込まれている。同様に、3次元CAM221には中間データ入力プログラム222と加工属性入力プログラム223が組み込まれている。
【0023】
通常、市販の3次元CAD/CAMシステムでは、マクロ(操作手順を記述したもの)の登録、及び組み込みプログラムの登録が可能である。
本実施形態の場合は説明の便宜上、組み込みプログラムとするが、3次元CAD121と中間データ出力プログラム122、加工属性出力プログラム123とは別々のプログラムで良い。また、3次元CAM221と中間データ入力プログラム222、加工属性入力プログラム223についても同様である。
【0024】
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、製品の開発者は、製品設計用コンピュータ101において、3次元CAD121を用い、製品設計を行う。製品設計に際し、3次元CAD121のファイル形式で設計した3次元データを保管する。保管は、通常はハードディスクなどの外部記憶装置115に保管される。
【0025】
一般に、このような3次元データ131は、そのファイル形式がバイナリデータで記録されていて、しかも、メーカは仕様を公開していない。このため、この3次元データ131を、作成した3次元CAD以外の他のアプリケーションで利用することはできない。このため、3次元CAD121には、他のアプリケーションとデータのやりとりを行えるように、フォーマット変換する。このため、3次元CAD121には、一般に中間データといわれている仕様が公開されたテキストデータとする入出力機能を持っている。
【0026】
ところで、本実施形態では、図2に示すように、3次元データ131は、製品としての直方体131Aの「面」「線」等の形状情報と、「公差」「注記」等の加工属性情報とを有している。そして、この形状情報をデータ交換フォーマットにより中間データ132に変換している。
【0027】
なお、この中間データ132には、IGES(Initial Graphics Exchange Specification)、STEP(Standard for the Exchange of Product Model Data)等々、いろいろと種類がある。本実施形態では、国際標準(ISO)であるSTEP形式で説明を行う。
【0028】
一般に、開発設計者が製品設計を終えた場合は、その製品を具現化(加工)するために、設計データを製造部門へ引き渡すことが行われる。
次に、図3に基づき、設計部門から製造部門へ設計データを引き渡す際の、加工属性の受け渡しフローチャートについて説明する。なお、本実施形態では、簡便のため、図2に示した直方体131Aを製品例として説明する。
【0029】
設計部門では、設計作業に際し、3次元CAD121が有する3次元データ131のなかに、予め製品形状を表わす形状情報と加工属性を表わす加工属性情報を格納しておく。
そして、設計部門では、中間データ出力プログラム122を使い、この3次元データ131のなかから、3次元データ131に格納された「公差」や「注記」等の加工属性データ133を読み出す(S1)。
【0030】
このとき、中間データ出力プログラム122は、この加工属性データ133(例えば「公差」が±0.03)を、3次元データ131に格納されている「面」「線」「点座標」等(例えば「2点間の点座標(x1,1,、x2,2,)」)とリンクした状態で読み出す(S2)。
【0031】
次いで、中間データ出力プログラム122は、3次元CAD121の機能を用いて、形状情報を中間データとして中間データ132に保存する(S3)。この時、CADの機能により、3次元データ131に格納された「線」等の形状情報に、例えば♯2826のID番号が割り当てられる。
【0032】
次に、この中間データ132に格納された形状情報を、加工属性出力プログラム123で読み込む(S4)。
次に、加工属性出力プログラム123は、読み込んだ中間データ132の中から、上述した形状情報(例えば♯2826のID番号)に対応する「2点間の点座標(x1,1,、x2,2,)」のID番号があるかどうかを比較する(S5)。
【0033】
そして、加工属性出力プログラム123は、一致したID番号があれば、そのID番号から形状情報である「線」のID番号(例えば♯2826)を取り出す(S6)。
次に、加工属性出力プログラム123は、この「線」の形状情報を、加工属性データとして加工属性データ133に保存する(S7)。
【0034】
図4は、加工属性データ133を中間データ132と関連付けて(紐付けて)格納した場合の概念図である。
同図4において、符号132Aは、直方体131A(図2参照)の面「#2835」の図形上での箇所を示し、符号132Bは、STEP形式で直方体131Aの形状情報を記載した例を示し、符号133Aは、直方体131A(図2参照)の加工属性データの例を示している。
【0035】
符号132B(形状情報例)における「#2835」は、直方体131Aの面(FACE)を意味する。この直方体131Aの面は、「#2834」と「#2833」とが紐付いていて、「#2833」で示される4つのエッジ(線)(「#2826」「#2827」「#2828」「#2829」)の閉ループで構成されていることを意味する。これを中間データ132上の図形上で表すと、符号132A(番号情報例)の箇所となる。
【0036】
また、加工属性データ133では、「#2835」は133A(加工属性データの例)のようになっており、面(「#2835」)を囲む4本のエッジ(線)のうち1本のエッジ(「#2826」)は、例えば長さが、基準値に対して長手方向に±0.03の寸法公差を持つことを表わしている。
【0037】
このようにして、「公差」や「注記」等の加工属性データ133は、「面」や「線」の中間データ132と関連付けて外部記憶装置115に格納されていることになる。これにより、実際に製品を加工するときに使用する「公差」等の数値をそのまま利用することができる。
【0038】
次に、製造部門では、加工技術者は、ネットワークインターフェース116,216を介して、製品設計用コンピュータ101側から中間データ132及び加工属性データ133を受け取り、これを加工準備用コンピュータ201側の外部記憶装置215へ保管する。
【0039】
次に、加工技術者は、3次元CAM221を起動しておき、メニューなどから中間データ入力プログラム222を起動する。中間データ入力プログラム222は、3次元CAM221の機能を用い、まず、外部記憶装置215の中間データ132を読み込み、これを3次元CAM221に取り込む。
【0040】
次に、加工属性入力プログラム223を起動して加工属性データ133を読み込み、3次元CAM221上に読み込んだ中間データ132の対応した「面」「線」「点座標(xyz)」の位置(ID番号)に、「公差」や「注記」等の加工属性情報を書き込んでいく。
【0041】
次に、3次元CAM221上で設定された中間データ132と加工属性データ133を、3次元データ231として保管する。これにより、3次元CAM221へ「公差」や「注記」などの加工属性の受け渡しが可能となる。
【0042】
その後は、3次元CAM221を用い、加工プログラムを作成し、このプログラムに基づき加工を行うことで製品が出来上がる。
なお、本実施形態では、中間データ132、加工属性データ133の受け渡しは、ネットワークインターフェース116、216でのデータの受け渡しを行う場合について説明したが、これに限らない。例えば、フロッピィディスク、CD−ROM、DVD、USBメモリなどの外部記録での受け渡しも可能である。
【0043】
また、これ以外にも、中間データ132、加工属性データ133をネットワーク上のサーバに保管し、共有するようにしてもよい。さらに、加工準備用コンピュータ201側の主記憶装置214の各プログラムを、製品設計用コンピュータ101側の主記憶装置114に格納することで(主記憶装置114から主記憶装置214に格納でも可能)、中間データ処理は、コンピュータ1台のみによる実行も可能である。
【0044】
本実施形態によれば、加工情報と色情報を関連付けるデータテーブルの作成が不要であるため、設計作業工数を簡素化でき、工数を削減することができる。
また、本実施形態によれば、実際に製品を加工するときに使用する数値をそのまま利用することができるため、作業者の入力ミスを排除でき、さらに設計変更への対応が容易となる。
【0045】
また、既存の中間データを拡張することは一切行なわないため、本実施形態を適用していない3次元CAD/CAMシステムでも形状データの受け渡しのみであれば、利用することができる。さらに、本実施形態によれば、紙による2次元図面を作成する手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る3次元CAD/CAMシステムの構成を示す概念図である。
【図2】本実施形態における製品の3次元データの例を示す図である。
【図3】付加データを中間データと関連付けて格納する場合のフローチャートを示す図である。
【図4】加工属性データを中間データと関連付け(紐付け)て格納した場合の概念図である。
【図5】色属性の付加された3次元CADモデルの従来例を示す図である。
【図6】色対照記憶部の模式図の従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
11 3次元CAD/CAMシステム
101 製品設計用コンピュータ
111 CPU
112 ディスプレイ
113 入力機器
114 主記憶装置
115 外部記憶装置
116 ネットワークインターフェース
121 3次元CAD
122 中間データ出力プログラム
123 加工属性出力プログラム
131 3次元データ
132 中間データ
133 加工属性データ
201 加工準備用コンピュータ
211 CPU
212 ディスプレイ
213 入力機器
214 主記憶装置
215 外部記憶装置
216 ネットワークインターフェース
221 3次元CAM
222 中間データ入力プログラム
223 加工属性入力プログラム
231 3次元データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元CAD装置で作成された製品の3次元データを、前記3次元CAD装置と3次元CAM装置との間で受け渡し可能にフォーマット変換して出力する3次元CAD/CAMシステムにおいて、
前記3次元CAD装置は、
前記3次元データに含まれる製品の形状情報をフォーマット変換して中間データを作成する中間データ出力プログラムと、
前記3次元データに含まれる製品に関する付加情報をフォーマット変換して付加データを作成する付加データ出力プログラムと、
前記付加データを前記中間データと関連付けて個別に格納するCAD側記憶部と、を備えている
ことを特徴とする3次元CAD/CAMシステム。
【請求項2】
前記3次元CAM装置は、
前記CAD側記憶部にて格納された前記中間データと前記付加データを関連付けて個別に格納するCAM側記憶部と、
前記CAM側記憶部にて格納した前記中間データを読み込む中間データ入力プログラムと、
前記CAM側記憶部にて格納した前記付加データを読み込む付加データ入力プログラムと、を備え、
読み込んだ前記中間データ及び前記付加データを前記CAM装置による加工に反映させる
ことを特徴とする請求項1に記載の3次元CAD/CAMシステム。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−199298(P2009−199298A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39874(P2008−39874)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】