説明

3軸検出角速度センサ

【課題】本発明の3軸検出角速度センサは、Y軸方向の駆動信号とZ軸方向の駆動でかつX軸周りの角速度により発生するY軸方向のコリオリ力による検出信号とが同一位相となることのないX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の角速度を正確に検出可能な3軸検出角速度センサを提供することを目的とするものである。
【解決手段】駆動回路49に位相シフト回路55bを設け、Z軸方向に振動駆動させる駆動信号とY軸方向に振動駆動させる駆動信号とが互いに90度以外の異なる位相となるように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、X軸、Y軸およびZ軸の3軸方向の角速度を検出することが可能な3軸検出角速度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の3軸検出角速度センサは、図13、図14に示すように構成されていた。
【0003】
図13は従来の3軸検出角速度センサの側断面図、図14は同3軸検出角速度センサの上面図である。
【0004】
図13、図14において、1はSiからなる直方体形状の質量部である。そして、この質量部1は、X軸方向およびY軸方向の共振周波数が略同一になるように構成されている。2は内周および外周が8角形状をなし、かつその全周にわたって延出されたSiからなる支持部材で、この支持部材2は、前記質量部1を外方全周から支持するとともに、上面に複数のPZTからなる外側駆動圧電体3および内側駆動圧電体4を設けている。また、支持部材2の上面には、前記外側駆動圧電体3および内側駆動圧電体4の間に位置して、外側検出圧電体5および内側検出圧電体6を設けている。7はSiからなる四角形筒状の枠体で、この枠体7は前記支持部材2を一体に支持している。
【0005】
以上のように構成された従来の3軸検出角速度センサについて、次に、その動作を説明する。
【0006】
支持部材2における外側駆動圧電体3および内側駆動圧電体4に、図15(a)(b)に示すような、Z軸方向とY軸方向の位相差が90度である交流電圧を印加すると、図16(a)〜(d)に示すように、振動子1がZ軸方向およびY軸方向の位相差が90度になるように円形状の振動駆動をする。そして、その状態において、振動子1のX軸、Y軸およびZ軸周りに角速度が発生すると、振動子1が振動駆動する方向および角速度が発生する方向の両者と垂直な方向にF=2mV×ωのコリオリ力が発生する。そして、このコリオリ力により外側検出圧電体5および内側検出圧電体6から発生する電荷をIV変換した後、同期検波することにより、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の角速度を検出するものであった。
【0007】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平8−145683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来の構成では、Z軸方向に振動駆動させる駆動信号とY軸方向に振動駆動させる駆動信号との位相差が90度であるため、図17(a)に示すY軸方向の駆動信号と、図17(b)に示すZ軸方向の駆動でかつX軸周りの角速度により発生するY軸方向のコリオリ力による検出信号とが、図17(c)に示すように、同一位相で加算されるため、信号を分離することが困難となり、これにより、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の角速度を正確に検出することができないという課題を有していた。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、Y軸方向の駆動信号とZ軸方向の駆動でかつX軸周りの角速度により発生するY軸方向のコリオリ力による検出信号とが同一位相となることのないX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の角速度を正確に検出可能な3軸検出角速度センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0011】
本発明の請求項1に記載の発明は、X軸、Y軸およびZ軸の3軸方向に変位可能な質量部と、この質量部を支持するとともに少なくとも一対の駆動圧電体と少なくとも1つの検出圧電体と少なくとも1つのモニタ圧電体とを設けた支持部材と、前記質量部をY軸方向およびZ軸方向に振動駆動する駆動回路と、前記質量部に付加される角速度により、支持部材における検出圧電体に発生する出力信号を検出する検出回路とを備え、前記駆動回路に位相シフト回路を設け、Z軸方向に振動駆動させる駆動信号とY軸方向に振動駆動させる駆動信号とが90度以外の互いに異なる位相差となるようにしたもので、この構成によれば、駆動回路に位相シフト回路を設け、Z軸方向に振動駆動させる駆動信号とY軸方向に振動駆動させる駆動信号とが90度以外の互いに異なる位相差となるようにしたため、異なる位相により位相検波をすることができることとなり、これにより、Y軸方向の駆動信号と、Z軸方向の駆動でかつX軸周りの角速度により発生するY軸方向のコリオリ力による検出信号とが、同一位相となることがないから、位相検波により信号を分離することが可能となり、その結果、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の角速度を正確に検出することができるという作用効果を有するものである。
【0012】
本発明の請求項2に記載の発明は、X軸、Y軸およびZ軸の3軸方向に変位可能な質量部と、この質量部を支持するとともにX軸方向に延出されかつ上面に少なくとも1つの検出圧電体を設けたX軸方向支持部材と、前記質量部を支持するとともにY軸方向に延出されかつ上面に少なくとも一対の駆動圧電体と少なくとも1つの検出圧電体と少なくとも1つのモニタ圧電体とを設けたY軸方向支持部材と、前記質量部をY軸方向およびZ軸方向に振動駆動する駆動回路と、前記質量部に付加される角速度により、X軸方向支持部材またはY軸方向支持部材のうちのいずれか一方または両方の検出圧電体に発生する出力信号を検出する検出回路とを備え、前記駆動回路に位相シフト回路を設け、Z軸方向に振動駆動させる駆動信号と、Y軸方向に振動駆動させる駆動信号とが90度以外の互いに異なる位相となるようにしたもので、この構成によれば、駆動回路に位相シフト回路を設け、Z軸方向に振動駆動させる駆動信号とY軸方向に振動駆動させる駆動信号とが90度以外の互いに異なる位相差となるようにしたため、異なる位相により位相検波をすることができることとなり、これにより、Y軸方向の駆動信号と、Z軸方向の駆動でかつX軸周りの角速度により発生するY軸方向のコリオリ力による検出信号とが、同一位相となることがないから、位相検波により信号を分離することが可能となり、その結果、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の角速度を正確に検出することができるという作用効果を有するものである。
【0013】
本発明の請求項3に記載の発明は、特に、位相シフト回路により、Y軸方向に振動駆動させる駆動信号をZ軸方向に振動駆動させる駆動信号より、略45度遅らせるかまたは進ませるようにしたもので、この構成によれば、位相シフト回路により、Y軸方向に振動駆動させる駆動信号をZ軸方向に振動駆動させる駆動信号より、略45度遅らせるかまたは進ませるようにしたため、検出信号に発生する不要な信号を位相検波する際に、確実に除去できるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明の3軸検出角速度センサは、X軸、Y軸およびZ軸の3軸方向に変位可能な質量部と、この質量部を支持するとともに少なくとも一対の駆動圧電体と少なくとも1つの検出圧電体と少なくとも1つのモニタ圧電体とを設けた支持部材と、前記質量部をY軸方向およびZ軸方向に振動駆動する駆動回路と、前記質量部に付加される角速度により、支持部材における検出圧電体に発生する出力信号を検出する検出回路とを備え、前記駆動回路に位相シフト回路を設け、Z軸方向に振動駆動させる駆動信号とY軸方向に振動駆動させる駆動信号とが90度以外の互いに異なる位相差となるようにしたもので、この構成によれば、駆動回路に位相シフト回路を設け、Z軸方向に振動駆動させる駆動信号とY軸方向に振動駆動させる駆動信号とが90度以外の互いに異なる位相差となるようにしたため、異なる位相により位相検波をすることができることとなり、これにより、Y軸方向の駆動信号と、Z軸方向の駆動でかつX軸周りの角速度により発生するY軸方向のコリオリ力による検出信号とが、同一位相となることがないから、位相検波により信号を分離することが可能となり、その結果、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の角速度を正確に検出することができる3軸検出角速度センサを提供することができるという効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態における3軸検出角速度センサについて、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施の形態における3軸検出角速度センサの側断面図、図2は同3軸検出角速度センサの上面図、図3は同3軸検出角速度センサにおける第1のX軸方向支持部材の側断面図、図4は同3軸検出角速度センサの回路図である。
【0017】
図1〜図4において、21はSiからなる直方体形状の質量部である。22はSiからなる第1のX軸方向支持部材で、この第1のX軸方向支持部材22は、前記質量部21における一側面の上部を支持するとともに、上面の外側に一対のPZTからなる外側駆動圧電体23を設け、さらに上面の内側に一対のPZTからなる内側駆動圧電体24を設けているものである。また、前記第1のX軸方向支持部材22の上面には、前記一対の外側駆動圧電体23の間に位置して、外側検出圧電体25を設けており、さらに前記内側駆動圧電体24の間に位置して、内側検出圧電体26を設けているものである。
【0018】
27はSiからなる第2のX軸方向支持部材で、この第2のX軸方向支持部材27は、前記質量部21における前記第1のX軸方向支持部材22を設けた側と反対側の一側面の上部を支持するとともに、上面の外側に一対のPZTからなる外側駆動圧電体28を設け、さらに上面の内側に一対のPZTからなる内側駆動圧電体29を設けているものである。また、前記第2のX軸方向支持部材27の上面には、前記一対の外側駆動圧電体28の間に位置して、外側検出圧電体30を設けており、さらに前記内側駆動圧電体29の間に位置して、内側検出圧電体31を設けているものである。
【0019】
32はSiからなる第1のY軸方向支持部材で、この第1のY軸方向支持部材32は、前記質量部21における一側面の上部を支持するとともに、上面の外側に一対のPZTからなる外側駆動圧電体33を設け、さらに上面の内側に一対のPZTからなる内側駆動圧電体34を設けているものである。また、前記第1のY軸方向支持部材32の上面には、前記一対の外側駆動圧電体33の間に位置して、外側検出圧電体35を設けており、さらに前記内側駆動圧電体34の間に位置して、内側検出圧電体36を設けているものである。そしてまた、前記第1のY軸方向支持部材32の上面には、前記外側駆動圧電体33の外側に位置して外側モニタ圧電体37を設けるとともに、内側駆動圧電体34の外側に位置して内側モニタ圧電体38を設けているものである。
【0020】
39はSiからなる第2のY軸方向支持部材で、この第2のY軸方向支持部材39は、前記質量部21における前記第1のY軸方向支持部材32を設けた側と反対側の一側面の上部を支持するとともに、上面の外側に一対のPZTからなる外側駆動圧電体40を設け、さらに上面の内側に一対のPZTからなる内側駆動圧電体41を設けているものである。また、前記第2のY軸方向支持部材39の上面には、前記一対の外側駆動圧電体40の間に位置して、外側検出圧電体42を設けており、さらに前記内側駆動圧電体41の間に位置して、内側検出圧電体43を設けているものである。そしてまた、前記第2のY軸方向支持部材39の上面には、一対の内側駆動圧電体41の外側に位置して一対の内側モニタ圧電体70を設けているものである。
【0021】
また、前記第1のX軸方向支持部材22の上面に位置する外側駆動圧電体23および外側検出圧電体25は、図3に示すように、Siからなる第1のX軸方向支持部材22の上面に設けたPtとTiとの合金薄膜からなる共通GND電極44の上面に設けられ、そして、外側駆動圧電体23の上面に駆動電極45を設けるとともに、外側検出圧電体25の上面に検出電極46を設けているものである。そしてまた、前記質量部21は、第1のX軸方向支持部材22、第2のX軸方向支持部材27、第1のY軸方向支持部材32および第2のY軸方向支持部材39で支持することにより、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の駆動周波数が各々40kHzになるように構成されているものである。そして、前記第1のX軸方向支持部材22、第2のX軸方向支持部材27、第1のY軸方向支持部材32および第2のY軸方向支持部材39は、図2に示すように、それらの間に4つの孔71を有するとともに、外周側を一体に接続した外周部72を有し、さらに前記外周部72の上面にはICからなる処理回路48を設けているものである。
【0022】
47はSiからなる四角形筒状の枠体で、この枠体47は前記第1のX軸方向支持部材22、第2のX軸方向支持部材27、第1のY軸方向支持部材32および第2のY軸方向支持部材39と連接された外周部72を支持しているものである。
【0023】
前記外周部72の上面に設けた処理回路48は、前記外側駆動圧電体23,28,33,40、内側駆動圧電体24,29,34,41、外側検出圧電体25,30,35,42および内側検出圧電体26,31,36,43と回路パターン(図示せず)により電気的に接続しており、さらに、この処理回路48からの出力信号を回路パターン(図示せず)を介して外部回路(図示せず)に出力しているものである。
【0024】
また、前記処理回路48は、図4に示すように、駆動回路49と検出回路50で構成され、そして、駆動回路49は、Z軸方向駆動回路51aと、Y軸方向駆動回路51bとで構成されているものである。そしてまた、前記Z軸方向駆動回路51aは第1のY軸方向支持部材32における外側モニタ圧電体37と第2のY軸方向支持部材39における内側モニタ圧電体70とからの出力信号の差動値をZ軸方向駆動回路51aにおけるIV変換器52、バンドパスフィルター53およびAGC回路54を介して、駆動信号を外側駆動圧電体23,28,33,40および内側駆動圧電体24,29,34,41に入力することにより、質量部21をZ軸方向に一定の振幅で振動駆動させているものである。また、これと同様に、駆動回路49におけるY軸方向駆動回路51bは、乗算器55aと駆動用位相シフト回路55bとで構成されており、前記Z軸方向駆動回路51aにおけるAGC回路54からの出力信号を、乗算器55aにより定数倍した後、駆動用位相シフト回路55bにより、位相を45度遅らせて、外側駆動圧電体33、40および内側駆動圧電体34、41に入力することにより、質量部21をY軸方向に一定の振幅で駆動振動させているものである。また、前記Z軸方向駆動回路51aにおけるバンドパスフィルター53の後段には、第1の検出用位相シフト回路56および第2の検出用位相シフト回路57を並列に設けており、第1の検出用位相シフト回路により、バンドパスフィルター53からの出力信号を45度遅らせた信号を出力するとともに、第2の検出用位相シフト回路57により135度遅らせた信号を各々出力している。
【0025】
そしてまた、前記検出回路50はY方向コリオリ力検出回路58とX方向コリオリ力検出回路59とで構成され、そして、Y方向コリオリ力検出回路58は、第1のY軸方向支持部材32における外側検出圧電体35および内側検出圧電体36の出力信号をIV変換器60に入力するとともに、第2のY軸方向支持部材39における外側検出圧電体42および内側検出圧電体43の出力信号をIV変換器61に入力し、両者の差動を取った後、同期検波器62によって、第2の検出用位相シフト回路57からの出力信号を基準として位相検波した後、ローパスフィルター63により平滑することにより、X軸周りの角速度を検出するものである。また、前記X方向コリオリ力検出回路59は、第1のX軸方向支持部材22における外側検出圧電体25および内側検出圧電体26の出力信号を入力するIV変換器64と、第2のX軸方向支持部材27における外側検出圧電体30および内側検出圧電体31からの出力信号を入力するIV変換器65からの出力信号との差動値を同期検波器66によって、第1の検出用位相シフト回路56からの出力信号を基準として、位相検波した後、ローパスフィルター67により平滑することにより、Y軸周りの角速度を検出するものである。さらに、これらと同様にして、同期検波器68によって、Z軸方向駆動回路51aにおけるバンドパスフィルタ53からの直接の出力信号を基準として位相検波した後、ローパスフィルター69により平滑することにより、Z軸周りの角速度を検出するものである。
【0026】
以上のように構成された本発明の一実施の形態における3軸検出角速度センサについて、次に、その組立方法を説明する。
【0027】
まず、予め準備したSiからなる基材(図示せず)の上面に、PtとTiの合金薄膜からなる共通GND電極44を蒸着により形成し、その後、共通GND電極44の上面にPZT薄膜からなる外側駆動圧電体23,28,33,40、内側駆動圧電体24,29,34,41、外側検出圧電体25,30,35,42、内側検出圧電体26,31,36,43、外側モニタ圧電体37および内側モニタ圧電体38,70を蒸着により形成する。
【0028】
次に、外側駆動圧電体23,28,33,40、内側駆動圧電体24,29,34,41、外側検出圧電体25,30,35,42、内側検出圧電体26,31,36,43、外側モニタ圧電体37および内側モニタ圧電体38,70の上面にTiとAuの合金薄膜からなる駆動電極45、検出電極46およびモニタ電極(図示せず)を形成する。
【0029】
次に、共通GND電極44側に電圧を印加するとともに、駆動電極45、検出電極46およびモニタ電極(図示せず)を接地することにより、外側駆動圧電体23,28,33,40、内側駆動圧電体24,29,34,41、外側検出圧電体25,30,35,42、内側検出圧電体26,31,36,43、外側モニタ圧電体37および内側モニタ圧電体38,70を分極する。
【0030】
最後に、基材(図示せず)における不要な箇所を除去することにより、質量部21、第1のX軸方向支持部材22、第2のX軸方向支持部材27、第1のY軸方向支持部材32、第2のY軸方向支持部材39、外周部72および枠体47を形成した後、回路パターン(図示せず)にICからなる処理回路48を半田付けする。
【0031】
以上のように構成され、かつ組み立てられた本発明の一実施の形態における3軸検出角速度センサについて、次に、その動作を説明する。
【0032】
まず、最初に質量部21にX軸周りの角速度が付加される場合を説明する。
【0033】
内側駆動圧電体24,29,34,41に正電圧を印加すると同時に、外側駆動圧電体23,28,33,40に負電圧を印加すると、図5に示すように、内側駆動圧電体24,29,34,41は伸びるとともに外側駆動圧電体23,28,33,40は縮むことになり、その結果、質量部21は上方に向かって移動する。次に、内側駆動圧電体24,29,34,41に負電圧を印加すると同時に、外側駆動圧電体23,28,33,40に正電圧を印加すると、内側駆動圧電体24,29,34,41は縮むとともに外側駆動圧電体23,28,33,40は伸びることになり、その結果、質量部21は下方に向かって移動する。すなわち、図6(a)に示すような、正弦波からなる交流電圧を外側駆動圧電体23,28,33,40および内側駆動圧電体24,29,34,41に印加することにより、質量部21はZ軸方向の駆動周波数で速度Vの振動駆動するものである。そして、この質量部21の振動駆動は外側モニタ圧電体37および内側モニタ圧電体70から発生する出力信号が一定になるように、内側駆動圧電体24,29,34,41および外側駆動圧電体23,28,33,40に印加する電圧を調整することにより、振動駆動の振幅を制御している。
【0034】
また、同様に、質量部21はY軸方向にも振動駆動している。すなわち、第1のY軸方向支持部材32における外側駆動圧電体33および内側駆動圧電体34に正電圧を印加すると同時に、第2のY軸方向支持部材39における外側駆動圧電体40および内側駆動圧電体41に負電圧を印加すると、外側駆動圧電体33および内側駆動圧電体34は伸びるとともに外側駆動圧電体40および内側駆動圧電体41は縮むことになり、その結果、質量部21は第1のY軸方向支持部材32に向かって移動する。
【0035】
次に、第1のY軸方向支持部材32における外側駆動圧電体33および内側駆動圧電体34に負電圧を印加すると同時に、第2のY軸方向支持部材39における外側駆動圧電体40および内側駆動圧電体41に正電圧を印加すると、外側駆動圧電体33および内側駆動圧電体34は縮むとともに外側駆動圧電体40および内側駆動圧電体41は伸びることになり、その結果、質量部21は第2のY軸方向支持部材39に向かって移動する。すなわち、駆動用位相シフト回路55bにより、図6(a)よりも45度位相の遅れた図6(b)に示すような、正弦波からなる交流電圧を外側駆動圧電体23,28,33,40および内側駆動圧電体24,29,34,41に印加することにより、質量部21はY軸方向の駆動周波数で速度Vの振動駆動するものである。そして実際には、質量部21はYZ平面状に楕円軌道を描くように、駆動することになる。この質量部21の振動駆動は内側モニタ圧電体38,70から発生する出力信号が一定になるように、外側駆動圧電体33、内側駆動圧電体34、外側駆動圧電体40および内側駆動圧電体41に印加する電圧を調整することにより、振動駆動の振幅を制御している。
【0036】
そしてまた、質量部21がZ軸方向の駆動周波数で振動駆動をしている状態において、質量部21がX軸方向の中心軸周りに角速度ωで回転すると、図7に示すように、質量部21にY軸方向のF=2mV×ωのコリオリ力が発生する。このコリオリ力により、質量部21はY軸方向に振動駆動するため、この振動駆動によって、例えば、図8に示すように、第1のY軸方向支持部材32における外側検出圧電体35および内側検出圧電体36が伸びることにより正電荷が発生するとともに、第2のY軸方向支持部材39における外側検出圧電体42および内側検出圧電体43が縮むことにより負電荷が発生する。そして、外側検出圧電体35および内側検出圧電体36から発生する電荷をIV変換器60により出力信号に変換するとともに、外側検出圧電体42および内側検出圧電体43から発生する電荷をIV変換器61により出力信号に変換し、両者の差動を取ることにより、図9(b)に示す出力信号が発生する。このとき、前述の如く、質量部21はY軸方向に駆動振動しているため、外側検出圧電体42および内側検出圧電体43には、図6(b)と同じ波形である図9(a)に示す出力信号も発生しており、図9(a)および図9(b)を合成した図9(c)に示す出力信号が出力される。そして、第2の検出用位相シフト回路57を基準信号として、同期検波器62が位相検波することにより、図9(b)に示す信号成分は図9(e)に示すように、一方、図9(a)に示す出力信号は、図9(f)に示すようになる。したがって、ローパスフィルター63により、平滑化することにより、図9(f)に示す信号は零値となり、X軸周りの角速度成分のみを検出することができるものである。
【0037】
次に、質量部21にY軸周りの角速度が付加される場合を説明する。この場合も、前述したX軸周りの角速度を検出する場合と同様に、質量部21がZ軸方向に振動駆動をしている状態において、質量部21がY軸方向の中心軸周りに角速度ωで回転すると、図10に示すように、質量部21にX軸方向のF=2mV×ωのコリオリ力が発生する。このコリオリ力により、質量部21はX軸方向に振動駆動するため、この振動駆動によって、第1のX軸方向支持部材22における外側検出圧電体23および内側検出圧電体25が伸びることにより正電荷が発生するとともに、第2のX軸方向支持部材27における外側検出圧電体30および内側検出圧電体31が縮むことにより負電荷が発生する。そして、外側検出圧電体23および内側検出圧電体26から発生する電荷をIV変換器64により出力信号に変換するとともに、外側検出圧電体30および内側検出圧電体31から発生する電荷をIV変換器65により出力信号に変換し、両者の差動を取ることにより、図11(a)に示す出力信号が発生する。
【0038】
次に、質量部21にZ軸周りの角速度が付加される場合を説明する。質量部21がY軸方向に振動駆動をしている状態において、質量部21がZ軸方向の中心軸周りに角速度ωで回転すると、図12に示すように、質量部21にX軸方向のF=2mV×ωのコリオリ力が発生する。このコリオリ力により、質量部21はX軸方向に振動駆動するため、この振動駆動によって、第1のX軸方向支持部材22における外側検出圧電体25および内側検出圧電体26が伸びることにより正電荷が発生するとともに、第2のX軸方向支持部材27における外側検出圧電体30および内側検出圧電体31が縮むことにより負電荷が発生する。そして、外側検出圧電体25および内側検出圧電体26から発生する電荷をIV変換器64により出力信号に変換するとともに、外側検出圧電体30および内側検出圧電体31から発生する電荷をIV変換器65により出力信号に変換し、両者の差動を取ることにより、図11(a)よりも位相が45度遅れた、図11(b)に示す出力信号が出力される。したがって、実際に、差動された出力信号は、図11(a)と図11(b)とを合成した図11(c)に示す出力信号が出力される。そして、Z軸方向駆動回路51aにおけるバンドパスフィルタ53からの出力信号図11(d)を基準信号として、同期検波器68が位相検波することにより、図11(a)に示す信号成分は図11(e)に示すように、一方、図11(b)に示す出力信号は、図11(f)に示すようになる。したがって、ローパスフィルター69により、平滑化することにより、図11(e)に示す信号は零値となり、Z軸周りの角速度成分のみを検出することができるものである。
【0039】
また、第1の検出用位相シフト回路56からの出力信号図11(g)を基準信号として、同期検波器66が位相検波することにより、図11(a)に示す信号成分は図11(h)に示すように、一方、図11(b)に示す出力信号は、図11(i)に示すようになる。したがって、ローパスフィルター67により、平滑化することにより、図11(i)に示す信号は零値となり、Y軸周りの角速度成分のみを検出することができるものである。
【0040】
なお、本発明の一実施の形態における3軸検出角速度センサにおいては、駆動用位相シフト回路55bにより、Y軸方向に振動駆動させる駆動信号をZ軸方向に振動駆動させる駆動信号より、略45度遅らせる構成としたが、略45度進ませる構成としても同様の効果を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る3軸検出角速度センサは、Y軸方向の駆動信号とZ軸方向の駆動でかつX軸周りの角速度により発生するY軸方向のコリオリ力による検出信号とが同一位相となることのないX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の角速度を正確に検出可能な3軸検出角速度センサを提供することができるという効果を有するものであり、特にX軸、Y軸およびZ軸の3軸方向の角速度を検出することが可能な3軸検出角速度センサに適用して有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態における3軸検出角速度センサの側断面図
【図2】同3軸検出角速度センサの上面図
【図3】同3軸検出角速度センサにおける第1のX軸方向支持部材の側断面図
【図4】同3軸検出角速度センサの回路図
【図5】同3軸検出角速度センサをZ軸方向に振動駆動させる状態を示す側断面図
【図6】同3軸検出角速度センサを駆動する信号を示す図
【図7】同3軸検出角速度センサのX軸周りの角速度を検出する状態を示す図
【図8】同3軸検出角速度センサがY軸方向のコリオリ力により動作する状態を示す側断面図
【図9】同3軸検出角速度センサが動作したときの出力信号を示す図
【図10】同3軸検出角速度センサのY軸周りの角速度を検出する状態を示す図
【図11】同3軸検出角速度センサが動作したときの出力信号を示す図
【図12】同3軸検出角速度センサのZ軸周りの角速度を検出する状態を示す図
【図13】従来の3軸検出角速度センサの側断面図
【図14】同3軸検出角速度センサの上面図
【図15】従来の3軸検出角速度センサを駆動する信号を示す図
【図16】従来の3軸検出角速度センサが動作する状態を示す図
【図17】従来の3軸検出角速度センサが動作したときの出力信号を示す図
【符号の説明】
【0043】
21 質量部
22,27 X軸方向支持部材
23,24,28,29,33,34,40,41 駆動圧電体
25,26,30,31,35,36,42,43 検出圧電体
32,39 Y軸方向支持部材
37,38,70 モニタ圧電体
49 駆動回路
50 検出回路
55b 位相シフト回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸、Y軸およびZ軸の3軸方向に変位可能な質量部と、この質量部を支持するとともに少なくとも1つの駆動圧電体と少なくとも1つの検出圧電体と少なくとも1つのモニタ圧電体とを設けた支持部材と、前記質量部をY軸方向およびZ軸方向に振動駆動する駆動回路と、前記質量部に付加される角速度により、支持部材における検出圧電体に発生する出力信号を検出する検出回路とを備え、前記駆動回路に位相シフト回路を設け、Z軸方向に振動駆動させる駆動信号とY軸方向に振動駆動させる駆動信号とが90度以外の互いに異なる位相差となるように構成した3軸検出角速度センサ。
【請求項2】
X軸、Y軸およびZ軸の3軸方向に変位可能な質量部と、この質量部を支持するとともにX軸方向に延出されかつ上面に少なくとも1つの検出圧電体を設けたX軸方向支持部材と、前記質量部を支持するとともにY軸方向に延出されかつ上面に少なくとも一対の駆動圧電体と少なくとも1つの検出圧電体と少なくとも1つのモニタ圧電体とを設けたY軸方向支持部材と、前記質量部をY軸方向およびZ軸方向に振動駆動する駆動回路と、前記質量部に付加される角速度により、X軸方向支持部材またはY軸方向支持部材のうちのいずれか一方または両方の検出圧電体に発生する出力信号を検出する検出回路とを備え、前記駆動回路に位相シフト回路を設け、Z軸方向に振動駆動させる駆動信号と、Y軸方向に振動駆動させる駆動信号とが90度以外の互いに異なる位相となるように構成した3軸検出角速度センサ。
【請求項3】
位相シフト回路により、Y軸方向に振動駆動させる駆動信号をZ軸方向に振動駆動させる駆動信号より、略45度遅らせるかまたは進ませるようにした請求項1記載の3軸検出角速度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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