説明

3軸磁気センサ

【課題】 リングコアを1個用いるだけで、構造簡単で、小形化、低価格を実現し得る3軸磁気センサを提供する。
【解決手段】 立方体状のボビン11に、それぞれが互いに直交する方向に配置されるX軸用の検出コイル12x、Y軸用の検出コイル12y、Z軸用の検出コイル12zを巻回し、ボビン1内に1個のリングコア13を設け、かつこのリングコア13のリング平面を、X軸用検出コイル12x、Y軸用検出コイル12y、Z軸用検出コイル12zのいずれの巻線平面に対しても45°傾かせて配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X軸、Y軸、Z軸の3つの検出コイル(検出巻線)を有する3軸磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地磁気等の磁界を測定するのに、検出コイルとコアからなるフラックスゲート型の3軸磁気センサが使用される。従来、この種の3軸磁気センサとして、図8に示すように、それぞれボビン1に巻回された検出コイル2と、励振コイル(図示省略)を巻回したリングコア3とからなる1軸センサ4を、それぞれX軸センサ4x、Y軸センサ4y、Z軸センサ4zとして、互いに直交に配置したもの(例えば、特許文献1の図5参照)。図9に示すように、ボビン1xyに検出コイル2x、2yを巻回するとともに、ボビン1xyにリングコア3xyを設けた磁気センサ4xyと、Z軸用の1軸センサ4zとの2つの磁気センサからなるもの(例えば、特許文献1の図1参照)。図10に示すように、1個の直方体状のボビン1にX軸用の検出コイル2x、Y軸用の検出コイル2y、Z軸用の検出コイル2zを互いに直交するように巻回するとともに、ボビン1内に径の異なる2個のリングコア3-1、3-2を交叉させて設けたもの。図12に示すように、1個の直方体状のボビン1にX軸用の検出コイル2x、Y軸用の検出コイル2y、Z軸用の検出コイル2zを互いに直交するように巻回するとともに、ボビン1内にX軸用の検出コイル平面、Y軸用の検出コイル平面、Z軸用の検出コイル平面に対し、それぞれが直角になるよう配置された棒状あるいは筒状コア対3x、3y、3zを交叉させて設けたもの、などが知られている。
【特許文献1】実開平6−65882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来の磁気センサの構造では、3軸センサを構成するのに、少なくとも2つの磁気センサを組み合わせて配置するか、あるいは少なくとも2個の径の異なるリングコアを配置するか、少なくとも3対の棒状又は筒状コアが必要となり、3軸センサ全体として構造が複雑となり、小形化、低コスト化に問題があった。
【0004】
この発明は上記問題点に着目してなされたものであって、リングコアを1個用いる、あるいは棒状又は筒状コアを1対用いるだけで良く、構成が簡単で、小形化、低価格を実現し得る3軸磁気センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の3軸磁気センサは、互いに直交する3つの検出巻線(検出コイル)の各巻線平面に対し、励心巻線を施した1個のリングコアあるいは1対の棒状又は筒状コアを傾めになるように配置したことを特徴とする。
【0006】
また、この発明の3軸磁気センサは、互いに直交する3つの検出巻線のうち、2個の検出巻線の各巻線平面に対し、励心巻線を施した1個のリングコアを傾めになるように配置しても良い。
【0007】
一般に、リングコアを用いたフラックスゲート型センサは、コアの飽和特性を利用するために、磁界検出方向でリングコアの円周長さが大きくなるように配置される(磁界検出方向とリングコアの平面とを平行とする)。従来の1軸センサでは、図11の(a)に示すように、リングコア3の円周上の各点において、実線あるいは破線で示す磁界検出方向成分長さを得ている。図11の(b)に示す紙面横方向では、磁界検出方向成分の長さが得られない。
【0008】
この発明では、直交する3つの検出巻線軸、すなわち直交する磁界検出方向に対して傾き(例えば45°)を持たせて1個のリングコアを配置しているので、図2の矢印で示すように、どの検出方向に対してもリングコアの円周長さを得ることができ、この発明の3軸磁気センサでは、1個のリングコアでX軸、Y軸、Z軸の磁界を検出できる。1対の棒状又は筒状コアにおいても同様である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、1個のリングコアあるいは1対の棒状又は筒状コアを各検出巻線の各巻線平面に対し傾めに配置するものであるから、3軸の磁界を検出するのに、1個のリングコアあるいは1対の棒状又は筒状コアを必要とするのみなので、従来の3軸磁気センサに対し、簡単な構成で、小形低価格なものを実現できる。
【0010】
また、図8、図9に示した従来のものに比し、各軸の計測ポイントがより狭い空間に集中するようにでき、点磁界測定に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、実施の形態により、この発明をさらに詳細に説明する。図1は、この発明の一実施形態3軸磁気センサであり、この発明の原理的構成を示す外観斜視図である。
【0012】
この実施形態3軸磁気センサ14は、樹脂等で形成される立方体状のボビン11と、このボビン11に互いにそれぞれ直交する方向に巻回されるX軸用の検出コイル(検出巻線)12x、Y軸用の検出コイル12y、Z軸用の検出コイル12zと、ボビン11内に配置されるリングコア13とから構成されている。なお、リングコア13には励振コイルが付設されているが、ここでは図示を省略している。
【0013】
この実施形態3軸磁気センサは、リングコア13の平面(円形面)が、X軸用の検出コイル12xの巻線軸に対し、角度45°を持たせて傾斜させ、同様にY軸用の検出コイル12y、Z軸用の検出コイル12zの巻線軸に対し、角度45°を持たせて傾斜させ、配置している。
【0014】
このように、リングコア13を3軸の各検出コイル12X、12Y、12Zに対して、45°傾斜させて配置しているので、図2に示すようにX軸、Y軸、Z軸のどの検出方向に対してもリングコアの円周長さを得ることができ、ここで示す3軸の検出コイル12X、12Y、12Zと1個のリングコア13で3軸の磁界を検出することができる。
【0015】
次に、上記実施形態3軸磁気センサのボビン11内の構造を具体的に示した他の実施形態3軸センサについて説明する。図3は、この実施形態3軸磁気センサの検出コイルを巻回する前のボビン11の分解斜視図である。このボビン11は、ほぼ四角筒状のボビン本体11aの四角形の各頂点に立方形の突部11b1 、……、11b8 を設けている。これら突部11b1 、……、11b8 は互いに相隣る間に検出コイルを巻回するために形成している。
【0016】
ボビン本体11a内には、リングコア13を載置したコア支持台15を収納する。このコア支持台15は、上面が、例えば突部11b8 から突部11b5 の方向に向けて傾斜した面15aを形成し、この面15aにリングコア13を装着するための溝15bを設けている。この溝15bに励振コイル付きのリングコア13が装着され、装着時にコア蓋16をリングコア13に被せる。このコア蓋16を装着済のコア支持台15をボビン本体11aに収納する。その後、図4に示すように、突部11b1 、11b2 と突部11b3 、11b4 の間にX軸用の検出コイル12xを巻回し、次に突部11b3 、11b4 と突部11b7 、11b8 の間に2軸用の検出コイル12zを巻回し、続いて突部11b1 、11b3 と突部11b2 、11b4 間にY軸用の検出コイル12yを巻回している。
【0017】
この実施形態3軸磁気センサにおいては、突部11b4 から突部11b5 の方に向けてリングコア13が45°傾けて配置しているので、X軸用検出コイル12x、Y軸用検出コイル12y、Z軸用検出コイル12zの巻線軸に対して、それぞれ45°傾いて設けられている。
【0018】
この実施形態3軸磁気センサにおいて、突部11b1 ……、11b4 には、ボビン本体11aの中心部から外方に向けての方向に細溝11c1 、……、11c4 を設け、細溝11c1 からX軸用検出コイル12xのリード線12x1 を、細溝11c2 からY軸用検出コイル12yのリード線12y1 を、細溝11c3 からZ軸用の検出コイル12zのリード線12z1 を、また細溝11c4 を経て、リングコア13からの励振コイルのリード線を取り出すようにしている。
【0019】
このように、ボビン11の突部の内側に配置される巻線の先端リード線12X1、12Y1、12Z1、17を細溝11c1 、11c4 より取り出すようにしたので、検出コイルの巻数のばらつきが少なくなり、最終的には磁気センサの感度のばらつきを小さくすることができる。
【0020】
図5は、上記した実施形態3軸磁気センサの励振コイルを駆動し、各検出巻線(検出コイル)よりの検出信号を受けて処理する磁気検出装置の回路構成を示すブロック図である。この磁気検出装置はX軸用の信号処理部30xと、Y軸用の信号処理部30yと、Z軸用の信号処理部30zと、励振回路31とで構成されている。
【0021】
X軸用の信号処理部30xは、検出コイル12xからの信号を受けて増幅する交流増幅回路32xと、位相調整回路33xと、交流増幅回路32xの出力を位相調整回路33xからの信号で同期整流を行う同期整流回路34xと、この同期整流回路34xの出力を受けて積分して出力する積分回路35xと、この積分回路35xの出力を検出コイル12xにフィードバックする帰還抵抗36xとを備えている。Y軸用の信号処理部30y、Z軸用の信号処理部30zともX軸用の信号処理部30xと同様の構成である。
【0022】
励振回路31は、周波数2f(HZ)の交流信号を発振する発振器41と、この発振器41の出力信号を1/2の周波数f(HZ)に分周する分周器42と、リングコア13に巻回される励振コイル44を周波数fの信号で励振するドライブ回路43とを備えている。
【0023】
この回路の特徴は、3軸の信号処理部30x、30y、30zに対して、1個の励振回路31を備え、1個のリングコア13を駆動するようにしたことである。更に、励振回路は1個であるにもかかわらず、各軸の信号処理部30x、30y、30zに発振器41から2f(HZ)の信号を受けて、同期整流回路34x、34y、34zに同期信号を加える位相調整回路33x、33y、33zをそれぞれ備えたことである。
【0024】
この信号処理部30x、30y、30zに、それぞれ設けた位相調整回路33x、33y、33zで、各同期整流回路34x、34y、34zの整流タイミングを、各軸毎に調整できるようにしており、各軸で最適な整流タイミングが得られ、固有オフセットや固有雑音の低減が可能となる。
【0025】
なお、上記実施形態においては、リングコアをX軸用の検出コイル、Y軸用の検出コイル及びZ軸用の検出コイルの各巻線軸のいずれに対しても45°傾かせて配置する場合を示したが、他の実施形態として、2つの検出コイルの巻線軸にのみ45°傾かせて配置しても良い。図6に、その実施形態を示している。ここでは、リングコア13のリング形状面を含む平面をX軸用の検出コイル12x、Z軸用の検出コイル12zの巻線軸に対して45°傾かせ、Y軸用の検出コイル12yの巻線軸にリング形状面を含む平面を合わせている。この実施形態でも、X軸、Y軸、Z軸のどの検出方向に対してもリングコアの円周長さを得ることができ、3軸の検出コイル12x、12y、12zと1個のリングコア13で、3軸の磁界を検出することができる。
【0026】
更に、他の実施形態を図7に示している。この実施形態は、図1に示すリングコア13の代わりに、棒状又は筒状コア対13aを、X軸用の検出コイル12x、Y軸用の検出コイル12y、及びZ軸用の検出コイル12zの巻線軸に対して45°傾かせて設けたものである。この実施形態でもX軸、Y軸、Z軸のどの検出方向に対してもコア長を得ることができ、3軸の検出コイル12x、12y、12zと1対の棒状あるいは筒状コア13aで3軸の磁界を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施形態である3軸磁気センサの原理的構成を示す外観斜視図である。
【図2】同実施形態3軸磁気センサの磁界検出方向成分の円周長さを説明する図である。
【図3】この発明の他の実施形態3軸磁気センサのボビン内部構造を示す分解斜視図である。
【図4】同実施形態3軸磁気センサのボビンに検出コイルを巻回した状態を示す外観斜視図である。
【図5】同実施形態3軸磁気センサの磁気検出装置の回路構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の他の実施形態3軸磁気センサの概略構成を示す外観斜視図である。
【図7】この発明の更に他の実施形態3軸磁気センサの概略構成を示す外観斜視図である。
【図8】従来の3軸磁気センサの構成の一例を示す図である。
【図9】従来の3軸磁気センサの構成の他の例を示す図である。
【図10】従来の3軸磁気センサの構成のうち、更に他の例を示す図である。
【図11】従来の1軸磁気センサの磁界検出方向成分の円周長さを説明する図である。
【図12】従来の他の3軸磁気センサの他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
11 ボビン
11a ボビン本体
11b1、……、11b8 突部
11c1、……、11c4 細溝
12x、12y、12z 検出コイル
13 リングコア
13a 棒状又は筒状コア対
15 コア支持台
31 励振回路
32x、32y、32z 交流増幅回路
33x、33y、33z 位相調整回路
34x、34y、34z 同期整流回路
35x、35y、35z 積分値
36x、36y、36z 帰還抵抗
41 発振器
42 分周器
43 ドライブ回路
44 励振コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する3つの検出巻線の各巻線平面に対し、励心巻線を施した1個のリングコアを傾めになるように配置したことを特徴とする3軸磁気センサ。
【請求項2】
互いに直交する3つの検出巻線のうち、2個の検出巻線の各巻線平面に対し、励心巻線を施した1個のリングコアを傾めになるように配置したことを特徴とする3軸磁気センサ。
【請求項3】
互いに直交する3つの検出巻線の各巻線平面に対し、励心巻線を施した1対の棒状あるいは筒状コアを斜めになるように配置したことを特徴とする3軸磁気センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−194602(P2006−194602A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3613(P2005−3613)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】