説明

3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法

【課題】 医薬・農薬の中間体として、また含フッ素重合体等の機能性材料の製造原料または合成中間体として有用な3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を工業的規模で製造する方法を提供する。
【解決手段】1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、塩基性物質の共存下、アルコールと反応させて、ビニルエーテルを得、次いで該ビニルエーテルを、触媒の存在下、過酸化水素により酸化することによって、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を得る。該酸化反応に用いられる触媒としては酸化バナジウム(V)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、鉄、塩化銅(I)、塩化銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、銅が好ましいものとして挙げられる。また該酸化反応は酸の共存下に行うことが好ましい。
【代表図】 なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬・農薬の中間体として、また含フッ素重合体等の機能性材料の製造原料または合成中間体として有用な、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3,3,3−トリフルオロプロピオン酸は、医薬・農薬の中間体として、また含フッ素重合体等の機能性材料の製造原料または合成中間体として極めて重要な化合物であるため、これまで多くの製造方法が報告されてきた。
【0003】
非特許文献1では、マロン酸モノエチルエステルのカルボン酸部位を四フッ化硫黄(SF4)を用いてトリフルオロメチル基へと変換し、エステル部位を加水分解することによって3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を製造する方法が開示されている。非特許文献2では、多段階の複雑な反応を経てCF3CH2COOSO2OHを得た後に、これを加水分解して3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を製造する方法が開示されている。非特許文献3では、シクロヘキサンカルボン酸と1,1−ジフルオロエチレンを出発原料に用い、4段階で3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を製造する方法が開示されている。
【0004】
非特許文献4では、トリフルオロ酢酸エチルを出発原料に用い、硫酸中、酸化水銀を用いて3,3,3−トリフルオロプロピオン酸に変換する方法が開示されている。非特許文献5では、3-ブロモ-1-プロペンを臭化トリフルオロメチルカドミニウムでトリフルオロメチル化し、次いで過マンガン酸カリウムとクラウンエーテルを用いて酸化し、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を製造する方法が開示されている。非特許文献6では、パーフルオロ−2−(トリフルオロメチル)プロペンとトリフルオロメチルチオ銅を作用させて得た混合物の中に3,3,3−トリフルオロプロピオン酸があったと報告している。
【0005】
非特許文献7では、酢酸t−ブチルのt−ブチルジメチルシリルエノールエーテルに対して、ヨウ化トリフルオロメチルをラジカル付加させることによって、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を製造する方法が開示されている。特許文献1では、トリフルオロメチルマロン酸ジメチルから、臭化水素酸や塩酸を用いて3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を製造する例や、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテルから3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を製造する例が開示されている。
【0006】
3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを酸化して3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を得る技術としては、Oxone(登録商標)(2KHSO5・K2SO4・KHSO4)を酸化剤として用いる例が知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−115377号公報
【特許文献2】特表2003−522743号公報
【非特許文献1】Journal of Chemical and Engineering Data、第16巻、第3号、376頁〜377頁、1971年(米国)
【非特許文献2】Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenii 、第10号、1321頁〜1324頁、1973年(ロシア国)
【非特許文献3】Journal of Fluorine Chemistry、第21巻、99頁〜106頁、1982年(オランダ国)
【非特許文献4】Acta Chemica Scandinavica、第43巻、69頁〜73頁、1989年(スウェーデン国)
【非特許文献5】Journal of Chemical Society, Perkin Transaction 1、2147頁〜2149頁、1991年(英国)
【非特許文献6】Journal of Fluorine Chemistry、第63巻、253頁〜264頁、1993年(オランダ国)
【非特許文献7】Tetrahedron Letters、第37巻、第11号、1829頁〜1832頁、1996年(英国)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を製造する方法に関して、これまで知られている方法は、小規模で行うには有利であるが、高価な原料を必要とし、取扱いの難しい試薬を用いるなどの問題があった。
【0008】
非特許文献1の方法はフッ素化剤であるSF4の反応性が高く、取扱いが困難であり、非特許文献2、非特許文献3および非特許文献4の方法は、工程が多段階にわたるという問題がある。さらに非特許文献4の方法は、酸化水銀を使用し、非特許文献5では、臭化トリフルオロメチルカドミニウムを使用しており、工業的な使用には制限がある。非特許文献6の方法は、入手が困難なトリフルオロメチルチオ銅を使用している上、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸が主生成物ではないという問題がある。非特許文献7の方法は、高価なヨウ化トリフルオロメチルを使用することが求められる。特許文献1の方法は、原料である1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテルおよびトリフルオロメチルマロン酸ジメチルが高価であることから、工業的に有利な方法とは言えない。
【0009】
特許文献2の方法は、使用される酸化剤であるOxone(登録商標)(2KHSO5・K2SO4・KHSO4)は高価であるため、工業的に採用するのは困難である。
【0010】
このように、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の安価で工業的生産に適する製造方法を確立することが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の問題点に鑑み、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の工業的製造に適した方法を見出すべく、鋭意検討を行った。その結果、式[1]で表されるビニルエーテル
【0012】
【化11】

【0013】
(式[1]中、Rは炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基を表す。)
を、触媒および水の存在下に、過酸化水素と反応させると、穏和な条件下、酸化が起こり、高収率で3,3,3−トリフルオロプロピオン酸が生成し、上記課題が解決することを見出した(以下、本工程を「第2工程」とも呼ぶ。)。
【0014】
特に該ビニルエーテルとして、式[1a]で表される「Z型のビニルエーテル」
【0015】
【化12】

【0016】
を使用すると、該酸化反応が、特に高い選択率で起こり、目的物を有利に得られることを見出した。
【0017】
過酸化水素は、特に安価に入手できる酸化剤であり、本発明の反応系では、穏和な条件で酸化が起こる上に、有害な廃棄物も生じにくいため、従来技術に比べて格段に有利に、目的とする3,3,3−トリフルオロプロピオン酸が得られることとなった。
【0018】
さらに本発明者らは、上記第2工程の原料である、式[1]で表されるビニルエーテルが、工業的に入手が容易な、式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン
【0019】
【化13】

【0020】
を出発原料として、高収率で製造できることも見出した。
【0021】
すなわち、式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、塩基性物質の共存下、式[4]で表されるアルコール
【0022】
【化14】

【0023】
(式[4]中、Rは炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基を表す。)
と反応させると、上記、式[1]で表されるビニルエーテルが穏和な条件下で収率よく生成する(以下、本工程を「第1工程」とも呼ぶ。)。
【0024】
ここで、第1工程の原料である1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、HCFC−1233とも呼ばれ、E体の化合物(HCFC−1233t)、Z体の化合物(HCFC−1233c)、もしくはこれらの混合物を意味し、何れも工業的に安価に入手でき、好適に使用できる。すなわち「第1工程」と「第2工程」を組み合わせて実施することによって、目的とする3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を特に有利に製造できることとなった。中でも、「Z体の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン」を使用すると、得られるビニルエーテルが、上記式[1a]で表される「Z型のビニルエーテル」となる。この場合、前述のように、第2工程がより高い選択率と収率で進行するため、特に有利に目的物を製造できることがわかった。
【0025】
本発明者らはさらに、第1工程ならびに第2工程の各反応が、特定の条件下、特に好適に実施できることを見出した。特に、第2工程の酸化反応に用いる触媒として、周期律表3属から14属の金属、周期律表3属から14属の金属の酸化物、周期律表1属から14属の金属のハロゲン化物が好適であることを見出し、本発明を完成した。
【0026】
なお、本出願人は、上記、式[3]で表される1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンを出発原料とし、これをピペリジン等の「環状2級アミン」と反応させて、トリフルオロメチル基含有エナミンを得、次いで該トリフルオロメチル基含有エナミンを加水分解して3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを得、さらに該3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを硝酸等により酸化することを特徴とする、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法につき、既に出願している(特願2004−310880号)。この方法も優れた方法であるが、発明の実施に不可欠な「環状2級アミン」が比較的高価であり、さらに、中間生成物の3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドが空気中では安定でないため、大量に保存したり、輸送したりする場合に、やや取扱いが煩雑になるという問題があった。これに対して本願発明では「環状2級アミン」を必要とせず、なおかつ高収率で反応が進行するため、経済的にはるかに有利である。さらに、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒドを経由しないため扱いも容易で、分離の難しい副生物を生成しないという利点も有し、工業的に顕著な利点を有する。
【0027】
一般のアルデヒドやアセタール誘導体を、酸化バナジウムの存在下で過酸化水素によって酸化する方法は、(1)Org. Lett., 第2巻、577頁〜579頁、2000年、(2)Tetrahedron Lett., 第43巻、5123頁〜5126頁、2002年、(3)Synlett.,1149頁〜1150頁、1997年において報告されている。しかしこれらは、主として、強い電子吸引性基を持たない基質の酸化を扱ったものである。特に上記(2)では「電子吸引基を持つアセタールは反応性が低く、目的とする酸化が進みにくい」と報告されている。しかもここで報じられている系ではカルボン酸ではなく、そのエステルが主生成物である。つまり、本願発明における第2工程の酸化反応は、従来技術とは異なるものである。
【0028】
また、式[1]で表されるビニルエーテルを他の酸化方法、例えば、1,1,1−トリフルオロ−3,3−ジメトキシプロパンを硝酸及び亜硝酸ナトリウムと反応させても、目的の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を得ることは難しい(比較例を参照)。つまり、本願発明の第2工程の反応は、過酸化水素を酸化剤とすることによって特異的に進行する反応である。
【0029】
本発明の第1工程および第2工程の関係を図示すると、次のスキームのようになる。
【0030】
【化15】

【0031】
すなわち本願発明は、次の[発明1]〜[発明11]を骨子とし、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を製造する方法を提供する。
【0032】
[発明1]
式[1]で表されるビニルエーテル
【0033】
【化16】

【0034】
(式[1]中、Rは炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基を表す。)
を触媒および水の存在下、過酸化水素により酸化することを特徴とする、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【0035】
[発明2]
[発明1]において、ビニルエーテルが、式[1a]で表される「Z型のビニルエーテル」
【0036】
【化17】

【0037】
であることを特徴とする、[発明1]に記載の、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【0038】
[発明3]
次の反応工程を含む、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
[第1工程]:式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン
【0039】
【化18】

【0040】
を、塩基性物質の共存下、式[4]で表されるアルコール
【0041】
【化19】

【0042】
(式[4]中、Rは炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基を表す。)
と反応させて、式[1]で表されるビニルエーテル
【0043】
【化20】

【0044】
(式[1]中、Rは炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基を表す。)
を得る工程。
[第2工程]:前記[第1工程]で得られた、式[1]で表されるビニルエーテルを、触媒および水の存在下、過酸化水素により酸化し、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を得る工程。
【0045】
[発明4]
[発明3]において、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが、式[3a]で表される「Z型の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン」
【0046】
【化21】

【0047】
であり、ビニルエーテルが式[1a]で表される「Z型のビニルエーテル」
【0048】
【化22】

【0049】
であることを特徴とする、[発明3]に記載の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【0050】
[発明5]
[発明1]乃至[発明4]の何れかにおいて、過酸化水素による酸化反応の際に用いられる触媒が、周期律表3属から14属の金属、周期律表3属から14属の金属の酸化物、周期律表1属から14属の金属のハロゲン化物のいずれかであることを特徴とする、[発明1]乃至[発明4]の何れかに記載の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【0051】
[発明6]
[発明1]乃至[発明4]の何れかにおいて、過酸化水素による酸化反応の際に用いられる触媒がバナジウム、鉄、または銅を構成元素として含む触媒であることを特徴とする[発明1]乃至[発明4]の何れかに記載の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【0052】
[発明7]
[発明1]乃至[発明4]の何れかにおいて、過酸化水素による酸化の際に用いられる触媒が酸化バナジウム(V)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、鉄、塩化銅(I)、塩化銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、銅から選ばれる触媒であることを特徴とする、[発明1]乃至[発明4]の何れかに記載の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【0053】
[発明8]
[発明1]乃至[発明7]の何れかにおいて、過酸化水素による酸化の際に、酸を共存させることを特徴とする、[発明1]乃至[発明7]の何れかに記載の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【0054】
[発明9]
[発明8]において、酸が無機酸であることを特徴とする、[発明8]に記載の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【0055】
[発明10]
[発明9]において、無機酸が塩酸、臭化水素酸または硫酸であることを特徴とする、[発明9]に記載の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【0056】
[発明11]
次の反応工程を含む、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
[第1工程]:式[3a]で表される「Z型の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン」
【0057】
【化23】

【0058】
を、塩基性物質の共存下、式[4a]で表されるアルコール
【0059】
【化24】

【0060】
(式[4a]中、R’は炭素数1〜6の鎖状アルキル基を表す。)
と反応させて、式[1a]で表される「Z型のビニルエーテル」
【0061】
【化25】

【0062】
(式[1a]中、R’は炭素数1〜6の鎖状アルキル基を表す。)
を得る工程。
[第2工程]:前記[第1工程]で得られた、式[1a]で表される「Z型のビニルエーテル」を、酸化バナジウム(V)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、鉄、塩化銅(I)、塩化銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、銅から選ばれる触媒および水の存在下、かつ塩酸、臭化水素酸または硫酸から選ばれる無機酸の存在下、過酸化水素により酸化し、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を得る工程。
【発明の効果】
【0063】
本発明によれば、安価で入手できる原料から、少ない工程数で簡便に、しかも良好な収率で、医薬・農薬の中間体として、また含フッ素重合体等の機能性材料の製造原料または合成中間体として有用な、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を工業的規模で製造できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本願の全発明に共通する必須の工程は、第2工程(酸化工程)である。ここで、第2工程の原料である、式[1]で表されるビニルエーテルは、式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを出発原料として第1工程の方法で製造することが特に好ましい。そこで、以下、第1工程、第2工程の順に説明を行う。
【0065】
まず、第1工程について説明する。第1工程は、式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、塩基性物質の共存下、式[4]で表されるアルコールと反応させて、式[1]で表されるビニルエーテルを得る工程である。
【0066】
式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、工業的にHCFC−1233として入手でき、E体(HCFC−1233t)、Z体(HCFC−1233c)の何れも好適に使用でき、これらの混合物も好ましく用いることができる。E体を原料として用いた場合は、生成する式[1]で表されるビニルエーテルも主生成物はE体となる。一方、Z体を原料として用いた場合は、生成する式[1]で表わされるビニルエーテルも主生成物はZ体となる。後述するように、第2工程の反応を行う上で特に有利なのは「Z型のビニルエーテル」であるため、第1工程の原料として用いる1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとしては、Z体のもの(HCFC−1233c)が特に好ましい。
【0067】
第1工程の反応には、反応時に生成するハロゲン化水素を中和し、化学平衡を生成物側に移動させるために、塩基性物質が必須である。塩基性物質が存在しないと、式[1]で表されるビニルエーテルは有意に生成しない。
【0068】
第1工程に用いることのできる塩基性物質としては、無機塩基が好ましく、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウムを例示することができる。中でも、安価な水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。有機塩基(メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ピペリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジン、アニリンなど)であっても反応は進行するが、比較的高価であること、反応後の精製に負荷がかかるなどの理由から、無機塩基の方が好ましい。
【0069】
塩基性物質の使用量に特別な制限はないが、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン1.0モルに対して通常1.0モル〜10.0モルであり、1.0モル〜6.0モルが好ましく、1.0モル〜4.0モルが特に好ましい。10.0モル以上用いてもを超えて用いても反応性に影響することはないが、生産性及び経済性の観点から好ましくない。一方、塩基が1.0モル未満であると、ビニルエーテルへの変換率が大幅に低下し、反応終了後にビニルエーテルを単離精製しにくくなるため、好ましくない。
【0070】
第1工程においては、塩基性物質の反応系への溶解度を上げる目的で、水を添加することができ、通常はそれが好ましい。水の使用量は、塩基性物質1gに対して0.01g〜2gが好ましく、0.1g〜1gが特に好ましい。
【0071】
第1工程に使用される、式[4]で表されるアルコールのRは、炭素数が1〜6の鎖状または環状のアルキル基である。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、n−ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール等が挙げることができる。この中でも、式[4a]で表される炭素数1〜6の鎖状アルコールが好ましく、中でもメタノール、エタノールが安価であり、反応性も高いため特に好ましい。
【0072】
アルコールの使用量に特別な制限はないが、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン1.0モルに対して通常1.0モル〜20.0モルであり、1.0モル〜15.0モルが好ましく、1.0モル〜10.0モルが特に好ましい。しかし、アルコールが20.0モルを超えると、生産性及び経済性の観点から好ましくない。
【0073】
第1工程においては、反応の進行を促進させる目的で、相関移動触媒を添加することができる。相間移動触媒の種類に制限はないが、クラウンエーテル類、四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩等が好適に用いられる。具体的には、18−クラウン−6−エーテル、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド等を例示することができる。
【0074】
相関移動触媒の使用量に特別な制限はないが、通常、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン100重量部に対して0.01重量部〜50重量部であり、0.1重量部〜25重量部が好ましく、0.5重量部〜15重量部が特に好ましい。50重量部を超えて用いても反応性に影響することはないが、生産性及び経済性の観点から好ましくない。
【0075】
第1工程の反応温度は、通常、0℃〜200℃、好ましくは20℃〜150℃で、さらに好ましくは30℃〜100℃の範囲である。
【0076】
第1工程の反応は通常大気中、大気圧下で行われるが、オートクレーブ等の耐圧反応器を用いることができる。反応時間については、特に制限はなく、ガスクロマトグラフィー等で反応の進行状況を確認し、終点に近づいたことを確認した後、反応工程を終了することが好ましい。これにより、式[1]で表されるビニルエーテルを含む反応混合物を得ることができる。
【0077】
得られた反応混合物は、精製処理を行わずに第2工程の原料として用いることもできるが、精製により未反応の原料や副生物を除去してから、第2工程に供した方が、それぞれの反応が高選択率で進行しやすくなるため、好ましい。
【0078】
精製処理を行う場合、その方法は特に限定されないが、反応液を有機溶媒と接触させ、目的物を有機相に抽出した後、精密蒸留に付す方法が好ましい方法として挙げられ、この操作によって式[1]で表されるビニルエーテルを単離することができる。この他にも、第1工程が終了した反応系から、析出している無機塩等の固体を濾別後、単蒸留(粗蒸留)を行い「ビニルエーテルに未反応のアルコールが混合した留分」を得る方法も好適に採用できる。しかしながら、続く「第2工程(過酸化水素による酸化)」では、アルコールがあまり大量に共存すると、過酸化水素を消費し、過酸化水素の必要量が増加する場合がある。すなわち、第1工程の終了後、単離精製等によりアルコールを除去して、これを第2工程に供する方が好ましい。
【0079】
次いで、第2工程について説明する。第2工程は、式[1]で表されるビニルエーテル、を触媒および水の存在下、過酸化水素により酸化し、本願発明の目的物である3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を得る工程である。
【0080】
式[1]で表されるビニルエーテル中の基Rとしては、炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基のものを用いることができ、中でも炭素数1〜6の鎖状アルキル基のものが好ましい。具体的に3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン、1−エトキシ−3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−1−プロポキシプロペン、3,3,3−トリフルオロ−1−イソプロポキシプロペン、1−ブトキシ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1−イソブトキシ−3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3,3−トリフルオロ−1−(ペンチルオキシ)プロペン、3,3,3−トリフルオロ−1−(イソペンチルオキシ)プロペン、3,3,3−トリフルオロ−1−(ヘキシルオキシ)プロペン、3,3,3−トリフルオロ−1−(イソヘキシルオキシ)プロペン等を挙げることができる。
【0081】
この中で入手の容易さから、3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペンと3,3,3−トリフルオロ−1−エトキシプロペンが特に好ましい。
【0082】
これらのビニルエーテルは、上記にて説明した第1工程の方法で製造したものを用いることが特に好ましい。しかし、必ずしもこれに限定されず、他の方法で製造したものを第2工程の原料として使用しても差しつかえない。例えば、式[1]で表わされるビニルエーテルの製造方法として、3,3,3−トリフルオロプロピンとナトリウムメトキシドを反応させる方法(Journal of Chemical Society, 3490頁〜3498頁、1952年)、含水メタノール中、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンと水酸化ナトリウムを反応させる方法(Journal of Chemical Society Chemical Communication, 57頁〜58頁、1996年)、メタノール中、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンと水酸化カリウムを反応させる方法(米国特許2,739,987号明細書)が知られている。
【0083】
式[1]で表わされるビニルエーテルのうち、式[1a]で表される「Z型のビニルエーテル」を本発明の酸化反応に供すると、目的物の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を高い収率で与える(実施例参照)ことから、式[1a]で表される「Z型のビニルエーテル」を用いることが特に好ましい。すなわち、前述の第1工程において、Z型の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFC−1233c)を原料とし、「Z型のビニルエーテル」を合成し、この結果得られた「Z型のビニルエーテル」を第2工程の原料として使用することは、本発明の特に好ましい態様と言える。
【0084】
第2工程では、酸化剤として過酸化水素を使用する。過酸化水素の使用量は、式[1]で表されるビニルエーテル1モルに対して、通常1モル以上である。好ましくは1モル〜20モルであり、更に好ましくは1モル〜10モルである。20モルを超えて用いても反応性の点では問題ないが、生産性及び経済性を考慮すると好ましくない。
【0085】
過酸化水素は工業的に入手の容易な水溶液の形態で用いることが好ましい。その濃度に特に限定はないが、5%〜80%が一般に用いられ、好ましくは8%〜60%、更に好ましくは10%〜40%である。例えば、一般的に入手可能な30%程度のものは特に好ましく使用できる。
【0086】
第2工程の酸化反応には触媒を用いる。触媒としては、周期律表3属から14属の金属、周期律表3属から14属の金属の酸化物、周期律表1属から14属の金属のハロゲン化物を用いることができる。中でもバナジウム、鉄、または銅を構成元素として含む触媒であることが好ましく、酸化バナジウム(V)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、鉄、塩化銅(I)、塩化銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、銅が特に好ましい。
【0087】
触媒の使用量は、式[1]で表されるビニルエーテル1モルに対して、通常0.001モル〜0.3モルであり、好ましくは0.005モル〜0.2モル、更に好ましくは、0.01モル〜0.1モルである。
【0088】
第2工程の酸化反応は、酸を共存させて行うことが好ましい。そうすることによって目的物である3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の選択率が向上し、酸化反応をより円滑に行うことができる。その使用量は、使用する酸の価数により変化するが、例えば1価の酸の場合、式[1]で表されるビニルエーテル1モルに対して、通常0.1モル〜10モルであり、好ましくは0.2モル〜5モル、更に好ましくは、0.3モル〜3モルである。また、2価の酸の場合、式[1]で表されるビニルエーテル1モルに対して、通常0.05モル〜5モルであり、好ましくは0.1モル〜2.5モル、更に好ましくは、0.15モル〜1.5モルである。
【0089】
使用される酸としては、無機酸が好ましく、塩酸、臭化水素酸または硫酸が特に好ましい。
【0090】
第2工程において、触媒が周期律表3属から14属の金属、周期律表3属から14属の金属の酸化物、周期律表1属から14属の金属のハロゲン化物のいずれかである場合、酸が無機酸であれば、いずれの組み合わせであっても好ましいが、触媒が酸化バナジウム(V)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、鉄、塩化銅(I)、塩化銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、銅のいずれかである場合、酸として塩酸または硫酸を用いる組み合わせが特に好ましい。
【0091】
第2工程の酸化反応は、水の存在下、行う必要がある。この水としては、前記過酸化水素または酸に用いられている水によって兼ねることができる。水の総量(過酸化水素中の水、酸中の水を加えた量)は、ビニルエーテル1モルに対して通常1モル〜150モル、好ましくは1モル〜100モル、さらに好ましくは1モル〜50モルである。水の総量が150モルより多い場合には、反応液に含まれる3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の濃度が希薄になりすぎ、有機溶媒により抽出する際に抽出効率が低下したり、また十分な抽出効率を得るには抽出溶媒を大量に使用しなければならず、経済的に不利となることがある。また、水の総量が1モルより少ない場合には、酸化反応が十分に進行せず、収率低下を招くことがある。
【0092】
第2工程の反応温度は、通常、0℃〜110℃、好ましくは30℃〜100℃で、さらに好ましくは50℃〜90℃の範囲である。
【0093】
第2工程の反応は通常大気中、大気圧下で行われるが、必要に応じてオートクレーブ等の耐圧反応器を用いることができる。反応時間については、特に制限はなく、ガスクロマトグラフィー等で反応の進行状況を確認し、終点に近づいたことを確認した後、反応工程を終了することが好ましい。
【0094】
第2工程の反応形態に特別な制限はないが、原料である式[1]で表されるビニルエーテルまたは式[2]で表されるアセタールと酸と酸化剤を逐次的に、もしくは連続的に混合するのが、反応の制御が容易であり、好ましい。
【0095】
反応後の処理は特に限定されないが、反応液を有機溶媒と接触させ、目的物を有機相に抽出した後、蒸留等の通常の手段に付して、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を得ることができる。
【0096】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施態様に限られない。ここで、組成分析値の「%」とは、生成物を直接ガスクロマトグラフィーによって測定して得られた組成の「面積%」を表す。
【実施例1】
【0097】
(ビニルエーテルの合成)
ドライアイスとアセトンで冷却した、1Lステンレス鋼製オートクレーブに、予めメタノール307g(9.59mol)及び水22.5gにKOH102g(1.82mol)を溶解させた溶液及び(1E)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン225g(1.72mol)を仕込んだ。22℃付近まで昇温した後、1時間攪拌し、その後、70℃で6時間加熱攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、過剰のメタノールをのぞくと、原料の(1E)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン21.2%、(1E)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン70.7%、(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン3.2%、1,1,1−トリフルオロ−3,3−ジメトキシプロパン4.9%であった。
【0098】
析出した塩を濾別後、フラッシュ蒸留により80℃〜110℃の留分を集め、300gの混合物を得た。得られたこの留分に対して水300gを加え、撹拌後、二層分離を行い、得られた有機層をモレキュラシーブス4A15gにより乾燥し、モレキュラシーブス4Aを濾別後、(1E)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン80.1%、(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン8.1%、1,1,1−トリフルオロ−3,3−ジメトキシプロパン9.1%、メタノール0.6%、(1E)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン0.5%、その他1.6%の混合物147gを得た。
【0099】
得られた混合物147gを、ステンレス鋼製不規則充填物を充填した約15段の蒸留塔を用い精密蒸留を実施し60℃〜65℃の留分を集め、(1E)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン85.0g(純度99.9%、収率39.2%)を得た。
1H-NMRスペクトル(400MHz,CDCl3)δ(ppm):3.62 (3H, s), 4.92 (1H, dq, J=13.2, 6.4 Hz), 7.08 (1H, dq, J=13.2, 2.0 Hz).
19F-NMRスペクトル(400MHz,CDCl3,CFCl3)δ(ppm):−59.59 (3F, d, J=6.4 Hz)
【実施例2】
【0100】
(ビニルエーテルの合成)
ドライアイスとアセトンで冷却した、1Lステンレス鋼製オートクレーブに、予めメタノール246g(7.68mol)及び水20gにKOH120g(2.14mol)を溶解させた溶液及び(1Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン200g(1.53mol)を仕込んだ。22℃付近まで昇温した後、1時間攪拌し、その後、60℃で1.5時間加熱攪拌した。反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、過剰のメタノールをのぞくと、原料の(1Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン7.0%、(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン81.1%、(1E)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン11.7%、1,1,1−トリフルオロ−3,3−ジメトキシプロパン0.2%であった。
【0101】
析出した塩を濾別後、フラッシュ蒸留により80℃〜110℃の留分を集め、383gの混合物を得た。得られたこの留分に対して水383gを加え、撹拌後、二層分離を行い、得られた有機層をモレキュラシーブス4A20gにより乾燥し、モレキュラシーブス4Aを濾別後、(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン83.1%、(1E)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン12.6%、メタノール1.1%、(1Z)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン3.0%、1,1,1−トリフルオロ−3,3−ジメトキシプロパン0.2%の混合物138gを得た。
【0102】
得られた混合物138gを、ステンレス鋼製不規則充填物を充填した約15段の蒸留塔を用い精密蒸留を実施し80℃〜83℃の留分を集め、(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン90.0g(純度99.5%、収率46.4%)を得た。
1H-NMRスペクトル(400MHz,CDCl3)δ(ppm):3.81 (3H, s), 4.71 (1H, dq, J=8.0, 6.8 Hz), 6.53 (1H, d, J=6.8 Hz).
19F-NMRスペクトル(400MHz,CDCl3,CFCl3)δ(ppm):−57.57 (3F, d, J=8.0 Hz)
【実施例3】
【0103】
(酸化工程:酸化バナジウム)
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水10.8g(0.0953mol)を入れ、これに−15℃〜−10℃で、酸化バナジウム(V)0.11g(0.605mmol)を加え、調製した。
【0104】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製50ml三口フラスコに、(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン3.0g(0.0238mol)を入れ、攪拌下、80℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/酸化バナジウム(V)を40分間かけて滴下した。80℃付近で、30分間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、原料の(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン4.8%、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸34.7%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド49.6%、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル2.2%、その他8.7%であった。
【実施例4】
【0105】
(酸化工程:酸化バナジウム/塩酸)
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水10.8g(0.0953mol)を入れ、これに−15℃〜−10℃で、35%塩酸1.24g(0.0119mol)、酸化バナジウム(V)0.11g(0.605mmol)の順で加え、調製した。
【0106】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製50ml三口フラスコに、(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン3.0g(0.0238mol)を入れ、攪拌下、80℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/酸化バナジウム(V)/塩酸混合溶液を40分間かけて滴下した。80℃付近で、30分間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸86.0%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド1.3%、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル4.0%、その他8.7%であった。
【実施例5】
【0107】
(酸化工程:酸化バナジウム/硫酸)
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水9.0g(0.0794mol)を入れ、これに−15℃〜0℃で、酸化バナジウム(V)0.36g(1.99mmol)を加え、調製した。
【0108】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製50ml三口フラスコに、(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン5.0g(0.0397mol)、50%硫酸7.8g(0.0398mol)および30%過酸化水素水9.0g(0.0794mol)を入れ、攪拌下、60℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/酸化バナジウム(V)混合溶液を10分間かけて滴下した。このとき反応温度は、85℃まで上昇した。このまま1時間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸83%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド2%、その他15%であった。
【実施例6】
【0109】
(酸化工程:塩化鉄(III))
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水10.8g(0.0953mol)を入れ、これに−15℃〜−10℃で、塩化鉄(III)0.098g(0.604mmol)を加え、調製した。
【0110】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製50ml三口フラスコに、(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン3.0g(0.0238mol)を入れ、攪拌下、80℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/塩化鉄(III)混合溶液を40分間かけて滴下した。80℃付近で、30分間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸87.5%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド5.7%、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル1.6%、その他5.2%であった。
【実施例7】
【0111】
(酸化工程:塩化鉄(III)/塩酸)
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水10.8g(0.0953mol)を入れ、これに−15℃〜−10℃で、35%塩酸1.24g(0.0119mol)、塩化鉄(III)0.098g(0.604mmol)の順で加え、調製した。
【0112】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製50ml三口フラスコに、(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン3.0g(0.0238mol)を入れ、攪拌下、80℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/塩化鉄(III)/塩酸混合溶液を40分間かけて滴下した。80℃付近で、30分間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸86.2%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド3.4%、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル3.7%、その他6.7%であった。
【実施例8】
【0113】
(酸化工程:塩化鉄(III)/塩酸)
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水10.8g(0.0953mol)を入れ、これに−15℃〜−10℃で、35%塩酸4.13g(0.0396mol)、塩化鉄(III)0.098g(2.40mmol)の順で加え、調製した。
【0114】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製100ml三口フラスコに、(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン10.0g(0.0793mol)を入れ、攪拌下、80℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/塩化鉄(III)/塩酸混合溶液を1時間かけて滴下した。80℃付近で、30分間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸84.2%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド3.6%、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル6.7%、その他5.5%であった。
【0115】
反応混合液を25mlの塩化メチレンで4回抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。常圧で溶媒留去(50℃〜70℃)した後、減圧蒸留し、92℃〜100℃/13kpaの留分を集め、目的物の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸(収量5.5g、収率45.1%、純度99.5%)を得た。
1H-NMRスペクトル(400MHz,CDCl3)δ(ppm):3.43 (2H, q, J=10.8 Hz), 11.07 (1H, bs)
19F-NMRスペクトル(400MHz,CDCl3,CFCl3)δ(ppm):−63.47 (3F, t, J=10.8Hz)
【実施例9】
【0116】
(酸化工程:塩化銅(I))
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水10.8g(0.0953mol)を入れ、これに−15℃〜−10℃で、塩化銅(I)0.060g(0.606mmol)を加え、調製した。
【0117】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製50ml三口フラスコに、(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン3.0g(0.0238mol)を入れ、攪拌下、80℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/塩化銅(I)混合溶液を40分間かけて滴下した。80℃付近で、30分間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸62.9%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド14.9%、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル10.1%、その他12.1%であった。
【実施例10】
【0118】
(酸化工程:塩化銅(I)/塩酸)
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水10.8g(0.0953mol)を入れ、これに−15℃〜−10℃で、35%塩酸1.24g(0.0119mol)、塩化銅(I)0.060g(0.606mmol)の順で加え、調製した。
【0119】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製50ml三口フラスコに、(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン3.0g(0.0238mol)を入れ、攪拌下、80℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/塩化銅(I)/塩酸混合溶液を40分間かけて滴下した。80℃付近で、30分間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸82.3%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド0.4%、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル9.8%、その他7.5%であった。
【実施例11】
【0120】
(酸化工程:酸化銅(I))
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水10.8g(0.0953mol)を入れ、これに−15℃〜−10℃で、酸化銅(I)0.087g(0.608mmol)を加え、調製した。
【0121】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製50ml三口フラスコに、(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン3.0g(0.0238mol)を入れ、攪拌下、80℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/酸化銅(I)混合溶液を40分間かけて滴下した。80℃付近で、30分間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸37.5%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド37.2%、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル6.4%、その他18.6%であった。
【実施例12】
【0122】
(酸化工程:酸化銅(I)/塩酸)
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水10.8g(0.0953mol)を入れ、これに−15℃〜−10℃で、35%塩酸1.24g(0.0119mol)、酸化銅(I)0.087g(0.608mmol)の順で加え、調製した。
【0123】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製50ml三口フラスコに、(1Z)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン3.0g(0.0238mol)を入れ、攪拌下、80℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/酸化銅(I)/塩酸混合溶液を40分間かけて滴下した。80℃付近で、30分間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸73.9%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド0.5%、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル7.6%、その他18.0%であった。
【実施例13】
【0124】
(酸化工程:酸化バナジウム(V)/硫酸)
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水9.0g(0.0794mol)を入れ、これに−5℃〜0℃で、酸化バナジウム(V)0.36g(1.99mmol)を加え、調製した。
【0125】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製50ml三口フラスコに、(1E)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン5.0g(0.0397mol)、50%硫酸7.8g(0.0398mol)および30%過酸化水素水9.0g(0.0794mol)を入れ、攪拌下、60℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/酸化バナジウム(V)混合溶液を10分間かけて滴下した。
【0126】
このとき反応温度は、82℃まで上昇した。このまま1時間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸44%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド1%、その他55%であった。
【実施例14】
【0127】
(酸化工程:酸化バナジウム(V))
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水10.8g(0.0953mol)を入れ、これに−15℃〜−10℃で、酸化バナジウム(V)0.11g(0.605mmol)を加え、調製した。
【0128】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製50ml三口フラスコに、(1E)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン3.0g(0.0238mol)を入れ、攪拌下、60℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/酸化バナジウム(V)を40分間かけて滴下した。60℃付近で、30分間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、原料の(1E)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン67.5%、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸8.1%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド5.6%、その他18.8%であった。
【実施例15】
【0129】
(酸化工程:酸化バナジウム(V)/塩酸)
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水10.8g(0.0953mol)を入れ、これに−15℃〜−10℃で、35%塩酸1.24g(0.0119mol)、酸化バナジウム(V)0.11g(0.605mmol)の順で加え、調製した。
【0130】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製50ml三口フラスコに、(1E)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン3.0g(0.0238mol)を入れ、攪拌下、60℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/酸化バナジウム(V)/塩酸混合溶液を40分間かけて滴下した。60℃付近で、30分間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸17%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド35.6%、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル1.8%、その他45.6%であった。
【実施例16】
【0131】
(酸化工程:塩化鉄(III)/塩酸)
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水10.8g(0.0953mol)を入れ、これに−15℃〜−10℃で、35%塩酸1.24g(0.0119mol)、塩化鉄(III)0.098g(0.604mmol)の順で加え、調製した。
【0132】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製50ml三口フラスコに、(1E)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン3.0g(0.0238mol)を入れ、攪拌下、60℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/塩化鉄(III)/塩酸混合溶液を40分間かけて滴下した。60℃付近で、30分間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸17.1%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド42.7%、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル1.2%、その他39.0%であった。
【実施例17】
【0133】
(酸化工程:塩化銅(I)/塩酸)
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水10.8g(0.0953mol)を入れ、これに−15℃〜−10℃で、35%塩酸1.24g(0.0119mol)、塩化銅(I)0.060g(0.606mmol)の順で加え、調製した。
【0134】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製50ml三口フラスコに、(1E)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン3.0g(0.0238mol)を入れ、攪拌下、60℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/塩化銅(I)/塩酸混合溶液を40分間かけて滴下した。60℃付近で、30分間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸24.2%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド7.6%、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル4.4%、その他63.8%であった。
【実施例18】
【0135】
(酸化工程:酸化銅(I)/塩酸)
マグネチックスターラー、温度計を備えたガラス製50ml三口フラスコに、30%過酸化水素水10.8g(0.0953mol)を入れ、これに−15℃〜−10℃で、35%塩酸1.24g(0.0119mol)、酸化銅(I)0.087g(0.608mmol)の順で加え、調製した。
【0136】
マグネチックスターラー、滴下ロート、温度計、冷却管(開放系)を備えたガラス製50ml三口フラスコに、(1E)−3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシプロペン3.0g(0.0238mol)を入れ、攪拌下、60℃に加熱した。これに、上記調製した過酸化水素水/酸化銅(I)/塩酸混合溶液を40分間かけて滴下した。60℃付近で、30分間攪拌後、室温まで冷却し、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸25.0%、3,3,3−トリフルオロプロピオンアルデヒド3.9%、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル3.6%、その他67.5%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[1]で表されるビニルエーテル
【化1】

(式[1]中、Rは炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基を表す。)
を触媒および水の存在下、過酸化水素により酸化することを特徴とする、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、ビニルエーテルが、式[1a]で表される「Z型のビニルエーテル」
【化2】

であることを特徴とする、請求項1に記載の、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【請求項3】
次の反応工程を含む、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
[第1工程]:式[3]で表される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン
【化3】

を、塩基性物質の共存下、式[4]で表されるアルコール
【化4】

(式[4]中、Rは炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基を表す。)
と反応させて、式[1]で表されるビニルエーテル
【化5】

(式[1]中、Rは炭素数1〜6の鎖状もしくは環状アルキル基を表す。)
を得る工程。
[第2工程]:前記[第1工程]で得られた、式[1]で表されるビニルエーテルを、触媒および水の存在下、過酸化水素により酸化し、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を得る工程。
【請求項4】
請求項3において、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが、式[3a]で表される「Z型の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン」
【化6】

であり、ビニルエーテルが式[1a]で表される「Z型のビニルエーテル」
【化7】

であることを特徴とする、請求項3に記載の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかにおいて、過酸化水素による酸化反応の際に用いられる触媒が、周期律表3属から14属の金属、周期律表3属から14属の金属の酸化物、周期律表1属から14属の金属のハロゲン化物のいずれかであることを特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れかにおいて、過酸化水素による酸化反応の際に用いられる触媒がバナジウム、鉄、または銅を構成元素として含む触媒であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4の何れかにおいて、過酸化水素による酸化の際に用いられる触媒が酸化バナジウム(V)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、鉄、塩化銅(I)、塩化銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、銅から選ばれる触媒であることを特徴とする、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れかにおいて、過酸化水素による酸化の際に、酸を共存させることを特徴とする、請求項1乃至請求項7の何れかに記載の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、酸が無機酸であることを特徴とする、請求項8に記載の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【請求項10】
請求項9において、無機酸が塩酸、臭化水素酸または硫酸であることを特徴とする、請求項9に記載の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
【請求項11】
次の反応工程を含む、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の製造方法。
[第1工程]:式[3a]で表される「Z型の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン」
【化8】

を、塩基性物質の共存下、式[4a]で表されるアルコール
【化9】

(式[4a]中、R’は炭素数1〜6の鎖状アルキル基を表す。)
と反応させて、式[1a]で表される「Z型のビニルエーテル」
【化10】

(式[1a]中、R’は炭素数1〜6の鎖状アルキル基を表す。)
を得る工程。
[第2工程]:前記[第1工程]で得られた、式[1a]で表される「Z型のビニルエーテル」を、酸化バナジウム(V)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、鉄、塩化銅(I)、塩化銅(II)、酸化銅(I)、酸化銅(II)、銅から選ばれる触媒および水の存在下、かつ塩酸、臭化水素酸または硫酸から選ばれる無機酸の存在下、過酸化水素により酸化し、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を得る工程。

【公開番号】特開2006−298855(P2006−298855A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124527(P2005−124527)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】