説明

3,5−ジ−O−アシル−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトンの製造方法

本発明は、強力かつ選択的な抗C型肝炎ウイルス活性を有する化合物である、1−(2−デオキシ−2−フルオロ−2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)シトシン(式(1))の製造において重要な中間体である、式(2)で示される、3,5−ジ−O−アシル−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン誘導体の新規な製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(2):
【0002】
【化1】


で示される、3,5−ジ−O−アシル−2−フルオロ−2−C−メチル−D−リボノ−γ−ラクトン誘導体の新規な製造方法を提供するものであり、これは、強力かつ選択的な抗C型肝炎ウイルス活性を有する化合物である、式(1):
【0003】
【化2】


で示される1−(2−デオキシ−2−フルオロ−2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)シトシン(PCT公報WO2005/003147)の製造において重要な中間体である。
【背景技術】
【0004】
中間体(2)を調製するための数々の合成ルートがPCT公報WO2006/012440に開示されているが、これらの合成ルートには、高い製造コスト及び商業規模での製造における技術的困難という欠点がある。不斉ジヒドロキシル化触媒(AD−mix−β)、フッ素化剤ジエチルアミノスルファートリフルオリド、及びWittig試薬を大量に使用していることが、主なコスト高の要因である。AD−mix−βのような毒性の高い試薬、ジエチルアミノスルファートリフルオリドのような高反応性試薬の使用、及び中間体のクロマトグラフィーによる単離が、より一層困難にしている一因である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、当該技術分野において公知の合成から公知の欠点に悩まされることのない、別の合成アプローチを見出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当該目的は、以下に概要が述べられるように、本発明の方法によって達成できた。
【0007】
式(2):
【0008】
【化3】


[式中、Rは、独立に、C1−6−アルキル、場合により置換されているフェニル−C1−6−アルキル又は場合により置換されているフェニルである]で示される化合物の製造方法であって、
a)式(20):
【0009】
【化4】


[式中、Rは、C1−4−アルキルである]で示される化合物を、塩基及び、式(21):
【0010】
【化5】


[式中、Rは、C1−4−アルキルである]で示される化合物と反応させて、式(22)、(23)及び(24):
【0011】
【化6】


[式中、R及びRは、上記と同義である]で示される化合物の混合物を形成する工程;
b)式(22)、(23)及び(24):
【0012】
【化7】


[式中、R及びRは、上記と同義である]で示される化合物の混合物を、式(23)で示される化合物を加水分解することができる酵素と反応させて、対応するカルボン酸とし、化合物(22)と(24)の混合物を単離する工程;
c)式(22)と(24):
【0013】
【化8】


[式中、R及びRは、上記と同義である]で示される化合物の混合物を、酸性処理により、式(25)と(26):
【0014】
【化9】


で示される化合物の混合物に変換する工程;
d)式(25)と(26):
【0015】
【化10】


で示される化合物の混合物を、塩基の存在下で、式:
RCOX
のハロゲン化アシル(ここで、Rは、上記と同義であり、Xは、ハロゲンである)を用いて、又はアシル無水物:
RC(O)O(O)CR
(ここで、Rは、上記と同義である)を用いて、アシル化して、式(2)と(27):
【化11】


[式中、Rは、上記と同義である]で示される化合物の混合物を形成する工程;
e)式(2)と(27):
【0016】
【化12】


[式中、Rは、上記と同義である]で示される化合物の混合物を、有機溶媒中で再結晶化させて、式(2)で示される化合物を単離する工程
の一つ以上を含む方法。
【0017】
本明細書で使用されるように、以下の用語は下記の意味を有する:
【0018】
本明細書で使用される用語「フェニル−C1−6−アルキル」は、フェニル基で置換されているC1−6−アルキル、好ましくはベンジルを指す。
【0019】
用語「場合により置換されているフェニル−C1−6−アルキル」又は「場合により置換されているフェニル」は、C1−3−アルキル置換フェニルC1−6−アルキル又はC1−3−アルキル置換フェニルを指す。
【0020】
用語「C1−4−アルキル」又は「C1−6−アルキル」は、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、又はこれに加えてペンチル及びその異性体ならびにヘキシル及びその異性体を指す。
【0021】
用語「ハロゲン」は、クロロ、ブロモ、ヨード及びフルオロを指し、好ましくはクロロである。
【0022】
本発明の方法の好ましい実施態様において、置換基は以下の意味を有する:Rは、フェニルであり、Rは、メチル、エチル、又はn−ブチル、好ましくはエチルであり、Rは、メチル又はエチル、好ましくはメチルであり、Xは、クロロである。
【0023】
工程a)
工程a)は、式(20):
【0024】
【化13】


[式中、Rは、C1−4−アルキルである]で示される化合物を、塩基及び、式(21):
【0025】
【化14】


[式中、Rは、C1−4−アルキルである]で示される化合物と反応させて、式(22)、(23)及び(24):
【0026】
【化15】


[式中、R及びRは、上記と同義である]で示される化合物の混合物を形成することを、要求する。
【0027】
反応工程a)において使用される塩基は、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(LTMP)、及びリチウムヘキサメチルジシラジド(LHMDS)からなる群より選択される非求核性の塩基である。
【0028】
工程(a)中の反応は、適切な非反応性有機溶媒中で行うことができる。例示的な例には、テトラヒドロフラン(THF)、2−Me−THF、トルエン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテルなどが含まれる。
【0029】
反応温度は、一般に−55℃未満に保たれる。式(22)、(23)及び(24)で示される化合物の混合物の単離は、塩化アンモニウム水溶液を反応混合物に加え、そして水相を例えばジクロロメタンのような適切な有機溶媒で抽出することで起こりうる。
【0030】
工程b)
工程b)は、式(22)、(23)及び(24):
【0031】
【化16】


[式中、R及びRは、上記と同義である]で示される化合物の混合物を、式(23)で示される化合物を加水分解することができる酵素と反応させて、対応するカルボン酸とし、化合物(22)と(24)の混合物を単離することを、要求する。
【0032】
原則として、化合物(22)と(24)の存在下、化合物(23)を優先的に加水分解することができる任意の酵素を使用して、対応するカルボン酸とすることができる。
【0033】
化合物(22)の存在下で、化合物(23)を優先的に加水分解する有用な酵素には、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来のリパーゼTOY(東洋紡);ウマ肝臓由来のエステラーゼHLE(Fluka);ムコールミィフィ(Mucor miehei)由来のエステラーゼMME(Fluka);カンジダリポリチカ(Candida lipolytica)由来のエステラーゼCLE(Fluka);バークホルデリアセパシア(Burholderia cepacia)由来のリパーゼL1(Roche);及びRocheからのリパーゼL2であるCALBの精製製剤が含まれる。
【0034】
カンジダアンタークチカ(Candida Antarctica)・リパーゼ型B(CALB)(Novozymes社)は、その高い反応性及び立体選択性ゆえに好ましい酵素である。好ましくは、化合物(23)の選択的加水分解は、約20〜45℃の温度で、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ジメチルアンモニウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ソルビトール、スクロース、グリシン又は酵素活性に有益な他の添加剤を含みうるpH約7.0〜7.5の緩衝水溶液中で、CALBにより行われる。
【0035】
化合物(22)と(24)の混合物の、アルカリ性水性媒体からの単離は、適切な有機溶媒、好ましくはジクロロメタンによる抽出という手段によって行うことができる。
【0036】
工程c)
工程c)は、式(22)と(24):
【0037】
【化17】

【0038】
[式中、R及びRは、上記と同義である]で示される化合物の混合物を、酸性処理により、式(25)と(26):
【0039】
【化18】

【0040】
で示される化合物の混合物に変換することを、要求する。
【0041】
原則として、工程c)における酸性処理は、酢酸、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸からなる群より選択される酸を用いて行われ、好ましくは硫酸水溶液を用いて行われる。
【0042】
工程(a)における、(22)と(24)の、対応する(25)と(26)への転換は、有機溶媒と水の混合溶液中で触媒としての酸を高温で使用して行うこともできる。適切な条件には、酢酸/水/95℃、Amberlyst 15/アセトニトリル/水/82℃、硫酸/エタノール/水/80℃及び塩酸/1−プロパノール/水/88℃が含まれる。化合物25と26の混合物は、通常は反応混合物を適切な塩基で中和し、適切な有機溶媒で抽出し、そして続いて溶媒を除去することにより単離できる。
【0043】
工程d)
工程d)は、式(25)と(26):
【0044】
【化19】


で示される化合物の混合物を、塩基の存在下で、式:
RCOX
のハロゲン化アシル(ここで、Rは、上記と同義であり、Xは、ハロゲンである)を用いて、又はアシル無水物:
RC(O)O(O)CR
(ここで、Rは、上記と同義である)を用いて、アシル化して、式(2)と(27):
【0045】
【化20】


[式中、Rは、上記と同義である]で示される化合物の混合物を形成することを、要求する。
【0046】
適切な塩基は、ハロゲン化アシル及びアシル無水物反応剤と反応しない塩基である。例示的な例は、ピリジン、又はトリエチルアミン、N,N′−ジイソプロピルアミン(DIPEA)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)のような第3級アミンであるが、これらに限定されない。好ましくは第3級アミンが、そしてさらに好ましくはトリエチルアミンが、アシル化における塩基として使用される。
【0047】
好ましいアシル化剤は、R及びXが上記の意味を有する、ハロゲン化アシルRCOXである。最も好ましいアシル化剤は、ベンゾイルクロリドである。
【0048】
アシル化工程の好ましい実施態様において、触媒量の4−ジメチルアミノピリジンを添加することができる。
【0049】
アシル化は通常、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジンなどのような適切な溶媒中で行われる。
【0050】
原則として、化合物(2)と(27)の混合物は、反応混合物から単離されないが、工程e)で容易に再結晶化に付される。
【0051】
工程e)
工程e)は、式(2)と(27):
【0052】
【化21】


[式中、Rは、上記と同義である]で示される化合物の混合物を、有機溶媒中で再結晶化させて、式(2)で示される化合物を単離することを、要求する。
【0053】
通常、水溶性有機溶媒は、結晶型にある化合物(2)を、化合物(27)から実質的に分離するものである。例示的な例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、及びイソプロパノールからなる群より選択されうるが、これらに限定されない。好ましい溶媒は、イソプロパノールである。
【0054】
別の具体的な実施態様において、本発明は、式(22):
【0055】
【化22】

【0056】
で示される化合物を調製する方法であって、式(22)と(24):
【0057】
【化23】


[式中、R及びRは、上記と同義である]で示される化合物の混合物を、有機溶媒を用いて再結晶化させることを含む、方法を提供する。
【0058】
通常、化合物(22)と(24)の混合物は、tert−ブチルメチルエーテルのような適切な溶媒中で溶解される。その後、化合物(22)を、非極性溶媒、好ましくはヘキサン中で析出させることができる。
【0059】
式(22):
【0060】
【化24】


[式中、R及びRは、C1−4−アルキルである]で示される化合物;
【0061】
式(23):
【0062】
【化25】


[式中、R及びRは、C1−4−アルキルである]で示される化合物;
式(24):
【0063】
【化26】


[式中、R及びRは、C1−4−アルキルである]で示される化合物;
式(26):
【0064】
【化27】


で示される化合物は、新規であり、したがって本発明のさらなる実施態様を表す。
【0065】
さらに、本発明の別の実施態様において、式(1):
【化28】


で示される化合物の、先に記載の工程の一つ以上を含む調製方法が提供される。
【0066】
下記の実施例は、本発明を限定することなく説明する。
【実施例】
【0067】
実施例1
2−フルオロプロピオン酸エチル((20)、R=エチル)と、D−グリセルアルデヒド 1,2−アセトニド((21)、R=メチル)との反応
【0068】
【化29】

【0069】
メカニカル撹拌機、熱電対、窒素流入口、及び添加漏斗を備え、乾燥され、清浄な、2Lの四つ口丸底フラスコに、無水テトラヒドロフラン(THF)266g及びジイソプロピルアミン38.1gを仕込んだ。混合物を撹拌し、<−75℃に冷却した。バッチ温度を−55℃未満に保持しながら、溶液に、エチルエーテル中の1.6M MeLi溶液173gをゆっくり仕込んだ。添加後、混合物を約−75℃で40分間撹拌した。次に、バッチ温度を−74℃未満に保持しながら、この混合物に2−フルオロプロピオン酸エチル(20) 45.2gをゆっくり加えた。混合物を−76℃で50分間撹拌し、バッチ温度を−74℃未満に保持しながら、無水THF 178g中の蒸留したばかりのD−グリセルアルデヒド 1,2−アセトニド(21) 35gの溶液をゆっくり加えた。添加後、混合物を約20分間撹拌した。これに、20%NHCl溶液300gを加えた。混合物をゆっくりと周囲温度に温め、分液漏斗に移した。水相を分離し、ジクロロメタンの2×132g=264gで抽出した。有機相を合わせ、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して粗アルドール生成物58gを高粘度の油状物として得た。ガスクロマトグラムは、油状物が12.2%の(24)、43.4%の(22)、及び35.2%の(23)を含有していることを示した。
【0070】
実施例2
2−フルオロプロピオン酸エチル((20)、R=エチル)と、D−グリセルアルデヒド 1,2−ペンタノニド((21)、R=エチル)との反応
【0071】
【化30】

【0072】
メカニカル撹拌機、熱電対、窒素流入口、及び添加漏斗を備え、乾燥され、清浄な四つ口丸底フラスコに、無水THF20mL及びジイソプロピルアミン1.8gを仕込んだ。混合物を撹拌し、<−75℃に冷却した。バッチ温度を−55℃未満に保持しながら、溶液に、エチルエーテル中の1.6M MeLi溶液11mLをゆっくり仕込んだ。添加後、混合物を約−75℃で30分間撹拌した。次に、バッチ温度を−74℃未満に保持しながら、この混合物に2−フルオロプロピオン酸エチル(20) 2.1gをゆっくり加えた。混合物を−76℃で30分間撹拌し、バッチ温度を−74℃未満に保持しながら、無水THF 10mL中の蒸留したばかりのD−グリセルアルデヒド 1,2−ペンタノニド(21) 2gの溶液をゆっくり加えた。添加後、混合物を約20分間撹拌した。これに、20%NHCl溶液20mLを加えた。混合物をゆっくりと周囲温度に温め、分液漏斗に移した。水相を分離し、ジクロロメタンの2×10mL=20mLで抽出した。有機相を合わせ、MgSOで乾燥し、濾過し、濃縮して、粗アルドール生成物3gを高粘度の油状物として得た。ガスクロマトグラムは、油状物が8.2%の(24)、36.5%の(22)、及び30.8%の(23)を含有していることを示した。
【0073】
実施例3
2−フルオロプロピオン酸n−ブチル((20)、R=n−ブチル)と、D−グリセルアルデヒド 1,2−アセトニド((21)、R=メチル)との反応
【0074】
【化31】

【0075】
メカニカル撹拌機、熱電対、窒素流入口、及び添加漏斗を備え、乾燥され、清浄な四つ口丸底フラスコに、無水トルエン100mL及びジイソプロピルアミン10gを仕込んだ。混合物を撹拌し、<−75℃に冷却した。バッチ温度を−55℃未満に保持しながら、溶液に、エチルエーテル中の1.6M MeLi溶液54mLをゆっくり仕込んだ。添加後、混合物を約−75℃で30分間撹拌した。次に、バッチ温度を−70℃未満に保持しながら、この混合物に、2−フルオロプロピオン酸n−ブチル(20) 11gをゆっくり加えた。混合物を−76℃で30分間撹拌し、バッチ温度を−74℃未満に保持しながら、無水トルエン50mL中の蒸留したばかりのD−グリセルアルデヒド 1,2−アセトニド(21) 8gの溶液をゆっくり加えた。添加後、混合物を約1時間撹拌した。混合物を、30%クエン酸溶液30mLに加えた。混合物をゆっくりと周囲温度に温め、分液漏斗に移した。水相を分離し、酢酸エチルの2×20mL=40mLで抽出した。有機相を合わせ、ブラインで洗浄し、濃縮して、粗アルドール生成物11gを高粘度の油状物として得た。ガスクロマトグラムは、油状物が5.5%の(24)、55%の(22)、及び39%の(23)を含有していることを示した。
【0076】
実施例4
(22)、(23)、及び(24)(R=エチル、R=メチル)の混合物の酵素処理
【0077】
【化32】

【0078】
メカニカル撹拌機、熱電対、pHプローブ、及び塩基を投入するポンプ流入口を備え、乾燥され、清浄な、1Lの四つ口丸底フラスコに、10%D−ソルビトール、3mMリン酸カリウムからなる緩衝液360g、及び粗アルドール生成物((22)、(23)及び(24))38.5gを仕込んだ。混合物を43℃(バッチ温度)で撹拌し、12%HSO溶液を加えることにより、混合物のpHを約7.5に調整した。混合物に、CALB溶液4gを加えた。pHポンプを介して1.0N NaOHを加えることにより、pHを7.5に保持しながら、混合物をその温度で22時間撹拌した。混合物を周囲温度に冷却し、分液漏斗に移し、ジクロロメタンの3×100mL=300gで抽出した。有機溶液を無水MgSO 75gと共に1時間撹拌した。固体を濾過し、濾液を濃縮乾固して、(22)及び(24)の粗混合物18gを高粘度の油状物として得、これはゆっくりと半固体になった。
【0079】
実施例5
(22)と(24)(R=エチル、R=メチル)の混合物からの(2)(R=Ph)の調製
【0080】
【化33】

【0081】
実施例4からの(22)及び(24)の粗混合物3.0g、2Bアルコール20g、及び12%硫酸6gの混合物を、78℃で5時間環流した。混合物を周囲温度に冷却し、トリエチルアミン1gを加えて酸を中和した。混合物を濃縮乾固した。残留物をトルエン20gと混合し、混合物を再び濃縮乾固した。残留物をアセトニトリル15gに溶解した。この溶液に、触媒量の4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)及びベンゾイルクロリド5.2gを加えた。バッチ温度を<40℃に保持しながら、この混合物にトリエチルアミン4.1gをゆっくり加えた。添加後、混合物を1時間撹拌した。混合物を酢酸エチル36gで希釈し、0℃に冷却し、水25gを加えた。混合物を分液漏斗に移し、水相を分離し、酢酸エチル20gで再び抽出した。合わせた有機溶液を飽和NaHCO溶液20gで洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗油状物を得た。油状物を2−プロパノール27gと混合した。混合物を約60℃に加熱して、清澄な溶液とした。次に混合物を10℃にゆっくりと冷却し、1時間保持した。固体を濾過し、湿潤ケークを2−プロパノールで洗浄し、減圧下で50℃にて一晩乾燥させて、(2)(R=Ph)2.0gを得た。
【0082】
実施例6
酵素による加水分解後の純粋な(22)(R=エチル、R=メチル)の単離
【0083】
【化34】

【0084】
フラスコに、実施例4からの(22)及び(24)(R=エチル、R=メチル)の混合物3g及びtert−ブチルメチルエーテル(TBME)3mlを仕込んだ。混合物を、清澄な溶液が形成されるまで撹拌した。この溶液に、ヘキサン10mLをゆっくり加えた。得られた懸濁液を、周囲温度で2時間撹拌した。固体を単離し、ヘキサン4mLで洗浄し、減圧下で30℃にて一晩乾燥させて、純粋な(22)(R=エチル、R=メチル)1.3gを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2):
【化35】


[式中、Rは、独立にC1−6−アルキル、場合により置換されているフェニル−C1−6−アルキル又は場合により置換されているフェニルである]で示される化合物の製造方法であって、
a)式(20):
【化36】


[式中、Rは、C1−4−アルキルである]で示される化合物を、塩基及び、式(21):
【化37】


[式中、Rは、C1−4−アルキルである]で示される化合物と反応させて、式(22)、(23)及び(24):
【化38】


[式中、R及びRは、上記と同義である]で示される化合物の混合物を形成する工程;
b)式(22)、(23)及び(24):
【化39】


[式中、R及びRは、上記と同義である]で示される化合物の混合物を、式(23)で示される化合物を加水分解することができる酵素と反応させて、対応するカルボン酸とし、化合物(22)と(24)の混合物を単離する工程;
c)式(22)と(24):
【化40】


[式中、R及びRは、上記と同義である]で示される化合物の混合物を、酸性処理により、式(25)と(26):
【化41】


で示される化合物の混合物に変換する工程;
d)式(25)と(26):
【化42】


で示される化合物の混合物を、塩基の存在下で、式:
RCOX
で示されるハロゲン化アシル(ここで、Rは、上記と同義であり、Xは、ハロゲンである)を用いて、又はアシル無水物:
RC(O)O(O)CR
(ここで、Rは、上記と同義である)を用いて、アシル化して、式(2)と(27):
【化43】


[式中、Rは上記と同義である]で示される化合物の混合物を形成する工程;
e)式(2)及び(27):
【化44】


[式中、Rは、上記と同義である]で示される化合物の混合物を、有機溶媒中で再結晶化させて、式(2)で示される化合物を単離する工程
の一つ以上を含む方法。
【請求項2】
Rがフェニルであり、Rが、メチル、エチル又はn−ブチルであり、Rが、メチル又はエチルであり、そしてXがクロロである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
反応工程a)で使用される塩基が、リチウムジイソプロピルアミド、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及びリチウムヘキサメチルジシラジドからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程(b)で使用される酵素が、カンジダアンタークチカ(Candida Antarctica)リパーゼ2(CALB)であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
工程b)における酵素による加水分解が、pH 7.0〜7.5及び温度20〜45℃において水性緩衝液媒体中で行われることを特徴とする、請求項1又は4記載の方法。
【請求項6】
工程b)において、化合物(22)と(24)の混合物が、有機溶媒を用いて反応混合物を抽出することにより回収されることを特徴とする、請求項1、4又は5記載の方法。
【請求項7】
工程c)における酸性処理が、酢酸、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸からなる群より選択される酸を用いて行われることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
工程d)におけるアシル化で使用される塩基が、第3級アミンであることを特徴とする、請求項1又は7記載の方法。
【請求項9】
工程d)におけるアシル化が、ベンゾイルクロリドを用いて行われることを特徴とする、請求項1又は8記載の方法。
【請求項10】
工程e)における再結晶化が、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びイソプロパノールから選択される脂肪族アルコールを用いて行われることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項11】
イソプロパノールが使用されることを特徴とする、請求項1又は10記載の方法。
【請求項12】
式(22):
【化45】


[式中、R及びRは、C1−4−アルキルである]で示される化合物。
【請求項13】
式(23):
【化46】


[式中、R及びRは、C1−4−アルキルである]で示される化合物。
【請求項14】
式(24):
【化47】


[式中、R及びRは、C1−4−アルキルである]で示される化合物。
【請求項15】
式(26):
【化48】


で示される化合物。
【請求項16】
請求項1〜11に記載されている工程の一つ以上を含むことを特徴とする、式(1):
【化49】


で示される化合物の製造方法。
【請求項17】
本明細書に記載の発明。

【公表番号】特表2010−513377(P2010−513377A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541984(P2009−541984)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063703
【国際公開番号】WO2008/074693
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】