説明

4‐(1‐(3‐(ヒドロキシメチル)‐2‐メチルフェニル)エチル)‐1H‐イミダゾール‐2(3H)‐チオン

本明細書においては、4‐(1‐(3‐(ヒドロキシメチル)‐2‐メチルフェニル)エチル)‐1H‐イミダゾール‐2(3H)‐チオン、および該化合物を使用して慢性疼痛を治療する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年2月13日に出願された米国仮特許出願第61/152,487号の権利を主張する:該米国特許出願の開示全体を、この明確な参照に従い、本明細書に合体させる。
【発明の概要】
【0002】
本明細書においては、下記の構造を有する化合物を開示する:
【化1】

化合物I
【0003】
化合物Iは、4‐(1‐(3‐(ヒドロキシメチル)‐2‐メチルフェニル)エチル)‐1H‐イミダゾール‐2(3H)‐チオンである。この化合物は、下記の2つの鏡像体として存在する:
【化2】

化合物II
【化3】

化合物III
【0004】
化合物IIは、(R)‐4‐(1‐(3‐(ヒドロキシメチル)‐2‐メチルフェニル)エチル)‐1H‐イミダゾール‐2(3H)‐チオンである。化合物IIIは、(S)‐4‐(1‐(3‐(ヒドロキシメチル)‐2‐メチルフェニル)エチル)‐1H‐イミダゾール‐2(3H)‐チオンである。これらの化合物は、下記に示す4‐(1‐(2,3‐ジメチルフェニル)エチル)‐1H‐イミダゾール‐2(3H)チオンの生体内ヒドロキシル化によって形成される:
【化4】

化合物IV

化合物IVは、その合成および使用方法を含み、米国特許第7,141,597号に記載されている;この米国特許の内容は、参考として本明細書に合体させる。
【発明を実施するための形態】
【0005】
合成
式Iの化合物は、以下の通り合成し得る。
【0006】
【化5】

手順
磁力撹拌棒および還流コンデンサーを備えた1Lの一口フラスコに、3‐ブロモ‐2‐メチル安息香酸1(200g、0.93モル)と塩化チオニル(202mL、2.79モル)を添加した。反応器を、NaOH水溶液洗浄器に取付け(NaOHの量は上記に示していない)、76℃に90分間加熱した。この時点で、固形物の全てが溶解した。GC分析は、反応が完了したことを示していた。バッチを周囲温度に冷却し、減圧下に濃縮して3‐ブロモ‐2‐メチルベンゾイルクロリドを明褐色油状物として得た。この物質を無水CH2Cl2 (350 mL)中に溶解し、添加漏斗に移した。この溶液を、無水CH2Cl2 (1.0L)中の2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノール(182.4g、2.05モル)の溶液に45分に亘って滴下によって添加した。添加の間、内部温度を、氷水浴により冷却することによって10℃〜20℃に保った。添加漏斗を無水CH2Cl2 (50mL)で洗浄した。バッチを周囲温度で3時間撹拌した。GC分析は、反応が完了したことを示していた。塩を濾別し、フィルターケーキをCH2Cl2 (1L)で洗浄した。濾液を飽和NaHCO3水溶液(500mL;200gのNaHCO3と1.6Lの水道水から調製)および塩水(500mL;750gのNaClと1.5Lの水道水から調製)で洗浄した。分離した有機層をNa2SO4 (400g)上で乾燥させ、濾過した。物質の移動およびフィルターケーキの洗浄は、CH2Cl2 (1L)で完了させた。濾液を減圧下に濃縮した。得られた残留物に、塩化チオニル(302mL、4.16モル)をゆっくり添加した。発熱反応が生じた。反応器を、NaOH水溶液洗浄器に取付け(NaOHの量は上記に示していない)、バッチを、添加終了時に、2時間撹拌した。GC分析は、反応が完了したことを示していた。塩化チオニルを減圧下に除去した。残留物を氷水浴で冷却した。MeOH (100mL)を、次いで、20質量%NaOH溶液(600mL;200gのNaOHと0.8Lの水道水から調製)をゆっくり添加した(極めて発熱性)。反応混合物のpHを測定したところ、14であった。水道水(1L)添加し、バッチを、殆どの固形物が溶解するまで撹拌した。混合物を、MTBE (800mL×3)で抽出した。有機層を混ぜ合せ、塩水(500mL)で洗浄し、Na2SO4 (322g)上で乾燥させ、減圧下に濃縮した。残留物を、15%EtOAc/ヘキサン(7.5L)で溶出させるシリカゲルプラグ(2Lのヘキサンを装填した3Lフィルター漏斗中の1kgのシリカゲル)に通すことによって精製した。最初の5.5Lの溶離液は、2を含有していた。減圧下に濃縮して、217g (87%)の2をオレンジ色油状物として得た。HPLCは、その純度が96.5A%であったことを示した。
LCMS (m/z) 268.14 (M++1、79Br)、270.03 (M++1、81Br)。
1H NMR (400MHz、CDCl3) δ 1.40 (6H、s)、2.61 (3H、s)、4.09 (2H、s)、7.06 (1H、dd、J = 8.4、7.2Hz)、7.60 (1H、d、J = 7.2Hz)、7.62 (1H、dd、J = 8.4、1.2Hz)。
13C NMR (100MHz、CDCl3) δ 20.9、28.5 (2C)、68.2、79.0、126.7、126.8、129.0、130.3、134.7、137.9、162.3。
【0007】
【化6】

【0008】
手順
3Lの四口フラスコに、磁力撹拌棒、サーモカップル、添加漏斗、およびN2入口を有する還流コンデンサーを装着した。このフラスコに、Mg丸削り(4.76g、0.196モル)と無水THF (20mL)を装填した。次に、1,2‐ジブロモエタン(0.5mL)を添加し、激しい撹拌を数分間実施した。Mgの活性化が明らかとなった(発泡、暗色化)。バッチを55℃に加熱し、無水THF (480mL)中の2(50g、0.186モル)の溶液を10分間に亘って添加した。発熱反応が始まり、この反応は10分間続いた。殆どのMgがこの時点で溶解し、混合物は、緑色がかった懸濁液に変った。還流での加熱を30分間続行した。無水THF (250mL)中に溶解した4(5)‐イミダゾールカルボキシアルデヒド(8.94g、0.093モル)の溶液は、全部を1度で添加した;混合物を1夜還流させた。周囲温度に冷却後、混合物を氷水浴で冷却した。飽和NH4Cl水溶液(500mL;600gのNH4Clと1.65Lの水道水から調製)を添加し、内部温度を24℃よりも低く保った。添加を終えた後、冷却を取除き、混合物を周囲温度で40分間撹拌した。層を分離した;有機層を飽和NH4Cl水溶液(250mL)で洗浄し、無水MgSO4 (10g)上で乾燥させ、濾過し、減圧下に濃縮した。得られた油状固形物(75.1g)を、10% EtOAc‐ヘキサン(300mL)で1時間処理した。残留水性層はEtOAc (500mL)で抽出し、有機層をMgSO4 (5g)上で乾燥させ、濾過し、減圧下に濃縮した。第2の抽出物からの残留固形物(3.3g)を、10% EtOAc‐ヘキサン(100mL)で1時間処理した。両処理物質バッチを濾過し、混ぜ合せ、次いで、10% EtOAc‐ヘキサン(100mL)で洗浄した。混ぜ合せた固形物を高真空下に乾燥させて、19.1g (4(5)‐イミダゾールカルボキシアルデヒド基準で72%)のオフホワイト粉末を得た。HPLC分析は、この粉末が3と4のおよそ4:1混合物であることを示していた。
LCMS (m/z) 286.14 (M++1)。
1H NMR (400MHz、CD3OD) δ 1.38 (6H、s)、2.33 (3H、s)、4.17 (2H、s)、6.05 (1H、s)、6.65 (1H、s)、7.30 (1H、t、J = 7.6Hz)、7.46 (1H、dd、J = 8.0、1.2Hz)、7.63 (1H、s)、7.73 (1H、d、J = 7.6Hz)。
13C NMR (100MHz、CD3OD) δ 16.2、28.6 (2C)、67.8、68.7、80.5、118.7、126.8、129.7、130.0、130.2、136.1、136.8、141.4、144.0、166.6。
【0009】
【化7】

【0010】
手順
5Lの三口フラスコに、撹拌棒、N2入口を有する還流コンデンサー、サーモカップル、およびストッパーを装着した。このフラスコに、3(3 (81.0 g、0.28モル;4とのおよそ4:1混合物)、MnO2 (243.4g、2.80モル)および1,2‐ジクロロエタン(2.6L)を装填した。混合物を75℃で1時間撹拌した。この時点で、HPCL分析は、反応が完了していたことを示した。加熱を中止し、混合物を60℃に冷却した。バッチをセライトパッド(500g、1Lの1,2‐ジクロロエタンと一緒に充填)によって濾過し、フィルターケーキをTHF (6L)で洗浄した。濾液と洗浄液を濃縮して小容量(約300mL)とし、ヘキサン(3L)を、撹拌による希薄流に添加した。15分間撹拌した後、固形物を集めフィルターケーキをヘキサン(200mL)で洗浄し、その後、フィルターケーキを減圧下に60℃で6時間乾燥させた。そのようにして、68.0g (86%)の4を粉末として得た。1H NMR分析は、約5モル%のTHFの存在を示した。
LCMS (m/z) 284.26 (M++1)。
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ 1.39 (6H、s)、2.41 (3H、s)、4.20 (2H、s)、7.37 (1H、t、J = 7.6Hz)、7.48 (1H、s)、7.53 (1H、d、J = 7.6Hz)、7.72 (1H、d、J = 7.6Hz)、7.93 (1H、s)。
13C NMR (100MHz, CD3OD) δ 17.8、28.6 (2C)、68.9、80.6、126.7、130.9、131.2、132.5 (2C)、136.9、138.6、140.6、142.0、165.6、190.5。
【0011】
【化8】

【0012】
手順
磁力撹拌棒、還流コンデンサー、N2入口および添加漏斗を備えた三口の5Lフラスコに、4 (139.0g、0.49モル)とTHF (3.2L)を装填した。撹拌溶液に、MeMgCl (THF中22質量%、542.0g)を添加し、内部温度を40℃よりも低く保った。添加を終えたとき、バッチは、65℃で3時間加熱したところ、最終的には、暗褐色となった。この時点で、TLC分析は、反応が完了していたことを示した。バッチを氷水浴で10℃に冷却した。反応を、内部温度を20℃よりも低く保ちながら、混合物に飽和NH4Cl水溶液(1.0L;835gのNH4Clと2.5Lの水道水から調製)を滴下により添加することによって失活させた。この添加を終えた後、層を分離した。有機層を水道水(500mL)と塩水(1000mL;1kgのNaClと2Lの水道水から調製)の1:2混合物で洗浄し、層を分離した。有機層を塩水(300mL、上記のような)で洗浄し、分離し、MgSO4 (100g)上で乾燥させた。濾過後、有機層を減圧下に濃縮した。残留物を高真空下に乾燥させて162.8gの5を褐色発泡体として得た。1H NMR分析は、この物質が幾分かのEtOAcとTHFで汚染されているが、次の工程をさらに精製することなく実施するのに十分に純粋であることを示唆していた。
LCMS (m/z) 300.22 (M++1)。
1H NMR (400MHz、CD3OD) δ 1.36 (6H、s)、1.92 (3H、s)、2.16 (3H、s)、4.15 (2H、s)、6.82 (1H、s)、7.26 (1H、dd、J = 8.0、7.2Hz)、7.38 (1H、d、J = 7.2Hz)、7.57 (1H、s)、7.86 (1H、d、J = 8.0Hz)。
13C NMR (100MHz、CD3OD) δ 18.3、28.6 (2C)、29.8、68.6、73.4、80.5、118.3、126.4、129.6、129.8、131.9、136.2、137.0、145.1、147.2、167.1。
【0013】
【化9】

【0014】
手順
2Lの厚肉圧力ボトルに、5(粗生成物、162.8g)、10質量%Pd/C (25.0g)、磁力撹拌棒、4N HCl水溶液(1.35L;500mLの12N HClと1Lの水道水から調製)を装填した。ボトルを密閉し、その後、N2で掃気し、H2で379.21kPa (55psi)とし、85℃の油浴中で21時間激しく撹拌した。この時点で、1H NMRアッセイは、反応が完了していたことを示した。バッチをセライトパッド(150g;200mLのHPLC級水と一緒に充填)で濾過し、フィルターケーキを50%MeOH‐HPLC級水(1L)で洗浄した。濾液を減圧下に濃縮し、湿った残留物を乾燥MeOH (500mL×3)と一緒に同時蒸発させた。バッチをMeOH (2.0L)中に溶解し、ジオキサン(1L)中の4M HClを添加し、混合物を65℃で16時間加熱した。この時点で、HPLC分析は、反応が完了していたことを示した。加熱を中止し、バッチを減圧下に濃縮した。得られた濃厚シロップ/固形物を氷水浴内で冷却し、飽和NaHCO3水溶液(1.8L;3.1Lの水道水に溶解した450gのNaHCO3から調製)で処理した。混合物のpHは、8〜9であることが判明した。水道水(500mL)を混合物に添加し、EtOAc (2L×4)で抽出した。分離した有機層を混ぜ合せ、操作を容易にするために2つに分割した。各々を塩水(500mL;2Lの水道水に溶解した1.0kgのNaClから調製)で洗浄した。混ぜ合せた有機相を無水MgSO4 (200g)上で乾燥させ、濾過し、減圧下に濃縮させて湿った固形分を得た。この物質を、50%EtOAc‐ヘキサン(2.0L)中で16時間処理した。スラリーを濾過し、フィルターケーキを10%EtOAc‐ヘキサン(500mL)で洗浄した。高真空下に16時間乾燥させて、94.8g (79%)の6を白色粉末として得た。この濾液を減圧下に濃縮し、残留物を、10%EtOAc‐ヘキサン(300mL)で3時間処理した。固形物をフィルター上で集め、フィルターケーキを10%EtOAc‐ヘキサン(40mL)で洗浄した。高真空下に乾燥させて、9.4g (8%)の6を黄色気味の粉末として得た。
LCMS (m/z) 245.16 (M++1)。
1H NMR (400MHz、CD3OD) δ 1.55 (3H、d、J = 6.8Hz)、2.50 (3H、s)、3.87 (3H、s)、4.46 (1H、q、J = 6.8 Hz)、6.74 (1H、t、J = 1.2Hz)、7.17 (1H、dd、J = 8.0、7.6Hz)、7.26 (1H、dd、J = 8.0、1.2Hz)、7.54 (1H、dd、J = 7.6、1.2Hz)、7.57 (1H、d、J = 1.2Hz)。
13C NMR (100MHz, CD3OD) δ 16.2、21.3、35.3、52.6、117.8、126.8、128.9、131.4、133.3、136.4、137.2、143.0、146.5、171.1。
【0015】
【化10】

【0016】
手順
5Lの三口フラスコに、6(78.3g、0.32モル)、NaHCO3 (91.4g、1.09モル)、酢酸イソプロピル(705mL)および水(HPLC級、705mL)を装填した。この混合物に、氷水浴を使用して内部温度を15〜17℃に保ちながら、純クロロチオノギ酸フェニル(116.0g、0.67モル)をゆっくり添加した。添加を終えた後、バッチを周囲温度で1時間撹拌した。TLCは、反応がこの時点で完了していたことを示した。層を分離し、水性相を酢酸イソプロピル(2×100mL)で抽出した。有機層を混ぜ合せ、減圧下に45℃で濃縮した。残留物をMeOH (430mL)中に溶解し、溶液を氷水浴によって15〜20℃に冷却した。純Et3N (194.3g、1.92モル)を、温度を25℃よりも低く保ちながら添加した。添加を終えると、バッチを周囲温度で16時間撹拌した。混合物を酢酸イソプロピル(312mL)で希釈し、減圧下に45℃で濃縮して約300mL容量とした。その後、この操作を正確に繰返した。最後に、酢酸イソプロピル(156mL)を添加し、バッチを氷水浴で10〜15℃に冷却した。この混合物に、HCl水溶液(64gの12 N HClと550mLの水道水から調製)を、温度を10〜15℃に保ちながら添加した。添加を終えると、バッチを、固形物をフィルター上で集める前に、10〜15℃で2.5時間撹拌した。フィルターケーキを、冷水道水(300mL)とMTBE (200mL)で連続洗浄した。この物質の1H NMRスペクトルは、この物質がEt3N・HClで汚染されていることを示した;フィルターを、水道水(800mL)とMTBE (300mL)でさらに洗浄した。固形物を55℃の真空炉内で16時間乾燥させて、15.9g (18%)の7を得た。
LCMS (m/z) 277.15 (M++1)。
1H NMR (400MHz、DMSO‐d6) δ 1.40 (3H、d、J = 6.8Hz)、2.43 (3H、s)、3.83 (3H、s)、4.21 (1H、q、J = 6.8Hz)、6.57 (1H、s)、7.22〜7.28 (2H、m)、7.51 (1H、dd、J = 7.2、2.4Hz)、11.71 (1H、br s)、11.85 (1H、br s)。
13C NMR (100MHz、DMSO‐d6) δ 15.4、19.7、31.4、52.0、111.7、125.7、127.3、129.4、131.9、132.9、135.0、143.4、160.7、168.6。
【0017】
【化11】

【0018】
手順
サーモカップル、磁力撹拌棒、添加漏斗およびN2入口を備えた1Lの三口フラスコに、7(15.8g、57.17ミリモル)とTHF (357mL)を装填した。撹拌懸濁液に、LiBH4の溶液(THF中2M;100 mL、200ミリモル)を1度に添加した。内部温度は、添加の間、22〜23℃のままであった。引続き、MeOH (20mL)を、30分毎に4回(1回で5mL)に分けて添加した;発熱反応が各回毎に生じ、内部温度を各添加に亘って30〜36℃に留めた。MeOHの4回目の添加を終えると、バッチを30分間撹拌した。この時点で、HPLCによる分析は、反応が完了していたことを示した。混合物を氷水浴で冷却し、アセトン(90mL)を、内部温度を25〜32℃に保持するような割合で添加した。次に、6N HCl水溶液(100mL;50mLの12N HClと50mLのHPLC級水から調製)を、温度を20℃辺りに保持しながら添加した。この混合物を3Lの一口丸底フラスコに移し、HPLC級水(1.75L)を添加した。混濁混合物を周囲温度で1夜撹拌した。得られたスラリーを氷水浴内で1時間冷却し、次いで、濾過した。フィルターケーキをHPLC級水(400mL)で洗浄した。この物質の1H NMRによる分析は、この物質が純粋AGN214571であることを示したので、生成物を50℃の真空炉内で16時間乾燥させ、その後、高真空下に周囲温度で1日乾燥させた。この方法で、12.9g (91%収率)のAGN214571がオフホワイト粉末として得られた。HPLCによる分析は、100A%を示した。正式な分析は、分析研究所によって実施した。
1H NMR (400MHz、DMSO‐d6) δ 1.40 (3H、d、J = 6.8Hz)、2.46 (3H、s)、4.20 (1H、q、J = 6.8Hz)、6.58 (1H、s)、7.19〜7.24 (2H、m)、7.51 (1H、dd、J = 6.4、3.2Hz)、11.74 (1H、s)、11.87 (1H、s)。
【0019】
上記の合成は、下記のように要約し得る:
【化12】

【0020】
使用方法
本発明の化合物は、慢性疼痛を治療するのに使用し得る。本明細書において使用するとき、“治療”するとは、医学的に処置することを意味する。治療は、本発明の化合物を投与して疼痛を予防すること並びに疼痛の重篤度を緩和することを包含する。
【0021】
疼痛は、2つのタイプ、即ち、慢性および急性がある。“急性疼痛”は、突然発症を有する短期間の疼痛である。急性疼痛の1つのタイプは、例えば、切傷または熱傷によって生じるような皮膚または他の表面組織への損傷に対して感じる皮膚痛である。皮膚侵害受容器は、皮膚の直下で終端し、高濃度の神経終末故に、短期間の明確な局部的疼痛を発生させる。“慢性疼痛”は、急性疼痛以外の疼痛である。
【0022】
本発明の化合物は、慢性疼痛を治療するのに使用し得る。慢性疼痛としては、神経因性疼痛、炎症性疼痛、頭痛、体性痛、内臓痛および関連痛がある。
I. 神経因性疼痛
本発明の化合物は、神経因性疼痛を治療するのに使用し得る。神経因性疼痛としては、神経痛、求心路遮断、複合性局所疼痛症候群、およびニューロパシーに関連する疼痛がある。
【0023】
1.神経痛
神経痛は、1以上の特定の神経の進路に沿って放射状に広がり、通常、神経構造内の明白な病理変化を何ら伴わない疼痛である。神経痛の原因は多様である。化学的刺激、炎症、外傷(手術を含む)、近隣組織(例えば、腫瘍)による圧迫、および感染症は、すべて、神経痛をもたらし得る。しかしながら、多くの場合、原因は、未知であるかまたは特定し得ない。神経痛は、高齢者において最も一般的であるが、いずれの年齢においても発症し得る。神経痛としては、例えば、三叉神経痛、脊髄狭窄、ヘルペス後神経痛、舌咽神経痛、神経絞扼障害に関連する疼痛、坐骨神経痛および非定型顔面痛がある。
【0024】
2.求心路遮断
求心路遮断は、身体の一部からの感覚入力の喪失であり、末梢知覚線維または神経いずれかの中枢神経系からの遮断によって生じ得る。求心路遮断疼痛症候群としては、例えば、卒中後疼痛、幻想痛および対麻痺がある。
【0025】
3.複合性局所疼痛症候群(CRPS)
CRPSは、2つの形態を有する慢性疼痛症候群である。CRPS1は、現在、用語“反射性交感神経性ジストロフィー症候群”と置換わっている。CRPS1は、軽度または重度の損傷後の腕または脚において最も頻繁に発症する慢性神経障害である。CRPS1は、重篤な疼痛;爪、骨および皮膚の変化;および、患部手足における触られたときの感受性の増大に関連している。CRPS2は、灼熱痛なる用語に置換わっており、確認された神経に対する損傷に由来する。
【0026】
4.ニューロパシー
ニューロパシーは、神経における機能的または病的変化であり、臨床的には、感覚または運動ニューロン異常に特徴を有する。中枢ニューロパシーは、中枢神経系における機能的または病的変化である。
末梢ニューロパシーは、1以上の末梢神経における機能的または病的変化である。いずれの症状も、本発明の化合物によって治療することのできる疼痛に至り得る。
【0027】
ニューロパシーの幾つかの原因としては、シャルコー・マリー・ツース病、フリードライヒ失調症のような遺伝性障害;糖尿病、食事性欠乏症(特に、ビタミンB‐12欠乏症)、過剰アルコール摂取、尿毒症および癌のような全身または代謝症状;AIDS、肝炎、およびジフテリアのような感染性症状;工業過程において使用する溶媒、重金属(鉛、ヒ素、水銀等)のような毒性化合物への暴露;および、化学療法がある。
【0028】
ニューロパシーは、単一の神経または神経群に対する機能的または病的変化(モノニューロパシー)或いは複数の神経に影響を与える機能的または病的変化(ポリニューロパシー)を含み得る。他のタイプのニューロパシーとしては、汎発性末梢ニューロパシー、遠位軸索症、髄鞘障害、神経細胞傷害および焦点絞扼性ニューロパシーがあり、これらは、全て、本発明の化合物によって治療することのできる慢性疼痛に至り得る。
【0029】
II. 炎症性疼痛
本発明の化合物は、以下の症状のいずれかに関連する慢性疼痛を治療するのに使用し得る:関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、痛風性関節炎、強皮症、骨関節炎、乾癬性関節炎、および強直性脊髄炎のような関節炎;脊椎関節炎および皮膚筋炎のような結合組織障害;慢性炎症性疼痛をもたらす組織または関節の伸張のような損傷;感染症;上腕神経炎および球後ニューロパシーのような神経炎;前庭神経炎;および、滑液包炎または腱炎によって生じる炎症のような関節の炎症。
【0030】
III. 頭痛
本発明の化合物は、以下の頭痛症状のいずれかに関連する慢性疼痛を治療するのに使用し得る。頭痛(headache(cephalgia))は、頭の軽微乃至重篤な疼痛の症状である。頭痛は、局所または全身的基礎疾患を示し得、或いは障害それ自体であり得る。頭痛の例としては、緊張性頭痛のような筋肉/筋原性頭痛;片頭痛、群発頭痛、および高血圧に由来する頭痛のような血管性頭痛;卒中または副鼻腔感染症のような他の疾患に由来するけん引性および炎症性頭痛;ホルモン頭痛;反跳性頭痛(薬剤誘発性頭痛);慢性副鼻腔炎頭痛;器質性頭痛;および、発作性頭痛がある。
【0031】
IV. 体性痛
本発明の化合物は、以下の体性痛症状のいずれかに関連する慢性疼痛を治療するのに使用し得る:捻挫または筋違いによって生じる緊張のような過度の筋緊張;手、手首、肘および肩の酷使に由来する障害のような反復運動障害;多発性筋炎、皮膚筋炎、狼瘡、線維筋痛、筋肉痛、リウマチ性多発性筋痛、マクロファージ性筋膜炎(macrophagic myofasciitis)および横紋筋融解症のような筋障害;および、神経および神経筋障害に続発する筋肉疼痛。
【0032】
V. 内臓痛
本発明の化合物は、以下の内臓痛症状のいずれかに関連する慢性疼痛を治療するのに使用し得る。内臓痛は、身体の内臓または組織に由来する。内臓痛の例としては、以下がある:機能性過敏性腸症候群、機能性腹痛、機能性便秘、機能性消化不良、機能性胃食道逆流症および非心臓性胸痛に関連する疼痛のような機能性内蔵痛;胃炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、憩室炎および胃腸炎のような慢性胃腸炎症に関連する疼痛;および、間質性膀胱炎、尿路感染症、膵炎およびヘルニアに関連する疼痛。
【0033】
VI. 異痛
A求心性線維(A‐ベータおよびA‐デルタ線維)は、C線維よりも低い閾値において刺激され得、慢性疼痛の痛覚に関与しているようである。正常な状態においては、これら線維の低閾値刺激(例えば、軽度のブラシ掛けまたはくすぐり)は痛みを伴わない。神経損傷後のまたは帯状疱疹として知られるヘルペスウィルス介在症状における症状のようなある種の症状においては、そのような軽度の接触でさえの適用或いは衣類のブラシ掛けは、極めて痛みを伴い得る。この症状は、異痛症と称され、A-ベータ求心性神経が少なくとも部分的に介在しているようである。また、C線維は慢性疼痛の痛覚にも関与し得るが、そうである場合、ニューロンの持続的発火が、時間とともに、慢性疼痛の痛覚を直ちに生じるある種の変化をもたらすことは明白なようである。異痛に関連する慢性疼痛は、本発明の化合物によって治療し得る。
【0034】
製剤化および投与
本発明の化合物は、医薬組成物として製剤化し得る。“医薬組成物”とは、本明細書において使用する場合、疾患の治療のためにヒト患者に投与するのに適する組成物を意味する。従って、1つの実施態様においては、本発明の化合物は、製薬上許容し得る塩として製剤化し、さらに、1種以上の製薬上許容し得る賦形剤を含む。
【0035】
“製薬上許容し得る塩”とは、親化合物の活性を保持し、親化合物と比較して、投与する対象者に対してまた投与するのに関連して何らさらなる有害なまたは厄介な作用を与えない任意の塩である。また、製薬上許容し得る塩は、酸、他の塩、または酸もしくは塩に転換するプロドラッグの投与の結果として生体内で生じ得る任意の塩も称する。酸性官能基の製薬上許容し得る塩は、有機または無機塩基から誘導し得る。塩は、一価または多価イオンを含み得る。特に興味あるのは、無機イオンのリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムである。有機塩は、アミン類、特に、モノ‐、ジ‐およびトリ‐アルキルアミンまたはエタノールアミンのようなアンモニウム塩によって製造し得る。また、塩は、カフェイン、トロメタミンおよび同様な分子によっても形成し得る。塩酸またはある種の他の製薬上許容し得る酸は、アミンまたはピリジン環のような塩基性基を含む化合物と塩を形成し得る。
【0036】
また、本発明の化合物は、プロドラッグとして製剤化し得る。“プロドラッグ”は、投与後に治療活性化合物に転換する化合物であり、この用語は、本明細書においては、当該技術において一般的に理解されているように広く解釈すべきである。本発明の範囲を限定するつもりはないが、転換は、エステル基またはある種の他の生物学的に不安定な基の加水分解によって生じ得る。一般的には(必然的ではなく)、プロドラッグは、転換する治療活性化合物よりも不活性であるかまたはあまり活性でない。本明細書において開示する化合物のエステルプロドラッグを、特に意図する。限定するつもりはないが、エステルは、アルキルエステル、アリールエステルまたはヘテロアリールエステルであり得る。用語アルキルとは、当業者が一般的に理解している意味を有し、線状、枝分れまたは環状アルキル成分を称する。エステルのアルキル成分が1〜6個の炭素原子を有し、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、sec‐ブチル、イソ‐ブチル、t‐ブチル、ペンチル異性体、ヘキシル異性体、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよび1〜6個の炭素原子を有するこれらの組合せ等を包含するC1‐6アルキルエステルは、特に有用である。
【0037】
本発明の化合物は、経口、経皮、局所、腹腔内、非経口、皮下、鼻腔内、髄腔内、筋肉内、静脈内および直腸内投与し得る。
“製薬上許容し得る賦形剤”とは、本発明の化合物を投与するビヒクルを含む成分を称する。賦形剤は、通常、不活性である。これらの賦形剤の選択は、薬物を如何にして投与すべきかによる。本発明の化合物は、経口投与または非経口投与または吸入に適する粉末、ピル、錠剤等として、或いは、溶液、エマルジョン、懸濁液、エアゾール、シロップまたはエリキシル剤として製剤化し得る。
【0038】
固形の投与剤形または医薬品用には、無毒性固形担体として、限定するものではないが、製薬級のマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン酸ナトリウム、ポリアルキレングリコール、タルカム、セルロース、グルコース、スクロースおよび炭酸マグネシウムがある。固形投与剤形は、コーティーングしてなくてもよく、或いは、既知の方法によってコーティーングして胃腸管内での崩壊および吸収を遅延させ、それによって、長期に亘る持続作用を付与し得る。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような時間遅延物質を使用し得る。また、固形投与剤形は、米国特許第4,256,108号、第4,166,452号および第4,265,874号に記載された方法によってコーティーングして、制御放出用の浸透性治療用錠剤を調製することもできる;上記各米国特許の内容は、参考として本明細書に合体させる。
【0039】
薬物投与可能な液体投与剤形は、例えば、例えば水、生理食塩水、含水デキストロース、グリセリン、エタノール等のような担体中の1種以上の現在有用な化合物と任意成分としての製薬用アジュバントの溶液または懸濁液を含み、それによって、溶液または懸濁液を調製することができる。必要に応じて、投与すべき医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤等のような少量の無毒性補助物質もまた含有し得る。そのような助剤の典型的な例は、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等である。そのような投与剤形の実際の調製方法は、既知であり、当業者にとっては明白であろう;例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 16th Edition, 1980を参照されたい。投与すべき製剤組成物は、いずれにしても、一定量の1種以上の現在有用な化合物を所望の治療効果を与える有効量で含有する。
【0040】
本発明の化合物は、医薬的に有効な投与量で投与し得る。そのような投与量は、通常、所望の治療効果を達成するのに必要な最小投与量である;慢性疼痛の治療においては、この量は、おおよそ、その疼痛によって生じた不快症状を許容し得るレベルまで軽減するのに必要な量である。成人においては、そのような投与量は、一般的には約0.01〜50mg/kg/日の範囲内、多くの場合0.05〜25mg/kg/日の範囲内であろう。しかしながら、与えられたいずれの症例においても投与すべき化合物の実際の量は、疼痛の重篤度、患者の年齢および体重、患者の一般的身体状況、疼痛の原因および投与経路のような関連状況を勘案する医師が決定することであろう。
【0041】
最も有効な疼痛緩和薬物は、最も重く鎮静性でもある。対照的に、本発明の化合物は、非鎮静性またはほんの最低限に鎮静性である投与量において、疼痛を有効に緩和することができる。“鎮静性”とは、本明細書において使用する場合、スタンフォード眠気尺度(Stanford Sleepiness Scale)において3以上の点数によって説明されるレベルの鎮静を生じさせることを意味する。“非鎮静性”または“最低限に鎮静性”とは、スタンフォード眠気尺度において3以下の点数によって説明されるよりも僅かな鎮静しか生じさせないことを意味する。この広く使用されている覚醒度(alertness)測定法においては、患者は、目を閉じて1分間静かに座り、その後、下記に説明するような8項目の説明の1つを使用して覚醒度の現状を説明する:

表1:スタンフォード眠気尺度

【0042】
1つの実施態様においては、化合物I (またはその鏡像体の片方もしくは双方)を、スタンフォード眠気尺度において1よりも高くない眠気点数をもたらす投与量で患者に投与して慢性疼痛を治療する。もう1つの実施態様においては、化合物I (またはその鏡像体の片方もしくは双方)を、スタンフォード眠気尺度において2よりも高くない眠気点数をもたらす投与量で患者に投与して慢性疼痛を治療する。もう1つの実施態様においては、化合物I (またはその鏡像体の片方もしくは双方)を、スタンフォード眠気尺度において3よりも高くない眠気点数をもたらす投与量で患者に投与して慢性疼痛を治療する。
【0043】
高投与量においては、本発明の化合物は、鎮静性である。従って、もう1つの実施態様においては、化合物I (またはその鏡像体の片方もしくは双方)を、スタンフォード眠気尺度において4以上の眠気点数をもたらす投与量で患者に投与して慢性疼痛を治療する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記に示す化合物を含むことを特徴とする医薬組成物:
【化1】


【請求項2】
前記組成物が、下記に示す化合物を含む、請求項1記載の医薬組成物:
【化2】


【請求項3】
前記組成物が、下記に示す化合物を含む、請求項1記載の医薬組成物:
【化3】


【請求項4】
疼痛の治療を必要とする患者に、下記に示す化合物を含む医薬組成物を投与することを特徴とする、疼痛の治療方法:
【化4】


【請求項5】
疼痛が、慢性疼痛である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
慢性疼痛が、神経因性疼痛である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
慢性疼痛が、線維筋痛症に関連する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
慢性疼痛が、異痛である、請求項5記載の方法。
【請求項9】
疼痛が、内臓痛である、請求項4記載の方法。
【請求項10】
前記医薬組成物の投与が、前記患者を鎮静させない、請求項4記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、下記に示す化合物を含む、請求項4記載の方法。
【化5】


【請求項12】
前記組成物が、下記に示す化合物を含む、請求項4記載の方法。
【化6】



【公表番号】特表2012−518005(P2012−518005A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550268(P2011−550268)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/024083
【国際公開番号】WO2010/093910
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(390040637)アラーガン インコーポレイテッド (117)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】