説明

4−ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体を生産する細菌

【課題】 4-ヒドロキシ安息香酸、または4-ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル体を生産する微生物を単離する。
【解決手段】 ミクロバルビファー属に属し、ヒドロキシ安息香酸生産能またはそのエステル体生産能を有する細菌、及びその細菌を用いたヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー素材として化学・電気産業界で広く使われている4-ヒドロキシ安息香酸(p-ヒドロキシ安息香酸)、または、安全な抗菌剤として化粧品・食品業界で広く使われている4-ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル体を生産することのできる細菌、及び、この細菌を利用した4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体の製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
4-ヒドロキシ安息香酸(p-ヒドロキシ安息香酸;4-hydroxybenzoic acid;以後、4HBAと略称することがある)は、液晶ポリマー等のポリマー合成用原料として広く用いられている。本化合物は、フェノールのカリウム塩と加圧化で二酸化炭素と反応させるといった化学合成法により製造されている(14102の化学商品、2002年1月29日発行、化学工業日報社発行 参照)。本製造法は、高アルカリ・高圧化での環境負荷の高い化学反応プロセスであるため、これをバイオプロセスに置き換えうる製造法が望まれていた。4-ヒドロキシ安息香酸(4HBA)を生産する微生物は知られていなかったため、代謝工学的に代謝経路を改変した遺伝子組換え細菌により、4HBAを合成させる研究が行われている(非特許文献1)。すなわち、BarkerとFrostは、大腸菌における芳香族アミノ酸の合成経路(シキミ酸経路)を代謝工学的に増強すると共に、本経路の共通の最終前駆体であるコリスミン酸(chorismic acid;chorismate)から4HBAを合成するコリスミン酸リアーゼ遺伝子(chorismate lyase;ubiC)を導入・発現させることにより、大腸菌に4HBAを合成させることに成功した(非特許文献1)。しかしながら、大腸菌は本来4HBAを生産する宿主でないため、合成された4HBAによる組換え大腸菌内の物質代謝や菌の生育に対する毒性が報告されている(非特許文献1)。したがって、元々から4HBAを生産できる微生物が望まれていたが、そのような微生物の報告は無かった。
【0003】
4-ヒドロキシ安息香酸(4HBA)のアルキルエステル体(パラベン;parabenとも呼ばれている)は、4HBAを原料として酸性下で化学合成されている。本エステル体は、安全な抗菌剤として化粧品・食品業界で広く使われており、特に、4HBAのメチル、エチル、プロピル、ブチルエステル体(それぞれ、methyl-、ethyl-、propyl-、butyl-parabenと呼ばれる)が化粧品業界では最も広く用いられている(T. E. Haag, D. F. Loncrini, Esters of para-hydrocybenzoic acid, Cosmet. Sci. Technol. 1: 63-77 (1984) 参照)。また、メチルパラベンやプロピルパラベンは、0.1%以下の濃度で用いる場合、GRAS(generally recognized as safe)として安全性が確認されている(前述のT. E. Haag, D. F. Loncriniによる文献参照)。元々からこのような4HBAのエステル体(パラベン)を作る微生物があれば、バイオプロセスによるパラベン生産の可能性が開けるが、そのような微生物の報告は無かった。また、パラベンが抗菌剤であるためか、代謝工学的に改変した組換え微生物によるパラベン生産の報告も無かった。
【0004】
【非特許文献1】J. L. Barker, J. W. Frost, Microbial synthesis of p-hydroxybenzoic acid from glucose. Biotechnol. Bioeng. 76: 376-390 (2001).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、4-ヒドロキシ安息香酸(4HBA)、さらには、4HBAのアルキルエステル体(パラベン)を生産する微生物を単離することである。そのような微生物が見つかれば、4HBAまたはパラベンをバイオプロセスにより生産する道を開くことができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ミクロバルビファー(Microbulbifer)属細菌が4-ヒドロキシ安息香酸(4HBA)を生産できることを見出した。その中でも、ホヤから単離されたミクロバルビファー属A4B-17株が、他のミクロバルビファー属細菌より多量の4HBAを合成していることを見出し、さらに、A4B-17株が抗菌活性のあるいくつかのアルキルエステル体(パラベン)を合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。本課題を達成したことにより、4HBAだけでなくそのエステル体を作る細菌が世の中に存在することが初めて明らかになったのである。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(6)を提供するものである。
(1)配列番号1記載の塩基配列で表される16S rRNA遺伝子を持ち、且つ4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体を生産する細菌。
(2)配列番号1記載の塩基配列と98%以上同一の塩基配列で表される16S rRNA遺伝子を持ち、且つ4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体を生産する細菌。
(3)4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体生産能を有するミクロバルビファー属(Microbulbifer sp.)A4B-17株。
(4)(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の細菌を培養し、培地中に4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体を生産させ、それを採取することを特徴とする4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体の製造方法。
(5)配列番号1記載の塩基配列と94%以上同一の塩基配列で表される16S rRNA遺伝子持ち、且つ4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体生産能を有する細菌を培養し、培地中に4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体を生産させ、それを採取することを特徴とする4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体の製造方法。
(6)ミクロバルビファー(Microbulbifer)属に属し、ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体生産能を有する細菌を培養し、培地中に4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体を生産させ、それを採取することを特徴とする4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
今回、4-ヒドロキシ安息香酸(4HBA)やそのアルキルエステル体(パラベン)を生産する細菌を見出したことにより、突然変異処理による産物収量の増大、或いは代謝工学的改変による産物収量の増大、さらには、培養条件等の生産プロセスの最適化を通して、4HBAまたはパラベンをバイオプロセスにより多量生産する道を開くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の細菌は、配列番号1記載の塩基配列と同一又は98%以上同一の塩基配列で表される16S rRNA遺伝子を持ち、且つ4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体を生産する細菌である。
本発明の細菌の一例としては、ミクロバルビファー属A4B-17株を挙げることができる。この菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに受託番号NITE P-100として寄託されている(寄託日:平成17年6月14日)。また、この菌株の菌学的性質は、後述する実施例1に示す通りであり、16S rRNA遺伝子の塩基配列は、配列番号1に示す通りである。
【0010】
本発明の細菌には、上述したミクロバルビファー属A4B-17株のほかに、この菌株と類似する菌株も含まれる。類似する菌株には、ミクロバルビファー属A4B-17株と同様にホヤから分離された菌株やミクロバルビファー属A4B-17株の菌学的性質と完全に同一な性質又は実質的に同一な性質を示す菌株も含まれる。
【0011】
本発明の細菌を増殖させるには、通常の培養法が挙げられる。培養は、嫌気的あるいは好気的条件で行うことができる。有機物、無機塩、窒素源、その他栄養源を含むマリンブロス(Bacto Marine Broth 2216、Difco社製)培地等に本発明の細菌を接種し、振とう培養法などにより培養を行う。
【0012】
上記培養における温度条件は、使用する細菌の生育温度の範囲、好ましくは最適生育温度の範囲に設定する。例えば25〜30℃、好ましくは30℃に設定することができる。なお、培地のpHは、7.0〜8.0の範囲に設定すればよい。
無機塩として培地に添加する物質としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、その他必要に応じて微量金属塩が挙げられる。また、窒素源としては、本発明の細菌が資化し得るものであればよく、例えば、ペプトン、カシトン、尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、各種アミノ酸などが挙げられる。これらの窒素源は1種でもよく、2種以上を適宜組み合わせても良い。さらに、本発明の細菌の増殖を促進するための栄養源として、ビタミンなどを適量添加しても良い。
【0013】
培養時間は、栄養源の量や種類により異なるが、通常3日以上、好ましくは3〜8日間である。
本発明の4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体の製造方法は、前記物質の生産能を有する細菌を培養し、培地中に前記物質を生産させ、前記物質を採取することを特徴とするものである。
【0014】
細菌としては、上述した本発明の細菌を使用することができ、また、配列番号1記載の塩基配列と94%以上同一の塩基配列で表される16S rRNA遺伝子を持つ細菌やミクロバルビファー属に属する細菌を使用することもできる。
細菌の培養方法は、上述した本発明の細菌と同様の培養方法でよい。培地中から4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体の採取は、微生物の生産物を分離する際に常用される方法で行うことができる。
【0015】
本発明の方法によって製造可能な4-ヒドロキシ安息香酸エステルとしては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸ブチル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘプチル、4-ヒドロキシ安息香酸ノニルなどを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明について具体的に説明する。もっとも、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0017】
〔実施例1〕海洋細菌A4B-17株の単離および系統的、生理学的な性質の決定
A4B-17株は、ホヤから海水と0.1%のアラニンを含む培地を用いて分離された海洋細菌である。A4B-17株の16S rRNA断片は、プライマー27Fと1492R (Lane, 1991)を用いて増幅し、SuprecTM-02 cartridge (Takara, 京都, 日本)で精製した。精製断片はBigDye terminator cycle sequencing kit v. 3.1 (Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて反応を行い、その塩基配列はApplied Biosystems 3730 genetic analyzerで決定した。16S rDNA配列の系統樹はオンラインソフト(http://www.mbio.ncsu.edu/BioEdit/bioedit.html)を用いて作製した(図1)。この菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列を配列番号1に示した。この配列による分子系統解析の結果、A4B-17株はMicrobulbifer hydrolyticus IRE-31およびMicrobulbifer salipaludis SM-1と95%の相同性を、Microbulbifer elongatus ATCC 10144と94%の相同性を示した。16S rRNA遺伝子についてA4B-17株と高い相同性を示す種が存在しないことから、この菌株を新種であると判断した。
【0018】
また、A4B-17株の細菌学的性質については以下の通りである。
【0019】
(a)形態
細胞の形および大きさ:球形〜長桿形、0.3−0.5 20x0.5−5.0μm
細胞の多形性の有無:有り
運動性の有無、鞭毛の着生状態:無し、あるいは単極毛
胞子の有無:無し
グラム染色性:陰性
抗酸性の有無:無し
【0020】
(b)各培地における生育状況
マリンアガー平板培養:良好に生育、コロニーは円形、凸円状、鋸歯状、湿光、薄茶褐色
マリンアガー斜面培養:良好に生育、糸状、薄茶褐色
マリンブロス培養:良好に生育、均質に濁る。
マリンブロスゼラチン穿刺培養:液化しない。(生育が悪い)
【0021】
(c)生理学的性質
硝酸塩の還元:還元する。
インドールの生成:生成しない。
でんぷんの加水分解:分解する。(弱い)
クエン酸の利用:Simmons培地 利用する。
色素の生成:無し
ウレアーゼ活性:陰性
オキダーゼ活性:陽性
カタラーゼ活性:陽性
生育温度範囲:15〜37℃
生育pH範囲:pH 5.5〜9.5、最適生育pH範囲 7.5〜8.5
酸素に対する態度:好気性または通性嫌気性
DNAの分解:あり(弱い)
好塩性:あり 生育塩濃度範囲1〜3%
β-ガラクトシダーゼ:陰性
GC含量(モル%):52.4%
イソプレノイドキノン:Q8, 83.9%; Q7, 9.1%
脂肪酸組成: 9:0, 0.8%; 10:0, 2.9%; 11:0 iso, 10.7%; 11:0, 1.0%; 10:0 2OH, 1.0%; 10:0 3OH, 2.8%; 12:0, 14.2%; 11:0 iso 3OH, 27.3%; 11:0 3OH, 1.4%; 13:0 iso, 5.8%; 12:0 3OH, 4.8%; 14:0, 0.6%; 13:0 iso 3OH, 0.6%; 15:0 iso, 5.0%; 16:0, 6.6%; 17:1 iso v9c, 3.7%; 17:0 iso, 2.3%; 17:0, 0.6%; 18:1 v7c, 3.3%; 17:0 iso 3OH, 1.1%.
上記の菌学的性質および分子系統解析の結果から本菌株をミクロバルビファー属細菌(Microbulbifer sp.)と同定した。そして、この菌株をミクロバルビファー属(Microbulbifer sp.)A4B-17株とし、平成17年6月14日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターにNITE P-100として寄託した。以上の菌学的性質からバージーズ・マニュアル・オブ・デターミネイティブ・バクテリオロジーの分類基準に従って公知の菌種と比較した。本菌は好気性グラム陰性桿菌であり、好塩性で、生育に1〜3%のナトリウムを要求する。
【0022】
参考文献:
Lane, D.J. (1991) 16S/23S rRNA sequencing. In: Stackebrandt, E., Goodfellow, M. (eds) Nucleic acid techniques in bacterial systematics. Wiley, New York, pp 115-175.
【0023】
〔実施例2〕電子顕微鏡による形態観察
形態観察は、培地にA4B-17株を植菌し、30℃で24〜48時間培養した後に光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡を用いて行った。培地は、マリンアガー(Bacto Marine Agar 2216, Difco社製)あるいはマリンブロス(Bacto Marine Broth 2216, Difco社製)を用いた(図2)。
【0024】
〔実施例3〕A4B-17株の二次代謝産物の同定
A4B-17株を50 ml のMarine Browth (Difco)で30℃にて7日間培養し、毎日サンプリングした。サンプル100 μlに対し酢酸エチル 150 μl、3N塩酸10 μlを加えボルテックス攪拌を行い、15,000 rpmで5分間遠心し、上清の酢酸エチル相を回収後乾固した。次に、トリメチルシリル化剤(ジーエルサイエンス(株))でトリメチルシリル化してガスクロマトグラフィーマススペクトル(GC-MS)用サンプルとした。GC-MSは島津のmodel QP5050A、カラムはJ&W Scientific社製のDB-5 column(30 x0.25mm)を使用した。カラム温度は最初50℃で5分間を保った後、300℃まで10℃/分の速度で昇温し、300℃で4分間を保った(1サンプルにつき計34分の測定条件)。注入温度と検出温度は300℃であった。GC-MSの結果は表1に示す。培養液から四つの産物が検出され、標品の保持時間とマススペクトルとの比較によりそれぞれ4-ヒドロキシ安息香酸(4-hydroxybenzoic acid;p-hydroxybenzoic acid;4HBA), ブチル(butyl)4HBA, ヘプチル(heptyl)4HBA, ノニル(nonyl)4HBAと決定された。
【0025】
【表1】

【0026】
〔実施例4〕高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析による二次代謝産物の定量
サンプル200 μlを等量にメタノールと混ぜて遠心分離後、HPLCの分析に供した。HPLCはウオーターズ社(Waters)のアライアンス(Alliance)、カラムはオクタドデシルシリカ逆相カラム(Prep Nova-Pak HR C18 6 μm, 3.9 x 300 mm, Waters)を用いた。流速は1 ml/分であった。サンプル注入後10%の溶媒A(0.1% トリフロロ酢酸)で2分間流した後、溶媒B(アセトニトリル)で100%までのグラジエントをかけた。100%の溶媒B で5分間流した。検出には255 nmを測定した。HPLCを用いてそれぞれの生成量を決定した結果、A4B-17株は10 mg/literの4HBA、24 mg/literのブチル4HBA、0.4 mg/literのヘプチル4HBA、及び6 mg/literのノニル4HBAを生産していることが明らかとなった(図3)。
【0027】
〔実施例5〕A4B-17株によるBacillus subtilis subsp. subtilis IFO 13719Tの増殖阻止円
1/10LB寒天培地をオートクレーブし、45℃まで冷やした。一晩培養したBacillus subtilis subsp. subtilis IFO 13719Tを200μl添加して均一に混ぜ、プレートに注いだ。このプレートの表面にマリンブロスで一晩培養したA4B-17株の培養液を一滴落とし、一晩30℃にて培養した。図4に示したように、A4B-17の周辺に阻止円を形成した。これはA4B-17株が生産した4HBAのアルキルエステルがB. subtilis subsp. subtilis IFO 13719Tの増殖を阻害したと考えられる。
【0028】
[実施例6]他のミクロバルビファー(Microbulbifer)属細菌による4-ヒドロキシ安息香酸(4HBA)の生産
本発明者らは、4種類の ミクロバルビファー(Microbulbifer)属の標準株、すなわち、Microbulbifer maritimus JCM12187T (Yoon et al. 2004), Microbulbifer elongatus DSM6810T (Yoon et al. 2003), Microbulbifer salipaludis JCM11542T (Yoon et al. 2004), および Microbulbifer hydrolyticus ATCC700072T (Gonzalez et al. 1997)を各コレクションセンターより集めた。それらをマリンブロス(Bacto Marine Broth 2216, Difco)培地で生育させた後、[実施例4]で記述した方法で4HBAの生産量を測定した。その結果、これらの4株のいずれも4HBAを蓄積していることが明らかとなった。これら4株の4HBAの生産量は、ミクロバルビファー属(Microbulbifer sp.)A4B-17株の生産量を100%(10 mg/liter)とし、Microbulbifer maritimus JCM12187T は18.2%(1.82 mg/liter), Microbulbifer elongatus DSM6810Tは0.2%(0.02 mg/liter), Microbulbifer salipaludis JCM11542T は8.2%(0.82 mg/liter), Microbulbifer hydrolyticus ATCC700072Tは1.5%(0.15 mg/liter)であった。
【0029】
参考文献:
1. Yoon, J. H., Kim, I. G., Oh, T. K. and Park, Y. H. (2004) Microbulbifer maritimus sp. nov., isolated from an intertidal sediment from the Yellow Sea, Korea. Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 54: 1111-1116.
2. Yoon, J. H., Kim, H., Kang, K. H., Oh, T. K. and Park, Y. H. (2003) Transfer of Pseudomonas elongata Humm 1946 to the genus Microbulbifer as Microbulbifer elongatus comb. nov. Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 53: 1357-1361.
3. Gonzalez, J. M., Mayer, F., Moran, M. A., Hodson, R. E. and Whitman, W. B. (1997) Microbulbifer hydrolyticus gen. nov., sp. nov., and Marinobacterium georgiense gen. nov., sp. nov., two marine bacteria from a lignin-rich pulp mill waste enrichment community. Int. J. Syst. Bacteriol. 47: 369-376.
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】16S rRNA配列に基づいてneighbor-joining法により作成された、Alteromonadaceae科に属するミクロバルビファー属A4B-17株(Microbulbifer sp. A4B-17)及びその近縁細菌の系統樹を表わす図。系統樹的距離はKimura 2-パラメータにより算定された。1,000シュミレーション後のBootstrap パーセントが示されている。バーの長さは2% estimated sequence divergenceを表す。
【図2】A4B-17株の電子顕微鏡写真。
【図3】A4B-17株による4-ヒドロキシ安息香酸(4HBA)とそのエステル体の生産状況を表わす図。
【図4】A4B-17株によるBacillus subtilis subsp. subtilis IFO13719Tの阻止円を表わす図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1記載の塩基配列で表される16S rRNA遺伝子を持ち、且つ4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体を生産する細菌。
【請求項2】
配列番号1記載の塩基配列と98%以上同一の塩基配列で表される16S rRNA遺伝子を持ち、且つ4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体を生産する細菌。
【請求項3】
4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体生産能を有するミクロバルビファー属(Microbulbifer sp.)A4B-17株。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の細菌を培養し、培地中に4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体を生産させ、それを採取することを特徴とする4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体の製造方法。
【請求項5】
配列番号1記載の塩基配列と94%以上同一の塩基配列で表される16S rRNA遺伝子を持ち、且つ4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体生産能を有する細菌を培養し、培地中に4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体を生産させ、それを採取することを特徴とする4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体の製造方法。
【請求項6】
ミクロバルビファー(Microbulbifer)属に属し、ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体生産能を有する細菌を培養し、培地中に4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体を生産させ、それを採取することを特徴とする4-ヒドロキシ安息香酸またはそのエステル体の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−222118(P2007−222118A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49565(P2006−49565)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、生物機能活用型循環産業システム創造プログラム/ゲノム情報に基づいた未知微生物遺伝資源ライブラリーの構築 委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(591001949)株式会社海洋バイオテクノロジー研究所 (33)
【Fターム(参考)】