説明

4−置換アゼチジノン誘導体の製造法

【課題】 本発明は、環境衛生上の問題を起こすことなく、カルバペナム系抗生物質を合成するための中間体であるアゼチジノン化合物を工業的に有利に製造し得る方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、一般式(1)
【化1】


[式中、R1は、水素原子、又は水酸基の保護基を示す。R2は、水素原子、又はカルボン酸の保護基を示す。]
で表される6−ヒドロキシエチルペナム化合物を電解酸化し、更に必要に応じて塩基で処理することにより、一般式(2)
【化2】


[式中、R1及びR2は前記に同じ。Xは、ハロゲン原子又はアルコキシ基を示す。]
で表されるアゼチジノン化合物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゼチジノン化合物の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般式(2)
【0003】
【化1】

[式中、R1は、水素原子、又は水酸基の保護基を示す。R2は、水素原子、又はカルボン酸の保護基を示す。Xは、ハロゲン原子又はアルコキシ基を示す。]
で表されるアゼチジノン化合物は、一般に広く用いられているカルバペナム系抗生物質を合成するための中間体として有用である(特許文献1)。特に、4位に脱離基を有するアゼチジノン化合物は、カルバペナム系抗生物質の製造原料として重要な化合物である。
【0004】
上記一般式(2)で表されるアゼチジノン化合物のうち、Xがハロゲン原子を示す化合物は、例えば、下記反応式−1に示すように、式(3)で表される化合物を塩素化することにより製造されている(非特許文献1)。
【0005】
【化2】

[式中、R1aは、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基を示す。]
しかしながら、この方法では、塩素化の際に塩素ガスを直接取り扱う必要があり、また反応溶媒として有毒な四塩化炭素を使用しなければならず、環境衛生上の見地から、実用的な製造方法ではない。
【0006】
また、上記一般式(2)で表されるアゼチジノン化合物のうち、Xがアルコキシ基を示す化合物は、例えば、非特許文献2に記載の方法により製造されている。
【0007】
しかしながら、非特許文献2に記載の方法では、メトキシ基を所定の置換位置に選択的に導入することができず、それ故、所定位置にメトキシ基が導入された目的とするアゼチジノン化合物が低収率で得られるに過ぎない。従って、非特許文献2に記載の方法も、実用的な方法ではない。
【特許文献1】米国特許第4841043号明細書
【非特許文献1】Tetrahedron Letters, Vol.22, No.36, pp3485-3488, 1981
【非特許文献2】Tetrahedron Letters, Vol.29, No.12, pp1409-1412, 1988
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、一般式(2)で表されるアゼチジノン化合物を工業的に有利に製造し得る方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、一般式(1)
【0010】
【化3】

[式中、R1及びR2は前記に同じ。]
で表される6−ヒドロキシエチルペナム化合物を電解酸化することにより、所望の一般式(2)で表されるアゼチジノン化合物を工業的に有利に製造し得ることを見い出した。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
【0011】
本発明は、下記1〜5に示すアゼチジノン化合物の製造方法を提供する。
1.一般式(1)
【0012】
【化4】

[式中、R1及びR2は前記に同じ。]
で表される6−ヒドロキシエチルペナム化合物を電解酸化し、更に必要に応じて塩基で処理することにより、一般式(2)
【0013】
【化5】

[式中、R1、R2及びXは前記に同じ。]
で表されるアゼチジノン化合物を得る、アゼチジノン化合物の製造方法。
2.一般式(2)におけるXがハロゲン原子を示すアゼチジノン化合物を製造する、上記1に記載のアゼチジノン化合物の製造方法。
3.一般式(2)におけるXが塩素原子を示すアゼチジノン化合物を製造する、上記2に記載のアゼチジノン化合物の製造方法。
4.一般式(2)におけるXがアルコキシ基を示すアゼチジノン化合物を製造する、上記1に記載のアゼチジノン化合物の製造方法。
5.一般式(2)におけるXがメトキシ基を示すアゼチジノン化合物を製造する、上記4に記載のアゼチジノン化合物の製造方法。
【0014】
本明細書において、Xで示されるハロゲン原子としては、具体的には弗素原子、塩素原子、臭素原子及び沃素原子を例示できる。
【0015】
Xで示されるアルコキシ基としては、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルコキシ基を例示できる。
【0016】
1で示される水酸基の保護基としては、例えば、Theodora W. Greene 著の "Protective Groups in Organic Synthesis, 1981 by John Wiley & Sons. Inc." の第2章(第10〜72頁)に記載されている水酸基の保護基を挙げることができる。このような水酸基の保護基の好ましい基を具体的に示せば、例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基等の直鎖又は分枝鎖状アルキル基;アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基等の置換基を有することのあるアシルオキシ基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ(tert−ブチル)シリル基等の低級アルキルシリル基;ベンジル基、p−ジメトキシベンジル基、p−ニトロベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基等の置換基としてフェニル基を1〜3個有することのあるアルキル基;ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0017】
2で示されるカルボン酸の保護基としては、例えば、アルキル基、アリールメチル基、Theodora W. Greene 著の "Protective Groups in Organic Synthesis, 1981 by John Wiley & Sons. Inc." の第2章(第152〜192頁)に記載されている水酸基の保護基を挙げることができる。このような水酸基の保護基の好ましい基を具体的に示せば、例えば、メチル基、エチル基、トリクロロエチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のハロゲン原子を有することのある炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基;ベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−ニトロベンジル基、ジフェニルメチル基等のフェニル環上にアルコキシ基、ニトロ基等が置換していてもよいアリールメチル基等を挙げることができる。
【0018】
本発明において、出発原料として用いられる一般式(1)の6−ヒドロキシエチルペナム化合物は、入手が容易な公知の化合物である。
【0019】
一般式(2)のアゼチジノン化合物は、一般式(1)の6−ヒドロキシエチルペナム化合物を電解酸化し、更に必要に応じて塩基で処理することにより製造される。
【0020】
より具体的には、Xがハロゲン原子を示す一般式(2)のアゼチジノン化合物は、有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶媒中、ハロゲン化剤を用いて一般式(1)の6−ヒドロキシエチルペナム化合物を電解酸化し、更に必要に応じて塩基で処理することにより製造される。
【0021】
ハロゲン化剤としては、例えば、塩化水素、臭化水素、沃化水素等のハロゲン化水素又はその塩が使用される。
【0022】
ハロゲン化水素の塩としては、例えば、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、沃化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、沃化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属塩;塩化カルシウム、臭化カルシウム、沃化カルシウム等のハロゲン化アルカリ土類金属塩;塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、沃化アルミニウム等のハロゲン化アルミニウム塩;塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、沃化アンモニウム等のハロゲン化アンモニウム塩;塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、沃化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、沃化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラ(n−ブチル)アンモニウム、臭化テトラ(n−ブチル)アンモニウム、沃化テトラ(n−ブチル)アンモニウム等のハロゲン化テトラアルキルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0023】
これらハロゲン化剤の中でも、塩化水素が好ましい。塩化水素等のハロゲン化水素は、水に溶解してハロゲン化水素水溶液の形態で使用されるのが望ましい。
【0024】
ハロゲン化剤は、一般式(1)の6−ヒドロキシエチルペナム化合物1モルに対して、通常1〜300モル程度、好ましくは2〜50モル程度使用される。
【0025】
用いられる有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、プロピレンジクロリド等のハロゲン系溶媒;蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸n−プロピル、蟻酸n−ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸のアルキルエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン;ジエチルエーテル、エチルn−プロピルエーテル、エチルn−ブチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、メチルセロソルブ、ジメトキシエタン等のエーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル等のニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、アニソール等の芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0026】
好ましい有機溶媒は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒及び酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のカルボン酸のアルキルエステルである。
【0027】
有機溶媒の使用量は、一般式(1)の6−ヒドロキシエチルペナム化合物1kg当たり、通常2〜200リットル程度、好ましくは3〜100リットル程度である。また、水は、一般式(1)の6−ヒドロキシエチルペナム化合物1kg当たり、通常2〜200リットル程度、好ましくは3〜100リットル程度である。
【0028】
ハロゲン化剤としてハロゲン化水素水溶液を使用する場合、有機溶媒として水との相溶性に乏しい有機溶媒を用いると、反応系は水と有機溶媒との二相系になる。このような場合、反応効率を向上させるために、反応系内に界面活性剤を存在させることが好ましい。
【0029】
界面活性剤としては、例えば、イソプロパノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール等の炭素数3〜8の直鎖状又は分枝鎖状のアルコールを挙げることができる。これらの中でも、tert−ブタノールが好ましい。これらのアルコールは、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0030】
界面活性剤の使用量は、反応系に存在する水に対して、通常1〜10重量%程度、好ましくは3〜5重量%がよい。
【0031】
一般式(1)の6−ヒドロキシエチルペナム化合物の電解酸化には、公知の電解酸化の条件を広く適用することができる。
【0032】
電解酸化を行うに当たり、陽極材料及び陰極材料は、通常行われている電解酸化に使用されている陽極材料及び陰極材料と同じものでよい。
【0033】
例えば、陽極材料としては、白金、スズ、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、酸化鉛、炭素、酸化鉄、チタン等が挙げられる。好ましい陽極材料は、白金、ステンレス及び炭素である。
【0034】
陰極材料としては、白金、スズ、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、鉛、銅、炭素等が挙げられる。好ましい陰極材料は、白金、スズ、ステンレス及び炭素である。
【0035】
電解反応は、冷却下、室温下及び加温下のいずれでも行われるが、通常−70〜100℃程度、好ましくは−50〜40℃程度である。
【0036】
電解反応には、公知の定電位電解法及び定電流電解法のいずれの方法を適用してもよい。操作上の簡便さの観点から、低電流電解法を採用するのが好ましい。
【0037】
電解反応の際の電流密度は、通常0.001〜1000mA/cm2程度、好ましくは0.01〜100mA/cm2程度である。通電量は、通常2〜100F/モル程度、好ましくは2〜50F/モル程度であるが、原料が消失するまで通電を行っても差し支えはない。通電時間は、電流密度、通電量、原料の使用量等により適宜決定される。
【0038】
ハロゲン化剤としてハロゲン化テトラアルキルアンモニウム塩を使用する場合には、上記電解反応により、Xがハロゲン原子を示す一般式(2)のアゼチジノン化合物が得られる。使用するハロゲン化剤の種類等により、目的化合物が得られない場合があるが、この場合には、引続き塩基で処理すればよい。例えば、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム塩以外のハロゲン化剤を使用した場合には、目的化合物の代わりに、一般式
【0039】
【化6】

[式中、R1及びR2は前記に同じ。Xはハロゲン原子を示す。]
が得られることがあり、そのような場合は、電解反応により生成する化合物に塩基を作用させる。それにより、目的とする一般式(2)のアゼチジノン化合物を得ることができる。
【0040】
塩基としては、公知の有機塩基及び無機塩基を広く使用できる。
【0041】
有機塩基としては、例えば、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のN,N,N−トリ低級アルキルアミン;N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン等のN−低級アルキルアザシクロアルカン;N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等のN−低級アルキルアザオキシシクロアルカン;N−ベンジル−N,N−ジメチルアミン、N−ベンジル−N,N−ジエチルアミン等のN−フェニル低級アルキル−N,N−ジ低級アルキルアミン;N,N−ジメチルアニリン等のN,N−ジアルキル芳香族アミン;ピリジン等の含窒素芳香族アミン;ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等の二環式アミンやこれらの混合物等が挙げられる。 無機塩基としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属塩;炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸アルカリ土類金属塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素アルカリ金属塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属塩;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属塩;水素化カルシウム等の水素化アルカリ土類金属塩;酸化マグネシウム、酸化カルシウム等のアルカリ土類金属酸化物等やこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
上記有機塩基及び無機塩基は、混合して使用してもよい。
【0043】
塩基の使用量は、処理すべき化合物に対して、通常1〜10当量、好ましくは1〜5当量である。
【0044】
塩基による処理は、電解反応終了後、電解反応により生成した化合物を単離した後に行われるが、電解反応により生成した化合物を単離することなく、電解反応終了後の反応液に塩基を加えて処理を行ってもよい。
【0045】
この処理は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、電解反応に使用される有機溶媒と同じものを使用することができる。
【0046】
塩基による処理は、冷却下、室温下及び加温下のいずれでも行われるが、通常−78〜200℃程度、好ましくは−30〜120℃程度である。処理時間は、処理温度等により異なり一概には言えないが、一般に0.01〜5時間程度である。
【0047】
Xがアルコキシ基を示す一般式(2)のアゼチジノン化合物は、支持電解質の存在下、アルコール溶媒中で一般式(1)の6−ヒドロキシエチルペナム化合物を電解酸化することにより製造される。
【0048】
アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状の脂肪族アルコールを挙げることができる。これらのアルコール溶媒の中でも、メタノールが好ましい。
【0049】
アルコール溶媒の使用量は、一般式(1)の6−ヒドロキシエチルペナム化合物1kg当たり、通常1〜1000リットル程度、好ましくは1〜500リットル程度である。
【0050】
支持電解質としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属塩;炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸アルカリ土類金属塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素アルカリ金属塩;燐酸2水素ナトリウム、燐酸2ナトリウム、燐酸2水素カリウム、燐酸2カリウム等の燐酸アルカリ金属塩;燐酸マグネシウム、燐酸カルシウム等の燐酸アルカリ土類金属塩;炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等の炭酸アンモニウム塩;燐酸2水素アンモニウム、燐酸2アンモニウム等の燐酸アンモニウム塩;燐酸2水素テトラエチルアンモニウム、燐酸2水素テトラ(n−ブチル)アンモニウム等の燐酸テトラアルキルアンモニウム塩;硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸アルカリ金属塩;硫酸水素リチウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム等の硫酸水素アルカリ金属塩;硫酸水素テトラエチルアンモニウム、硫酸水素テトラ(n−ブチル)アンモニウム等の硫酸水素テトラアルキルアンモニウム塩;硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の硫酸アルカリ土類金属塩;次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸塩;過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸マグネシウム等の過塩素酸金属塩;過塩素酸アンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラ(n−ブチル)アンモニウム等の過塩素酸アンモニウム塩;テトラ(n−ブチル)アンモニウムトシレート等のスルホン酸アンモニウム塩;硼弗化リチウム、硼弗化ナトリウム等の硼弗化アルカリ金属塩;硼弗化テトラエチルアンモニウム、硼弗化テトラ(n−ブチル)アンモニウム等の硼弗化アンモニウム塩;塩化テトラエチルアンモニウム等のハロゲン化テトラアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0051】
これらの支持電解質は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0052】
支持電解質は、アルコール溶媒に対して、通常0.1〜100重量%程度、好ましくは0.1〜50重量%程度の量で使用される。
【0053】
Xがアルコキシ基を示す一般式(2)のアゼチジノン化合物を製造するための電解酸化反応の条件は、Xがハロゲン原子を示す一般式(2)のアゼチジノン化合物を製造するための電解酸化反応の条件と同じでよい。
【0054】
本発明の方法で得られる目的化合物は、例えば、濾過、溶媒抽出、再結晶等の慣用されている単離手段により反応混合物から容易に単離され、更に、例えば、カラムクロマトグラフィー等の通常行われている精製手段により容易に精製される。
【発明の効果】
【0055】
本発明の方法によれば、毒性の強い有機溶媒及び塩素ガスを使用する必要がないので、環境衛生上の問題がなく、一般式(2)で表されるアゼチジノン化合物を高収率且つ高純度で、従って工業的に有利に製造し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
実施例1
一般式(2)の化合物(R1:ジメチル(tert−ブチル)シリル基、R2:ジフェニルメチル基、X:塩素原子)の製造
非分離型セルに、一般式(1)の化合物(R1:ジメチル(tert−ブチル)シリル基、R2:ジフェニルメチル基)42.4mg、塩化メチレン5.0ml、3モル/lの塩酸水溶液2.5ml及びtert−ブタノール0.1mlを入れ、十分に撹拌した。撹拌後、得られる溶液を3〜5℃に冷却し、2枚の白金電極を入れ、電流密度10mA/cm2にて電解反応を行った。5F/モルの電気量を通電した後、白金電極を取り出した。反応液中に含まれる反応生成物を塩化メチレンに抽出した(5ml×3回)。
【0058】
塩化メチレン溶液を合わせ、これにジアザビシクロウンデセン(DBU)0.05mlを加え、3〜5℃で2時間撹拌した後、1.7モル/lの塩酸水溶液を用いて洗浄した。得られた塩化メチレン層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下に濃縮を行った。濃縮後の残渣をシリカゲルカラム(溶出液;ベンゼン/塩化メチレン/酢酸エチル=20/2/1)を用いて精製することにより、標記化合物38.1mg(収率:89%)を得た。
【0059】
得られた化合物の1H−NMRスペクトルは、標品のそれと一致したので、得られた化合物は一般式(2)の化合物(R1:ジメチル(tert−ブチル)シリル基、R2:ジフェニルメチル基、X:塩素原子)であることを確認した。
【0060】
実施例2
一般式(2)の化合物(R1:ジメチル(tert−ブチル)シリル基、R2:ジフェニルメチル基、X:メトキシ基)の製造
非分離型セルに、一般式(1)の化合物(R1:ジメチル(tert−ブチル)シリル基、R2:ジフェニルメチル基)43.0mg、メタノール3.0ml及び塩化テトラエチルアンモニウム60mg(0.2ミリモル)を入れ、十分に撹拌した。撹拌後、得られる溶液を−40℃に冷却し、2枚の白金電極を入れ、電流密度10mA/cm2にて電解反応を行った。5F/モルの電気量を通電した後、白金電極を取り出した。
【0061】
反応液に酢酸エチル10mlを加えて希釈し、飽和食塩水を用いて希釈液を洗浄した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥を行った。乾燥後の希釈液を濾過し、濾液を減圧乾燥後、シリカゲルカラム(溶出液;ベンゼン/酢酸エチル=20/1)を用いて精製することにより、標記化合物57.2mg(収率:91%)を得た。
【0062】
得られた化合物の1H−NMRスペクトルは、標品のそれと一致したので、得られた化合物は一般式(2)の化合物(R1:ジメチル(tert−ブチル)シリル基、R2:ジフェニルメチル基、X:メトキシ基)であることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、R1は、水素原子、又は水酸基の保護基を示す。R2は、水素原子、又はカルボン酸の保護基を示す。]
で表される6−ヒドロキシエチルペナム化合物を電解酸化し、更に必要に応じて塩基で処理することにより、一般式(2)
【化2】

[式中、R1及びR2は前記に同じ。Xは、ハロゲン原子又はアルコキシ基を示す。]
で表されるアゼチジノン化合物を得る、アゼチジノン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2006−249454(P2006−249454A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63765(P2005−63765)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【Fターム(参考)】