説明

4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンの製造方法

【課題】4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンを、より収率よく製造する方法を提供すること。
【解決手段】アルコール系溶媒と水との混合溶媒中、カーボン担持型パラジウム、ヒドラジン類および塩基の存在下、式(1)


(式中、Xはハロゲン原子を表わし、Rはシアノ基、カルボキシル基または−COMで示される基を表わす。ここで、Mはアルカリ金属を表わす。)
で示される2−ハロゲノピリジン類をカップリング反応せしめることを特徴とする4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンは、色素増感太陽電池用色素材料として有用な化合物である(例えば特許文献1〜3参照。)。
【0003】
ビピリジン類の製造方法の一つとして、ハロゲノピリジン類を、メタノールと水との混合溶媒中、パラジウム触媒、ヒドラジンおよび水酸化カリウムの存在下にカップリング反応せしめる方法が知られている(例えば特許文献4参照)。例えば特許文献4には、4−クロロピリジンや4−ブロモピリジンを、アルミナ、炭酸カルシウムまたは硫酸バリウムに担持されたパラジウム触媒の存在下に、カップリング反応せしめて、4,4’−ビピリジンを製造する方法が記載されているが、4,4’−ビピリジンの収率は、最高で66%であった。また、2−ブロモピリジンを原料とした場合には、2,2’−ビピリジンの収率は、27%程度と低いものであった。
【0004】
一方、本発明者が、かかるアルミナ、炭酸カルシウムまたは硫酸バリウムに担持されたパラジウム触媒を用いて、2−クロロピリジン−4−カルボン酸を原料として、カップリング反応を行い、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンの製造を試みたところ、硫酸バリウムに担持されたパラジウム触媒の場合は、収率が5%、アルミナに担持されたパラジウム触媒では、収率が17%といずれも低く、炭酸カルシウムに担持されたパラジウム触媒を用いた場合に、収率58%で4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンを得ることはできたものの、工業的な製法としては、十分満足し得るものとは言えなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平6−279474号公報
【特許文献2】特開2000−100482号公報
【特許文献3】特開2001−247546号公報
【特許文献4】特公昭56−32310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況のもと、本発明者は、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンを、より収率よく製造する方法について検討したところ、式(1)

(式中、Xはハロゲン原子を表わし、Rはシアノ基、カルボキシル基または−COMで示される基を表わす。ここで、Mはアルカリ金属原子を表わす。)
で示される2−ハロゲノピリジン類を原料とし、触媒として、カーボン担持型パラジウムを用い、アルコール系溶媒と水との混合溶媒中、塩基およびヒドラジン類の存在下にカップリング反応せしめることにより、目的とする4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンが収率よく得られることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、アルコール系溶媒と水との混合溶媒中、カーボン担持型パラジウム、ヒドラジン類および塩基の存在下、式(1)

(式中、Xはハロゲン原子を表わし、Rはシアノ基、カルボキシル基または−COMで示される基を表わす。ここで、Mはアルカリ金属を表わす。)
で示される2−ハロゲノピリジン類をカップリング反応せしめることを特徴とする4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、色素増感太陽電池用色素材料として有用な4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンを収率よく製造することができるため、工業的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
式(1)

で示される2−ハロゲノピリジン類(以下、2−ハロゲノピリジン類(1)と略記する。)の式中、Xはハロゲン原子を表わし、Rはシアノ基、カルボキシル基または−COMで示される基を表わす。ここで、Mはアルカリ金属原子を表わす。ハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、アルカリ金属原子としては、例えばリチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられ、ナトリウム原子またはカリウム原子が好ましい。
【0010】
かかる2−ハロゲノピリジン類(1)としては、例えば2−クロロ−4−シアノピリジン、2−ブロモ−4−シアノピリジン、2−ヨード−4−シアノピリジン、2−クロロピリジン−4−カルボン酸、2−ブロモピリジン−4−カルボン酸、2−ヨードピリジン−4−カルボン酸、2−クロロピリジン−4−カルボン酸ナトリウム、2−ブロモピリジン−4−カルボン酸ナトリウム、2−ヨードピリジン−4−カルボン酸ナトリウム、2−クロロピリジン−4−カルボン酸カリウム、2−ブロモピリジン−4−カルボン酸カリウム、2−ヨードピリジン−4−カルボン酸カリウム等が挙げられる。
【0011】
かかる2−ハロゲノピリジン類(1)は、フリー体を用いてもよいし、例えば塩酸塩等の酸付加塩を用いてもよい。
【0012】
塩基としては、例えばアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属炭酸塩等の無機塩基が挙げられ、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物が好ましく、なかでもアルカリ金属水酸化物が特に好ましい。アルカリ金属水酸化物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ金属炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等が挙げられる。アルカリ金属炭酸水素塩としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。アルカリ土類金属炭酸塩としては、例えば炭酸マグネシウム等が挙げられる。かかる塩基は、単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、そのまま使用してもよいし、水等の溶媒に溶解もしくは懸濁させて用いてもよい。
【0013】
かかる塩基の使用量は、2−ハロゲノピリジン類(1)に対して、通常1.5〜5モル倍、好ましくは1.8〜4モル倍、より好ましくは2〜3モル倍である。なお、2−ハロゲノピリジン類(1)や後述のヒドラジン類としてそれらの酸付加塩を使用する場合は、該酸付加塩の中和に要する量を考慮し、塩基の使用量を決めればよい。
【0014】
ヒドラジン類としては、例えばヒドラジン、メチルヒドラジン、フェニルヒドラジン等が挙げられ、ヒドラジンが好ましい。かかるヒドラジン類として、例えば抱水ヒドラジン等の水和物を用いてもよいし、例えば塩酸塩等の酸付加塩を用いてもよい。
【0015】
かかるヒドラジン類の使用量は、2−ハロゲノピリジン類(1)に対して、通常0.2〜2モル倍、好ましくは0.2〜1.5モル倍である。
【0016】
カーボン担持型パラジウムとしては、活性炭等のカーボンに、パラジウム金属が担持されたものであればよく、パラジウムのカーボンへの担持量としては、通常0.5〜10重量%である。かかるカーボン担持型パラジウムは、例えば公知の方法により調製したものを用いてもよいし、市販されているものを用いてもよい。また、乾燥品を用いてもよいし、例えば水等で湿潤した含水品を用いてもよい。安全面から、水等で湿潤した含水品を用いることが好ましい。
【0017】
本発明においては、ヒドラジン類を用いているため、2−ハロゲノピリジン類(1)に対するカーボン担持型パラジウムの使用量が、パラジウム金属換算で、0.01〜1重量%程度でも十分に反応が進行し、反応速度の点から、0.05〜0.8重量%の範囲が好ましく、0.08〜0.5重量%の範囲がより好ましい。
【0018】
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、1−ヘキサノール等の炭素数1〜6のアルコール系溶媒が挙げられ、炭素数1〜4のアルコール系溶媒が好ましく、メタノールまたはエタノールがより好ましく、なかでもメタノールが特に好ましい。
【0019】
アルコール系溶媒と水との混合溶媒の使用量は、2−ハロゲノピリジン類(1)に対して、通常5〜20重量倍、好ましくは7〜10重量倍である。前記混合溶媒中の水の濃度は、通常5〜85重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは15〜78重量%である。
【0020】
カップリング反応は、通常2−ハロゲノピリジン類(1)、カーボン担持型パラジウム、塩基、ヒドラジン類およびアルコール系溶媒と水との混合溶媒を接触、混合させることにより実施され、その混合順序は特に制限されない。また、通常窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で反応が実施される。
【0021】
カップリング反応は、常圧条件下で実施してもよいし、加圧条件下で実施してもよい。反応温度は、通常0〜200℃の範囲、好ましくは30〜100℃の範囲、より好ましくは40〜80℃の範囲である。
【0022】
反応終了後、例えば反応液と酸とを混合して酸性化処理することにより、目的とする4,4’−ジカルボキシル−2,2’−ビピリジンを結晶化せしめることができ、結晶化した4,4’−ジカルボキシル−2,2’−ビピリジンは、例えば濾過等の通常の取り出し手段により取り出すことができる。
【0023】
原料である2−ハロゲノピリジン類(1)は、通常市販されているものが用いられるが、2−ハロゲノピリジン類(1)として、置換基Rが−COMで示される基である式(2)

(式中、XおよびMは上記と同一の意味を表わす。)
で示される2−ハロゲノピリジン−4−カルボン酸類(以下、2−ハロゲノピリジン−4−カルボン酸類(2)と略記する。)を用いるときは、置換基Rがシアノ基である式(3)

(式中、Xは上記と同一の意味を表わす。)
で示される2−ハロゲノ−4−シアノピリジン類(以下、2−ハロゲノ−4−シアノピリジン類(3)と略記する。)を加水分解処理することにより、2−ハロゲノピリジン−4−カルボン酸類(2)を得、得られた2−ハロゲノピリジン−4−カルボン酸類(2)をカップリング反応せしめてもよい。
【0024】
2−ハロゲノ−4−シアノピリジン類(3)の加水分解処理は、通常2−ハロゲノ−4−シアノピリジン類(3)、塩基および水を接触、混合することにより実施され、その混合順序は特に制限されない。塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、例えば炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩等が挙げられ、アルカリ金属水酸化物が好適である。塩基の使用量は、2−ハロゲノ−4−シアノピリジン類(3)に対して、通常0.8〜2モル倍、好ましくは0.9〜1.5モル倍である。水の使用量は、2−ハロゲノ−4−シアノピリジン類(3)に対して、通常1〜10重量倍、好ましくは1.5〜5重量倍である。
【0025】
加水分解処理温度は、通常0〜100℃、好ましくは30〜80℃である。
【0026】
有機溶媒の存在下に加水分解処理を行ってもよく、かかる有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられ、その使用量は特に制限されないが、あまり多すぎても容積効率が悪くなるため、実用的には、2−ハロゲノ−4−シアノピリジン類(3)に対して、通常1〜10重量倍である。
【0027】
加水分解処理終了後、2−ハロゲノピリジン−4−カルボン酸類(2)を含む処理液をそのまま上記カップリング反応に用いてもよいし、前記処理液から2−ハロゲノピリジン−4−カルボン酸類(2)を取り出した後、上記カップリング反応に用いてもよく、2−ハロゲノピリジン−4−カルボン酸類(2)を含む処理液をそのまま上記カップリング反応に用いることが好ましい。また、有機溶媒の存在下に加水分解処理を行った場合であって、前記処理液が有機層と水層に分離しているときは、分液処理し、得られる2−ハロゲノピリジン−4−カルボン酸類(2)を含む水層を、そのままもしくは前記水層から2−ハロゲノピリジン−4−カルボン酸類(2)を取り出した後、上記カップリング反応に用いることが好ましい。この場合も、得られる2−ハロゲノピリジン−4−カルボン酸類(2)を含む水層をそのままカップリング反応に用いることがより好ましい。
【0028】
また、加水分解反応の進行に伴って、アンモニアが副生し、副生したアンモニアの一部は前記処理液もしくは水層中に溶解するが、かかるアンモニアが溶解した処理液もしくは水層をそのまま上記カップリング反応に用いてもよいし、処理液もしくは水層からアンモニアを除去した後、カップリング反応に用いてもよい。より収率よく4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンを得るためには、溶解しているアンモニアを除去した後カップリング反応に用いることが好ましく、カップリング反応に用いるカーボン担持型パラジウムのパラジウム金属に対して、アンモニアを除去した後の反応液もしくは水層中のアンモニア量が、好ましくは50モル倍以下、より好ましくは5モル倍以下、さらに好ましくは2モル倍以下となるよう、アンモニアの除去操作を行えばよい。
【0029】
前記反応液もしくは水層からアンモニアを除去する方法としては、例えば処理液もしくは水層を攪拌しながら加熱する方法が挙げられ、例えば窒素ガス、アルゴンガス、空気等の気体を処理液もしくは水層中に吹き込みながら加熱してもよい。処理液もしくは水層を攪拌しながら加熱する方法の加熱温度としては、通常30〜150℃、好ましくは60〜120℃、より好ましくは80〜110℃であり、目的とするアンモニア量に応じて、加熱温度、加熱時間、攪拌回転数、気体の吹き込み量等が適宜選択される。
【0030】
2−ハロゲノピリジン−4−カルボン酸類(2)を含む処理液もしくは水層を上記カップリング反応に用いる場合、前記処理液もしくは水層に、カーボン担持型パラジウム、ヒドラジン類、塩基、アルコール系溶媒および水を加え、カップリング反応を実施すればよい。前記処理液もしくは水層中には水が含まれているため、含まれている水の量に応じて、加える水の量を決めればよい。また、アルコール系溶媒の存在下に加水分解処理を行った場合には、前記処理液もしくは水層中にアルコール系溶媒が含まれている場合があり、含まれるアルコール系溶媒の量に応じて、加えるアルコール系溶媒の量を決めればよい。また、加水分解処理に用いた塩基の量によっては、前記処理液もしくは水層中に塩基が残存している場合があり、かかる残存する塩基の量に応じて、加える塩基の量を決めればよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。分析には、高速液体クロマトグラフィー(以下、LCと略記する。)法を用いた。
【0032】
実施例1
水酸化カリウム(純度:85重量%)4.4g、水20gおよびメタノール23.7gからなる混合溶液に、カーボン担持型パラジウム(パラジウム担持量;5重量%,水50重量%含有品)0.25g、ヒドラジン・一水和物の水溶液(含量:80重量%)0.75gおよび2−クロロピリジン−4−カルボン酸5gを加え、窒素雰囲気下、内温77℃で4時間攪拌、反応させた。反応終了後、反応液を冷却し、カーボン担持型パラジウムを濾別した。得られた濾液をLC分析したところ、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン3.07gが含まれていた。収率:79.3%。
【0033】
実施例2〜7
実施例1において、メタノールおよび水の使用量を表1に示す量に代えた以外は実施例1と同様に実施して、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンを得た。結果を表1に示した。なお、表1中、メタノールおよび水の使用量は、2−クロロピリジン−4−カルボン酸基準で算出した。
【0034】
【表1】

【0035】
比較例1
実施例1において、ヒドラジン・一水和物の水溶液(含量:80重量%)を用いない以外は実施例1と同様に実施して、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンを得た。収率は、43.7%であった。
【0036】
比較例2〜4
実施例1において、カーボン担持型パラジウム(パラジウム担持量;5重量%,水50重量%含有品)0.25gに代えて、表2に示すパラジウム触媒種を用いた以外は実施例1と同様に実施(パラジウム金属量が同じとなるようにした)して、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンを得た。結果を表2に示した。
【0037】
【表2】

【0038】
実施例8
2−クロロ−4−シアノピリジン20gをトルエン40gに溶液したトルエン溶液を、水酸化カリウム(純度:85重量%)10.5gを水60gに溶解した水酸化カリウム水溶液中へ、内温60℃で2.5時間かけて滴下し、同温度で2時間攪拌、保持して、加水分解処理を行った。処理終了後、処理液を分液処理し、2−クロロピリジン−4−カルボン酸カリウムを含む水層を得た。該水層を内温100℃に昇温し、攪拌しながら、窒素ガスを吹き込み、同温度で4時間保持し、該水層中に溶解しているアンモニアの除去操作を行い、2−クロロピリジン−4−カルボン酸カリウムを含む水層80.3gを得た。該水層をイオンクロマトグラフィー分析したところ、該水層中に残存するアンモニア量は、後述のカップリング反応で使用したパラジウム金属に対して、0.16モル倍であった。
【0039】
水酸化カリウム(純度:85重量%)4.5g、水40.6g、メタノール34.4gからなる混合溶液に、カーボン担持型パラジウム(パラジウム担持量;5重量%,水50重量%含有品)0.55g、ヒドラジン・一水和物(含量:80重量%)1.64gおよび上記で得たアンモニア除去操作後の2−クロロピリジン−4−カルボン酸カリウムを含む水層40gを加え、窒素雰囲気下、内温77℃で4時間攪拌、反応させた。反応終了後、冷却し、カーボン担持型パラジウムを濾別した。得られた濾液をLC分析したところ、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン7.01gが含まれていた。収率:83.1%。
【0040】
実施例9
実施例8において、アンモニアの除去操作を行なわない以外は実施例8と同様に実施して、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンを得た。結果を表3に示した。なお、水層中に残存するアンモニア量は、カップリング反応で使用したカーボン担持型パラジウムのパラジウム金属基準で算出した。
【0041】
実施例10〜11
実施例8において、窒素ガスの吹き込み量を代えてアンモニアの除去操作を行った以外は実施例8と同様に実施して、4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンを得た。結果を表3に示した。なお、水層中に残存するアンモニア量は、カップリング反応で使用したカーボン担持型パラジウムのパラジウム金属基準で算出した。
【0042】
【表3】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール系溶媒と水との混合溶媒中、カーボン担持型パラジウム、ヒドラジン類および塩基の存在下、式(1)

(式中、Xはハロゲン原子を表わし、Rはシアノ基、カルボキシル基または−COMで示される基を表わす。ここで、Mはアルカリ金属を表わす。)
で示される2−ハロゲノピリジン類をカップリング反応せしめることを特徴とする4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンの製造方法。
【請求項2】
アルコール系溶媒と水との混合溶媒中の水の濃度が、5〜85重量%である請求項1に記載の4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンの製造方法。
【請求項3】
カーボン担持型パラジウムの使用量が、パラジウム金属換算で、式(1)で示される2−ハロゲノピリジン類に対して、0.01〜1重量%である請求項1に記載の4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンの製造方法。
【請求項4】
式(1)で示される2−ハロゲノピリジン類のうち、置換基Rが−COMで示される基である式(2)

(式中、XおよびMは上記と同一の意味を表わす。)
で示される2−ハロゲノピリジン−4−カルボン酸類が、式(3)

(式中、Xは上記と同一の意味を表わす。)
で示される2−ハロゲノ−4−シアノピリジン類を加水分解処理して得られる2−ハロゲノピリジン−4−カルボン酸類である請求項1に記載の4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンの製造方法。
【請求項5】
式(3)で示される2−ハロゲノ−4−シアノピリジン類を加水分解処理した後、2−ハロゲノピリジン−4−カルボン酸類を取り出すことなくカップリング反応に用いる請求項4に記載の4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンの製造方法。
【請求項6】
加水分解処理した後、アンモニア除去操作を行い、カーボン担持型パラジウムのパラジウム金属に対するアンモニアの残存量を50モル倍以下として、カップリング反応に用いる請求項5に記載の4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジンの製造方法。

【公開番号】特開2006−22012(P2006−22012A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199001(P2004−199001)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000167646)広栄化学工業株式会社 (114)
【Fターム(参考)】