説明

4,5,6,7−テトラヒドロチエノ〔3,2−c〕ピリジン誘導体の製造方法

【目的】 安価で入手安易な化合物を出発原料とし、短工程で得られる塩酸チクロピジン合成中間体の製造方法を提供すること。
【構成】 一般式(II)
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、O−クロロフェニル基または炭素数1〜8のアルコキシ基を表わす。)で示される化合物を金属銅もしくは1価または2価の銅化合物と反応させることによりカルボキシル基を離脱させることを特徴とする4,5,6,7−テトラヒドロチエノ〔3,2−c〕ピリジン誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、血小板凝集抑制作用を有する塩酸チクロピジンを工業的規模で経済的に製造するのに有用な合成中間体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】塩酸チクロピジンの4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[3,2−c]ピリジン骨格の合成については古くから報告がなされており、大きく2つの経路に分けることができる。その一つは、チオフェン誘導体を出発原料として用い、テトラヒドロピリジン環を閉環させる方法であり(例えば、特公昭56−2068号、特開昭62−103088号、EP439404A2)、もう一つはピペリドン誘導体を出発原料として用い、チオフェン環を閉環させる方法(例えば、特開昭63−2992号、特開昭63−126883号、EP360293A2、DE2,701,511)である。これら反応経路は次の通りである。
【0003】
【化3】


【0004】公知例■、■及び■はそれぞれ特開昭62−103088号、EP360293A2及び特開昭63−2992号に開示されている経路である。公知例■は、反応ステップが少なく有利な方法であるが、原料としてシアン化物を用いる、還元に際し副反応が起こるなどの問題があり、更なる改良が望まれている。一方、公知例■及び■の方法は、比較的最近に検討が開始された方法であり、報告例がきわめて少なく、安価な原料から短工程で製造できる方法は未だ見出されていないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、安価で入手安易な化合物を出発原料とし、短工程で得られる塩酸チクロピジン合成中間体の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、一般式(I)で表される4,5,6,7−テトラヒドロチエノ〔3,2−c〕ピリジン誘導体を製造するにあたり、
【0007】
【化4】


【0008】(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、O−クロロフェニル基または炭素数1〜8のアルコキシ基を表わす。)一般式(II)
【0009】
【化5】


【0010】(式中、Rは一般式(I)と同義である。)で示される化合物を金属銅もしくは1価または2価の銅化合物と反応させることにより達成できた。一般式(I)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ヘキシル)、フェニル基、炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ)を表わす。好ましくは、Rは炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、O−クロロフェニル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基を表わし、特に好ましくはメチル基を表わす。以下に本発明の方法について詳しく説明する。一般式(II)で示される化合物は安価に入手可能な3,3’−イミノジプロピオニトリルより次の経路で合成される。
【0011】
【化6】


【0012】すなわち、3,3’−イミノジプロピオニトリルを強塩基(例えば金属ナトリウム、水素化ナトリウム、カリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド)で処理することにより閉環体を得〔J. Am. Chem. Soc.,69,1535(1947)〕、次いでこれを酸ハロゲン化物、酸無水物などを用いて化合物とした後、塩酸で加水分解を行ない、3−シアノ−4−ピペリドン誘導体を得る。次いでこれをスルホン酸ハライドと反応させて化合物を得、これに塩基〔例えばナトリウムメトキシド、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン(DBu)など〕の存在下、チオグリコール酸エステルを反応させることにより、化合物を得る。次いでこれを亜硝酸塩を用いてジアゾニウム塩としたのち、還元剤(例えば、次亜リン酸、エタノール、ギ酸、ヒドラジンなど)と反応させ脱窒素を行なって化合物を得る。これをアルカリ性条件下で加水分解を行ない一般式(II)の化合物を得る。製造の際、これら中間体全てを単離することなく、次工程へ進むことも可能である。次に一般式(II) の化合物からの一般式(I)で表される化合物の製造は一般式(II) の化合物に金属銅または1価または2価の銅化合物を反応させることによって行なわれる。金属銅としては市販の粉末 (Powder) 、粒状 (Shot) 、削状 (Shavings) など種々の形状のものを用いることができる。通常は粉末がよく用いられる。
【0013】1価または2価の銅化合物としては、酢酸銅(II) 、塩化アンモニウム銅(II) 、塩化銅(I)、塩化銅(II) 、臭化銅(I)、臭化銅(II) 、ヨウ化銅(I)、炭酸銅(II) 、水酸化銅(II) 、硝酸銅(II) 、硫酸銅(II) 、酸化銅(I)、酸化銅(II) などが用いられる。これらの中で好ましいものとしては金属銅、炭酸銅(II) 、酸化銅(I)、酸化銅(II) が挙げられ、特に好ましいものとして、金属銅及び酸化銅(I)が挙げられる。これらの銅または銅化合物は、一般式(II) の化合物に対して0.01〜10倍モル、好ましくは0.1〜1倍モル用いるのがよい。反応溶媒としてはキノリン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジンなど高沸点のピリジン系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒などのほかスルホラン等も用いられる。
【0014】また、反応を促進させ、反応温度を下げる目的で、種々の銅イオンの配位子を添加することができる。例えば、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、8−ヒドロキシキノリンなどのピリジン系配位子、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどの脂肪族3級アミン系配位子の他、アセチルアセトン、シュウ酸などを用いることができる。好ましくはピリジン系配位子が用いられ、特に2,2’−ビピリジルや1,10−フェナントロリンが用いられる〔J. Am. Chem. Soc.,92,3189(1970)参照〕。反応温度としては、通常120〜230℃、好ましくは135〜170℃である。反応時間は、反応原料のモル比及び反応温度によって大きく変動するが、一般に0.5〜12時間、好ましくは1〜2時間である。反応後は、ピリジン系化合物を用いた場合、抽出、希塩酸水洗いにてこれらを除去したのち、銅由来の不溶物を濾別後、抽出溶媒を留去することにより単離することができる。通常、これ以上精製することなく次工程へ進める程度の高純度の一般式(I)の化合物が得られる。かかる一般式(I)で示される化合物は、以下の反応式に示すように、酸性条件またはアルカリ性条件下で加水分解したのち、o−クロロベンジル化することによって塩酸チクロピジンに収率よく導かれる。
【0015】
【化7】


以下の表に一般式(I)及び一般式(II) で表される化合物の具体例を示すが、本発明の方法はこれらの製造方法に限定されるものではない。
【0016】
【表1】 表 − 1 一般式(I)及び(II) で表される化合物──────────────────────────────── 化合物No. R──────────────────────────────── I−1及びII−1 CH3 I−2及びII−2 CH2CH3 I−3及びII−3 CH2CH2CH3 I−4及びII−4 CH(CH3)2 I−5及びII−5 (CH2)3CH3 I−6及びII−6 CH2CH(CH32 I−7及びII−7 (CH2)4CH3 I−8及びII−8 (CH2)5CH3 I−9及びII−9 (CH2)6CH3 I−10及びII−10 フェニル基────────────────────────────────
【0017】
【表2】 表 − 2 一般式(I)及び(II) で表される化合物──────────────────────────────── 化合物No. R──────────────────────────────── I−11及びII−11 OCH3 I−12及びII−12 OCH2CH3 I−13及びII−13 OCH2CH2CH3 I−14及びII−14 OCH(CH3)2 I−15及びII−15 OCH2CH2CH2CH3 I−16及びII−16 OCH2CH(CH32 I−17及びII−17 OCH2CH(C25)C49 I−18及びII−18 O−クロロフェニル────────────────────────────────
【0018】
【実施例】
参考例1 化合物(II) −1本発明の化合物(I)の前駆体となる化合物(II) の合成例を(II) −1を例にとって示す。文献既知の化合物である1−アセチル−3−シアノピペリジン−4−オン(化合物:R=CH3 )16.6g(0.1mol )をピリジン23.8g(0.3mol )に溶解し、氷冷下で塩化メタンスルホニル11.5g(0.1mol )を滴下した。30分間室温で攪拌した後、チオグリコール酸n−ブチル14.8g(0.1mol )を加え、続いて反応溶液を氷冷し、トリエチルアミン40.4g(0.2mol )を滴下した。上記反応溶液を30分間室温で攪拌した後、氷冷下ナトリウムメチラート28%メタノール溶液38.6g(0.2mol CH3 ONa)を加え30分間室温で攪拌した。反応終了後、反応液に水600ml を加えて結晶を析出させ、続いて塩酸を加えて中和した( pH〜7)。結晶を濾過、水洗し、アセトニトリルで再結晶し、5−アセチル−3−アミノ−テトラヒドロチエノ〔3,2−c〕ピリジン−2−カルボン酸n−ブチル(化合物:R=CH3 、R2 =C49)20.4g(69%)を得た。
融点133.5〜135℃
【0019】以下のNMRスペクトルの測定結果から、この化合物はアミド結合の回転異性2種(A及びB)の混合物と推定される(A:B=1:1.5)。
1H−NMR(200MHz )、δppm (DMSO−d6 、室温):A 0.91(t, 3H, J=7.7Hz), 1.36(tq, 2H, J=7.7, 7.0Hz)、 1.62(tt, 2H, J=7.0, 6.7Hz), 2.07(s, 3H), 2.65(t, 2H, J=5.3Hz), 3.72(t, 2H, J=5.3Hz), 4.13(t, 2H, J=6.7Hz), 4.33(s, 2H), 6.53(s, 2H)B 0.91(t, 3H, J=7.7Hz), 1.36(tq, 2H, J=7.7, 7.0Hz), 1.62(tt, 2H, J=7.0, 6.7Hz), 2.10(s, 3H), 2.79(t, 2H, J=5.0Hz), 3.68(t, 2H, J=5.0Hz), 4.13(t, 2H, J=6.7Hz), 4.33(s, 2H), 6.53(s, 2H)次いで化合物(R=CH3 、R2 =C49)7.40g(0.025mol )を75%硫酸31ml に溶解し、内温約−5℃に冷却した。内温を0℃以下に保ちながら、亜硝酸ナトリウム3.45g(0.05mol )を水15ml に溶解した水溶液をゆっくり滴下し、続いて30分間0℃以下にて攪拌した。次に、次亜リン酸50%水溶液100ml を内温0℃以下に冷却し、これに上記反応液を滴下し、内温0℃以下で約1時間攪拌した。さらに内温を徐々に室温まで上げながら発泡が止まるまで3〜4時間攪拌した。
【0020】反応終了後、炭酸カリウム水溶液を加えて中和( pH〜5)した後、酢酸エチル(100ml ×2)で抽出した。酢酸エチル層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、酢酸エチルを減圧留去し、カラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=2/1;シリカゲル)で精製し、さらにn−ヘキサン−酢酸エチルにて晶析し化合物(R=CH3 、R2 =C49) 6.46g(92%)を得た。以下のNMRスペクトルの測定結果から、この化合物はアミド結合の回転異性A及びBの混合物と推定される(A:B=1:1)。
融点 60〜63℃1H−NMR(200MHz )、δppm (CDCl3 、室温) :A 0.96(t, 3H, J=7.7Hz), 1.43(tq, 2H, J=7.7, 7.7Hz), 1.71(tt, 2H, J=7.7, 7.7Hz), 2.17(s,3H), 2.89(t, 2H, J=6.7Hz), 3.90(t, 2H, J=6.7Hz), 4.26(t, 2H, J=7.7Hz), 4.55(s, 2H), 7.50(s, 1H)B 0.96(t, 3H, J=7.7Hz), 1.43(tq, 2H, J=7.7, 7.7Hz), 1.71(tt, 2H, J=7.7, 7.7Hz), 2.20(s, 3H), 2.95(t, 2H, J=6.7Hz), 3.75(t, 2H, J=6.7Hz), 4.26(t, 2H, J=7.7Hz), 4.66(s, 2H), 7.50(s, 1H)
【0021】次いで化合物(R=CH3 、R2 =C49)56.0g(0.2mol )にエタノール640ml 、水120ml 、水酸化カリウム17.2gを加え、4時間加熱還流した。反応終了後、溶媒を留去したのち、水100ml を加え、冷却下、濃塩酸23ml を滴下した。析出した結晶を濾取し、少量の水で洗浄した。風乾後、一般式(II) −1の化合物を47.9 g(91%)得た。
融点 245〜248℃(dec.)以下のNMRスペクトルの測定結果から、この化合物はアミド結合の回転異性2種(A及びB)の混合物と推定される(A:B=1:0.7)。
1H−NMR(200MHz )、δppm (DMSO-d6 :室温)A 2.08(s, 3H), 2.92(t, 2H, J=5.7Hz), 3.70(t, 2H, J=5.7Hz), 4.51(s, 2H), 7.53(s, 1H), 12.98(bs, 1H)B 2.04(s, 3H), 2.80(t, 2H, J=5.7Hz), 3.74(t, 2H, J=5.7Hz), 4.57(s, 2H), 7.49(s, 1H), 12.98(bs, 1H)
【0022】参考例2 化合物(II) −12参考例1とほぼ同様にして合成した。
1H−NMR(200MHz )、δppm (CDCl3 、室温)1.30 (t, 3H, J=7.0Hz)2.92 (bs, 2H)3.80 (bs, 2H)4.20 (q, 2H, J=7.0Hz)4.57 (bs, 2H)7.59 (s, 1H)本発明の化合物(I)の前駆体である化合物(II) は、参考例1とほぼ同様の方法で合成できる。
【0023】実施例1 化合物(I)−1の合成例化合物(II) −1 11.2g(0.05mol )にキシレン100ml 、キノリン20ml 、酸化銅(I)0.36g(5mol %)、2,2’−ビピリジル1.56g(20mol %)を加え、窒素雰囲気下1時間加熱還流した(油浴温度145〜150℃)。反応終了後、キシレン、キノリンを減圧留去し(アスピレーター)、残渣に酢酸エチル200ml を加え、不溶物をセライト濾過により除去した後、濾液を1N塩酸水洗い、水洗い、重曹水洗い、水洗いをそれぞれ1回ずつ行ない、芒硝にて乾燥した。溶媒を留去し、得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=1/1〜酢酸エチル)にて精製し、目的とする化合物(I)−1 6.48g(72%)を油状物として得た。化合物(I)−1は室温に放置すると次第に固化する。以下のNMRスペクトルの測定結果から、この化合物はアミド結合の回転異性A及びBの混合物と推定される(A:B=1:0.9)。
1H−NMR(200MHz )、δppm (CDCl3 、室温) :A 2.20(s, 3H), 2.85(t, 2H, J=6.7Hz), 3.75(t, 2H, J=6.7Hz), 4.67(bs, 2H), 6.80(d, 1H, J=5.7Hz), 7.17(d, 1H, J=5.7Hz)B 2.17(s, 3H), 2.90(t, 2H, J=6.7Hz), 3.92(t, 2H, J=6.7Hz), 4.56(bs, 2H), 6.78(d, 1H, J=5.7Hz), 7.15(d, 1H, J=5.7Hz)
【0024】実施例2 化合物(I)−1 (実施例1と異なる反応条件)の合成例化合物(II) −1 11.2g(0.05mol )にキノリン35ml 、酸化銅(I)0.36g(5mol %)を加え、窒素雰囲気下、油浴を用いて外温170±2℃にて1時間加熱攪拌した。油浴の温度を下げ、減圧にてキノリンを除去したのち、実施例1と同様の後処理を行ない、化合物(I)−1 7.20g(80%)を得た。
実施例3 化合物(I)−12の合成例化合物(II) −12 12.8g(0.05mol )にキノリン40ml 、金属銅粉末0.65g(20mol %)を加え、油浴を用いて、外温190±2℃にて30分間加熱攪拌した。油浴の温度を下げ、酢酸エチル200ml を加え、不溶物をセライト濾過により除去したのち、キノリンを除去するために塩酸水洗を行ない、さらに水洗い、重ソウ水洗い、水洗いを行ない、芒硝にて乾燥した。溶媒を留去し、化合物(1)−12を油状物として7.80g(74%)得た。
1H−NMR(200MHz )、δppm (CDCl3 、室温) :1.30 (t, 3H, J=7.7Hz)2.88 (t, 2H, J=5.3Hz)3.80 (t, 2H, J=5.3Hz)4.18 (q, 2H, J=7.7Hz)4.55 (s, 2H)6.80 (d, 1H, J=5.7Hz)7.13 (d, 1H, J=5.7Hz)
【0025】実施例4 化合物(I)−9の合成例実施例3とほぼ同様にして合成した。
油状物以下のNMRスペクトルの測定結果から、この化合物はアミド結合の回転異性体A及びBの混合物と推定される(A:B=1:1)。
1H−NMR(200MHz )、δppm (DMCl3 、室温)A 0.84(t, 3H, J=6.7Hz), 1.32(m, 8H), 1.66(m, 2H), 2.38(q, 2H, J=7.3Hz), 2.83(t, 2H, J=6.7Hz), 3.90(t, 2H, J=6.7Hz), 4.64(s, 2H), 6.80(d, 1H, J=6.0Hz), 7.10(d, 1H, J=6.0Hz)B 0.84(t, 3H, J=6.7Hz), 1.32(m, 8H), 1.66(m, 2H), 2.38(q, 2H, J=7.3Hz), 2.88(t, 2H, J=6.7Hz), 3.73(t, 2H, J=6.7Hz), 4.52(s, 2H), 6.80(d, 1H, J=6.0Hz), 7.13(d, 1H, J=6.0Hz)
【0026】実施例5 化合物(I)−10の合成例実施例3とほぼ同様にして合成した。
無色結晶 融点77〜79℃(晶析溶媒:n−ヘキサン)
以下のNMRスペクトルの測定結果から、この化合物はアミド結合の回転異性体A及びBの混合物と推定される(A:B=1:0.75)。
1H−NMR(200MHz )、δppm (CDCl3 、室温)A 2.86(bs, 2H), 3.64(bs, 2H), 4.79(bs, 2H), 6.81(bs, 1H), 7.10(bs, 1H), 7.37(bs, 5H)B 2.92(bs, 2H), 4.02(bs, 2H), 4.50(bs, 2H), 6.59(bs, 1H), 7.10(bs, 1H), 7.37(bs, 5H)実施例6 化合物(I)−11の合成例実施例3とほぼ同様の方法で合成した。
油状物1H−NMR(200MHz )、δppm (CDCl3 、室温)2.83 (t, 2H, J=5.0Hz)3.70 (s, 3H)3.71 (t, 2H, J=5.0Hz)4.54 (s, 2H)6.78 (d, 1H, J=5.3Hz)7.12 (d, 1H, J=5.3Hz)
【0027】実施例7 化合物(I)−1を用いた4,5,6,7−テトラヒドロチエノ〔3,2−c〕ピリジン塩酸塩の合成本発明の化合物(I)−1 18.1g(0.1mol )をイソプロパノール90ml に分散し、これに濃塩酸35ml を加え、8時間加熱還流した。トルエン100ml を加え減圧にて溶媒を留去した後、イソプロパノール150ml を加え、氷冷にて30分攪拌し、析出した結晶を濾取し、イソプロパノール次いでアセトンにて結晶を洗浄し、無色結晶として化合物 13.2g(75%)を得た。
融点 223〜225℃1H−NMR(200MHz )、δppm (DMSO−d6、室温)3.05 (bs, 2H)3.36 (bs, 2H)4.15 (bs, 2H)6.95 (d, 1H, J=5.3Hz)7.45 (d, 1H, J=5.3Hz)9.83 (bs, 2H)
【0028】実施例8 化合物(I)−12を用いた4,5,6,7−テトラヒドロチエノ〔3,2−c〕ピリジン塩酸塩の合成本発明の化合物(I)−12 10.6g(0.05mol )に2−メトキシエタノール50ml と水酸化カリウム11.2g(0.2mol )を加え、油浴温度145〜150℃にて2時間加熱攪拌した。室温にもどし、酢酸エチル300ml を加え、水洗を2回行った後、溶媒を留去し、得られた油状物にイソプロパノール100ml を加え、氷冷下、塩化水素ガスを吹き込み、析出した結晶を濾取し、イソプロパノール、次いでアセトンにて結晶を洗浄し、無色結晶として、化合物 6.3g(72%)を得た。尚、化合物から塩酸チクロピジンへの変換は既に公知であり、Eur. J. Med.Chem. Chem.−Thev. ,483(1974)に記載されている。
【0029】
【発明の効果】以上のように、本発明により製造される化合物から容易に収率よく塩酸チクロピジンを合成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一般式(I)で表される4,5,6,7−テトラヒドロチエノ〔3,2−c〕ピリジン誘導体の製造方法であって、
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、O−クロロフェニル基または炭素数1〜8のアルコキシ基を表わす。)一般式(II)
【化2】


(式中、Rは一般式(I)におけるものと同義である。)で示される化合物を金属銅もしくは1価または2価の銅化合物と反応させることを特徴とする上記ピリジン誘導体の製造方法。

【公開番号】特開平6−271582
【公開日】平成6年(1994)9月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−57632
【出願日】平成5年(1993)3月18日
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)