説明

5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩のA型及びB型結晶形

【課題】5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩のA型及びB型結晶形の提供。
【解決手段】本発明は、5−アミノ−3−(2’−3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩並びにその結晶形、それらの生産及び使用、並びに、それらの結晶形を含む医薬製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩及びその結晶形に関する。また、その調製プロセス、上記塩及びその結晶形を含む医薬組成物、並びに、温血動物、特にヒトの治療上の処置におけるそれらの使用も提供される。
【背景技術】
【0002】
5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンは下記式:
【0003】
【化1】

で表すことができ、特許文献1(その開示内容の全てを引用して援用する)により公知であって、上記文献に記載されるように合成可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/121162号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンの遊離塩基は、非晶質である。本発明前には、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンは一度も結晶形で回収されることはなかった。驚くべきことに、本発明によって、特定の条件下で5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩から結晶形を得ることができることが分かった。本発明の結晶形は、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンの非晶形よりも有利な特性を有しており、これらの特性としては例えば、溶解した状態等、どのような形態であっても最終の製剤原料に残留する溶媒がより少ないこと、結晶化によりさらなる精製効果が得られること、製剤原料の安定性がより高いこと、及び生産工場での取り扱いがより簡易であることが挙げられる。
【0006】
5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンの遊離塩基は、吸湿性物質である。その化学構造から、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンは、加水分解を非常に受け易いと予想される。驚くべきことに、本発明によって、マレイン酸塩の結晶形の吸湿性がほんの僅かにすぎず、従って貯蔵性がより良好となり、かつ処理し易くなることが分かった。
【0007】
5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンの遊離塩基には、幾つかの関連物質が含有され、溶媒及び水の残留が示されることが分かった。本発明によって、実質的に純粋な5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンの結晶形を得ることができる。本発明によれば、「実質的に純粋な」という用語は、関連物質の合計が2重量%未満又は1重量%未満、好ましくは0.75重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満であり、かつ残留溶媒及び水が2重量%未満又は1重量%未満、好ましくは0.75重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、さらにより好ましくは0.25重量%未満であることを意味する。
【0008】
本発明によって、驚くべきことに、結晶質の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩が少なくとも2つの多形(以下、A型及びB型と称す)で回収されることが分かった。本発明の特定の実施形態では、B型の結晶質の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩が好ましい。なお上記B型は特に安定な多形であることが分かった。
【0009】
図1及び図8には、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の結晶形(以下、「A型」と称す)のX線回折図を示す。上記X線図では、回折角2θを横軸(x軸)に、ピーク強度を縦軸(y軸)にプロットする。粉末X線回折パターンをCu Kα線源(Kα1放射、波長λ=1.54060オングストローム)を用いてScintag X1回折計で測定する。X線回折図において特徴的なピークが5.5°の回折角2θで確認され、ここでの相対強度は100%である。特徴的なピークはさらに2.7°、11.4°、15.3°、16.4°及び17.3°で確認される。より広範囲では、A型は、2.7°、5.5°、6.9°、7.4°、8.1°、10.8°、11.4°、13.4°、14.0°、15.3°、16.4°、17.3°の回折角2θでの回折ピーク、又は図1若しくは図8に示されるような回折ピークにより特徴づけられてもよい。
【0010】
【表1】

従って、A型の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の多形が提供され、上記結晶形は、以下の回折角2θ(±0.5°):2.7°、5.5°、6.9°、7.4°、8.1°、10.8°、11.4°、13.4°、14.0°、15.3°、16.4°、17.3°のうち少なくとも1つの回折ピークにより、又は図1若しくは図8に示される少なくとも1つの特徴的なピークにより特徴づけられる。当業者が認識する通り、回折の相対強度は、例えば使用する調製試料又は機器によって異なる可能性があり、また幾つかのピークは常に検出できる訳ではない。
【0011】
図2には、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の結晶形(以下、「B型」と称す)のX線回折図を示す。上記X線図を上述のように記録した。X線回折図において特徴的なピークが6.4°の屈折角2θで確認され、ここでの相対強度は100%である。描線はさらに6.8°で、また12.4°及び17.5°で確認される。より広範囲では、B型は、3.2°、6.4°、6.8°、12.4°及び17.5°の回折角2θでの回折、又は図2に示されるような回折により特徴づけられてもよい。
【0012】
【表2】

従って、B型の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の多形が提供され、上記結晶形は、以下の回折角2θ(±0.5°):3.2°、6.4°、6.8°、12.4°及び17.5°のうち少なくとも1つの回折ピークにより、又は図2に示される少なくとも1つの特徴的なピークにより特徴づけられる。当業者が認識する通り、回折の相対強度は、例えば使用する調製試料又は機器によって異なる可能性があり、また幾つかの上記ピークは常に検出できる訳ではない。
【0013】
本発明によれば、確認される回折角2θには、±0.1°、±0.2°、±0.3°、±0.5°のずれ、好ましくは上記屈折角の±10%以内のずれが生じる可能性がある。
【0014】
また、A型は約95℃〜115℃、又は約100℃〜110℃、例えば約105℃の融解開始温度によって特徴づけることもでき、B型は約110℃〜140℃、又は約120℃〜約140℃での融解ピークによって、例えば約126℃若しくは約131℃の融解開始温度で特徴づけることができる。Mettler−Toledo DSC822を用いたDSCサーモグラムにより融点を測定することができる。DSC(「示差走査熱量測定」)は動的示差熱量測定法である。この方法を用いて、熱反応、即ち吸熱反応が超高感度センサによって検出されるまで試料を加熱することでA及びB型の融解温度を測定できる。本明細書中に示された融点は、Mettler−Toledo DSC822装置を用いて求められ、10℃/minの加熱速度(開始温度:30℃)で、窒素雰囲気下、穴のあいた蓋が付いたアルミニウムるつぼ中において各試料の約1〜3mgが測定される。当業者が認識する通り、融解温度は、例えば測定試料の純度によって異なることがある。±10℃等のずれはまれなことではない。
【0015】
図3には、B型の結晶質の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩のDSC曲線を示す。図9には、A型のDSC曲線を示す。
【0016】
図4には、B型のFT−IRスペクトルを示す。FT−IRスペクトルは、Burker IFS−55を用いて記録した。試料はヌジョールで調製し、2つのKBr板の間に挟んだ。B型は、以下の主要なIRバンド:2925、2854、1750、1454により特徴づけられる。より広範囲では、以下のIRバンド:〜3331、3166、3109、2925、2854、〜2500、2000(ブロード)、1750、1721、1658、1624、1553、1454、1378、1097、1053、803、772、755により特徴づけられる。
【0017】
図5には、非晶形のマレイン酸塩の粉末X線回折パターンを示す。
【0018】
一実施形態において、B型結晶形の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩は、水和しておらず、即ち無水物(anhydrate)である。
【0019】
1つの態様によれば、本発明は、本発明のマレイン酸塩を調製するプロセスであって、遊離塩基形態の化学式Iの化合物を適当なマレイン酸形態と反応させ、かつその結果得られた塩を上記反応混合液から回収するプロセスを提供する。本発明のプロセスは、従来の方法で、例えばTBME、メタノール、エタノール又はイソプロパノール等の適当な不活性溶媒中で反応させることで達成することができる。
【0020】
本発明の別の態様によれば、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩を結晶化するプロセスが提供される。結晶が形成される正確な条件は、経験的に決定することもでき、実際には、実施例1、2及び4に記載されるような結晶化条件等の幾つかの方法が好適である。
【0021】
通常、結晶化誘導条件には、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、メタノール、エタノール、イソプロパノール又は水、又はその混合液等の適当な結晶化誘導溶媒の使用が含まれる。非晶質化合物を上記溶媒に、通常10℃以上の温度で溶解させるのが、好都合である。溶媒に1種以上の任意の非晶形の化合物、及びその溶媒和物(水和物、メタノラート、エタノラート又はイソプロパノラート等)を溶解させることによって、溶液を生成してもよい。その後、溶液からの変換により結晶を形成させてもよく、約0℃から溶媒の沸点までの温度で結晶化が起こる。溶解及び結晶化を種々の従来の方法で行ってもよい。例えば、非晶質化合物を1種の溶媒又は溶媒の混合液に溶解させてもよく、上記化合物は上記1種の溶媒又は溶媒の混合液に、高温ではすぐに溶解可能だが、低温ではほんの僅かしか溶解しない。高温での溶解の後、冷却が行われ、この冷却中に所望の結晶が溶液から結晶化する。冷却及び再加熱ステップを数回、例えば少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも5回行ってもよい。冷却及び再加熱の温度(差)は、例えば少なくとも5℃、少なくとも10℃、又は少なくとも15℃である。冷却/加熱サイクルにおける低温は、例えば15℃未満、10℃未満、5℃未満、又は0℃未満であってもよく、一方、高温は、例えば15℃以上、20℃以上、25℃以上、又は30℃以上であってもよい。
【0022】
また、化合物を、好ましくは30℃において少なくとも1重量%の量、容易に溶解可能な良溶媒と、上記化合物を、好ましくは30℃において約0.01重量%以下の量しか溶解しないような貧溶媒とを含む混合溶媒を用いてもよいが、ただし、その選択した溶媒混合液を用いて、低温、通常約0℃以上で混合液から結晶化が可能な場合に限られる。
【0023】
或いは、異なる溶媒への結晶の溶解性の違いを用いてもよい。例えば、約30℃において少なくとも1重量%の量の非晶質化合物を溶解可能な溶媒等の溶解性の高い良溶媒に上記化合物を溶解させて、その後、その溶液を、上記化合物を約30℃において約0.01重量%以下の量しか溶解しないような溶媒等の溶解性の低い貧溶媒と混合してもよい。このように、通常約0℃を上回る温度を維持しつつ、良溶媒中の化合物の溶液を貧溶媒に添加してもよいし、又は同様に通常約0℃を上回る温度を維持しつつ、貧溶媒を良溶媒中の化合物の溶液に添加してもよい。良溶媒の例としては、メタノール、エタノール及びイソプロパノール等の低級アルコール、又はアセトンが挙げられよう。貧溶媒の例としては、例えば水が挙げられる。結晶化を約0℃〜約40℃の温度で達成するのが好ましい。
【0024】
本発明のプロセスの別の実施形態では、非晶質固体化合物は通常約0℃以上の温度で、その温度において上記化合物が完全には溶解しない溶媒、好ましくはほんの僅かしか溶解しないような溶媒に懸濁される。その結果、懸濁液では固体粒子が分散し、溶媒へのその溶解が不完全なままである。振盪したり、攪拌したりする等、振動によって上記固体を懸濁した状態に維持するのが好ましい。上記懸濁液を通常約0℃に、又はそれより高い温度に保つことにより、出発固体は結晶に変換される。好適な溶媒に懸濁させた非晶質固体化合物は、溶媒和物、例えば水和物、メタノラート又はエタノラートであってもよい。非晶質粉末は、溶媒和物を乾燥させることにより得ることもできる。
【0025】
(入手できる場合には)結晶質の「種晶」を溶液に添加することにより、結晶化の誘導が可能である。
【0026】
1つの態様において、本発明は、有効量の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の結晶形と、好適な基剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0027】
一実施形態は、病原生物による温血動物、特にヒトの感染症の予防法又は治療法であって、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の非晶形又は結晶形を有効量で投与する方法を提供する。好ましい実施形態において、上記病原生物は、国際公開第2005/121162号パンフレット中に開示される細菌性、真菌性又はウイルス性感染であり、別の好ましい実施形態においては、以下により引き起こされるウイルス性感染である:アデノウイルス、サイトメガロウイルス、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、フラビウイルス科〔黄熱ウイルス及びC型肝炎ウイルス(HCV)等〕、単純ヘルペス1型及び2型、帯状疱疹、ヒトヘルペスウイルス6型、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、麻疹、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、ポックスウイルス〔天然痘及びサル痘(monkeypod)ウイルス等〕、ライノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、出血熱を引き起こす多様な科のウイルス〔アレナウイルス科(LCM、フニンウイルス、マチュポ(Machup)ウイルス、ガナリトウイルス及びラッサ熱)、ブニヤウイルス科(ハンタウイルス属及びリフトバレー熱)、及びフィロウイルス科(エボラ及びマールブルクウイルス)等〕、一連のウイルス脳炎群〔ウエストナイルウイルス、ラクロスウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、キャサヌール(Kysanur)フォレストウイルス、及びダニ媒介ウイルス群(例えばクリミア・コンゴ出血熱ウイルス)等〕。HBV及びHCVが特に好ましい。別の実施形態は、温血動物、特にヒトのサイトカインの免疫活性を調整する方法であって、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の結晶形を有効量で投与する方法を提供する。また、医療において使用するための、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の結晶形も提供される。また、病原体、特にウイルス、例えばHCV又はHBVによる感染症の治療用の医薬品を製造するための、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の結晶形の使用も提供される。さらに、温血動物のサイトカインの免疫活性を調整する医薬品を製造するための、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の結晶形の使用も提供される。
【0028】
本発明は、さらに以下を含む。
・本発明の塩又は結晶塩を、少なくとも1種の薬学的に許容される基剤又は希釈剤とともに含む医薬組成物。
・化学式Iの化合物を遊離型で、又はマレイン酸付加塩の形態以外の薬学的に許容される塩(本発明の塩又は結晶塩から調製されたもの)の形態で含む医薬組成物。
・製薬として使用するための、本発明の塩又は結晶塩。
・医薬品の調製において使用するための、本発明の塩又は結晶塩。
・上記に説明したプロセスにより調製される全ての本発明の塩又は結晶塩。
・遊離塩基型の、又はマレイン酸付加塩の形態以外の塩(本発明の塩又は結晶塩から調製されたもの)の形態の化学式Iの塩又は結晶塩。
・遊離塩基型の、又は塩の形態の化学式Iの塩又は結晶塩による治療が可能な疾病、例えばウイルス病の治療薬(例えば、経口又は経静脈治療薬)の調製における本発明の化合物の使用。
・医薬組成物を調製するプロセスであって、本発明の塩又は結晶塩を、少なくとも1種の薬学的に許容される基剤又は希釈剤とともに混合するプロセス。
・HCV又はHBV感染等のウイルス病の予防的処置又は治療的処置の方法であって、上記処置を必要とする対象に本発明の塩又は結晶塩を治療上有効量で投与する方法。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の結晶形(「A型」と称す)のX線回折図を示す。
【図2−1】5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の結晶形(「B型」と称す)のX線回折図を示す。
【図2−2】5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の結晶形(「B型」と称す)のX線回折図を示す。
【図3】B型の結晶質の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩のDSC曲線を示す。
【図4】B型の結晶質の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩のFT−IRスペクトルを示す。
【図5】非晶形のマレイン酸塩の粉末X線回折パターンを示す。
【図6】5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンの非晶質塩基の水分収着曲線を示す。
【図7】5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の水分収着曲線を示す。
【図8】5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の結晶形(「A型」と称す)のX線回折図を示す。
【図9】A型の結晶質の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩のDSC曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の結晶形は以下の実施例に従って合成されるが、下記実施例は本発明を説明するものであり、本発明の範囲を限定しない。
【実施例1】
【0031】
結晶質の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩(A型)
404mgの5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オン塩基を12mlのTBMEにRTで溶解させ、次に1mlのエタノールに溶解させた122mgのマレイン酸を添加する。この結果、透明な溶液が得られる。外部温度=−18℃で冷却することで、非晶質の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩を沈殿させ、濾別する。その沈殿を5mlのTBMEで洗滌して、洗滌液を母液に添加する。5℃の冷蔵庫中に数週間置くことで、母液と洗滌液を合わせた溶液から5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩のA型が少量、結晶化する。
【実施例2】
【0032】
結晶質の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩(B型)
10lの二重壁容器において、303gの5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オン塩基を10lのTBMEにIT=25℃で溶解させる。次に、820mlのエタノールに97gのマレイン酸を溶解させた溶液をIT=25℃で30分以内に添加する。この添加の始まりと共に、沈殿が形成するものの、添加が終わる頃には溶解する。次に、ITを20℃まで下げ、その透明な溶液に、15mlのTBMEに懸濁(2分間の超音波処理)した30mgの、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩を種晶として添加する。結果として得られた懸濁液をt−プログラム(5℃まで冷却し、1℃/hで20℃まで再加熱する操作を3回行う)によってエージングする。最後の冷却ステップ後、懸濁液を濾過し、1lのTBMEで洗滌する。40℃の真空オーブン中で一晩中乾燥させることにより、307.42gの5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩(理論収率の78%)が白色結晶固体として得られる。xrpd(粉末X線回折)によれば、上記塩にはB型しか含まれない。
【実施例3】
【0033】
5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンの非晶質塩基の水分収着曲線(図6)
【表3】

【0034】
5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩の水分収着曲線(図7)
【表4】

【実施例4】
【0035】
結晶質の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩(A型)
1.27gの5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オン塩基を、TBME12ml及びエタノール2ml中にIT=25℃で溶解させて、透明な溶液を得る。次に、1.21gのマレイン酸をエタノール3ml及びTBME5ml中に溶解させた溶液をIT=25℃で調製する。上記2つの溶液をIT=25℃で混合して、濁った溶液を得る。この溶液は、攪拌すると透明になる。その透明な溶液の温度を4〜6℃にまで移動させ、この温度に10〜12時間保つ。懸濁液を濾過し、固形物を40℃/2〜10mbarの真空オーブン中で一晩中乾燥させることにより、1.59gの5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩(理論収率の96%)が白色結晶固体として得られる。xrpdによれば、上記塩にはA型が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩。
【請求項2】
非晶形の、請求項2に記載の塩。
【請求項3】
結晶形の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩。
【請求項4】
A型結晶形の、請求項3に記載の塩。
【請求項5】
B型結晶形の、請求項3に記載の塩。
【請求項6】
前記結晶形はA型とB型との混合である、
結晶形の、請求項3に記載の塩。
【請求項7】
X線回折において5.5°±0.5°の屈折角2θでピークを示す、
請求項3、4又は6に記載の結晶塩。
【請求項8】
X線回折において2.7°、5.5°、6.9°、7.4°、8.1°、10.8°、11.4°、13.4°、14.0°、15.3°、16.4°、若しくは17.3°(±0.5°)の屈折角2θで少なくとも1つのピークを示すか;又は図1若しくは図8(±0.5°)に示される少なくとも1つのピークを示す、
請求項3、4又は6に記載の結晶塩。
【請求項9】
X線回折において6.4°±0.5°の屈折角2θでピークを示す、
請求項3、5又は6に記載の結晶塩。
【請求項10】
X線回折において3.2°、6.4°、6.8°、12.4°、若しくは17.5°(±0.5°)の屈折角2θで少なくとも1つのピークを示すか;又は図2(±0.5°)に示されるような少なくとも1つのピークを示す、
請求項3、5又は6に記載の結晶塩。
【請求項11】
実質的に純粋な形態である、
請求項1〜10に記載の塩又は結晶塩。
【請求項12】
請求項1に記載の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩を調製するプロセスであって、
5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンをリンゴ酸と反応させ、かつ
その結果得られた塩を前記反応混合液から回収する
プロセス。
【請求項13】
請求項2〜11に記載の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンの結晶質マレイン酸塩を調製するプロセスであって、
5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンの非晶質マレイン酸塩を結晶化誘導条件下でその含有溶液から適切に変換する
プロセス。
【請求項14】
請求項2〜11に記載の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンの結晶質マレイン酸塩を調製するプロセスであって、
5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンとマレイン酸とを適当な溶媒に溶解させるステップと、
所望により、その溶液に種晶として5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩を添加するステップと、
少なくとも5℃になるように前記溶液を少なくとも1回冷却し、かつ少なくとも5℃になるように前記溶液を少なくとも1回再加熱するステップと
を含むプロセス。
【請求項15】
請求項3〜13に記載の、5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンの結晶質マレイン酸塩を調製するプロセスであって、
TBMEを含む溶液中で5−アミノ−3−(2’,3’−ジ−O−アセチル−ベータ−D−リボフラノシル)−3H−チアゾロ[4,5−d]ピリミジン−2−オンのマレイン酸塩を結晶化又は再結晶化するステップ
を含むプロセス。
【請求項16】
請求項1〜11に記載のマレイン酸塩又はマレイン酸塩の結晶形を含む
医薬組成物。
【請求項17】
病原体による感染症の治療法であって、
請求項1〜11に記載のマレイン酸塩又はマレイン酸塩の結晶形を治療上有効量で、必要とする患者に投与する
治療法。
【請求項18】
医療において使用するための、請求項1〜11に記載のマレイン酸塩又はマレイン酸塩の結晶形。
【請求項19】
病原体による感染症の治療用の医薬品を製造するための、請求項1〜11に記載のマレイン酸塩又はマレイン酸塩の結晶形の使用。
【請求項20】
前記病原体はウイルス、特にHCV又はHBVである、請求項19に記載の使用。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−537603(P2009−537603A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511502(P2009−511502)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054899
【国際公開番号】WO2007/135134
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(504204443)アナディス ファーマシューティカルズ インク (13)
【Fターム(参考)】