説明

5レベル変換回路

【課題】従来の5レベル変換回路では、必要な直流電源の数が4個必要で、また変換時に電流が通過する半導体素子数が4個となり、損失が大きく、装置が大型になる問題があった。
【解決手段】1相分の変換回路として、2個の直流単電源と、3個の半導体素子を直列接続した半導体アーム対と、1個のコンデンサ直列回路と、1個の交流スイッチを用いて、直流から交流への5レベル変換または交流から直流への5レベル変換を、電流が通過する半導体素子数を従来より減らして実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体電力変換装置の電力変換回路技術に関するもので、特に、5つの電圧レベルを選択して任意に変換する5レベル変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に、従来の技術を用いた5レベル変換回路の1相分を示す。図6において、直流単電源b11〜b22が直列に接続された直流組電源BA2の正極と負極の間には、半導体スイッチQ1〜Q8の直列回路が接続され、半導体スイッチQ4とQ5との接続点が交流出力Uとなり、リアクトルL3を介して交流端子Uoに接続される。また、半導体スイッチQ1とQ2との接続点及びQ5とQ6との接続点との間には、ダイオードD1とD4とを直列接続したダイオードアーム対DA1の外側端子が、そのダイオードアーム対DA1の中点端子は直流単電源b11とb12の接続点に、各々接続される。同様に、半導体スイッチQ2とQ3との接続点及びQ6とQ7との接続点との間にはダイオードD2とD5とを直列接続したダイオードアーム対DA2の外側端子が、そのダイオードアーム対DA2の中点端子には直流単電源b12とb21との接続点が、半導体スイッチQ3とQ4の接続点及びQ7とQ8の接続点との間にはダイオードD3とD6とを直列接続したダイオードアーム対DA3の外側端子が、そのダイオードアーム対DA3の中点端子には直流単電源b21とb22との接続点が、各々接続される。また、交流端子UoにはコンデンサC3が接続され、リアクトルL3とコンデンサC3による交流出力フィルタが形成され、半導体スイッチQ1〜Q8のスイッチングによる階段状波形を正弦波状の波形に整形している。
【0003】
この様な回路構成において、半導体スイッチQ1〜Q4をオン、Q5〜Q8をオフにすると、交流出力Uには+2Eの電圧が、半導体スイッチQ2〜Q5をオン、Q6〜Q8及びQ1をオフとすると、交流出力Uには+1Eの電圧が、半導体スイッチQ3〜Q6をオン、Q7、Q8、Q1、Q2をオフとすると、交流出力Uにはゼロ電圧が、半導体スイッチQ4〜Q7をオン、Q1〜Q3及びQ8をオフとすると、交流出力Uには−1Eの電圧が、半導体スイッチQ5〜Q8をオン、Q1〜Q4をオフとすると、交流出力Uには−2Eの電圧が、各々出力される。この様に、各半導体スイッチQ1〜Q8のオンオフを調節することにより、交流出力Uには、5レベルの電圧が出力可能となる。この回路は直流から交流に変換するインバ−タ動作だけでなく交流から直流に変換する整流器動作においても適用可能である。図6の回路の詳細な動作については、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−271042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、図6に示す従来回路においては、直流組電源BA2から交流出力Uの間で出力電流が通過する半導体スイッチの数が最大4個となる。そのため、半導体スイッチにおける定常オン損失が大きくなり、装置全体の効率低下を招き、小形・低価格化が困難となる問題がある。
また、図6に示すような一般的な5レベル変換回路においては、交流出力Uから出力される電圧・電流が正負対称な交流波形の場合においても直流単電源b11とb12の分担する電力は原理的に同じとならないため、各々独立した直流電源を必要とする。b21とb22についても同様である。そのため、入力となる直流組電源BA2には、独立に電力を供給できる4つの単電源が必要となり、装置を製作する上で大きな制約となってしまう。この直流電源のアンバランスの問題については、例えば IEEE−PESC‘95のカンファレンスレコ−ドpp1144〜1150の「A multi-level voltage-source converter system with balanced DC voltage」に紹介されている。
従って、本発明の課題は、従来に比べ出力電流が通過する半導体スイッチの数を減らし発生損失を低減でき、さらに直流入力電源として2つの単電源で動作可能な5レベル変換回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、第1の発明においては、2つに分割された3つの端子を備え、ゼロを含む互いに異なる3つの電圧レベルを持つ直流電源から5つの電圧レベルを生成し、その5つの電圧レベルを任意に選択可能な5レベル変換回路において、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチアームを2つ直列接続した第1、第2及び第3のアーム対と、半導体デバイスを組み合わせて構成される交流スイッチとを備え、前記直流電源の電位が最も高い第1直流端子と中間電位となる第2直流端子との間には前記第1アーム対を、前記第2直流端子と電位が最も低い第3直流端子との間には前記第2アーム対を、前記第1アーム対の中点端子と前記第2アーム対の中点端子との間には各々第1のリアクトル及び第2のリアクトルを介して前記第3アーム対を、この第3アーム対と並列に2つのコンデンサを直列接続した直列コンデンサ回路を、この直列コンデンサ回路の中間接続点と前記第3アーム対の中間端子との間に前記交流スイッチを、第3アーム対の中間端子にフィルタコンデンサを、各々接続すると共に、前記第3アーム対の中間端子を交流出力端子とする回路構成で、前記第1及び第2のリアクトルは前記直流電源から前記第1アーム対、前記直列コンデンサ回路及び前記第2アーム対を介して流れる直列コンデンサ回路への突入電流成分を抑制する機能と、前記フィルタコンデンサと前記5レベル変換回路出力の高調波を低減する交流フィルタを形成する機能とを兼ね備える。
【0007】
第2の発明においては、交流電源から、2つに分割された3つの端子を備え、ゼロを含む互いに異なる3つの電圧レベルを持つ直流電源を作り出す5レベル変換回路において、ダイオードアームを2つ直列接続して構成される第1及び第2のアーム対と、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチアームを2つ直列接続して構成される第3のアーム対と、半導体デバイスを組み合わせて構成される交流スイッチとを備え、前記直流電源の電位が最も高い第1直流端子と中間電位となる第2直流端子との間には前記第1アーム対を、前記第2直流端子と電位が最も低い第3直流端子との間には前記第2アーム対を、前記第1アーム対の中点端子と前記第2アーム対の中点端子との間には各々第1のリアクトル及び第2のリアクトルを介して前記第3アーム対を、この第3アーム対と並列に2つのコンデンサを直列接続した直列コンデンサ回路を、この直列コンデンサ回路の中間接続点と前記第3アーム対の中間端子との間に前記交流スイッチを、前記第3アーム対の中間端子に交流電源を、各々接続し、前記第3アーム対と前記交流スイッチをオンオフ制御することにより、前記交流電源から直流を得る高力率整流回路として動作する。
【0008】
第3の発明においては、交流電源から、2つに分割された3つの端子を備え、ゼロを含む互いに異なる3つの電圧レベルを持つ直流電源を作り出す5レベル変換回路において、ダイオードアームとダイオードを逆並列接続した半導体スイッチアームとをこの順序で直列接続した第1のアーム対と、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチアームとダイオードアームとをこの順序で直列接続した第2のアーム対と、ダイオードアームを2つ直列接続した第3のアーム対と、半導体デバイスを組み合わせて構成される交流スイッチと、を備え、前記直流電源の電位が最も高い第1直流端子と中間電位となる第2直流端子との間には前記第1アーム対を、前記第2直流端子と電位が最も低い第3直流端子との間には前記第2アーム対を、前記第1アーム対の中点端子と前記第2アーム対の中点端子との間には各々第1のリアクトル及び第2のリアクトルを介して前記第3アーム対を、この第3アーム対と並列に2つのコンデンサを直列接続した直列コンデンサ回路を、この直列コンデンサ回路の中間接続点と前記第3アーム対の中間端子との間に前記交流スイッチを、前記第3アーム対の中間端子に交流電源を、各々接続し、前記第1及び第2アーム対の半導体スイッチと前記交流スイッチをオンオフ制御することにより、前記交流電源から直流を得る高力率整流回路として動作する。
【0009】
第4の発明においては、第1〜第3の発明における交流スイッチを、半導体デバイスからなるアームを逆直列に接続して構成する。
第5の発明においては、第1〜第3の発明における交流スイッチを、逆耐圧のある半導体デバイスを逆並列接続して構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、直流電源として2個の単電源の直列回路を用い、この直流電源と交流(出力または入力)端子Uoの間を電流が通過する半導体スイッチの数が最大3個となり、損失を低減することができる。結果として、装置の高効率化・低価格化・小形化が可能となる。さらに直流電源を単電源2つの組合せとすることができるため、従来の5レベル変換回路より緩和された一般的な3レベル変換回路と同等な直流電源の条件にする事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施例を示す回路図(1相分)である。
【図2】本発明の第1の実施例の変形例を示す回路図(1相分)である。
【図3】本発明の第2の実施例を示す回路図(1相分)である。
【図4】本発明の第3の実施例を示す回路図(1相分)である。
【図5】本発明の第1の実施例の動作波形図である。
【図6】従来の5レベル変換回路図(1相分)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の要点は、1相分の変換回路として、2個の直流単電源と、3個の半導体素子を直列接続した半導体アーム対と、1個のコンデンサ直列回路と、1個の交流スイッチを用いて、直流から交流への5レベル変換または交流から直流への5レベル変換を、電流が通過する半導体素子数を従来より減らして実現している点である。
【実施例1】
【0013】
図1に、本発明の第1の実施例を示す。図1において、各々が2Eの電圧を持つ直流単電源b1とb2が直列に接続された直流組電源BA1の正極と中間端子の間には、半導体スイッチQ9、Q10を直列接続してなるアーム対QA1の外側端子が、BA1の中間端子と負極の間には、半導体スイッチQ11、Q12を直列接続してなるアーム対QA2の外側端子が、各々接続される。また、アーム対QA1とQA2の各中点端子間には、リアクトルL1及びL2を介し半導体スイッチQ13、Q14を直列接続してなるアーム対QA3の外側端子が接続され、このアーム対QA3の中点端子はフィルタコンデンサC3が接続されると共に交流端子Uoとなる。
さらに、アーム対QA3の外側端子間と並列にコンデンサC1、C2からなる直列コンデンサ回路CA1が接続され、このコンデンサC1とC2の中間接続点とアーム対QA3の中点端子との間には、半導体スイッチQ15とQ16を逆直列接続した交流スイッチSW1が接続される。
【0014】
この様な回路構成において、半導体スイッチQ9、Q13をオン、Q10、Q14及びSW1のQ16をオフさせると交流端子Uoには+2Eの電圧が平滑された電圧が出力され、この時出力電流が通過する半導体スイッチはQ9、Q13の2個となる。さらに、この時Q12をオフ、Q11をオンしておくことで、アーム対QA1〜QA3のなかでオフしている半導体スイッチにかかる電圧は最大2Eでクランプされ、同様にオフしている交流スイッチSW1のQ16にかかる電圧はコンデンサC1の電圧VC1にクランプされる。また、この時Q9及びQ11がオンしているため、直列コンデンサ回路CA1の電圧は単電源b1の電圧と同じ2Eに保たれる。
【0015】
その状態から次に交流スイッチSW1を全オン、Q13をオフさせると交流端子UoにはコンデンサC2の電圧(+VC2)が出力され、この時出力電流が通過する半導体スイッチはQ9、Q15、Q16またはQ11、Q15、Q16の3個となる。この時、アーム対QA1〜QA3の中でオフしている半導体スイッチにかかる電圧は最大2Eでクランプされる。
【0016】
次に、Q10、Q13をオンまたはQ11、Q14をオン、Q9、Q12及びSW1をオフさせると交流端子Uoにはゼロ電圧が出力される。この時出力電流が通過する半導体スイッチはQ10、Q13またはQ11、Q14の2個となる。また、アーム対QA1〜QA3の中でオフしている半導体スイッチにかかる電圧は最大2Eでクランプされ、同様に交流スイッチSW1にかかる電圧はコンデンサC1の電圧VC1またはC2の電圧VC2にクランプされる。
【0017】
半導体スイッチQ12、Q14をオン、Q11、Q13及びSW1をオフさせると交流端子Uoには−2Eの電圧を平滑した電圧が出力される。この時出力電流が通過する半導体スイッチはQ12、Q14の2個となる。さらにこの時Q9をオフ、Q10をオンしておくことで、アーム対QA1〜QA3の中でオフしている半導体スイッチにかかる電圧は最大2Eにクランプされる。同様にオフしている交流スイッチSW1のQ15にかかる電圧はコンデンサC2の電圧(VC2)にクランプされる。また、この時Q10及びQ12がオンしているため、直列コンデンサ回路CA1の電圧は直流単電源b2の電圧と同じ2Eに保たれる。
【0018】
その状態から次に交流スイッチSW1をオン、Q14をオフさせると交流端子UoにはコンデンサC1の電圧(−VC1)が出力され、この時出力電流が通過する半導体スイッチはQ15、Q16、Q12またはQ15、Q16、Q10の3個となる。この時、アーム対QA1〜QA3の中でオフしている半導体スイッチにかかる電圧は最大2Eでクランプされる。
【0019】
上記の一連の動作により、交流端子Uoには、+2E、+VC2、0、−VC1、−2Eの5つのレベルの電圧を平滑した電圧出力が可能となる。この時の各半導体スイッチQ9〜Q14、Q15、Q16のオンオフパタ−ン及び交流端子Uoの電圧波形を図5に示す。この時、コンデンサC1及びC2の容量が同じで、各半導体スイッチQ9とQ12、Q10とQ11、Q5とQ6、Q15とQ16の動作が図5に示す様に正負の期間で対称の時、交流端子Uoの電圧は正負対称となり交流出力電流も正負対称となるため、コンデンサC1とC2の各電圧VC1、VC2は平均的には同じ電圧で1Eとなり、上記交流端子Uoの電圧は、+2E、+VC2=+1E、0、−VC1=−1E、−2E を平滑した正弦波状の電圧となる。
【0020】
また半導体スイッチQ9、Q11がオン、Q10、Q12がオフの時、直列コンデンサ回路CA1はQ9→リアクトルL1→CA1→リアクトルL2→Q11の経路で直流単電源b1にクランプされる。逆にQ10、Q12がオン、Q9、Q11がオフの時は、Q10→L1→CA1→L2→Q12の経路で直流単電源b2にクランプされる。ここで、直流単電源b1とb2に電位差が生じている場合、直列コンデンサ回路CA1のクランプ先がb1からb2または逆のb2からb1に切り替わるタイミングでCA1に突入電流が流れようとするが、L1及びL2の電流抑制効果により突入電流は抑制される。
【0021】
さらに、例えばQ9、Q11、Q13がオンで交流端子Uoに+2Eの電圧を平滑した電圧が出力されている時、出力電流の経路は直流組電源BA1の中間端子を基点に考えると、b1→Q9→L1→Q13→C3を通る第1の経路と、Q11→L2→C2→C1→Q13→C3を通る第2の経路の2通りがある。第1の経路ではL1、C3によるLCフィルタ回路が構成され、第2の経路ではL2、C3によるLCフィルタ回路が構成される。交流端子Uoの電圧が+1E、0、−1E、−2Eの電圧を平滑した電圧の場合においても同様に2つの電流経路が存在し、何れもL1、L2によるLCフィルタ回路が構成される。ここで、L1とL2のインダクタンス値を同じ値のLmに選んだ場合の等価的な交流出力LCフィルタとしてのカットオフ周波数ωは、
ω=1/√((Lm/2)・C3)となる。
ここで、LmとC3の値を適切に選択する事で、交流端子Uoの電圧は図5に示す階段状の波形から連続的な正弦波状の波形に波形整形され、L1とL2はインバ−タ用出力LCフィルタのリアクトルの機能も兼ね備えることができる。
この図1の変換回路は、直流から交流に変換するインバ−タ動作だけでなく交流から直流に変換する整流器動作においても各半導体スイッチQ9〜Q14、Q15、Q16のオンオフを制御することで、入力となる交流側電流を制御可能である。
【0022】
図2は、SW1の代わりに逆阻止形IGBTQ21とQ22を逆並列接続して構成した交流スイッチSW2を用いた実施例である。動作は、図1と同様である。図1のQ15をオンさせる代わりに図2のQ21を、Q16をオンさせる代わりにQ22をオンさせる他は、図1と同じ動作となる。
ただし,SW1に出力電流が通過する場合において,図1の回路では,Q15、Q16の各々半導体スイッチ2個分を通過するのに対し,図2のSW2においてはQ21またはQ22の何れか1個しか通過しないため,5レベルインバータ全体として出力電流が通過する半導体スイッチ(逆阻止形IGBTを含む)が最大3個から2個に減少する。この結果、さらなる高効率化が可能となる。
【実施例2】
【0023】
図3に、本発明の第2の実施例を示す。図2との相違点は、半導体スイッチQ9〜Q12がダイオードD9〜D12に各々変更され、交流端子Uoには外部交流電源が接続されている点である。
この様な回路構成において、外部交流電源の電圧が正極性かつその振幅がコンデンサC2の電圧VC2より小さい時、Q14及びQ22をオン、Q13及びQ21をオフさせると、外部交流電源1→交流端子Uo→Q14→L2→D11→BA1の中点端子M、の経路で短絡電流が流れ、外部交流電源1のエネルギーがリアクトルL2に蓄積される。この状態からQ14をオフすると、電流は外部交流電源1→Q22→C2→L2→D11→BA1の中点端子Mの経路に転流し、リアクトルL2に蓄えられていたエネルギーはコンデンサC2に放出される。ここで、コンデンサC2の電圧上昇により直列コンデンサ回路CA1全体の電圧も上昇するため、電流は外部交流電源1→Q22→C1→L1→D9→b1→BA1の中点端子Mの経路にも分流し、最終的にエネルギーは直流電源の単電源b1に充電される。ここで、半導体スイッチQ14のオンオフの比率を制御することで入力となる交流電流の制御が可能となる。
【0024】
次に外部交流電源の電圧が正極性かつその振幅がコンデンサC2の電圧VC2より大きい時、Q22をオン、Q13、Q14、Q21をオフさせると、外部交流電源1→交流端子Uo→Q22→C2→L2→D11→BA1の中点端子Mの経路と、外部交流電源1→交流端子Uo→Q22→C1→L1→D9→b1→BA1の中点端子Mの2つの経路で短絡電流が流れ、エネルギーがリアクトルL1及びL2に蓄えられる。この状態から半導体スイッチQ22をオフすると、電流は外部交流電源1→交流端子Uo→Q13→CA1(C1、C2)→L2→D11→BA1中点端子Mの経路と、外部交流電源1→交流端子Uo→Q13→L1→D9→b1→BA1の中点端子Mの2つの経路で電流が流れ、リアクトルL1とL2に蓄えられていたエネルギーは直列コンデンサ回路CA1を介し最終的には直流電源の単電源b1に充電される。ここで、半導体スイッチQ22のオンオフの比率を制御することで入力となる交流電流の制御が可能となる。
これら、外部交流電源が正極性の期間においては、入力となる交流電流を制御しながら、直流単電源b1の充電が可能となる。
【0025】
外部交流電源1の電圧が負極性の時についても、回路の対象性から正極性の時と同様の動作が可能となり、交流電流を制御しながら、直流単電源b2の充電が可能となる。また、外部交流電源1の電圧が正極性の時は、コンデンサC2の電圧VC2が増加し、コンデンサC1の電圧VC1は減少するが、外部交流電源1が負極性の時にはその逆の動作となるため、一周期を平均すると動作の対称性からVC1=VC2=+1Eとなる。
【実施例3】
【0026】
図4に、本発明の第3の実施例を示す。図2との相違点は、半導体スイッチQ9、Q12〜Q14がダイオードD9、D12〜D14に各々変更され、交流端子Uoには外部交流電源1が接続されている点である。
この様な回路構成において、外部交流電源の電圧が正極性かつその振幅が+1Eより小さい時、Q10をオン、Q11、Q21及びQ22をオフさせると、外部交流電源1→交流端子Uo→D13→L1→Q10→BA1の中点端子M、の経路で短絡電流が流れ、外部交流電源のエネルギーがリアクトルL1に蓄積される。この状態から半導体スイッチQ10をオフ、Q22をオンすると、電流は外部交流電源1→Q22→C1→L1→D9→b1→BA1の中点端子Mの経路に転流し、リアクトルL1に蓄えられていたエネルギーはコンデンサC1の放電に伴い、直流単電源b1に充電される。ここで、半導体スイッチQ10とQ22のオンオフの比率を制御することで入力となる交流電流の制御が可能となる。
【0027】
次に外部交流電源の電圧が正極性かつその振幅がコンデンサC2の電圧VC2より大きい時、Q22をオン、Q10、Q11、Q21をオフさせると、外部交流電源1→交流端子Uo→Q22→C2→L2→Q11→BA1の中点端子Mの経路と、外部交流電源1→交流端子Uo→Q22→C1→L1→D9→b1→BA1の経路の2つの経路で短絡電流が流れ、エネルギーがリアクトルL1及びL2に蓄えられる。この状態から半導体スイッチQ22をオフすると、電流は外部交流電源1→交流端子Uo→D13→CA1(C1、C2)→L2→Q11→BA1の中点端子Mの経路と、外部交流電源1→交流端子Uo→D13→L1→D9→b1→BA1の中点端子Mの経路の2つの経路で電流が流れ、リアクトルL1とL2に蓄えられていたエネルギーは直列コンデンサ回路CA1を介して最終的には直流単電源b1に充電される。ここで、Q22のオンオフの比率を制御することで入力となる交流電流の制御が可能となる。
これら、外部交流1が正極性の期間においては、入力となる交流電流を制御しながら、直流単電源b1の充電が可能となる。
【0028】
外部交流電源1の電圧が負極性の時には、回路の対象性から正極性の時と同様の動作が可能となり、交流電流を制御しながら、直流単電源b2の充電が可能となる。また、外部交流電源の電圧が正極性の時は、コンデンサC2の電圧VC2は増加し、コンデンサC1の電圧VC1は減少するが、外部交流電源が負極性の時にはその逆の動作となるため、一周期を平均すると動作の対称性からVC1=VC2=+1Eとなる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、5レベル変換回路を用いて少ない個数の直流電源から高電圧の交流を作り出す直流−交流変換回路と、交流−直流変換回路の提案である。大容量の無停電電源装置(UPS)や電動機駆動用インバータなどへの適用が可能である。
【符号の説明】
【0030】
Q1〜Q16・・・スイッチング素子
Q21、Q22・・・スイッチング素子(逆阻止形)
QA1、QA2、QA3・・・アーム対
QA4、QA5・・・アーム対
D1〜D6、D9〜D14・・・ダイオード
b1、b2、b11、b12、b21、b22・・・直流単電源
BA1、BA2・・・直流組電源 1・・・交流電源
DA1〜DA6・・・ダイオードアーム対
L1、L2、L3・・・リアクトル C1〜C3・・・コンデンサ
CA1・・・直列コンデンサ回路
SW1、SW2・・・交流スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つに分割された3つの端子を備え、ゼロを含む互いに異なる3つの電圧レベルを持つ直流電源から5つの電圧レベルを生成し、その5つの電圧レベルを任意に選択可能な5レベル変換回路において、
ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチアームを2つ直列接続した第1、第2及び第3のアーム対と、半導体デバイスを組み合わせて構成される交流スイッチとを備え、前記直流電源の電位が最も高い第1直流端子と中間電位となる第2直流端子との間には前記第1アーム対を、前記第2直流端子と電位が最も低い第3直流端子との間には前記第2アーム対を、前記第1アーム対の中点端子と前記第2アーム対の中点端子との間には各々第1のリアクトル及び第2のリアクトルを介して前記第3アーム対を、この第3アーム対と並列に2つのコンデンサを直列接続した直列コンデンサ回路を、この直列コンデンサ回路の中間接続点と前記第3アーム対の中間端子との間に前記交流スイッチを、第3アーム対の中間端子にフィルタコンデンサを、各々接続すると共に、前記第3アーム対の中間端子を交流出力端子とする回路構成で、
前記第1及び第2のリアクトルは前記直流電源から前記第1アーム対、前記直列コンデンサ回路及び前記第2アーム対を介して流れる直列コンデンサ回路への突入電流成分を抑制する機能と、前記フィルタコンデンサと前記5レベル変換回路出力の高調波を低減する交流フィルタを形成する機能とを兼ね備えたことを特徴とする5レベル変換回路。
【請求項2】
交流電源から、2つに分割された3つの端子を備え、ゼロを含む互いに異なる3つの電圧レベルを持つ直流電源を作り出す5レベル変換回路において、
ダイオードアームを2つ直列接続して構成される第1及び第2のアーム対と、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチアームを2つ直列接続して構成される第3のアーム対と、半導体デバイスを組み合わせて構成される交流スイッチとを備え、前記直流電源の電位が最も高い第1直流端子と中間電位となる第2直流端子との間には前記第1アーム対を、前記第2直流端子と電位が最も低い第3直流端子との間には前記第2アーム対を、前記第1アーム対の中点端子と前記第2アーム対の中点端子との間には各々第1のリアクトル及び第2のリアクトルを介して前記第3アーム対を、この第3アーム対と並列に2つのコンデンサを直列接続した直列コンデンサ回路を、この直列コンデンサ回路の中間接続点と前記第3アーム対の中間端子との間に前記交流スイッチを、前記第3アーム対の中間端子に交流電源を、各々接続し、前記第3アーム対と前記交流スイッチをオンオフ制御することにより、前記交流電源から直流を得る高力率整流回路として動作することを特徴とする5レベル変換回路。
【請求項3】
交流電源から、2つに分割された3つの端子を備え、ゼロを含む互いに異なる3つの電圧レベルを持つ直流電源を作り出す5レベル変換回路において、
ダイオードアームとダイオードを逆並列接続した半導体スイッチアームとをこの順序で直列接続した第1のアーム対と、ダイオードを逆並列接続した半導体スイッチアームとダイオードアームとをこの順序で直列接続した第2のアーム対と、ダイオードアームを2つ直列接続した第3のアーム対と、半導体デバイスを組み合わせて構成される交流スイッチとを備え、前記直流電源の電位が最も高い第1直流端子と中間電位となる第2直流端子との間には前記第1アーム対を、前記第2直流端子と電位が最も低い第3直流端子との間には前記第2アーム対を、前記第1アーム対の中点端子と前記第2アーム対の中点端子との間には各々第1のリアクトル及び第2のリアクトルを介して前記第3アーム対を、この第3アーム対と並列に2つのコンデンサを直列接続した直列コンデンサ回路を、この直列コンデンサ回路の中間接続点と前記第3アーム対の中間端子との間に前記交流スイッチを、前記第3アーム対の中間端子に交流電源を、各々接続し、前記第1及び第2アーム対の半導体スイッチと前記交流スイッチをオンオフ制御することにより、前記交流電源から直流を得る高力率整流回路として動作することを特徴とする5レベル変換回路。
【請求項4】
前記交流スイッチを、半導体デバイスからなるアームを逆直列に接続して構成することを特徴とする請求項1〜3に記載の5レベル変換回路。
【請求項5】
前記交流スイッチを、逆耐圧のある半導体デバイスを逆並列接続して構成することを特徴とする請求項1〜3に記載の5レベル変換回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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