説明

6−アミノ−4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリルの合成方法

本発明は、6−アミノ−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリルの調製方法であって、本明細書にて開示される工程および生成物を含んでなる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
3−シアノ−4−キノロン類または3−カルボアルキルオキシキノロン類を調製するために最も頻繁に利用されている2つの合成方法は、N−(2−カルボキシビニル)−アニリン誘導体の分子内フリーデル−クラフツ反応および環状電子閉環反応である。フリーデル−クラフツ条件は、電子が豊富なアニリンについては十分に、非置換のアニリンについては中程度に、そして電子が不十分なアニリンについては不完全に作用するか全く作用せず、そして、特に電子が不十分なアニリンを利用する3−シアノ−4−キノロン類の大規模な調製のためには有用でない。アニリンの電子吸引基は、優勢ではないが、副反応が所望の分子内縮合と競合する地点まで、芳香環の求核性を減じる。
【0002】
N−(2−カルボキシビニル)−アニリン誘導体の環状電子閉環反応のための温度条件は、典型的に、240℃を超える温度を要する。米国特許第6,002,008号において、3−シアノ−4−キノロン類の合成は、ジフェニルエーテル中、260℃に加熱することによる、N−(2−カルボキシビニル)アニリン誘導体の環状電子閉環反応により達成される。最終産物および/または出発物質いずれかの熱分解は、高温度の反応条件の結果として、最終産物の純度を損なう。高温度の反応を安全に大規模で行うために必要な設備は高価であり、そして典型的な実験室または工場環境において有用ではない。典型的に、反応は高希釈で行われ、結果として、低い処理量に起因して、大規模な方法としては効率が悪い。
【0003】
環状電子閉環反応による3−シアノ−4−キノロン類の製造は、上記した全ての問題を有する。例えば、環化のために必要な最低温度が256℃であるのに、7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−ニトロキノリン−3−カルボニトリルは240℃で分解することが知られている。
【0004】
癌治療において有用である上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤に用いられる6−アミノ−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリルを含む中間化合物の熱分解の問題を克服する方法が必要とされている。
【0005】
以下の、実験に基づく詳細な記載は、本発明の理解を助けるために示されるものであって、添付の特許請求の範囲にて定められる本発明を決して限定しないことが意図され、そのように解釈されるはずである。
(背景技術)
【0006】
(発明の概略)
本発明は、6−アミノ−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリルの製造に関連し、これは、
(a)2−アミノ−5−ニトロフェノールをアシル化剤でアシル化して、2−アセトアミド−5−ニトロフェノールを得;
(b)工程(a)の2−アセトアミド−5−ニトロフェノールを、塩基の存在下、アルキル化剤でアルキル化し、4−アセトアミド−3−エトキシニトロベンゼンを得;
(c)工程(b)の4−アセトアミド−3−エトキシニトロベンゼンを反応させて、4−アセトアミド−3−エトキシ−アニリンを得;
(d)工程(c)の4−アセトアミド−3−エトキシ−アニリンを(エトキシメチレン)シアノアセタートと共に縮合して、3−(4−アセトアミド−3−エトキシアニリン)−2−シアノプロペン酸エチルエステルを得;
(e)工程(d)の3−(4−アセトアミド−3−エトキシアニリン)−2−シアノプロペン酸エチルエステルを環化して、3−シアノ−7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−N−アセチルキノリンを得;
(f)工程(e)の3−シアノ−7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−N−アセチルキノリンを塩素置換試薬と反応させて、4−クロロ−3−シアノ−7−エトキシ−6−N−アセチルキノリンを得;次いで
(g)工程(f)の4−クロロ−3−シアノ−7−エトキシ−6−N−アセチルキノリンを酸で加水分解して、6−アミノ−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリルを得;
(h)所望により、6−アミノ−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリルをその医薬上許容される塩形態に変換する:
ことを含んでなる。
【0007】
本発明の化合物が塩基性部分を含む場合には、医薬上許容される塩は、有機および無機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、洒石酸、琥珀酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、フタル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸ならびに同様に知られている許容される酸から形成され得る。本発明の化合物が酸性部分を含む場合には、塩は、有機および無機塩基、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム、リチウムまたはカリウム)、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、1−6個の炭素原子をもつアルキルアンモニウム塩、または各アルキル基に1−6個の炭素原子をもつジアルキルアンモニウム塩、および各アルキル基に1−6個の炭素原子をもつトリアルキルアンモニウム塩から形成されてもよい。
【0008】
本発明に従って、以下の化合物および2−アセトアミド−5−ニトロフェノールの合成方法が提供される;4−アセトアミド−3−エトキシニトロベンゼン、3−(4−アセトアミド−3−エトキシアニリン)−2−シアノプロペン酸エチルエステル、4−アセトアミド−3−エトキシ−アニリン、3−シアノ−7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−N−アセチルキノリン、4−クロロ−3−シアノ−7−エトキシ−6−N−アセチルキノリンおよび6−アミノ−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリル。
【0009】
(発明の詳細な記載)
本発明の好ましい方法はスキームIにて示される:
【化1】

【0010】
2−アミノ−5−ニトロフェノール 1のアセチル化は、アシル化剤を60℃で、2−アミノ−5−ニトロフェノールおよび酢酸の攪拌懸濁液へ加えることにより行われ、2−アセトアミド−5−ニトロフェノール 2を生じる。
【0011】
2−アセトアミド−5−ニトロフェノール 2のアルキル化は、アルキル化試薬を加えることにより行われ、4−アセトアミド−3−エトキシニトロベンゼン 3を生じる。
【0012】
テトラヒドロフラン中の4−アセトアミド−3−エトキシニトロベンゼン 3(10部)は、水素添加条件下(10% Pd/C 湿式、50psi、2時間)、4−アセトアミド−3−エトキシ−アニリン 4に還元される。濃縮物は、トルエンで希釈され、そして市販のエチル(エトキシメチレン)シアノアセタートと、還流で16時間反応させられることにより、縮合される。反応が完了した後、混合物を冷却する。沈殿した生成物を濾過により収集し、洗浄して乾燥し、3−(4−アセトアミド−3−エトキシアニリン)−2−シアノプロペン酸アルキルエステル 5を得る。
【0013】
3−(4−アセトアミド−3−エトキシアニリン)−2−シアノプロペン酸エチルエステル 5は、溶媒中、約230−258℃の温度で(好ましい実施態様において、温度は250℃であった)環化され、3−シアノ−7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−N−アセチルキノリン 6を得る。
【0014】
3−シアノ−7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−N−アセチルキノリン 6を、塩素置換試薬と反応させて、4−クロロ−3−シアノ−7−エトキシ−6−N−アセチルキノリン 7を得、次いで、所望により酸の存在下にて、3−クロロ−4−フルオロアニリンと共に縮合され、N−[4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−3−シアノ−7−エトキシ−キノリン−6−イル]−アセトアミド 8を得る。
【0015】
N−[4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−3−シアノ−7−エトキシ−キノリン−6−イル]−アセトアミド 8は、酸で加水分解され、6−アミノ−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリル 9を得る。
【0016】
(実施例)
実施例1
2−アセトアミド−5−ニトロフェノール
無水酢酸(398g、3.90mol)を2−アミノ−5−ニトロフェノール(400g、2.60mol)および酢酸(1.60L)の攪拌懸濁液へ62.5℃で加えた。反応混合物を62.5℃で1時間攪拌し、次いで室温に冷却した。水(2.00L)を20分にわたり攪拌反応混合物へ加えた。1時間攪拌した後、固体を減圧濾過により収集し、水およびヘプタンで洗浄した。生成物を60℃で真空乾燥し、486.7g(96%、HPLCにより99.5%)のN−(2−ヒドロキシ−4−ニトロ−フェニル)−アセトアミドを得た。H NMR(DMSO−d)δ(ppm)2.18(s,3H),7.70(m,2H),8.30(d,1H),9.45(s,1H),11.00(s,1H).
【0017】
実施例2
2−アセトアミド−5−ニトロフェノール
機械式スターラー、還流冷却器、窒素流入口、500mLの滴下漏斗、加熱マントルおよび温度コントローラーに取り付けられた熱電対装着の5Lの多口フラスコに、400gの2−アミノ−5−ニトロフェノールを入れた。次いで、そのフラスコへ1.6Lの酢酸を入れた。得られた混合物を攪拌し、60±2℃に温め、懸濁液を得た。温度を62.5±2.5℃に維持しながら、398gの無水酢酸を1.5時間にわたって加え、1時間攪拌すると、2−アセトアミド−5−ニトロフェノールに対して、1%未満の2−アミノ−5−ニトロフェノールが存在した。必要に応じて、37mLの酢酸を加えて、2−アミノ−5−ニトロフェノールを還元する。反応混合物を20±5℃に冷却し、2.00Lの水を20分にわたり加えて、懸濁液を1時間攪拌した。減圧濾過を用いて、2−アセトアミド−5−ニトロフェノールを含む懸濁液を収集し、水、次いでヘプタンで洗浄し、真空乾燥した。収量486.7g(96%)、強度101.2%、融点>250℃、H NMR(DMSO d)δ1.42(t,3H),2.20(s,3H),4.25(q,2H),7.78(d,1H),7.78(dd,1H),8.36(d,1H),9.42(s,1H).
【0018】
実施例3
4−アセトアミド−3−エトキシニトロベンゼン
還流冷却器、窒素流入口、熱電対、滴下漏斗および機械式スターラー装着の12Lの四つ口フラスコへ、400gの2−アセトアミド−5−ニトロフェノールを入れた。そのフラスコへ790gの炭酸カリウムおよび2.0Lのジメチルホルムアミド(DMF)を入れた。混合物を攪拌し、60±2.5℃に温めた。294gの臭化エチルまたはヨウ化エチルを、内部温度を60℃に維持しながら、10分ないし1時間にわたり加えた。反応混合物を少なくとも1時間、または混合物が黄色になり、2−アセトアミド−5−ニトロフェノールの濃度が1%未満になるまで攪拌し、必要に応じて、さらなる臭化エチルまたはヨウ化エチルまたは塩化エチルを加えて、存在する2−アセトアミド−5−ニトロフェノールの濃度を減じた。混合物を20±5℃に冷却した。4Lの水を、内部温度を25±5℃に維持しながら加えた。懸濁液を最低30分間攪拌し、減圧濾過により収集した。生成物を洗浄し、pHを8未満のpHについてモニターした。pHが8より大きい場合は、pHが8未満になるまで、生成物を1.0L部分の温水で洗浄した。得られた生成物をヘプタンで洗浄し、真空乾燥する。収率98%、強度98.6%、融点164−165℃.
【0019】
実施例4
3−(4−アセトアミド−3−エトキシアニリン)−2−シアノプロペン酸エチルエステル
2ガロンのParr #2 hydrogenatorを窒素でパージし、10%のパラジウム炭素および4−アセトアミド−3−エトキシニトロベンゼンを入れた。閉じたリアクターを窒素でさらに3回パージし、次いでテトラヒドロフラン(THF)を加圧器(pressure bomb)から加えた。リアクターを窒素でさらに3回、および水素で3回パージし、そして、反応混合物に、50psi、28−30℃で、3時間、摂取メーター(uptake meter)を用いて水素添加した。完了後、反応混合物を濾過し、THFでリンスした。機械式スターラー、温度計、減圧蒸留用の蒸留器ヘッド(still head)、冷却器およびレシーバー装着の6Lの多口フラスコへ、THFリンスを用いて、濾液を入れた。溶液を濃縮し、濾過し、トルエンで洗浄した。濾液をトルエンおよびエチル(エトキシメチレン)シアノアセタートと共に攪拌し、90℃で、攪拌しながら、16時間、加熱還流した。生成物を濾過し、トルエンで洗浄し、真空乾燥して、3−(4−アセトアミド−3−エトキシアニリン)−2−シアノプロペン酸エチルエステルを得た。収量534.0g、90.3%、H NMR(DMSO−d)δ1.25(m,6H),1.38(t,6H),2.10(s,3H),3.35(s,3H),4.05−4.30(m,8H),6.95(t,2H),7.10(s,1H),7.25(s,1H),7.85(d,2H),8.30(d,2H),8.50(d,2H),9.00(s,2H),10.70(d,2H).
【0020】
実施例5
3−シアノ−7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−N−アセチルキノリン
還流冷却器、窒素流入口、2つの独立した温度コントローラーに取り付けられた2つの熱電対および機械式スターラー装着の22Lの4つ口フラスコへ、210gの3−(4−アセトアミド−3−エトキシアニリン)−2−シアノプロペン酸エチルエステルを入れた。そのフラスコへ12.0LのDowtherm Aを入れた。反応物の上に、窒素流を導入し、冷却器を介して排出する。温度を維持し、かつ高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により反応をモニターしながら、混合物を攪拌し、250±5℃に温め、49%(相対面積)より多い3−シアノ−7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−N−アセチルキノリンを得た。反応混合物を室温に冷却した。固体を濾過により収集し、トルエンで洗浄した。水冷式冷却器、オーバーヘッド攪拌装置およびNブランケット装着の2Lの4つ口フラスコ中で、固体およびTHFを収集した。混合物を攪拌して、加熱還流して、最低30分間維持した。得られた混合物を室温に冷却し、濾過により収集し、THFで洗浄し、真空乾燥して、3−シアノ−7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−N−アセチルキノリンを得た。収率42%、強度95.2%、融点>250℃、H NMR(DMSO−d)δ1.42(t,3H),2.15(s,3H),4.21(q,2H),7.08(s,1H),8.60(s,1H),9.17(s,1H),12.50(s,1H)
【0021】
実施例6
4−クロロ−3−シアノ−7−エトキシ−6−N−アセチルキノリン
水冷式冷却器、温度コントローラーに取り付けられたサーマル・プローブ、加熱マントル、窒素ブランケットおよびオーバーヘッドスターラー装着の2Lの4つ口フラスコへ、80gの3−シアノ−7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−N−アセチルキノリンを入れた。そのフラスコへ6Lのジエチレングリコールジメチルエーテルまたはジオキサンを入れ、攪拌した。そのフラスコへ96.0mLのオキシ塩化リンを入れ、100±2℃に温めて、45分間維持した。HPLCを用いて、反応混合物中に残存する3−シアノ−7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−N−アセチルキノリンが1%未満(相対面積)であることを確かめた。混合物を80±5℃に冷却し、25gのセライトを加える。反応混合物を濾過し、そのフラスコおよびセライトを3×100mLおよび1×50mLのジエチレングリコールジメチルエーテルで洗浄した。
【0022】
濾液の容量を、減圧を用いて減じた。温度を50℃未満に維持しながら、濃縮した濾液を水中の70gのKCOの攪拌水溶液へ加えた。固体を濾過により収集し、温水およびトルエンで洗浄し、真空乾燥して、4−クロロ−3−シアノ−7−エトキシ−6−N−アセチルキノリンを得た。収率65%、強度82%、融点250℃、H NMR(DMSO−d±CDCl)δ1.45(t,3H),2.20(s,3H),4.30(q,2H),7.10(m,1H),7.15−7.40(m,3H),8.50(s,1H),8.85(s,1H),9.20(s,1H),9.60(s,1H)
【0023】
実施例7
N−[−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−3−シアノ−7−エトキシ−キノリン−6−イル]−アセトアミド
N−(4−クロロ−3−シアノ−7−エトキシ−6N−アセチルキノリン(274.5g、0.947mol)、3−クロロ−4−フルオロアニリン(180g、1.24mol)、メタンスルホン酸(5.5g、0.057mol)および2−プロパノール(6.7L)の攪拌混合物を、6.5時間加熱還流した(84℃)。室温で一晩攪拌した後、混合物を80℃に温めた。濃塩酸(38%水性HClの655mL)を含む水(3.2L)を加えた。反応物を5時間還流しておいた。反応混合物を1時間、0℃−10℃に冷却した。黄色固体の生成物を減圧濾過により収集し、20%の2−プロパノール/水(700mL)および水(2×700mL)で洗浄した。生成物を60℃で真空乾燥し、344.8g(91%、HPLCにより99%)の6−アミノ−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリルを塩酸塩として得た。H NMR(DMSO−d±DO)δ1.42(t,3H),4.25(q,2H),7.05(m,1H),7.1(s,1H),7.35−7.50(m,3H),7.65(dd,1H),8.65(s,1H).
【0024】
実施例8
6−アミノ−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリル
水性炭酸カリウム(10%、0.725molの1.0L)を、30分ないし45分間にわたり、65℃に維持した、4−(3−クロロ−4−フルオロアニリノ)−3−シアノ−7−エトキシ−6−アミノキノリン(HCl塩、391g、1.00mol)、メタノール(3.90L)および水(0.90L)の攪拌懸濁液へ加えた。次いで、水(1.0L)を15分間にわたり加えた。反応混合物を室温に冷却しておき、一晩攪拌した。反応混合物を30分間、0℃−5℃に冷却した。固体の生成物を減圧濾過により収集した。固体を水(3×100mL、50℃−55℃)で洗浄した。生成物を60℃で真空乾燥し、344.7(97%、HPLCにより99.2%)の6−アミノ−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリルを得た。H NMR(DMSO−d)δ1.42(t,3H),4.25(q,2H),5.55(broads,2H),7.05(m,1H),7.2−7.3(m,3H),7.38(t,1H),8.4(s,1H),9.22(broads,1H);13C NMR(DMSO−d)δ15.09,64.72,91.78,101.46,108.43,117.14,117.57,117.85,118.16,120.33,121.52,122.72,140.05,145.28,148.02,152.31,155.55.
【0025】
本発明の目的のために、アシル化剤は、例えば、無水酢酸、ハロゲン化物、塩化アルキルおよびアセチルである。
【0026】
本発明の目的のために、アルキル化剤は、N,N−ジメチルホルムアミドもしくはDMSO、ジメチルアセトアミド、アセトンまたは任意のケトンなどの不活性溶媒中のヨウ化エチル、臭化エチルまたは塩化エチルを含む。
【0027】
本発明の目的のために、塩基は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アセタート、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、炭酸ナトリウム、無機炭酸塩および炭酸カリウムを含む。
【0028】
本発明の目的のために、還元剤は、塩化鉄およびアンモニウム、水性媒体中の亜ジチオン酸ナトリウム、ならびに、炭素または別の不活性支持体に担持されたパラジウムおよび白金などの金属での金属触媒により補助される水素、を含む。
【0029】
本発明の目的のために、溶媒は、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、ジフェニルエーテルまたはテトラヒドロフラン(THF)を含む。好ましい実施態様において、溶媒はビフェニルおよびジフェニルエーテルの混合物である。
【0030】
本発明の目的のために、塩素置換試薬は、ニートかまたはTHF、ジオキサン、塩化オキサリル、塩化チオニルまたは1,2−ジメトキシエタンなどの不活性溶媒中にあるオキシ塩化リンおよび五塩化リンを含む。
【0031】
本発明の目的のために、酸は、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、一般的なアルカンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、塩酸などの鉱酸、または一般的なアリールスルホン酸を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−(4−アセトアミド−3−エトキシアニリン)−2−シアノプロペン酸エチルエステルからなる化合物。
【請求項2】
3−シアノ−7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−N−アセチルキノリンからなる化合物。
【請求項3】
4−クロロ−3−シアノ−7−エトキシ−6−N−アセチルキノリンからなる化合物。
【請求項4】
N−[4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−3−シアノ−7−エトキシ−キノリン−6−イル]−アセトアミドからなる化合物。
【請求項5】
6−アミノ−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリルからなる化合物。
【請求項6】
4−アセトアミド−3−エトキシ−アニリンからなる化合物。
【請求項7】
2−アセトアミド−5−ニトロフェノールからなる化合物。
【請求項8】
2−アセトアミド−3−エトキシニトロベンゼンからなる化合物。
【請求項9】
6−アミノ−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリルの製造方法であって、
(a)2−アミノ−5−ニトロフェノールをアシル化剤でアシル化して、2−アセトアミド−5−ニトロフェノールを得;
(b)工程(a)の2−アセトアミド−5−ニトロフェノールを、塩基の存在下、ハロゲン化アルキルでアルキル化して、4−アセトアミド−3−エトキシニトロベンゼンを得;
(c)工程(b)の4−アセトアミド−3−エトキシニトロベンゼンを還元して、4−アセトアミド−3−エトキシ−アニリンを得;
(d)工程(c)の4−アセトアミド−3−エトキシ−アニリンを、エチル(エトキシメチレン)シアノアセタートと共に縮合して、3−(4−アセトアミド−3−エトキシアニリン)−2−シアノプロペン酸エチルエステルを得;
(e)工程(d)の3−(4−アセトアミド−3−エトキシアニリン)−2−シアノプロペン酸エチルエステルを環化して、3−シアノ−7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−N−アセチルキノリンを得;
(f)工程(e)の3−シアノ−7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−N−アセチルキノリンを塩素置換試薬で還元して、4−クロロ−3−シアノ−7−エトキシ−3−キノリンカルボニトリルを得;次いで
(g)工程(f)の4−クロロ−3−シアノ−7−エトキシ−3−キノリンカルボニトリルを酸で加水分解して、6−アミノ−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリルまたはその塩を得る:
ことを含んでなる、方法。
【請求項10】
工程(a)のアシル化剤が無水酢酸である、請求項9の方法。
【請求項11】
工程(b)のアルキル化剤が臭化エチルである、請求項9または10の方法。
【請求項12】
工程(e)の溶媒が、約230−258℃の温度範囲にある、ビフェニルおよびジフェニルエーテルの混合物である、請求項9ないし11いずれか1項の方法。
【請求項13】
温度が約250℃である、請求項12の方法。
【請求項14】
工程(f)の塩素置換試薬がオキシ塩化リンである、請求項9ないし13いずれか1項の方法。
【請求項15】
6−アミノ−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリルをその医薬上許容される塩形態へ変換することをさらに含んでなる、請求項9ないし14いずれか1項の方法。
【請求項16】
3−(4−アセトアミド−3−エトキシアニリン)−2−シアノプロペン酸エチルエステルを加熱することによる、3−シアノ−7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−N−アセチルキノリンの調製方法。
【請求項17】
3−シアノ−7−エトキシ−4−ヒドロキシ−6−N−アセチルキノリンを、6−アミノ−4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニルアミノ)−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリルまたはその医薬上許容される塩形態へ変換することをさらに含んでなる、請求項16の方法。

【公表番号】特表2007−505910(P2007−505910A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527002(P2006−527002)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/030219
【国際公開番号】WO2005/028421
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】