説明

8−[{1−(3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル)−エトキシ}−メチル]−8−フェニル−1,7−ジアザ−スピロ[4.5]デカン−2−オン化合物の合成のためのプロセスおよび中間体

本出願は、例えば、医薬品中のNK−1阻害化合物として使用することができる8−[{1−(3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル)−エトキシ}−メチル(nnethyl)]−8−フェニル−1,7−ジアザ−スピロ[4.5]デカン−2−オン化合物を合成するための新規なプロセス、前記プロセスにおいて有用な中間体、および前記中間体を調製するためのプロセスを開示しており、また、N−複素環カルベン金属錯体から金属を除去するためのプロセスも開示している。IM=102123。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本出願は、8−[{1−(3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル)−エトキシ}−メチル]−8−フェニル−1,7−ジアザ−スピロ[4.5]デカン−2−オン化合物およびその合成で有用な中間体の調製において有用なプロセス、ならびにそれによって調製される中間体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本出願の本節または任意の節における出版物、特許、または特許出願の特定はどれも、そうした出版物が本発明に対する先行技術であることを容認するものではない。
【0003】
ジアザスピロデカン−2−オン、例えば、8−[{1−(3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル)−エトキシ}−メチル]−8−フェニル−1,7−ジアザ−スピロ[4.5]デカン−2−オン、例えば、(5S,8S)−8−[{(1R)−1−(3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル)−エトキシ}−メチル]−8−フェニル−1,7−ジアザスピロ[4.5]デカン−2−オン(式Iの化合物)の調製法は、その開示が参照により本明細書に全体として組み込まれている2006年5月23日出願の特許文献1に記載されている。
【0004】
【化1】

特許文献1に記載されている該化合物は、タキキニン化合物として分類され、ニューロペプチドニューロキニン−1受容体の拮抗薬(本明細書では、「NK−1」受容体拮抗薬)である。その他のNK受容体拮抗薬およびそれらの合成が記載されており、例えば、それぞれが参照により本明細書にそれら全体として組み込まれている、非特許文献1;非特許文献2;および非特許文献3ならびに特許文献2に記載されているものがある。式Iの化合物を調製するためのプロセスは、また、2008年3月20日出願の特許文献3にも開示されている。
【0005】
「NK−1」受容体拮抗薬は、例えば、疼痛、炎症、片頭痛、嘔吐および痛覚の治療に有用な治療剤であることが明らかにされている。前述の特許文献1に開示されている多くの化合物の中にはいくつかの新規なジアザスピロデカン−2−オンがあり、何らかの嘔吐の原因と関係する悪心および嘔吐、例えば、麻酔または化学療法治療からの回復と関係する嘔吐(化学療法に誘発される悪心および嘔吐、本明細書ではCINE)の治療に有用である式Iの化合物が含まれる。
【0006】
特許文献1に記載されている式Iの化合物を調製するための合成方法は、8−[{1−(3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル)−エトキシ}−メチル]−8−フェニル−1,7−ジアザ−スピロ[4.5]デカン−2−オン化合物の供給におけるスキームAに一般に従う。
【0007】
【化2】

【0008】
【化3】

特許文献1に記載されている式Iの化合物を調製するためのプロセスは、市販の出発物質から18の個別ステップにおいて行われ、特許文献1に記載されているそのプロセスの多くのステップにおいて、中間体化合物は、その後のステップで使用する前に、単離または単離して精製しなければならず、多くの場合その目的のためにはカラムクロマトグラフィーを利用する。一般に、特許文献1に記載されている合成スキームは、不要な異性体の生成で、望まれるより大きい割合の出発化合物および中間体化合物を消費する。
【0009】
特許文献3に記載されている式Iの化合物を調製するためのプロセスは、一般に、スキームBに従う。
【0010】
【化4】

スキームBに記載されているプロセスは、スキームAと比較して含まれているステップの数が約2分の1であり、スキームAより大きい収率で該化合物を生成するが、両方のスキームとも、ジアステレオ選択性が不十分であることが欠点である。
【0011】
従って、必要なのは、改善されたジアステレオ選択性を有する、より収束性でかつ効率的なプロセスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7,049,320号明細書
【特許文献2】国際公開第05/100358号
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/003640号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Wuら、Tetrahedron(2000年)56巻、3043〜3051頁
【非特許文献2】Romboutsら、Tetrahedron Letters(2001年)42巻、7397〜7399頁
【非特許文献3】Rogiersら、Tetrahedron(2001年)57巻、8971〜8981頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
必要なのは、減少されたステップの数を有し、ジアステレオ選択性を増し、工業規模の調製に適したバッチサイズまでの実用的なスケールアップを可能にする反応スキームを提供する8−[{1−(3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル)−エトキシ}−メチル]−8−フェニル−1,7−ジアザ−スピロ[4.5]デカン−2−オン化合物を調製するための合成スキームである。
【0015】
これらおよびその他の目的は、本発明により有利に提供され、それは、1つの態様において、スキームIに図示されているように、(5S,8S)−8−[{1−(R)−(3,5−ビス−(トリフルオロメチル)フェニル)−エトキシ}−メチル]−8−フェニル−1,7−ジアザ−スピロ[4.5]デカン−2−オン塩酸塩一水和物、すなわち式VIIIの化合物、を製造するプロセスである。
【0016】
【化5】

ここで、該プロセスは、
a)式VIaの塩化合物、[5(R)−[[[1(S)−[[1(R)−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル]エトキシ]−メチル]−1−フェニル−2−プロペニル]アミノ]メチル]−5−エテニル−2−ピロリジノン][塩2](ただし、「塩2」は、式VIaの化合物中の塩基性官能基、例えば、窒素の電子対に結合し、それ故アンモニウムカチオンを形成し、そこで配位しているアニオン部分、例えば、酸の共役塩基と会合し、閉環メタセシス触媒を用いて式VIaのジエン−アミン塩化合物を環化している少なくとも1つのプロトンを表している)を提供するステップ、
b)ステップ(a)からの環化生成物を塩に変換して式VIIの化合物、[(5R,8S)−8−[1−(R)−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−エトキシメチル]−8−フェニル−1,7−ジアザスピロ[4.5]デカ−9−エン−2−オン]塩3(ただし、「塩3」は、式VIIの化合物中の塩基性官能基に結合し、そこで配位しているアニオン部分と会合している少なくとも1つのプロトンを表している)を得るステップ、
c)ステップ(b)で提供された式VIIの塩化合物を、例えば、式M−OHであって「M」がアルカリ金属またはアルカリ土類金属である水酸化物塩基により処理して式VIIbの対応する遊離塩基化合物を提供し、この式VIIbの遊離塩基化合物を還元し、その還元生成物をHClにより処理して、式VIIIの1,7−ジアザスピロ[4.5]デカ−2−オン塩酸塩水和物を得るステップ、および
d)場合によって式VIIIのHCl塩を再結晶させ、それによって式Iaの化合物を得るステップ
を含む。
【0017】
スキームIのいくつかの実施形態において、好ましくは、式VIIの塩化合物についてのステップ「c」における還元は、遊離塩基形態をそこから(thereform)遊離させることなく行い、それによって生成した還元された塩生成物を遊離塩基還元生成物の塩を沈殿させないで回収する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、好ましくはスキームIのステップ(a)は、採用される閉環メタセシス触媒の使用量(存在する触媒の量)を減らすために十分な量の添加酸の存在下で行う。ステップ(a)において添加酸を用いるスキームIのいくつかの実施形態においては、好ましくは、反応において環化される式VIのジエン化合物のそれとほぼ同等以下であるpKaを有する酸、例えば、6.5以下のpKaを有する酸を使用する。ステップ(a)において添加酸を用いるスキームIのいくつかの実施形態において、その酸については、(i)鉱酸、例えば、HCl、HBr、または硫酸、(ii)有機一塩基酸または二塩基酸、例えば、酢酸、プロパン(proponoic)酸、マレイン酸、フマル酸、トリフルオロ酢酸、または酒石(tartatic)酸、あるいは(iii)スルホン酸、例えば、アルキルスルホン酸または置換アルキルスルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホン酸一水和物、またはトリフルオロメタンスルホン酸、あるいは芳香族アリールスルホン酸、例えば、p−トルエンスルホン酸または置換アリールスルホン酸、であることが好ましい。ステップ2の過剰の酸を利用するいくつかの実施形態において、その酸は、好ましくはアリールスルホン酸、より好ましくはp−トリルスルホン酸である。ステップ2の過剰の酸を利用するいくつかの実施形態においては、反応混合物中に初めに存在する基質の量に対して約0.1乃至約2.0当量の量の酸を添加することが好ましい。
【0019】
スキームIのいくつかの実施形態において、ステップ(a)における環化反応は、好ましくは、スキームIaに図示されているプロセスによって行う。
【0020】
【化6】

式中、
構造XXの化合物の点線は、任意の二重結合を表し、「塩2」は、上で定義したものと同じであり、
Arは、アリール部分、例えば、フェニルまたはメシチル(2,4,6−トリメチルフェニル)であり、
Lは、P(R2a(ただし、R2aは、独立して選択され、フェニル、アリール、アルコキシルフェニルまたはアルキルである)であり、
Mは、ルテニウム、パラジウム、またはイリジウムである金属であり、
Xは、ハロゲンであり、
Rは、H、アリール、またはヘテロアリールであり、
HXは、好ましくは、「X」が、ハロゲン、例えば、クロリド、ブロミド、またはヨウダイド;サルフェート;サルファイト;またはスルホネート部分、例えば、メシレート、トリフルオロメチルスルホネート、またはアリールスルホネート、例えば、トシレート、である酸種であり、
該プロセスは、
(i)式VIの第二級アミン塩を式HXの酸と接触させるステップ、
(ii)ステップ(i)からの混合物に閉環メタセシス触媒を、好ましくは、使用される式VIの化合物の量に対して準化学量論的である量で加えるステップ、および
(iii)その混合物を加熱して式VIの化合物を環化させるステップ
を含む。
【0021】
スキームIaのいくつかの実施形態において、その反応において使用される閉環メタセシス触媒は、式XXa、XXb、またはXXd:
【0022】
【化7】

の化合物から選択され、式中、金属(M)は、好ましくは、8個の「d」軌道電子を提供しているホルマール酸化状態の遷移金属(8族遷移金属、例えば、ルテニウム、パラジウムまたはイリジウム、あるいは6族遷移金属、例えば、モリブデン)であり、「L」は、かなりのπ逆供与能を有するσ結合した炭素配位子、例えば、式XXaおよびXXdの化合物中に示されているイミダゾール配位子であり、Lは、単座配位子、例えば、ホスフィン配位子、例えば(CyP)であるか、または図のように、Lは、場合によって、カルベン配位子(lligand)のR置換基に結合しており、場合によってRを介してカルベン配位子に結合しているときは、LとRとの間の半円の点線によって示されているように、Lは、二座配位子を形成し、Lは、キレート化部分、例えば、酸素部分、亜リン酸部分(phosphorous moiety)、または窒素部分、例えば、式XXdの触媒中に示されているアルコキシベンジリデン二座配位子、例えばイソプロポキシ(isoproxy)−ベンジリデン配位子中の酸素部分であり、Rは、アリール、ヘテロアリール、アルキル、または水素から独立して選択され、Rは、アルキルへテロアリールまたはアリール、例えば、フェニル部分であり、またはRが、Lに結合していないときは、Rは、水素であり得、(X)は、強酸の共役塩基であり、好ましくは、Xは、スルホネート部分、例えば、トシレートであるか、またはハロゲン部分、例えば、クロリドである。
【0023】
当然のことながら、上に示されているスキームIにおいて、式Iaの化合物は、(S,S,R)エナンチオマーではあるが、本発明のプロセスを使用し、適切な立体異性体構造の出発物質を用いて、式Iの化合物の異性体、すなわち、
【0024】
【化8】

の全てを調製することができる。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態において、スキームIで使用される式VIaの化合物は、好ましくは、スキームIaaのプロセスにより提供する。
【0026】
【化9】

ここで、該プロセスは、
a)式IIIのピラゾロ−5−オンを提供するステップ、
b)式IVの遊離塩基化合物、[(1S)−1−({(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}メチル)−1−フェニルプロプ−2−エニル)アミンを提供し、それをステップ(a)で提供した式IIIの化合物と反応させて、式Vのジエン−イミン、[((5R)−5−((Z)−{[(1S)−1−({(1R)−1−[3,5ビス(トリフルオロメチル)−フェニル]−エトキシ}メチル)−1−フェニルプロプ−2−エン−1イル]イミノ}メチル)−5−ビニルピロリジン−2−オン)]を生じさせるステップ、
c)ステップ(b)で調製した式Vのジエン−イミン化合物を還元して、対応するジエン−アミン化合物を得、それを対応する式VIの塩化合物、[5(R)−[[[1(S)−[[1(R)−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル]エトキシ]−メチル]−1−フェニル−2−プロペニル]アミノ]メチル]−5−エテニル−2−ピロリジノン][塩2](ただし、「塩2」は、式VIの化合物中の塩基性官能基、例えば、該化合物における窒素原子中の電子対に結合し、そこで配位しているアニオン部分と会合している少なくとも1つのプロトンを表す)に変換するステップ
を含む。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態において、スキームIaaのステップ(a)では、式IIIのピラゾロ−5−オン化合物を、式IIの化合物、(3R)−(1,1−ジメチルエチル)−7aR−エテニルテトラヒドロ−1(R/S)−ヒドロキシ−3H,5H−ピロロ[1,2−c]オキサゾール−5−オンを、適当な塩基、例えば、トリエチルアミンで処理することによって提供するのが好ましい。本発明のいくつかの実施形態において、スキームIaaのステップ(b)では、式IVの遊離塩基化合物を、式IVa
【0028】
【化10】

(式中、塩1は、塩基性官能基、例えば、式IVaの化合物中のアミン置換基に結合し、そこで配位しているアニオン部分と会合している少なくとも1つのプロトンを表す)
の対応する塩化合物を、水溶性塩基、例えば、水酸化ナトリウムで処理することによって提供するのが好ましい。式IVaの塩化合物を調製するための適当な酸は、例えば、有機酸、例えば、マレイン酸、コハク酸、またはリンゴ酸、および無機酸、例えば、HCl、HBr、およびHIである。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態において、好ましくは、ステップ2における閉環メタセシス触媒は、スキーム4(下記)に記載されている式XXの閉環メタセシス触媒である。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態において、好ましくは、式IVの中間体は、スキーム2のステップ2−3および他に示されているプロセスを用いて調製する。いくつかの実施形態において、好ましくは、式IVの化合物を調製するのに使用するための構造Xの中間体は、スキームIIのステップ2−1および2−2に示されているようにして提供する。
【0031】
【化11】

ここで、該プロセスは、
ステップ2−1:
PhCH(OCHで示される2−フェニルグリシン誘導体を環化して式IXのオキサゾリジノンを得るステップ(ただし、Cbzは、カルボキシベンジル−アミン保護基である)、
ステップ2−2:
式IXの該化合物を[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−エトキシ−ブロモメチルエーテルと組み合わせて式Xのラクトンを得るステップ、
ステップ2−3:
式Xの該ラクトンを還元して式XIのラクトールにするステップ、
ステップ2−4:
式XIの該ラクトールの環を開いて式XIIのアルデヒドを得るステップ、
ステップ2−5:
式XIIの該アルデヒドを式XIIIのアルケニルアミンに変換するステップ、および
ステップ2−6:
式XIIIの該アルケニルアミンを脱保護し、それによって得られた対応する遊離塩基を式IVの塩に変換するステップ
を含む。
【0032】
本発明のプロセスのいくつかの実施形態において、好ましくは、式IIの中間体は、スキーム3に示されているプロセスに従って調製する。
【0033】
【化12】

ここで、該プロセスは、
ステップ3−1:
ピログルタミン酸を、トリメチルアセトアルデヒドおよびメタンスルホン(methanesulfionic)酸により処理して式XIVの(3R,6S)−3−tert−ブチルジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−c][1,3]オキサゾール−1,5(6H)−ジオンを得るステップ、
ステップ3−2:
式XIVの該ピロロ[1,2−c][1,3]オキサゾール−1,5(6H)−ジオンをギ酸メチルと反応させて式XVのピロロ[1,2−c]オキサゾール−7a−カルバルデヒドを得るステップ、
ステップ3−3:
式XVの該カルバルデヒドを、式XVIの7a−ビニル−ジヒドロ−ピロロ[1,2−c][1,3]オキサゾール−1,5−ジオンに変換するステップ、および
ステップ3−4:
式XVIの該ジオンを還元して式IIの(3R)−1,1−ジメチル−7a(R)−エテニル−テトラヒドロ−1(R/S)−ヒドロキシ−3H,5H=ピロロ[1,2−c]オキサゾール−5−オンを得るステップ
を含む。
【0034】
本発明の別の態様は、スキーム1〜3において表されるプロセスで使用されまたは調製される次の新規な中間体に関する。
【0035】
【化13】

スキーム4は、閉環が完了した後で反応混合物からメタセシス触媒を除去するための化学プロセスを図示している。本発明のいくつかの実施形態において、好ましくは、環化反応で使用したメタセシス触媒と会合している金属の除去に対しては、スキーム1に示されている反応ステップ2の終わりにスキーム4に図示されている化学プロセスを採用する。それ故、スキーム4は、式XXa’のメタセシス触媒の除去を図示しており、好ましくは式XXa’の錯体は、N−複素環カルベン(carbine)金属錯体であるが、当然のことながら、該プロセスは、任意の金属メタセシス触媒を反応混合物から化学的に除去するために採用することができる。
【0036】
【化14−1】

式中、
点線は、任意の結合を表し、
Arは、フェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、または2,6−ジメチルフェニルであり、
Mは、好ましくは、8個の「d」軌道電子を提供しているホルマール酸化状態の遷移金属(8族遷移金属、例えば、ルテニウム、パラジウムまたはイリジウム)または6族遷移金属、例えば、モリブデン(molybedinum)であり、
は、ホスフィン配位子、例えば、「R」がフェニルアリール、またはアルキルであるP(R)、例えば、(Cy)Pであり、あるいは場合によって、Lは、LとRとの間の半円の点線によって示されているように、Rを介してカルベン置換基に結合して二座配位子を形成しており、その場合、Lは、キレート化部分、例えば、酸素部分、亜リン酸部分、または窒素部分、例えば、式XXd(本明細書中)の触媒中に示されているイソプロポキシ−ベンジリデン二座配位子中の酸素部分であり、
は、アリール、アルキル、または水素から独立して選択され、
は、H、OH、または=Oであり、
は、アリール、アルキルまたはフェニル部分であり、またはLが、Rに結合していない場合は、Hであり、
(X)は、強酸の共役塩基、例えば、ハロゲン、サルフェート、サルファイトまたはスルホネートアニオンであり、好ましくは、「X」は、スルホネートアニオン、例えば、トシレートであるか、またはハロゲン部分、例えば、クロリドまたはブロミドであり、
該プロセスは、
(i)還元試薬、好ましくは、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na)、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、亜硫酸水素ナトリウム(NaSOH)、次亜リン酸(ホスフィン酸、HPO)、ギ酸ナトリウム(NaOCHO)または亜リン酸ナトリウム塩(NaHPO)、または2つ以上の混合物である還元試薬の水溶液の混合物を、水非混和性の有機溶媒と式[XX]、[XXa]、[XXb]または[XXd]の少なくとも1つのN−複素環カルベン金属錯体とを含む溶液の存在下で加熱するステップ、および
(ii)加熱ステップ(i)の後で、(a)該金属錯体が不溶性の場合は濾過により、または(b)該金属錯体が溶解性の場合は該金属錯体を水層中に吸収させ、有機層と水層とを分離することによって、有機層から式MLの金属錯体を分離するステップ
を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、好ましくは、スキーム4のプロセスは、相間移動触媒、例えば、第四級アンモニウム塩、例えば、式[(Ra3N](式中、Ra3は、アルキル、例えば、n−ブチル−であり、Xは、ハライド、スルホネート、またはニトレートである)の第四級アンモニウム塩の存在下で行う。
【0038】
いくつかの実施形態において、好ましくは、還元試薬としては、(i)1つまたは複数の無機塩化合物、例えば、Na、NaSO、またはNaHPO、(ii)亜リン酸、例えば、HPO、(iii)1つまたは複数の金属ヒドリド化合物、例えば、水素化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、または水素化アルミニウムリチウム、(iv)水素と触媒、例えば、パラジウム炭素とで行われる還元、(v)有機還元試薬、例えば、アスコルビン酸またはシュウ酸、(vi)過酸化水素、あるいは(vii)1つまたは複数の金属還元試薬、例えば、銅、亜鉛、鉄またはマグネシウム、を使用する。スキーム4は、式XXaのメタセシス触媒と共に示されているが、当然のことながら、該プロセスは、どのメタセシス触媒の存在下で使用される場合も同様の結果および利点をもたらす。
【0039】
本発明のその他の態様および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0040】
式Iの化合物を調製するための従前のプロセスは、ピペリジニル部分の調製を含み、続いてスピロピロリジニル環を付加する反応を行うが、現下の特許請求されているプロセスは、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ]メチル]−1−フェニル−2−プロペニル]アミノ]メチル]−5−エテニル−2−ピロリジノンを環化する。従前の手順と比較して、本発明は、式Iの化合物を調製することに対して収束性でより手短であり、改善されたエナンチオマーおよびジアステレオマー選択性を提供し、より高い収率で該化合物を提供し、使用するのがより容易でかつより費用効率が高い。
【0041】
本明細書の一般的なスキーム中、実施例中、および明細書全体を通して使用される用語としては、以後それらが使用される時点で別なふうに定義される場合を除いて、以下の略語がそれらの意味と共に挙げられる。Me(メチル)、Bu(ブチル)、t−Bu(第三級ブチル)、Cbz−(カルボキシベンジル)、Et(エチル)、Ac(アセチル)、t−Bocまたはt−BOC(t−ブトキシカルボニル)、DMF(ジメチルホルムアミド)、THF(テトラヒドロフラン)、DIPEA(ジイソプロピルエチルアミン)、RT(室温、おおまかには25℃)、TFA(トリフルオロ酢酸)、TEA(トリエチルアミン)、NMP(1−メチル−2−ピロリジノン)、MTBEまたはTBME(tert−ブチルメチルエーテル)、Me(メチル)、構造置換基として使用されるときのMes(メシチル、すなわち、2,4,6−トリメチルフェニル−部分)、Ph(フェニル)、NaHMDS(ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilizane)ナトリウム)、DMI(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)、AcOH(酢酸)、LHMDS(リチウムビス(トリメチルシリル)アミド)、TMSCI(クロロトリメチルシランまたは塩化トリメチルシリル)、TFAA(無水トリフルオロ酢酸)、およびIPA(イソプロパノール)。
【0042】
本明細書で使用される以下の用語は、別なふうに示されていない限りは、以下の意味を有するものと理解される。
【0043】
アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族炭化水素を意味する。
【0044】
ハロゲンは、ハロゲン部分、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。
【0045】
PTC、相間移動触媒、は、反応混合物中での反応性部分または反応生成物の1つの相から別の相への移動を促進する薬剤である。
【0046】
構造上に現れ、官能基を結合位置でその構造に連結している波線
【0047】
【化14−2】

は、一般に、可能性のある異性体、例えば、(R)−および(S)−立体化学を含有する異性体の混合物またはいずれかを示す。例えば、
【0048】
【化15】

当技術分野では周知のように、結合の端末側の終端に描かれていない部分の特定の原子から伸びている結合は、別なふうに記載されていない限りはその結合を介してその原子に結合しているメチル基を示している。例えば、
【0049】
【化16】

しかし、本明細書の実施例においては時々、CH部分は、構造中にはっきりと含まれる。本明細書で用いられる場合、メチル基を表現することに対するどちらの慣習の使用も同等であることが意図されており、その慣習は、本明細書では、慣習的に理解されているようにいずれの表現についてもそれによって意味を変えることを意図することなく、便宜上互換的に使用されている。
【0050】
化合物についての用語「単離した」または「単離形の」とは、プロセスから単離した後の前記化合物の物理的状態を指す。化合物についての用語「精製した」または「精製した形の」とは、本明細書に記載されているかまたは熟練職人には周知の標準的な分析技術によって特性決定が可能である十分な純度の、精製プロセスまたは本明細書に記載されているかまたは熟練職人には周知のプロセスから得られた後の前記化合物の物理的状態を指す。
【0051】
本発明を表現している反応スキームにおいて、構造の周囲の大括弧は、その化合物がその段階で必ずしも精製または単離されていないが、次のステップで好ましくは直接使用されることを示している。また、一般的な反応スキームにおけるさまざまなステップは、所望の生成物を単離するための分離または精製手順を特定していないが、当業者であれば、周知の手順が使用されることを認識するであろう。
【0052】
スキーム1に記載されているプロセスに対する標準パラメーターについて以下で論じる。
【0053】
上記のスキームIに関して、いくつかの実施形態において、ステップ1は、次の反応スキームに従って行われるのが標準的である:
【0054】
【化17】

いくつかの実施形態において、式IIIの化合物は、ステップ1aを行うことによって提供するのが好ましく、その場合、式IIの化合物は、水と混和性である溶媒、例えば低級アルコール(すなわち、約1乃至約6個の炭素原子を有する)、例えばエタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノールまたはそれらの混合物中の塩基、例えば低級アルキルアミン、例えば第三級アミン、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、またはトリブチルアミンにより、約0℃乃至約80℃、好ましくは約10℃乃至約60℃、より好ましくは約20℃乃至約30℃の温度で、約3時間乃至約10時間にわたって処理することによって式IIIの化合物に変換する。
【0055】
ステップ1bにおいて、例えばステップ1aからの混合物としての式IIIの化合物は、式IVの遊離塩基の溶液に添加されて、その2つが反応するように加熱される。添加後その混合物は、加熱して還流させ、反応で発生した水を共沸蒸留によって除去してその反応を推進する。いくつかの実施形態において、式IVの遊離塩基は、式IVaの塩を、水溶性塩基、例えば低極性溶媒、例えばトルエンまたは非極性溶媒、例えばキシレン、またはその2つの混合物中に溶解したNaOHにより処理することによって式IVaの塩から調製する。
【0056】
いくつかの実施形態において、ステップ1cにおいては、好ましくは、ステップ1bの生成物を、水素化物源、例えば金属水素化物還元試薬、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム、または水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムにより、酸、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、メタンスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸およびそれらの混合物の存在下で、還元して式VIの遊離塩基を得る。いくつかの実施形態において、好ましくは、その反応は、トルエン、アセトニトリル、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、またはそれらの2つ以上の混合物中で行う。いくつかの実施形態において、好ましくは、その反応は、約0℃乃至約80℃、好ましくは、約10℃乃至約60℃、より好ましくは、約15℃乃至約25℃の温度で行う。いくつかの実施形態において、好ましくは、その反応は、約2時間乃至約10時間にわたって行う。式VIの遊離塩基を得た後、それは、酸試薬、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、HCl、HBr、または硫酸による処理によって式VIaの塩化合物に変換する(ステップ1c’)。いくつかの実施形態において、好ましくは、式VIaの塩化合物への該変換は、水混和性の溶媒、例えば、約1乃至約6個の炭素原子を有するアルキルアルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、またはブタノールおよびその異性体、あるいはそれらの2つ以上の混合物中で行い、その後該塩生成物を単離する。
【0057】
ステップ2において、該式VIaの塩化合物は、遊離塩基に変換し、それを次に、閉環メタセシス触媒を用いて環化し、その結果得られた生成物を再び塩に変換して単離する。
【0058】
閉環メタセシス触媒は、好ましくは、カルベン配位子を有する金属を含有するもの、例えば、式XXの触媒である:
【0059】
【化18】

式中、金属(M)は、好ましくは、8個の「d」軌道電子を提供しているホルマール酸化状態の遷移金属(8族遷移金属、例えば、ルテニウム、パラジウムまたはイリジウム)、あるいは6族遷移金属、例えば、モリブデンであり、(X)は、強酸の共役塩基であり、好ましくは、Xは、スルホネート部分、例えば、トシレートであるか、またはハロゲン部分、例えば、クロリドであり、(L)は、かなりのπ逆供与能を有するσ結合した炭素配位子、例えば、式XXaの触媒中に示されているように、イミダゾリジン配位子
【0060】
【化19】

(ただし、Arは、アリール部分、例えば、ベンジル、フェニルまたはメシチル(2,4,6−トリメチルフェニル)部分)であり、Lは、ホスフィン配位子、例えば(CyP)であるか、または図のように、Lは、LとRとの間の半円の点線によって示されているように、場合によって、Rに結合しており、Lが、Rを介してカルベン部分に結合しているときは、Lは、二座配位子を形成し、Lは、キレート化部分、例えば、酸素部分、亜リン酸部分、または窒素部分、例えば、式XXdの触媒中に示されているイソプロポキシ−ベンジリデン二座配位子中の酸素部分であり、Rは、アリール、アルキル、または水素から独立して選択され、Rは、アルキルまたはフェニル部分であるか、またはRが、Lに結合していないときは、Rは、水素であり得る。
【0061】
適切な閉環メタセシス触媒は、市販されており、例えば、以下のものが挙げられる。(i)米国特許第6,215,019号に「Grubbsの第一世代触媒(Grubbs’ First generation catalyst)」として記載されている触媒および国際公開第WO99/51344号および国際公開第WO00/71554号に「Grubbsの第二世代触媒(Grubbs’ Second Generation catalysts)」として記載されている触媒および国際公開第PCT/US01/24955号に「Hoveyda−Grubbsの第一および第二世代触媒(Hoveyda−Grubbs’ First and Second Generation catalysts)」として記載されており、いずれもMateria社から入手できる触媒、(ii)国際公開第WO2007/003135号に記載されており、Zannan Pharma社から入手できるZhanの触媒、および(iii)国際公開第WO2004/035596号に記載されており、Boehringer−lngelheim社から入手できるGrelaの触媒。本発明のいくつかの実施形態においては、(i)キレート化イソプロポキシベンジリデン配位子、および(ii)ビスメシチレン(bismestiylene)置換N−ヘテロ環状カルベン配位子を有する触媒、例えば、Hoveyda−Grubbsの第二世代触媒を使用するのが好ましい。
【0062】
いくつかの実施形態においては、好ましくは、式:
【0063】
【化20】

の触媒を使用する。
【0064】
いくつかの実施形態においては、好ましくは、式:
【0065】
【化21】

の触媒(式中、Rは、「H−」、ニトロ部分(−NO)、またはスルホンアミド部分(−SON(Rであり、ここで、Rは、10個以下の炭素原子のアルキル部分である)を使用する。
【0066】
スキーム1、ステップ2に関して、いくつかの実施形態において、閉環メタセシス触媒の反応混合物使用量(触媒使用量)は、反応混合物中に最初に存在する該式Vの化合物の量に対して、約100モル%乃至約0.1モル%の量で使用するのが好ましく、より好ましくは、該触媒は、約20モル%乃至0.1モル%の量、より好ましくは約10モル%〜約0.5モル%の量で使用する。上記のように、ステップ2における酸、例えば、4−メチルベンゼンスルホン酸一水和物またはトルエンスルホン酸の反応混合物への添加によって、与えられた反応条件下での完全な、または完全に近い基質の変換を達成するために必要な反応混合物触媒使用量は少なくすることができる。下の表1は、さまざまな量のp−トルエンスルホン酸を反応混合物に添加し、添加した酸有りおよび無しでの触媒使用量に応じた基質変換の量を観察することによって得られた結果を明らかにしている。触媒使用量を減少するために酸を添加するいくつかの実施形態において、酸は、反応混合物中に最初に存在する基質の量に対して約0.01当量乃至約2当量であることが好ましく、より好ましくは、酸は、約0.1当量乃至1.8当量の量で添加し、より好ましくは、酸は、反応混合物中に最初に存在する基質の量に対して約0.2当量乃至1.5当量の量で添加する。
【0067】
理論に縛られることは望まないが、本発明者らは、触媒使用量を少なくするためにステップ2において添加する酸の使用に関する最良の結果は、中間体IVの計算されたpKaであるpKa≦6.5を所有する酸を反応混合物に添加することによって達成されるものと考える。基質の高い変換を達成するために必要な触媒使用量(catalyst loading)を少なくするためには、さまざまなタイプの酸、例えば、以下に限定されないが、(i)鉱酸、例えば、HCl、HBr、HI、リン酸、または硫酸あるいはそれらの混合物、および(ii)有機酸、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−ニトロベンゼンスルホン酸、ハロゲン置換ベンゼンスルホン酸、または複素環式芳香族スルホン酸、またはそれらの混合物が有用であると考えられる。
【0068】
【表1】

表Iに関して、スキームI(上記)のステップ2に従う環化反応は、環化すべき基質の量に対して0乃至約2モル当量の添加酸を用いて行った。これらのデータは、ステップ2において反応混合物に酸を添加することによって基質の高率の変換を達成するために反応混合物中に必要な触媒使用量を、4.5倍を超えて減少することができることを示している。それ故、添加酸無しで100%近くの基質変換を達成するためには7モル%以上の使用量が必要であったところが、反応混合物中で150モル%の追加の酸と併用して1.0モル%の触媒使用量を用いることにより100%に近づく基質の変換を達成することができた。
【0069】
いくつかの実施形態において、ステップ2の閉環反応は、非配位性の中位極性溶媒、例えば、トルエン、トリフルオロトルエン、クロロベンゼン、ベンゼン、キシレン(1つまたは複数)、クロロホルム、ジクロロメタン、またはジクロロエタンを含む無水の脱気した(例えば、Nを用いて)反応媒体中で行うのが好ましい。一般に、該反応は、大気圧または大気圧よりわずかに高い圧力において行う。いくつかの実施形態において、該閉環メタセシス反応は、反応溶媒と同じかまたは類似している溶媒中に該触媒を溶解し、その触媒溶液を約30分の時間をかけてゆっくりと加え、その間、その反応混合物の温度を、約20℃乃至約100℃、好ましくは約30℃乃至90℃、より好ましくは約60℃乃至約80℃の温度範囲内に維持することによって行うのが好ましい。
【0070】
いくつかの実施形態において、環化反応の終わりに、スキーム4に記載されているプロセスを用いて触媒から金属を除去することが好ましく、すなわち、閉環処置の生成物は、還元試薬の水溶液で処理し、得られた金属種を水層中に抽出する。適当な還元試薬としては、無機試薬、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム(sodium thiosulfite)、ギ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムおよびその誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0071】
メタセシス触媒から金属を除去するスキーム4のプロセスを使用するいくつかの実施形態においては、該反応混合物中にも相間移動触媒(PTC)を、使用される還元試薬の量に対して約0.05モル%のPTC乃至使用される還元試薬の量に対して約200モル%のPTCを使用するのが好ましく、好ましくは、PTCは、使用される還元試薬の量に対して約0.1モル%乃至約100モル%である量で使用する。該プロセスにおいて使用するための適当な相間移動触媒としては、式(R)であり、式中「R」が本明細書で定義されているアルキル基であり、「X」がアニオンであり、好ましくは、「X」が、Cl、Br、I、F、またはNOである第四級アンモニウム塩が挙げられるがこれらに限定されない。本発明者らは、驚いたことに、該プロセスを適当な相間移動触媒の存在下で行うときには、該PTCは、還元が、例えば、25℃ほどの低さのより低い温度で、例えば、1時間未満のより短時間の内に完了に向けて進行することを可能にし、あるいは、選択された温度領域によっては反応時間および反応温度の両方を相間移動触媒の存在しない中で完全な還元を達成するのに要するものを超えて減少することができることを見出した。
【0072】
いくつかの実施形態において、触媒が除去された該環化生成物は、その環化生成物を含有する反応混合物を、(i)鉱酸、例えば、HCl、HBr、HI、HPO、またはHSO、(ii)有機酸または置換有機酸、例えば、マレイン酸、フマル酸、酒石酸またはトリフルオロ酢酸、(iii)スルホン酸または置換スルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、またはp−ニトロベンゼンスルホン酸を含む試薬による処理によって塩に変換することが好ましい。いくつかの実施形態においては、式VIの化合物のHCl塩を調製するのが好ましい。
【0073】
スキームIに関して、式VIIの塩はステップ3において遊離塩基形に変換される。いくつかの実施形態において、その変換は、式VIIの化合物を塩基、例えば、NaOH、KOH、NaOR(式中、「R」は約1乃至約12個の炭素原子を含有するアルキル基である)により処理することによって達成するのが好ましい。いくつかの実施形態において、ステップ3における式VIIの化合物の変換は、低い極性の有機溶媒、例えば、トルエン、キシレン、エーテル(例えば、ジエチルエーテルおよびメチルt−ブチルエーテル)を含む反応溶媒中で行ってVIIの遊離塩基を得て、その後その遊離塩基を、水素化によって、例えば、水素化触媒、例えば、パラジウム炭素、白金炭素、酸化パラジウム、ルテニウム、またはウィルキンソン触媒、またはそれらの混合物の存在下で水素により処理することによって、還元して式VIIIの化合物にする。いくつかの実施形態において、ステップ3は、低い極性の有機溶媒、例えば、トルエンもしくはキシレン、または極性有機溶媒、例えば、アルコール(C1〜C12線状もしくは分枝状アルキル)、またはエーテル、あるいは水中、またはそれらの2つ以上の混合物中行うのが好ましい。いくつかの実施形態において、水素化還元が完了した後、ステップ3で使用した触媒は、該反応混合物から、例えば、濾過によって除去し、その反応混合物中のその生成物の化合物は、次に、酸で処理して対応する塩とし、例えば、その生成物の化合物をこのステップでHClにより処理する実施形態においては式VIII(スキームI)の化合物は、塩酸塩水和物として得られる。
【0074】
本発明者らは、意外なことに、別に、上記のスキームIに関連して、式VIIのテトラヒドロピリジン塩化合物は、直接還元して対応するアミン塩化合物を生ずることができることを見出した。式VIIの化合物が塩酸塩であるとき、式VIIの塩化合物の還元により、テトラヒドロピリジンの中間の遊離塩基の形、すなわち、式VIIbの化合物、を生ずることを必要とせずに、式VIIIの塩酸塩水和物化合物を直接産出する。式VIIのテトラヒドロピリジン塩化合物の直接還元を使用するいくつかの実施形態において、好ましくは、その還元反応が完了した後で、その還元で使用した触媒は、反応混合物から、機械的手段、例えば、濾過によって除去し、その得られたアミン塩をその濾液から回収する。
【0075】
式VIIの塩化合物の還元を、最初にテトラヒドロピリジンの遊離塩形態を提供することなく直接行うためには、本発明者らは、意外なことに、該反応が、(i)低極性有機溶媒、例えば、トルエンもしくはキシレンまたはそれらの混合物、(ii)極性有機溶媒、例えば、約1個の炭素原子乃至約12個の炭素原子を含むアルコール、またはそれらの2つ以上の混合物、(iii)約2乃至約12個の炭素原子を含む有機エーテルまたはそれらの2つ以上の混合物、および(iv)水、あるいはそれらの任意の2つ以上の混合物である溶媒中で好ましくは行われることを見出した。
【0076】
塩形態のテトラヒドロピリジン化合物を還元して対応するシクロヘキシルアミンにする適当な方法としては、水素化触媒の存在下での水素による式VIIの化合物の処理が挙げられる。適当な水素化触媒としては、例えば、パラジウム炭素、酸化パラジウム、白金炭素、ルテニウムおよびウィルキンソン触媒またはそれらの2つ以上の混合物が挙げられる。
【0077】
いくつかの実施形態において、スキームIのステップ3に続いては、好ましくは、ステップ3の生成物をアルコール/水溶液から再結晶させ、それによって式Iaの化合物の望ましい結晶形を提供するステップ4を行う。ステップ4を行うのに有用な適当なアルコール溶媒としては、約1乃至約12個の炭素原子を有するアルコールまたはそれらの2つ以上の混合物が挙げられるがそれらに限定されない。別法では、再結晶に対して、式VIIIの化合物は、トルエン中に懸濁させ、その懸濁液をNaOH水溶液で抽出し、次いでHClで処理して式Iaの化合物を沈殿させる。
【0078】
上記のように、本発明のいくつかの実施形態においては、スキーム2に図示されているプロセスを用いて式IVの中間体を調製するのが好ましくい。式IVの化合物を提供するためにスキーム2のプロセスを採用するいくつかの実施形態において、スキーム2の実施においては下のスキーム2abに示されている条件およびパラメーターを使用するのが好ましい。
【0079】
【化22】

スキーム2abのプロセスにおける、ステップ2−1〜2−3は、上記の米国特許第7,049,320号(’320号特許)実施例、43〜44段、化合物1〜3に記載されており、スキーム2abに示されているステップ2−5.1を実施することに由来するトリフェニルホスフィンオキシドの除去は、欧州特許出願公開第EP0850902号の4〜5頁に記載されている。
【0080】
いくつかの実施形態において、スキーム2abのステップ2−4は、溶媒、例えば、NMP水、アセトニトリルと水の混合物、またはアセトンと水の混合物中の塩基、例えば、KHCOまたはNaHCOを用いて行うのが好ましい。いくつかの実施形態において、好ましくは、該反応混合物は、該反応混合物を、約0℃乃至約60℃、好ましくは、約5℃乃至約50℃、より好ましくは、15℃乃至約25℃の温度に維持しながらかき混ぜ、一定時間の撹拌後、その反応混合物を、最高約90℃未満の温度まで、好ましくは、約70℃未満、より好ましくは、約45℃乃至約55℃の温度まで加熱し、続いてその反応混合物を周囲温度(一般的には約25℃)まで冷却し、その周囲温度の反応混合物を有機溶媒、例えば、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエン、キシレンまたはそれらの2つ以上の混合物により抽出する。
【0081】
スキーム2abにさらに関連して、ステップ2−5は、ステップ2−4の生成物を、有機溶媒、例えば、トルエン、THF、MTBE中の、PhPCHX(X=Cl、Br、またはI)およびヘキサメチルジシラザンナトリウムもしくはリチウム、またはリチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムまたはカリウムアルコキシドの混合物に、−20乃至60℃、好ましくは、5乃至40℃、より好ましくは、10乃至25℃の温度範囲で添加することによって行う。その反応混合物は、室温まで温めてかき混ぜ、次に−30乃至40℃、好ましくは−20乃至30℃、より好ましくは、−10乃至20℃の範囲まで冷却し、希酢酸により失活させ、重炭酸ナトリウム溶液により洗浄する。その生成物をMgClで処理し、室温でかき混ぜ、次にシリカゲルで処理する。固体を濾過することによって式XIIIの化合物が生じる。
【0082】
ステップ2−6において、式XIIIの粗生成物は、TMSI(ヨードトリメチルシラン)により処理し、約1乃至約12個の炭素原子を有するアルコールにより失活させ、それにより、式IVの遊離塩基を提供する(スキームIに関してはステップ1b)。スキーム2abのステップ2−6に示されているように、提供された式IVの遊離塩基は、酸、例えば、マレイン酸、塩酸、および臭化水素酸により処理して、対応する塩を形成するが、好ましくは、マレイン酸を使用して、それによって対応する式IVaのマレイン酸塩化合物を提供する。いくつかの実施形態において、好ましくは、それによって提供されたその塩は、トルエンおよび貧溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタンまたはオクタンから結晶させて、その塩の結晶形態を提供する。
【0083】
上記のように、本発明のいくつかの実施形態において、式IIの中間体は、スキーム3に示されているプロセスを用いて調製するのが好ましい。スキーム3のプロセスを使用して式IIの化合物を提供するいくつかの実施形態においては、スキーム3実施において下のスキーム3abに示されている条件およびパラメーターを使用するのが好ましい。
【0084】
【化23】

スキーム3abに関連するいくつかの実施形態において、ステップ3−1は、いくつかの方法:
a)ピログルタミン酸を、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリメチルアセトアルデヒドおよび強酸、例えば、メタンスルホン酸と共に還流させるか、または
b)ピログルタミン酸を、トリメチルアセトアルデヒドおよび強酸、例えば、メタンスルホン酸と共に加熱するか、または
c)ピログルタミン酸を、ヘキサメチルジシラザン(disilizane)と共に還流させ、次にその生成物をトリメチルアセトアルデヒドおよびメタンスルホン酸と反応させるか、または
d)ピログルタミン酸およびトリエチルアミンをクロロトリメチルアミンと共に加熱し、次にその生成物をトリメチルアセトアルデヒドおよび強酸、例えば、メタンスルホン酸と反応させるか、または
e)無水トリフルオロ酢酸を、ピログルタミン酸、トリメチルアセトアルデヒドおよび強酸の混合物に加え、その反応が完了するまで温度を約50℃乃至約100℃に維持するか
の1つを用いて実施するのが好ましい。
【0085】
方法(a)において、式XIVの化合物は、ジエチレングリコールジメチルエーテル溶媒中のピログルタミン酸をトリメチルアセトアルデヒドおよび強酸の存在下で還流させることによって調製する。いくつかの実施形態において、その強酸については、トリフルオロ酢酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸またはp−ニトロベンゼンスルホン酸であることが好ましい。方法(a)のいくつかの実施形態において、ピログルタミン酸と共に還流させるステップは、共溶媒、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、THF、またはそれらの2つ以上の混合物の存在下で還流装置についてはディーンスターク水分除去装置を用いて還流温度で反応が完了するまで行う。
【0086】
方法(b)においては、方法(a)で使用したジエチレングリコールジメチルエーテル溶媒のないピログルタミン酸のトリメチルアセトアルデヒドおよび強酸との混合物を、水分除去を可能にする装置、例えば、ディーンスターク水分除去装置中で加熱する。方法(b)においては、方法(a)におけるように、いくつかの実施形態において、強酸としては、トリフルオロ酢酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸またはp−ニトロベンゼンスルホン酸を選択するのが好ましい。いくつかの実施形態において、該混合物は、一般的には約100℃乃至約120℃に加熱して還流させ、その間、水を、トラップにより共沸留去し、水分除去が完了するまで還流を続ける。ベンチスケールの装置については、これは一般的には約14.5時間で達成される。
【0087】
方法(c)においては、好ましくは、ジオキサン、ジグリム、トルエンまたはN−メチルピロリジノン(NMP)である溶媒中のピログルタミン酸およびヘキサメチルジシラザンを、約6時間乃至約12時間にわたって加熱して還流させる。トリメチルアセトアルデヒドおよび強酸、例えば、トリフルオロ酢酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸またはp−ニトロベンゼンスルホン酸をその生成物に加え、その得られた混合物を、約4時間乃至約12時間にわたって90℃に加熱する。
【0088】
方法(d)においては、クロロトリメチルシランを、温度を30℃より下に保ちながら、トルエン中のピログルタミン酸およびトリエチルアミンの混合物に加え、次いでその混合物を、シリル化が完了するまで加熱して還流させる。得られたトリメチルシリルで保護された化合物は、溶媒、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、またはアセトニトリルに加え、トリメチルアセトアルデヒドおよび強酸、例えば、トリフルオロ酢酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸またはp−ニトロベンゼンスルホン酸で処理し、その反応混合物の温度を、約50℃乃至約100℃、好ましくは、約60℃乃至約90℃、より好ましくは、約70℃乃至約85℃の温度範囲でその反応が完了するまで、一般的には約18時間乃至約24時間の間維持する。
【0089】
方法(e)においては、ピログルタミン酸、トリメチルアセトアルデヒド、および強酸の混合物を用意し、無水トリフルオロ酢酸をそれに加える。いくつかの実施形態において、その強酸は、有機酸、例えば、トリフルオロ酢酸;鉱酸、例えば、リン酸または硫酸;スルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸またはp−ニトロベンゼンスルホン酸から選択される。いくつかの実施形態において、その反応は、有機溶媒中、例えば、トルエンまたはN−メチル−ピロリドン中で行うのが好ましい。いくつかの実施形態において、該反応混合物は、約70℃乃至約95℃の温度に維持するのが好ましく、より好ましくは、その温度は、約80℃乃至約95℃に維持する。一般に、その反応混合物は、望ましい温度範囲で反応が完了するまで、一般的には約5〜約10時間維持する。
【0090】
ステップ3−2においては、式XIVの化合物を、(i)好ましくは、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)またはテトラヒドロフランである溶媒、(ii)ギ酸メチルまたはギ酸エチル、および(iii)場合によって、ルイス酸、例えば、CuClまたはZnClと混合する。ルイス酸を使用するとき、一般的にそのルイス酸は、使用される式XIVの化合物の量に対して、最大約1当量までの量で添加する。いくつかの実施形態において、ルイス酸は、このステップにおいて収率を増し、反応混合物のワークアップを簡略化するために使用する。構成物質の添加に続いて、該反応混合物は、約[−100]℃乃至約[−55]℃の温度に冷却し、次にその反応混合物の温度を維持しながら、その反応混合物にリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LiHMDS)を加え、続いてクロロトリメチルシラン(TMSCI)を加える。添加が完了した後、その反応混合物を、約0℃乃至約[+10]℃の温度に温め、クエン酸または酢酸溶液のアリコートと混合する。その得られた中間体を、トリフルオロ酢酸で処理し、式XVのピロロ[1,2−c]オキサゾール−7a−カルバルデヒドを得る。
【0091】
ステップ3−3においては、式XVのカルバルデヒドを、ウィティヒ反応により、例えば、有機溶媒、好ましくは、トルエン、THF、またはMTBE中の、メチルトリフェニルホスホニウムハライド(ハライド=Cl、Br(B)、またはI)およびヘキサメチルジシラザンナトリウムまたはリチウムあるいはリチウムジイソプロピルアミドあるいはナトリウムまたはカリウムアルコキシドにより、約[−20]℃乃至約[+60]℃、好ましくは、約[−10]℃乃至約[+30]℃、より好ましくは、約[+5]℃乃至約[+15]℃の温度範囲でそれを処理し、次いでその反応混合物をNaClおよび酢酸を添加することによって失活させることにより、式XVIの7a−ビニル−ジヒドロ−ピロロ[1,2−c][1,3]オキサゾール−1,5−ジオンに変換する。その生成物は、MgClにより処理し、それにより形成されたMgCl−トリフェニルホスフィンオキシド錯体を、その反応混合物から濾過によって分離する。その反応混合物中に残っている生成物をトルエンおよびヘプタンから結晶化させて、式XVIの化合物を生じさせる。
【0092】
ステップ3−4においては、式XVIの化合物を、好ましくは、テトラヒドロフランもしくはMTBEであるエーテル溶媒中、または低極性有機溶媒、例えば、トルエン中に溶解する。その反応混合物を、約[−40]℃乃至約0℃の温度で、好ましくは、約[−30]℃乃至約[−5]℃の温度で、より好ましくは、約[−25]℃乃至約[−15]℃の温度で維持し、次にその反応混合物を、水素化トリ(t−ブトキシ)アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムリチウム、または水素化ジイソブチルアルミニウムリチウムにより処理し、その温度を、約[−10]℃乃至約[+10]℃の温度に約10時間〜約16時間の時間をかけて上げ、その反応が完了するまで維持する。その反応が完了した時点で、その反応混合物を、好ましくは、酢酸エチル、酢酸メチル、または酢酸イソプロピルであるアセテート溶媒により失活させ、次に、連続して、酸、好ましくは、氷酢酸またはトリフルオロ酢酸のアリコートと、次いでアリコートの硫酸ナトリウム十水和物と接触させて式IIの化合物を得る。
【0093】
それ自体特許申請されている中間体化合物は、すなわち、以下のものである。
【0094】
【化24】

いくつかの実施形態において、化合物IVは、水和物を含めたマレイン酸塩としてか、または水和物を含めた塩酸塩として単離するのが好ましい。いくつかの実施形態において、式VIおよびVIIの化合物は、好ましくは塩酸塩または4−メチル−ベンゼンスルホン酸塩として、より好ましくは4−メチル−ベンゼンスルホン酸塩の水和物として単離する。
【0095】
上記のように、スキーム1のステップ2の終わりには、上記のスキーム4に示されているプロセスは、閉環メタセシス反応の反応混合物から金属を除去するために使用することができ、その金属をリサイクルすることを可能にし、メタセシス触媒からの汚染が実質的にない生成物の中間体化合物を提供する。
【0096】
本明細書で上に示されているスキーム4に関して、本発明者らは、意外にも、該メタセシス触媒は、閉環反応が完了したとき、そのメタセシス触媒を含有する反応混合物をそのメタセシス触媒と反応する還元試薬により処理することによってその反応混合物から除去することができることを見出した。スキーム4に記載されているプロセスは、水非混和性の溶媒を含む反応混合物中で、その反応混合物を、還元試薬を含有する水溶液と接触させることによってその触媒を還元するステップを含み、そこで、そのメタセシス触媒の還元生成物は、水層に可溶性であり、それ故、その2つの層の非混和性を用いて、例えば、分離またはデカンテーションによって有機層から物理的に分離するか、または有機層または水層のどちらにも不溶性であり、それ故、濾過によって反応混合物から物理的に分離する。
【0097】
上記のスキーム4に記載されているメタセシス還元反応を行うための適当な還元試薬としては、(i)Na、NaSO、NaSOH、NaOC(O)H、またはNaHPOである1つまたは複数の無機塩化合物、(ii)亜リン酸、例えば、HPO、(iii)1つまたは複数の金属水素化物化合物、例えば、水素化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、または水素化アルミニウムリチウム、(iv)還元触媒、例えば、パラジウム炭素の存在下での水素、(v)有機還元試薬、例えば、アスコルビン酸およびシュウ酸、(vi)過酸化水素、または(vii)還元反応を行うことができる1つまたは複数の金属、例えば、銅、亜鉛、鉄またはマグネシウム、が挙げられる。
【0098】
いくつかの実施形態において、反応中に相間移動触媒(PCT)として機能することができる無機塩化合物、例えば、第四級アンモニウム塩、例えば、(CH(CH(式中、Xは、好ましくは、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素、重硫酸(HSO)、硫酸(SO−2)、または硝酸アニオンである)を含めることが好ましい。本発明者らは、意外にも、PCT無しでは反応を進めるのに約40℃の温度を必要とするところを、PCTを含めることにより、反応を約20℃の低さの温度で行うことを可能にすることができることを見出した。その上、反応中のPTCの存在は、特定の温度において反応を完了するために要する時間を著しく短縮することができ、例えば、特定の温度に対して約1時間の反応時間を必要とする反応を約6分の時間に短縮する。
【0099】
従って、合成において閉環のために使用したメタセシス触媒を除去するためにスキーム4の反応プロセスを利用するいくつかの実施形態においては、その反応混合物を含む水非混和性の溶媒として、トルエン、トリフルオロトルエン、クロロベンゼン、ベンゼン、キシレン(1つまたは複数)、ジクロロメタン、またはジクロロエタンあるいはそれらの2つ以上の混合物を使用するのが好ましい。合成において閉環のために使用したメタセシス触媒を除去するためにスキーム4の反応プロセスを利用するいくつかの実施形態において、その還元反応は、約20℃乃至約100℃の温度で行うのが好ましい。合成において閉環のために使用したメタセシス触媒を除去するためにスキーム4の反応プロセスを利用するいくつかの実施形態において、その反応は、約0.1時間乃至約24時間にわたって行うのが好ましい。一般に、この方法がメタセシス触媒を除去するために使用されるとき、その反応は、全てのメタセシス触媒が還元されるまで続けられる。その還元反応の終わりに、その還元された金属は、一般的にはML錯体の形をしており、可溶性で、そのためその反応の過程で還元試薬を含む水溶液中に抽出されるか、または有機層または水層のいずれにも不溶性で、それ故有機および水性混合物から沈殿するかのいずれかである。
【0100】
合成において閉環のために使用したメタセシス触媒を除去するためにスキーム4の反応プロセスを利用するいくつかの実施形態において、メタセシス触媒、例えば、式XXaのメタセシス触媒の「M」がルテニウムである場合には、還元試薬としての水素の存在下で、Na、NaSOまたはPd炭素を使用するのが好ましい。合成において閉環のために使用したメタセシス触媒を除去するためにスキーム4の反応プロセスを利用するいくつかの実施形態において、メタセシス触媒、例えば、式XXaのメタセシス触媒の「M」がルテニウムである場合には、上記のようにPTCも含めるのが好ましく、より好ましくは、メタセシス触媒の「M」がルテニウムであるプロセスにおいては、相間移動触媒として[(CH(CH(HSO)]または[(CH(CH(SO−2)]を用いるのが好ましい。
【0101】
当然のことながら、反応の終わりにその反応混合物からメタセシス触媒を分離するために上で示した新規な方法は、かかる触媒を採用する他の反応から金属メタセシス触媒をきれいに除去するために、その金属を含有する還元生成物が、還元後に得られた混合相の反応生成物中に不溶性であるか、または混合相の反応生成物の水相に可溶性である限りは、使用することができる。
【実施例】
【0102】
本発明のプロセスを説明する実施例が以下に続く。別なふうに特定されていない限り、全ての試薬は、市販の実験室グレードの品であり、入荷したままのものを使用した。
【0103】
(実施例1)
【0104】
【化25】

[(1S)−1−({(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}メチル)−1−フェニルプロプ−2−エニル]アミンモノマレイン酸塩の調製
ステップ1:
式XIの化合物(WO2003/054840に記載されているようにして調製した)(100.0g、154.9mmol)のNMP(200mL)中のRTの溶液に、KHCO(4.6g、45.9mmol)および水(3mL、166.7mmol)を連続して加えた。得られた混合物を、20℃で16時間にわたって激しく撹拌した。温度を次に50℃に上げ、その反応物をさらに2時間撹拌した。その反応物を冷却してRTに戻した後、200mLの水を加えた。得られた溶液を、TBMEにより抽出した(2×200mL)。その合わせた有機層を、14%のNaHSOおよび7%のAcOHの水溶液(2×100ml)、NaHCOの飽和水溶液、およびブラインにより連続して洗浄した。その有機層を乾燥(NaSO)して、濾過し、真空中で濃縮した。式XIIの粗製化合物を、さらなる精製はしないで次の段階にそのまま持ち込んだ。
【0105】
【化26】

ステップ2:
トルエン(200mL)中のPhPCHBr(78.0g、217.0mmol)のスラリーに、NaHMDS(トルエン中13%、306g、217mmol)を−15℃でゆっくり加えた。得られた混合物を1時間スラリー化させた後、ステップ1からの粗生成物をゆっくり加えた。その反応物を次にRTまで温め、さらに1時間撹拌した。0℃に冷却した後、その反応物を6%のAcOH水溶液(400mL)により失活させ、NaHCOの飽和水溶液により洗浄した。その有機層を次にMgCl(25g、263mmol)により処理し、RTで3時間撹拌した。濾過後、その有機層をシリカゲル(100g)で処理し、30分間撹拌した。濾過後、その固体をトルエンで洗浄した(2×100mL)。その濾液を集め、真空中で濃縮してトルエン中の式XIIIの粗生成物を生じさせ、それをさらなる精製はせずに次のステップにそのまま持ち込んだ。
【0106】
【化27】

ステップ3:
トルエン(300mL)中のステップ2の生成物の溶液に、ヨウ化トリメチルシリル(21mL、152.4mmol)をゆっくり加えた。得られた反応混合物を3時間撹拌した。その反応物を次にMeOH(12.4mL、305mmol)により失活させ、15%のNaHSO水溶液(200ml)で、続いて飽和NaHCO水溶液(200mL)により連続して洗浄した。式XIIIの遊離塩基のその粗生成物を含有する有機層をさらなる精製はせずに次の段階にそのまま持ち込んだ。
【0107】
ステップ4:
上記のステップ3のトルエン中の粗生成物に、MeOH(50mL)に溶解したマレイン酸(18g、155mmol)を加えた。得られた混合物を1時間撹拌した。得られた溶液の量を、次に、真空蒸留の下で、40℃で100mLまで減少させた。40℃で、n−ヘプタン(100mL)をその得られた溶液に加えた。RTに冷却した時点で、マレイン酸塩の結晶化が起こり、さらなるn−ヘプタン(500mL)を加えた。2時間撹拌後、その固体を、濾過し、トルエン(400mL)、n−ヘプタン(200mL)および水(250mL)により洗浄した。そのウェットケーキを真空下45℃で12時間乾燥して式IVaの化合物を生じさせた(61g、619734−Dによる77%の収率)。融点135℃〜140℃。
【0108】
【化28】

液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)[C2020NO]に対して計算した正確な質量 計算値:404.14436、実測値:404.14456。
【0109】
(実施例2)
【0110】
【化29】

[(1S)−1−({(1R)−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ}メチル)−1−フェニルプロプ−2−エニル]アミン塩酸一水和物。
実施例1からのステップ3の粗生成物(遊離塩基)のトルエンの溶液に、濃HCl(13mL、156mmol、水中37%)を加えた。1時間撹拌後、得られた混合物の量を真空蒸留下で、40℃で200mLまで減少させ、次に水(6.6mL、465mmol)を加えた。RTまで冷却した後、n−ヘプタン(700mL)をゆっくり加えた。得られたスラリーを、RTで6時間撹拌し、次に0℃に冷却し、さらに6時間撹拌した。その生成物を濾過し、n−ヘプタン(200mL)で洗浄し、真空下の室温で12時間乾燥して白色固体としてのIVbを提供した(51.8g、XIからの73モル%の収率)。融点(分解を伴う)37℃。
【0111】
【化30】

(実施例3)
【0112】
【化31】

ステップ1:
(3R,6S)−3−tert−ブチルジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−c][1,3]オキサゾール−1,5(6H)−ジオンの調製
【0113】
【化32】

方法(a)
撹拌器、温度計、ディーンスターク還流冷却器、および窒素導入管を備えた250mLの三つ口フラスコに、L−ピログルタミン酸(20.0g、154.8mmol)、トルエン(60mL)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(60mL)、トリメチルアセトアルデヒド(40.0g、464.4mmol)、およびCHSOH(1.5g、15.6mmol)を加えた。その反応混合物を、102〜120℃(還流)で14.5時間、すなわち、ディーンスターク装置により水を除去して反応が完了するまで、加熱して還流した。その反応混合物を35℃まで冷却し、真空下で50mLの最終的な量まで蒸留した。その混合物を1時間かけて20℃まで冷却し、n−ヘプタン(140mL)を1時間かけて加えた。その反応混合物を1時間かけて−5℃まで冷却し、1時間撹拌した。そのスラリーを濾過し、ヘプタン(60mL)および水(60mL)により洗浄し、真空下50℃で乾燥して、オフホワイト結晶固体としてのXIVを提供した(23.9g、79%の収率)。融点(分解を伴う)116〜168℃。
【0114】
【化33】

LC/MS C1016NO(M+H)(m/z)に対する計算値:197.231、実測値:197.227。
【0115】
方法(b):
撹拌器、温度計、還流冷却器、および窒素導入管を備えた250mLの三つ口フラスコに、L−ピログルタミン酸(200g、1.6mol)、NMP(400mL)、トリメチルアセトアルデヒド(500mL、397g、4.6mol)、およびCHSOH(30mL、44.5g、0.46mol)を加えた。その反応混合物を82.5℃(還流)に15分間加熱し、TFAA(240mL、1.11当量)を、4.5時間をかけてゆっくり加えた。その温度を82.5℃でさらに4.5時間にわたって維持した。そのフラスコを1時間かけて20℃まで冷却し、その混合物を、水(2L)中のNaHCO(325g、3.9mmol)の5℃のスラリーに1時間かけて移した。そのスラリーを濾過し、氷冷水(400mL)で洗浄した。そのウェットケーキを次に真空下50℃で乾燥し、オフホワイト結晶固体としてのXIVを提供した(244g、72%の収率)。
【0116】
方法(c):
【0117】
【化34】

撹拌器、温度計、還流冷却器、および窒素導入管を備えた250mLの三つ口フラスコに、L−ピログルタミン酸(250g、1.94mol)、トルエン(1000mL)、および(CHSiNHSi(CH(890mL、4.26mol)を加えた。その混合物を加熱して6時間にわたって還流させ、その間に、還流温度は80℃から100℃までゆっくりと上昇した。6時間後、その混合物を80mmHgおよび50℃で400mLの量まで蒸留した。追加のトルエン(1000mL)を入れ、その混合物を真空中で400mLの量まで蒸留した。次にトリメチルアセトアルデヒド(500mL、397g,4.6mol)、およびCHSOH(30mL、44.5g、0.46mol)を入れ、その反応混合物を90℃に4時間にわたって加熱した。その反応混合物を35℃に冷却し、トルエン(1200mL)を加え、その混合物を真空下で1000mLの最終量まで蒸留した。そのフラスコを20℃まで冷却し、その混合物を、NaHCO(65g)の水(1250L)の中の溶液に−5℃で1時間かけて移した。そのスラリーを濾過し、氷冷水(400mL)で、次いで氷冷したイソプロピルアルコール(100mL)で洗浄した。そのウェットケーキを次に真空下50℃で乾燥し、オフホワイト結晶固体としての式XIVの化合物を提供した(267g、68%の収率)。
【0118】
方法(d):
【0119】
【化35】

撹拌器、温度計、還流冷却器、および窒素導入管を備えた1Lの三つ口フラスコに、L−ピログルタミン酸(50g、0.39mol)、トルエン(450mL)およびEtN(113mL、0.81mol)を仕込んだ。温度を30℃より下に保ちながら、(CHSiCl(103mL、0.81mol)を加えた。その混合物を110℃まで加熱し、3時間にわたって撹拌した。その懸濁液を5℃まで冷却し、ヘプタン(100mL)で希釈した。トリエチルアンモニウム塩酸塩を濾過によって除去し、トルエン/ヘプタン溶液(200mL)により洗浄した。その濾液を150mLの最終量まで濃縮し、NMP(50mL)、トリメチルアセトアルデヒド(100mL、0.78mol)およびCHSOH(2.5mL、0.04mol)を加えた。その反応混合物を80℃に24時間にわたって加熱し、次いで40℃まで冷却した。その反応混合物を約100mLまで濃縮し、アセトン(100mL)で希釈した。その反応混合物を、水(250mL)中のNaHCO(13g)の20℃の溶液に移した。その懸濁液を5℃まで冷却し、1時間撹拌した。そのスラリーを濾過し、氷冷水(50mL)で、次いで氷冷したイソプロピルアルコール(50mL)で洗浄した。その生成物を次に真空下45℃で乾燥し、オフホワイト結晶固体としてのXIVを提供した(48.3g、63%)。
【0120】
方法(e):
【0121】
【化36】

撹拌器、温度計、還流冷却器、および窒素導入管を備えた1Lの三つ口フラスコに、L−ピログルタミン酸(20g、0.16mol)、トリメチルアセトアルデヒド(50mL、0.39mol)、メタンスルホン酸(1.4mL、0.02mol)、トルエン(140mL)およびN−メチルピロリドン(20mL)を仕込んだ。その混合物を90℃まで加熱し、90℃に維持してその間に無水トリフルオロ酢酸(27mL)をゆっくり添加した。その反応物を90℃で8時間維持して酸の100%の変換率を達成した。
【0122】
ステップ2:
【0123】
【化37】

撹拌器、温度計、還流冷却器、および窒素導入管を備えた2Lの三つ口フラスコに、XIV(100g、0.5mol)、CuCl(10g)、DMI(100mL)、THF(1.2L)、およびギ酸メチル(100mL)を仕込んだ。[−60]℃より下まで冷却した後、LHMDS(700mL、THF中1.0M)を、温度が−60℃を超えない速度で加えた。LHMDSの添加後、TMSCIを、温度が[−60]℃を超えない速度で加えた。その混合物を0℃と10℃の間の温度に30分かけて温め、そのバッチを真空中で250mLまで濃縮し、EtOAc(300mL)を加えた。クエン酸(120g)、水(1L)、およびEtOAc(1L)の5℃の混合物に、次いで、その粗製の反応混合物を、温度を0℃と15℃の間に維持しながら30分間かけて移した。その粗混合物を含有するフラスコを、次にEtOAc(200mL)ですすいだ。10分間撹拌した後、層分離し、有機層を、12.5%クエン酸水(800mL)、10%クエン酸水(700mL)および8%クエン酸水溶液(600mL)で連続して洗浄した。その有機層と水(300mL)の5℃の混合物に、トリフルオロ酢酸(30mL)を、温度を5℃と15℃の間に維持しながら10分間かけて加えた。その添加が完了した後、その混合物を25℃に温め、3.5時間撹拌した。KHCO(200mL、20%)の水溶液を、温度を20℃より下に維持しながら30分間かけて加え、続いて飽和NaCl溶液(500mL)を加え、層分離して分割した。その水層をEtOAc(250mL)により逆抽出した。そのEtOAc画分を飽和NaCl溶液(500mL)で洗浄した。その合わせた有機層に水(35mL)を加え、その溶液を真空中で100mLの最終量まで濃縮した。MTBE(400mL)を加え、その混合物を真空中で100mLの最終量まで濃縮した。追加のMTBE(400mL)を加え、その懸濁液をRTで2時間にわたって撹拌した。得られたスラリーを濾過し、MTBE(200mL)ですすぎ、真空中45℃で12時間乾燥した後、XVを61%の収率(70g)で得た。融点196℃〜198℃。
【0124】
【化38】

ES−MS:[M+H]C1115NOに対する計算値:226.10、実測値:226.27
ステップ3:
【0125】
【化39】

温度計および機械撹拌器を備えた三つ口の1Lフラスコに、PhPCHBr(122.9g、344.1mmol)およびトルエン(100mL)を仕込んだ。10℃でNaHMDSのトルエン中の溶液(540mL、13%)をゆっくり加え、温度を10℃に維持した。このスラリーを10℃で1時間撹拌し、次に、トルエン(100mL)中のXV(50g、222mmol)の10℃のスラリーに蠕動ポンプにより2〜4時間をかけてゆっくり加えた。さらに1時間撹拌した後、そのバッチを、NaCl(10%水溶液)、AcOH(38.5mL、666mmol)、およびトルエン(50mL)の溶液中に25℃で30分かけて入れて失活させた。得られた混合物を30分間撹拌し、層を安定させ、分割して下の水層を除去した。有機層を、次に、MgCl粉末(70g、776mmol)によりRTで2時間処理した。その固体を次に濾別し、固体のMgCl−トリフェニルホスフィンオキシド錯体を、MTBE(100mL)で洗浄した。その有機濾液を合わせ、NaCl水(100mL、10%)で洗浄し、真空中で100mLまで濃縮した。得られたスラリーにヘプタン(400mL)を加え、その容量を真空中で100mLまで減少させた。追加のヘプタン(400mL)を加え、その容量を真空中で250mLまで減少させた。ヘプタンの第3の分(400mL)を加え、そのバッチを次に0℃まで2時間かけて冷却し、この温度でさらに2時間撹拌した。その固体を次に濾過によって除去し、氷冷N−ヘプタン(200mL)で洗浄した。そのウェットケーキを真空下30℃で18時間乾燥して、オフホワイト固体としての62gのXVI(63%の収率)を生成した。融点85℃〜87℃。
【0126】
【化40】

ES−MS:[M+H]C1218NOに対する計算値:224.12、実測値:224.38。
【0127】
ステップ4:
撹拌器、温度計、および窒素導入管を備えた500mLの三つ口フラスコ(1)に、XIV(30.0g、132mmol)およびTHF(300mL)を加えた。混合物を−20℃に冷却した後、水素化リチウムトリ(t−ブトキシ)アルミニウム(1M THF、162mL)を、−20℃前後の温度を維持しながら2時間かけて加えた。温度を次に12時間かけて0℃まで上げた。その反応物を、30分間かけてEtOAc(12.0mL)を加え、続いて0℃で30分間撹拌し、次いで氷AcOH(12.0mL)をゆっくり30分間かけて加えて失活させた。撹拌器、温度計、および窒素導入管を備えた別の1Lの三つ口フラスコ(2)に、微細に粉砕した硫酸ナトリウム十水和物(30g、93mol)およびTHF(150mL)を0℃で加えた。フラスコ(1)中の反応混合物を、硫酸ナトリウム十水和物を含有するフラスコ(2)に温度を0℃に維持しながらゆっくり移した。フラスコ(2)の温度を1時間かけて上昇させ、20℃で1時間撹拌した。フラスコ(2)の内容物を濾過し、そのウェットケーキをTHFにより3回洗浄し(180mL、120mL、および次に120mL)、その濾液を合わせて真空中で60mLまで濃縮した。撹拌器、温度計、および窒素導入管を備えた1000mLの三つ口フラスコ(3)に、水(300mL)を加えた。フラスコ(2)からの混合物を5℃に冷却し、次にその水に激しい撹拌と共に2時間をかけて加えると、その結果その生成物は沈殿した。そのスラリーを真空中で450mLまで濃縮し、その固体を濾過によって単離した。そのウェットケーキを50℃で12時間乾燥して、白色/オフホワイトの固体としての25.1gの式IIの化合物を83%の収率で提供した。融点88℃。
【0128】
【化41】

LC/MS C1220NO[M+H](m/z)に対する質量計算値:226.14377、実測値:226.14398。
【0129】
(実施例4)
【0130】
【化42】

5(R)−[[[l(S)−[[l(R)−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ]メチル]−l−フェニル−2−プロペニル]アミノ]メチル]−5−エテニル−2−ピロリジノン4−メチルベンゼンスルホネート水和物
【0131】
【化43】

a)EtOH(50mL)中のII(49.6g、0.22mol)およびEtN(50mL)の混合物に、水(50mL)をRTで加えた。得られた混合物を25℃で撹拌した。4時間後、さらなるEtOH(350mL)を加え、その混合物を真空中で180mLまで濃縮した。
b)トルエン(440mL)中のIVa(100g、0.193mol)の混合物に、RTでNaOH水溶液(440mL、1N)を加えた。その反応混合物をRTで30分間撹拌した。その水層を分離し、その有機層を10%のNaCl水溶液(440mL)で2回洗浄した。その粗生成物IV遊離塩基をさらなる精製はしないで使用した。
【0132】
そのEtOH中のIIIの粗溶液を、次に、上記のトルエン中のIV遊離塩基の溶液に加え、その得られた混合物を加熱して還流させた。水を共沸蒸留によって反応物から除去し、変換率に基づいて必要な場合は、さらなるトルエン/EtOH(3/2v/v)を加えた。反応が完了した後、EtOHをトルエンとの溶媒交換により除去し、トルエン(530mL)中のVの粗溶液をトルエン(270mL)中のNaBH(OAc)(57.3g、0.27mol)およびAcOH(15.5mL、0.27mol)の混合物にRTでゆっくり加えた。その反応混合物を、RTで約6時間撹拌し、次いで、水(440mL)をゆっくり加え、得られた混合物をRTで1時間撹拌した。その水層を分離し、その有機層を5%のNaHCO水溶液(440mL)で1回と、10%のNaCl水溶液(440mL)で2回洗浄し、VIの溶液を得た。溶媒を、真空蒸留によりイソプロパノールに交換した。
c)該イソプロパノール(200mL)中のVIの粗遊離塩基溶液に、p−トルエンスルホン酸(40.4g、0.212mol)のイソプロパノール(270mL)中の溶液をRTで加え、続いて、水(440mL)を加えた。その混合物に結晶のVIa約0.5gを種晶として添加し、RTで1時間撹拌した後さらに水(880mL)を加えた。RTで8時間撹拌した後、結晶を濾過して集め、イソプロパノール/水、水およびヘプタンにより洗浄し、乾燥して、白色結晶粉末としてのVIaを生じさせた(122g、V基準の収率88%)。融点80.2〜93.4℃。
【0133】
【化44】

(実施例5)
【0134】
【化45】

(5R,8S)−8−[1−(R)−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−エトキシメチル]−8−フェニル−1,7−ジアザ−スピロ[4.5]デカ−9−エン−2−オン塩酸塩
130.0g(181.4mmol)のVIa(VIp−トルエンスルホン酸(TsOH)一水和物)および51.7g(272.1mmol)のトルエンスルホン酸のトルエン(3.25L)中の溶液を、減圧下(60〜80mmHg)50℃で、1.95Lの最終量まで蒸留した。蒸留が完了した時点で、VIaおよびトルエンエンスルホン酸を含有するトルエン溶液を約80mmHgまで排気し、次いで液面下に沈めた針によりNでパージした。このスパージング作業を2回繰り返した。第2の反応器中で、構造
【0135】
【化46】

を有する1.14g(1.8mmol)のHoveyda−Grubbsの第二世代の触媒(HG−II)を無水の脱気したトルエン(650mL、上記のトルエン溶液と全く同様のやり方で調製した)に溶解した。この触媒溶液を、60℃と80℃の間の温度で第1の反応器に30分間かけてゆっくり加えた。その反応混合物を同じ温度範囲で4時間撹拌し、変換率をHPLCにより測定した。その反応が完了した時点で、16%のNa水溶液(650mL)をその反応器に30分間かけて加え、60〜80℃で3時間撹拌し、その後その混合物を25℃まで冷却し、0.5NのNaHCO水溶液(650mL)を加えた。その2相の混合物を次に25℃で1時間撹拌し、そのまま安定させ、下の水層および界面を除去した。その有機相を0.5NのNaHCO水(1.3L)により、次に10%のNaCl水(1.3L)により、最後に水(1.3L)により洗浄した。その有機相をセライトのパッドにより濾過し、その濾液に12NのHCl水(14.4mL)を加えた。そのトルエン/HOを50℃より上の温度の真空下(50〜60mmHg)で390mLより少なくなるまで濃縮した。その得られた溶液を45℃まで冷却し、ヘプタン(65mL)中のVIIaを種晶として添加した。45℃で30分間撹拌した後、その反応混合物を45℃から20℃に6時間かけて冷却した。次いで、ヘプタン(1.82L)を20℃のその反応混合物に3時間かけて加えた。その固体の沈殿を、濾過し、ヘプタン(520mL)により洗浄した。そのウェットケーキを25℃で4時間、次いで、真空オーブン中65℃で一晩乾燥して、灰色〜白色固体としての83gのVIIa(85%の収率)を提供した。さらに、その水層を、合わせて濾過し、Ru塩を回収することができる。融点190〜195℃。
【0136】
【化47】

ES−MS:C2525に対して計算した[M+H]:499.18;実測値:499.05。
【0137】
(実施例5a)
PTCの存在下でのメタセシス触媒の還元
HPLCが式VIaの化合物の式VIIaの化合物への完全な変換を示すまで上記のようにして実施例5を繰り返した。その反応が完了した時点で、16%のNa水溶液(650mL)をその反応器に30分間かけて2.5gの塩化テトラ−n−ブチルアンモニウムと共に加えた。その反応混合物の温度を60℃と80℃の間に維持して、その混合物を0.7時間撹拌し、その後その混合物を25℃まで冷却し、0.5NのNaHCOの水溶液(650mL)を加えた。その二相混合物を次に25℃で1時間撹拌し、そのまま安定させ、その下の水層および界面を除去し、その反応混合物を実施例5に記載したように仕上げた。その結果は、同様であり、本明細書の上で記したスキーム4のプロセスによるメタセシス触媒の還元におけるPTCの使用によって提供される利点を実証した。
【0138】
(実施例6)
【0139】
【化48】

(5S,8S)−8−[1−(R)−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−エトキシメチル]−8−フェニル−1,7−ジアザ−スピロ[4.5]デカン−2−オン塩酸水和物
トルエン(600mL)中のVIIa(100g、0.187mol)の混合物に、NaOH水(5%、300mL)を加えた。その混合物を15分間撹拌した後、有機層を分離し、ブライン(10%、2×500mL)で洗浄した。その有機層を次にPd/C(10g、50%ウェットのカーボン中10%)およびNuchar−Aquaquard(50g)により60〜80psiで4〜8時間または反応が完了するまで水素化にかけた。その反応物をセライトのパッドにより濾過した。そのセライトをトルエン(100mL)で洗浄した。その合わせたトルエン溶液を500mLまで濃縮した。HCl水溶液(約35%、20ml、約1.3当量)をその反応溶液中にゆっくり加え、その混合物を0℃までゆっくり冷却した。その生成物を濾過によって集め、トルエンおよびMTBEの溶液(1:1)により洗浄した。そのウェットケーキを40〜45℃で乾燥して95gの白色〜オフホワイトの固体としてのVIIIを生じさせた(95%の収率)。融点152〜154℃。
【0140】
【化49】

(実施例7)
【0141】
【化50】

(5S,8S)−8−(1−(R)−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ)メチル)−8−フェニル−1,7−ジアザスピロ[4.5]デカン−2−オン塩酸一水和物
方法1:VIII(20g)を、155.0gのEtOH−イソプロパノール−水−HCl原液(原液作製:168.6gの無水EtOH、368.7gの水、11.6gのイソプロパノール、1.6gの37%HCl)中に懸濁させ、透明な溶液が得られるまで加熱して還流(78〜79℃)させた。その混合物を次に72℃と73℃の間の温度にゆっくり冷却し、場合によって、20mlの原液中に懸濁させた0.4gの微粉化したIaを種晶として添加した。使用するその種晶の量は、生成物の粒径分布(PSD)に変化を生じさせるために0.0と2.0gの間で変えることができる。そのバッチはさらに0.5℃/分の速さで0℃まで冷却し、真空下で濾過し、40mLの原液により洗浄した。最後にそのバッチは、真空下40℃の温度で少なくとも18時間乾燥し、18.7gの白色固体としてのIaを生じさせた(91.2%)。
【0142】
方法2:30グラムのVIIIを231〜232gの40:60の容積%のEtOH−水の原液(原液作製:400mLのEtOH(95%EtOH、5%MeOH)、600mLの水)中に懸濁させ、透明な溶液が得られるまで加熱して還流(78〜79℃)させた。その混合物を次に67.5℃と68.5℃の間の温度にゆっくり冷却し、30mLの原液中に懸濁させた1.5gの微粉化したIaを種晶として添加した。使用するその種晶の量は、生成物のPSDに変化を生じさせるために0.0と3.0gの間で変えることができる。そのバッチはさらに0.5℃/分の速さで0℃まで冷却し、収率を向上させるために35gの追加の水を加えた。そのバッチを、真空下で濾過し、60mLの35:65の容積比のEtOH:水の溶液により洗浄した。最後にそのバッチは、真空下40℃の温度で少なくとも18時間乾燥し、28.2〜28.9gのIaを生成した(89.6〜91.8%)。
【0143】
方法3:VIII(11.6g)をEtOH(47mL)中にRTで溶解した。その溶液に水(186mL)を約35分間かけて加え、その懸濁液の温度を25℃に維持した。その得られた懸濁液を、収率を向上させるために0℃まで冷却し、30分間撹拌した。そのバッチを次に真空下で濾過し、25mLの20:80の容積比のEtOH:水の溶液により洗浄した。最後にそのバッチを、真空下40℃の温度で少なくとも18時間乾燥した。収量:9.7g(83.6%)。
【0144】
方法4:VIII(22.9g)をEtOH(76mL)中にRTで溶解した。その溶液を次に濾過し、約25分間をかけて水(366.8g)を加えた。その得られた懸濁液を、収率を向上させるために0℃まで冷却し、30分間撹拌した。そのバッチを次に真空下で濾過し、70mLの20:80の容積比のEtOH:水の溶液により洗浄した。最後にそのバッチを、真空下40℃の温度で少なくとも18時間乾燥した。収量:20.4g(89.1%)。
【0145】
方法5:VIII(16.4g)をトルエン(115mL)中に25℃で懸濁させた。50mLの1NのNaOH溶液をその懸濁液に加え、そのバッチを30〜60分間撹拌した。そのバッチを次に、そのまま約30分間分離させ、底の水の層を除去した。その有機層に2.82gの37%HClを加えてIaの塩酸塩一水和物を形成して沈殿させた。そのバッチを30分間撹拌し、次に真空下で濾過し、トルエン(32mL)で洗浄した。最後にそのバッチを、真空下40℃の温度で少なくとも18時間乾燥して12.4gのIa(75.6%)を提供した。
【0146】
同様の手順を用いて、異性体Ib〜Ihを調製した。それらの化合物についての物理データは以下の通りである。
【0147】
式Ib(S,R,R):
カラムクロマトグラフィー後に薄茶色の油として単離。
【0148】
【化51】

MS.C2526−HCl.HOに対して計算、(M+H)500.47(m/z):500.19。
【0149】
式Ic(R,S,R):
ジエチルエーテルからオフホワイト固体として単離。
【0150】
【化52】

MS.C2526−HCl.HOに対して計算、(M+H)500.47(m/z):500.18。
【0151】
式Id(R,R,R):
1:2のジエチルエーテル/ヘプタン中での粉砕を経てカラムクロマトグラフィーにより精製後オフホワイトの固体として単離。
【0152】
【化53】

MS.C2526−HCl.HOに対して計算、(M+H)500.47(m/z):500.34。
【0153】
式Ie(S,S,S):
カラムクロマトグラフィー後ジエチルエーテル中10℃で3時間粉砕することによって微細な白色のHCl塩として単離。
【0154】
【化54】

MS.C2526−HCl.HOに対して計算、(M+H)500.47(m/z):500.4。
【0155】
式If(S,R,S):
カラムクロマトグラフィーにより精製後、ジエチルエーテルからオフホワイトのHCl塩として単離。
【0156】
【化55】

MS.C2526−HCl.HOに対して計算、(M+H)500.47(m/z):500.3。
【0157】
式Ig(R,S,S):
カラムクロマトグラフィーによって精製後ジエチルエーテル中5℃で12時間粉砕したオフホワイトのHCl塩として単離。
【0158】
【化56】

MS.C2526−HCl.HOに対して計算、(M+H)500.47(m/z):500.33。
【0159】
式Ih(R,R,S):
カラムクロマトグラフィーによって精製後ジエチルエーテル中5℃で3時間粉砕することによりHCl塩として単離。
【0160】
【化57】

MS.C2526−HCl.HOに対して計算、(M+H)500.47(m/z):500.3。
【0161】
本発明の上の記述は、説明を意図するものであり限定することを意図するものではない。本明細書に記載されている実施形態においてさまざまな変化または修正が当業者には思いつくかもしれない。これらの変更内容は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく生じさせることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式VIIIa:
【化58】

の化合物を製造するためのプロセスであって、
前記プロセスが、
(a)式VIa:
【化59】

の塩化合物を、閉環メタセシス触媒の存在下および場合によって追加の酸の存在下で環化し、それによって、式VIIb、
【化60】

の対応するジアザスピロデセン−オン(diazaspirodecene−one)化合物を形成するステップと、
(b)ステップ「a」からの式VIIbの化合物を式VII、
【化61】

の塩化合物に変換し、式VIIの前記塩化合物をステップ(c)に提供するステップであって、ここで、前記式の「塩3」は、式VIIの前記化合物中の塩基性官能基に結合し、そこで配位しているアニオン部分と会合している少なくとも1つのプロトンを表す、ステップと、
(c)ステップ(b)からの式VIIの前記化合物を還元して式VIII、
【化62】

の化合物を得るステップと、
(d)場合によって式VIIIaの化合物のHCl塩を沈殿させて式VIII、
【化63】

の塩化合物を得、場合によって前記沈殿させた塩形態を再結晶させて式Ia、
【化64】

の化合物を得るステップと
を含む、プロセス。
【請求項2】
ステップ(a)が、最大2当量までの追加の4−メチルベンゼンスルホン酸一水和物の存在下で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップ(a)の後でありかつステップ(b)の前に、(i)反応混合物を、還元試薬を含む水相と前記メタセシス触媒を還元するのに適切な条件下で接触させるステップと、(ii)前記反応混合物を、前記水相および還元ステップ(i)の間に形成されたあらゆる沈殿物から分離するステップとを含む還元ステップをさらに含む、請求項1または2のいずれかに記載のプロセス。
【請求項4】
前記還元ステップのパート(i)の前記水相が、相間移動触媒をさらに含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記相間移動触媒が、第四級アンモニウム塩である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記閉環メタセシス触媒が、8族遷移金属または6族遷移金属およびカルベン配位子を含む、請求項1から5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
前記メタセシス触媒が、
(i)式XXa、
【化65】

の触媒であって、式中、
点線は、任意の結合を表し、
Arは、フェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、または2,6−ジメチルフェニルであり、
は、Rに結合していないときは(LとRの間の半円の点線は任意の結合を示している)、ホスフィン配位子であり、LとRの間で半円の任意の結合の点線により示されているようにRに結合しているときは、LはRと二座配位子を形成しており、Lは、さらなる置換基を有するかもしくは有さない酸素部分、亜リン酸部分(phosphorous moiety)、または窒素部分であり、
は、アリール、アルキル、または水素から独立して選択され、
は、アルキル部分またはアリール部分であり、または、RがLに結合していないとき、Rは、アルキル部分、アリール部分、または水素原子であり、
(X)は、強酸の共役塩基であり、
Mは、ルテニウム、パラジウム、またはイリジウムである、
触媒、
(ii)式XX、
【化66】

の触媒であって、式中、
金属(M)は、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、またはモリブデンであり、
(L)は、(i)ホスフィン配位子、または(ii)キレート化配位子であり、
Xは、強酸の共役塩基であり、
およびRは、それぞれ独立して、H、フェニル、ハロゲンまたはアルキルである、
触媒、あるいは
(iii)式XXd、
【化67】

の触媒であって、式中、
点線は、任意の二重結合を表しており、
(M)は、モリブデン、ルテニウム、パラジウムまたはイリジウムであり、
は、独立して、アリール、アルキル、または水素であり、
Arは、アリールまたはベンジルであり、
Xは、ハロゲン部分またはスルホネート部分である、
触媒
である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記メタセシス触媒が、式XXd1:
【化68】

の化合物であり、式中、「Mes」は、2,4,6−トリメチルフェニル部分である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記メタセシス触媒が、式XXd2:
【化69】

の触媒であり、式中、「Mes」は、2,4,6−トリメチルフェニル部分である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
前記メタセシス触媒が、式XXd3:
【化70】

の化合物であり、式中、「Mes」は、2,4,6−トリメチルフェニル部分である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記メタセシス触媒が、式XXd4:
【化71】

の化合物である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
ステップ(a)の後で使用される前記還元試薬が、(i)Na、NaSO、NaSOH、NaOC(O)H、またはNaHPOのうちの1つまたは複数、(ii)亜リン酸、(iii)水素化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、または水素化アルミニウムリチウムのうちの1つまたは複数、(iv)水素と金属水素化触媒とで行われる還元、(v)アスコルビン酸またはシュウ酸、(vi)過酸化水素、あるいは(vii)銅、亜鉛、鉄またはマグネシウム金属のうちの1つまたは複数、である、請求項2から11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
前記還元試薬が、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na)、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)、ギ酸ナトリウム(NaOC(O)H)、次亜リン酸(ホスフィン酸、HPO)、または亜リン酸ナトリウム塩(NaHPO)、あるいはそれらの2つ以上の混合物である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
相間移動触媒が、前記メタセシス還元ステップ中に含められ、前記相間移動触媒が、式(CH(CHを有し、式中、「X」は、Cl、Br、F、IHSO、または2分の1当量の(SO−2)である、請求項4から11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
前記式VIの化合物が、スキームAa:
【化72】

の中に図示されているプロセスによって提供され、
ここで、前記プロセスが、
(i)第三級アミンの存在下で水混和性の溶媒中に式IIIの遊離塩基化合物を提供するステップと、
(ii)ステップ(i)からの溶液を式IVの遊離塩基化合物と混合し、前記混合物を加熱して前記混合物から水を共沸蒸留させ、それによって式Vのイミン化合物を生成させるステップと、
(iii)ステップ(ii)で調製された式Vのジエン−イミン(diene−imine)化合物を還元して対応する式VIa、
【化73】

のジエン−イミン化合物を得て、それを、対応する式VI、
【化74】

の塩化合物、[5(R)−[[[1(S)−[[1(R)−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル]エトキシ]−メチル]−1−フェニル−2−プロペニル]アミノ]メチル]−5−エテニル−2−ピロリジノン][塩2]に変換するステップであって、ここで、「塩2」は、式VIの前記化合物中の塩基性官能基に結合し、そこで配位しているアニオン部分と会合している少なくとも1つのプロトンを表す、ステップと
を含む、請求項1から14のいずれかに記載のプロセス。
【請求項16】
式IIIの前記化合物が、式II、
【化75】

の化合物を塩基で処理することによって提供される、請求項1から15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項17】
式IVの前記化合物が、スキーム2、
【化76】

の中に図示されているプロセスによって提供され、
前記プロセスが、
ステップ2−1:
PhCH(OCHにより示される2−フェニルグリシン誘導体を環化して式IXのオキサゾリジノンを得るステップであって、式中、Cbzは、カルボキシベンジル−アミン保護基である、ステップ、
ステップ2−2:
式IXの前記化合物を、[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−エトキシ−ブロモメチルエーテルと組み合わせて式Xのラクトンを得るステップ、
ステップ2−3:
式Xの前記ラクトンを還元して式XIのラクトールにするステップ、
ステップ2−4:
式XIの前記ラクトールを開環して式XIIのアルデヒドを得るステップ、
ステップ2−5:
式XIIの前記アルデヒドを式XIIIのアルケニルアミンに変換するステップ、および
ステップ2−6:
式XIIIの前記アルケニルアミンを脱保護し、かくして得られた対応する遊離塩基を式IVの塩に変換するステップ
を含む、請求項1から16のいずれかに記載のプロセス。
【請求項18】
式IIの前記化合物が、スキームIII
【化77】

の中に図示されているプロセスに従って提供され、
前記プロセスが、
ステップ3−1:
ピログルタミン酸をトリメチルアセトアルデヒドおよびメタンスルホン酸により処理して式XIVの(3R,6S)−3−tert−ブチルジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−c][1,3]オキサゾール−1,5(6H)−ジオンを得るステップ、
ステップ3−2:
式XIVのピロロ[1,2−c][1,3]オキサゾール−1,5(6H)−ジオンをギ酸メチルと反応させて式XVのピロロ[1,2−c]オキサゾール−7a−カルバルデヒドを得るステップ、
ステップ3−3:
式XVの前記カルバルデヒドを式XVIの7a−ビニル−ジヒドロ−ピロロ[1,2−c][1,3]オキサゾール−1,5−ジオンに変換するステップ、および
ステップ3−4:
式XVIの前記ジオンを還元して式IIの(3R)−1,1−ジメチル−7a(R)−エテニル−テトラヒドロ−1(R/S)−ヒドロキシ−3H,5H=ピロロ[1,2−c]オキサゾール−5−オンを得るステップ
を含む、請求項1から16のいずれかに記載のプロセス。
【請求項19】
ステップ「c」が、
(i)ステップ(b)からの式VIIの前記化合物を、それを塩基により処理することによって式VIIbの対応する遊離塩基に変換するステップ、および
(ii)式VIIbの前記遊離塩基を還元して式VIIIa、
【化78】

の化合物を得るステップ
を含むプロセスによって場合によって置き換えられる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
ステップ「c」が、式VIIの前記塩化合物を、対応する遊離塩基中間体を提供することなく、直接還元剤により処理することによって行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
以下の式:
【化79】

の化合物。

【公表番号】特表2012−502053(P2012−502053A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526223(P2011−526223)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/056020
【国際公開番号】WO2010/028232
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(510087760)オプコ ヘルス, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】