説明

9,11エポキシステロイドの改良型製造方法

エポキシ化反応に関する方法が記載される。特に当該方法は、過酸化物活性剤の存在下での基質とペルオキシド化合物との反応による、ステロイド核中にオレフィン性不飽和を有するステロイド基質の9,11‐エポキシ置換基を含む構造への転化を包含する。記載されるエポキシ化方法は、相対的に低い過酸化水素対ステロイド基質比で実行される。いくつかの任意の方法修正が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、9,11エポキシステロイド化合物、特に20‐スピロキサン・シリーズのもの、およびそれらの類似体の改良型製造方法に関する。さらに特に、本発明は、メチル水素9,11α‐エポキシ‐17α‐ヒドロキシ‐3‐オキソプレグン‐4‐エン‐7α,21‐ジカルボキシレート、γ‐ラクトン(エプレレノンまたはエポキシメキセレノンとしても既知)に、あるいは他の9,11‐エポキシ,20‐スピロキサンステロイドに転化され得る中間体の新規の且つ有益な製造方法に関する。
【0002】
20‐スピロキサン・シリーズ化合物の製造方法は、米国特許第4,559,332号に記載されている。’332特許の方法に従って生成される化合物、そしてXがオキソを表わし、そしてY2がヒドロキシを表わすこのような化合物の塩、即ち対応する17β‐ヒドロキシ‐21‐カルボン酸、その塩、およびそれに由来する17‐スピロラクトンは、一般式IA:
【0003】
【化1】

【0004】
(式中、Y1、Y2、‐A‐A‐、R1およびR2は、米国特許第4,559,332号(この記載内容は、参照により本明細書中で援用される)で定義されたものと同様である)の開放酸素含有環Eを有する。
【0005】
米国特許第4,559,332号は、式IAのエポキシメクスレノンおよび関連化合物の多数の製造方法を記載する。エポキシメクスレノンに関する新しい且つ拡大された臨床的使用の出現は、このおよびその他の関連ステロイドの改良型製造方法に対する必要性を生じる。
【0006】
エプレレノンの新規の且つ有益な製造方法は、米国特許第6,586,591号、第6,331,622号、第6,180,780号および第5,981,744号(これらの記載内容は各々、参照により本明細書中で援用される)に記載されている。
【0007】
本発明に従って製造される20‐スピロキサン化合物の有用性も、米国特許第4,559,332号(Grob)に記載されている。
【0008】
本発明に従って製造される20‐スピロキサン化合物は、好ましい生物学的特性により区別され、したがって有益な薬学的活性成分である。例えばそれらは強力なアルドステロン拮抗作用を有し、この場合、それらはアルドステロンにより引き起こされる過度の高ナトリウム保持およびカリウム排出を低減し、そして正常化する。したがってそれらは、カリウム保持性利尿薬として、例えば高血圧、心不全または肝硬変の治療において、重要な治療的用途を有する。
【0009】
アルドステロン拮抗作用を有する20‐スピロキサン誘導体は既知であり(例えばFieser and Fieser: Steroids; page 708 (Reinhold Publ. Corp., New York, 1959)および英国特許明細書第1,041,534号と比較)、そして同様に活性な17β‐ヒドロキシ‐21‐カルボン酸およびそれらの塩も既知である(例えば米国特許第3,849,404号と比較)。しかしながらこれまで療法に用いられてきたこの種の化合物は、それらが通例の長期療法において、遅かれ早かれ、厄介な結果を有するある種の性特異的活性を常に有するという点で、少なからぬ欠点を有する。特に望ましくないのは、既知の抗アルドステロン製剤の抗アンドロゲン活性に起因し得る厄介な作用である。
【発明の開示】
【0010】
発明の要約
本発明の種々の好ましい実施形態のいくつかの目的の中で特に言及され得るのは、エポキシステロイド化合物の製造方法(ステロイド核中の不飽和結合の酸化を包含する)の提示;9,11二重結合全体のエポキシ化を包含するこのような方法の提示;ならびに9,11‐エポキシ‐20‐スピロキサン(即ち17‐スピロラクトン)ステロイド、例えばエプレレノンの製造方法の提示である。
【0011】
本明細書中に記載される方法は、エプレレノンまたはその他のエポキシステロイドを高収率で生成し得るし、ならびに高度検定でエポキシステロイド生成物の回収を可能にし、そして合理的な資本支出および転化経費で実行され得る。
【0012】
要するに、本発明は従ってその核中に不飽和の部位を含むステロイドがエポキシ化反応帯中の過酸化物化合物と反応するエポキシステロイドの製造方法であって、過酸化物化合物対不飽和ステロイド基質のモル投入比が約7以下である方法に向けられる。
【0013】
別の態様では、本発明は、その核中に不飽和の部位を含むステロイドがエポキシ化反応帯中の過酸化物化合物と反応するエポキシステロイドの製造方法であって、過酸化物化合物対不飽和ステロイド基質のモル投入比ならびに方法の条件が、過酸化物化合物の自己触媒的分解を回避するか、または好ましくは完全に排除するようなものである方法に向けられる。
【0014】
さらなる態様において、本発明は、不飽和部位の二重結合炭素が二置換または三置換されるエポキシステロイドの製造方法に向けられる。Δ9,11基質のエポキシ化において、例えば9,11‐エポキシ‐17‐スピロラクトン化合物、例えばエプレレノンの調製において、本発明の方法を用いることは特に有益である。
【0015】
本明細書中に記載されるような方法は、ステロイド基質のための溶媒を含む有機相および水性過酸化物溶液の両方を含む液体反応媒質中のステロイド基質のエポキシ化において有用である。
【0016】
本明細書中で用いる場合、「反応混合物」および「反応物質」という用語は、反応周期の終了時に得られる混合物を含めて、エポキシ化反応における任意の時点で生成される混合物、普通は二相混合物を表わすために、実質的に互換的に用いられる。一節において、文脈は、これらの用語の一方または他方が転化周期の終了時に得られる混合物を指す、ということを示す。
【0017】
本発明の方法の例示的実施形態はさらに、以下の本明細書中に、そしてそれに添付される特許請求の範囲に記載される。
【0018】
その他の目的および特徴は、一部は明らかであり、そして一部は後述の本明細書中で指摘される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
好ましい実施形態の説明
本明細書中に記載される方法によるエポキシ化は、ステロイド核中の不飽和の部位で実行され得る。本明細書中に記載されるように、当該方法は、9,11‐オレフィンのような三置換結合のエポキシ化において特に有益である。
【0020】
本発明の方法に有用であるΔ9,11‐基質としては、例えば以下のものが挙げられる:
【0021】
【化2】

【0022】
式中、R10、R12およびR13は、独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され;
【0023】
‐A‐A‐は、基‐CHR1‐CHR2‐または‐CR1=CR2‐を表わし;
【0024】
ここで、R1およびR2は、独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、あるいはR1およびR2は、それらが結合されるステロイド主鎖の炭素と一緒になって、シクロアルキル基を形成し;
【0025】
‐B‐B‐は、基‐CHR15‐CHR16‐、‐CR15=CR16あるいはα‐またはβ‐配向基を表わし:
【0026】
【化3】

【0027】
ここで、R15およびR16は、独立して、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、あるいはR15およびR16は、それらが結合されるステロイド核のC‐15およびC‐16炭素と一緒になって、シクロアルキレン基(例えばシクロプロピレン)を形成し;
【0028】
8およびR9は、独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルキニル、ハロ、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、あるいはR8およびR9は一緒に、炭素環式または複素環式環構造を構成するか、あるいはR8およびR9は、R6またはR7と一緒になって、五環式D環と縮合される炭素環式または複素環式環構造を構成し;
【0029】
‐G‐J‐は、以下の基を表わし:
【0030】
【化4】

【0031】
ここで、R11は水素、アルキル、置換アルキルおよびアリールから成る群から選択され;
【0032】
‐D‐D‐は、以下の基を表わし:
【0033】
【化5】

【0034】
ここで、R4およびR5は、独立して、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、あるいはR4およびR5は、それらが結合されるステロイド主鎖の炭素と一緒になって、シクロアルキル基を形成し;
【0035】
‐E‐E‐は、基‐CHR6‐CHR7‐または‐CR6=CR7を表わし;
【0036】
ここで、R6は、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され;そして
【0037】
7は、水素、ヒドロキシ、保護化ヒドロキシ、ハロ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノ、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アセチルチオ、フリルおよび置換フリルからなる群から選択され;あるいは
【0038】
6およびR7は、R6およびR7がそれぞれ結合されるステロイド核のC‐6およびC‐7炭素と一緒になって、シクロアルキレン基を形成し;
【0039】
あるいはR5およびR7は、ステロイド核のC‐5、C‐6およびC‐7炭素と一緒になって、ステロイド核に縮合される五環式環を形成し、そして以下の構造式に対応する5,7‐ラクトール、5,7‐ヘミアセタルまたは5,7‐ラクトンを構成する:
【0040】
【化6】

【0041】
式中、R71は、=CH(OH)、=CH(OR72)または=CH=Oを含む。
【0042】
11は、好ましくは水素であるが、しかしアルキル、置換アルキルまたはアリールでもあり得る。R11が置換アルキルである場合、置換基は、ハロゲン化物、ならびにエポキシド環を不安定にしない他の部分を包含し得る。R11がアリールである場合、それは強電子求引性でない置換基を包含し得る。
【0043】
種々の好ましい実施形態において、式1599に対応する3‐ケト構造、R12、R10およびR13は、独立して、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、フルオロメチル、フルオロエチル、フルオロプロピル、フルオロブチル、クロロメチル、クロロエチル、クロロプロピル、クロロブチル、ブロモメチル、ブロモエチル、ブロモプロピル、ブロモブチル、ヨードメチル、ヨードエチル、ヨードプロピル、ヨードブチル、ヒドロキシ、メチル、エチル、直鎖、分枝鎖または環状プロピルおよびブチル;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシブチル、ヒドロキシカルボニル、シアノ、フェノキシ、ベンジルオキシからなる群から選択され;
【0044】
‐A‐A‐は、基‐CHR1‐CHR2‐または‐CR1=CR2‐を表わし;
【0045】
1およびR2は、独立して、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシブチル、ヒドロキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、アセトキシメチル、アセトキシエチル、アセトキシプロピル、アセトキシブチル、プロピオニルオキシメチル、プロピオニルオキシエチル、ブチリルオキシメチル、ブチリルオキシエチル、シアノ、フェノキシおよびベンゾキシからなる群から選択され;
【0046】
あるいはR1およびR2は、それらが結合されるステロイド核の炭素と一緒になって、(飽和)シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレンまたはシクロヘプチレン基を形成し;
【0047】
‐B‐B‐は、基‐CHR15‐CHR16‐、‐CR15=CR16‐、あるいはα‐またはβ‐配向基を表わし:
【0048】
【化7】

【0049】
式中、R15およびR16は、独立して、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシブチル、ヒドロキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、アセトキシメチル、アセトキシエチル、アセトキシプロピル、アセトキシブチル、プロピオニルオキシメチル、プロピオニルオキシエチル、ブチリルオキシメチル、ブチリルオキシエチル、シアノ、フェノキシおよびベンゾキシからなる群から選択され;
【0050】
あるいはR15およびR16は、R15およびR16がそれぞれ結合されるステロイド核のC‐15およびC‐16炭素と一緒になって、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン基を形成し;
【0051】
‐D‐D‐は、以下の基を表わし:
【0052】
【化8】

【0053】
式中、R4およびR5は、独立して、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシブチル、ヒドロキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、アセトキシメチル、アセトキシエチル、アセトキシプロピル、アセトキシブチル、プロピオニルオキシメチル、プロピオニルオキシエチル、ブチリルオキシメチル、ブチリルオキシエチル、シアノ、フェノキシおよびベンゾキシからなる群から選択され;あるいはR4およびR5は、それらが結合されるステロイド主鎖の炭素と一緒になって、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレンまたはシクロヘプチレン基を形成し;
【0054】
‐G‐J‐は、以下の基を表わし:
【0055】
【化9】

【0056】
式中、R11は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、デシル、5‐フルオロペンチル、6‐クロロヘキシル、フェニル、p‐トリル、o‐トリルからなる群から選択され;
【0057】
‐E‐E‐は、基‐CHR6‐CHR7‐または‐CR6=CR7‐を表わし;この場合、R6は、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシブチル、ヒドロキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、アセトキシメチル、アセトキシエチル、アセトキシプロピル、アセトキシブチル、プロピオニルオキシメチル、プロピオニルオキシエチル、ブチリルオキシメチル、ブチリルオキシエチル、シアノ、フェノキシおよびベンゾキシからなる群から選択され;そして
【0058】
7は、水素、ヒドロキシル、保護化ヒドロキシル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシブチル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシブチル、ヒドロキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、アセトキシメチル、アセトキシエチル、アセトキシプロピル、アセトキシブチル、プロピオニルオキシメチル、プロピオニルオキシエチル、ブチリルオキシメチル、ブチリルオキシエチル、シアノ、フェノキシ、ベンゾキシ、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、オキサゾリル、アセチルチオ、フリル、置換フリル、チエニルおよび置換チエニルからなる群から選択され;
【0059】
あるいはR6およびR7は、R6およびR7がそれぞれ結合されるステロイド核のC‐6およびC‐7炭素と一緒になって、(飽和)シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン基を形成する。
【0060】
多数の実施形態において、R12は、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、フルオロメチル、フルオロエチル、フルオロプロピル、フルオロブチル、クロロメチル、クロロエチル、クロロプロピル、クロロブチル、ブロモメチル、ブロモエチル、ブロモプロピル、ブロモブチル、ヨードメチル、ヨードエチル、ヨードプロピル、ヨードブチル、ヒドロキシ、メチル、エチル、直鎖、分枝鎖または環状プロピルおよびブチル;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルおよびシアノからなる群から選択され;
【0061】
10およびR13は、メチル、典型的にはβ‐メチルであり;
【0062】
‐A‐A‐は、基‐CH2‐CH2‐または‐CH=CH‐を表わし;
【0063】
‐B‐B‐は、基‐CHR15‐CHR16‐、‐CR15=CR16‐、あるいはα‐またはβ‐配向基を表わし:
【0064】
【化10】

【0065】
式中、R15およびR16は、独立して、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルおよびシアノからなる群から選択され;
【0066】
あるいはR15およびR16は、R15およびR16がそれぞれ結合されるステロイド核のC‐15およびC‐16炭素と一緒になって、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン基を形成し;
【0067】
‐D‐D‐は、以下の基を表わし:
【0068】
【化11】

【0069】
式中、R4およびR5は、独立して、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルおよびシアノからなる群から選択され;
【0070】
‐E‐E‐は、基‐CHR6‐CHR7‐または‐CR6=CR7‐を表わし;この場合、R6は、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルおよびシアノからなる群から選択され;そして
【0071】
7は、水素、ヒドロキシル、保護化ヒドロキシル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、シアノ、フリル、チエニル、置換フリルおよび置換チエニルからなる群から選択され;
【0072】
あるいはR6およびR7は、R6およびR7がそれぞれ結合されるステロイド核のC‐6およびC‐7炭素と一緒になって、(飽和)シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレン基を形成する。
【0073】
種々の好ましい実施形態において、R12は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され;
【0074】
10およびR13は、メチル、特にβ‐メチルであり;
【0075】
‐A‐A‐は、基‐CH2‐CH2‐を表わし;
【0076】
‐B‐B‐は、基‐CHR15‐CHR16‐を表わし;式中、R15およびR16は水素であり;
【0077】
あるいはR15およびR16は、それらがそれぞれ結合されるステロイド核のC‐15およびC‐16炭素と一緒になって、(飽和)シクロアルキレン基を形成し;
【0078】
‐D‐D‐は、以下の基を表わし:
【0079】
【化12】

【0080】
式中、R4は水素であり;
【0081】
‐E‐E‐は、基‐CHR6‐CHR7‐を表わし;ここで、R6は水素であり;
【0082】
この場合、R7は、水素、フリル、置換フリル、チエニル、置換チエニルおよびアセチルチオからなる群から選択され;
【0083】
あるいはR6およびR7は、R6およびR7がそれぞれ結合されるステロイド核のC‐6およびC‐7炭素と一緒になって、(飽和)シクロアルキレン基を形成し;
【0084】
‐G‐J‐は以下の基を表わし:
【0085】
【化13】

【0086】
式中、R11は水素である。
【0087】
別記しない限り、本発明の開示中で「低級」と呼ばれる有機ラジカルは、多くても7、好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する。
【0088】
低級アルコキシカルボニルラジカルは、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec‐ブチルおよびtert‐ブチルに由来するものであり;特に好ましいのは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルおよびイソプロポキシカルボニルである。低級アルコキシラジカルは、好ましくは上記のC1〜C4アルキルラジカルを有するもの、特に第一級C1〜C4アルキルラジカルに由来するものであり;特に好ましいのはメトキシである。低級アルカノイルラジカルは、好ましくは1〜7個の炭素原子を有する直鎖アルキルに由来するものであり;特に好ましいのはホルミルおよびアセチルである。
【0089】
15,16‐位置におけるメチレン架橋は、好ましくはβ配向される。
【0090】
本発明の方法に従って生成され得る好ましいクラスの化合物は、米国特許第4,559,332号に記載された20‐スピロキサン化合物、即ち式IAに対応するものである:
【0091】
【化14】

【0092】
好ましくは本発明の新規の方法により生成される20‐スピロキサン化合物は、Y1およびY2が一緒に酸素架橋‐O‐を表わす式Iのものである。
【0093】
式Iの特に好ましい化合物は、Xがオキソを表わすものである。Xがオキソを表わす式IAの20‐スピロキサン化合物のうち、特に最も好ましいものはY1がY2と一緒に酸素架橋‐O‐を表わすものである。
【0094】
式IおよびIAの特に好ましい化合物は、例えば以下のものである:
9α,11α‐エポキシ‐7α‐メトキシカルボニル‐20‐スピロクス‐4‐エン‐3,21‐ジオン、
9α,11α‐エポキシ‐7α‐エトキシカルボニル‐20‐スピロクス‐4‐エン‐3,21‐ジオン、
9α,11α‐エポキシ‐7α‐イソプロポキシカルボニル‐20‐スピロクス‐4‐エン‐3,21‐ジオン、および
化合物の各々の1,2‐デヒドロ類似体;
【0095】
9α,11α‐エポキシ‐6α,7α‐メチレン‐20‐スピロクス‐4‐エン‐3,21‐ジオン、
9α,11α‐エポキシ‐6β,7β‐メチレン‐20‐スピロクス‐4‐エン‐3,21‐ジオン、
9α,11α‐エポキシ‐6β,7β;15β,16β‐ビスメチレン‐20‐スピロクス‐4‐エン‐3,21‐ジオン、および
これらの化合物の各々の1,2‐デヒドロ類似体;
【0096】
9α,11α‐エポキシ‐7α‐メトキシカルボニル‐17β‐ヒドロキシ‐3‐オキソ‐プレグン‐4‐エン‐21‐カルボン酸、
9α,11α‐エポキシ‐7α‐エトキシカルボニル‐17β‐ヒドロキシ‐3‐オキソ‐プレグン‐4‐エン‐21‐カルボン酸、
9α,11α‐エポキシ‐7α‐イソプロポキシカルボニル‐17β‐ヒドロキシ‐3‐オキソ‐プレグン‐4‐エン‐21‐カルボン酸、
9α,11α‐エポキシ‐17β‐ヒドロキシ‐6α,7α‐メチレン‐3‐オキソ‐プレグン‐4‐エン‐21‐カルボン酸、
9α,11α‐エポキシ‐17β‐ヒドロキシ‐6β,7β‐メチレン‐3‐オキソ‐プレグン‐4‐エン‐21‐カルボン酸、
9α,11α‐エポキシ‐17β‐ヒドロキシ‐6β,7β;15β,16β‐ビスメチレン‐3‐オキソ‐プレグン‐4‐エン‐21‐カルボン酸、および
これらの酸の各々のアルカリ金属塩、特にカリウム塩またはアンモニウム塩、ならびにさらにまた上記カルボン酸のまたはその塩の各々の対応する1,2‐デヒドロ類似体;
【0097】
9α,11α‐エポキシ‐15β,16β‐メチレン‐3,21‐ジオキソ‐20‐スピロクス‐4‐エン‐7α‐カルボン酸メチルエステル、エチルエステルおよびイソプロピルエステル、
9α,11α‐エポキシ‐15β,16β‐メチレン‐3,21‐ジオキソ‐20‐スピロクキサ‐1,4‐ジエン‐7α‐カルボン酸メチルエステル、エチルエステルおよびイソプロピルエステル、
9α,11α‐エポキシ‐3‐オキソ‐20‐スピロクス‐4‐エン‐7α‐カルボン酸メチルエステル、エチルエステルおよびイソプロピルエステル、
9α,11α‐エポキシ‐6β,6β‐メチレン‐20‐スピロクス‐4‐エン‐3‐オン、
9α,11α‐エポキシ‐6β,7β;15β,16β‐ビスメチレン‐20‐スピロクス‐4‐エン‐3‐オン、
9α,11α‐エポキシ‐17β‐ヒドロキシ‐17α(3‐ヒドロキシ‐プロピル)‐3‐オキソ‐アンドロスト‐4‐エン‐7α‐カルボン酸メチルエステル、エチルエステルおよびイソプロピルエステル、
9α,11α‐エポキシ‐17β‐ヒドロキシ‐17α‐(3‐ヒドロキシプロピル)‐6α,7α‐メチレン‐アンドロスト‐4‐エン‐3‐オン、
9α,11α‐エポキシ‐17β‐ヒドロキシ‐17α‐(3‐ヒドロキシプロピル)‐6β,7β‐メチレン‐アンドロスト‐4‐エン‐3‐オン、
9α,11α‐エポキシ‐17β‐ヒドロキシ‐17α‐(3‐ヒドロキシプロピル)‐6β,7β;15β,16β‐ビスメチレン‐アンドロスト‐4‐エン‐3‐オン、
上記のアンドロスタン化合物の17α‐(3‐アセトキシプロピル)および17α‐(3‐ホルミルオキシプロピル)類似体を含み、そして
アンドロスト‐4‐エン‐3‐オンおよび20‐スピロクス‐4‐エン‐3‐オン・シリーズの上記の化合物のすべての1,2‐デヒドロ類似体も含む。
【0098】
式IおよびIAの化合物、ならびに同一の特質的構造特徴を有する類似体化合物の化学名は、以下の方法で一般的命名法に従って得られる:Y1がY2と一緒に‐O‐を表わす化合物に関しては、20‐スピロキサンから(例えばXがオキソを表わし、そしてY1がY2と一緒に‐O‐を表わす式IAの化合物は20‐スピロキサン‐21‐オンに由来する);Y1がY2が各々ヒドロキシを表わし、そしてXがオキソを表わすものに関しては、17β‐ヒドロキシ‐17α‐プレグネン‐21‐カルボン酸から;ならびにY1がY2が各々ヒドロキシを表わし、そしてXが2個の水素原子を表わすものに関しては、17β‐ヒドロキシ‐17α‐(3‐ヒドロキシプロピル)‐アンドロスタンから。環状および直鎖形態、即ちそれぞれラクトンおよび17β‐ヒドロキシ‐21‐カルボン酸およびその塩は、後者が単に前者の水和形態とみなされ得るよう互いに密接に関連するため、別記しない限り、式Iの最終生成物ならびに出発物質および類似構造の中間体の両方において、各々の場合、上記形態はすべて一緒に、前述および後述の本明細書中で理解されるべきである。
【0099】
この反応のための例示的基質としては、Δ‐9,11‐カンレノン、および以下のものが挙げられる:
【0100】
【化15】

【0101】
【化16】

【0102】
一般に本発明のエポキシ化工程は、米国特許第4,559,332号に記載された手法に従って、さらに特定的には米国特許第5,981,744号カラム40の38行〜カラム45の15行に、ならびに実施例26〜28および42〜51に記載されたように、実行される(米国特許第6,610,844号も参照されたい)。第4,559,332号、第5,981,744号および第6,610,844号特許文書は、これらの記載内容が各々、参照により本明細書中で援用される。
【0103】
これらの参考文献中に記載されるようなエポキシ化工程において、適切な溶媒中の.9,11基質の溶液は、活性剤、例えばトリクロルアセトニトリルまたは好ましくはトリクロロアセトアミドの存在下で、水性過酸化水素組成物と接触される。9,11‐エポキシドへの基質の完全転化を保証するという目標で、上記引用参考文献中に記載されているようなエポキシ化反応は、典型的には0.10モルの過酸化水素/ステロイド基質1モルのモル投入比で実行される。
【0104】
エポキシ化反応は、米国特許第号、第号または第号に教示されるかまたは例示されているより有意に低い過酸化水素対.9,11基質比で実行され得る、ということがここに発見された。相対的に低い過酸化物対基質比での操作は、本明細書に以下で考察されるように、いくつかの考え得る利点のいずれかを達成する選択肢を提供する。
【0105】
反応を実行するに際して、好ましくは基質の溶液(活性剤および緩衝剤を伴う)は、エポキシ化反応帯を含む反応容器に先ず投入され、そして過酸化水素の水溶液がそこに付加される。好ましくはステロイド基質およびエポキシ化ステロイド生成物の溶解度が合理的に高く、好ましくは少なくとも約10重量%、さらに好ましくは少なくとも約20重量%であるが、しかし水の溶解度は低く、好ましくは約1重量%未満、さらに好ましくは約0.5重量%未満であるステロイド基質のための溶媒が選択される。このような実施形態においては、エポキシ化反応帯は反応容器内に確立される二相液体反応媒質を含み、有機相中には基質を、そして水性相中には過酸化水素を有する。二相媒質中の基質のエポキシ化は、実質的に溶媒相内にエポキシ化ステロイド反応生成物を含有する反応物質を生じる。特定の理論に囚われずに考えると、反応は有機相中で、または相間の界面で起こり、そして有機相中の極小より多い含水量が有効に反応を遅くする。
【0106】
ステロイドの溶液が反応器中に導入された後、全過酸化物溶液が短時間で付加された後、例えば2〜30分以内、さらに典型的には5〜20分以内に、反応が開始される。反応器に供給される場合に過酸化物溶液の強度が反応の開始時に確立されるべき濃度より大きい場合、水が投入され、そして有機相と混合された後、過酸化物が付加され、その後、反応開始時に所望されるレベルに過酸化物濃度を希釈する容積で水が付加される。過酸化水素が反応周期の開始時に導入される実施形態では、溶媒相および付加過酸化物水溶液は、過酸化物が導入される時に、好ましくは相対的に低い温度で、さらに好ましくは約25℃より低い、典型的には約20℃より低い、さらに典型的には約−5℃〜約15℃の温度に保持される。
【0107】
次に反応は撹拌下で進行する。好ましくは反応は、不活性大気下で、好ましくは反応器上部空間の窒素パージにより、実行される。
【0108】
一般的に、過酸化物活性剤は、次式に対応し得る:
R°C(O)NH2
【0109】
(式中、R°は、少なくともモノクロロメチル基と同じ高さの電子求引強度(シグマ定数により測定)を有する基である)。好ましくは促進剤としては、とりクロロアセトニトリル、トリクロルアセトアミド、または次式に対応する関連化合物が挙げられる:
【0110】
【化17】

【0111】
(式中、X1、X2およびX3は、独立して、ハロ、水素、アルキル、ハロアルキルおよびシアノおよびシアノアルキルの中から選択され、そしてRPは、アリーレンおよび‐(CX45n‐(ここで、nは0または1である)の中から選択され、X1、X2、X3、X4およびX5のうちの少なくとも1つはハロまたはペルハロアルキルである)。X1、X2、X3、X4またはX5のいずれかがハロでない場合、それは好ましくはハロアルキル、最も好ましくはペルハロアルキルである。特に好ましい活性剤としては、nが0であり、そしてX1、X2およびX3のうちの少なくとも2つがハロであるもの;あるいはX1、X2、X3、X4およびX5のすべてがハロまたはペルハロアルキルであるものが挙げられる。X1、X2、X3、X4およびX5の各々は、好ましくはClまたはF、最も好ましくはClであるが、しかし、ペルクロルアルキルまたはペルブロモアルキルおよびその混合物と同様に、混合ハロゲン化物も適切であり得る。
【0112】
その他の適切な促進剤としては、ヘキサフルオロアセトンジシクロヘキシルカルボジイミドが挙げられる。
【0113】
緩衝剤は、反応物質のpHを安定化する。特定の理論と結びつけずに考えると、緩衝剤はさらに、Δ9,11基質と反応して9,11‐エポキシドを生じる形態で過酸化物陰イオンおよび促進剤を組合せるための陽子移動剤として機能する。反応は約5〜約8、好ましくは約6〜約7の範囲のpHで実行されるのが、一般的に望ましい。緩衝剤および陽子移動剤の両方として機能し得る適切な化合物としては、二アルカリ金属リン酸塩、ならびに二塩基性有機酸のアルカリ金属塩、例えばクエン酸ナトリウムまたは酒石酸カリウムが挙げられる。
【0114】
特に好ましい結果は、リン酸水素二カリウムを含む緩衝剤を用いて、および/または約1:4〜約2:1、最も好ましくは約2:3の範囲の相対比でリン酸水素二カリウムおよびリン酸二水素カリウムの組合せを含む緩衝剤を用いて得られる。ホウ酸塩緩衝液も用いられ得るが、しかし一般にリン酸二カリウムまたはKH2PO4またはK2HPO4/KH2PO4混合物より遅い転化を生じる。緩衝液の構成はなんであれ、それは上記の範囲のpHを提供すべきである。緩衝液の全体的組成およびそれが付与し得る的確なpHのほかに、緩衝液の少なくとも一部が二塩基性リン酸水素イオンからなる場合には、反応はさらに効果的に進行する、ということが観察された。このイオンは、促進剤およびヒドロペルオキシドイオンを含む付加物または錯体の形成において本質的に均質触媒として関与し、この生成は次に、全体的エポキシ化反応メカニズムに不可欠であり得る、と考えられる。したがって二塩基性リン酸水素(好ましくはK2HPO4から)に関する定量的要件は、小触媒濃度のみである。一般に二塩基性リン酸水素は、基質1当量あたり少なくとも約0.1当量、例えば約0.1〜約0.3当量の割合で存在するのが好ましい。
【0115】
過酸化物溶液の付加が実質的に完了した後、反応速度およびエポキシドへの基質の転化を増強するために、温度は、例えば15℃〜50℃、さらに典型的には20℃〜40℃に上げられ得る。任意に、過酸化物溶液は反応経過中漸次付加され得るが、この場合、反応物質の温度は、反応が進行すると、好ましくは約15℃〜約50℃、さらに好ましくは約20℃〜約40℃に保持される。いずれの場合も、二相反応媒質中の反応速度は、普通は質量移動限定性であり、申し分ない反応速度を保持するためには静かな乃至は激しい撹拌を要する。バッチ反応器中で、反応の完了は、撹拌の温度および強度によって、3〜24時間を要する。
【0116】
過酸化水素の分解は、発熱反応である。通常反応温度では、分解速度は無視可能なほど小さく、そして発生される熱は、温度制御下で反応物質を冷却することにより容易に除去される。しかしながら反応冷却系または温度制御系が、例えば撹拌損失により作動しない場合、その結果生じる反応物質の温度増大(これが次に自己反応加熱の速度を加速する)より、分解速度は加速され得る。過酸化物対ステロイド基質の初期モル比は、米国特許第4,559,332号、第5,981,744号または第6,610,844号に記載された範囲、即ち10:1またはそれ以上の範囲であり、冷却損失に起因するような自己加熱は、分解が自己触媒性になる温度に達し、したがって非常に急速且つ制御不可能になって、反応物質の潜在的噴出を生じ得る。温度が十分に高い場合、ステロイド基質の破壊的酸化は付加的反応熱を生じて、さらに温度増大速度ならびにその結果生じる噴出の苛酷性を加速する。撹拌損失以外の事象も、過酸化物を潜在的に不安定化して、非制御分解をもたらす発熱を生じる。例えば過酸化物または基質溶液中の遷移金属のさびまたはその他の供給源のような夾雑物は、水性相からの酸素の迅速または非制御放出を触媒し得る。
【0117】
エポキシ化反応は、米国特許第4,559,332号、第5,981,744号または第6,610,844号に教示されるかまたは例示されているより有意に低い過酸化物対.9,11基質比で実行されて、それにより過酸化物の非制御分解の危険を低減し得る、ということがここで発見された。さらに特定的には、反応は、約2〜約7モル、好ましくは約2〜約6モル、さらに好ましくは約3〜約5モルの過酸化水素/基質1モルの投入比で実行され得る、ということが発見された。このような相対的に低い過酸化物対基質比での操作は、反応物質が過酸化物の自己分解により加熱され得る程度を低減する。好ましくは過酸化物対基質比は、自己加熱により得られる最大温度が自己触媒分解のための閾値温度より低いよう十分に低く、これにより、過酸化物の分解が完全に排除されて、反応物質の噴出を生じ得る段階に達しないようにされ得る。上記の投入比での操作は、これを実現可能にする。
【0118】
非制御反応に対するさらなる保護は、過酸化物の初期分解の温度より低い相対的に限られた温度でエポキシ化反応が実行される場合、あるいは分解速度が相対的に遅い場合に、提供される。したがって非反応過酸化水素の蓄積を生じる工程不調の事象では、自己加熱は、少なくとも初期には、ほとんど起こりえず、それゆえ撹拌の損失後でさえ、反応器冷却能力は、自然循環下では、安全範囲で反応物質の温度を保持するのに十分なままであり、あるいは少なくとも工程オペレーターは、非制御自己触媒分解のための条件が近づけられる前に、矯正測定を行なうのに十分な時間を与えられる。この目的のためには、エポキシ化反応は約0℃〜50℃の範囲、さらに好ましくは約20℃〜約40℃の範囲の温度で実行されるのが好ましい。
【0119】
非制御反応に対するさらなる保護は、過酸化物の自己触媒的分解温度より十分に低いそして好ましくは反応温度よりわずかだけ高い反応圧での沸点を有する溶媒を含む液体反応媒質中でエポキシ化反応を実行することにより、もたらされる。好ましくは反応混合物の有機相の沸点は、約60℃以下、好ましくは50℃以下である。好ましくは選択溶媒は、反応温度で反応物質から沸騰しないが、しかし約10℃〜約50℃のわずかな増分だけ温度が増大する場合、それにより気化熱はヒートシンクとして役立って、溶媒が反応帯から実質的に追い出されるまで、反応物質の実質的加熱を排除する。反応が上記範囲の温度で、大気圧下で実行される場合、これらの判定基準を満たし、そしてエポキシ化反応にも適している種々の溶媒が利用可能である。これらの例としては、塩化メチレン(大気圧沸点=39.75℃)、ジクロロエタン(大気圧沸点=83℃)、およびメチルt‐ブチルエーテル(沸点=55℃)が挙げられる。
【0120】
反応物質の含水量も、実質的感知可能なヒートシンクとして役立つ。反応が、大気圧で、ほぼ大気圧でまたは大気圧以下で実行される場合、過酸化水素水溶液の含水量は潜在的に非常に大きなヒートシンクとして役立つが、しかし反応物質の噴出を生じ得るため、過酸化物化合物の自己触媒的分解に起因するものより極度でないとしても、実質的流動発生が起こる条件を回避するのが一般的に好ましい。
【0121】
したがって一態様において、本発明は、化学量論的過剰量(対基質投入量)での反応物質の過酸化物内容物の分解が、過酸化物化合物の自己触媒的分解を開始するために、あるいは少なくともその非制御自己触媒的分解を引き起こさないために有効な発熱を生じないか好ましくは発生し得ないような絶対的および相対的比率で、そして相対的に控えめな初期エポキシ化反応温度で、好ましくはステロイドのための溶媒を含む液体反応媒質中でエポキシ化反応を実行することを包含する。エポキシ化周期中の任意の時機に非制御分解を保護するためには、条件の上記の組合せは、反応経過中の任意の時機での反応物質の全過酸化物内容物の分解が、過酸化物化合物の自己触媒的分解を開始するために、あるいは少なくともその非制御自己触媒的分解を引き起こさないために有効な発熱を生じ得ないようなものである、というのがさらに好ましい。最適には、基質濃度、過酸化物化合物濃度および初期温度の組合せは、化学量論的過剰量の、または全過酸化物化合物投入量の分解が、断熱条件下でさえ、即ち十分に断熱された反応器中での冷却の損失時に、自己触媒的分解を開始するために、あるいは少なくとも非制御自己触媒的分解を引き起こさないために十分な発熱を生じ得ないようなものである。
【0122】
水性相の過酸化物含量は、エポキシ化反応の開始時に確定した場合、好ましくは約25重量%〜約50重量%、さらに好ましくは約25重量%〜約35重量%であり、そして有機相中の.9,11ステロイド基質の初期濃度は約3重量%〜約25重量%、さらに好ましくは約7%〜約15重量%である。好ましくはエポキシ化反応を促進するために有効な構成成分、例えばトリクロロアセトニトリルまたはトリクロロアセトアミドは、リン酸塩、例えばリン酸水素二アルカリと一緒に、ステロイド溶液を有する反応器に投入され、その後、水性過酸化物が付加される。過酸化物対リン酸塩のモル比は、好ましくは約10:1〜約100:1、さらに好ましくは約20:1〜約40:1の範囲で保持される。初期トリクロロアセトアミドまたはトリクロロアセトニトリル濃度は、有機相中で好ましくは約2〜約5重量%、さらに好ましくは約3〜約4重量%で;あるいは約1.1〜約2.5、さらに好ましくは約1.2〜約1.6のステロイド基質に対するモル比で、保持される。最終的に反応器中に導入される水性相対有機相の容積比は、好ましくは約10:1〜約0.5:1、さらに好ましくは約7:1〜約4:1である。上記のように、そしてまた特定の理論に囚われずに考えると、エポキシ化反応は、有機相中で、あるいは相間の界面で起こる。いかなる場合も、反応物質は好ましくは激しく撹拌されて、有機相への、あるいは少なくとも界面への、過酸化物の移動を促進する。反応の進行を促進し、それによりバッチ反応周期を短縮して、生産性を増強するためには、ならびに反応物質への過酸化物水溶液の任意の所定付加速度で、反応容器中の過酸化物の残留量を最小限にするためには、高速の質量移動が望ましい。したがって本発明の種々の好ましい実施形態では、撹拌強度は、少なくとも約10 hp/1000 gal(約2 ワット/リットル)、典型的には約15〜約25 hp/1000 gal(約3〜約5ワット/リットル)である。エポキシ化反応器は、冷却コイル、冷却ジャケット、または反応物質がエポキシ化反応の熱の、それに加えて過酸化物の分解に起因する熱の任意のさらなる熱増分の除去のために循環される外部熱交換器も装備される。
【0123】
エポキシ化反応の完了後、水性相中の非反応過酸化水素は、好ましくは分子酸素の放出が最小限にされるかまたは完全に回避される制御条件下で分解される。還元剤、例えばアルカリ金属亜硫酸塩またはアルカリ金属チオ硫酸塩は、分解を促進するために有効である。好ましくは非反応過酸化物を含む最終反応物質の水性相は、反応溶媒中に9,11‐エポキシ化ステロイド生成物の溶液を含む有機相から分離される。次に水性相は、そこに含入される過酸化物を還元剤と接触させることにより、「クエンチ」され得る。
【0124】
過酸化物対ステロイド基質のモル投入比が、例えば3対5であり、そして水性相中の過酸化物の初期濃度が約7対約9モル濃度(即ち過酸化水素の場合、25重量%対30重量%)である場合、反応終了時に消費された過酸化物水溶液は、約4〜6モル濃度%の過酸化物(過酸化水素に関しては約15〜約21重量%)を含有する。相分離前に、水性相は水で希釈されて過酸化物濃度を低減し、それにより水性相の相分離および/または移動、例えば還元剤によるクエンチングのための別の容器への移動中の分解に起因する任意の発熱の見込みおよび程度を低減し得る。例えば十分量の水を付加して、廃水性相中の過酸化水素の濃度を約2重量%〜約10重量%、さらに好ましくは約2重量%〜約5重量%に低減し得る。
【0125】
クエンチングは、廃過酸化物水溶液またはその希釈液を、還元剤の水溶液を含有する容器に付加する(またはその逆)ことにより、実行され得る。代替的方法によれば、有機相は水性相からの分離時に別個の容器に移され、そして水性相は反応容器中に残留された。次に残留過酸化物の還元を実行するために、還元剤の溶液が、反応容器中の希釈または非希釈水性相に付加される。あるいは希釈または非希釈過酸化物溶液は、長時間に亘って、還元剤の適切な容積が最初に投入された容器に付加され得る。還元剤がアルカリ金属亜硫酸塩である場合、亜硫酸塩イオンが過酸化物と反応して、硫酸塩イオンおよび水を生成する。
【0126】
分解反応は、高発熱性である。分解は、分解が進行する水性質量からの熱の移動により、好ましくは約20℃〜約50℃の範囲で制御される温度で実行される。この目的のために、クエンチング反応器は、冷却コイル、冷却ジャケット、またはクエンチ反応物質が冷却流体への分解反応熱の移動のために循環され得る外部熱交換器も装備される。クエンチング質量は、好ましくは中等度の撹拌に付されて、還元剤の均一分布、均一温度分布および迅速熱移動を保持する。
【0127】
還元剤が廃過酸化物溶液に付加される場合、付加は、好ましくは上記範囲でクエンチ反応物質の温度を保持し、それにより過酸化物の制御分解を実行するよう制御された速度で実行される。
【0128】
代替的方法、即ち過酸化物溶液が還元剤溶液に付加される方法は、そうでなければそれえの分解剤の付加により誘発されると自己触媒的分解に付され得る過酸化物の大残留量の存在を回避する。しかしながらこの代替方法は、廃過酸化物溶液の移動を要するが、一方、逆の代替方法は、エポキシ化反応器中に過酸化物溶液を残留させるが、しかし反応物質および還元剤溶液の有機相だけが移される必要がある。代替方法が追及されていることとは関係なく、クエンチ反応は、好ましくは上記の温度範囲で実行される。
【0129】
クエンチング反応の目的のために、クエンチング反応帯に投入される水性クエンチ溶液は、好ましくは約12重量%〜約24重量%、さらに好ましくは約15重量%〜約20重量%の還元剤、例えばNa亜硫酸塩、Na重亜硫酸塩等を含有する。クエンチ溶液の容積は、好ましくは、その中に含入される還元剤が、クエンチされるべき水性相の過酸化物含量に関して、化学量論的過剰量で存在するよう十分である。過酸化物溶液と混合されるクエンチ溶液の容積比は、廃過酸化物水溶液の予備的水希釈後、典型的には約1.2から約2.8まで、さらに典型的には約1.4から約1.9まで変化し得る。
【0130】
典型的には残留有機溶媒は、初期相分離後に反応器中に残留し、そしてクエンチング反応中に水性相中に流入されるようになり得る。さらにまたクエンチされた水性相は、トリクロロアセトアミドが促進剤として用いられる場合、エポキシ化反応の副産物として生成されるトリクロロ酢酸の塩を含有し得る。クエンチ化水性相の廃棄前に、流入反応溶媒は、好ましくは、例えば溶媒抜取りにより、そこから除去される。溶媒、例えば塩化メチレンがクエンチ反応混合物中に流入され、そしてその水性相がトリクロロアセテートを含有する場合、水性相は、好ましくは、トリクロロアセテートを脱カルボキシル化するために、溶媒抜取り前に加熱される。トリクロロアセテートの脱カルボキシル化は、例えば70℃またはそれ以上の温度に加熱することにより達成され得る。トリクロロアセテートが除去されない場合、それは溶媒抜取り中に分解して、クロロホルムおよび二酸化炭素を生じ得る。
【0131】
反応物質の水性相からの分離後、有機相は、非反応過酸化物および任意の無機夾雑物を除去するために、好ましくは水で洗浄される。残留過酸化物の排除のためには、洗浄水が還元剤を含有するのが有用であり得る。例えば有機相は、4〜10の範囲のpHを有し、そして典型的には0.1〜5モル%の還元剤、好ましくは約0.2〜約0.6モル%の還元剤(例えばNa亜硫酸塩の6〜18%水溶液)を含有する水性洗浄溶液と、約0.05:1〜約0.3:1の洗浄溶液対有機相の便利な容積比で接触され得る。有機相からの廃還元剤洗浄液の分離後、有機相は好ましくは、希釈苛性アルカリ溶液(例えば0.2〜6重量%NaOH(約0.1対約0.3の対有機相容積比で))で、その後、水洗浄液または希釈酸溶液(例えば0.5〜2重量%HCl溶液(約0.1対約0.4の対有機相容積比で))で順次洗浄される。さらなるNa重亜硫酸塩またはNaメタ重亜硫酸塩またはN亜硫酸塩溶液による最終洗浄も実行され得る。
【0132】
生成物エポキシドのR11置換基が水素以外である場合、一般的に1またはそれ未満のpHを有する水性相に生成物を曝露し得る高酸性洗浄液、例えばHCl洗浄液を回避するのが望ましい。C‐11炭素にアルキル置換基が存在する場合、エポキシ基は高酸性条件下で不安定化され得る。
【0133】
溶媒、例えば塩化メチレンが希釈苛性アルカリ洗浄液中に流入される場合、その水性相は、残留トリクロロアセトアミドの塩基性加水分解から生成されるトリクロロ酢酸ナトリウムを含有し、水性相は、好ましくはトリクロロ酢酸ナトリウムを脱カルボキシル化するために溶媒抜取り前に加熱される。トリクロロ酢酸ナトリウムの脱カルボキシル化は、例えば70℃またはそれより高い温度に加熱することにより達成され得る。苛性アルカリ洗浄液は、脱カルボキシル化および残留溶媒抜取りの目的のために、反応混合物のクエンチ化水性相と併合され得る。
【0134】
洗浄有機相は、溶媒の蒸発により、例えば大気圧蒸留により濃縮されて、ステロイドの沈殿を生じて、約40重量%〜75重量%含有ステロイドを有する相対的に濃厚なスラリーを生成する。再結晶化ステップからの母液が下記のように再生利用される場合、母液はステロイドスラリーと混合され、そして母液の溶媒構成成分が真空除去されて、反応溶媒を除去することにより得られたスラリーと典型的に同一範囲の固体濃度を有する濃厚スラリーを再び生じ得る。ステロイド生成物の溶解度が相対的に低い溶媒、例えば極性溶媒、例えばエタノールが、反応溶媒の除去から得られるスラリーに、あるいは再結晶化母液溶媒の除去により得られるような二次スラリーに付加される。代替的溶媒としては、トルエン、アセトン、アセトニトリルおよびアセトニトリル/水が挙げられる。このステップにおいて、不純物は溶媒相中に蒸解され、したがって固相ステロイド生成物を純化して、その検定を増大する。蒸解溶媒がアルコール、例えばエタノールである場合、それは、6対約20のエタノール対含有ステロイドの容積比で付加され得る。蒸留によりその結果生じる混合物からエタノールおよび残留有機溶媒の一部が除去されて、典型的には約10重量%〜約20重量%のステロイド生成物を含有するスラリーを産生するが、この場合、不純物および副産物は実質的には溶媒相中に保持される。溶媒がエタノールである場合、蒸留は好ましくは大気圧またはそれよりわずかに高い圧で実行される。
【0135】
蒸解溶媒の蒸留後、例えば濾過により、ステロイド生成物固体は残留スラリーから分離される。固体生成物は、好ましくは蒸解溶媒で洗浄され、そして乾燥されて、実質的に9,11‐エポキシステロイドを含む固体生成物を産生し得る。乾燥は、約35〜約90℃の範囲の温度で、不活性キャリヤーガスを用いて、圧力をかけてまたは真空で有益に実行され得る。
【0136】
乾燥固体、湿潤濾過固体または蒸解溶媒の蒸発後に得られる残留スラリーのいずれかを、エポキシステロイド生成物が中等度に溶解可能である溶媒、例えば2‐ブタノン(メチルエチルケトン)、メタノール、イソプロパノール‐水またはアセトン‐水中に取り入れられ得る。その結果生じる溶液は、典型的には約3重量%〜約20重量%、さらに典型的には約5重量%〜約10重量%のステロイドを含有し得る。その結果生じる溶液は、所望により濾過され、次に蒸発されて極性溶媒を除去し、そして9,11‐エポキシステロイドを再結晶化し得る。溶媒が2‐ブタノンである場合、蒸発は大気圧で実行するのが便利であるが、しかし他の圧力条件も用いられ得る。その結果生じるスラリーは徐々に冷却されて、付加的ステロイドを再結晶化する。例えばスラリーは、蒸留温度(大気圧での2‐ブタノンの場合、約80℃)からステロイド生成物の産生が満足のいくものであると思われる温度に冷却され得る。適切な結晶サイズの高純度9,11‐エポキシステロイド生成物は、徐々に冷却し、冷却段階間の期間、当該温度を保持することにより生成され得る。例示的冷却スケジュールは、第一段階で60〜70℃の範囲の温度に冷却し、第二段階で約45〜約55℃の範囲の温度に冷却し、第三段階で約30〜40℃の温度に冷却し、そして最終段階で約10〜約20℃の温度に冷却することを包含し、実質的に一定の温度が冷却段階の間、30〜120分間の期間保持される。
【0137】
次に再結晶化生成物は、濾過により回収され、乾燥され得る。乾燥は、ほぼ周囲温度で有効に実行され得る。乾燥生成物は、生成物回収プロトコールで早期に用いられる極性溶媒、典型的にはエタノールで溶媒和化されたままであり得る。乾燥および脱溶媒は、圧力または真空下で高温で、例えば75℃〜95℃で完成され得る。
【0138】
再結晶化ステップからの母液は、本明細書中に上記されたようなエポキシ反応溶媒の蒸発除去から得られるステロイド生成物スラリーを順化するのに用いるために再生利用され得る。
【0139】
エプレレノンへのΔ9,11前駆体の酸化における7モルの過酸化物/1モルの基質の投入比で、過酸化物の分解は、約280リットルの分子酸素/1 kgのエプレレノンを放出するに過ぎない。4モルの過酸化物/1モルの基質の投入比では、酸素放出は、約160リットル/1 kgエプレレノンに過ぎない。これは、10モルの過酸化物/1モル基質の投入比での400リットルの放出/1 kgエプレレノンと対照を成す。さらなる実例として、4モルか酸化物/1モル基質の投入比、塩化メチレン溶媒中の12%の基質濃度、30%の水性相中の過酸化物濃度、30℃の初期反応温度で、実質的に不活性ガスパージ下で大気圧で、そして15%の反応器上部空間容積分画では、全過酸化物投入量の発熱性分解時にエポキシ化反応器中で生成され得る最大内部圧は、約682 psigである。さらにこの場合でさえ、そうでなければ潜在的に非制御反応をもたらし得る撹拌の損失またはその他の工程不調を安全に処理するのに十分な時間を賢明な熟練オペレーターが有するべきであるよう、初期発熱は十分に控えめである。
【0140】
本明細書中に記載された相対的に低い過酸化物対基質比で、酸素の優位に低いほうのポテンシャル評価はいずれも、10またはそれより高い過酸化物/基質比で達成され得る同一反応器有効荷重で保証される;あるいはより高い反応器有効荷重は、同一容積の酸素放出で達成され得る。エポキシ化反応器中の一定作業容積で、有効荷重の増大および酸素放出の低減がともに達成され得る。
【0141】
上記のエポキシ化方法は、エポキシメクスレノンの調製に関する種々のスキームのほかに用途を有し、そして実際、液体相中の反応の影響を受ける広範な種々の基質における9,11‐オレフィン性二重結合を横断するエポキシドの生成のために用いられ得る、と理解されるべきである。この反応のための例示的基質としては、Δ‐9,11‐カンレノン、ならびに以下のものが挙げられる:
【0142】
【化18】

【0143】
反応はより迅速に進行し、そして三置換および四置換二重結合を十分に伴うため、それは、オレフィン性炭素が一置換されるかまたは二置換さえされる場合にその他の二重結合を含み得る化合物中のこのような二重結合を横断する選択的エポキシ化のために特に有効である。
【0144】
それは、高選択性を有するより高度に置換された二重結合、例えば9,11‐オレフィンを優先的にエポキシ化するため、本発明の方法は、本明細書中の他の箇所に記載される種々の反応スキームのエポキシ化ステップにおいて高収率および生産性を達成するために特に有効である。
【0145】
改良型方法は、次式:
【0146】
【化19】

【0147】
の物質を次式の物質のエポキシ化により調製するのに特に有益な適用である:
【0148】
【化20】

【実施例】
【0149】
実施例1
メチル水素9,11‐エポキシ‐17α‐ヒドロキシ‐3‐オキソプレグン‐4‐エン‐7α,21‐ジカルボキシレート,γ‐ラクトン
粗製Δ9,11‐エプレレノン前駆体(1628 g, 78.7%エネスターを検定)を、塩化メチレン(6890 mL)を有する反応容器に付加し、撹拌した。固体を溶解した後、トリクロロアセトアミド(1039 g)およびリン酸二カリウム(111.5 g)を混合物に付加した。25℃に加熱して温度を調整し、混合物を320 RPMで90分間撹拌した。30%過酸化水素(1452 g)を10分間掛けて付加した。
【0150】
反応混合物を20℃にして、その温度で6時間撹拌し、この時点で、HPLCにより転化を検査した。残留エネスターは、1重量%未満であると確定された。
【0151】
反応混合物を水(100 mL)に付加し、相を分離させて、塩化メチレン層を取り出した。水酸化ナトリウム(0.5 N; 50 mL)を塩化メチレン層に付加した。20分後、相を分離させて、HCl(0.5 N; 50 mL)を塩化メチレン層に付加した後、相を分離させて、有機相を飽和ブライン(50 mL)で洗浄した。塩化メチレン層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、溶媒を除去した。白色固体(5.7 g)を得た。水性水酸化ナトリウム層を酸性化して、抽出し、抽出物を作製して、さらなる0.2 gの生成物を得た。エポキシメクスレノンの収率は90.2%であった。
【0152】
実施例2
反応器に粗製Δ9,11‐エプレレノン前駆体(1628 g)および塩化メチレン(6890 mL)を投入した。混合物を撹拌して固体を溶解し、次にリン酸二カリウム(111.5 g)およびトリクロロアセトアミド(1039 g)をハッチを通して投入した。温度および撹拌を、それぞれ25℃および320 RPMに調整した。混合物を90分間撹拌した;次に30%過酸化水素(1452 g)を10〜15分間掛けて付加した。HPLC評価により確定した場合にΔ9,11‐エプレレノン前駆体の初期投入量の4%未満が残留するまで、撹拌を29〜31℃で継続した。これは、約8時間を要した。反応終了時に、水(2400 mL)を付加し、塩化メチレン部分を分離した。塩化メチレン層を、水(1140 mL)中の硫酸ナトリウム(72.6 g)の溶液で洗浄した。ヨウ化カリウム紙による過酸化物に関する陰性試験後、非反応トリクロロアセトアミドを除去するために、水(2570 mL)中に希釈された50%水酸化ナトリウム(256 g)から調製した苛性アルカリ溶液とともに約45分間、塩化メチレン分画を撹拌した。塩化メチレン分画を、水(2700 mL)で、次に水(3060 mL)中の重亜硫酸ナトリウム(190 g)の溶液で順次洗浄した。
【0153】
エプレレノンの塩化メチレン溶液を大気圧で蒸留して、最終容積を約2500 mLとした。メチルエチルケトン(5000 mL)を投入した。混合物を真空蒸留下に置き、溶媒を除去して、最終容積を約2500 mLとした。エタノール(18.0 L)を投入し、約3500 mLを大気圧蒸留により除去した。混合物を3時間かけて20℃に冷却し、次に4時間撹拌した。固体をフィルター上に収集し、毎回エタノール1170 mLで2回洗浄した。固体を、窒素下で少なくとも30分間、フィルター上で乾燥した。最後に固体を、<0.5%検出限界(LOD)まで、真空炉中で75℃で乾燥した。このようにして、半純粋エプレレノンを得た。
【0154】
8容積のメチルエチルケトン(含入量に基づいて)からの半純粋エプレレノンの再結晶化は、純粋エプレレノンを収率約82%で提供する。
【0155】
実施例3
Δ9,11‐エプレレノン前駆体(160 g粗製物)を、トリクロロアセトアミド(96.1 g)、リン酸二カリウム(6.9 g)および塩化メチレン(1004 mLまたは6.4 ml/g)と併合した。
【0156】
水(25.6 mL)を塩化メチレン混合物に付加した。量を調整して、以後の操作で導入する過酸化水素の濃度を調節した。この場合、水は、その後に付加する過酸化水素水溶液(35重量%)の濃度を30重量%の所望レベルに希釈するのに十分な量であった。
【0157】
水、ステロイド基質、トリクロロアセトアミドおよびリン酸二カリウムの混合物を400 RPMで撹拌して、温度制御装置に接続した加熱マントルを用いて30〜45分間掛けて25℃に調整した。
【0158】
その後、35重量%の過酸化水素(138.4 mL)を5分未満で付加した。この実施例は35重量%過酸化水素を用いたが、しかしより高濃度、例えば50重量%も用い得る。言及したように、反応に所望されるより大きい強度を有する過酸化水素溶液の導入は、反応を開始するための所望の濃度を保持するために、典型的には前ステップにおける水の付加を必要とする。
【0159】
温度を、反応全体を通して28〜31℃に保持した。
【0160】
240 nmでのHPLC評価により転化をモニタリングするために、反応の有機部分を定期的にサンプリングした。Δ9,11‐エプレレノン前駆体の消失率(対時間)のプロットは、R2=0.996で直線傾向を示した。その傾向は、712分で98%転化を予測した。95〜98%転化に対して反応を標的化した。反応を240 nmでモニタリングしたが、しかし不純物のすべてがこの波長で観察されたわけではない。反応および不純物の真のプロフィールを得るために、210 nmで検定を再試行した。
【0161】
水(392 mL)を660分後に混合物に付加した(97.7%転化)。本実施例の調製において、作製において後に投入する他の水の容積と等しくなるよう、水の総量を選択した。水の付加は、過酸化物の強度を低減し、ステロイド構成成分に対する反応性を減少させた。しかしながら低レベルの酸素の発生に関する能力は、依然として存在した。層を分離させて、下部塩化メチレン層を取り出した(水性pH=6.5〜7.0)。典型的には、約5〜6重量%で過酸化水素を検定した。このレベルの濃度は、転化された化合物XXXI1モル当たり1.5モルの過酸化物の消費、ならびに30%出発濃度と相関した。
【0162】
好ましい操作モードでは、消耗過酸化物溶液を亜硫酸塩クエンチにより処理する。この操作は極発熱性であり、そして発熱を制御するために、好ましくは構成成分(正または逆クエンチモードが用いられ得る)の徐々の、制御された組合せで実行する。過酸化水素は水に還元されるが、一方、亜硫酸塩はこの手法中に酸化されて硫酸塩となる。亜硫酸塩クエンチ後、流入塩化メチレンを取り出すために、クエンチ化水性相を流れ抜取り操作に付す。流れ抜取り前に、水性相を加熱して、エポキシ化反応の経過中のトリクロロアセトアミドの転化から生じる副産物として生成されるトリクロロアセテート塩を脱カルボキシル化する。流れ抜取り前の脱カルボキシル化は、トリクロロアセテートが抜取り操作中に塩化メチレンと反応するのを防止するが、そうしなければクロロホルムが生成する。脱カルボキシル化は、例えばトリクロロ酢酸塩を実質的に排除するのに十分な時間、100℃で水性相を加熱することにより実行し得る。
【0163】
エプレレノンの塩化メチレン溶液を含む反応混合物の有機相を、Na2SO3(7.4 g)および水(122.4 mL)を含有する水性溶液(pH7〜8)で、25℃で約15分間洗浄した。撹拌期間終了時に有機相で、陰性ヨウ化デンプン試験(KI紙による紫色発色なし)を観察した。陽性試験を観察した場合には、処理を反復した。
【0164】
ペレット(7.88 g)および水(392 mL)から調製した希釈水酸化ナトリウム水溶液で、塩化メチレン分画を洗浄した。混合物を25℃で35分間撹拌し、次に層を分離させた(水性pH=13)。この短期接触時間で、トリクロロアセトアミドは完全に加水分解されず、塩として除去される。この点では、トリクロロアセトアミドを対応する酸塩に加水分解し、アンモニアを放出するためには、典型的には少なくとも2時間を要する。
【0165】
塩化メチレン部分を、水(392 mL)でさらに洗浄した。これは、塩基性界面を失敗した場合のバックアップ洗浄として意図された。トリクロロアセトアミドは30分間の接触時間中に完全には加水分解されないため、一旦pHを調整(水性pH=10)したら、有機相に分配し戻す可能性がある。
塩化メチレン部分を、水(352 mL)中の濃塩酸の溶液(4.1 mL)(pH1)で約45分間洗浄した。この時間の終了時に、亜硫酸ナトリウム(12.4 g)および水(40 mL)から調製した溶液の付加により、pHを中性になるよう調整した(pH6〜7)。
【0166】
塩化メチレン溶液を大気圧蒸留により濃縮して、容器最小撹拌容積(〜240 mL)に近づけた。約1024 mLの塩化メチレン蒸留物を収集した。本実施例の調製は「初回実行」であり、即ち再生使用のために利用可能な再結晶化母液は存在しなかったため、母液の再生使用を模倣するよう意図された割合(この場合は1546 mL)で、新鮮なMEK(1000 mL)をエプレレノンの塩化メチレン溶液に付加した。再び溶媒を大気圧蒸留により除去して、最小撹拌容積(〜240 mL)に近づけた。あるいはこれらの蒸留は、真空下で実行し得た。
【0167】
エタノール(2440 mL)を残渣に付加した。エタノール投入量は、典型容積のMEK再結晶化母液(162.7 g)と併合された粗生成物に関する15 mL/gの概算含入エプレレノンと相関した。未使用バッチ(144.8 g)に関しては、区別はしなかった。その結果として、回収のためにMEK MLを含入した実行よりわずかに高い容積比で操作した場合の操作継続期間で、初回を実行した。
【0168】
488 mLが除去されるまで、大気圧でスラリー(均質溶液はこの処理では得られなかった)からエタノールを蒸留した。除去されるエタノールの量は、粗生成物中に含有される化合物エプレレノンの概算量の12倍の容積(約1.5 mL/gの最小撹拌容積を計数しない)に単離比を調整した。初回実行に関して区別をしなかったため、この実行に関する単離容積はわずかに拡張された。最終混合物を、約1時間、大気圧還流で保持した。
【0169】
蒸留ポット中の混合物の温度を15℃に下げて、この温度で4時間撹拌後、固体を濾過した。エタノールすすぎにより移動を完了させた。概して、含入エプレレノンを基礎にした1〜2容積量(155〜310 mL)を、製造実行で用いた。
【0170】
固体を真空炉中で45℃で乾燥し、半純粋物質(150.8 g)を89.2%検定率で、初回実行の産出量として得た(調整された検定物154.6 gは、MEK再結晶化母液回収を含む実行のための予測産出量である)。一般に、粗生成物のこの第一段階性能向上後に、94〜95%の利用可能なエプレレノンを回収した。意図されたレベルの乾燥は、エタノール溶媒和物としての半純粋エプレレノンの単離を可能にした。この点では、温度が約90℃に到達するまでは、溶媒和物はエタノールを容易に放出するわけではない。脱溶媒物質は、次の操作においてMEKとの混合時に集塊化する傾向があるため、さらなる処理のために溶媒和物が選択される。
【0171】
固体を2‐ブタノン(MEK)(2164 mL)と併合する。MEKのこの量は、14 mL/g(対含入エプレレノン(MEK母液部分を含む)の概算量)の容積比に対応する。
【0172】
MEK溶液中のエプレレノンの熱濾過は、好ましくは再結晶化前に実行されるが、しかし実験室実行では用いなかった。濾過は普通は、含入エプレレノンを基礎にして2容積のMEKと相関するすすぎ液量、例えば310 mLを後に用いる。これにより総MEK容積は2474 mLとなり、これは16 mL/gと相関する。熱濾過を12 mL/gより低い比率で操作すべきでないが、これが80℃でのMEK中のエプレレノンに関する概算飽和レベルであるためである。
【0173】
1237 mLが除去されるまで、大気圧で溶液からMEKを蒸留した。これは8容積と相関し、そして半純粋生成物中で概算されるエプレレノンの量に対して結晶化比を8 mL/gの容積に調整した。反応器中に残留する実容積は、8 mL/gと、それに加えて、9〜9.5 mL/gの総単離標的容積に関して1〜1.5容積で概算される固体空隙である。
【0174】
溶液(混合物はこの時点で過飽和され、冷却が開始する前に核生成が起こり得る)を、以下のスケジュールに従って冷却する。この段階的戦略は、多形体IIを一貫して生成した。
【0175】
65℃に冷却し、1時間保持する。
【0176】
50℃に冷却し、1.5時間保持する。
【0177】
35℃に冷却し、1時間保持する。
【0178】
15℃に冷却し、1時間保持する。
【0179】
次に固体を濾過し、MEK(310 mL)ですすぐ。
【0180】
固体を先ず、25℃で一晩、フィルター上で乾燥した。次に真空炉中で80〜90℃で約4時間、乾燥および脱溶媒を完了した。予測乾燥固体重量は、初回実行に関しては119.7 g、MEK母液含入を伴う実行に関しては134.5 gである。最終生成物のLODは、<0.1%であるべきである。濾液(1546 mL)は、約17.9 gのエプレレノンを含有した。これは、化合物XXIの11.5重量%の調整投入量と相関した。母液は、その後のエタノール処理との組合せによる回収のために、取っておいた。データは、生成物エプレレノンが40℃でMEK中で63日まで安定であることを示した。
【0181】
全体的検定調整重量収率は、76.9%であった。この全体的収率は、それぞれ反応、エタノール性能向上およびMEK再結晶化に関して93、95および87検定調整重量収率%から成る。NaOH処理および関連水性洗浄液に関連した潜在的1〜2%収率損失が認められる。その後の実行におけるMEK母液の含入は、86.4%の調整総量に関して全体的収率を9.5%増大する(11.5×0.95×0.87)と予測される。
【0182】
MEK母液を、次のエポキシ化反応から塩化メチレン溶液と併合し、そして当該手法を、上記と同様に、反復し得る。上記を考慮して、本発明のいくつかの目的が達成され、そしてその他の有益な結果が得られる、ということが分かる。本発明の範囲を逸脱しない限り、上記の方法および組成物において種々の変更がなされ得るので、上記の説明に含入されるすべての事柄は例示的なものであり、限定的意味で解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシステロイド化合物の製造方法であって、以下の:
ステロイド核中にオレフィン性不飽和を含むステロイド基質を、過酸化物活性剤の存在下でエポキシ化反応帯中で過酸化物化合物と接触させ(前記ペルオキシド化合物および前記ステロイド基質は、過酸化物化合物約1〜約7モル/基質1モルの比で前記反応帯中に導入される);そして
前記過酸化物化合物を前記反応帯中の前記基質と反応させてエポキシステロイドを含む反応混合物を生成する
ことを包含する方法。
【請求項2】
前記反応帯が前記過酸化物化合物を含む水性相および有機溶媒を含む有機相を含む二相液体反応媒質ならびに前記ステロイド基質を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒が実質的に水と非混和性である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記過酸化物化合物および前記基質が過酸化物約2〜約6モル/基質1モルの比で前記反応帯中に導入される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
エポキシ化反応がエポキシステロイドへの前記基質の部分的転化のみのために実行され、非反応不飽和ステロイド基質がエポキシステロイド生成物から分離され、そして分離ステロイド基質がエポキシステロイド生成物へのさらなる転化のために再生利用される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
エポキシステロイド化合物の製造方法であって、以下の:
Δ9,11ステロイド基質を過酸化物活性剤の存在下でエポキシ化反応帯中の過酸化物化合物と接触させ(前記ペルオキシド化合物および前記Δ9,11ステロイド基質は、過酸化物化合物約1〜約7モル/基質1モルの比で前記反応帯中に導入される);そして
前記過酸化物化合物を前記反応帯中の前記基質と反応させてエポキシ9,11‐エポキシステロイドを含む反応混合物を生成する
ことを包含する方法。
【請求項7】
前記過酸化物化合物および前記基質が過酸化物約3〜約5モル/基質1モルの比で前記反応帯中に導入される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
基質と化学量論的等価のものを上回る前記反応媒質の過酸化物内容物の分解が過酸化物化合物の非制御自己触媒的分解を引き起こすのに有効な発熱量を生じないような割合および初期温度である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記ステロイド基質が次式:
【化1】

(式中、R10、R12およびR13は、独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され;
‐A‐A‐は、基‐CHR1‐CHR2‐または‐CR1=CR2‐を表わし;
ここで、R1およびR2は、独立して、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、あるいはR1およびR2は、それらが結合されるステロイド主鎖の炭素と一緒になって、シクロアルキル基を形成し;
‐B‐B‐は、基‐CHR15‐CHR16‐、‐CR15=CR16あるいはα‐またはβ‐配向基:
【化2】

を表わし;
ここで、R15およびR16は、独立して、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、あるいはR15およびR16は、それらが結合されるステロイド核のC‐15およびC‐16炭素と一緒になって、シクロアルキレン基(例えばシクロプロピレン)を形成し;
8およびR9は、独立して、水素、アルキル、アルキニル、ヒドロキシ、ハロ、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニルアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、あるいはR8およびR9は一緒に、炭素環式または複素環式環構造を構成するか、あるいはR8およびR9は、R15またはR16と一緒になって、五環式D環と縮合される炭素環式または複素環式環構造を構成し;
‐G‐J‐は、以下の基:
【化3】

を表わし;
ここで、R11は水素、アルキル、置換アルキルまたはアリールから成る群から選択され;
‐D‐D‐は、以下の基:
【化4】

を表わし;
ここで、R4およびR5は、独立して、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、あるいはR4およびR5は、それらが結合されるステロイド主鎖の炭素と一緒になって、シクロアルキル基を形成し;
‐E‐E‐は、基‐CHR6‐CHR7‐または‐CR6=CR7を表わし;
ここで、R6は、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され;そして
7は、水素、ヒドロキシ、保護化ヒドロキシ、ハロ、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノ、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アセチルチオ、フリルおよび置換フリルからなる群から選択され;あるいは
6およびR7は、R6およびR7がそれぞれ結合されるステロイド核のC‐6およびC‐7炭素と一緒になって、シクロアルキレン基を形成し;
あるいはR5およびR7は、ステロイド核のC‐5、C‐6およびC‐7炭素と一緒になって、ステロイド核に縮合される五環式環を形成する)
に対応し、そして以下の構造式:
【化5】

(式中、R71は、=CH(OH)、=CH(OR72)または=CH=Oを含む)
に対応する、請求項6記載の方法。
【請求項10】
8およびR9が、それらが結合されるC‐17炭素と一緒になって、17‐スピロブチロラクトン(20‐スピロキサン)基を形成する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記エポキシ化反応のステロイド生成物がエプレレノンを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
エポキシステロイド化合物の製造方法であって、以下の:
Δ9,11ステロイド基質を液体反応媒質中で過酸化物化合物と接触させて;そして
前記過酸化物化合物を前記反応媒質中で前記基質と反応させて、9,11‐エポキシステロイドを含む反応混合物を生成する
ことを包含する方法であって、基質と化学量論的等価のものを上回る前記反応媒質の過酸化物内容物の分解が過酸化物化合物の非制御自己触媒的分解を引き起こすのに有効な発熱量を生じないような絶対および相対的割合でならびに温度で、前記基質および過酸化物化合物が接触される方法。
【請求項13】
前記ステロイド基質が次式:
【化6】

(式中、‐A‐A‐は、基‐CHR1‐CHR2‐または‐CR1=CR2‐を表わし;
12は、水素、ハロ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択され;
7は、アルファ‐配向低級アルコキシカルボニルまたはヒドロキシカルボニルラジカルを表わし;
‐B‐B‐は、基‐CHR6‐CHR7‐、あるいはアルファ‐またはベータ‐配向基:
【化7】

を表わし;
ここで、R15およびR16は、独立して、水素、ハロ、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルキル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択される;そして
8およびR9は、独立して、水素、アルキル、アルキニル、ヒドロキシ、ハロ、低級アルコキシ、アシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシカルボニル、アルキル、アルコキシカルボニル、アシルオキシアルキル、シアノおよびアリールオキシからなる群から選択されるか、あるいはR8およびR9は一緒に、炭素環式または複素環式環構造を構成するか、あるいはR8およびR9は、R6またはR7と一緒になって、五環式D環と縮合される炭素環式または複素環式環構造を構成する)
に対応する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
反応の開始時の前記水性相中の前記過酸化物化合物の初期濃度が少なくとも約25重量%である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記過酸化物化合物が過酸化水素を含む、請求項14記載の方法。

【公表番号】特表2007−530557(P2007−530557A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505072(P2007−505072)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/009381
【国際公開番号】WO2005/092913
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(504396379)ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニー・エルエルシー (130)
【Fターム(参考)】