説明

A/D変換器とその補正方法

【課題】A/D変換器においてノイズ等の異常値を除去し高精度のA/D変換結果を出力する。
【解決手段】A/D変換器は、奇数回のサンプリングでビット毎に行う多数決に基づきA/D変換結果を補正する多数決回路M4を具備する。多数決回路M4は、第1判定回路M11、M13、第1補正回路M15、M17、第2判定回路M12、M14、第2補正回路M16、M18を備える。第1判定回路はビット毎のサンプリングによるA/D変換結果の“1”出現回数が第1判定値と一致する場合、桁上げ付近且つ桁上げありと判定する。第1補正回路は、判定されたビットより下位ビットのA/D変換結果を“0”に補正する。第2判定回路はビット毎のサンプリングによるA/D変換結果の“1”出現回数が第2判定値と一致する場合、桁上げ付近且つ桁上げなしと判定する。第2補正回路は判定されたビットより下位ビットのA/D変換結果を“1”に補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A/D変換器に関し、特に変換結果を補正する回路を有するA/D変換器とその補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘルスケア市場やセキュリティ市場などの拡大に伴い、センシング技術への注目が高まっている。センシング性能は、状態を認識して電気的な信号へ変換する機能と、その信号に対するデジタル信号処理性能に依存する。そのため、その基本構成要素であるA/D(Analog/Digital)変換器の分解能や精度をより高める技術が望まれている。
【0003】
一方、製造プロセスの微細化は、アナログ回路にとって特性ばらつきやノイズ感度を増大させ、精度を低下させることが公知である。これに対して、統計処理などの補正技術を用いて高精度を実現する技術が要求されている。そのような技術として、特開2008−042380号公報(特許文献1)にアナログ・ディジタル変換器の技術が開示されている。
【0004】
このアナログ・ディジタル変換器は、上位ビットと下位ビットを分けてA/D変換を行い、並列型A/Dコンバータで構成される下位ビットのA/D変換結果に対して補正をかける。それにより、A/D変換器の内部でノイズが発生した場合でも、精度を損なうことなくA/D変換を行なうことができる、としている。下位ビットのA/D変換結果に対する補正では、多数決回路が、並列型A/Dコンバータの出力を所定回数読み込み、ビット毎に多数決を行い、そのビット出力を“0”か“1”に決定し、変換結果格納レジスタに出力している。
【0005】
図1は、特許文献1のA/D変換器の構成を示すブロック図である。
このA/D変換器100は、アナログ入力信号S001を上位ビットと下位ビットとに分けてA/D変換を行う。制御回路101、D/Aコンバータ102、スイッチ付きコンパレータ103、逐次比較レジスタ104、及びD/Aコンバータ105は、アナログ入力信号S001の上位ビット部分を出力する上位ビット用A/D変換部を構成する。また、アナログ入力信号S001の下位ビット用に並列型A/Dコンバータ106を設ける。そして、多数決回路107によって、並列型A/Dコンバータ106の出力(A/D変換結果)を複数回サンプリングして、多数決により、下位ビットにおける各ビットの値を決定して出力する。
【0006】
図2は、特許文献1の多数決回路の構成を示すブロック図である。
多数決回路103は、3ビットまでの補正を行う場合、3組の単ビット多数決回路1010−1〜1010−3を備えている。そして、デジタル信号S011の下位から1ビット目が単ビット多数決回路1010−1に入力され、2ビット目が単ビット多数決回路1010−2に入力され、3ビット目が単ビット多数決回路1010−3に入力される。
【0007】
加算回路1011は、クロック信号S012の立ち上がり変化タイミングで、デジタル信号S011の値(1ビット分)と、8ビットレジスタ1012に格納されている値とを加算し、結果を8ビットレジスタ1012に格納する。8ビットレジスタ1012は、クロック信号S012に同期して動作する8ビットのレジスタである。ビット選択回路1013は、クロック信号S005の立ち上がり変化タイミングで、8ビットレジスタ1012の3ビット目のデータをフリップフロップ1014に格納する。フリップフロップ1014は、クロック信号S005立ち上がり変化タイミングで、ビット選択回路1013の出力を保持するようになっている。クロック信号S012とS005との周波数の比は、加算回路1011で7回の加算が行われた後に、フリップフロップ1014の出力が保持されるように設定されている。すなわち、この周波数の設定により、各単ビット多数決回路1010は、7回の読み込み(サンプリング)を行ったうちの、4回以上が“1”である場合に、“1”を出力する。
【0008】
各単ビット多数決回路1010では、加算回路1011とフリップフロップ1014は、何れも、制御信号S014で制御されたスイッチ回路3200を介してクロック信号が入力されている。したがって、制御信号S014が“00”の場合、単ビット多数決回路1010−1にはクロック信号S012とS005が供給され動作するが、単ビット多数決回路1010−2、1010−3にはクロック信号S012とS005が供給されず動作しない。また、制御信号S014が“01”の場合、単ビット多数決回路1010−1、1010−2にはクロック信号S012とS005が供給され動作するが、単ビット多数決回路1010−3にはクロック信号S012とS005が供給されず動作しない。また、制御信号S014が“11”の場合、単ビット多数決回路1010−1、1010−2、1010−3にはクロック信号S012とS005が供給され動作する。以上のように、多数決を行う下位ビットのビット長を、任意のビット数に可変できる。
【0009】
関連する技術として特開平03−016432号公報(特許文献2)に、アナログ−デジタル変換器が開示されている。このアナログ−デジタル変換器は、アナログ入力を共通接続した複数個のコンパレータの後段に、隣接する3個の上記コンパレータの出力を多数決演算する回路を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−042380号公報
【特許文献2】特開平03−016432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の技術には以下の問題点があることが発明者の研究により今回初めて明らかになった。サンプリングされるA/D変換結果が、例えば、3ビットである場合について考える。この場合、“011”と“100”とが同程度の頻度で発生するような桁上げ付近のアナログ入力に対して、ノイズ等による異常なA/D変換結果が発生した場合、多数決による正常な補正出力結果を出力することができなくなる。
【0012】
図3は、特許文献1のA/D変換結果と多数決回路の出力との関係の一例を示す表である。具体的には、この図は、下位3ビットについて、7回の読み込み(サンプリング;1回目〜7回目)を行った場合での、それぞれのA/D変換結果と、多数決回路の出力値(補正出力結果)との関係について、4つの例(例1〜例4)を示している。例1は、下位3ビットにおいて桁上げが発生していない状態でのA/D変換結果である。例2〜例3は、下位3ビットにおいて最上位ビットで桁上げが発生した状態での変換結果である。例4は、下位3ビットにおいて下位2ビット目で桁上げが発生した状態での変換結果を示している。このとき、補正出力結果はビット毎に多数決を行い、4回以上が“1”である場合に、“1”を出力し、3回以下の場合は“0”を出力するものとする。例1〜例4のそれぞれのA/D変換結果では、例として、異常値(丸点線で囲んだ値)が発生したとしている。
【0013】
例1のように、4回目の読み込みでノイズ等の異常値“000”が発生しても、残り全ての変換結果が“011”であれば、多数決回路の結果は“011”となり、異常値を除去できる。しかし、例2のように、6回目の読み込みまでに“011”と“100”を3回ずつ読み込んだ場合、各ビットの“1”出現回数がそれぞれ3回ずつとなるため、6回目までの値によらず7回目の値で多数決が決し、多数決結果として出力されてしまう。つまり、例2であれば、7回目の読み込み値“000”という異常値を多数決結果として出力してしまう。同様に、例3は、1〜2回目、4〜7回目で“011”と“100”を3回ずつ読み込んでおり、3回目の異常値“111”を多数決結果として出力してしまう。例2、例3に示すような“011”と“100”が同じ頻度で発生する状態は、下位3ビットの最上位ビットの桁上げが発生する状態において頻繁に発生するものである。
【0014】
また、多数決を行う下位3ビットの最上位ビット以外の桁上げについても同様である。例4のように、下位2ビット目に桁上げが発生する“101”と“110”がそれぞれ3回ずつ発生する場合も、下位2ビット目と最下位ビットの“1”出現回数がそれぞれ3回ずつとなり、残り1回の読み込み値が多数決結果となる。つまり6回目に発生した異常値“000”の下位2ビットが“00”であるために“100”を多数決結果として出力してしまう。
【0015】
以上のように、特許文献1の技術は、ビット毎に単独で多数決を行う回路構成のため、多数決のためのサンプリングにおいて例2〜例4のような“1”と“0”が同程度の頻度で発生する桁上げ付近のアナログ入力に対しては、ノイズ等の異常値を除去することができない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0017】
従って、本発明のA/D変換器は、少なくとも5回以上の奇数回数のサンプリングによりビット毎に行う多数決に基づいてA/D変換結果を補正する。このA/D変換器は、A/D変換結果についてビット毎に行う多数決の結果に基づいて、ビット毎の値を決定する多数決回路(M4)を具備している。この多数決回路(M4)は、第1判定回路(M11、M13)と、第1補正回路(M15、M17)と、第2判定回路(M12、M14)と、第2補正回路(M16、M18)とを備えている。第1判定回路(M11、M13)は、最下位ビットを除く全てのビット毎に、サンプリングによるA/D変換結果の“1”出現回数が、予め設定した所定の第1の判定値と一致する場合、桁上げ付近であり且つ桁上げしていると判定する。第1補正回路(M15、M17)は、桁上げ付近であり且つ桁上げしていると判定されたビットより下位ビットにおけるA/D変換結果を“0”に補正する。第2判定回路(M12、M14)は、最下位ビットを除く全てのビット毎に、サンプリングによるA/D変換結果の“1”出現回数が、予め設定した所定の第2の判定値と一致する場合、桁上げ付近であり且つ桁上げしていないと判定する。第2補正回路(M16、M18)は、桁上げ付近であり且つ桁上げしていないと判定されたビットより下位ビットにおけるA/D変換結果を“1”に補正する。
【0018】
本発明の半導体装置は、アナログ信号供給回路と、A/D変換器とを具備している。アナログ信号供給回路は、アナログ信号を出力する。A/D変換器は、上記段落に記載され、そのアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0019】
本発明のA/D変換結果の補正方法は、少なくとも5回以上の奇数回数のサンプリングによりビット毎に行う多数決に基づいてA/D変換結果を補正する。このA/D変換結果の補正方法は、最下位ビットを除く全てのビット毎に、サンプリングによるA/D変換結果の“1”出現回数が、予め設定した所定の第1の判定値と一致する場合、桁上げ付近であり且つ桁上げしていると判定するステップと、桁上げ付近であり且つ桁上げしていると判定されたビットより下位ビットにおけるA/D変換結果を“0”に補正するステップと、最下位ビットを除く全てのビット毎に、サンプリングによるA/D変換結果の“1”出現回数が、予め設定した所定の第2の判定値と一致する場合、桁上げ付近であり且つ桁上げしていないと判定するステップと、桁上げ付近であり且つ桁上げしていないと判定されたビットより下位ビットにおけるA/D変換結果を“1”に補正するステップとを備えている。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、A/D変換器において、桁上げ付近のアナログ入力に対して、ノイズ等の異常値を除去することができる。それにより、高精度のA/D変換結果を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、特許文献1のA/D変換器の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、特許文献1の多数決回路の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、特許文献1のA/D変換結果と多数決回路の出力との関係の一例を示す表である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係るA/D変換器の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係るA/D変換器の多数決回路を示すブロック図である。
【図6】図6は、本実施の形態に係るA/D変換結果と多数決回路の出力との関係の一例を示す表である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係るA/D変換器M0の動作方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係るA/D変換器とその補正方法に関して、添付図面を参照して説明する。
【0023】
本発明の実施の形態に係るA/D変換器は、少なくとも5回以上の奇数回数のサンプリングによりビット毎に多数決を行うことで変換結果を補正する。このA/D変換器は、多数決回路を備えている。この多数決回路は、第1判定回路と、“0”補正回路と、第2判定回路と、“1”補正回路を備えている。第1判定回路は、最下位ビットを除く全てのビット毎にサンプリングによるA/D変換結果の“1”出現回数が[(サンプリング回数+1)/2]と一致することにより、桁上げ付近であり且つ「桁上げしている」と判定する。“0”補正回路は、桁上げ付近であり且つ「桁上げしている」と判定したビットより下位ビットは、当該多数決回路の結果を“0”に補正する。第2判定回路は、最下位ビットを除く全てのビット毎にサンプリングによるA/D変換結果の“1”出現回数が[(サンプリング回数−1)/2]との一致により、桁上げ付近であり且つ「桁上げしていない」と判定する。“1”補正回路は、桁上げ付近であり且つ「桁上げしていない」と判定したビットより下位ビットは、当該多数決回路の結果を“1”に補正する。これにより、このA/D変換器は、少なくとも5回以上の奇数回数のサンプリングにおいて、少なくとも“1”と“0”が同程度の頻度で発生する桁上げ付近のアナログ入力に対しても、ノイズ等の影響を受けることなく、正しく多数決による変換結果の補正を実施する事が可能となり、高精度のA/D変換結果を出力することができる。以下、具体的に説明する。
【0024】
本発明の実施の形態に係るA/D変換器の構成について、添付図面を参照して説明する。図4は、本発明の実施の形態に係るA/D変換器の構成を示すブロック図である。A/D変換器M0は、上位ビット用A/D変換器(逐次比較型A/Dコンバータ)M1と、基準電圧供給部(基準電圧Vref)と、下位ビット用A/D変換器(並列型A/Dコンバータ)M2と、アナログ入力電圧供給部(アナログ入力信号N1)と、下位ビット基準電圧発生回路M3と、多数決回路M4と、変換結果格納レジスタM5とを具備している。
【0025】
アナログ入力電圧受信部(アナログ入力信号N1)は、A/D変換器M1の外部のアナログ信号供給部(例示:センサ回路、A/D変換器M1の含まれている半導体装置の他の回路;図示されず)からアナログ入力信号N1を受信して、逐次比較型A/DコンバータM1及び並列型A/DコンバータM2に出力する。基準電圧受信部(基準電圧Vref)は、A/D変換器M1の外部の基準電圧供給部(例示:電源回路、A/D変換器M1の含まれている半導体装置の他の回路;図示されず)から基準電圧Vrefを受信して、逐次比較型A/DコンバータM1に出力する。
【0026】
逐次比較型A/Dコンバータ(上位ビット用A/D変換器)M1は、基準電圧Vrefに基づいて、アナログ入力信号N1の上位ビットをA/D変換し、A/D変換結果N2を変換結果格納レジスタM5と、下位ビットの基準電圧を決定するための下位ビット基準電圧発生回路M3へ出力する。これは、従来知られた逐次比較型A/Dコンバータを用いることができる。
【0027】
下位ビット基準電圧発生回路M3は、A/D変換結果N2に基づいて、下位ビットの上限基準電圧N3及び下限基準電圧N4を生成し、並列型A/DコンバータM2へ出力する。
【0028】
並列型A/Dコンバータ(下位ビット用A/D変換器)M2は、下位ビットの上限基準電圧N3及び下限基準電圧N4に基づいて、アナログ入力信号N1の下位ビットをA/D変換し、A/D変換結果N5を多数決回路M4へ出力する。これは、従来知られた並列型A/Dコンバータを用いることができる。
【0029】
多数決回路M4は、並列型A/DコンバータM2から出力されるA/D変換結果N5を複数回サンプリングして、多数決により各ビットの値を決定して出力する。
【0030】
変換結果格納レジスタM5は、逐次比較型A/DコンバータM1のA/D変換結果N2と、並列型A/DコンバータM2のA/D変換結果N5を多数決回路M4により補正した結果N6を格納する。
【0031】
図5は、図4の本発明の実施の形態に係るA/D変換器の多数決回路の詳細を示すブロック図である。多数決回路M4は、3組の単ビット多数決回路M6−1〜M6−3と、“0”補正回路M15と、“1”補正回路M16と、“0”補正回路M17と、“1”補正回路M18とを備えている。
【0032】
3組の単ビット多数決回路M6−1〜M6−3は、クロック信号N7及びクロック信号N14に基づいて、下位3ビットのA/D変換結果N5の多数決をビット毎に行う。A/D変換結果N5の下位から1ビット目が単ビット多数決回路M6−1に入力され、2ビット目が単ビット多数決回路M6−2に入力され、3ビット目が単ビット多数決回路M6−3に入力される。そして、単ビット多数決回路M6−1〜M6−3は、それぞれ多数決結果N8−1〜N8−3を出力する。更に、単ビット多数決回路M6−3は、デジタル信号N9、N10を出力する。単ビット多数決回路M6−2は、デジタル信号N11、N12を出力する。
【0033】
“0”補正回路M15は、単ビット多数決回路M6−3から出力されるデジタル信号N10と単ビット多数決回路M6−2から出力される多数決結果N8−2とに基づいて、所定の論理演算を行い、演算結果を“1”補正回路M16へ出力する。
【0034】
“1”補正回路M16は、単ビット多数決回路M6−3から出力されるデジタル信号N9と“0”補正回路M15から出力される信号とに基づいて、所定の論理演算を行い、演算結果としての補正出力結果N13−2を出力する。
【0035】
“0”補正回路M17は、単ビット多数決回路M6−3から出力されるデジタル信号N10と単ビット多数決回路M6−2から出力されるデジタル信号N12と単ビット多数決回路M6−1から出力される多数決結果N8−1とに基づいて、所定の論理演算を行い、演算結果を“1”補正回路M18へ出力する。
【0036】
“1”補正回路M18は、単ビット多数決回路M6−3から出力されるデジタル信号N9と単ビット多数決回路M6−2から出力されるデジタル信号N11と“0”補正回路M17から出力される信号とに基づいて、所定の論理演算を行い、演算結果としての補正出力結果N13−1を出力する。
【0037】
多数決回路M4は、単ビット多数決回路M6−3から出力される多数決結果N8−3と“1”補正回路M16から出力される補正出力結果N13−2と“1”補正回路M18から出力される補正出力結果N13−1とを、3ビットの出力データである補正結果N6として出力する。ただし、多数決結果N8−3はA/D変換結果の下位から3ビット目の多数決結果、補正出力結果N13−2は下位から2ビット目の補正出力結果、及び、補正出力結果N13−1は下位から1ビット目の補正出力結果となる。
【0038】
単ビット多数決回路M6−1は、加算回路M7−1と、8ビットレジスタM8−1と、ビット選択回路M9−1と、フリップフロップM10−1とを備えている。加算回路M7−1は、クロック信号N7に基づいて、A/D変換結果N5の下位から1ビット目と8ビットレジスタM8−1のフィードバック値とを加算する。8ビットレジスタM8−1は、クロック信号N7に基づいて、加算回路M7−1の出力を格納・出力する。ビット選択回路M9−1は、8ビットレジスタM8−1について3ビット目のデータを出力する。フリップフロップM10−1は、クロック信号N14に基づいて、ビット選択回路M9−1の出力を、下位1ビット目の多数決結果信号N8−1として出力する。
【0039】
単ビット多数決回路M6−2は、加算回路M7−2と、8ビットレジスタM8−2と、ビット選択回路M9−2と、フリップフロップM10−2と、判定回路M13と、判定回路M14とを備えている。加算回路M7−2は、クロック信号N7に基づいて、A/D変換結果N5の下位から2ビット目と8ビットレジスタM8−2のフィードバック値とを加算する。8ビットレジスタM8−2は、クロック信号N7に基づいて、加算回路M7−2の出力を格納・出力する。ビット選択回路M9−2は、8ビットレジスタM8−2の出力について3ビット目のデータを出力する。フリップフロップM10−2は、クロック信号N14に基づいて、ビット選択回路M9−2の出力を、下位2ビット目の多数決結果信号N8−2として出力する。判定回路M13は、8ビットレジスタM8−2の出力に基づいて、所定の判定プロセスを実行し、判定結果信号N12を出力する。判定回路M14は、8ビットレジスタM8−2の出力に基づいて、所定の判定プロセスを実行し、判定結果信号N11を出力する。
【0040】
単ビット多数決回路M6−3は、加算回路M7−3と、8ビットレジスタM8−3と、ビット選択回路M9−3と、フリップフロップM10−3と、判定回路M11と、判定回路M12とを備えている。加算回路M7−3は、クロック信号N7に基づいて、A/D変換結果N5の下位から3ビット目と8ビットレジスタM8−3のフィードバック値とを加算する。8ビットレジスタM8−3は、クロック信号N7に基づいて、加算回路M7−3の出力を格納・出力する。ビット選択回路M9−3は、8ビットレジスタM8−3の出力について3ビット目のデータを出力する。フリップフロップM10−3は、クロック信号N14に基づいて、ビット選択回路M9−3の出力を、下位3ビット目の多数決結果信号N8−3として出力する。判定回路M11は、8ビットレジスタM8−3の出力に基づいて、所定の判定プロセスを実行し、判定結果信号N10を出力する。判定回路M12は、8ビットレジスタM8−3の出力に基づいて、所定の判定プロセスを実行し、判定結果信号N9を出力する。
【0041】
以下に、図5に示される各構成要素の動作について説明する。
まず、単ビット多数決回路M6−1の動作について説明する。加算回路M7−1は、クロック信号N7の立ち上がり変化タイミングで、入力されるデジタル信号N5の値と、8ビットレジスタM8−1のフィードバック値とをビット毎に加算し、結果を8ビットレジスタM8−1に格納する。8ビットレジスタM8−1は、クロック信号N7に同期して加算回路M7−1の出力データを格納し、結果をビット選択回路M9−1へ出力する。ビット選択回路M9−1は、クロック信号N14の立ち上がり変化タイミングで8ビットレジスタM8−1の出力データの3ビット目のデータをフリップフロップM10−1に格納する。フリップフロップM10−1は、クロック信号N14の立ち上がり変化タイミングで、ビット選択回路M9−1の出力を保持し、単ビット多数決回路M6−1の出力として、多数決結果信号N8−1を出力する。
【0042】
次に、単ビット多数決回路M6−2の動作について説明する。加算回路M7−2は、クロック信号N7の立ち上がり変化タイミングで、入力されるデジタル信号N5の値と、8ビットレジスタM8−2のフィードバック値とをビット毎に加算し、結果を8ビットレジスタM8−2に格納する。8ビットレジスタM8−2は、クロック信号N7に同期して加算回路M7−2の出力データを格納し、結果をビット選択回路M9−2へ出力し、更に判定回路M13、M14にそれぞれ出力する。ビット選択回路M9−2は、クロック信号N14の立ち上がり変化タイミングで8ビットレジスタM8−2の出力データの3ビット目のデータをフリップフロップM10−2に格納する。フリップフロップM10−2は、クロック信号N14の立ち上がり変化タイミングで、ビット選択回路M9−2の出力を保持し、単ビット多数決回路M6−2の出力として、多数決結果信号N8−2を出力する。判定回路M13は、予め判定値として[(サンプリング回数+1)/2]を設定しておく。そして、8ビットレジスタM8−2の出力データと判定値とが一致した場合には“1”を出力し、不一致の場合には“0”を出力する。判定回路M14は、判定回路M12と同様に予め判定値として[(サンプリング回数−1)/2]を設定しておく。そして、8ビットレジスタM8−2の出力データと判定値とが一致した場合には“1”を出力し、不一致の場合には“0”を出力する。
【0043】
次に、単ビット多数決回路M6−3の動作について説明する。加算回路M7−3は、クロック信号N7の立ち上がり変化タイミングで、入力されるデジタル信号N5の値と、8ビットレジスタM8−3のフィードバック値とをビット毎に加算し、結果を8ビットレジスタM8−3に格納する。8ビットレジスタM8−3は、クロック信号N7に同期して加算回路M7−3の出力データを格納し、結果をビット選択回路M9−3へ出力し、更に、判定回路M11、M12にそれぞれ出力する。ビット選択回路M9−3は、クロック信号N14の立ち上がり変化タイミングで8ビットレジスタM8−3の出力データの3ビット目のデータをフリップフロップM10−3に格納する。フリップフロップM10−3は、クロック信号N14の立ち上がり変化タイミングで、ビット選択回路M9−3の出力を保持し、単ビット多数決回路M6−3の出力として、多数決結果信号N8−3を出力する。判定回路M11は、予め判定値として[(サンプリング回数+1)/2]を設定しておく。そして、8ビットレジスタM8−3の出力データと判定値とが一致した場合には“1”を出力し、不一致の場合には“0”を出力する。判定回路M12は、予め判定値として[(サンプリング回数−1)/2]を設定しておく。そして、8ビットレジスタM8−3の出力データと判定値とが一致した場合には“1”を出力し、不一致の場合には“0”を出力する。
【0044】
なお、判定値[(サンプリング回数+1)/2]については、この例に限定されるものではなく、[(サンプリング回数+1)/2](回)から上位ビット側へ所定の幅(回数)を有した値としても良い。例えば、[(サンプリング回数+1)/2](回)〜[(サンプリング回数+1)/2]+1(回)などである。この追加分は、サンプリング回数に対応して決定することができる。例えば、サンプリング回数が多いほど増加量を増加させる、などである。同様に、判定値[(サンプリング回数−1)/2]については、この例に限定されるものではなく、[(サンプリング回数−1)/2](回)から下位ビット側へ所定の幅(回数)を有した値としても良い。例えば、[(サンプリング回数−1)/2](回)〜[(サンプリング回数−1)/2]−1(回)などである。この追加分は、サンプリング回数に対応して決定することができる。例えば、サンプリング回数が多いほど減少量を増加させる、などである。
【0045】
次に、“0”補正回路M15の動作を説明する。“0”補正回路M15は、例えば2入力AND回路で構成し、判定回路M11から出力される判定結果信号N10の反転値と、単ビット多数決回路M6−2の多数決結果N8−2を入力とし、判定結果信号N10が“1”の場合、多数決結果N8−2の値によらず“0”を“1”補正回路M16へ出力する。一方、判定結果信号N10が“0”の場合、多数決結果N8−2の値をそのまま“1”補正回路M16へ出力する。
【0046】
次に、“1”補正回路M16の動作を説明する。“1”補正回路M16は、例えば2入力OR回路で構成し、判定回路M12から出力される判定結果信号N9と、“0”補正回路M15の出力データを入力とし、判定結果信号N9が“1”の場合、“0”補正回路M15の出力データによらず、補正結果出力N13−2を“1”に補正して出力する。一方、判定結果信号N9が“0”の場合、“0”補正回路M15の出力データをそのまま補正結果出力N13−2として出力する。
【0047】
次に、“0”補正回路M17の動作を説明する。“0”補正回路M17は、例えば3入力AND回路で構成し、判定回路M11から出力される判定結果信号N10の反転値と、判定回路M13から出力される判定結果信号N12の反転値と、単ビット多数決回路M6−1の多数決結果N8−1を入力とし、判定結果信号N10と判定結果信号N12のどちらか一方又は両方が“1”の場合、多数決結果N8−1の値によらず“0”を“1”補正回路M18へ出力する。一方、判定結果信号N10と判定結果信号N12の両方が“0”の場合、多数決結果N8−1の値をそのまま“1”補正回路M18へ出力する。
【0048】
次に、“1”補正回路M18の動作を説明する。“1”補正回路M18は、例えば3入力OR回路で構成し、判定回路M12から出力される判定結果信号N9と、判定回路M14から出力される判定結果信号N11と、“0”補正回路M17の出力データを入力とし、判定結果信号N9と判定結果信号N11のどちらか一方又は両方が“1”の場合、“0”補正回路M17の出力データによらず、補正結果出力N13−1を“1”に補正して出力する。一方、判定結果信号N9と判定結果信号N11の両方が“0”の場合、“0”補正回路M17の出力データをそのまま補正結果出力N13−1へ出力する。
【0049】
次に、本実施の形態に係る多数決回路M4(図5)において、補正結果出力N6を出力するための動作について説明する。図6は、本実施の形態に係るA/D変換結果と多数決回路の出力との関係の一例を示す表である。具体的には、この図は、多数決回路M4により下位3ビットについて、7回の読み込み(サンプリング;1回目〜7回目)を行った場合での、それぞれのA/D変換結果と、多数決回路の出力値(補正出力結果)との関係について、4つの例(例1〜例4)を示している。例1は、下位3ビットにおいて桁上げが発生していない状態でのA/D変換結果である。例2〜例3は、下位3ビットにおいて最上位ビットで桁上げが発生した状態での変換結果である。例4は、下位3ビットにおいて下位2ビット目で桁上げが発生した状態での変換結果を示している。例1〜例4のそれぞれのA/D変換結果では、例として、異常値(丸点線で囲んだ値)が発生したとしている。これらのビット数、サンプリング回数及びサンプリング値は便宜上、図3の特許文献1の説明の場合と同じ値を使用する。
【0050】
サンプリング回数が7回の場合、図5の多数決回路M4を構成する判定回路M11とM13には、桁上げ付近であり且つ「桁上げしている」と判定するために、[(サンプリング回数+1)/2]である4回を設定し、判定回路M12とM14には、桁上げ付近であり且つ「桁上げしていない」と判定するために、[(サンプリング回数−1)/2]である3回を設定する。
【0051】
例1のように4回目の読み込みでノイズ等の異常値“000”が発生した場合、残り全ての変換結果が“011”であれば、下位から3ビット目の“1”出現回数は0回であり、2〜1ビット目の“1”出現回数は6回である。したがって、判定回路M11とM13の設定値「4回」と3〜2ビット目の“1”出現回数とは不一致であり、判定回路M12とM14の設定値「3回」と3〜2ビット目の“1”出現回数とも不一致である。すなわち、一致するビットはなく、判定回路M11〜M14の出力であるデジタル信号N9〜N12は全て“0”となる。その結果、“0”補正回路M15とM17、及び、“1”補正回路M16とM18による補正は行われない。よって、多数決回路M4は、特許文献1の場合と同様に多数決回路の結果として“011”をデジタル信号N6として出力する。
【0052】
例2のように1〜6回目のサンプリングで“011”、“100”がそれぞれ3回出現し、7回目のA/D変換結果としてノイズ等による“000”が出現した場合、全ビットの“1”出現回数は3回となる。このとき、多数決回路M4は、下位から3ビット目は多数決結果である“0”をそのままデジタル信号N8−3として出力する。一方、全ビットの“1”出現回数が3回であり、判定回路M12とM14の設定値「3回」とは一致するので、デジタル信号N9とN11は“1”となる。また、判定回路M11とM13の設定値「4回」とは不一致であるので、デジタル信号N10とN12は“0”となる。そのため、“0”補正回路M15は、下位から2ビット目の多数決結果であるデジタル信号N8−2の入力データ“0”をそのまま出力する。“1”補正回路M16は、それを“1”に補正してデジタル信号N13−2として出力する。同様に、“0”補正回路M17は、下位から1ビット目の多数決結果であるデジタル信号N8−1の入力データ“0”をそのまま出力する。“1”補正回路M18は、それを“1”に補正してデジタル信号N13−1として出力する。
【0053】
つまり例2の場合、本実施の形態では、多数決回路M4は、その出力結果として、下位から3ビット目の多数決結果であるデジタル信号N8−3と下位から2ビット目の補正結果出力であるデジタル信号N13−2と下位から1ビット目の補正結果出力であるデジタル信号N13−1の値“011”を補正結果N6として出力する。
【0054】
例3では1〜2回目、4〜7回目のサンプリングで“011”と“100”がそれぞれ3回出現し、3回目のA/D変換結果としてノイズ等による“111”が出現した場合、全ビットの“1”出現回数は4回となる。このとき、多数決回路M4は、下位から3ビット目は多数決結果である“1”をそのままデジタル信号N8−3として出力する。一方、全ビットの“1”出現回数が4回であり、判定回路M12とM14の設定値「3回」とは不一致であるので、デジタル信号N9とN11は“0”となる。また、判定回路M11とM13の設定値「4回」とは一致するので、デジタル信号N10とN12は“1”となる。そのため、“0”補正回路M15は、下位から2ビット目の多数決結果であるデジタル信号N8−2を補正した“0”を出力する。“1”補正回路M16は、“0”補正回路M15により補正された“0”をそのままデジタル信号N13−2として出力する。同様に、0”補正回路M17は、下位から1ビット目の多数決結果であるデジタル信号N8−1を補正した“0”を出力する。“1”補正回路M18は、“0”補正回路M17により補正された“0”をそのままデジタル信号N13−1として出力する。
【0055】
つまり例3の場合、本実施の形態では、多数決回路M4は、その出力結果として、下位から3ビット目の多数決結果であるデジタル信号N8−3と下位から2ビット目の補正結果出力であるデジタル信号N13−2と下位から1ビット目の補正結果出力であるデジタル信号N13−1の値“100”を補正結果N6として出力する。
【0056】
例4では1〜5回目、7回目のサンプリングで“101”と“110”がそれぞれ3回ずつ出現し、6回目のA/D変換結果としてノイズ等による“000”が出現した場合、下位から2ビット目の“1”出現回数は3回となる。このとき多数決回路M4は、下位から3ビット目はそのまま多数決結果である“1”をデジタル信号N8−3として出力する。一方、判定回路M12の設定値「3回」とは不一致であるので、デジタル信号N9は“0”となる。また、判定回路M14の設定値「3回」とは一致するので、デジタル信号N11は“1”となる。また、判定回路M11とM13の設定値「4回」とは不一致であるので、デジタル信号N10とN12は“0”となる。そのため、“0”補正回路M15は、下位から2ビット目の多数決結果である“0”をデジタル信号N8−2として出力する。“1”補正回路M16では入力データである“0”をそのままデジタル信号N13−2として出力する。しかし、“0”補正回路M17は、下位から1ビット目の多数決結果であるデジタル信号N8−1の入力データ
“0”をそのまま出力するが、“1”補正回路M18は、“1”に補正してデジタル信号N13−1として出力する。
【0057】
つまり例4の場合、本実施の形態では、多数決回路M4は、その出力結果として、下位から3ビット目の多数決結果であるデジタル信号N8−3と下位から2ビット目の多数決結果出力であるデジタル信号N13−2と下位から1ビット目の補正結果出力であるデジタル信号N13−1の値“101”を補正結果N6として出力する。
【0058】
このように、本実施の形態では、サンプリング回数を7回とした場合、判定回路M11とM13には桁上げ付近であり且つ「桁上げしている」と判定するための判定値として4回、判定回路M12とM14には桁上げ付近で且つ「桁上げしていない」と判定するための判定値として3回をそれぞれ設定する。そして、ビット毎の“1”出現回数に応じて下記の補正を行う。
(a)“1”出現回数:0〜2回
多数決回路の結果として“0”をそのままデジタル信号N6へ出力する。
(b)“1”出現回数:3回(判定回路M12とM14の判定値(設定値))
多数決回路の結果として“0”をデジタル信号N6へ出力するが、3回と一致したビットより下位のビットは全て“1”に補正してデジタル信号N6へ出力する。
(c)“1”出現回数:4回(判定回路M11とM13の判定値(設定値))
多数決回路の結果として“1”をデジタル信号N6へ出力するが、4回と一致したビットより下位のビットは全て“0”に補正してデジタル信号N6へ出力する。
(d)“1”出現回数:5〜7回
多数決回路の結果として“1”をそのままデジタル信号N6へ出力する。
【0059】
また、サンプリング回数を変更した場合でも、判定回路M11とM13の設定回数は、桁上げ付近であり且つ「桁上げしている」と判定するために[(サンプリング回数+1)/2]とし、判定回路M12とM14の設定回数は、桁上げ付近であり且つ「桁上げしていない」と判定するために[(サンプリング回数−1)/2]とする。それにより、上記(a)〜(d)と同様にすれば、桁上げ発生付近においてA/D変換結果の異常値が発生した場合において、正しい変換結果をデジタル信号N6より出力可能となる。
【0060】
次に、本発明の実施の形態に係るA/D変換器M0の動作方法(補正方法)について説明する。図7は、本発明の実施の形態に係るA/D変換器M0の動作方法を示すフローチャートである。
【0061】
(1)ステップS1にて、ユーザーは、A/D変換開始前に各種レジスタ設定として、下位ビットの多数決を行うためのサンプリング回数“X”と、桁上げ付近であり且つ「桁上げしている」と判定するための設定値“Y”として[(サンプリング回数”X+1)/2]と、桁上げ付近で且つ「桁上げしていない」と判定するための設定値“Z”として[(サンプリング回数”X“−1)/2]とをそれぞれ設定する。
(2)ステップS2にて、逐次比較型A/DコンバータM1は、アナログ入力信号N1のA/D変換を開始する。
(3)ステップS3にて、逐次比較型A/DコンバータM1は、最上位ビットから順に1ビットずつアナログ入力値をデジタル値に変換する。
(4)ステップS4にて、逐次比較型A/DコンバータM1は、上位ビットにおける最下位ビットまでデジタル値に変換終了しているか判定する。終了していなければ、NOへ分岐し最下位ビットまでステップS3を繰り返す。最下位ビットまでデジタル値に変換終了後、逐次比較型A/DコンバータM1は、上位ビットのA/D変換結果N2を変換結果レジスタに格納する。そして、YESへ分岐しステップS5へ移行する。例えば、10ビットA/D変換にて上位7ビット、下位3ビットとした場合、上位7ビット分のデジタル値変換が終了するまでステップS3を繰り返す。
(5)ステップS5にて、並列型A/DコンバータM2は、下位ビットについて全ビット並列処理でアナログ入力値をデジタル値に変換する。
(6)ステップS6にて、並列型A/DコンバータM2は、下位ビットのデジタル値への変換が終了しているか判定する。終了していなければ、NOへ分岐し変換終了までステップS5を継続する。デジタル値に変換終了後、YESへ分岐しステップS7へ移行する。
(7)ステップS7にて、並列型A/DコンバータM2は、ステップS5にて実施した下位ビットのA/D変換結果N5であるデジタル値を多数決回路M4へ格納する。
(8)ステップS8にて、並列型A/DコンバータM2は、ステップS1で設定したサンプリング回数“X”から“1”を減算する。
(9)ステップS9にて、並列型A/DコンバータM2は、ステップS8で減算処理されたサンプリング回数“X”が0回であるか判定する。0回でなければ、並列型A/DコンバータM2は、ステップS5から処理を繰り返す。0回であれば、ステップS10へ移行する。
(10)ステップS10にて、多数決回路M4は、下位ビットのA/D変換結果N5の内、最下位ビットを除く全ビットの各々についてステップS7で格納した“1”読み込み回数とステップS1で設定した桁上げ付近であり且つ「桁上げしている」と判定するための設定値“Y”とを比較する。多数決回路M4は、一致していた場合にはステップS11へ移行し、不一致の場合にはステップS12へ移行する。このとき、設定値“Y”は、ステップS1により、判定回路11及び13に予め設定されている。
(11)ステップS11にて、多数決回路M4は、ステップS1で設定した桁上げ付近であり且つ「桁上げしている」と判定するための設定値“Y”と一致していたビットよりも下位ビットは全て“0”補正回路により“0”に多数決結果を補正する。
(12)ステップS12にて、多数決回路M4は、下位ビットのA/D変換結果の内、最下位ビットを除く全ビットの各々についてステップS7で格納した“1”読み込み回数とステップS1で設定した桁上げ付近であり且つ「桁上げしていない」と判定するための設定値“Z”とを比較する。多数決回路M4は、一致していた場合にはステップS13へ移行し、不一致の場合にはステップS10、ステップS11で処理した下位ビットの多数決結果を変換結果レジスタM5に格納し、A/D変換を終了する。このとき、設定値“Z”は、ステップS1により、判定回路12及び14に予め設定されている。
(13)ステップS13にて、多数決回路M4は、ステップS1で設定した桁上げ付近であり且つ「桁上げしていない」と判定するための設定値“Z”と一致していたビットよりも下位ビットは全て“1”補正回路により“1”に多数決結果を補正する。そして、下位ビットの多数決結果を変換結果レジスタM5に格納し、A/D変換を終了する。
つまり本実施の形態では、ステップS10〜S13による補正を行った後の結果を多数決回路M4の結果として出力する。
【0062】
以上のようにして、本発明の実施の形態に係るA/D変換器M0の動作方法(補正方法)が実施される。
【0063】
本実施の形態によれば、A/D変換結果を補正するためのビット毎の多数決回路は、最下位ビットを除く全てのビット毎に、サンプリングによるA/D変換結果の“1”出現回数が[(サンプリング回数+1)/2]と一致している場合には桁上げ付近であり且つ「桁上げしている」と判定して“1”を出力する判定回路と、桁上げ付近であり且つ「桁上げしている」と判定する判定回路から出力される判定信号の反転論理と桁上げ付近であり且つ「桁上げしている」と判定したビットより下位ビットの多数決回路の結果のAND論理をとることで桁上げ付近であり且つ「桁上げしている」と判定したビットより下位ビットは多数決回路の結果を“0”に補正する“0”補正回路と、最下位ビットを除く全てのビット毎に、サンプリングによるA/D変換結果の“1”出現回数が[(サンプリング回数−1)/2]と一致している場合には桁上げ付近であり且つ「桁上げしていない」と判定して“1”を出力する判定回路と、桁上げ付近であり且つ「桁上げしていない」と判定する判定回路から出力される判定信号と桁上げ付近であり且つ「桁上げしていない」と判定したビットより下位ビットの多数決回路の結果のOR論理をとることで桁上げ付近であり且つ「桁上げしていない」と判定したビットより下位ビットは多数決回路の結果を“1”に補正する“1”補正回路を備えている。それにより、A/D変換結果が桁上げ付近であるかということと、更に桁上げ付近である場合に桁上げが完了した状態なのか、完了していない状態なのかを検知することが可能となり、従来除去できなかったA/D変換結果の異常値を多数決回路の結果として出力することなく、桁上げ前後のA/D変換結果を多数決回路の結果として出力できる。
すなわち、本実施の形態は、微細化やノイズに伴うアナログ特性のばらつき増加に対して、補正技術を用いることによるA/D変換結果の高精度化ができるという効果を有する。
【0064】
本A/D変換器M1は、半導体集積回路やマイクロコンピュータなどに例示される半導体装置(図示されず)に組み込んで使用することが可能である。
【0065】
本発明は上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0066】
M0 A/D変換器
M1 逐次比較型A/Dコンバータ
M2 並列型A/Dコンバータ
M3 下位ビット基準電圧発生回路
M4 多数決回路
M5 変換結果格納レジスタ
M6−1〜M6−3 単ビット多数決回路
M7−1〜M7−3 加算回路
M8−1〜M8−3 レジスタ
M9−1〜M9−3 ビット選択回路
M10−1〜M10−3 フリップフロップ
M11〜M14 判定回路
M15、M17 “0”補正回路
M16、M18 “1”補正回路
N1 アナログ入力信号
N2、N5〜N6、N8−1〜N8−3、N9〜N12、N13−1〜N13−2 デジタル信号
N3 上限基準電圧
N4 下限基準電圧
N7、N14 クロック信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも5回以上の奇数回数のサンプリングによりビット毎に行う多数決に基づいてA/D変換結果を補正するA/D変換器であって、
A/D変換結果についてビット毎に行う多数決の結果に基づいて、前記ビット毎の値を決定する多数決回路を具備し、
前記多数決回路は、
最下位ビットを除く全てのビット毎に、サンプリングによるA/D変換結果の“1”出現回数が、予め設定した所定の第1の判定値と一致する場合、桁上げ付近であり且つ桁上げしていると判定する第1判定回路と、
前記桁上げ付近であり且つ桁上げしていると判定されたビットより下位ビットにおける前記A/D変換結果を“0”に補正する第1補正回路と、
前記最下位ビットを除く全てのビット毎に、前記サンプリングによる前記A/D変換結果の“1”出現回数が、予め設定した所定の第2の判定値と一致する場合、桁上げ付近であり且つ桁上げしていないと判定する第2判定回路と、
前記桁上げ付近であり且つ桁上げしていないと判定されたビットより下位ビットにおける前記A/D変換結果を“1”に補正する第2補正回路と
を具備する
A/D変換器。
【請求項2】
請求項1に記載のA/D変換器において、
前記第1の判定値を[(サンプリング回数+1)/2]とし、前記第2の判定値を[(サンプリング回数−1)/2]とする
A/D変換器。
【請求項3】
請求項1に記載のA/D変換器において、
前記第1の判定値を[(サンプリング回数+1)/2]から上位ビット側へ所定の幅を有した値とし、前記第2の判定値を[(サンプリング回数−1)/2]から下位ビット側へ所定の幅を有した値とする
A/D変換器。
【請求項4】
請求項1に記載のA/D変換器において、
前記多数決回路は、前記A/D変換結果のうちの下位ビットについて、ビット毎に行う多数決の結果に基づいて、前記ビット毎の値を決定する
A/D変換器。
【請求項5】
アナログ信号を出力するアナログ信号供給回路と、
前記アナログ信号をデジタル信号に変換する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のA/D変換器と
を具備する
半導体装置。
【請求項6】
少なくとも5回以上の奇数回数のサンプリングによりビット毎に行う多数決に基づいてA/D変換結果を補正するA/D変換結果の補正方法であって、
最下位ビットを除く全てのビット毎に、サンプリングによるA/D変換結果の“1”出現回数が、予め設定した所定の第1の判定値と一致する場合、桁上げ付近であり且つ桁上げしていると判定するステップと、
前記桁上げ付近であり且つ桁上げしていると判定されたビットより下位ビットにおける前記A/D変換結果を“0”に補正するステップと、
前記最下位ビットを除く全てのビット毎に、前記サンプリングによる前記A/D変換結果の“1”出現回数が、予め設定した所定の第2の判定値と一致する場合、桁上げ付近であり且つ桁上げしていないと判定するステップと、
前記桁上げ付近であり且つ桁上げしていないと判定されたビットより下位ビットにおける前記A/D変換結果を“1”に補正するステップと
を具備する
A/D変換結果の補正方法。
【請求項7】
請求項6に記載のA/D変換結果の補正方法において、
前記第1の判定値を[(サンプリング回数+1)/2]とし、前記第2の判定値を[(サンプリング回数−1)/2]とする
A/D変換結果の補正方法。
【請求項8】
請求項6に記載のA/D変換結果の補正方法において、
前記第1の判定値を[(サンプリング回数+1)/2]から上位ビット側へ所定の幅を有した値とし、前記第2の判定値を[(サンプリング回数−1)/2]から下位ビット側へ所定の幅を有した値とする
A/D変換結果の補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−227642(P2012−227642A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91970(P2011−91970)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】