説明

AE計測方法及びその装置

【課題】FBGセンサによるシフト量の変化に際し、1つのファブリペローフィルタで対応し得るAE計測方法及びその装置を提供する。
【解決手段】広帯域波長光を発する光源1と、
広帯域波長光が入射するFBGセンサ2と、
FBGセンサ2からの反射光を透過させ且つ温度により透過率ピーク波長を調整し得るファブリペローフィルタ20と、
ファブリペローフィルタ20を透過した光を電圧信号に変換する光電変換器21と、
光電変換器21から光の強度変化のAC成分を計測する計測器22と、
光電変換器21からのDC出力電圧を計測する電圧計測器24と、
ファブリペローフィルタ20の温度を調整する温度調節器25と、
電圧計測器24からのDC出力電圧を基準にして温度調節器25を制御する制御器26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FBGセンサを用いてAE(アコースティック・エミッション)信号を計測するAE計測方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、構造物等の検査対象について亀裂等の欠陥を検出する手法としては、欠陥発生に伴う弾性波放出(AE:アコースティック・エミッション)の検出を利用した非破壊のAE計測方法が存在している。
【0003】
AE計測方法では、電磁波障害を受ける圧電素子の代わりに、光ファイバセンサの一種であるFBG(Fiber Bragg Grating:ファイバ・ブラッグ・グレーティング)センサを用いることが考えられている。
【0004】
このようなAE計測装置について説明すると、図7に示すごとくAE計測装置は、広帯域波長光を発する光源1と、広帯域波長光が入射するFBGセンサ2と、光源1とFBGセンサ2の間に位置する光サーキュレータ3と、光サーキュレータ3からの光を分岐する光カプラ4と、光カプラ4で分岐した一方の光を透過させる第一のファブリペローフィルタ(FFP:Fiber Fabry-Perot)5と、光カプラ4で分岐した他方の光を透過させる第二のファブリペローフィルタ(FFP:Fiber Fabry-Perot)6と、第一のファブリペローフィルタ5を透過した光を電気信号に変換する第一の光電変換器7と、第二のファブリペローフィルタ6を透過した光を電気信号に変換する第二の光電変換器8と、第一の光電変換器7及び第二の光電変換器8からの信号を処理するAE信号の計測器9及びデータ収録器10を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
光源1は、光を連続的に出力するものであり、光源1と光サーキュレータ3の間には、第一の光ファイバ11を配して入射光を光サーキュレータ3に導波させるようになっており、更に光サーキュレータ3とFBGセンサ2の間には、第二の光ファイバ12を配して入射光をFBGセンサ2に導波させるようになっている。
【0006】
FBGセンサ2は、光ファイバのコア部分に光軸方向に沿って一定の間隔で回折格子を形成するセンサであり、FBGセンサ2に光が入射されると、ブラッグ波長の波長成分がFBGセンサ2で反射され、残りの成分が透過されるようになっている。またブラッグ波長のシフト量は、検査対象のひずみや温度変化により変化するようになっている。
【0007】
光サーキュレータ3は、入射光または反射光による導波の方向を制御するように、光源1からの入射光を第二の光ファイバ12へ導波させると共に、FBGセンサ2からの反射光を第三の光ファイバ13を介して光カプラ4へ導波させるようになっている。
【0008】
光カプラ4は、第四の光ファイバ14を配して第一のファブリペローフィルタ5に接続されていると共に、第五の光ファイバ15を配して第二のファブリペローフィルタ6に接続されており、反射光を50:50に分岐して第一のファブリペローフィルタ5及び第二のファブリペローフィルタ6に入射させるようになっている。
【0009】
第一のファブリペローフィルタ5及び第二のファブリペローフィルタ6は、光学特性としてフィルタの透過率が一定の波長間隔(FSR:Free Spectral Range)で周期的に変化するものであり(図8参照)、ファブリペローフィルタ5,6の透過波長とFBGセンサ2の反射光スペクトルの重なりあった波長のみが透過している。また第一のファブリペローフィルタ5は透過光を第六の光ファイバ16により第一の光電変換器7へ導波すると共に、第二のファブリペローフィルタ6は透過光を第七の光ファイバ17により第二の光電変換器8へ導波するようになっている。更にファブリペローフィルタ5,6の波長−透過率特性は、温度により変化するため、温度調整器(図示せず)を備えて調整可能に構成されている。
【0010】
ここでFBGセンサ2のブラッグ波長は、ひずみや温度変化に伴うシフト量の変化によって、二つのファブリペローフィルタ5,6の透過波長とFBGセンサ2の反射光スペクトルが重ならず、光が適切に透過しない場合があるため、第二のファブリペローフィルタ6の透過率波長を調整し、第一のファブリペローフィルタ5の透過率ピーク波長と第二のファブリペローフィルタ6の透過率ピーク波長をFSR/4離すように設定し(図9参照)、ブラッグ波長のシフト量にかかわらず、第一のファブリペローフィルタ5の透過波長または/及び第二のファブリペローフィルタ6の透過波長とFBGセンサ2の反射光スペクトルが常に重なるようにしている。なおFBGセンサ2の反射光スペクトルの中心波長から光強度が半減する波長のときにファブリペローフィルタの透過率が最大となるようになったときに感度が最も高くなっている。
【0011】
第一の光電変換器7は、第一のファブリペローフィルタ5からの透過光を電気信号に変換し、電気信号を第一の連絡線18によりAE信号の計測器9及びデータ収録器10へ送るようにしている。また第二の光電変換器8は、第一の光電変換器7と同様に、第二のファブリペローフィルタ6からの透過光を電気信号に変換し、電気信号を第二の連絡線19によりAE信号の計測器9及びデータ収録器10へ送るようにしている。
【0012】
AE信号の計測器9及びデータ収録器10は、光の強度変化のAC成分を計測し、AE信号を取得して記録するようになっている。ここでAE信号の計測器9とデータ収録器10は別々に構成しても良いし、1つの機器で構成しても良い。
【0013】
AE信号を計測する際には、FBGセンサ2からの反射光を光カプラ4により50:50に分け、第一のファブリペローフィルタ5及び第二のファブリペローフィルタ6に入射させる。次に第一のファブリペローフィルタ5及び第二のファブリペローフィルタ6ではファブリペローフィルタ5,6の透過波長とFBGセンサ2の反射光スペクトルの重なりあった波長を透過させて第一の光電変換器7及び第二の光電変換器8に導波し、第一の光電変換器7及び第二の光電変換器8で透過光の強度を夫々電気信号に変換する。そしてAE信号の計測器9及びデータ収録器10では夫々光の強度変化のAC成分を計測してAE信号を取得し、検査対象の亀裂等の欠陥を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−46036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、FBGセンサ2によるシフト量の変化に対応するように少なくとも二つのファブリペローフィルタ5,6を用いる場合には、構成が複雑になってコストが増加するという問題があった。また第一のファブリペローフィルタ5の透過率ピーク波長と第二のファブリペローフィルタ6の透過率ピーク波長をFSR/4離すように設定する場合には、ファブリペローフィルタ5,6のエタロン間距離を温度で調整する必要があるが、このとき温度と透過率最大波長の相関関係を取得する必要がある。この温度と透過率最大波長の相関関係の取得には多くの手間と時間がかかるという問題があった。
【0016】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、FBGセンサによるシフト量の変化に際し、1つのファブリペローフィルタで対応し得るAE計測方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のAE計測方法は、広帯域波長光を発する光源と、該広帯域波長光が入射するFBGセンサと、該FBGセンサからの反射光を透過させ且つ透過率ピーク波長を温度により調整し得るファブリペローフィルタと、該ファブリペローフィルタを透過した光を電圧信号に変換する光電変換器と、前記ファブリペローフィルタの温度を調整する温度調節器とを備え、該光電変換器が出力した光の強度変化のAC成分を計測するAE計測方法であって、前記ファブリペローフィルタを透過して全光強度に相当するDC出力電圧を光電変換器により計測し、該DC出力電圧を基準にしてファブリペローフィルタの透過率ピーク波長を温度調節器により調整し、前記FBGセンサからの反射光に対してファブリペローフィルタを透過する全光強度を一定範囲に保持するものである。
【0018】
本発明のAE計測方法において、温度パラメータとDC出力電圧の関係に基づき、光電変換器で計測したDC出力電圧から温度によりファブリペローフィルタの透過率ピーク波長を調整し、ファブリペローフィルタを透過する全光強度を一定範囲に制御することが好ましい。
【0019】
本発明のAE計測装置は、広帯域波長光を発する光源と、該広帯域波長光が入射するFBGセンサと、該FBGセンサからの反射光を透過させ且つ温度により透過率ピーク波長を調整し得るファブリペローフィルタと、該ファブリペローフィルタを透過した光を電圧信号に変換する光電変換器と、該光電変換器から光の強度変化のAC成分を計測する計測器と、前記光電変換器からDC出力電圧を計測する電圧計測器と、前記ファブリペローフィルタの温度を調整する温度調節器と、前記電圧計測器からのDC出力電圧を基準にして温度調節器を制御する制御器とを備えたものである。
【0020】
本発明のAE計測装置において、前記制御器は、温度パラメータとDC出力電圧の関係に基づき、DC出力電圧から温度調節器を介してファブリペローフィルタの透過率ピーク波長を調整し、ファブリペローフィルタを透過する全光強度を一定範囲内に調整するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のAE計測方法及びその装置によれば、光電変換器からのDC出力電圧を基準にしてファブリペローフィルタの透過率ピーク波長を温度調節器により調整し、FBGセンサからの反射光に対してファブリペローフィルタを透過する全光強度を一定範囲に保持するので、FBGセンサによるシフト量の変化に際して1つのファブリペローフィルタで対応することができ、よって装置の構成を単純化してコストを抑制することができる。またファブリペローフィルタの透過率ピーク波長がどこにあるのか不明であっても、光電変換器からのDC出力電圧をフィードバックして温度によりファブリペローフィルタの透過率ピーク波長を調整するので、第一のファブリペローフィルタの透過率ピーク波長と第二のファブリペローフィルタの透過率ピーク波長をFSR/4離すように設定するための準備作業を不要にし、多くの手間と時間を削減することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の形態例を示すブロック図である。
【図2】DC出力電圧に基づいてファブリペローフィルタの温度を調整する処理を示すフローである。
【図3】温度パラメータとDC出力電圧の相関関係を示すグラフである。
【図4】温度パラメータにおける反射スペクトルパワー及びDC出力電圧を示す試験の一例である。
【図5】温度パラメータにおける反射スペクトルパワー及びDC出力電圧を示す試験の二例である。
【図6】温度パラメータにおける反射スペクトルパワー及びDC出力電圧を示す試験の三例である。
【図7】従来のAE計測装置を示すブロック図である。
【図8】ファブリペローフィルタの光学特性を示す概念図である。
【図9】第一のファブリペローフィルタと第二のファブリペローフィルタの透過率ピーク波長をFSR/4離し、FBGセンサの基本的な反射光スペクトルを示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のAE計測方法及びその装置を実施する形態例を図1〜図6を参照して説明する。なお、図中、図7と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0024】
実施の形態例のAE計測方法及びその装置は、広帯域波長光を発する光源1と、広帯域波長光が入射するFBGセンサ2と、光源1とFBGセンサ2の間に位置する光サーキュレータ3と、光サーキュレータ3からの光を透過させるファブリペローフィルタ20(FFP:Fiber Fabry-Perot)と、ファブリペローフィルタ20を透過した光を電気信号に変換する光電変換器21と、光電変換器21のAC信号を処理するAE信号の計測器22及びデータ収録器23と、光電変換器21からのDC出力電圧を計測する電圧計測器24と、ファブリペローフィルタ20の温度を調整する温度調節器25と、電圧計測器24からのDC出力電圧を基準にして温度調節器25を制御する制御器26とを備えている。ここで光源1、FBGセンサ2、光サーキュレータ3は、図7と同じものを用いている。
【0025】
またファブリペローフィルタ20は、図7に示す第一のファブリペローフィルタ5及び第二のファブリペローフィルタ6の一方と同じものを用いており、光ファイバ27を用いて光電変換器21へ導波するようになっている。
【0026】
光電変換器21は、ファブリペローフィルタ20からの透過光を電気信号に変換し、電気信号を、第一の連絡線28によりAE信号の計測器22及びデータ収録器23へ送ると共に第二の連絡線29により電圧計測器24へ送るようになっている。
【0027】
AE信号の計測器22及びデータ収録器23は、電気信号から光の強度変化のAC成分を計測し、AE信号を取得して記録するようになっている。ここでAE信号の計測器22とデータ収録器23は別々に構成しても良いし、1つの構成でも良い。
【0028】
一方、電圧計測器24は、ファブリペローフィルタ20を透過して全光強度に相当するDC出力電圧を計測し、DC出力電圧のデータを第三の連絡線30により制御器26に送るようになっている。
【0029】
制御器26は、温度パラメータとDC出力電圧の関係(関数)が予め入力されており、当該関係に基づき、電圧計測器24で測定したDC出力電圧から適切な温度パラメータを算出し、温度パラメータを第四の連絡線31により温度調節器25に送ってファブリペローフィルタ20の温度を制御するようにしている。
【0030】
ここで温度パラメータ(図3では温度調節器のコントローラ値)とDC出力電圧(図3ではファブリペローフィルタ(FFP)透過後の光電変換器のDC出力電圧)の関係は、図3のグラフに示す如く温度パラメータが低い温度域の場合、DC出力電圧は最少の一定値であり、ファブリペローフィルタ20を光が適切に透過していない状態を示している。また温度パラメータが中間の温度域の場合、DC出力電圧は温度パラメータの上昇に伴って直線的に増加し、ファブリペローフィルタ(FFP)20を光が適切に透過する状態を示している。更に温度パラメータが高い温度域の場合、DC出力電圧は最大の一定値であり、ファブリペローフィルタ20を光が透過し過ぎている状態を示している。また図3のグラフで破線はファブリペローフィルタ(FFP)透過後の反射スペクトルパワー(光パワー)を示し、反射スペクトルパワーが温度に従ってDC出力電圧と同じ挙動を示すことを表している。なお中間の温度域は、別の表現として、DC出力電圧が最大値と最小値の間に位置して温度の増加に伴い一定の増加量を有する一定範囲と表しても良いし、またはDC出力電圧が最大値と最小値の間に位置して温度と比例する一定範囲と表しても良い。
【0031】
温度調節器25は、ファブリペローフィルタ20に信号ライン32を介して接続され且つ熱電変換体のペルチェ素子等を備えてファブリペローフィルタ20の温度を調整し得るようになっており、温度によりファブリペローフィルタ20の波長−透過率特性を変化させるようになっている。ここで温度調節器25は、一般的なファブリペローフィルタ20に予め備えられているものを用いても良いし、ファブリペローフィルタ20に別途取り付けても良い。
【0032】
以下、本発明のAE計測方法及びその装置を実施する形態例の作用を説明する。
【0033】
AE信号を計測する際には、FBGセンサ2からの反射光を光サーキュレータ3よりファブリペローフィルタ20に入射させる。次にファブリペローフィルタ20では、ファブリペローフィルタ20の透過波長とFBGセンサ2の反射光スペクトルの重なりあった波長を透過させて光電変換器21に導波し、光電変換器21で透過光の強度を電気信号に変換する。そしてAE信号の計測器22及びデータ収録器23で光の強度変化のAC成分を計測してAE信号を取得し、検査対象の亀裂等の欠陥を検出する。
【0034】
ここで電圧計測器24では、ファブリペローフィルタ20を透過して全光強度に相当するDC出力電圧を計測し、図2に示す如く制御器26でDC出力電圧が一定範囲にあるか否かを判断し(図2のステップS1)、DC出力電圧が一定範囲内にある場合(ステップS1のYES)には、ファブリペローフィルタ20の透過波長とFBGセンサ2の反射光スペクトルが重なり、ファブリペローフィルタ20を光が適切に透過する状態であるとして、ファブリペローフィルタ20の温度(図3に示す中間の温度域)を維持し(ステップS2)、AE信号を計測できる状態を保持する(ステップS3)。
【0035】
一方、DC出力電圧が一定範囲にない場合(ステップS1のNO)には、続いてDC出力電圧が一定範囲より低いか否かを判断し(ステップS4)、DC出力電圧が低い場合(ステップS4のYES)には、ファブリペローフィルタ20の透過波長とFBGセンサ2の反射光スペクトルが重ならず、ファブリペローフィルタ20を光が適切に透過する状態でないとして、温度調節器25によりファブリペローフィルタ20の温度を上げ(ステップS5)、ファブリペローフィルタ20を光が適切に透過する状態にし、次に最初の開始段階へ戻し、同じ処理(ステップS1、S2)を介してAE信号を計測できる状態にする(ステップS3)。
【0036】
またDC出力電圧が一定範囲外(ステップS1のNO)であってDC出力電圧が高い場合(ステップS4のNO)には、ファブリペローフィルタ20の透過波長とFBGセンサ2の反射光スペクトルが重なり過ぎ、ファブリペローフィルタ20を光が透過し過ぎている状態であるとして、温度調節器25によりファブリペローフィルタ20の温度を下げ(ステップS6)、ファブリペローフィルタ20を光が適切に透過する状態にし、次に最初の開始段階へ戻し、同じ処理(ステップS1、S2)を介してAE信号を計測できる状態にする(ステップS3)。
【0037】
[試験1]
以下、本発明と同じ装置構成において、温度調節器25のコントローラ値(温度パラメータ)に基づき、FBGセンサ2の反射スペクトルパワー(光パワー)及びDC出力電圧の相関関係を試験した。ここで図4〜図6は、温度調節器25のコントローラ値を変更した3つの例を示している。また反射スペクトルパワー(光パワー)の縦軸、DC出力電圧の縦軸は、同じスケール及び同じ数値を表している。
【0038】
この結果、図4〜図6に示す如く温度調節器25のコントローラ値(温度パラメータ)が増加することに伴って、FBGセンサ2の反射スペクトルパワー(光パワー)及びDC出力電圧が増加し、図3のプロットが得られる。このことからファブリペローフィルタ20の温度となる温度調節器25のコントローラ値(温度パラメータ)に対し、FBGセンサ2の反射スペクトルパワー(光パワー)及び光電変換器21のDC出力電圧は、最大値と最小値の間の一定範囲で比例することが明らかである。また光電変換器21のDC出力電圧は、ファブリペローフィルタ20を透過した反射スペクトルパワー(光パワー)に相当することが明らかである。
【0039】
このように、実施の形態例のAE計測方法及びその装置によれば、光電変換器21からのDC出力電圧を基準にしてファブリペローフィルタ20の透過率ピーク波長を温度調節器25により調整し、FBGセンサ2からの反射光に対してファブリペローフィルタ20を透過する全光強度を一定範囲に保持するので、FBGセンサ2によるシフト量の変化に際して1つのファブリペローフィルタ20で対応することができ、よって装置の構成を単純化してコストを抑制することができる。またファブリペローフィルタ20の透過率ピーク波長がどこにあるのか不明であっても、光電変換器21からのDC出力電圧をフィードバックして温度によりファブリペローフィルタ20の透過率ピーク波長を調整するので、第一のファブリペローフィルタ5の透過率ピーク波長と第二のファブリペローフィルタ6の透過率ピーク波長をFSR/4離すように設定するための準備作業を不要にし、多くの手間と時間を削減することができる。
【0040】
実施の形態例のAE計測方法及びその装置において、制御器26は、温度パラメータとDC出力電圧の関係に基づき、光電変換器21で測定したDC出力電圧から温度によりファブリペローフィルタ20の透過率ピーク波長を調整し、ファブリペローフィルタ20を透過する全光強度を一定範囲に制御するので、1つのファブリペローフィルタ20であってもFBGセンサ2のシフト量の変化に容易に対応することができ、よって装置の構成を単純化して一層コストを抑制することができると共に多くの手間と時間を大幅に削減することができる。
【0041】
なお、本発明のAE計測方法及びその装置は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
1 光源
2 FBGセンサ
20 ファブリペローフィルタ
21 光電変換器
22 AE信号の計測器
23 データ収録器
24 電圧計測器
25 温度調節器
26 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広帯域波長光を発する光源と、該広帯域波長光が入射するFBGセンサと、該FBGセンサからの反射光を透過させ且つ透過率ピーク波長を温度により調整し得るファブリペローフィルタと、該ファブリペローフィルタを透過した光を電圧信号に変換する光電変換器と、前記ファブリペローフィルタの温度を調整する温度調節器とを備え、該光電変換器が出力した光の強度変化のAC成分を計測するAE計測方法であって、
前記ファブリペローフィルタを透過して全光強度に相当するDC出力電圧を光電変換器により計測し、該DC出力電圧を基準にしてファブリペローフィルタの透過率ピーク波長を温度調節器により調整し、前記FBGセンサからの反射光に対してファブリペローフィルタを透過する全光強度を一定範囲に保持することを特徴とするAE計測方法。
【請求項2】
温度パラメータとDC出力電圧の関係に基づき、光電変換器で計測したDC出力電圧から温度によりファブリペローフィルタの透過率ピーク波長を調整し、ファブリペローフィルタを透過する全光強度を一定範囲に制御することを特徴とする請求項1に記載のAE計測方法。
【請求項3】
広帯域波長光を発する光源と、
該広帯域波長光が入射するFBGセンサと、
該FBGセンサからの反射光を透過させ且つ温度により透過率ピーク波長を調整し得るファブリペローフィルタと、
該ファブリペローフィルタを透過した光を電圧信号に変換する光電変換器と、
該光電変換器から光の強度変化のAC成分を計測する計測器と、
前記光電変換器からDC出力電圧を計測する電圧計測器と、
前記ファブリペローフィルタの温度を調整する温度調節器と、
前記電圧計測器からのDC出力電圧を基準にして温度調節器を制御する制御器とを備えたことを特徴とするAE計測装置。
【請求項4】
前記制御器は、温度パラメータとDC出力電圧の関係に基づき、DC出力電圧から温度調節器を介してファブリペローフィルタの透過率ピーク波長を調整し、ファブリペローフィルタを透過する全光強度を一定範囲内に調整するように構成されたことを特徴とする請求項3を記載のAE計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−37479(P2012−37479A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180269(P2010−180269)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000198318)株式会社IHI検査計測 (132)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【Fターム(参考)】