説明

APOBEC3Gの活性測定方法

【課題】APOBEC3Gの活性測定方法及びキット、APOBEC3Gの活性測定を利用したウイルスタンパク質Vifの測定方法及びキット、並びにAPOBEC3G活性測定を利用した抗ウイルス薬のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】以下のステップを含む、被験試料中のAPOBEC3Gの活性測定方法;a)シトシンを含む基質オリゴヌクレオチドを被験試料と接触させるステップ、b)a)で被験試料と接触させた基質オリゴヌクレオチドに、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的である相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップ、c)前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対するGが標識物質で標識されており、該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス因子であるAPOBEC3Gの活性測定方法及び活性測定用キット、並びにAPOBEC3Gの活性測定を利用したウイルスタンパク質Vifの測定方法及び測定用キットに関する。本発明はまた、APOBEC3G活性測定を利用した抗ウイルス薬のスクリーニング方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
APOBEC(Apolipoprotein B mRNA editing enzyme,catalytic polypeptide−like)ファミリータンパク質は、シチジンデアミナーゼ活性を有し、一本鎖DNAのシトシンをウラシルに変換する酵素である。そのうちAPOBEC3Gは、HIV−1の生活環において遺伝子の逆転写により生成されるマイナス鎖DNA中のシトシンをウラシルに変換し、HIV−1の正常な複製を阻害し得ることが知られており、HIV−1ウイルスの増殖を抑制する内因性の抗HIV−1因子であると考えられている。APOBEC3Gは、他のレトロウイルス及びレンチウイルスに対しても同様の作用を有することが報告されている。そのため、APOBEC3Gは広範なウイルス種に対する潜在的な抗ウイルス因子であると考えられ、近年、抗ウイルス剤としての利用に期待が持たれている。
【0003】
ヒトの体内で増殖し得るウイルスは、APOBEC3Gに対する内因性の阻害物質が存在する細胞に増殖の場を限定されているか、又はAPOBEC3Gに対する何らかの阻害因子を有していると推測される。特に、HIV−1ウイルスをはじめとするレンチウイルスが有するVifタンパク質によるAPOBEC3Gの活性阻害及び分解誘導がよく知られている。そのため、そのようなウイルス由来の因子による阻害からAPOBEC3Gを解放する薬剤は、抗ウイルス剤の候補になると考えられる。
【0004】
APOBEC3Gのシチジンデアミナーゼ活性をin vitroで検出又は測定する方法として、エンドポイントアッセイが知られている(非特許文献1)。このアッセイでは、放射性同位元素で標識した基質一本鎖DNAを被験試料と反応させ、有機溶媒で精製し、次にウラシルDNAグリコシラーゼで脱塩基処理し、さらにアルカリ処理を行う。これにより、被験試料中のAPOBEC3Gの作用により基質DNA中のシトシン塩基がウラシル塩基に変換された部分が切断される。続いて、得られた生成物をポリアクリルアミドゲル又はアガロースゲルによる電気泳動などにより分離して、基質DNAの鎖長を確認する。反応生成物中の基質DNAの切断の有無を検出することで、被験試料中のAPOBEC3Gの活性を検出することができる。また、切断された基質DNAからの放射線量を測定することにより、APOBEC3G活性を定量することができる。この方法では、放射線同位体を扱うことができる施設が必要とされるほか、有機溶媒での核酸の精製及び電気泳動などの手間と時間のかかる処理が含まれるため、大規模スクリーニングには不向きである。
【0005】
APOBEC3Gの活性を検出する別の方法として、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を利用する方法が提案されている(非特許文献2)。この方法では、5’末端及び3’末端をそれぞれ異なる蛍光色素で標識した一本鎖DNAを基質として被験試料と反応させ、次にウラシルDNAグリコシラーゼで処理し、さらにアルカリ処理を行う。これにより、被験試料中のAPOBEC3Gの作用により基質DNA中のシトシン塩基がウラシル塩基に変換された部分が切断される。この結果、基質DNAが切断されれば、基質DNAの末端を標識している蛍光色素によるFRETが増強又は減弱され、被験試料中のAPOBEC3G活性の有無を検出することができる。
【0006】
しかし、上記のような既存の測定方法は煩雑な手順を必要とするため、APOBEC3Gの簡便な測定方法は実現されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chelico L.ら,Nature Structure&Molecular biology(2006)13,392−399
【非特許文献2】Thiele BK.ら,PLoS Pathogens,(2007),3,1320−1334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
APOBEC3Gは上記のとおり抗ウイルス活性を有しており、その内因性または外因性の阻害物質の結合を阻止する薬剤は、ウイルスの増殖抑制及びそれに起因する感染症の発症を阻止する抗ウイルス剤の候補となる。そこで、ウイルス感染の予防及び治療並びに抗ウイルス剤の開発に利用可能な、簡便かつ安価なAPOBEC3G活性の測定方法が求められている。特に、試料中のAPOBEC3G活性の検出・定量を、放射線同位体などを利用する煩雑な手順を経ずに行う、大量スクリーニングに利用可能な方法が所望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、APOBEC3Gの基質となるオリゴヌクレオチドと、それに対して相補的な配列を有する相補オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを検出することによりAPOBEC3G活性を測定し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は具体的には以下の特徴を有する。
〔1〕被験試料中のAPOBEC3G活性の測定方法であって、以下のステップ:
(a)基質オリゴヌクレオチドを被験試料と接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)を含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)で被験試料と接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、上記方法。
〔2〕被験試料中のVifの測定方法であって、以下のステップ:
(a)被験試料の存在下で、基質オリゴヌクレオチドをAPOBEC3Gと接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)を含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)でAPOBEC3Gと接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、上記方法。
〔3〕PKA活性の測定方法であって、以下のステップ:
(a)被験試料及びウイルス由来Vifの存在下で、基質オリゴヌクレオチドをAPOBEC3Gと接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)を含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)でAPOBEC3Gと接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、上記方法。
〔4〕抗ウイルス薬のスクリーニング方法であって、以下のステップ:
(a)被験化合物の存在下で、基質オリゴヌクレオチドをAPOBEC3Gと接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)を含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)でAPOBEC3Gと接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、上記方法。
〔5〕抗ウイルス薬のスクリーニング方法であって、以下のステップ:
(a)被験化合物及びウイルス由来Vifの存在下で、基質オリゴヌクレオチドをAPOBEC3Gと接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)を含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)でAPOBEC3Gと接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、上記方法。
〔6〕前記標識物質が蛍光物質又は発光物質である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の方法。
〔7〕前記基質オリゴヌクレオチドが部分配列CCC又はTCCを含む、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の方法。
〔8〕前記基質オリゴヌクレオチドが配列番号1により示される配列を含む、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか1つに記載の方法。
〔9〕以下の要素:
(a)シトシン(C)を含むDNAである、基質オリゴヌクレオチド;及び
(b)前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的である相補オリゴヌクレオチド
を少なくとも含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されている、APOBEC3G活性を測定するためのキット。
〔10〕以下の要素:
(a)シトシン(C)を含むDNAである、基質オリゴヌクレオチド;
(b)前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的である相補オリゴヌクレオチド;及び
(c)APOBEC3Gタンパク質
を少なくとも含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されている、Vifを測定するためのキット。
〔11〕前記標識物質が蛍光物質又は発光物質である、上記〔9〕又は〔10〕に記載のキット。
〔12〕前記基質オリゴヌクレオチドが部分配列CCC又はTCCを含む、上記〔9〕〜〔11〕のいずれか1つに記載のキット。
〔13〕前記基質オリゴヌクレオチドが配列番号1により示される配列を含む、上記〔9〕〜〔12〕のいずれか1つに記載のキット。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、抗ウイルス因子であるAPOBEC3Gの活性を、少ないステップ数且つ短時間で簡便に測定することが可能になる。これにより、被験体細胞中の抗ウイルス活性(APOBEC3G活性)の測定による被験体の易感染性の判定、試料中のウイルスタンパク質Vifの測定、ウイルス由来の未知のAPOBEC3G阻害因子の探索、及び抗ウイルス剤の開発を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の方法の測定原理を表す模式図である。
【図2】ハイブリダイゼーションの測定を表すグラフである。エラーバー:±SD。
【図3A】連続的な温度上昇による解離曲線解析を表す図である。
【図3B】連続的な温度上昇による解離曲線解析を表す図である。
【図4】経時的なハイブリダイゼーション測定を表す図である。
【図5】本発明の測定系の濃度依存性を表す図である。
【図6】APOBEC3Gに対するVifの阻害効果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、以下のステップ:
(a)基質オリゴヌクレオチドを被験試料と接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)を含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)で被験試料と接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、被験試料中のAPOBEC3Gの活性測定方法に関する。
【0014】
本発明において、「測定」とは、所定の活性又はタンパク質の検出及び定量的な測定の両者を包含する。
【0015】
本発明において、「被験試料」は、所定のタンパク質の存在が疑われる試料であれば特に限定されないが、例えば、ヒトを含む動物由来の体液、組織若しくは器官由来試料、又は分離細胞である。体液試料は周知の技術によって取得でき、それには、好ましくは血液、血漿、血清、または尿試料が含まれる。組織又は器官由来試料は例えば生検によって任意の組織又は器官から取得することができる。分離細胞は、分離技術、例えば遠心分離又は細胞選別によって、体液又は組織若しくは器官から取得することができる。
【0016】
本発明において、「基質オリゴヌクレオチド」とは、APOBEC3Gのシチジンデアミナーゼ活性の基質となるオリゴヌクレオチドであり、その配列中にシトシン(C)を含む。このシトシンがAPOBEC3Gの酵素活性によりウラシル(U)に変換される。好ましくは、基質オリゴヌクレオチドは部分配列CCC又はTCCを含む。この部分配列中、3番目の塩基であるCが最も効率よくAPOBEC3Gの標的となり、該酵素タンパク質に触媒されて最初にU(ウラシル)に変換される(Iwatani,et al.,J.Viorology,2006,80,5992−6002)。反応時間が進行するにつれ、その他のCもUに変換される。
【0017】
本発明における基質オリゴヌクレオチドはDNAである。その長さは特に制限されないが、好ましくは20塩基以上、より好ましくは20〜150塩基、さらに好ましくは40〜120塩基、最も好ましくは60〜100塩基である。基質オリゴヌクレオチドは、上記部分配列よりも3’側に、少なくとも10塩基の配列を含む。典型的には、基質オリゴヌクレオチドは以下の配列:
ATTATTATTATTATTATTATACCCATTATTTATTTATTTATTATTATTATTATTATTATTATTATTATTATT(配列番号1)
を含む。最も典型的には、基質オリゴヌクレオチドは配列番号1により示される配列を有する。
【0018】
本発明の方法では、まず、基質オリゴヌクレオチドを被験試料と接触させ、インキュベートする。インキュベートは、酵素反応が可能な温度及び時間の条件下で行なえばよく、例えば、15〜45℃、好ましくは22〜37℃にて、1〜72時間、好ましくは3〜15時間、行なう。検出可能な量の基質オリゴヌクレオチド中のシトシンをウラシルに変換するまでの時間を測定することにより、APOBEC3G活性を定量することができる。
【0019】
本発明において、「相補オリゴヌクレオチド」とは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的である配列を含むオリゴヌクレオチドである。本発明において、相補オリゴヌクレオチド中の、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的である配列は、単に「相補配列」とも称される。相補オリゴヌクレオチドは、所望のヌクレオチドにより構成することができ、例えば、DNA、RNA、DNA−RNAハイブリッド、核酸ミメティクスなどであり得る。典型的には、相補オリゴヌクレオチドは、基質オリゴヌクレオチド中の前記Cから3’側の配列と完全に相補的である。例えば、基質オリゴヌクレオチドが配列番号1により示される配列を有する場合、相補オリゴヌクレオチドはAATAATAATAATAATAAATAAATAAATAATG(配列番号3)という配列を有するDNAである。しかし、基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとがハイブリダイズ可能である限り、相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの配列に相補的でない塩基(例えば、完全に相補的な配列からの置換)を含むことができ、あるいは、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGより3’側及び/又は相補配列の5’側に、基質オリゴヌクレオチドと相補的か又は相補的でない追加の配列をさらに含むことができる。
【0020】
相補オリゴヌクレオチドの配列のうち、基質オリゴヌクレオチドの配列と相補的な部分は、好ましくは連続的である。すなわち、相補配列中にミスマッチを含まないことが好ましい。上記の通り、相補オリゴヌクレオチドは、その5’末端側及び/又は3’末端側に、基質オリゴヌクレオチドと相補的でない(基質オリゴヌクレオチドに対応しない)配列を含むことができる。相補オリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは15塩基以上、より好ましくは15〜150塩基、さらに好ましくは20〜100塩基、最も好ましくは25〜80塩基である。相補配列の長さは、好ましくは10塩基以上、より好ましくは10〜120塩基、さらに好ましくは15〜80塩基、最も好ましくは20〜75塩基である。相補オリゴヌクレオチド中の相補配列の長さ(基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとの間で対応する部分の長さ)は、ハイブリダイゼーションのステップでの反応条件に影響を与える。ハイブリダイゼーションの測定を一定温度で行う場合のその温度、及び反応溶液中の塩濃度など、ハイブリダイゼーションに影響するパラメータを、基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能な値に設定する必要があるためである。
【0021】
基質オリゴヌクレオチド中のC、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGは、標識物質で標識されている。好ましくは、相補オリゴヌクレオチドが標識されている。標識物質は、検出可能なシグナルを発するものであれば特に制限されないが、好ましくは蛍光物質又は発光物質である。具体的な標識物質としては、BODIPY FL、TAMRA、FAM、ローダミン6G、パシフィック・ブルーなどが挙げられる。これらの蛍光物質でも本発明の測定原理を用いることが可能であることが報告されている(Torimura,M.,et al.,2001,Anal.Sci.,17,155−160)。基質オリゴヌクレオチドのCを標識する場合、標識は、APOBEC3Gによる脱アミノ化反応を阻害しないために、シトシン塩基の4位のアミノ基以外の部分に結合させる。
【0022】
基質オリゴヌクレオチド及び相補オリゴヌクレオチドの調製は、公知のオリゴヌクレオチド合成法により行うことができる。オリゴヌクレオチドの合成は、受託することもでき、例えばアプライドバイオシステムズ、つくばオリゴサービス、北海道システムサイエンス、エスペックなどに受託することができる。標識されたオリゴヌクレオチドも、受託合成することができる。
【0023】
本発明において「ハイブリダイゼーション」とは、基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとの間の、相補的な配列での結合を意味する。ハイブリダイゼーションは、例えば相補配列が約30塩基である場合、40mM Tris−HCl(pH8.0)、40mM KCl、50mM NaCl、5mM EDTA、1mM DTT、0.01mg/mL RNaseA、0.25mg/mL BSAを含む溶液中で行うことができる。ハイブリダイゼーションの温度は、ハイブリダーゼーションの測定を一定温度で行なう場合には、基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとの間で相補的な配列の構成に依存して決定できる融解温度よりも十分に低く設定するのが望ましい。例えば、温度を、融解温度よりも好ましくは10℃、より好ましくは15℃、さらに好ましくは20℃以上低く設定する。相補的部分の融解温度は、公知の計算式又はソフトウェアを用いて算出することができる。
【0024】
ハイブリダイゼーションに続いて、又は同時に、基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの程度を測定する。この測定は、基質オリゴヌクレオチド又は相補オリゴヌクレオチドの標識からのシグナルを検出することにより行なう。例えば、標識物質として蛍光物質を用いた場合、蛍光強度を測定することによりハイブリダイゼーションを測定する。被験試料中にAPOBEC3G活性が存在する場合には、上記基質オリゴヌクレオチド中のC(シトシン)がU(ウラシル)に変換されるため、このCに対応する相補オリゴヌクレオチド中のGとの間で相補鎖が形成されず、この部分で基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとが相互作用していない。この場合、標識物質は塩基から十分に離れた状態となり、蛍光が発生する。一方、被験試料中にAPOBEC3G活性が存在しない場合には、基質オリゴヌクレオチド中のCはUに変換されず、相補オリゴヌクレオチド中のGとの間で相補鎖を形成する。これにより、蛍光物質は塩基の近傍に存在するようになり、蛍光強度が減弱する。本発明の実施は特定の理論に拘束されないが、このことを利用して、蛍光強度からハイブリダイゼーションの程度、すなわち標的部位のC及びUの割合を測定することができる。また、ハイブリダイゼーションの程度から被験試料中のAPOBEC3G活性を検出又は測定することができる。
【0025】
ハイブリダイゼーションの測定は、典型的には、十分低い温度(オリゴヌクレオチド間のハイブリダイゼーションが起こる温度)でのシグナルを、十分高い温度(オリゴヌクレオチド間のハイブリダイゼーションが起こらない温度)でのシグナルで除算して求めた値に基づき行なう。
【0026】
あるいは、ハイブリダイゼーションの測定を、漸次的に上昇又は低下する温度で行なってもよい。漸次的に上昇する温度下で標識物質からの測定を行なうことで、解離曲線を得ることができる。解離曲線の形状を比較することで、ハイブリダイゼーションの程度を測定することができる。
【0027】
本明細書中で具体的に示しているAPOBEC3G以外のAPOBECファミリータンパク質のうちにも、APOBEC3Gと同様のシチジンデアミナーゼ活性を有するものが存在することが知られている(Navaratnam N,Sarwar R.International Journal of Hematology,2006,83,195−200;Sousa M.M.ら,Molecular Aspects of Medicine,2007,28,276−306;“RNA and DNA Editing: Molecular Mechanisms and Their Integration into Biological Systems”,Edited by Harold C.Smith,2008,WILEY−INTERSCIENCE;Holmes,R.K.,Malim,M.H.,andBishop,K.N.,2007,Trends Biochem Sci,32(3),118−128;高折晃史,2005,ウイルス,55巻,第2号,pp167−272;Anant,S.,and Davidson,N.O.,2000,Mol Cell Biol,20(6),1982−1992;Chelico,L.,Pham, P.,Calabrese,P.,and Goodman,M.F.,2006,Nat Struct Mol Biol,13(5),392−399;Vartanian,J.P.,Guetard,D.,Henry,M.,and Wain−Hobson,S.,2008,Science,320(5873),230−233、等)。したがって、本発明の方法は、それらの他のAPOBECファミリータンパク質の酵素活性を測定するためにも用いることができる。
【0028】
したがって、本発明は、以下のステップ:
(a)基質オリゴヌクレオチドを被験試料と接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)を含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)で被験試料と接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、被験試料中のAPOBECファミリータンパク質の活性測定方法にも関する。
【0029】
以下の実施例にも示すように、APOBEC3G活性はHIVのVifタンパク質により阻害される。したがって、被験試料の存在下で本発明の方法によりAPOBEC3G活性を測定することにより、被験試料中のVifタンパク質の検出又は測定を行うことができる。
【0030】
したがって、本発明は、以下のステップ:
(a)被験試料の存在下で、基質オリゴヌクレオチドをAPOBEC3Gと接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)を含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)でAPOBEC3Gと接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチドの前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、Vifの測定方法にも関する。この場合、測定されたAPOBEC3G活性が、被験試料を含まない(すなわち、Vifを含まない)対照系よりも低下していれば、被験試料中のVifタンパク質の存在が示される。
【0031】
上記Vif測定方法において、対照として、被験試料の非存在下でのAPOBEC3G活性の測定を同時に行なうことが好ましい。しかしながら、被験試料の非存在下での標識物質からのシグナルを予め測定し、それを参照値として用いることもできる。
【0032】
Vifタンパク質の存在はHIVなどのウイルスの存在を示唆するものであるため、上記Vif測定方法は、HIVなどのウイルスの検出にも用いることができる。したがって、本発明は、上記のステップを有する、ウイルスの検出方法にも関する。本発明におけるウイルスとしては、HIV等のレトロウイルス、レンチウイルスなどが挙げられる。
【0033】
また、上記のとおりAPOBEC3G活性はHIVのVifタンパク質の存在により阻害されるが、APOBEC3GがPKA(Aキナーゼ)によりリン酸化されると、APOBEC3GのVifに対する耐性が高まることが報告されている。したがって、被験試料及びVifタンパク質の存在下で、本発明の方法によりAPOBEC3G活性を測定することにより、被験試料中のPKA活性の検出又は測定を行うことができる。
【0034】
したがって、本発明は、以下のステップ:
(a)被験試料及びウイルス由来Vifの存在下で、基質オリゴヌクレオチドをAPOBEC3Gと接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)でAPOBEC3Gと接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、PKA活性の測定方法にも関する。この場合、測定されたAPOBEC3G活性が、被験試料を含まない(すなわち、PKAを含まない)対照系よりも増大していれば、被験試料中のPKA活性の存在が示される。
【0035】
さらに、上記のとおりAPOBEC3Gは抗ウイルス因子として作用するため、その活性を増強することができる化合物は、APOBEC3Gによる内因性の抗ウイルス作用を増強する抗ウイルス剤として用いることができる。
【0036】
したがって、本発明は、以下のステップ:
(a)被験化合物の存在下で、基質オリゴヌクレオチドをAPOBEC3Gと接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)を含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)でAPOBEC3Gと接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、抗ウイルス薬のスクリーニング方法に関する。
【0037】
本発明において、「被験化合物」は、特に限定されないが、例えば、天然化合物、有機化合物、無機化合物、タンパク質、ペプチドなどの単一化合物、ならびに、化合物ライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物等を用いることができる。
【0038】
ウイルスタンパク質VifによるAPOBEC3Gの阻害を低減させることができる化合物は、ウイルスタンパク質による細胞の内因性抗ウイルス作用の阻害を低減させる、したがって内因性抗ウイルス作用を増強させる抗ウイルス剤として用いることができる。
【0039】
したがって、本発明は、以下のステップ:
(a)被験化合物及びウイルス由来Vifの存在下で、基質オリゴヌクレオチドをAPOBEC3Gと接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)を含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)でAPOBEC3Gと接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、抗ウイルス薬のスクリーニング方法にも関する。
【0040】
本発明で用いるAPOBEC3G及びVif等の精製タンパク質は、適切な宿主細胞で組み換え的に発現させた後に精製したものでもよいし、動物組織等の天然供給源から単離したものでもよい。好ましくは、精製タンパク質は組み換え的に発現させたものである。精製タンパク質は、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ等の、対象となるタンパク質の発現及び精製を促進する融合ペアとの融合タンパク質として発現させ、適切なアフィニティークロマトグラフィー法を用いて精製するのがより好ましい。融合ペアとしてMBPを用いる場合、組み換え発現のためのベクター・宿主系としては、pMALベクター(NEB社製)と、大腸菌JM109又はBL21株との組み合わせが好適に用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明はさらに、上記の方法を実施するためのキットにも関する。そのようなキットのうち、APOBEC3G活性を測定するためのキットには、少なくとも、
(a)シトシン(C)を含むDNAである、基質オリゴヌクレオチド;及び
(b)前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的である相補オリゴヌクレオチド
が含まれ、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されている。好ましくは、基質オリゴヌクレオチドは部分配列CCC若しくはTCCを含むか、又は配列番号1により示される配列を含み、より好ましくは、基質オリゴヌクレオチドは配列番号1により示される配列を有する。さらに好ましくは、相補オリゴヌクレオチドは配列番号3により示される配列を含む。標識物質は、好ましくは蛍光物質又は発光物質である。
【0042】
Vifを測定するためのキット、及びAPOBEC3G活性の増強を指標として抗ウイルス剤をスクリーニングするためのキットにはさらに、APOBEC3Gタンパク質が構成要素として含まれる。PKA活性を測定するためのキット、及びVifによるAPOBEC3G活性阻害の低減を指標として抗ウイルス剤を測定するためのキットにはさらに、APOBEC3Gタンパク質及びウイルス由来Vifタンパク質が構成要素として含まれる。そのような追加構成要素としてのタンパク質は、天然に由来するものでもよいし、組換え的に製造したものでもよい。
【0043】
これらのキットには、本発明の方法を実施するための使用説明書、及び本発明の方法を実施するためのバッファー等の追加の試薬をさらに含ませることができる。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0045】
[実施例1]
相対的ハイブリダイゼーション強度によるAPOBEC3G活性の測定
蛍光測定を利用したハイブリダイゼーション強度の測定により、APOBEC3G活性を検出した。
【0046】
実験方法
基質オリゴヌクレオチドとして配列番号1により示される配列を有するDNA(APO−C)、対照基質オリゴヌクレオチドとして配列番号2により示される配列を有するDNA(APO−U)、及び相補オリゴヌクレオチドとして配列番号3により示される配列を有するDNA(APO−3−1)を使用した。各オリゴヌクレオチドはつくばオリゴサービス(株)に受託して合成した。相補オリゴヌクレオチド(APO−3−1)は、J−Bio21(株)に受託して合成した。相補オリゴヌクレオチド(APO−3−1)は*の位置でBODIPY FLにより標識されている。
APO−C:
5’−ATTATTATTATTATTATTATACCCATTATTTATTTATTTATTATTATTATTATTATTATTATTATTATTATT−3’(配列番号1)
APO−U:
5’−ATTATTATTATTATTATTATACCUATTATTTATTTATTTATTATTATTATTATTATTATTATTATTATTATT−3’(配列番号2)
APO−3−1:
5’−AATAATAATAATAATAAATAAATAAATAATG−3’(配列番号3)
ヒトAPOBEC3Gは以下のようにして調製した。
【0047】
ヒトAPOBEC3G遺伝子(OPEN BIOSYSTEMS社のclone ID 7262555、BC069688)を、PCR法によりプラスミドベクターpMAL−c2x(NEB社)のマルチクローニングサイトにサブクローニングすることで、マルトース結合タンパク質(MBP)とヒトAPOBEC3Gの融合タンパク質を作製した。発現には大腸菌(JM109株)を使用した。大腸菌破砕液から、アミロースをリガンドとするアフィニティカラムに結合させて分離し、マルトースを含んだ緩衝液で溶出させた。溶出した融合タンパク質のシチジンデアミナーゼ活性は、空のpMAL−c2xから取得されるMBPや、当該酵素活性を有しないBSAを陰性対照とし、有意にシチジンデアミナーゼ活性があることを確認することにより検出した。この場合の確認には、文献でも用いられている、RIを使用した切断法を使用した(Chelico L.ら,上掲を参照のこと)。
【0048】
使用したヒトAPOBEC3Gのアミノ酸配列は、登録番号AAH61914としてGenBankに登録されている。
【0049】
以下の組成を有する20μLの反応溶液をマイクロチューブに入れた:25nM基質オリゴヌクレオチド、240nM APOBEC3G、40mM Tris−HCl(pH8.0)、40mM KCl、50mM NaCl、5mM EDTA、1mM DTT、0.01mg/mL RNase A、0.25mg/mL BSA。基質オリゴヌクレオチドを含まない対照も作製した。反応溶液を37℃で15時間インキュベートした。
【0050】
反応溶液に400nM相補オリゴヌクレオチドを1.0μL/チューブで添加し、95℃にて2分間、続いて37℃にて2分間インキュベートし、それぞれの温度で蛍光強度を測定した(励起:470nm、蛍光:530nm)。蛍光測定は、LightCycler 1.5(Roche)を用いて行なった。
【0051】
各反応溶液について、基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能な37℃で測定された蛍光強度を、基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが起こらない95℃で測定された蛍光強度で除して、相対的蛍光強度を算出した。
【0052】
結果
結果を図2に示す。
標的配列CCCを含む基質オリゴヌクレオチド(APO−C)を含む2種の反応系を比較すると、APOBEC3Gを添加した場合(C+A3G)では、APOBEC3Gを添加していない場合(CΔA3G)と比較して相対的蛍光強度が強く、その差は明らかであった。このことから、APOBEC3G不添加の場合(CΔA3G)では、基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによって、蛍光の低下が生じていること、APOBEC3Gを添加した場合(C+A3G)では、APOBEC3Gにより触媒されるC→Uの変換によって、そのような低下が弱まることが示唆される。これにより、本発明の方法は、APOBEC3Gのシチジンデアミナーゼ活性の検出を可能にすることが示された。
【0053】
結果から予測される本発明の測定原理を、図1に示す。
標的配列CCUを含む対照基質オリゴヌクレオチド(APO−U)を含む2種の反応系では、APOBEC3Gの添加(U+A3G)、不添加(UΔA3G)に関わらず、蛍光の低下が生じていないことが見て取れる。このことは、APO−Cを用いた反応系での蛍光の低下がAPOBEC3Gの酵素活性以外の原因によるアーチファクトではないことを示している。また、APO−CにAPOBEC3Gを添加した場合(C+A3G)とAPO−Uを使用した場合(U+A3G、UΔA3G)とを比較すると、相対的蛍光強度の差異は小さく、APO−CにAPOBEC3Gを添加した場合(C+A3G)、標的配列がAPO−Uと同じくCCUに変換されていることが示唆された。
【0054】
[実施例2]
解離曲線解析
実施例1と同様にして反応溶液を調製し、37℃で15時間インキュベートした。400nM相補オリゴヌクレオチドを1.0μL/チューブで添加し、37℃から70℃まで漸次的に温度を上昇させ、その間の蛍光強度をLightCycler 1.5(Roche)により測定した(励起:470nm、蛍光:530nm)。
【0055】
結果を図3A及び図3Bに示す。図3Aでは縦軸の値は蛍光値(F)を表し、図3Bでは縦軸の値は蛍光値の微分値(F/dF)を表している。
【0056】
APO−CにAPOBEC3Gを添加した場合(C+A3G)の解離曲線は、APO−Uを使用した場合(U+A3G、UΔA3G)に近く、APO−C中の標的配列CCCはAPOBEC3Gのシチジンデアミナーゼ活性によりCCUに変換されたことが示唆された。
【0057】
[実施例3]
APOBEC3Gによる酵素反応の反応時間依存性
APOBEC3Gによる酵素反応の時間に依存した進行をモニターした。
実験方法
以下の組成を有する20μLの反応溶液をマイクロチューブに入れた:25nM基質オリゴヌクレオチド、240nM APOBEC3G、40mM Tris−HCl(pH8.0)、40mM KCl、50mM NaCl、5mM EDTA、1mM DTT、0.01mg/mL RNase A、0.25mg/mL BSA。基質オリゴヌクレオチドを含まない対照も作製した。
【0058】
反応溶液を37℃で1、3、6、24、32、48、又は72時間インキュベートした。
【0059】
反応溶液に400nM相補オリゴヌクレオチドを1.0μL/チューブで添加し、95℃にて2分間、続いて37℃にて2分間インキュベートし、それぞれの温度で蛍光強度を測定した(励起:470nm、蛍光:530nm)。蛍光測定は、LightCycler 1.5(Roche)を用いて行なった。
【0060】
各反応溶液について、基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能な37℃で測定された蛍光強度を、基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが起こらない95℃で測定された蛍光強度で除して、相対的蛍光強度を算出した。
【0061】
結果
結果を図4に示す。図中、C、U、ΔA、及びNはそれぞれ、C:APO−Cを用いてAPOBEC3Gを添加した場合、U:APO−Uを用いてAPOBEC3Gを添加した場合、ΔA:APO−Cを用いてAPOBEC3Gを添加しなかった場合、及びN:基質オリゴヌクレオチド、APOBEC3Gのいずれも添加しなかった場合を表す。
【0062】
APO−Cを用いてAPOBEC3Gを添加した場合の結果(C0〜48)では、C3において蛍光強度の増加が見られ、上記の反応条件では、反応時間1〜3時間で、基質オリゴヌクレオチド(APO−C)中の標的配列C→Uの変換が起こっていることが示された。
【0063】
[実施例4]
APOBEC3Gの濃度依存性
APOBEC3Gの添加量に依存した酵素反応活性をモニターした。
実験方法
以下の組成を有する20μLの反応溶液をマイクロチューブに入れた:25nM基質オリゴヌクレオチド、40mM Tris−HCl(pH8.0)、40mM KCl、50mM NaCl、5mM EDTA、1mM DTT、0.01mg/mL RNase A、0.25mg/mL BSA。基質オリゴヌクレオチドを含まない対照も作製した。APOBEC3Gを、0.14、0.28、0.7又は1.4μMとなるように添加した。反応溶液を37℃で3.5時間インキュベートした。
【0064】
反応溶液に400nM相補オリゴヌクレオチドを1.0μL/チューブで添加し、95℃にて2分間、続いて37℃にて2分間インキュベートし、それぞれの温度で蛍光強度を測定した(励起:470nm、蛍光:530nm)。蛍光測定は、LightCycler 1.5(Roche)を用いて行なった。
【0065】
各反応溶液について、基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能な37℃で測定された蛍光強度を、基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが起こらない95℃で測定された蛍光強度で除して、相対的蛍光強度を算出した。
【0066】
結果
結果を図5に示す。図中、APO−Cを用いてAPOBEC3Gを添加した場合(C+A3G)では、すべてのサンプルにおいて蛍光強度の増加が見られた。APO−Cを用いてAPOBEC3Gを添加しなかった場合(CΔA3G)では、APOBEC3Gを添加したいずれのサンプル(C+A3G、C+0.5×A3G、C+0.2×A3G、及びA+0.1×A3G)よりも相対蛍光強度が低く、APOBEC3G濃度が高くなるにつれ、蛍光強度が強くなっていることが見て取れる。このことから、上記の反応条件では、添加したAPOBEC3Gの添加量に依存して、基質オリゴヌクレオチド(APO−C)中の標的配列C→Uの変換が起こっていることが示された。APO−Uを用いてAPOBEC3Gを添加した場合(U+A3G)、APO−Uを用いてAPOBEC3Gを添加しなかった場合(UΔA3G)、及び基質オリゴヌクレオチド、APOBEC3Gのいずれも添加しなかった場合(N)では、C+A3Gのいずれのサンプルよりも相対蛍光強度が大きかった。
【0067】
以上の結果は、本発明の方法により、APOBEC3G活性を定量的に測定することが可能であることを示している。
【0068】
[実施例5]
APOBEC3Gに対するVifの阻害効果
APOBEC3Gの酵素活性に対するVifの阻害効果について検討した。
実験方法
HIV Vifを、以下のように調製した:大腸菌を宿主として発現させるために、プラスミドベクターpET−22bのEcoRI−HindIII制限部位に、PCRで増幅したMBP遺伝子、適切なリンカー、HIV−1由来Vif遺伝子、停止コドンをこの順で挿入した。MBPは、発現の向上、アフィニティカラムを使用した精製、溶解度の向上のために使用した。本実施例では、ベクター由来の配列:EALKDAQTNAAA(配列番号4)をリンカーとして使用した。Vif遺伝子は、Dr. Stephan BourとDr. Klaus StrebelによってNIH AIDS Research&Reference Reagent Programに寄託されているpcDNA−HVifから、Vifに相当する部分を使用した。この例で発現させた融合タンパク質(以下MBP−Vifと称する)のアミノ酸配列を配列番号5に示す。
【0069】
宿主として、大腸菌BL21(DE3)株(Rosettaコンピテントセル;Novagen社製)を使用した。コンピテントセルの一般的な使用方法に従い、宿主大腸菌を形質転換し、10mLの滅菌LB培地(50mg/Lアンピシリンナトリウム、25mg/Lクロラムフェニコール添加)に植菌し、37℃で一晩振とう培養した。これを2Lの同様の滅菌培地に植え次ぎ、37℃で振とう培養した。1〜2時間後、OD600nmが0.5増加した時点で20℃に温度を下げ、IPTGを最終濃度1mMとなるよう添加して、さらに一晩培養した。遠心分離により大腸菌を回収した。
【0070】
2Lの培養から得られた大腸菌に、溶液A(50mM Tris−HCl(pH7.0)、0.5M NaCl、10%グリセロール、6mM β−メルカプトエタノール、1mM EDTAナトリウム)及び1mM PMSF(最終濃度)を加え、超音波で細胞を破砕した。9000×gで遠心分離し、上清を粗抽出液として回収した。
【0071】
アフィニティーカラムを用いて精製を行なった。20mL容のNEB社製アミロースカラムに上述の粗抽出液をアプライし、MBP−Vifを吸着させた。溶液Aを用いてカラムを洗浄し、余分な細胞成分を洗い流した後、20mMマルトースを添加した溶液AでMBP−Vifを溶出した。
【0072】
続いて、陰イオン交換カラムを用いて、主として核酸などの不純物を除去した。そのために、アミロースカラムからの溶出液を、以下の組成を有する溶液に対して透析し、イオン強度を下げた:50mM Tris−HCl(pH7.0)、0.15M KCl、10%グリセロール、10mM β−メルカプトエタノール。透析後の溶出液を、同じ組成の溶液で平衡化したHiTrapQ HP(GE社製)にアプライし、フロースルーを回収した。この処理では、核酸はカラムに強く吸着するので、核酸を除去することができる。溶出液中の核酸含量を、吸光度260nmと280nmとの比で確認した。
【0073】
次に、得られたフロースルーをヘパリンカラム(GE社製)にアプライし、50mM Tris−HCl(pH7.0)、10%グリセロール、10mM β−メルカプトエタノールの存在下で、0.15〜1M KCl濃度勾配により、MBP−Vifを溶出した。SDS−PAGEを用いたアッセイにより、純度が95%以上であることを確認した。
【0074】
得られたタンパク質溶液を、10mM MES−Na(pH6.5)、0.4M NaCl、10%グリセロール、10mM β−メルカプトエタノールに対して透析して緩衝液を置換し、限外濾過膜を使用して濃縮した。濃縮後、BioRad社から市販されているタンパク質定量用IgGを標準試料として、Bradford法タンパク質定量試薬(BioRad社製)を用いて、タンパク質濃度を決定した。
【0075】
得られた精製Vif溶液を、分注して液体窒素で急速冷凍し、使用まで−80℃で保存した。
【0076】
2.8μMのAPOBEC3G及び0.94μMのVifを含む溶液を調製した。APOBEC3Gのみ、Vifのみを含む対照、及びいずれも含まない対照も作製した。APOBEC3G−Vif溶液を、37℃で20分間プレインキュベートした。プレインキュベートを行なわない対照も作製した。
【0077】
プレインキュベート後、最終的に以下の組成となる反応溶液を、全量20μLとなるように調製した:25nM基質オリゴヌクレオチド、40mM Tris−HCl(pH8.0)、40mM KCl、50mM NaCl、5mM EDTA、1mM DTT、0.01mg/mL RNase A、0.25mg/mL BSA。基質オリゴヌクレオチドとして、配列CCCを含むAPO−C(配列番号1)又は配列CCUを含む対照であるAPO−U(配列番号2)を用いた。基質オリゴヌクレオチドを含まない対照も作製した。反応溶液を37℃で3.5時間インキュベートした後、80℃、20分間の熱変性処理を行なった。
【0078】
反応溶液に400nM相補オリゴヌクレオチド(APO−3−1;配列番号3)を1.0μL添加し、95℃にて2分間、続いて37℃にて2分間インキュベートし、それぞれの温度で蛍光強度を測定した(励起:470nm、蛍光:530nm)。蛍光測定は、LightCycler 1.5(Roche社製)を用いて行なった。
【0079】
各反応溶液について、基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能な37℃で測定された蛍光強度を、基質オリゴヌクレオチドと相補オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが起こらない95℃で測定された蛍光強度で除して、相対的蛍光強度を算出した。
【0080】
結果
結果を図6に示す。基質オリゴヌクレオチド(APO−C)、APOBEC3G及びVifを含み、プレインキュベートを行なっていない反応系(C/A3G/Vif)、並びに同様の組成でプレインキュベートを行なった場合(C/A3G/Vif−p)ではともに、Vifを添加しなかった場合(C/A3G及びC/A3G−p)と比較して、相対蛍光強度の低下が見られた。このことは、添加したHIV Vifによって、APOBEC3Gによる基質オリゴヌクレオチド(APO−C)中の標的配列C→Uの変換が阻害されたことを示す。同じ反応液組成でプレインキュベートを行なった場合と行なわなかった場合とを比較すると(C/A3G/VifとC/A3G/Vif−p)プレインキュベートを行なった場合の方が相対蛍光強度の低下が大きく、プレインキュベートによってVifの阻害効果が増大することが示された。
【0081】
対照基質オリゴヌクレオチドAPO−Uを用いたサンプルでは、APOBEC3Gを添加した場合(U/A3G)、APOBEC3G及びVifを添加した場合(U/A3G/Vif)、APOBEC3Gを添加せずにVifのみを添加した場合(U/ΔA3G/Vif)、並びにAPOBEC3G及びVifをいずれも添加しなかった場合(U)のいずれにおいても、基質オリゴヌクレオチド(APO−C)を用いてAPOBEC3Gを添加した場合(C/A3G)と同等の相対蛍光強度が示された。また、基質オリゴヌクレオチドを添加せず、A3Gのみを添加した場合(A3G)、Vifのみを添加した場合(Vif)、並びに基質オリゴヌクレオチド、APOBEC3G及びVifのいずれも添加しなかった場合(N)においては、基質オリゴヌクレオチド(APO−C)を用いたいずれのサンプルよりも、高い相対蛍光強度が示された。これらから、APO−Cを用いたサンプルでの蛍光強度の低下は、APOBEC3Gの酵素活性以外によるアーチファクトではないことが示された。
【0082】
以上より、HIV Vifは、APOBEC3Gによる基質オリゴヌクレオチド(APO−C)中の標的配列C→Uの変換を阻害することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、抗ウイルス因子であるAPOBEC3Gの簡便で安価な測定方法を提供する。また、本発明は、APOBEC3G活性測定を利用した抗ウイルス薬のスクリーニング方法を提供する。よって、本発明は医療・製薬分野での利用可能性を有する。
【配列表フリーテキスト】
【0084】
配列番号1:APOBEC3Gの基質
配列番号2:APOBEC3Gの対照基質
配列番号3:相補オリゴヌクレオチド
配列番号4:リンカー
配列番号5:融合タンパク質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験試料中のAPOBEC3G活性の測定方法であって、以下のステップ:
(a)基質オリゴヌクレオチドを被験試料と接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)を含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)で被験試料と接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、上記方法。
【請求項2】
被験試料中のVifの測定方法であって、以下のステップ:
(a)被験試料の存在下で、基質オリゴヌクレオチドをAPOBEC3Gと接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)を含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)でAPOBEC3Gと接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、上記方法。
【請求項3】
被験試料中のPKA活性の測定方法であって、以下のステップ:
(a)被験試料及びウイルス由来Vifの存在下で、基質オリゴヌクレオチドをAPOBEC3Gと接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)を含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)でAPOBEC3Gと接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、上記方法。
【請求項4】
抗ウイルス薬のスクリーニング方法であって、以下のステップ:
(a)被験化合物の存在下で、基質オリゴヌクレオチドをAPOBEC3Gと接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)を含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)でAPOBEC3Gと接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、上記方法。
【請求項5】
抗ウイルス薬のスクリーニング方法であって、以下のステップ:
(a)被験化合物及びウイルス由来Vifの存在下で、基質オリゴヌクレオチドをAPOBEC3Gと接触させるステップであって、該基質オリゴヌクレオチドはシトシン(C)を含むDNAであるステップ;
(b)ステップ(a)でAPOBEC3Gと接触させた基質オリゴヌクレオチドに相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせるステップであって、該相補オリゴヌクレオチドは、前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的であるステップ;及び
(c)ステップ(b)でのハイブリダイゼーションの程度を測定するステップ
を含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されており、ステップ(c)で該標識物質からのシグナルを検出することによりハイブリダイゼーションの程度を測定する、上記方法。
【請求項6】
前記標識物質が蛍光物質又は発光物質である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記基質オリゴヌクレオチドが部分配列CCC又はTCCを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記基質オリゴヌクレオチドが配列番号1により示される配列を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
以下の要素:
(a)シトシン(C)を含むDNAである、基質オリゴヌクレオチド;及び
(b)前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的である相補オリゴヌクレオチド
を少なくとも含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されている、APOBEC3G活性を測定するためのキット。
【請求項10】
以下の要素:
(a)シトシン(C)を含むDNAである、基質オリゴヌクレオチド;
(b)前記基質オリゴヌクレオチドの前記Cから3’側の配列と少なくとも部分的に相補的である相補オリゴヌクレオチド;及び
(c)APOBEC3Gタンパク質
を少なくとも含み、前記基質オリゴヌクレオチド中の前記C、又は前記相補オリゴヌクレオチド中の前記基質オリゴヌクレオチド中の前記Cに対応するGが標識物質で標識されている、Vifを測定するためのキット。
【請求項11】
前記標識物質が蛍光物質又は発光物質である、請求項9又は10に記載のキット。
【請求項12】
前記基質オリゴヌクレオチドが部分配列CCC又はTCCを含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載のキット。
【請求項13】
前記基質オリゴヌクレオチドが配列番号1により示される配列を含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−115151(P2011−115151A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144122(P2010−144122)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】