説明

AVE8062およびソラフェニブを含む抗腫瘍の組み合わせ

本発明は、式(I)のAVE8062


および式(II)のソラフェニブ


を含む医薬抗腫瘍の組み合わせに関し、前記抗腫瘍剤両方が、塩基または医薬的に許容される酸の塩の形態であることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌、より具体的には固形腫瘍の処置に有効な、AVE8062およびソラフェニブを組み合わせた抗腫瘍の組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
WO2007/077309には、抗血管剤AVE8062(またはVDA、血管破壊剤)と血管新生抑制剤VEGFトラップとの組み合わせが記載されている。
【0003】
WO99910779には、AVE8062/白金塩の組み合わせが記載されている。
【0004】
WO2004/037258には、AVE8062と、タキサン(タキソール、タキソテール)、アルキル化剤(シクロホスファミド、イソスファミドなど)、代謝拮抗剤(5−FU、シタラビンなど)、エピドフィロトキシン、抗菌剤(ドキソルビシンなど)およびビンカアルカロイドから選択される種々の抗腫瘍剤との組み合わせが記載されている。
【0005】
EP1407784には、AVE8062/デキサメタゾンの組み合わせが記載されている。
【0006】
ウェブサイトwww.clinicaltrials.govにおいて、コンブレタスタチンCA4P/アバスチンの組み合わせの第I期試験(「進行性固形腫瘍を有する患者におけるベバシズマブ(アバスチン)と組み合わせたコンブレタスタチンの増大用量の安全性試験」)のための患者募集期間が記載されている。排除される患者は、VEGFまたはVEGFR阻害剤、例えばソラフェニブまたはスーテントに基づく処置を既に受けた患者であることが指定されている(「排除基準:CA4Pもしくはベバシズマブ、または血管内皮増殖因子(VEGF)またはVEGFRシグナル伝達を標的とする他の試薬、例えばソラフェニブおよびスーテントによる先行する治療」)。
【0007】
EMEAのウェブサイト(http://www.emea.europa.eu/humandocs/PDFs/EPAR/nexavar/H−690−PI−fr.pdf)にて利用可能なネクサバールについてのファイルにおいて、ネクサバール(登録商標)(ソラフェニブトシラート)が、種々の抗癌剤、例えばゲムシタビン、オキサリプラチン、ドキソルビシン、イリノテカンまたはドセタキセルと組み合わせられてもよいことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/077309号
【特許文献2】国際公開第99910779号
【特許文献3】国際公開第2004/037258号
【特許文献4】欧州特許第1407784号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、次式のAVE8062:
【0010】
【化1】

および次式のソラフェニブ:
【0011】
【化2】

を含む抗腫瘍の医薬組み合わせに関し、
これら2つの抗腫瘍剤は、可能性として塩基の形態または医薬的に許容される酸の塩の形態である。この組み合わせは、有効量のAVE8062および有効量のソラフェニブを含む。
【0012】
組み合わせは、サイクルの始まりを標識するAVE8062の投与およびソラフェニブの数回の投与を含むサイクル中に患者に投与されることが意図されており、この組み合わせは経時的にずれており、同時ではなく、AVE8062はソラフェニブの最初の投与前に投与される。AVE8062は、ソラフェニブと同日に、ソラフェニブの最初の投与前に、1から4時間の時間をずらして投与されてもよい。AVE8062はまた、ソラフェニブの最初の投与の前日に、より詳細には少なくとも24時間ずれて投与されてもよい。サイクルは繰り返され、AVE8062の2回の投与間隔は1から4週間の範囲である。
【0013】
本発明はまた、上記に記載された抗腫瘍の組み合わせの調製のためのAVE8062およびソラフェニブの使用に関する。
【0014】
定義
●医薬的に許容される酸:低毒性を有する有機または無機酸(「Pharmaceutical salts」J.Pharm.Sci.1977,66,1−19を参照);
●有効量:処置される腫瘍に対して作用を生じる医薬化合物の量。
【0015】
AVE8062に関して、これはコンブレタスタチン系統に属し、次式を有する:
【0016】
【化3】

(これはZ異性体である。)
【0017】
これは抗血管剤(またはVDA、血管破壊剤)である。これは、化学名:(Z)−N−[2−メトキシ−5−[2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビニル]フェニル]−L−セリナミドである。この化合物は、EP731085B1に記載されており、WO03/084919に記載される方法に従って調製されてもよい。AVE8062は、塩基の形態(上記式参照)または医薬的に許容される酸の塩の形態、例えば以下に表される塩酸塩の形態で投与されてもよい:
【0018】
【化4】

【0019】
一旦投与されたら、AVE8062は、インビボで、次式を有する活性代謝物(Z)−1−(3−アミノ−4−メトキシフェニル)−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)エテンを放出する:
【0020】
【化5】

【0021】
そのため、AVE8062に関して、インビボでこの代謝物を放出する塩基の形態または医薬的に許容される酸の塩の形態での次式の別のコンブレタスタチンと置換できる:
【0022】
【化6】

【0023】
式中、Yは、アミノ酸を表す。
【0024】
ソラフェニブに関して、これは登録商標ネクサバール(登録商標)にてBayer HealthCareから販売されている。ソラフェニブは、次の化学式を有するVEGFおよびBRAFレセプターを標的とするマルチキナーゼ阻害剤であり:
【0025】
【化7】

【0026】
化学名:4−[4−[[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイルアミノ]フェノキシ]−N−メチルピリジン−2−カルボキサミドを有する。これは血管新生抑制剤である。この化合物は、WO00/42012およびWO00/41698に記載されている。ソラフェニブは、塩基の形態(上記式参照)または医薬的に許容される酸の塩の形態、例えばトシラートの形態で投与されてもよい。
【0027】
組み合わせに関して、これは、2つの別個の医薬調製物の形態において、AVE8062およびソラフェニブを組み合わせることで構成される。
【0028】
組み合わせは、処置されるべき癌の性質および段階、ならびにさらに処置されるべき患者(年齢、体重、以前の処置など)に依存したプロトコルに従う数回のサイクル過程において繰り返し投与される。各サイクルは、AVE8062の投与から開始され、これに加えて、ソラフェニブの幾つかの投与も含む(故に1つのサイクルは、前記サイクルの始まりを標識するAVE8062およびソラフェニブの数回の投与によって特徴付けられる。)。AVE8062は、1から4週間の範囲、例えば3週間であってもよい2回の投与間隔(1つのサイクル期間)を有する間欠性パターンで患者に投与される(コメント:マウスでの試験の場合には、AVE8062の投与間隔は4または5日間であった。)。ソラフェニブ自体は、サイクルの特定期間にわたって一日のパターンで患者に投与されてもよい。ソラフェニブは、場合により、1つのサイクルの終わりまで投与されてもよい。
【0029】
投与モデルは、非経口経路および/または経口経路であってもよく、抗腫瘍剤に関するガレヌス形態の使用に依存する。非経口経路により、抗腫瘍剤は、ボーラスとして静脈内投与されてもよく、または当業者に既知の種々の方法によって、医薬的に許容されるベクターと共に静脈内点滴バッグに調製されてもよい。1つの特定のモードによれば、AVE8062は、ボーラスとしてまたは点滴を介して、例えば静脈内投与を介するように非経口投与され、ソラフェニブは経口投与される。
【0030】
非経口投与に好適なAVE8062の1つのガレヌス形態は、AVE8062が水中の溶液状態であるものである。経口投与に好適なソラフェニブの1つのガレヌス形態は、例えば274mgのソラフェニブトシラート形態のソラフェニブを含有する錠剤の形態(200mgの有効成分と等価)である商標名ネクサバール(登録商標)として販売されるものである。
【0031】
患者に毎回投与されるAVE8062の用量およびソラフェニブの用量は、種々のパラメータ、例えば処置されるべき癌の性質および段階、ならびにさらに処置されるべき患者(年齢、体重、以前の処置など)に依存する。AVE8062は、5から100、5から60、10から50、20から42または20から40mg/m(体重/体表面積、各投与について規定された用量)の耐容用量にて投与されてもよい。ソラフェニブは、200から600mg、または300から500mg(各投与について規定された用量)の耐容用量にて投与されてもよい。ソラフェニブは、400mgの一日の用量に対応する、200mgの有効成分の用量にて、1日あたり2回摂取されてもよい。さらに、製品説明書に従って、食前の少なくとも1時間前または食後の2時間後にこの製品を摂取することが推奨される。
【0032】
組み合わせは、癌の、より詳細には一般的な固形腫瘍の、より詳細には肉腫、肺癌、卵巣癌、腎臓癌または肝臓癌の処置に有効である。
【0033】
腫瘍の処置において良好な効力は、1つのサイクル過程において、2つの抗腫瘍剤の投与が経時的にずらされ、同時でない場合に得られることを見出し、AVE8062は、ソラフェニブの最初の投与前に投与される。
【0034】
1つの特定モードによれば、AVE8062は、同日に、ソラフェニブの最初の投与前に、1から4時間ずれて投与されてもよい。サイクル例:D1日目:AVE8062の点滴および点滴から1から4時間後にソラフェニブを経口摂取する(例えば、ソラフェニブの2回用量形態において);D2日目からD14日目において:ソラフェニブは経口摂取され(例えば、ソラフェニブの2回用量形態において)、次いでサイクルはD1+3週間で繰り返される。
【0035】
別の特定モードによれば、AVE8062は、ソラフェニブの最初の投与の前日に投与される。より詳細には、AVE8062の投与とソラフェニブの最初の投与との間の時間遅延は、少なくとも24時間である。サイクル例:D1日目:AVE8062の点滴;少なくとも24時間後の遅延でD2日目に:ソラフェニブを経口摂取する(例えば、ソラフェニブの2回用量形態において);D3日目からD14日目において:ソラフェニブは経口摂取され(例えば、ソラフェニブの2回用量形態において)、次いでサイクルはD1+3週間で繰り返される。
【0036】
組み合わせの効力は、この治療相乗作用を決定することによって例証され得る。組み合わせは、これが最適用量にて単独で使用される最良の試薬よりも治療的に優れている場合に治療上の相乗作用が現れる(T.H.Corbett et al.,Cancer Treatment Reports 1982,66,1187)。組み合わせの効力はまた、組み合わせの最大耐容用量を、問題の試験において別々の構成要素それぞれの最大耐容用量と比較することによって例証できる。この効力は、以下の式によって決定されるlog10細胞死滅によって定量できる:
log10細胞死滅=T−C(日)/3.32×T
式中、T−Cは、腫瘍増殖遅延を表し、これは所定の値(例えば1g)に到達するために処置群の腫瘍(T)が必要とする日単位の中間時間およびコントロール群の腫瘍が同じ値に到達するために必要とする日単位の中間時間であり、Tは、コントロール群の腫瘍の体積が、腫瘍増殖の対数期中に倍化するのに必要な日単位の時間を表す(T.H.Corbett et al.Cancer,1977,40,2660−2680;F.M.Schabel et al.,Cancer Drug Development,Part B,Methods in Cancer Research 1979,17,3−51,New York,Academic Press Inc.)。製品は、log10細胞死滅が0.7以上である場合に活性であると考えられる。製品は、log10が2.8以上である場合に極めて活性であると考えられる。処置時間が少なくとも10日間に等しい場合および/または処置時間が組み合わせで評価される2つの試薬間で異なる場合、正味のlog細胞死滅を計算できる。
正味のlog10細胞死滅=(日単位のT−C)−(日単位の処置時間)/3.32×T
【0037】
この場合の活性は、正味のlog細胞死滅が正(>0)である場合に認められる。細胞分裂停止活性は、正味のlog細胞死滅が0に対応し、即ち処置時間は、抗腫瘍作用の期間に等しい。
【0038】
組み合わせ自体の最大耐容用量にて使用される組み合わせでは、この各構成要素は一般にこの最大耐容用量を超えない用量にて存在しており、組み合わせのlog10細胞死滅が、構成要素が単独で投与される場合の最良構成要素のlog10細胞死滅の値よりも少なくとも1log10を超える場合に治療上の相乗作用を示す。
【実施例】
【0039】
抗腫瘍作用および試験
固形腫瘍に対する組み合わせの効力は、次の方法によって実験的に決定できる:実験に供される動物は、30から60mgのNCI−H460(ATCC#HTB−177)ヒト非小細胞肺腫瘍のフラグメントを用いて、0日目に、両側に皮下移植されたメスSCIDマウスである。早期の腫瘍処置の場合、インプラントされた動物は、処置を受けることを目的としたまたは目的としない(コントロール)種々の群にランダムに分配される。進行性腫瘍の処置を問題とする場合、150mgを超える予め規定された腫瘍サイズに達した腫瘍を保持する動物は、腫瘍サイズ範囲が一方の群と他方の群とで比較可能なように、種々の処置群とコントロール群とに分配される。毒性作用と腫瘍に対する特定作用とを分けることができるように、腫瘍を保持しない動物も腫瘍を保持する動物と同じ処置に供されることができる。一般に、化学療法は、腫瘍のタイプおよび所望の腫瘍サイズに依存して、移植後3から22日後に開始する。動物は、毎日観察され、計量される。最低点から20%以上の体重損失(群の平均)または10%以上の死亡率を誘導する用量は、毒性であると考えられる。腫瘍活性は、最高の非毒性用量にて、または非細胞毒性剤の内容の範囲内において試験された最高用量にて評価される。
【0040】
腫瘍が約2gに達するまで、または動物が死ぬまで(これは腫瘍が2gに達する前に生じる場合)、腫瘍を1週間に2または3回測定する。動物は、屠殺される場合に剖検される。
【0041】
抗腫瘍活性は、種々の報告されたパラメータ、例えば用量(mg/kg)、投与方法、投与時間、毒性およびlog10細胞死滅に従って決定され、これらは、腫瘍増殖遅延およびさらに腫瘍倍化時間に依存する。
【0042】
以下の試験の内容の範囲内において、塩酸塩形態のAVE8062は、0.9%NaClを有する水中に配合される。ソラフェニブは、12.5%のエタノール、12.5%のポリソルベート80および75%の水中5%グルコースを用いて配合される。
【0043】
試験1:AVE8062と同時投与されるソラフェニブ(表I)
AVE8062は、腫瘍インプラント後9日目および13日目に静脈内投与された。ソラフェニブは、9日目から24日目に経口投与された。2つの試薬が組み合わせて投与される場合、試薬単独について使用されたスケジュールと同じスケジュールを使用し、2つの試薬の組み合わせは、9日目および13日目に同時に行われた。
【0044】
腫瘍倍化時間は2日間であった。
処置の開始時における腫瘍重量の中央値は、219から234mgであったが、コントロールは、腫瘍移植後12.8日後に1000mgの腫瘍重量に達した。
【0045】
AVE8062の最高評価用量(HED)は、1注射あたり58mg/kgであり、即ち116mg/kgの総用量である。この用量において、AVE8062は、0.9log10細胞死滅(log細胞死滅)で活性であり、1/6の部分退縮(PR=初期腫瘍サイズの50%退縮)がこの用量で得られる。
【0046】
ソラフェニブも、投与あたり62mg/kgの試験された最高用量(HDT)、即ち総用量992mg/kgにて、2.3log細胞死滅で活性である。しかし、ソラフェニブは、この用量では細胞分裂停止活性を有さず(−0.1正味のlog細胞死滅)、腫瘍は処置から外れた。
【0047】
組み合わせの最高非毒性用量(HNTD)は、ソラフェニブの投与あたり62mg/kg用量と組み合わせたAVE8062の投与あたりの36mg/kg用量にて決定され、組み合わせのより高い用量は毒性であることがわかった。このHNTDにおいて、組み合わせは、2.4log細胞死滅および0.0正味のlog細胞死滅で活性である。しかし、この用量で部分退縮は観察されなかった。低用量の組み合わせも、活性であるが(2.2から2.5log細胞死滅)、腫瘍退縮は誘導しない。
【0048】
結論として、AVE8062およびソラフェニブの同時投与は活性であり、2つの試薬単独それぞれの治療上の利得を少なくとも維持する。さらに、この活性は、組み合わせる場合にのみ幾つかの用量レベルで維持されることが観察できた。
【0049】
試験2:AVE8062の1時間後に組み合わせて投与されたソラフェニブ(表II)
AVE8062は、腫瘍インプラント後10日目および14日目に静脈内投与された。ソラフェニブは10日目から14日目に経口投与された。2つの試薬は、試薬単独で使用される場合と同じスケジュールに従って組み合わせて投与されたが、ソラフェニブの投与は、AVE8062の投与の1時間後にずらした。
【0050】
腫瘍倍化時間は1.6日間であった。
処置の開始時における腫瘍重量の中央値は431から458mgであったが、コントロールは、腫瘍移植後の13.2日後に1500mgの腫瘍重量に達した。
【0051】
2つの最高用量のAVE8062は毒性であったが、最高非毒性用量(HNTD)は1注射あたり22.3mg/kg、即ち総用量44.6mg/kgである。この用量において、AVE8062は、腫瘍退縮を誘導せずに、1.1log10細胞死滅(log細胞死滅)で活性である。
【0052】
投与あたり100mg/kgの試験された最高用量(HDT)、即ち総用量447.4mg/kgにおけるソラフェニブも、1.1log細胞死滅で活性である。
【0053】
組み合わせのHNTDは、投与あたり38.4mg/kg用量のソラフェニブと組み合わせた投与あたり58mg/kg用量のAVE8062にて決定され、組み合わせのより高い用量は、毒性であることがわかった。このHNTDにおいて、組み合わせは2.1log細胞死滅で活性である、即ち試薬単独(それぞれ1.1log細胞死滅)よりも1log細胞死滅高い。さらに、50%(3/6)の部分退縮(PR=初期腫瘍サイズの50%退縮)は、この用量にて得られた。5つの低用量の組み合わせも、log細胞死滅が1.9から1.5で活性であり、4つの用量レベルにてPRを誘導する。
【0054】
結論として、1時間後に投与されたソラフェニブとAVE8062との組み合わせは、試薬単独それぞれの場合よりも多くの腫瘍退縮を誘導し、治療上の相乗作用がHNTDにおいて観察された。
【0055】
試験3:AVE8062から24時間後に組み合わせて投与されたソラフェニブ(表III)
AVE8062は、メスSCIDマウスにおいてNCI−H460胚性腫瘍のインプラント後9日目および14日目にて、静脈内投与された。ソラフェニブは、9日目から20日目に経口投与された。2つの試薬が組み合わせて投与された場合、試薬単独の場合と同じスケジュールが使用されたが、ソラフェニブの投与は、AVE8062の24時間後に開始した。
【0056】
腫瘍倍化時間は1.5日間であった。
処置の開始時における腫瘍重量の中央値は、217から235mgであったが、コントロールは、腫瘍移植後13.6時間後に1000mgの腫瘍重量に達した。
【0057】
AVE8062の最高非毒性用量(HNTD)は1注射あたり36mg/kg、即ち総用量72mg/kgである。この用量において、AVE8062は、腫瘍退縮誘導なしに、1.7log10細胞死滅(log細胞死滅)で活性である。
【0058】
投与あたり100mg/kgの試験された最高用量(HDT)、即ち総用量1213.3mg/kgにおけるソラフェニブも、2.4log細胞死滅で活性である。しかし、ソラフェニブは、この用量では細胞分裂停止活性を有さず(−0.4正味のlog細胞死滅)、腫瘍は処置から外れた。
【0059】
組み合わせのHNTDは、ソラフェニブの投与あたり100mg/kgと組み合わせたAVE8062の投与あたりの36mg/k用量にて決定され、組み合わせのより高い用量は毒性であることがわかった。このHNTDにおいて、組み合わせは、3.1log細胞死滅および0.3正味のlog細胞死滅で極めて活性である。さらに、50%(3/6)の部分退縮(PR=初期腫瘍サイズの50%退縮)および16%(1/6)の完全な退縮(CR=63mgの触知限度未満の退縮)がこの用量で得られた。低用量の組み合わせも、活性であり(2.6から3log細胞死滅)、5つの用量レベルでPRが誘導され、2つの用量レベルでCRが誘導される。
【0060】
結論として、ソラフェニブがAVE8062の後に投与される順序を使用するこの組み合わせは、試薬単独の場合では観察されない完全および/または部分腫瘍退縮を誘導する。これらの退縮は、組み合わせにおいて、幾つかの用量レベルにて観察される。組み合わせにおいてlog10細胞死滅は、単独治療において観察されるよりも系統的により高い。
【0061】
結論として、これらの3つの試験について、ソラフェニブを、AVE8062の投与後から少なくとも1時間後にずらして投与すれば、これらが単独で投与される場合の、2つの抗腫瘍剤の投与と比べて治療上の利得が得られる。少なくとも24時間までこの間隔を延長すれば、この治療上の利益が増大する。
【0062】
【表1】

腫瘍倍化時間=2日間。処置の開始時の腫瘍重量の中央値=219から234mg。コントロールにおいて1000mgに達する中央時間=12.8日間。処置時間:ソラフェニブ=16日間、AVE8062=5日間。
配合:0.9%のNaClを有する水中のAVE8062;ソラフェニブ=12.5%エタノール、12.5%PS80、75%の水中5%グルコース。
略語:HED=最高評価用量、HNTD=最高非毒性用量、HDT=試験された最高用量、PR=部分退縮、CR=完全退縮
【0063】
【表2】

腫瘍倍化時間=1.6日間。処置の開始時の腫瘍重量の中央値=431から458mg。コントロール中の1500mgに達する中央時間=13.2日間。
配合:0.9%のNaClを有する水中のAVE8062;ソラフェニブ=12.5%エタノール、12.5%PS80、75%の水中5%グルコース。
略語:HNTD=最高非毒性用量、HDT=試験された最高用量、BWC=体重変化
【0064】
【表3】

腫瘍倍化時間=1.5日間。処置の開始時における腫瘍重量の中央値=217から235mg。コントロールにおいて1000mgに達する中央時間=13.6日間。処置時間:組み合わせおよびソラフェニブ単独=12日間、AVE8062単独=5日間。
配合:0.9%のNaClを有するAVE8062;ソラフェニブ=12.5%エタノール、12.5%PS80、75%の水中5%グルコース。
略語:HNTD=最高非毒性用量、HDT=試験された最高用量、PR=部分退縮、CR=完全退縮

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式のAVE8062:
【化1】

および次式のソラフェニブ:
【化2】

を含む、抗腫瘍の医薬組み合わせであって、これらの2つの抗腫瘍剤が、可能性として塩基の形態または医薬的に許容される酸の塩の形態である、組み合わせ。
【請求項2】
有効量のAVE8062および有効量のソラフェニブを含む、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
AVE8062が塩酸塩の形態であり、および/またはソラフェニブがトシラートの形態である、請求項1または2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
サイクルの始まりを標識するAVE8062の投与およびソラフェニブの数回の投与を含むサイクル中に患者に投与されることが意図される、請求項1から3に記載の組み合わせであって、この組み合わせが経時的にずれており、同時ではなく、AVE8062はソラフェニブの最初の投与前に投与されることを特徴とする、組み合わせ。
【請求項5】
AVE8062が、ソラフェニブと同日に、ソラフェニブの最初の投与前に、1から4時間の時間をずらして投与される、請求項4に記載の組み合わせ。
【請求項6】
AVE8062が、ソラフェニブの最初の投与の前日に投与される、請求項4に記載の組み合わせ。
【請求項7】
AVE8062の投与と、ソラフェニブの最初の投与の時間のずれが少なくとも24時間である、請求項6に記載の組み合わせ。
【請求項8】
サイクルが繰り返され、AVE8062の2回の投与間隔は1から4週間の範囲である、請求項4から7の一項に記載の組み合わせ。
【請求項9】
AVE8062が非経口投与され、ソラフェニブが経口投与される、請求項1から8の一項に記載の組み合わせ。
【請求項10】
固形腫瘍、より詳細には肉腫、肺癌、卵巣癌、腎臓癌または肝臓癌の処置を目的とする、請求項1から9の一項に記載の組み合わせ。
【請求項11】
請求項1から10の一項に記載の抗腫瘍の組み合わせの調製のためのAVE8062およびソラフェニブの使用。

【公表番号】特表2012−526090(P2012−526090A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509078(P2012−509078)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050874
【国際公開番号】WO2010/128259
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】