B型リンパ球様造血増殖に対する細胞傷害性抗体
【課題】CD20抗原に対するモノクローナル抗体の提供、および白血病またはリンパ腫の治療用の薬物を製造するための、前記抗体の使用。
【解決手段】CD20抗原に対するモノクローナル抗体であり、軽鎖の各々の可変領域は、特定のマウス核酸配列と少なくとも70%同一性を有する配列によってコードされ、重鎖の各々の可変領域は、特定のマウス核酸配列と少なくとも70%同一性を有する配列によってコードされ、そして軽鎖および重鎖の定常領域は、非マウス種由来の定常領域である。免疫エフェクター細胞のFcγRIII受容体を活性化し、特に白血病またはリンパ腫の治療用薬物の製造に前記抗体を使用する。
【解決手段】CD20抗原に対するモノクローナル抗体であり、軽鎖の各々の可変領域は、特定のマウス核酸配列と少なくとも70%同一性を有する配列によってコードされ、重鎖の各々の可変領域は、特定のマウス核酸配列と少なくとも70%同一性を有する配列によってコードされ、そして軽鎖および重鎖の定常領域は、非マウス種由来の定常領域である。免疫エフェクター細胞のFcγRIII受容体を活性化し、特に白血病またはリンパ腫の治療用薬物の製造に前記抗体を使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD20抗原に対するモノクローナル抗体に関し、ここで、軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)と少なくとも70%配列同一性を共有する配列によってコードされ、その重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)と少なくとも70%同一性を共有する配列によってコードされ、そして軽鎖および重鎖の定常領域は、非マウス種由来の定常領域であり、ならびに免疫エフェクター細胞中のFcγRIII受容体を活性化するための、および特に白血病またはリンパ腫の治療用の、薬物の製造のための、このような抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イントロダクションおよび先行技術
CD20抗原は、成熟Bリンパ球の表面に存在する35〜37kDaの分子量を有する疎水性膜貫通蛋白質である(Valentine et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84(22): 8085-8089;Valentine et al. (1989) J. Biol. Chem., 264(19): 11282-11287)。それは、初期プレB段階(early pre-B stage)からプラズマ細胞への分化(この段階で
、この発現は消失する)のBリンパ球細胞(B細胞)の発達の間、発現される。CD20抗原は、正常なBリンパ球および悪性のB細胞の両方に存在する。より詳細には、CD20抗原は、大抵の表現型のBリンパ腫(80%リンパ腫)において発現され:例えば、それは、90%超の非ホジキンB細胞リンパ腫(non-Hodgkin’s B-cell lymphomas)(N
HL)および95%超のB型慢性リンパ性白血病(B-type Chronic Lymphocytic Leukaemia)(B−CLL)において発現される。CD20抗原は、造血幹細胞およびプラズマ細胞において発現されない。
【0003】
CD20の機能は、まだ完全には解明されていないが、それは、カルシウムチャネルとして機能し得、そしてBリンパ球分化(Golay et al. (1985) J. Immunol. 135(6): 3795-3801)および増殖(Tedder et al. (Aug 1986) Eur. J. Immunol. 16(8): 881-887)の
第1段階の調節に関与し得る。
【0004】
したがって、B細胞の活性化および増殖におけるその役割に関して、いくらかの不明確が存在するままであるが、CD20抗原は、その局在のため、CD20を特異的に認識する抗体を使用しての、腫瘍性B細胞が関与するコンディション(例えば、NHLまたはB−CLL等)の治療についての重要な標的である。さらに、この抗原は、発現調節または多型が知られていない膜蛋白質であるので、理想的な標的である。
【0005】
非放射性物質で標識された抗CD20モノクローナル抗体、リツキサン(Rituxan)(
登録商標)(Genentech)だけが、B細胞リンパ腫の治療について現在市販されている。それは、NHLを有する患者において、化学療法と組み合わせた場合、有望な臨床結果を示している。しかし、その有効性は、それが単独で使用される場合、可変性かつしばしばあまり高くないままである(Teeling et al. (2004) Blood 104(6): 1793-1800
)。
【0006】
さらに、リツキサン(登録商標)は、B−CLLにおいてB細胞に対してあまり高くない効果しか有さない。この有効性の低い程度は、種々の現象と関連付けられている:一方で、B−CLL B細胞は、比較的少ない量でしかCD20を発現せず、そして他方で、リツキサン(登録商標)は、インビトロで、これらの細胞に対して非常に低いADCC(抗体依存性細胞性細胞傷害性(Antibody-Dependent Cellular Cytotoxicity))活性レベルを誘発するだけである。これらの2つの観察は、腫瘍におけるCD20の発現レベル(
定量的フローサイトメトリーで)と治療に対する応答との間に観察された相関関係を説明するかもしれない。
【0007】
B−CLLは、西洋諸国において白血病の最も一般的な形態であり、そして高用量化学療法治療は、時々、不十分であると判り、かつ、造血形成不全(haematopoietic aplasia)および免疫不全へ導く副作用を伴うので、モノクローナル抗体は、革新的なアプローチであるようである。したがって、CD20抗原を特異的に標的化することができ、かつ、限られた程度でしかこの抗原を発現しない腫瘍細胞(例えば、B−CLL)が破壊されることを可能にする、抗体を開発することは、最重要である。
【0008】
B−CLLの治療のためにGenmab(Teeling et al. (2004) Blood 104(6): 1793-1800)によって提案された、抗体2F2および7D8は、リツキサン(登録商標)によ
って誘発されたそれよりも大きい、補体を活性化する能力を有する。しかし、これらの抗体は、リツキサン(登録商標)のそれと類似する、低ADCC活性を有する。しかし、何人かの臨床医は、前記抗体は、広範囲の非特異的活性(炎症、アレルギーまたは血管反応等)を有する分子(特に、アナフィラトキシン)の産生へと導く活性化システムを誘発するので、前記補体活性化は有害な副作用の原因であることを示した。さらに、これらの抗体は、未だ研究段階にあり、そしてそれらの臨床効果は依然として評価されなければならない。
【0009】
出願FR03/02713(WO2004/029092)において、本出願人は、YB2/0系において産生され得、かつ、リツキサン(登録商標)と比較して高ADCC活性およびジャーカット−CD16細胞による高レベルのIL−2産生を誘発するその能力のために選択された、抗CD20抗体を記載している。現在入手可能な免疫療法を使用して治療されるB細胞疾患の範囲が拡大されることを可能にする、新規の抗CD20抗体についての顕著な必要性が存在し;このことは、CD20抗原が、関与するB細胞の集団において低い程度に発現され、そして満足のいく免疫治療が存在しないB細胞疾患について、特にそうである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この目的を持って、本出願人は、リツキサン(Rituxan)(登録商標)と比較して特に
高いADCC活性を示す新規のCD20抗体を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
説明
したがって、本発明の第1目的は、CD20抗原に対するモノクローナル抗体に関し、ここで、軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)と少なくとも70%同一性を共有する配列によってコードされ、重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)と少なくとも70%同一性を共有する配列によってコードされ、そして軽鎖および重鎖の定常領域は、非マウス種由来の定常領域である。
【0012】
抗体は、ジスルフィド結合によって共に連結された重鎖および軽鎖から作製される。各鎖は、N末端位における、該抗体が指向される(directed against)抗原に対して特異的な可変領域(またはドメイン)(軽鎖については再構成されたV−J遺伝子および重鎖についてはV−D−J遺伝子によってコードされる)と、C末端位における、定常領域(軽鎖については単一のCLドメインまたは重鎖についてはいくつかのドメインから作製される)とから作製される。
【0013】
本発明の目的のために、表現「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成
物」は、同一かつ独特の特異性を有する抗体分子の調製物を指す。
【0014】
軽鎖および重鎖における可変領域が軽鎖および重鎖の定常領域のそれとは異なる種由来である、本発明に従う抗体は、「キメラ」抗体と呼ばれる。
【0015】
マウス核酸配列(配列番号5および配列番号7)は、それぞれ、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)において番号ACC 474で
入手可能な、マウスハイブリドーマCAT−13.6E12によって産生される抗体の軽鎖の各々の可変ドメインおよび重鎖の各々の可変ドメインをコードする。このハイブリドーマは、CD20に対するマウスIgG2a,κ−タイプモノクローナル抗体を産生する。
【0016】
これらのマウス配列は、本発明に従う抗体の可変領域の配列を得るために選択され、何故ならば、CD20抗原(該抗原は、リツキサン(登録商標)によっても認識される)についてのCAT−13.6E12マウス抗体の特異性のためである。本発明に従う抗体の可変領域は、配列(配列番号5および配列番号7)と少なくとも70%同一性を共有し、この配列同一性は、本発明に従う抗体に、CAT−13.6E12マウス抗体のそれと同一である特異性を提供する。好ましくは、この配列同一性はまた、本発明に従う抗体に、CAT−13.6E12マウス抗体のそれと同一である標的に対する親和性を提供する。
【0017】
さらに、本出願人は、驚くべきことに、CAT−13.6E12マウス抗体は、FcγRIIIA受容体のエクトドメインを発現するジャーカット−CD16細胞(Jurkat-CD16 cells)の存在下でIL−2の分泌を誘発する能力を有することを示し(図11に示さ
れる通り)、これは、該マウス抗体とヒトCD16(FcγRIIIA)との強力な結合を示し、このことも、本出願人がした選択を動機付けた。
【0018】
さらに、本発明に従う抗体において、軽鎖および重鎖の定常領域は、非マウス種由来である。この点において、全ての非マウス哺乳動物種(species)および科(families)、
特に、ヒト、サル、マウス(murine)(ネズミ(mice)以外)、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌならびにトリが使用され得る。
【0019】
本発明に従う抗体は、当業者に周知の、標準的な組換えDNA技術を使用して、そしてより具体的には、例えばMorrison et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 6851-6855(ここで、組換えDNA技術は、非ヒト哺乳動物由来の抗体における重鎖の定常領
域および/または軽鎖の定常領域を、ヒト免疫グロブリンにおける対応の領域で置換するために使用されている)に記載される、「キメラ」抗体作製技術を使用して、作製され得る。1つの特定の実施形態を以下に例示する。
【0020】
有利には、本発明に従う抗体の軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)と少なくとも80%同一性を共有する配列によってコードされ、そして本発明に従う抗体の重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)と少なくとも80%同一性を共有する配列によってコードされる。
【0021】
有利には、本発明に従う抗体の軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)と少なくとも90%同一性を共有する配列によってコードされ、そして本発明に従う抗体の重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)と少なくとも90%同一性を共有する配列によってコードされる。
【0022】
有利には、本発明に従う抗体の軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)と少なくとも95%同一性を共有する配列によってコードされ、そして本発明に従う抗
体の重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)と少なくとも95%同一性を共有する配列によってコードされる。
【0023】
有利には、本発明に従う抗体の軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)と少なくとも99%同一性を共有する配列によってコードされ、そして本発明に従う抗体の重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)と少なくとも99%同一性を共有する配列によってコードされる。
【0024】
有利には、本発明はまた、前記重鎖および軽鎖の可変領域が、1以上のアミノ酸の1以上の置換、挿入または欠失を含む任意の抗体に関し、但し、これらの配列修飾は、標的に対する抗体の特異性または親和性に影響を与えること無しに、上記で規定した配列同一性パーセンテージレベルに適合する。
【0025】
本発明の抗体はまた、FR(フレームワーク)領域(「骨格(backbone)」領域としても公知の、可変領域の高度に保存された領域)と結合された、CAT−13.6E12抗体のCDR(相補性決定領域)を含む任意の抗体である。このような抗体は、CAT−13.6E12マウス抗体のそれと非常に類似している、そして好ましくは同一である、親和性および特異性を有する。
【0026】
好ましくは、本発明に従う抗体の軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)またはマウス核酸配列(配列番号25)によってコードされ、そして本発明に従う抗体の重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)によってコードされる。
【0027】
したがって、本発明の1実施形態において、本発明に従う抗体は、CD20抗原に対するモノクローナル抗体であり、ここで、軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)によってコードされ、重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)によってコードされ、そして軽鎖および重鎖の定常領域は、非マウス種由来の定常領域である。
【0028】
したがって、第2の実施形態において、本発明に従う抗体は、CD20抗原に対するモノクローナル抗体であり、ここで、軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号25)によってコードされ、重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)によってコードされ、そして軽鎖および重鎖の定常領域は、非マウス種由来の定常領域である。
【0029】
両方の実施形態において、抗体は、それらのヌクレオチド配列において、単一ヌクレオチド異なる:それぞれシトシンおよびアデニンに対応する、配列番号5および配列番号25における318位に局在するヌクレオチド。
【0030】
これらの実施形態に従う本発明の抗体は、標的抗原CD20について特異性および親和性を有し、これらは、CAT−13.6E12マウス抗体のそれらに匹敵しており、そして好ましくは同一である。
【0031】
好ましくは、本発明に従う抗体の軽鎖の各々および重鎖の各々の定常領域は、ヒト定常領域である。本発明のこの好ましい実施形態において、抗体の免疫原性は、ヒトにおいて減少され、そしてしたがって、該抗体の有効性は、ヒトに対する治療投与の際に改善される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の抗体の軽鎖の各々の定常領域は、κタイプのものである。任意のアロタイプ、例えば、Km(1)、Km(1、2)、Km(1、
2、3)またはKm(3)が本発明の実施に好適であり、しかし好ましいアロタイプはKm(3)である。
【0033】
別のさらなる実施形態によれば、本発明に従う抗体の軽鎖の各々の定常領域は、λタイプのものである。
【0034】
本発明の1つの特定の局面によれば、そして特に、本発明に従う抗体の軽鎖の各々および重鎖の各々の定常領域がヒト領域である場合、該抗体の重鎖の各々の定常領域は、γタイプのものである。この実施形態(alternative)によれば、該抗体の重鎖の各々の定常
領域は、γ1、γ2またはγ3タイプのもの(これら3つの定常領域タイプは、ヒト補体に結合するという特徴を示す)、あるいはγ4タイプのものでさえあり得る。重鎖の各々についてγタイプ定常領域を有する抗体は、IgGクラスに属する。免疫グロブリンG(IgG)は、ジスルフィド結合によって共に連結された、2つの重鎖および2つの軽鎖から構成されたヘテロ二量体である。各鎖は、N末端位においては、抗体が指向される抗原に特異的な可変領域またはドメイン(軽鎖については再構成されたV−J遺伝子および重鎖についてはV−D−J遺伝子によってコードされる)から、そしてC末端においては、定常領域(軽鎖については単一のCLドメインから、あるいは重鎖については3つのドメイン(CH1、CH2およびCH3)から構成される)から、構成されている。可変ドメインならびに重鎖のCH1ドメインおよび軽鎖のCLドメインを結合させることにより、Fabフラグメントが構成され、これらは、高度にフレキシブルなヒンジ領域を介してFc領域へ連結されており、各Fabフラグメントをその抗原標的へ結合させ、一方、抗体のエフェクター特性についてのメディエーターである、Fc領域は、FcγRおよびC1q受容体等のエフェクター分子へアクセス可能な状態のままである。CH2球状ドメインおよびCH3球状ドメインの両方から構成されるFc領域は、CH2ドメインでグリコシル化されており、Asn279へ連結されたラクトサミン型二分岐N−グリカン(lactosamine-type biantennary N-glycan)が、前記2つの鎖の各々に存在している。
【0035】
好ましくは、前記抗体の重鎖の各々の定常領域はγ1タイプのものであり、何故ならば、このような抗体は、最も多数の(ヒト)個体においてADCC活性を誘発する能力を示すためである。この点で、任意のアロタイプ、例えば、G1m(3)、G1m(1、2、17)、G1m(1、17)またはG1m(1、3)が、本発明の実施のために好適である。好ましくは、アロタイプはG1m(1、17)である。
【0036】
本発明の1つの特定の局面によれば、前記抗体の重鎖の各々の定常領域は、γ1タイプのものであり、そしてヒト核酸配列(配列番号23)によってコードされ、軽鎖の各々の定常領域は、ヒト核酸配列(配列番号21)によってコードされる。したがって、このような抗体は、マウス可変領域と、γ1タイプ重鎖を含むヒト定常領域とを含む。したがって、この抗体は、IgG1サブクラスに属する。本発明に従う抗体の該実施形態によれば、該抗体は、2つの軽鎖[これらの可変ドメインは、マウス核酸配列(配列番号5)またはマウス核酸配列(配列番号25)によってコードされ、これらのヒト定常領域は、核酸配列(配列番号21)によってコードされる]、ならびに2つの重鎖[これらの可変ドメインは、マウス核酸配列(配列番号7)によってコードされ、そしてこれらの定常領域は、ヒト核酸配列(配列番号23)によってコードされる]を有する。
【0037】
優先的には、本発明に従う抗体の軽鎖の各々は、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号13)またはマウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号27)によってコードされ、そして重鎖の各々は、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号19)によってコードされる。前記抗体の軽鎖の各々をコードするマウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号13)は、前記抗体の軽鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号5)を、前記抗体の軽鎖の各々の定常領域をコードするヒト核酸配列(配列番号21)に融合すること
によって得られる。
【0038】
前記抗体の軽鎖の各々をコードするマウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号27)は、前記抗体の軽鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号25)を、前記抗体の軽鎖の定常領域をコードするヒト核酸配列(配列番号21)に融合することによって得られる。
【0039】
前記抗体の重鎖の各々をコードするマウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号19)は、前記抗体の重鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号7)を、前記抗体の重鎖の各々の定常領域をコードするヒト核酸配列(配列番号23)に融合することによって得られる。
【0040】
本発明の特定の局面によれば、前記抗体の軽鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号13)によってコードされ、そして重鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号19)によってコードされる場合、核酸配列(配列番号13)から推定される軽鎖の各々のペプチド配列は、配列(配列番号14)であり、そして核酸配列(配列番号19)から推定される重鎖の各々のペプチド配列は、配列(配列番号20)である。
【0041】
本発明のさらに特定の局面によれば、前記抗体の軽鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号27)によってコードされ、そして重鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号19)によってコードされる場合、核酸配列(配列番号27)から推定される軽鎖の各々のペプチド配列は、配列(配列番号28)であり、そして核酸配列(配列番号19)から推定される重鎖の各々のペプチド配列は、配列(配列番号20)である。
【0042】
ペプチド配列(配列番号14および配列番号28)は、これら2つの配列上の106位に存在するアミノ酸だけが異なる。106位に局在するアミノ酸は、配列(配列番号28)においてはリシン(K)であり;それは、配列(配列番号14)においてはアスパラギン(N)である。
【0043】
本発明はまた、マウス−ヒトキメラ核酸配列によってコードされる軽鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号13)と少なくとも70%相同性または同一性を共有し、そして、マウス−ヒトキメラ核酸配列によってコードされる重鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号19)と少なくとも70%相同性または同一性を共有する、抗体に関し、これらの修飾は、該抗体特異性にも、あるいはADCC(抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(Antibody-Dependent Cell-mediated Cytotoxicity)活性)等のそのエ
フェクター活性(effector activities)にも悪影響を与えない。
【0044】
特に有利な様式において、本発明の抗体は、ラットハイブリドーマ細胞株によって産生される。本発明に従う抗体を産生する該株は、重要な特徴であり、何故ならば、それは、その特定の性質の確認(certain)を該抗体に提供するからである。実際に、抗体の発現
方法は、翻訳後修飾、特にグリコシル化修飾(これは、細胞系ごとに変化し得る)を誘発し、そしてしたがって、同一の一次構造を有する抗体に異なる機能的特性を提供する。
【0045】
好ましい実施形態において、抗体は、ラットハイブリドーマYB2/0細胞株(ATCC番号CRL−1662でAmerican Type Culture Collectionにおいて登録された、細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20)において産生される。この株は、例えばCHO細胞において産生される同一の一次構造を有する抗体と比較して改善されたADCC活性を有する抗体を産生するその能力のために、選択された。
【0046】
特定の実施形態によれば、本発明に従う好ましい抗体は、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM, Institut Pasteur, 25 rue du Docteur Roux, 75724
Paris Cedex 15, France)において、登録番号CNCM I−3314で、2004年
11月8日に登録された、クローンR509によって産生された、抗体EMAB6である。EMAB6抗体の軽鎖の各々は、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号13)によってコードされ、そして重鎖の各々は、マウス−ヒトキメラ核酸(配列番号19)によってコードされる。このキメラ抗体は、CD20に結合することにおいて、CAT−13.6E12マウス抗体と拮抗し、そしてリツキサン(登録商標)のそれよりも遥かに高い細胞傷害活性を有し、これは、これらの抗体の重鎖のN−グリカンの特異的なグリコシル化に一部寄与し得る(実施例4を参照のこと)。実際に、R509クローンの特徴は、0.6未満のフコース/ガラクトース比を有するEMAB6抗体組成をそれが産生することであり、これは、特許出願FR 03 12229において、強力なADCC活性を該抗体に提供するに最適であると示された。したがって、この抗体は、標的化される細胞がCD20を発現するコンディションの処置のための治療ツールとして特に興味深い。
【0047】
さらなる特定の実施形態によれば、本発明に従う別の好ましい抗体は、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM, Institut Pasteur, 25 rue du Docteur
Roux, 75724 Paris Cedex 15, France)において、登録番号CNCM I−3529で
、2005年11月29日に登録された、クローンR603によって産生された、抗体EMAB603である。EMAB603抗体の軽鎖の各々は、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号27)によってコードされ、そして重鎖の各々は、マウス−ヒトキメラアミノ酸配列(配列番号19)によってコードされる。このキメラ抗体は、CD20に結合することにおいて、CAT−13.6E12マウス抗体と拮抗し、そしてリツキサン(登録商標)のそれよりも遥かに高い細胞傷害活性を有し、これは、これらの抗体の重鎖のN−グリカンの特異的なグリコシル化に一部寄与し得る(実施例3を参照のこと)。実際に、R603クローンの特徴は、0.6未満のフコース/ガラクトース比を有するEMAB603抗体組成物をそれが産生することであり(実施例4を参照のこと)、これは、特許出願FR 03 12229において、強力なADCC活性を該抗体に提供するに最適であると示された。したがって、この抗体は、標的化される細胞がCD20を発現するコンディションの処置のための治療ツールとして特に興味深い。
【0048】
本発明の別の目的は、配列(配列番号12)を有する、本発明に従う抗体の軽鎖の発現のためのベクターpEF−EMAB6−Kに関する。このベクターは、本発明に従う抗体を発現させるベクターであり、この軽鎖は核酸配列(配列番号13)によってコードされ、この推定ペプチド配列は配列(配列番号14)である。このベクターは、前記抗体の軽鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号5)および前記抗体の軽鎖の各々の定常領域をコードする核酸配列(配列番号21)が、宿主細胞中に導入されそして維持されるように挿入されている核酸分子である。それは、この発現に必須である配列(プロモータ、ポリアデニル化配列、選択遺伝子)を有しているので、外来核酸フラグメントを宿主細胞中で発現させることを可能にする。このようなベクターは、当業者に周知であり、そして、暗黙の限定無しに、アデノウイルス、レトロウイルス、プラスミドまたはバクテリオファージであり得る。さらに、任意の哺乳動物細胞、例えば、YB2/0、CHO、CHO dhfr−(例えば、CHO DX B11、CHO DG44)、CHO Lec13、SP2/0、NSO、293、BHKまたはCOSが、宿主細胞として、即ち、本発明に従う抗体を発現する細胞として使用され得る。
【0049】
本発明の別の目的は、配列(配列番号18)を有する、本発明に従う抗体の重鎖の発現のためのベクターpEF−EMAB6−Hに関する。このベクターは、本発明に従う抗体を発現させるベクターであり、この重鎖は核酸配列(配列番号19)によってコードされ、この推定ペプチド配列は配列(配列番号20)である。このベクターは、前記抗体の重
鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号7)および前記抗体の重鎖の各々の定常領域をコードするヒト核酸配列(配列番号23)が、宿主細胞中に導入されそして維持されるように挿入されている核酸分子である。それは、この発現に必須である配列(プロモータ、ポリアデニル化配列、選択遺伝子)を有しているので、これらの外来核酸フラグメントを宿主細胞中で発現させることを可能にする。ちょうど前述したように、該ベクターは、例えば、プラスミド、アデノウイルス、レトロウイルスまたはバクテリオファージであり得、そして該宿主細胞は、任意の哺乳動物細胞、例えば、YB2/0、CHO、CHO dhfr−(例えば、CHO DX B11、CHO DG44)、CHO Lec13、SP2/0、NS0、293、BHKまたはCOSであり得る。
【0050】
YB2/0細胞中においてpEF−EMAB6−KおよびpEF−EMAB6−Hベクターを共発現させることによって産生される抗体は、クローンR509(CNCMにおいて登録番号CNCM I−3314で登録された)によって産生された、抗CD20 EMAB6抗体によって例示される。この抗体は、B−CLLを有する患者由来の細胞(この上にCD20抗原がより低レベルで発現される)、およびモデルとして使用されるRaji細胞(これは、B−CLLを有する患者由来の細胞と比較してより高い密度でCD20を発現する)の両方において、リツキサン(登録商標)によって誘発されるそれよりも大きい細胞傷害性を誘発する。さらに、EMAB6抗体は、ジャーカット−CD16細胞(Jurkat-CD16 cells)においてIL−2(インターロイキン2)の分泌を誘発し、これ
は、リツキサン(登録商標)よりも遥かに高いレベルである。EMAB6抗体は、上述のベクターが発現されるのを可能にする培養培地中および条件下でR509クローンを増殖させることによって産生され得、したがって、それは、CD20抗原が関与するB細胞疾患(より具体的には、B−CLL)の診断および治療を促進するため、ならびにこの分野における研究のための非常に興味深いツールである。
【0051】
本発明の特定の目的は、本発明に従う抗体を発現する安定細胞株である。
【0052】
有利には、本発明に従う抗体を発現する安定細胞株は、以下からなる群から選択される:SP2/0、YB2/0、IR983F、ヒト骨髄腫、例えば、Namalwa、あるいはヒト起源の任意の他の細胞、例えば、PERC6、CHO株、特に、CHO−K−1、CHO−Lec10、CHO−Lec1、CHO−Lec13、CHO Pro−5、CHO dhfr−(CHO DX B11、CHO DG44)、あるいは以下から選択される他の株:Wil−2、Jurkat、Vero、Molt−4、COS−7、293−HEK、BHK、K6H6、NSO、SP2/0−Ag 14、およびP3X63Ag8.653。
【0053】
使用される株は、好ましくは、ラットハイブリドーマYB2/0細胞株である。この株は、例えばCHO細胞において産生される同一の一次構造を有する抗体に対して改善されたADCC活性を有する抗体を産生するその能力のために、選択された。
【0054】
本発明の1つの特定の局面によれば、本発明に従う抗体を発現しそしてより詳細には上述の群から選択される安定細胞株は、前述の2つのpEF−EMAB6−KおよびpEF−EMAB6−H発現ベクターを組み込んでいる。
【0055】
本発明の1つの特定の局面は、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)において登録番号CNCM I−3314で登録された、クローンR50
9に関する。
【0056】
本発明の1つの特定の局面は、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)において登録番号CNC I−3529で登録された、クローンR603
に関する。
【0057】
本発明の別の目的は、本発明に従う抗体の重鎖をコードする配列(配列番号19)を有するDNAフラグメントに関する。マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号19)は、前記抗体の重鎖の各々をコードする。それは、前記抗体の重鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号7)を、前記抗体の重鎖の各々の定常領域をコードするヒト核酸配列(配列番号23)へ融合することによって得られる。
【0058】
本発明の別の特定の目的は、本発明に従う抗体の軽鎖をコードする配列(配列番号13)を有するDNAフラグメントに関する。マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号13)は、前記抗体の軽鎖の各々をコードする。それは、前記抗体の軽鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号5)を、前記抗体の軽鎖の各々の定常領域をコードするヒト核酸配列(配列番号21)へ融合することによって得られる。
【0059】
本発明の別の特定の目的は、本発明に従う抗体の軽鎖をコードする配列(配列番号27)を有するDNAフラグメントに関する。マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号27)は、前記抗体の軽鎖の各々をコードする。それは、前記抗体の軽鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号25)を、前記抗体の軽鎖の各々の定常領域をコードするヒト核酸配列(配列番号21)へ融合することによって得られる。
【0060】
本発明の1つの特定の目的は、エフェクター免疫細胞(effector immune cells)のF
cγRIIIA受容体をインビボまたはインビトロで活性化するための、本発明に従う抗体の使用に関する。実際に、本発明の抗体は、細胞傷害性であるという特徴および利点を有する。したがって、それらは、それらのFc領域でFcγRIIIA受容体を活性化する能力を示す。これはかなり興味深く、何故ならば、この受容体は、「エフェクター細胞(effector cells)」として公知の細胞の表面において発現されるからである:該エフェクター細胞によって行われる該抗体のFc領域のその受容体への結合は、FcγRIIIA受容体の活性化、および標的細胞の破壊を生じさせる。エフェクター細胞は、例えば、NK(ナチュラルキラー)細胞、マクロファージ、好中球、CD8リンパ球、Tγδリンパ球、NKT細胞、好酸球、好塩基球、または肥満細胞である。
【0061】
1つの特定の局面において、本発明の抗体は、薬物として使用される。有利には、このような薬物は、標的細胞がCD20を発現する細胞であるコンディション(例えば、悪性B細胞リンパ腫)の処置に意図される。
【0062】
1つの有利な局面によれば、本発明に従う抗体は、白血病またはリンパ腫の治療用の薬物を製造するために使用される。
【0063】
本発明の1つの特定の目的は、以下からなる群から選択される病状の治療用の薬物の製造のための、本発明に従う抗体の使用である:急性Bリンパ芽球性白血病(acute B lymphoblastic leukaemia)、B細胞リンパ腫(B-cell lymphoma)、成熟B細胞リンパ腫(mature B-cell lymphoma)、例えば、B型慢性リンパ性白血病(B-type Chronic Lymphocytic Leukaemia)(B−CLL)、小細胞性B細胞リンパ腫(small B-cell lymphoma)、
B細胞前リンパ性白血病(B-cell prolymphocytic leukaemia)、リンパ球プラズマ細胞
性リンパ腫(lymphoplasmocytic lymphoma)、マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma)、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)、辺縁層MALT型リンパ腫(marginal zone MALT-type lymphoma)、単球様B細胞を含むまたは含まないリンパ節辺縁層リン
パ腫(lymph node marginal zone lymphoma with or without monocytoid B cells)、脾性辺縁層リンパ腫(絨毛性リンパ球を含むまたは含まない)(splenic marginal zone lymphoma (with or without villous lymphocytes))、トリコロイコサイティック白血病(
tricholeucocytic leukaemia)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma)、バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma)、ならびに自己免疫疾患を含む、Bリンパ系細胞が関与する任意の免疫不全疾患。
【0064】
本発明の別の目的は、リンパ性白血病の治療用の薬物の製造のための、本発明に従う抗体の使用である。
【0065】
本発明の別の目的は、B型慢性リンパ性白血病(B−CLL)の治療用の薬物の製造のための、本発明に従う抗体の使用である。さらに、本発明に従う抗体は、CD20がB細胞においてあまり強く発現されていないコンディション、そして好ましくは、B−CLL(B型慢性リンパ性白血病)の治療に特によく適している。この点において、本発明に従う抗体は、白血病またはリンパ腫の治療用の薬物の製造のために、1以上のさらなる抗体、例えば、リンパ系細胞(lymphoid cells)において発現される1以上のさらなる抗原(例えば、抗原 HLA−DR、CD19、CD23、CD22、CD80、CD32およびCD52等)に対するモノクローナル抗体、と組み合わせて使用され得る。したがって、リンパ系細胞上で多量に発現される分子、CD52抗原を標的にし、そしてホストエフェクター機構(host effector mechanisms)(補体結合、抗体依存性細胞傷害性)を動員することによって細胞溶解を誘発するヒト化抗体Campath−1H(登録商標)(アレンツズマブ(alentuzumab)、MabCampathR(登録商標))が、CLLの治
療において使用される(Moreton P., Hillmen P. (2003) Semin. Oncol. 30(4): 493-501;Rawstron A.C. et al, (2004) Blood 103(6): 2027-2031;Robak T. (2004) Leuk. Lymphoma 45(2): 205-219;Stanglmaier M. et al, (2004) Ann. Hematol. 83(10): 634-645)。臨床試験はまた、CLLを有する患者における抗原HLA−DR、CD22、CD23、CD80を標的にする抗体または免疫毒素(immunotoxins)を評価しているところである(Mavromatis B.H., Cheson B.D. (2004) Blood Rev. 18(2): 137-148;Mavromatis B., Cheson B.D. (2003) J. Clin. Oncol. 21(9): 1874-1881, Coleman M. et al, (2003) Clin. Cancer Res. 9: 3991S-3994S;Salvatore G. et al, (2002) Clin. Cancer Res.
8: 995-1002)。
【0066】
さらなる実施形態において、本発明に従う抗体は、NK細胞、NKT(ナチュラルキラーT)細胞、Tγδリンパ球、マクロファージ、単球または樹状細胞等の、FcγRsを発現する細胞と組み合わせて、即ち、細胞性治療(cellular therapy)と組み合わせて、使用され得る(Peller S., Kaufman S. (1991) Blood 78: 1569, Platsoucas C.D. et al, (1982) J. Immunol. 129: 2305;Kimby E. et al, (1989) Leukaemia 3(7): 501-504;Soorskaar D. et al, Int. Arch. Allery Appl. Immunol. 87(2): 159-164; Ziegler H.W. et al, (1981) Int. J. Cancer 27(3): 321-327;Chaperot L. et al, (2000) Leukaemia 14(9): 1667-1677;Vuillier F., Dighiero G. (2003) Bull. Cancer. 90(8-9): 744-750)。
【0067】
さらに、本発明に従う抗体は、有利なことに、患者へ投与される用量を減少させる:有利なことに、患者へ投与される抗体用量は、リツキサン(登録商標)の用量よりも、2倍、5倍、または10倍、25倍、50倍、または特に有利なことに100倍少ない。有利なことに、患者に投与される抗体用量は、リツキサン(登録商標)の用量よりも、2〜5倍、5〜10倍、5〜25倍、5〜50倍、または5〜100倍少ない。したがって、本発明に従う抗体、例えばEMAB6抗体は、有利には、187.5mg/m2、75mg/m2、37.5mg/m2、15mg/m2、7.5mg/m2未満、または特に有利には、3.75mg/m2未満の用量で投与され得る。投与される用量は、有利には、187.5mg/m2〜75mg/m2、または75mg/m2〜37.5mg/m2、75mg/m2〜15mg/m2、75mg/m2〜7.5mg/m2、あるいは75mg/m2〜3.75mg/m2である。
【0068】
したがって、本発明はまた、本発明に従う抗体を含む有効量の組成物を患者へ投与することを含む、標的細胞がCD20を発現する細胞である疾患(例えば、悪性B細胞リンパ腫)を治療するための方法に関する。より詳細には、該治療法は、特に、白血病またはリンパ腫の治療に適している。なおより詳細には、それは、有効量の本発明に従う抗体または抗体組成物を投与することを含む、以下から選択される病状を治療するための方法である:急性Bリンパ芽球性白血病(acute B lymphoblastic leukaemia)、B細胞リンパ腫
(B-cell lymphoma)、成熟B細胞リンパ腫(mature B-cell lymphoma)、例えば、B型
慢性リンパ性白血病(B-type Chronic Lymphocytic Leukaemia)(B−CLL)、小細胞性B細胞リンパ腫(small B-cell lymphoma)、B細胞前リンパ性白血病(B-cell prolymphocytic leukaemia)、リンパ球プラズマ細胞性リンパ腫(lymphoplasmocytic lymphoma)、マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma)、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)、辺縁層MALT型リンパ腫(marginal zone MALT-type lymphoma)、単球様B
細胞を含むまたは含まないリンパ節辺縁層リンパ腫(lymph node marginal zone lymphoma with or without monocytoid B cells)、脾性辺縁層リンパ腫(絨毛性リンパ球を含むまたは含まない)(splenic marginal zone lymphoma (with or without villous lymphocytes))、トリコロイコサイティック白血病(tricholeucocytic leukaemia)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma)、バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma)、ならびに自己免疫疾患を含む、Bリンパ系細胞が関与する任意の免疫不全疾患。
【0069】
本発明の特定の目的は、受容者のB細胞が関与する症状を治療するための、慢性移植片対宿主病(chronic graft-versus-host disease)の治療用の薬物の製造のための、本発
明に従う抗体の使用である。
【0070】
最後に、本発明の最後の目的は、臓器(特に、腎臓)移植片拒絶の治療用の薬物の製造のための、本発明に従う抗体の使用である。
【0071】
最近の研究(Ratanatharathorn et al, (Aug 2003) Biol. Blood Marrow Transplant 9(8): 505-511;Becker et al, (Jun 2004) Am. J. Transplant. 4(6): 996-1001)は、実際に、このようなコンディションの治療における抗CD20抗体の利点を示した。
【0072】
本発明のさらなる局面および利点は、例示的な例として理解されるべきでありかつ本発明の範囲を限定しない下記の実施例において説明される。
【実施例】
【0073】
実施例
実施例1:抗CD20キメラ抗体EMAB6およびEMAB603のための発現ベクターの構築
A.CAT−13.6E12マウス抗体の可変領域の配列の決定
マウスハイブリドーマCAT−13.6E12細胞(供給業者:DSMZ、ref.ACC474)(これは、IgG2a,κ型免疫グロブリンを産生する)由来のトータルRNAを、単離した(RNAeasyキット、Qiagen ref.74104)。逆転写後、CAT−13.6E12抗体の軽鎖(Vκ)および重鎖(VH)の可変ドメインを、5’RACE技術(Rapid Amplification of cDNA Ends)(GeneRacerキット、Invitrogen ref.L1500−01)を使用して増幅した。前記2つの工程のために使用したプライマーは、以下であった:
1.リバース転写プライマー
a.マウスカッパ(Kappa)特異的アンチセンスプライマー(配列番号1)
【0074】
【化1】
【0075】
b.マウスG2a特異的アンチセンスプライマー(配列番号2)
【0076】
【化2】
【0077】
2.5’RACE PCRプライマー
a.マウスカッパ特異的アンチセンスプライマー(配列番号3)
【0078】
【化3】
【0079】
b.マウスG2a特異的アンチセンスプライマー(配列番号4)
【0080】
【化4】
【0081】
得られるVHおよびVκPCR産物を、ベクターpCR4Blunt−TOPO中へクローン化し(Zero blunt TOPO PCRクローニングキット、Invitrogen、ref.K2875−20)、そして配列決定した。マウスCAT−13.6E12抗体のVκ領域のヌクレオチド配列は、配列(配列番号5)のように示され、そして推定されるペプチド配列は、配列(配列番号6)である。該Vκ遺伝子は、Vκ4クラスに属する[Kabat et al. (1991) “Sequences of Proteins of Immunological Interest”. NIH Publication 91-3242]。
【0082】
CAT−13.6E12のVH領域のヌクレオチド配列は、配列(配列番号7)であり、そして推定されるペプチド配列は、配列(配列番号8)である。該VH遺伝子は、VH1クラスに属する[Kabat et al. (1991) “Sequences of Proteins of Immunological Interest”. NIH Publication 91-3242]。
【0083】
B.キメラ抗体EMAB6およびEMAB603のための重鎖および軽鎖発現ベクターの構築
1.軽鎖カッパベクター
1.1.抗体EMAB6についての軽鎖ベクター
pCR4Blunt−TOPOシークエンシングベクターにクローン化したVκ配列を、以下のクローニングプライマーを使用して増幅した:
a)Vκセンスプライマー(配列番号9)
【0084】
【化5】
【0085】
下線が引かれた配列はSpeI制限部位に対応し、太字で記載の配列はKozakコンセンサス配列に対応し、ATGイニシエータ(initiator)はイタリック体である。
【0086】
b)Vκアンチセンスプライマー(配列番号10)
【0087】
【化6】
【0088】
このプライマーは、マウスVκ配列(イタリック体)を、ヒト定常領域(Cκ)(太字)へ連結している。下線が引かれた配列は、DraIII制限部位に対応する。
【0089】
得られるVκPCR産物は、CAT−13.6E12マウス抗体の天然シグナルペプチドをコードする配列を含む。次いで、このVκPCR産物を、ヒト定常領域Cκ[その核酸配列は、配列(配列番号21)であり、そしてその推定ペプチド配列は、配列(配列番号22)である]の5’で、配列(配列番号11)に対応する軽鎖キメラ化ベクター(light chain chimerisation vector)(図1)のSpeI部位およびDraIII部位の間にクローン化した。DraIII制限部位を作製しマウスVκ配列のクローニングが起こることを可能にするために、このキメラ化ベクターのヒトCκ配列は、サイレント突然変異(silent mutagenesis)によって予め修飾されている。このキメラ化ベクターは、RSVプロモータおよびbGH(ウシ成長ホルモン)ポリアデニル化配列ならびにdhfr(ジヒドロ葉酸還元酵素)選択遺伝子を含む。
【0090】
このベクターによってコードされるキメラEMAB6抗体の軽鎖配列は、ヌクレオチド配列については配列番号13として示され、そして推定ペプチド配列(配列番号14)に対応する。
【0091】
1.2.抗体EMAB603についての軽鎖ベクター
プロトコルは、下記のVκアンチセンスプライマー以外、EMAB6抗体のための軽鎖ベクターについてと同一である(実施例1、B−1.1を参照のこと):
b’)Vκアンチセンスプライマー(配列番号29)
【0092】
【化7】
【0093】
このプライマーは、マウスVκ配列(イタリック体)を、ヒト定常領域(Cκ)(太字)へ連結している。下線が引かれた配列は、DraIII制限部位に対応する。
【0094】
このプライマーはまた、突然変異AAC→AAA(アンチセンスプライマー配列(配列番号29)において囲まれているヌクレオチド)を導入し、これは、CAT−13.6E12の天然Vκ配列(配列番号5および配列番号6を参照のこと)に対しての突然変異N106Kに対応する(ヌクレオチド配列および推定ペプチド配列(配列番号25および配列番号26)を参照のこと)。
【0095】
このベクターによってコードされるキメラEMAB603抗体の軽鎖配列は、ヌクレオチド配列については配列番号27として示され、そして推定ペプチド配列(配列番号28)に対応する。
【0096】
2.重鎖ベクター
同様のアプローチを、EMAB6およびEMAB603抗体の重鎖のキメラ化に適用した。
【0097】
先ず、pCR4Blunt−TOPOベクターにクローン化されたVH配列を、下記のクローニングプライマーを使用して増幅した:
a)VHセンスプライマー(配列番号15)
【0098】
【化8】
【0099】
下線が引かれた配列は制限部位SpeIに対応し、太字で記載の配列はKozakコンセンサス配列に対応し、ATGイニシエータはイタリック体である。
【0100】
b)VHアンチセンスプライマー(配列番号16)
【0101】
【化9】
【0102】
このプライマーは、マウスVH配列(イタリック体)を、ヒトG1定常領域(太字)へ連結している。下線が引かれた配列は、ApaI制限部位に対応する。
【0103】
増幅したVHフラグメントは、CAT−13.6E12マウス抗体の天然シグナルペプチドをコードする配列を含む。次いで、このVH PCR産物を、γ1ヒト定常領域[その核酸配列は、配列(配列番号23)であり、そしてその推定ペプチド配列は、配列(配列番号24)である]の5’で、配列(配列番号17)に対応する重鎖キメラ化ベクター(図3)のSpeI部位およびApaI部位の間へクローン化した。このキメラ化ベクターは、RSVプロモータおよびbGH(ウシ成長ホルモン)ポリアデニル化配列ならびにneo選択遺伝子を含む。
【0104】
このベクターによってコードされるキメラEMAB6およびEMAB603抗体の重鎖配列は、ヌクレオチド配列については配列番号19として、そして推定ペプチド配列については配列番号20として示される。
【0105】
3.最終発現ベクター
3.1.EMAB6抗体発現ベクター
EMAB6抗体の発現のために、カッパ軽鎖キメラ化ベクター(実施例1、B−1.1を参照のこと)のRSVプロモータを、ヒトEF−1アルファプロモータで置換した。最終軽鎖pEF−EMAB6−K発現ベクターは、図2に示され、そして配列(配列番号12)に対応する。
【0106】
このベクターによってコードされるキメラEMAB6抗体の軽鎖配列は、ヌクレオチド配列については配列番号13として示され、そして推定ペプチド配列(配列番号14)に対応する。
【0107】
EMAB6抗体の発現のために、重鎖キメラ化ベクター(実施例1、B−2を参照のこと)のRSVプロモータを、ヒトEF−1アルファプロモータで置換した。このようにして得られた最終重鎖pEF−EMAB6−H発現ベクターは、図4に示され、そして配列(配列番号18)に対応する。
【0108】
3.2.EMAB603抗体発現ベクター
軽鎖転写単位およびdhfr遺伝子を含む前記軽鎖ベクターのBgIII−PvuII
フラグメントを前記重鎖ベクターのXhoI部位へサブクローン化することによって、抗CD20 EMAB603抗体の重鎖転写単位および軽鎖転写単位の両方を含む独特な発現ベクターを2つの軽鎖および重鎖キメラ化ベクター(それぞれ、実施例1、B−1.2およびB2を参照のこと)から構築した。このpRSV−HL−EMAB603発現ベクターは、2つの選択遺伝子、即ち、neo(ネオ−ホスホトランスフェラーゼII)およびdhfr(ジヒドロ葉酸還元酵素)、ならびにRSVプロモータの制御下にある2つの重鎖および軽鎖転写単位を含む(図12)。
【0109】
実施例2:抗CD20キメラEMAB6およびEMAB603抗体を産生するYB2/0株由来の細胞株の製造
ラットYB2/0細胞株(ATCC# CRL−1662)を、5%ウシ胎仔血清(JRH Biosciences,ref.12107)を含有するEMS培地(Invitrogen,ref.041−95181M)において培養した。トランスフェクションのために、5百万個の細胞を、Optimix培地(Equibio,ref.EKITE 1)において、EMAB6抗体の発現については25μgの軽鎖ベクターpEF−EMAB6−K(図2)(AatIIで線形化)および27μgの重鎖ベクターpEF−EMAB6−H(図4)(ScaIで線形化)で、あるいはEMAB603抗体の発現についてはベクターpRSV−HL−EMAB603で、エレクトロポレーションした(Bioradエレクトロポレーター、モデル1652077)。適用したエレクトロポレーション条件は、0.5−mLキュベット中、230ボルトおよび960マイクロファラッドであった。次いで、各エレクトロポレーションキュベットを、5,000細胞/ウェルの密度で、5 P96プレート上に分配した。
【0110】
5%透析血清(Invitrogen,ref.10603−017)、500μg/mL G418(Invitrogen,ref.10131−027)および25nMメトトレキサート(Sigma,ref.M8407)を含有する選択的RPMI培地(Invitrogen,ref 21875−034)中に、トランスフェクションの3日後に、配置した。
【0111】
前記耐性トランスフェクションウェル(resistant transfection wells)からの上澄みを、ヒトIg配列に特異的なELISAアッセイを適用することによって、キメラ免疫グロブリン(Ig)の存在についてスクリーニングした。
【0112】
最大量の抗体を産生する10個のトランスフェクタントを、P24プレート上で増幅し、そしてそれらの上澄みを、ELISAを使用して再アッセイし、それらの生産力を評価し、そして限られた希釈(limited dilution)(40細胞/プレート)によって、クローニングに最適な3つのプロデューサを選択した。
【0113】
クローニング後、R509.6A4クローン(R509−33903/046−6H1(1)6A4、生産力:17μg/106細胞)(以後、「R509」と呼ぶ)、ならびにR603クローンを、それぞれキメラEMAB6およびEMAB603抗体の産生のために選択し、そしてこれらはCDハイブリドーマ産生培地(Invitrogen、ref.11279−023)に次第に順化した。
【0114】
キメラEMAB6およびEMAB603抗体の産生は、75−cm2および175−cm2バイアル中3×105細胞/mLへの希釈そして次いでローラーフラスコ(roller flasks)中4.5×105細胞/mLへの希釈によって得られた順化培養を、CDハイブ
リドーマ培地において、拡大することによって、達成された。いったん最大容量(1L)が達成されると、細胞生存能(cell viability)が20%だけになるまで、培養を継続した。産生後、キメラEMAB6およびEMAB603抗体を、プロテインAアフィニティ
ークロマトグラフィーを使用して精製し(HPLCは、純度<95%と評価した)、そしてポリアクリルアミドゲル電気泳動によってチェックした。
【0115】
実施例3:キメラ抗体EMAB6およびEMAB603の機能活性のキャラクタライゼーション
A.特異性
Raji細胞によって発現されたCD20抗原に結合することについての、マウス抗体CAT−13.6E12(CAT13)との拮抗を研究することによって、キメラEMAB6抗体の抗原認識の特異性を評価した。
【0116】
その目的のために、EMAB6抗体(0.5〜50μg/mLで10μL)を、Raji細胞(4×106細胞/mlで50μL)の存在下で、20分間、固定量のCAT−13.6E12マウス抗体(5μg/mLで10μL)と共に、4℃でインキュベートした。洗浄後、フィコエリトリン(PE)へ結合されたマウス抗IgG抗体を、前記Raji細胞へ添加し、CAT−13.6E12マウス抗体の結合を特異的に検出した。種々の濃度のEMAB6の存在下で得られたメジアン蛍光強度(Median Fluorescence Intensities)(MFI)をパーセンテージに変換し、ここで、100%は、EMAB6抗体の非存
在下でのCAT−13.6E12細胞への結合に対応する。
【0117】
増加する濃度のEMAB6の存在下におけるRaji細胞へのCAT−13.6E12(CAT13)抗体の結合についての阻害曲線をこのようにして得る(図5)。
【0118】
この研究により、前記キメラ化プロセスは、Raji細胞の表面に発現されるCD20への結合について親(parental)CAT−13.6E12マウス抗体と拮抗する、EMAB6抗体の特異性に悪影響を与えていないことが実証される。
【0119】
EMAB603抗体の抗原認識特異性は、EMAB6抗体のそれと匹敵する。
【0120】
B.補体依存性細胞傷害活性
EMAB6およびEMAB603抗体の補体依存性細胞傷害活性を、補体の供給源としての若いウサギ血清の存在下で、Raji細胞を用いて試験した;比較のために、抗CD20キメラ抗体リツキサン(登録商標)を、1つの試験に含めた。
【0121】
この試験のために、Raji細胞を、IMDM(イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium))5%FCS(ウシ胎仔血清)中、6×105細胞
/mLに調整した。抗体をIMDM+0.5%FCSで希釈した。反応混合物を、50μL抗体、50μLの若いウサギ血清(Cedarlane CL 3441試薬の1/10 IMDM+0.5%FCS希釈)、50μL標的細胞、および50μL IMDM+0.5%FCS培地から作製した。最終抗体濃度は、5,000、1,250、250、および50ng/mLであった。抗体を含まないコントロールを、試験に含ませた。5%CO2雰囲気中37℃で1時間インキュベーション後、前記プレートを遠心分離し、そして上澄みへ放出された細胞内LDHのレベルを、特定の試薬(細胞傷害性検出キット(Cytotoxicity Detection Kit)1 644 793)を使用して評価した。
【0122】
それぞれ100、50、25および0%溶解に対応するtriton X100(2%)を使用して溶解された種々の希釈の標的細胞を使用して得られた較正範囲を使用して、パーセンテージ溶解(percentage lysis)を評価した。
【0123】
図6(A)において示された結果は、EMAB6およびリツキサン(登録商標)は両方とも、Raji細胞の補体依存性溶解を誘発することを実証する。にもかかわらず、EM
AB6補体活性は、リツキサン(登録商標)のそれよりも僅かに低いようであった。この差異は、この試験において使用した低濃度の抗体でより大きい。したがって、50および250ng/mLの濃度について、EMAB6の活性は、リツキサン(登録商標)のそれの45%のオーダーのものである。この差異は、抗体濃度が増加されるにつれて小さくなり、EMAB6抗体の%補体依存性細胞傷害活性は、試験した最高濃度(即ち、5,000ng/mL)でリツキサン(登録商標)のそれの92%を示す。
【0124】
リツキサン(登録商標)のそれと比較してEMAB6抗体のこのより低い補体依存性傷害活性は、利点とみなされ得、何故ならば、それは、リツキサン(登録商標)と比較して、EMAB6の潜在的インビボ毒性(これは、従来の補体経路の活性化に付随し、これは、望まれない炎症、アレルギーおよび血管活性を有する種々の分子の産生へと導く)を制限するためである。
【0125】
EMAB603抗体の補体活性を図6(B)に示す。
【0126】
C.ADCC活性
キメラEMAB6抗体の細胞傷害性を、Raji細胞またはCLLを有する患者由来のBリンパ球の存在下で評価した。抗CD20キメラ抗体リツキサン(登録商標)を、比較のために試験に含めた。
【0127】
使用したカルセイン標識ADCC測定技術は、以下の通りであった:
Myltenyiからの磁気ビーズ(MACS)における分離技術を使用して、NK細胞をPBMCから単離した。該細胞を、IMDM+5%FCS(45×105細胞/mL)において、洗浄しそして再懸濁させた。該エフェクター細胞および標的細胞を、15/1の比率で使用した。Ficoll処理後に得られたB−CLLを有する患者由来のPBMC(末梢血単核細胞)(>95%B細胞)またはRaji細胞を、カルセインで予め標識し(IMDM+5%FCS+20μLカルセイン(20μM)中3×106細胞/mLで1mL細胞、37℃で20分インキュベーション、次いでHBSS(ハンクス緩衝生理食塩水溶液(Hank's Buffered Saline Solution))で洗浄)、そしてIMDM+5%F
CS中において3×105細胞/mLに調整した。抗体を、IMDM+0.5%FCS(最終濃度:500;50;5;0.5;0.005および0.005ng/mL)で希釈した。
【0128】
反応混合物を、P96マイクロタイトレーションプレート中、50μL抗体、50μLエフェクター細胞、50μL標的細胞、および50μL IMDM培地から作製した。2つの陰性コントロールを使用した:
− NK無しでの溶解:NKエフェクター細胞をIMDM+5%FCSで置換した。
− 抗体(Ab)無しでの溶解:抗体をIMDM+5%FCSで置換した。
【0129】
5%CO2雰囲気において37℃で4時間インキュベーション後、前記プレートを遠心分離し、そして上澄みと関連する蛍光を、蛍光光度計(励起:485nm、放出:535nm)を使用して測定した。
【0130】
それぞれ100、50、25および0%溶解に対応するTriton X100(2%)を使用して溶解された種々の希釈の標的細胞を使用して得られた較正範囲を使用して、パーセンテージ溶解を評価した。
【0131】
結果を、先ず、下記の式:
%溶解=(抗体およびNKでの%溶解)−(抗体無しでの%溶解)−(NK無しでの%溶解)
を使用して算出し、次いで相対的パーセンテージとして表し、ここで、100%は、最高濃度のリツキサン(登録商標)で得られた値である。
【0132】
図7(A)において示されたRaji系細胞に対してのEMAB6抗体について得られた結果は、試験される濃度に関係なく、EMAB6抗体によって誘発された細胞傷害性はリツキサン(登録商標)によって誘発されたそれよりも大きいことを実証する。この差異は、特に、低抗体濃度で大きい。したがって、0.5ng/mLで、溶解パーセンテージは、EMAB6およびリツキサン(登録商標)について、それぞれ、96%および4%であった。用量を500倍(250ng/mL)増加させることによって、差異は依然として明らかであり、何故ならば、ADCCの相対的パーセンテージは、EMAB6およびリツキサン(登録商標)について、それぞれ、164%および100%であるからである。図式評価(graphical estimation)(ng/mL)ならびにリツキサン(登録商標)およびEMAB6が同一のE Maxに達すると想定することによって、EC50[E最大値(最高抗体濃度およびプラトーで得られる最大有効性)の50%に対応する抗体濃度]を算出すると、この試験におけるリツキサン(登録商標)EC50/EMAB6 EC50比は、300に等しくなった。
【0133】
キメラEMAB603抗体の細胞傷害性を、EMAB6抗体についてのものと同一の手順を使用して、Raji細胞の存在下で評価した。その活性は、EMAB6抗体のそれと匹敵した(図7(B)を参照のこと)。
【0134】
B−CLLを有する患者由来のリンパ球で、得られた結果(図8に示す)は、試験される濃度に関係なく、EMAB6抗体によって誘発された細胞傷害性はリツキサン(登録商標)によって誘発されたそれよりも大きいことを実証している。Raji細胞について既に観察されたように、この差異は、特に、低抗体濃度で大きい。0.5ng/mL EMAB6の濃度は、500ng/mL リツキサン(登録商標)(即ち、1,000の濃度比)と同一のパーセンテージ溶解を誘発する。5ng/mLで、溶解パーセンテージは、EMAB6およびリツキサン(登録商標)について、それぞれ、269%および9%である。試験した最大用量(500ng/mL)で、差異は依然として非常に大きく、何故ならば、ADCCの相対的パーセンテージが、EMAB6およびリツキサン(登録商標)について、それぞれ、350%および100%あるためである。興味深い結果は、50%溶解を生じる濃度に対応する。この試験において、リツキサン(登録商標)EC50/EMAB6 EC50比は、10,000と評価された(リツキサン(登録商標)およびEMAB6は同一のE Maxに達すると想定しての、EC50についてのng/mLでの図式評価)。
【0135】
したがって、これらの試験において、EMAB6およびEMAB603の細胞傷害活性は、リツキサン(登録商標)のそれよりも遥かに高い。
【0136】
D.CD16の活性化(IL−2分泌)
キメラEMAB6抗体によって誘発されるCD16(FcγRIIIA)の活性化を、Raji細胞またはCLLを有する患者由来のBリンパ球の存在下で測定した。この試験は、ジャーカット−CD16細胞上において発現されるCD16(FcγRIIIA)受容体へ結合しそしてIL−2の分泌を誘発する前記抗体の能力を評価した。抗CD20キメラ抗体リツキサン(登録商標)を、比較のために試験に含める。
【0137】
CD16活性化の測定を、Raji細胞またはCLLを有する患者由来のBリンパ球の存在下、ジャーカット−CD16細胞株に対して、下記の様式で行った。
【0138】
96ウェルプレート中の混合物:50μL抗体溶液(B−CLLを有する患者由来のB
リンパ球については、IMDM+5%FCSで10,000、1,000、100および10ng/mLへ希釈、そしてRaji細胞については、10,000、2,000、1,000、200、100、50および25ng/mLに希釈)、50μL PMA(IMDM+5%FCSで40ng/mLへ希釈した、ホルボールミリステートアセテート(Phorbol Myristate Acetate))、50μL RajiまたはFicol処理後に得られ
るB−CLLを有する患者由来のPBMC(>95% B細胞)(IMDM+5%FCSで6×105/mLまで希釈)、ならびに50μL ジャーカット−CD16細胞(IMDM+5%FCS中20×106/mL)。抗体を含まないコントロールを、すべての試験において含めた。37℃で一晩インキュベーション後、前記プレートを遠心分離し、そして上澄み中に含まれるIL−2を、市販のキット(Quantikine from R/D)を使用して評価した。OD読み取りは、450nmで行った。
【0139】
結果を、初めに、抗体濃度(0〜250ng/mL最終濃度)の関数としてのIL−2レベルとして表し、次いで、相対的パーセンテージとして表し、ここで、100%は、最高試験濃度でリツキサン(登録商標)を用いて得られた値である。
【0140】
図9(A)において示されるRaji系細胞で得られた結果は、EMAB6およびリツキサン(登録商標)の存在下で、ジャーカット−CD16細胞がIL−2を分泌することを実証し、これは、CD16への前記抗体のFc部分の結合を介しての細胞活性化を示す。しかし、EMAB6抗体は、リツキサン(登録商標)抗体よりも遥かに強力な誘発活性(inductive activity)を有する。したがって、6.25ng/mLで、IL−2パーセンテージは、EMAB6およびリツキサン(登録商標)について、それぞれ、112%および21%であった。50ng/mLで、差異は依然として大きく、IL−2のパーセンテージは、それぞれ、112%および65%であった。この差異は、濃度が増加するにつれて小さくなり、EMAB6およびリツキサン(登録商標)についてのIL−2のそれぞれのパーセンテージは、2,500ng/mLで124%および100%である。この試験において、リツキサン(登録商標)EC50/EMAB6 EC50比は、15と評価される(リツキサン(登録商標)およびEMAB6が同一のE Maxに達すると想定しての、EC50についてのng/mLでの図式評価)。
【0141】
これらの結果は、ADCC結果を確認し、両方ともCD16依存性である。それらは、EMAB6抗体のFc部分によってCD16(FcγRIIIA)へ結合することは、強力な細胞活性化が伴い、これは、エフェクター機能の誘導へ導く。
【0142】
Raji細胞の存在下でキメラEMAB603抗体によって誘発されるCD16(FcγRIIIA)の活性化は、EMAB6抗体によって誘発されるそれに匹敵する。
【0143】
B−CLLを有する患者由来のリンパ球で、得られた結果(図10に示す)は、抗CD20リツキサン(登録商標)およびEMAB6の存在下において、ジャーカット−CD16細胞は、IL−2を分泌することを実証し、これは、CD16への前記抗体のFc部分の結合を介しての細胞活性化を示す。しかし、EMAB6抗体は、リツキサン(登録商標)抗体よりも遥かに高い誘発力(inductive ability)を有する。実際に、リツキサン(
登録商標)のIL−2分泌誘発活性は、2.5および25ng/mLの濃度でベースラインに付近であり、一方、EMAB6抗体のそれは顕著である。したがって、25ng/mLで、IL−2パーセンテージは、EMAB6およびリツキサン(登録商標)についてそれぞれ132%および34%であった。最高濃度(2,500ng/mL)で、IL−2パーセンテージは、それぞれ、148%および100%であった。この試験におけるリツキサン(登録商標)EC50/EMAB6 EC50比は、100よりも大きく;それは、300と評価される(リツキサン(登録商標)およびEMAB6が同一のE Maxを達成すると想定しての、EC50についてのng/mLでの図式評価)。
【0144】
結論として、Raji細胞において行った全ての試験は、EMAB6およびEMAB603抗体は、リツキサン(登録商標)とは異なって、非常に細胞傷害性であり、そしてCD16(FcγRIIIA)を発現する細胞の活性化を、特に抵抗体濃度で、誘発することを実証する。他方、同一条件下で、EMAB6の補体依存性細胞傷害活性は、リツキサン(登録商標)のそれと比較して約50%減少する。
【0145】
これらの結果は、B−CLLを有する患者から単離された細胞を使用して行った研究によって確認され、EMAB6抗体が、B−CLLを有する患者由来のBリンパ球へ対して、リツキサン(登録商標)よりも遥かに細胞傷害性であることを示唆している。2つの抗体間の差異は、Raji細胞でよりも、B−CLLを有する患者由来のリンパ球で、より顕著であり、これは、このコンディションについて、リツキサン(登録商標)と比較してEMAB6の顕著な治療利益を実証する。
【0146】
この増加した差異の理由は、中でも、Raji細胞と比較して、B−CLLを有する患者由来のBリンパ球においてはCD20がより低く抗原発現されるためであるかもしれない。
【0147】
Raji細胞から類推して、B−CLLを有する患者由来のリンパ球に対するEMAB6抗体の補体依存性細胞傷害活性は、リツキサン(登録商標)によって誘発されるものよりも低くなければならないことが示唆され得、したがって、従来の補体経路の強力な活性化に付随する望ましくない効果の結果として、インビボにおいて毒性がより低いという利点を示す。
【0148】
実施例4:HPCE−LIFによるEMAB6およびEMAB603グリカンの分析
EMAB6およびEMAB603抗体の重鎖のN−グリカン構造を、HPCE−LIFを使用して分析した。リツキサン(登録商標)の重鎖のN−グリカン構造もまた、比較のために分析した。
【0149】
その目的のために、抗CD20モノクローナル抗体を、Sephadex G−25カラム(HiTrap Desalting,Amersham Biosciences)において脱塩し、エバポレートし、そして50mM β−メルカプトエタノールの存在下で、PNGase F(Glyko)の加水分解緩衝液中に再懸濁した。37℃で16時間インキュベーション後、蛋白質分画を、無水エタノールを添加することによって沈殿させ、そして上澄み(これは、N−グリカンを含有した)をエバポレートした。得られたオリゴ糖を、蛍光色素:APTS(1−アミノ−ピレン−3,6,8−トリスルホネート)を使用して直接標識したか、あるいは特定のエキソグリコシダーゼ(exoglycosidases
)の作用に供し、その後APTSで標識した。得られた標識化オリゴ糖を、N−CHOキャピラリーへ注入し、レーザー誘起蛍光検出(laser-induced fluorescence detection)(HPCE−LIF)を備えるキャピラリー電気泳動によって分離および定量した。
【0150】
フコースレベルの評価を、単離フコシル化形態を加えることによってか、あるいはより詳細には、ノイラミニダーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびN−アセチルヘキソサミニダーゼの同時作用後に行い、これらは、電気泳動図において得られた、フコシル化または非フコシル化五糖[GlcNac2−Man3]に対応する2つのピークを生じた:
【0151】
【表1】
【0152】
フコースレベル(%として表される)を、下記式を使用して算出した:
【0153】
【数1】
【0154】
ガラクトースレベル(%として表される)を、ノイラミニダーゼおよびフコシダーゼの作用後に得られたガラクトースを含有するオリゴ糖形態のパーセンテージを加えることによって、算出した。使用した式は、下記の通りである:
ガラクトースレベル=(G1+G1B)+2×(G2+G2B)
フコース/ガラクトース比を、上述のように算出される、ガラクトースレベルでフコースレベルを割ることによって得る。
【0155】
この分析から(表1を参照のこと)、EMAB6およびEMAB603抗体は、リツキサン(登録商標)(%フコース=93%)と比較してほとんどフコシル化されていない(%フコース<25%)ようである。さらに、EMAB6およびEMAB603についてのFuc/Gal比(フコース/ガラクトース比)は、リツキサン(登録商標)(Fuc/Gal比=1.63)等のCHO細胞において発現される抗体とは異なり、低い(Fuc/Gal比<0.6)。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】抗体EMAB6およびEMAB603の軽鎖カッパのキメラ化のために使用したCKHuベクターの概略図。
【図2】抗体EMAB6の産生のために使用した軽鎖pEF−EMAB6−K発現ベクターの概略図。
【図3】抗体EMAB6およびEMAB603の重鎖のキメラ化のために使用したG1Huベクターの概略図。
【図4】抗体EMAB6の産生のために使用した重鎖pEF−EMAB6−H発現ベクターの概略図。
【図5】Raji細胞上に発現されるCD20へのCAT−13.6E12(CAT13)によって産生されたマウス抗体の結合についての、キメラEMAB6抗体による拮抗。
【図6】Raji細胞に対する抗CD20抗体の補体依存性細胞傷害活性。(A)リツキサン(登録商標):白三角、EMAB6:黒菱形。上澄みへ放出された細胞内LDHを測定することによって、細胞溶解を評価する。結果をパーセンテージ溶解として表し、ここで、100%は、リツキサン(登録商標)(5,000ng/mL 抗CD20抗体)で得られた値である。5回の試験の平均値。(B)EMAB6(黒菱形)およびEMAB603(白菱形)の補体依存性細胞傷害活性の比較。
【図7】Raji細胞の存在下で抗CD20抗体によって誘発されたADCC活性。(A)リツキサン(登録商標):白三角、EMAB6:黒菱形。上澄みへ放出された細胞内LDHを測定することによって、細胞溶解を評価する。結果をパーセンテージ溶解として表し、ここで、100%は、リツキサン(登録商標)(250ng/mL 抗CD20抗体で)で得られた値である。3回の試験の平均値。(B)EMAB6(黒菱形)およびEMAB603(白菱形)によって誘発されたADCCの比較。
【図8】B−CLLを有する患者由来のBリンパ球の存在下で抗CD20抗体によって誘発されるADCC活性。リツキサン(登録商標):白三角、EMAB6:黒菱形。E/T比=15。上澄みへ放出されたカルセインを測定することによって、細胞溶解を評価する。結果をパーセンテージとして表し、ここで、100%は、リツキサン(登録商標)(500ng/mL 抗CD20抗体で)で得られた値である。4人の異なる患者に対応する4回の試験の平均値。
【図9】Raji細胞の存在下で抗CD20抗体によって誘発されたCD16(FcγRIIIA)の活性化。(A)リツキサン(登録商標):白三角、EMAB6:黒菱形。結果をIL−2のパーセンテージとして表し(ELISAを使用して上澄みにおいて測定する);ここで、100%は、リツキサン(登録商標)(2,500ng/mL 抗CD20抗体)で得られた値である。4回の試験の平均値。(B)EMAB6(黒菱形)およびEMAB603(白菱形)によって誘発されたCD16(FcγRIIIA)の活性化間の比較。
【図10】B−CLLを有する患者由来のBリンパ球の存在下で抗CD20抗体によって誘発されるCD16(FcγRIIIA)の活性化。リツキサン(登録商標):白三角、EMAB6:黒菱形。結果をIL−2のパーセンテージとして表し(ELISAを使用して上澄みにおいて測定する);ここで、100%は、リツキサン(登録商標)(2,500ng/mL 抗CD20抗体で)で得られた値である。12人の患者の平均値。
【図11】ジャーカット−CD16細胞(FcγRIIIA)の存在下でCAT−13.6E12マウス抗体によって誘発されたIL−2の産生。
【図12】抗体EMAB603の産生のために使用された重鎖および軽鎖pRSV−HL−EMAB603発現ベクターの概略図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD20抗原に対するモノクローナル抗体に関し、ここで、軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)と少なくとも70%配列同一性を共有する配列によってコードされ、その重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)と少なくとも70%同一性を共有する配列によってコードされ、そして軽鎖および重鎖の定常領域は、非マウス種由来の定常領域であり、ならびに免疫エフェクター細胞中のFcγRIII受容体を活性化するための、および特に白血病またはリンパ腫の治療用の、薬物の製造のための、このような抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イントロダクションおよび先行技術
CD20抗原は、成熟Bリンパ球の表面に存在する35〜37kDaの分子量を有する疎水性膜貫通蛋白質である(Valentine et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84(22): 8085-8089;Valentine et al. (1989) J. Biol. Chem., 264(19): 11282-11287)。それは、初期プレB段階(early pre-B stage)からプラズマ細胞への分化(この段階で
、この発現は消失する)のBリンパ球細胞(B細胞)の発達の間、発現される。CD20抗原は、正常なBリンパ球および悪性のB細胞の両方に存在する。より詳細には、CD20抗原は、大抵の表現型のBリンパ腫(80%リンパ腫)において発現され:例えば、それは、90%超の非ホジキンB細胞リンパ腫(non-Hodgkin’s B-cell lymphomas)(N
HL)および95%超のB型慢性リンパ性白血病(B-type Chronic Lymphocytic Leukaemia)(B−CLL)において発現される。CD20抗原は、造血幹細胞およびプラズマ細胞において発現されない。
【0003】
CD20の機能は、まだ完全には解明されていないが、それは、カルシウムチャネルとして機能し得、そしてBリンパ球分化(Golay et al. (1985) J. Immunol. 135(6): 3795-3801)および増殖(Tedder et al. (Aug 1986) Eur. J. Immunol. 16(8): 881-887)の
第1段階の調節に関与し得る。
【0004】
したがって、B細胞の活性化および増殖におけるその役割に関して、いくらかの不明確が存在するままであるが、CD20抗原は、その局在のため、CD20を特異的に認識する抗体を使用しての、腫瘍性B細胞が関与するコンディション(例えば、NHLまたはB−CLL等)の治療についての重要な標的である。さらに、この抗原は、発現調節または多型が知られていない膜蛋白質であるので、理想的な標的である。
【0005】
非放射性物質で標識された抗CD20モノクローナル抗体、リツキサン(Rituxan)(
登録商標)(Genentech)だけが、B細胞リンパ腫の治療について現在市販されている。それは、NHLを有する患者において、化学療法と組み合わせた場合、有望な臨床結果を示している。しかし、その有効性は、それが単独で使用される場合、可変性かつしばしばあまり高くないままである(Teeling et al. (2004) Blood 104(6): 1793-1800
)。
【0006】
さらに、リツキサン(登録商標)は、B−CLLにおいてB細胞に対してあまり高くない効果しか有さない。この有効性の低い程度は、種々の現象と関連付けられている:一方で、B−CLL B細胞は、比較的少ない量でしかCD20を発現せず、そして他方で、リツキサン(登録商標)は、インビトロで、これらの細胞に対して非常に低いADCC(抗体依存性細胞性細胞傷害性(Antibody-Dependent Cellular Cytotoxicity))活性レベルを誘発するだけである。これらの2つの観察は、腫瘍におけるCD20の発現レベル(
定量的フローサイトメトリーで)と治療に対する応答との間に観察された相関関係を説明するかもしれない。
【0007】
B−CLLは、西洋諸国において白血病の最も一般的な形態であり、そして高用量化学療法治療は、時々、不十分であると判り、かつ、造血形成不全(haematopoietic aplasia)および免疫不全へ導く副作用を伴うので、モノクローナル抗体は、革新的なアプローチであるようである。したがって、CD20抗原を特異的に標的化することができ、かつ、限られた程度でしかこの抗原を発現しない腫瘍細胞(例えば、B−CLL)が破壊されることを可能にする、抗体を開発することは、最重要である。
【0008】
B−CLLの治療のためにGenmab(Teeling et al. (2004) Blood 104(6): 1793-1800)によって提案された、抗体2F2および7D8は、リツキサン(登録商標)によ
って誘発されたそれよりも大きい、補体を活性化する能力を有する。しかし、これらの抗体は、リツキサン(登録商標)のそれと類似する、低ADCC活性を有する。しかし、何人かの臨床医は、前記抗体は、広範囲の非特異的活性(炎症、アレルギーまたは血管反応等)を有する分子(特に、アナフィラトキシン)の産生へと導く活性化システムを誘発するので、前記補体活性化は有害な副作用の原因であることを示した。さらに、これらの抗体は、未だ研究段階にあり、そしてそれらの臨床効果は依然として評価されなければならない。
【0009】
出願FR03/02713(WO2004/029092)において、本出願人は、YB2/0系において産生され得、かつ、リツキサン(登録商標)と比較して高ADCC活性およびジャーカット−CD16細胞による高レベルのIL−2産生を誘発するその能力のために選択された、抗CD20抗体を記載している。現在入手可能な免疫療法を使用して治療されるB細胞疾患の範囲が拡大されることを可能にする、新規の抗CD20抗体についての顕著な必要性が存在し;このことは、CD20抗原が、関与するB細胞の集団において低い程度に発現され、そして満足のいく免疫治療が存在しないB細胞疾患について、特にそうである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この目的を持って、本出願人は、リツキサン(Rituxan)(登録商標)と比較して特に
高いADCC活性を示す新規のCD20抗体を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
説明
したがって、本発明の第1目的は、CD20抗原に対するモノクローナル抗体に関し、ここで、軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)と少なくとも70%同一性を共有する配列によってコードされ、重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)と少なくとも70%同一性を共有する配列によってコードされ、そして軽鎖および重鎖の定常領域は、非マウス種由来の定常領域である。
【0012】
抗体は、ジスルフィド結合によって共に連結された重鎖および軽鎖から作製される。各鎖は、N末端位における、該抗体が指向される(directed against)抗原に対して特異的な可変領域(またはドメイン)(軽鎖については再構成されたV−J遺伝子および重鎖についてはV−D−J遺伝子によってコードされる)と、C末端位における、定常領域(軽鎖については単一のCLドメインまたは重鎖についてはいくつかのドメインから作製される)とから作製される。
【0013】
本発明の目的のために、表現「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成
物」は、同一かつ独特の特異性を有する抗体分子の調製物を指す。
【0014】
軽鎖および重鎖における可変領域が軽鎖および重鎖の定常領域のそれとは異なる種由来である、本発明に従う抗体は、「キメラ」抗体と呼ばれる。
【0015】
マウス核酸配列(配列番号5および配列番号7)は、それぞれ、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(DSMZ)において番号ACC 474で
入手可能な、マウスハイブリドーマCAT−13.6E12によって産生される抗体の軽鎖の各々の可変ドメインおよび重鎖の各々の可変ドメインをコードする。このハイブリドーマは、CD20に対するマウスIgG2a,κ−タイプモノクローナル抗体を産生する。
【0016】
これらのマウス配列は、本発明に従う抗体の可変領域の配列を得るために選択され、何故ならば、CD20抗原(該抗原は、リツキサン(登録商標)によっても認識される)についてのCAT−13.6E12マウス抗体の特異性のためである。本発明に従う抗体の可変領域は、配列(配列番号5および配列番号7)と少なくとも70%同一性を共有し、この配列同一性は、本発明に従う抗体に、CAT−13.6E12マウス抗体のそれと同一である特異性を提供する。好ましくは、この配列同一性はまた、本発明に従う抗体に、CAT−13.6E12マウス抗体のそれと同一である標的に対する親和性を提供する。
【0017】
さらに、本出願人は、驚くべきことに、CAT−13.6E12マウス抗体は、FcγRIIIA受容体のエクトドメインを発現するジャーカット−CD16細胞(Jurkat-CD16 cells)の存在下でIL−2の分泌を誘発する能力を有することを示し(図11に示さ
れる通り)、これは、該マウス抗体とヒトCD16(FcγRIIIA)との強力な結合を示し、このことも、本出願人がした選択を動機付けた。
【0018】
さらに、本発明に従う抗体において、軽鎖および重鎖の定常領域は、非マウス種由来である。この点において、全ての非マウス哺乳動物種(species)および科(families)、
特に、ヒト、サル、マウス(murine)(ネズミ(mice)以外)、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌならびにトリが使用され得る。
【0019】
本発明に従う抗体は、当業者に周知の、標準的な組換えDNA技術を使用して、そしてより具体的には、例えばMorrison et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 6851-6855(ここで、組換えDNA技術は、非ヒト哺乳動物由来の抗体における重鎖の定常領
域および/または軽鎖の定常領域を、ヒト免疫グロブリンにおける対応の領域で置換するために使用されている)に記載される、「キメラ」抗体作製技術を使用して、作製され得る。1つの特定の実施形態を以下に例示する。
【0020】
有利には、本発明に従う抗体の軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)と少なくとも80%同一性を共有する配列によってコードされ、そして本発明に従う抗体の重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)と少なくとも80%同一性を共有する配列によってコードされる。
【0021】
有利には、本発明に従う抗体の軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)と少なくとも90%同一性を共有する配列によってコードされ、そして本発明に従う抗体の重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)と少なくとも90%同一性を共有する配列によってコードされる。
【0022】
有利には、本発明に従う抗体の軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)と少なくとも95%同一性を共有する配列によってコードされ、そして本発明に従う抗
体の重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)と少なくとも95%同一性を共有する配列によってコードされる。
【0023】
有利には、本発明に従う抗体の軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)と少なくとも99%同一性を共有する配列によってコードされ、そして本発明に従う抗体の重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)と少なくとも99%同一性を共有する配列によってコードされる。
【0024】
有利には、本発明はまた、前記重鎖および軽鎖の可変領域が、1以上のアミノ酸の1以上の置換、挿入または欠失を含む任意の抗体に関し、但し、これらの配列修飾は、標的に対する抗体の特異性または親和性に影響を与えること無しに、上記で規定した配列同一性パーセンテージレベルに適合する。
【0025】
本発明の抗体はまた、FR(フレームワーク)領域(「骨格(backbone)」領域としても公知の、可変領域の高度に保存された領域)と結合された、CAT−13.6E12抗体のCDR(相補性決定領域)を含む任意の抗体である。このような抗体は、CAT−13.6E12マウス抗体のそれと非常に類似している、そして好ましくは同一である、親和性および特異性を有する。
【0026】
好ましくは、本発明に従う抗体の軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)またはマウス核酸配列(配列番号25)によってコードされ、そして本発明に従う抗体の重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)によってコードされる。
【0027】
したがって、本発明の1実施形態において、本発明に従う抗体は、CD20抗原に対するモノクローナル抗体であり、ここで、軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)によってコードされ、重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)によってコードされ、そして軽鎖および重鎖の定常領域は、非マウス種由来の定常領域である。
【0028】
したがって、第2の実施形態において、本発明に従う抗体は、CD20抗原に対するモノクローナル抗体であり、ここで、軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号25)によってコードされ、重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)によってコードされ、そして軽鎖および重鎖の定常領域は、非マウス種由来の定常領域である。
【0029】
両方の実施形態において、抗体は、それらのヌクレオチド配列において、単一ヌクレオチド異なる:それぞれシトシンおよびアデニンに対応する、配列番号5および配列番号25における318位に局在するヌクレオチド。
【0030】
これらの実施形態に従う本発明の抗体は、標的抗原CD20について特異性および親和性を有し、これらは、CAT−13.6E12マウス抗体のそれらに匹敵しており、そして好ましくは同一である。
【0031】
好ましくは、本発明に従う抗体の軽鎖の各々および重鎖の各々の定常領域は、ヒト定常領域である。本発明のこの好ましい実施形態において、抗体の免疫原性は、ヒトにおいて減少され、そしてしたがって、該抗体の有効性は、ヒトに対する治療投与の際に改善される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の抗体の軽鎖の各々の定常領域は、κタイプのものである。任意のアロタイプ、例えば、Km(1)、Km(1、2)、Km(1、
2、3)またはKm(3)が本発明の実施に好適であり、しかし好ましいアロタイプはKm(3)である。
【0033】
別のさらなる実施形態によれば、本発明に従う抗体の軽鎖の各々の定常領域は、λタイプのものである。
【0034】
本発明の1つの特定の局面によれば、そして特に、本発明に従う抗体の軽鎖の各々および重鎖の各々の定常領域がヒト領域である場合、該抗体の重鎖の各々の定常領域は、γタイプのものである。この実施形態(alternative)によれば、該抗体の重鎖の各々の定常
領域は、γ1、γ2またはγ3タイプのもの(これら3つの定常領域タイプは、ヒト補体に結合するという特徴を示す)、あるいはγ4タイプのものでさえあり得る。重鎖の各々についてγタイプ定常領域を有する抗体は、IgGクラスに属する。免疫グロブリンG(IgG)は、ジスルフィド結合によって共に連結された、2つの重鎖および2つの軽鎖から構成されたヘテロ二量体である。各鎖は、N末端位においては、抗体が指向される抗原に特異的な可変領域またはドメイン(軽鎖については再構成されたV−J遺伝子および重鎖についてはV−D−J遺伝子によってコードされる)から、そしてC末端においては、定常領域(軽鎖については単一のCLドメインから、あるいは重鎖については3つのドメイン(CH1、CH2およびCH3)から構成される)から、構成されている。可変ドメインならびに重鎖のCH1ドメインおよび軽鎖のCLドメインを結合させることにより、Fabフラグメントが構成され、これらは、高度にフレキシブルなヒンジ領域を介してFc領域へ連結されており、各Fabフラグメントをその抗原標的へ結合させ、一方、抗体のエフェクター特性についてのメディエーターである、Fc領域は、FcγRおよびC1q受容体等のエフェクター分子へアクセス可能な状態のままである。CH2球状ドメインおよびCH3球状ドメインの両方から構成されるFc領域は、CH2ドメインでグリコシル化されており、Asn279へ連結されたラクトサミン型二分岐N−グリカン(lactosamine-type biantennary N-glycan)が、前記2つの鎖の各々に存在している。
【0035】
好ましくは、前記抗体の重鎖の各々の定常領域はγ1タイプのものであり、何故ならば、このような抗体は、最も多数の(ヒト)個体においてADCC活性を誘発する能力を示すためである。この点で、任意のアロタイプ、例えば、G1m(3)、G1m(1、2、17)、G1m(1、17)またはG1m(1、3)が、本発明の実施のために好適である。好ましくは、アロタイプはG1m(1、17)である。
【0036】
本発明の1つの特定の局面によれば、前記抗体の重鎖の各々の定常領域は、γ1タイプのものであり、そしてヒト核酸配列(配列番号23)によってコードされ、軽鎖の各々の定常領域は、ヒト核酸配列(配列番号21)によってコードされる。したがって、このような抗体は、マウス可変領域と、γ1タイプ重鎖を含むヒト定常領域とを含む。したがって、この抗体は、IgG1サブクラスに属する。本発明に従う抗体の該実施形態によれば、該抗体は、2つの軽鎖[これらの可変ドメインは、マウス核酸配列(配列番号5)またはマウス核酸配列(配列番号25)によってコードされ、これらのヒト定常領域は、核酸配列(配列番号21)によってコードされる]、ならびに2つの重鎖[これらの可変ドメインは、マウス核酸配列(配列番号7)によってコードされ、そしてこれらの定常領域は、ヒト核酸配列(配列番号23)によってコードされる]を有する。
【0037】
優先的には、本発明に従う抗体の軽鎖の各々は、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号13)またはマウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号27)によってコードされ、そして重鎖の各々は、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号19)によってコードされる。前記抗体の軽鎖の各々をコードするマウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号13)は、前記抗体の軽鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号5)を、前記抗体の軽鎖の各々の定常領域をコードするヒト核酸配列(配列番号21)に融合すること
によって得られる。
【0038】
前記抗体の軽鎖の各々をコードするマウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号27)は、前記抗体の軽鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号25)を、前記抗体の軽鎖の定常領域をコードするヒト核酸配列(配列番号21)に融合することによって得られる。
【0039】
前記抗体の重鎖の各々をコードするマウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号19)は、前記抗体の重鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号7)を、前記抗体の重鎖の各々の定常領域をコードするヒト核酸配列(配列番号23)に融合することによって得られる。
【0040】
本発明の特定の局面によれば、前記抗体の軽鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号13)によってコードされ、そして重鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号19)によってコードされる場合、核酸配列(配列番号13)から推定される軽鎖の各々のペプチド配列は、配列(配列番号14)であり、そして核酸配列(配列番号19)から推定される重鎖の各々のペプチド配列は、配列(配列番号20)である。
【0041】
本発明のさらに特定の局面によれば、前記抗体の軽鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号27)によってコードされ、そして重鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号19)によってコードされる場合、核酸配列(配列番号27)から推定される軽鎖の各々のペプチド配列は、配列(配列番号28)であり、そして核酸配列(配列番号19)から推定される重鎖の各々のペプチド配列は、配列(配列番号20)である。
【0042】
ペプチド配列(配列番号14および配列番号28)は、これら2つの配列上の106位に存在するアミノ酸だけが異なる。106位に局在するアミノ酸は、配列(配列番号28)においてはリシン(K)であり;それは、配列(配列番号14)においてはアスパラギン(N)である。
【0043】
本発明はまた、マウス−ヒトキメラ核酸配列によってコードされる軽鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号13)と少なくとも70%相同性または同一性を共有し、そして、マウス−ヒトキメラ核酸配列によってコードされる重鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号19)と少なくとも70%相同性または同一性を共有する、抗体に関し、これらの修飾は、該抗体特異性にも、あるいはADCC(抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(Antibody-Dependent Cell-mediated Cytotoxicity)活性)等のそのエ
フェクター活性(effector activities)にも悪影響を与えない。
【0044】
特に有利な様式において、本発明の抗体は、ラットハイブリドーマ細胞株によって産生される。本発明に従う抗体を産生する該株は、重要な特徴であり、何故ならば、それは、その特定の性質の確認(certain)を該抗体に提供するからである。実際に、抗体の発現
方法は、翻訳後修飾、特にグリコシル化修飾(これは、細胞系ごとに変化し得る)を誘発し、そしてしたがって、同一の一次構造を有する抗体に異なる機能的特性を提供する。
【0045】
好ましい実施形態において、抗体は、ラットハイブリドーマYB2/0細胞株(ATCC番号CRL−1662でAmerican Type Culture Collectionにおいて登録された、細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20)において産生される。この株は、例えばCHO細胞において産生される同一の一次構造を有する抗体と比較して改善されたADCC活性を有する抗体を産生するその能力のために、選択された。
【0046】
特定の実施形態によれば、本発明に従う好ましい抗体は、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM, Institut Pasteur, 25 rue du Docteur Roux, 75724
Paris Cedex 15, France)において、登録番号CNCM I−3314で、2004年
11月8日に登録された、クローンR509によって産生された、抗体EMAB6である。EMAB6抗体の軽鎖の各々は、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号13)によってコードされ、そして重鎖の各々は、マウス−ヒトキメラ核酸(配列番号19)によってコードされる。このキメラ抗体は、CD20に結合することにおいて、CAT−13.6E12マウス抗体と拮抗し、そしてリツキサン(登録商標)のそれよりも遥かに高い細胞傷害活性を有し、これは、これらの抗体の重鎖のN−グリカンの特異的なグリコシル化に一部寄与し得る(実施例4を参照のこと)。実際に、R509クローンの特徴は、0.6未満のフコース/ガラクトース比を有するEMAB6抗体組成をそれが産生することであり、これは、特許出願FR 03 12229において、強力なADCC活性を該抗体に提供するに最適であると示された。したがって、この抗体は、標的化される細胞がCD20を発現するコンディションの処置のための治療ツールとして特に興味深い。
【0047】
さらなる特定の実施形態によれば、本発明に従う別の好ましい抗体は、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM, Institut Pasteur, 25 rue du Docteur
Roux, 75724 Paris Cedex 15, France)において、登録番号CNCM I−3529で
、2005年11月29日に登録された、クローンR603によって産生された、抗体EMAB603である。EMAB603抗体の軽鎖の各々は、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号27)によってコードされ、そして重鎖の各々は、マウス−ヒトキメラアミノ酸配列(配列番号19)によってコードされる。このキメラ抗体は、CD20に結合することにおいて、CAT−13.6E12マウス抗体と拮抗し、そしてリツキサン(登録商標)のそれよりも遥かに高い細胞傷害活性を有し、これは、これらの抗体の重鎖のN−グリカンの特異的なグリコシル化に一部寄与し得る(実施例3を参照のこと)。実際に、R603クローンの特徴は、0.6未満のフコース/ガラクトース比を有するEMAB603抗体組成物をそれが産生することであり(実施例4を参照のこと)、これは、特許出願FR 03 12229において、強力なADCC活性を該抗体に提供するに最適であると示された。したがって、この抗体は、標的化される細胞がCD20を発現するコンディションの処置のための治療ツールとして特に興味深い。
【0048】
本発明の別の目的は、配列(配列番号12)を有する、本発明に従う抗体の軽鎖の発現のためのベクターpEF−EMAB6−Kに関する。このベクターは、本発明に従う抗体を発現させるベクターであり、この軽鎖は核酸配列(配列番号13)によってコードされ、この推定ペプチド配列は配列(配列番号14)である。このベクターは、前記抗体の軽鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号5)および前記抗体の軽鎖の各々の定常領域をコードする核酸配列(配列番号21)が、宿主細胞中に導入されそして維持されるように挿入されている核酸分子である。それは、この発現に必須である配列(プロモータ、ポリアデニル化配列、選択遺伝子)を有しているので、外来核酸フラグメントを宿主細胞中で発現させることを可能にする。このようなベクターは、当業者に周知であり、そして、暗黙の限定無しに、アデノウイルス、レトロウイルス、プラスミドまたはバクテリオファージであり得る。さらに、任意の哺乳動物細胞、例えば、YB2/0、CHO、CHO dhfr−(例えば、CHO DX B11、CHO DG44)、CHO Lec13、SP2/0、NSO、293、BHKまたはCOSが、宿主細胞として、即ち、本発明に従う抗体を発現する細胞として使用され得る。
【0049】
本発明の別の目的は、配列(配列番号18)を有する、本発明に従う抗体の重鎖の発現のためのベクターpEF−EMAB6−Hに関する。このベクターは、本発明に従う抗体を発現させるベクターであり、この重鎖は核酸配列(配列番号19)によってコードされ、この推定ペプチド配列は配列(配列番号20)である。このベクターは、前記抗体の重
鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号7)および前記抗体の重鎖の各々の定常領域をコードするヒト核酸配列(配列番号23)が、宿主細胞中に導入されそして維持されるように挿入されている核酸分子である。それは、この発現に必須である配列(プロモータ、ポリアデニル化配列、選択遺伝子)を有しているので、これらの外来核酸フラグメントを宿主細胞中で発現させることを可能にする。ちょうど前述したように、該ベクターは、例えば、プラスミド、アデノウイルス、レトロウイルスまたはバクテリオファージであり得、そして該宿主細胞は、任意の哺乳動物細胞、例えば、YB2/0、CHO、CHO dhfr−(例えば、CHO DX B11、CHO DG44)、CHO Lec13、SP2/0、NS0、293、BHKまたはCOSであり得る。
【0050】
YB2/0細胞中においてpEF−EMAB6−KおよびpEF−EMAB6−Hベクターを共発現させることによって産生される抗体は、クローンR509(CNCMにおいて登録番号CNCM I−3314で登録された)によって産生された、抗CD20 EMAB6抗体によって例示される。この抗体は、B−CLLを有する患者由来の細胞(この上にCD20抗原がより低レベルで発現される)、およびモデルとして使用されるRaji細胞(これは、B−CLLを有する患者由来の細胞と比較してより高い密度でCD20を発現する)の両方において、リツキサン(登録商標)によって誘発されるそれよりも大きい細胞傷害性を誘発する。さらに、EMAB6抗体は、ジャーカット−CD16細胞(Jurkat-CD16 cells)においてIL−2(インターロイキン2)の分泌を誘発し、これ
は、リツキサン(登録商標)よりも遥かに高いレベルである。EMAB6抗体は、上述のベクターが発現されるのを可能にする培養培地中および条件下でR509クローンを増殖させることによって産生され得、したがって、それは、CD20抗原が関与するB細胞疾患(より具体的には、B−CLL)の診断および治療を促進するため、ならびにこの分野における研究のための非常に興味深いツールである。
【0051】
本発明の特定の目的は、本発明に従う抗体を発現する安定細胞株である。
【0052】
有利には、本発明に従う抗体を発現する安定細胞株は、以下からなる群から選択される:SP2/0、YB2/0、IR983F、ヒト骨髄腫、例えば、Namalwa、あるいはヒト起源の任意の他の細胞、例えば、PERC6、CHO株、特に、CHO−K−1、CHO−Lec10、CHO−Lec1、CHO−Lec13、CHO Pro−5、CHO dhfr−(CHO DX B11、CHO DG44)、あるいは以下から選択される他の株:Wil−2、Jurkat、Vero、Molt−4、COS−7、293−HEK、BHK、K6H6、NSO、SP2/0−Ag 14、およびP3X63Ag8.653。
【0053】
使用される株は、好ましくは、ラットハイブリドーマYB2/0細胞株である。この株は、例えばCHO細胞において産生される同一の一次構造を有する抗体に対して改善されたADCC活性を有する抗体を産生するその能力のために、選択された。
【0054】
本発明の1つの特定の局面によれば、本発明に従う抗体を発現しそしてより詳細には上述の群から選択される安定細胞株は、前述の2つのpEF−EMAB6−KおよびpEF−EMAB6−H発現ベクターを組み込んでいる。
【0055】
本発明の1つの特定の局面は、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)において登録番号CNCM I−3314で登録された、クローンR50
9に関する。
【0056】
本発明の1つの特定の局面は、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes(CNCM)において登録番号CNC I−3529で登録された、クローンR603
に関する。
【0057】
本発明の別の目的は、本発明に従う抗体の重鎖をコードする配列(配列番号19)を有するDNAフラグメントに関する。マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号19)は、前記抗体の重鎖の各々をコードする。それは、前記抗体の重鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号7)を、前記抗体の重鎖の各々の定常領域をコードするヒト核酸配列(配列番号23)へ融合することによって得られる。
【0058】
本発明の別の特定の目的は、本発明に従う抗体の軽鎖をコードする配列(配列番号13)を有するDNAフラグメントに関する。マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号13)は、前記抗体の軽鎖の各々をコードする。それは、前記抗体の軽鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号5)を、前記抗体の軽鎖の各々の定常領域をコードするヒト核酸配列(配列番号21)へ融合することによって得られる。
【0059】
本発明の別の特定の目的は、本発明に従う抗体の軽鎖をコードする配列(配列番号27)を有するDNAフラグメントに関する。マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号27)は、前記抗体の軽鎖の各々をコードする。それは、前記抗体の軽鎖の各々の可変ドメインをコードするマウス核酸配列(配列番号25)を、前記抗体の軽鎖の各々の定常領域をコードするヒト核酸配列(配列番号21)へ融合することによって得られる。
【0060】
本発明の1つの特定の目的は、エフェクター免疫細胞(effector immune cells)のF
cγRIIIA受容体をインビボまたはインビトロで活性化するための、本発明に従う抗体の使用に関する。実際に、本発明の抗体は、細胞傷害性であるという特徴および利点を有する。したがって、それらは、それらのFc領域でFcγRIIIA受容体を活性化する能力を示す。これはかなり興味深く、何故ならば、この受容体は、「エフェクター細胞(effector cells)」として公知の細胞の表面において発現されるからである:該エフェクター細胞によって行われる該抗体のFc領域のその受容体への結合は、FcγRIIIA受容体の活性化、および標的細胞の破壊を生じさせる。エフェクター細胞は、例えば、NK(ナチュラルキラー)細胞、マクロファージ、好中球、CD8リンパ球、Tγδリンパ球、NKT細胞、好酸球、好塩基球、または肥満細胞である。
【0061】
1つの特定の局面において、本発明の抗体は、薬物として使用される。有利には、このような薬物は、標的細胞がCD20を発現する細胞であるコンディション(例えば、悪性B細胞リンパ腫)の処置に意図される。
【0062】
1つの有利な局面によれば、本発明に従う抗体は、白血病またはリンパ腫の治療用の薬物を製造するために使用される。
【0063】
本発明の1つの特定の目的は、以下からなる群から選択される病状の治療用の薬物の製造のための、本発明に従う抗体の使用である:急性Bリンパ芽球性白血病(acute B lymphoblastic leukaemia)、B細胞リンパ腫(B-cell lymphoma)、成熟B細胞リンパ腫(mature B-cell lymphoma)、例えば、B型慢性リンパ性白血病(B-type Chronic Lymphocytic Leukaemia)(B−CLL)、小細胞性B細胞リンパ腫(small B-cell lymphoma)、
B細胞前リンパ性白血病(B-cell prolymphocytic leukaemia)、リンパ球プラズマ細胞
性リンパ腫(lymphoplasmocytic lymphoma)、マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma)、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)、辺縁層MALT型リンパ腫(marginal zone MALT-type lymphoma)、単球様B細胞を含むまたは含まないリンパ節辺縁層リン
パ腫(lymph node marginal zone lymphoma with or without monocytoid B cells)、脾性辺縁層リンパ腫(絨毛性リンパ球を含むまたは含まない)(splenic marginal zone lymphoma (with or without villous lymphocytes))、トリコロイコサイティック白血病(
tricholeucocytic leukaemia)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma)、バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma)、ならびに自己免疫疾患を含む、Bリンパ系細胞が関与する任意の免疫不全疾患。
【0064】
本発明の別の目的は、リンパ性白血病の治療用の薬物の製造のための、本発明に従う抗体の使用である。
【0065】
本発明の別の目的は、B型慢性リンパ性白血病(B−CLL)の治療用の薬物の製造のための、本発明に従う抗体の使用である。さらに、本発明に従う抗体は、CD20がB細胞においてあまり強く発現されていないコンディション、そして好ましくは、B−CLL(B型慢性リンパ性白血病)の治療に特によく適している。この点において、本発明に従う抗体は、白血病またはリンパ腫の治療用の薬物の製造のために、1以上のさらなる抗体、例えば、リンパ系細胞(lymphoid cells)において発現される1以上のさらなる抗原(例えば、抗原 HLA−DR、CD19、CD23、CD22、CD80、CD32およびCD52等)に対するモノクローナル抗体、と組み合わせて使用され得る。したがって、リンパ系細胞上で多量に発現される分子、CD52抗原を標的にし、そしてホストエフェクター機構(host effector mechanisms)(補体結合、抗体依存性細胞傷害性)を動員することによって細胞溶解を誘発するヒト化抗体Campath−1H(登録商標)(アレンツズマブ(alentuzumab)、MabCampathR(登録商標))が、CLLの治
療において使用される(Moreton P., Hillmen P. (2003) Semin. Oncol. 30(4): 493-501;Rawstron A.C. et al, (2004) Blood 103(6): 2027-2031;Robak T. (2004) Leuk. Lymphoma 45(2): 205-219;Stanglmaier M. et al, (2004) Ann. Hematol. 83(10): 634-645)。臨床試験はまた、CLLを有する患者における抗原HLA−DR、CD22、CD23、CD80を標的にする抗体または免疫毒素(immunotoxins)を評価しているところである(Mavromatis B.H., Cheson B.D. (2004) Blood Rev. 18(2): 137-148;Mavromatis B., Cheson B.D. (2003) J. Clin. Oncol. 21(9): 1874-1881, Coleman M. et al, (2003) Clin. Cancer Res. 9: 3991S-3994S;Salvatore G. et al, (2002) Clin. Cancer Res.
8: 995-1002)。
【0066】
さらなる実施形態において、本発明に従う抗体は、NK細胞、NKT(ナチュラルキラーT)細胞、Tγδリンパ球、マクロファージ、単球または樹状細胞等の、FcγRsを発現する細胞と組み合わせて、即ち、細胞性治療(cellular therapy)と組み合わせて、使用され得る(Peller S., Kaufman S. (1991) Blood 78: 1569, Platsoucas C.D. et al, (1982) J. Immunol. 129: 2305;Kimby E. et al, (1989) Leukaemia 3(7): 501-504;Soorskaar D. et al, Int. Arch. Allery Appl. Immunol. 87(2): 159-164; Ziegler H.W. et al, (1981) Int. J. Cancer 27(3): 321-327;Chaperot L. et al, (2000) Leukaemia 14(9): 1667-1677;Vuillier F., Dighiero G. (2003) Bull. Cancer. 90(8-9): 744-750)。
【0067】
さらに、本発明に従う抗体は、有利なことに、患者へ投与される用量を減少させる:有利なことに、患者へ投与される抗体用量は、リツキサン(登録商標)の用量よりも、2倍、5倍、または10倍、25倍、50倍、または特に有利なことに100倍少ない。有利なことに、患者に投与される抗体用量は、リツキサン(登録商標)の用量よりも、2〜5倍、5〜10倍、5〜25倍、5〜50倍、または5〜100倍少ない。したがって、本発明に従う抗体、例えばEMAB6抗体は、有利には、187.5mg/m2、75mg/m2、37.5mg/m2、15mg/m2、7.5mg/m2未満、または特に有利には、3.75mg/m2未満の用量で投与され得る。投与される用量は、有利には、187.5mg/m2〜75mg/m2、または75mg/m2〜37.5mg/m2、75mg/m2〜15mg/m2、75mg/m2〜7.5mg/m2、あるいは75mg/m2〜3.75mg/m2である。
【0068】
したがって、本発明はまた、本発明に従う抗体を含む有効量の組成物を患者へ投与することを含む、標的細胞がCD20を発現する細胞である疾患(例えば、悪性B細胞リンパ腫)を治療するための方法に関する。より詳細には、該治療法は、特に、白血病またはリンパ腫の治療に適している。なおより詳細には、それは、有効量の本発明に従う抗体または抗体組成物を投与することを含む、以下から選択される病状を治療するための方法である:急性Bリンパ芽球性白血病(acute B lymphoblastic leukaemia)、B細胞リンパ腫
(B-cell lymphoma)、成熟B細胞リンパ腫(mature B-cell lymphoma)、例えば、B型
慢性リンパ性白血病(B-type Chronic Lymphocytic Leukaemia)(B−CLL)、小細胞性B細胞リンパ腫(small B-cell lymphoma)、B細胞前リンパ性白血病(B-cell prolymphocytic leukaemia)、リンパ球プラズマ細胞性リンパ腫(lymphoplasmocytic lymphoma)、マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma)、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)、辺縁層MALT型リンパ腫(marginal zone MALT-type lymphoma)、単球様B
細胞を含むまたは含まないリンパ節辺縁層リンパ腫(lymph node marginal zone lymphoma with or without monocytoid B cells)、脾性辺縁層リンパ腫(絨毛性リンパ球を含むまたは含まない)(splenic marginal zone lymphoma (with or without villous lymphocytes))、トリコロイコサイティック白血病(tricholeucocytic leukaemia)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma)、バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma)、ならびに自己免疫疾患を含む、Bリンパ系細胞が関与する任意の免疫不全疾患。
【0069】
本発明の特定の目的は、受容者のB細胞が関与する症状を治療するための、慢性移植片対宿主病(chronic graft-versus-host disease)の治療用の薬物の製造のための、本発
明に従う抗体の使用である。
【0070】
最後に、本発明の最後の目的は、臓器(特に、腎臓)移植片拒絶の治療用の薬物の製造のための、本発明に従う抗体の使用である。
【0071】
最近の研究(Ratanatharathorn et al, (Aug 2003) Biol. Blood Marrow Transplant 9(8): 505-511;Becker et al, (Jun 2004) Am. J. Transplant. 4(6): 996-1001)は、実際に、このようなコンディションの治療における抗CD20抗体の利点を示した。
【0072】
本発明のさらなる局面および利点は、例示的な例として理解されるべきでありかつ本発明の範囲を限定しない下記の実施例において説明される。
【実施例】
【0073】
実施例
実施例1:抗CD20キメラ抗体EMAB6およびEMAB603のための発現ベクターの構築
A.CAT−13.6E12マウス抗体の可変領域の配列の決定
マウスハイブリドーマCAT−13.6E12細胞(供給業者:DSMZ、ref.ACC474)(これは、IgG2a,κ型免疫グロブリンを産生する)由来のトータルRNAを、単離した(RNAeasyキット、Qiagen ref.74104)。逆転写後、CAT−13.6E12抗体の軽鎖(Vκ)および重鎖(VH)の可変ドメインを、5’RACE技術(Rapid Amplification of cDNA Ends)(GeneRacerキット、Invitrogen ref.L1500−01)を使用して増幅した。前記2つの工程のために使用したプライマーは、以下であった:
1.リバース転写プライマー
a.マウスカッパ(Kappa)特異的アンチセンスプライマー(配列番号1)
【0074】
【化1】
【0075】
b.マウスG2a特異的アンチセンスプライマー(配列番号2)
【0076】
【化2】
【0077】
2.5’RACE PCRプライマー
a.マウスカッパ特異的アンチセンスプライマー(配列番号3)
【0078】
【化3】
【0079】
b.マウスG2a特異的アンチセンスプライマー(配列番号4)
【0080】
【化4】
【0081】
得られるVHおよびVκPCR産物を、ベクターpCR4Blunt−TOPO中へクローン化し(Zero blunt TOPO PCRクローニングキット、Invitrogen、ref.K2875−20)、そして配列決定した。マウスCAT−13.6E12抗体のVκ領域のヌクレオチド配列は、配列(配列番号5)のように示され、そして推定されるペプチド配列は、配列(配列番号6)である。該Vκ遺伝子は、Vκ4クラスに属する[Kabat et al. (1991) “Sequences of Proteins of Immunological Interest”. NIH Publication 91-3242]。
【0082】
CAT−13.6E12のVH領域のヌクレオチド配列は、配列(配列番号7)であり、そして推定されるペプチド配列は、配列(配列番号8)である。該VH遺伝子は、VH1クラスに属する[Kabat et al. (1991) “Sequences of Proteins of Immunological Interest”. NIH Publication 91-3242]。
【0083】
B.キメラ抗体EMAB6およびEMAB603のための重鎖および軽鎖発現ベクターの構築
1.軽鎖カッパベクター
1.1.抗体EMAB6についての軽鎖ベクター
pCR4Blunt−TOPOシークエンシングベクターにクローン化したVκ配列を、以下のクローニングプライマーを使用して増幅した:
a)Vκセンスプライマー(配列番号9)
【0084】
【化5】
【0085】
下線が引かれた配列はSpeI制限部位に対応し、太字で記載の配列はKozakコンセンサス配列に対応し、ATGイニシエータ(initiator)はイタリック体である。
【0086】
b)Vκアンチセンスプライマー(配列番号10)
【0087】
【化6】
【0088】
このプライマーは、マウスVκ配列(イタリック体)を、ヒト定常領域(Cκ)(太字)へ連結している。下線が引かれた配列は、DraIII制限部位に対応する。
【0089】
得られるVκPCR産物は、CAT−13.6E12マウス抗体の天然シグナルペプチドをコードする配列を含む。次いで、このVκPCR産物を、ヒト定常領域Cκ[その核酸配列は、配列(配列番号21)であり、そしてその推定ペプチド配列は、配列(配列番号22)である]の5’で、配列(配列番号11)に対応する軽鎖キメラ化ベクター(light chain chimerisation vector)(図1)のSpeI部位およびDraIII部位の間にクローン化した。DraIII制限部位を作製しマウスVκ配列のクローニングが起こることを可能にするために、このキメラ化ベクターのヒトCκ配列は、サイレント突然変異(silent mutagenesis)によって予め修飾されている。このキメラ化ベクターは、RSVプロモータおよびbGH(ウシ成長ホルモン)ポリアデニル化配列ならびにdhfr(ジヒドロ葉酸還元酵素)選択遺伝子を含む。
【0090】
このベクターによってコードされるキメラEMAB6抗体の軽鎖配列は、ヌクレオチド配列については配列番号13として示され、そして推定ペプチド配列(配列番号14)に対応する。
【0091】
1.2.抗体EMAB603についての軽鎖ベクター
プロトコルは、下記のVκアンチセンスプライマー以外、EMAB6抗体のための軽鎖ベクターについてと同一である(実施例1、B−1.1を参照のこと):
b’)Vκアンチセンスプライマー(配列番号29)
【0092】
【化7】
【0093】
このプライマーは、マウスVκ配列(イタリック体)を、ヒト定常領域(Cκ)(太字)へ連結している。下線が引かれた配列は、DraIII制限部位に対応する。
【0094】
このプライマーはまた、突然変異AAC→AAA(アンチセンスプライマー配列(配列番号29)において囲まれているヌクレオチド)を導入し、これは、CAT−13.6E12の天然Vκ配列(配列番号5および配列番号6を参照のこと)に対しての突然変異N106Kに対応する(ヌクレオチド配列および推定ペプチド配列(配列番号25および配列番号26)を参照のこと)。
【0095】
このベクターによってコードされるキメラEMAB603抗体の軽鎖配列は、ヌクレオチド配列については配列番号27として示され、そして推定ペプチド配列(配列番号28)に対応する。
【0096】
2.重鎖ベクター
同様のアプローチを、EMAB6およびEMAB603抗体の重鎖のキメラ化に適用した。
【0097】
先ず、pCR4Blunt−TOPOベクターにクローン化されたVH配列を、下記のクローニングプライマーを使用して増幅した:
a)VHセンスプライマー(配列番号15)
【0098】
【化8】
【0099】
下線が引かれた配列は制限部位SpeIに対応し、太字で記載の配列はKozakコンセンサス配列に対応し、ATGイニシエータはイタリック体である。
【0100】
b)VHアンチセンスプライマー(配列番号16)
【0101】
【化9】
【0102】
このプライマーは、マウスVH配列(イタリック体)を、ヒトG1定常領域(太字)へ連結している。下線が引かれた配列は、ApaI制限部位に対応する。
【0103】
増幅したVHフラグメントは、CAT−13.6E12マウス抗体の天然シグナルペプチドをコードする配列を含む。次いで、このVH PCR産物を、γ1ヒト定常領域[その核酸配列は、配列(配列番号23)であり、そしてその推定ペプチド配列は、配列(配列番号24)である]の5’で、配列(配列番号17)に対応する重鎖キメラ化ベクター(図3)のSpeI部位およびApaI部位の間へクローン化した。このキメラ化ベクターは、RSVプロモータおよびbGH(ウシ成長ホルモン)ポリアデニル化配列ならびにneo選択遺伝子を含む。
【0104】
このベクターによってコードされるキメラEMAB6およびEMAB603抗体の重鎖配列は、ヌクレオチド配列については配列番号19として、そして推定ペプチド配列については配列番号20として示される。
【0105】
3.最終発現ベクター
3.1.EMAB6抗体発現ベクター
EMAB6抗体の発現のために、カッパ軽鎖キメラ化ベクター(実施例1、B−1.1を参照のこと)のRSVプロモータを、ヒトEF−1アルファプロモータで置換した。最終軽鎖pEF−EMAB6−K発現ベクターは、図2に示され、そして配列(配列番号12)に対応する。
【0106】
このベクターによってコードされるキメラEMAB6抗体の軽鎖配列は、ヌクレオチド配列については配列番号13として示され、そして推定ペプチド配列(配列番号14)に対応する。
【0107】
EMAB6抗体の発現のために、重鎖キメラ化ベクター(実施例1、B−2を参照のこと)のRSVプロモータを、ヒトEF−1アルファプロモータで置換した。このようにして得られた最終重鎖pEF−EMAB6−H発現ベクターは、図4に示され、そして配列(配列番号18)に対応する。
【0108】
3.2.EMAB603抗体発現ベクター
軽鎖転写単位およびdhfr遺伝子を含む前記軽鎖ベクターのBgIII−PvuII
フラグメントを前記重鎖ベクターのXhoI部位へサブクローン化することによって、抗CD20 EMAB603抗体の重鎖転写単位および軽鎖転写単位の両方を含む独特な発現ベクターを2つの軽鎖および重鎖キメラ化ベクター(それぞれ、実施例1、B−1.2およびB2を参照のこと)から構築した。このpRSV−HL−EMAB603発現ベクターは、2つの選択遺伝子、即ち、neo(ネオ−ホスホトランスフェラーゼII)およびdhfr(ジヒドロ葉酸還元酵素)、ならびにRSVプロモータの制御下にある2つの重鎖および軽鎖転写単位を含む(図12)。
【0109】
実施例2:抗CD20キメラEMAB6およびEMAB603抗体を産生するYB2/0株由来の細胞株の製造
ラットYB2/0細胞株(ATCC# CRL−1662)を、5%ウシ胎仔血清(JRH Biosciences,ref.12107)を含有するEMS培地(Invitrogen,ref.041−95181M)において培養した。トランスフェクションのために、5百万個の細胞を、Optimix培地(Equibio,ref.EKITE 1)において、EMAB6抗体の発現については25μgの軽鎖ベクターpEF−EMAB6−K(図2)(AatIIで線形化)および27μgの重鎖ベクターpEF−EMAB6−H(図4)(ScaIで線形化)で、あるいはEMAB603抗体の発現についてはベクターpRSV−HL−EMAB603で、エレクトロポレーションした(Bioradエレクトロポレーター、モデル1652077)。適用したエレクトロポレーション条件は、0.5−mLキュベット中、230ボルトおよび960マイクロファラッドであった。次いで、各エレクトロポレーションキュベットを、5,000細胞/ウェルの密度で、5 P96プレート上に分配した。
【0110】
5%透析血清(Invitrogen,ref.10603−017)、500μg/mL G418(Invitrogen,ref.10131−027)および25nMメトトレキサート(Sigma,ref.M8407)を含有する選択的RPMI培地(Invitrogen,ref 21875−034)中に、トランスフェクションの3日後に、配置した。
【0111】
前記耐性トランスフェクションウェル(resistant transfection wells)からの上澄みを、ヒトIg配列に特異的なELISAアッセイを適用することによって、キメラ免疫グロブリン(Ig)の存在についてスクリーニングした。
【0112】
最大量の抗体を産生する10個のトランスフェクタントを、P24プレート上で増幅し、そしてそれらの上澄みを、ELISAを使用して再アッセイし、それらの生産力を評価し、そして限られた希釈(limited dilution)(40細胞/プレート)によって、クローニングに最適な3つのプロデューサを選択した。
【0113】
クローニング後、R509.6A4クローン(R509−33903/046−6H1(1)6A4、生産力:17μg/106細胞)(以後、「R509」と呼ぶ)、ならびにR603クローンを、それぞれキメラEMAB6およびEMAB603抗体の産生のために選択し、そしてこれらはCDハイブリドーマ産生培地(Invitrogen、ref.11279−023)に次第に順化した。
【0114】
キメラEMAB6およびEMAB603抗体の産生は、75−cm2および175−cm2バイアル中3×105細胞/mLへの希釈そして次いでローラーフラスコ(roller flasks)中4.5×105細胞/mLへの希釈によって得られた順化培養を、CDハイブ
リドーマ培地において、拡大することによって、達成された。いったん最大容量(1L)が達成されると、細胞生存能(cell viability)が20%だけになるまで、培養を継続した。産生後、キメラEMAB6およびEMAB603抗体を、プロテインAアフィニティ
ークロマトグラフィーを使用して精製し(HPLCは、純度<95%と評価した)、そしてポリアクリルアミドゲル電気泳動によってチェックした。
【0115】
実施例3:キメラ抗体EMAB6およびEMAB603の機能活性のキャラクタライゼーション
A.特異性
Raji細胞によって発現されたCD20抗原に結合することについての、マウス抗体CAT−13.6E12(CAT13)との拮抗を研究することによって、キメラEMAB6抗体の抗原認識の特異性を評価した。
【0116】
その目的のために、EMAB6抗体(0.5〜50μg/mLで10μL)を、Raji細胞(4×106細胞/mlで50μL)の存在下で、20分間、固定量のCAT−13.6E12マウス抗体(5μg/mLで10μL)と共に、4℃でインキュベートした。洗浄後、フィコエリトリン(PE)へ結合されたマウス抗IgG抗体を、前記Raji細胞へ添加し、CAT−13.6E12マウス抗体の結合を特異的に検出した。種々の濃度のEMAB6の存在下で得られたメジアン蛍光強度(Median Fluorescence Intensities)(MFI)をパーセンテージに変換し、ここで、100%は、EMAB6抗体の非存
在下でのCAT−13.6E12細胞への結合に対応する。
【0117】
増加する濃度のEMAB6の存在下におけるRaji細胞へのCAT−13.6E12(CAT13)抗体の結合についての阻害曲線をこのようにして得る(図5)。
【0118】
この研究により、前記キメラ化プロセスは、Raji細胞の表面に発現されるCD20への結合について親(parental)CAT−13.6E12マウス抗体と拮抗する、EMAB6抗体の特異性に悪影響を与えていないことが実証される。
【0119】
EMAB603抗体の抗原認識特異性は、EMAB6抗体のそれと匹敵する。
【0120】
B.補体依存性細胞傷害活性
EMAB6およびEMAB603抗体の補体依存性細胞傷害活性を、補体の供給源としての若いウサギ血清の存在下で、Raji細胞を用いて試験した;比較のために、抗CD20キメラ抗体リツキサン(登録商標)を、1つの試験に含めた。
【0121】
この試験のために、Raji細胞を、IMDM(イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium))5%FCS(ウシ胎仔血清)中、6×105細胞
/mLに調整した。抗体をIMDM+0.5%FCSで希釈した。反応混合物を、50μL抗体、50μLの若いウサギ血清(Cedarlane CL 3441試薬の1/10 IMDM+0.5%FCS希釈)、50μL標的細胞、および50μL IMDM+0.5%FCS培地から作製した。最終抗体濃度は、5,000、1,250、250、および50ng/mLであった。抗体を含まないコントロールを、試験に含ませた。5%CO2雰囲気中37℃で1時間インキュベーション後、前記プレートを遠心分離し、そして上澄みへ放出された細胞内LDHのレベルを、特定の試薬(細胞傷害性検出キット(Cytotoxicity Detection Kit)1 644 793)を使用して評価した。
【0122】
それぞれ100、50、25および0%溶解に対応するtriton X100(2%)を使用して溶解された種々の希釈の標的細胞を使用して得られた較正範囲を使用して、パーセンテージ溶解(percentage lysis)を評価した。
【0123】
図6(A)において示された結果は、EMAB6およびリツキサン(登録商標)は両方とも、Raji細胞の補体依存性溶解を誘発することを実証する。にもかかわらず、EM
AB6補体活性は、リツキサン(登録商標)のそれよりも僅かに低いようであった。この差異は、この試験において使用した低濃度の抗体でより大きい。したがって、50および250ng/mLの濃度について、EMAB6の活性は、リツキサン(登録商標)のそれの45%のオーダーのものである。この差異は、抗体濃度が増加されるにつれて小さくなり、EMAB6抗体の%補体依存性細胞傷害活性は、試験した最高濃度(即ち、5,000ng/mL)でリツキサン(登録商標)のそれの92%を示す。
【0124】
リツキサン(登録商標)のそれと比較してEMAB6抗体のこのより低い補体依存性傷害活性は、利点とみなされ得、何故ならば、それは、リツキサン(登録商標)と比較して、EMAB6の潜在的インビボ毒性(これは、従来の補体経路の活性化に付随し、これは、望まれない炎症、アレルギーおよび血管活性を有する種々の分子の産生へと導く)を制限するためである。
【0125】
EMAB603抗体の補体活性を図6(B)に示す。
【0126】
C.ADCC活性
キメラEMAB6抗体の細胞傷害性を、Raji細胞またはCLLを有する患者由来のBリンパ球の存在下で評価した。抗CD20キメラ抗体リツキサン(登録商標)を、比較のために試験に含めた。
【0127】
使用したカルセイン標識ADCC測定技術は、以下の通りであった:
Myltenyiからの磁気ビーズ(MACS)における分離技術を使用して、NK細胞をPBMCから単離した。該細胞を、IMDM+5%FCS(45×105細胞/mL)において、洗浄しそして再懸濁させた。該エフェクター細胞および標的細胞を、15/1の比率で使用した。Ficoll処理後に得られたB−CLLを有する患者由来のPBMC(末梢血単核細胞)(>95%B細胞)またはRaji細胞を、カルセインで予め標識し(IMDM+5%FCS+20μLカルセイン(20μM)中3×106細胞/mLで1mL細胞、37℃で20分インキュベーション、次いでHBSS(ハンクス緩衝生理食塩水溶液(Hank's Buffered Saline Solution))で洗浄)、そしてIMDM+5%F
CS中において3×105細胞/mLに調整した。抗体を、IMDM+0.5%FCS(最終濃度:500;50;5;0.5;0.005および0.005ng/mL)で希釈した。
【0128】
反応混合物を、P96マイクロタイトレーションプレート中、50μL抗体、50μLエフェクター細胞、50μL標的細胞、および50μL IMDM培地から作製した。2つの陰性コントロールを使用した:
− NK無しでの溶解:NKエフェクター細胞をIMDM+5%FCSで置換した。
− 抗体(Ab)無しでの溶解:抗体をIMDM+5%FCSで置換した。
【0129】
5%CO2雰囲気において37℃で4時間インキュベーション後、前記プレートを遠心分離し、そして上澄みと関連する蛍光を、蛍光光度計(励起:485nm、放出:535nm)を使用して測定した。
【0130】
それぞれ100、50、25および0%溶解に対応するTriton X100(2%)を使用して溶解された種々の希釈の標的細胞を使用して得られた較正範囲を使用して、パーセンテージ溶解を評価した。
【0131】
結果を、先ず、下記の式:
%溶解=(抗体およびNKでの%溶解)−(抗体無しでの%溶解)−(NK無しでの%溶解)
を使用して算出し、次いで相対的パーセンテージとして表し、ここで、100%は、最高濃度のリツキサン(登録商標)で得られた値である。
【0132】
図7(A)において示されたRaji系細胞に対してのEMAB6抗体について得られた結果は、試験される濃度に関係なく、EMAB6抗体によって誘発された細胞傷害性はリツキサン(登録商標)によって誘発されたそれよりも大きいことを実証する。この差異は、特に、低抗体濃度で大きい。したがって、0.5ng/mLで、溶解パーセンテージは、EMAB6およびリツキサン(登録商標)について、それぞれ、96%および4%であった。用量を500倍(250ng/mL)増加させることによって、差異は依然として明らかであり、何故ならば、ADCCの相対的パーセンテージは、EMAB6およびリツキサン(登録商標)について、それぞれ、164%および100%であるからである。図式評価(graphical estimation)(ng/mL)ならびにリツキサン(登録商標)およびEMAB6が同一のE Maxに達すると想定することによって、EC50[E最大値(最高抗体濃度およびプラトーで得られる最大有効性)の50%に対応する抗体濃度]を算出すると、この試験におけるリツキサン(登録商標)EC50/EMAB6 EC50比は、300に等しくなった。
【0133】
キメラEMAB603抗体の細胞傷害性を、EMAB6抗体についてのものと同一の手順を使用して、Raji細胞の存在下で評価した。その活性は、EMAB6抗体のそれと匹敵した(図7(B)を参照のこと)。
【0134】
B−CLLを有する患者由来のリンパ球で、得られた結果(図8に示す)は、試験される濃度に関係なく、EMAB6抗体によって誘発された細胞傷害性はリツキサン(登録商標)によって誘発されたそれよりも大きいことを実証している。Raji細胞について既に観察されたように、この差異は、特に、低抗体濃度で大きい。0.5ng/mL EMAB6の濃度は、500ng/mL リツキサン(登録商標)(即ち、1,000の濃度比)と同一のパーセンテージ溶解を誘発する。5ng/mLで、溶解パーセンテージは、EMAB6およびリツキサン(登録商標)について、それぞれ、269%および9%である。試験した最大用量(500ng/mL)で、差異は依然として非常に大きく、何故ならば、ADCCの相対的パーセンテージが、EMAB6およびリツキサン(登録商標)について、それぞれ、350%および100%あるためである。興味深い結果は、50%溶解を生じる濃度に対応する。この試験において、リツキサン(登録商標)EC50/EMAB6 EC50比は、10,000と評価された(リツキサン(登録商標)およびEMAB6は同一のE Maxに達すると想定しての、EC50についてのng/mLでの図式評価)。
【0135】
したがって、これらの試験において、EMAB6およびEMAB603の細胞傷害活性は、リツキサン(登録商標)のそれよりも遥かに高い。
【0136】
D.CD16の活性化(IL−2分泌)
キメラEMAB6抗体によって誘発されるCD16(FcγRIIIA)の活性化を、Raji細胞またはCLLを有する患者由来のBリンパ球の存在下で測定した。この試験は、ジャーカット−CD16細胞上において発現されるCD16(FcγRIIIA)受容体へ結合しそしてIL−2の分泌を誘発する前記抗体の能力を評価した。抗CD20キメラ抗体リツキサン(登録商標)を、比較のために試験に含める。
【0137】
CD16活性化の測定を、Raji細胞またはCLLを有する患者由来のBリンパ球の存在下、ジャーカット−CD16細胞株に対して、下記の様式で行った。
【0138】
96ウェルプレート中の混合物:50μL抗体溶液(B−CLLを有する患者由来のB
リンパ球については、IMDM+5%FCSで10,000、1,000、100および10ng/mLへ希釈、そしてRaji細胞については、10,000、2,000、1,000、200、100、50および25ng/mLに希釈)、50μL PMA(IMDM+5%FCSで40ng/mLへ希釈した、ホルボールミリステートアセテート(Phorbol Myristate Acetate))、50μL RajiまたはFicol処理後に得られ
るB−CLLを有する患者由来のPBMC(>95% B細胞)(IMDM+5%FCSで6×105/mLまで希釈)、ならびに50μL ジャーカット−CD16細胞(IMDM+5%FCS中20×106/mL)。抗体を含まないコントロールを、すべての試験において含めた。37℃で一晩インキュベーション後、前記プレートを遠心分離し、そして上澄み中に含まれるIL−2を、市販のキット(Quantikine from R/D)を使用して評価した。OD読み取りは、450nmで行った。
【0139】
結果を、初めに、抗体濃度(0〜250ng/mL最終濃度)の関数としてのIL−2レベルとして表し、次いで、相対的パーセンテージとして表し、ここで、100%は、最高試験濃度でリツキサン(登録商標)を用いて得られた値である。
【0140】
図9(A)において示されるRaji系細胞で得られた結果は、EMAB6およびリツキサン(登録商標)の存在下で、ジャーカット−CD16細胞がIL−2を分泌することを実証し、これは、CD16への前記抗体のFc部分の結合を介しての細胞活性化を示す。しかし、EMAB6抗体は、リツキサン(登録商標)抗体よりも遥かに強力な誘発活性(inductive activity)を有する。したがって、6.25ng/mLで、IL−2パーセンテージは、EMAB6およびリツキサン(登録商標)について、それぞれ、112%および21%であった。50ng/mLで、差異は依然として大きく、IL−2のパーセンテージは、それぞれ、112%および65%であった。この差異は、濃度が増加するにつれて小さくなり、EMAB6およびリツキサン(登録商標)についてのIL−2のそれぞれのパーセンテージは、2,500ng/mLで124%および100%である。この試験において、リツキサン(登録商標)EC50/EMAB6 EC50比は、15と評価される(リツキサン(登録商標)およびEMAB6が同一のE Maxに達すると想定しての、EC50についてのng/mLでの図式評価)。
【0141】
これらの結果は、ADCC結果を確認し、両方ともCD16依存性である。それらは、EMAB6抗体のFc部分によってCD16(FcγRIIIA)へ結合することは、強力な細胞活性化が伴い、これは、エフェクター機能の誘導へ導く。
【0142】
Raji細胞の存在下でキメラEMAB603抗体によって誘発されるCD16(FcγRIIIA)の活性化は、EMAB6抗体によって誘発されるそれに匹敵する。
【0143】
B−CLLを有する患者由来のリンパ球で、得られた結果(図10に示す)は、抗CD20リツキサン(登録商標)およびEMAB6の存在下において、ジャーカット−CD16細胞は、IL−2を分泌することを実証し、これは、CD16への前記抗体のFc部分の結合を介しての細胞活性化を示す。しかし、EMAB6抗体は、リツキサン(登録商標)抗体よりも遥かに高い誘発力(inductive ability)を有する。実際に、リツキサン(
登録商標)のIL−2分泌誘発活性は、2.5および25ng/mLの濃度でベースラインに付近であり、一方、EMAB6抗体のそれは顕著である。したがって、25ng/mLで、IL−2パーセンテージは、EMAB6およびリツキサン(登録商標)についてそれぞれ132%および34%であった。最高濃度(2,500ng/mL)で、IL−2パーセンテージは、それぞれ、148%および100%であった。この試験におけるリツキサン(登録商標)EC50/EMAB6 EC50比は、100よりも大きく;それは、300と評価される(リツキサン(登録商標)およびEMAB6が同一のE Maxを達成すると想定しての、EC50についてのng/mLでの図式評価)。
【0144】
結論として、Raji細胞において行った全ての試験は、EMAB6およびEMAB603抗体は、リツキサン(登録商標)とは異なって、非常に細胞傷害性であり、そしてCD16(FcγRIIIA)を発現する細胞の活性化を、特に抵抗体濃度で、誘発することを実証する。他方、同一条件下で、EMAB6の補体依存性細胞傷害活性は、リツキサン(登録商標)のそれと比較して約50%減少する。
【0145】
これらの結果は、B−CLLを有する患者から単離された細胞を使用して行った研究によって確認され、EMAB6抗体が、B−CLLを有する患者由来のBリンパ球へ対して、リツキサン(登録商標)よりも遥かに細胞傷害性であることを示唆している。2つの抗体間の差異は、Raji細胞でよりも、B−CLLを有する患者由来のリンパ球で、より顕著であり、これは、このコンディションについて、リツキサン(登録商標)と比較してEMAB6の顕著な治療利益を実証する。
【0146】
この増加した差異の理由は、中でも、Raji細胞と比較して、B−CLLを有する患者由来のBリンパ球においてはCD20がより低く抗原発現されるためであるかもしれない。
【0147】
Raji細胞から類推して、B−CLLを有する患者由来のリンパ球に対するEMAB6抗体の補体依存性細胞傷害活性は、リツキサン(登録商標)によって誘発されるものよりも低くなければならないことが示唆され得、したがって、従来の補体経路の強力な活性化に付随する望ましくない効果の結果として、インビボにおいて毒性がより低いという利点を示す。
【0148】
実施例4:HPCE−LIFによるEMAB6およびEMAB603グリカンの分析
EMAB6およびEMAB603抗体の重鎖のN−グリカン構造を、HPCE−LIFを使用して分析した。リツキサン(登録商標)の重鎖のN−グリカン構造もまた、比較のために分析した。
【0149】
その目的のために、抗CD20モノクローナル抗体を、Sephadex G−25カラム(HiTrap Desalting,Amersham Biosciences)において脱塩し、エバポレートし、そして50mM β−メルカプトエタノールの存在下で、PNGase F(Glyko)の加水分解緩衝液中に再懸濁した。37℃で16時間インキュベーション後、蛋白質分画を、無水エタノールを添加することによって沈殿させ、そして上澄み(これは、N−グリカンを含有した)をエバポレートした。得られたオリゴ糖を、蛍光色素:APTS(1−アミノ−ピレン−3,6,8−トリスルホネート)を使用して直接標識したか、あるいは特定のエキソグリコシダーゼ(exoglycosidases
)の作用に供し、その後APTSで標識した。得られた標識化オリゴ糖を、N−CHOキャピラリーへ注入し、レーザー誘起蛍光検出(laser-induced fluorescence detection)(HPCE−LIF)を備えるキャピラリー電気泳動によって分離および定量した。
【0150】
フコースレベルの評価を、単離フコシル化形態を加えることによってか、あるいはより詳細には、ノイラミニダーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびN−アセチルヘキソサミニダーゼの同時作用後に行い、これらは、電気泳動図において得られた、フコシル化または非フコシル化五糖[GlcNac2−Man3]に対応する2つのピークを生じた:
【0151】
【表1】
【0152】
フコースレベル(%として表される)を、下記式を使用して算出した:
【0153】
【数1】
【0154】
ガラクトースレベル(%として表される)を、ノイラミニダーゼおよびフコシダーゼの作用後に得られたガラクトースを含有するオリゴ糖形態のパーセンテージを加えることによって、算出した。使用した式は、下記の通りである:
ガラクトースレベル=(G1+G1B)+2×(G2+G2B)
フコース/ガラクトース比を、上述のように算出される、ガラクトースレベルでフコースレベルを割ることによって得る。
【0155】
この分析から(表1を参照のこと)、EMAB6およびEMAB603抗体は、リツキサン(登録商標)(%フコース=93%)と比較してほとんどフコシル化されていない(%フコース<25%)ようである。さらに、EMAB6およびEMAB603についてのFuc/Gal比(フコース/ガラクトース比)は、リツキサン(登録商標)(Fuc/Gal比=1.63)等のCHO細胞において発現される抗体とは異なり、低い(Fuc/Gal比<0.6)。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】抗体EMAB6およびEMAB603の軽鎖カッパのキメラ化のために使用したCKHuベクターの概略図。
【図2】抗体EMAB6の産生のために使用した軽鎖pEF−EMAB6−K発現ベクターの概略図。
【図3】抗体EMAB6およびEMAB603の重鎖のキメラ化のために使用したG1Huベクターの概略図。
【図4】抗体EMAB6の産生のために使用した重鎖pEF−EMAB6−H発現ベクターの概略図。
【図5】Raji細胞上に発現されるCD20へのCAT−13.6E12(CAT13)によって産生されたマウス抗体の結合についての、キメラEMAB6抗体による拮抗。
【図6】Raji細胞に対する抗CD20抗体の補体依存性細胞傷害活性。(A)リツキサン(登録商標):白三角、EMAB6:黒菱形。上澄みへ放出された細胞内LDHを測定することによって、細胞溶解を評価する。結果をパーセンテージ溶解として表し、ここで、100%は、リツキサン(登録商標)(5,000ng/mL 抗CD20抗体)で得られた値である。5回の試験の平均値。(B)EMAB6(黒菱形)およびEMAB603(白菱形)の補体依存性細胞傷害活性の比較。
【図7】Raji細胞の存在下で抗CD20抗体によって誘発されたADCC活性。(A)リツキサン(登録商標):白三角、EMAB6:黒菱形。上澄みへ放出された細胞内LDHを測定することによって、細胞溶解を評価する。結果をパーセンテージ溶解として表し、ここで、100%は、リツキサン(登録商標)(250ng/mL 抗CD20抗体で)で得られた値である。3回の試験の平均値。(B)EMAB6(黒菱形)およびEMAB603(白菱形)によって誘発されたADCCの比較。
【図8】B−CLLを有する患者由来のBリンパ球の存在下で抗CD20抗体によって誘発されるADCC活性。リツキサン(登録商標):白三角、EMAB6:黒菱形。E/T比=15。上澄みへ放出されたカルセインを測定することによって、細胞溶解を評価する。結果をパーセンテージとして表し、ここで、100%は、リツキサン(登録商標)(500ng/mL 抗CD20抗体で)で得られた値である。4人の異なる患者に対応する4回の試験の平均値。
【図9】Raji細胞の存在下で抗CD20抗体によって誘発されたCD16(FcγRIIIA)の活性化。(A)リツキサン(登録商標):白三角、EMAB6:黒菱形。結果をIL−2のパーセンテージとして表し(ELISAを使用して上澄みにおいて測定する);ここで、100%は、リツキサン(登録商標)(2,500ng/mL 抗CD20抗体)で得られた値である。4回の試験の平均値。(B)EMAB6(黒菱形)およびEMAB603(白菱形)によって誘発されたCD16(FcγRIIIA)の活性化間の比較。
【図10】B−CLLを有する患者由来のBリンパ球の存在下で抗CD20抗体によって誘発されるCD16(FcγRIIIA)の活性化。リツキサン(登録商標):白三角、EMAB6:黒菱形。結果をIL−2のパーセンテージとして表し(ELISAを使用して上澄みにおいて測定する);ここで、100%は、リツキサン(登録商標)(2,500ng/mL 抗CD20抗体で)で得られた値である。12人の患者の平均値。
【図11】ジャーカット−CD16細胞(FcγRIIIA)の存在下でCAT−13.6E12マウス抗体によって誘発されたIL−2の産生。
【図12】抗体EMAB603の産生のために使用された重鎖および軽鎖pRSV−HL−EMAB603発現ベクターの概略図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD20抗原に対するモノクローナル抗体であって、ここで、その軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)と少なくとも99%同一性を共有する配列によってコードされ、その重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)と少なくとも99%同一性を共有する配列によってコードされ、そしてその軽鎖および重鎖の定常領域は、非マウス種由来の定常領域である、抗体。
【請求項2】
その軽鎖の各々の可変領域が、マウス核酸配列(配列番号5)またはマウス核酸配列(配列番号25)によってコードされ、その重鎖の各々の可変領域が、マウス核酸配列(配列番号7)によってコードされ、そしてその軽鎖および重鎖の定常領域が、非マウス種由来の定常領域である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
その軽鎖の各々および重鎖の各々の定常領域がヒト定常領域である、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
その軽鎖の各々の定常領域がκタイプのものである、請求項1から3のいずれかに記載の抗体。
【請求項5】
その重鎖の各々の定常領域がγタイプのものである、請求項1から4のいずれかに記載の抗体。
【請求項6】
その重鎖の各々の定常領域がγ1タイプである、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
その重鎖の各々の定常領域がγ1タイプのものであり、そしてヒト核酸配列(配列番号23)によってコードされ、そしてその軽鎖の各々の定常領域がヒト核酸配列(配列番号21)によってコードされる、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
その軽鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号13)またはマウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号27)によってコードされ、そしてその重鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号19)によってコードされる、請求項1から7のいずれかに記載の抗体。
【請求項9】
配列(配列番号13)からの推定ペプチド配列が、配列(配列番号14)であり、そして配列(配列番号19)からの推定ペプチド配列が、配列(配列番号20)である、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
配列(配列番号27)からの推定ペプチド配列が、配列(配列番号28)であり、そして配列(配列番号19)からの推定ペプチド配列が、配列(配列番号20)である、請求項8に記載の抗体。
【請求項11】
ラットハイブリドーマ細胞株によって産生された、請求項1から10のいずれかに記載の抗体。
【請求項12】
ラットハイブリドーマYB2/0細胞株(ATCC番号CRL−1662でAmerican Type Culture Collectionにおいて登録された、細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20)において産生された、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の抗体を発現する安定細胞株。
【請求項14】
SP2/0、YB2/0、IR983F、Namalwaヒト骨髄腫、PERC6、CHO株、特に、CHO−K−1、CHO−Lec10、CHO−Lec1、CHO−Lec13、CHOPro−5、CHO dhfr−、Wil−2、Jurkat、Vero、Molt−4、COS−7、293−HEK、BHK、K6H6、NSO、SP2/0−Ag14、およびP3X63Ag8.653からなる群から選択される、請求項13に記載の安定細胞株。
【請求項15】
免疫エフェクター細胞中のFcγRIIIA受容体のインビトロ活性化のための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項16】
薬物としての使用のための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体。
【請求項17】
白血病またはリンパ腫の治療用の薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項18】
急性Bリンパ芽球性白血病(acute B lymphoblastic leukaemia)、B細胞リンパ腫(B-cell lymphoma)、成熟B細胞リンパ腫(mature B-cell lymphoma)、例えば、B型慢性リンパ性白血病(B-type Chronic Lymphocytic Leukaemia)(B−CLL)、小細胞性B細胞リンパ腫(small B-cell lymphoma)、B細胞前リンパ性白血病(B-cell prolymphocyticleukaemia)、リンパ球プラズマ細胞性リンパ腫(lymphoplasmocyticlymphoma)、マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma)、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)、辺縁層MALT型リンパ腫(marginal zone MALT-type lymphoma)、単球様B細胞を含むまたは含まないリンパ節辺縁層リンパ腫(lymph node marginal zone lymphoma with or without monocytoid B cells)、脾性辺縁層リンパ腫(絨毛性リンパ球を含むまたは含まない)(splenic marginal zone lymphoma (with or without villous lymphocytes))、トリコロイコサイティック白血病(tricholeucocytic leukaemia)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma)、バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma)、ならびに自己免疫疾患を含む、Bリンパ系細胞が関与する任意の免疫不全疾患からなる群から選択される病状の治療用の薬物を製造するための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項19】
リンパ性白血病の治療用の薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項20】
B型慢性リンパ性白血病(B-type Chronic Lymphoid Leukaemia)(B−CLL)の治療用の薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項21】
慢性移植片対宿主病の治療用の薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項22】
臓器(特に、腎臓)移植片拒絶の治療用の薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項23】
白血病またはリンパ腫の治療用の薬物の製造のための、リンパ系細胞において発現される1以上のさらなる抗原に対する1以上のさらなる抗体と組み合わせての、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項24】
リンパ系細胞において発現される前記抗原が、HLA−DR、CD19、CD23、CD80、CD22、CD32およびCD52から選択されることを特徴とする、請求項23に記載の抗体の使用。
【請求項25】
白血病またはリンパ腫の治療用の薬物の製造のための、FcγRsを発現する細胞、例えば、NK(ナチュラルキラー)細胞、NKT(ナチュラルキラーT)細胞、Tγδリンパ球、マクロファージ、単球または樹状細胞と組み合わせての、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項1】
CD20抗原に対するモノクローナル抗体であって、ここで、その軽鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号5)と少なくとも99%同一性を共有する配列によってコードされ、その重鎖の各々の可変領域は、マウス核酸配列(配列番号7)と少なくとも99%同一性を共有する配列によってコードされ、そしてその軽鎖および重鎖の定常領域は、非マウス種由来の定常領域である、抗体。
【請求項2】
その軽鎖の各々の可変領域が、マウス核酸配列(配列番号5)またはマウス核酸配列(配列番号25)によってコードされ、その重鎖の各々の可変領域が、マウス核酸配列(配列番号7)によってコードされ、そしてその軽鎖および重鎖の定常領域が、非マウス種由来の定常領域である、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
その軽鎖の各々および重鎖の各々の定常領域がヒト定常領域である、請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
その軽鎖の各々の定常領域がκタイプのものである、請求項1から3のいずれかに記載の抗体。
【請求項5】
その重鎖の各々の定常領域がγタイプのものである、請求項1から4のいずれかに記載の抗体。
【請求項6】
その重鎖の各々の定常領域がγ1タイプである、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
その重鎖の各々の定常領域がγ1タイプのものであり、そしてヒト核酸配列(配列番号23)によってコードされ、そしてその軽鎖の各々の定常領域がヒト核酸配列(配列番号21)によってコードされる、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
その軽鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号13)またはマウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号27)によってコードされ、そしてその重鎖の各々が、マウス−ヒトキメラ核酸配列(配列番号19)によってコードされる、請求項1から7のいずれかに記載の抗体。
【請求項9】
配列(配列番号13)からの推定ペプチド配列が、配列(配列番号14)であり、そして配列(配列番号19)からの推定ペプチド配列が、配列(配列番号20)である、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
配列(配列番号27)からの推定ペプチド配列が、配列(配列番号28)であり、そして配列(配列番号19)からの推定ペプチド配列が、配列(配列番号20)である、請求項8に記載の抗体。
【請求項11】
ラットハイブリドーマ細胞株によって産生された、請求項1から10のいずれかに記載の抗体。
【請求項12】
ラットハイブリドーマYB2/0細胞株(ATCC番号CRL−1662でAmerican Type Culture Collectionにおいて登録された、細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20)において産生された、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の抗体を発現する安定細胞株。
【請求項14】
SP2/0、YB2/0、IR983F、Namalwaヒト骨髄腫、PERC6、CHO株、特に、CHO−K−1、CHO−Lec10、CHO−Lec1、CHO−Lec13、CHOPro−5、CHO dhfr−、Wil−2、Jurkat、Vero、Molt−4、COS−7、293−HEK、BHK、K6H6、NSO、SP2/0−Ag14、およびP3X63Ag8.653からなる群から選択される、請求項13に記載の安定細胞株。
【請求項15】
免疫エフェクター細胞中のFcγRIIIA受容体のインビトロ活性化のための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項16】
薬物としての使用のための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体。
【請求項17】
白血病またはリンパ腫の治療用の薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項18】
急性Bリンパ芽球性白血病(acute B lymphoblastic leukaemia)、B細胞リンパ腫(B-cell lymphoma)、成熟B細胞リンパ腫(mature B-cell lymphoma)、例えば、B型慢性リンパ性白血病(B-type Chronic Lymphocytic Leukaemia)(B−CLL)、小細胞性B細胞リンパ腫(small B-cell lymphoma)、B細胞前リンパ性白血病(B-cell prolymphocyticleukaemia)、リンパ球プラズマ細胞性リンパ腫(lymphoplasmocyticlymphoma)、マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma)、濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma)、辺縁層MALT型リンパ腫(marginal zone MALT-type lymphoma)、単球様B細胞を含むまたは含まないリンパ節辺縁層リンパ腫(lymph node marginal zone lymphoma with or without monocytoid B cells)、脾性辺縁層リンパ腫(絨毛性リンパ球を含むまたは含まない)(splenic marginal zone lymphoma (with or without villous lymphocytes))、トリコロイコサイティック白血病(tricholeucocytic leukaemia)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma)、バーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma)、ならびに自己免疫疾患を含む、Bリンパ系細胞が関与する任意の免疫不全疾患からなる群から選択される病状の治療用の薬物を製造するための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項19】
リンパ性白血病の治療用の薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項20】
B型慢性リンパ性白血病(B-type Chronic Lymphoid Leukaemia)(B−CLL)の治療用の薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項21】
慢性移植片対宿主病の治療用の薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項22】
臓器(特に、腎臓)移植片拒絶の治療用の薬物の製造のための、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項23】
白血病またはリンパ腫の治療用の薬物の製造のための、リンパ系細胞において発現される1以上のさらなる抗原に対する1以上のさらなる抗体と組み合わせての、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項24】
リンパ系細胞において発現される前記抗原が、HLA−DR、CD19、CD23、CD80、CD22、CD32およびCD52から選択されることを特徴とする、請求項23に記載の抗体の使用。
【請求項25】
白血病またはリンパ腫の治療用の薬物の製造のための、FcγRsを発現する細胞、例えば、NK(ナチュラルキラー)細胞、NKT(ナチュラルキラーT)細胞、Tγδリンパ球、マクロファージ、単球または樹状細胞と組み合わせての、請求項1〜12のいずれかに記載の抗体の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−126724(P2012−126724A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−276347(P2011−276347)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【分割の表示】特願2007−546110(P2007−546110)の分割
【原出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(508034967)エルエフビー ビオテクノロジ (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【分割の表示】特願2007−546110(P2007−546110)の分割
【原出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(508034967)エルエフビー ビオテクノロジ (3)
【Fターム(参考)】
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