説明

BMPアンタゴニスト感受性が低下した骨形成タンパク質2(BMP2)変異体

本発明は、配列番号1を有する成熟ヒトBMP2と比較して少なくとも90%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる単離ペプチドであって、上記アミノ酸配列が少なくとも2つのアミノ酸置換を有し、第1のアミノ酸置換が配列番号1のN59、S88、E94、V99、K101及び/又はN102に相当する位置に生じることを特徴とする、単離ペプチド、並びにその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、骨形成タンパク質2(BMP2)において、その阻害物質、例えばNOGGINとの特異的相互作用に最も重要である主要な(central)残基及びドメインを置き換えることである。これらの変更は、このタンパク質を生物活性の増大した、アンタゴニストに耐性を有する変異体へと変換することを目的とする。この新たなタンパク質はBMP関連の疾患又は病態に有用である。
【背景技術】
【0002】
骨形成タンパク質(BMP)及び関連する成長分化因子(GDF)は、形質転換成長因子(TGF)βスーパーファミリーに属する、系統発生的に保存されたシグナル伝達タンパク質である。当初は骨形成を誘導する能力が特定されたが、その後体パターン形成及び形態形成の多数の局面に関与することが示された(非特許文献1)。現在までに、明確な時空的発現プロファイル、並びに胚発生及び組織恒常性における異なる機能を有する20個を超える種々のBMPが知られている。全てのBMPは異なる機能にもかかわらず、共通のシグナル伝達機構を有している。BMPはサブチリシン様前駆タンパク質転換酵素ファミリーの成員による特異的切断の後、タンパク質分解によって放出されるプロドメインからなる前駆体タンパク質として翻訳される。高度に保存された成熟ドメインは7つのシステイン(Cys)残基を特徴とするが、そのうち6つが細胞内Cysノットを形成し、7つのうち4番目のCysがBMPの二量体化に重要である。BMPは、ホモ二量体又はヘテロ二量体として働き、2つの主要なタイプの膜貫通セリン/トレオニンキナーゼ受容体、I型受容体及びII型受容体に結合する分泌ペプチドである。予め形成された異種受容体複合体へのBMPの結合は、SMAD及び他の細胞内経路の活性化をもたらす。
【0003】
BMPシグナル伝達は、細胞外で、膜レベルで、及び細胞内で作用する多数のアンタゴニストによって正確に調節される。ますます多くの細胞外アンタゴニストが、BMPに結合し、その結果受容体の活性化を妨げることが特定されている。これらのアンタゴニストとしては、Noggin(NOG)、Chordin(CHRD)、CHRD様タンパク質(CHRDL)、及びディファレンシャルスクリーニングで選別された神経芽細胞腫の異常遺伝子(Differential screening-selected gene Aberrant in Neuroblastoma)(DAN)を含むDANファミリー、Cerberus 1(CER1)、COCO、DAN及びCERに関連するタンパク質(PRDC)、Gremlin(GREM)、子宮感作関連遺伝子1(USAG1)、Sclerostin(SOST)、Follistatin(FST)、FST様タンパク質(FSTL)、成長及び分化因子関連血清タンパク質1(GASP1)、並びにTwisted Gastrulation(TWSG)が挙げられる(非特許文献2)。これらの阻害物質は明確な発現パターンを示し、したがってin vivoで異なる生物学的役割を有するようである。加えて、これらのアンタゴニストは、様々なBMP及び他の因子に対して異なる親和性を有する。例えば、NOGはBMP2、BMP4、GDF5及びGDF6と高い親和性で結合するが、BMP7とは低い親和性でしか結合しない。一方、FSTは当初、アクチビン(ACV)のアンタゴニストとして特定されたが、BMPに結合することも示されている。BMP2への結合についてNOGがCER、GREM1及びDANと競合することを考えると、様々なBMPアンタゴニストがBMP分子中の同様のドメインと相互作用する可能性がある(非特許文献3)。SOSTが、一方でBMPアンタゴニストとしてBMP活性を遮断するが、他方でNOGと結合し、その活性を中和することで、BMP活性の活性化をもたらすことによって、多面発現効果(pleiotrophic effects)を有することも示されている(非特許文献4)。
【0004】
したがって、多数の異なるBMPがほぼ同じ数の細胞外アンタゴニストと対応しているが、それらの生物学的重要性の詳細な知識は得られていない。現在までに、アンタゴニストと複合したBMPの少なくとも2つの三次元構造が利用可能である(BMP7−NOG(PDB:1M4U)、及びCrossveinless−2の第1のフォンヴィレブランドドメインC型(The First Von Willebrand Domain Type C)を有するBmp−2(PDB:3BK3))。これらの構造は、物理的相互作用部位についての重要な情報を提供するが、どのアミノ酸が相互作用にとって生物学的に重要であるかについては明らかにしていない。NOG、GREM1、FST及びSOST等の数個のアンタゴニストのみが、骨格発生及び再生におけるそれらの機能について調査されている。NOGはNogヌルマウスにおいて実証されているように、軟骨内骨化において中心的役割を有する。これらのマウスは、全ての軟骨原基並びに多数の他の神経管及び脳欠損の大幅な拡大を示す。関節の発生に対するNOGの重要性は、指節癒合症及び多発性骨癒合症(多関節癒合)症候群の患者におけるNOG中の突然変異の特定によって示されている。骨形成の増大を特徴とする2つの病態である、硬結性骨化症及びファン・ブッヘム病の患者においてはSOSTが突然変異している(非特許文献5)。
【0005】
それらの発見から、骨折治癒(fracture healing)における骨形成を促進すること、又は切除術後に骨を再生することがBMPの骨誘導特性を使用することの意図となっている。しかしながら、in vitro及び動物モデルにおいて骨形成を誘導するBMPの高い効力は、ヒト患者において部分的にしか繰り返されない(非特許文献6)。BMP効果は生物学的利用率、安定性等の幾つかの要因、又はBMPを阻害する組織中の局所相互作用因子によって調節されるようである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kishigami S, Mishina Y (2005) BMP signaling and early embryonicpatterning. Cytokine Growth Factor Rev 16: 265-278.
【非特許文献2】Yanagita M (2005) BMP antagonists: their roles in development andinvolvement in pathophysiology. Cytokine Growth Factor Rev 16: 309-317.
【非特許文献3】Canalis E, Economides AN, Gazzerro E (2003) Bone morphogeneticproteins, their antagonists, and the skeleton. Endocr Rev 24: 218-235.
【非特許文献4】Winkler DG, Yu C, Geoghegan JC, Ojala EW, Skonier JE, Shpektor D,Sutherland MK, Latham JA. 2004 Noggin and sclerostin bone morphogenetic proteinantagonists form a mutually inhibitory complex. J Biol Chem 279(35):36293-8
【非特許文献5】Kornak U, Mundlos S. Genetic disorders of the skeleton: adevelopmental approach. Am J Hum Genet. 2003 Sep;73(3):447-74.
【非特許文献6】Groeneveld, E. H. and E. H. Burger. 2000. Bone morphogeneticproteins in human bone regeneration. Eur J Endocrinol 142:9-21.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術の1つ又は複数の問題を克服又は軽減することである。特に、本発明の目的は、Nogginに耐性を示すBMP2活性を有するペプチドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によると、本発明は、配列番号1を有する成熟ヒトBMP2と比較して少なくとも90%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる単離ペプチドであって、前記アミノ酸配列が少なくとも2つのアミノ酸置換を含むことを特徴とし、第1のアミノ酸置換が配列番号1のN59、S88、E94、V99、K101及び/又はN102に相当する位置に生じる、単離ペプチドを提供する。
【0009】
第2の態様によると、本発明は、単離核酸であって、
i)本発明の単離ペプチドをコードする核酸配列、又は
ii)本発明の単離ペプチドをコードする核酸と標準条件下でハイブリダイズする核酸配列を含むことを特徴とする、単離核酸を提供する。
【0010】
驚くべきことに、本発明の単離ペプチドがBMP2活性を示す一方で、本質的にBMP2の天然アンタゴニストであるNogginによる阻害に耐性を示すことが見出された。本発明の単離ペプチドは、Nogginによる阻害に対する感受性の減少を特徴とし、生物、好ましくはヒトにおいて、天然に存在するBMP2よりも安定であり、及び/又は改善若しくは変更された生物活性を引き起こす。興味深いことに、BMP2のC末端領域における少なくとも2つのアミノ酸の置換が、本質的にNogginによる阻害に耐性を示す一方で、生物学的BMP2活性が基本的に維持される単離ペプチドをもたらすことが見出された。
【0011】
本明細書中で使用される場合、「ペプチド」という用語は、ペプチド結合によって結合した天然及び/又は人工アミノ酸の直鎖を含む任意の分子を包含する。したがって、「ペプチド」という表現は、そのペプチドのアミノ酸の1つ又は複数が修飾されていてもよいオリゴペプチド、ポリペプチド及び/又はタンパク質断片、並びに完全タンパク質を包含する。本明細書中で使用される場合、特定のアミノ酸への言及はアミノ酸の1文字コードに基づいて行われる。
【0012】
「単離」ペプチドとは、単離ペプチドの天然源に存在する他のペプチド分子(例えば、天然源のプロテオームの他のポリペプチド)から実質的に分離されたペプチドである。例えば、組み換え発現ペプチドは単離されていると見なされる。ペプチドは、人間の介入によって変更されたか、又はその天然源ではない生物によって発現された場合にも単離されていると見なされる。さらに、「単離」ペプチドは、それが天然で関連する他の細胞物質、又は組み換え技法によって作製した場合には培養培地、又は化学的に合成した場合には化学的前駆体若しくは他の化学物質の幾つかを含まない場合がある。「単離ペプチド」の定義からは、天然に存在する未精製のペプチド混合物又は組成物、天然に存在する供給源の全細胞調製物(機械的に剪断された又は酵素的に消化された全細胞調製物を含む)が特に除外される。
【0013】
本発明は単離核酸にも関する。
【0014】
本発明による核酸はDNA、RNA、それらの混合物及び/又は機能的置換体(functional substituents)、特にcDNA、ゲノムDNA及び/又はRNAを含み、完全に又は部分的に合成されたものである。本発明の核酸は、一本鎖及び/又は完全に若しくは部分的に二本鎖のポリヌクレオチド配列を含む。「単離した」という用語は、これらの可能性の全てを包含する。本発明の目的上、例えば特定の配列番号を参照してDNA配列を特定する場合、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、Tが生じる場合Uに置き換わったRNA等価物が包含される。本発明の核酸はゲノム調製、cDNA調製、in vitro合成、PCR、RT−PCR、及び/又はin vitro若しくはin vivo転写を含む任意の手段によって作製することができる。
【0015】
「単離」核酸とは、核酸の天然源に存在する他の核酸分子(例えば、他のポリペプチドをコードする配列)から実質的に分離された核酸である。好ましくは、「単離」核酸は、その天然に存在するレプリコンに天然でその核酸に隣接する配列(すなわち、その核酸の5'末端及び3'末端に位置する配列)の幾つかを含まない。例えば、クローニング核酸は単離されていると見なされる。様々な実施の形態において、本発明の単離核酸は、その核酸が由来する細胞のゲノムDNAにおいてその核酸分子に天然で隣接するヌクレオチド配列の約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kb又は0.1kb未満を含有し得る。核酸は、人間の介入によって変更されたか、又はその天然の部位ではない遺伝子座若しくは位置に位置するか、又は細胞に導入された場合にも単離されていると見なされる。さらに、cDNA分子等の「単離」核酸は、それが天然で関連する他の細胞物質、又は組み換え技法によって作製した場合には培養培地、又は化学的に合成した場合には化学的前駆体若しくは他の化学物質の幾つかを含まない場合がある。「単離核酸」の定義からは、天然に存在する染色体(染色体スプレッド等)、ゲノムライブラリ、及び天然に存在する供給源の全細胞ゲノムDNA調製物又は全細胞RNA調製物(機械的に剪断された又は酵素的に消化された全細胞調製物を含む)が特に除外される。当業者であれば、同じアミノ酸配列をコードする多数の異なる核酸配列を可能にする遺伝コードの縮重を十分に理解し、所与の核酸配列が本発明の単離ペプチドをコードするか否かを決定するのは困難ではない。
【0016】
本発明の単離ペプチド及び/又は核酸は、単離形態で提供することができる、すなわち、好ましくは実質的に純粋な及び/又は均一の形態で、及び/又は起源の種の所望の配列以外のペプチド、核酸及び/又は遺伝子を含まないか、又は実質的に含まない形態でそれらの天然の環境から精製することができる。
【0017】
本発明の単離ペプチドは、配列番号1を有する成熟ヒトBMP2と比較して少なくとも90%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、アミノ酸同一性は好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%である。好ましい実施の形態では、本発明の単離ペプチドは、配列番号11を有する完全長ヒトBMP2と比較して少なくとも90%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、アミノ酸同一性は好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%である。上記同一性は、本発明の単離ペプチドに存在する少なくとも2つのアミノ酸置換を無視する(除外する)ことによって、配列番号1又は配列番号11のそれぞれの全長について算出する。
【0018】
アクセッション番号NP_001 191及び配列番号11を有する完全長ヒトBMP2タンパク質(hBMP2)は、396個のアミノ酸からなる。N末端のアミノ酸1〜282、いわゆる配列番号10のプロドメインは、完全にプロセシングされた活性hBMP2(本明細書中で配列番号1を有する成熟hBMP2とも呼ばれる)に達するために、完全長ペプチドのプロセシング中に切断される。したがって、成熟hBMP2のアミノ酸配列は、完全長hBMP2のアミノ酸位置283(アミノ酸Q)から始まり、続く113個のアミノ酸を含む。本明細書中で使用される場合、成熟hBMP2とは、全長が114アミノ酸の完全にプロセシングされた活性hBMP2のアミノ酸配列からなる配列番号1のアミノ酸を指す。配列番号1のアミノ酸1は配列番号11のアミノ酸283を指し、アミノ酸114は配列番号11のアミノ酸396を指す。
【0019】
以下で、特定のアミノ酸又はアミノ酸位置を初めに、N末端からC末端の方向へ読まれる配列番号1のアミノ酸配列内の位置番号に従う、hBMP2のそれぞれのアミノ酸を一文字コードで指定することによって特定する。例えば、配列番号1のN末端の最初のアミノ酸はQ1と記載され(配列番号11のQ283と同一である)、一方で配列番号1のC末端はR114と表される(配列番号11のR396に相当する)。歴史的理由から、本願の実験の項では特定のアミノ酸位置は、N末端からC末端の方向へ読まれる配列番号11の完全長ヒトBMP2のアミノ酸配列内の位置番号によって指定される。完全長BMP2(配列番号11)に対して規定される特定のアミノ酸又はアミノ酸位置は、単に位置番号から282を引くことによって、成熟BMP2(配列番号1)に関する定義へと容易に変換することができる。例えば、配列番号11のアミノ酸N341は配列番号1のN59と同一である。
【0020】
2つのアミノ酸配列間の同一性又は相同性は、いずれの場合も全配列長にわたるそれぞれの配列の同一性を意味するとして理解される(同一性及び相同性という用語は本明細書中で(here within)区別なく使用される)。2つのアミノ酸配列又は2つの核酸の同一度を決定するには、配列は最適な比較を目的としてアラインメントされる(例えば、第2のアミノ酸又は核酸配列との最適なアラインメントのために、第1のアミノ酸又は核酸配列の配列内にギャップを導入することができる)。2つの配列間の同一度は、それらの配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、相同度(%)=同一位置の数/位置の合計数×100)。2つの配列間の相同度の決定は、数学アルゴリズムを用いて達成することができる。2つの配列の比較に利用される数学アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. ScL USA 90:5873-77のように修正されたKarlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. ScL USA 87:2264-68のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のNBLASTプログラム及びXBLASTプログラムに組み込まれる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム(スコア=100、文字長(wordlength)=12)を用いて行うことができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム(スコア=50、文字長=3)を用いて行うことができる。比較目的のギャップ有りの(gapped)アラインメントを得るには、ギャップBLASTを、Altschul etal, (1997) Nucleic Acids Research 25(17):3389-3402に記載されるように利用することができる。BLASTプログラム及びギャップBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトのパラメータ(例えばXBLAST及びNBLAST)を使用することができる。代替的には、同一性又は相同性は、ClustalW_Bioeditアルゴリズム(Thompson JD et al. (1994) Nucleic Acids Res 22:4673-4680)を利用した比較によって、ソフトウェアパッケージBioedit(http://www.mbio.ncsu.edu/BioEdit/bioedit.htmlにより利用可能である)のデフォルトの設定を用いて決定することができる。
【0021】
好ましくは、本発明の単離ペプチドはBMP2活性を示す。本発明の単離ペプチドは、単離ペプチドが野生型BMP2の活性、すなわち配列番号1を有するプロセシングされた活性ヒトBMP2の活性の少なくとも25%を保持する場合にBMP2活性を示すものとして分類される。好ましくは、本発明の単離ペプチドは野生型BMP2の活性の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも95%の活性を示す。BMP2活性は多数の異なる方法で測定することができる。本発明の単離ペプチド及び対照(活性ヒトBMP2)のBMP2活性を1つの同じ試験で決定する限りは、BMP2活性試験の正確な性質はあまり重要でない。BMP2活性を試験するのに好適な多数の異なる試験は当業者には十分に理解される。好ましくは、BMP2活性はニワトリマイクロマス培養系(chMM)試験を用いて試験される。ニワトリマイクロマス培養系(chMM)は、軟骨分化のin vitroモデルである(DeLise AM, Stringa E, Woodward WA, Mello MA, Tuan RS 2000 Embryoniclimb mesenchyme micromass culture as an in vitro model for chondrogenesis andcartilage maturation. Methods Mol Biol. 137:359-75.)(SeemannP, Schwappacher R, Kjaer KW, Krakow D, Lehmann K, Dawson K, Stricker S, Pohl J,Ploeger F, Staub E,Nickel J, Sebald W, Knaus P, Mundlos S. 2005 Activating and deactivatingmutations in the receptor interaction site of GDF5 cause symphalangism orbrachydactyly type A2. J Clin Invest. 2005 Sep;115(9):2373-81.)。ここでは、ニワトリ肢芽から調製される一次間葉細胞が軟骨細胞へと分化する。細胞外マトリックス産生は初期軟骨形成のマーカーとして用いられ、3日間〜7日間のインキュベーションの後、アルシアンブルー染色を用いて定量することができる。このシステムにおいて特異的遺伝子を試験するためには、細胞に対象の遺伝子が組み込まれた複製可能なトリ肉腫(RCAS)ウイルスを感染させる。chMMにおけるhBMP2の過剰発現は、細胞増殖及び軟骨形成マトリックス産生を劇的に誘導することが知られている(Duprez DM, Coltey M, Amthor H, Brickell PM, Tickle C.1996 Bonemorphogenetic protein-2 (BMP-2) inhibits muscle development and promotescartilage formation in chick limb bud cultures. Dev Biol. Mar 15;174(2):448-52.)。対照的に、NogginとhBMP2との同時発現は、記載の分化効果の完全な阻害をもたらす。
【0022】
配列番号1及び/又は配列番号11と比較した配列同一性に加えて、本発明の単離ペプチドは、上記アミノ酸配列が少なくとも2つのアミノ酸置換を含むことをさらに特徴とするが、第1のアミノ酸置換は配列番号1のN59、S88、E94、V99、K101及び/又はN102に相当する位置に生じる。本明細書中で使用される場合、アミノ酸置換という用語は、所与の位置の特定のアミノ酸の欠失及び/又は置換を指す。特に(particular)好ましい方法では、アミノ酸置換という用語は、単に所与の位置の特定のアミノ酸の置換であると理解され得る。具体的には、各々の置換は少なくとも置換されるアミノ酸の種類によって、好ましくは一文字コードで、また、配列番号1に基づく上記アミノ酸の正確な位置を示すことによって記載される。特定の置換は、置換されるアミノ酸を置き換えるのに用いられるアミノ酸(複数可)を指定することによってさらに明記することができる。いずれの場合にも、位置番号の前に指定された特定のアミノ酸のみが特定の置換によって置換される。置換によって配列からの上記アミノ酸の欠失、ちょうど1つの他のアミノ酸による上記アミノ酸の置換、及び/又は2つ以上の他のアミノ酸、好ましくは多くとも3つの他のアミノ酸、より好ましくは2つの他のアミノ酸による上記アミノ酸の置換がもたらされ得る。
【0023】
好ましくは、本発明の単離ペプチドは、第1のアミノ酸置換がN59K、N59T、N59V、N59E、S88A、E94P、V99T、V99Y、K101I、K101L、N102S、N102V、N102W及び/又はN102YHから選択されることを特徴とする。より好ましくは、本発明の単離ペプチドはN59、E94、K101及び/又はN102の位置、最も好ましくはN59又はN102の位置に少なくとも1つの置換を含む。さらにより好ましい実施の形態では、本発明の単離ペプチドは、第1のアミノ酸置換がN59K、N59T、N59V、N59E、E94P、K101I、K101L、N102S、N102V、N102W及び/又はN102YHから選択されることを特徴とする。
【0024】
さらに好ましい実施の形態では、本発明の単離ペプチドは単離ペプチドが第2のアミノ酸置換を含むことを特徴とするが、該第2のアミノ酸置換は該第1のアミノ酸置換とは異なり、配列番号1のD22、S24、V26、N29、D30、V33、A34、P36、G37、H39、F41、H44、P48、A52、D53、L55、N59、S88、E94、V99、K101及び/又はN102に相当する位置に生じる。より好ましくは、本発明の単離ペプチドは、第2のアミノ酸置換がD22R、D22S、D22H、S24G、S24H、S24E、S24Q、V26L、N29T、N29Q、D30A、D30T、V33I、V33R、A34Y、A34D、P36K、P36R、P36S、G37T、H39A、F41N、H44D、P48S、A52N、D53A、D53Y、L55M、N59K、N59T、N59V、N59E、S88A、E94P、V99T、V99Y、K101I、K101L、N102S、N102V、N102W及び/又はN102YHから選択されることを特徴とする。
【0025】
別の好ましい実施の形態では、本発明の単離ペプチドは、第2のアミノ酸置換が配列番号1のD22、S24、N29、D30、V33、A34、P36、G37、D53、N59、S88、E94、V99、K101及び/又はN102に相当する位置に生じることを特徴とする。より好ましくは、本発明の単離ペプチドは、第2のアミノ酸置換がD22R、D22S、D22H、S24G、S24H、S24E、N29T、D30A、D30T、V33R、A34Y、A34D、P36K、P36R、P36S、G37T、D53Y、N59K、N59T、N59V、N59E、S88A、E94P、V99T、V99Y、K101I、K101L、N102S、N102V、N102W及び/又はN102YHから選択されることを特徴とする。
【0026】
さらに好ましい実施の形態では、本発明の単離ペプチドは単離ペプチドが第3のアミノ酸置換を含むことを特徴とするが、該第3のアミノ酸置換は第1及び第2のアミノ酸置換とは異なり、配列番号1のD22、S24、N29、D30、V33、A34、P36、G37、D53、N59、S88、E94、V99、K101及び/又はN102に相当する位置に生じる。より好ましくは、本発明の単離ペプチドは、第3のアミノ酸置換がD22R、D22H、S24G、S24H、S24E、N29T、D30A、D30T、V33R、A34Y、A34D、P36K、P36R、P36S、G37T、D53Y、N59K、N59T、N59V、N59E、S88A、E94P、V99T、V99Y、K101I、K101L、N102V、N102YH、N102S及び/又はN102Wから選択されることを特徴とする。
【0027】
さらに好ましい実施の形態では、本発明の単離ペプチドは単離ペプチドが第4のアミノ酸置換を含むことを特徴とするが、該第4のアミノ酸置換は第1、第2及び第3のアミノ酸置換とは異なり、配列番号1のD22、S24、N29、D30、V33、A34、P36、G37、D53、N59、S88、E94、V99、K101及び/又はN102に相当する位置に生じる。より好ましくは、本発明の単離ペプチドは、第4のアミノ酸置換がD22R、D22H、S24G、S24H、S24E、N29T、D30A、D30T、V33R、A34Y、A34D、P36K、P36R、P36S、G37T、D53Y、N59K、N59T、N59V、N59E、S88A、E94P、V99T、V99Y、K101I、K101L、N102V、N102YH、N102S及び/又はN102Wから選択されることを特徴とする。
【0028】
本発明の単離ペプチドは以下のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる可能性がある:
配列番号1に基づき、置換N59K及びV99Tを有する配列番号2;
配列番号1に基づき、置換N59K及びN102YHを有する配列番号3;
配列番号1に基づき、置換N59T及びV99Tを有する配列番号4;
配列番号1に基づき、置換N59T及びN102YHを有する配列番号5;
配列番号1に基づき、置換V99T及びN102YHを有する配列番号6;
配列番号1に基づき、置換N59T及びS24Eを有する配列番号7;
配列番号1に基づき、置換N59K及びP36Kを有する配列番号8;
配列番号1に基づき、置換N59K、N102YH及びS24Eを有する配列番号9;
配列番号11に基づき、置換N59K及びV99Tを有する配列番号12;
配列番号11に基づき、置換N59K及びN102YHを有する配列番号13;
配列番号11に基づき、置換N59T及びV99Tを有する配列番号14;
配列番号11に基づき、置換N59T及びN102YHを有する配列番号15;
配列番号11に基づき、置換V99T及びN102YHを有する配列番号16;
配列番号11に基づき、置換N59T及びS24Eを有する配列番号17;
配列番号11に基づき、置換N59K及びP36Kを有する配列番号18;及び/又は
配列番号11に基づき、置換N59K、N102YH及びS24Eを有する配列番号19。
【0029】
本発明の単離ペプチドは、上記に規定される少なくとも2つのアミノ酸置換の他に存在するさらなるアミノ酸置換を含み得る。
【0030】
本発明の単離ペプチドは、さらなるタンパク質特性を変更するさらなる修飾、例えば突然変異を含有し得る。かかる特性としては、BMP2活性、Noggin及び/又は他の阻害物質又はBMP2のアンタゴニストに対する耐性、並びに安定性若しくは免疫原性等の特性、又はPEG化若しくはグリコシル化等の翻訳後修飾を可能にするか、若しくは妨げる特性を挙げることができる。本発明の単離ペプチドは、1つ又は複数の側鎖又は末端の合成誘導体化(derivatization)、グリコシル化、PEG化、循環置換(circularpermutation)、環化、タンパク質又はタンパク質ドメインへの融合、及びペプチドタグ又は標識の付加を含むが、これらに限定されない翻訳時修飾又は翻訳後修飾を受けていてもよい。
【0031】
本発明の単離ペプチドは既知の方法に従って調製することができる。かかる方法には、かかる単離ペプチドの合成的de novo合成、及び/又は単離ペプチドをコードする核酸からの本発明の単離ペプチドの発現が包含される。特定の好ましい方法では、本発明の単離ペプチドは本発明の単離核酸を用いた発現によって調製される。
【0032】
本発明は、本発明の単離ペプチドをコードする核酸配列を含むか、若しくはそれからなる、又は本発明の単離ペプチドをコードする核酸配列と標準条件下でハイブリダイズする核酸配列を含むか、若しくはそれからなる単離核酸に言及する。「標準的なハイブリダイゼーション条件」という用語は、広義に理解され、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件及び/又はあまりストリンジェントでないハイブリダイゼーション条件の両方を意味する。かかるハイブリダイゼーション条件は、とりわけSambrook J, Fritsch E F, Maniatis T et al., Molecular Cloning-ALaboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989,pages 9.31-9.57、又はCurrent Protocols in MolecularBiology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1 - 6.3.6に記載されている。例えば、洗浄工程(複数可)中の条件は、低ストリンジェンシーの条件(50℃でおよそ2×SSC)及び高ストリンジェンシーの条件(50℃、好ましくは65℃でおよそ0.2×SSC)によって限定される範囲の条件から選択することができる(20×SSC:0.3Mクエン酸ナトリウム、3M NaCl、pH7.0)。加えて、洗浄工程中の温度は、室温(およそ22℃)という低ストリンジェンシー条件から、およそ65℃というよりストリンジェントな条件まで上昇させることができる。塩濃度及び温度の両方のパラメータを同時に変化させることができ、その2つのパラメータのうち一方を一定に保ち、他方のみを変化させることも可能である。ハイブリダイゼーションにおいて変性剤、例えばホルムアミド又はSDSを採用することも可能である。50%ホルムアミドの存在下でのハイブリダイゼーションは好ましくは42℃で行われる。ハイブリダイゼーション及び洗浄工程に関する幾つかの例示的な条件を下記に示す:
(1)例えば
a)65℃で4×SSC、又は
b)65℃で6×SSC、0.5%SDS、100μg/mlの変性断片化サケ精子DNA、又は
c)42℃で4×SSC、50%ホルムアミド、又は
d)50℃で2×SSC若しくは4×SSC(低ストリンジェンシー条件)、又は
e)42℃で2×SSC若しくは4×SSC、30%〜40%ホルムアミド(低ストリンジェンシー条件)、又は
f)45℃で6×SSC、又は
g)0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)、2mM EDTA、1%BSA及び7%SDS
というハイブリダイゼーション条件。
(2)例えば
a)65℃で0.1×SSC、又は
b)68℃で0.1×SSC、0.5%SDS、又は
c)42℃で0.1×SSC、0.5%SDS、50%ホルムアミド、又は
d)42℃で0.2×SSC、0.1%SDS、又は
e)65℃で2×SSC(低ストリンジェンシー条件)、又は
f)40mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)、1%SDS、2mM EDTA
という洗浄工程。
【0033】
本発明の単離核酸は、当該技術分野で既知の方法に従って調製することができる。好ましい方法では、本発明の単離核酸は全遺伝子合成(total gene synthesis)、又は野生型の若しくは修飾されたBMPをコードする核酸の部位特異的突然変異誘発によって調製することができる。鋳型特異的ライゲーション(template-directed ligation)、再帰的PCR(recursivePCR)、カセット変異導入、部位特異的突然変異誘発、又は当該技術分野で既知の他の技法を含む方法を利用してもよい(例えば、Strizhov et al. PNAS 93:15012-15017 (1996)、Prodromouand Perl, Prot. Eng. 5: 827-829 (1992)、Jayaraman andPuccini, Biotechniques 12: 392-398 (1992)、及びChalmers etal. Biotechniques 30: 249-252 (2001)を参照されたい)。
【0034】
本発明の単離核酸は、本発明の単離核酸にさらなる機能を付加し得るさらなる核酸配列を含んでいてもよい。例えば、そのようなさらなる核酸配列には、本発明の単離ペプチドの適切な発現を可能にする核酸配列が含まれ、プロモーター配列、制御配列、停止シグナル、複製起点等が包含され得る。かかる機能的核酸配列及び所望の特性を有する核酸分子に達するためにそれらを配列する方法は当業者には十分に理解される。
【0035】
本発明は、本発明の単離ペプチドを発現するトランスジェニック生物又は細胞にも言及する。好ましくは、上記トランスジェニック生物又は細胞は本発明の単離核酸を含むことを特徴とする。したがって、本発明は、少なくとも1つの単離核酸若しくは少なくとも1つのトランスジェニック発現カセット、若しくは本発明の単離ペプチドをコードする少なくとも1つのベクターで一時的に又は安定に形質転換若しくはトランスフェクトしたトランスジェニック生物若しくは細胞、又はかかるトランスジェニック生物若しくは細胞の子孫に関する。さらに、本発明は本発明のトランスジェニック生物の細胞、細胞培養物、組織及び/又は一部分に関する。本発明の目的上、「トランスジェニック生物」という用語が、本発明の核酸が一時的に又は安定に導入された生物を包含するだけでなく、世代距離に関わらず、かかる生物の子孫、例えば第1代の子孫及び第X代の子孫も指す(ただし、これらの生物は依然として本発明の核酸を含み、及び/又は本発明の単離ペプチドを発現する)。
【0036】
好ましくは、トランスジェニック生物又は細胞は原核生物起源又は真核生物起源であり、好ましくはトランスジェニック生物は微生物である。好ましい微生物は細菌、酵母、藻類又は真菌である。
【0037】
形質転換生物又は形質転換細胞の調製には、適当なDNAを適当な宿主生物又は細胞に導入することが必要とされる。非常に多数の方法が、形質転換と称されるこのプロセスに利用可能である(Keown et al. 1990 Methods in Enzymology 185:527-537も参照されたい)。したがって、例としては、DNAはマイクロインジェクション又はDNAをコーティングした微粒子又はナノ粒子による遺伝子銃(bombardment)によって直接導入することができる。DNAが拡散によって細胞に侵入することができるように、細胞を例えばポリエチレングリコールを用いて化学的に透過処理してもよい。DNAの導入はミニ細胞、細胞、リソソーム又はリポソーム等の他のDNA含有単位とのプロトプラスト融合によっても行うことができる。DNAを導入する別の好適な方法は、細胞を電気的刺激によって可逆的に透過処理するエレクトロポレーションである。
【0038】
本発明は、疾患又は病態の治療、例えばBMP関連の疾患又は病態の治療に使用される本発明の単離ペプチド及び/又は本発明の単離核酸にも関し、ここで、かかる疾患又は病態は以下のものを含む:
骨、軟骨、非石灰化骨格又は結合組織の形成;
代謝性疾患、例えば代謝性骨疾患における骨量の低下及び/又は増加の治療(米国特許第5,674,844号);
破壊、骨折(fracture)及び/又は断裂等の損傷部位での骨及び/又は軟骨の置換又は修復(米国特許第5,733,878号)、例えば脊椎又は椎骨の修復;
歯周組織再生(米国特許第5,733,878号);
肝再生(米国特許第5,849,686号);
慢性腎不全(米国特許第6,861,404号);
中枢神経系の虚血又は外傷後の機能回復の促進(米国特許第6,407,060号);
樹状突起成長(米国特許第6,949,505号);
神経細胞接着(米国特許第6,800,603号);
パーキンソン病(米国特許第6,506,729号)。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「治療する」という用語は、かかる用語が用いられる疾患、障害若しくは病態、又はかかる疾患、障害若しくは病態の1つ又は複数の症状の進行を回復に反転させ、軽減、又は阻害することを指す。本明細書中で使用される場合、「治療する」とは、哺乳動物における疾患、障害又は病態の発生の可能性又は発生率(incidence)を未治療対照集団、又は治療前の同じ哺乳動物と比較して低下させることを指す場合もある。例えば、本明細書中で使用される場合、「治療する」とは疾患、障害又は病態を予防することを指す場合があり、疾患、障害若しくは病態の発症を遅延させる若しくは予防すること、又は疾患、障害若しくは病態に関連した症状を遅延させる若しくは予防することを含み得る。本明細書中で使用される場合、「治療する」とは、哺乳動物が疾患、障害又は病態で苦しむ前に疾患、障害若しくは病態、又はかかる疾患、障害若しくは病態に関連した症状の重症度を低減することを指す場合もある。苦痛の前の疾患、障害又は病態のかかる予防又は重症度の低減は、本明細書中で記載されるような本発明の組成物を、投与の時点で疾患、障害又は病態で苦しんでいない被験体に投与することに関する。本明細書中で使用される場合、「治療する」とは疾患、障害若しくは病態、又はかかる疾患、障害若しくは病態に関連した1つ又は複数の症状の再発を予防することを指す場合もある。「治療」及び「治療的に」という用語は、本明細書中で使用される場合、治療する行為を指し、「治療する」は上記に規定されている。
【0040】
本発明のペプチド及び/又は単離核酸は、薬剤の製造、好ましくはBMP関連の疾患又は病態の治療のための薬剤の製造に使用することができ、ここで、かかる疾患又は病態は骨、軟骨、非石灰化骨格又は結合組織の形成、代謝性疾患、破壊、破損及び/又は断裂等の損傷部位での骨及び/又は軟骨の置換又は修復、歯周組織再生、肝再生、慢性腎不全、中枢神経系の虚血又は外傷後の機能回復の促進、樹状突起成長、神経細胞接着、パーキンソン病を含む。
【0041】
本発明は、本発明のペプチド及び/又は単離核酸、並びに任意で1つ又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物にも関する。ヒト療法に使用される場合、本発明の単離ペプチド又は核酸及び/又はそれらの薬学的に許容可能な塩は概して、1つ又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤と関連する剤形として投与される。「賦形剤」という用語は、本明細書中で本発明の化合物以外の任意の成分を説明するために使用される。賦形剤の選択は特定の投与様式に大きく依存する。
【0042】
本発明の化合物は経口投与することができる。経口投与は、化合物が消化管へ入る嚥下を含み、又は化合物が口から直接血流中に侵入する口腔投与若しくは舌下投与を採用してもよい。経口投与に好適な剤形としては、錠剤等の固体剤形;微粒子、液体又は粉末を含有するカプセル剤;トローチ剤(液体入りを含む);及び咀嚼錠(chews);多粒子及びナノ粒子;ゲル;固溶体;リポソーム;フィルム、腔坐剤(ovules)、スプレー剤並びに液体剤形が挙げられる。
【0043】
液体剤形としては懸濁液、溶液、シロップ及びエリキシルが挙げられる。かかる剤形は軟カプセル剤又は硬カプセル剤中の充填剤として採用することができ、典型的には担体、例えば水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、又は好適な油、及び1つ又は複数の乳化剤及び/又は懸濁剤を含む。液体剤形は固体、例えばサシェ剤からの再構成によって調製することもできる。
【0044】
本発明の化合物は、当該技術分野の技術水準において記載されるような速溶性、速崩壊性の投薬形態で使用してもよい。
【0045】
錠剤投薬形態については、用量に応じて、薬物は投薬形態の1重量%〜80重量%、より典型的には投薬形態の5重量%〜60重量%を構成し得る。薬物に加えて、錠剤は一般に崩壊剤を含有する。崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルファ化デンプン及びアルギン酸ナトリウムが挙げられる。一般に、崩壊剤は投薬形態の1重量%〜25重量%、好ましくは5重量%〜20重量%を構成する。
【0046】
結合剤は一般に、錠剤剤形に凝集性を付与するために使用される。好適な結合剤としては、微結晶性セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然ゴム及び合成ゴム、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、並びにヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。錠剤は、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物等)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微結晶性セルロース、デンプン及び二塩基性リン酸カルシウム二水和物等の希釈剤を含有してもよい。
【0047】
錠剤は任意でラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベート80等の界面活性剤、並びに二酸化ケイ素及びタルク等の流動促進剤を含んでいてもよい。存在する場合には、界面活性剤は、錠剤の0.2重量%〜5重量%を構成し、流動促進剤は、錠剤の0.2重量%〜1重量%を構成し得る。
【0048】
錠剤はまた、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物等の滑剤を含有してもよい。滑剤は一般に、錠剤の0.25重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜3重量%を構成する。
【0049】
他の可能な成分としては、抗酸化剤、着色剤、香料、防腐剤及び矯味剤が挙げられる。
【0050】
例示的な錠剤は、約80%までの薬物、約10重量%〜約90重量%の結合剤、約0重量%〜約85重量%の希釈剤、約2重量%〜約10重量%の崩壊剤、及び約0.25重量%〜約10重量%の滑剤を含有する。
【0051】
錠剤ブレンドを直接又はローラーにより圧縮して、錠剤を形成することができる。代替的には、錠剤化の前に錠剤ブレンド又はブレンドの一部を湿式造粒、乾式造粒若しくは溶融造粒するか、溶融凝固させるか、又は押し出すことができる。最終的な剤形は、1つ又は複数の層を含んでいてもよく、コーティングされていても、又はコーティングされていなくてもよい。さらにカプセル化されていてもよい。
【0052】
錠剤の剤形は当該技術分野で標準的である。
【0053】
ヒトが使用するための摂取可能な経口フィルムは典型的には、柔軟な水溶性又は水膨潤性の薄膜投薬形態であり、これは迅速に溶解するか、又は粘膜接着性であってもよく、典型的には単離ペプチド又は核酸、フィルム形成ポリマー、結合剤、溶媒、湿潤剤、可塑剤、安定剤又は乳化剤、粘度調節剤及び溶媒を含む。製剤の幾つかの成分は、2つ以上の機能を果たすことがある。
【0054】
本発明の単離ペプチド又は核酸は水溶性であっても、又は不水溶性であってもよい。水溶性化合物は典型的には、1重量%〜80重量%、より典型的には20重量%〜50重量%の溶質を含む。溶解度の低い化合物は、より高い割合の組成物、典型的には88重量%までの溶質を含んでいてもよい。代替的には、本発明の単離ペプチド又は核酸は多粒子ビーズの形態であってもよい。
【0055】
フィルム形成ポリマーは、天然多糖類、タンパク質又は合成親水コロイドから選択することができ、典型的には0.01重量%〜99重量%の範囲、より典型的には30重量%〜80重量%の範囲で存在する。
【0056】
他の可能な成分としては、抗酸化剤、着色剤、香料及びフレーバー強化剤、防腐剤、唾液刺激剤、冷却剤、補助溶媒(油を包む)、軟化剤(emollients)、増量剤、消泡剤、界面活性剤及び矯味剤が挙げられる。
【0057】
本発明によるフィルムは典型的には、剥離可能なバッキング支持体(backing support)又は紙にコーティングされた薄い水性フィルムを蒸発乾燥させることにより調製される。これは、乾燥オーブン又は乾燥トンネル、典型的には複合コータードライヤー(combined coater dryer)、又は凍結乾燥若しくは真空化により行うことができる。
【0058】
経口投与のための固体剤形は、即時放出及び/又は調節放出(modified release)になるように製剤化することができる。調節放出剤形としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出及びプログラム放出の剤形が挙げられる。
【0059】
本発明の目的に好適な調節放出剤形は、米国特許第6,106,864号に記載されている。高エネルギー分散液及び浸透性のコーティングされた粒子等の他の好適な放出技術の詳細は、当該技術分野で見ることができる。制御放出を達成するためにチューインガムを使用することは、例えば国際公開第00/35298号に記載されている。
【0060】
本発明の化合物は、血流中、筋肉内又は内臓内に直接投与することもできる。非経口投与に好適な手段としては、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、及び皮下が挙げられる。非経口投与のための適切なデバイスとしては、針(微細針を包む)注射器、無針注射器及び点滴技法が挙げられる。
【0061】
非経口剤形は典型的には、塩、炭水化物及び緩衝剤(好ましくはpHを3から9にする)等の賦形剤を含有していてもよい水溶液であるが、用途によっては、これらをより好適には無菌非水溶液として、又は無菌発熱性物質除去蒸留水等の好適な媒体と共に使用される乾燥形態として製剤化することができる。
【0062】
例えば、凍結乾燥による滅菌条件下での非経口剤形の調製は、当業者に既知の標準的な薬学的技法を使用して容易に達成することができる。
【0063】
非経口溶液の調製に使用される本発明の単離ペプチド又は核酸の溶解度は、溶解度増強剤を加える等の適当な製剤技法を使用することにより増大させることができる。
【0064】
非経口投与のための剤形は、即時放出及び/又は調節放出になるように製剤化することができる。調節放出剤形としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出及びプログラム放出の剤形が挙げられる。したがって、本発明の化合物を、活性化合物の調節放出をもたらす埋め込みデポー(implanted depot)として投与するための固体、半固体又はチキソトロピー液(thixotropicliquid)として製剤化することができる。このような剤形の例としては、薬物をコーティングしたステント及びPGLAポリ(dl−乳酸−コグリコール酸)(PGLA)ミクロスフェアが挙げられる。
【0065】
本発明の化合物は、皮膚又は粘膜に局所的に、すなわち皮膚的(dermally)又は経皮的に投与することもできる。この目的のための典型的な剤形としては、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、散布剤、包帯、フォーム、フィルム、皮膚パッチ、ウエハー、インプラント、スポンジ、ファイバー、帯具及びマイクロエマルジョンが挙げられる。リポソームを使用することもできる。典型的な担体としては、アルコール、水、鉱物油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールが挙げられる。浸透促進剤を加えてもよい。
【0066】
局所投与の他の手段としては、エレクトロポレーション、イオン導入、音波泳動、超音波導入、及び極微針又は無針(例えば、Powderject(商標)、Bioject(商標)等)注射による送達が挙げられる。
【0067】
局所投与用剤形を、即時放出及び/又は調節放出になるように製剤化することができる。調節放出剤形としては、、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出及びプログラム放出の剤形が挙げられる。
【0068】
本発明の化合物は、典型的には乾燥粉末用吸入器からの乾燥粉末(単独で、例えばラクトースとの乾燥ブレンドでの混合物として、又は例えばホスファチジルコリン等のリン脂質と混合した混合成分粒子として)の形態で、又は1,1,1,2−テトラフルオロエタン若しくは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン等の好適な噴霧剤を使用する、若しくは使用しない、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザ(好ましくは細かい霧を生じる電気流体力学を用いるアトマイザ)、若しくはネブライザからのエアロゾルスプレーとして鼻腔内に又は吸入によって投与することもできる。鼻腔内使用では、粉末は生体接着剤、例えばキトサン又はシクロデキストリンを含み得る。
【0069】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザ又はネブライザは、例えばエタノール、エタノール水溶液、又は有効成分(active)の分散、可溶化、若しくは徐放(extending release)に好適な代替薬剤、溶媒としての噴霧剤(複数可)、及びトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸又はオリゴ乳酸等の任意の界面活性剤を含む本発明の単離ペプチド又は核酸の溶液又は懸濁液を含有する。
【0070】
吸入/鼻腔内投与のための剤形を、例えばPGLAを使用する即時放出及び/又は調節放出になるように製剤化することができる。調節放出剤形としては、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出及びプログラム放出の剤形が挙げられる。
【0071】
本発明の化合物を、上述の投与様式のいずれかに使用されるそれらの溶解性、溶解速度、味覚遮蔽性(taste-masking)、生体利用能及び/又は安定性を改善するためにシクロデキストリン及び適切なその誘導体、又はポリエチレングリコール含有ポリマー等の可溶性の巨大分子と組み合わせることができる。
【0072】
薬物−シクロデキストリン複合体は例えば、大抵の投薬形態及び投与経路に概して有用であることが分かっており、包接複合体と非包接複合体との両方を使用することができる。薬物との直接複合体化の代替として、シクロデキストリンを補助添加剤、すなわち担体、希釈剤又は可溶化剤として使用することができる。これらの目的で最も一般的に使用されるのはα−、β−及びγ−シクロデキストリンであり、それらの例は国際特許出願の国際公開第91/11172号、国際公開第94/02518号及び国際公開第98/55148号に見ることができる。
【0073】
ヒト患者への投与では、本発明の化合物の一日総用量は、もちろん投与様式に依存するが、典型的には0.001mg〜5000mgの範囲である。例えば、一日静注用量は、0.001mg〜40mgしか必要とされない場合もあり、一日総用量は単回又は分割して投与され得るが、医師の判断で本明細書中に示される典型的な範囲に入らない場合もある。これらの投与量は、体重が約65kg〜70kgの平均的なヒト被験体に基づくものである。医師は、幼児や高齢者等の体重がこの範囲に入らない被験体に関して用量を容易に決定することができる。
【0074】
さらなる態様では、本発明は、BMP関連の疾患又は病態を(of of)治療する方法であって、かかる疾患又は病態が骨、軟骨、非石灰化骨格又は結合組織の形成、代謝性疾患、破壊、破損及び/又は断裂等の損傷部位での骨及び/又は軟骨の置換又は修復、歯周組織再生、肝再生、慢性腎不全、中枢神経系の虚血又は外傷後の機能回復の促進、樹状突起成長、神経細胞接着、パーキンソン病を含み、かかる治療を必要とする被験体に、有効量の本発明の単離ペプチド及び/又は本発明の単離核酸を、任意で1つ又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤と共に投与することを特徴とする、方法を提供する。
【0075】
本発明によると、単離ペプチド、単離核酸及び/又はそれを有効成分として含む薬剤は好ましくは有効量で投与される。「有効量」とは、患者へ投与した際に、対象の疾患に関して測定可能な治療効果をもたらす有効成分の用量である。本発明において、有効量とは、患者へ投与した際に、上記に明記した疾患又は病態の1つ又は複数に関して、それを患う患者において治療効果をもたらす単離ペプチド又は核酸の用量である。好ましくは、単離ペプチド又は核酸は、1回の治療又は投与につき5mg/kg体重を超えない用量で投与される。特に、本発明の単離ペプチド又は核酸は、1回の治療又は投与につき1ng/kg〜1g/kg体重、好ましくは1回の治療又は投与につき0.01μg/kg〜5000μg/kg体重の用量で投与することができる。急性の副作用が起こるのを防ぐためには、単離ペプチド又は核酸を10mg/kg体重を超えない最大累積日用量で投与することが推奨される。
【0076】
以下の実験の項において、本発明を図面及び実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0077】
実験の項及び図面全体を通して、特定のアミノ酸及びアミノ酸位置は配列番号11に関して言及される。これらのアミノ酸及びアミノ酸位置は、単に位置番号から282を引くことによって配列番号1に関するアミノ酸及びアミノ酸位置へと容易に置き換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】Aは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、N384YH置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。ニワトリマイクロマスにおける間葉前駆体細胞のアルシアンブルー染色された軟骨性細胞外マトリックスを示す。図中、rel.ECM staining:相対的ECM染色、Control:対照、wt:野生型を意味し以下同じ。Bは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、N384YH置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。定量結果を示す。
【図2】Aは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、S306E+N341T置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。ニワトリマイクロマスにおける間葉前駆体細胞のアルシアンブルー染色された軟骨性細胞外マトリックスを示す。Bは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、S306E+N341T置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。定量結果を示す。
【図3】Aは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、P318K+N341K置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。ニワトリマイクロマスにおける間葉前駆体細胞のアルシアンブルー染色された軟骨性細胞外マトリックスを示す。Bは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、P318K+N341K置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。定量結果を示す。
【図4】Aは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、N341T+N384YH置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。ニワトリマイクロマスにおける間葉前駆体細胞のアルシアンブルー染色された軟骨性細胞外マトリックスを示す。Bは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、N341T+N384YH置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。定量結果を示す。
【図5】Aは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、N341K+N384YH置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。ニワトリマイクロマスにおける間葉前駆体細胞のアルシアンブルー染色された軟骨性細胞外マトリックスを示す。Bは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、N341K+N384YH置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。定量結果を示す。
【図6】Aは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、S306E+N341T+N384YH置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。ニワトリマイクロマスにおける間葉前駆体細胞のアルシアンブルー染色された軟骨性細胞外マトリックスを示す。Bは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、S306E+N341T+N384YH置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。定量結果を示す。
【図7】Aは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、S306E置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。ニワトリマイクロマスにおける間葉前駆体細胞のアルシアンブルー染色された軟骨性細胞外マトリックスを示す。Bは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、S306E置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。定量結果を示す。
【図8】Aは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、P318K置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。ニワトリマイクロマスにおける間葉前駆体細胞のアルシアンブルー染色された軟骨性細胞外マトリックスを示す。Bは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、P318K置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。定量結果を示す。
【図9】Aは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、N341T置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。ニワトリマイクロマスにおける間葉前駆体細胞のアルシアンブルー染色された軟骨性細胞外マトリックスを示す。Bは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、N341T置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。定量結果を示す。
【図10】Aは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、N341K置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。ニワトリマイクロマスにおける間葉前駆体細胞のアルシアンブルー染色された軟骨性細胞外マトリックスを示す。Bは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、N341K置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。定量結果を示す。
【図11】Aは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、V381T置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。ニワトリマイクロマスにおける間葉前駆体細胞のアルシアンブルー染色された軟骨性細胞外マトリックスを示す。Bは、chMM試験においてNogginの存在下又は非存在下で、V381T置換を有するBMP2の軟骨形成に対する影響を示す図である。定量結果を示す。
【図12】単一の置換(S306E、P318K、N341T、N341K、V381T及びN384YH)を有するBMP2変異体の影響と、2つ以上の置換(S306E+N341T、P318K+N341K、N341T+N384YH、N341K+N384YH、S306E+N341K+N384YH)を有するBMP2変異体の影響との定量比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0079】
材料及び方法
BMP2−NOG複合体の構造は、X線結晶学によって解明された、NOG:BMP7構造(PDBエントリー1M4U)内のBMP7二量体のタンパク質データバンク(PDB)座標上でのヒトBMP2の配列のアラインメントによってモデル化されている(Groppe J, Greenwald J, Wiater E, Rodriguez-Leon J, Economides AN,Kwiatkowski W, Affolter M, Vale WW, Belmonte JC, Choe S., 2002, Structuralbasis of BMP signaling inhibition by the cystine knot protein Noggin. Nature12;420(6916):636-42)。BMP2−BMPR1A−ACVR2複合体は既に解明されている(PDBエントリー 2goo)(Allendorph GP, Vale WW, Choe S. 2006, Structure of the ternarysignaling complex of a TGF-beta superfamily member. Proc Natl Acad Sci U S A16;103(20):7643-8)。分子構造の画像はUCSFキメラパッケージ(http://www.cgl.ucsf.edu/chimera/)を用いて作成した。NogとI型及びII型受容体との結合部位は、PP_SITEを用いて決定した(Gao Y, Lai L (2004) Structure-based method for analyzingprotein-protein interfaces. J Mol Model 10:44-54)。
【0080】
BMP2変異体の機能特性決定のために、ニワトリマイクロマス培養系を使用した。このマイクロマス培養系は軟骨形成のin vitroモデルであり、BMP阻害物質Nogginの非存在下又は存在下でのBMP2又はBMP2変異体の生物活性のスクリーニングを可能にする(Duprez DM, Coltey M, Amthor H, Brickell PM, Tickle C., 1996, Bonemorphogenetic protein-2 (BMP-2) inhibits muscle development and promotescartilage formation in chick limb bud cultures. Dev Biol. 15;174(2):448-52)。
【0081】
ヒトBMP2のコード配列(cds)を、シャトルベクターpSLAX−13に5’適合NcoIオーバーハング及びBamHI部位を用いてクローニングした(Morgan BA, Fekete DM.,1996, Manipulating gene expression withreplication-competent retroviruses. Methods Cell Biol. 1996;51:185-218)。BMP2変異体を、ヒトBMP2 pSLAX13ベクターのin vitro突然変異誘発によって、以下の突然変異誘発プライマー対を用いて作製した:
V381T_fwd ctgtaccttgacgagaatgaaaaggttacgttaaagaactatcaggacatggttgtg(配列番号20)
V381T_rev cacaaccatgtcctgatagttctttaacgtaaccttttcattctcgtcaaggtacag(配列番号21)
S306E_fwd ccctttgtacgtggacttcgaggacgtggggtggaatgact(配列番号22)
S306E_fw agtcattccaccccacgtcctcgaagtccacgtacaaaggg(配列番号23)
P318K_fwd ctggattgtggctcccaaggggtatcacgccttt(配列番号24)
P318K_rev aaaggcgtgataccccttgggagccacaatccag(配列番号25)
N341K_fwd gctgatcatctgaactccactaagcatgccattgttca(配列番号26)
N341K_rev tgaacaatggcatgcttagtggagttcagatgatcagc(配列番号27)
N341T_fwd gatcatctgaactccactcatgccattgttcag(配列番号28)
N341T_rev gtctgaacaatggcatgagtagtggagttcagatga(配列番号29)
N384YH_fwd gaatgaaaaggttgtattaaagtaccactatcaggacatggttgtggagg(配列番号30)
N384YH_rev cctccacaaccatgtcctgatagtggtactttaatacaaccttttcattc(配列番号31)
【0082】
突然変異したヒトBMP2を含有する得られたベクターを、化学的にコンピテントな大腸菌Top10細胞に形質転換し、シークエンシングによって陽性クローンを選択した。挿入断片を、ClaIによってトリ特異的レトロウイルスベクターRCASBP−Aにサブクローニングした(Morgan BA, Fekete DM.,1996, Manipulating gene expression withreplication-competent retroviruses. Methods Cell Biol. 1996;51:185-218)。初めに、ニワトリNogginのcdsを、シャトルベクターpSLAX−13にNcoI適合5’オーバーハング及びBamHIを用いてクローニングし、ClaIによってRCASBP−Bにサブクローニングし、同じ細胞におけるBMP2及びNogginの重感染を行った。
【0083】
ウイルス産生については、ニワトリ線維芽細胞DF−1株を37℃で70%コンフルエンスまで培養し、3μgのRCAS構築物及び10μlのExGene 500(Fermentas)を用いて製造業者の使用説明書に従ってトランスフェクトした。細胞を、DF−1標準培地(DMEM 1g/lのグルコース、L−Glnを含まない;10%FCS;2%CS;2mM L−Gln、ペニシリン/ストレプトマイシン)を用いて、直径15cmの6つの細胞培養プレートが100%コンフルエンスを示すまで数回継代した。その後、培地をDF−1欠乏培地(DMEM 1g/lのグルコース、L−Glnを含まない;1%FCS;0.2%CS;2mM L−Gln、ペニシリン/ストレプトマイシン)に交換し、培地中にウイルス粒子を蓄積させた。3日間連続して、ウイルス粒子を含有する上清を採取し、液体窒素中で凍結し、さらなるプロセシングまで−80℃で保存した。
【0084】
凍結した上清を37℃で解凍し、氷上で0.45μm Duraporeフィルター(Millipore)を通して濾過した。続いて、4℃で3時間、22000rpmでの超遠心分離(ultrazentrifugation)(Rotor SW−32、Beckman)によってウイルス粒子を沈殿させた。上清を除去し、沈殿を氷上で1時間振盪することによって残りの培地に再懸濁した。最後に、ウイルスを液体窒素中で凍結し、−80℃で保存した。
【0085】
DF−1細胞を24ウェル培養皿プレートに、7.6×10細胞/ウェルの密度で播種し、70%〜80%コンフルエンスまで培養することによってウイルス力価を決定した。濃縮ウイルス上清を1×10−3から1×10−6まで希釈し、DF−1細胞に1μl/ウェル及び10μl/ウェルの希釈物それぞれを感染させた。RCASウイルスが感染した細胞を、モノクローナル抗体3C2及びVectastain ABCキット(Vector Laboratories Inc.)を用いて標識し、それぞれのウイルスの感染単位数を決定した。
【0086】
ウイルスを用いて、ニワトリマイクロマス培養物にNogginの存在下又は非存在下でBMP2又はBMP2変異体を重感染させた。受精鶏卵をTierzucht Lohmann(Cuxhafen,Germany)から入手し、加湿孵卵器内で37.5℃で4.5日間インキュベートした。Hamburger/Hamiltonステージ24の肢芽を摘出し、HBSS中ディスパーゼ(3mg/ml)とのインキュベーションによって外胚葉を除去した。細胞を、0.1%コラゲナーゼIa型及び0.1%トリプシンで消化し、続いて細胞懸濁液を40μmフィルター(BD Falcon)を通して濾過することによって肢芽から単離した。マイクロマス培養物を10μl滴中2×10細胞という密度で、24ウェル組織培養プレートの中央にプレーティングした。プレーティング直前に、濃縮した複製可能トリ肉腫(RCAS)ウイルス上清:野生型ヒトBMP2又はBMP2変異体のcdsを含有するRCASBP−A、及び野生型ニワトリNogのcdsを含有するRCASBP−Bを添加することによって感染を行った。細胞を37℃で5%COの加湿雰囲気下で2時間接着させた後、培地(DMEM−F12、10%FBS、0.2%ニワトリ血清、4mM L−Gln、ペニシリン/ストレプトマイシン)を補充した。培地を2日毎に交換した。5日後、マイクロマス培養物を、カール固定液(Kahles Fixative)(28.9%(v/v)エタノール、0.37%ホルムアルデヒド、3.9%(v/v)酢酸)で固定した後、アルシアンブルーを細胞外マトリックス産生を反映するプロテオグリカンに富んだ軟骨性マトリックスに加え、1N HCl中の0.05%アルシアンブルーで染色することによって染色した。染色の定量化は室温で一晩、6M塩酸グアニジンで抽出することによって達成した。色素濃度をOD595nmで分光光度法によって決定した。種々の実験の結果を比較するために、Nogginと共トランスフェクションしていない野生型hBMP2の値を、各々のデータセットにおいて1に正規化した。種々の変異体及び対照のNogginの存在下及び非存在下で測定したデータをこの値と相関させた。各々の条件について、4回の反復試験を並行して行った(Seemann P, Schwappacher R, Kjaer KW, Krakow D, Lehmann K, Dawson K,Stricker S, Pohl J, PloegerF, Staub E, Nickel J, Sebald W, Knaus P, Mundlos S. 2005, Activating anddeactivating mutations in the receptor interaction site of GDF5 causesymphalangism or brachydactyly type A2., J Clin Invest.115(9):2373-81)。
【0087】
結果
予測されたBMP2−NOG複合体の解析によって、BMP2中の以下のアミノ酸位置がNOGによるBMP2の阻害に必須であることが特定された:D304、S306、N311、D312、V315、A316、P318、G319、D335、N341、S370、E376、V381、K383、N384。コンピュータ内での突然変異誘発のシミュレーションをFoldXアルゴリズム(Guerois R, Nielsen JE, Serrano L (2002) Predicting changes in thestability of proteins and protein complexes: a study of more than 1000mutations. J Mol Biol 320:369-387)を用いて行い、Nogに対するBMP2の結合親和性を低下させるが、同時にBMP2とその受容体との結合に最小限にしか影響を及ぼさないBMP2のアミノ酸置換を特定した。本発明者らは、上記に言及する位置での以下のアミノ酸置換を見つけ出した:
【0088】
D304(配列番号1のD22)
D304は、NOGにおけるR210の可能な相互作用パートナーである。これらのアミノ酸置換は側鎖の結合を妨げるはずである。BMP7は相同位置にセリンを有し、NOGはBMP7に結合することが可能であるため、D304SがBMP2−NOG複合体に対してわずかな影響しか与えないことが提唱されている。予測されたBMP2−NOG複合体の理論的解析によって、アルギニン又はヒスチジンへのアミノ酸置換が複合体をD304Sよりも不安定にするという方向性が示唆される。したがって、好ましい置換はD304R/D304S/D304Hである。
【0089】
S306(配列番号1のS24)
S306はBMP2−NOGモデル内のD304及びN311と協調し(coordinates)、配向する。この3つの側鎖全てにはR210と相互作用する可能性がある。さらに、ループ307〜311は側鎖の協調によって安定化される。このループ、とりわけW210は、BMP2−BMPR1a相互作用に重要である。したがって、このループの変更は1型受容体の結合を妨げる可能性がある。BMP7における相同位置はアルギニンであり、これはBMP7:NOG複合体のQ318と水素結合を形成する。この相互作用はBMP−NOG接触部位に重要であるようである。BMP2は318位にプロリンを有するため、BMP2−NOG複合体内で同様の相互作用は可能でない。提唱された全てのアミノ酸置換は、この位置でBMP2変異体とNOGとの任意の相互作用を妨げるはずである。したがって、好ましい置換はS306G/S306H/S306Eである。
【0090】
N311(配列番号1のN29)
N311は、D304及びS306と同様、R210に近接する。トレオニンへの突然変異は、Nogに対する相互作用を妨げるが、S306への水素結合のためにBMP2とBMPR1Aとの相互作用に重要である、W310の必要な配向を維持するはずである。したがって、好ましい置換はN311Tである。
【0091】
D312(配列番号1のD30)
D312はNOGのQ208と相互作用し得る。アラニン又はトレオニンへの置換は、この相互作用を妨げるはずである。したがって、好ましい置換はD312A/D312Tである。
【0092】
V315(配列番号1のV33)
V315はL372及びA316と共に、NOG及びACVR2に対する疎水性接触部位(side)を構築する。アルギニンへの突然変異は、2型受容体への結合を可能にするが、NOG結合を妨げるはずである。アルギニンはACVR2のT63と相互作用するが、NOGのR204は立体障害をもたらす。したがって、好ましい置換はV315Rである。
【0093】
A316(配列番号1のA34)
A316はL372、V315、P317、P318及びL382と共に、NOGのL46及びACVR2のW79に対する疎水性接触部位を構築する。A316のチロシン又はアスパラギン酸へのアミノ酸置換は、NOG又はACVR2とのBMP2相互作用に対してマイナスの影響を与えるが、A316YはA316D突然変異よりもあまり劇的でないはずである。したがって、好ましい置換はA316Y/A316Dである。
【0094】
P318(配列番号1のP36)
P318はP317と共に、ペプチド主鎖、とりわけACVR2及びNOGの接触部位への屈曲にとって重要な残基である。この部位での全てのアミノ酸置換は、NOG及び2型受容体の結合に対してマイナスの影響を与えるはずである。リシン、アルギニン又はセリンへの置換は、最も強いマイナスの影響を与える。したがって、好ましい置換はP318K/P318R/P318Sである。
【0095】
G319(配列番号1のG37)
G319は、その湾曲した接触部位への主鎖の屈曲に重要である。トレオニンへの突然変異は主鎖の屈曲を妨げる可能性があり、したがって間接的に2型受容体又はNOGとのBMP2相互作用にマイナスの形で影響を与える。側鎖が受容体の逆方向を向いているため、直接的な影響は可能ではない。したがって、好ましい置換はG319Tである。
【0096】
D335(配列番号1のD53)
D335の側鎖は、NOGの主鎖に向かうNOGのN末端のM27及びY30との直接接触を有する。D355はBMPR1AのT78との水素結合を構築する。チロシンへのアミノ酸置換は、NOGに対する相互作用にBMPR1Aよりも効率的に影響を与えるはずである。したがって、好ましい置換はD335Yである。
【0097】
N341(配列番号1のN59)
N341は、BMP2二量体安定化及びBMPR1Aの接触部位に重要である。N341はNOGのN末端を二重水素結合を介して主鎖に向かって配向させる。この相互作用はリシン又はトレオニンへのアミノ置換によって妨げられる。この不安定化効果は、BMPR1Aへの結合よりもNOGへの結合に対して影響を与えるはずである。したがって、好ましい置換はN341K/N341T/N341V/N341Eである。
【0098】
S370(配列番号1のS88)
S370は、ACVR2の主鎖L80又はNOGのV44への水素結合を構築する。加えて、S370はN384の側鎖と協調し、NOGのN末端腕の配列に関与する。アラニンへのアミノ酸置換は、疎水性の相互作用と適合するため、ACVR2相互作用に影響を与えないはずである。一方、アラニン置換はNOGのN末端腕の配列に影響を与え、したがってBMP2−NOG結合を妨げる可能性がある。したがって、好ましい置換はS370Aである。
【0099】
E376(配列番号1のE94)
E376は、NOGのN末端腕を安定化する、NOGのR34及びQ28との水素結合を構築し得る。E376もBMPR1AのK111及びR126と水素結合を構築し得る(これはBMP2−RI/RIIモデルにおいては見られなかった)。したがって、プロリンへのアミノ酸置換は、BMPR1A相互作用に対してわずかな影響しか与えないが、同時に主鎖のループ(374〜377)を妨げ、それによりNOGのN末端腕を不安定にすると提唱されている。したがって、好ましい置換はE376Pである。
【0100】
V381(配列番号(SEQ IID No.)1のV99)
V381の側鎖は、BMP2単量体内でのみ相互作用する。しかし、その主鎖はNOGとのβ−β主鎖相互作用にとって最適な位置にある。したがって、トレオニン又はチロシンへのアミノ酸置換が主鎖の幾何学的配置を妨げ、BMP2のNOG相互作用を弱めることが提唱されている。したがって、好ましい置換はV381T/V381Yである。
【0101】
K383(配列番号1のK101)
K383は、間接的にN341(BMP2)及びE104(RI)の配向及び結合に影響を与え得る。K383はD39と側鎖相互作用を有し、したがってNOGのN末端腕に影響を与える。イソロイシン又はロイシンへの突然変異は、BMPR1A相互作用に影響を与えることなく、この相互作用を妨げるはずである。したがって、好ましい置換はK383I/K383Lである。
【0102】
N384(配列番号1のN102)
NOGのN末端腕はN384を覆う。BMP9は、NOGのN末端腕の切り出し(clipping)が機能しないように、ここにさらなるアミノ酸を有する。これがBMP9がNOGによって阻害されないことの主な理由の1つであることが提唱されている。したがって、BMP9配列のチロシン及びヒスチジン類似体をBMP2に導入した。セリン、バリン又はトリプトファン(thryptophane)へのアミノ酸置換はNOGへの水素結合を妨げ、したがってBMP2−NOG結合も妨げるはずである。したがって、好ましい置換はN384YH/N384S/N384V/N384Wである。
【0103】
BMP活性を阻害するには受容体結合部位の対の両方を遮断する必要があるため、NOGはBMPにおいて大きな接触部位を有する。
【0104】
本発明者らは、単一のアミノ酸置換の影響がごくわずかであり、完全なNoggin非感受性を有するBMP2変異体を得るには同時にアミノ酸置換を2つ以上組み合わせる必要があることを提唱する。
【0105】
概念実証はニワトリ肢芽マイクロマス系を用いて、明確に規定されるin vitro系において軟骨産生を誘導するhBMP2変異体の機能的能力を分析することによって得た(図1〜図12)。アルシアンブルーを細胞外マトリックスに加えることによって、プロテオグリカンに富んだ軟骨性マトリックスの産生が測定される。ニワトリマイクロマスにおける間葉前駆体細胞の軟骨細胞分化は、これにより視覚化し、かつ定量することができる。このため、軟骨形成を誘導するhBMP2変異体の可能性が効率的に試験される。
【0106】
マイクロマス培養物にhBMP2発現ウイルスをレトロウイルスによって感染させ、野生型タンパク質又はその変異体を発現させた。変異体をアンタゴニストに対するその感受性について試験する場合、同時にNogginを細胞内で同時発現させた。5日間の培養後、ニワトリマイクロマス培養物をアルシアンブルーで染色した。
【0107】
期待された通り、野生型hBMP2でのマイクロマス細胞の感染は、非感染対照細胞と比較して大規模な軟骨産生の誘導をもたらした。しかしながら、Nogginを同時発現させた場合、野生型は完全に遮断された。
【0108】
野生型と同様、全ての変異体がNogginの非存在下で軟骨形成を効率的に誘導することができた。唯一の例外は、置換N384YHを含有する変異体であり、これは軟骨形成の誘導をまったく示さず、対照と同程度である。さらに、単一突然変異のいずれも、置換P318Kを有する変異体以外はNoggin抵抗性を誘導することができなかった。この点突然変異はアンタゴニストに対する幾らかの抵抗性をもたらした。
【0109】
しかしながら、2つ又は3つの単一突然変異の組み合わせは、Noggin抵抗性の有意な増大をもたらした。これは、とりわけ変異体N341T+N384YH、N341K+N384YH及びP318K+N341Kにおいて観察することができた。それらをNogginと同時発現すると、それらの軟骨形成能は、そのアンタゴニストの非存在下で野生型活性の50%〜75%の範囲であった。置換S306E+N341T及びS306E+N341K+N384YHを含有する変異体は、単一突然変異P318Kと同程度のNoggin抵抗性をもたらした。それらは、野生型での単一トランスフェクションにおいて観察された活性のおよそ3分の1を示した。
【0110】
結論として、2つ又は3つの特定の点突然変異の組み合わせがhBMP2のNoggin抵抗性を有意に増大させ、その主要アンタゴニストの存在下であっても強い軟骨形成効果をもたらすことが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1を有する成熟ヒトBMP2と比較して少なくとも90%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる単離ペプチドであって、前記アミノ酸配列が少なくとも2つのアミノ酸置換を含むことを特徴とし、第1のアミノ酸置換が配列番号1のN59、S88、E94、V99、K101及び/又はN102に相当する位置に生じる、単離ペプチド。
【請求項2】
第1のアミノ酸置換がN59K、N59T、N59V、N59E、S88A、E94P、V99T、V99Y、K101I、K101L、N102S、N102V、N102W及び/又はN102YHから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の単離ペプチド。
【請求項3】
第2のアミノ酸置換を含むことを特徴とし、該第2のアミノ酸置換が該第1のアミノ酸置換とは異なり、配列番号1のD22、S24、V26、N29、D30、V33、A34、P36、G37、H39、F41、H44、P48、A52、D53、L55、N59、S88、E94、V99、K101及び/又はN102に相当する位置に生じる、請求項1又は2に記載の単離ペプチド。
【請求項4】
第2のアミノ酸置換がD22R、D22S、D22H、S24G、S24H、S24E、S24Q、V26L、N29T、N29Q、D30A、D30T、V33I、V33R、A34Y、A34D、P36K、P36R、P36S、G37T、H39A、F41N、H44D、P48S、A52N、D53A、D53Y、L55M、N59K、N59T、N59V、N59E、S88A、E94P、V99T、V99Y、K101I、K101L、N102S、N102V、N102W及び/又はN102YHから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の単離ペプチド。
【請求項5】
第2のアミノ酸置換が配列番号1のD22、S24、N29、D30、V33、A34、P36、G37、D53、N59、S88、E94、V99、K101及び/又はN102に相当する位置に生じることを特徴とする、請求項3に記載の単離ペプチド。
【請求項6】
第2のアミノ酸置換がD22R、D22S、D22H、S24G、S24H、S24E、N29T、D30A、D30T、V33R、A34Y、A34D、P36K、P36R、P36S、G37T、D53Y、N59K、N59T、N59V、N59E、S88A、E94P、V99T、V99Y、K101I、K101L、N102S、N102V、N102W及び/又はN102YHから選択されることを特徴とする、請求項3又は5に記載の単離ペプチド。
【請求項7】
前記アミノ酸配列がさらなるアミノ酸置換を含み、好ましくは前記アミノ酸配列が3つ又は4つのアミノ酸置換を含むことを特徴とする、請求項5に記載の単離ペプチド。
【請求項8】
配列番号11を有する完全長ヒトBMP2と比較して少なくとも90%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の単離ペプチド。
【請求項9】
BMP2活性を示すことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の単離ペプチド。
【請求項10】
単離核酸であって、
i)請求項1〜9のいずれか一項に記載のペプチドをコードする核酸配列、又は
ii)請求項1〜9のいずれか一項に記載のペプチドをコードする核酸と標準条件下でハイブリダイズする核酸配列を含むことを特徴とする、単離核酸。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の単離ペプチドを発現するトランスジェニック生物又は細胞であって、請求項10に記載の単離核酸を含むことを特徴とする、生物又は細胞。
【請求項12】
BMP関連の疾患又は病態の治療において使用される請求項1〜9のいずれか一項に記載の単離ペプチド、及び/又は請求項10に記載の単離核酸であって、かかる疾患又は病態が骨、軟骨、非石灰化骨格又は結合組織の形成、代謝性疾患、破壊、破損及び/又は断裂等の損傷部位での骨及び/又は軟骨の置換又は修復、歯周(peridontal)組織再生、肝再生、慢性腎不全、中枢神経系の虚血又は外傷後の機能回復の促進、樹状突起成長、神経細胞接着、パーキンソン病を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の単離ペプチド、及び/又は請求項10に記載の単離核酸。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のペプチド、及び/又は請求項10に記載の単離核酸、及び少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項14】
薬剤の製造における請求項1〜9のいずれか一項に記載のペプチド及び/又は請求項10に記載の単離核酸の使用。
【請求項15】
薬剤がBMP関連の疾患又は病態の治療のためのものであることを特徴とし、かかる疾患又は病態が骨、軟骨、非石灰化骨格又は結合組織の形成、代謝性疾患、破壊、破損及び/又は断裂等の損傷部位での骨及び/又は軟骨の置換又は修復、歯周(peridontal)組織再生、肝再生、慢性腎不全、中枢神経系の虚血又は外傷後の機能回復の促進、樹状突起成長、神経細胞接着、パーキンソン病を含む、請求項14に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2012−520066(P2012−520066A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553455(P2011−553455)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053103
【国際公開番号】WO2010/103070
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(511221895)バイオテックラビット ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】