BMP結合タンパク質に関する外科的適用
【課題】主な限定課題は、持続的な生物学的に適当な濃度のBMP−2を癒合ベッドの側部に提供する、よりよい送達システムの必要性である。BMP群は非常に短い生物学的半減期、すなわち完全な骨形成性応答を刺激するために必要とされる数日または数週間というよりむしろ、通常数分または数時間というオーダーを有するため、送達は持続される必要がある。
【解決手段】本発明は、骨の治癒への適用、例えば脊椎手術において使用するためのBBPの、単独、または他の成長因子と組み合わせての臨床適用に関する。付加的な適用として、整形外科の埋め込み可能な人工関節、および骨が所望されるその他の手術部位(例えば外科的再建、局所的骨減少症など)内への埋め込みを含む。
【解決手段】本発明は、骨の治癒への適用、例えば脊椎手術において使用するためのBBPの、単独、または他の成長因子と組み合わせての臨床適用に関する。付加的な適用として、整形外科の埋め込み可能な人工関節、および骨が所望されるその他の手術部位(例えば外科的再建、局所的骨減少症など)内への埋め込みを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年12月22日に提出された米国仮特許出願60/876,821号からの優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
成長因子はin vivo またはin vitroにおいて、定義された細胞集団の成長および分化に影響を及ぼす、ペプチドを含む物質である。正常な骨の形成は発育中に起こり、骨のリモデリングは成体期に起こり、そして骨の修復は骨格の完全性を保存するために起こる。骨の形成、リモデリングおよび修復は、破骨細胞による骨の再吸収、および骨芽細胞による骨の形成を伴う。細胞の分化ならびに骨芽細胞および破骨細胞の活性は、成長因子により制御される。このように細胞の分化および再吸収のバランス間へのあらゆる干渉が、骨の恒常性、骨の形成および修復に影響し得る。
【0003】
骨芽細胞は骨髄間質細胞(marrow stromal cells)(間葉系幹細胞としても知られている)のプールから送達される。MSCは多様な組織中に存在するが、骨髄間質中に豊富に存在する。MSCは多能性であり、骨芽細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、筋細胞、および脂肪細胞を含む軟骨形成性または骨形成性の細胞に分化することができる。
【0004】
脱灰骨マトリックス(demineralized bone matrix、DBM)による異所性骨形成の誘導が記述された(Urist, M.R.:Bone:Formation by autoinduction(骨:自己誘導による形成). Science 150:893-899, 1965; Urist, et al., Purification of bovine morphogenetic protein by hydroxyapatite chromatography(ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーによるウシ骨形成タンパク質の精製). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 :371-375, 1984; Urist, M. R. Emerging concepts of bone morphogenet-protein(骨形成タンパク質の新興概念). Fundamentals of Bone Growth: Methodology and Applications, Boston CR. C. Press, pp. 189-198, 1991.)さらに部分的に精製されたタンパク質画分である骨形成タンパク質/非コラーゲン性タンパク質(bone morphogenic protein/non-collagenous protein)(“BMP/NCP”または“BMP”群)の特性について記述された。(Urist, et al. Methods of Preparation and Bioassay of Bone Morphogenetic Protein and Polypeptide Fragments(骨形成タンパク質およびポリペプチドフラグメントの調製法およびバイオアッセイ法). Methods in Enzymology. Vol. 146. New York, Academic Press, pp. 294-312, 1987; Urist, et al., Hydroxyapatite affinity, electroelution, and radioimmunoassay for identification of human and bovine bone morphogenetic proteins and polypeptides(ヒトおよびウシの骨形成タンパク質およびポリペプチドの同定のためのヒドロキシアパタイトアフィニティー、電気泳動による溶出、およびラジオイムノアッセイ). Development and Diseases of Cartilage and Bone Matrix. New York, Alan R, Liss, Inc., pp. 149-176, 1987.)
BMP/NCPは均一なレベルまでは精製されていないが、他の研究者らは類似の出発材料を使用して、いくつかのリコンビナント“BMP群”をクローン化している。しかしこれら分子のいくつかは、骨形成活性をほとんどまたは全く持っていない。“BMP群”およびその他の骨形成性因子は、臨床適用にて使用するために研究されてきた。しかしBMP−7(OP−1としても知られている)の最小の有効投与量を使用するコストが、例えば臨床での使用の限定要因となってきた。それ故、有効かつ入手可能な組成物および方法が骨に関する臨床適用のために求められている。
【0005】
骨の治癒を増強するためのアジュバント療法は、整形外科の多くの側面において重要であるが、迅速かつ徹底的な骨形成が重大な意味を持つ脊椎固定に関しては特に重要である。現在利用可能な最も有用な薬剤として、骨成長因子、例えば骨形成タンパク質(BMP群)を含む。これらのタンパク質は、未分化の中胚葉系細胞での内軟骨性骨形成の反復発生を誘導する。しかしそれらの有用性は、費用により、そして局所的有害作用、例えば脊椎固定術に今日使用される用量に付随する望ましくない異所性骨形成、および炎症反応により限定されている。
【0006】
さらに、より長い癒合に使用される場合の、高用量のBMP群の潜在的な全身性有害作用は十分には決定されていない。それ故、より安全で、より安価な、そしてより効果的なアジュバント剤を提供するため、いくつかの戦略が開発されている。
【0007】
脊椎固定のための骨の発生装置としてのBMP-2の使用は、ますます注目されるようになってきている。最近の研究は、全脊柱管を通して前方固定術および後方固定術の双方についてBMP−2を効率的に使用してよいことを示した。しかしBMP−2が非常に高価であること、ならびに報告されている局所的副作用、例えば望ましくない骨形成、および前頚部固定術後の危険な首の腫脹が、脊椎固定術へのその広範な使用の妨げとなってきた。現在、BMP−2の有効性を増大させると同時に、その用量を減少し副作用をコントロールすることに、焦点がシフトしてきている。主な限定課題は、持続的な生物学的に適当な濃度のBMP−2を癒合ベッドの側部に提供する、よりよい送達システムの必要性である。BMP群は非常に短い生物学的半減期、すなわち完全な骨形成性応答を刺激するために必要とされる数日または数週間というよりむしろ、通常数分または数時間というオーダーを有するため、送達は持続される必要がある。例えばrBMP−2は、わずか数時間の半減期を有すると記述されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、成長因子、例えばrhBMP−2と貪欲に結合するBMP結合ペプチド(BBP)と名付けられた環状ペプチドに関する。BBPは、rhBMP−2が骨の形成を誘導する速度および程度を増大させる。BBPは、他の骨成長因子の滞留率を増大させることによりこれを達成する。しかしBBPは単独では軟骨形成細胞、骨形成細胞、および骨芽細胞の石灰化を誘導する。BBPを含む組成物および物質、BBPに対する抗体、ならびにBBPを使用する方法は、骨に関する適用において有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様において本発明は、骨の恒常性を維持し、骨の形成を高め、そして/または骨の修復を高めるための薬剤を用いての治療法を含んでよい。
【0010】
1つの態様において本発明は、骨を誘導する物質、例えばBMPの滞留時間を増大するための方法およびデバイスを含む。1つの態様において本発明は、骨を誘導する物質、例えばBMPの速度および骨形成活性全体を増大するための方法およびデバイスを含む。さらに1つの態様において本発明は、骨を誘導する物質による骨形成および石灰化の効果に必要な時間を短縮するための方法およびデバイスを含む。
【0011】
本発明の1つの適用において本方法は、骨の局所的な修復を誘導するため、または骨に関連する障害、例えば骨粗鬆症を治療するために適用してよい。本発明の1つの態様においてBBPは、膜性骨の癒合(例えば脊椎固定)または内軟骨性骨の癒合におけるその他の骨成長因子の効果を誘導するために使用してよい。
【0012】
1つの態様において本発明は、薬剤を保有するインプラント、または骨の形成もしくは修復を誘導するための多能性細胞もしくは分化した細胞を植え付けたインプラントを含んでよい。本発明はまた、骨の形成または骨の修復が所望される部位での、物質または分化した細胞の投与を含んでよい。
【0013】
本発明は、少なくともBBP単独で、または軟骨形成性もしくは骨形成性の前駆細胞の石灰化を高めるその他の成長因子との組み合わせにおいて、有利である。さらに本発明は少なくとも、BBPが骨形成性を高めて、より速くより広範囲に骨形成を起こさせ、そのことがBMPによる治療の臨床速度および有効性を改善し、そして用量を低減し、それ故にBMP単独治療のコストおよび副作用を低減する点で、有利である。
【0014】
これらならびにその他の目的、特色および利点は、以下の説明のための態様および付記した図面の詳細な記載のまとめから今明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1Aは各々、ウシBBPの(1)アミノ酸配列、および(2)核酸配列である。図1Bは、シスタチン相同領域、BMP−2相同領域、およびTGF−β受容体II相同ドメインを示す、ウシBMP結合タンパク質(“BBP”)の部分的なアミノ酸配列である。
【図2】図2は、ヒトBMP−2、およびウシSPP−24のBMP−2相同領域のアミノ酸配列アラインメントである;(i、同一;c、保存的置換;sc、半保存的置換)。
【図3】図3は、ウシフェチュインおよびヒトTGF−β受容体II(上)、ならびにヒトTGF−β受容体IIおよびウシSPP−24(BBPに対応する)のTGF−β受容体II相同ドメイン(下)のアミノ酸配列アラインメントである;(i、同一;c、保存的置換;sc、半保存的置換)。
【図4】図4は、アテロコラーゲン中の500μgのBBP(上)、またはアテロコラーゲン単独(下)の埋め込み後21日の、マウス後四半身のX線写真である。
【図5】図5は、アテロコラーゲン中の500μgのBBPの埋め込み後21日のマウス筋肉の組織学的切片である。(H&E染色。オリジナルの拡大率100X。)
【図6】図6は、5μgのrhBMP−2(左)、または5μgのrhBMP−2プラス500mgのBBP(右)の埋め込み後21日の、マウス後四半身のX線写真である。
【図7】図7は、5μgのBMP−2(左)、または5μgのBMP−2プラス500mgのBBP(右)の埋め込み後、9日(上)および12日(下)のマウス後四半身のX線写真である。
【図8】図8は、5μgのrhBMP−2単独(A)、および5μgのrhBMP−2プラス500μgのBBP(B)の埋め込み後9日の、マウス後四半身の組織学的切片である。
【図9】図9は、rhBMP−2(チップに固定)および1×10−5Mから1×10−4Mの範囲の濃度での環状化BBPの相互作用に関する、表面プラズモン共鳴のセンサグラムである。
【図10】図10は、BBPの存在下または不在下における1、3、および7日にわたるrhBMP−2保持のパーセントを示す棒グラフである。
【図11】図11は、特異的SSP−24/BBP抗体が産生されるアミノ酸配列を含む。
【図12A】図12Aは、本発明の例示としての方法の流れ図を示す。
【図12B】図12Bは、本発明の例示としての方法の流れ図を示す。
【図13A】図13Aは、本発明の2つの態様を図示したものである。
【図13B】図13Bは、本発明の2つの態様を図示したものである。
【図14A】図14Aは、様々な種におけるBPPに関するアミノ酸配列(上から順に各々配列番号11、1および12−19)を示すチャートである。
【図14B】図14Bは、様々な種におけるBPPに関する核酸配列(上から順に各々配列番号20−28)のリストである。
【図15】図15は、BBP高用量(1000μg)+rhBMP−2低用量(1μg)の投与によるL4−L5で癒合したラット脊椎の前後方向のX線写真である。
【図16】図16は、rhBMP−2(1μg)治療の投与による右側の偽関節炎(および)左側L4−L5の癒合を示す、ラット脊椎の前側−後側のX線写真である。
【図17】図17は、BBPおよびrhBMP−2の組み合わせの治療後8週の、ラット脊椎領域の組織学的切片である。(H&E染色。オリジナルの拡大率8.4X。)
【図18】図18は、低用量rhBMP−2(1μg)による治療後8週の、ラット脊椎領域の組織学的切片である。(H&E染色。オリジナルの拡大率8.4X。)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の1つの態様は、配列番号:1のアミノ酸配列を有するペプチドを包含する。ウシ由来アミノ酸配列番号:1はBBPと命名されており、配列番号:2は、BBPをコードするウシ核酸配列に対応する。
【0017】
本発明の1つの態様は、ヒトBBPの配列である、配列番号12のアミノ酸配列を有するペプチドを包含する。配列番号21は、ヒトBBPをコードするヒト核酸配列に対応する。
【0018】
BBPは、公知の24kD分泌型リン酸化タンパク質(24 kD secreted phosphoprotein、“SPP−24”)の18.5kDフラグメントに由来する、19アミノ酸、2.1kDペプチドである。SPP−24は、配列番号:2により表される。SPP-24は、BMP−2に誘導される骨形成を著しく阻害する。BBPは、SPP−24のシスタチン様ドメインを含有する。BBPは、少なくとも肝臓および骨(少なくとも脱灰皮質骨および骨膜を含む)において発現される。
【0019】
BBPアミノ酸配列は、プロテアーゼインヒビターのシスタチンファミリーのメンバーであるフェチュインの、TGF−β/BMP結合領域に類似する。BBPは、KD ×10−5MでrhBMP−2(リコンビナントヒトBMP−2)に貪欲に結合する。BBPはまた、BMP−2に類似する結合ドメインを有するその他の分子、例えば他のTGF−βタンパク質(BMP−4、BMP−7(OP−1)、BMP−6、BMP−8(OP−2)、BMP−9、およびTGF−βを含むがこれに限定されない)とも結合し、それらの保持率および/または活性にも同様に影響を与えと思われる。例えばBMP−4およびBMP−2間には高度の程度の配列類似性(約90%)がある。加えて様々な骨誘導性のBMP群(BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−7、およびBMP−9)が、同じ受容体に(アフィニティーに多少の変動はあるが)結合することが実証された。それ故、配列および結合の類似性を考慮すると、これらの付加的なBMP群との結合が予想される。本発明において有用な付加的な成長因子として:GDF5、およびその他のBMP群、例えばBMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9を含んでよい。
【0020】
BBPは単独では、脊椎動物の軟骨形成性および骨形成性の前駆細胞の石灰化を誘導する。BBPは、rhBMP−2が誘導する骨の形成の速度および程度の増大を増大させる。驚くことにin vivoにおいてBMP−2と組み合わせたBBPは、BMP−2単独の効果と比較して、より少量のrhBMP−2を用いて、より速くそしてより広範囲に起こる骨形成を引き起こす。この結果は、上に考察したようにBMP−2による骨の形成を阻害するSSP−2の役割を考慮すると、予想外であった。
【0021】
例えば、マウス筋肉中にBBPを単独で埋め込んだ場合、BBPは異栄養性石灰化を誘導する。“マウスの後四半身”モデルまたは“筋肉の窪み”モデルの、修復時の骨形成または異所性骨形成におけるプロセスは、内軟骨性骨形成を要約するものである。最初のステップは軟骨の産生であり、これが骨に置き換わる。同じプロセスは、発育中の内軟骨性骨形成時に起こるが、一方ある種の膜性骨形成は、軟骨という中間体を経ずに直接起こる。
【0022】
本発明の1つの態様において、BBPのフラグメントが、哺乳類の細胞におけるBMP−2による骨形成の程度もしくは速度を増大する、あるいは脊椎動物の細胞、または特に哺乳類の軟骨形成性もしくは骨形成性の前駆細胞における石灰化の程度もしくは速度を増大するのであれば、そのフラグメントを包含するペプチドは、同様に有用であると思われる。
【0023】
配列番号1のアミノ酸の修飾を有するBBPの形もまた、本発明において有用である。例えば種間で保存されたBBPのアミノ酸配列、欠失または挿入による修飾、保存的または半保存的置換による修飾は、修飾されたアミノ酸配列がBMP−2またはその他のTGF−β相同分子の滞留時間および/または活性を増大する限りにおいて、主張したBBPに包括的に含まれることを意図する。BBPは、β−プリーツシート−ターン−シートプリーツシート分子のモチーフ(“B−T−B”)である。成長因子が結合するアミノ酸残基は、T−部分に属すると、現在考えられている。それ故、T−部分におけるアミノ酸の置換は、B領域における置換より大きくBBPの活性に影響を及ぼすと思われる。
【0024】
上のようにBBPは、成長因子が埋め込み部位に留まっている時間量(“滞留時間”)を増大する、および/またはBMP−2もしくはその他のTGF−β相同分子の全体的な活性を増大することにより、BMP−2のような成長因子の効果を増大すると考えられる。例えばBMP単独では、埋め込み部位から急速に除去されるが、一方BBPと共にBMPを埋め込むと、滞留時間を増大することが示された。滞留時間の増大は、例えば:1)成長因子の半減期を増大するBBP群の能力(例えばタンパク質分解の速度を低減することによる)、および/または2)投与部位からの成長因子の拡散速度の低下、に起因すると思われる。
【0025】
本発明の1つの態様は、BBPに関する哺乳類の共通配列である、配列番号11の配列:C−R−S−T−V−X−Y−S−X−X−X−V−X−X−V X−Y−Y−Cを有するペプチドを包含する。図14Aは、ウシ(配列番号1;核酸配列は配列番号2で示す)、ヒト(配列番号12;核酸配列は配列番号21で示す(9位はAまたはVのいずれかである))、ブタ(配列番号13;核酸配列は配列番号22で示す)、ヒツジ(配列番号14;核酸配列は配列番号23で示す)、ラット(配列番号15;核酸配列は配列番号24に示す)、およびマウス(配列番号16;核酸配列は配列番号25で示す)のBBPにわたる、アミノ酸配列の相同性を示す。図14Aはまた、ニワトリ(配列番号17;核酸配列は配列番号26で示す)、サケ(配列番号18;核酸配列は配列番号27で示す)、およびマス(配列番号19;核酸配列は配列番号28で示す)における高度に保存された領域を示す。
【0026】
図14Aにおいて“X”および“Y”は、各々半保存的または保存的であると理解されるアミノ酸の置換を表示するために使用する。保存的置換は同じグループから選択されるアミノ酸を含み、半保存的置換は、BMP−2結合ドメインまたはBBPの機能に影響を与えないと考えられる置換を含む。例えば6位の置換は、ヒト、ラットおよびヒツジ間で保存的であるが、いくつかのその他の種では半保存的である。というのは異なる種でその位置で報告されたアミノ酸は:QおよびE(ブタ、ラットおよびマウスのBBPではQ、ニワトリではE)であるからである。KおよびRは双方とも塩基性アミノ酸と分類されるが、Qは非電荷の極性アミノ酸と分類され、それ故置換は保存的ではない。しかしBBPの機能は影響を受けないと考えられるため、置換は半保存的である。半保存的置換はまた9、10、11および16位にも見出される。9位では、アミノ酸Aがウシ、ヒト、ブタおよびヒツジのBBPにおいて、それに比してKがラットおよびマウスのBBPにおいて見出される。10位では、アミノ酸Eがウシ、ブタ、およびヒツジのBBPに関して報告されており、ヒトBBPはその位置にQを含有し、ラットおよびマウスのBBPはアミノ酸Gを含有する。11位では、アミノ酸Qがウシ、ヒト、ラットおよびマウスにおいて見出され、一方Kが、ブタBBPに関して、そしてRがヒツジBBPに関して報告されている。16位では、Wが、ウシ、ブタ、ヒツジ、ラットおよびマウスのBBPにおいて見出されており、一方ヒトBBPはHを含有する。13および14位でも、他の種とは対照的にラット/ヒト間で反保存的な置換が存在する。
【0027】
保存的置換の例は、7位に見出される。この位置では異なる種において異なる疎水性アミノ酸が、すなわちウシ、ヒツジ、ラット、およびマウスのBBPではMが、それに比してヒトBBPではVが、そしてブタBBPではIが観察される。M、V、およびIはすべて疎水性アミノ酸であるため、この置換は保存的であると考察される。他の保存的置換は、17および18位にある。2つの疎水性アミノ酸、AおよびVが17位で見出されている。18位では、2つの塩基性アミノ酸、RおよびHが見出されている。
【0028】
本発明の1つの態様は、脊椎動物の細胞、またはより特定すれば哺乳類の軟骨形成性もしくは骨形成性の前駆細胞における石灰化の程度または速度を増大するBBP、を含む組成物であってよい。さらに本発明は、BMP−2、およびBMP−2または脱灰骨マトリックスの1つによる骨形成の、程度または速度を増大させるBBPを含んでいてよい。さらに当該組成物は付加的にまたは代替え的に、BMP−4またはBMP−7を別々にまたはそれらの混合物を含むがこれに限定されない、他のTGF−βファミリーのメンバーを含んでよい。
【0029】
1つの態様において本発明は、治療有効投与量のBBPを単独で、または成長因子、例えばBMPまたはDBMと組み合わせて含む、脊椎動物における骨形成の速度または程度の誘導において使用するための医薬剤を含んでよい。本発明はさらに、脊椎動物における石灰化の速度または程度の誘導において使用するための、BBPを包含するペプチドを含む医薬剤を含んでよい。
【0030】
1つの態様において、BBP、またはBBPおよび1つもしくはそれより多くの他の成長因子との組み合わせは、骨の形成および/またはインプラントの統合が所望される部位での埋め込みのために、基材または担体、例えばコラーゲンスポンジまたは整形外科用のインプラントもしくは人工関節の上またはそれらの中にセットしてよい。
【0031】
BBPに関する投与。BBPに関するいくつかの投与を、その薬理学的(生物学的活性)特性から示唆する。例えばBBPは単独で、または他のTGF−βファミリーのメンバー、例えばBMP−2、BMP−4およびBMP−7、もしくは脱灰骨マトリックスと組み合わせて、骨の形成を誘導する、骨の恒常性を維持する、および/または骨の修復を高めるための、臨床または研究の方法において使用してよい。BBPは、発育時または恒常性の骨の障害(例えば骨粗鬆症)、骨の傷害(例えば扁平(例えば膜性)骨および長管(例えば内軟骨性)骨の骨折治癒、癒合不全骨折)を治療するため、および再建手術のために、単独でまたは組み合わせて使用してよい。本発明はまた、歯周炎、歯周部の再生の治療、歯のインプラントの再建のための歯槽堤増大術、癒合不全骨折の治療、膝関節/股関節の修復術または置換術部位において使用してもよい。
【0032】
一例として、BMPは脊椎固定を提供する上で有効であることが実証されているが、例えば、特に頚椎における炎症および異所性骨形成を引き起こす有害な副作用により、広範な使用は限定される。1つの態様において、BBPをより低用量のBMPと組み合わせて使用して、その効能を保ち、投与部位でのその保持性を高めてよい。本明細書において考察するように、BBPは、リコンビナントヒトBMP−2を含むBMPと結合することが実証されているが、in vitro およびin vivoにおいて7日間までというrhBMP−2の2倍の保持性を可能にした。
【0033】
骨の恒常性を維持する方法、またはその能力のある化合物の臨床指数は、少なくともDEXAスキャンにより評価した場合の、体全体の異なる部位での骨密度の改善により証明される。骨折治癒における高められた骨の形成は、選択された時間間隔での骨折部位の標準的なX線によりルーチンに評価できる。上の指数を決定するためのより高度な技術、例えば定量的CTスキャンまたは定量的な組織学的方法(例えば組織を処理、染色し、顕微鏡下で調べ、骨を画像分析により定義および測定する)を使用してもよい。さらに骨密度、骨領域、骨塩量、異所性骨の形成、およびX線検査での組織の不透過性の増加、アルカリホスファターゼ活性の発現、カルシウムの取り込み、ミネラル化、またはオステオカルシンmRNAの発現の測定を使用して、BBPの石灰化および/または骨形成性の効果を観察してもよい。
【0034】
本発明はまた破骨細胞の骨再吸収を阻害する薬剤の使用を含んでよい。破骨細胞の骨再吸収(の阻害)を達成するために本発明において有用であると思われる薬剤として、ビスホスホネート製剤、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、カルシトニン、およびビタミンD/カルシウム補給剤を含むが、これに限定されない。本発明はまた、骨芽細胞の骨の形成を誘導する薬剤の使用を含んでよい。本発明に有用であると思われる薬剤として、PTH、フッ化ナトリウム、ならびに成長因子、例えばインスリン用成長因子IおよびIIを含むが、これに限定されない。
【0035】
BBP単独の石灰化効果、またはBMPと組み合わせての骨形成効果を示すために使用したin vivoモデルは、他の化合物の類似のふるまいを実証する上で、以前に使用されている。特にin vivoモデルはまた以前に化合物、例えばBMPおよびインスリン様成長因子(IGF)のin vivoの骨形成効果の予測に成功することを可能にした。具体的には、ラット大腿骨を使用する動物モデル、すなわち異所性骨形成モデルにおいてBBPの骨形成効果が実証された。それ故これらの類似の知見に基づき、BBPは、ヒトにおいてin vivoでの骨形成効果を有すると予測される。これらのin vivoモデルにおいて化合物の骨形成効果を実証することが、in vivoのヒトにおけるそれらの効果を実証する試み前に必要である。
【0036】
治療有効量。本発明において有用なBBPまたはTGF−βファミリーのメンバーの治療有効量は、上に述べたように石灰化または骨形成性を高める薬剤の能力により測定した場合に、患者におけるポジティブな臨床効果または細胞における所望の効果を有する量である。各薬剤の治療有効量は、所望の臨床効果を達成し、同時にネガティブな副作用を最小とするように調節することができる。薬剤の投与量は、個々の投与計画、および特定の患者に適当な用量レベルを決定する時に、投与経路、疾患の重症度、患者の年齢および体重、患者が受けているその他の薬物療法、ならびに担当医により通常考えられるその他の因子に依存して、個々の患者のために選択してよい。
【0037】
本発明は、少なくとも骨形成の所定の速度または程度を誘導するために必要なBMP−2の投与量を、BMP−2をBBPと組み合わせた時には低減してよいという点において、有利であり、我々には予想外なことでもある。BMPは投与によってはコストがかさむ可能性があるため、この点は、少なくとも治療のコストを低減する上で有利である。さらに、BMPを組み合わせて治療することにより、BMP(またはその他の骨成長因子)の治療の用量レベルを低減することは、例えば首の軟組織内の炎症、または異所性骨形成を含む、使用するBMPの量に関連する副作用もまた、低減するものと思われる。このように外来の成長因子の保持を増大させるための、骨成長因子の結合剤としてのBBPの使用は、治癒を達成するために必要な成長因子の量を低減することにより、成長因子の使用のネガティブな側面を克服する一助とすることができる。
【0038】
投与剤形。投与剤形中に含まれる薬剤の治療有効量は、選択する薬剤のタイプおよび投与経路を考慮することにより選択してよい。投与剤形は、医薬分野の当業者に公知であるように、患者への投与の促進のためのアジュバント、および医薬的に受容可能な担体を含む、その他の不活性成分と組み合わせて、薬剤を含んでよい。
【0039】
BBPの治療用剤形化は(請求項がBBPの修飾またはフラグメントを含むことを意図する場合)、凍結乾燥したケークまたは水溶液の剤形中に、所望の程度の純度を有するBBPを、所望の生理学的に受容可能な担体、賦形剤または安定剤と共に混合することにより、貯蔵用に調製してよい。受容可能な担体、賦形剤または安定剤は、利用する投与量および濃度でレシピエントに非毒性であり、バッファー、例えばリン酸、クエン酸およびその他の有機酸の塩;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基より少ない)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン、を含む。その他の成分として、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジン;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖、二糖、およびその他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトールもしくはソルビトール;塩を形成する対イオン、例えばナトリウム;ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えばTween(ツイーン)、Pluronic(プルロニック)もしくはポリ(エチレングリコール)(PEG)を含む。
【0040】
投与剤形は、例えば皮下(例えば徐放性カプセルで)、静脈内、腹腔内、筋肉内、骨格周囲または骨格内用の調製物にて提供してよい。いずれか1つの薬剤、または薬剤の組み合わせを、投与剤形中に含んでよい。あるいは薬剤を組み合わせは、別々の剤形にて患者に投与してもよい。薬剤の組み合わせは、患者が治療のための少なくとも2つの薬剤に暴露されるような時間内に、同時に投与してよい。
【0041】
付加的な薬剤。本発明は、BBPとは独立してまたは相乗的に作用して、石灰化および骨形成を高める付加的な薬剤を伴う治療を含んでよい。例えばBBPは、BMP、ビスホスホネート製剤、ホルモン療法治療薬、例えばエストロゲン受容体モジュレーター、カルシトニン、およびビタミンD/カルシウム補給剤、PTH(例えばForteo もしくはテリパラチド、EIi Lilly)、フッ化ナトリウム、ならびに骨にポジティブな効果を有する成長因子、例えばインスリン様成長因子IおよびII、およびTGF−βと共に、組み合わせてよい。当業者は、標準的な治療投与量のパラメータを使用して、各治療に受容される投与量を決定する、またはBBPの効果が第二の薬剤、例えばBMP群と相乗的である場合には低減した投与量を決定することができる。
【0042】
BBPは、基材に含まれるBMP−2の滞留時間を少なくとも増大することにより、BMP−2に作用すると今のところ考えられる。本発明の1つの態様は、一定量のTGF−β相同分子を第一および第二の選択された位置に投与することを含む、TGF−β相同分子の滞留時間を高めるBBPの能力を検出する方法である。さらに、選択された量のBBPを第1の選択された位置に投与し、そして選択された時間間隔の後に第1および第2の位置のTGF−β相同分子の量を最終的に検出し;そして第1および第2の位置のTGF−β相同分子の量の間の差異を算出する。
【0043】
1つの態様において本発明は、哺乳類細胞中のBMP−2およびTGF−βファミリーのメンバーの1つ、例えばBMP−2または脱灰骨マトリックスによる骨形成、の程度または速度を増大させるBBPの投与を含む、脊椎動物の組織における骨形成の速度または程度を高める方法を含んでよい。
【0044】
1つの態様において本発明は、BBPの投与を含む、脊椎動物の組織、またはより具体的には脊椎動物の軟骨形成性もしくは骨形成性の前駆細胞の、石灰化を誘導する方法を含んでよい。
【0045】
1つの態様において本発明は、患者の、骨形成の所望の位置の近位の位置に、軟骨形成性または骨形成性の前駆細胞を投与すること;さらにBBPを投与すること、そしてTGF−βファミリーのメンバーの1つ、例えばBMP−2または脱灰骨マトリックスを投与することを含む、脊椎動物の組織における骨形成の速度または程度を高める方法を含んでよい。
【0046】
1つの態様において本発明は、患者の、石灰化の所望の位置の近位の位置に、骨形成性細胞を投与すること、そしてさらにBBPを投与することを含む、脊椎動物の組織における石灰化の速度または程度を高める方法を含んでよい。
【0047】
1つの態様において本発明は、細胞の骨形成を誘導するために、脊椎動物の未分化の間葉系幹細胞を、TGF−βファミリーのメンバーの1つ、例えばBMP−2または脱灰骨マトリックスで処置すること、さらに、間葉系幹細胞をBBPで処置すること;そして脊椎動物の間葉系幹細胞を、患者の、骨形成の所望の位置の近位の位置に投与すること、を含む、脊椎動物における骨形成の速度または程度を高める方法を含んでよい。
【0048】
例えば、哺乳類の細胞、例えば間葉系幹細胞は、患者または細胞ドナーから採集することができる。この細胞は、骨の形成または修復が所望される位置(例えば骨の成長が必要とされる骨折部位もしくはインプラント部位)、またはBBPおよび/もしくはBMPで最初に処置した位置に注入してよい。その後この細胞は、患者に、全身、または石灰化(または)骨形成が所望される選択された部位のいずれかに、再投与してよい。加えて患者には、骨形成または石灰化を達成する少なくとも1つの付加的な薬剤で、局所的にまたは全身に処置してよい。
【0049】
図12AおよびBは、本発明の例示としての方法の流れ図を示すが、そのステップはあらゆる順序で行ってよい。
【0050】
本発明の1つの態様は、固体支持体上に固定化したBBPを包含する製品を含んでよい。固体支持体はさらに、TGF−βファミリーのメンバー、例えばBMP−2または脱灰骨マトリックスを含んでよい。
【0051】
本発明の1つの態様は、少なくともインプラントの表面がBBPを含む基材を含む、in vivoで使用するためのインプラントを含んでよい。インプラントはさらに、MSC、軟骨細胞または骨芽細胞の前駆細胞を含んでよい。さらにインプラントは、例えばピン、ネジ、プレート、または人工関節の形に成形してよい。
【0052】
例えば図13A&Bは、本発明の2つの態様を示す。図13Aにおいて本発明は、表面(201)を有する基材を包含する、体内で使用するためのインプラントまたは移植片(200)を含んでよく、その場合少なくともインプラントの表面は、周辺の組織における石灰化または骨形成を誘導するための十分量のBBP(203)を含む。インプラントは、間葉系幹細胞、BBPを発現する軟骨形成性細胞もしくは骨形成性細胞、および/またはBMP−2、脱灰骨マトリックス、もしくはコラーゲン培養物を含んでよい。インプラントはまた、ピン、ネジ、プレート、または人工関節の形であってよく、骨の除去、骨折、またはその他の骨傷害の部位(204)の形成または修復を刺激することにより、骨折を固定化し、骨の形成を高め、または人工関節のインプラントを安定化するために使用する骨(202)の近位に、または骨に接触して設置してよい。
【0053】
図13Bに示したように本発明はまた、in vitroの適用(例えばコラーゲンまたは軟骨細胞の培養において)、または骨(202)の近位にもしくは接触しての、少なくともBBPを含有する組成物またはBBP発現細胞(206)のin vivo の投与、すなわち骨形成および/または石灰化が所望される骨除去、骨折またはその他の骨傷害の部位(204)でのインプラント(200)、を含んでよい。BBP組成物は、その他の薬剤、例えばBMP−2、脱灰骨マトリックス、またはコラーゲン培養物と組み合わせて投与してよい。
【0054】
例えば、ヒトにおける骨に関連する障害を治療するための幹細胞の使用についてもまた、検討されてきた。健常な個体由来の骨芽細胞前駆体の幹細胞の、疾患の個体への注入は、これらの患者における骨密度を改善することが示された。細胞はBMPおよびBBPを用いて前処理してもよいし、またはそれらと共に同時に投与してもよい。
【0055】
1つの態様において本発明は、BBPのあらゆる部分、またはBBP前駆体であるSSP−24のBBP部分への選択的結合を有する、モノクローナルまたはポリクローナル抗体を含んでよい。
【0056】
BBPまたはそのフラグメントは、免疫原性ポリペプチドに(例えばリコンビナントの発現またはin vitroでの共有結合の方法により)融合させてよく、今度はこれを使用して、BBPに対する抗体を作成するために動物を免疫してよい。抗体は免疫された動物の血清から回収する。あるいは従来の様式で免疫された動物由来の細胞から、モノクローナル抗体を調製してもよい。固定化した抗体は、BBPの検出または精製において特に有用である。
【0057】
ウサギのポリクローナル抗体を作成した特定のペプチド配列の2つの例として以下を含む:(1)BBP前駆体であるウシおよびヒトのSSP−24の双方と反応する、ペプチド配列“IQETTCRRESEADPATCDFQRGYHVPVAVCRSTVRMSAEQV”(図11−配列番号3)に対する抗体。この抗体は、上に示した合成ペプチドで免疫したウサギにおいて作成した。さらに(2)配列“CGEPLYEPSREMRRN”(図11−配列番号4)に対して作成した抗体。この抗体もまた、示した配列に対応する合成ポリペプチドで免疫したウサギにおいて作成した。この2つ目の抗体は、ウシSSP−24と反応する。N末端のシステインは、ネイティブSSP−24配列の部分ではない;しかし好ましくは、このペプチドがアフィニティークロマトグラフィー用のクロマトグラフ樹脂に結合することを可能にするために含める。付加的なペプチド配列を、BBPとの特異的な結合のために同定してもよく、この配列を、BBPとの選択的結合を有する抗体を作成するために選択してよいが、BBPの結合、例えばBMP−2、またはその他のTGF−βファミリーのメンバーと結合するBBPの領域(配列番号3および4を含む)を妨げないものとする。これらの特定のペプチド配列を使用して、モノクローナル抗体を作成することができ、この調製法は当該技術分野において公知である。
【0058】
上の配列、マウス、ヒトおよびラットのゲノムにおける対応する配列、または免疫原性配列のあらゆる誘導体に対する抗体もまた、本発明において有用である。これらの抗体は、少なくともそれらが高い特異性を持ってBBPアミノ酸配列を認識するという限りにおいて有用である。そのような抗体が、他の分子と相互作用するペプチド上の位置に結合する場合、その抗体はまた、BBPと他の分子とのタンパク質特異的な相互作用を阻害するという点で有用であると思われる。軟骨形成または骨形成の速度または程度が修飾されると思われる状況におけるBBP活性の阻害。
【0059】
本発明の1つの態様において、BBPに対して特異的な抗体は、脊椎動物の細胞におけるBMP−2による骨形成の程度もしくは速度を減少させる、あるいは脊椎動物の細胞における、またはより具体的には哺乳類の軟骨形成性もしくは骨形成性の前駆細胞における石灰化の程度もしくは速度を減少させる上で、有用であると思われる。
【0060】
本発明の1つの態様はまた、サンプル(細胞培養液、組織サンプル、ペプチド画分、Westernブロットを含むがこれに限定されない)をBBP選択的抗体に暴露させ、SSP−24/BBPおよびBBP抗体の複合体を可視化することを含む、サンプル中のSSP−24/BBPの存在を検出するために、BBP選択的抗体を使用する方法を含む。
【0061】
本発明の1つの態様においてBBP抗体は、リコンビナント細胞培養液または天然の原料からのBBPのアフィニティーによる精製に使用してよい。他の成長因子と検出可能な交差反応をしないBBP抗体を使用して、これらの他のファミリーメンバーからBBPを精製することができる。
【0062】
1つの態様において本発明は、BBPをコードするDNAまたはRNAの核酸配列、または上述の修飾されたアミノ酸配列に対応する修飾された配列を包含する、核酸コンストラクトを含んでよい。
【0063】
本発明はまた、BBP、または前駆体のSSP−24をコードする核酸配列に、操作可能なように連結した発現ベクターを含んでよい。さらにBBP、またはその前駆体であるSSP−24をホスト細胞中にコードする核酸コンストラクトを導入することにより、形質転換体を得てもよい。
【0064】
本発明の実践は、BBP、および哺乳類またはウイルスの発現ベクター中に操作可能なように連結されたプロモーターをコードする配列を包含する、オリゴヌクレオチドコンストラクトの使用を含んでよい。発現ベクターおよびクローニングベクターは、そのベクターが1つまたはそれより多くの選択されたホスト細胞中で複製することを可能にする核酸配列を含有する。一般にクローニングベクターにおいて、この配列は、ベクターがホストの染色体とは独立して複製することを可能にするものであり、複製の原型または自発的に複製する配列を含む。そのようなクローニングベクターは、当業者に周知されている。発現ベクターはクローニングベクターと異なり、ホスト有機体により認識され、BBP核酸に操作可能なように連結された、誘導可能なまたは構成的なプロモーターを含有してよい。核酸は、それが別の核酸配列との機能的関連性の中に置かれている場合、操作可能なように連結してよい。例えば、プレ配列または分泌リーダーに関するDNAは、それがあるポリペプチドに分泌に参加するプレタンパク質として発現される場合、そのポリペプチドに関するDNAに操作可能なように連結する。
【0065】
本発明の1つの態様はまた、相補的なBBP DNA配列またはRNA配列にサンプルを暴露させ、ハイブリッドの複合体を可視化することを含む、BBPをコードするDNAまたはRNA配列に対して相補的で、特異的な結合を有するDNAまたはRNA核酸配列を使用して、サンプル(細胞培養液、組織サンプル、核酸画分、またはSouthern もしくは Northernブロットを含むがこれに限定されない)中のBBP DNAまたはRNAの存在を各々検出する方法を含んでよい。
【実施例】
【0066】
実施例1:非コラーゲン性骨タンパク質(NPC)群の抽出および分離
方法:NCP群は、脱脂、脱灰したヒト皮質骨粉末より、4M GuHCI、0.5M CaCI2、2mM N−エチルマレイミド、0.1mM ベンズアミジンHCI、および2mM NaN3を用いて、18時間、6℃で抽出した。残渣のコラーゲンおよびクエン酸可溶性NCPは、250mM クエン酸塩、pH3.1に対する6℃、24時間の透析により抽出した。残渣を遠心(10,000×g、6℃、30分間)によりペレット化し、1:1(v/v)クロロホルム:メタノールを用いて、24時間、23℃で脱脂し、濾過により集め、22℃で乾燥させた。この材料を4M GuHCI中に再懸濁し、4M GuHCI、0.2%(v/v)Triton X−100、100mM Tris−HCI、pH7.2に、24時間、6℃で透析した後、水に透析し、10,000×g、30分間、6℃で遠心した。ペレットを凍結乾燥し、その後ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにより分離した。
【0067】
クロマトグラフィーは、CHT−10セラミックヒドロキシアパタイトカラム (BioRad, Hercules, CA)を用いて、BioLogicクロマトグラフィーワークステーションを使用して行った。ウシBMP/NCPは6M 尿素、10mM リン酸ナトリウム、pH7.4中に溶解させた。サンプルをヒドロキシアパタイトカラムにのせ、非結合画分を集めた。結合したタンパク質は、カラム容積の5倍量の直線濃度勾配で、リン酸ナトリウムの濃度を300mMまで増加して溶出させた。カラムを流している間、5mlの分画で集めた。180mM リン酸塩で分離された分画を、SDS−PAGE電気泳動によりさらに分離した。18.5のMrに対応するバンドを切り出し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析/飛行時間型質量分析(MALDI/TOF MS)による配列分析を行った。
【0068】
結果:配列の同定および分析:ヒドロキシアパタイトから180mM リン酸塩で溶出されたbBMP/NCPの分画を、SDS−PAGE電気泳動により分離し、18.5kDのMrの材料を、MALDI/TOF MS分析した。この材料の主要なタンパク質成分は、そのタンパク質の複数領域と同一な配列を有する6つのペプチドに基づき、SPP−24のフラグメントであると決定した。(Hu, et al., Isolation and molecular cloning of a novel bone phosphoprotein related in sequence to the cystatin family of thiol protease inhibitors(チオールプロテアーゼインヒビターのシスタチンファミリーと配列の関連する、新規骨リン酸化タンパク質の単離および分子のクローニング). J. Biol. Chem. 270:431-436, 1995.)これらのペプチドの配列を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
この配列のSWISS−PROTデータベースによる分析から、以前に記載されているシスタチン様ドメインであることが明らかになったが、他の配列の骨代謝との関連性への類似性は認められなかった(Hu, et al.)。しかし他の研究から、他のシスタチン様タンパク質は、骨代謝に一役を担うタンパク質と相互作用することが知られている。具体的にはシスタチンファミリーのメンバーは、TGF−β受容体との類似性の基づいて、TGF−βおよびBMP−2との結合特性を有する。((Brown, et al., Friends and relations of the cystatin superfamily- new members and their evolution(シスタチンスーパーファミリーの新規メンバーの仲間および関連性−新規メンバーおよびそれらの進化).: Protein Sci. 6:5-12, 1997; Demetriou, et al., Fetuin/α 2-HS glycoprotein is a transforming growth factor-β type Il receptor mimic and cytokine antagonist(フェチュイン/α2−HS糖タンパク質は、トランスフォーミング成長因子−βII型受容体の擬態およびサイトカインアンタゴニストである). J. Biol. Chem. 271:12755- 12761 , 1996.)しかしフェチュインはBMPの活性と拮抗する(Hu, et al.)。それ故SPP−24のシスタチン様領域、およびフェチュインのシスタチン様ドメインの手作業による比較を行った。
【0071】
図1Bは、ウシSSP−24、BMP−2相同領域、およびTGF−β受容体II相同領域の部分的なアミノ酸配列である。下線のアミノ酸は、質量分析により存在することが確認された。(GenBank アクセション番号U08018; Hu, et al.)
興味ある2つの領域が、SSP−24のシスタチン様領域において同定された。1つの領域は、BMP−2と類似するある配列を有し、一方他の領域は、フェチュインのTGF−β受容体II相同ドメインとの類似性を有していた。これら2つの領域を含有するSSP−24の配列の部分を図1Bに示す。
【0072】
ヒトBMP−2およびヒトTGF−β受容体IIに対する、興味ある2つの領域の比較を図2および3に示す。図2は、ヒトBMP−2、およびウシSSP−24のBMP−2相同領域の、アミノ酸配列アラインメントである。図3は、ウシフェチュインおよびヒトTGF−β受容体II(上)、ならびにヒトTGF−β受容体IIおよびウシSPP−24のTGF−β受容体II相同ドメイン(BBPに対応する)(下)のアミノ酸配列アラインメントである。SPP−24、フェチュイン、ヒトBMP−2、およびヒトTGF−βII受容体の配列のアラインメントは、T-Coffeeプログラムを使用して行った。(Notredame, et al, T-Coffee: A novel method for multiple sequence alignments(複数の配列アラインメントのための新規方法). J. Molecular Biol. 302:205-217, 2000.)これら2つの領域に対応する合成ペプチドを、以下に記載するように得、化学的分析およびin vivo分析を行った。
【0073】
実施例2:BBPのin vivo活性
方法:材料の骨形成活性は、8から10週齢のオスSwiss-Weberマウス(Taconic Farms, Germantown, NY)を使用して検査した。アッセイの前に、BBPを可溶化し、2mgのアテロコラーゲン中に凍結乾燥した。乾燥した材料を#5ゼラチンカプセル内に入れ、クロロホルム蒸気への暴露により無菌化した。アッセイを行うため、小動物麻酔機(VetEquip, Pleasanton, CA)に通して、2 l/分の酸素中に送達した1%イソフルランを使用して麻酔した。動物は手術用ボードに固定し、後四半身全体の被毛を剪毛した。皮膚を70%エタノールで清浄にし、後四半身に隣接する脊椎上に正中切開を加えた。はさみでの鈍的切開を使用して、片側の四頭筋を露出させた。はさみの先で筋肉中に小さ窪み嚢を作り、検査材料を含有する#5カプセルを窪みの中に挿入した。その後皮膚を、3つの11mm Michelサージカルクリップで閉じ、動物をモニタリングのためケージに戻した。
【0074】
21日後動物を屠殺し、後四半身を切除した。検体の放射線学的検査は、スモールパーツX線キャビネット(Faxitron, Wheeling, IL)を使用して行った。骨形成の定量化のため、骨領域、および異所性骨形成部位を包括的に含む興味ある領域の骨塩量(BMC)を、PIXImus2 小動物デンシトメーター(GE Lunar, Madison, Wl)を使用して決定した。次に検体を緩衝化ホルマリン中に入れ、組織学的検査のためのルーチンの処理を行った。
【0075】
様々な量のrhBMP−2およびBBPを組み合わせ、インプラント用に調製した。以下の量のすべての可能な組み合わせを、パイロット試験で使用した。rhBMP−2:0μg、0.05μg、0.5μg、5μg、および50μg;BBP:0μg、50μg、およびμg、500mg。5μgのrhBMP−2のサンプル量が、信頼できる分析のための多すぎもせず少なすぎもしない異所性骨の量を一貫して産生したため、この量をより広範なその後の研究に使用した。
【0076】
結果:BBPを、単独でまたはrfBMP−2と組み合わせて検査した。
【0077】
図4は、アテロコラーゲン中500μgのBBP(上)、またはアテロコラーゲン単独(下)の埋め込み後21日の、マウス後四半身のX線写真である。BBPを単独で担体と共に埋め込んだ場合、BBPは石灰化を誘導した。
【0078】
図5は、アテロコラーゲン中500μgのBBPの埋め込み後21日の、マウスの筋肉の組織学的切片である。筋肉内脂肪組織に主に付随する異栄養性石灰化に注目のこと。(H&E染色。オリジナルの拡大率100X。)
TGF−β受容体IIと類似の配列をもつBBP 500μgを、5μgのrhBMP−2と共に埋め込んだところ、形成された異所性骨の量は、デンシトメトリーにより測定した場合、同量のrhBMP−2単独を埋め込んだ動物において形成された骨の量より一貫して多かった。
【0079】
図6は、5μgのrhBMP−2(左)、または5μgのrhBMP−2プラス500mgのBBP(右)の埋め込み後21日の、マウス後四半身のX線写真である。rhBMP−2およびBBP双方を含有するサンプルに付随する、増加した乳濁度に注目のこと。
【0080】
さらに、ペプチドおよびrhBMP−2の双方を含有するインプラントは、BMP−2単独のインプラントより早期に、検出可能な軟骨および骨を産生した。
【0081】
図7は、5μgのrhBMP−2(左)、または5μgのrhBMP−2プラス500mgのBBP(右)の埋め込み後、9日(上)および12日(下)のマウス後四半身のX線写真である。rhBMP−2およびBBP双方を含有する第9日のサンプルからは、サンプル内に石灰化の出現が認められるが、BMP−2単独を含有するサンプルにはないことに注目のこと。
【0082】
図8は、5μgのrhBMP−2単独(A)、および5μgのrhBMP−2プラス500μgのBBP(B)の埋め込み後9日の、マウス後四半身の組織学的切片である。BMP+BBP検体における豊富な軟骨に注目のこと、一方BMP単独の検体は炎症および中胚葉細胞の増殖という、より早期のステージを示している。
【0083】
【表2】
【0084】
実施例3:BMP−2および合成ペプチドの相互作用を決定するための表面プラズモン共鳴
方法:rhBMP−2およびBBP間の結合の相互作用を、Biacom X 装置(Biacore,Piscataway, NJ)を利用しての表面プラズモン共鳴を使用して特徴づけた。この手順のためのバッファーおよびチップは、Biacoreより入手した。rhBMP−2は、10mM 酢酸ナトリウム、pH5.5中に、1mg/ml濃度で透析した。次にこの材料を、製造元により提供された試薬および手順を使用してCM−5センサーチップに付着させた。移動相(running)バッファーは、10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCI、3mM EDTA、0.005% 界面活性剤P20とした。ペプチドは、1×10−5から1×10−4Mの範囲の濃度で、移動相バッファー中に溶解させた。5から50μl/分の流速、20から100μlの注入容積を利用した。再生溶液は、10μM グリシン−HCl、pH2.0とした。
【0085】
結果:rhBMP−2およびBBP間の相互作用を決定するための表面プラズモン共鳴の研究の結果を、図9に示す。
【0086】
図9は、rhBMP−2(チップに固定)および1×10−5から1×10−4Mの範囲の濃度の環状化BBPの相互作用に関する、表面プラズモン共鳴のセンサグラムである。相互作用に関する解離定数(KD)推定値は、3×10−5Mであった。BBPを、β−メルカプトエタノールで予めの還元により開環した場合は、有意な結合は起こらなかった。
【0087】
実施例4:保持時間の研究:BBPおよびrhBMP−2
方法:標識したrhBMP−2を、BBPまたはビヒクルと混合し、コラーゲンスポンジに含浸させた。このスポンジを、げっ歯類の筋肉の窪みの中に埋め込んだ。特定の時間(1、3および7日)でインプラントを除去し、残留しているBMPの量を決定した。4頭の動物を各群に使用した。
【0088】
結果:BBPはrhBMP−2の保持を、約2つの因子により増大させた。図10は、BBPの存在下または不在下における1、3および7日にわたるrhBMP−2の保持のパーセントを示す棒ブラフである。
【0089】
考察:インプラント部位でのBMPの保持の増大は、BMPの有効性を改善し、そしてまた同じ治療結果に必要な量を低減すると思われる。
【0090】
明細書には本発明の特定の態様を記載しているが、当業者が、本発明の概念から離れることなく本発明のバリエーションを考案することは可能である。
【0091】
実施例5:ヒトBBPのin vivo活性
方法:実施例5の方法を利用して、8頭のマウスにおけるhBBPの活性を、後四半身の異所性骨形成のアッセイ法において、5μgのrhBMP−2単独(コントロール)、または5μgのrhBMP−2プラス0.05mgのヒトBBP(hBBP)を使用して検査した。4週後、動物を屠殺し、後四半身を切除した。X線およびDEXA分析を行った。
【0092】
結果:hBBPを、rhBMP−2との組み合わせにおいて検査した。
【0093】
挿入した時に、BMPを伴うhBBPは、BMP単独より多量の石灰化の誘導を得た。
【0094】
【表3】
【0095】
実施例6:関連動物モデルにおけるBMPへの代替え(または)補助としての、脊椎固定におけるBBPの効果
ラット後側脊椎固定モデルを使用して、癒合におけるBBPの効果を調べた。
【0096】
方法:3群の6頭Lewisラットに、各々以下の薬剤:BBP(500μg)(1群);BBP(500μg)+低用量rhBMP−2(1μg)(2群);コラーゲン+低用量rhBMP−2(1μg)(3群)、を含有するコラーゲンスポンジの挿入による、椎骨L4−L5での後側方横突起間脊椎固定術を行った。結果を、剥皮のみ(0%癒合)および高用量のrhBMP−2(3μg)(100%癒合)の組織学的コントロールと比較した。すべてのラットは、2、4、6、および8週に術後のX線撮影を行った。脊椎の触診を、8週の屠殺時に行った。骨の形成は、H&E染色した組織学的切片において評価した。
【0097】
結果:8週で、癒合ラットは:1群(BBPのみ)では14%;2群(BBP+低用量BMP)では80%;そして3群(コラーゲン+低用量BMP)では40%であった。この値は、ヒストリカルネガティブコントロールを0%とし、ヒストリカルポジティブコントロールを100%として比較している。
【0098】
【表4】
【0099】
考察:3群(コラーゲン+低用量BMP)とは対照的に、2群(BBP+低用量BMP)におけるより高い癒合速度は、脊椎固定を達成するために、より低用量のBMPの使用を可能にすることができるというBMPにおける補助的効果を、BBPが有することを示唆する。これらの有望な結果を確立するために、より多数の被験者によるさらなる研究が必要である。
【0100】
実施例7:動物脊椎固定モデルでの、BMPにおける結合ペプチドの補助的効果
脊椎固定におけるBBPの、BMPに対する代替えまたは補助としての効果を、関連動物モデルにおいて調べる。
【0101】
方法:5群の50頭Lewisラットに、各々以下の薬剤:BBP(500μg)(1群);BBP(1000μg)(2群);コラーゲン+低用量rhBMP−2(1μg)(3群);BBP(500μg)+低用量rhBMP−2(1μg)(4群);およびBBP(1000μg)+低用量rhBMP−2(1μg)(5群)の植込みによる、椎骨L4−L5での後側方横突起間脊椎固定術を行った。コントロール群として、ネガティブ群(剥皮)およびポジティブコントロール群(コラーゲン+3μgのBMP)を含めた。
【0102】
すべてのラットは、2、4、6、および8週に術後のX線撮影を行った。8週の屠殺後に脊椎の触診を行った。骨の形成は、H&E染色した組織学的切片において評価した。
【0103】
結果:8週での触診により、1群および2群(低用量および高用量のBBPのみ)では0%癒合、3群では40%癒合、そして5群(BBP1000μg+低用量BMP)では90%癒合を明らかにした。3群および5群の差異は、ほぼ統計学的有意差であった(p=0.056)。すべてのわれわれのこれまでの研究において、ネガティブ群としての背景コントロール群(剥皮のみ)は0%癒合という結果を示し、一方ポジティブコントロール群(BMP十分容量)による癒合比率は100%であった。X線写真による癒合の比率は、第4週、および第6週では3群より5群において有意により高い(p<0.05)が、第8週ではほぼ有意であった(p=0.056)。組織学的分析は、3群と比較した場合、4群および5群において、より成熟したより厚い骨量を明らかにした。
【0104】
考察:コラーゲン+低用量BMPに比して、BBP+低用量BMPによるより高い癒合比率は、将来的には脊椎固定のための低用量のBMPの使用をおそらく可能にする、BMPにおけるBBPの補助的効果を示していると言ってよい。
【0105】
実施例8:動物の脊椎固定モデルでの、BMPにおける結合ペプチドの補助的効果
rhBMP−2に誘導される骨の治癒における、骨の形態形成タンパク質結合ペプチド(BBP)の効果を検査するための、脊椎固定のラットモデルを利用しての前向きの8週介入の試み。
【0106】
本研究の目的は、rhBMP−2の担体として使用するコラーゲンスポンジへのBBPの付加が、満足な臨床結果を達成するために必要なrhBMP−2の量を低減するかどうかを決定することである。BBPは、BMP−2の効果を増大するための補助として有効であり、癒合を提供するために必要なタンパク質の用量の低減を可能にした。
【0107】
方法:L4−L5での後側方横突起間脊椎固定術を、5つの治療群の各Lewisラットで行い、コラーゲンスポンジ(5×5×13mm)を手術部位に埋め込んだ。
【0108】
各スポンジは無菌のミクロチューブ内に置き、水中BBP(500μgまたは1000μg)の懸濁液、または無菌水のみのいずれかを含ませた。スポンジを、組織培養フード内で一晩放置して空気乾燥させた後、−70℃で1時間置き、一晩凍結乾燥した。チューブ(凍結乾燥を可能にするため、最上部に小さな穴がある)をオートクレーブの窪みに置き、封入した。次に材料をクロロホルムの蒸気に少なくとも4時間暴露させて無菌化した。手術の直前にポーチを開き、チューブからスポンジを取り出し、デザインされた量のrhBMP−2または水を含有する第2のチューブに入れた。スポンジは溶液を完全に吸収することができた。
【0109】
ラットのL4−L5の後側方横突起間脊椎固定術は、我々の実験室13−17では、十分に確立された手順である。手短には、動物をイソフルランで麻酔し、手術部位を剪毛し、Betadyneおよびアルコールで準備した。3cmの長軸方向の正中切開を皮膚およびL4−L5上の皮下組織を通して腰背筋膜まで加えた。次に2つの別個の2cmの長軸方向の傍正中切開を、L4−L5の両側の脊柱起立筋に加えた。L4−L5の横突起を露出させ、軟組織を取り除き、高速のバールで皮質を剥離した。この部位を生理食塩水で洗浄し、治療検査材料を置いた。背腰筋膜を、4−0 Prolene (Ethicon, Somerville, NJ)で閉じた。皮膚を4−0 Proleneで閉じ、細心の術後ケアを施した。
【0110】
BBPの2つの用量(500μgおよび1000μg)を、”低用量”(1μg)のrhBMP−2を伴う場合、または伴わない場合で検査し、結果を低用量(1μg)のrhBMP−2と比較した。これらはコントロール群に対して比較した。癒合は、放射線学的、組織学的、および触診の検査により評価した。動物は術後8週で屠殺した。
【0111】
手術の結果は、放射線学的に、組織学的に、および触診により評価した。前後方向のX線写真は、スモールパーツX線キャビネット(Faxitron, Wheeling, IL)を使用して、各動物について2、4、6および8週に得た。X線写真は、3名の独立した観察者により、以下の標準化スケール:0:癒合なし;1:骨形成の存在を伴う不完全な癒合;そして2:完全な癒合を利用して評価した。3名の観察者のスコアを加算し、合計5または6を、“癒合した”とみなした。脊椎の触診は、8週の屠殺時に行った。ヒトにおける癒合を決定するためのゴールドスタンダードをシミュレートするため、癒合物の検査および触診を死後行った。癒合したレベルは、Adson鉗子を用いて触診し、隣接する非癒合のレベルと比較した。各検体は、3名の独立した観察者により癒合、または非癒合として類別した。3名の観察者の誰れかが脊椎を非癒合と類別した場合は、その脊椎は“非癒合”とみなした。触診の後、検体は標準的な10%脱灰溶液HCl(CaI- Ex, Fisher Scientific, Fairlawn, NJ)を使用して脱灰し、水道水の流水で洗浄した後、75%エタノールに移した。矢状切片を横突起の高さで注意深く切り出した。検体をパラフィン中に包埋し、各検体の切片を得た。これらの切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。それらを、独立した観察者により癒合および非癒合として評価した。
【0112】
“癒合した”と判定された各群中の被験者の比率を、SPSSソフトウェアを使用してのフィッシャーの正確確立検定(Fisher's exact test)を用いて、逐次的2群比較にて比較した。0.05より小さいまたは等しいp値を、統計学的有意と設定した。
【0113】
結果:放射線学は、低用量BMP−2(1μg)のみと比較した場合に、1000μg BBP+1μg BMP−2の組み合わせによる有意により早期の癒合を明らかにした(p<0.05)。8週での触診および組織学は、ほぼ有意な差異(p=0.057)での、同じ組み合わせによるより高い癒合比率を明らかにした。
【0114】
【表5】
【0115】
【表6】
【0116】
放射線学的検査の結果を表5に示す。表5は、5または6のスコアを有し、それ故4回の各タイムポイント(2、4、6および8週)関して“癒合した”と判定された、各群中の被験者の比率を表す。表からわかるように、低用量および高用量のBBP群の動物はいずれも、いかなるタイプポイントでも癒合を発達させていなかった。低用量BBP+低用量BMP−2群は、BMP−2低用量のみの群より、第6および8週で、より高い癒合比率を有し、この差異は第6週に関しては有意であった(p<0.05)が、8週では有意でなかった(p=0.170)。他方、BBP高用量+BMP−2低用量群は、BMP−2低用量のみの群を比較した場合、第4、6および8週のタイプポイントで、有意により高い癒合比率を有した(各タイムポイントに関してp<0.05)(図15および16)。
【0117】
表6は、3名の独立した臨床評価者により“癒合した”と判定された、各群の被験者の比率を示す。非常に重要な比較は、BMP−2低用量群 対 BBP低用量+BMP−2低用量群、およびBBP高用量+BMP−2低用量群、間のものであった。触診により評価した癒合比率は、BMP−2低用量群と比較した場合、双方の組み合わせの群ともより高かった(図15および16)。しかしこの差異は有意ではなく、一方BBP高用量+BMP−2低用量群と、BBP低用量群との比較に関しては、有意の傾向が認められた(p=0.057)。低用量BMP−2群の癒合した検体と比較した場合、組み合わせ群の癒合した検体では、癒合物の厚さはより厚い傾向があり、骨の成熟度はより成熟している傾向が認められた(図17および18)。図17は、BBPおよびrhBMP−2の組み合わせの治療後8週の、ラット脊椎領域の組織学的切片であるが、皮質の成熟した骨を伴うL4およびL5の横突起間の厚い癒合物を示す。(H&E染色。オリジナルの拡大率8.4×)。図18は、低用量rhBMP−2(1μg)による治療後8週の、ラット脊椎領域の組織学的切片であるが、骨部分を架橋する成熟した皮質を架橋する未成熟な骨を示す。(H&E染色。オリジナルの拡大率8.4×)。
【0118】
表6はまた、独立した組織学者により癒合したと判定された、各群の被験者の比率を示す。結果は、第8週の触診および放射線学双方の結果とも類似の癒合比率を実証することを確証した。低用量BMP−2群の癒合した検体と比較した場合、組み合わせ群の癒合した検体において、癒合物の厚さはより厚い傾向があり、骨の成熟度はより成熟している傾向が認められた(図17および18)。
【0119】
特定の成長因子結合薬、例えばBBPは、固定術で使用する担体中に配合して、BMPの投与量を減少させ、用量に関連する可能性が最も高い副作用をおそらく減少させることができる。このことはまたコストを低下させ、臨床結果を改善するものと思われる。
【0120】
X線写真の結果は、同じ量のタンパク質の単独での使用と比較した場合、高用量BBP+低用量BMP−2の組み合わせによる、有意により高いそしてより早期の癒合比率を実証した。組織学および触診の検査は、ほぼ有意な差異を伴う第8週でのこのより高い癒合比率を確証した。この脊椎固定モデルは癒合が困難であり、堅固な関節固定を誘導するための特定の骨誘導能力を有する材料を必要とすることに注目することは重要である。同様に、500μgまたは1000μgのいずれか単独の使用では、脊椎モデルに癒合を提供しなかったが、筋肉の窪みモデルの500μgBBPの埋め込みにより異所性異栄養性石灰化の形成が認められた。組織学的検査において筆者らは、BMP−2のみの群と比較した場合、組み合わせ群によるより成熟した骨癒合物を観察した(図17および18)。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年12月22日に提出された米国仮特許出願60/876,821号からの優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
成長因子はin vivo またはin vitroにおいて、定義された細胞集団の成長および分化に影響を及ぼす、ペプチドを含む物質である。正常な骨の形成は発育中に起こり、骨のリモデリングは成体期に起こり、そして骨の修復は骨格の完全性を保存するために起こる。骨の形成、リモデリングおよび修復は、破骨細胞による骨の再吸収、および骨芽細胞による骨の形成を伴う。細胞の分化ならびに骨芽細胞および破骨細胞の活性は、成長因子により制御される。このように細胞の分化および再吸収のバランス間へのあらゆる干渉が、骨の恒常性、骨の形成および修復に影響し得る。
【0003】
骨芽細胞は骨髄間質細胞(marrow stromal cells)(間葉系幹細胞としても知られている)のプールから送達される。MSCは多様な組織中に存在するが、骨髄間質中に豊富に存在する。MSCは多能性であり、骨芽細胞、軟骨細胞、線維芽細胞、筋細胞、および脂肪細胞を含む軟骨形成性または骨形成性の細胞に分化することができる。
【0004】
脱灰骨マトリックス(demineralized bone matrix、DBM)による異所性骨形成の誘導が記述された(Urist, M.R.:Bone:Formation by autoinduction(骨:自己誘導による形成). Science 150:893-899, 1965; Urist, et al., Purification of bovine morphogenetic protein by hydroxyapatite chromatography(ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーによるウシ骨形成タンパク質の精製). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 :371-375, 1984; Urist, M. R. Emerging concepts of bone morphogenet-protein(骨形成タンパク質の新興概念). Fundamentals of Bone Growth: Methodology and Applications, Boston CR. C. Press, pp. 189-198, 1991.)さらに部分的に精製されたタンパク質画分である骨形成タンパク質/非コラーゲン性タンパク質(bone morphogenic protein/non-collagenous protein)(“BMP/NCP”または“BMP”群)の特性について記述された。(Urist, et al. Methods of Preparation and Bioassay of Bone Morphogenetic Protein and Polypeptide Fragments(骨形成タンパク質およびポリペプチドフラグメントの調製法およびバイオアッセイ法). Methods in Enzymology. Vol. 146. New York, Academic Press, pp. 294-312, 1987; Urist, et al., Hydroxyapatite affinity, electroelution, and radioimmunoassay for identification of human and bovine bone morphogenetic proteins and polypeptides(ヒトおよびウシの骨形成タンパク質およびポリペプチドの同定のためのヒドロキシアパタイトアフィニティー、電気泳動による溶出、およびラジオイムノアッセイ). Development and Diseases of Cartilage and Bone Matrix. New York, Alan R, Liss, Inc., pp. 149-176, 1987.)
BMP/NCPは均一なレベルまでは精製されていないが、他の研究者らは類似の出発材料を使用して、いくつかのリコンビナント“BMP群”をクローン化している。しかしこれら分子のいくつかは、骨形成活性をほとんどまたは全く持っていない。“BMP群”およびその他の骨形成性因子は、臨床適用にて使用するために研究されてきた。しかしBMP−7(OP−1としても知られている)の最小の有効投与量を使用するコストが、例えば臨床での使用の限定要因となってきた。それ故、有効かつ入手可能な組成物および方法が骨に関する臨床適用のために求められている。
【0005】
骨の治癒を増強するためのアジュバント療法は、整形外科の多くの側面において重要であるが、迅速かつ徹底的な骨形成が重大な意味を持つ脊椎固定に関しては特に重要である。現在利用可能な最も有用な薬剤として、骨成長因子、例えば骨形成タンパク質(BMP群)を含む。これらのタンパク質は、未分化の中胚葉系細胞での内軟骨性骨形成の反復発生を誘導する。しかしそれらの有用性は、費用により、そして局所的有害作用、例えば脊椎固定術に今日使用される用量に付随する望ましくない異所性骨形成、および炎症反応により限定されている。
【0006】
さらに、より長い癒合に使用される場合の、高用量のBMP群の潜在的な全身性有害作用は十分には決定されていない。それ故、より安全で、より安価な、そしてより効果的なアジュバント剤を提供するため、いくつかの戦略が開発されている。
【0007】
脊椎固定のための骨の発生装置としてのBMP-2の使用は、ますます注目されるようになってきている。最近の研究は、全脊柱管を通して前方固定術および後方固定術の双方についてBMP−2を効率的に使用してよいことを示した。しかしBMP−2が非常に高価であること、ならびに報告されている局所的副作用、例えば望ましくない骨形成、および前頚部固定術後の危険な首の腫脹が、脊椎固定術へのその広範な使用の妨げとなってきた。現在、BMP−2の有効性を増大させると同時に、その用量を減少し副作用をコントロールすることに、焦点がシフトしてきている。主な限定課題は、持続的な生物学的に適当な濃度のBMP−2を癒合ベッドの側部に提供する、よりよい送達システムの必要性である。BMP群は非常に短い生物学的半減期、すなわち完全な骨形成性応答を刺激するために必要とされる数日または数週間というよりむしろ、通常数分または数時間というオーダーを有するため、送達は持続される必要がある。例えばrBMP−2は、わずか数時間の半減期を有すると記述されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、成長因子、例えばrhBMP−2と貪欲に結合するBMP結合ペプチド(BBP)と名付けられた環状ペプチドに関する。BBPは、rhBMP−2が骨の形成を誘導する速度および程度を増大させる。BBPは、他の骨成長因子の滞留率を増大させることによりこれを達成する。しかしBBPは単独では軟骨形成細胞、骨形成細胞、および骨芽細胞の石灰化を誘導する。BBPを含む組成物および物質、BBPに対する抗体、ならびにBBPを使用する方法は、骨に関する適用において有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様において本発明は、骨の恒常性を維持し、骨の形成を高め、そして/または骨の修復を高めるための薬剤を用いての治療法を含んでよい。
【0010】
1つの態様において本発明は、骨を誘導する物質、例えばBMPの滞留時間を増大するための方法およびデバイスを含む。1つの態様において本発明は、骨を誘導する物質、例えばBMPの速度および骨形成活性全体を増大するための方法およびデバイスを含む。さらに1つの態様において本発明は、骨を誘導する物質による骨形成および石灰化の効果に必要な時間を短縮するための方法およびデバイスを含む。
【0011】
本発明の1つの適用において本方法は、骨の局所的な修復を誘導するため、または骨に関連する障害、例えば骨粗鬆症を治療するために適用してよい。本発明の1つの態様においてBBPは、膜性骨の癒合(例えば脊椎固定)または内軟骨性骨の癒合におけるその他の骨成長因子の効果を誘導するために使用してよい。
【0012】
1つの態様において本発明は、薬剤を保有するインプラント、または骨の形成もしくは修復を誘導するための多能性細胞もしくは分化した細胞を植え付けたインプラントを含んでよい。本発明はまた、骨の形成または骨の修復が所望される部位での、物質または分化した細胞の投与を含んでよい。
【0013】
本発明は、少なくともBBP単独で、または軟骨形成性もしくは骨形成性の前駆細胞の石灰化を高めるその他の成長因子との組み合わせにおいて、有利である。さらに本発明は少なくとも、BBPが骨形成性を高めて、より速くより広範囲に骨形成を起こさせ、そのことがBMPによる治療の臨床速度および有効性を改善し、そして用量を低減し、それ故にBMP単独治療のコストおよび副作用を低減する点で、有利である。
【0014】
これらならびにその他の目的、特色および利点は、以下の説明のための態様および付記した図面の詳細な記載のまとめから今明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1Aは各々、ウシBBPの(1)アミノ酸配列、および(2)核酸配列である。図1Bは、シスタチン相同領域、BMP−2相同領域、およびTGF−β受容体II相同ドメインを示す、ウシBMP結合タンパク質(“BBP”)の部分的なアミノ酸配列である。
【図2】図2は、ヒトBMP−2、およびウシSPP−24のBMP−2相同領域のアミノ酸配列アラインメントである;(i、同一;c、保存的置換;sc、半保存的置換)。
【図3】図3は、ウシフェチュインおよびヒトTGF−β受容体II(上)、ならびにヒトTGF−β受容体IIおよびウシSPP−24(BBPに対応する)のTGF−β受容体II相同ドメイン(下)のアミノ酸配列アラインメントである;(i、同一;c、保存的置換;sc、半保存的置換)。
【図4】図4は、アテロコラーゲン中の500μgのBBP(上)、またはアテロコラーゲン単独(下)の埋め込み後21日の、マウス後四半身のX線写真である。
【図5】図5は、アテロコラーゲン中の500μgのBBPの埋め込み後21日のマウス筋肉の組織学的切片である。(H&E染色。オリジナルの拡大率100X。)
【図6】図6は、5μgのrhBMP−2(左)、または5μgのrhBMP−2プラス500mgのBBP(右)の埋め込み後21日の、マウス後四半身のX線写真である。
【図7】図7は、5μgのBMP−2(左)、または5μgのBMP−2プラス500mgのBBP(右)の埋め込み後、9日(上)および12日(下)のマウス後四半身のX線写真である。
【図8】図8は、5μgのrhBMP−2単独(A)、および5μgのrhBMP−2プラス500μgのBBP(B)の埋め込み後9日の、マウス後四半身の組織学的切片である。
【図9】図9は、rhBMP−2(チップに固定)および1×10−5Mから1×10−4Mの範囲の濃度での環状化BBPの相互作用に関する、表面プラズモン共鳴のセンサグラムである。
【図10】図10は、BBPの存在下または不在下における1、3、および7日にわたるrhBMP−2保持のパーセントを示す棒グラフである。
【図11】図11は、特異的SSP−24/BBP抗体が産生されるアミノ酸配列を含む。
【図12A】図12Aは、本発明の例示としての方法の流れ図を示す。
【図12B】図12Bは、本発明の例示としての方法の流れ図を示す。
【図13A】図13Aは、本発明の2つの態様を図示したものである。
【図13B】図13Bは、本発明の2つの態様を図示したものである。
【図14A】図14Aは、様々な種におけるBPPに関するアミノ酸配列(上から順に各々配列番号11、1および12−19)を示すチャートである。
【図14B】図14Bは、様々な種におけるBPPに関する核酸配列(上から順に各々配列番号20−28)のリストである。
【図15】図15は、BBP高用量(1000μg)+rhBMP−2低用量(1μg)の投与によるL4−L5で癒合したラット脊椎の前後方向のX線写真である。
【図16】図16は、rhBMP−2(1μg)治療の投与による右側の偽関節炎(および)左側L4−L5の癒合を示す、ラット脊椎の前側−後側のX線写真である。
【図17】図17は、BBPおよびrhBMP−2の組み合わせの治療後8週の、ラット脊椎領域の組織学的切片である。(H&E染色。オリジナルの拡大率8.4X。)
【図18】図18は、低用量rhBMP−2(1μg)による治療後8週の、ラット脊椎領域の組織学的切片である。(H&E染色。オリジナルの拡大率8.4X。)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の1つの態様は、配列番号:1のアミノ酸配列を有するペプチドを包含する。ウシ由来アミノ酸配列番号:1はBBPと命名されており、配列番号:2は、BBPをコードするウシ核酸配列に対応する。
【0017】
本発明の1つの態様は、ヒトBBPの配列である、配列番号12のアミノ酸配列を有するペプチドを包含する。配列番号21は、ヒトBBPをコードするヒト核酸配列に対応する。
【0018】
BBPは、公知の24kD分泌型リン酸化タンパク質(24 kD secreted phosphoprotein、“SPP−24”)の18.5kDフラグメントに由来する、19アミノ酸、2.1kDペプチドである。SPP−24は、配列番号:2により表される。SPP-24は、BMP−2に誘導される骨形成を著しく阻害する。BBPは、SPP−24のシスタチン様ドメインを含有する。BBPは、少なくとも肝臓および骨(少なくとも脱灰皮質骨および骨膜を含む)において発現される。
【0019】
BBPアミノ酸配列は、プロテアーゼインヒビターのシスタチンファミリーのメンバーであるフェチュインの、TGF−β/BMP結合領域に類似する。BBPは、KD ×10−5MでrhBMP−2(リコンビナントヒトBMP−2)に貪欲に結合する。BBPはまた、BMP−2に類似する結合ドメインを有するその他の分子、例えば他のTGF−βタンパク質(BMP−4、BMP−7(OP−1)、BMP−6、BMP−8(OP−2)、BMP−9、およびTGF−βを含むがこれに限定されない)とも結合し、それらの保持率および/または活性にも同様に影響を与えと思われる。例えばBMP−4およびBMP−2間には高度の程度の配列類似性(約90%)がある。加えて様々な骨誘導性のBMP群(BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−7、およびBMP−9)が、同じ受容体に(アフィニティーに多少の変動はあるが)結合することが実証された。それ故、配列および結合の類似性を考慮すると、これらの付加的なBMP群との結合が予想される。本発明において有用な付加的な成長因子として:GDF5、およびその他のBMP群、例えばBMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9を含んでよい。
【0020】
BBPは単独では、脊椎動物の軟骨形成性および骨形成性の前駆細胞の石灰化を誘導する。BBPは、rhBMP−2が誘導する骨の形成の速度および程度の増大を増大させる。驚くことにin vivoにおいてBMP−2と組み合わせたBBPは、BMP−2単独の効果と比較して、より少量のrhBMP−2を用いて、より速くそしてより広範囲に起こる骨形成を引き起こす。この結果は、上に考察したようにBMP−2による骨の形成を阻害するSSP−2の役割を考慮すると、予想外であった。
【0021】
例えば、マウス筋肉中にBBPを単独で埋め込んだ場合、BBPは異栄養性石灰化を誘導する。“マウスの後四半身”モデルまたは“筋肉の窪み”モデルの、修復時の骨形成または異所性骨形成におけるプロセスは、内軟骨性骨形成を要約するものである。最初のステップは軟骨の産生であり、これが骨に置き換わる。同じプロセスは、発育中の内軟骨性骨形成時に起こるが、一方ある種の膜性骨形成は、軟骨という中間体を経ずに直接起こる。
【0022】
本発明の1つの態様において、BBPのフラグメントが、哺乳類の細胞におけるBMP−2による骨形成の程度もしくは速度を増大する、あるいは脊椎動物の細胞、または特に哺乳類の軟骨形成性もしくは骨形成性の前駆細胞における石灰化の程度もしくは速度を増大するのであれば、そのフラグメントを包含するペプチドは、同様に有用であると思われる。
【0023】
配列番号1のアミノ酸の修飾を有するBBPの形もまた、本発明において有用である。例えば種間で保存されたBBPのアミノ酸配列、欠失または挿入による修飾、保存的または半保存的置換による修飾は、修飾されたアミノ酸配列がBMP−2またはその他のTGF−β相同分子の滞留時間および/または活性を増大する限りにおいて、主張したBBPに包括的に含まれることを意図する。BBPは、β−プリーツシート−ターン−シートプリーツシート分子のモチーフ(“B−T−B”)である。成長因子が結合するアミノ酸残基は、T−部分に属すると、現在考えられている。それ故、T−部分におけるアミノ酸の置換は、B領域における置換より大きくBBPの活性に影響を及ぼすと思われる。
【0024】
上のようにBBPは、成長因子が埋め込み部位に留まっている時間量(“滞留時間”)を増大する、および/またはBMP−2もしくはその他のTGF−β相同分子の全体的な活性を増大することにより、BMP−2のような成長因子の効果を増大すると考えられる。例えばBMP単独では、埋め込み部位から急速に除去されるが、一方BBPと共にBMPを埋め込むと、滞留時間を増大することが示された。滞留時間の増大は、例えば:1)成長因子の半減期を増大するBBP群の能力(例えばタンパク質分解の速度を低減することによる)、および/または2)投与部位からの成長因子の拡散速度の低下、に起因すると思われる。
【0025】
本発明の1つの態様は、BBPに関する哺乳類の共通配列である、配列番号11の配列:C−R−S−T−V−X−Y−S−X−X−X−V−X−X−V X−Y−Y−Cを有するペプチドを包含する。図14Aは、ウシ(配列番号1;核酸配列は配列番号2で示す)、ヒト(配列番号12;核酸配列は配列番号21で示す(9位はAまたはVのいずれかである))、ブタ(配列番号13;核酸配列は配列番号22で示す)、ヒツジ(配列番号14;核酸配列は配列番号23で示す)、ラット(配列番号15;核酸配列は配列番号24に示す)、およびマウス(配列番号16;核酸配列は配列番号25で示す)のBBPにわたる、アミノ酸配列の相同性を示す。図14Aはまた、ニワトリ(配列番号17;核酸配列は配列番号26で示す)、サケ(配列番号18;核酸配列は配列番号27で示す)、およびマス(配列番号19;核酸配列は配列番号28で示す)における高度に保存された領域を示す。
【0026】
図14Aにおいて“X”および“Y”は、各々半保存的または保存的であると理解されるアミノ酸の置換を表示するために使用する。保存的置換は同じグループから選択されるアミノ酸を含み、半保存的置換は、BMP−2結合ドメインまたはBBPの機能に影響を与えないと考えられる置換を含む。例えば6位の置換は、ヒト、ラットおよびヒツジ間で保存的であるが、いくつかのその他の種では半保存的である。というのは異なる種でその位置で報告されたアミノ酸は:QおよびE(ブタ、ラットおよびマウスのBBPではQ、ニワトリではE)であるからである。KおよびRは双方とも塩基性アミノ酸と分類されるが、Qは非電荷の極性アミノ酸と分類され、それ故置換は保存的ではない。しかしBBPの機能は影響を受けないと考えられるため、置換は半保存的である。半保存的置換はまた9、10、11および16位にも見出される。9位では、アミノ酸Aがウシ、ヒト、ブタおよびヒツジのBBPにおいて、それに比してKがラットおよびマウスのBBPにおいて見出される。10位では、アミノ酸Eがウシ、ブタ、およびヒツジのBBPに関して報告されており、ヒトBBPはその位置にQを含有し、ラットおよびマウスのBBPはアミノ酸Gを含有する。11位では、アミノ酸Qがウシ、ヒト、ラットおよびマウスにおいて見出され、一方Kが、ブタBBPに関して、そしてRがヒツジBBPに関して報告されている。16位では、Wが、ウシ、ブタ、ヒツジ、ラットおよびマウスのBBPにおいて見出されており、一方ヒトBBPはHを含有する。13および14位でも、他の種とは対照的にラット/ヒト間で反保存的な置換が存在する。
【0027】
保存的置換の例は、7位に見出される。この位置では異なる種において異なる疎水性アミノ酸が、すなわちウシ、ヒツジ、ラット、およびマウスのBBPではMが、それに比してヒトBBPではVが、そしてブタBBPではIが観察される。M、V、およびIはすべて疎水性アミノ酸であるため、この置換は保存的であると考察される。他の保存的置換は、17および18位にある。2つの疎水性アミノ酸、AおよびVが17位で見出されている。18位では、2つの塩基性アミノ酸、RおよびHが見出されている。
【0028】
本発明の1つの態様は、脊椎動物の細胞、またはより特定すれば哺乳類の軟骨形成性もしくは骨形成性の前駆細胞における石灰化の程度または速度を増大するBBP、を含む組成物であってよい。さらに本発明は、BMP−2、およびBMP−2または脱灰骨マトリックスの1つによる骨形成の、程度または速度を増大させるBBPを含んでいてよい。さらに当該組成物は付加的にまたは代替え的に、BMP−4またはBMP−7を別々にまたはそれらの混合物を含むがこれに限定されない、他のTGF−βファミリーのメンバーを含んでよい。
【0029】
1つの態様において本発明は、治療有効投与量のBBPを単独で、または成長因子、例えばBMPまたはDBMと組み合わせて含む、脊椎動物における骨形成の速度または程度の誘導において使用するための医薬剤を含んでよい。本発明はさらに、脊椎動物における石灰化の速度または程度の誘導において使用するための、BBPを包含するペプチドを含む医薬剤を含んでよい。
【0030】
1つの態様において、BBP、またはBBPおよび1つもしくはそれより多くの他の成長因子との組み合わせは、骨の形成および/またはインプラントの統合が所望される部位での埋め込みのために、基材または担体、例えばコラーゲンスポンジまたは整形外科用のインプラントもしくは人工関節の上またはそれらの中にセットしてよい。
【0031】
BBPに関する投与。BBPに関するいくつかの投与を、その薬理学的(生物学的活性)特性から示唆する。例えばBBPは単独で、または他のTGF−βファミリーのメンバー、例えばBMP−2、BMP−4およびBMP−7、もしくは脱灰骨マトリックスと組み合わせて、骨の形成を誘導する、骨の恒常性を維持する、および/または骨の修復を高めるための、臨床または研究の方法において使用してよい。BBPは、発育時または恒常性の骨の障害(例えば骨粗鬆症)、骨の傷害(例えば扁平(例えば膜性)骨および長管(例えば内軟骨性)骨の骨折治癒、癒合不全骨折)を治療するため、および再建手術のために、単独でまたは組み合わせて使用してよい。本発明はまた、歯周炎、歯周部の再生の治療、歯のインプラントの再建のための歯槽堤増大術、癒合不全骨折の治療、膝関節/股関節の修復術または置換術部位において使用してもよい。
【0032】
一例として、BMPは脊椎固定を提供する上で有効であることが実証されているが、例えば、特に頚椎における炎症および異所性骨形成を引き起こす有害な副作用により、広範な使用は限定される。1つの態様において、BBPをより低用量のBMPと組み合わせて使用して、その効能を保ち、投与部位でのその保持性を高めてよい。本明細書において考察するように、BBPは、リコンビナントヒトBMP−2を含むBMPと結合することが実証されているが、in vitro およびin vivoにおいて7日間までというrhBMP−2の2倍の保持性を可能にした。
【0033】
骨の恒常性を維持する方法、またはその能力のある化合物の臨床指数は、少なくともDEXAスキャンにより評価した場合の、体全体の異なる部位での骨密度の改善により証明される。骨折治癒における高められた骨の形成は、選択された時間間隔での骨折部位の標準的なX線によりルーチンに評価できる。上の指数を決定するためのより高度な技術、例えば定量的CTスキャンまたは定量的な組織学的方法(例えば組織を処理、染色し、顕微鏡下で調べ、骨を画像分析により定義および測定する)を使用してもよい。さらに骨密度、骨領域、骨塩量、異所性骨の形成、およびX線検査での組織の不透過性の増加、アルカリホスファターゼ活性の発現、カルシウムの取り込み、ミネラル化、またはオステオカルシンmRNAの発現の測定を使用して、BBPの石灰化および/または骨形成性の効果を観察してもよい。
【0034】
本発明はまた破骨細胞の骨再吸収を阻害する薬剤の使用を含んでよい。破骨細胞の骨再吸収(の阻害)を達成するために本発明において有用であると思われる薬剤として、ビスホスホネート製剤、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、カルシトニン、およびビタミンD/カルシウム補給剤を含むが、これに限定されない。本発明はまた、骨芽細胞の骨の形成を誘導する薬剤の使用を含んでよい。本発明に有用であると思われる薬剤として、PTH、フッ化ナトリウム、ならびに成長因子、例えばインスリン用成長因子IおよびIIを含むが、これに限定されない。
【0035】
BBP単独の石灰化効果、またはBMPと組み合わせての骨形成効果を示すために使用したin vivoモデルは、他の化合物の類似のふるまいを実証する上で、以前に使用されている。特にin vivoモデルはまた以前に化合物、例えばBMPおよびインスリン様成長因子(IGF)のin vivoの骨形成効果の予測に成功することを可能にした。具体的には、ラット大腿骨を使用する動物モデル、すなわち異所性骨形成モデルにおいてBBPの骨形成効果が実証された。それ故これらの類似の知見に基づき、BBPは、ヒトにおいてin vivoでの骨形成効果を有すると予測される。これらのin vivoモデルにおいて化合物の骨形成効果を実証することが、in vivoのヒトにおけるそれらの効果を実証する試み前に必要である。
【0036】
治療有効量。本発明において有用なBBPまたはTGF−βファミリーのメンバーの治療有効量は、上に述べたように石灰化または骨形成性を高める薬剤の能力により測定した場合に、患者におけるポジティブな臨床効果または細胞における所望の効果を有する量である。各薬剤の治療有効量は、所望の臨床効果を達成し、同時にネガティブな副作用を最小とするように調節することができる。薬剤の投与量は、個々の投与計画、および特定の患者に適当な用量レベルを決定する時に、投与経路、疾患の重症度、患者の年齢および体重、患者が受けているその他の薬物療法、ならびに担当医により通常考えられるその他の因子に依存して、個々の患者のために選択してよい。
【0037】
本発明は、少なくとも骨形成の所定の速度または程度を誘導するために必要なBMP−2の投与量を、BMP−2をBBPと組み合わせた時には低減してよいという点において、有利であり、我々には予想外なことでもある。BMPは投与によってはコストがかさむ可能性があるため、この点は、少なくとも治療のコストを低減する上で有利である。さらに、BMPを組み合わせて治療することにより、BMP(またはその他の骨成長因子)の治療の用量レベルを低減することは、例えば首の軟組織内の炎症、または異所性骨形成を含む、使用するBMPの量に関連する副作用もまた、低減するものと思われる。このように外来の成長因子の保持を増大させるための、骨成長因子の結合剤としてのBBPの使用は、治癒を達成するために必要な成長因子の量を低減することにより、成長因子の使用のネガティブな側面を克服する一助とすることができる。
【0038】
投与剤形。投与剤形中に含まれる薬剤の治療有効量は、選択する薬剤のタイプおよび投与経路を考慮することにより選択してよい。投与剤形は、医薬分野の当業者に公知であるように、患者への投与の促進のためのアジュバント、および医薬的に受容可能な担体を含む、その他の不活性成分と組み合わせて、薬剤を含んでよい。
【0039】
BBPの治療用剤形化は(請求項がBBPの修飾またはフラグメントを含むことを意図する場合)、凍結乾燥したケークまたは水溶液の剤形中に、所望の程度の純度を有するBBPを、所望の生理学的に受容可能な担体、賦形剤または安定剤と共に混合することにより、貯蔵用に調製してよい。受容可能な担体、賦形剤または安定剤は、利用する投与量および濃度でレシピエントに非毒性であり、バッファー、例えばリン酸、クエン酸およびその他の有機酸の塩;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基より少ない)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン、を含む。その他の成分として、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジン;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖、二糖、およびその他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトールもしくはソルビトール;塩を形成する対イオン、例えばナトリウム;ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えばTween(ツイーン)、Pluronic(プルロニック)もしくはポリ(エチレングリコール)(PEG)を含む。
【0040】
投与剤形は、例えば皮下(例えば徐放性カプセルで)、静脈内、腹腔内、筋肉内、骨格周囲または骨格内用の調製物にて提供してよい。いずれか1つの薬剤、または薬剤の組み合わせを、投与剤形中に含んでよい。あるいは薬剤を組み合わせは、別々の剤形にて患者に投与してもよい。薬剤の組み合わせは、患者が治療のための少なくとも2つの薬剤に暴露されるような時間内に、同時に投与してよい。
【0041】
付加的な薬剤。本発明は、BBPとは独立してまたは相乗的に作用して、石灰化および骨形成を高める付加的な薬剤を伴う治療を含んでよい。例えばBBPは、BMP、ビスホスホネート製剤、ホルモン療法治療薬、例えばエストロゲン受容体モジュレーター、カルシトニン、およびビタミンD/カルシウム補給剤、PTH(例えばForteo もしくはテリパラチド、EIi Lilly)、フッ化ナトリウム、ならびに骨にポジティブな効果を有する成長因子、例えばインスリン様成長因子IおよびII、およびTGF−βと共に、組み合わせてよい。当業者は、標準的な治療投与量のパラメータを使用して、各治療に受容される投与量を決定する、またはBBPの効果が第二の薬剤、例えばBMP群と相乗的である場合には低減した投与量を決定することができる。
【0042】
BBPは、基材に含まれるBMP−2の滞留時間を少なくとも増大することにより、BMP−2に作用すると今のところ考えられる。本発明の1つの態様は、一定量のTGF−β相同分子を第一および第二の選択された位置に投与することを含む、TGF−β相同分子の滞留時間を高めるBBPの能力を検出する方法である。さらに、選択された量のBBPを第1の選択された位置に投与し、そして選択された時間間隔の後に第1および第2の位置のTGF−β相同分子の量を最終的に検出し;そして第1および第2の位置のTGF−β相同分子の量の間の差異を算出する。
【0043】
1つの態様において本発明は、哺乳類細胞中のBMP−2およびTGF−βファミリーのメンバーの1つ、例えばBMP−2または脱灰骨マトリックスによる骨形成、の程度または速度を増大させるBBPの投与を含む、脊椎動物の組織における骨形成の速度または程度を高める方法を含んでよい。
【0044】
1つの態様において本発明は、BBPの投与を含む、脊椎動物の組織、またはより具体的には脊椎動物の軟骨形成性もしくは骨形成性の前駆細胞の、石灰化を誘導する方法を含んでよい。
【0045】
1つの態様において本発明は、患者の、骨形成の所望の位置の近位の位置に、軟骨形成性または骨形成性の前駆細胞を投与すること;さらにBBPを投与すること、そしてTGF−βファミリーのメンバーの1つ、例えばBMP−2または脱灰骨マトリックスを投与することを含む、脊椎動物の組織における骨形成の速度または程度を高める方法を含んでよい。
【0046】
1つの態様において本発明は、患者の、石灰化の所望の位置の近位の位置に、骨形成性細胞を投与すること、そしてさらにBBPを投与することを含む、脊椎動物の組織における石灰化の速度または程度を高める方法を含んでよい。
【0047】
1つの態様において本発明は、細胞の骨形成を誘導するために、脊椎動物の未分化の間葉系幹細胞を、TGF−βファミリーのメンバーの1つ、例えばBMP−2または脱灰骨マトリックスで処置すること、さらに、間葉系幹細胞をBBPで処置すること;そして脊椎動物の間葉系幹細胞を、患者の、骨形成の所望の位置の近位の位置に投与すること、を含む、脊椎動物における骨形成の速度または程度を高める方法を含んでよい。
【0048】
例えば、哺乳類の細胞、例えば間葉系幹細胞は、患者または細胞ドナーから採集することができる。この細胞は、骨の形成または修復が所望される位置(例えば骨の成長が必要とされる骨折部位もしくはインプラント部位)、またはBBPおよび/もしくはBMPで最初に処置した位置に注入してよい。その後この細胞は、患者に、全身、または石灰化(または)骨形成が所望される選択された部位のいずれかに、再投与してよい。加えて患者には、骨形成または石灰化を達成する少なくとも1つの付加的な薬剤で、局所的にまたは全身に処置してよい。
【0049】
図12AおよびBは、本発明の例示としての方法の流れ図を示すが、そのステップはあらゆる順序で行ってよい。
【0050】
本発明の1つの態様は、固体支持体上に固定化したBBPを包含する製品を含んでよい。固体支持体はさらに、TGF−βファミリーのメンバー、例えばBMP−2または脱灰骨マトリックスを含んでよい。
【0051】
本発明の1つの態様は、少なくともインプラントの表面がBBPを含む基材を含む、in vivoで使用するためのインプラントを含んでよい。インプラントはさらに、MSC、軟骨細胞または骨芽細胞の前駆細胞を含んでよい。さらにインプラントは、例えばピン、ネジ、プレート、または人工関節の形に成形してよい。
【0052】
例えば図13A&Bは、本発明の2つの態様を示す。図13Aにおいて本発明は、表面(201)を有する基材を包含する、体内で使用するためのインプラントまたは移植片(200)を含んでよく、その場合少なくともインプラントの表面は、周辺の組織における石灰化または骨形成を誘導するための十分量のBBP(203)を含む。インプラントは、間葉系幹細胞、BBPを発現する軟骨形成性細胞もしくは骨形成性細胞、および/またはBMP−2、脱灰骨マトリックス、もしくはコラーゲン培養物を含んでよい。インプラントはまた、ピン、ネジ、プレート、または人工関節の形であってよく、骨の除去、骨折、またはその他の骨傷害の部位(204)の形成または修復を刺激することにより、骨折を固定化し、骨の形成を高め、または人工関節のインプラントを安定化するために使用する骨(202)の近位に、または骨に接触して設置してよい。
【0053】
図13Bに示したように本発明はまた、in vitroの適用(例えばコラーゲンまたは軟骨細胞の培養において)、または骨(202)の近位にもしくは接触しての、少なくともBBPを含有する組成物またはBBP発現細胞(206)のin vivo の投与、すなわち骨形成および/または石灰化が所望される骨除去、骨折またはその他の骨傷害の部位(204)でのインプラント(200)、を含んでよい。BBP組成物は、その他の薬剤、例えばBMP−2、脱灰骨マトリックス、またはコラーゲン培養物と組み合わせて投与してよい。
【0054】
例えば、ヒトにおける骨に関連する障害を治療するための幹細胞の使用についてもまた、検討されてきた。健常な個体由来の骨芽細胞前駆体の幹細胞の、疾患の個体への注入は、これらの患者における骨密度を改善することが示された。細胞はBMPおよびBBPを用いて前処理してもよいし、またはそれらと共に同時に投与してもよい。
【0055】
1つの態様において本発明は、BBPのあらゆる部分、またはBBP前駆体であるSSP−24のBBP部分への選択的結合を有する、モノクローナルまたはポリクローナル抗体を含んでよい。
【0056】
BBPまたはそのフラグメントは、免疫原性ポリペプチドに(例えばリコンビナントの発現またはin vitroでの共有結合の方法により)融合させてよく、今度はこれを使用して、BBPに対する抗体を作成するために動物を免疫してよい。抗体は免疫された動物の血清から回収する。あるいは従来の様式で免疫された動物由来の細胞から、モノクローナル抗体を調製してもよい。固定化した抗体は、BBPの検出または精製において特に有用である。
【0057】
ウサギのポリクローナル抗体を作成した特定のペプチド配列の2つの例として以下を含む:(1)BBP前駆体であるウシおよびヒトのSSP−24の双方と反応する、ペプチド配列“IQETTCRRESEADPATCDFQRGYHVPVAVCRSTVRMSAEQV”(図11−配列番号3)に対する抗体。この抗体は、上に示した合成ペプチドで免疫したウサギにおいて作成した。さらに(2)配列“CGEPLYEPSREMRRN”(図11−配列番号4)に対して作成した抗体。この抗体もまた、示した配列に対応する合成ポリペプチドで免疫したウサギにおいて作成した。この2つ目の抗体は、ウシSSP−24と反応する。N末端のシステインは、ネイティブSSP−24配列の部分ではない;しかし好ましくは、このペプチドがアフィニティークロマトグラフィー用のクロマトグラフ樹脂に結合することを可能にするために含める。付加的なペプチド配列を、BBPとの特異的な結合のために同定してもよく、この配列を、BBPとの選択的結合を有する抗体を作成するために選択してよいが、BBPの結合、例えばBMP−2、またはその他のTGF−βファミリーのメンバーと結合するBBPの領域(配列番号3および4を含む)を妨げないものとする。これらの特定のペプチド配列を使用して、モノクローナル抗体を作成することができ、この調製法は当該技術分野において公知である。
【0058】
上の配列、マウス、ヒトおよびラットのゲノムにおける対応する配列、または免疫原性配列のあらゆる誘導体に対する抗体もまた、本発明において有用である。これらの抗体は、少なくともそれらが高い特異性を持ってBBPアミノ酸配列を認識するという限りにおいて有用である。そのような抗体が、他の分子と相互作用するペプチド上の位置に結合する場合、その抗体はまた、BBPと他の分子とのタンパク質特異的な相互作用を阻害するという点で有用であると思われる。軟骨形成または骨形成の速度または程度が修飾されると思われる状況におけるBBP活性の阻害。
【0059】
本発明の1つの態様において、BBPに対して特異的な抗体は、脊椎動物の細胞におけるBMP−2による骨形成の程度もしくは速度を減少させる、あるいは脊椎動物の細胞における、またはより具体的には哺乳類の軟骨形成性もしくは骨形成性の前駆細胞における石灰化の程度もしくは速度を減少させる上で、有用であると思われる。
【0060】
本発明の1つの態様はまた、サンプル(細胞培養液、組織サンプル、ペプチド画分、Westernブロットを含むがこれに限定されない)をBBP選択的抗体に暴露させ、SSP−24/BBPおよびBBP抗体の複合体を可視化することを含む、サンプル中のSSP−24/BBPの存在を検出するために、BBP選択的抗体を使用する方法を含む。
【0061】
本発明の1つの態様においてBBP抗体は、リコンビナント細胞培養液または天然の原料からのBBPのアフィニティーによる精製に使用してよい。他の成長因子と検出可能な交差反応をしないBBP抗体を使用して、これらの他のファミリーメンバーからBBPを精製することができる。
【0062】
1つの態様において本発明は、BBPをコードするDNAまたはRNAの核酸配列、または上述の修飾されたアミノ酸配列に対応する修飾された配列を包含する、核酸コンストラクトを含んでよい。
【0063】
本発明はまた、BBP、または前駆体のSSP−24をコードする核酸配列に、操作可能なように連結した発現ベクターを含んでよい。さらにBBP、またはその前駆体であるSSP−24をホスト細胞中にコードする核酸コンストラクトを導入することにより、形質転換体を得てもよい。
【0064】
本発明の実践は、BBP、および哺乳類またはウイルスの発現ベクター中に操作可能なように連結されたプロモーターをコードする配列を包含する、オリゴヌクレオチドコンストラクトの使用を含んでよい。発現ベクターおよびクローニングベクターは、そのベクターが1つまたはそれより多くの選択されたホスト細胞中で複製することを可能にする核酸配列を含有する。一般にクローニングベクターにおいて、この配列は、ベクターがホストの染色体とは独立して複製することを可能にするものであり、複製の原型または自発的に複製する配列を含む。そのようなクローニングベクターは、当業者に周知されている。発現ベクターはクローニングベクターと異なり、ホスト有機体により認識され、BBP核酸に操作可能なように連結された、誘導可能なまたは構成的なプロモーターを含有してよい。核酸は、それが別の核酸配列との機能的関連性の中に置かれている場合、操作可能なように連結してよい。例えば、プレ配列または分泌リーダーに関するDNAは、それがあるポリペプチドに分泌に参加するプレタンパク質として発現される場合、そのポリペプチドに関するDNAに操作可能なように連結する。
【0065】
本発明の1つの態様はまた、相補的なBBP DNA配列またはRNA配列にサンプルを暴露させ、ハイブリッドの複合体を可視化することを含む、BBPをコードするDNAまたはRNA配列に対して相補的で、特異的な結合を有するDNAまたはRNA核酸配列を使用して、サンプル(細胞培養液、組織サンプル、核酸画分、またはSouthern もしくは Northernブロットを含むがこれに限定されない)中のBBP DNAまたはRNAの存在を各々検出する方法を含んでよい。
【実施例】
【0066】
実施例1:非コラーゲン性骨タンパク質(NPC)群の抽出および分離
方法:NCP群は、脱脂、脱灰したヒト皮質骨粉末より、4M GuHCI、0.5M CaCI2、2mM N−エチルマレイミド、0.1mM ベンズアミジンHCI、および2mM NaN3を用いて、18時間、6℃で抽出した。残渣のコラーゲンおよびクエン酸可溶性NCPは、250mM クエン酸塩、pH3.1に対する6℃、24時間の透析により抽出した。残渣を遠心(10,000×g、6℃、30分間)によりペレット化し、1:1(v/v)クロロホルム:メタノールを用いて、24時間、23℃で脱脂し、濾過により集め、22℃で乾燥させた。この材料を4M GuHCI中に再懸濁し、4M GuHCI、0.2%(v/v)Triton X−100、100mM Tris−HCI、pH7.2に、24時間、6℃で透析した後、水に透析し、10,000×g、30分間、6℃で遠心した。ペレットを凍結乾燥し、その後ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにより分離した。
【0067】
クロマトグラフィーは、CHT−10セラミックヒドロキシアパタイトカラム (BioRad, Hercules, CA)を用いて、BioLogicクロマトグラフィーワークステーションを使用して行った。ウシBMP/NCPは6M 尿素、10mM リン酸ナトリウム、pH7.4中に溶解させた。サンプルをヒドロキシアパタイトカラムにのせ、非結合画分を集めた。結合したタンパク質は、カラム容積の5倍量の直線濃度勾配で、リン酸ナトリウムの濃度を300mMまで増加して溶出させた。カラムを流している間、5mlの分画で集めた。180mM リン酸塩で分離された分画を、SDS−PAGE電気泳動によりさらに分離した。18.5のMrに対応するバンドを切り出し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析/飛行時間型質量分析(MALDI/TOF MS)による配列分析を行った。
【0068】
結果:配列の同定および分析:ヒドロキシアパタイトから180mM リン酸塩で溶出されたbBMP/NCPの分画を、SDS−PAGE電気泳動により分離し、18.5kDのMrの材料を、MALDI/TOF MS分析した。この材料の主要なタンパク質成分は、そのタンパク質の複数領域と同一な配列を有する6つのペプチドに基づき、SPP−24のフラグメントであると決定した。(Hu, et al., Isolation and molecular cloning of a novel bone phosphoprotein related in sequence to the cystatin family of thiol protease inhibitors(チオールプロテアーゼインヒビターのシスタチンファミリーと配列の関連する、新規骨リン酸化タンパク質の単離および分子のクローニング). J. Biol. Chem. 270:431-436, 1995.)これらのペプチドの配列を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
この配列のSWISS−PROTデータベースによる分析から、以前に記載されているシスタチン様ドメインであることが明らかになったが、他の配列の骨代謝との関連性への類似性は認められなかった(Hu, et al.)。しかし他の研究から、他のシスタチン様タンパク質は、骨代謝に一役を担うタンパク質と相互作用することが知られている。具体的にはシスタチンファミリーのメンバーは、TGF−β受容体との類似性の基づいて、TGF−βおよびBMP−2との結合特性を有する。((Brown, et al., Friends and relations of the cystatin superfamily- new members and their evolution(シスタチンスーパーファミリーの新規メンバーの仲間および関連性−新規メンバーおよびそれらの進化).: Protein Sci. 6:5-12, 1997; Demetriou, et al., Fetuin/α 2-HS glycoprotein is a transforming growth factor-β type Il receptor mimic and cytokine antagonist(フェチュイン/α2−HS糖タンパク質は、トランスフォーミング成長因子−βII型受容体の擬態およびサイトカインアンタゴニストである). J. Biol. Chem. 271:12755- 12761 , 1996.)しかしフェチュインはBMPの活性と拮抗する(Hu, et al.)。それ故SPP−24のシスタチン様領域、およびフェチュインのシスタチン様ドメインの手作業による比較を行った。
【0071】
図1Bは、ウシSSP−24、BMP−2相同領域、およびTGF−β受容体II相同領域の部分的なアミノ酸配列である。下線のアミノ酸は、質量分析により存在することが確認された。(GenBank アクセション番号U08018; Hu, et al.)
興味ある2つの領域が、SSP−24のシスタチン様領域において同定された。1つの領域は、BMP−2と類似するある配列を有し、一方他の領域は、フェチュインのTGF−β受容体II相同ドメインとの類似性を有していた。これら2つの領域を含有するSSP−24の配列の部分を図1Bに示す。
【0072】
ヒトBMP−2およびヒトTGF−β受容体IIに対する、興味ある2つの領域の比較を図2および3に示す。図2は、ヒトBMP−2、およびウシSSP−24のBMP−2相同領域の、アミノ酸配列アラインメントである。図3は、ウシフェチュインおよびヒトTGF−β受容体II(上)、ならびにヒトTGF−β受容体IIおよびウシSPP−24のTGF−β受容体II相同ドメイン(BBPに対応する)(下)のアミノ酸配列アラインメントである。SPP−24、フェチュイン、ヒトBMP−2、およびヒトTGF−βII受容体の配列のアラインメントは、T-Coffeeプログラムを使用して行った。(Notredame, et al, T-Coffee: A novel method for multiple sequence alignments(複数の配列アラインメントのための新規方法). J. Molecular Biol. 302:205-217, 2000.)これら2つの領域に対応する合成ペプチドを、以下に記載するように得、化学的分析およびin vivo分析を行った。
【0073】
実施例2:BBPのin vivo活性
方法:材料の骨形成活性は、8から10週齢のオスSwiss-Weberマウス(Taconic Farms, Germantown, NY)を使用して検査した。アッセイの前に、BBPを可溶化し、2mgのアテロコラーゲン中に凍結乾燥した。乾燥した材料を#5ゼラチンカプセル内に入れ、クロロホルム蒸気への暴露により無菌化した。アッセイを行うため、小動物麻酔機(VetEquip, Pleasanton, CA)に通して、2 l/分の酸素中に送達した1%イソフルランを使用して麻酔した。動物は手術用ボードに固定し、後四半身全体の被毛を剪毛した。皮膚を70%エタノールで清浄にし、後四半身に隣接する脊椎上に正中切開を加えた。はさみでの鈍的切開を使用して、片側の四頭筋を露出させた。はさみの先で筋肉中に小さ窪み嚢を作り、検査材料を含有する#5カプセルを窪みの中に挿入した。その後皮膚を、3つの11mm Michelサージカルクリップで閉じ、動物をモニタリングのためケージに戻した。
【0074】
21日後動物を屠殺し、後四半身を切除した。検体の放射線学的検査は、スモールパーツX線キャビネット(Faxitron, Wheeling, IL)を使用して行った。骨形成の定量化のため、骨領域、および異所性骨形成部位を包括的に含む興味ある領域の骨塩量(BMC)を、PIXImus2 小動物デンシトメーター(GE Lunar, Madison, Wl)を使用して決定した。次に検体を緩衝化ホルマリン中に入れ、組織学的検査のためのルーチンの処理を行った。
【0075】
様々な量のrhBMP−2およびBBPを組み合わせ、インプラント用に調製した。以下の量のすべての可能な組み合わせを、パイロット試験で使用した。rhBMP−2:0μg、0.05μg、0.5μg、5μg、および50μg;BBP:0μg、50μg、およびμg、500mg。5μgのrhBMP−2のサンプル量が、信頼できる分析のための多すぎもせず少なすぎもしない異所性骨の量を一貫して産生したため、この量をより広範なその後の研究に使用した。
【0076】
結果:BBPを、単独でまたはrfBMP−2と組み合わせて検査した。
【0077】
図4は、アテロコラーゲン中500μgのBBP(上)、またはアテロコラーゲン単独(下)の埋め込み後21日の、マウス後四半身のX線写真である。BBPを単独で担体と共に埋め込んだ場合、BBPは石灰化を誘導した。
【0078】
図5は、アテロコラーゲン中500μgのBBPの埋め込み後21日の、マウスの筋肉の組織学的切片である。筋肉内脂肪組織に主に付随する異栄養性石灰化に注目のこと。(H&E染色。オリジナルの拡大率100X。)
TGF−β受容体IIと類似の配列をもつBBP 500μgを、5μgのrhBMP−2と共に埋め込んだところ、形成された異所性骨の量は、デンシトメトリーにより測定した場合、同量のrhBMP−2単独を埋め込んだ動物において形成された骨の量より一貫して多かった。
【0079】
図6は、5μgのrhBMP−2(左)、または5μgのrhBMP−2プラス500mgのBBP(右)の埋め込み後21日の、マウス後四半身のX線写真である。rhBMP−2およびBBP双方を含有するサンプルに付随する、増加した乳濁度に注目のこと。
【0080】
さらに、ペプチドおよびrhBMP−2の双方を含有するインプラントは、BMP−2単独のインプラントより早期に、検出可能な軟骨および骨を産生した。
【0081】
図7は、5μgのrhBMP−2(左)、または5μgのrhBMP−2プラス500mgのBBP(右)の埋め込み後、9日(上)および12日(下)のマウス後四半身のX線写真である。rhBMP−2およびBBP双方を含有する第9日のサンプルからは、サンプル内に石灰化の出現が認められるが、BMP−2単独を含有するサンプルにはないことに注目のこと。
【0082】
図8は、5μgのrhBMP−2単独(A)、および5μgのrhBMP−2プラス500μgのBBP(B)の埋め込み後9日の、マウス後四半身の組織学的切片である。BMP+BBP検体における豊富な軟骨に注目のこと、一方BMP単独の検体は炎症および中胚葉細胞の増殖という、より早期のステージを示している。
【0083】
【表2】
【0084】
実施例3:BMP−2および合成ペプチドの相互作用を決定するための表面プラズモン共鳴
方法:rhBMP−2およびBBP間の結合の相互作用を、Biacom X 装置(Biacore,Piscataway, NJ)を利用しての表面プラズモン共鳴を使用して特徴づけた。この手順のためのバッファーおよびチップは、Biacoreより入手した。rhBMP−2は、10mM 酢酸ナトリウム、pH5.5中に、1mg/ml濃度で透析した。次にこの材料を、製造元により提供された試薬および手順を使用してCM−5センサーチップに付着させた。移動相(running)バッファーは、10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCI、3mM EDTA、0.005% 界面活性剤P20とした。ペプチドは、1×10−5から1×10−4Mの範囲の濃度で、移動相バッファー中に溶解させた。5から50μl/分の流速、20から100μlの注入容積を利用した。再生溶液は、10μM グリシン−HCl、pH2.0とした。
【0085】
結果:rhBMP−2およびBBP間の相互作用を決定するための表面プラズモン共鳴の研究の結果を、図9に示す。
【0086】
図9は、rhBMP−2(チップに固定)および1×10−5から1×10−4Mの範囲の濃度の環状化BBPの相互作用に関する、表面プラズモン共鳴のセンサグラムである。相互作用に関する解離定数(KD)推定値は、3×10−5Mであった。BBPを、β−メルカプトエタノールで予めの還元により開環した場合は、有意な結合は起こらなかった。
【0087】
実施例4:保持時間の研究:BBPおよびrhBMP−2
方法:標識したrhBMP−2を、BBPまたはビヒクルと混合し、コラーゲンスポンジに含浸させた。このスポンジを、げっ歯類の筋肉の窪みの中に埋め込んだ。特定の時間(1、3および7日)でインプラントを除去し、残留しているBMPの量を決定した。4頭の動物を各群に使用した。
【0088】
結果:BBPはrhBMP−2の保持を、約2つの因子により増大させた。図10は、BBPの存在下または不在下における1、3および7日にわたるrhBMP−2の保持のパーセントを示す棒ブラフである。
【0089】
考察:インプラント部位でのBMPの保持の増大は、BMPの有効性を改善し、そしてまた同じ治療結果に必要な量を低減すると思われる。
【0090】
明細書には本発明の特定の態様を記載しているが、当業者が、本発明の概念から離れることなく本発明のバリエーションを考案することは可能である。
【0091】
実施例5:ヒトBBPのin vivo活性
方法:実施例5の方法を利用して、8頭のマウスにおけるhBBPの活性を、後四半身の異所性骨形成のアッセイ法において、5μgのrhBMP−2単独(コントロール)、または5μgのrhBMP−2プラス0.05mgのヒトBBP(hBBP)を使用して検査した。4週後、動物を屠殺し、後四半身を切除した。X線およびDEXA分析を行った。
【0092】
結果:hBBPを、rhBMP−2との組み合わせにおいて検査した。
【0093】
挿入した時に、BMPを伴うhBBPは、BMP単独より多量の石灰化の誘導を得た。
【0094】
【表3】
【0095】
実施例6:関連動物モデルにおけるBMPへの代替え(または)補助としての、脊椎固定におけるBBPの効果
ラット後側脊椎固定モデルを使用して、癒合におけるBBPの効果を調べた。
【0096】
方法:3群の6頭Lewisラットに、各々以下の薬剤:BBP(500μg)(1群);BBP(500μg)+低用量rhBMP−2(1μg)(2群);コラーゲン+低用量rhBMP−2(1μg)(3群)、を含有するコラーゲンスポンジの挿入による、椎骨L4−L5での後側方横突起間脊椎固定術を行った。結果を、剥皮のみ(0%癒合)および高用量のrhBMP−2(3μg)(100%癒合)の組織学的コントロールと比較した。すべてのラットは、2、4、6、および8週に術後のX線撮影を行った。脊椎の触診を、8週の屠殺時に行った。骨の形成は、H&E染色した組織学的切片において評価した。
【0097】
結果:8週で、癒合ラットは:1群(BBPのみ)では14%;2群(BBP+低用量BMP)では80%;そして3群(コラーゲン+低用量BMP)では40%であった。この値は、ヒストリカルネガティブコントロールを0%とし、ヒストリカルポジティブコントロールを100%として比較している。
【0098】
【表4】
【0099】
考察:3群(コラーゲン+低用量BMP)とは対照的に、2群(BBP+低用量BMP)におけるより高い癒合速度は、脊椎固定を達成するために、より低用量のBMPの使用を可能にすることができるというBMPにおける補助的効果を、BBPが有することを示唆する。これらの有望な結果を確立するために、より多数の被験者によるさらなる研究が必要である。
【0100】
実施例7:動物脊椎固定モデルでの、BMPにおける結合ペプチドの補助的効果
脊椎固定におけるBBPの、BMPに対する代替えまたは補助としての効果を、関連動物モデルにおいて調べる。
【0101】
方法:5群の50頭Lewisラットに、各々以下の薬剤:BBP(500μg)(1群);BBP(1000μg)(2群);コラーゲン+低用量rhBMP−2(1μg)(3群);BBP(500μg)+低用量rhBMP−2(1μg)(4群);およびBBP(1000μg)+低用量rhBMP−2(1μg)(5群)の植込みによる、椎骨L4−L5での後側方横突起間脊椎固定術を行った。コントロール群として、ネガティブ群(剥皮)およびポジティブコントロール群(コラーゲン+3μgのBMP)を含めた。
【0102】
すべてのラットは、2、4、6、および8週に術後のX線撮影を行った。8週の屠殺後に脊椎の触診を行った。骨の形成は、H&E染色した組織学的切片において評価した。
【0103】
結果:8週での触診により、1群および2群(低用量および高用量のBBPのみ)では0%癒合、3群では40%癒合、そして5群(BBP1000μg+低用量BMP)では90%癒合を明らかにした。3群および5群の差異は、ほぼ統計学的有意差であった(p=0.056)。すべてのわれわれのこれまでの研究において、ネガティブ群としての背景コントロール群(剥皮のみ)は0%癒合という結果を示し、一方ポジティブコントロール群(BMP十分容量)による癒合比率は100%であった。X線写真による癒合の比率は、第4週、および第6週では3群より5群において有意により高い(p<0.05)が、第8週ではほぼ有意であった(p=0.056)。組織学的分析は、3群と比較した場合、4群および5群において、より成熟したより厚い骨量を明らかにした。
【0104】
考察:コラーゲン+低用量BMPに比して、BBP+低用量BMPによるより高い癒合比率は、将来的には脊椎固定のための低用量のBMPの使用をおそらく可能にする、BMPにおけるBBPの補助的効果を示していると言ってよい。
【0105】
実施例8:動物の脊椎固定モデルでの、BMPにおける結合ペプチドの補助的効果
rhBMP−2に誘導される骨の治癒における、骨の形態形成タンパク質結合ペプチド(BBP)の効果を検査するための、脊椎固定のラットモデルを利用しての前向きの8週介入の試み。
【0106】
本研究の目的は、rhBMP−2の担体として使用するコラーゲンスポンジへのBBPの付加が、満足な臨床結果を達成するために必要なrhBMP−2の量を低減するかどうかを決定することである。BBPは、BMP−2の効果を増大するための補助として有効であり、癒合を提供するために必要なタンパク質の用量の低減を可能にした。
【0107】
方法:L4−L5での後側方横突起間脊椎固定術を、5つの治療群の各Lewisラットで行い、コラーゲンスポンジ(5×5×13mm)を手術部位に埋め込んだ。
【0108】
各スポンジは無菌のミクロチューブ内に置き、水中BBP(500μgまたは1000μg)の懸濁液、または無菌水のみのいずれかを含ませた。スポンジを、組織培養フード内で一晩放置して空気乾燥させた後、−70℃で1時間置き、一晩凍結乾燥した。チューブ(凍結乾燥を可能にするため、最上部に小さな穴がある)をオートクレーブの窪みに置き、封入した。次に材料をクロロホルムの蒸気に少なくとも4時間暴露させて無菌化した。手術の直前にポーチを開き、チューブからスポンジを取り出し、デザインされた量のrhBMP−2または水を含有する第2のチューブに入れた。スポンジは溶液を完全に吸収することができた。
【0109】
ラットのL4−L5の後側方横突起間脊椎固定術は、我々の実験室13−17では、十分に確立された手順である。手短には、動物をイソフルランで麻酔し、手術部位を剪毛し、Betadyneおよびアルコールで準備した。3cmの長軸方向の正中切開を皮膚およびL4−L5上の皮下組織を通して腰背筋膜まで加えた。次に2つの別個の2cmの長軸方向の傍正中切開を、L4−L5の両側の脊柱起立筋に加えた。L4−L5の横突起を露出させ、軟組織を取り除き、高速のバールで皮質を剥離した。この部位を生理食塩水で洗浄し、治療検査材料を置いた。背腰筋膜を、4−0 Prolene (Ethicon, Somerville, NJ)で閉じた。皮膚を4−0 Proleneで閉じ、細心の術後ケアを施した。
【0110】
BBPの2つの用量(500μgおよび1000μg)を、”低用量”(1μg)のrhBMP−2を伴う場合、または伴わない場合で検査し、結果を低用量(1μg)のrhBMP−2と比較した。これらはコントロール群に対して比較した。癒合は、放射線学的、組織学的、および触診の検査により評価した。動物は術後8週で屠殺した。
【0111】
手術の結果は、放射線学的に、組織学的に、および触診により評価した。前後方向のX線写真は、スモールパーツX線キャビネット(Faxitron, Wheeling, IL)を使用して、各動物について2、4、6および8週に得た。X線写真は、3名の独立した観察者により、以下の標準化スケール:0:癒合なし;1:骨形成の存在を伴う不完全な癒合;そして2:完全な癒合を利用して評価した。3名の観察者のスコアを加算し、合計5または6を、“癒合した”とみなした。脊椎の触診は、8週の屠殺時に行った。ヒトにおける癒合を決定するためのゴールドスタンダードをシミュレートするため、癒合物の検査および触診を死後行った。癒合したレベルは、Adson鉗子を用いて触診し、隣接する非癒合のレベルと比較した。各検体は、3名の独立した観察者により癒合、または非癒合として類別した。3名の観察者の誰れかが脊椎を非癒合と類別した場合は、その脊椎は“非癒合”とみなした。触診の後、検体は標準的な10%脱灰溶液HCl(CaI- Ex, Fisher Scientific, Fairlawn, NJ)を使用して脱灰し、水道水の流水で洗浄した後、75%エタノールに移した。矢状切片を横突起の高さで注意深く切り出した。検体をパラフィン中に包埋し、各検体の切片を得た。これらの切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。それらを、独立した観察者により癒合および非癒合として評価した。
【0112】
“癒合した”と判定された各群中の被験者の比率を、SPSSソフトウェアを使用してのフィッシャーの正確確立検定(Fisher's exact test)を用いて、逐次的2群比較にて比較した。0.05より小さいまたは等しいp値を、統計学的有意と設定した。
【0113】
結果:放射線学は、低用量BMP−2(1μg)のみと比較した場合に、1000μg BBP+1μg BMP−2の組み合わせによる有意により早期の癒合を明らかにした(p<0.05)。8週での触診および組織学は、ほぼ有意な差異(p=0.057)での、同じ組み合わせによるより高い癒合比率を明らかにした。
【0114】
【表5】
【0115】
【表6】
【0116】
放射線学的検査の結果を表5に示す。表5は、5または6のスコアを有し、それ故4回の各タイムポイント(2、4、6および8週)関して“癒合した”と判定された、各群中の被験者の比率を表す。表からわかるように、低用量および高用量のBBP群の動物はいずれも、いかなるタイプポイントでも癒合を発達させていなかった。低用量BBP+低用量BMP−2群は、BMP−2低用量のみの群より、第6および8週で、より高い癒合比率を有し、この差異は第6週に関しては有意であった(p<0.05)が、8週では有意でなかった(p=0.170)。他方、BBP高用量+BMP−2低用量群は、BMP−2低用量のみの群を比較した場合、第4、6および8週のタイプポイントで、有意により高い癒合比率を有した(各タイムポイントに関してp<0.05)(図15および16)。
【0117】
表6は、3名の独立した臨床評価者により“癒合した”と判定された、各群の被験者の比率を示す。非常に重要な比較は、BMP−2低用量群 対 BBP低用量+BMP−2低用量群、およびBBP高用量+BMP−2低用量群、間のものであった。触診により評価した癒合比率は、BMP−2低用量群と比較した場合、双方の組み合わせの群ともより高かった(図15および16)。しかしこの差異は有意ではなく、一方BBP高用量+BMP−2低用量群と、BBP低用量群との比較に関しては、有意の傾向が認められた(p=0.057)。低用量BMP−2群の癒合した検体と比較した場合、組み合わせ群の癒合した検体では、癒合物の厚さはより厚い傾向があり、骨の成熟度はより成熟している傾向が認められた(図17および18)。図17は、BBPおよびrhBMP−2の組み合わせの治療後8週の、ラット脊椎領域の組織学的切片であるが、皮質の成熟した骨を伴うL4およびL5の横突起間の厚い癒合物を示す。(H&E染色。オリジナルの拡大率8.4×)。図18は、低用量rhBMP−2(1μg)による治療後8週の、ラット脊椎領域の組織学的切片であるが、骨部分を架橋する成熟した皮質を架橋する未成熟な骨を示す。(H&E染色。オリジナルの拡大率8.4×)。
【0118】
表6はまた、独立した組織学者により癒合したと判定された、各群の被験者の比率を示す。結果は、第8週の触診および放射線学双方の結果とも類似の癒合比率を実証することを確証した。低用量BMP−2群の癒合した検体と比較した場合、組み合わせ群の癒合した検体において、癒合物の厚さはより厚い傾向があり、骨の成熟度はより成熟している傾向が認められた(図17および18)。
【0119】
特定の成長因子結合薬、例えばBBPは、固定術で使用する担体中に配合して、BMPの投与量を減少させ、用量に関連する可能性が最も高い副作用をおそらく減少させることができる。このことはまたコストを低下させ、臨床結果を改善するものと思われる。
【0120】
X線写真の結果は、同じ量のタンパク質の単独での使用と比較した場合、高用量BBP+低用量BMP−2の組み合わせによる、有意により高いそしてより早期の癒合比率を実証した。組織学および触診の検査は、ほぼ有意な差異を伴う第8週でのこのより高い癒合比率を確証した。この脊椎固定モデルは癒合が困難であり、堅固な関節固定を誘導するための特定の骨誘導能力を有する材料を必要とすることに注目することは重要である。同様に、500μgまたは1000μgのいずれか単独の使用では、脊椎モデルに癒合を提供しなかったが、筋肉の窪みモデルの500μgBBPの埋め込みにより異所性異栄養性石灰化の形成が認められた。組織学的検査において筆者らは、BMP−2のみの群と比較した場合、組み合わせ群によるより成熟した骨癒合物を観察した(図17および18)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎動物の組織における骨の形成速度を増大する方法であって、配列番号11の配列を有するペプチドまたはそのフラグメント、および一定用量の少なくとも1つの骨成長因子を、組織に投与することを包含し、ここで当該組み合わせが、同じ用量の少なくとも1つの骨成長因子単独による治療に比して、より速い速度の骨の形成を結果的にもたらす、前記方法。
【請求項2】
骨成長因子が、ペプチドと結合することで、組織での成長因子の保持率が増大される、分子または化合物の群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
骨成長因子がTGF−βファミリーのメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
骨成長因子が、以下:TGF−β、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、GDF5、および脱灰骨マトリックスから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ペプチドが配列番号1の配列を有し、そして骨成長因子がBMPである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ペプチドが配列番号12の配列を有し、そして骨成長因子がhBMPである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
骨の形成が骨形成性として測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
骨の形成が石灰化により測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
脊椎動物の骨の癒合速度を増大する方法であって、配列番号11の配列を有するペプチドまたはそのフラグメント、および一定用量の少なくとも1つの骨成長因子を、組織に投与することを包含し、ここで当該組み合わせが、同じ用量の少なくとも1つの骨成長因子単独による治療に比して、より速い速度の骨の癒合を結果的にもたらす、前記方法。
【請求項10】
骨成長因子が、ペプチドと結合することで、組織での成長因子の保持率が増大される、分子または化合物の群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
骨成長因子がTGF−βファミリーのメンバーである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
骨成長因子が、以下:TGF−β、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、GDF5、および脱灰骨マトリックスから成る群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
ペプチドが配列番号1の配列を有し、そして骨成長因子がBMPである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
ペプチドが配列番号12の配列を有し、そして骨成長因子がhBMPである、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
脊椎動物の骨の癒合速度を誘導する方法であって、配列番号11の配列を有するペプチドまたはそのフラグメント、および一定用量の少なくとも1つの骨成長因子を、組織に投与することを包含し、ここで当該組み合わせが、同じ用量の少なくとも1つの骨成長因子単独による治療に比して、より速い速度の骨の形成を結果的にもたらす、前記方法。
【請求項16】
骨成長因子が、ペプチドと結合することで、組織での成長因子の保持率が増大される、分子または化合物の群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
骨成長因子がTGF−βファミリーのメンバーである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
骨成長因子が、以下:TGF−β、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、GDF5、および脱灰骨マトリックスから成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ペプチドが配列番号1の配列を有し、そして骨成長因子がBMPである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
ペプチドが配列番号12の配列を有し、そして骨成長因子がhBMPである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
脊椎動物の骨の癒合速度を誘導する方法であって、配列番号11の配列を有するペプチドまたはそのフラグメント、および一定用量の少なくとも1つの骨成長因子を、組織に投与することを包含し、ここで当該組み合わせが、同じ用量の少なくとも1つの骨成長因子単独による治療に比して、より速い速度の骨の形成を結果的にもたらす、前記方法。
【請求項22】
骨成長因子が、ペプチドと結合することで、組織での成長因子の保持率が増大される、分子または化合物の群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
骨成長因子がTGF−βファミリーのメンバーである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
骨成長因子が、以下:TGF−β、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、GDF5、および脱灰骨マトリックスから成る群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
ペプチドが配列番号1の配列を有し、そして骨成長因子がBMPである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
ペプチドが配列番号12の配列を有し、そして骨成長因子がhBMPである、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
膜性骨の癒合速度を誘導する方法であって、配列番号11の配列を有するペプチドまたはそのフラグメント、および一定用量の少なくとも1つの骨成長因子を、膜性骨の近位の組織に投与することを包含し、ここで当該組み合わせが、同じ用量の少なくとも1つの骨成長因子単独による治療に比して、より速い速度の骨の形成を結果的にもたらす、前記方法。
【請求項28】
骨成長因子が、ペプチドと結合することで、組織での成長因子の保持率が増大される、分子または化合物の群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
骨成長因子がTGF−βファミリーのメンバーである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
骨成長因子が、以下:TGF−β、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、GDF5、および脱灰骨マトリックスから成る群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
ペプチドが配列番号1の配列を有し、そして骨成長因子がBMPである、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
ペプチドが配列番号12の配列を有し、そして骨成長因子がhBMPである、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
配列番号11を包含する、骨の形成を増大するための単離されたポリペプチドであって、ここでポリペプチドが少なくとも1つの骨成長因子の滞留時間を増大させる、前記ポリペプチド。
【請求項34】
ペプチドが配列番号1の配列を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ペプチドが配列番号12の配列を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
配列番号11を包含する、骨の形成を増大するためのポリペプチドをコードする単離された核酸であって、ここでポリペプチドが少なくとも1つの骨成長因子の滞留時間を増大させる、前記核酸。
【請求項37】
核酸が配列番号2の配列を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
核酸が配列番号21の配列を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
骨の形成において使用するための組成物であって、以下:
配列番号11の配列を有するペプチドまたはそのフラグメント、および
一定用量の少なくとも1つの成長因子、
を包含し、ここで組成物が、同じ用量の少なくとも1つの成長因子単独に比して、より速い速度の骨の形成を結果的にもたらす、前記組成物。
【請求項40】
ペプチドが配列番号1の配列を有する、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
ペプチドが配列番号12の配列を有する、請求項39に記載の組成物。
【請求項42】
骨成長因子が、以下:TGF−β、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、GDF5、および脱灰骨マトリックスから成る群より選択される、請求項39に記載の組成物。
【請求項1】
脊椎動物の組織における骨の形成速度を増大する方法であって、配列番号11の配列を有するペプチドまたはそのフラグメント、および一定用量の少なくとも1つの骨成長因子を、組織に投与することを包含し、ここで当該組み合わせが、同じ用量の少なくとも1つの骨成長因子単独による治療に比して、より速い速度の骨の形成を結果的にもたらす、前記方法。
【請求項2】
骨成長因子が、ペプチドと結合することで、組織での成長因子の保持率が増大される、分子または化合物の群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
骨成長因子がTGF−βファミリーのメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
骨成長因子が、以下:TGF−β、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、GDF5、および脱灰骨マトリックスから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ペプチドが配列番号1の配列を有し、そして骨成長因子がBMPである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ペプチドが配列番号12の配列を有し、そして骨成長因子がhBMPである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
骨の形成が骨形成性として測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
骨の形成が石灰化により測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
脊椎動物の骨の癒合速度を増大する方法であって、配列番号11の配列を有するペプチドまたはそのフラグメント、および一定用量の少なくとも1つの骨成長因子を、組織に投与することを包含し、ここで当該組み合わせが、同じ用量の少なくとも1つの骨成長因子単独による治療に比して、より速い速度の骨の癒合を結果的にもたらす、前記方法。
【請求項10】
骨成長因子が、ペプチドと結合することで、組織での成長因子の保持率が増大される、分子または化合物の群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
骨成長因子がTGF−βファミリーのメンバーである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
骨成長因子が、以下:TGF−β、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、GDF5、および脱灰骨マトリックスから成る群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
ペプチドが配列番号1の配列を有し、そして骨成長因子がBMPである、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
ペプチドが配列番号12の配列を有し、そして骨成長因子がhBMPである、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
脊椎動物の骨の癒合速度を誘導する方法であって、配列番号11の配列を有するペプチドまたはそのフラグメント、および一定用量の少なくとも1つの骨成長因子を、組織に投与することを包含し、ここで当該組み合わせが、同じ用量の少なくとも1つの骨成長因子単独による治療に比して、より速い速度の骨の形成を結果的にもたらす、前記方法。
【請求項16】
骨成長因子が、ペプチドと結合することで、組織での成長因子の保持率が増大される、分子または化合物の群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
骨成長因子がTGF−βファミリーのメンバーである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
骨成長因子が、以下:TGF−β、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、GDF5、および脱灰骨マトリックスから成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ペプチドが配列番号1の配列を有し、そして骨成長因子がBMPである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
ペプチドが配列番号12の配列を有し、そして骨成長因子がhBMPである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
脊椎動物の骨の癒合速度を誘導する方法であって、配列番号11の配列を有するペプチドまたはそのフラグメント、および一定用量の少なくとも1つの骨成長因子を、組織に投与することを包含し、ここで当該組み合わせが、同じ用量の少なくとも1つの骨成長因子単独による治療に比して、より速い速度の骨の形成を結果的にもたらす、前記方法。
【請求項22】
骨成長因子が、ペプチドと結合することで、組織での成長因子の保持率が増大される、分子または化合物の群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
骨成長因子がTGF−βファミリーのメンバーである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
骨成長因子が、以下:TGF−β、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、GDF5、および脱灰骨マトリックスから成る群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
ペプチドが配列番号1の配列を有し、そして骨成長因子がBMPである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
ペプチドが配列番号12の配列を有し、そして骨成長因子がhBMPである、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
膜性骨の癒合速度を誘導する方法であって、配列番号11の配列を有するペプチドまたはそのフラグメント、および一定用量の少なくとも1つの骨成長因子を、膜性骨の近位の組織に投与することを包含し、ここで当該組み合わせが、同じ用量の少なくとも1つの骨成長因子単独による治療に比して、より速い速度の骨の形成を結果的にもたらす、前記方法。
【請求項28】
骨成長因子が、ペプチドと結合することで、組織での成長因子の保持率が増大される、分子または化合物の群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
骨成長因子がTGF−βファミリーのメンバーである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
骨成長因子が、以下:TGF−β、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、GDF5、および脱灰骨マトリックスから成る群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
ペプチドが配列番号1の配列を有し、そして骨成長因子がBMPである、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
ペプチドが配列番号12の配列を有し、そして骨成長因子がhBMPである、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
配列番号11を包含する、骨の形成を増大するための単離されたポリペプチドであって、ここでポリペプチドが少なくとも1つの骨成長因子の滞留時間を増大させる、前記ポリペプチド。
【請求項34】
ペプチドが配列番号1の配列を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ペプチドが配列番号12の配列を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
配列番号11を包含する、骨の形成を増大するためのポリペプチドをコードする単離された核酸であって、ここでポリペプチドが少なくとも1つの骨成長因子の滞留時間を増大させる、前記核酸。
【請求項37】
核酸が配列番号2の配列を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
核酸が配列番号21の配列を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
骨の形成において使用するための組成物であって、以下:
配列番号11の配列を有するペプチドまたはそのフラグメント、および
一定用量の少なくとも1つの成長因子、
を包含し、ここで組成物が、同じ用量の少なくとも1つの成長因子単独に比して、より速い速度の骨の形成を結果的にもたらす、前記組成物。
【請求項40】
ペプチドが配列番号1の配列を有する、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
ペプチドが配列番号12の配列を有する、請求項39に記載の組成物。
【請求項42】
骨成長因子が、以下:TGF−β、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、GDF5、および脱灰骨マトリックスから成る群より選択される、請求項39に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2010−513535(P2010−513535A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542969(P2009−542969)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/026315
【国際公開番号】WO2008/079400
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【出願人】(507174983)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/026315
【国際公開番号】WO2008/079400
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【出願人】(507174983)
【Fターム(参考)】
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