説明

BOD自動測定装置

【課題】原液を設置するだけで、希釈、D1値の測定、D1値の測定が終了した容器の保管、正確な曜日でのD5値の測定、D5値の測定が終了した容器の排出の全てを自動化するBOD自動測定装置を提供する。
【解決手段】本発明のBOD自動測定装置1は、第一の値の一例であるD1値を測定した後の試料液を、第二の値の一例であるD5値を測定するまで保管する収納庫2と、試料液の第一の値を測定する第一の測定装置3と、試料液を収納庫2から取り出し、第二の値を測定する第二の測定装置4と、を備え、第一の値と第二の値とに基づいて、試料液のBOD値を自動で測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場排水や河川水などの水質を示す基準の一つであるBOD(生物化学的酸素要求量(もしくは生物化学的酸素消費量))を測定する装置であって、サンプル試料液の原液を設置するだけで、初日の測定項目であるD1値、5日後の測定項目であるD5値およびBOD値を自動的に測定できるBOD自動測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場排水や河川水などの水質を測定する基準として、BODの水質基準があり、この測定方法は、JIS−K0102:2008の規格において定められている。
【0003】
このJIS−K0102:2008規格は、(1)工場排水や河川水などから採取した試料液(原液)を、所定濃度に希釈し、(2)希釈された試料液を所定時間放置した後の溶存酸素量を第一の値であるD1値として測定し、(3)D1値が測定されてから5日間保存した後において同じ試料液の溶存酸素量を第二の値であるD5値として測定し、(4)D1値とD5値の差分をBOD値として算出する、との工程を、BOD値の測定方法として定めている。
【0004】
試料液のBOD値が大きいことは、D1値とD5値の差分値が大きいことを示しており、1日目に比較して、5日目の溶存酸素量が大きく減少していることになる。すなわち、BOD値が大きいほど、水質が悪い状態であることを、示している。
【0005】
ここで、D1値は、試料液を採取した日に測定され、D5値は、D1値を測定した日の5日後に測定されるので、D1値とD5値の測定曜日は次の通りとなる。
【0006】
D1値の測定日 D5値の測定日
月曜日 土曜日
火曜日 日曜日
水曜日 月曜日
木曜日 火曜日
金曜日 水曜日
【0007】
この、D1値の測定日とD5値の測定日との対応関係から分かるとおり、D1値は、月曜日から金曜日の稼働日のみに作業を行なえば済むが、D5値は、土曜日、日曜日(あるいは祝日)においても作業を行なわなければならなくなる。このため、D5値の測定を自動化することが求められている。D5値の測定が自動化されなければ、D5値の測定のために、作業者が休日出勤しなければならず、コスト面や管理面でのデメリットを生じさせるからである。
【0008】
また、試料液のD1値やD5値を測定するには、手作業では煩雑であったり、測定間違いを誘発したりする可能性が高い。もちろん、多数の測定容器に収容された試料液のBOD値の測定が困難である。
【0009】
このような状況下で、試料液のBOD値を自動で測定する種々の技術が提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6―230013公報
【特許文献2】実開平6―16864公報
【特許文献3】特開2004−101495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1は、サンプルボトルを供給するコンベア、サンプルボトルの開栓と閉栓を行なう機構およびD1値もしくはD5値を測定する機構を備えるサンプルの自動測定装置を開示する。
【0012】
しかしながら、特許文献1の自動測定装置は、D1値の測定が終了したサンプルボトルを専用の収容室に保管し、5日後に保管されていたサンプルボトルを取り出してD1値を測定した同じ測定機構でD5値を測定する構造を有する。すなわち、一つの測定機構に対して、コンベアが5日間の間隔となるように同じサンプルボトルが送り込まれ、一つの測定機構が、1日目と5日目のサンプルボトルの溶存酸素量を測定する。
【0013】
このため、特許文献1の自動測定装置は、コンベアの容量によって測定できるサンプルボトル数が限られる問題を有する。加えて、コンベアには新たなサンプルボトルが手作業で投入されるので、作業者のミスによって、5日目でないサンプルボトルのD5値が測定されるなどの問題が生じうる。特に、D1値とD5値とが同じ測定機構で測定されるので、D1値とD5値とのいずれが測定されているのかあるいは正しい曜日に測定されているのかといった点で、手作業や装置のエラーに起因する間違いが生じる問題もある。また、特許文献1の自動測定装置は、原液の希釈を手動で行ない、その希釈されたサンプルボトルを自動測定装置へ手作業で投入するため、作業が煩雑であり、手作業による作業のミスを生じやすい問題を有している。
【0014】
このように、特許文献1の技術は、サンプルボトルの数が限られ、さらに、部分的に手作業を必要とし、手作業や装置のエラーに起因する測定ミスを生じさせる問題を有している。
【0015】
特許文献2は、サンプル容器を載せたトレイを自動で移動させ、初日に測定するD1値と5日目に測定するD5値を測定する機構を有する。
【0016】
しかしながら、特許文献1と同じく、同じ測定部がD1値とD5値を測定するので、トレイの移動機構のエラーや作業者のトレイ設置あるいはトレイ移動の作業ミスによって、本来図るべきでない曜日にD5値が測定される問題を有する。また、特許文献2の技術では、D1値の測定が終了したサンプル容器は、専用の保管場所に保管しておく必要がある。このため、装置以外に専用の保管場所を必要とする問題も生じる。保管場所への保管や保管場所からのサンプル容器の取り出しは手作業で行なわれるので、作業ミスが生じうる可能性もある。保管や取り出しにおける作業ミスが生じれば、間違った曜日にD5値が測定される問題も生じうる。
【0017】
特許文献3は、D1値を測定するストッカーとD5値を測定するストッカーとを用意し、それぞれのストッカーが投入された後で、容器を開栓してD1値もしくはD5値を測定し、測定の終わった容器をストッカーに戻す自動分析装置の技術を示す。このとき、ストッカーを複数日分投入することで、土曜日や日曜日でも測定を可能とする。
【0018】
しかしながら、特許文献1や2と同じく、D1値とD5値を測定する測定機構は同じ機構を共用している。このため、ストッカーの投入作業にミスが生じると、誤った曜日にD5値を測定してしまう問題が生じる。また、ストッカーに設置されたサンプル容器に対する測定が行なわれるので、D1値の測定が終了した容器を保管するストッカーは、専用の保管場所に保管される必要がある。このため、保管場所を要する問題が生じる。
【0019】
加えて、保管場所への保管や保管場所からのサンプル容器の抜き出しは手作業で行なわれるので、作業ミスが生じうる可能性もある。保管や抜き出しにおける作業ミスが生じれば、間違った曜日にD5値が測定される問題も生じうる。
【0020】
また、特許文献3の技術は、原液を希釈する工程を自動分析装置とは別の自動希釈装置で測定しており、希釈工程でのミスや、希釈された試料液を取り違えて自動分析装置に設置する問題を生じさせる。
【0021】
このように、従来技術の自動測定装置は、(1)D1値とD5値とを同じ測定機構で測定するために、手作業ミスや装置エラーに起因して、誤った曜日にD5値が測定される問題、(2)D1値の測定が終了したサンプル容器を保管する専用の保管場所を要する問題、(3)原液を希釈する工程が別工程である問題、(4)希釈された試料液を手作業で測定装置に設置する際の作業ミスに起因する、誤ったサンプルの測定が行なわれる問題、(5)測定において、様々な手作業を必要とするので、自動化が不十分となる問題、を有している。
【0022】
これらの問題によって、土曜日、日曜日、祝日におけるD5値の測定や希釈する工程、保管場所からの取り出し工程等が、完全に自動化されない問題も生じる。
【0023】
本発明は、上記課題に鑑み、原液を設置するだけで、希釈、D1値の測定、D1値の測定が終了した容器の保管、正確な曜日でのD5値の測定、D5値の測定が終了した容器の排出の全てを自動化するBOD自動測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、本発明のBOD自動測定装置は、第一の値を測定した後の試料液を、第二の値を測定するまで保管する収納庫と、試料液の第一の値を測定する第一の測定装置と、試料液を収納庫から取り出し、第二の値を測定する第二の測定装置と、を備え、収納庫は、第一の値の測定した曜日毎に試料液を保管する複数の曜日ラックを有し、第一の測定装置は、試料液を所定の倍率で希釈する希釈手段と、希釈手段で希釈された試料液を所定時間以上に待機させる待機手段と、待機手段で待機させた試料液の第一の値を測定する第一測定手段と、第一測定手段で測定された試料液を容器に注入し、容器を曜日ラックへ供給する供給手段と、を有し、第二の測定装置は、第二の値を測定する曜日に対応するラックから容器を取り出す取り出し手段と、取り出し手段で取り出された容器から試料液を採取し、第二の値を測定する第二測定手段と、を有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のBOD自動測定装置は、原液を設置するだけで、希釈、第一の値の測定、第一の値の測定が終了した容器の保管、正確な曜日での第二の値の測定、第二の値の測定が終了した容器の排出の全てを自動化できる。
【0026】
加えて、第一測定装置と第二測定装置とが、別体の機構であることで、第一の値の測定日と第二の値の測定日とを誤る問題が防止される。また、第一の値と第二の値とを別々に測定できるので、第一の値であるD1値の測定と第二の値であるD5値とが、同時に測定できる。
【0027】
特に、第一の値の測定が終了した試料液を保管する容器を第一の値の測定が行なわれた測定曜日毎に分別して保管する収納庫が基準となって、第一測定装置と第二測定装置が独立して動作する。この結果、第一の値の測定日に対応する第二の値の測定日は、収納庫の分別にのみ依存するので、第二測定装置が測定曜日を誤る可能性がなくなる。収納庫の分別は、第一の値の測定日にのみ依存し、第一の値の測定日は、原液を設置する作業以外の手作業に依存しないので、第一の値の測定日が誤る可能性は無いからである。
【0028】
これらの結果、手作業ミスに起因する誤った測定が防止できる。
【0029】
また、第二の値の測定が土曜日、日曜日および祝日に行なわれる場合でも、手作業を必要とすることなく、第二の値は、自動で測定される。
【0030】
当然ながら、第一の値の測定が終了した容器を、専用の保管場所において保管する必要が無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1におけるBOD自動測定装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるBOD自動測定装置の測定工程のフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1における希釈工程を実行する希釈手段の模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1における希釈工程のフローを説明する説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるD1測定工程を説明する説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1における待機工程における容器の配列を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態1における、曜日ラックとD1測定器およびD5測定器との関係を示す模式図である。
【図8】本発明の実施の形態1におけるD5測定工程を示す模式図である。
【図9】本発明の実施の形態2におけるBOD自動測定装置のブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態2における測定データ表のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の第1の発明に係るBOD自動測定装置は、第一の値を測定した後の試料液を、第二の値を測定するまで保管する収納庫と、試料液の第一の値を測定する第一の測定装置と、試料液を収納庫から取り出し、第二の値を測定する第二の測定装置と、を備え、収納庫は、第一の値の測定した曜日毎に試料液を保管する複数の曜日ラックを有し、第一の測定装置は、試料液を所定の倍率で希釈する希釈手段と、希釈手段で希釈された試料液を所定時間以上に待機させる待機手段と、待機手段で待機させた試料液の第一の値を測定する第一測定手段と、第一測定手段で測定された試料液を容器に注入し、容器を曜日ラックへ供給する供給手段と、を有し、第二の測定装置は、第二の値を測定する曜日に対応する曜日ラックから容器を取り出す取り出し手段と、取り出し手段で取り出された容器から試料液を採取し、第二の値を測定する第二測定手段と、を有する。
【0033】
この構成により、BOD自動測定装置は、原液である試料液を設置するだけで、自動でBOD値を測定できる。
【0034】
本発明の第2の発明に係るBOD自動測定装置では、第1の発明に加えて、第一の測定装置および収納庫は容器を受け渡し可能に接続されており、収納庫および第二の測定装置は容器を受け渡し可能に接続されており、供給手段および取り出し手段は、収納庫を基準に自動で工程を実行する。
【0035】
この構成により、第一測定装置と第二測定装置とは、収納庫以外に相互依存性を有さず、第一の値の測定曜日と第二の値の測定曜日とを取り間違えて測定する間違いを発生させない。
【0036】
本発明の第3の発明に係るBOD自動測定装置では、第1第2のいずれかの発明に加えて、収納庫は、曜日ラック上において第一の測定装置側から第二の測定装置側にかけて、容器を移動させる。
【0037】
この構成により、BOD自動測定装置は、第一の値の測定の終わった試料液を収容した容器を、第二測定装置に引き渡すことができる。
【0038】
本発明の第4の発明に係るBOD自動測定装置では、収納庫は、第二の値の測定の終了した容器を分別して収納する排出ラックを更に備える。
【0039】
この構成により、測定の終了した容器は、容易かつ確実に廃棄や洗浄に回される。
【0040】
本発明の第5の発明に係るBOD自動測定装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、希釈手段は、試料液を所定の倍率に希釈する。
【0041】
この構成により、BOD自動測定装置は、原液である試料液を規格で定まる濃度に、自動的に希釈できる。
【0042】
本発明の第6の発明に係るBOD自動測定装置では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、待機手段は、希釈された試料液を、第一測定手段側へ移動させるコンベアを有し、コンベアが移動に要する時間が、所定時間以上である。
【0043】
この構成により、BOD自動測定装置は、確実に所定時間以上の待機時間を、試料液に与えることができる。
【0044】
本発明の第7の発明に係るBOD自動測定装置では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、第一測定装置は、供給手段へ容器を自動で供給する容器供給手段を更に有する。
【0045】
この構成により、試料液を注入する容器が自動で供給されるので、人が供給作業をする必要がなくなり、さらに、塵芥による容器の汚染も防止できる。
【0046】
本発明の第8の発明に係るBOD自動測定装置では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、供給手段は、容器の栓を自動で閉栓する閉栓機構を備え、取り出し手段は、容器の栓を自動で開栓する開栓機構を備える。
【0047】
この構成により、容器内部の試料液に悪影響を与えることなく、BOD自動測定装置は、第二の値を正確に測定できる。
【0048】
本発明の第9の発明に係るBOD自動測定装置では、第4から第8のいずれかの発明に加えて、第二測定手段は、第二の値の測定が終了した容器を、排出ラックに排出する排出手段を更に有する。
【0049】
この構成により、BOD自動測定装置は、測定の終了した容器を、一時的に保管しつつ、作業者に測定の終了を知らせることができる。
【0050】
本発明の第10の発明に係るBOD自動測定装置では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、第二の測定装置は、第一の値および第二の値に基づいて、希釈された試料液のBOD値を算出するBOD算出手段を更に備える。
【0051】
この構成により、BOD自動測定装置は、高い精度で、BOD値を測定できる。
【0052】
本発明の第11の発明に係るBOD自動測定装置では、第1から第10のいずれかの発明に加えて、第一の測定装置、収納庫および第二の測定装置の少なくとも一部を制御する制御部を更に備え、制御部は、容器に対応する測定データ表の更新を行い、測定データ表は、第一の測定装置において、容器における第一の値が追加され、第二の測定装置において、容器における第二の値およびBOD値が追加される。
【0053】
この構成により、BOD自動測定装置は、試料液の水質を記録すると共に、作業者に情報として与えることができる。
【0054】
本発明の第12の発明に係るBOD自動測定装置では、第11の発明に加えて、測定データ表は、容器を識別する識別情報を更に有し、識別情報は、容器が備えるIDコード、バーコード、二次元バーコードおよび識別標識の少なくとも一つによって認識される。
【0055】
この構成により、制御部は、試料液の識別を容易に行なえる。
【0056】
以下、図面を参照しながら説明する。
【0057】
(実施の形態1)
実施の形態1について説明する。
【0058】
(全体概要)
まず、図1および図2を用いて、実施の形態1におけるBOD自動測定装置の概要について説明する。
【0059】
実施の形態1におけるBOD自動測定装置は、工場排水や河川水などの試料液を収容したサンプル容器を設置するだけで、BOD値を測定するのに必要な全ての処理を自動で実行し、結果であるBOD値を測定する。BOD値は、工場排水や河川水の水質を示す数値であるので、人的作業が途中工程に介在することで、測定精度が低下する可能性がある。これに対して、実施の形態1におけるBOD自動測定装置は、原液を設定後における全ての工程を、自動で実行するので人的作業の介在余地がなく、高い精度で、BOD値を測定できる。
【0060】
図1は、本発明の実施の形態1におけるBOD自動測定装置のブロック図である。図1は、BOD自動測定装置の全体構成を概念的に示しており、BOD自動測定装置が備える要素同士の関係を示している。図2は、本発明の実施の形態1におけるBOD自動測定装置の測定工程のフローチャートである。図2は、BOD自動測定装置が実行する工程を示している。
【0061】
BOD自動測定装置1は、大きな要素として、第一の値であるD1値が測定された容器である保管容器54を収納する収納庫2、試料液のD1値を測定する第一測定装置であるD1測定器3および収納庫2から取り出された保管容器54内部の試料液の第二の値であるD5値を測定する第二測定装置であるD5測定器4を備える。
【0062】
なお、実施の形態1においては、第一の値の例としてD1値を、第二の値の例としてD5値を定義しているが、BOD値の測定に関る規格や手順の変更に応じて、第一の値および第二の値によって定義される値は、柔軟に変更される。
【0063】
収納庫2は、D1値が測定された試料液を収容する保管容器54を、D1値が測定された曜日毎に分別する。このため、収納庫2は、曜日ラック20a〜20eを備えている。D1測定器3は、原液容器50内部の試料液のD1値を測定し、測定した曜日に対応する曜日ラック20a〜20eに、D1値の測定の終わった試料液を収容する保管容器54を供給する。D5測定器4は、収納庫2が備える曜日ラックからD5測定曜日の5日前の曜日に対応する曜日ラックの保管容器54を取り出して、取り出された保管容器内部の試料液のD5値を測定する。D5測定器4は、D5値の測定が終了した後の空の保管容器54を、測定が終了したことを示す排出ラック21に供給する。
【0064】
D1値は、試料液の初日の溶存酸素量の値であり、D5値は、試料液の5日後の溶存酸素量の値であり、いずれも試料液のBOD値を測定するのに必要なパラメータである。D1値およびD5値から算出された値が、試料液の水質を示すBOD値である。
【0065】
BOD自動測定装置1は、D1値が測定された試料液を収容する保管容器54を収納する収納庫2を基準とし、D1測定器3とD5測定器4とのそれぞれが相互に独立して動作可能である。このように、収納庫2を間に介在させつつD1測定器3とD5測定器4とが独立して動作することで、収納庫2が、保管容器54を確実に分別して収納しているだけで、D1測定器3におけるD1値の測定と、このD1値の測定日に連関した測定日におけるD5測定器4におけるD5値の測定とが、エラーなく実行される。
【0066】
このように、実施の形態1におけるBOD自動測定装置1は、収納庫2を基準としてD1測定器3とD5測定器4とをその両サイドに設置し、収納庫2の一端ではD1測定器3が設置される原液を収容する原液容器50とD1が測定された試料液を収容する保管容器54とを取り扱い、収納庫2の他端ではD5測定器4が測定する試料液を収容する保管容器54を取り扱うことで、装置や設備の大型化を防止しつつ、エラーの無いBOD値の測定を可能としている。
【0067】
BOD自動測定装置1は、以上のような機能を実現するため、D1測定器3およびD3測定器4のそれぞれは、所定の手段を備える。
【0068】
D1測定器3は、原液である試料液が収容された原液容器50を設置する原液容器設置手段30、原液容器50内の試料液を希釈する希釈手段31、希釈された試料液を収容する待機容器52を所定時間以上に渡って待機させる待機手段32、待機後の待機容器52内の試料液の溶存酸素量であるD1値を測定する第一測定手段としてのD1測定手段33、収納庫2に試料液を保管する際に用いられる空の保管容器54を供給する容器供給手段としての保管容器供給手段34、D1値が測定された試料液をD1測定容器53から保管容器54に詰め替える詰め替え手段35、D1値が測定された試料液を収容する保管容器54の開口部に栓54aを密栓する密栓手段36、密栓された保管容器54をD1値が測定された曜日に対応する曜日ラック20a〜20eに供給する供給手段37を備える。
【0069】
収納庫2は、D1値の測定された曜日に対応する曜日ラック20a〜20eを備え、一例として曜日ラック20aは月曜日に対応し、曜日ラック20bは火曜日に対応し、曜日ラック20cは水曜日に対応し、曜日ラック20dは木曜日に対応し、曜日ラック20eは金曜日に対応する。更に、収納庫2は、BOD値の算出が終了して不要となる保管容器54を受け取る排出ラック21を更に備える。
【0070】
また、D5測定器4は、曜日ラック20a〜20eから保管容器54を取り出す取り出し手段40、保管容器54内の試料液の溶存酸素量であるD5値を測定する第二測定手段としてのD5測定手段41、D1値とD5値とのBOD値を算出するBOD算出手段42、D5値の測定が終了した保管容器54を排出ラック21に排出する排出手段43を備える。
【0071】
また、D1測定器3および収納庫2は、保管容器54を受け渡し可能に接続されている。また、収納庫2およびD5測定器4は、保管容器54を受け渡し可能に接続されている。供給手段37と取り出し手段40とは、収納庫2を基準に自動で処理を実行する。
【0072】
これらの手段のそれぞれは、各手段で実行するのに必要な機械的・電気的機構を備えて、所望の工程を実行する。
【0073】
(BOD自動測定装置の処理手順)
次に、BOD自動測定装置1の処理手順について図1、図2を用いて説明する。図2は、D1測定器3、収納庫2およびD5測定器4の全体で行なわれる処理の全てをフローチャートとして示している。
【0074】
まず、ステップST1にて、測定対象となる工場排水や河川水などの試料液(原液)が収容された原液容器50が、原液容器設置工程30の設置台に設置される。この原液容器50は、人的作業によって設置されるが、もちろんクレーンやコンベヤによって自動で設置されても良い。
【0075】
次いで、ステップST2にて、希釈手段31は、原液容器50に収容されている試料液を希釈容器51に注入し希釈する希釈工程を実行する。希釈工程は、JIS K 0102:2008(以下「JIS規格」と称する。)に規定された希釈水を用いて試料液を希釈容器51内で薄めることで実行される。希釈手段31は、JIS規格に定められる仕様に基づいて、試料液を所定の希釈倍率に希釈する。
【0076】
次に、ステップST3にて、待機手段32は、希釈容器51から試料液を注入された待機容器52を、所定時間以上に渡って待機させる。これが、待機工程である。待機工程において、待機手段32は、JIS規格に定められる所定時間以上に渡って、待機容器52を待機させる。この待機時間が不十分であると、D1値が不十分な希釈状態で測定されて、結果としてBOD値が不正確な値で算出されるからである。
【0077】
次に、ステップST4にて、D1測定手段33は、待機容器40内で待機された試料液を後の図を用いて後述するD1測定容器53へ注入し、D1値を測定する。これは、第一測定工程としてのD1測定工程である。D1測定手段33は、JIS規格に定められる仕様に基づいて、公知の手段等を用いてD1値を測定する。測定されたD1値は、所定の記憶部に測定データとして記憶されたり、所定の記録用紙に測定データとして印刷されたりする。
【0078】
また、ステップST1〜ST4と並行して、ステップST5にて、保管容器54が保管容器供給手段34によって供給される。図2では、ステップST4とステップST6との間において、ステップST5が処理されるように表されているが、ステップST4以前においてステップST5が処理されても良い。要は、ステップST6の前に、ステップST5の処理が終了し、D1値の測定が終了した試料液が、収納庫2に収納されるのに用いられる保管容器54に詰め替えられれば良い。なお、保管容器54は、人力によって供給されても良い。あるいはベルトコンベアやクレーンなどで、保管容器54が供給されても良い。
【0079】
次に、ステップST6にて、詰め替え手段35は、D1測定容器53に収容されたD1値が測定された試料液を、保管容器供給手段34から供給される保管容器54に詰め替える。これが詰め替え工程である。保管容器54は、マガジンなどに設置されており、複数の保管容器54が設置されたマガジン80が、その後収納庫2の曜日ラック20a〜20eに送られる。
【0080】
次に、ステップST7にて、密栓手段36は、D1値の測定が終わった試料液を収容する保管容器54の開口部を密栓する。これが密栓工程である。密栓手段36が備える図示されないロボットアームが、保管容器54の開口部に合わせて栓54aを設定し、その栓54aを開口部に押し込んで密栓する。この密栓によって、D1値の測定が終了した試料液を収容する保管容器54は、外部の雰囲気の影響を受けることが無くなり、数日後の溶存酸素量を測定するに際して、保管容器54内部(すなわち試料液そのもの)のみに依存した結果が測定されることになる。密栓された保管容器54は、収納庫2において保管される場合に、試料液が含む微生物などによって消費されることのみで溶存酸素量を変化させる状態で保管される。
【0081】
次に、ステップST8にて、供給手段37は、密栓された保管容器54を、収納庫2に供給する。これが供給工程である。収納庫2は、D1値の測定された曜日に対応する曜日ラック20a〜20eを備えている。供給手段37は、D1値の測定された曜日に対応する曜日ラック20a〜20eに、保管容器54を供給する。
【0082】
次に、ステップST9にて、収納庫2は、供給手段37で供給された保管容器54を所定時間保管する。これが保管工程である。
【0083】
次に、ステップST10にて、取り出し手段40は、収納庫2から保管容器54を取り出す。このとき、D5値を測定するD5測定曜日の5日前の曜日に対応する曜日ラックから、取り出し手段40は、保管容器30を取り出す。これが取り出し工程である。D5値を測定するD5測定曜日の5日前の曜日に対応する曜日ラックに、D1値が測定された後5日間保管された試料液を収容する保管容器54が収納されているので、D5測定曜日の5日前の曜日ラックから取り出される保管容器54が、D5値の測定対象の試料液である。また、取り出し手段40は、保管容器54の栓54aを開栓する。
【0084】
次に、ステップST11にて、D5測定手段41は、保管容器54内の試料液をD5測定容器55へ注入しD5値を測定する。D5値は、試料液の5日後の溶存酸素量を示す値である。これが、第二の測定工程であるD5測定工程である。D5測定手段41は、D1測定手段33と同じく、D5測定容器55の試料液を、種々の公知手段を用いて溶存酸素量を測定する。この結果、D5測定手段41は、D5値を測定できる。D5測定手段41は、測定したD5値を所定の記憶部に測定データとして記憶させたり、所定の記録用紙に測定データとして印刷したりする。
【0085】
更に、ステップST12にて、BOD算出手段42は、D1値とD5値との値に基づいてから、BOD値を算出する。これがBOD算出工程である。または、D5測定手段41が、D5値の測定に合わせて、このBOD値を算出しても良い。すなわち、D5測定手段41は、D5測定工程とBOD算出工程とを実行してもよい。BOD算出手段42は、算出したBOD値を、所定の記憶部に測定データとして記憶させたり、所定の記録用紙に測定データとして印刷したりする。この測定データを受けて、使用者は、対象となった工場排水や河川水の水質を知ることができる。
【0086】
最後に、ステップST13にて、排出手段43は、試料液をD5測定容器55へ抽出した後の空の保管容器54を、排出ラック21に排出する。これが、排出工程である。排出ラック21には、BOD値の測定の全工程が終了した保管容器54が収納されることになるので、使用者は、手作業ないしは自動作業で、この不要な保管容器54を洗浄等の作業に回すことができる。
【0087】
以上の一連の処理が実施されることで、測定対象となる試料液のBOD値が自動で測定され、工場排水や河川水の水質が測定される。
【0088】
以上のように、実施の形態1におけるBOD自動測定装置1は、工場排水や河川水などの測定対象となる試料液たる原液を収容した原液容器50を容器設置手段30に設置するだけで、希釈に始まりBOD値を算出するまでの工程の全てを自動で実行する。全てが自動で実行されることで、BOD自動測定装置1は、測定ミスなどを生じさせること無く、高い精度で試料液のBOD値を算出できる。
【0089】
次に、各部および主な工程の詳細について説明する。
【0090】
(D1測定器)
図1に示すように、D1測定器3は、原液容器50を設置する原液容器設置工程30と、空の保存容器54を設置する保存容器供給手段34とを備える。また、原液容器設置工程30に設置された原液容器50内部の試料液を希釈するための希釈手段31を備える。この希釈手段31は、希釈容器51と、と、希釈容器51に希釈水を投入する機構と、試料液と希釈水の容量(または重量など)を計測する図示されない計測器を備える。
【0091】
また、D1測定器3は、待機工程を実現するためのコンベアを備える。このコンベアは、希釈された試料液を収容する待機容器52を所定時間以上待機させるために用いられる。すなわち、コンベアは、待機容器52をD1測定手段33側へ移動と停止を繰り返しながら移動する。この停止時間を含めた移動時間が、所定時間以上である。また、D1測定器3は、D1値を測定するD1測定手段33を設けている。
【0092】
D1測定器3は、コンベアの先に、保管容器54を曜日ラック20a〜20eに送り出す機構を備えており、更に、D1測定器3は、曜日ラック20a〜20eの排送方向に対して直交する方向に移動できる機構を備えている。
【0093】
(希釈工程)
希釈工程の詳細について図3、図4を用いて説明する。希釈手段31が、希釈工程を実行する。
【0094】
図3は、本発明の実施の形態1における希釈工程を実行する希釈手段の模式図である。図4は、本発明の実施の形態1における希釈工程のフローを説明する説明図である。
【0095】
図3では、希釈手段31は、希釈容器51、希釈水が収容された希釈タンク311、希釈液供給部312、原液供給部313を備えている。希釈容器51は、原液である試料液を収容しており、希釈タンク311は、希釈水を収容している。
【0096】
希釈手段31は、原液容器50からの試料液を、原液供給部313を通じて希釈容器51に供給すると共に希釈タンク311からの希釈水を、希釈液供給部312を通じて希釈容器51に供給する。希釈液供給部312および原液供給部313は、自動で供給量を調整できる。希釈容器51に、原液と希釈液が所定量ずつ供給されることで、希釈容器51内部には、希釈された試料液が収容されることになる。
【0097】
また、希釈手段31は、原液である試料液を3段階で希釈する。一例として、希釈手段31は、原液である試料液を、2倍、4倍、8倍の3段階にて希釈する。図4は、この3段階の希釈工程を示している。
【0098】
まず、ステップST20にて、希釈容器52に、原液である試料液60とこれと同量の希釈水61とが供給される。次に、ステップST21にて、希釈容器52内に供給された試料液60と希釈液61とが攪拌される。この攪拌を経て、ステップST21における希釈容器52内部の試料液は、原液から2倍に希釈された状態となる。
【0099】
次に、ステップST22にて、希釈容器52内部の試料液(2倍に希釈されている)の半分が、待機容器52aに供給される。この待機容器52aは、2倍に希釈された試料液を収容することになり、この待機容器52aが、待機工程で所定時間以上待機させられる。更に、待機容器52a内部の2倍に希釈された試料液に対して、D1測定工程33がD1値を測定する。
【0100】
次に、ステップST23にて、希釈容器51に残っていた試料液(2倍に希釈されている)と同量の希釈水61が供給される。次いで、ステップST24にて、試料液と希釈水61とが攪拌される。この、攪拌を経て、希釈容器52内部の試料液は、原液から4倍に希釈された状態となる。
【0101】
次に、ステップST25にて、希釈容器51内部の4倍に希釈された試料液の半分が、待機容器52bに供給される。この待機容器52bは、4倍に希釈された試料液を収容することになる。この待機容器52bが、待機工程で所定時間以上待機させられる。更に、待機容器52b内部の4倍に希釈された試料液に対して、D1測定手段33がD1値を測定する。
【0102】
ついで、ステップST26にて、希釈容器51に残っていた試料液(4倍に希釈されている)と同量の希釈水61が供給される。次いで、ステップST27にて、試料液と希釈液61とが攪拌される。この、攪拌を経て、希釈容器51内部の試料液は、原液から8倍に希釈された状態となる。
【0103】
次に、ステップST28にて、希釈容器51内部の8倍に希釈された試料液が、待機容器52cに供給される。この待機容器52cは、8倍に希釈された試料液を収容することになる。この待機容器52cが、待機工程で所定時間以上待機させられる。更に、待機容器52c内部の8倍に希釈された試料液に対して、D1測定手段33がD1値を測定する。
【0104】
最後に、ステップST29にて、空となった希釈容器51が、次の原液を受けるために、洗浄される。
【0105】
以上のように、希釈手段31は、希釈容器51に収容された原液である試料液に、希釈水61を加えることで、試料液を2倍、4倍、8倍の3段階で希釈する。この希釈工程は、図3、図4に示されるように、自動で処理されるので、人的作業によるミスが発生しない。
【0106】
(待機工程)
次に、待機工程の詳細について説明する。
【0107】
待機工程は、希釈された試料液を収容する待機容器52を、所定時間以上に渡って待機させる工程であり、待機手段32により実現される。JIS規格は、希釈後の試料液を所定時間以上待機させた後で、D1値を測定するように規定している。これは、希釈後の試料液の希釈状態が不十分であると、溶存酸素量を示すD1値の測定にばらつきが生じうるからである。
【0108】
待機手段32は、コンベアを備えている。このコンベアは、希釈された試料液を収容する待機容器52を、D1測定手段33側へ移動させる。この移動時間を利用して、待機手段32は、所定時間以上に渡って、待機容器52を待機させる。
【0109】
ここで、所定時間は、15分(すなわち、待機工程で待機させられる時間は、15分以上である)であることが、現在のJIS規格において定められている。このため、待機工程は、待機容器52をD1測定工程へ移動させるコンベアの移動時間を15分以上とする。この移動時間によって、待機手段32は、待機容器52を、希釈工程からD1測定工程にかけて15分以上にわたって待機させることができる。
【0110】
なお、15分以上との所定時間は、JIS規格で定められている一例であり、待機工程は、規格によって異なる時間にわたって、待機容器52を待機させても良い。特に、JIS規格をはじめとするBOD値の測定に関する規格の将来的な変更が生じた場合には、この所定時間は、15分以外の時間となってもよい。
【0111】
待機工程が終了すると、希釈された試料液は、D1値の測定が行なわれるD1測定工程に送られる。なお、希釈工程においては、3段階に希釈されているので、試料液を収容する待機容器52は、複数の待機容器52a,52b,52cを備える。待機工程は、これらの異なる希釈率で希釈された試料液を収容するそれぞれの待機容器52a,52b,52cを、所定時間以上に渡って待機させる。
【0112】
(D1測定工程)
次に、D1測定工程の詳細について説明する。D1測定工程では、D1測定手段33が、希釈され待機させられた試料液の溶存酸素量を示すD1値を測定する。
【0113】
図5は、本発明の実施の形態1におけるD1測定工程を説明する説明図である。図5は、希釈工程とD1測定工程とを合わせて示している。希釈工程に関る説明は、上述の通りであり省略する。
【0114】
D1測定手段33は、待機容器52から抽出された希釈後の試料液を、D1測定容器53へ注入する。D1測定手段33は、種々の公知技術の測定方法を用いて、溶存酸素量を測定し、D1値を測定する。なお、測定方法の公知技術としては、例えば、電気式や光学式などの検出器を備える溶存酸素量測定器などである。
【0115】
D1測定手段33は、3段階に希釈された試料液のそれぞれを収容する測定容器のそれぞれにおいて、D1値を測定する。また、試料液は原液を採取した場所や時間に応じて多数の種類があるので、D1測定工程は、その種類ごとにもD1値を測定する。このため、本発明の実施の形態1では、待機手段32は、3つの待機容器52a,52b,52cと試料液の種類が並列に並んでいる配列での待機容器52のそれぞれが、D1測定手段33へ移動してD1値を測定するものとして説明する。これは、図6に示されるとおりである。
【0116】
図6は、本発明の実施の形態1における待機工程における測定容器の配列を示す模式図である。待機工程32に対して、8つの待機容器52が並んでおり(図6における縦方向)、移動方向には、試料液の種類に応じた複数の待機容器が並んでいる。
【0117】
待機容器52aは、2倍に希釈された試料液を収容しており、待機容器52bは、4倍に希釈された試料液を収容しており、待機容器52cは、8倍に希釈された試料液を収容している。
【0118】
また、ある工場排水の試料液Aと、異なる工場排水の試料液Bは、コンベアの移動方向と直交する方向に並んでいる。つまり、試料液Aと試料液Bのそれぞれ希釈された試料液は、移動方向に並ぶ3つの測定容器を含んでおり、それぞれは、2倍に希釈された試料液、4倍に希釈された試料液および8倍に希釈された試料液を収容している。
【0119】
このような配列の待機容器が、次のD1測定工程に流れてくることで、D1測定手段33は、流れ作業によって、それぞれのD1値を測定する。また、D1測定手段33は、測定したD1値を、測定データとして記憶部に記憶させたり、測定データとして記録紙に印刷したりする。このような測定データとしての保存によって、作業者は、測定されたD1値を確認できる。
【0120】
(供給工程)
次に、供給工程等について説明する。
【0121】
まず、詰め替え手段35は、D1値の測定の終了した試料液を収容する測定容器52の試料液を、保管容器54に詰め替える。これは、図5に示されるとおりである。保管容器54は、収納庫2が収納する際に用いられる容器であり、保管容器供給工程34によって設置されて送られる。詰め替え手段35は、この送られてくる保管容器54に、D1値の測定の終了した試料液を、測定容器53から詰め替える。
【0122】
詰め替えの終わった保管容器54は、密栓手段36において、栓がされる。密栓によって、保管容器54内の試料液は、外部の影響を受けずに、収納庫2において保管されるようになる。
【0123】
供給工程は、供給手段37を用いて、収納庫2に保管容器54を供給する。
【0124】
ここで、収納庫2は、D1値の測定された曜日に対応する曜日ラック20a〜20eを備える。曜日ラック20aは、D1値の測定曜日が月曜日である場合に対応し、曜日ラック20bは、D1値の測定曜日が火曜日である場合に対応し、曜日ラック20cは、D1値の測定曜日が水曜日である場合に対応し、曜日ラック20dは、D1値の測定曜日が木曜日である場合に対応し、曜日ラック20eは、D1値の測定曜日が金曜日である場合に対応する。なお、現状では一般的に土曜日と日曜日は休業日であるので、図1に示される収納庫2は、土曜日と日曜日に対応する曜日ラックは備えていない。もちろん、収納庫2は、土曜日と日曜日に対応する曜日ラックを、更に備えていても良い。また、収納庫2は、D5値の測定の終了した(すなわちBOD値の算出が終了した)保管容器54を排出する排出ラック21を更に備える。
【0125】
D1測定器3は、図7に示されるように収納庫2の搬送方向に対して直交する方向に移動して(あるいは、供給手段37が移動して)、D1値の測定された曜日に対応する曜日ラックに保管容器54を供給する。図7は、本発明の実施の形態1における、曜日ラックとD1測定器およびD5測定器との関係を示す模式図である。
【0126】
供給手段37は、D1測定曜日に対応する曜日ラックにマガジン80に格納された保管容器54を供給する。このとき、D1測定器3もしくは供給手段37が、収納庫2の搬送方向に対して移動することで、供給手段37は、曜日ラック20a〜20eの内で、D1値の測定曜日に対応する曜日ラックに、マガジン80に格納された保管容器54を供給する。例えば、D1値を測定したD1値の測定曜日が月曜日である場合には、供給手段37は、図7に示されるように曜日ラック20aに、保管容器54を供給する。
【0127】
なお、供給手段37は、保管容器54をそのまま曜日ラック20a〜20eに供給しても良いし、図7のようにマガジン80に格納した状態で供給しても良い。
【0128】
また、D1値の測定曜日が水曜日である場合には、供給手段37は、曜日ラック20cに保管容器54を供給する。
【0129】
このように、供給手段37は、収納庫2に対して垂直方向または水平方向に移動しながら、D1値の測定曜日に対応する曜日ラックに、D1値の測定が終了した試料液を収容する保管容器54を測定曜日毎に分別しながら供給する。
【0130】
収納庫2は、D1値の測定曜日毎に分別して、サンプル容器30を保管できる。
【0131】
(保管工程)
次に、保管工程について説明する。
【0132】
収納庫2は、保管容器54を、D1値の測定曜日に対応した曜日ラック20a〜20eに、一定の環境下で所定時間保管する。その所定時間、希釈された試料液は、培養される。なお、所定時間は、JIS規格に定められた5日間として説明するが、適宜変更してもよい。
【0133】
(取り出し工程)
次に、取り出し工程に付いて説明する。
【0134】
収納庫2の曜日ラック20a〜20eは、それぞれコンベア機能を有しており、D1測定器3から供給された保管容器54が、D1測定器3側の端部からD5測定器4側の端部に、順々に移動させられる。この移動によって、D1値の測定の終了した試料液を収容する保管容器54は、D5測定器4に徐々に近づき、D5測定器4は、保管容器54を取り出しやすくなる。
【0135】
取り出し工程では、取り出し手段40は、曜日ラックから保管容器を取り出す。ここで、D5値の測定曜日は、D1値の測定曜日の5日後の曜日になる。例えば、D1値の測定曜日が月曜日である場合には、この保管容器54に収容される試料液は、金曜日にそのD5値が測定される必要がある。
【0136】
このため、取り出し手段40は、曜日ラック20a〜20eの内、D5値の測定曜日の5日前の曜日に対応する曜日ラックから保管容器54を取り出す。D5値の測定曜日が金曜日である場合には、5日前である月曜日に対応する曜日ラック20aから、取り出し手段40は、保管容器54を取り出す。
【0137】
図7では、この様子が示されている。D5測定器4(取り出し手段40)は、D1測定器3と同様に、収納庫2の搬送方向に対して直交方向に移動できる。この直交方向の移動によって、取り出し手段40は、必要な曜日ラックの位置に移動して、曜日ラックから保管容器54を取り出せる。このとき、取り出し手段40は、D5値の測定曜日の5日前の曜日に対応する曜日ラックから保管容器54を取り出すので、D1値の測定曜日とこれに対応するD5値の測定曜日とが、取り違えられてBOD値が算出される恐れはない。
【0138】
(D5測定工程)
次に、D5測定工程について説明する。
【0139】
D5測定工程では、D5測定手段41が、取り出し手段40で取り出された保管容器54内の試料液の溶存酸素量であるD5値を測定する。
【0140】
図8は、本発明の実施の形態1におけるD5測定工程を示す模式図である。図8は、取り出し手段40で取り出された保管容器54がD5測定容器内へ移動して、D5測定手段41によって、試料液のD5値が測定される状態を示している。
【0141】
取り出し手段40で取り出された保管容器54内の試料液は、それぞれ順にD5測定手段41のD5測定容器55に送られる。図8は、このように保管容器から順々にD5測定手段41のD5測定容器55へ送られる状態を示している。
【0142】
また、D5測定器4は、保管容器54の栓54aを開栓する開栓機構を備える。この開栓機構によって、D5測定器4は、保管容器54の栓54aを開けて、中に収容されている試料液を取り出すことができる。
【0143】
ここで、D5測定手段41は、D1測定手段で用いた公知技術の測定方法と同種の溶存酸素量測定器を用いて、D5値を測定する。また、D5測定手段41は、D5値の測定が終わると、試料液を排出タンク411に廃棄する。この結果、D5測定容器55は、空になる。
【0144】
また、D5測定手段41は、取り出し手段40が取り出したD5値の測定曜日の5日前の曜日に対応する曜日ラックから取り出された保管容器54の試料液を測定する。取り出し手段40は、収納庫2に対して垂直に移動しながら、必要な曜日ラックから保管容器を自動で取り出す。このため、D5測定器4は、土曜日や日曜日といった休業日であっても、収納庫2に既に用意されている保管容器54を、対応する曜日ラックから取り出すだけなので、D5値の測定を失敗することがない。すなわち、月曜日から金曜日の稼働日において作業者が、D1測定器3に原液を収容する原液容器50を設定するだけで、その後は、D5測定工程までが自動で行なわれる。この結果、正しい曜日の組み合わせに基づいて、試料液のD1値とD5値とが測定される。
【0145】
すなわち、D1測定工程は、月曜日から金曜日までのいずれかの曜日において、試料液のD1値を測定する必要があり、BOD自動測定装置1は、これらの全ての曜日に必ずD1値を測定する必要がある。この点、BOD自動測定装置1は、原液である試料液が設置された後は、自動でD1値の測定が行なわれる。更に自動で、D1値の測定曜日に対応する曜日ラック20a〜20eのいずれかに自動で保管容器54が供給される。
【0146】
一方、D5測定器4は、D5値の測定曜日の5日前に対応する曜日ラックから保管容器54を自動で取り出すので、D5値の測定曜日が、土曜日や日曜日になったとしても、問題なくD5測定工程は、D5値を測定できる。
【0147】
以上のことから、D1値を測定したD1値の測定曜日毎に分別できる曜日ラック20a〜20eを備える収納庫2を基準に、D1測定器3とD5測定器4とが相互に独立して動作することで、土曜日や日曜日など休業日に関らず、BOD自動測定装置1は、BOD値を測定できる。
【0148】
このため、試料液のBOD値が正しく測定される。加えて、収納庫2は、保管容器の収納とD1値の測定からD5値の測定への正しい引渡しを実行するので、BOD自動測定装置1は、作業効率と作業領域の効率化とを両立できる。
【0149】
D5測定手段41は、D5値を測定すると、D5値を測定データとして、記憶部に記憶させたり、測定データとして記録用紙に印刷したりする。
【0150】
加えて、D5測定手段41は、D5値とD1値から計算し、BOD値として算出する。このBOD値は、試料液の水質を示す。D5測定手段41は、D5値と同じように、BOD値を記憶部に記憶させたり記録用紙に印刷したりする。すなわち、D5測定手段41は、BOD値を算出するBOD算出手段42を、更に備える。
【0151】
(排出工程)
排出手段43は、排出工程において、試料液が抽出された保管容器54を、排出ラック21に排出する。排出ラック21は、収納庫2に備えられており、BOD値の測定が終了して不要となった空の保管容器54を一時的に保管する。排出ラック21は、保管容器54をコンベアによって送り出し、洗浄工程に引き渡す。このとき、洗浄工程を実行する洗浄手段に、コンベアによって自動的に保管容器54が送られても良いし、作業者が人的作業によって、保管容器54を洗浄手段に運んでも良い。ここで、保管容器54には、試料液が残存していたり残存していなかったりするが、いずれにしても次回以降の測定に保管容器54を再使用するために保管容器54は、洗浄される。
【0152】
なお、図8は、空の保管容器54が排出ラック21へ排出される状態も示している。
【0153】
排出ラック21は、金曜日に対応する曜日ラック20eの隣に設けられるが、月曜日に対応する曜日ラック20aの隣に設けられても良いし、曜日ラック20aおよび曜日ラック20eのそれぞれの隣に設けられても良い。
【0154】
排出ラック21も、曜日ラック20a〜20eと同じく、コンベア機構を備え、受け取った空の保管容器54(あるいはこれを格納するマガジン80)を、所定方向に輸送する。この輸送によって、作業者は、排出すべき空の保管容器54を洗浄工程などに回すことができる。
【0155】
(開栓機構)
D5測定器4は、保管容器54の栓54aを開栓する開栓機構を備える。
【0156】
開栓機構は、梃子の原理を用いて、栓を開ける。すなわち、開栓機構はアームを備え、このアームの支点を保管容器54と栓54aとの接続する部分に押し当てて、アームをこの支点に合わせて広げることで、開栓機構は、栓を開ける。もちろん、開栓機構は、アーム以外の部材を備えつつ梃子の原理で栓を開けても良いし、梃子の原理以外の構造によって、栓を開けても良い。
【0157】
このような開栓機構によって、D5測定器4は、確実かつ容易に保管容器54の栓54aを開けることができる。
【0158】
以上のように、実施の形態1のBOD自動測定装置1は、原液である試料液を収容する原液容器50を設置するだけで、測定曜日のミスを生じさせずに、試料液のBOD値を自動で測定できる。
【0159】
(実施の形態2)
【0160】
次に、実施の形態2について説明する。
【0161】
実施の形態2では、実施の形態1で説明したBOD自動測定装置1において、測定されるD1値、D5値およびBOD値を測定データとして取り扱う機能について説明する。
【0162】
図9は、本発明の実施の形態2におけるBOD自動測定装置のブロック図である。図9は、BOD自動測定装置1を、簡略化して示している。実施の形態2におけるBOD自動測定装置1は、収納庫2、D1測定器3およびD5測定器4の要素に加えて、D1測定器3、収納庫2およびD5測定器4の少なくとも一部を制御する制御部100を更に備える。制御部100は、実施の形態1で説明したBOD自動測定装置1が備える工程の少なくとも一部を制御する。
【0163】
更に、制御部100は、BOD値の測定対象となっている試料液を収容するD1測定容器53またはD5測定容器55に対応する測定データ表を作成および更新する。
【0164】
原液容器50は、試料液を採取した場所や時間によって、区別される。BOD値の測定は、採取した試料液の場所や時間によって、容器ごとに区別されて測定される必要がある。試料液の属性を取り違えてBOD値を測定しても、試料液を採取した工場排水や河川水の水質を測定したことにならないからである。
【0165】
このため、各工程における特定の容器が、ある場所や時間に採取された試料液を収容しているとして、制御部100は、特定した上で、BOD値を測定する必要がある。ある場所や時間において採取した試料液のD1値、D5値およびBOD値のそれぞれは、BOD自動測定装置1の中で、最短5日間の日程をかけて順次測定されるからである。制御部100が、ある原液容器50を、特定できない場合には、測定されたD1値、D5値およびBOD値のそれぞれは、どの試料液に対応する値であるか不明になってしまうからである。なお、図1では、D1値を測定するまでは、原液容器50が用いられるが、この場合であっても、D1値の測定後に試料液は、保管容器54に収容されるので、制御部100は、保管容器54を区別する。
【0166】
制御部100は、測定データ表を管理する。測定データ表を図10に示す。図10は、本発明の実施の形態2における測定データ表のイメージ図である。
【0167】
図10は、上から順に、D1値の測定が終わった後の測定データ表101、D5値の測定が終わった後の測定データ表102、BOD値の算出が終わった後の測定データ表103を示している。制御部100は、このように測定データ表を、各工程で測定が終了するごとに更新する。
【0168】
測定データ表101〜103は、特定の試料が収容された容器を識別する識別情報110、D1値111、D5値112およびBOD値113を有する。本発明の実施の形態では、原液容器50の識別情報を制御部100に入力し、保管容器54には、例えばシールや印刷によって、保管容器54を識別するその識別情報が付与されている。この識別情報は、IDコード、バーコードに次元バーコードおよび識別標識の少なくとも一つによって得られる。
【0169】
制御部100は、保管容器54が設置される保管容器供給手段34の設置台などにおいて、これらのコード等を読み込む機構を備え、この機構によって、保管容器54の識別情報110を認識する。この認識によって、制御部100は、測定データ表の識別情報110の欄に、識別情報を書き込む。
【0170】
図10においては、一例として、測定データ表101〜103の一番上の欄に、原液の採取場所の原液Aを2倍に希釈した試料液の識別情報「A−1」との表示が書き込まれている。
【0171】
制御部100は、D1測定工程が終了すると、この識別情報「A−1」で特定される原液容器50を希釈しD1測定容器53に収納された試料液のD1値を、測定データ表に書き込む。D1値が書き込まれることで、測定データ表は測定データ表101に更新される。図10では、測定データ表101には、D1値として値「3.0」が書き込まれる。
【0172】
次いで、制御部100は、D5測定工程が終了すると、この識別情報「A−1」で特定されるD1容器53から移し替えられ保管容器54に収納されていた試料液のD5値を、測定データ表101に書き込む。D5値が書き込まれることで、測定データ表101は、測定データ表102に更新される。図10では、測定データ表102には、D5値として値「1.5」が書き込まれる。
【0173】
更に、制御部100は、算出工程が終了すると、この識別情報「A−1」で特定される保管容器54のBOD値を、測定データ表102に書き込む。BOD値が書き込まれることで、測定データ表102は、測定データ表103に更新される。図10では、測定データ表103には、BOD値として値「0.75」が書き込まれる。値「0.75」は、JIS規格で規定された式を用いて、D5値とD1値から算出された値である。
【0174】
最終的には、制御部100は、このように測定データ表を更新し、BOD値が書き込まれた測定データ表103を、最終結果として出力する。
【0175】
また、制御部100は、記憶部105に測定データ表を記憶させる。このとき、測定データ表を更新するごとに、記憶部105に記憶させることが好ましい。また必要に応じて、制御部100は、表示画面に測定データ表を表示させる。表示画面に測定データ表が表示されることで、作業者は、測定結果を視認できるようになるからである。もちろん、制御部100は、測定データ表を記録用紙に印刷しても良い。
【0176】
このように、制御部100は、測定したBOD値(あるいはその過程でのD1値やD5値)を、作業者に提供することで、ユーザビリティを高める。この結果、作業者は、BOD自動測定装置1の処理工程にあわせた結果を把握できるようになる。
【0177】
また、実施の形態1、2で説明したBOD自動測定装置1は、実施の形態1,2で説明した各要素と各工程を備えるBOD自動測定システムとして把握されても良い。
【0178】
すなわちBOD自動測定システムは、第一の値を測定した後の試料液を、第二の値を測定するまで保管する収納庫と、試料液の第一の値の一例であるD1値を測定する第一の測定装置と、試料液を収納庫から取り出し、第二の値を測定する第二の測定装置と、を備える。この収納庫は、第一の値の測定した曜日毎に試料液を保管する複数の曜日ラックを有する。
【0179】
第一の測定装置は、試料液を所定の倍率で希釈する希釈手段と、希釈手段で希釈された試料液を所定時間以上に待機させる待機手段と、待機手段で待機させた試料液の第一の値を測定する第一測定手段と、第一測定手段で測定された試料液を容器に注入し、容器を曜日ラックへ供給する供給手段と、を有する。
【0180】
第二の測定装置は、第二の値の一例であるD5値を測定する曜日に対応する曜日ラックから容器を取り出す取り出し手段と、取り出し手段で取り出された容器から試料液を採取し、第二の値を測定する第二測定手段と、を有する。
【0181】
加えて、第二の測定装置は、第一の値であるD1値と第二の値であるD5値とに基づいて、試料液の水質を評価するBOD値を算出するBOD算出手段を備える。
【0182】
これらの要素を備えるBOD自動測定システムは、原液である試料液が設置されるだけで、全ての工程を自動で処理して試料液のBOD値を算出できる。算出された結果は、他の要素データと共に使用者に提供される。
【0183】
また、同様に、実施の形態1、2で説明されたBOD自動測定装置1は、所定の要素を使用しながらBOD値を測定するBOD自動測定方法として把握されても良い。
【0184】
すなわちBOD自動測定方法は、第一の値を測定した後の試料液を、第二の値を測定するまで保管する収納庫と、試料液の第一の値の一例であるD1値を測定する第一の測定装置と、試料液を収納庫から取り出し、第二の値を測定する第二の測定装置と、を備える。この収納庫は、第一の値の測定した曜日毎に試料液を保管する複数の曜日ラックを有する。
【0185】
第一の測定装置は、試料液を所定の倍率で希釈する希釈工程と、希釈工程で希釈された試料液を所定時間以上に待機させる待機工程と、待機工程で待機させた試料液の第一の値を測定する第一測定工程と、第一測定工程で測定された試料液を容器に注入し、容器を曜日ラックへ供給する供給工程と、を有する。
【0186】
第二の測定装置は、第二の値の一例であるD5値を測定する曜日に対応する曜日ラックから容器を取り出す取り出し工程と、取り出し工程で取り出された容器から試料液を採取し、第二の値を測定する第二測定工程と、を有する。
【0187】
加えて、第二の測定装置は、第一の値であるD1値と第二の値であるD5値とに基づいて、試料液の水質を評価するBOD値を算出するBOD算出工程を備える。
【0188】
これらの要素を備えるBOD自動測定方法は、原液である試料液が設置されるだけで、全ての工程を自動で処理して試料液のBOD値を算出できる。算出された結果は、他の要素データと共に使用者に提供される。
【0189】
なお、本明細書中では、本発明の実施の形態の説明上、原液容器、希釈容器、各測定容器、保管容器といった容器を示す用語が用いられるが、それぞれの試料液を収容する容器であって、それぞれを、厳密に区別する必要はなく、実際のD1値の測定やD5値の測定において、対象となる試料液がいずれの容器に収容されているかは、本発明の趣旨とは関係が無いく、少なくとも、原液である試料液と希釈された試料液を明確に区別できる容器を用いればよい。また、BOD自動測定装置は、各容器および配管等内の試料液が排出されると、洗浄水を用いて洗浄される工程を備えるが、その方法は公知技術を用いればよい。
【0190】
以上、実施の形態1〜2で説明されたBOD自動測定装置、BOD自動測定システムおよびBOD自動測定方法は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0191】
1 BOD自動測定装置
2 収納庫
3 D1測定器
30 保管容器設置手段
31 希釈手段
311 希釈タンク
312 希釈液供給部
313 原液供給部
32 待機手段
33 D1測定手段
34 保管容器供給手段
35 詰め替え手段
36 密栓手段
37 供給手段
4 D5測定器
41 取り出し手段
411 廃液タンク
42 D5測定手段
43 排出手段
44 BOD算出手段
20a、20b、20c、20d、20e 曜日ラック
21 排出ラック
50 原液容器
51 希釈容器
52,52a,52b,52c 待機容器
53 D1測定容器
54 保管容器
55 D5測定容器
60 試料液
61 希釈液
80 マガジン
100 制御部
101、102、103 測定データ表
105 記憶部
110 識別情報
111 D1値
112 D5値
113 BOD値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の値を測定した後の試料液を、第二の値を測定するまで保管する収納庫と、
前記試料液の第一の値を測定する第一の測定装置と、
前記試料液を前記収納庫から取り出し、前記第二の値を測定する第二の測定装置と、
を備え、
前記収納庫は、
前記第一の値の測定した曜日毎に試料液を保管する複数の曜日ラックを有し、
前記第一の測定装置は、
試料液を所定の倍率で希釈する希釈手段と、
前記希釈手段で希釈された試料液を所定時間以上に待機させる待機手段と、
前記待機手段で待機させた試料液の前記第一の値を測定する第一測定手段と、
前記第一測定手段で測定された試料液を容器に注入し、前記容器を前記曜日ラックへ供給する供給手段と、を有し、
前記第二の測定装置は、
前記第二の値を測定する曜日に対応する前記曜日ラックから容器を取り出す取り出し手段と、
前記取り出し手段で取り出された容器から試料液を採取し、前記第二の値を測定する第二測定手段と、を有する自動測定装置。
【請求項2】
前記第一の測定装置および前記収納庫は前記容器を受け渡し可能に接続されており、前記収納庫および前記第二の測定装置は前記容器を受け渡し可能に接続されており、前記供給手段および前記取り出し手段は、前記収納庫を基準に自動で工程を実行する請求項1記載のBOD自動測定装置。
【請求項3】
前記収納庫は、前記曜日ラック上において前記第一の測定装置側から前記第二の測定装置側にかけて、前記容器を移動させる請求項1又は2記載のBOD自動測定装置。
【請求項4】
前記収納庫は、前記第二の値の測定の終了した容器を分別して収納する排出ラックを更に備える請求項1から3のいずれか記載のBOD自動測定装置。
【請求項5】
前記希釈手段は、試料液を所定の倍率に希釈する請求項1から4のいずれか記載のBOD自動測定装置。
【請求項6】
前記待機手段は、希釈された前記試料液を、前記第一測定手段側へ移動させるコンベアを有し、前記コンベアが移動に要する時間が、所定時間以上である請求項1から5のいずれか記載のBOD自動測定装置。
【請求項7】
前記第一測定装置は、前記供給手段へ前記容器を自動で供給する容器供給手段を更に有する請求項1から6のいずれか記載のBOD自動測定装置。
【請求項8】
前記供給手段は、前記容器の栓を自動で閉栓する閉栓機構を備え、
前記取り出し手段は、前記容器の栓を自動で開栓する開栓機構を備える請求項1から7のいずれか記載のBOD自動測定装置。
【請求項9】
前記第二測定手段は、前記第二の値の測定が終了した前記容器を、前記排出ラックに排出する排出手段を更に有する請求項4から8のいずれか記載のBOD自動測定装置。
【請求項10】
前記第二の測定装置は、前記第一の値および前記第二の値に基づいて、希釈された前記試料液のBOD値を算出するBOD算出手段を更に備える請求項1から9のいずれか記載のBOD自動測定装置。
【請求項11】
前記第一の測定装置、前記収納庫および前記第二の測定装置の少なくとも一部を制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、前記容器に対応する測定データ表の更新を行い、
前記測定データ表は、
前記第一の測定装置において、前記容器における前記第一の値が追加され、
前記第二の測定装置において、前記容器における前記第二の値およびBOD値が追加される請求項1から10のいずれか記載のBOD自動測定装置。
【請求項12】
前記測定データ表は、前記容器を識別する識別情報を更に有し、
前記識別情報は、前記容器が備えるIDコード、バーコード、二次元バーコードおよび識別標識の少なくとも一つによって認識される請求項11記載のBOD自動測定装置。
【請求項13】
第一の値を測定した後の試料液を、第二の値を測定するまで保管する収納庫と、前記試料液の第一の値を測定する第一の測定装置と、前記試料液を前記収納庫から取り出して第二の値を測定する第二の測定装置と、を使用し、
前記収納庫は、第一の値の測定した曜日毎に試料液を保管する複数の曜日ラックを使用し、
前記第一の測定装置では、
試料液を所定の倍率で希釈する希釈工程と、
前記希釈工程で希釈された試料液を所定時間以上に待機させる待機工程と、
前記待機工程で待機させた試料液の第一の値を測定する第一測定工程と、
前記第一測定工程で測定された試料液を容器に注入し、前記容器を前記曜日ラックへ供給する供給工程と、が実行され、
前記第二の測定装置では、
第二の値を測定する曜日に対応する前記ラックから容器を取り出す取り出し工程と、
前記取り出し手段で取り出された容器から試料液を採取し、第二の値を測定する第二測定工程と、
前記第一の値および前記第二の値に基づいて、前記試料液のBOD値を算出するBOD算出工程と、が実行されるBOD自動測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−203038(P2011−203038A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69358(P2010−69358)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】