Betv1に特異的な抗体、ならびにBetv1誘導性の疾患の予防および処置における該抗体の使用
本発明は、Bet v1特異的抗体またはそのフラグメント、ならびにアレルギー誘導性疾患の予防および処置におけるこれらの使用に関する。上記抗体は、Bet v1に対するIgEの結合をブロックする。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、抗体、ならびにアレルゲンによって誘導される疾患の処置および予防のための薬学的処方物に関する。
【0002】
約1億人のアレルギー患者が、カバノキ(Betula verrucosa)の花粉アレルゲンであるBet v1に感作している。Bet v1は17kDaのタンパク質であり、Fagales目に属する樹木の花粉中に存在し、欧州、北米、ロシアおよびオーストラリアにおいて広く分布している(Breitenederら、1989)。Bet v1をコードするcDNAが単離され(Breitenederら、1989)、天然のBet v1野生型に匹敵するリコンビナントBet v1が、Escherichia coliにて発現された。(Valentaら、1991;Ferreiraら、1993)。樹木花粉および食品に対してアレルギーを示す患者のIgE抗体による、Bet v1の認識は、平均約95%であり、その約60%がBet v1に対して排他的に感受性である(Jarolimら、1989)。このため、アレルゲンの認識は、コンフォーメーショナルなエピトープに依存し、よって、フォールディングされた分子を必要とする。これまでに行われた、インビトロおよびインビボでの広範囲での特徴付けのために、リコンビナントBet v1分子は、しばしば、診断目的および治療目的に使用されることが提唱された(Valentaら、1995,1996)。近年、カバノキ花粉のメジャーアレルゲンの、非アナフィラキシー性の表面提示ペプチドが、生成され、インビボでの抗体応答(能動免疫)を誘導するに十分なサイズ(25〜32アミノ酸)を有するペプチドとして特徴付けられた。これらのペプチドは、フォールディングされておらず、アレルギーの活性を欠いている。しかし、ペプチドのワクチン接種は、Bet v1特異的ポリクローナルIgGの産生を誘導した(Fockeら、2004)。
【0003】
WO94/10194は、Fagales目の樹木に由来するペプチドに関する。
【0004】
EP1219300には、アレルギーの処置のための医薬を製造するためのアレルゲン誘導体の使用が記載されている。
【0005】
本発明の目的は、カバノキ花粉アレルゲンであるBet v1またはそのフラグメントによって引き起こされるアレルギー反応の処置および予防のための、手段および方法を提供することにある。
【0006】
従って、本発明は、カバノキ花粉アレルゲンに曝露されたことによって個体において生じたアレルギー反応の予防および/または処置のための、個体の受動免疫についての医薬を製造するための、抗体またはその誘導体の使用に関する。ここで、この抗体は、アミノ酸30〜59(配列番号(SEQ ID NO.)1)またはアミノ酸75から104(配列番号2)を含むBet v1フラグメントに結合する。
【0007】
驚くべきことに、上記Bet v1フラグメントに結合する抗体またはその誘導体は、カバノキ花粉アレルゲンBet v1に特異的に結合し得、このような分子を使用して、Bet v1特異的IgEのカバノキ花粉アレルゲンに対する結合をブロックし得る。本発明に係る抗体のエピトープに対する結合は、アレルゲンに対するIgEの結合を低減、まさに完全に低減させる。上記エピトープは、Bet v1および/またはこのアレルゲンのコンフォメーショナルな改変体(modification)の、IgE結合主要部位の内部または非常に近接した部分に存在し、その結果、IgEエピトープまたはその一部が、もはやIgEに接近し得ない。実験データは、異なるエピトープ特異性を有する、ペプチド特異的な2つの抗体の混合物が、個々の抗体よりも強いIgE結合阻害をもたらさないことを示し、一方の抗体がアレルゲンのコンフォメーションを改変し、第2の抗体(すなわちIgE)がこのアレルゲンに結合することを阻害するということを実証している。
【0008】
抗体の産生のために、種々の宿主動物が、Bet v1抗原またはそのフラグメント、特に、アミノ酸30〜59(配列番号1)またはアミノ酸75〜104(配列番号2)からなるBet v1フラグメントを注入することによって免疫化され得る。このような宿主動物としては、例えば、ブタ、ウサギ、マウス、ヤギ、およびラットが挙げられ得る。最も好ましくは、ヒト個体からポリクローナル抗体が単離される。このような抗体の使用は、免疫系が、「外因性の」抗体に由来する抗原に応答する危険性を低減させる。抗体は、これらの動物の血清から単離され得る。
【0009】
本発明に係る抗体は、静脈内、筋肉内、皮下、および局所投与のために処方され得、このような処方物を得るためのプロトコルは、当業者に公知である。
【0010】
もちろん、本発明に係るBet v1フラグメントに対する抗体を、Bet v1アレルゲンに曝露されたヒト個体から単離することもまた可能である。Bet v1特異的抗体の、ヒト個体からの単離は、当該分野において公知の方法によって達成され得る。
【0011】
本明細書中で使用される場合、「抗体」は、インタクトな免疫グロブリンまたはそのフラグメントをいう。このようなフラグメントは、例えば、種々のペプチダーゼで消化して生成されるか組換え的に生成される。もちろん、他のタンパク質もしくはそのフラグメントに融合された、免疫グロブリンの抗原結合領域を含む分子もまた、本発明に係る抗体であることが企図される。「抗原結合領域」は、免疫グロブリン分子の一部をいい、抗原結合を担う。抗原結合領域は、重鎖または軽鎖のN末端可変領域のアミノ酸残基によって形成される。よって、用語「抗体」は、(例えば、抗体の、ヒンジ領域におけるジスルフィド結合以下をペプシン消化によって生成されたか、または組換え技術によって生成された)Fab、単鎖抗体(単一のポリペプチド鎖として存在する抗体)、より好ましくは、単鎖Fv抗体(scFv)(ここで、重鎖可変領域および軽鎖可変領域が一緒に連結されて(直接的にか、またはペプチドリンカーを介して)連続的なポリペプチドが形成されている。)、キメラ分子、ヒト化分子などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
本発明に係る抗体はまた、組換えDNA技術、酵素学的などによって化学的に改変され、例えば、「技術的に改変された抗体」を生じている誘導体を包含する。「技術的に改変された抗体」としては、例えば、合成された抗体、キメラ抗体もしくはヒト化抗体、またははこれらの混合物、あるいは、定常領域を部分的または全体的に欠如した抗体フラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、またはF(ab)’2など)が挙げられるがこれらに限定されない。これらの技術的に改変された抗体において、例えば、軽鎖および/または重鎖の一部が置換され得る。このような分子は、例えば、ヒト化された重鎖および改変されていない軽鎖(またはキメラ軽鎖)、あるいはヒト化された軽鎖および改変されていない重鎖(またはキメラ重鎖)からなる抗体を含み得る。用語Fv、Fc、Fd、Fab、Fab’またはF(ab)2は、先行技術(Harlow E. and Lane D., in "Antibodies, A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)に記載されているように使用される。この意味において、抗体の「誘導体」は、本発明に係る抗体全長が関与する機能的活性の1つ以上を含んでいる、タンパク質分解された分子をいう。よって、本発明に係る抗体誘導体は、アミノ酸30〜59(配列番号1)またはアミノ酸75〜104(配列番号2)を含むBet v1フラグメントに結合し得る。本発明に係る抗体はまた、任意のタイプの分子が抗体に共有結合されることによって改変されている誘導体を含む。抗体誘導体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化(pegylation)、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解的な消化、細胞性リガンドもしくは他のタンパク質への連結などによって改変された抗体を含むが、これらに限定されない。多くの化学的改変のいずれかが、公知の技術によって実施され得る。このような技術としては、特異的化学的消化、アセチル化、ホルミル化、チュニカマイシンの代謝的な合成などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、誘導体は、非古典的アミノ酸を1つ以上含み得る。本発明に係る誘導体はまた、アミノ酸30〜59(配列番号1)またはアミノ酸75〜104(配列番号2)を含むBet v1フラグメントになお結合し得るフラグメント(例えば、本発明に係る抗体のCDR領域)を含み得る。
【0013】
本発明に係る抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。このような抗体は、
特定の抗原に対する抗体の同種集団であり、細胞株の連続培養によって抗体分子の産生のために提供される任意の技術によって取得され得る。これらの技術としては、例えば、Koehler and Milsteinのハイブリドーマ技術(1975, Nature 256: 495-497 and U.S. Pat. No. 4,376,110)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al., 1983, Immunology Today 4: 72; Cole et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 2026-2030)、およびEBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc.,pp. 77-96)が挙げられる。このような抗体は、任意の免疫グロブリンクラス(IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびこれらの任意のサブクラス)であり得る。本発明に係る、ハイブリドーマが産生するmAbは、インビトロまたはインビボで培養され得る。高力価の抗体のインビボでの産生は、現在好ましい産生方法である。もちろん、真核生物細胞、酵母、昆虫および植物細胞、ならびに植物における組換え技術によって、モノクローナル抗体が産生されることもまた可能である。モノクローナル抗体の、上記細胞からの単離のための、上記発現系および方法は、当該分野において周知である。本発明に係る、Bet v1フラグメントに対するモノクローナル抗体が、Bet v1アレルゲン全体に曝露された哺乳動物に発現することによって産生されたポリクローナル抗血清(例えば、Focke et al., 2004)と同様の阻害を示すことは、非常に驚くべきことである。特に、ポリクローナル抗体が通常1つよりも多くのエピトープに指向することを考慮すると、驚くべきことである。モノクローナル抗体の産生は、抗血清から得られるポリクローナル抗体よりも、より均質でありかつ純度が高く、そして再現性をもって生成物を導く。
【0014】
Bet v1への曝露によって引き起こされたアレルギー疾患を処置および/または予防するために使用され得るモノクローナル抗体の産生に好適なペプチドの選択は些細なことではない。例えば、Lebeque et al. (1997)は、Bet v1に対して惹起した種々のモノクローナル抗体を用いて、Bet v1アレルゲンに対してアレルギーを示す患者からのIgEの、Bet v1に対する結合に対する効果を検証した。これらの研究は、Bet v1アレルゲンの領域に対して産生される抗体の特異性を議論することなく、特定のモノクローナル抗体が、Bet v1に対するIgE結合を低減させるよりもむしろ増強することを示している。従って、本発明に係る抗体が、野生型Bet v1へのIgEの結合を強く阻害することは、驚くべきことである。
【0015】
本発明に係る抗体、および該抗体を含むワクチン処方物は、アレルギー反応を処置するために用いられるだけでなく、このような反応を予防するためや、Bet v1アレルゲンに対して個体を感受性にするために使用され得る。子供または新生児がカバノキ花粉に接触する前に、本発明に係る抗体またはワクチン処方物を用いて、これらの子供または新生児にワクチン接種することもまた可能である。このようなアプローチは、上記子供または新生児において、Bet v1特異的IgE抗体を産生することを防止し、Bet v1に対して感受性になることを防止する。本発明に係る抗体を1〜3歳の子供に投与することは特に有利である。なぜなら、この年齢では、子供はカバノキ花粉アレルゲンに感作されていないからである。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、抗体は、IgG抗体であり、特に、IgG1アイソタイプまたはIgG4アイソタイプのIgG抗体である。
【0017】
Sellge et al.(Clin. Exp. Allergy (2005) 35: 774-781)は、肥満細胞または好塩基球を活性化する、より大きなアレルゲン凝集体の処方によって、Bet v1抗体に対するIgG抗体がアレルギー反応を増強されることを示している。Laffer et al. (J Immunol (1996) 157: 4953-4962)およびDenepoux et al. (FEBS letters (2000) 465: 39-46)に開示された実験によって、同様の結果が得られている。しかし、本発明に係る、Bet v1フラグメントに対するIgG抗体の使用は、これらの効果を示さなかった。従って、IgG抗体は、本発明に従って使用され得る。
【0018】
本発明に係る、より好ましい抗体は、ヒトIgG4またはマウスIgG4のような、非補体活性化抗体である。
【0019】
本発明に係る抗体は、好ましくは、マウス抗体またはヒト抗体である。
【0020】
本発明の別の実施形態において、抗体はキメラ抗体である。
【0021】
「キメラ抗体」の産生のために開発された技術(Morrison et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci., 81: 6851- 6855; Neuberger et al., 1984, Nature, 312: 604-608; Takeda et al., 1985, Nature, 314: 452-454)が使用され得る。これらの技術は、適切な抗原特異性を有するマウス抗体分子からの遺伝子を、適切な生物学的活性を有するヒト抗体分子からの遺伝子とともにスプライシングすることによる技術である。キメラ抗体は、異なる動物種、免疫グロブリンクラス、サブクラス(アイソタイプ)、タイプおよびサブタイプに由来する異なる部分から構成される一分子(例えば、マウスmAbに由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子)である。さらに、本発明に係るキメラ抗体は、1つより多い特異性(例えば、ダイアボディまたはテトラボディ)を含み得る。
【0022】
本発明に係る抗体は、好ましくはヒト化されている。
【0023】
非ヒト抗体の、より免疫原性の低いフラグメントを生成する、「ヒト化」のための方法は周知である。ヒト化抗体は、抗原認識部位、すなわち、相補性を決定する超可変領域(CDR)のみが非ヒト起源である抗体であり、可変ドメインの全てのフレームワーク領域(FR)がヒト遺伝子産物である。
【0024】
非ヒト抗体は、当該分野において公知の方法のいずれかによってヒト化され得る。1つの方法において、非ヒトCDRが、ヒト抗体または抗体フレームワークコンセンサス配列に挿入される。次いで、親和性または免疫原性を改変するために、さらなる変化が、抗体フレームワークに導入され得る。以下は、血清半減期を改善し、かつヒト宿主における免疫原性をより低くする(すなわち、ヒト抗体が非ヒト抗体に応答することを防ぐ)ために、カバノキ花粉アレルゲンのフラグメントに対するモノクローナル抗体を「ヒト化」することによって、ヒトにおける製薬としてこのモノクローナル抗体を改善するためのプロトコルである。ヒト化の原理は文献に記載されており、抗体タンパク質のモジュラー配置(modular arrangement)によって容易にされる。補体結合の可能性を最小化するために、IgG1アイソタイプのヒト化抗体が好ましい。例えば、ヒト化のレベルは、目的の非ヒト抗体タンパク質の可変ドメインをヒト抗体分子の定常領域とともに含んでいるキメラ抗体を生成することによって達成される(例えば、Morrison et al., Adv. Immunol., 1989, 44, 65-92)。Bet v1特異的抗体の可変ドメインは、目的のハイブリドーマから単離されたmRNAから生成されたcDNAよりクローニングされ得る。可変領域遺伝子フラグメントは、ヒト抗体定常ドメインをコードするエクソンに連結され、生じた構築物は、適切な哺乳動物宿主細胞(例えば、骨髄腫細胞またはCHO細胞)において発現される。優れたレベルのヒト化を達成するために、非ヒトモノクローナル抗体遺伝子の、抗原に結合する相補性決定領域(「CDR」)をコードする、可変領域遺伝子フラグメントの部分のみが、ヒト抗体配列中にクローニングされ得る(例えば、Jones et al., Nature, 1986, 321, 522-525, Riech-mann et al., Nature, 1988, 332, 323-327, Verhoeyen et al, Science, 1988, 239, 1534-36、およびTempest et al., Bio/Technology, 1991, 9, 266-71)。CDR3領域を取り囲むβシートフレームワークもまた、元々のモノクローナル抗体の抗原結合ドメインの三次元構造をより密接に反映するように改変され得る(Kettle-borough et al., Protein Engin., 1991, 4, 773-783、およびFoote et al., J. MoI. Biol., 1992, 224, 487-499を参照のこと)。代替のアプローチにおいて、目的の非ヒトモノクローナル抗体の表面が、例えば、部位特異的変異誘発法によって、非ヒト抗体の選択された表面残基を変更する一方で、非ヒト化抗体の内部の全ておよび接触する残基をそのままにしておくことによってヒト化されている(Padlan, Molecular Immunol, 1991, 28, 489-98)。
【0025】
本発明の別の局面は、Bet v1のフラグメントに結合する抗体またはそのフラグメントに関する。このBet v1フラグメントは、アミノ酸30〜59(配列番号1)またはアミノ酸75〜104(配列番号2)からなる。
【0026】
本発明に係る抗体は、好ましくは、ブダペスト条約の下で、2006年5月9日にDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen, Braunschweig, Germany)に寄託されたハイブリドーマ(受託番号DSM ACC2782、DSM ACC2783、DSM ACC2785、DSM ACC2784、およびDSM ACC2786が付与されている)によって分泌されるモノクローナル抗体である。
【0027】
本発明の別の局面は、本発明に係る抗体を含むワクチン処方物に関する。
【0028】
本発明の抗体は、哺乳動物、特に、ヒトに、種々の方法にて投与するために処方され得る。いくつかの実施形態において、抗体は、滅菌水溶液または生物学的な体液(例えば、血清)の形態である。水溶液は、緩衝化されていても緩衝化されていなくてもよく、さらなる活性成分または不活性成分を有していてもよい。さらなる成分としては、イオン強度を調節するための塩、保存剤(抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤などを含むがこれらに限定されない。)、および栄養素(グルコース、デキストロース、ビタミンおよびミネラル)が挙げられる。あるいは、抗体は、固体形態にて投与のために調製され得る。抗体は、多くの不活性なキャリアまたは賦形剤(例えば、以下が挙げられるがこれらに限定されない:結合剤(例えば、微結晶セルロース、ガムトラガカントまたはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトース);分散剤(例えば、アリジニン酸、プリモゲルまたはコーンスターチ);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム);滑剤(例えば、二酸化シリコンコロイド);甘味料(例えば、スクロースまたはサッカリン);または香味料(例えば、ペパーミントまたはサリチル酸メチル)と組み合わせられ得る。抗体またはその処方物は、その抗体を標的に送達するに効果的な任意の手段によって哺乳動物に投与され得る。このような手段としては、静脈内、筋肉内、皮下、経口、鼻腔内、経粘膜または経皮の投与形態が挙げられる。本発明に係る抗体またはワクチン処方物の局所投与が好ましい。リン酸緩衝化緩衝液(PBS)が、注入可能な処方物、または鼻腔内投与され得る処方物に好ましいキャリアである。薬学的に有効な量の治療剤を得るための抗体の用量決定は、種々の因子に依存する。例えば、患者の年齢、感受性、耐性、および他の特徴が、用量に影響する。さらに、使用される抗体の血漿レベルおよび半減期ならびにこれらの認識部位についての親和性、ならびに他の因子が、効果的な用量のために考慮されることが必要である。本発明に係る抗体の全身性投与のために、約1mg/kg患者/日〜約500mg/kg患者/日、好ましくは約5mg/kg患者/日〜約250mg/kg患者/日、より好ましくは約10mg/kg患者/日〜約100mg/kg患者/日の範囲の用量が使用され得る。しかし、投与の簡便さおよびコスト効率のためには、これらの範囲における最低限の用量が好ましい。用量は、例えば、抗体の特定の血漿レベル(例えば、約0.05〜200μg/ml、より好ましくは約0.1〜100μg/ml)を提供するために、そしてこのレベルを(例えば、一定期間、または臨床的な結果が得られるまで)維持するために、調整され得る。より緩やかに清浄化されることが期待されるキメラ抗体およびヒト化抗体は、効果的な血漿レベルを維持するためにより少ない用量が求められる。また、Bet v1フラグメントに対する高親和性を有する抗体は、好ましくは、より低い親和性の抗体よりも、低頻度または低用量で投与される。抗体の治療的に有効な用量が、処置の経過の間、アレルギー反応の低減を示すことによって決定され得る。好ましくは、本発明にかかるワクチン処方物および医薬は、花粉の季節の1週間前または2週間前までに個体に投与される。
【0029】
ワクチン処方物は、好ましくは筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与または経粘膜投与に適合される。
【0030】
本発明に係る処方物は、種々の方法で投与され得る。ここで、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与または経粘膜投与が好ましい。アミノ酸30〜59(配列番号1)またはアミノ酸75〜104(配列番号2)からなるBet v1フラグメントに特異的に結合する抗体は、カバノキ花粉アレルゲンBet v1によって引き起こされるアレルギー反応を処置または予防するために個体に投与され得る。特に、本発明に係る抗体の経粘膜投与が、伝統的な免疫化レジメンよりも多くの利点を有している。これらの中で最良の事項は、気道の局所的な粘膜免疫系をより効果的に刺激することであり、ワクチン取込み率が増加する見込みである。なぜなら、注射に関する恐怖や不安が避けられるからである。本発明に係る、アレルゲンに結合する抗体の使用は、アレルゲンに対するIgEの結合を阻害することによってアレルギー反応に対抗することを補助し得る。この阻害の結果として、アレルゲンとの接触の際に正常に増加するIgE産生が低減され得る。
【0031】
本発明の別の局面は、配列番号3〜298からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。
【0032】
配列番号3〜298のヌクレオチド配列は、単独でBet v1に結合し得るIgE分子の可変領域をコードする(すなわち、Bet v1アレルゲンに結合するポリペプチドをコードする)mRNAに由来する。
【0033】
本発明の別の局面は、配列番号3〜298からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるポリペプチドに関する。
【0034】
本発明のなお別の局面は、配列番号3〜298からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるポリペプチドを含む、抗体またはそのフラグメントに関する。
【0035】
本発明に係るポリペプチドおよび核酸分子は、抗体またはそのフラグメントに(例えば、分子生物学的な方法によって)含有され得、その結果、該抗体またはそのフラグメントは、例えば、Bet v1に対する受動免疫のために使用され得る。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4からなる群より選択される免疫グロブリンである。
【0037】
本発明の別の好ましい実施形態において、フラグメントは、面系グロブリンの定常領域、面系グロブリンの可変領域、単鎖Fv(scFv)、ダイアボディ(dsFv)、Fab、またはこれらの組合せである。
【0038】
本発明は、以下の実施例および図面によってさらに例証されるが、これらに限定されない。
【0039】
図1は、実験設計を示す。2群のBalb/cマウス(n=4/群)を、rBet v1/Al(OH)3を用いて、1日目、14日目および28日目にi.p.で感作した。36日目に血液を回収した(抗血清)。同日に、第一群は、rBet v1特異的IgGを用いてi.p.にて注入し、第二群は、無関係のアレルゲン(Phlp5)についてのIgGを得た。24時間後(37日目)に、血液を回収した(後血清)。
【0040】
図2は、rPhl p5特異的IgG抗体による、β−ヘキソサミニダーゼの放出の阻害を示す。漸増濃度のrPhl p5(0.02μg/ml〜0.5μg/ml)を、マウス抗血清および後血清とともに予めインキュベートし、RBL細胞に曝露し、そしてβ−ヘキソサミニダーゼの放出を測定した。β−ヘキソサミニダーゼの放出を、β−ヘキソサミニダーゼの総放出量のパーセントとして示した。
【0041】
図3は、rBet v1特異的IgG抗体によるβ−ヘキソサミニダーゼの放出の阻害を示す。漸増濃度のrBet v1(0.02μg/ml〜0.5μg/ml)を、マウス抗血清および後血清とともに予めインキュベートし、RBL細胞に曝露し、そしてβ−ヘキソサミニダーゼの放出を測定した。β−ヘキソサミニダーゼの放出を、β−ヘキソサミニダーゼの総放出量のパーセントとして示した。
【0042】
図4は、Bet v1に結合し得るIgE可変領域をコードするDNA配列を示す。
【0043】
〔実施例〕
〔実施例1:アレルゲンを特異的にブロックするIgG1抗体を分泌するハイブリドーマの生成および特徴付け〕
〔実施例1.1:アレルゲンをブロックするIgG1抗体を分泌するハイブリドーマの生成〕
リコンビナントのカバノキ花粉アレルゲンBet v1をE.coliに発現させて、既報(Hoffmann-Sommergruber et al., 1997)に記載されたように精製した。Applied Biosystems peptide synthesizer Model 433A(Foster City, CA, USA)でペプチドを合成した。キャリアへの結合を容易にするために、各合成ペプチドの元々の配列にシステイン残基を1つ付加している(Focke et al., 2004)。表1は、非アナフィラキシー性のBet v1由来の合成ペプチドの特徴付けを要約した。
【0044】
【表1】
合成ペプチド(ペプチド2(配列番号1)、ペプチド6(配列番号2))を、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH;MW 4.5×105〜1.3×107;Pierce, USA)に、製造業者のプロトコルに従って結合し、Conjugation Kit(Pierce)を用いて精製した。Balb/cマウス(Charles River, Germany)を、Al(OH)3(75μL/マウス)に吸着させたKLH結合ペプチド(30μg/mL/マウス)で3回免疫した(表2)。血清中のアレルゲン特異的IgG1の力価をEILSAによって決定した。
【0045】
【表2】
最終免疫の3日後に脾細胞を回収し、ハイブリドーマを、慣用的なハイブリドーマ技術(Koehler and Milstein, 1975)を若干改変した手順によって、HAT感受性の、非分泌性ミエローマ細胞株X63Ag8.653(Kearney et al., 1979)を融合パートナーとして用いて惹起した。ミエローマを、L−グルタミン(200mM)、10%FBS、ファンギゾン(200U/mL)およびペニシリン/ストレプトマイシン(10000U/mL)を補充したRPMI1640からなるハイブリドーマ増殖培地中で、増殖させた。マウスの脾臓を、記載されているように除去し、細胞を、無血清ハイブリドーマ増殖培地中に懸濁した。1750rpm(4℃で5分間)にて遠心分離した後、赤血球を、溶解緩衝液(8.3g/L塩化アンモニウム、1.0g/L二酸化カリウム、0.037g/L EDTA三ナトリウム(pH7.4))にて室温で2分間溶解し、1750rpm(4℃で5分間)での遠心分離によって細胞を3回洗浄した。毎回、細胞ペレットを、無血清ハイブリドーマ増殖培地で緩やかに再懸濁した。次いで、生存可能な脾細胞およびミエローマ細胞(対数増殖期にある)を、2:1(脾細胞:ミエローマ)の割合で一緒に混合し、遠心分離した後に、1.5mLの、予め暖めておいた(37℃)41.3%w/vポリエチレングリコール(PEG)4000を添加し、細胞ペレットを1分間緩やかに攪拌した。次いで、細胞を、800rpm(4℃で5分間)遠心分離し、フィーダー細胞を補充したHAT培地中に懸濁し、96ウェルプレートに播種し、CO2インキュベータ(5%)中にて37℃でインキュベートした。細胞を約2週間増殖させ、培養上清を酵素免疫アッセイにおける抗体産生についてスクリーニングした。
【0046】
ELISAプレートを、4℃で一晩のインキュベートによって、PBSで希釈したrBet v1(10μg/mL)でコートした。PBE−T(PBS+0.05% Tween 20)中0.5%w/vBSAで、37℃で1時間ブロッキングした後、プレートを、希釈していないハイブリドーマ上清とともにインキュベートし、37℃で2時間反応させた。検出のために、プレートを、1:1000に希釈した一次抗体(精製したラット抗マウスIgG1)とともに、37℃で2時間インキュベートし、1:2000に希釈した酵素標識二次抗体(西洋ワサビペルオキシダーゼが種特異的抗体全長に連結した抗ラットIgG)とともに、37℃および4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション工程の間、プレートを、PBS−Tで繰り返し洗浄した。最終的に、プレートを、ABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)二アンモニウム塩(Sigma-Aldrich)とともに室温でインキュベートし、405nmで吸光度を測定した。Bet v1に特異的なIgG1抗体ハイブリッドを分泌する細胞を、限定希釈法によってクローニングした。すなわち、陽性ハイブリドーマを拡張し、単一クローン性を確認するためにサブクローニングし、そして低温保存した。
【0047】
〔実施例1.2:アレルゲンを特異的にブロックするIgG1抗体を分泌するハイブリドーマの特徴付け〕
ELISAによって得られたモノクローナルIgG1抗体の結合特異性を詳細に特徴付けるために、マイクロタイタープレートを、PBSで希釈したrBet v1(5μg/mL)、ペプチド2(aa30−59)、ペプチド6(aa75−104)、Bet v1トリマー、Bet v1フラグメント(aa1−74)、Bet v1フラグメント2(aa75−160)、KLHおよびrPhl p1でコートした。PBS−T(PBS+0.05% Tween20)中0.5%w/v BSAを添加することによって、37℃で1.5時間ブロッキングし、その後、希釈していないハイブリドーマ上清を添加して37℃で2時間インキュベートした。mAbの特異的結合を、一次抗体、引き続く二次抗体(上述したように酵素標識した抗体)を用いて検出した。
【0048】
カバノキ花粉アレルギー患者からの44個の血清(総IgEレベル:24.1→5000kUA/L;カバノキ花粉特異的IgE:10.7→100kUA/L)を、病歴に従って選択し、非アレルギー患者からの血清を、コントロール目的で含ませた。カバノキ花粉アレルギー患者群は、19名の女性および25名の男性(平均年齢37歳(21〜70歳))からなる。表3は、選択されたカバノキ花粉アレルギー患者からの血清の特徴付けを要約する。
【0049】
【表3】
表6−9に示すように、個体を番号付けした。人口統計データは、阻害実験に用いられたカバノキ花粉アレルギー患者の性別および年齢を示す。血清学的な特徴付けは、総IgE、カバノキ花粉特異的IgEおよびRASTクラスを示す。NSは、特定されていない。
【0050】
ELISAプレートを、rBet v1(1μg/mL)を用いて4℃で一晩コートした。PBS−T(PBS+0.05% Tween20)中0.5%w/vのBSAでブロッキングした後、プレートを、希釈していない、単一のクローン(クローン2(DSM ACC2782)、クローン4(DSM ACC2783)、クローン10(DSM ACC2785)、クローン12(DSM ACC2784)、クローン13(DSM ACC2786))および混合したクローン(クローン2およびクローン13)、IgG1抗体産生ハイブリドーマ培養上清を用いて、4℃で一晩プレインキュベートした。最終的に、プレートを1:5に希釈した、44名のカバノキ花粉アレルギー患者からの血清とともにインキュベートし(4℃で一晩)、結合したIgE抗体を、1:1000に希釈したアルカリホスファターゼ結合マウスモノクローナル抗ヒトIgE抗体で検出した。インキュベーション工程の間、PBS−Tでプレートを繰り返し洗浄した。IgG1モノクローナル抗体でのプレインキュベーションの後の、rBet v1に対するIgE結合の阻害の割合(%阻害)を、以下のように算出した:%阻害=100−(ODp×100/ODnp)。ODpおよびODnpは、それぞれ、ハイブリドーマ培養上清あり(ODp)およびハイブリドーマ培養上清なし(ODnp)でのプレインキュベーション後の吸光度を示す。
【0051】
〔実施例1.3:結果〕
融合した脾細胞のプレーティングおよびインキュベーションの後に、マイクロタイターウェルからの各上清を、上述したようにELISAによって分析し、免疫反応性のハイブリドーマを単離した。さらに、陽性ハイブリドーマの増殖(propagation)は、14個の、安定かつモノクローナルなペプチド特異的抗体の選択をもたらした。これらのモノクローナル抗体のそれぞれが、IgG1アイソタイプに属し、κ軽鎖を発現している。表4は、得られたクローンのリストである。クローン2、4、10、12および13を、ブダペスト条約の下で、2006年5月9日にDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen, Braunschweig, Germany)に寄託し、それぞれに受託番号DSM ACC2782(クローン2)、DSM ACC2783(クローン4)、DSM ACC2785(クローン10)、DSM ACC2784(クローン12)、およびDSM ACC2786(クローン13)が付与されている。
【0052】
【表4】
14個のペプチド特異的抗体産生クローンを、rBet v1、Bet v1ペプチドおよびBet v1誘導体(例えば、Bet v1トリマー(共有結合した3つのBet v1コピー(Vrtala et al., 2001)))、ならびに2つのrBet v1フラグメント(Bet v1のaa1−74(1)からなるフラグメントおよびaa75−160(2)からなるフラグメント(Vrtala et al., 2000))に対するそれぞれの結合特異性について、さらに試験した。さらに、ネガティブコントロール(例えば、KLHおよびrPhl p1)に対する、上記モノクローナル抗体の結合を決定した。表5は、14個のモノクローナル抗体の結合特性を要約している。14個のペプチド特異的抗体のいずれもが、KLHまたはrPhl p1に対する反応性を示さなかった。しかし、これらの全てが、rBet v1およびBet v1トリマーに対して強い反応性を示した。免疫原に従って、クラス番号1−11は、ペプチド2(aa30−59)特異的抗体を産生し、ペプチド2に対する抗体反応性を示したが、ペプチド6(aa72−104)とは反応し、一方、ペプチド6(aa72−104)特異的抗体は、クローン番号12−13によって産生され、免疫原への結合を示したが、ペプチド2(aa30−59)に対して結合しなかった。Bet v1フラグメント1(aa1−74)およびフラグメント2(aa75−106)を用いたさらなる実験によって、ペプチド2特異的抗体(クローン1−11)がフラグメント1(aa1−74)に対する反応性を示したが、ペプチド6特異的抗体(クローン12−13)はフラグメント2(aa75−160)に対する反応性を示した。
【0053】
【表5】
表6は、上記モノクローナル抗体が、Bet v1交差反応性アレルゲン(例えば、ハンノキ花粉からのメジャーアレルゲン(Aln g1)またはリンゴからのメジャーアレルゲン(Mal d1))に対する、アレルギー患者IgEの結合を阻害することを示している。
【0054】
【表6】
カバノキ花粉アレルギー患者からの血清についての、IgG1 mAb(クローン2、4、10)を用いて得られた、完全なrBet v1に対するIgE結合の%阻害を示す。平均%阻害を表の下に示す。
【0055】
44名のカバノキ花粉アレルギー患者からの血清を用いて、ペプチド特異的抗体が、完全なrBet v1に対するアレルギー患者IgEの結合を阻害する能力を、ELISA相補実験によって決定した(表7−9)。患者IgEに曝露する前のrBet v1とのプレインキュベーションのために、全部で14個のクローンのうち5つを選択した。ペプチド6(aa75−104)特異的抗体を用いたプレインキュベーションの後にIgE結合が最も阻害されたことを観察した(クローン12:60.4%−74.8%平均阻害;クローン13;58.5%−72.6%平均阻害)。一方、ペプチド2(aa30−59)特異的抗体もまた、程度が低いとはいえ、rBet v1に対する患者IgE結合を阻害した(クローン2:46.2%−62.7%平均阻害;クローン4;44.3%−58.7%平均阻害;クローン10;41.0%−52.4%平均阻害)。驚くことに、ペプチド2特異的モノクローナル抗体(クローン2)とペプチド6特異的モノクローナル抗体との混合物は、単一のモノクローナル抗体のみよりもIgE結合を強く阻害した(表7−9)。
【0056】
【表7】
10名のカバノキ花粉アレルギー患者(a1−a10)からの血清、およびコントロールとしての非アレルギー患者からの血清について、IgG1 mAb(クローン2、4、10、12、13)を用いて得られた、完全なrBet v1に対するIgE結合の%阻害を示す。平均%阻害を表の下に示す。
【0057】
【表8】
34名のカバノキ花粉アレルギー患者(b1−b34)からの血清、およびコントロールとしての非アレルギー患者からの血清について、IgG1 mAb(クローン2、4、10、12、13)を用いて得られた、完全なrBet v1に対するIgE結合の%阻害を示す。平均%阻害を表の下に示す。
【0058】
【表9】
10名のカバノキ花粉アレルギー患者(a1−a10)からの血清について、単一のIgG1 mAb(クローン2、クローン13)を用いて得られた、完全なrBet v1に対するIgE結合の%阻害を、IgG1 mAb混合物(クローン2/13mix)による阻害と比較して示す。平均%阻害を表の下に示す。
【0059】
アレルギー反応における重要な事象は、多価アレルゲンによるIgE抗体が結合したエフェクター細胞の架橋である。これにより、顆粒のエキソサイトーシスおよび生物学的メディエータ(すなわち、ヒスタミン、ロイコトリエン)の放出が引き起こされ、これらは、次いで即時型アレルギー性炎症を引き起こし、次いで、アレルギー性鼻炎、結膜炎、喘息を引き起こす。この局面において、アレルゲン−IgE抗体相互作用は、アレルゲンとIgE抗体との間の相互作用を阻害することを目的とする、アレルゲン特異的な受動免疫治療の標的であり得る(Valenta et al., 1998)。このために、特定の治療形態を開発するためには、IgEエピトープの定義付けは重要な必要条件である。連続的なIgEエピトープを有するメジャーアレルゲン(例えばPhl p1)の場合において、アレルゲンをIgE結合ハプテンに寸断することが可能である。ハプテンは、アレルゲン曝露前にIgEが結合したエフェクター細胞を飽和させ、これにより、架橋およびエフェクター細胞活性化を防ぐ(Ball et al., 1994)(チャプター1:ハプテンの原理もまた参照のこと)。対照的に、カバノキ花粉のメジャーアレルゲンであるBet v1のIgEエピトープは、主に立体配座型(非連続型)に属する。この場合、アレルゲン−IgE抗体相互作用は、アレルゲン上の結合部位を患者IgEと競合する、治療的なアレルゲン特異的抗体でブロックされ得る。このような治療的アプローチは、患者が、少数のメジャーアレルゲンにのみ感受性である場合に、特に適切である。
【0060】
本実施例において、14個のモノクローナルBet v1ペプチド特異的抗体(これらの全てがIgG1サブクラスに属する。)は、それらのエピトープ特異的結合特性について、ならびに、Bet v1アレルゲンに結合するアレルゲン患者のIgEと干渉する能力について、特徴付けられる。
【0061】
これらのペプチドの結合特性に従って、モノクローナル抗体は、二群に分けられ得る:第1群(クローン1−11)、ペプチド2(aa30−59)を強く認識するモノクローナル抗体;第2群(クローン12−13)、ペプチド6(aa75−104)を強く結合するモノクローナル抗体。全てのモノクローナル抗体が、rBet v1およびrBet v1トリマーを強く結合し、特異性を示した。なぜなら、これらは、無関係のコントロールペプチド(例えばKLHおよびrPhl p1)を認識しなかったからである。
【0062】
Bet v1に対する患者IgEの結合を干渉することについて試験した場合、モノクローナル抗体の各々が、IgE結合を実質的な程度まで(いくつかにおいては、特定の患者における94%まで)阻害した。驚くことに、これらの結果は、単一のモノクローナル抗体が、患者のポリクローナルなIgE結合を競合するに十分であることを示した。ペプチド6特異的なモノクローナル抗体は、ペプチド2特異的なモノクローナル抗体と比較して、より強力な阻害能力を示した。
【0063】
異なるエピトープ特異性を有する個々のモノクローナルIgG抗体(クローン2:ペプチド2特異的;クローン13:ペプチド6特異的)の阻害能力を、異なる特異性を有する2つの抗体の混合物と比較すると、抗体混合物を用いた場合には、患者IgE結合の阻害がもはや強くなかった。
【0064】
基本的には、これらのペプチド特異的IgG1抗体のブロック活性について、2つの解釈が考えられ得る。第一に、この阻害は、得られたモノクローナル抗体が、Bet v1のIgE結合主要部位内の、または該結合部位に非常に近接したエピトープを認識するという事実によって説明され得る。第二に、このブロック活性は、アレルゲンのコンフォーメーションの改変によって生じ得、その結果、IgEエピトープまたはそのほんの一部が、もはやIgEに接近し得ない。よりよい解釈は、異なるエピトープ特異性を有する2つのペプチド特異的モノクローナル抗体の混合物が、個々のモノクローナル抗体よりもIgE結合のより強い阻害をもたらさなかったことを示す、阻害実験の結果に合致する。この論理は、アレルゲン−抗体複合体の構造分析のよって確認され得る。
【0065】
治療能力を有するいくつかのヒトモノクローナル抗体およびマウスモノクローナル抗体が、供給源としてのアレルギー患者または免疫化したマウスからのB細胞を用いる、古典的な組織培養およびコンビナトリアルクローニング技術によってすでに単離されている(Sun et al., 1995; Visco et al., 1996; Lebeque et al., 1997; Flicker et al., 2002)。これらの抗体は、アレルゲン−IgE相互作用を阻害し得、そしてアレルゲン誘導性の好塩基球脱顆粒を防ぎ得る。
【0066】
また、Bet v1特異的ヒトブロック抗体が、免疫療法によって処置された患者からのハイブリドーマ細胞株の生成によってすでに産生されている(Visco et al., 1996)。Bet v1特異的マウスモノクローナル抗体が、古典的なハイブリドーマ技術によって単離されている(Lebeque et al., 1997)。これまでにすでに取得されているBet v1特異的モノクローナル抗体と比較して、本実施例に記載の抗体は、特定のアミノ酸配列を有するBet v1由来ペプチドで免疫化したマウスから単離されており、これにより、手順の開始時にはすでに特異的エピトープを決定している。
【0067】
上述したようなブロック抗体はまた、これらの免疫原性を低減するために、ヒト化されてもよく、リコンビナント抗体フラグメントとして生成されてもよい。治療的なアレルゲン特異的抗体は、アレルゲンの侵入に対する適切な防御ラインを形成するために、アレルギーの標的器官(例えば、鼻内、または気管支粘膜、結膜)に局所的に、または全身性に(例えば、受動ワクチン)投与され得る(Valenta et al., 1997)。
【0068】
結論として、本発明に係るモノクローナル抗体はまた、局所的な治療または受動ワクチン接種による、標的器官におけるアレルゲン誘導性のメディエータ放出の防御に使用され得る。
【0069】
〔実施例2〕
アレルゲン特異的IgG抗体を用いた受動ワクチン接種の効果をインビボで検証するためのモデルマウスを樹立した(図1)。
【0070】
マウス(Charles Rive, Germany)を、Al(OH)3(Alu-Gel-S; Serva, Germany)に吸収させた、カバノキ花粉のメジャーアレルゲンであるrBet v1(Biomay, Austria)5μgで、1日目、14日目および28日目に腹腔内にて感作した。血液サンプル(抗血清)を、感作したマウスの尾静脈から36日目に採取した。Bet v1に対するアレルギー性の感作を、上記血清におけるBet v1特異的IgE抗体の測定によって確認した(Vrtala et al., 1998)。8つ全ての血清のBet v1特異的IgEレベルを比較した(表10、抗血清)。
【0071】
次いで、マウスを二群に分けた:第1群を、0.5mLのBet V1特異的IgGでi.p.処置した。第2群(コントロール群)に、無関係のアレルゲンであるPhl p5に対するIgG(0.5mL)を注入した。37日目に、両群のマウスの尾静脈から血液を採取した(後血清(post−serum))。rBet v1に対するIgE反応性を、抗血清のものと比較した。この目的のために、5μg/mLのrBet v1を、ELISAプレート上に一晩コーティングし、プレートを3% BSA/TBST(50mM Tris、150mM NaCl、0.5%w/v BSA、0.05%v/v Tween)でブロッキングした。マウス血清を、TBSTで1:10に希釈し、一晩インキュベートし、結合したIgEを、モノクローナルラット抗マウスIgE抗体(BD Pharmingen; USA)およびHRP標識化ヤギ抗ラット抗血清(Amersham, U.K.)を用いてそれぞれ検出した。表10は、10%未満のワクチン接種での2連の決定の代表的な平均を示す。カラム1および2は、IgGでの処置前(抗血清)および処置後(後血清)におけるrBet v1に対するマウスのIgE結合を示す。後血清におけるrBet v1に対するIgE結合の%阻害(第3カラム)を、以下のように算出した:%阻害=100−OD後血清×100/OD抗血清。阻害の割合は、23.4%〜54.6%の間の範囲であった(表10)。
【0072】
表10は、rBet v1特異的IgG抗体による、rBet v1に対するマウスIgE結合の阻害を示す。rBet v1特異的IgGまたはPhl p5特異的IgGでの処置の前(抗血清;第1カラム)および処置の後(後血清;第2カラム)における、rBet v1に対するIgE結合を示した。後血清のIgE結合の%阻害を、第3カラムに示した。
【0073】
【表10】
rBet v1に対するIgE結合の阻害は、Phl p5に対する特異性を有するIgGが得られた第2群のマウスにおいてほとんど観察されなかった。Phl p5アレルギーマウスについて同様の実験が行われ、Phl p5特異的IgGでの処置によって達成されたIgE結合の%阻害は、7.7〜58%の範囲であった(表11)。
【0074】
表11は、rPhl p5特異的IgG抗体による、rPjl p5に対するマウスIgE結合の阻害を示す。rPhl p5に対するIgE結合(ODレベル)を、rPhl p5特異的IgGまたはrBet v1特異的IgGでの処置前(抗血清;第1カラム)および処置後(後血清;第2カラム)に示した。後血清のIgE結合の%阻害を、第3カラムに示す。
【0075】
【表11】
アレルゲン特異的IgG抗体がアレルゲン誘導性の即時型アレルギー反応を阻害し得るか否かを、ラット好塩基球(RBL)からのβ−ヘキソサミニダーゼ放出アッセイを用いて分析した。RBL−2H3細胞(Eccleston et al., 1973)を、96ウェル組織培養プレートにプレーティングし(4×104個/ウェル)、5%CO2下にて37℃で24時間培養した。これらの細胞を、Tyrode's Buffer(Sigma-Aldrich, Austria)(137mM NaCl、2.7mM KCl、0.5mM MgCl2、1.8mM CaCl2、0.4mM NaH2PO4、5.6mM D−グルコース、12mM NaHCO3、10mM N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、および0.1%w/v BSA(pH7.2))で2回洗浄した。異なる濃度のアレルゲン(0.5μg/mL;0.1μg/mL;0.02μg/mL)を、マウス抗血清およびマウス後血清(Tyrode's Bufferにて1:10に希釈した)とともにインキュベートした。アレルゲン/IgE複合体およびアレルゲン/IgG複合体を、RBL細胞に曝露し、37℃で湿潤環境下にて2時間インキュベートした。β−ヘキソサミニダーゼ放出のレベルを、蛍光顕微鏡(CYTO FLUORTM 2350, Millipore, USA)で測定した。1%v/v Triton X−100の添加によって得られたβ−ヘキソサミニダーゼ総放出のパーセントとして結果を示した。図2および3は、細胞をアレルゲン+後血清とともにインキュベートした際のRBL細胞のβ−ヘキソサミニダーゼ放出が、アレルゲン+後血清と比較して低いことを示している。
【0076】
さらなる実験において、ブロック抗体の概念を、別の重要な季節性のアレルゲンであるグラス花粉のメジャーアレルゲンPhl p1、通年性のアレルゲンであるDer p2、ハウスダストからのメジャーアレルゲン、およびサカナのメジャーアレルゲンであるCyp c1に拡張した。さらに、単一のIgG抗体投与の、アレルゲン特異的マウスIgE結合に対する長期効果を調べた。
【0077】
表12は、rPhl p1特異的IgG抗体による、IgG投与3週間後のrPhl p1に対するマウスIgE結合の%阻害を示す。後血清の阻害の割合は、63.3〜39.5%の範囲である。Der p2で感作したマウスについて同様の実験を行い、rDer p2特異的IgGでの処置によって達成された%阻害は、63.5〜27.5%の範囲であった(表13)。rCyp c1で感作したマウスについて、特異的IgE結合の阻害の割合は、59.8〜36%に達した(表14)。
【0078】
〔表12:rPhl p1特異的IgG抗体による、rPhl p1に対するマウスIgE結合の阻害〕
Phl p1に対する後血清のIgE結合のパーセントを、rPhl p1特異的IgG(第1群)またはBet v1特異的IgG(第2群)での処置後の、異なる時点で示した。抗血清のIgE結合を、100%反応として算出した。
【0079】
【表12】
【0080】
〔表13:rDer p2特異的IgG抗体による、rDer p2に対するマウスIgE結合の阻害〕
Der p2に対する後血清のIgE結合のパーセントを、rDer p2特異的IgG(第1群)またはBet v1特異的IgG(第2群)での処置後の、異なる時点で示した。抗血清のIgE結合を、100%反応として算出した。
【0081】
【表13】
【0082】
〔表14:rCyp c1特異的IgG抗体による、rCyp c1に対するマウスIgE結合の阻害〕
Cyp c1に対する後血清のIgE結合のパーセントを、rCyp c1特異的IgG(第1群)またはBet v1特異的IgG(第2群)での処置後の、異なる時点で示した。抗血清のIgE結合を、100%反応として算出した。
【0083】
【表14】
【0084】
〔実施例3〕
他のBet v1特異的抗体を得るために、IgE応答が排他的にカバノキ花粉メジャーアレルゲンBet v1を指向している患者を同定した。そのIgE可変領域のDNA配列を、ファミリー特異的プライマー(VH1−VH6)を第1定常ε領域に位置されるプライマーとともに用いた逆転写およびPCRに供した上記患者より得た。上記アレルギー患者の、合計336個のBet V1特異的重鎖可変配列を同定した(図4)。これは、Bet v1のIgEエピトープを認識し、ブロック抗体として反応する。
【0085】
〔花粉数、アレルギー患者の特徴付け〕
500名のアレルギー患者のうち、カバノキ花粉に対して排他的なアレルギー感受性を有している6名を、46種のアレルゲン供給源(ハンノキ花粉、アーモンド、アルテルナリア、リンゴ、菌類(Aspergillus)、カバノキ花粉、ニンジン、カゼイン、ネコ皮膚あか(dander)、セロリ、クラドスポリウム、ゴキブリ、タラ、ダニ(Dermatophagoides farinae)、ダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)、イヌ皮膚あか、グラス混合物、モルモット皮膚あか、ハムスター皮膚あか、カシバミ花粉、ハシバミ、ウマ皮膚あか、トショウ、ラテックス、乳タンパク質、ヨモギ、オリーブの木、ヒカゲミズ(Parietaria)、モモ、ピーナッツ、ペニシリン、マツ混合物、プランタン、羽毛混合物、ジャガイモ、ウサギ、ブタクサ、ライムギ、ライムギの花、ゴマ、エビ、ダイズ、トマト、クルミ、コムギコ、全卵)を含む、マルチアレルゲン試験システム(MAST CLA アレルゲン特異的IgEアッセイ、Hitachi Chemical Diagnostics)を用いて同定した。6名のアレルギー患者からの血液サンプルを、2002年および2005年の春および夏に得た。各地点(appointment)において、血漿中のBet v1特異的IgEレベルを、CAP-RAST測定(Phadia)によって定量し、アレルギー症状および抗アレルギー剤を記録した。選択された患者はいずれも、任意の種類のアレルゲン特異的免疫療法を受けなかった。
【0086】
個体の居住地域におけるカバノキ花粉曝露を、Drachenberg KJ et al., Allergy 56 (2001): 498-505に記載されているように記録した。
【0087】
〔アレルゲン特異的IgE抗体の同定〕
選択されたアレルギー患者のアレルゲンプロファイルを特定するために、リコンビナントBet v1を用いた阻害実験を行った。リコンビナントBet v1(Biomayより購入)を、製造業者の指示書に従って、5mgタンパク質/mL媒体の濃度で、CNBr活性化セファロース4B(GE Healthcare Bio-Sciences AB)に結合させた。6名のアレルギー患者の血漿1500μLを、500μLのアレルゲン結合ゲルとともに、4℃で一晩360°(end−over−end)の旋回によってインキュベートした。遠心分離(5000g、4℃で5分間)によって血清を回収した。食物アレルゲン混合物(卵白、乳タンパク質、タラ、コムギコ、ピーナッツおよびダイズ)および呼吸器系(respiratory)混合物(ヨモギ、カバノキ花粉、ヒカゲミズ、オオアワガエリおよびオオバコ)に対するIgEレベル、ならびにカバノキ花粉抽出物に対するIgEレベルを、CAP-RAST測定(Phadia)による枯渇の前および後に測定した(Eibensteiner P et al., Immunology 101 (2000): 112-9)。カバノキ花粉におけるBet v1に対して排他的に反応した3名の患者を用いて、さらなる実験を行った。
【0088】
〔PBMC単離およびIgE転写物のRT−PCR増幅〕
血清収集時に、末梢単核細胞を、Ficoll密度勾配遠心分離によって単離した。細胞性の総RNAを、グアニジンイソチオシアネート法およびCsCl勾配遠心分離を用いて単離した。
【0089】
VH1−VH6ファミリー特異的プライマーをIgE重鎖の第1定常領域に特異的なプライマーとともに使用して、IgE転写物を、Platinum Taq(登録商標)(Invitrogen)を用いたSuperScriptTM一工程RT−PCRによって生成した(表15)。
【0090】
【表15】
PCR増幅手順は、47℃で30分間および94℃で5分間の第1工程に続いて、94℃で20秒間、59℃で30秒間、72℃で1分間を40サイクル、さらに72℃で5分間の最終伸長からなる。予想したサイズのPCR産物の全てを、製造業者の指示書に従ってWizard(登録商標)SV GelおよびPCR Clean-Up System(Promega)を用いて、アガロースゲル精製した。続いて、cDNAを、AccepTorTMベクター(Novagen)にクローニングし、E.coli XL1−blueに形質転換した。3mLの一晩培養物(100μg/mLのアンピシリンを含む)から、Wizard(登録商標) Plus SV Miniprep DNA Purification System(Promega)を用いて、プラスミドDNAを精製し、制限酵素KpnIおよびSacI(Roche)を用いて消化した。正しいサイズの挿入物を有しているプラスミドを、Microsynth AG(Switzerland)によって配列決定した。
【0091】
〔参考文献〕
【0092】
【化1】
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、実験設計を示す図である。
【図2】図2は、rPhlp5特異的IgG抗体による、β−ヘキソサミニダーゼの放出の阻害を示す図である。
【図3】図3は、rBet v1特異的IgG抗体による、β−ヘキソサミニダーゼの放出の阻害を示す図である。
【図4】図4は、Bet v1に結合し得るIgE可変領域をコードするDNA配列を示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、抗体、ならびにアレルゲンによって誘導される疾患の処置および予防のための薬学的処方物に関する。
【0002】
約1億人のアレルギー患者が、カバノキ(Betula verrucosa)の花粉アレルゲンであるBet v1に感作している。Bet v1は17kDaのタンパク質であり、Fagales目に属する樹木の花粉中に存在し、欧州、北米、ロシアおよびオーストラリアにおいて広く分布している(Breitenederら、1989)。Bet v1をコードするcDNAが単離され(Breitenederら、1989)、天然のBet v1野生型に匹敵するリコンビナントBet v1が、Escherichia coliにて発現された。(Valentaら、1991;Ferreiraら、1993)。樹木花粉および食品に対してアレルギーを示す患者のIgE抗体による、Bet v1の認識は、平均約95%であり、その約60%がBet v1に対して排他的に感受性である(Jarolimら、1989)。このため、アレルゲンの認識は、コンフォーメーショナルなエピトープに依存し、よって、フォールディングされた分子を必要とする。これまでに行われた、インビトロおよびインビボでの広範囲での特徴付けのために、リコンビナントBet v1分子は、しばしば、診断目的および治療目的に使用されることが提唱された(Valentaら、1995,1996)。近年、カバノキ花粉のメジャーアレルゲンの、非アナフィラキシー性の表面提示ペプチドが、生成され、インビボでの抗体応答(能動免疫)を誘導するに十分なサイズ(25〜32アミノ酸)を有するペプチドとして特徴付けられた。これらのペプチドは、フォールディングされておらず、アレルギーの活性を欠いている。しかし、ペプチドのワクチン接種は、Bet v1特異的ポリクローナルIgGの産生を誘導した(Fockeら、2004)。
【0003】
WO94/10194は、Fagales目の樹木に由来するペプチドに関する。
【0004】
EP1219300には、アレルギーの処置のための医薬を製造するためのアレルゲン誘導体の使用が記載されている。
【0005】
本発明の目的は、カバノキ花粉アレルゲンであるBet v1またはそのフラグメントによって引き起こされるアレルギー反応の処置および予防のための、手段および方法を提供することにある。
【0006】
従って、本発明は、カバノキ花粉アレルゲンに曝露されたことによって個体において生じたアレルギー反応の予防および/または処置のための、個体の受動免疫についての医薬を製造するための、抗体またはその誘導体の使用に関する。ここで、この抗体は、アミノ酸30〜59(配列番号(SEQ ID NO.)1)またはアミノ酸75から104(配列番号2)を含むBet v1フラグメントに結合する。
【0007】
驚くべきことに、上記Bet v1フラグメントに結合する抗体またはその誘導体は、カバノキ花粉アレルゲンBet v1に特異的に結合し得、このような分子を使用して、Bet v1特異的IgEのカバノキ花粉アレルゲンに対する結合をブロックし得る。本発明に係る抗体のエピトープに対する結合は、アレルゲンに対するIgEの結合を低減、まさに完全に低減させる。上記エピトープは、Bet v1および/またはこのアレルゲンのコンフォメーショナルな改変体(modification)の、IgE結合主要部位の内部または非常に近接した部分に存在し、その結果、IgEエピトープまたはその一部が、もはやIgEに接近し得ない。実験データは、異なるエピトープ特異性を有する、ペプチド特異的な2つの抗体の混合物が、個々の抗体よりも強いIgE結合阻害をもたらさないことを示し、一方の抗体がアレルゲンのコンフォメーションを改変し、第2の抗体(すなわちIgE)がこのアレルゲンに結合することを阻害するということを実証している。
【0008】
抗体の産生のために、種々の宿主動物が、Bet v1抗原またはそのフラグメント、特に、アミノ酸30〜59(配列番号1)またはアミノ酸75〜104(配列番号2)からなるBet v1フラグメントを注入することによって免疫化され得る。このような宿主動物としては、例えば、ブタ、ウサギ、マウス、ヤギ、およびラットが挙げられ得る。最も好ましくは、ヒト個体からポリクローナル抗体が単離される。このような抗体の使用は、免疫系が、「外因性の」抗体に由来する抗原に応答する危険性を低減させる。抗体は、これらの動物の血清から単離され得る。
【0009】
本発明に係る抗体は、静脈内、筋肉内、皮下、および局所投与のために処方され得、このような処方物を得るためのプロトコルは、当業者に公知である。
【0010】
もちろん、本発明に係るBet v1フラグメントに対する抗体を、Bet v1アレルゲンに曝露されたヒト個体から単離することもまた可能である。Bet v1特異的抗体の、ヒト個体からの単離は、当該分野において公知の方法によって達成され得る。
【0011】
本明細書中で使用される場合、「抗体」は、インタクトな免疫グロブリンまたはそのフラグメントをいう。このようなフラグメントは、例えば、種々のペプチダーゼで消化して生成されるか組換え的に生成される。もちろん、他のタンパク質もしくはそのフラグメントに融合された、免疫グロブリンの抗原結合領域を含む分子もまた、本発明に係る抗体であることが企図される。「抗原結合領域」は、免疫グロブリン分子の一部をいい、抗原結合を担う。抗原結合領域は、重鎖または軽鎖のN末端可変領域のアミノ酸残基によって形成される。よって、用語「抗体」は、(例えば、抗体の、ヒンジ領域におけるジスルフィド結合以下をペプシン消化によって生成されたか、または組換え技術によって生成された)Fab、単鎖抗体(単一のポリペプチド鎖として存在する抗体)、より好ましくは、単鎖Fv抗体(scFv)(ここで、重鎖可変領域および軽鎖可変領域が一緒に連結されて(直接的にか、またはペプチドリンカーを介して)連続的なポリペプチドが形成されている。)、キメラ分子、ヒト化分子などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
本発明に係る抗体はまた、組換えDNA技術、酵素学的などによって化学的に改変され、例えば、「技術的に改変された抗体」を生じている誘導体を包含する。「技術的に改変された抗体」としては、例えば、合成された抗体、キメラ抗体もしくはヒト化抗体、またははこれらの混合物、あるいは、定常領域を部分的または全体的に欠如した抗体フラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、またはF(ab)’2など)が挙げられるがこれらに限定されない。これらの技術的に改変された抗体において、例えば、軽鎖および/または重鎖の一部が置換され得る。このような分子は、例えば、ヒト化された重鎖および改変されていない軽鎖(またはキメラ軽鎖)、あるいはヒト化された軽鎖および改変されていない重鎖(またはキメラ重鎖)からなる抗体を含み得る。用語Fv、Fc、Fd、Fab、Fab’またはF(ab)2は、先行技術(Harlow E. and Lane D., in "Antibodies, A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)に記載されているように使用される。この意味において、抗体の「誘導体」は、本発明に係る抗体全長が関与する機能的活性の1つ以上を含んでいる、タンパク質分解された分子をいう。よって、本発明に係る抗体誘導体は、アミノ酸30〜59(配列番号1)またはアミノ酸75〜104(配列番号2)を含むBet v1フラグメントに結合し得る。本発明に係る抗体はまた、任意のタイプの分子が抗体に共有結合されることによって改変されている誘導体を含む。抗体誘導体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化(pegylation)、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解的な消化、細胞性リガンドもしくは他のタンパク質への連結などによって改変された抗体を含むが、これらに限定されない。多くの化学的改変のいずれかが、公知の技術によって実施され得る。このような技術としては、特異的化学的消化、アセチル化、ホルミル化、チュニカマイシンの代謝的な合成などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、誘導体は、非古典的アミノ酸を1つ以上含み得る。本発明に係る誘導体はまた、アミノ酸30〜59(配列番号1)またはアミノ酸75〜104(配列番号2)を含むBet v1フラグメントになお結合し得るフラグメント(例えば、本発明に係る抗体のCDR領域)を含み得る。
【0013】
本発明に係る抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。このような抗体は、
特定の抗原に対する抗体の同種集団であり、細胞株の連続培養によって抗体分子の産生のために提供される任意の技術によって取得され得る。これらの技術としては、例えば、Koehler and Milsteinのハイブリドーマ技術(1975, Nature 256: 495-497 and U.S. Pat. No. 4,376,110)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al., 1983, Immunology Today 4: 72; Cole et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 2026-2030)、およびEBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc.,pp. 77-96)が挙げられる。このような抗体は、任意の免疫グロブリンクラス(IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびこれらの任意のサブクラス)であり得る。本発明に係る、ハイブリドーマが産生するmAbは、インビトロまたはインビボで培養され得る。高力価の抗体のインビボでの産生は、現在好ましい産生方法である。もちろん、真核生物細胞、酵母、昆虫および植物細胞、ならびに植物における組換え技術によって、モノクローナル抗体が産生されることもまた可能である。モノクローナル抗体の、上記細胞からの単離のための、上記発現系および方法は、当該分野において周知である。本発明に係る、Bet v1フラグメントに対するモノクローナル抗体が、Bet v1アレルゲン全体に曝露された哺乳動物に発現することによって産生されたポリクローナル抗血清(例えば、Focke et al., 2004)と同様の阻害を示すことは、非常に驚くべきことである。特に、ポリクローナル抗体が通常1つよりも多くのエピトープに指向することを考慮すると、驚くべきことである。モノクローナル抗体の産生は、抗血清から得られるポリクローナル抗体よりも、より均質でありかつ純度が高く、そして再現性をもって生成物を導く。
【0014】
Bet v1への曝露によって引き起こされたアレルギー疾患を処置および/または予防するために使用され得るモノクローナル抗体の産生に好適なペプチドの選択は些細なことではない。例えば、Lebeque et al. (1997)は、Bet v1に対して惹起した種々のモノクローナル抗体を用いて、Bet v1アレルゲンに対してアレルギーを示す患者からのIgEの、Bet v1に対する結合に対する効果を検証した。これらの研究は、Bet v1アレルゲンの領域に対して産生される抗体の特異性を議論することなく、特定のモノクローナル抗体が、Bet v1に対するIgE結合を低減させるよりもむしろ増強することを示している。従って、本発明に係る抗体が、野生型Bet v1へのIgEの結合を強く阻害することは、驚くべきことである。
【0015】
本発明に係る抗体、および該抗体を含むワクチン処方物は、アレルギー反応を処置するために用いられるだけでなく、このような反応を予防するためや、Bet v1アレルゲンに対して個体を感受性にするために使用され得る。子供または新生児がカバノキ花粉に接触する前に、本発明に係る抗体またはワクチン処方物を用いて、これらの子供または新生児にワクチン接種することもまた可能である。このようなアプローチは、上記子供または新生児において、Bet v1特異的IgE抗体を産生することを防止し、Bet v1に対して感受性になることを防止する。本発明に係る抗体を1〜3歳の子供に投与することは特に有利である。なぜなら、この年齢では、子供はカバノキ花粉アレルゲンに感作されていないからである。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、抗体は、IgG抗体であり、特に、IgG1アイソタイプまたはIgG4アイソタイプのIgG抗体である。
【0017】
Sellge et al.(Clin. Exp. Allergy (2005) 35: 774-781)は、肥満細胞または好塩基球を活性化する、より大きなアレルゲン凝集体の処方によって、Bet v1抗体に対するIgG抗体がアレルギー反応を増強されることを示している。Laffer et al. (J Immunol (1996) 157: 4953-4962)およびDenepoux et al. (FEBS letters (2000) 465: 39-46)に開示された実験によって、同様の結果が得られている。しかし、本発明に係る、Bet v1フラグメントに対するIgG抗体の使用は、これらの効果を示さなかった。従って、IgG抗体は、本発明に従って使用され得る。
【0018】
本発明に係る、より好ましい抗体は、ヒトIgG4またはマウスIgG4のような、非補体活性化抗体である。
【0019】
本発明に係る抗体は、好ましくは、マウス抗体またはヒト抗体である。
【0020】
本発明の別の実施形態において、抗体はキメラ抗体である。
【0021】
「キメラ抗体」の産生のために開発された技術(Morrison et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci., 81: 6851- 6855; Neuberger et al., 1984, Nature, 312: 604-608; Takeda et al., 1985, Nature, 314: 452-454)が使用され得る。これらの技術は、適切な抗原特異性を有するマウス抗体分子からの遺伝子を、適切な生物学的活性を有するヒト抗体分子からの遺伝子とともにスプライシングすることによる技術である。キメラ抗体は、異なる動物種、免疫グロブリンクラス、サブクラス(アイソタイプ)、タイプおよびサブタイプに由来する異なる部分から構成される一分子(例えば、マウスmAbに由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子)である。さらに、本発明に係るキメラ抗体は、1つより多い特異性(例えば、ダイアボディまたはテトラボディ)を含み得る。
【0022】
本発明に係る抗体は、好ましくはヒト化されている。
【0023】
非ヒト抗体の、より免疫原性の低いフラグメントを生成する、「ヒト化」のための方法は周知である。ヒト化抗体は、抗原認識部位、すなわち、相補性を決定する超可変領域(CDR)のみが非ヒト起源である抗体であり、可変ドメインの全てのフレームワーク領域(FR)がヒト遺伝子産物である。
【0024】
非ヒト抗体は、当該分野において公知の方法のいずれかによってヒト化され得る。1つの方法において、非ヒトCDRが、ヒト抗体または抗体フレームワークコンセンサス配列に挿入される。次いで、親和性または免疫原性を改変するために、さらなる変化が、抗体フレームワークに導入され得る。以下は、血清半減期を改善し、かつヒト宿主における免疫原性をより低くする(すなわち、ヒト抗体が非ヒト抗体に応答することを防ぐ)ために、カバノキ花粉アレルゲンのフラグメントに対するモノクローナル抗体を「ヒト化」することによって、ヒトにおける製薬としてこのモノクローナル抗体を改善するためのプロトコルである。ヒト化の原理は文献に記載されており、抗体タンパク質のモジュラー配置(modular arrangement)によって容易にされる。補体結合の可能性を最小化するために、IgG1アイソタイプのヒト化抗体が好ましい。例えば、ヒト化のレベルは、目的の非ヒト抗体タンパク質の可変ドメインをヒト抗体分子の定常領域とともに含んでいるキメラ抗体を生成することによって達成される(例えば、Morrison et al., Adv. Immunol., 1989, 44, 65-92)。Bet v1特異的抗体の可変ドメインは、目的のハイブリドーマから単離されたmRNAから生成されたcDNAよりクローニングされ得る。可変領域遺伝子フラグメントは、ヒト抗体定常ドメインをコードするエクソンに連結され、生じた構築物は、適切な哺乳動物宿主細胞(例えば、骨髄腫細胞またはCHO細胞)において発現される。優れたレベルのヒト化を達成するために、非ヒトモノクローナル抗体遺伝子の、抗原に結合する相補性決定領域(「CDR」)をコードする、可変領域遺伝子フラグメントの部分のみが、ヒト抗体配列中にクローニングされ得る(例えば、Jones et al., Nature, 1986, 321, 522-525, Riech-mann et al., Nature, 1988, 332, 323-327, Verhoeyen et al, Science, 1988, 239, 1534-36、およびTempest et al., Bio/Technology, 1991, 9, 266-71)。CDR3領域を取り囲むβシートフレームワークもまた、元々のモノクローナル抗体の抗原結合ドメインの三次元構造をより密接に反映するように改変され得る(Kettle-borough et al., Protein Engin., 1991, 4, 773-783、およびFoote et al., J. MoI. Biol., 1992, 224, 487-499を参照のこと)。代替のアプローチにおいて、目的の非ヒトモノクローナル抗体の表面が、例えば、部位特異的変異誘発法によって、非ヒト抗体の選択された表面残基を変更する一方で、非ヒト化抗体の内部の全ておよび接触する残基をそのままにしておくことによってヒト化されている(Padlan, Molecular Immunol, 1991, 28, 489-98)。
【0025】
本発明の別の局面は、Bet v1のフラグメントに結合する抗体またはそのフラグメントに関する。このBet v1フラグメントは、アミノ酸30〜59(配列番号1)またはアミノ酸75〜104(配列番号2)からなる。
【0026】
本発明に係る抗体は、好ましくは、ブダペスト条約の下で、2006年5月9日にDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen, Braunschweig, Germany)に寄託されたハイブリドーマ(受託番号DSM ACC2782、DSM ACC2783、DSM ACC2785、DSM ACC2784、およびDSM ACC2786が付与されている)によって分泌されるモノクローナル抗体である。
【0027】
本発明の別の局面は、本発明に係る抗体を含むワクチン処方物に関する。
【0028】
本発明の抗体は、哺乳動物、特に、ヒトに、種々の方法にて投与するために処方され得る。いくつかの実施形態において、抗体は、滅菌水溶液または生物学的な体液(例えば、血清)の形態である。水溶液は、緩衝化されていても緩衝化されていなくてもよく、さらなる活性成分または不活性成分を有していてもよい。さらなる成分としては、イオン強度を調節するための塩、保存剤(抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤などを含むがこれらに限定されない。)、および栄養素(グルコース、デキストロース、ビタミンおよびミネラル)が挙げられる。あるいは、抗体は、固体形態にて投与のために調製され得る。抗体は、多くの不活性なキャリアまたは賦形剤(例えば、以下が挙げられるがこれらに限定されない:結合剤(例えば、微結晶セルロース、ガムトラガカントまたはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトース);分散剤(例えば、アリジニン酸、プリモゲルまたはコーンスターチ);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム);滑剤(例えば、二酸化シリコンコロイド);甘味料(例えば、スクロースまたはサッカリン);または香味料(例えば、ペパーミントまたはサリチル酸メチル)と組み合わせられ得る。抗体またはその処方物は、その抗体を標的に送達するに効果的な任意の手段によって哺乳動物に投与され得る。このような手段としては、静脈内、筋肉内、皮下、経口、鼻腔内、経粘膜または経皮の投与形態が挙げられる。本発明に係る抗体またはワクチン処方物の局所投与が好ましい。リン酸緩衝化緩衝液(PBS)が、注入可能な処方物、または鼻腔内投与され得る処方物に好ましいキャリアである。薬学的に有効な量の治療剤を得るための抗体の用量決定は、種々の因子に依存する。例えば、患者の年齢、感受性、耐性、および他の特徴が、用量に影響する。さらに、使用される抗体の血漿レベルおよび半減期ならびにこれらの認識部位についての親和性、ならびに他の因子が、効果的な用量のために考慮されることが必要である。本発明に係る抗体の全身性投与のために、約1mg/kg患者/日〜約500mg/kg患者/日、好ましくは約5mg/kg患者/日〜約250mg/kg患者/日、より好ましくは約10mg/kg患者/日〜約100mg/kg患者/日の範囲の用量が使用され得る。しかし、投与の簡便さおよびコスト効率のためには、これらの範囲における最低限の用量が好ましい。用量は、例えば、抗体の特定の血漿レベル(例えば、約0.05〜200μg/ml、より好ましくは約0.1〜100μg/ml)を提供するために、そしてこのレベルを(例えば、一定期間、または臨床的な結果が得られるまで)維持するために、調整され得る。より緩やかに清浄化されることが期待されるキメラ抗体およびヒト化抗体は、効果的な血漿レベルを維持するためにより少ない用量が求められる。また、Bet v1フラグメントに対する高親和性を有する抗体は、好ましくは、より低い親和性の抗体よりも、低頻度または低用量で投与される。抗体の治療的に有効な用量が、処置の経過の間、アレルギー反応の低減を示すことによって決定され得る。好ましくは、本発明にかかるワクチン処方物および医薬は、花粉の季節の1週間前または2週間前までに個体に投与される。
【0029】
ワクチン処方物は、好ましくは筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与または経粘膜投与に適合される。
【0030】
本発明に係る処方物は、種々の方法で投与され得る。ここで、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与または経粘膜投与が好ましい。アミノ酸30〜59(配列番号1)またはアミノ酸75〜104(配列番号2)からなるBet v1フラグメントに特異的に結合する抗体は、カバノキ花粉アレルゲンBet v1によって引き起こされるアレルギー反応を処置または予防するために個体に投与され得る。特に、本発明に係る抗体の経粘膜投与が、伝統的な免疫化レジメンよりも多くの利点を有している。これらの中で最良の事項は、気道の局所的な粘膜免疫系をより効果的に刺激することであり、ワクチン取込み率が増加する見込みである。なぜなら、注射に関する恐怖や不安が避けられるからである。本発明に係る、アレルゲンに結合する抗体の使用は、アレルゲンに対するIgEの結合を阻害することによってアレルギー反応に対抗することを補助し得る。この阻害の結果として、アレルゲンとの接触の際に正常に増加するIgE産生が低減され得る。
【0031】
本発明の別の局面は、配列番号3〜298からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。
【0032】
配列番号3〜298のヌクレオチド配列は、単独でBet v1に結合し得るIgE分子の可変領域をコードする(すなわち、Bet v1アレルゲンに結合するポリペプチドをコードする)mRNAに由来する。
【0033】
本発明の別の局面は、配列番号3〜298からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるポリペプチドに関する。
【0034】
本発明のなお別の局面は、配列番号3〜298からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるポリペプチドを含む、抗体またはそのフラグメントに関する。
【0035】
本発明に係るポリペプチドおよび核酸分子は、抗体またはそのフラグメントに(例えば、分子生物学的な方法によって)含有され得、その結果、該抗体またはそのフラグメントは、例えば、Bet v1に対する受動免疫のために使用され得る。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4からなる群より選択される免疫グロブリンである。
【0037】
本発明の別の好ましい実施形態において、フラグメントは、面系グロブリンの定常領域、面系グロブリンの可変領域、単鎖Fv(scFv)、ダイアボディ(dsFv)、Fab、またはこれらの組合せである。
【0038】
本発明は、以下の実施例および図面によってさらに例証されるが、これらに限定されない。
【0039】
図1は、実験設計を示す。2群のBalb/cマウス(n=4/群)を、rBet v1/Al(OH)3を用いて、1日目、14日目および28日目にi.p.で感作した。36日目に血液を回収した(抗血清)。同日に、第一群は、rBet v1特異的IgGを用いてi.p.にて注入し、第二群は、無関係のアレルゲン(Phlp5)についてのIgGを得た。24時間後(37日目)に、血液を回収した(後血清)。
【0040】
図2は、rPhl p5特異的IgG抗体による、β−ヘキソサミニダーゼの放出の阻害を示す。漸増濃度のrPhl p5(0.02μg/ml〜0.5μg/ml)を、マウス抗血清および後血清とともに予めインキュベートし、RBL細胞に曝露し、そしてβ−ヘキソサミニダーゼの放出を測定した。β−ヘキソサミニダーゼの放出を、β−ヘキソサミニダーゼの総放出量のパーセントとして示した。
【0041】
図3は、rBet v1特異的IgG抗体によるβ−ヘキソサミニダーゼの放出の阻害を示す。漸増濃度のrBet v1(0.02μg/ml〜0.5μg/ml)を、マウス抗血清および後血清とともに予めインキュベートし、RBL細胞に曝露し、そしてβ−ヘキソサミニダーゼの放出を測定した。β−ヘキソサミニダーゼの放出を、β−ヘキソサミニダーゼの総放出量のパーセントとして示した。
【0042】
図4は、Bet v1に結合し得るIgE可変領域をコードするDNA配列を示す。
【0043】
〔実施例〕
〔実施例1:アレルゲンを特異的にブロックするIgG1抗体を分泌するハイブリドーマの生成および特徴付け〕
〔実施例1.1:アレルゲンをブロックするIgG1抗体を分泌するハイブリドーマの生成〕
リコンビナントのカバノキ花粉アレルゲンBet v1をE.coliに発現させて、既報(Hoffmann-Sommergruber et al., 1997)に記載されたように精製した。Applied Biosystems peptide synthesizer Model 433A(Foster City, CA, USA)でペプチドを合成した。キャリアへの結合を容易にするために、各合成ペプチドの元々の配列にシステイン残基を1つ付加している(Focke et al., 2004)。表1は、非アナフィラキシー性のBet v1由来の合成ペプチドの特徴付けを要約した。
【0044】
【表1】
合成ペプチド(ペプチド2(配列番号1)、ペプチド6(配列番号2))を、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH;MW 4.5×105〜1.3×107;Pierce, USA)に、製造業者のプロトコルに従って結合し、Conjugation Kit(Pierce)を用いて精製した。Balb/cマウス(Charles River, Germany)を、Al(OH)3(75μL/マウス)に吸着させたKLH結合ペプチド(30μg/mL/マウス)で3回免疫した(表2)。血清中のアレルゲン特異的IgG1の力価をEILSAによって決定した。
【0045】
【表2】
最終免疫の3日後に脾細胞を回収し、ハイブリドーマを、慣用的なハイブリドーマ技術(Koehler and Milstein, 1975)を若干改変した手順によって、HAT感受性の、非分泌性ミエローマ細胞株X63Ag8.653(Kearney et al., 1979)を融合パートナーとして用いて惹起した。ミエローマを、L−グルタミン(200mM)、10%FBS、ファンギゾン(200U/mL)およびペニシリン/ストレプトマイシン(10000U/mL)を補充したRPMI1640からなるハイブリドーマ増殖培地中で、増殖させた。マウスの脾臓を、記載されているように除去し、細胞を、無血清ハイブリドーマ増殖培地中に懸濁した。1750rpm(4℃で5分間)にて遠心分離した後、赤血球を、溶解緩衝液(8.3g/L塩化アンモニウム、1.0g/L二酸化カリウム、0.037g/L EDTA三ナトリウム(pH7.4))にて室温で2分間溶解し、1750rpm(4℃で5分間)での遠心分離によって細胞を3回洗浄した。毎回、細胞ペレットを、無血清ハイブリドーマ増殖培地で緩やかに再懸濁した。次いで、生存可能な脾細胞およびミエローマ細胞(対数増殖期にある)を、2:1(脾細胞:ミエローマ)の割合で一緒に混合し、遠心分離した後に、1.5mLの、予め暖めておいた(37℃)41.3%w/vポリエチレングリコール(PEG)4000を添加し、細胞ペレットを1分間緩やかに攪拌した。次いで、細胞を、800rpm(4℃で5分間)遠心分離し、フィーダー細胞を補充したHAT培地中に懸濁し、96ウェルプレートに播種し、CO2インキュベータ(5%)中にて37℃でインキュベートした。細胞を約2週間増殖させ、培養上清を酵素免疫アッセイにおける抗体産生についてスクリーニングした。
【0046】
ELISAプレートを、4℃で一晩のインキュベートによって、PBSで希釈したrBet v1(10μg/mL)でコートした。PBE−T(PBS+0.05% Tween 20)中0.5%w/vBSAで、37℃で1時間ブロッキングした後、プレートを、希釈していないハイブリドーマ上清とともにインキュベートし、37℃で2時間反応させた。検出のために、プレートを、1:1000に希釈した一次抗体(精製したラット抗マウスIgG1)とともに、37℃で2時間インキュベートし、1:2000に希釈した酵素標識二次抗体(西洋ワサビペルオキシダーゼが種特異的抗体全長に連結した抗ラットIgG)とともに、37℃および4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション工程の間、プレートを、PBS−Tで繰り返し洗浄した。最終的に、プレートを、ABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)二アンモニウム塩(Sigma-Aldrich)とともに室温でインキュベートし、405nmで吸光度を測定した。Bet v1に特異的なIgG1抗体ハイブリッドを分泌する細胞を、限定希釈法によってクローニングした。すなわち、陽性ハイブリドーマを拡張し、単一クローン性を確認するためにサブクローニングし、そして低温保存した。
【0047】
〔実施例1.2:アレルゲンを特異的にブロックするIgG1抗体を分泌するハイブリドーマの特徴付け〕
ELISAによって得られたモノクローナルIgG1抗体の結合特異性を詳細に特徴付けるために、マイクロタイタープレートを、PBSで希釈したrBet v1(5μg/mL)、ペプチド2(aa30−59)、ペプチド6(aa75−104)、Bet v1トリマー、Bet v1フラグメント(aa1−74)、Bet v1フラグメント2(aa75−160)、KLHおよびrPhl p1でコートした。PBS−T(PBS+0.05% Tween20)中0.5%w/v BSAを添加することによって、37℃で1.5時間ブロッキングし、その後、希釈していないハイブリドーマ上清を添加して37℃で2時間インキュベートした。mAbの特異的結合を、一次抗体、引き続く二次抗体(上述したように酵素標識した抗体)を用いて検出した。
【0048】
カバノキ花粉アレルギー患者からの44個の血清(総IgEレベル:24.1→5000kUA/L;カバノキ花粉特異的IgE:10.7→100kUA/L)を、病歴に従って選択し、非アレルギー患者からの血清を、コントロール目的で含ませた。カバノキ花粉アレルギー患者群は、19名の女性および25名の男性(平均年齢37歳(21〜70歳))からなる。表3は、選択されたカバノキ花粉アレルギー患者からの血清の特徴付けを要約する。
【0049】
【表3】
表6−9に示すように、個体を番号付けした。人口統計データは、阻害実験に用いられたカバノキ花粉アレルギー患者の性別および年齢を示す。血清学的な特徴付けは、総IgE、カバノキ花粉特異的IgEおよびRASTクラスを示す。NSは、特定されていない。
【0050】
ELISAプレートを、rBet v1(1μg/mL)を用いて4℃で一晩コートした。PBS−T(PBS+0.05% Tween20)中0.5%w/vのBSAでブロッキングした後、プレートを、希釈していない、単一のクローン(クローン2(DSM ACC2782)、クローン4(DSM ACC2783)、クローン10(DSM ACC2785)、クローン12(DSM ACC2784)、クローン13(DSM ACC2786))および混合したクローン(クローン2およびクローン13)、IgG1抗体産生ハイブリドーマ培養上清を用いて、4℃で一晩プレインキュベートした。最終的に、プレートを1:5に希釈した、44名のカバノキ花粉アレルギー患者からの血清とともにインキュベートし(4℃で一晩)、結合したIgE抗体を、1:1000に希釈したアルカリホスファターゼ結合マウスモノクローナル抗ヒトIgE抗体で検出した。インキュベーション工程の間、PBS−Tでプレートを繰り返し洗浄した。IgG1モノクローナル抗体でのプレインキュベーションの後の、rBet v1に対するIgE結合の阻害の割合(%阻害)を、以下のように算出した:%阻害=100−(ODp×100/ODnp)。ODpおよびODnpは、それぞれ、ハイブリドーマ培養上清あり(ODp)およびハイブリドーマ培養上清なし(ODnp)でのプレインキュベーション後の吸光度を示す。
【0051】
〔実施例1.3:結果〕
融合した脾細胞のプレーティングおよびインキュベーションの後に、マイクロタイターウェルからの各上清を、上述したようにELISAによって分析し、免疫反応性のハイブリドーマを単離した。さらに、陽性ハイブリドーマの増殖(propagation)は、14個の、安定かつモノクローナルなペプチド特異的抗体の選択をもたらした。これらのモノクローナル抗体のそれぞれが、IgG1アイソタイプに属し、κ軽鎖を発現している。表4は、得られたクローンのリストである。クローン2、4、10、12および13を、ブダペスト条約の下で、2006年5月9日にDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen, Braunschweig, Germany)に寄託し、それぞれに受託番号DSM ACC2782(クローン2)、DSM ACC2783(クローン4)、DSM ACC2785(クローン10)、DSM ACC2784(クローン12)、およびDSM ACC2786(クローン13)が付与されている。
【0052】
【表4】
14個のペプチド特異的抗体産生クローンを、rBet v1、Bet v1ペプチドおよびBet v1誘導体(例えば、Bet v1トリマー(共有結合した3つのBet v1コピー(Vrtala et al., 2001)))、ならびに2つのrBet v1フラグメント(Bet v1のaa1−74(1)からなるフラグメントおよびaa75−160(2)からなるフラグメント(Vrtala et al., 2000))に対するそれぞれの結合特異性について、さらに試験した。さらに、ネガティブコントロール(例えば、KLHおよびrPhl p1)に対する、上記モノクローナル抗体の結合を決定した。表5は、14個のモノクローナル抗体の結合特性を要約している。14個のペプチド特異的抗体のいずれもが、KLHまたはrPhl p1に対する反応性を示さなかった。しかし、これらの全てが、rBet v1およびBet v1トリマーに対して強い反応性を示した。免疫原に従って、クラス番号1−11は、ペプチド2(aa30−59)特異的抗体を産生し、ペプチド2に対する抗体反応性を示したが、ペプチド6(aa72−104)とは反応し、一方、ペプチド6(aa72−104)特異的抗体は、クローン番号12−13によって産生され、免疫原への結合を示したが、ペプチド2(aa30−59)に対して結合しなかった。Bet v1フラグメント1(aa1−74)およびフラグメント2(aa75−106)を用いたさらなる実験によって、ペプチド2特異的抗体(クローン1−11)がフラグメント1(aa1−74)に対する反応性を示したが、ペプチド6特異的抗体(クローン12−13)はフラグメント2(aa75−160)に対する反応性を示した。
【0053】
【表5】
表6は、上記モノクローナル抗体が、Bet v1交差反応性アレルゲン(例えば、ハンノキ花粉からのメジャーアレルゲン(Aln g1)またはリンゴからのメジャーアレルゲン(Mal d1))に対する、アレルギー患者IgEの結合を阻害することを示している。
【0054】
【表6】
カバノキ花粉アレルギー患者からの血清についての、IgG1 mAb(クローン2、4、10)を用いて得られた、完全なrBet v1に対するIgE結合の%阻害を示す。平均%阻害を表の下に示す。
【0055】
44名のカバノキ花粉アレルギー患者からの血清を用いて、ペプチド特異的抗体が、完全なrBet v1に対するアレルギー患者IgEの結合を阻害する能力を、ELISA相補実験によって決定した(表7−9)。患者IgEに曝露する前のrBet v1とのプレインキュベーションのために、全部で14個のクローンのうち5つを選択した。ペプチド6(aa75−104)特異的抗体を用いたプレインキュベーションの後にIgE結合が最も阻害されたことを観察した(クローン12:60.4%−74.8%平均阻害;クローン13;58.5%−72.6%平均阻害)。一方、ペプチド2(aa30−59)特異的抗体もまた、程度が低いとはいえ、rBet v1に対する患者IgE結合を阻害した(クローン2:46.2%−62.7%平均阻害;クローン4;44.3%−58.7%平均阻害;クローン10;41.0%−52.4%平均阻害)。驚くことに、ペプチド2特異的モノクローナル抗体(クローン2)とペプチド6特異的モノクローナル抗体との混合物は、単一のモノクローナル抗体のみよりもIgE結合を強く阻害した(表7−9)。
【0056】
【表7】
10名のカバノキ花粉アレルギー患者(a1−a10)からの血清、およびコントロールとしての非アレルギー患者からの血清について、IgG1 mAb(クローン2、4、10、12、13)を用いて得られた、完全なrBet v1に対するIgE結合の%阻害を示す。平均%阻害を表の下に示す。
【0057】
【表8】
34名のカバノキ花粉アレルギー患者(b1−b34)からの血清、およびコントロールとしての非アレルギー患者からの血清について、IgG1 mAb(クローン2、4、10、12、13)を用いて得られた、完全なrBet v1に対するIgE結合の%阻害を示す。平均%阻害を表の下に示す。
【0058】
【表9】
10名のカバノキ花粉アレルギー患者(a1−a10)からの血清について、単一のIgG1 mAb(クローン2、クローン13)を用いて得られた、完全なrBet v1に対するIgE結合の%阻害を、IgG1 mAb混合物(クローン2/13mix)による阻害と比較して示す。平均%阻害を表の下に示す。
【0059】
アレルギー反応における重要な事象は、多価アレルゲンによるIgE抗体が結合したエフェクター細胞の架橋である。これにより、顆粒のエキソサイトーシスおよび生物学的メディエータ(すなわち、ヒスタミン、ロイコトリエン)の放出が引き起こされ、これらは、次いで即時型アレルギー性炎症を引き起こし、次いで、アレルギー性鼻炎、結膜炎、喘息を引き起こす。この局面において、アレルゲン−IgE抗体相互作用は、アレルゲンとIgE抗体との間の相互作用を阻害することを目的とする、アレルゲン特異的な受動免疫治療の標的であり得る(Valenta et al., 1998)。このために、特定の治療形態を開発するためには、IgEエピトープの定義付けは重要な必要条件である。連続的なIgEエピトープを有するメジャーアレルゲン(例えばPhl p1)の場合において、アレルゲンをIgE結合ハプテンに寸断することが可能である。ハプテンは、アレルゲン曝露前にIgEが結合したエフェクター細胞を飽和させ、これにより、架橋およびエフェクター細胞活性化を防ぐ(Ball et al., 1994)(チャプター1:ハプテンの原理もまた参照のこと)。対照的に、カバノキ花粉のメジャーアレルゲンであるBet v1のIgEエピトープは、主に立体配座型(非連続型)に属する。この場合、アレルゲン−IgE抗体相互作用は、アレルゲン上の結合部位を患者IgEと競合する、治療的なアレルゲン特異的抗体でブロックされ得る。このような治療的アプローチは、患者が、少数のメジャーアレルゲンにのみ感受性である場合に、特に適切である。
【0060】
本実施例において、14個のモノクローナルBet v1ペプチド特異的抗体(これらの全てがIgG1サブクラスに属する。)は、それらのエピトープ特異的結合特性について、ならびに、Bet v1アレルゲンに結合するアレルゲン患者のIgEと干渉する能力について、特徴付けられる。
【0061】
これらのペプチドの結合特性に従って、モノクローナル抗体は、二群に分けられ得る:第1群(クローン1−11)、ペプチド2(aa30−59)を強く認識するモノクローナル抗体;第2群(クローン12−13)、ペプチド6(aa75−104)を強く結合するモノクローナル抗体。全てのモノクローナル抗体が、rBet v1およびrBet v1トリマーを強く結合し、特異性を示した。なぜなら、これらは、無関係のコントロールペプチド(例えばKLHおよびrPhl p1)を認識しなかったからである。
【0062】
Bet v1に対する患者IgEの結合を干渉することについて試験した場合、モノクローナル抗体の各々が、IgE結合を実質的な程度まで(いくつかにおいては、特定の患者における94%まで)阻害した。驚くことに、これらの結果は、単一のモノクローナル抗体が、患者のポリクローナルなIgE結合を競合するに十分であることを示した。ペプチド6特異的なモノクローナル抗体は、ペプチド2特異的なモノクローナル抗体と比較して、より強力な阻害能力を示した。
【0063】
異なるエピトープ特異性を有する個々のモノクローナルIgG抗体(クローン2:ペプチド2特異的;クローン13:ペプチド6特異的)の阻害能力を、異なる特異性を有する2つの抗体の混合物と比較すると、抗体混合物を用いた場合には、患者IgE結合の阻害がもはや強くなかった。
【0064】
基本的には、これらのペプチド特異的IgG1抗体のブロック活性について、2つの解釈が考えられ得る。第一に、この阻害は、得られたモノクローナル抗体が、Bet v1のIgE結合主要部位内の、または該結合部位に非常に近接したエピトープを認識するという事実によって説明され得る。第二に、このブロック活性は、アレルゲンのコンフォーメーションの改変によって生じ得、その結果、IgEエピトープまたはそのほんの一部が、もはやIgEに接近し得ない。よりよい解釈は、異なるエピトープ特異性を有する2つのペプチド特異的モノクローナル抗体の混合物が、個々のモノクローナル抗体よりもIgE結合のより強い阻害をもたらさなかったことを示す、阻害実験の結果に合致する。この論理は、アレルゲン−抗体複合体の構造分析のよって確認され得る。
【0065】
治療能力を有するいくつかのヒトモノクローナル抗体およびマウスモノクローナル抗体が、供給源としてのアレルギー患者または免疫化したマウスからのB細胞を用いる、古典的な組織培養およびコンビナトリアルクローニング技術によってすでに単離されている(Sun et al., 1995; Visco et al., 1996; Lebeque et al., 1997; Flicker et al., 2002)。これらの抗体は、アレルゲン−IgE相互作用を阻害し得、そしてアレルゲン誘導性の好塩基球脱顆粒を防ぎ得る。
【0066】
また、Bet v1特異的ヒトブロック抗体が、免疫療法によって処置された患者からのハイブリドーマ細胞株の生成によってすでに産生されている(Visco et al., 1996)。Bet v1特異的マウスモノクローナル抗体が、古典的なハイブリドーマ技術によって単離されている(Lebeque et al., 1997)。これまでにすでに取得されているBet v1特異的モノクローナル抗体と比較して、本実施例に記載の抗体は、特定のアミノ酸配列を有するBet v1由来ペプチドで免疫化したマウスから単離されており、これにより、手順の開始時にはすでに特異的エピトープを決定している。
【0067】
上述したようなブロック抗体はまた、これらの免疫原性を低減するために、ヒト化されてもよく、リコンビナント抗体フラグメントとして生成されてもよい。治療的なアレルゲン特異的抗体は、アレルゲンの侵入に対する適切な防御ラインを形成するために、アレルギーの標的器官(例えば、鼻内、または気管支粘膜、結膜)に局所的に、または全身性に(例えば、受動ワクチン)投与され得る(Valenta et al., 1997)。
【0068】
結論として、本発明に係るモノクローナル抗体はまた、局所的な治療または受動ワクチン接種による、標的器官におけるアレルゲン誘導性のメディエータ放出の防御に使用され得る。
【0069】
〔実施例2〕
アレルゲン特異的IgG抗体を用いた受動ワクチン接種の効果をインビボで検証するためのモデルマウスを樹立した(図1)。
【0070】
マウス(Charles Rive, Germany)を、Al(OH)3(Alu-Gel-S; Serva, Germany)に吸収させた、カバノキ花粉のメジャーアレルゲンであるrBet v1(Biomay, Austria)5μgで、1日目、14日目および28日目に腹腔内にて感作した。血液サンプル(抗血清)を、感作したマウスの尾静脈から36日目に採取した。Bet v1に対するアレルギー性の感作を、上記血清におけるBet v1特異的IgE抗体の測定によって確認した(Vrtala et al., 1998)。8つ全ての血清のBet v1特異的IgEレベルを比較した(表10、抗血清)。
【0071】
次いで、マウスを二群に分けた:第1群を、0.5mLのBet V1特異的IgGでi.p.処置した。第2群(コントロール群)に、無関係のアレルゲンであるPhl p5に対するIgG(0.5mL)を注入した。37日目に、両群のマウスの尾静脈から血液を採取した(後血清(post−serum))。rBet v1に対するIgE反応性を、抗血清のものと比較した。この目的のために、5μg/mLのrBet v1を、ELISAプレート上に一晩コーティングし、プレートを3% BSA/TBST(50mM Tris、150mM NaCl、0.5%w/v BSA、0.05%v/v Tween)でブロッキングした。マウス血清を、TBSTで1:10に希釈し、一晩インキュベートし、結合したIgEを、モノクローナルラット抗マウスIgE抗体(BD Pharmingen; USA)およびHRP標識化ヤギ抗ラット抗血清(Amersham, U.K.)を用いてそれぞれ検出した。表10は、10%未満のワクチン接種での2連の決定の代表的な平均を示す。カラム1および2は、IgGでの処置前(抗血清)および処置後(後血清)におけるrBet v1に対するマウスのIgE結合を示す。後血清におけるrBet v1に対するIgE結合の%阻害(第3カラム)を、以下のように算出した:%阻害=100−OD後血清×100/OD抗血清。阻害の割合は、23.4%〜54.6%の間の範囲であった(表10)。
【0072】
表10は、rBet v1特異的IgG抗体による、rBet v1に対するマウスIgE結合の阻害を示す。rBet v1特異的IgGまたはPhl p5特異的IgGでの処置の前(抗血清;第1カラム)および処置の後(後血清;第2カラム)における、rBet v1に対するIgE結合を示した。後血清のIgE結合の%阻害を、第3カラムに示した。
【0073】
【表10】
rBet v1に対するIgE結合の阻害は、Phl p5に対する特異性を有するIgGが得られた第2群のマウスにおいてほとんど観察されなかった。Phl p5アレルギーマウスについて同様の実験が行われ、Phl p5特異的IgGでの処置によって達成されたIgE結合の%阻害は、7.7〜58%の範囲であった(表11)。
【0074】
表11は、rPhl p5特異的IgG抗体による、rPjl p5に対するマウスIgE結合の阻害を示す。rPhl p5に対するIgE結合(ODレベル)を、rPhl p5特異的IgGまたはrBet v1特異的IgGでの処置前(抗血清;第1カラム)および処置後(後血清;第2カラム)に示した。後血清のIgE結合の%阻害を、第3カラムに示す。
【0075】
【表11】
アレルゲン特異的IgG抗体がアレルゲン誘導性の即時型アレルギー反応を阻害し得るか否かを、ラット好塩基球(RBL)からのβ−ヘキソサミニダーゼ放出アッセイを用いて分析した。RBL−2H3細胞(Eccleston et al., 1973)を、96ウェル組織培養プレートにプレーティングし(4×104個/ウェル)、5%CO2下にて37℃で24時間培養した。これらの細胞を、Tyrode's Buffer(Sigma-Aldrich, Austria)(137mM NaCl、2.7mM KCl、0.5mM MgCl2、1.8mM CaCl2、0.4mM NaH2PO4、5.6mM D−グルコース、12mM NaHCO3、10mM N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、および0.1%w/v BSA(pH7.2))で2回洗浄した。異なる濃度のアレルゲン(0.5μg/mL;0.1μg/mL;0.02μg/mL)を、マウス抗血清およびマウス後血清(Tyrode's Bufferにて1:10に希釈した)とともにインキュベートした。アレルゲン/IgE複合体およびアレルゲン/IgG複合体を、RBL細胞に曝露し、37℃で湿潤環境下にて2時間インキュベートした。β−ヘキソサミニダーゼ放出のレベルを、蛍光顕微鏡(CYTO FLUORTM 2350, Millipore, USA)で測定した。1%v/v Triton X−100の添加によって得られたβ−ヘキソサミニダーゼ総放出のパーセントとして結果を示した。図2および3は、細胞をアレルゲン+後血清とともにインキュベートした際のRBL細胞のβ−ヘキソサミニダーゼ放出が、アレルゲン+後血清と比較して低いことを示している。
【0076】
さらなる実験において、ブロック抗体の概念を、別の重要な季節性のアレルゲンであるグラス花粉のメジャーアレルゲンPhl p1、通年性のアレルゲンであるDer p2、ハウスダストからのメジャーアレルゲン、およびサカナのメジャーアレルゲンであるCyp c1に拡張した。さらに、単一のIgG抗体投与の、アレルゲン特異的マウスIgE結合に対する長期効果を調べた。
【0077】
表12は、rPhl p1特異的IgG抗体による、IgG投与3週間後のrPhl p1に対するマウスIgE結合の%阻害を示す。後血清の阻害の割合は、63.3〜39.5%の範囲である。Der p2で感作したマウスについて同様の実験を行い、rDer p2特異的IgGでの処置によって達成された%阻害は、63.5〜27.5%の範囲であった(表13)。rCyp c1で感作したマウスについて、特異的IgE結合の阻害の割合は、59.8〜36%に達した(表14)。
【0078】
〔表12:rPhl p1特異的IgG抗体による、rPhl p1に対するマウスIgE結合の阻害〕
Phl p1に対する後血清のIgE結合のパーセントを、rPhl p1特異的IgG(第1群)またはBet v1特異的IgG(第2群)での処置後の、異なる時点で示した。抗血清のIgE結合を、100%反応として算出した。
【0079】
【表12】
【0080】
〔表13:rDer p2特異的IgG抗体による、rDer p2に対するマウスIgE結合の阻害〕
Der p2に対する後血清のIgE結合のパーセントを、rDer p2特異的IgG(第1群)またはBet v1特異的IgG(第2群)での処置後の、異なる時点で示した。抗血清のIgE結合を、100%反応として算出した。
【0081】
【表13】
【0082】
〔表14:rCyp c1特異的IgG抗体による、rCyp c1に対するマウスIgE結合の阻害〕
Cyp c1に対する後血清のIgE結合のパーセントを、rCyp c1特異的IgG(第1群)またはBet v1特異的IgG(第2群)での処置後の、異なる時点で示した。抗血清のIgE結合を、100%反応として算出した。
【0083】
【表14】
【0084】
〔実施例3〕
他のBet v1特異的抗体を得るために、IgE応答が排他的にカバノキ花粉メジャーアレルゲンBet v1を指向している患者を同定した。そのIgE可変領域のDNA配列を、ファミリー特異的プライマー(VH1−VH6)を第1定常ε領域に位置されるプライマーとともに用いた逆転写およびPCRに供した上記患者より得た。上記アレルギー患者の、合計336個のBet V1特異的重鎖可変配列を同定した(図4)。これは、Bet v1のIgEエピトープを認識し、ブロック抗体として反応する。
【0085】
〔花粉数、アレルギー患者の特徴付け〕
500名のアレルギー患者のうち、カバノキ花粉に対して排他的なアレルギー感受性を有している6名を、46種のアレルゲン供給源(ハンノキ花粉、アーモンド、アルテルナリア、リンゴ、菌類(Aspergillus)、カバノキ花粉、ニンジン、カゼイン、ネコ皮膚あか(dander)、セロリ、クラドスポリウム、ゴキブリ、タラ、ダニ(Dermatophagoides farinae)、ダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)、イヌ皮膚あか、グラス混合物、モルモット皮膚あか、ハムスター皮膚あか、カシバミ花粉、ハシバミ、ウマ皮膚あか、トショウ、ラテックス、乳タンパク質、ヨモギ、オリーブの木、ヒカゲミズ(Parietaria)、モモ、ピーナッツ、ペニシリン、マツ混合物、プランタン、羽毛混合物、ジャガイモ、ウサギ、ブタクサ、ライムギ、ライムギの花、ゴマ、エビ、ダイズ、トマト、クルミ、コムギコ、全卵)を含む、マルチアレルゲン試験システム(MAST CLA アレルゲン特異的IgEアッセイ、Hitachi Chemical Diagnostics)を用いて同定した。6名のアレルギー患者からの血液サンプルを、2002年および2005年の春および夏に得た。各地点(appointment)において、血漿中のBet v1特異的IgEレベルを、CAP-RAST測定(Phadia)によって定量し、アレルギー症状および抗アレルギー剤を記録した。選択された患者はいずれも、任意の種類のアレルゲン特異的免疫療法を受けなかった。
【0086】
個体の居住地域におけるカバノキ花粉曝露を、Drachenberg KJ et al., Allergy 56 (2001): 498-505に記載されているように記録した。
【0087】
〔アレルゲン特異的IgE抗体の同定〕
選択されたアレルギー患者のアレルゲンプロファイルを特定するために、リコンビナントBet v1を用いた阻害実験を行った。リコンビナントBet v1(Biomayより購入)を、製造業者の指示書に従って、5mgタンパク質/mL媒体の濃度で、CNBr活性化セファロース4B(GE Healthcare Bio-Sciences AB)に結合させた。6名のアレルギー患者の血漿1500μLを、500μLのアレルゲン結合ゲルとともに、4℃で一晩360°(end−over−end)の旋回によってインキュベートした。遠心分離(5000g、4℃で5分間)によって血清を回収した。食物アレルゲン混合物(卵白、乳タンパク質、タラ、コムギコ、ピーナッツおよびダイズ)および呼吸器系(respiratory)混合物(ヨモギ、カバノキ花粉、ヒカゲミズ、オオアワガエリおよびオオバコ)に対するIgEレベル、ならびにカバノキ花粉抽出物に対するIgEレベルを、CAP-RAST測定(Phadia)による枯渇の前および後に測定した(Eibensteiner P et al., Immunology 101 (2000): 112-9)。カバノキ花粉におけるBet v1に対して排他的に反応した3名の患者を用いて、さらなる実験を行った。
【0088】
〔PBMC単離およびIgE転写物のRT−PCR増幅〕
血清収集時に、末梢単核細胞を、Ficoll密度勾配遠心分離によって単離した。細胞性の総RNAを、グアニジンイソチオシアネート法およびCsCl勾配遠心分離を用いて単離した。
【0089】
VH1−VH6ファミリー特異的プライマーをIgE重鎖の第1定常領域に特異的なプライマーとともに使用して、IgE転写物を、Platinum Taq(登録商標)(Invitrogen)を用いたSuperScriptTM一工程RT−PCRによって生成した(表15)。
【0090】
【表15】
PCR増幅手順は、47℃で30分間および94℃で5分間の第1工程に続いて、94℃で20秒間、59℃で30秒間、72℃で1分間を40サイクル、さらに72℃で5分間の最終伸長からなる。予想したサイズのPCR産物の全てを、製造業者の指示書に従ってWizard(登録商標)SV GelおよびPCR Clean-Up System(Promega)を用いて、アガロースゲル精製した。続いて、cDNAを、AccepTorTMベクター(Novagen)にクローニングし、E.coli XL1−blueに形質転換した。3mLの一晩培養物(100μg/mLのアンピシリンを含む)から、Wizard(登録商標) Plus SV Miniprep DNA Purification System(Promega)を用いて、プラスミドDNAを精製し、制限酵素KpnIおよびSacI(Roche)を用いて消化した。正しいサイズの挿入物を有しているプラスミドを、Microsynth AG(Switzerland)によって配列決定した。
【0091】
〔参考文献〕
【0092】
【化1】
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、実験設計を示す図である。
【図2】図2は、rPhlp5特異的IgG抗体による、β−ヘキソサミニダーゼの放出の阻害を示す図である。
【図3】図3は、rBet v1特異的IgG抗体による、β−ヘキソサミニダーゼの放出の阻害を示す図である。
【図4】図4は、Bet v1に結合し得るIgE可変領域をコードするDNA配列を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の受動免疫についての医薬を製造するための、抗体またはその誘導体の使用であって、
該医薬は、該個体においてカバノキ花粉アレルゲンへの曝露によって引き起こされたアレルギー反応を予防および/または処置するための医薬であり、
該抗体は、アミノ酸30〜59(配列番号1)またはアミノ酸75〜104(配列番号2)を含んでいるBet v1フラグメントに結合する
ことを特徴とする、使用。
【請求項2】
前記抗体が、IgG抗体、特にIgG1アイソタイプまたはIgG4アイソタイプのIgG抗体である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記抗体がマウス抗体である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記抗体がキメラ抗体である、請求項1または3に記載の使用。
【請求項5】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用であって、
前記抗体が、ブタペスト条約の下で2006年5月9日にDSMZに寄託された、受託番号DSM ACC2782、DSM ACC2783、DSM ACC2785、DSM ACC2784、およびDSM ACC2786によって示されるハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体である
ことを特徴とする、使用。
【請求項8】
アミノ酸30〜59(配列番号1)またはアミノ酸75〜104(配列番号2)からなるBet v1フラグメントに結合する、抗体またはその誘導体。
【請求項9】
IgG抗体、特にIgG1アイソタイプまたはIgG4アイソタイプのIgG抗体である、請求項8に記載の抗体またはその誘導体。
【請求項10】
マウス抗体である、請求項8または9に記載の抗体またはその誘導体。
【請求項11】
キメラ抗体である、請求項8または10に記載の抗体またはその誘導体。
【請求項12】
ヒト化抗体である、請求項8〜11のいずれか1項に記載の抗体またはその誘導体。
【請求項13】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項8〜12のいずれか1項に記載の抗体またはその誘導体。
【請求項14】
請求項8〜12のいずれか1項に記載の抗体またはその誘導体であって、
前記抗体が、ブタペスト条約の下で2006年5月9日にDSMZに寄託された、受託番号DSM ACC2782、DSM ACC2783、DSM ACC2785、DSM ACC2784、およびDSM ACC2786によって示されるハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体である
ことを特徴とする、抗体またはその誘導体。
【請求項15】
請求項8〜14のいずれか1項に記載の抗体を含んでいる、ワクチン処方物。
【請求項16】
筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与または粘膜投与のために適合される、請求項15に記載のワクチン処方物。
【請求項17】
配列番号3〜298からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含んでいる、核酸分子。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸分子によってコードされる、ポリペプチド。
【請求項19】
請求項18に記載のポリペプチドを含んでいる、抗体またはそのフラグメント。
【請求項20】
IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4からなる群より選択される免疫グロブリンである、請求項19に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項21】
請求項18または19に記載の抗体またはそのフラグメントであって、
該フラグメントが、免疫グロブリンの定常領域、免疫グロブリンの可変領域、単鎖Fv(scFv)、ダイアボディ(dsFv)、Fab、またはこれらの組合せである
ことを特徴とする、抗体またはそのフラグメント。
【請求項1】
個体の受動免疫についての医薬を製造するための、抗体またはその誘導体の使用であって、
該医薬は、該個体においてカバノキ花粉アレルゲンへの曝露によって引き起こされたアレルギー反応を予防および/または処置するための医薬であり、
該抗体は、アミノ酸30〜59(配列番号1)またはアミノ酸75〜104(配列番号2)を含んでいるBet v1フラグメントに結合する
ことを特徴とする、使用。
【請求項2】
前記抗体が、IgG抗体、特にIgG1アイソタイプまたはIgG4アイソタイプのIgG抗体である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記抗体がマウス抗体である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記抗体がキメラ抗体である、請求項1または3に記載の使用。
【請求項5】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用であって、
前記抗体が、ブタペスト条約の下で2006年5月9日にDSMZに寄託された、受託番号DSM ACC2782、DSM ACC2783、DSM ACC2785、DSM ACC2784、およびDSM ACC2786によって示されるハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体である
ことを特徴とする、使用。
【請求項8】
アミノ酸30〜59(配列番号1)またはアミノ酸75〜104(配列番号2)からなるBet v1フラグメントに結合する、抗体またはその誘導体。
【請求項9】
IgG抗体、特にIgG1アイソタイプまたはIgG4アイソタイプのIgG抗体である、請求項8に記載の抗体またはその誘導体。
【請求項10】
マウス抗体である、請求項8または9に記載の抗体またはその誘導体。
【請求項11】
キメラ抗体である、請求項8または10に記載の抗体またはその誘導体。
【請求項12】
ヒト化抗体である、請求項8〜11のいずれか1項に記載の抗体またはその誘導体。
【請求項13】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項8〜12のいずれか1項に記載の抗体またはその誘導体。
【請求項14】
請求項8〜12のいずれか1項に記載の抗体またはその誘導体であって、
前記抗体が、ブタペスト条約の下で2006年5月9日にDSMZに寄託された、受託番号DSM ACC2782、DSM ACC2783、DSM ACC2785、DSM ACC2784、およびDSM ACC2786によって示されるハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体である
ことを特徴とする、抗体またはその誘導体。
【請求項15】
請求項8〜14のいずれか1項に記載の抗体を含んでいる、ワクチン処方物。
【請求項16】
筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与または粘膜投与のために適合される、請求項15に記載のワクチン処方物。
【請求項17】
配列番号3〜298からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含んでいる、核酸分子。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸分子によってコードされる、ポリペプチド。
【請求項19】
請求項18に記載のポリペプチドを含んでいる、抗体またはそのフラグメント。
【請求項20】
IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4からなる群より選択される免疫グロブリンである、請求項19に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項21】
請求項18または19に記載の抗体またはそのフラグメントであって、
該フラグメントが、免疫グロブリンの定常領域、免疫グロブリンの可変領域、単鎖Fv(scFv)、ダイアボディ(dsFv)、Fab、またはこれらの組合せである
ことを特徴とする、抗体またはそのフラグメント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公表番号】特表2009−537117(P2009−537117A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510228(P2009−510228)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国際出願番号】PCT/AT2007/000238
【国際公開番号】WO2007/134350
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(507180423)ビオマイ アクチエンゲゼルシャフト (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国際出願番号】PCT/AT2007/000238
【国際公開番号】WO2007/134350
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(507180423)ビオマイ アクチエンゲゼルシャフト (12)
【Fターム(参考)】
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