説明

C10シクロプロピルエステル置換タキサン組成物

C10にシクロプロピルエステル置換基、C9にケト置換基、C7にヒドロキシ置換基、C3'に2-フリル置換基、およびC3'にイソブトキシカルバメート置換基を有するタキサンを含有する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍剤として有用性を有するC10シクロプロピルエステル置換タキサンの組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バッカチン(baccatin)IIIおよびタキソール(一般にパクリタキセルとも称される)がそのメンバーであるテルペンのタキサンファミリーは、生物学的分野および化学的分野の両方において相当注目されている対象である。タキソール(パクリタキセル)自体は癌の化学療法剤として用いられ、広範囲の腫瘍抑制活性を有している。タキソールは2'R,3'Sの立体配置を有し、下記の構造式を有する:
【化1】

式中、Acはアセチルであり、Bzはベンゾイルである。
【0003】
Colinらは、いくつかのパクリタキセル類似体がタキソールの活性よりも著しく大きな活性を有すると米国特許第4,814,470号に報告した。ドセタキセル(docetaxel)[Taxotere(登録商標)]と一般に呼ばれるこれらの類似体の1つは下記の構造式を有する:
【化2】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タキソールおよびドセタキセルは有用な化学療法剤であるが、ある種の癌に対する限定された効力、および様々な用量で投与されたときの患者に対する毒性などの故に、その有効性には限界がある。さらに、ある種の腫瘍はタキソールおよび/またはドセタキセルに対し抵抗性を示している。従って、タキソールおよび/またはドセタキセル抵抗性および非抵抗性腫瘍に対して効力が改善され、かつ毒性がより低いさらなる化学療法剤が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の様々な局面の1つは、毒性に関して、また抗腫瘍剤としての効力に関して、タキソールおよびドセタキセルと比較して優れており、タキソールおよび/またはドセタキセル抵抗性腫瘍にも有効なタキサンを提供することである。本発明のタキサンは、C10にシクロプロピルエステル置換基、C9にケト置換基、C7にヒドロキシ置換基、C3'にフリル置換基、およびC3'にイソブトキシカルバメート置換基を有している。
【0006】
従って、本発明は、タキソールおよび/またはドセタキセル抵抗性腫瘍に有効なタキサンおよび薬学的に許容しうる担体を含む組成物、並びに処置および投与方法に関する。
本発明の他の課題および特徴は、以下の記載により部分的に明らかとなり、部分的に示されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のタキサン、すなわち化合物3102は、化学構造式:
【化3】

で示される。
【0008】
化合物3102は、パクリタキセルおよび/またはドセタキセル感受性および抵抗性腫瘍ラインを含むある種の腫瘍に関し、従来用いられているタキサン類よりも優れた様式で、インビトロ、インビボのいずれでも癌に対して活性である。化合物3102を含有する医薬組成物は、他剤と併用してもしなくても、Taxol(登録商標)および/またはTaxotere(登録商標)での処置が指示される癌を処置するのに使用しうる。限定するわけではないが、化合物3102を含有する医薬組成物は、単独で、または併用療法において、乳癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、卵巣癌およびエイズ関連カポジ肉腫の処置に使用しうる。本発明の化合物は、経口投与しても静脈内投与しても忍容性が充分高く、単回または複数回投与として有効であり得、毒性が改善されている。
【0009】
考えられる化合物3102の作用機序に含まれるのは、細胞周期のG2/M期の抑制をもたらす微小管重合、およびプログラムされた細胞死(アポトーシスとして知られる)である。本発明の化合物は、多くのヒト腫瘍ヌードマウス異種移植モデルにおいて非常に有効であり、それにはパクリタキセルおよびTaxotere(登録商標)(ドセタキセル)に不応性/抵抗性のものも含まれる。化合物3102は、単回または反復投与スケジュールで、静脈内および経口経路で有効に投与しうる。試験した大多数の異種移植モデルにおいて、化合物3102は経口投与として反復投与スケジュール(4日毎または7日毎)で投与したとき、パクリタキセルおよびTaxotere(登録商標)よりも優れた効力を示している。化合物3102は、そのようなマウス異種移植モデルにおいて広い治療指数を示す。最高忍容用量(体重減少が指標となる)よりもかなり低い用量でも効力は保たれる。本発明の化合物は、異種移植モデルにおける効力によって示されるように、経口投与によってより優れたバイオアベイラビリティーを示し、Sprague-Dawleyラットにおいて経口投与でもIV投与でも好ましい毒性プロファイルを示す。反復投与レジメンにおける高い効力および広い治療指数は、病院における用量高度向上の機会を示唆する(特にヒト研究において週毎に投与する場合)。
【0010】
化合物3102は、(Holtonの米国特許第5,466,834号にさらに詳しく記載されているように)β-ラクタムを、タキサンの四環核およびC-13金属酸化物置換基を有するアルコキシドで処理して、C13にβ-アミドエステル置換基を有する化合物を形成し、その後、ヒドロキシ保護基を除去することによって得ることができる。
【0011】
このβ-ラクタムは、構造式(1):
【化4】

[式中、P2はヒドロキシ保護基であり、X3は2-フリルであり、X5はイソブトキシカルボニルである。]
で示される。
【0012】
また、アルコキシドは、構造式(2):
【化5】

[式中、Mは金属またはアンモニウムであり、P7はヒドロキシ保護基であり、R10はシクロプロピルカルボニルオキシである。]
で示される。
【0013】
構造式(2)のアルコキシドは、10-デアセチルバッカチンIII(またはその誘導体)から、そのC7ヒドロキシル基を選択的に保護し、次いでC10ヒドロキシル基をエステル化した後、金属アミドで処理することによって合成しうる。本発明の一態様においては、10-デアセチルバッカチンIIIのC7ヒドロキシル基を、例えばDenisら,J. Am. Chem. Soc., 1988, 110, 5917に記載されているように、シリル基で選択的に保護する。シリル化剤は通例、単独で、または触媒量の塩基(例えばアルカリ金属塩基)と組み合わせて使用しうる。
【0014】
別法として、例えばHoltonら,PCT特許出願WO99/09021に記載されているように、タキサン類のC10ヒドロキシル基を塩基の不存在下に選択的にアシル化しうる。タキサン類C10ヒドロキシル基の選択的アシル化に使用しうるアシル化剤は、置換または不置換のアルキルまたはアリール無水物を包含する。タキサン類C10ヒドロキシル基のアシル化は、多くのアシル化剤について、充分な速度で進行しうるが、反応混合物中にルイス酸を含ませることによって反応速度を高めうることがわかっている。好ましいルイス酸は、塩化亜鉛、塩化第二スズ、三塩化セリウム、塩化第一銅、三塩化ランタン、三塩化ジスプロシウムおよび三塩化イッテルビウムを包含する。アシル化剤が無水物である塩合、塩化亜鉛または三塩化セリウムが特に好ましい。
【0015】
β-ラクタム出発物質の合成方法および分割方法は当分野で一般によく知られている。例えば、β-ラクタムは、Holtonの米国特許第5,430,160号(第9欄第2〜50行)またはHoltonの米国特許第6,649,632号(第7欄第45行〜第8欄第60行)(これらいずれも全体を引用により本書の一部とする)に記載されているようにして合成することができる。β-ラクタムの得られたエナンチオマー混合物は、例えばPatelの米国特許第5,879,929号(第16欄第1行〜第18欄第27行)またはPatelの米国特許第5,567,614号に記載されているようなリパーゼまたは酵素、あるいは例えばHoltonの米国特許第6,548,293号(第3欄第30〜61行)に記載されているような肝臓ホモジネートを使用する立体選択的な加水分解によって分割することができる。例えば米国特許第6,649,632号には、β−ラクタムのC4位にフリル置換基を有するβ−ラクタムの合成が開示されている。
【0016】
本発明のタキサンは、ヒトを含む哺乳動物において腫瘍増殖抑制に有用であり、好ましくは、抗腫瘍有効量の本発明化合物を少なくとも1つの薬学的または薬理学的に許容しうる担体と共に含む医薬組成物の形態で投与する。担体は、賦形剤、ビヒクル、補助剤、アジュバントまたは希釈剤としてもこの分野では知られているが、担体は、薬学的に不活性であり、好適なコンシステンシーまたは形状を組成物に付与し、そして抗腫瘍化合物の治療効力を損なわない任意の物質である。担体は、哺乳動物またはヒトに投与されたときに有害なアレルギー反応または他の望ましくない反応を生じさせない場合に「薬学的または薬理学的に許容しうる」。
【0017】
本発明の抗腫瘍化合物を含有する医薬組成物は任意の従来の方法で調製することができる。適切な調製は、選択した投与経路に依存する。本発明の組成物は、標的組織に投与経路を介して達する限り、任意の投与経路のために調製することができる。好適な投与経路には、経口投与、非経口(例えば、静脈内、動脈内、皮下、直腸内、皮下、筋肉内、眼窩内、嚢内、髄腔内、腹腔内または胸骨内)投与、局所(鼻腔、経皮、眼内)投与、ぼうこう内投与、くも膜下投与、腸内投与、肺投与、リンパ管内投与、洞内投与、膣投与、経尿道投与、皮内投与、耳投与、乳房内投与、口内投与、正位投与、気管内投与、病巣内投与、経皮投与、内視鏡的投与、経粘膜投与、舌下投与および腸管投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
本発明の組成物に使用する薬学的に許容しうる担体は当業者にはよく知られており、下記のような多数の要因に基づいて選択する:使用する特定の抗腫瘍化合物、ならびにその濃度、安定性および意図するバイオアベイラビリティー;組成物で処置する疾患、障害または状態;被投与体、その年齢、大きさおよび全身の健康状態;ならびに投与経路。好適な担体は当業者によって容易に決定される(例えば、J.G.Nairn、Remington's Pharmaceutical Science(A.Gennaro編)、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.(1985年)、1492頁〜1517頁を参照のこと、その内容は参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0019】
本発明の組成物は、好ましくは、錠剤、分散性粉末剤、ピル剤、カプセル剤、ゲルキャップ剤、カプレット剤、ゲル剤、リポソーム剤、顆粒剤、溶液剤、懸濁剤、エマルジョン剤、シロップ剤、エリキシル剤、トローチ剤、糖衣剤、ロゼンジ剤、または経口投与し得る任意の他の投薬形態として調製する。本発明において有用な経口投薬形態を調製するための技術および組成物は下記の参考文献に記載されている:7 Modern Pharmaceutics、9章および10章(Banker & Rhodes編、1979年);Lieberman他、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets(1981年);Ansel、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms、第2版(1976年)。
【0020】
経口投与される本発明の組成物は、有効な抗腫瘍量の本発明化合物を、薬学的に許容しうる担体内に含む。固体投薬形態に好適な担体には、糖、デンプンおよび他の従来の物質が含まれる。そのような従来の物質には、ラクトース、タルク、スクロース、ゼラチン、カルボキシルメチルセルロース、寒天、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、カオリン、アルギン酸、アラビアゴム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、サッカリンナトリウム、炭酸マグネシウム、トラガカント、微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸が含まれる。さらに、そのような固体投薬形態はコーティングなしでもよく、あるいは知られている技術でコーティングして、例えば、崩壊および吸収を遅らせることができる。
【0021】
本発明の抗腫瘍化合物はまた、非経口投与するために好ましく調製することができ、例えば、静脈内経路、動脈内経路、皮下経路、直腸内経路、皮下経路、筋肉内経路、眼窩内経路、嚢内経路、髄腔内経路、腹腔内経路または胸骨内経路で注射するために調製しうる。非経口投与する本発明の組成物は、有効な抗腫瘍量の抗腫瘍化合物を薬学的に許容しうる担体内に含む。非経口投与に好適な投薬形態には、溶液剤、懸濁剤、分散剤、エマルジョン剤、または非経口投与され得る任意の他の投薬形態が含まれる。非経口投与形態を調製するための技術および組成物はこの分野で知られている。
【0022】
経口的または非経口的に投与する液体の投薬形態を調製する際に使用する好適な担体には、非水性の薬学的に許容しうる極性溶媒、例えばオイル、アルコール、アミド、エステル、エーテル、ケトン、炭化水素およびこれらの混合物、ならびに水、生理食塩液、デキストロース溶液(例えばDW5)、電解質溶液または任意の他の水性の薬学的に受容可能な液体が含まれる。
【0023】
好適な非水性の薬学的に許容しうる極性溶媒には、下記のものが含まれるが、それらに限定されない:アルコール(例えば、α-グリセロールホルマール、β-グリセロールホルマール、1,3-ブチレングリコール、2個〜30個の炭素原子を有する脂肪族アルコールまたは芳香族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t-ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、アミレン水和物、ベンジルアルコール、グリセリン(グリセロール)、グリコール、へキシレングリコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコールまたはステアリルアルコール、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)などの脂肪アルコールの脂肪酸エステル、ソルビタン、スクロースおよびコレステロールなど);アミド(例えば、ジメチルアセトアミド(DMA)、ベンジルベンゾアートDMA、ジメチルホルムアミド、N-(β-ヒドロキシエチル)ラクトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド_アミド、2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピロリジノン、またはポリビニルピロリドン);
【0024】
エステル(例えば、1-メチル-2-ピロリジノン、2-ピロリジノン、アセタートエステル(モノアセチン、ジアセチンおよびトリアセチンなど)、脂肪族エステルまたは芳香族エステル、例えば、カプリル酸エチルまたはオクタン酸エチル、オレイン酸アルキル、安息香酸ベンジル、酢酸ベンジルなど、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセリンのエステル(クエン酸モノグリセリル、クエン酸ジグリセリルまたはクエン酸トリグリセリル、あるいは酒石酸モノグリセリル、酒石酸ジグリセリルまたは酒石酸トリグリセリル)、安息香酸エチル、酢酸エチル、炭酸エチル、乳酸エチル、オレイン酸エチル、ソルビタンの脂肪酸エステル、脂肪酸由来のPEGエステル、グリセリルモノステアラート、グリセリドエステル(モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドなど)、ミリスチン酸イソプロピルなどの脂肪酸エステル、PEGヒドロキシオレアートおよびPEGヒドロキシステアラートなどの脂肪酸由来のPEGエステル、N-メチルピロリジノン、プルロニック60、ポリオキシエチレンソルビトールオレイン酸ポリエステル(ポリ(エトキシル化)30〜60ソルビトールポリ(オレアート)2〜4、ポリ(オキシエチレン)15〜20モノオレアートなど、ポリ(オキシエチレン)15〜20モノ12-ヒドロキシステアラート、およびポリ(オキシエチレン)15〜20モノレシノレアート、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート、およびICI Americas社(Wilmington、DE)から得られるPolysorbate(登録商標)20、40、60または80など)、ポリビニルピロリドン、ポリオキシル40水素化ひまし油およびポリオキシエチル化ひまし油(例えば、Cremophor(登録商標)EL溶液またはCremophor(登録商標)RH40溶液)などのアルキレンオキシ修飾脂肪酸エステル、
【0025】
サッカリド脂肪酸エステル(すなわち、単糖(例えば、リボース、リブロース、アラビノース、キシロース、リキソースおよびキシルロースなどのペントース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースおよびソルボースなどのヘキソース、ならびにトリオース、テトロース、ヘプトースおよびオクトース)または二糖(例えば、スクロース、マルトース、ラクトースおよびトレハロース)またはオリゴ糖またはこれらの混合物とC4〜C22脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸などの飽和脂肪酸、ならびにパルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸およびリノレン酸などの不飽和脂肪酸)との縮合生成物)、またはステロイドエステル);2個〜30個の炭素原子を有するアルキルエーテル、アリールエーテルまたは環状エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルイソソルビド、ジエチレングリコールモノエチルエーテル);グリコフロール(テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル);3個〜30個の炭素原子を有するケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン);4個〜30個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素または環状脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ジオキソラン類、ヘキサン、n-デカン、n-ドデカン、n-ヘキサン、スルホラン、テトラメチレンスルホン、テトラメチレンスルホキシド、トルエン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはテトラメチレンスルホキシド);
【0026】
鉱物起源、植物起源、動物起源または合成起源のオイル(例えば、鉱油、例えば脂肪族炭化水素またはワックス型炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族系および芳香族系の混合炭化水素、および精製パラフィン油、植物油(亜麻仁油、きり油、紅花油、ダイズ油、ひまし油、綿実油、ラッカセイ油、ナタネ油、ココナッツ油、パーム油、オリーブ油、コーン油、トウモロコシ胚芽油、ゴマ油、杏仁油およびピーナツ油など)およびグリセリド(モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドなど)、動物油(魚油、海産油、マッコウ鯨油、タラ肝油、ハリバ油、スクアレン油、スクアラン油およびサメ肝油)、オレイック(oleic)油、およびポリオキシエチル化ひまし油);1個〜30個の炭素原子および必要に応じて1個以上のハロゲン置換基を有するハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリール;塩化メチレン;モノエタノールアミン;石油ベンジン;トロラミン;ω-3多不飽和脂肪酸(例えば、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸);12-ヒドロキシステアリン酸およびポリエチレングリコールのポリグリコールエステル(BASF社(Ludwigshafen、ドイツ)から得られるSolutol(登録商標)HS-15);ポリオキシエチレングリセロール;ラウリン酸ナトリウム;オレイン酸ナトリウム;またはソルビタンモノオレアート。
【0027】
本発明において使用される他の薬学的に許容しうる溶媒は当業者にはよく知られており、The Chemotherapy Source Book(Williams & Wilkens Publishing)、The Handbook of Pharmaceutical Excipients(American Pharmaceutical Association(Washington, D.C.)およびThe Pharmaceutical Society of Great Britain(London、英国)、1968年)、Modern Pharnmceutics(G. Banker他編、第3版)(Maecel Dekker, Inc.、New York、New York、1995年)、The Pharmacological Basis of Therapeutics(Goodman & Gilman、McGraw Hill Publishing)、Pharmaceutical Dosage Forms(H. Lieberman他編)(Maecel Dekker, Inc.、New York、New York、1980年)、Remington's Pharmaceutical Sciences(A. Gennaro編、第19版)(Mack Publishing、Easton、PA、1995年)、The United States Pharmacopeia 24、The National Formulary 19(National Publishing、Philadelphia、PA、2000年)、A.J. Spiegel他、Use of Nonaqueous Solvents in Parenteral Products、JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES、第52巻、第10号、917頁〜927頁(1963)において明らかにされている。
【0028】
好適な溶媒には、抗腫瘍化合物を安定化させることが知られている溶媒が含まれ、トリグリセリドが多いオイル(例えば、紅花油、ダイズ油またはそれらの混合物)、およびアルキレンオキシ修飾脂肪酸エステル(ポリオキシル40水素化ひまし油およびポリオキシエチル化ひまし油(例えば、Cremophor(登録商標)EL溶液またはCremophor(登録商標)RH40溶液)など)などが含まれる。市販のトリグリセリドが多いオイルには、Intralipid(登録商標)乳化ダイズ油(Kabi-Pharmacia Inc.、Stockholm、スェーデン)、Nutralipid(登録商標)エマルジョン(McGaw、Irvine、California)、Liposyn(登録商標)II 20%エマルジョン(1mlの溶液あたり、100mgの紅花油、100mgのダイズ油、12mgの卵ホスファチドおよび25mgのグリセリンを含有する20%の脂肪エマルジョン溶液;Abbott Laboratories、Chicago、Illinois)、Liposyn(登録商標)III 20%エマルジョン(1mlの溶液あたり、100mgの紅花油、100mgのダイズ油、12mgの卵ホスファチドおよび25mgのグリセリンを含有する20%の脂肪エマルジョン溶液;Abbott Laboratories、Chicago、Illinois)、ドコサヘキサエノイル基を総脂肪酸含有量に基づいて25重量%〜100重量%のレベルで含有する天然または合成のグリセロール誘導体(Dhasco(登録商標)(Martek Biosciences Corp.(Columbia、MD)から得られる)、DHA Maguro(登録商標)(Daito Enterprises(Los Angeles、CA)から得られる)、Soyacal(登録商標)およびTravemulsion(登録商標)が含まれる。エタノールは、抗腫瘍化合物を溶解して、溶液およびエマルジョンなどを調製する際に使用する好ましい溶媒である。
【0029】
さらなる補助成分を、製薬分野でよく知られている様々な目的で本発明の組成物に含ませることができる。このような成分の多くは、抗腫瘍化合物の投与部位での保持を向上する性質、組成物の安定性を保護する性質、pHを制御する性質、抗腫瘍化合物の医薬製剤への加工を容易にする性質などをもたらしうる。好ましくは、これらの成分はそれぞれが、個々に、組成物全体の約15重量%未満で存在し、より好ましくは約5重量%未満であり、最も好ましくは組成物全体の約0.5重量%未満である。充填剤または希釈剤などのいくつかの成分は、製剤分野ではよく知られているように組成物全体の90重量%までを構成することができる。
【0030】
そのような添加剤には、タキサンの再沈殿を防止するための凍結防止剤、表面活性剤、湿潤化剤または乳化剤(例えば、レシチン、ポリソルベート-80、プルロニック60、ポリオキシエチレンステアラート、およびポリオキシエチル化ひまし油)、保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エチル)、微生物防腐剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、ソルビン酸、チメロサールおよびパラベン)、pH調節剤または緩衝化剤(例えば、酸、塩基、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノステアラート)、浸透圧調節剤(例えば、グリセリン)、増粘剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、グアーゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、トリステアリン、セチルワックスエステル、ポリエチレングリコール)、着色剤、色素、流動補助剤、不揮発性シリコーン(例えば、シクロメチコーン)、クレイ(例えば、ベントナイト)、付着剤、増量剤、風味剤、甘味剤、吸着剤、充填剤(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールなどの糖、セルロースあるいはリン酸カルシウム)、
【0031】
希釈剤(例えば、水、生理食塩水、電解質溶液)、結合剤(例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、米デンプンまたはジャガイモデンプンなどのデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、糖、ポリマー、アラビアゴム)、崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、米デンプン、ジャガイモデンプンまたはカルボキシルメチルデンプンなどのデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩、クロスカルメロースナトリウムまたはクロスポビドン)、滑沢剤(例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウムなどのその塩、あるいはポリエチレングリコール)、コーティング剤(例えば、アラビアゴムを含む濃縮糖溶液、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコールまたは二酸化チタン)、および酸化防止剤(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、デキストロース、フェノール類、およびチオフェノール類)が含まれる。
【0032】
上記経路による投薬形態の投与は、例えば、患者の生理学的状態、投与目的が治療的または予防的であるかどうか、および医師に知られ、そして医師によって評価される他の要因に依存して連続的または間断的であり得る。
【0033】
本発明の医薬組成物を投与するための投薬量および投薬計画は、癌処置において通常の技術を有する者であれば容易に決定し得る。抗腫瘍化合物の投薬量は、被投与体の年齢、性別、健康状態および体重、併用される処置の種類(併用される場合)、処置頻度、ならびに所望する効果の性質に依存しうると理解される。どのような投与様式の場合でも、送達される抗腫瘍化合物の実際の量、そして本明細書中に記載される好都合な効果を達成するために必要な投薬スケジュールは、部分的には、抗腫瘍化合物のバイオアベイラビリティー、処置する障害、所望の処置用量、および当業者に明かな他の要因のような要因にも依存しうる。動物(特にヒト)に投与する用量は、本発明の範囲において、妥当な期間にわたって動物において所望する治療的応答が達成されるのに十分でなければならない。好ましくは、抗腫瘍化合物の有効量は、経口的または別の経路で投与されたとしても、そのような経路で投与されたときに所望する治療的応答を生じさせうる任意の量である。
【0034】
好ましくは、経口投与する組成物は、1つまたはそれ以上の経口製剤における単回用量が、患者体表面積1m2あたり少なくとも20mgの抗腫瘍化合物を含有するように、あるいは患者体表面積1m2あたり少なくとも50mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mgまたは500mgの抗腫瘍化合物を含有するように調製する。この場合、ヒトの平均体表面積は1.8m2である。好ましくは、経口投与する組成物の単回用量は、患者体表面積1m2あたり約20mg〜約600mgの抗腫瘍化合物を含有し、より好ましくは約25mg/m2〜約400mg/m2、さらにより好ましくは約40mg/m2〜約300mg/m2、そしてさらにより好ましくは約50mg/m2〜約200mg/m2の抗腫瘍化合物を含有する。好ましくは、非経口投与する組成物は、単回用量が、患者体表面積1m2あたり少なくとも20mgの抗腫瘍化合物を含有するように、あるいは患者体表面積1m2あたり少なくとも40mg、50mg、100mg、150mg、200mg、300mg、400mgまたは500mgの抗腫瘍化合物を含有するように調製する。好ましくは、1つまたはそれ以上の非経口製剤における単回用量は、患者体表面積1m2あたり約20mg〜約500mgの抗腫瘍化合物を含有し、より好ましくは約40mg/m2〜約400mg/m2、さらにより好ましくは約60mg/m2〜約350mg/m2の抗腫瘍化合物を含有する。しかし、投薬量は、所望する治療的効果を達成するために必要に応じて調節し得る投薬スケジュールに依存して変化し得る。本明細書中に記載する有効用量範囲は、本発明を限定するものではなく、好ましい用量範囲を表していることに留意しなければならない。最も好ましい投薬量は、被投与体毎に調節し得、そして過度な実験を行うことなく当業者が決定しうる。
【0035】
液体の医薬組成物における抗腫瘍化合物の濃度は、好ましくは組成物1mlあたり約0.01mg〜約10mgの間であり、より好ましくは約0.1mg/ml〜約7mg/mlの間であり、さらにより好ましくは約0.5mg/ml〜約5mg/mlの間であり、最も好ましくは約1.5mg/ml〜約4mg/mlの間である。1つの実施形態においては、該製剤中の3102の濃度が2〜4mg/mlである。抗腫瘍化合物は低い濃度で溶液に最も溶解し得るために、比較的低い濃度が一般には好ましい。経口投与用の固体医薬組成物における抗腫瘍化合物の濃度は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは約5重量%〜約50重量%の間であり、より好ましくは約8重量%〜約40重量%の間であり、最も好ましくは約10重量%〜約30重量%の間である。
【0036】
1つの実施形態において、経口投与用の溶液剤を調製するために、抗腫瘍化合物を溶解し得る任意の薬学的に許容しうる溶媒(例えば、エタノールまたはポリエチレングリコール)に抗腫瘍化合物を溶解して溶液とする。界面活性剤、例えばCremophor(登録商標)EL溶液、ポリソルベート80、Solutol HS 15、またはVitamin E TPGSである担体の適量を攪拌下に溶液に加え、患者に経口投与するための薬学的に許容しうる溶液を形成する。得られる組成物は例えば、約15%までのエタノールおよび/または約15%までの界面活性剤(とりわけ、これらの濃度は約7.5〜15体積%のエタノールと、同体積の界面活性剤でありうる)、および75〜90体積%の範囲の蒸留水を含有しうる。矯味目的で、蒸留水の一部を、希釈したチェリーまたはラズベリーシロップで置き替えることができ、好ましくは約10〜30%をシロップとし、残部を水としうる。1つの実施形態において、この製剤中の3102の濃度は2〜4mg/mlである。所望する場合、経口製剤中である濃度で投与されたときに有害な生理学的作用を生じさせることが当分野で知られているエタノールを最少量で含むように、あるいはエタノールを含まないように、前記のような溶液剤を調製しうる。好ましい実施形態において、溶液剤は、エタノール約10%、ポリソルベート80(例えばTween 80(登録商標))、ポリエトキシル化ひまし油(例えばCremophor(登録商標))およびそれらの混合物から選択する界面活性剤約10%、並びに蒸留水約80%を含有する。
【0037】
別の実施形態において、経口投与用の粉末剤または錠剤を調製するために、抗腫瘍化合物を溶解し得る任意の薬学的に許容しうる溶媒(例えば、エタノールまたはポリエチレングリコール)に抗腫瘍化合物を溶解して溶液とする。必要に応じ、溶液を減圧下に乾燥させて溶媒を蒸発させることができる。Cremophor(登録商標)EL溶液などのさらなる担体を乾燥前の溶液に加えることができる。得られた溶液を減圧下に乾燥し、ガラス状物とする。その後、ガラス状物を結合剤と混合し、粉末剤とする。粉末剤を、患者に経口投与する錠剤を調製するために、充填剤または他の従来の錠剤化剤と混合し、加工しうる。粉末剤を上記のような任意の液体担体に入れて、経口投与用の溶液、エマルジョン、懸濁剤などを調製してもよい。
【0038】
非経口投与用のエマルジョン剤を調製するためには、抗腫瘍化合物を溶解し得る任意の薬学的に許容しうる溶媒(例えば、エタノールまたはポリエチレングリコール)に抗腫瘍化合物を溶解して溶液としうる。Liposyn(登録商標)II、Liposyn(登録商標)III、またはIntralipid(登録商標)エマルジョンなどのエマルジョンである担体の適量を攪拌下に溶液に加えて、患者に非経口投与する薬学的に許容しうるエマルジョンを調製する。得られる組成物は例えば、約10%までのエタノールおよび/または約90%を越える担体(とりわけ、この濃度は約5〜10体積%のエタノールと、約90〜95体積%の担体でありうる)を含有しうる。1つの実施形態において、この投与液剤中の3102の濃度は約1〜2mg/mlである。所望する場合、非経口製剤中である濃度で投与されたときに有害な生理学的作用を生じさせることが当分野で知られているエタノールまたはCremophor(登録商標)溶液を最少量で含むように、あるいはエタノールまたはCremophor(登録商標)溶液を含まないように、前記のようなエマルジョンを調製しうる。好ましい実施形態において、エマルジョンは、約5%のエタノール、および約95%の担体(例えばIntralipid 20%、Liposyn II 20%、またはそれらの混合物)を含有する。この好ましい実施形態において、エマルジョンは、有害な生理学的作用を引き起こすことが知られている剤、例えばポリエトキシル化ひまし油(例えばCremophor(登録商標))およびポリソルベート80(例えばTween 80(登録商標))を含有しない。
【0039】
非経口投与用の溶液剤を調製するために、抗腫瘍化合物を溶解し得る任意の薬学的に許容しうる溶媒(例えば、エタノールまたはポリエチレングリコール)に抗腫瘍化合物を溶解して溶液としうる。界面活性剤、例えばCremophor(登録商標)溶液、ポリソルベート80、またはSolutol HS15である担体の適量を攪拌下に溶液に加え、患者に非経口投与するための薬学的に許容しうる溶液を形成する。得られる組成物は例えば、約10%までのエタノールおよび/または約10%までの界面活性剤(とりわけ、この濃度は約5〜10体積%のエタノールと、同体積の界面活性剤でありうる)、および80〜90体積%の範囲の生理食塩液を含有しうる。所望する場合、非経口用製剤中である濃度で投与されたときに有害な生理学的作用を生じさせることが当分野で知られているエタノールまたはCremophor(登録商標)溶液を最少量で含むように、あるいはエタノールまたはCremophor(登録商標)溶液を含まないように、上記のような溶液剤を調製しうる。好ましい実施形態において、溶液剤は、エタノール約5%、ポリソルベート80(例えばTween 80(登録商標))またはポリエトキシル化ひまし油(例えばCremophor(登録商標))約5%、および生理食塩液(0.9%塩化ナトリウム)約90%を含有する。起こりうる副作用(例えば過敏性反応)を抑制または排除するために、この実施形態の投与を受ける患者には、好ましくはデキサメタゾン、ジフェンヒドラミンまたは該副作用を抑制もしくは排除することが当分野で知られている任意の他の剤で前処置する。
【0040】
他の適当な非経口製剤は、リポソームを包含する。リポソームは通例、脂質化合物を含む両親媒性化合物の球形または楕円形のクラスターまたは凝集体で、通例1つまたはそれ以上の同心層、例えば単層または二層の形態である。リポソームはイオン性または非イオン性脂質から調製しうる。非イオン性脂質のリポソームは、ニオソームとも称される。リポソームに関する参考文献は下記のものを包含する:(a) Liposomes Second Edition: A Practical Approach, V. TorchillinおよびV. Weissig編, Oxford University Press, 2003; (b) M. Malmstein, Surfactants and Polymers in Drug Delivery, Marcel Dekker Inc., 2002; および(c) Mullerら, Emulsions and Nanosuspensions for the Formulation of Poorly Soluble Drugs, Medpharm Scientific Publishers, 1998。
【0041】
所望する場合、経口投与または非経口投与用の上記エマルジョン剤または溶液剤は、この分野で知られているように、濃縮された形態で、IVバッグ、バイアルまたは他の従来の容器に入れることができ、そして使用前に許容しうるタキサン濃度が得られるように、生理食塩水などの任意の薬学的に許容しうる液体で希釈することができる。
【0042】
本明細書中で使用する用語「ヒドロキシル保護基」および用語「ヒドロキシ保護基」は、保護を伴う反応後に分子の残部に影響を及ぼすことなく除去できる、遊離ヒドロキシル基(「保護ヒドロキシル」)を保護し得る基を表す。ヒドロキシル基の様々な保護基およびその合成がProtective Groups in Organic Synthesis, 第3版, T.W. GreeneおよびP.G.M. Wuts, John Wiley and Sons, 1999に記載されている。例示的なヒドロキシル保護基には、メトキシメチル、1-エトキシエチル、ベンジルオキシメチル、(β-トリメチルシリルエトキシ)メチル、テトラヒドロピラニル、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル、t-ブチル(ジフェニル)シリル、トリアルキルシリル、トリクロロメトキシカルボニルおよび2,2,2-トリクロロエトキシメチルが含まれる。
【0043】
本明細書中で、「Ac」はアセチルを意味する;「Bz」はベンゾイルを意味する;「TES」はトリエチルシリルを意味する;「TMS」はトリメチルシリルを意味する;「LAH」は水素化アルミニウムリチウムを意味する;「10-DAB」は10-デスアセチルバッカチンIIIを意味する;「THF」はテトラヒドロフランを意味する;「DMAP」は4-ジメチルアミノピリジンを意味する;「LHMDS」はリチウムヘキサメチルジシラザニドを意味する;「TESCl」はトリエチルシリルクロリドを意味する;「cPtc-Cl」はシクロペンタンカルボニルクロリドを意味する;「DMF」はN,N-ジメチルホルムアミドを意味する;「MOP」は2-メトキシプロペンを意味する;「iProc」はN-イソプロポキシカルボニルを意味する;「iProc-Cl」はイソプロピルクロロホルメートを意味する;「LDA」はリチウムジイソプロピルアミドを意味する。
以下の実施例によって本発明を例示する。
【実施例1】
【0044】
化合物3102の製造
【化6】

【実施例2】
【0045】
微小管安定化
化合物3102を、インビトロで、生腫瘍細胞中の微小管を安定化するその能力について評価した。この能力は、結果として細胞死をもたらし、抗がん剤パクリタキセルおよびドセタキセルの作用機序であるとされている。
【0046】
簡単に述べると、完全組織培養培地(10%ウシ胎仔血清および抗生物質を含むRPMI1640培地)中のA549ヒト肺がん細胞約5,000個をスライドチャンバーのウェルに加え、一晩、生育して付着させた。最初の1.0mM原液から、ジメチスルスホキシド(DMSO)中に、化合物3102、パクリタキセルおよびドセタキセルのさまざまな希釈液を調製し、スライドチャンバーウェルに加え、37℃で24時間インキュベートした。3%グルコースを含有する10%ホルマリンを使ってスライドを室温で10分間固定し、リン酸緩衝溶液(PBS)で洗浄し、PBS中の2%トリトンX-100と共にインキュベートしてから、マウス抗α-チューブリンの1:1000希釈液により、37℃で45分間染色し、次に3回洗浄し、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合ヤギ抗マウス抗体で染色し、同様に37℃で45分間インキュベートした。抗体溶液を除去し、ヨウ化プロピジウム/RNAse溶液を加え、スライドを37℃でさらに20分間インキュベートした。スライドをPBSおよび蒸留水で洗浄し、風乾した。SlowFadeを使ってカバースリップをスライドにマウントし、蛍光顕微鏡を使ってスライドを調べた。
【0047】
結果:HCT116腫瘍細胞の微小管安定化
無処理A549細胞の微小管マトリックスは、管状構造物(微小管)の網目状ネットワークを特徴とする(図1)。100nMの化合物3102で処理したA549細胞は、微小管の「束」の形成を示し、その一部は細胞の全長にわたっていた(図2)。これらの細胞の核(写真の卵形構造物)はアポトーシスを示唆する断片化を示した。微小管および核に対する同様の作用が、パクリタキセル処理細胞およびドセタキセル処理細胞でも観察された。これらの結果は、化合物3102がインビトロで微小管束化およびアポトーシスの両方を誘発し、その作用機序はパクリタキセルおよびドセタキセルの作用機序と一致することを示している。
【実施例3】
【0048】
細胞周期およびアポトーシス解析
パクリタキセルおよびドセタキセルと比較して、化合物3102がHCT116細胞に対してその抗増殖作用を発揮している細胞周期内の細胞周期相を明らかにするために、研究を開始した。
【0049】
HCT116ヒト結腸癌細胞を、化合物3102、パクリタキセルまたはドセタキセル(10.0nMおよび100.0nM)の存在下または不在下で、24時間および48時間インキュベートした。細胞を収集し、75%エタノール中、4℃で一晩、固定し、0.02mg/mlのヨウ化プロピジウム(PI)で0.1mg/mlのRNAse Aと共に染色し、Coulter ALTRAフローサイトメーターで解析した。DNAヒストグラムを、690nmの放射波長で、少なくとも10,000個のP.I.染色細胞から収集した。細胞周期の各期(G1、SおよびG2/M)にある細胞の数を決定し、sub-G1ピークにある細胞のパーセンテージを決定することにより、アポトーシス期にあるものを測定した。
【0050】
結果:HCT-116細胞の細胞周期およびアポトーシスに対する化合物3102の作用
化合物3102、パクリタキセルおよびドセタキセルの濃度を増加させると、24時間の曝露後に対照(無処理)と比較して、G1期にある細胞のパーセンテージが減少し、それと同時に細胞周期のS期およびG2/M期にある細胞のパーセンテージが増加した。化合物3102およびパクリタキセルは、10.0nMで、アポトーシスを起こす細胞のパーセンテージに関して非常によく似た作用を誘発し、一方、ドセタキセル処理細胞集団は、この濃度では、ネクローシス性もアポトーシス性も示すようだった。これらの結果は、化合物3102の作用機序、すなわち細胞周期のG2/M期における細胞増殖の阻止およびアポトーシスの誘発が、パクリタキセルの作用機序ともドセタキセルの作用機序とも一致することを示している。これらの結果を以下の表1に要約する。
【0051】
【表1】

【実施例4】
【0052】
化合物3102とタキサン類とのインビトロ細胞毒性の比較
タキサン感受性ヒト腫瘍細胞株およびタキサン抵抗性/不応性ヒト腫瘍細胞株の両方で、化合物3102のインビトロ細胞毒性を、他の既知タキサン類(パクリタキセルおよびドセタキセル)の細胞毒性と比較した。簡単に述べると、HCT116およびHT-29結腸癌、DLD-1抵抗性結腸癌、PANC-1膵腺癌、PC-3およびLNCaP前立腺癌、IA9卵巣癌、ならびにパクリタキセル抵抗性1A9-PTX10および1A9-PTX22卵巣癌で、化合物3102、パクリタキセルおよびドセタキセルを、増殖に対するそれらの作用について解析した。
【0053】
細胞株は全て、RPMI-1640組織培養培地(TCM)(抗生物質および10%ウシ胎仔血清を補足したもの)で維持し、5%CO2を含有する湿潤空気中、37℃で培養した。試験化合物の抗増殖作用を評価するために、まず、組織培養培地に1×104細胞/mlの密度で腫瘍細胞培養を樹立し、細胞を付着させるために、空気下、10%CO2中、37℃で24時間インキュベートした。各試験ウェルから培地200μlを取り除き、試験薬剤の希釈液(0.1、1.0、10.0、100nM)(TCMおよび0.1%DMSOに溶解したもの)を含有する培地200μlを、腫瘍細胞が入っている各ウェルに加え、得られた試験プレートを72時間インキュベートした。インキュベーション後に、IC50値を決定するために、5mg/mL MTT(3-[4,5-ジメチルチアゾル-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を含有する温かい成長培地75μlを各ウェルに加え、培養物を培養器に戻し、1時間静置した。プレートを処理し、得られた溶液の吸光度を、プレートリーダーにより、570nmで測定した。試験ウェルの吸光度を薬物を含まないウェルの吸光度で割り、無処理培養物の吸光度の50%をもたらす薬剤の濃度(IC50)を、データのベストフィット曲線の解析によって決定した。
【0054】
この研究の結果(以下の表2に要約するもの)は、DLD-1結腸癌(これは、p糖タンパク質を過剰発現させ、パクリタキセルにもドセタキセルにも抵抗性である)を含むさまざまなヒト腫瘍細胞株で、化合物3102が優れた効力を保っていることを示している。化合物3102は、インビトロでDLD-1腫瘍細胞を殺すことに関して、パクリタキセルおよびドセタキセルのどちらよりも、少なくとも5倍は強力である。特異的チューブリン突然変異(1A9-PTX10 β270におけるPhe→Ala、1A9-PTX22 β364におけるAla→Thr)によってパクリタキセル抵抗性になっている卵巣がん細胞株1A9-PTX10および1A9-PTX22では、化合物3102の抗腫瘍活性が、パクリタキセルの抗腫瘍活性と比較して、少なくとも4〜8倍強力だった。一般に、化合物3102のIC50値は、試験したどの細胞株についても、ドセタキセルで得られる値と等しいか、それよりわずかに優れていた。これらの結果は、化合物3102のインビトロ抗腫瘍活性が、パクリタキセルのインビトロ抗腫瘍活性より優れていることと、腫瘍細胞における二つの異なるタイプの機序(すなわちp糖タンパク質の過剰発現および特異的チューブリン突然変異)によってもたらされるパクリタキセル抵抗性を、この化合物が克服できることを示している。化合物3102のインビトロ抗腫瘍活性は、試験した細胞株では、ドセタキセルのインビトロ抗腫瘍活性と少なくとも等しく、多くの場合、それより優れている。
【0055】
【表2】

【実施例5】
【0056】
ヒト腫瘍異種移植片を持つヌードマウスにおける化合物3102のインビボ活性
化合物3102を、いくつかの実験腫瘍モデルで、そのインビボ抗腫瘍活性について調べた。これらのモデルはヌードマウスに移植されたヒト腫瘍(ヒト腫瘍異種移植片)からなる。これらのモデルは、結腸(HT-29、DLD-1およびSW480)、膵臓(Panc-1)、黒色腫(A375)、腎臓(786-0)および中皮腫(MSTO-211H)などのヒトがんを表現したものである。研究は、ノースカロライナ州モーリスビルのPiedmont Research Center(HT-29、Panc-1、DLD-1、A375および786-0)ならびにフロリダ州タラハシーのTaxolog, Inc.(MSTO-211H)で行われた。初期の研究はHT-29結腸腫瘍モデルおよびPanc-1膵腫瘍モデルに的を絞って行われた。これらの研究では、化合物3102に関して、有効な投与経路(IVおよび経口)ならびに投与スケジュールが決定された。これらの研究の後半では、それぞれの至適用量および至適スケジュールで、パクリタキセルおよびドセタキセルの抗腫瘍活性との比較が行われた。研究を拡張して、結腸がん(DLD-1、SW480)、膵がん(Panc-1)、黒色腫(A375)、腎臓がん(786-0)および中皮腫(MSTO-211H)のさらなるモデルで、化合物3102の有効性を決定した。ここに記載する研究は、化合物3102が、IV投与でも経口投与でも、ヌードマウスにおけるヒト腫瘍異種移植片の成長を劇的に遅らせるのに有効であることを示している。
【実施例6】
【0057】
HT-29ヒト腫瘍異種移植片を持つヌードマウスにおける化合物3102のインビボ活性
HT-29ヒト腫瘍異種移植片研究のプロトコールを以下のとおり説明する。
【0058】
マウス
雌無胸腺ヌードマウス(Harlan)は、研究の1日目に13〜14週齢だった。動物には、水(逆浸透、1ppm Cl)と、18.0%粗タンパク質、5.0%粗脂肪、および5.0%粗繊維からなるNIH31変法照射(Modified and Irradiated)Lab Diet(登録商標)とを、不断給餌した。12時間の照明周期、21〜22℃(70〜72°F)および湿度40〜60%で、静止マイクロアイソレーター中、ALPHA-dri(登録商標)bed-o-cobs(登録商標)実験動物敷料の上で、マウスを飼育した。
【0059】
腫瘍移植
この研究に用いるHT29結腸腫瘍株を無胸腺ヌードマウス中で維持した。腫瘍断片(1mm3)を各試験マウスの右側腹部の皮下に移植した。腫瘍を、週に2回の割合で監視した後、それらの体積が200〜400mm3に近づくにつれて、毎日監視した。研究の1日目に、腫瘍サイズが108.0〜486.0mm3であり、群平均腫瘍サイズが224.9〜230.0mm3であるような処置群に、動物を区分けした。腫瘍サイズ(単位mm3)は、
腫瘍体積=(w2×l)/2
から計算した。式中、w=腫瘍の幅およびl=腫瘍の長さ(単位mm)である。1mgは腫瘍体積1mm3に相当すると仮定して、腫瘍重量を見積った。
【0060】
薬物
化合物3102(ロット番号HN-4-95-4)およびTL-2(Taxotere(登録商標))(ロット番号HN-4-8-2A)はTaxologによって提供された。化合物3102を50%エタノールおよび50%Cremophor(登録商標)ELに溶解して10倍原液を調製した。経口投与については、これらの原液を投与の直前に食塩水で希釈することにより、5%エタノール、5%Cremophor(登録商標)ELおよび90%食塩水からなる賦形剤(食塩水中の5%E5%C)中の投与液を得た。静脈内投与の場合は、化合物3102を100%エタノールに溶解して20倍原液を調製した。これらの溶液を、投与日ごとに20%Liposyn(登録商標)IIで希釈することにより、5%エタノールおよび95%Liposyn(登録商標)IIからなる賦形剤(5%E95%L-II)中の投与液を得た。パクリタキセル(Mayne Group Ltd.、元NaPro Biotherapeutics, Inc.)を50%エタノールおよび50%Cremophor(登録商標)ELに溶解して10倍原液を調製した。投与日ごとに、その原液の一部を、水中の5%デキストロース(D5W、pH約4.8)で希釈することにより、5%エタノール、5%Cremophor(登録商標)ELおよび90%D5Wを含有する投与液を得た。Taxotere(登録商標)を50%エタノールおよび50%Tween(登録商標)80に溶解して6.67倍原液を調製した。そのTaxotere(登録商標)原液を、投与の直前にD5Wで希釈することにより、7.5%エタノール、7.5%Tween(登録商標)80、および85%D5Wからなる賦形剤(D5W中の7.5%E7.5%T)中の投与液を得た。
【0061】
処置
マウスを1群あたり6匹の適当な群に区分けし、各研究のプロトコールに従って処置した。一部の研究には、陽性薬物対照として、Taxotere(登録商標)(TL-2)群およびパクリタキセル群を含めた。Taxotere(登録商標)およびパクリタキセルは、常に、その至適用量(Taxotere(登録商標)およびパクリタキセルのどちらの場合も30mg/kg)、至適経路(静脈内、IV)および至適スケジュール(Taxotere(登録商標)の場合は週に1回を3サイクル(Q7D×3)、またパクリタキセルの場合は1日おきに1回を5サイクル(QOD×5))で投与した。化合物3102の投与はIVまたは経口(po)とした。対照群マウスには食塩水賦形剤を与えた。化合物3102に関して試験した処置スケジュールは、1日1回(QD×1)、4日ごとに1回を4サイクル(Q4D×4)、または1日おきに1回を5サイクル(QOD×5)である。
【0062】
エンドポイント
各動物を、その新生物が予定のエンドポイントサイズ(1,000mm3)に到達した時点で、安楽死させた。各マウスについて、エンドポイント到達時間(TTE)を、以下の等式によって計算した。
TTE={log10(エンドポイント体積)-b}/m
式中、TTEは日数で表され、エンドポイント体積の単位はmm3であり、bは切片であり、mは、log変換した腫瘍成長データセットの線形回帰によって得られる直線の傾きである。データセットは、その研究のエンドポイント体積を超えた最初の観察結果と、そのエンドポイント体積への到達の直前にあたる三つの連続する観察結果とから構成される。エンドポイントに到達しない動物には、その研究の最終日に相当するTTE値を割り当てる。処置関連(TR)死または非処置関連転移(NTRm)死と分類される動物には、その死亡日に相当するTTE値を割り当てる。非処置関連(NTR)死と分類される動物は、TTE計算から除外する。
【0063】
処置有効性を腫瘍成長遅延(TGD)から決定した。TGDは、対照群と比較した処置群に関する中央TTEの増加、すなわち
TGD=T-C
と定義され、日数で表されるか、対照群の中央TTEに対するパーセンテージ、すなわち
%TGD=100×(T-C)/C
として表される。式中、T=処置群の中央TTEである。C=対照群1の中央TTEである。
【0064】
処置は、動物中の腫瘍の部分退縮(PR)または完全退縮(CR)を引き起こしうる。PR応答の場合、腫瘍体積は、その研究の過程で連続する三つの測定値が、その1日目の体積の50%以下であり、それら三つの測定値のうちの一つ以上が13.5mm3に等しいか、それより大きい。CR応答の場合、腫瘍体積は、その研究の過程で連続する三つの測定値が13.5mm3より小さい。研究の終了時にCR応答を持つ動物は、付加的に、長期無腫瘍生存個体(LTTFS)と分類される。
【0065】
平均生存日数
平均生存日数(MDS)値を全ての群について計算した。MDS値は、腫瘍が、研究に応じた指定の重量(1.2gまたは2.0g)に到達するのに要する平均日数とした。
【0066】
統計解析およびグラフ解析
薬物処置群のTTE値と賦形剤処置対照群のTTE値との差の有意性を解析するために、ログランク検定を使用した。ログランク検定では、NTR死を除く全ての動物に関するデータを解析する。Windows用Prism 3.03(GraphPad)を使って両側統計解析をP=0.05で行った。
【0067】
腫瘍成長曲線は群中央腫瘍体積を時間の関数として示す。ある動物が、腫瘍サイズまたはTR死のせいで、その研究から抜ける場合は、その動物について記録された最終腫瘍体積を、それ以降の時点での中央体積を計算するために使用するデータに含める。ある処置群内で1例を超える死亡が起こった場合は、その群に関する腫瘍成長曲線を、2例目の死に先だって行われた最後の測定の日で打ち切る。
【実施例7】
【0068】
研究HT-29 e51およびe52:投薬およびスケジューリングの初期研究
HT-29保有マウスに対する化合物3102の投与に関して経路およびスケジュールを初期決定するための研究を開始した。化合物3102を、120および60mg/kgの用量およびQD×1スケジュール(e52)ならびに30mg/kgの用量およびQ4D×4スケジュール(e51)で投与した。これらの研究の結果を図3および図4ならびに表3および表4に示す。
【0069】
図3は、120および60mg/kgの用量およびQD×1のスケジュールで静脈内投与された化合物3102が、HT-29腫瘍異種移植片の成長を抑制するのに有効であり、120および60mg/kgでのMDSがそれぞれ38.5および32.4であることを示している。これに対し、賦形剤処置マウスのMDSはわずか12.1日である。化合物3102処置マウスにおける最大体重減少はごくわずかであり(120および60mg/kg処置マウスで、それぞれ-5.5%および-8.9%)、どちらの処置群でも7日目に起こった。
【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
30.0mgの用量で、Q4D×4の反復投与スケジュールを用いた場合、化合物3102は、HT-29異種移植片の成長を抑制するのに33日間にわたって有効だった(図4)。賦形剤処置動物と異なり、3102処置マウスでは当初、7日目に300mgに達したが、その後、研究の残りの期間は150mg未満に落ちた。最大体重減少は中等度(-16.2%)で、19日目に起こった。このレジメンに伴う処置関連死が一例あった(表4参照)。
【0073】
これらの初期結果は、化合物3102が、ヌードマウスにおける異種移植片としてのHT-29ヒト結腸腫瘍の成長を遅らせるのに有効であることを示した。化合物3102は、単回投与レジメンでも反復投与レジメンでも、有効にi.v.投与することができ、体重減少は少ないか、中等度だった。
【実施例8】
【0074】
研究HT-29 e60およびe76;単回投与対反復投与(経口)の初期研究
化合物3102を、60および120mg/kgでの単回経口投与(QD×1)ならびに30、45および60mg/kgでの反復経口投与(Q4D×4)の両方について、HT-29異種移植片モデルで初期評価した。その結果を図5および図6ならびに表5および表6に記載する。これらの研究の結果は、化合物3102が、単回投与で経口的に与えられた場合に、120mg/kgおよび60mg/kgの投薬量で、賦形剤対照と比較してHT-29腫瘍の成長を抑制するのに有効であったことを示している(図5)。120mg/kg用量および60mg/kg用量でのMDS値は、賦形剤処置マウスがわずか16.5日であったのに対して、それぞれ35.3日および31.8日だった。最大体重減少は7日目に120mg/kg用量群にだけ観察され、ごくわずかだった(5.5%)。
【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

【0077】
経口反復投与研究で得た結果は、より一層、有望なものだった。この研究で得た結果は、化合物3102のQ4D×4スケジュールが、HT-29腫瘍の成長を妨げるのに著しく有効であったことを示している。わずか30mg/kgの用量で処置したマウスのMDSは、賦形剤処置対照の16.5日と比較して、27.9日であり、最大体重減少は中等度(-7.4%)だった。45mg/kgで処置したマウスは腫瘍を一度も成長させることがなく、この用量は1例の完全応答および3例の部分応答を伴った。高用量(60mg/kg)で処置したマウスは5例の部分応答を伴ったが、この群の一匹が、14.0日のMDS値で腫瘍を成長させたので、MDS値は計算できなかった。これらの研究の結果は、化合物3102は単回投与スケジュールでも反復投与スケジュールでも経口投与することができ、それがマウスにおけるHT-29腫瘍成長を効果的に抑制することを示している。
【実施例9】
【0078】
研究HT-29 e103:単回投与(経口)に関する追跡研究
HT-29異種移植片における単回経口投与について有効な投薬範囲を決定するために、追跡研究を開始した。以下の用量を評価した:180、150、120、90、60、30および15mg/kg。これらの研究の結果を図7および表7に記載する。高用量側の三つの用量による処置は、賦形剤処置対照(14.8日のMDS)と比較して、HT-29腫瘍の成長をかなり遅延させた(180、150および120mg/kgで、それぞれ41.8、42.1および40.5のMDS)。120および60mg/kgでは部分応答が観察された。体重減少は試験したどの用量でも無視できる程度だった。この研究の結果は、高用量の化合物3102がマウスにおいて高い忍容性を有し、HT-29移植腫瘍における優れた抗腫瘍有効性を伴うことを示している。
【0079】
【表7】

【実施例10】
【0080】
研究HT-29 e79およびe80:反復投与Q4D×4およびQ7D×3(経口)に関する追跡研究
HT-29腫瘍異種移植片における化合物3102の経口反復投与の有効性をさらに調べるために、研究を開始した(研究e79およびe80)。二つの投与スケジュールQ4D×4およびQ7D×3を評価した。結果を図8および図9ならびに表8および表9に記載する。70、60および50mg/kgの用量で経口反復投与された化合物3102は、ヌードマウスに移植されたHT-29腫瘍の成長を遅らせ、その腫瘍体積を減少させるのに有効だった(図8)。高投薬量側の二群(70および60mg/kg)では、化合物3102処置が各群に6/6例の部分退縮をもたらし、一方、試験した最も低い投薬量(50mg/kg)では、4/6例の部分退縮が起こった。全ての用量が軽度〜中等度の体重減少を伴った(表8)。Q7D×3反復投与群では、化合物3102が高用量側の二つの用量で、100mg/kgでは5/6例の部分退縮を、また80mg/kg群では3/6例の部分退縮と2/6例の完全退縮をもたらした。高用量群では最も大きい体重減少が起こったが、それは10%を越えなかった(表9)。これらの研究の結果は、経口投与される化合物の、Q4D×4またはQ7D×3のいずれかによる反復投与が、マウスにおいて著しく有効であり、高い忍容性を有することを示している。
【0081】
【表8】

【0082】
【表9】

【実施例11】
【0083】
研究HT-29 e105:化合物3102(経口)の反復投与Q4D×4およびQ7D×3ならびにパクリタキセル(IV)およびTaxotere(登録商標)(IV)との比較
HT-29腫瘍異種移植片モデルにおいて、さまざまな用量での化合物3102の有効性を、それぞれの至適用量および至適スケジュールでのパクリタキセルおよびTaxotere(登録商標)の有効性と比較するために、二つの投与スケジュールQ4D×4およびQ4D×3で化合物3102を経口投与する反復投与研究を企てた(研究e105)。結果を図10および図11ならびに表10および表11に記載する。Q4D×4スケジュールの場合、経口投与された化合物3102は、HT-29腫瘍の成長を遅らせるのに、試験した全ての用量で有効であり、最低用量(30mg/kg)を除く全ての用量で、初期移植サイズを減少させるのに有効だった。パクリタキセルとTaxotere(登録商標)はどちらも、その至適用量および至適スケジュールでは、経口投与された化合物3102と同等に有効だったが、Taxotere(登録商標)処置動物では体重減少が化合物3102のどの用量で観察されたものよりも大きかった(表10)。
【0084】
Q7D×3スケジュールでは、最も低用量側の二用量(30.0mg/kgおよび15.0mg/kg)を除いて、経口投与された化合物3102の全ての用量が、HT-29腫瘍の成長の劇的な減速と、腫瘍移植サイズの減少(形成された腫瘍の縮小)をもたらした。パクリタキセルとTaxotere(登録商標)はどちらも、経口投与された化合物3102と同等に有効だったが、先の研究と同様に、Taxotere(登録商標)処置動物は、試験した最高用量の化合物3102(180mg/kg)でしか上回ることのないレベルの重度の体重減少を起こした(表11)。
【0085】
これら二つの研究の結果は、経口投与された化合物3102が、マウス中のHT-29腫瘍の処置に関して、(それぞれの至適用量および至適スケジュールで)静脈内投与されたパクリタキセルまたはTaxotere(登録商標)と同じ程度に有効であることを示している。また、化合物3102は、最も高い用量を除く、与えられた全ての用量で体重減少が中等度であることによって示されるとおり、与えられた治療用量では比較的無毒である。これは、このモデルでTaxotere(登録商標)処置マウスが示す体重減少とは対照的である。
【0086】
【表10】

【0087】
【表11】

【実施例12】
【0088】
研究Panc-1 e57、e59およびe92:IV投与およびスケジューリングの初期研究
HT-29について説明したものと同様の抗腫瘍有効性研究を、ヌードマウス中のPanc-1ヒト腫瘍異種移植片を使って、化合物3102で行った。これらの実験を実行するための方法は、使用した移植物を除いて、HT-29と同じである。
【0089】
Panc-1保有マウスへの化合物3102の投与経路および投与スケジュールを初期決定するために、研究を開始した。化合物3102を、120および60mg/kgの用量およびQD×1スケジュール(e59)ならびに30mg/kgの用量および反復投与QOD×5スケジュール(e57)で、静脈内投与した。e57研究では、パクリタキセルも、その至適用量(30mg/kg)および至適スケジュール(QOD×5)で評価した。これらの研究の結果を図12および図13ならびに表12および表13に示す。単回IV投与として投与された化合物3102は、賦形剤対照と比較して、ヌードマウス中のPanc-1ヒト異種移植片の成長を遅らせるのに有効だった(図12)。化合物3102に関するMDS値は、賦形剤対照の16.2日に対して、120mg/kgおよび60mg/kgで、それぞれ42.9日および34.6日だった。最高用量の化合物3102で観察された体重減少は無視できる程度でしかなかった。
【0090】
反復投与研究では、化合物3102を、パクリタキセルのそれに匹敵するQOD×5スケジュールで静脈内に投与した(図13)。その結果は、化合物3102が、腫瘍成長および初期移植サイズを減少させるのに初期段階では有効だったことを示しているが、重度の体重減少によって証明されるとおり、この化合物は試験した30mg/kgの用量でPanc-1腫瘍移植マウスにとって毒性であることが判明した(表13)。これら二つの研究の結果は、QD×1スケジュールでは、Panc-1ヒト腫瘍異種移植片を持つマウスに、化合物3102を高用量(120および60mg/kg)で静脈内投与できることを実証している。パクリタキセルのそれに匹敵する用量および投与スケジュール(30mg/kg、QOD×5)で静脈内投与した場合、化合物3102は効果的ではないようである。
【0091】
【表12】

【0092】
【表13】

【実施例13】
【0093】
研究Panc e92:化合物3102 IV反復投与、Q4D×4スケジュールとQOD×5スケジュールの比較
Q4D×4、QOD×5スケジュールで与えられる静脈内投与された化合物3102の有効性を比較し、Taxotere(登録商標)をその至適用量および至適スケジュールで与えた場合と比較するために、追加研究を企てた。この研究の結果を図14および表14に示す。静脈内投与される化合物3102のQOD×5スケジュールおよびQ4D×4スケジュールは、腫瘍成長の完全な抑制および元の腫瘍移植物の腫瘍重量の縮小をもたらした。20mg/kg用量には2例の部分応答および1例の完全応答が伴ったが、25mg/kg用量群は4/6例の処置関連死を起し、どちらの用量でも中等度〜重度の体重減少が観察された。しかし、Q4D×4スケジュールでは、どちらの処置群(25および30mg/kg)でも中等度の体重減少を伴っただけで、各群で5例の完全応答および1例の完全応答が観察された。Taxotere(登録商標)処置動物は、腫瘍成長および腫瘍体積の同様の減少を起こし、体重減少は中等度だった。これらの結果は、静脈投与される化合物3102の場合、Q4D×4のスケジュールおよび適切な用量レベルが、Panc-1ヒト腫瘍異種移植片モデルで観察される優れた有効性および低毒性に寄与することを、明確に示している。
【0094】
【表14】

【実施例14】
【0095】
研究Panc-1 e64およびe93:単回経口投与
化合物3102を、単回投与経口剤として、Panc-1ヒト腫瘍異種移植片における有効性について評価した。これらの研究の結果を図15および図16ならびに表15および表16に記載する。初期研究は、経口化合物3102が有効であるだろう範囲を決定するために、二つの用量、すなわち120および60mg/kgで行った(研究e64)。図15は、化合物3102のどちらの用量も、単回投与として与えた場合に、賦形剤対照と比較して腫瘍成長を劇的に減少させることができたことを示している。MDS値は、120mg/kgおよび60mg/kgの化合物3102について、それぞれ44.6日および32.4日だった(表15)。試験した最高用量で観察された体重減少は無視できる程度(-1.2%)でしかなかった。
【0096】
経口投与される化合物3102(単回投与)について最大および最小有効用量を決定するために、e64研究の結果に基づいて、追加研究を計画した。この研究の結果を図16および表16に記載する。化合物3102は、180m/kgまでは、重度の体重減少を示すことなく、単回投与として経口投与することができた。化合物3102は試験した全ての用量で(低用量側の30および15mg/kg用量レベルでさえ)明確に有効であり、賦形剤対照の値を超えるMDS値を示した。部分退縮は、高用量側の三つの用量180、150および120mg/kgで観察された(それぞれ1、2および2例)。60mg/kgでは1例の処置関連死が観察された。これらの結果は、化合物3102が、単回経口投与として与えられた場合に、マウス中のPanc-1腫瘍の処置に著しく有効であることを示している。
【0097】
【表15】

【0098】
【表16】

【実施例15】
【0099】
研究Panc-1 e79およびe87:化合物3102、反復投与、Q4D×4、経口
Panc-1腫瘍異種移植片モデルにおける化合物3102の有効性を比較するために、Q4D×4の処置スケジュールで化合物3102を経口投与する反復投与研究を企てた(研究e79およびe87)。これらの研究の目的は出発用量レベルを決定することにあり、そのデータを図17および図18ならびに表17および表18に記載する。研究e79の結果は、Q4D×4のスケジュールで経口投与された化合物3102が、試験した全ての用量レベルで有効であり(図17)、高用量側の二つ、すなわち60および45mg/kgではとりわけ有効であって、これらの用量では6/6例の部分退縮が認められたことを示している(表17)。低用量側の30mg/kgはPanc-1腫瘍成長の減速および1例の部分退縮を伴った。中等度の体重減少(-11.1%)が60mg/kg用量群で観察された。研究e87では、より高用量の70mg/kgにおける有効性のレベルがさらに高いことを実証することにより、これらの結果をさらに確認した(図18)。6/6例の部分退縮を伴った。70mg/kg用量群に伴う体重減少は中等度(-9.9%)でしかなかった。研究e79よびe87から得られるデータは、Q4D×4の反復投与スケジュールで1例の完全退縮および5例の部分退縮をもたらした経口投与化合物3102の有効性を、明確に実証している(表18)。試験した残り二つの用量、すなわち50および60mg/kgは、どちらも6/6例の部分退縮を伴った。70mg/kg用量群に伴う体重減少は中等度(-9.9%)でしかなかった。研究e79よびe87から得られるデータは、Q4D×4の反復投与スケジュールで与えられる経口投与化合物3102の有効性を、明確に実証している。
【0100】
【表17】

【0101】
【表18】

【実施例16】
【0102】
研究Panc e95:化合物3102(経口)の反復投与Q4D×4およびQ7D×3ならびにパクリタキセル(IV)およびTaxotere(登録商標)(IV)との比較
Panc-2腫瘍異種移植片モデルにおいて、さまざまな用量での化合物3102の有効性を、それぞれの至適用量および至適スケジュールでのパクリタキセルおよびTaxotere(登録商標)の有効性と比較するために、二つの投与スケジュールQ4D×4およびQ7D×3で化合物3102を経口投与する反復投与研究を企てた(研究e95)。結果を図19および図20ならびに表19および表20に記載する。Q4D×4スケジュールの場合、経口投与された化合物3102は、HT-29腫瘍の成長を遅らせるのに、試験した全ての用量で有効であり、最低用量(30mg/kg)を除く全ての用量で、初期移植サイズを減少させるのに有効だった。パクリタキセルとTaxotere(登録商標)はどちらも、その至適用量および至適スケジュールでは、経口投与された化合物3102と同等に有効だったが、Taxotere(登録商標)処置動物では体重減少が化合物3102のどの用量で観察されたものよりも大きかった(表19)。
【0103】
Q7D×3スケジュールでは、最も低用量側の二用量(30.0mg/kgおよび15.0mg/kg)を除いて、経口投与された化合物3102の全ての用量が、HT-29腫瘍の成長の劇的な減速と、腫瘍移植サイズの減少(形成された腫瘍の縮小)をもたらした。パクリタキセルとTaxotere(登録商標)はどちらも、経口投与された化合物3102と同等に有効だったが、先の研究と同様に、Taxotere(登録商標)処置動物は、試験した最高用量の化合物3102(180mg/kg)でしか上回ることのないレベルの重度の体重減少を起こした。
【0104】
これら二つの研究の結果は、経口投与された化合物3102が、マウス中のHT-29腫瘍の処置に関して、(それぞれの至適用量および至適スケジュールで)静脈内投与されたパクリタキセルまたはTaxotere(登録商標)と同じ程度に有効であることを示している。また、化合物3102は、最も高い用量を除く、与えられた全ての用量で体重減少が中等度であることによって示されるとおり、与えられた治療用量では比較的無毒である。これは、このモデルでTaxotere(登録商標)処置マウスが示す体重減少とは対照的である。
【0105】
【表19】

【0106】
【表20】

【実施例17】
【0107】
研究DLD e07:パクリタキセルおよびTaxotere(登録商標)を比較対象とする化合物3102、経口および静脈内、反復投与Q4D×4
多剤抵抗性DLD-1ヒト結腸癌を使って、Q4D×4の反復投与スケジュールで経口投与および静脈内投与された化合物3102の抗腫瘍活性を評価した。このモデルで、パクリタキセルおよびTaxotere(登録商標)も、それらの至適用量、至適経路(IV)および至適スケジュールで評価した。この研究の結果を図21および表21に記載する。経口化合物3102は、試験した全ての用量(80、70および50mg/kg)で、DLD-1結腸異種移植片における腫瘍成長を減少させるのに、著しく有効だった。試験した化合物3102の最高用量、すなわち80mg/kgは、腫瘍重量を初期移植物の重量未満に減少させるのに、とりわけ有効だった。静脈内投与された35mg/kgの化合物3102も、腫瘍成長を抑制するのに、同様に有効だった。しかし、パクリタキセルおよびTaxotere(登録商標)は、DLD-1腫瘍に対して有意な抗腫瘍活性を示すことができず、MDS値は対照の範囲内だった。この研究の結果は、経口投与およびiv投与された化合物3102が、マウス中の多剤抵抗性DLD-1結腸腫瘍の処置に有効であることを示している。
【0108】
【表21】

【実施例18】
【0109】
研究SW480 e11:パクリタキセルおよびTaxotere(登録商標)を比較対象とする化合物3102、経口および静脈内、反復投与Q4D×4
SW480ヒト結腸癌を使って、Q4D×4の反復投与スケジュールで経口投与および静脈内投与された化合物3102の抗腫瘍活性を評価した。このモデルで、パクリタキセルおよびTaxotere(登録商標)も、それらの至適用量、至適経路(IV)および至適スケジュールで評価した。この研究の結果を図22および表22に記載する。経口化合物3102は、試験した全ての用量(90、70および50mg/kg)で、SW480結腸異種移植片における腫瘍成長を減少させるのに有効だった。試験した化合物3102の最高用量、すなわち90mg/kgは、腫瘍成長を減少させるのに、とりわけ有効だった。静脈内投与された30mg/kgの化合物3102も、腫瘍成長を抑制するのに、同様に有効だった。化合物3102 70mg/kg用量では1例の処置関連死が観察され、対照では1例の非処置関連死が起こった。パクリタキセルおよびTaxotere(登録商標)は、低用量の化合物3102(経口投与と静脈内投与の両方)と比較して、腫瘍成長の抑制に関して同じ程度に有効であるか、有効性がわずかに低かった(表22)。また、Taxotere(登録商標)30mg/kgでは2例の非処置関連死があり、Taxotere(登録商標)25mg/kg群では1例の非処置関連死および1例の処置関連死があった。この研究の結果は、経口投与およびiv投与された化合物3102が、マウス中のSW480結腸腫瘍の処置に有効であることを示している。
【0110】
【表22】

【実施例19】
【0111】
研究786-0 e89:パクリタキセルおよびTaxotere(登録商標)を比較対象とする化合物3102、経口および静脈内、反復投与Q4D×4
786-0ヒト腎癌を使って、Q4D×4の反復投与スケジュールで経口投与および静脈内投与された化合物3102の抗腫瘍活性を評価した。このモデルで、パクリタキセルおよびTaxotere(登録商標)も、それらの至適用量、至適経路(IV)および至適スケジュールで評価した。この研究の結果を図23ならびに表23および表24に記載する。図23および表23は、化合物3102の経口投与と静脈内投与がどちらも、それぞれのMDS値が対照と比較してわずかに高いことによって示されるとおり、ヌードマウスにおける786-0腫瘍の成長に中等度の減速をもたらしたことを示している。パクリタキセルおよびTaxotere(登録商標)も同様の作用を持っていた。表24は、腫瘍成長に関係する群差の統計解析である。このデータは、高用量(80mg/kg)の経口投与3102処置群と30mg/kgの静脈内3102処置群がどちらも、ヌードマウスにおける786-0腫瘍の成長を、賦形剤対照と比較して有意に遅らせることができたことを示している(群には有意差がある)。Taxotere(登録商標)も、両方の投薬量レベル(30mg/kgおよび25mg/kg)で、786-0腫瘍成長を、賦形剤対照と比較して遅らせることができた(群には有意差がある)。しかし、パクリタキセル処置は、腫瘍の成長を、対照と比較して有意に遅らせることはないようだった。これらの結果は、Q4D×4スケジュールで経口投与された化合物3102が、ヌードマウスにおける786-0腎臓腫瘍の成長を遅らせるのに有効であることを示している。
【0112】
【表23】

【0113】
【表24】

【実施例20】
【0114】
研究MSTO61604:Taxotere(登録商標)を比較対象とする化合物3102、経口、反復投与Q4D×4
化合物3102を、MSTO-211Hヒト中皮腫マウス異種移植片モデルで、抗腫瘍活性について評価した。化合物3102を、Q4D×4スケジュールおよび60mg/kgの用量で、経口投与した。Taxotere(登録商標)を比較対象として使用し、30mg/kgの用量およびQ7D×3スケジュールで静脈内投与した。結果を図24および図25に記載する。賦形剤対照群の腫瘍は27日目までに1250mgの最大腫瘍重量に到達した。化合物3102は、MSTO-211H腫瘍成長を遅らせ、腫瘍サイズおよび腫瘍重量を元の移植物のサイズおよび重量未満に減少させるのに、著しく有効だった。Taxotere(登録商標)は腫瘍成長の減速に中等度の有効性しかなく、Taxotere(登録商標)の最後の投与後は、腫瘍が迅速に成長した。化合物3102群およびTaxotere(登録商標)群における体重変化は最初の15日間は似ていたが、化合物3102群はTaxotere(登録商標)群よりも迅速に体重を回復した(図25)。これらの結果は、反復経口投与される化合物3102の方が、腫瘍成長の減速に関して、静脈内Taxotere(登録商標)よりも優れていることと、より迅速な体重の回復によって示されるとおり、毒性がより低いようであることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】A549ヒト肺細胞(対照-無処理)の写真。
【図2】化合物3102で処理したA549ヒト肺細胞の写真。
【図3】HT-29結腸腫瘍(e52)研究(IV、単回投与)において化合物3102(対照と比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図4】HT-29結腸腫瘍(e51)研究(IV、反復投与(Q4D×4))において化合物3102(対照と比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図5】HT-29結腸腫瘍(e60)研究(経口、単回投与)において化合物3102(対照と比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図6】HT-29結腸腫瘍(e76)研究(経口、反復投与(Q4D×4))において化合物3102(対照と比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図7】HT-29結腸腫瘍(e103)研究(経口、単回投与)において化合物3102(対照と比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図8】HT-29結腸腫瘍(e79)研究(経口、反復投与(Q4D×4))において化合物3102(対照と比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図9】HT-29結腸腫瘍(e80)研究(経口、反復投与(Q7D×3))において化合物3102(対照と比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図10】HT-29結腸腫瘍(e105)研究(経口、反復投与(Q4D×4))において化合物3102(パクリタキセルおよびドセタキセルと比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図11】HT-29結腸腫瘍(e105)研究(経口、反復投与(Q7D×3))において化合物3102(パクリタキセルおよびドセタキセルと比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図12】Panc-1膵腫瘍(e59)研究(IV、単回投与)において化合物3102(対照と比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図13】Panc-1膵腫瘍(e57)研究(IV、反復投与(QOD×5))において化合物3102(パクリタキセルと比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図14】Panc-1膵腫瘍(e92)研究(IV、反復投与)において化合物3102(ドセタキセルと比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図15】Panc-1膵腫瘍(e64)研究(経口、単回投与)において化合物3102(対照と比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図16】Panc-1膵腫瘍(e93)研究(経口、単回投与)において化合物3102(対照と比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図17】Panc-1膵腫瘍(e79)研究(経口、反復投与、Q4D×4)において化合物3102(対照と比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図18】Panc-1膵腫瘍(e87)研究(経口、反復投与、Q4D×4)において化合物3102(対照と比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図19】Panc-1膵腫瘍(e95)研究(経口、反復投与(Q4D×4))において化合物3102(パクリタキセルおよびドセタキセルと比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図20】Panc-1膵腫瘍(e95)研究(経口、反復投与(Q7D×3))において化合物3102(パクリタキセルおよびドセタキセルと比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図21】DLD-1結腸腫瘍研究(経口、反復投与(Q4D×4))において化合物3102(パクリタキセルおよびドセタキセルと比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図22】SW480結腸腫瘍研究(経口およびIV、反復投与(Q4D×4))において化合物3102(パクリタキセルおよびドセタキセルと比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図23】786-0腎腫瘍研究(経口、反復投与(Q4D×4))において化合物3102(パクリタキセルおよびドセタキセルと比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図24】MSTO-211H中皮腫研究(経口、反復投与(Q4D×4))において化合物3102(ドセタキセルと比較)で処置したマウスに関する中央腫瘍成長曲線を表す図。
【図25】MSTO-211H中皮腫研究(経口、反復投与(Q4D×4))において化合物3102(ドセタキセルと比較)で処置したマウスに関する体重変化を表す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物においてパクリタキセルまたはドセタキセル抵抗性腫瘍の成長を阻害する方法であって、式:
【化1】

で示されるタキサンまたはその薬学的に許容できる塩と少なくとも一つの薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物を処置有効量で投与することを含む方法。
【請求項2】
腫瘍がパクリタキセルに対して抵抗性である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腫瘍が乳癌、肺癌、膵癌、結腸癌、卵巣癌または前立腺癌である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
腫瘍が結腸癌または卵巣癌である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
腫瘍が乳癌である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
腫瘍がHCT116結腸癌、HT-29結腸癌、SW480結腸癌、DLD-1結腸癌、PANC-1膵腺癌、PC-3前立腺癌、LNCaP前立腺癌、IA9卵巣癌、IA9-PTX10卵巣癌、IA9-PTX22卵巣癌、A375メラノーマ、786-0腎癌、またはMSTO-211H中皮腫である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
腫瘍がHCT116結腸癌、HT-29結腸癌、DLD-1結腸癌、PANC-1膵腺癌、PC-3前立腺癌、LNCaP前立腺癌、IA9卵巣癌、IA9-PTX10卵巣癌、またはIA9-PTX22卵巣癌である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
腫瘍がVM46ヒト結腸癌、DLD-1ヒト結腸癌、1A9-PTX10卵巣癌、または1A9-PTX22卵巣癌である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記医薬組成物を経口投与する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記医薬組成物を非経口投与する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記哺乳動物をデキサメタゾン、ジフェンヒドラミン、または該医薬組成物の投与によって起こる有害反応を最小限に抑える他の薬剤で前以て処置し、該医薬組成物が界面活性剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記界面活性剤がポリソルベート80、ポリエトキシル化ヒマシ油、またはその組み合わせである請求項11に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公表番号】特表2008−530122(P2008−530122A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555290(P2007−555290)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/004914
【国際公開番号】WO2006/088767
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(501304467)フロリダ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション・インコーポレイテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】Florida State University Research Foundation, Inc.
【Fターム(参考)】