説明

C17−アルコール混合物の(メタ)アクリラートの製造方法

少なくとも1種の酸性触媒及び少なくとも1種の重合防止剤の存在下で、かつ水とアゼオトロープを形成する溶剤の存在下で、(メタ)アクリル酸をC17−アルコール混合物と反応させることによるC17−アルコール混合物の(メタ)アクリラートの製造方法であって、その際にエステル化が、循環蒸発器を備えた反応器中で実施され、アゼオトロープが留去及び凝縮され、凝縮物が水相と有機相とに分かれ、かつその際にC17−アルコール混合物が2.8〜3.7の平均分枝度(イソ指数)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸を2.8〜3.7の平均分枝度(イソ指数(Iso-Index))を有するC17−アルコール混合物でエステル化することによるC17−アルコール混合物の(メタ)アクリラートの不連続製造方法に関する。
【0002】
(メタ)アクリル酸という概念は、本明細書において、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を略称して表し、(メタ)アクリル酸エステルは、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルを略称して表し、そして(メタ)アクリラートは、メタクリラート及び/又はアクリラートを略称して表す。
【0003】
17−アルコール混合物の(メタ)アクリラートをベースにして製造されるポリマーもしくはコポリマーは、ポリマー分散液の形で、より大きな経済的な意味がある。これらは、例えば、接着剤、塗料又は繊維助剤、皮革助剤及び紙助剤として使用される。
【0004】
(メタ)アクリル酸をC8〜C20−モノアルコールで酸触媒エステル化することによる高級アルキル化された(メタ)アクリラートの製造は、既に知られており、例えば国際公開(WO-A1)第2002/050014号及び国際公開(WO-A1)第2002/050015号に記載されている。
【0005】
独国特許出願公開(DE-A1)第2 317 226号明細書からは、(メタ)アクリル酸のTi触媒によるエステル交換によるC10〜C18−アルコールの混合物からの(メタ)アクリル酸エステルの製造方法が知られている。エステル化は、それに応じて、重合防止剤としての2,6−ジ−t−ブチルパラクレゾール(TBK)及び吸着可能な炭の組合せの存在下で行われる。触媒として使用されるチタンアルコラートは、温度が高められるに従い加水分解され、前記炭と一緒にろ別される。
【0006】
特開平(JP-A)11-80082号公報には、酸性触媒、例えばp−トルエンスルホン酸及びメタンスルホン酸の存在下でのC8〜C22−アルコールでの(メタ)アクリル酸のエステル化が開示されている。
【0007】
メタクリル酸メチルと長鎖C3〜C20−アルコールとのエステル交換は、特開平05-070404号公報に記載されている。このエステル交換は、それに応じて、触媒として酸化カリウム、酸化マグネシウム又は酸化ナトリウム又は水酸化カリウム、水酸化マグネシウム又は水酸化ナトリウムの存在下で行われる。
【0008】
さらにまた、直鎖状で、飽和又は不飽和のC8〜C22−脂肪アルコールでの(メタ)アクリル酸のエステル化が記載されており、その際に前記長鎖脂肪アルコールはエステル化前に、ボラン酸ナトリウム上での蒸留により精製される。
【0009】
前記の明細書のいずれにも、C17−アルコールの(メタ)アクリラートの製造は明示的に開示されていない。特に、2.8〜3.7の平均分枝度を有するC17−アルコール混合物の使用は開示されていない。C17−アルコール混合物の分枝度及びその結果としてそれらから生じる(メタ)アクリル酸エステルの分枝度も、特に、多様な工業用途のための(コ)ポリマーを製造するためのモノマー及びコモノマーとしての(メタ)アクリル酸エステルの使用にとって重要である、それというのも、好ましくは、高すぎない分枝度を有するモノマー及びコモノマーが使用されるべきだからである。その代わりに、前記の刊行物は本質的には、C16−、C18−及びC20−アルキル(メタ)アクリラートの合成に関する。
【0010】
本発明の課題は、故に、C17−アルコール混合物の(メタ)アクリラートが高い収率で及び高い純度で得られ、高すぎる平均分枝度を有しないC17−アルコール混合物の(メタ)アクリラートの製造方法を提供することであった。さらに、低い色数を有する生成物が生じるべきである。
【0011】
前記課題は、少なくとも1種の酸性触媒及び少なくとも1種の重合防止剤の存在下で、かつ水とアゼオトロープを形成する溶剤の存在下で、(メタ)アクリル酸をC17−アルコール混合物と反応させることによるC17−アルコール混合物の(メタ)アクリラートの製造方法により解決され、その際にエステル化が、循環蒸発器を備えた反応器中で実施され、アゼオトロープが留去及び凝縮され、凝縮物が水相と有機相とに分かれ、かつその際にC17−アルコール混合物が2.8〜3.7の平均分枝度(イソ指数)を有する。
【0012】
本発明による方法において、2.8〜3.7の平均分枝度(イソ指数)を有するC17−アルコール混合物が使用される。好ましくは、C17−アルコール混合物は、2.9〜3.6、好ましくは3.01〜3.5及び特に3.05〜3.4の平均分枝度を有する。極めて特に好ましくは、C17−アルコール混合物は、約3.1の範囲内の平均分枝度を有する。
【0013】
17−アルコール混合物の平均分枝度及びその結果としてそれらから生じる(メタ)アクリル酸エステルの平均分枝度も発明に本質的である、それというのも、多様な工業用途のための(コ)ポリマーを製造するためのモノマー及びコモノマーとしてのこれらの(メタ)アクリル酸エステルの使用にとって、高すぎない平均分枝度が重要だからである。
【0014】
本発明の意味での分枝度として、アルコールの分子中のメチル基の数−1が定義されている。平均分枝度は、試料の分子の分枝度の統計学的平均値である。平均分枝度は、次のように1H−NMR分光分析により求めることができる:そのためには、アルコールもしくはアルコール混合物の試料はまず最初に、トリクロロアセチルイソシアナート(TAI)での誘導体化にかけられる。その際に、アルコールは、カルバミン酸エステルへ変換される。このようにしてエステル化された第一級アルコールの信号は、δ=4.7〜4.0ppmであり、(存在している限りでは)エステル化された第二級アルコールの信号は約5ppmであり、かつ試料中に存在している水は、TAIと完全に反応してカルバミン酸になる。全てのメチルプロトン、メチレンプロトン及びメチンプロトンは、2.4〜0.4ppmの範囲内である。<1ppmの信号は、その際にメチル基に帰属されている。こうして得られたスペクトルから、平均分枝度(イソ指数)は次のように計算されることができる:
イソ指数=((F(CH3)/3)/(F(CH2−OH)/2))−1
ここでF(CH3)は、メチルプロトンに対応する信号面積を表し、かつF(CH2−OH)は、CH2−OH基中のメチレンプロトンの信号面積を表す。
【0015】
17−アルコール混合物は、その際に、C17−アルコール混合物の全質量を基準として、好ましくは少なくとも95質量%、特に好ましくは少なくとも98質量%、特に少なくとも99質量%の、炭素原子17個を有するアルコールの含量を有する。殊に、本質的には(すなわち99.5質量%超、殊に99.9質量%超が)炭素原子17個を有するアルコールからなるC17−アルコール混合物である。
【0016】
この種のC17−アルコール混合物の製造については、この箇所では、国際公開(WO-A1)第2009/124979号及びその中で引用された文献が参照される。
【0017】
前記のC17−アルコール混合物に有利であるのは、それらが少なくとも95質量%の高い純度及び2.8〜3.7の平均分枝度を有することである。(メタ)アクリル酸エステルの本発明による製造方法により、故に、高い純度を有するC17−アルキル(メタ)アクリラートが同様に得られる。これまで商業的に得ることができるC17−アルキル(メタ)アクリラートは、通常、C16−及びC18−アルキル(メタ)アクリラートの混合物である。その結果として、異なるバッチ中の混合比及び異性体比は、著しく異なりうる。このことは、それらから生じる(コ)ポリマーの性質にこれまで不利な影響を及ぼしていた。
【0018】
その際に、本発明による方法により製造されるC17−アルコール混合物の(メタ)アクリル酸エステルの低い凝固点が特に有利である。高い純度及び一定の分枝度に基づいて、凝固点(大気圧での)は0℃未満、好ましくは−20℃未満及び特に好ましくは−40℃未満である。これに反して、前記のこれまで商業的に得ることができるC17−アルキル(メタ)アクリラートは、0℃を超える凝固点(大気圧での)を有する。
【0019】
本発明による方法は有利である、それというのも、高いエステル化度が達成され、かつ高い収率が達成されるからである。さらに、エステル化又は後処理の際に本質的なポリマー形成を起こさず、かつ最終生成物は大体において無色である。
【0020】
溶剤とアゼオトロープを形成し、エステル化の際に生じる水は、反応器に載置された塔を経て外へ移され、かつ凝縮される。
【0021】
生じる凝縮物(アゼオトロープ)は、独国特許出願公開(DE-A1)第199 41 136号明細書及び独国特許出願公開(DE-A1)第100 63 175号明細書に記載されているように、外に移され、かつ有利に後処理される(含まれる酸の逆抽出)水相と、還流として塔へ及び場合により部分的に反応器及び/又は蒸発器へ返送される溶剤相とに分かれる。
【0022】
含まれる(メタ)アクリル酸の逆抽出は、好ましくは抽出剤として使用される溶剤、例えばシクロヘキサンを用いて、10〜40℃の温度及び1:5〜30、好ましくは1:10〜20の水相対抽出剤の比で行われる。抽出剤中に含まれる酸は、エステル化へ好ましくは直接導かれることができる。
【0023】
エステル化の終了後に、熱い反応混合物は急速に冷却され、かつ場合により溶剤で希釈される。
【0024】
引き続き、溶剤は、目的エステルから蒸留により分離される。
【0025】
本発明による方法は本質的には、次の段階からなる:
1)エステル化
エステル化装置は、循環蒸発器を備えた反応器と、凝縮器及び相分離容器を備え、載置された蒸留塔とからなる。
【0026】
反応器は、例えば、二重壁加熱又は/及び内部にある加熱コイルを備えた反応器であってよい。好ましくは、外部にある熱交換器及び自然循環又は強制循環(ポンプの使用下での)を備えた反応器が使用される。自然循環の場合に、サイクル流は、機械的な補助手段なしで実現される。
【0027】
適した循環蒸発器は、当業者に知られており、例えばR. Billet, Verdampfertechnik, HTB-Verlag, Bibliographisches Institut Mannheim, 1965, 53に記載されている。循環蒸発器の例は、管束熱交換器、プレート式熱交換器等である。
【0028】
もちろん、循環中に複数の熱交換器が存在していてもよい。
【0029】
蒸留塔は、それ自体として知られた構造形式のものであり、かつ常用の内部構造物を有する。塔内部構造物として、原則的に慣用の全ての内部構造物、例えばトレイ、規則充填物及び/又は不規則充填物が考慮に値する。トレイの中では、バブルキャップトレイ、シーブトレイ、バルブトレイ、Thormannトレイ及び/又はデュアルフロートレイが好ましく、不規則充填物の中では、リング、ヘリックス、サドル又はメッシュを有するものが好ましい。
【0030】
通例、5〜20の理論段で十分である。
【0031】
凝縮器及び分離容器は、従来の構造形式のものである。
【0032】
(メタ)アクリル酸及びC17−アルコール混合物は、通例、当量で使用されるが、しかし不足量又は過剰量の(メタ)アクリル酸が使用されることもできる。
【0033】
(メタ)アクリル酸並びに(メタ)アクリル酸エステルは、重合可能な化合物である。故に、既にエステル化の処理工程において、十分な重合防止が顧慮されるべきである。適した重合防止剤は、さらに以下に開示される。そこに挙げた安定剤の中では、エステル化のためには、特に塩化銅(II)が適している。
【0034】
好ましくは、過剰量の(メタ)アクリル酸が、エステル化されるべきヒドロキシ基(当量)あたり、5〜100モル%、好ましくは5〜50モル%及び特に好ましくは5〜10モル%に調節される。
【0035】
エステル化触媒として、常用の鉱酸及びスルホン酸、好ましくは硫酸、リン酸、アルキルスルホン酸(例えばメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸)及びアリールスルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸又はドデシルベンゼンスルホン酸)又はそれらの混合物が考慮に値するが、しかし酸性イオン交換体又はゼオライトも考えられる。
【0036】
特に好ましいのは、硫酸、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸又はそれらの混合物である。
【0037】
これらは、エステル化混合物を基準として、通例0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜5質量%及び特に好ましくは1〜4質量%の量で、使用される。
【0038】
必要な場合には、エステル化触媒は、反応混合物から、イオン交換体を用いて、除去されることができる。イオン交換体は、その際に、直接、反応混合物へ添加され、引き続きろ別されることができ、又は反応混合物は、イオン交換体床を経て導かれることができる。
【0039】
好ましくは、エステル化触媒は、反応混合物中にそのままにされる。
【0040】
反応水をアゼオトロープにより除去するための溶剤として、とりわけ脂肪族、環式脂肪族及び芳香族の炭化水素又はそれらの混合物が適している。
【0041】
好ましくは、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン又はキシレンが使用される。特に好ましいのは、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及びトルエンである。
【0042】
使用される量は、(メタ)アクリル酸及びC17−アルコール混合物の和を基準として、例えば10〜200質量%、好ましくは20〜100質量%、特に好ましくは30〜100質量%である。
【0043】
反応温度は、一般的に60〜140℃、好ましくは70〜110℃、極めて特に好ましくは75〜100℃である。初期温度は、一般的に100℃未満、好ましくは90℃未満及び特に好ましくは80℃未満である。通例、エステル化の最終温度は、初期温度よりも5〜30℃高い。エステル化の温度は、独国特許出願公開(DE-A1)第199 41 136号明細書及び独国特許出願公開(DE-A1)第100 63 175号明細書に記載されるように、反応混合物中の溶剤濃度の変更により決定され、かつ制御されることができる。
【0044】
エステル化は、加圧せずに、しかし加圧又は減圧でも実施されることができ、好ましくは常圧で操作される。
【0045】
反応時間は、通例30分〜10時間、好ましくは1〜6時間及び特に好ましくは2〜4時間である。
【0046】
出発物質である(メタ)アクリル酸及びC17−アルコール混合物、並びにその他の成分、例えば溶剤、重合防止剤(混合物)及び触媒の添加は、任意に行われることができる。
【0047】
好ましい一実施態様において、溶剤及びC17−アルコール混合物は少なくとも部分的に、好ましくは完全に、反応器中に装入され、かつ加熱される。循環が運転されると直ちに、残りの成分である(メタ)アクリル酸、重合防止剤(混合物)及び触媒は、一緒に又は互いに別個に、計量供給されることができる。計量供給は、通例0.5〜5時間かけて、連続的に又は少しずつ行われる。
【0048】
使用可能な(メタ)アクリル酸は制限されておらず、かつ粗(メタ)アクリル酸の場合には、例えば次の成分を有していてよい:
(メタ)アクリル酸 90〜99.9質量%
酢酸 0.05〜3質量%
プロピオン酸 0.01〜1質量%
ジアクリル酸 0.01〜5質量%
水 0.05〜5質量%
アルデヒド類 0.01〜0.3質量%
防止剤 0.01〜0.1質量%
(無水)マレイン酸 0.001〜0.5質量%。
【0049】
使用される粗(メタ)アクリル酸は、通例、100〜600ppm、好ましくは200〜500ppmの、以下に記載される重合防止剤の1種、好ましくはフェノチアジン又はヒドロキノンモノメチルエーテル又は匹敵しうる安定化を可能にする他の安定剤で、安定化されている。
【0050】
もちろん、例えば次の純度を有する純(メタ)アクリル酸も使用されることができる:
(メタ)アクリル酸 99.7〜99.99質量%
酢酸 50〜1000質量ppm
プロピオン酸 10〜500質量ppm
ジアクリル酸 10〜500質量ppm
水 50〜1000質量ppm
アルデヒド類 1〜500質量ppm
防止剤 1〜300質量ppm
(無水)マレイン酸 1〜200質量ppm。
【0051】
使用される純(メタ)アクリル酸は、通例、100〜400ppm、好ましくは200〜300ppmの、以下に記載される重合防止剤の1種、好ましくはフェノチアジン又はヒドロキノンモノメチルエーテル又は匹敵しうる安定化を可能にする他の安定剤で、安定化されている。
【0052】
反応の際に形成される水は、溶剤とのアゼオトロープとして連続的に反応器に載置された塔を経て、反応混合物から除去され、かつ凝縮され、その際に凝縮物は、水相と有機相とに分かれる。
【0053】
通例0.1〜10質量%の(メタ)アクリル酸を含有する凝縮物の水相は、分離され、かつ外へ移される。有利には、その中に含まれる(メタ)アクリル酸は、抽出剤で、例えばシクロヘキサンで、10〜40℃の温度及び1:5〜30、好ましくは1:10〜20の水相対抽出剤の比で抽出され、かつエステル化へ返送されることができる。
【0054】
有機相は、完全にか又は部分的に還流として塔へ返送されることができ、かつ場合により過剰の残部は、反応器へ返送されることができる。この相の一部、好ましくは有機相の少なくとも10質量%、特に好ましくは少なくとも15質量%及び極めて特に好ましくは少なくとも20質量%は、自然循環を使用する場合に、場合により自然循環を促進するために、反応器の循環サイクルの熱交換器へ導入されることができる。
【0055】
有利な変法は、有機相(溶剤相)が貯蔵容器へ導かれ、かつこの容器から、それぞれ必要な溶剤量が、還流の維持のため、循環蒸発器へ導通するため、並びに反応及び抽出用の溶剤として取り出されることにある。
【0056】
循環をさらに促進するために、不活性ガス、好ましくは酸素含有ガス、特に好ましくは空気又は空気及び窒素の混合物(リーンな空気)が、反応混合物の体積を基準として、例えば0.1〜1m3/m3h、好ましくは0.2〜0.8m3/m3h及び特に好ましくは0.3〜0.7m3/m3hの量で、循環へ導かれることができる。
【0057】
エステル化の進行は、排出された水量の追跡及び/又は反応器中の(メタ)アクリル酸濃度の低下により追跡されることができる。
【0058】
反応は、例えば、理論的に予測されうる水量の90%が溶剤により排出されると直ちに、好ましくは少なくとも95%で及び特に好ましくは少なくとも98%で、終了されることができる。
【0059】
エステル化の終了後に、反応混合物は、常用の方法で10〜30℃の温度に急速に冷却され、場合により溶剤の添加により、60〜80%の目的エステル濃度に調節される。
【0060】
2)予備洗浄及び中和
反応混合物は、場合により、洗浄装置中で水又は5〜30質量%の、好ましくは5〜20質量%の、特に好ましくは5〜15質量%の食塩溶液、塩化カリウム溶液、塩化アンモニウム溶液、硫酸ナトリウム溶液又は硫酸アルミニウム溶液、好ましくは食塩溶液で処理される。
【0061】
反応混合物:洗液の量比は、通例、1:0.1〜1、好ましくは1:0.2〜0.8、特に好ましくは1:0.3〜0.7である。
【0062】
洗浄は、例えば撹拌容器中又は従来の他の装置中、例えば塔又はミキサー−セトラー装置中で実施されることができる。
【0063】
プロセス工学的には、本発明による方法における洗浄のためには、それ自体として知られた全ての抽出方法及び洗浄方法並びに抽出装置及び洗浄装置、例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 6th ed, 1999 Electronic Release, 章: Liquid - Liquid Extraction - Apparatusに記載されているものが使用されることができる。例えば、これは、一段階又は多段階の、好ましくは一段階の抽出、並びに並流又は向流の運転方式のものであってよい。
【0064】
予備洗浄は、好ましくは、金属塩、好ましくは銅又は銅塩が防止剤として(共に)使用される場合に、使用される。
【0065】
なお少量の触媒及び主要量の過剰な(メタ)アクリル酸を含有する、予備洗浄の有機相は、5〜25質量%、好ましくは5〜20質量%、特に好ましくは5〜15質量%の塩基の水溶液、例えばカセイソーダ、カセイカリ、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水又は場合により5〜15質量%の食塩、塩化カリウム、塩化アンモニウム又は硫酸アンモニウムが添加されていてよい炭酸カリウムで、好ましくはカセイソーダ又はカセイソーダ−食塩溶液で、中和される。
【0066】
塩基の添加は、装置中の温度が、35℃超に上昇せず、好ましくは20〜35℃であり、かつpH値が10〜14であるように行われる。中和熱の除去は、場合により内部にある冷却蛇管を用いて又は二重壁冷却を介して容器を冷却することにより、行われる。
【0067】
反応混合物:中和液の量比は、通例1:0.1〜1、好ましくは1:0.2〜0.8、特に好ましくは1:0.3〜0.7である。
【0068】
装置に関して、上記のことが当てはまる。
【0069】
任意に、中和された反応混合物から痕跡量の塩基又は塩を除去するために、予備洗浄に類似して実施されることができる後洗浄が有利でありうる。
【0070】
3)溶剤蒸留
洗浄された反応混合物は、溶剤の分離後に、100〜500ppm、好ましくは200〜500ppm及び特に好ましくは200〜400ppmが目的エステル中に含まれているような量の貯蔵安定剤、好ましくはヒドロキノンモノメチルエーテルと混合される。
【0071】
主要量の溶剤の蒸留による分離は、例えば、二重壁加熱及び/又は内部にある加熱コイルを備えた撹拌釜中で、減圧下、例えば20〜700mbar、好ましくは30〜500mbar及び特に好ましくは50〜150mbar及び40〜80℃の温度で行われる。
【0072】
もちろん、蒸留は、流下薄膜型蒸発缶又は薄膜型蒸発缶中で行われてもよい。そのためには、反応混合物は、好ましくは何度も循環して、減圧下、例えば20〜700mbar、好ましくは30〜500mbar、特に好ましくは50〜150mbar及び40〜80℃の温度で装置に導かれる。
【0073】
有利に、不活性ガス、好ましくは酸素含有ガス、特に好ましくは空気又は空気と窒素との混合物(リーンな空気)は、反応混合物の体積を基準として、例えば0.1〜1m3/m3h、好ましくは0.2〜0.8m3/m3h及び特に好ましくは0.3〜0.7m3/m3hが、蒸留装置へ導通されることができる。
【0074】
残留物中の残留溶剤含量は、蒸留後に、通例、5質量%未満、好ましくは0.5〜5質量%である。
【0075】
分離された溶剤は、凝縮され、かつ好ましくは再び使用される。
【0076】
(メタ)アクリル酸及びC17−アルコール混合物の(メタ)アクリル酸エステルは、重合可能な化合物である。故に、全ての処理工程において、十分な重合防止が顧慮されるべきである。望ましくない重合は、大きな熱量の発生に基づき、安全工学的に懸念されうる。
【0077】
故に、本発明による方法の場合に、エステル化反応並びに熱による分離は、好ましくは常用の量の、それ自体として知られた重合防止剤の存在下で行われる。通例、α,β−モノエチレン系不飽和モノマーを基準として、個々の物質につき、1〜10 000ppm、好ましくは10〜5 000ppm、特に好ましくは30〜2 500ppm及び特に50〜1 500ppmの適した安定剤が使用される。
【0078】
適した安定剤は、例えばN−オキシド(ニトロキシルラジカル又はN−オキシルラジカル、すなわち少なくとも1個の>N−O・基を有する化合物)、例えば4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバカート、4,4′,4″−トリス(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル)−ホスフィット又は3−オキソ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジン−N−オキシル;場合により1個又はそれ以上のアルキル基を有する一価又は多価のフェノール類、例えばアルキルフェノール類、例えばo−、m−又はp−クレゾール(メチルフェノール)、2−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−メチル−4−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−t−ブチル−4−メチルフェノール、4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェノール又は6−t−ブチル−2,4−ジメチルフェノール;キノン類、例えばヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2−メチルヒドロキノン又は2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン;ヒドロキシフェノール類、例えばブレンツカテキン(1,2−ジヒドロキシベンゼン)又はベンゾキノン;アミノフェノール類、例えばp−アミノフェノール;ニトロソフェノール類、例えばp−ニトロソフェノール;アルコキシフェノール類、例えば2−メトキシフェノール(グアイアコール、ブレンツカテキンモノメチルエーテル)、2−エトキシフェノール、2−イソプロポキシフェノール、4−メトキシフェノール(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、モノ−又はジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール;トコフェロール類、例えばα−トコフェロール並びに2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ヒドロキシベンゾフラン(2,2−ジメチル−7−ヒドロキシクマラン)、芳香族アミン、例えばN,N−ジフェニルアミン又はN−ニトロソ−ジフェニルアミン;フェニレンジアミン、例えばN,N′−ジアルキル−p−フェニレンジアミン、その際に前記アルキル基は同じか又は異なっていてよく、かつそれぞれ互いに独立して炭素原子1〜4個からなっていてよく、かつ直鎖状又は分枝鎖状であってよい、例えばN,N′−ジメチル−p−フェニレンジアミン又はN,N′−ジエチル−p−フェニレンジアミン、ヒドロキシルアミン、例えばN,N−ジエチルヒドロキシルアミン、イミン、例えばメチルエチルイミン又はメチレンバイオレット、スルホンアミド、例えばN−メチル−4−トルエンスルホンアミド又はN−t−ブチル−4−トルエンスルホンアミド、オキシム、例えばアルドキシム、ケトキシム又はアミドキシム、例えばジエチルケトキシム、メチルエチルケトキシム又はサリチルアルドキシム、リン含有化合物、例えばトリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィット、トリエチルホスフィット、次亜リン酸、又は亜リン酸のアルキルエステル;硫黄含有化合物、例えばジフェニルスルフィド又はフェノチアジン;金属塩、例えば銅塩又はマンガン塩、セリウム塩、ニッケル塩、クロム塩、例えばそれらの塩化物、硫酸塩、サリチル酸塩、トシラート、アクリル酸塩又は酢酸塩、例えば酢酸銅、塩化銅(II)、サリチル酸銅、酢酸セリウム(III)又はセリウム(III)エチルヘキサノアート、又はそれらの混合物であってよい。
【0079】
好ましくは、重合防止剤(混合物)として、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバカート、2−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、6−t−ブチル−2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−メチル−4−t−ブチルフェノール、次亜リン酸、酢酸銅、塩化銅(II)、サリチル酸銅及び酢酸セリウム(III)の群からの少なくとも1種の化合物が使用される。
【0080】
極めて特に好ましくは、フェノチアジン及び/又はヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)が重合防止剤として使用される。
【0081】
好ましくは、重合防止剤(混合物)は水溶液として使用される。
【0082】
安定化をさらに促進するために、酸素含有ガス、好ましくは空気又は空気と窒素との混合物(リーンな空気)が存在していてよい。
【0083】
エステル化の処理工程において、酸素含有ガスは好ましくは、塔の底部領域及び/又は循環蒸発器中へ計量供給される。
【0084】
本発明により製造されるC17−アルコール混合物の(メタ)アクリラートは、例えば分散液の製造におけるモノマー又はコモノマーとして使用され、これらの分散液はとりわけ接着剤、塗料又は繊維助剤、皮革助剤及び紙助剤として使用される。
【0085】
さらにまた、本発明による方法により製造されるC17−アルコール混合物の(メタ)アクリラートは、ポリマー中のコモノマーとして使用されることができ、これらのポリマーはそしてまた燃料油及び潤滑剤用の添加剤として及び特に燃料油における低温流動性向上剤として、使用される。この種の使用は、例えば欧州特許出願公開(EP-A1)第1 923 454号明細書に開示されている。
【0086】
次の実施例は、本発明の特質を説明するが、しかし本発明を限定するものではない。
【0087】
他に示されない場合には、パーセントは常に質量パーセントを意味し、かつ部は常に質量部を意味する。
【0088】
2009年11月27日付提出の、米国仮特許出願番号61/264,704は、文献参照により本明細書に取り込まれている。前記の教示に関して、本発明からの多数の変更及び相違が可能である。故に、本発明は、添付された特許請求の範囲内で、本明細書に特有に記載された以外にも、実施されることができるものである。
【0089】
実施例
エステル化装置(内部温度計、還流冷却器及び水分離器を備えた2Lの4つ口フラスコ)中で、C17−アルコール混合物でのアクリル酸のエステル化を実施した。その際に、シクロヘキサン800ml、ヘプタデカノール513g(2.0モル)(約3.0の平均分枝度)及び安定剤溶液3.0ml(ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)1.25g及び水37.5g中に溶解させた次亜リン酸3.25g)、20%塩化銅(II)溶液1.2mlを装入し、アクリル酸(MEHQ 200ppmで安定化)180.3g(2.5モル)を添加した。この混合物を、空気雰囲気下に加熱し、75℃の内部温度で、98%メタンスルホン酸9.6mlを添加した。還流しながら2時間沸騰させ、その際に連続的に水を分離した後、反応溶液を冷却した。
【0090】
生じた澄明な溶液に、7.5%塩化ナトリウム溶液240mlを添加した。12.5%カセイソーダ液160mlを用いて、13のpH値に調節した。振とう後、シクロヘキサン相を分離し、さらに二回、各240mlの7.5%塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、MEHQ 122mg(200ppm)を添加した。引き続き、溶剤を真空中で除去した。澄明な液体が得られた。
【0091】
ヘプタデシルアクリラートが552.4gの収量(89%)及び純度>95%並びに9のAPHA色数で得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸をC17−アルコール混合物と、少なくとも1種の酸性触媒及び少なくとも1種の重合防止剤の存在下で、かつ水とアゼオトロープを形成する溶剤の存在下で、反応させるにあたり、エステル化を、循環蒸発器を備えた反応器中で実施し、アゼオトロープを留去し、かつ凝縮させ、凝縮物を水相と有機相とに分けることによって、C17−アルコール混合物の(メタ)アクリラートを製造する方法であって、
17−アルコール混合物が、2.8〜3.7の平均分枝度(イソ指数)を有する
ことを特徴とする、C17−アルコール混合物の(メタ)アクリラートを製造する方法。
【請求項2】
17−アルコール混合物が、2.9〜3.6の平均分枝度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
17−アルコール混合物が、3.01〜3.5の平均分枝度を有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
17−アルコール混合物が、少なくとも95質量%の、炭素原子17個を有するアルコールの含量を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
酸性触媒として、鉱酸、スルホン酸又はそれらの混合物を使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
重合防止剤(混合物)として、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバカート、2−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、6−t−ブチル−2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−メチル−4−t−ブチルフェノール、次亜リン酸、酢酸銅、塩化銅(II)、サリチル酸銅及び酢酸セリウム(III)の群からの少なくとも1種の化合物を使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
17−アルコール混合物の(メタ)アクリル酸エステルの凝固点(大気圧での)が0℃未満であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項により製造された(メタ)アクリル酸エステル。
【請求項8】
分散液の製造におけるモノマー又はコモノマーとしての、請求項1から7までのいずれか1項により得られる(メタ)アクリル酸エステルの使用。
【請求項9】
分散液が、接着剤、塗料、繊維助剤、皮革助剤又は紙助剤として、又は燃料油及び潤滑剤用の添加剤として使用されることを特徴とする、請求項8により製造された分散液の使用。

【公表番号】特表2013−512214(P2013−512214A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540396(P2012−540396)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067986
【国際公開番号】WO2011/064190
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】