説明

C2−フルオロピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン二量体

本発明は、抗腫瘍剤として有効な式 (IX) (式中nは3〜10である) の新規な2-フルオロ-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン二量体およびそれらを製造する方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、潜在的抗腫瘍剤として有効な新規な2-フルオロ-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン二量体に関する。また、本発明は、潜在的抗腫瘍剤として有効な新規な2-フルオロ-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン二量体の製造方法に関する。特に、本発明は、抗癌剤として有効な新しいビス-2-フルオロピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、化合物のための脂肪族鎖が変動する1,1’-{[(ビスアルカン-1,N-ジイル)]ジオキシ}ビス[(11aS)-2-フルオロ-7-メトキシ-1,2,3,11a-テトラヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オンの製造方法を提供し、そしてまた抗癌 (抗腫瘍) 活性を記載する。新規なビス-2-フルオロ-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンの構造式は次の通りであり、式中nは3、4、5、6、7、8、9、10である。
【0002】
【化1】

【背景技術】
【0003】
発明の背景
ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン抗腫瘍性抗生物質は、アントラマイシンクラスの化合物として普通に知られている。過去数年において、新しいピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン (PBD) の開発に関する関心が増加してきている。これらのPBDは、N10-C11位置における求電子性イミンに対する酸不安定性アミン結合を介してDNAの小さい溝中の環外N2-グアニンにもっぱら結合する、配列選択的DNA結合性抗腫瘍性抗生物質の1ファミリーである (Kunimoto S.; Masuda T.; Kanbayashi N.; Hamada M.; Naganawa H.; Miyamoto M.; Takeuchi T.; Unezawa H.、J. Antibiot. 1980、33、665; Kohn K. W.; Speous C. K.、J. Mol. Biol. 1970、51、551; Hurley L. H.; Gairpla C.; Zmijewski M.、Biochem. Biophys. Acta 1977、475、521; Kaplan D. J.; Hurley L. H.、Biochemistry 1981、20、7572)。
【0004】
すべての生物学的に活性なPBDはキラルC11a位置に (S) 立体配置を有し、これは右回りのねじれをもつ分子を提供し、3塩基対をスパンするB-型二本鎖DNAの小さい溝の曲率にPBDが従うことを可能とする。最近、不活性なプロパンジオキシリンカーを介してC-8位置を通して一緒に拘束された2つのC2-エキソ-メチレン置換DC-81を含んでなる、PBD二量体が開発された (Gregson S. J.; Howard P. W.; Hartely J. A.: Brooks N. A.; Adams L. J.; Jenkins、Kelland L. R.; Thurston D. E.、J. Mol. Chem. 2001、44、737)。
【0005】
C-8位置を通して2つのPBD単位を結合して、DNAを架橋することができる二官能価アルキル化剤を生成させることが最近開発された (Thurston D. E.; Bose D. S.; Thomson A. S.; Howard P. W.; Leoni A.; Croker S. J.; Jenkins T. C.; Neidle S.; Hurley L. H.、J. Org. Chem. 1996、61、8141-8147)。最近、有意なDNA結合能力および効力のある抗腫瘍活性を有する、非架橋性混合イミン-アミドPBD二量体が合成されてきている (Kamal A.; Laxman N.; Ramesh G.; Ramulu P.; Srinivas、米国特許第636233号; Kamal A.; Ramesh G.; Laxman N.; Ramulu P.; Srinivas O.; Neelima K.; Kondapi A. K.; Srinu V. B.; Nagarajaram H. M.、J. Mol. Chem. 2002、45、4679)。
【0006】
PBDは二本鎖DNAの特定の塩基配列を認識し、引き続いてそれに対する共有結合を形成するために、現在かなり関心をもたれている。天然に存在するピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンはストレプトマイセス (Streptomyces) 種に由来する抗腫瘍性抗生物質の1グループに属し、これらのファミリーのメンバーはアントラマイシン、トマイマイシン、シビロマイシン、キカマイシン、ネオトラマイシンAおよびB、およびDC-81を包含する。
【0007】
【化2】

【0008】
しかしながら、これらの抗生物質の臨床的効能はいくつかの制限、例えば、劣った水溶性および心臓毒性および薬剤耐性の発生および代謝的不活性化により妨害される。
【発明の開示】
【0009】
発明の目的
本発明の主要な目的は、抗腫瘍剤として有効な新しいビス-2-フルオロピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンを提供することである。
本発明の他の目的は、抗腫瘍剤として有効な新規なフルオロピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンを提供することである。
【0010】
発明の要旨
したがって、本発明は、式IX:
【化3】

【0011】
(式中nは3〜10である)
の新規なフルオロピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンを提供する。
本発明の1つの態様において、式IXの化合物は、1,1’-{[(プロパン-1,3-ジイル)ジオキシ]ビス[(11aS)-2-フルオロ-7-メトキシ-1,2,3,11a-テトラ-ヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン]} である。
本発明の他の態様において、式IXの化合物は、1,1’-{[(ブタン-1,4-ジイル)ジオキシ]ビス[(11aS)-2-フルオロ-7-メトキシ-1,2,3,11a-テトラ-ヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン]} である。
【0012】
本発明の他の態様において、式IXの化合物は1,1’-{[(ペンタン-1,5-ジイル)ジオキシ]ビス[(11aS)-2-フルオロ-7-メトキシ-1,2,3,11a-テトラ-ヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン]} である。
【0013】
また、本発明は、下記の工程を含んでなる式IX:
【化4】

【0014】
(式中nは3〜10である)
のビス-2-フルオロピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンを製造する方法を提供する:
(a) 有機溶媒中に溶解したメチル(2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボキシレートを反応させ、
(b) この溶液を冷却し、そして有機溶媒中のジエチルアミノサルファートリフルオライド (DAST) の溶液を滴下し、
(c) 有機溶媒の存在下に生成したDIBAL-Hとともにメチル(2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシレートを単離し、そして冷却し、
【0015】
(d) 生成したメチル(2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドを単離し、
(e) 有機溶媒の存在下にメチル(2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキアルデヒドをEtSHで保護し、
(f) (2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールを単離し、
(g) (2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールを脱ベンジル剤と反応させて式VI:
【0016】
【化5】

【0017】
の (2S)-N-[4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒド-ジエチルチオアセタールを生成させ、
(h) 非プロトン性水混和性有機溶媒中でかつ温和な無機塩基の存在下に還流温度までにおいて式VIの(2S)-N-[4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールをジブロモアルカンと反応させ、そして式VII:
【0018】
【化6】

【0019】
(式中nは3〜10である)
の1,1’-{[(アルカン-1,N-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-ニトロ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール] を単離し、
(i) 有機溶媒の存在下に還流温度までにおいて式VIIの化合物をSnCl2・2H2Oで還元し、そして式VIII:
【0020】
【化7】

【0021】
(式中nは3〜10である)
の1,1’-{[(アルカン-1,N-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-アミノ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]を単離し、
(j) 式VIIIの化合物を脱保護剤と反応させて、式IX (式中nは上に定義した通りである) のビス-2-フルオロピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンを生成させる。
【0022】
本発明の1つの態様において、工程 (a)、 (b) および (c) において使用する有機溶媒はCH2Cl2を含んでなる。
本発明の他の態様において、工程 (a) において溶液を-78℃の温度に冷却する。
本発明の他の態様において、工程 (b) における滴下を40分間にわたって実施する。
本発明の他の態様において、工程 (b) の15時間後に工程 (c) を実施する。
本発明のなお他の態様において、工程 (c) における冷却を-78℃の温度において45分間にわたって実施する。
【0023】
本発明の他の態様において、工程 (e) を有機溶媒の存在下に室温において実施する。
本発明のなお他の態様において、アセトン、アセトニトリルおよびDMFから成る群から選択される非プロトン性水混和性有機溶媒中でかつK2CO3、CsCO3およびBaCO3から成る群から選択される温和な無機塩基の存在下に、式VIの (2S)-N-[4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールをジブロモアルカンと反応させる。
【0024】
本発明の他の態様において、工程 (h) を約48時間にわたって実施する。
本発明の他の態様において、メタノールを含んでなる有機溶媒の存在下に工程 (i) における還元を実施する。
本発明のなお他の態様において、脱保護剤はCH3CN/H2O中にHgCl2およびHgOの組合わせを含んでなる。
【0025】
また、本発明は、下記の工程を含んでなる式IX:
【化8】

【0026】
(式中nは3〜10である)
のビス-2-フルオロピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンを製造する方法を提供する:
(a) 式VI:
【0027】
【化9】

【0028】
の (2S)-N-[4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒド-ジエチルチオアセタールを使用し;
(b) 非プロトン性水混和性有機溶媒中でかつ温和な無機塩基の存在下に還流温度までにおいて式VIの(2S)-N-[4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールをジブロモアルカンと反応させ、そして式VII:
【0029】
【化10】

【0030】
(式中nは3〜10である)
の1,1’-{[(アルカン-1,N-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-ニトロ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール] を単離し;
(c) 有機溶媒の存在下に還流温度までにおいて式VIIの化合物をSnCl2・2H2Oで還元し、そして式VIII:
【0031】
【化11】

(式中nは3〜10である)
【0032】
の1,1’-{[(アルカン-1,N-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-アミノ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]を単離し;
(d) 式VIIIの化合物を脱保護剤と反応させて、式IX (式中nは上に定義した通りである) のビス-2-フルオロピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンを生成させる。
【0033】
本発明のなお他の態様において、アセトン、アセトニトリルおよびDMFから成る群から選択される非プロトン性水混和性有機溶媒中でかつK2CO3、CsCO3およびBaCO3から成る群から選択される温和な無機塩基の存在下に、式VIの (2S)-N-[4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールをジブロモアルカンと反応させる。
【0034】
本発明の他の態様において、工程 (b) を約48時間にわたって実施する。
本発明の他の態様において、メタノールを含んでなる有機溶媒の存在下に工程 (c) における還元を実施する。
本発明のなお他の態様において、脱保護剤はCH3CN/H2O中にHgCl2およびHgOの組合わせを含んでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
発明の詳細な説明
本発明は、非プロトン性水混和性有機溶媒中で式VIの(2S)-N-[4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールをジブロモアルカンと反応させることを含んでなる、式IX (式中nは3〜10である) のビス-2-フルオロピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンを製造する方法を提供する。溶媒は好ましくはアセトン、アセトニトリルおよびDMFから成る群から選択される。また、この方法は温和な無機塩基、例えば、K2CO3、CsCO3およびBaCO3の存在下にかつ還流温度までにおいて48時間にわたって実施される。
【0036】
次いで、生成する式VIIの1,1’-{[(アルカン-1,N-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-ニトロ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール] を慣用法により単離し、そして有機溶媒の存在下に還流温度までにおいて式VII (式中nは3〜10である) の化合物をSnCl2・2H2Oで還元する。次いで、生成した式VIII (式中nは3〜10である) の1,1’-{[(アルカン-1,N-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-アミノ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロ-ピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]を既知の方法により単離する。次いで式VIIIの化合物を既知の脱保護剤と慣用法において反応させて、式IX (式中nは上に定義した通りである) の新規なビス-2-フルオロピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンを生成させる。
【0037】
別法において、この方法は、まず有機溶媒、例えば、CH2Cl2中に溶解したメチル(2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボキシレートを反応させ、そしてこの溶液を-78℃に冷却する。この冷却した溶液に、有機溶媒、例えば、CH2Cl2中のジエチルアミノサルファートリフルオライド (DAST) の溶液を40分間にわたって滴下する。15時間後、式IIのメチル(2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシレートを式IIIのDIBAL-Hとともに単離し、次いで有機溶媒、例えば、CH2Cl2の存在下に-78℃に45分間にわたって冷却する。
【0038】
生成したメチル(2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドを慣用法により単離し、室温において有機溶媒の存在下にメチル(2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキアルデヒドをEtSHで保護する。次いで、得られた (2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールを既知の方法により単離し、任意の脱ベンジル剤と反応させて、式VIの (2S)-N-[4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒド-ジエチルチオアセタールを生成させる。次いで、式VIの化合物を、上に示した方法において式IXの化合物に転化させる。
【0039】
前駆体、メチル(2S)-N-(4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル)-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボキシレート (DC-81の中間体) は文献の方法により製造した (Thurston D. E.; Murthy V. S.; Langley D. R.; Jones G. B.、Synthesis 1990、81)。
本発明の式IXのいくつかの代表的化合物を下に記載する:
1) 1,1’-{[(プロパン-1,3-ジイル)ジオキシ]ビス[(11aS)-2-フルオロ-7-メトキシ-1,2,3,11a-テトラ-ヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン]};
2) 1,1’-{[(ブタン-1,4-ジイル)ジオキシ]ビス[(11aS)-2-フルオロ-7-メトキシ-1,2,3,11a-テトラ-ヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン]};
3) 1,1’-{[(ペンタン-1,5-ジイル)ジオキシ]ビス[(11aS)-2-フルオロ-7-メトキシ-1,2,3,11a-テトラ-ヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン]}。
【0040】
反応スキームを下に記載する:
【化12】

【0041】
C-2位置において置換されたピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンのこれらの新規な類似体は、種々の細胞系統において有望な抗癌活性を示した。合成された分子は、潜在的配列選択的DNA結合性をもち、莫大な生物学的意味を有する。これは、下記を含んでなる、新規な同類の設計および合成を生じた:
1. DC-81中間体のC-2位置におけるフルオロ置換。
2. C-8位置における2つのフルオロDC-81モノマー間のエーテル結合。
3. 反応混合物を24〜48時間還流させる。
4. フルオロPBD抗腫瘍性抗生二量体イミンの合成。
5. 種々の溶媒、例えば、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタンおよびメタノールを使用するカラムクロマトグラフィーによる精製。
【0042】
式IXの代表的化合物は下記のものを包含する:
【化13】

【実施例】
【0043】
下記の実施例は本発明の例示であり、したがって本発明を限定するものと解釈すべきでない。
【0044】
実施例1
乾燥アセトン (40 ml) 中の式VIの (2S)-N-(4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル)-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒド-ジエチルチオアセタール VI (418 mg、1 mmol)、1,3-ジブロモプロパン (101 mg、0.5 mmol) およびK2CO3 (414 mg、3 mmol) の溶液を48時間還流させた。TLC、EtOAc-ヘキサン (7:3) により示されるように反応が完結した後、反応混合物を水上に注ぎ、次いで酢酸エチルで抽出した。
【0045】
有機層を蒸発させると、粗生成物が得られ、これをさらにシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製し、EtOAc-ヘキサン (1:1) で溶離すると、純粋な1,1’-{[(プロパン-1,3-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-ニトロ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール] VIIが得られた。H1 NMR (CDCl3、200 MHz): δ1.2-1.39 (m、12H)、2.4-2.68 (m、6H)、2.7-2.9 (m、8H)、3.41-3.62 (m、4H)、3.99 (s、6H)、4.29-4.4 (m、4H)、4.52 (d、J = 3.9 Hz、2H)、4.69-4.79 (m、2H)、5.05 (t、1H)、6.85 (s、2H)、7.63 (s、2H)。 FAB MASS: 877 (M+H)。
【0046】
1,1’-{[(プロパン-1,3-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-ニトロ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール] VII (876 mg、1.0 mmol) をメタノール (10 ml) 中に溶解し、これにSnCl2・2H2O (1.124 g、5.0 mmol) を添加し、1.5時間還流させた。次いでこの反応混合物を飽和NaHCO3溶液で注意してpH 8に調節し、次いで酢酸エチル (3×20 ml) で抽出した。一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、真空蒸発させると、粗製の1,1’-{[(プロパン-1,3-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-アミノ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール] が得られた。
【0047】
CH3CN/H2O (3:1、15 ml) 中の1,1’-{[(プロパン-1,3-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-アミノ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール] VIII (846 mg、1 mmol)、HgCl2 (794 mg、2.93 mmol) およびHgO (686 mg、3.18 mmol) の溶液を室温において12時間、TLC (EtOAc) が出発物質の完全な消失を示すまで、攪拌した。次いで有機層を真空蒸発させ、残留物をEtOAcで希釈した。これに、飽和NaHCO3溶液を室温においてゆっくり添加し、この混合物をセライトを通して濾過し、酢酸エチルで洗浄した。
【0048】
濾液を真空蒸発させると、式IXaの粗製の1,1’-{[(プロパン-1,3-ジイル)]ジオキシ}ビス[(11aS)-2-フルオロ-7-メトキシ-1,2,3,11a-テトラヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン] が得られ、これをさらにシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製し、まず酢酸エチルで溶離して微量の水銀塩を除去し、さらに、CHCl3-メタノール (8.5:1.5) で溶離した。H1 NMR (CDCl3、200 MHz): δ2.15-2.45 (m、6H)、3.7-3.9 (m、6H)、4.01 (s、6H)、4.22-4.3 (m、4H)、5.05 (t、1H)、5.20 (t、1H)、6.80 (s、2H)、7.42 (s、2H)、7.80 (d、2H、J = 4.2 Hz)。FAB MASS: 569 (M+H)。
【0049】
実施例2
乾燥アセトン (20 ml) 中の (2S)-N-(4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル)-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒド-ジエチルチオアセタール VI (418 mg、1 mmol)、1,4-ジブロモブタン (107 mg、0.5 mmol) およびK2CO3 (414 mg、3 mmol) の溶液を48時間還流させた。TLC、EtOAc-ヘキサン (7:3) により示されるように反応が完結した後、反応混合物を水上に注ぎ、次いで酢酸エチルで抽出した。
【0050】
有機層を蒸発させると、粗生成物が得られ、これをさらにシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製し、EtOAc-ヘキサン (1:1) で溶離すると、純粋な1,1’-{[(ブタン-1,4-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-ニトロ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール] VIIが得られた。H1 NMR (CDCl3、200 MHz): δ1.29-1.4 (m、12H)、2.1-2.2 (m、4H)、2.49-2.61 (m、4H)、2.7-2.9 (m、8H)、3.4-3.7 (m、4H)、3.92 (s、6H)、4.27 (t、4H)、4.58 (d、2H)、4.70-4.85 (m、2H)、5.08 (t、1H)、5.29 (t、1H)、6.82 (s、2H)、7.65 (s、2H)。FAB MASS: 891 (M+H)。
【0051】
1,1’-{[(ブタン-1,4-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-ニトロ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール] VII (890 mg、1.0 mmol) をメタノール (10 ml) 中に溶解し、これにSnCl2・2H2O (1.124 g、5.0 mmol) を添加し、1.5時間還流させた。次いでこの反応混合物を飽和NaHCO3溶液で注意してpH 8に調節し、次いで酢酸エチル (3×20 ml) で抽出した。一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、真空蒸発させると、式VIIIの粗製の1,1’-{[(ブタン-1,4-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-アミノ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール] が得られた。
【0052】
CH3CN/H2O (3:1、15 ml) 中の式VIIIの1,1’-{[(ブタン-1,4-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-アミノ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール] (861 mg、1 mmol)、HgCl2 (794 mg、2.93 mmol) およびHgO (687 mg、3.18 mmol) の溶液を室温において12時間、TLC (EtOAc) が出発物質の完全な消失を示すまで、攪拌した。次いで有機層を真空蒸発させ、残留物をEtOAcで希釈した。これに、飽和NaHCO3溶液を室温においてゆっくり添加し、この混合物をセライトを通して濾過し、酢酸エチルで洗浄した。
【0053】
濾液を真空蒸発させると、粗製の1,1’-{[(ブタン-1,4-ジイル)]ジオキシ}ビス[(11aS)-2-フルオロ-7-メトキシ-1,2,3,11a-テトラヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン] IXbが得られ、これをさらにシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製し、まず酢酸エチルで溶離して微量の水銀塩を除去し、さらに、CHCl3-メタノール (9:1) で溶離した。H1 NMR (CDCl3、200 MHz): δ1.94-2.09 (m、4H)、2.1-2.5 (m、4H)、3.5-3.82 (m、6H)、3.98 (s、6H)、4.1-4.37 (m、4H)、5.29 (t、1H)、5.5 (t、1H)、6.80 (s、2H)、7.45 (s、2H)、7.80 (d、2H、J = 4.3 Hz)。FAB MASS: 583 (M+H)。
【0054】
実施例3
乾燥アセトン (20 ml) 中の (2S)-N-(4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル)-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒド-ジエチルチオアセタール VI (418 mg、1 mmol)、1,5-ジブロモペンタン (114 mg、0.5 mmol) およびK2CO3 (414 mg、3 mmol) の溶液を48時間還流させた。TLC、EtOAc-ヘキサン (7:3) により示されるように反応が完結した後、反応混合物を水上に注ぎ、次いで酢酸エチルで抽出した。
【0055】
有機層を蒸発させると、粗生成物が得られ、これをさらにシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製し、EtOAc-ヘキサン (1:1) で溶離すると、純粋な1,1’-{[(ペンタン-1,5-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-ニトロ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール] VIIが得られた。H1 NMR (CDCl3、200 MHz): δ1.2-1.42 (m、12H)、1.65-2.1 (m、6H)、2.4-2.61 (m、4H)、2.7-2.91 (m、8H)、3.29-3.67 (m、4H)、3.99 (s、6H)、4.09-4.25 (m、4H)、4.52-4.68 (m、2H)、4.82 (d、2H)、5.10 (t、1H)、5.32 (t、1H)、6.89 (s、2H)、7.69 (s、2H)。FAB MASS: 905 (M+H)。
【0056】
式VIIの1,1’-{[(ペンタン-1,5-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-ニトロ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール] (905 mg、1.0 mmol) をメタノール (10 ml) 中に溶解し、これにSnCl2・2H2O (1.124 g、5.0 mmol) を添加し、1.5時間還流させた。次いでこの反応混合物を飽和NaHCO3溶液で注意してpH 8に調節し、次いで酢酸エチル (3×20 ml) で抽出した。一緒にした有機相をNa2SO4で乾燥させ、真空蒸発させると、式VIIIの粗製の1,1’-{[(ペンタン-1,5-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-アミノ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール] が得られた。
【0057】
CH3CN/H2O (3:1、15 ml) 中の式VIIIの1,1’-{[(ペンタン-1,5-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-アミノ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール] (875 mg、1 mmol)、HgCl2 (794 mg、2.93 mmol) およびHgO (687 mg、3.18 mmol) の溶液を室温において12時間、TLC (EtOAc) が出発物質の完全な消失を示すまで、攪拌した。次いで有機層を真空蒸発させ、残留物をEtOAcで希釈した。これに、飽和NaHCO3溶液を室温においてゆっくり添加し、この混合物をセライトを通して濾過し、酢酸エチルで洗浄した。
【0058】
濾液を真空蒸発させると、粗製の1,1’-{[(ペンタン-1,5-ジイル)]ジオキシ}ビス[(11aS)-2-フルオロ-7-メトキシ-1,2,3,11a-テトラヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン] IXcが得られ、これをさらにシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製し、まず酢酸エチルで溶離して微量の水銀塩を除去し、さらに、CHCl3-メタノール (9:1) で溶離した。H1 NMR (CDCl3、200 MHz): δ1.58-1.81 (m、4H)、1.90-2.01 (m、2H)、2.38-2.50 (m、4H)、3.08-3.24 (m、4H)、4.01-4.20 (m、4H)、4.92 (s、6H)、5.21 (t、1H)、5.5 (t、1H)、6.81 (s、2H)、7.49 (s、2H)、7.83 (d、2H、J = 4.4 Hz)。FAB MASS: 597 (M+H)。
【0059】
生物学的活性:
国立癌研究所 (National Cancer Institute) (米国) においてin vitro 生物学的活性の研究を実施した。
【0060】
細胞障害性:
9つの癌型 (白血病、非小細胞肺癌、結腸癌、CNS癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌および乳癌) に由来する60のヒト腫瘍細胞に対して、化合物IXaおよびIXcをin vitro で評価した。各化合物について、各細胞系統に対して投与量応答曲線を最小5濃度で10倍希釈において測定した。48時間の連続的薬剤暴露のプロトコルを使用し、そしてスルホローダミンB (SRB) タンパク質アッセイを使用して、細胞の生活能力および増殖を推定した。対照と比較して50 % の細胞増殖阻害 (GI50)、完全な細胞増殖阻害 (TGI、0 % の増殖) および50 % の細胞死 (LC50、-50 % の増殖) を引き起こす濃度を計算した。IXaおよびIXcについてのlog10 TGIおよびlog10 LC50ならびにlog10 GI50の平均グラフ中点値を表1に記載する。平均グラフパターンにより証明されるように、化合物IXcは種々の細胞系統について活性および選択性の重要な分布を示す。log10 TGIおよびlog10 LC50の平均グラフ中点は、log10 GI50の平均グラフ中点に対して同様なパターンを示した。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
2つの代表的化合物の抗腫瘍活性を表2に記載した。表3のデータと比較すると、アルカンスペーサーの重要性が明らかになる。アルカンスペーサーが3から5に増加するにつれて、細胞障害活性は適度に増強された。化合物IXcの5炭素のスペーサーは二重ヘリックスDNAの小さい溝中の適当な適合性を与え、そしてこの系列の化合物IXaおよびIXcにおいてわずかにより高い活性を示す。
【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IX:
【化1】

(式中nは3〜10である) の新規なピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン。
【請求項2】
下記の構造:
【化2】

を有する請求項1に記載の新規なピロロベンゾジアゼピン。
【請求項3】
下記の構造:
【化3】

を有する請求項1に記載の新規なピロロベンゾジアゼピン。
【請求項4】
下記の構造:
【化4】

を有する請求項1に記載の新規なピロロベンゾジアゼピン。
【請求項5】
下記の構造:
【化5】

を有する請求項1に記載の新規なピロロベンゾジアゼピン。
【請求項6】
下記の構造:
【化6】

を有する請求項1に記載の新規なピロロベンゾジアゼピン。
【請求項7】
下記の構造:
【化7】

を有する請求項1に記載の新規なピロロベンゾジアゼピン。
【請求項8】
下記の構造:
【化8】

を有する請求項1に記載の新規なピロロベンゾジアゼピン。
【請求項9】
下記の構造:
【化9】

を有する請求項1に記載の新規なピロロベンゾジアゼピン。
【請求項10】
下記の式IX:
【化10】

(式中nは3〜10である)
のビス-2-フルオロピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンを製造する方法において、
(a) 有機溶媒中に溶解したメチル(2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボキシレートを反応させ;
(b) この溶液を冷却し、そして有機溶媒中のジエチルアミノサルファートリフルオライド (DAST) の溶液を滴下し;
(c) 有機溶媒の存在下に生成したDIBAL-Hとともにメチル(2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシレートを単離し、そして冷却し;
(d) 生成したメチル(2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドを単離し;
(e) 有機溶媒の存在下にメチル(2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキアルデヒドをEtSHで保護し;
(f) (2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールを単離し;
(g) (2S)-N-[4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールを脱ベンジル剤と反応させて式VI:
【化11】

の (2S)-N-[4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒド-ジエチルチオアセタールを生成させ;
(h) 非プロトン性水混和性有機溶媒中でかつ温和な無機塩基の存在下に還流温度までにおいて、式VIの(2S)-N-[4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールをジブロモアルカンと反応させ、そして式VII:
【化12】

(式中nは3〜10である)
の1,1’-{[(アルカン-1,N-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-ニトロ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]を単離し;
(i) 有機溶媒の存在下に還流温度までにおいて式VIIの化合物をSnCl2・2H2Oで還元し、そして式VIII:
【化13】

(式中nは3〜10である)
の1,1’-{[(アルカン-1,N-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-アミノ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]を単離し;
(j) 式VIIIの化合物を脱保護剤と反応させて、式IX (式中nは上に定義した通りである) のビス-2-フルオロピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンを生成させる;
ことを含んでなる方法。
【請求項11】
工程 (a)、 (b) および (c) において使用する有機溶媒がCH2Cl2を含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程 (a) において溶液を-78℃の温度に冷却する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
工程 (b) における滴下を40分間にわたって実施する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
工程 (b) の15時間後に、工程 (c) を実施する請求項10に記載の方法。
【請求項15】
工程 (c) における冷却を-78℃の温度において45分間にわたって実施する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
工程 (e) を有機溶媒の存在下に室温において実施する、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
アセトン、アセトニトリルおよびDMFから成る群から選択される非プロトン性水混和性有機溶媒中で、かつK2CO3、CsCO3およびBaCO3から成る群から選択される温和な無機塩基の存在下に、式VIの (2S)-N-[4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒド-ジエチルチオアセタールをジブロモアルカンと反応させる、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
工程 (h) を約48時間にわたって実施する、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
メタノールを含んでなる有機溶媒の存在下に工程 (i) における還元を実施する、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
脱保護剤が、CH3CN/H2O中にHgCl2およびHgOの組合わせを含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
下記の式IX:
【化14】

(式中nは3〜10である)
のビス-2-フルオロピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンを製造する方法において、
(a) 式VI:
【化15】

の (2S)-N-[4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒド-ジエチルチオアセタールを用い;
(b) 非プロトン性水混和性有機溶媒中でかつ温和な無機塩基の存在下に還流温度までにおいて式VIの(2S)-N-[4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールをジブロモアルカンと反応させ、そして式VII:
【化16】

(式中nは3〜10である)
の1,1’-{[(アルカン-1,N-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-ニトロ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]を単離し;
(c) 有機溶媒の存在下に還流温度までにおいて式VIIの化合物をSnCl2・2H2Oで還元し、そして式VIII:
【化17】

(式中nは3〜10である)
の1,1’-{[(アルカン-1,N-ジイル)ジオキシ]ビス[(2-アミノ-5-メトキシ-1,4-フェニレン)カルボニル]}ビス[4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタール]を単離し;
(d) 式VIIIの化合物を脱保護剤と反応させて、式IX (式中nは上に定義した通りである) のビス-2-フルオロピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピンを生成させる;
ことを含んで成る方法。
【請求項22】
アセトン、アセトニトリルおよびDMFから成る群から選択される非プロトン性水混和性有機溶媒中でかつK2CO3、CsCO3およびBaCO3から成る群から選択される温和な無機塩基の存在下に、式VIの (2S)-N-[4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-4-フルオロピロリジン-2-カルボキシアルデヒドジエチルチオアセタールをジブロモアルカンと反応させる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程 (b) を約48時間にわたって実施する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
メタノールを含んでなる有機溶媒の存在下に工程 (c) における還元を実施する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
脱保護剤が、CH3CN/H2O中にHgCl2およびHgOの組合わせを含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
薬学的に有効量の式IXの化合物と、薬学上許容される添加剤とを含んでなる医薬組成物。
【請求項27】
薬学的に有効量の式IXの化合物を患者に投与することを含んでなる、癌を患っている患者を治療する方法。
【請求項28】
患者が哺乳動物である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
哺乳動物が人間である請求項27に記載の方法。
【請求項30】
癌が白血病、非小細胞肺癌、結腸癌、CNS癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌および乳癌から成る群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
白血病、非小細胞肺癌、結腸癌、CNS癌、黒色腫、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌および乳癌から成る群から選択される癌を患っている被検体における前記癌を治療するための式IXの化合物の使用。

【公表番号】特表2007−518671(P2007−518671A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512747(P2005−512747)
【出願日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【国際出願番号】PCT/IN2003/000448
【国際公開番号】WO2005/063758
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(595059872)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (81)
【Fターム(参考)】