説明

CADデータ同一性保証サーバ装置、CADデータ同一性保証方法

【課題】図面についての電子データの同一性確認を効率良く行う。
【解決手段】共通形式のデータに変換後、原本データと比較することにより、元のCADデータのファイル形式を問わず同一性を確認することができる。また、原本との同一性を確認できる設計や施工の発注者から入力されたCADデータを原本データとし、タイムスタンプと共に保管しておき、これと比較対象データと比較することで原本との同一性を容易に確認でき、その比較結果である同一性証明書と共に図面データをプリントアウト出力等することによって、紛争等における証拠能力を担保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCADデータ同一性保証サーバ装置、CADデータ同一性保証方法に関し、特に建築及び土木図面に関するCADデータについて原本との同一性を保証するためのCADデータ同一性保証サーバ装置、CADデータ同一性保証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国や地方公共団体などが建設工事を発注し、それを建設業者が受注する場合、発注した際の図面である発注図面と受注者が工事や作業に使用している図面との同一性の確認が問題となる。すなわち、工事や作業を進めている段階において、建設構造物の強度確保などのために、設計変更が必要となることがある。この設計変更は、主として受注者側から提案によることが多い。この提案を受けると、発注者は受注者との間で変更契約を交わすことになる。
【0003】
このような設計変更が行われる場合、管理を適切に行わないと、発注者が原本として所持している図面の内容と、受注者が工事や作業に使用している図面の内容とに不一致が生じる。このような場合、紙媒体による図面であれば、変更箇所を朱記して明確にするなどの周知の手法を採用することで、図面同士を比較照合すれば同一性を容易に確認することができた。
近年、電子データとしての発注図面を発注者から受注者に受け渡し、それを受注者側で工事や作業に必要な図面に加工することが多い。また、契約行為を電子的に代替しようとする動きがあり、この場合、電子データが原本として管理される必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、設計データベース内の設計図面と現地工事で使用する工事用図面(紙ベース)の対応関係が直接取れなくなり、現地で特定の工事用図面に変更が生じても、容易に設計データベースの全ての関連図面に反映できないという問題を解決する技術が記載されている。すなわち、特許文献1には、修正箇所を朱記した工事用図面を読み込むための画像読取装置と、工事用図面の原本の全画像情報を登録した画像データベースと、この画像データベースの工事用図面の画像情報を1つまたは複数の領域に細分化するためのメッシュパラメータと細分化後の領域に関連付けさせる1つまたは複数の関連図面の図面番号を登録したメッシュ情報データベースと、プラント設計に必要な全てのCAD図面を登録した設計データベースと、この設計データベースに登録されているCAD図面の関連情報を登録した関連情報データベースとを備えた設計支援システムが記載されている。そして、画像読取装置で取り込んだ画像データから図面番号を抽出し、その図面番号と同一の工事用図面を画像データベースから検索し、画像読取装置で読み込んだ工事用図面の画像データと画像データベースから検索した工事用図面の画像データの領域を、メッシュ情報データベースのメッシュパラメータを用いて細分化し、その細分化した全領域について解像度単位に両者の画像データの差分量を求め、その差分量に応じて両者の画像データが同一かどうかで修正の有無を判断している。さらに、修正箇所である朱記部の絞り込み、即ち朱記部を包含する1つまたは複数の領域を特定し、その領域に対応付けられている関連図面番号を基に、関連情報データベース及び設計データベースから関連図面を全て検索し、表示装置にその関連を表示している。
【0005】
このように構成された設計支援システムを用いれば、修正箇所を朱記した工事用図面を画像データとして取り込み、その画像データと原本の工事用図面の画像データの領域を、メッシュパラメータを用いて細分化し、その細分化した全領域について解像度単位に両者の画像データの差分量を求め、その差分量に応じて両者の画像データが同一かどうかで修正の有無を判断し、朱記部の領域を特定し、その領域に関連付けられている図面番号を基に設定データベース内から関連図面を自動的に検索し画面に全て表示することにより、設計者による関連図面の検索作業を軽減し、しかも関連図面の検索漏れを防止することができる。
【特許文献1】特開平10−283393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子データとしての発注図面を発注者から受注者に受け渡し、それを受注者側で工事や作業に必要な図面に加工が行われると、発注図面と受注者が工事や作業に使用している図面との同一性を確認することは難しい。すなわち、図面についての電子データは、それを取り扱うアプリケーションソフトウェアであるCAD(Computer Aided Design)ソフトウェア(以下、適宜、CADソフトと呼ぶ)により独自のファイル形式になっていることが通例であり、電子データ同士を比較してその同一性を確認するのは困難である。つまり、ファイルを構成する線分、折れ線、点、円などの図面要素の保存順序がCADソフトによって異なるため、異なるCADソフトによって作成されたデータ同士を比較することは難しい。
【0007】
図面についての電子データの同一性を確認する場合、保存順序などのファイル形式が異なる場合でも、その図面が指し示す実質的な内容が同一であれば、同一性ありと判定すべきである。つまり、その図面を用いて作業や工事することによって得られる建設構造物が実質的に同じであれば、ファイル形式の相違は電子データの同一性を妨げる要素とするべきではない。
【0008】
このような状況において、パソコン等の画面に表示された内容同士を目視で確認して同一性の判断を行うことも考えられる。しかしながら、そのような確認作業には、手間と時間がかかり、効率的ではないという問題がある。また、見落としのおそれも多く、原本性についても確認することができないという問題がある。このような問題は、上記特許文献1に記載の技術によっては解決することができない。
本発明は上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は図面についての電子データの同一性確認を効率良く行うことのできるCADデータ同一性保証サーバ装置、CADデータ同一性保証方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1による同一性保証サーバ装置は、図面を構成する図面要素とその図面要素が前記図面においてどのように表現されているかを規定するパラメータとから構成されるCADデータの同一性を保証する同一性保証サーバ装置であって、発注者から入力されたCADデータをタイムスタンプと共に原本データとして保管する原本データ保管手段と、前記原本データと比較すべき比較対象データを取得するデータ取得手段と、前記データ取得手段によって取得されたデータと前記原本データ保管手段に保管されているデータとを比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果を出力する出力手段とを含むことを特徴とする。発注者から入力されたCADデータを原本データとし、タイムスタンプと共に保管しておき、これと比較対象データと比較することで原本との内容的な同一性を容易に保証することができる。また、その比較結果である同一性証明書と共に図面データをもって、紛争等における証拠能力を担保することができる。
【0010】
本発明の請求項2によるCADデータ同一性保証サーバ装置は、請求項1において、前記CADデータは、そのデータに関連する属性情報要素を更に含み、
前記比較手段は、前記属性情報要素同士も比較することを特徴とする。属性情報要素が付加されているCADデータについては、属性情報要素同士の比較処理も行うことにより、同一性を容易に保証することができ、その比較結果である同一性証明書と共に図面データをもって、紛争等における証拠能力を担保することができる。
【0011】
本発明の請求項3によるCADデータ同一性保証サーバ装置は、請求項1又は2において、前記CADデータを前記パラメータと共にそれぞれ別々の配列に格納する格納手段を更に含み、
前記比較手段は、前記配列に格納されているデータについて要素同士の比較を順次行い、この比較の結果、全ての要素同士が1対1に対応した場合に、前記原本データと前記比較対象データとが同一であると判定することを特徴とする。図面要素同士を逐次比較することにより、データの内容的な同一性を確認することができる。ここで、比較手段によって比較されるデータについては、共通の形式に変換された変換後データをデータ取得手段によって取得した場合と、データ取得手段による取得後に共通の形式に変換した変換後データである場合とがあり、いずれの場合であるかを問わない。
【0012】
本発明の請求項4によるCADデータ同一性保証サーバ装置は、請求項1から請求項3までのいずれか1項において、前記入力されたCADデータを、前記原本データと比較可能な共通形式のデータに変換するデータ形式変換手段を更に含み、前記データ形式変換手段による変換後のデータについて前記比較手段による比較を行うことを特徴とする。共通形式のデータに変換後、原本データと比較することにより、元のCADデータのファイル形式を問わずデータの内容的な同一性を確認することができる。
【0013】
本発明の請求項5によるCADデータ同一性保証サーバ装置は、請求項4において、前記データ形式変換手段は、前記入力されたCADデータをSXF変換し、このSXF変換によって得られるp21形式のデータ及びsfc形式のデータのいずれか一方を共通形式のデータとすることを特徴とする。入力されたCADデータをSXF変換することにより、p21形式又はsfc形式を共通形式としてCADデータの内容的な同一性を確認することができる。ここで、SXFとは、ISO10303(通称STEP)に準拠した標準CADデータフォーマットであり、その物理ファイルフォーマットとしてp21形式及びsfc形式の2種類がある。なお、p21形式は、国土交通省への納品時の標準フォーマットとして採用されている。
【0014】
本発明の請求項6によるCADデータ同一性保証サーバ装置は、請求項1から請求項5までのいずれか1項において、前記CADデータについての修正履歴を記憶する修正履歴記憶手段を更に含み、前記出力手段は前記修正履歴記憶手段の記憶内容をも出力することを特徴とする。比較結果が同一でない場合には、CADデータについての修正履歴を出力して内容を確認することにより、責任関係を把握できる。
【0015】
本発明の請求項7によるCADデータ同一性保証サーバ装置は、請求項6において、前記修正履歴は、少なくとも、前記CADデータについての修正内容と、そのタイムスタンプと、その修正を行った者を特定するための修正者情報とを含むことを特徴とする。このようにすれば、修正内容、日時などのタイムスタンプ、修正者氏名やIDなどの修正者情報を確認でき、責任関係をより詳細に把握できる。
【0016】
本発明の請求項8によるCADデータ同一性保証方法は、図面を構成する図面要素とその図面要素が前記図面においてどのように表現されているかを規定するパラメータとから構成されるCADデータの同一性を保証するCADデータ同一性保証方法であって、発注者から入力されたCADデータをタイムスタンプと共に原本データとして保管する原本データ保管ステップと、前記原本データと比較すべき比較対象データを取得するデータ取得ステップと、前記データ取得ステップによって取得されたデータと前記原本データ保管ステップにおいて保管されたデータとを比較する比較ステップと、前記比較ステップの比較結果を出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。設計や施工の発注者から入力されたCADデータを原本データとし、タイムスタンプと共に保管しておき、これと比較対象データと比較することで原本との内容的な同一性を容易に保証することができる。また、その比較結果である同一性証明書と共に図面データをプリントアウト出力等することによって、紛争等における証拠能力を担保することができる。
【0017】
本発明の請求項9によるCADデータ同一性保証方法は、図面を構成する図面要素とその図面要素が前記図面においてどのように表現されているかを規定するパラメータとから構成されるCADデータの同一性を保証するCADデータ同一性保証方法であって、入力されたCADデータを、原本データと比較可能な共通形式のデータに変換するデータ形式変換ステップと、前記データ形式変換ステップにおいて変換された変換後データを、前記パラメータと共にそれぞれ別々の配列に格納する格納ステップと、前記データ形式変換ステップによる変換後のデータについて要素同士の比較を順次行う比較ステップと、前記比較ステップによる比較の結果、全ての要素同士が1対1に対応した場合に、前記原本データと前記比較対象データとが同一であると判定するステップとを含むことを特徴とする。共通形式のデータに変換後、原本データと比較することにより、元のCADデータのファイル形式を問わずデータの内容的な同一性を確認することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、共通形式のデータに変換後、原本データと比較することにより、元のCADデータのファイル形式を問わず内容的な同一性を確認することができるという効果がある。
また、原本との同一性を確認できる発注者から入力されたCADデータを原本データとし、タイムスタンプと共に保管しておき、これと比較対象データと比較することで原本との同一性を容易に確認できる。
さらに本発明では、上述した、内容的な同一性、原本との同一性のいずれの場合についても、その比較結果である同一性証明書を出力するので、この証明書と図面データをもって、紛争等における証拠能力を担保することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等部分は同一符号によって示されている。
(システム全体の構成例)
図1は、本発明によるCADデータ同一性保証サーバ装置を用いて構成したCADデータ同一性保証システムの概要を示す図である。同図中のCADデータ同一性保証サーバ装置1は、発注者によって作成されたCADデータを原本データとして管理し、発注者、受注者がそれぞれ管理しているCADデータについて、原本データと相違無い旨を保証する、第三者認証機関として機能する。
【0020】
同図(a)においては、CADデータ同一性保証サーバ装置1がインターネット等のネットワーク100に接続されており、発注者側パーソナルコンピュータ(以下、PCと略称する)2及び受注者側PC3もネットワーク100に接続されている。このような状態であれば、CADデータ同一性保証サーバ装置1は、CADデータを、発注者側PC2からネットワーク100を介して受信することができるし、また受注者側PC3からもネットワーク100を介して受信することができる。なお、CADデータの送受信の際には、必要に応じて暗号化処理されることがある。
【0021】
同図(b)は、発注者側PC2及び受注者側PC3がネットワークに接続されていない。このような場合、発注者側PC2、受注者側PC3において、フレキシブルディスク等の記録媒体にCADデータを書込み、これを郵送すること等により、CADデータ同一性保証サーバ装置1は、CADデータを、発注者側PC2から受け取ることができ、また受注者側PC3からも受け取ることができる。
【0022】
(CADデータ同一性保証サーバ装置の構成例)
図2は、本発明の実施の一形態によるCADデータ同一性保証サーバ装置の機能構成例を示すブロック図である。同図において、CADデータ同一性保証サーバ装置1は、発注者側PCから入力されたCADデータをタイムスタンプと共に原本データとして保管する原本データ保管部11と、原本データと比較すべき比較対象データを取得するデータ取得部12と、このデータ取得部12によって取得されたデータと原本データ保管部11に保管されているデータとを比較する比較部13と、この比較部の比較結果を出力する出力部14と、入力されたCADデータを、原本データと比較可能な共通形式のデータに変換するデータ形式変換部15と、このデータ形式変換部15によって変換された変換後データを、パラメータと共にそれぞれ別々の配列に格納する格納部16とを含んで構成されている。
【0023】
データ形式変換部15は、本例では、入力されたCADデータをSXF変換する。そして、このSXF変換によって得られるp21形式のデータ又はsfc形式のデータを共通形式のデータとする。共通の形式に変換するためには、入力されたCADデータについて、そのデータ形式を把握する必要がある。データ形式を把握するには、そのデータのファイル名に付加されている拡張子の内容を確認すればよい。データ形式を把握できれば、周知の変換手法により、そのCADデータの形式を共通の形式に変換することができる。
【0024】
比較部13は、格納部16においてパラメータと共にそれぞれ別々の配列に格納されている変換後データについて要素同士の比較を順次行う。そして、この比較の結果、全ての要素同士が1対1に対応した場合に、原本データと比較対象データとが同一であると判定する。
このような機能構成のサーバ装置を用いれば、共通形式のデータに変換後、原本データと比較することにより、元のCADデータのファイル形式を問わず同一性を確認することができる。
【0025】
また、原本との同一性を確認できる設計や施工の発注者から入力されたCADデータを原本データとし、タイムスタンプと共に保管しておき、これと比較対象データと比較することで原本との同一性を容易に確認できる。そして、その比較結果である同一性証明書と共に図面データをプリントアウト出力等することによって、紛争等における証拠能力を担保することができる。
【0026】
図3は、CADデータ同一性保証サーバ装置1をPC等によって実現する場合の構成例を示すブロック図である。同図において、原本データ保管部として機能するデータベース101と、データ取得部として機能する通信部102と、出力部として機能する表示部103及び印刷部104と、格納部として機能するメモリ105と、比較部及びデータ形式変換部として機能する制御部106とを含んで構成されており、これら各部がバスラインによって相互に接続されている。
【0027】
データベース101は、周知のハードディスク装置等を利用して実現することができる。その他に、例えば、光磁気ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの他の読み書き可能な記憶媒体によって構成することもできる。
通信部102は、本サーバ装置をインターネットなどのネットワークに接続するための装置であって、モデム、ターミナルアダプタ、その他の接続装置によって構成されている。そのため、他のコンピュータに格納されているCADデータを通信部102を介して受信し、これに対して同一性を検証することもできる。
【0028】
表示部103は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどで構成された情報を画面上に提示するための装置である。
印刷部104は、例えば、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ、熱転写プリンタ、ドットプリンタなどの各種プリンタ装置によって構成されている。
【0029】
メモリ105にはプログラムやデータを格納することができる。例えば、本サーバ装置を動作させるための基本的なプログラムであるOS(Operating System)、通信部を制御する通信プログラム、入力されたCADデータを共通形式のデータに変換するための変換プログラム、その他の各種プログラムが記憶されている。また、メモリ105には、sfcデータ、p21データを操作するためのツール群がライブラリ(共通ライブラリと呼ばれる)として格納されており、本サーバ装置は、共通ライブラリを利用してsfcデータ、p21データの読み込みその他の処理を行う。メモリには、同一性を検証するためのsfc形式のファイル、p21形式のファイルなどのCADデータが格納されている。
【0030】
制御部106は、sfc形式のファイル、p21形式のファイルを開いて、それぞれsfcデータ、p21データを読み込んだり、フィーチャを配列に格納したり、配列の要素のマッチング処理を行ったりする他、本サーバ装置全体の制御などを行う。
制御部106は、所定のプログラムに従って、情報処理や本装置全体の制御を行ったりする。制御部106は、レジスタと呼ばれる記憶部を有しており、このレジスタにメモリ105などからプログラムを読み込んで、このプログラムに従って動作することにより制御部106の各種機能が発揮される。
【0031】
本実施の形態では、メモリ105には、sfc形式のファイル、p21形式のファイルを用いて入力されたsfcデータ、p21データを記憶したり、配列a、bを記憶したり、あるいは、適合配列、仮確定配列、確定配列(後述する図10参照)を記憶したりなどし、sfcデータとp21データとの同一性を検証するためのエリアが確保可能となっている。
【0032】
なお、CADデータ同一性保証サーバ装置1には、文字や数字などの各種データを入力するために、キーボードやマウスなどの入力部107も設けられている。キーボードは、カナや英文字などを入力するためのキーや数字を入力するためのテンキー、各種機能キー、カーソルキー及びその他のキーによって構成されている。マウスは、ポインティングデバイスである。GUI(Graphical User Interface)などを用いて、表示画面上に表示されたボタンやアイコンなどをマウスでクリックすることにより、所定の情報の入力を行うことができる。
【0033】
(システム運用例)
図4及び図5を参照して、本サーバ装置を用いて構成したシステムの実運用例について説明する。両図には、発注者側PC2、受注者側PC3による、CADデータ同一性保証サーバ装置1との間のデータ授受の様子等が示されている。
図4には、契約時、及び、設計中・工事中におけるデータ授受の様子等が示されている。最初に、発注者側PC2において、契約書に基づいて作成された発注データが登録され、その発注データがサーバ装置1に送信される(ステップSS1)。この発注データは、例えば、「○○0.sfc」である。
【0034】
送信された発注データは、サーバ装置1によって受信され、タイムスタンプが付されて原本として原本データ保管部11(図2参照)に登録される(ステップSS2)。その後、発注データは、受注者側PC3に送信され、受注者側PC3ではその図面が参照される(ステップSS3)。
受注者側PC3では、発注データに基づき、その工事に必要な図面が作成される(ステップSS4)。ここでは、CADソフトによって新たな図面が作成される。例えば、工事現場側からの提案により、必要な柱を追加した図面が作成される。ここで、作成された図面のデータは、例えば、「○○1.aaa」である。この作成された図面のデータは、サーバ装置1に登録するため、受注者側PC3から送信される(ステップSS5)。
【0035】
受注者側PC3から送信されたデータ「○○1.aaa」は、サーバ装置1によって受信され、共通の形式に変換された後(ステップSS6)、タイムスタンプが付されて原本として原本データ保管部11(図2参照)に登録される(ステップSS7)。この変換されて登録されるデータは、例えば、「○○1.sfc」である。
その後、登録されたデータ「○○1.sfc」は、サーバ装置1から発注者側PC2に送信され、発注者側PC2において受信され、閲覧される(ステップSS8)。その後、発注者側PC2において、発注データについての修正が行われる(ステップSS9)。この修正は、サーバ装置1から受信したデータ「○○1.sfc」に基づいて行われる。修正後のデータは、例えば、「○○2.bbb」である。
【0036】
このような修正作業が行われた場合、発注者側PC2において、そのデータが登録された後、契約内容を変更するものとして、サーバ装置1に登録するため、そのデータ「○○2.bbb」が発注者側PC2から送信される(ステップSS10)。
発注者側PC2から送信されたデータ「○○2.bbb」は、サーバ装置1によって受信され、共通の形式に変換された後(ステップSS11)、タイムスタンプが付されて原本として原本データ保管部11(図2参照)に登録される(ステップSS12)。この変換されて登録されるデータは、例えば、「○○2.sfc」である。
【0037】
その後、登録されたデータ「○○2.sfc」は、受注者側PC3に送信され、受注者側PC3ではその図面が参照される(ステップSS13)。受注者側では、そのデータに基づき、変更された契約により、工事実施等が行われる。
以後、受注者側において、図面が作成された場合、上記のステップSS4からSS13までの処理が繰返し行われることになる。
【0038】
図5には、納品検査時、及び、契約紛争の発生など問題発生時におけるデータ授受の様子等が示されている。
工事が終了し、不動産や動産が完成した場合、受注者側PCにおいて、CADソフトによって完成図面が作成される(ステップSS21)。ここで、作成された図面のデータは、例えば、「○○3.aaa」である。この作成された図面のデータは、サーバ装置1に登録するため、受注者側PC3から送信される(ステップSS22)。
【0039】
受注者側PC3から送信されたデータ「○○3.aaa」は、サーバ装置1によって受信され、共通の形式に変換された後(ステップSS23)、タイムスタンプが付されて原本として原本データ保管部11(図2参照)に登録される(ステップSS24)。この変換されて登録されるデータは、例えば、「○○3.sfc」である。
【0040】
その後、登録されたデータ「○○3.sfc」について差異分析、及び同一性保証のための検証が行われる(ステップSS25)。ここでは、データ「○○0.sfc」、「○○2.sfc」、「○○3.sfc」について比較部13(図2参照)による比較処理が行われる。この比較処理の結果、同一性有り、すなわち原本と相違ない旨が確認された場合、登録されたデータ「○○3.sfc」が保証書と共に発注者側PC2に送信される。発注者側PC2では、そのデータ「○○3.sfc」を受信することにより、差異データを閲覧し、検査を実施することができる(ステップSS26)。この場合、そのデータと共に、第三者機関であるサーバ装置1による保証書が添付されているので、検査作業が容易になる。このため、納品検査時の図面確認作業時間を短縮することができる。
【0041】
また、契約紛争等の問題が発生した場合には、サーバ装置1において、登録されているデータの内容について登録内容の解析及び保証のための処理が行われる(ステップSS31)。ここでは、データ「○○0.sfc」、「○○2.sfc」、「○○3.sfc」について比較部13(図2参照)による比較処理が行われる。この比較処理の結果が、保証書と共に発注者側PC2、受注者側PCにそれぞれ送信される(ステップSS32、SS33)。この比較結果を受信し、内容データを閲覧することで、責任関係を把握できる。この場合、データと共に、第三者機関であるサーバ装置1による保証書が添付されているので、証拠能力を担保することができる。
【0042】
なお、図4及び図5を参照して上述した運用例では、サーバ装置1において共通形式のデータに変換した後で、そのデータを登録しているが、変換せずにそのまま登録しておき、データ同士を比較処理する段階で共通形式のデータに変換してもよい。また、上述した運用例では、共通形式のデータへの変換は、データを受信したサーバ装置1において行っているが、サーバ装置1への送信前に変換し、その変換後のデータをサーバ装置1に送信しても良い。
【0043】
(比較処理例)
ここで、上述した比較部13による比較処理の例について、より詳細に説明する。本例では、p21形式で出力されたCADデータ(以下p21データ)とsfc形式で出力されたデータ(以下sfcデータ)が同一の設計図面を表したものか否かを以下の手法により検証する。
CADデータは、仮想的な用紙、レイヤ、点マーカ、線分、円、シンボル、寸法線といった、図面要素を表す図面要素データを用いて構成されている。これら図面要素データには、図面要素が設計図面においてどのように表現されているかを規定するパラメータ(例えば、線分であれば、始点終点の座標値、線の太さ・色、配置されているレイヤなど)が付属している。さらに、そのデータに関連する属性情報要素がCADデータに含まれている場合もある。この属性情報要素は、例えば、土工量情報、鉄筋数量情報、材質情報、型番情報などである。このCADデータに付加される属性情報要素は、例えば、周知のXML(eXtensible Markup Language)ファイル形式によって作成される。この属性情報要素についても、上述と同様に、要素同士の比較処理が行われ、この比較処理の結果が上述と同様に送信される。この比較結果を受信し、内容データを閲覧することで、責任関係を把握できる。
【0044】
そこで、sfcデータの図面要素データと、p21データの図面要素データをそれぞれ配列a、配列bにパラメータと共に格納し、パラメータを比較することにより、配列aの要素と配列bの要素を対応(マッチング)する。配列aの要素と配列bの要素が1対1に対応した場合、sfcデータとp21データは、同一であると判断され、1対1に対応しない場合は同一でないと判断される。
【0045】
また、配列aと配列bの対応付けは、仮想的な用紙、レイヤ、線分、円など図面要素の種類ごとに行う。これにより、例えば、線分の図面要素と円の図面要素を対応付けるといった、無駄な対応付けを行わなくて済む。
更に対応付けは、まず、配列aの要素をソートしておき、配列aの各要素に配列bの要素を対応付ける。そして、配列aの要素に複数の配列bの要素が対応している場合、配列aの要素と配列bの要素の組み合わせを更新しながら、配列aの要素と配列bの要素が1対1に対応するような配列aの要素と配列bの要素の組み合わせを探索する。
【0046】
(CADデータの構成)
ここで、CADデータの構成について説明する。このCADデータの構成は、CADデータのファイル形式に関わらず同じである。
また、本実施の形態では、CADデータのファイル形式として、p21形式とsfc形式を用いて説明する。なお、これは、CADデータのファイル形式を、p21形式とsfc形式に限定するものではなく、他の形式のファイル形式に対して適用することもできる。
【0047】
図6は、CADで描かれた設計図面の構成を説明するための概念図である。
CADでは、仮想上の用紙の上に、点マーカ、線分、円、寸法線、などを配置していくことにより設計図面を描く。この仮想的な用紙10には、座標系19が設定してあり、この用紙10上に図形を描くことにより、座標空間中に図形を配置することができる。
また、この仮想の用紙10はレイヤと呼ばれる複数の層(レイヤ11a、11b、11c…)から構成されており、ユーザは、レイヤを選択して、そのレイヤ上に設計図面を描くことができる。
【0048】
レイヤは、選択的に操作することができるようになっている。そのため、例えば、幾何学的な形状をレイヤ1に描き、寸法線をレイヤ2に描いておき、レイヤ1とレイヤ2を同時に表示して寸法線が描かれた図面を表示したり、あるいは、レイヤ2を非表示にしてレイヤ1に描かれた幾何学的な形状のみを表示したりすることができ、製図作業や図面の利用効率を高めることができる。
【0049】
用紙上に描かれる図面要素は、例えば、線分12a、12b、12c、円15a、15b、といった幾何学的な形状を持ったものや、点マーカ17のような座標空間中での位置を示すもの、また、寸法線、角度寸法線、テキストデータ、シンボル(例えば、屋根の傾きを表す記号表記)など各種のものがある。
このように、CADデータは、仮想上の用紙、レイヤといった図面構造を表す図面要素や、点マーカ、線分といった幾何学的な形状や表記を表す図面要素、及びシンボル、記号といった構造化された(例えば、バルーンは円、矢線、円中のテキストデータが構造化されて構成されている)図面要素から構成されている。
そして、本実施の形態のCADデータは、次に説明するフィーチャという概念を用いてこれら図面要素を管理している。
【0050】
図7は、フィーチャの構成を説明するための図である。
フィーチャは、図面要素の管理単位である。フィーチャは、フィーチャ名を持つと共に、設計図面上で図面要素の表現を特定するパラメータが付属している。
例えば、線分を表す図面要素は線分フィーチャと呼ばれ、線分が描かれているレイヤ、線分の始点終点の座標値、線種、線幅などの、設計図面におけるその線分の表現を特定するパラメータが付属している。
パラメータの種類は、例えば、線分フィーチャであれば始点終点の座標値、…、円フィーチャであれば中心点の座標値、…などと、フィーチャごとに設定されている。
【0051】
以下、これらフィーチャについてより詳細に説明する。
フィーチャは大きく分類して、図面構造フィーチャ群、幾何表記要素フィーチャ群、構造化要素フィーチャ群の3種類に区分される。
図面構造フィーチャ群は、CADデータを構成する上で基本となる情報を規定するフィーチャから構成されている。図面構造フィーチャ群は、用紙フィーチャ、レイヤフィーチャ、既定義線種フィーチャ、ユーザ定義線種フィーチャ、既定義色フィーチャ、ユーザ定義色フィーチャ、線幅フィーチャ、文字フォントフィーチャなどから構成されている。
【0052】
用紙フィーチャは、設計図面が描かれている仮想的な用紙を指定するフィーチャであり、図面名、用紙サイズなどを規定している。用紙フィーチャを参照することにより、そのCADデータで用いられている仮想的な用紙を特定することができる。
レイヤフィーチャは、後述する幾何表記要素、構造化要素から参照されるテーブル要素であって、各レイヤを特定するレイヤコードと、そのレイヤの名称、表示・表示状態などが対応付けられている。レイヤフィーチャは、パラメータとしてレイヤ名や、レイヤの表示・非表示状態を示すフラグなどを持つ。レイヤフィーチャを参照することにより、各レイヤのレイヤ名や状態を特定することができる。
【0053】
既定義線種フィーチャは、幾何表記要素、構造化要素から参照されるテーブル要素であって、例えば、既定義線種コード1は実線、既定義線種コード2は点線などと、既定義線種コードにより線種が特定できるようになっている。なお、これら各線種は予め定義されている線である。既定義線種フィーチャはパラメータとして線種名を持ち、線種コードと線種名が対応付けられている。
【0054】
同様に、以下のフィーチャは幾何表記要素、構造化要素から参照されるテーブル要素であって、ユーザ定義線種フィーチャは、ユーザ定義線種コードとユーザが定義した線種を対応付けており、ユーザ定義線種コードを指定すると線種を特定することができる。
既定義色フィーチャは、既定義色コードとで予め設定された色を対応付けており、既定義色コードを指定すると色を特定することができる。色はパラメータで表されている。
【0055】
ユーザ定義色フィーチャは、ユーザ定義色コードとユーザが定義した色とを対応付けており、ユーザ定義色コードを指定するとユーザが定義した色を特定することができる。色はパラメータで表されている。
線幅フィーチャは線幅コードと線幅を対応付けており、線幅コードを指定すると線幅を特定することができる。線幅は、パラメータで表されている。
【0056】
文字フォントフィーチャは、文字フォントコードと文字フォントを対応付けており、文字フォントコードを指定すると文字フォントを特定することができる。文字フォントはパラメータにより表されている。
幾何表記要素フィーチャ群は、基本的な幾何図形などを表現するフィーチャから構成されている。幾何表記要素フィーチャ群を構成するフィーチャとしては、例えば、点マーカフィーチャ、線分フィーチャ、折れ線フィーチャ、円フィーチャ、円弧フィーチャ、楕円フィーチャ、楕円弧フィーチャ、文字フィーチャ、スプラインフィーチャなどがある。
【0057】
以下に、点マーカフィーチャと線分フィーチャを用いて、幾何表記要素フィーチャ群を構成するフィーチャについて詳細に説明する。
図8(a)は、点マーカフィーチャのデータ構成を示した図である。なお、点マーカとは、座標位置をディスプレイ上に表示するために便宜的に図面上に打たれる点である。ディスプレイ上には表示されるが印刷はされない。例えば、ユーザが円を描き、作図の都合上、円の中心点の位置を表示しておきたい場合は、円の中心位置に点マーカを配置する。
仮想的な用紙上に配置された各マーカ点は、図に示したように、レイヤコード、色コード、配置点X座標、配置点Y座標、マーカコード、回転角、尺度などのパラメータにより特定される。
【0058】
レイヤコードは、この点マーカが配置されているレイヤのレイヤコードであり、レイヤコードをレイヤフィーチャのテーブル要素で参照することにより、この点マーカが配置されているレイヤを特定することができる。
色コードは、この点マーカの色を特定するコードであり、このコードを既定義色フィーチャ、又はユーザ定義色フィーチャで参照することにより、この点マーカの色を特定することができる。
【0059】
配置点X座標、配置点Y座標は、この点マーカが配置されている位置のX座標値、Y座標値である。
マーカコードは、マーカの形状を特定するコードであり、例えば、コード1はアスタリスク型、コード2は円型、コード3はドットなどと予めテーブルが用意されている。
回転角、尺度は、それぞれ点マーカが配置されている回転角、尺度を表している。
【0060】
このように、CADデータに含まれる各点マーカフィーチャ(データ1、データ2、…)には、それぞれパラメータが設定されており、これらパラメータによって各点マーカフィーチャの属性(レイヤ、位置、形状、色など設計図面上での表現)が特定されるようになっている。
データ1、データ2、…の各データは、それぞれ図面上に表示される点マーカに対応し、それぞれが図面要素データを構成している。
【0061】
図8(b)は、線分フィーチャのデータ構成を示した図である。
線分フィーチャは、設計図面上に配置された線分に対応する。仮想的な用紙上に配置された線分フィーチャには、レイヤコード、色コード、線種コード、線幅コード、始点X座標、始点Y座標、終点X座標、終点Y座標などのパラメータが設定され、これらのパラメータにより各線分フィーチャの属性(レイヤ、位置、形状、色など設計図面上での表現)が特定される。
【0062】
レイヤコードは、この線分フィーチャが配置されているレイヤのコードでありレイヤフィーチャで規定されている。
色コードは、この線分フィーチャの色を特定するコードであり、既定義色フィーチャ、又はユーザ定義色フィーチャで規定されている。
線種コードは、線分フィーチャの線種(実線、点線、…)を特定するコードであり、既定義線種フィーチャ、又はユーザ定義線種フィーチャで規定されている。
【0063】
線幅コードは、線分フィーチャの線幅を特定するコードであり、線幅定義フィーチャで規定されている。
始点X座標、始点Y座標は、線分の始点のXY座標値であり、終点X座標、終点Y座標は、線分の終点のXY座標値である。
このように、CADデータに含まれる各線分フィーチャ(データ1、データ2、…)には、それぞれパラメータが設定されており、これらパラメータによって各線分フィーチャの属性(レイヤ、位置、形状、色など設計図面上での表現)が特定されるようになっている。同様に、幾何表記フィーチャ群を構成する他の各フィーチャもパラメータにより属性(レイヤ、位置、形状、色など設計図面上での表現)が特定されるようになっている。
【0064】
図7に戻り、構造化要素フィーチャ群を構成する各フィーチャは、複数の幾何表記要素フィーチャで構成されるフィーチャで、複数のデータを特定の単位データとして扱えるように定義したフィーチャである。例えば、寸法線は、線分フィーチャや文字フィーチャなどが組み合わされて構成されている。
構造化要素フィーチャ群を構成するフィーチャには、複合図形定義フィーチャ、複合図形配置フィーチャ、既定義シンボルフィーチャ、直線寸法フィーチャ、角度寸法フィーチャ、半径寸法フィーチャ、直径寸法フィーチャ、引出し線フィーチャ、バルーンフィーチャ、ハッチング(既定義)フィーチャ、ハッチング(塗り)フィーチャ、ハッチング(ユーザ定義)フィーチャ、ハッチング(パターン)フィーチャ、複合曲線定義フィーチャなどがある。
【0065】
複合図形定義フィーチャは、複合図形を定義するための要素である。複合図形とは、線分、円弧などの複数の幾何表記要素から構成される図名を1つの図形として定義したものである。パラメータとして複合図形名と複合図形種別フラグを持つ。このフィーチャは部分図などに用いられる。
複合図形配置フィーチャは、複合図形を配置する位置などを特定するための要素である。複合図形配置フィーチャは、パラメータとしてレイヤコード、複合図形名、XY座標値、回転角、X方向縮尺、Y方向縮尺などを持つ。
【0066】
以下、同様に、既定義シンボルフィーチャは、予め定義されているシンボルを表す要素であり、パラメータにより、シンボルの種類や、配置位置、色などの属性が規定される。
直線寸法フィーチャ、角度寸法フィーチャ、半径寸法フィーチャ、直径寸法フィーチャ、引出し線フィーチャは、CADデータ中の各寸法線や引出し線を表すフィーチャであり、各フィーチャに設定されたパラメータによりレイヤや配置位置、表示寸法値などが規定される。バルーンフィーチャは、CADデータ中のバルーンを表すフィーチャであり、パラメータによりレイヤ、配置位置などが規定される。
【0067】
ハッチング(既定義)フィーチャ、ハッチング(塗り)フィーチャ、ハッチング(ユーザ定義)フィーチャ、ハッチング(パターン)フィーチャは、それぞれハッチングを表すフィーチャであり、レイヤ、ハッチング領域、ハッチングが規定される。
複合曲線定義フィーチャは、複数の線分や円弧などで構成された曲線を1つの要素として表したものである。これもパラメータにより一義的に規定される。
【0068】
再び図2を参照して説明する。以下は、sfcデータとp21データとの同一性を判定する場合について説明する。つまり本サーバ装置は、p21データに含まれるフィーチャとsfcデータに含まれるフィーチャをパラメータの比較をすることによりマッチングさせ、両データのフィーチャが1対1に対応するか否かを調べる。
上述したように、CADデータを構成する各フィーチャにより設計図面が規定されるため、p21データを構成するフィーチャとsfcデータを構成するフィーチャが1対1に対応した場合、両データから同じ設計図が再現できるので、両データは同一であると言えるのである。
【0069】
データ形式変換部15が起動されると、原本データ保管部11に格納されているCADデータ又はデータ取得部12によって取得されたファイルの一覧が表示され、ユーザがこれらのうち同一性を検証したいファイルを選択することができるようになっている。
また、データ形式変換部15は、選択されたCADデータファイルの拡張子により、選択されたファイルのファイル形式を把握する。そして、そのCADデータをsfc形式又はp21形式に変換する。そして、変換後のデータは、格納部16に格納される。
【0070】
格納部16は、sfcデータに含まれるフィーチャを配列(配列aとする)に格納(代入)すると共に、p21データに含まれるフィーチャを配列(配列bとする)に格納する。そして、フィーチャが複数の要素から構成されている場合(例えば、線分フィーチャは、一般にデータ1、データ2、…といったように複数のデータから構成されているので配列aの要素は複数存在する)、格納部16は、データごとに配列a、bの要素に格納する。
【0071】
比較部13は、格納部16から配列aと配列bを受け取り、これらのパラメータを比較して配列a、bの要素を対応付ける(比較する)。
対応付けは、フィーチャの種類ごとに行う。即ち、まず用紙フィーチャに関して配列a、bを比較し、一致したら次のフィーチャについて配列a、bを比較する。これを全ての配列a、bについて行う。
比較の結果、一致しない要素があった場合、その時点で比較処理を終了し、sfcデータとp21データは同一でないと判断する。
【0072】
配列a、bの全ての要素が1対1に対応付けられた場合、sfcデータとp21データは同一であると判断する。
配列a、bの要素の一致を判断する基準は、フィーチャごとに設定されている。例えば、点マーカフィーチャには7種類のパラメータが存在するが、これら全てのパラメータが一致した場合に配列a、bの要素が一致したと判断する。
また、線分フィーチャには8種類のパラメータが存在するが、これら全てのパラメータが一致した場合に、配列a、bの要素が一致したと判断する。
【0073】
なお、パラメータの一致は、許容座標誤差範囲内の点の座標を同一とすることにより行う。そのため、配列aに格納された点マーカフィーチャの座標値と、配列bに格納された点マーカフィーチャの座標値が、数値の上で異なっていても、その差異が許容座標誤差範囲内にある場合、同一の点マーカフィーチャとして判断される。
そのため、配列aのある要素に配列bの要素が対応する場合がでてくるが、この場合を処理するアルゴリズムについては後述する。
結果出力部30は、比較部13の比較結果を用いて、sfcデータとp21データが同一であるか否かの判断結果を出力する。
【0074】
(フィーチャを配列に格納する手順)
図9は、フィーチャを配列に格納する手順を説明するための図である。
sfcデータ35は、例えば家屋などの設計図面を構成するCADデータであり、表37に示したような各フィーチャから構成されている。格納部16は、sfcデータ35を構成する各フィーチャを配列aに格納する。
配列aの各要素には、フィーチャを特定する情報とそのフィーチャに設定されたパラメータが格納される。なお、マッチングは、パラメータの一部か全部を用いて行うので、マッチングに必要なパラメータだけ配列a、bに格納してもよい。
【0075】
また、用紙フィーチャのように、1つの要素から構成されるものは、1つの配列要素に格納され、点マーカフィーチャや線分フィーチャのように、複数のデータから構成されるものは、データごとにフィーチャ及びデータを特定する情報、及びそのデータに設定されたパラメータを格納する。
同様に、p21データ40も表42に示したような各フィーチャから構成されている。格納部16は、sfcデータ35と同様にして、p21データ40を構成する各フィーチャを配列bに代入する。
また、パラメータの構成は、フィーチャの種類ごとに異なるので、これらフィーチャの種類ごとに配列a、bの要素の型を定義しておいてもよい。
この場合、配列a、bとしてフィーチャの種類をクラスとする構造体を定義することになる。
【0076】
次に、配列aの1つの要素に対して配列bの複数の要素がマッチングする場合の処理について図10を用いて説明する。
まず、格納部16は、配列aの要素をソートする。ソートの方法は、例えば点マーカフィーチャの場合は、X座標の小さい順にソートするなどとフィーチャごとに決められている。また、円フィーチャの場合は中心の座標、線分フィーチャの場合は始点の座標を用いるなどしてソートすることができる。
【0077】
ソートした後、比較部13は、配列aの要素のパラメータと配列bの要素のパラメータを比較することにより、配列aの各要素に対して対応する配列bの要素を特定していく。このようにして生成された対応関係は、例えば、図10の適合配列50のように表される。ここで、配列bの要素の重複を許して、配列a、bの要素を対応された組み合わせを適合配列と呼ぶことにする。
なお、図10では、配列aの要素を区別するために、各要素をa(0)、a(1)、…などと表し、升目の中にその数字が記されている。配列bの要素に関しても同様である。
適合配列50では、a(0)に対してb(0)がマッチし、a(1)に対してはb(1)、b(2)が対応している。以下同様である。
【0078】
次に、このようにして生成された適合配列50から、配列a、bの要素を1対1に対応させる手順について説明する。
まず、a(0)にマッチするものはb(0)だけであるので、比較部13では、a(0)はb(0)に対応するものとして仮確定し、仮確定配列55を生成する。
仮確定配列55では、a(0)にb(0)が対応しているが、他の配列aの要素に対しては、対応する配列bの要素が未確定となっている。
ここで、配列a、bの要素を仮に1対1に組み合わせた組み合わせを仮確定配列と呼ぶことにする。仮確定配列は、後の更新処理により、組み合わせを解除される場合がある。
【0079】
次に、比較部13は、a(1)に対応する配列bの要素を仮確定する。適合配列50において、a(1)にはb(1)、b(2)が対応しているが、このうちの何れかを仮確定する。ここでは、b(1)を仮確定するものとする。このようにして比較部13は、仮確定配列55を仮確定配列56に更新する。
次に、比較部13は、a(2)に対応する配列bの要素を確定する。適合配列50で、a(2)にマッチしている配列bの要素はb(1)のみであるので、比較部13は、a(2)に対してb(1)を仮確定し、仮確定配列56を仮確定配列57に更新する。
【0080】
しかし、ここでb(1)は、既にa(1)との対応関係が仮確定しているので、a(2)にb(1)を対応付けてしまうと、配列aと配列bの要素を1対1に対応付けることができない。そのため、比較部13は、a(1)、a(2)の対応関係を解消し、一段階前の、a(1)の対応関係を仮確定する段階に戻る。
適合配列50で、a(1)に対応しているものは、b(1)の他にb(2)があるので、比較部13は、a(1)に対してb(2)を対応付ける。このようにして比較部13は、仮確定配列57を仮確定配列58に更新する。
【0081】
次に、比較部13は、a(2)に対応する要素としてb(1)を対応付け、仮確定配列58を仮確定配列59に更新する。
次に、比較部13は、a(3)にb(2)を対応付けるが、b(2)は既にa(1)に対応付けられているので、b(2)の仮確定を解消し、b(4)を仮確定する。そして、仮確定配列60が得られる。
【0082】
以下、このように比較部13は配列a、bの要素を順に対応付けていき、矛盾が生じた場合は、前の段階に戻って新たな対応関係を探索する。この処理を再帰的に繰り返すと、配列a、bの要素が1対1に対応する場合は、最後の要素であるa(n)まで対応関係が1対1に決めることができ、確定配列65が得られる。ここで、配列a、bの要素が1対1に対応付けられる配列a、bの要素の組み合わせを確定配列と呼ぶことにする。
【0083】
また、1対1に対応しない場合は、a(0)に対応する配列bの要素を決定する段階まで処理が戻り、適合配列50でa(0)に対応している配列bの要素の中で、矛盾無くa(0)に対応する配列bの要素を見いだすことができないことになる。この場合、a(0)の前の段階のa(−1)に処理を戻ろうとする。
以上の手順により、配列a、bの要素を1対1に対応させる組み合わせを総当たり的に探索することにより、そのフィーチャに関してCADデータが一致するか否かを検証することができる。
【0084】
次に、本装置による詳細なデータ処理手順についてフローチャートを用いて説明する。
図11は、本装置が行うマッチング処理手順を示したフローチャートである。
まずデータ形式変換部15でsfc形式のファイルを読み込む(ステップS5)。次に、このsfc形式のファイルからsfcデータを読み込み、フィーチャを配列aに格納する(ステップS10)。
【0085】
次に、データ形式変換部15でp21形式のファイルを読み込み(ステップS15)、フィーチャを配列bに格納する(ステップS20)。そして、格納部16が、各フィーチャに対して配列aをソートする。
次に、比較部13がフィーチャをカウントするためのカウンタkを0に初期化する(ステップS25)。
【0086】
フィーチャには、例えば、用紙フィーチャはk=0、レイヤフィーチャはk=1、…などと、番号でフィーチャの種類を特定することができるようになっている。
次に、比較部13がk番目のフィーチャに対して配列a、bの要素をマッチング処理する(ステップS30)。この処理の手順は後に示す。
なお、k番目のフィーチャに対応する配列a、bが存在しない場合は(例えば、楕円フィーチャを用いないで作成されたCADデータには、楕円フィーチャに対応する配列a、bは存在しない)、配列a、bの要素がマッチしたものとして処理する。
【0087】
配列a、bの要素が1対1にマッチしなかった場合(ステップS35;N)、sfcデータとp21データは同一でないと判断し(ステップS55)、本装置は、処理を終了する。
配列a、bの要素が1対1にマッチした場合は(ステップS35;Y)、kに1をインクリメントする(ステップS40)。次に、比較部13は、kがM未満か否かを判断する(ステップS45)。ここで、Mは全てのフィーチャの数である。
【0088】
kがM未満でない場合(即ち、kがM以上の場合)(ステップS45;N)、全てのフィーチャに対して配列a、bのマッチングが成功したことになり、比較部13は、sfcデータとp21データが同一であると判断し(ステップS50)、処理を終了する。kがM未満である場合は(ステップS45;Y)、まだマッチング処理していないフィーチャが存在するため、比較部13は、ステップS30の処理に戻る。
【0089】
図12は、ステップS30(図11)のマッチング処理の手順を示したフローチャートである。
この処理は、適合配列(図10)から確定配列を探索する作業である。
まず、比較部13は、配列a、bの要素の数を確認する(ステップS105)。配列の要素の数が同じでない場合(ステップS110;N)、配列a、bの要素は1対1に対応しないので、比較部13は不適合(一致しない)と判断し(ステップS145)、ステップS30(図11)にリターンする。
【0090】
配列の要素の数が同じであった場合(ステップS110;Y)、比較部13は、パラメータを比較することにより、配列aの各要素に配列bを対応付ける(ステップS115)。その結果、図10に示したような適合配列が得られる。
次に、比較部13は、配列aの全ての要素に、配列bの要素が少なくとも1つは対応付けられているか確認する(ステップS120)。配列bの要素が1つも対応付けられていない配列aの要素があった場合(ステップS120;N)、配列a、bの要素を1対1に対応付けることはできないので、比較部13は、不適合と判断し(ステップS145)、ステップS30(図11)にリターンする。
【0091】
配列aの全ての要素に、配列bの要素が少なくとも1つは対応付けられていた場合(ステップS120;Y)、比較部13は、配列bの各要素に対しても、少なくとも1つは、配列aの要素が対応付けられているか確認する(ステップS125)。
配列aの要素が1つも対応付けられていない配列bの要素があった場合(ステップS125;N)、比較部13は、不適合と判断し(ステップS145)、ステップS30にリターンする。
【0092】
配列bの全ての要素に対して少なくとも1つは配列aの要素が対応付けられていた場合(ステップS125;Y)、ステップS130で配列要素のマッチング処理を行う(ステップS130)。この処理については後に図13のフローチャートを用いて説明する。この処理で配列a、bの要素が1対1に対応付けられた場合、図10に示したような確定配列が得られる。
【0093】
マッチング処理の結果、配列a、bの要素が1対1に対応付けられた場合(ステップS135;Y)、適合と判断し(即ち、マッチすると判断し)(ステップS140)、処理をステップS30(図11)にリターンする。
一方、配列a、bの要素が1対1に対応付けられなかった場合(ステップS135;N)、不適合と判断し(ステップS145)、処理をステップS30にリターンする。
【0094】
図13は、ステップS130(図12)のマッチング処理の手順を示したフローチャートである。この処理で行う作業は、図10において仮確定配列を更新する作業である。
まず、比較部13は、カウンタiを0に初期化する。
次に、比較部13は、配列aの要素のうち、a(i)に関して、a(i)に対応付けられた配列bの要素のうち、未確定のもの(即ち仮確定されていないもの)があるか確認する(ステップS210)。
配列bの要素のうち、未確定のものがあった場合(ステップS210;Y)、その中から配列bの要素を選択して仮確定し、この配列bの要素をa(i)に対応付ける(ステップS215)。
【0095】
次に、比較部13は、iに1を加えてインクリメントする(ステップS225)。
次に、比較部13は、iがNより大きいか判断する(ステップS230)。ここで、Nは、配列a及び配列bの要素の個数である。iがNより大きくない場合(iがN以下の場合)は(ステップS230;N)、まだ配列bの要素が対応付けられていない配列aの要素があるので、比較部13は、処理をステップS210に戻す。iがNより大きい場合(ステップS230;Y)、配列aの全ての要素に対して配列bの要素が対応付けられたので、比較部13は、マッチング成功と判断し(ステップS235)、処理をステップS130(図12)にリターンする。
【0096】
また、ステップS210において、a(i)に対応付けられた配列bの要素のうち、未確定のものが無い場合は(ステップS210;N)、比較部13は、iから1を減算してデクリメントする(ステップS245)。
そして、比較部13は、iが負か否か(より詳細にはiから1を減算した結果−1になったか否か)を確認する(ステップS250)。iが負であった場合(ステップS250;Y)、比較部13は、マッチング不成功と判断し(ステップS260)、処理をステップS130(図12)にリターンする。iが負でない場合(ステップS250;N)、比較部13は、a(i)にマッチした配列bの要素のうち、一度も仮確定したことの無いものがあるか否かを確認する(ステップS225)。一度も仮確定したことの無いものがある場合(ステップS255;Y)、比較部13は、処理をステップS215に戻し、その中から配列bの要素を選択して仮確定する。
【0097】
一度も仮確定したことの無い配列bの要素が無い場合(ステップS255;N)、比較部13は、a(i)で仮確定している配列bの要素の仮確定状態を解除し(ステップS240)、処理をステップS245に戻す。
以上に、sfcデータとp21データの同一性の判断手順について説明したが、これは一例であって種々の変形が可能である。
【0098】
例えば、本実施の形態では、配列aをソートして、これに配列bの要素を対応付けたが、逆に配列bをソートしておき、これに配列aの要素を対応付けるように構成することもできる。
また、本実施の形態では、フィーチャを配列に格納して、配列の要素単位でマッチングしたが、マッチングするためにはフィーチャのパラメータを比較することができればよく、必ずしも配列を使用する必要は無い。
【0099】
(応用例)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種の変形を行うことが可能である。
例えば、本実施の形態では、CADデータのファイル形式としてp21形式、sfc形式を用いるが、これはファイル形式を限定するものではなく、例えば、A社のCADソフトが採用しているファイル形式とB社のCADソフトが採用しているファイル形式といったように、異なるファイル形式に係るCADデータ間の比較を行うことができる。すなわち、ファイル形式に関わらず、図面要素単位でパラメータが比較できれば本装置で同一性を検証することができる。
【0100】
また、例えば、2つのp21データ、あるいは2つのsfcデータを比較するといったように、同一のファイル形式のCADデータを比較することもできる。この場合、例えば、第1のp21データの図面要素データを配列aに格納し、第2のp21データの図面要素データを配列bに格納し、配列a、bの要素を対応付ける。
さらにまた、以上は、二次元図面データについて説明したが、三次元図面データについても同様に適用できることは明白である。すなわち、三次元図面データについても共通のデータ形式に変換し、図面要素同士を逐次比較することにより、CAD図面データ同士の内容的な同一性を確認することができる。
【0101】
(修正履歴の管理)
ところで、CADデータについての修正履歴を記憶しておき、その修正履歴記憶内容をもプリントアウト出力等するようにしてもよい。例えば、発注データについての修正が行われた場合に、その修正前と修正後との差分内容を修正履歴とし、これを例えばデータベースに記憶しておく。つまり、図14に示されているように、データベース101に、修正元データ101aと、それに対する修正内容である修正履歴データ101bとを、記憶しておく。そして、修正が行われる都度、修正履歴データ101bが順次蓄積される。この場合、受注者が修正元データに修正を加えることにより、発注者への納品用データが作成される。納品用データをサーバ装置から発注者側PCに送信する際には、先述した保証書の他に、修正履歴データも送信される。
【0102】
この修正履歴データを管理する場合においても、比較処理において比較されるのは、修正元データに修正を加えられた最新のCADデータである。このCADデータ同士の比較処理の結果、同一性無しである場合、納品用データと共に送信される上記修正履歴データの内容を確認することにより、責任関係を把握できる。上記比較処理の結果、同一性有りである場合においても、納品用データと共に送信される上記修正履歴データの内容を確認できることは勿論である。
【0103】
この修正履歴は、例えば、CADデータについての修正内容と、そのタイムスタンプと、その修正を行った者を特定するための修正者情報とを含んでいる。これらを含んでいれば、修正内容、日時などのタイムスタンプ、修正者氏名やIDなどの修正者情報を確認でき、責任関係をより詳細に把握できる。もっとも、これらに限らず、他の情報を修正履歴として含んでいてもよいことは勿論であり、その情報に基づいて責任関係を詳細に把握できる。
【0104】
(CADデータ同一性保証方法)
上述したCADデータ同一性保証サーバ装置を用いたCADデータ同一性保証システムによって実現される、CADデータ同一性保証方法について、図15のフローチャートを参照して説明する。
上記システムによって実現されるCADデータ同一性保証方法は、図面を構成する図面要素とその図面要素が上記図面においてどのように表現されているかを規定するパラメータとから構成されるCADデータの同一性を保証するCADデータ同一性保証方法であり、発注者から入力されたCADデータをタイムスタンプと共に原本データとして保管する原本データ保管ステップ(ステップS301)と、上記原本データと比較すべき比較対象データを取得するデータ取得ステップ(ステップS302)と、上記データ取得ステップによって取得されたデータと上記原本データ保管ステップにおいて保管されたデータとを比較する比較ステップ(ステップS303)と、上記比較ステップの比較結果を出力する出力ステップ(ステップS304)とを含んでいる。
【0105】
このよう方法を採用することにより、設計や施工の発注者から入力されたCADデータを原本データとし、タイムスタンプと共に保管しておき、これと比較対象データと比較することで原本との内容的な同一性を容易に保証することができる。また、その比較結果である同一性証明書と共に図面データをプリントアウト出力等することによって、紛争等における証拠能力を担保することができる。
【0106】
また、上記CADデータ同一性保証システムにより、図16に示されているようなCADデータ同一性保証方法も実現されている。すなわち、図面を構成する図面要素とその図面要素が上記図面においてどのように表現されているかを規定するパラメータとから構成されるCADデータの同一性を保証するCADデータ同一性保証方法であり、入力されたCADデータを、原本データと比較可能な共通形式のデータに変換するデータ形式変換ステップ(ステップS401)と、上記データ形式変換ステップにおいて変換された変換後データを、上記パラメータと共にそれぞれ別々の配列に格納する格納ステップ(ステップS402)と、上記データ形式変換ステップによる変換後のデータについて要素同士の比較を順次行う比較ステップ(ステップS403)と、上記比較ステップによる比較の結果、全ての要素同士が1対1に対応した場合に、上記原本データと上記比較対象データとが同一であると判定する判定ステップ(ステップS404)とを含む方法が実現されている。
このような方法によれば、共通形式のデータに変換後、原本データと比較することにより、元のCADデータのファイル形式を問わずデータの内容的な同一性を確認することができる。
【0107】
(まとめ)
本発明のCADデータ同一性保証サーバ装置、CADデータ同一性保証方法を利用することによって、以下の効果が得られる。すなわち、共通形式のデータに変換後、原本データと比較することにより、元のCADデータのファイル形式を問わず同一性を確認することができる。また、原本との同一性を確認できる設計や施工の発注者から入力されたCADデータを原本データとし、タイムスタンプと共に保管しておき、これと比較対象データと比較することで原本との同一性を容易に確認でき、その比較結果である同一性証明書と共に図面データをプリントアウト出力等することによって、紛争等における証拠能力を担保することができる。
【0108】
そして、データの内容的な同一性を確認する場合、データファイル内の要素(例えば「線」)がどのような順序で描かれていても、画面に表示される内容が同一であれば、同一性ありと結論付けることができる。さらに、修正点がある場合も、その差分を管理することができる。このため、図面に基づいて完成した不動産や動産に不具合があった場合、発注者側、受注者側、のいずれに責任があるのか、すなわち責任の所在を明確にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、CADデータ同士の同一性を確認する場合に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明によるCADデータ同一性保証サーバ装置を用いて構成したCADデータ同一性保証システムの概要を示す図である。
【図2】本発明の実施の一形態によるCADデータ同一性保証サーバ装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図3】CADデータ同一性保証サーバ装置1をPC等によって実現する場合の構成例を示すブロック図である。
【図4】契約時、及び、設計中・工事中におけるデータ授受の実運用例を示す図である。
【図5】納品検査時、及び、契約紛争の発生など問題発生時におけるデータ授受の実運用例を示す図である。
【図6】CADソフトで描かれた設計図面の構成を説明するための概念図である。
【図7】フィーチャの構成を説明するための図である。
【図8】幾何表記要素フィーチャのデータ構成を説明するための図である。
【図9】フィーチャを配列に代入する手順を説明するための図である。
【図10】配列aの1つの要素に対して配列bの複数の要素がマッチングする場合の処理について説明するための図である。
【図11】マッチング処理の手順を示したフローチャートである。
【図12】図11中のステップS30のマッチング処理の手順を示したフローチャートである。
【図13】図12中のステップS130のマッチング処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図14】CADデータ同一性保証サーバ装置1をPC等によって実現する場合の他の構成例を示すブロック図である。
【図15】本発明の実施形態によるCADデータ同一性保証方法の一例を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施形態によるCADデータ同一性保証方法の他の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0111】
1 データ同一性保証サーバ装置
2 発注者側PC
3 受注者側PC
11 原本データ保管部
12 データ取得部
13 比較部
14 出力部
15 データ形式変換部
16 格納部
100 ネットワーク
101 データベース
102 通信部
103 表示部
104 印刷部
105 メモリ
106 制御部
107 入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面を構成する図面要素とその図面要素が前記図面においてどのように表現されているかを規定するパラメータとから構成されるCADデータの同一性を保証する同一性保証サーバ装置であって、発注者から入力されたCADデータをタイムスタンプと共に原本データとして保管する原本データ保管手段と、前記原本データと比較すべき比較対象データを取得するデータ取得手段と、前記データ取得手段によって取得されたデータと前記原本データ保管手段に保管されているデータとを比較する比較手段と、前記比較手段の比較結果を出力する出力手段とを含むことを特徴とするCADデータ同一性保証サーバ装置。
【請求項2】
前記CADデータは、そのデータに関連する属性情報要素を更に含み、
前記比較手段は、前記属性情報要素同士も比較することを特徴とする請求項1記載のCADデータ同一性保証サーバ装置。
【請求項3】
前記CADデータを前記パラメータと共にそれぞれ別々の配列に格納する格納手段を更に含み、
前記比較手段は、前記配列に格納されているデータについて要素同士の比較を順次行い、この比較の結果、全ての要素同士が1対1に対応した場合に、前記原本データと前記比較対象データとが同一であると判定することを特徴とする請求項1又は2記載のCADデータ同一性保証サーバ装置。
【請求項4】
前記入力されたCADデータを、前記原本データと比較可能な共通形式のデータに変換するデータ形式変換手段を更に含み、前記データ形式変換手段による変換後のデータについて前記比較手段による比較を行うことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のCADデータ同一性保証サーバ装置。
【請求項5】
前記データ形式変換手段は、前記入力されたCADデータをSXF変換し、このSXF変換によって得られるp21形式のデータ及びsfc形式のデータのいずれか一方を共通形式のデータとすることを特徴とする請求項4記載のCADデータ同一性保証サーバ装置。
【請求項6】
前記CADデータについての修正履歴を記憶する修正履歴記憶手段を更に含み、前記出力手段は前記修正履歴記憶手段の記憶内容をも出力することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のCADデータ同一性保証サーバ装置。
【請求項7】
前記修正履歴は、少なくとも、前記CADデータについての修正内容と、そのタイムスタンプと、その修正を行った者を特定するための修正者情報とを含むことを特徴とする請求項6記載のCADデータ同一性保証サーバ装置。
【請求項8】
図面を構成する図面要素とその図面要素が前記図面においてどのように表現されているかを規定するパラメータとから構成されるCADデータの同一性を保証するCADデータ同一性保証方法であって、発注者から入力されたCADデータをタイムスタンプと共に原本データとして保管する原本データ保管ステップと、前記原本データと比較すべき比較対象データを取得するデータ取得ステップと、前記データ取得ステップによって取得されたデータと前記原本データ保管ステップにおいて保管されたデータとを比較する比較ステップと、前記比較ステップの比較結果を出力する出力ステップとを含むことを特徴とするCADデータ同一性保証方法。
【請求項9】
図面を構成する図面要素とその図面要素が前記図面においてどのように表現されているかを規定するパラメータとから構成されるCADデータの同一性を保証するCADデータ同一性保証方法であって、入力されたCADデータを、原本データと比較可能な共通形式のデータに変換するデータ形式変換ステップと、前記データ形式変換ステップにおいて変換された変換後データを、前記パラメータと共にそれぞれ別々の配列に格納する格納ステップと、前記データ形式変換ステップによる変換後のデータについて要素同士の比較を順次行う比較ステップと、前記比較ステップによる比較の結果、全ての要素同士が1対1に対応した場合に、前記原本データと前記比較対象データとが同一であると判定するステップとを含むことを特徴とするCADデータ同一性保証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−206956(P2007−206956A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24657(P2006−24657)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(500063228)
【出願人】(501069555)株式会社関西総合情報研究所 (6)
【出願人】(591091087)株式会社建設技術研究所 (18)
【Fターム(参考)】