説明

CANのエラー検出評価方法およびCAN通信装置

【課題】CANのエラー検出評価環境のコストの低減を図ること。CANのエラー検出評価環境の規模を小さくすること。
【解決手段】テストモード時に、被試験ノードと治具ノードを同一のCAN伝送路に接続し、被試験ノードと治具ノードとで、データフレームのID値およびDLC値を同じに設定する。被試験ノードのデータフレームのデータ領域に設定するデータ値のいずれかのビットのレベルをリセッシブとし、それに対応する治具ノードのデータフレームのビットのレベルをドミナントにする。このように設定されたデータフレームを被試験ノードおよび治具ノードからそれぞれCAN伝送路に送信すると、被試験ノード1がCAN伝送路へ送信するデータフレームのデータ値と、被試験ノード1がCAN伝送路から受信するデータフレームのデータ値が異なるので、ビットエラーが発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、CANのエラー検出評価方法およびCAN通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載ネットワークを始め、様々な分野でCAN(Controller Area Network)が用いられている。従来、CAN通信における物理レイヤのパケット通信評価を行う場合には、専用の解析装置であるCANプロトコルアナライザが用いられる。このアナライザにより、パケットの監視、正常パケットの挿入および異常パケットの挿入が行われる。また、オシロスコープ等のモニタリング専用測定器を用いて異常系の評価を行うこともある。その場合には、FPGA(Field Programmable Gate Array)で作成された専用の擬似異常パケット生成器により、異常パケットの挿入が行われる。
【0003】
ところで、CANバスラインを介してネットワーク化された各電装ユニットの稼動状態を監視・診断する自立型CAN通信診断装置が公知である。このCAN通信診断装置は、CANバスラインに着脱可能に接続され、電装ユニットとの間でデータ信号の授受を行うCAN通信回路と、監視・診断用のプログラムを格納する第1のメモリ回路と、前記プログラムを用いた演算結果を一時記憶する第2のメモリ回路と、前記CAN通信回路からのデータ信号に基づいて前記プログラムを実行し、監視・診断結果を出力するCPUと、前記監視・診断結果を表示するモニタ画面とを備え、前記CAN通信回路と、前記第1および第2のメモリ回路と、前記CPUとは前記モニタ画面を搭載した筐体内に一体として収納されていることを特徴とする(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−244779号公報(段落[0006])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の評価方法では、高額なCANプロトコルアナライザを用いたり、専用の擬似異常パケット生成器を作成したり、専用の診断装置を作製する必要がある。そのため、評価環境のコストの増大や、評価環境の規模の増大を招くという問題点がある。
【0006】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、評価環境のコストの低減を図ることができるCANのエラー検出評価方法およびCAN通信装置を提供することを目的とする。また、この発明は、評価環境の規模を小さくすることができるCANのエラー検出評価方法およびCAN通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかるCANのエラー検出評価方法およびCAN通信装置は、以下の特徴を有する。テストモード時に、試験対象となる第1のCAN通信装置(被試験ノード)と治具としての第2のCAN通信装置(治具ノード)は、同一のCAN伝送路に接続される。この状態で、第1のCAN通信装置と第2のCAN通信装置とで、データフレームのID値とDLC(Data Length Code)値は、それぞれ、同じ値に設定される。ID値は、各CAN通信装置に固有の識別子であり、DLC値はデータ長を示すコードである。
【0008】
そして、第1のCAN通信装置のデータフレームのデータ領域に設定されるデータ値のいずれかのビットにおいて、そのビットのレベルがリセッシブであるのに対して、それに対応する第2のCAN通信装置のデータフレームのビットのレベルがドミナントになるように設定される。それまでのデータフレームの各ビットのレベルは、第1のCAN通信装置と第2のCAN通信装置とで同じに設定される。このように設定されたデータフレームを第1のCAN通信装置および第2のCAN通信装置からそれぞれCAN伝送路に送信する。このようにすれば、第1のCAN通信装置がCAN伝送路にデータ領域のデータを送信しているときに、その送信レベルがリセッシブであるにもかかわらず、CAN伝送路のレベルがドミナントになるので、ビットエラーまたはスタッフエラーが起こる。
【0009】
また、第2のCAN通信装置のデータフレームにおいて、第1のCAN通信装置のデータフレームのCRC領域に対応する部分に、第1のCAN通信装置のCRC領域に設定されるCRC値と異なるデータ値が設定される。それまでのデータフレームの各ビットのレベルは、第1のCAN通信装置と第2のCAN通信装置とで同じに設定される。このように設定されたデータフレームを第1のCAN通信装置および第2のCAN通信装置からそれぞれCAN伝送路に送信する。このようにすれば、第1のCAN通信装置がCAN伝送路から誤った値のCRC値を受信することになるので、CRCエラーが起こる。
【0010】
また、第2のCAN通信装置のデータフレームにおいて、第1のCAN通信装置のデータフレームのACK領域に対応するビットのレベルがリセッシブに設定される。それまでのデータフレームの各ビットのレベルは、第1のCAN通信装置と第2のCAN通信装置とで同じに設定される。このように設定されたデータフレームを第1のCAN通信装置および第2のCAN通信装置からそれぞれCAN伝送路に送信する。このようにすれば、CAN伝送路から第1のCAN通信装置に、ACKとして期待されるドミナントレベルの信号が返ってこないので、ACKエラーが起こる。
【0011】
また、第2のCAN通信装置のデータフレームにおいて、第1のCAN通信装置のデータフレームの境界領域に対応するビットのレベルがドミナントに設定される。それまでのデータフレームの各ビットのレベルは、第1のCAN通信装置と第2のCAN通信装置とで同じに設定される。このように設定されたデータフレームを第1のCAN通信装置および第2のCAN通信装置からそれぞれCAN伝送路に送信する。このようにすれば、第1のCAN通信装置がCAN伝送路から規格外のデータフレームを受信することになるので、フォーマットエラーが起こる。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるCANのエラー検出評価方法およびCAN通信装置によれば、CANプロトコルアナライザや擬似異常パケット生成器や専用の診断装置を用いずに、製品として出荷されるCAN通信装置を被試験ノードと治具ノードに用いることによって、CANの各種エラーを起こすことができる。従って、評価環境のコストの低減を図ることができるという効果を奏する。また、評価環境の規模を小さくすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるCANのエラー検出評価方法およびCAN通信装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する例によって限定されるものではない。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態にかかるCAN通信装置およびそのエラー検出評価環境の構成を示す図である。図1に示すように、実施の形態にかかるCAN通信装置のエラー検出評価環境は、一対のCAN通信装置1,2をCANケーブル3で接続し、各CAN通信装置1,2に、それぞれ、評価用端末4,5をUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)6,7により接続した構成となる。
【0015】
一対のCAN通信装置1,2は同じ構成の装置であり、例えば、製品として出荷される前のCAN通信ボードである。ここでは、一対のCAN通信装置1,2を区別するため、試験対象のCAN通信装置1を被試験ノードと呼び、治具となるCAN通信装置2を治具ノードと呼び、それぞれに、符号1と2を付すことにする。評価用端末4,5は、一般的なパーソナルコンピュータなどである。UART6,7は、評価用端末4,5のパラレルバスから送られてくるバイトデータをシリアルのビットストリームに変換して被試験ノード1および治具ノード2に渡す。
【0016】
また、CANケーブル3として、例えば、UTPケーブル(Unshielded Twist Pair cable)、すなわち非シールドより対線が用いられる。このように、この実施の形態では、製品として出荷される前のCAN通信ボードを対向させることにより、CANプロトコルアナライザや擬似異常パケット生成器や専用の診断装置などの特別な装置を用いずに、CAN通信ボードのエラー検出回路の評価を行うことができる。
【0017】
被試験ノード1および治具ノード2は、CANトランシーバ11とFPGA(Field Programmable Gate Array)12を備えている。CANトランシーバ11は、CANケーブル3からなるCAN伝送路(CANバス)へデータを送信する機能と、CAN伝送路からデータを受信する機能を有する。FPGA12は、被試験ノード1または治具ノード2の全体制御を司るCPU(Central Processing Unit)13と、後述する構成のCANコントローラ14を内蔵する。
【0018】
図2は、この発明の実施の形態にかかるCAN通信装置のFPGAの構成を示す図である。図2に示すように、FPGA12において、CPU13およびCANコントローラ14は、レジスタアクセス・バス15を介してデータの授受を行う。CANコントローラ14は、送信パケット生成部21、エラー検出部22、エラーカウンタ部23、比較ロジック24、受信パケット格納レジスタ25、送信部(Tx)26および受信部(Rx)27を備えている。
【0019】
送信パケット生成部21は、送信データ(パケット)を生成する。送信部26は、送信パケット生成部21が生成した送信データをCANトランシーバ11へ送る。受信部27は、CANトランシーバ11から受信データ(パケット)を受け取る。受信パケット格納レジスタ25は、受信部27が受け取った受信データを格納する。比較ロジック24は、送信パケット生成部21が生成した送信データと、受信部27が受け取った受信データを比較する。
【0020】
エラー検出部22は、比較ロジック24の比較結果に基づいて、ビットエラーとCRCエラーの発生を検出する。また、エラー検出部22は、受信部27で受け取った受信データに基づいて、スタッフエラーとACKエラーとフォーマットエラーの発生を検出する。エラーカウンタ部23は、エラー検出部22がエラーの発生を検出した回数をカウントする。
【0021】
図3は、この発明の実施の形態にかかるCAN通信装置の送信パケット生成部の構成を示す図である。図3に示すように、送信パケット生成部21は、パケットデータ設定部31およびビットストリーム生成部32を備えている。パケットデータ設定部31は、ID値設定レジスタ41、DLC値設定レジスタ42、テストデータレングス設定レジスタ43、データ設定レジスタ44およびテストモードレジスタ45を備えている。
【0022】
ID値設定レジスタ41は、データフレームのID領域に設定されるID値を格納するレジスタである。DLC値設定レジスタ42は、データフレームのデータ長領域に設定されるデータ長を格納するレジスタである。テストデータレングス設定レジスタ43は、テストデータのデータ長を格納するレジスタである。データ設定レジスタ44は、データフレームのデータ領域に設定されるデータ値を格納するレジスタである。テストモードレジスタ45は、通常動作モードおよびテストモードのいずれか一方を選択する選択値を格納するレジスタである。ID値、DLC値、データ長、テストデータのデータ長、データ値および選択値は、評価用端末4,5からそれぞれ被試験ノード1または治具ノード2に渡され、それぞれのCPU13により対応するレジスタに設定される。
【0023】
ビットストリーム生成部32は、セレクタ部51、データレングス制御部52、シフタ53およびCRC演算部54を備えている。セレクタ部51は、テストモードレジスタ45に格納されている選択値(sel)がテストモードを選択する値である場合、テストデータレングス設定レジスタ43に格納されているデータ長を選択し、その選択値(sel)が通常動作モードを選択する値である場合に、DLC値設定レジスタ42に格納されているデータ長を選択する。
【0024】
データレングス制御部52は、データ設定レジスタ44に格納されているデータ値のうち、セレクタ部51により選択されたデータ長の分だけ抽出してシフタ53へ転送する。従って、通常の運用時(通常動作モード)には、DLC値設定レジスタ42に格納されているデータ長のデータ値がシフタ53へ転送されるが、エラー検出の評価時(テストモード)には、DLC値設定レジスタ42に格納されているデータ長に関係なく、テストデータレングス設定レジスタ43に格納されているデータ長のデータ値がシフタ53へ転送される。
【0025】
また、ID値設定レジスタ41の格納値とDLC値設定レジスタ42の格納値もシフタ53へ転送される。シフタ53は、転送されてきた各値と、それらの値に基づいてCRC演算部54により求められたCRC値を用いて、ビットストリームを形成する。図3の各レジスタやシフタには、CANの標準フレームにおけるビット数が表記されているが、これらのビット数に限定されるものではない。
【0026】
図4は、CANのデータフレームのフォーマットの概略を示す図である。図4に示すように、CANのデータフレーム61は、ID領域、データ長領域、データ領域、CRC領域およびACK領域から構成されている。ID領域には、ID値設定レジスタ41の格納値が設定される。データ長領域には、DLC値設定レジスタ42の格納値が設定される。データ領域には、データレングス制御部52によりデータ長が制御されたデータ値が設定される。CRC領域には、CRC演算部54により求められたCRC値が設定される。次に、各種エラーを発生させる場合のデータパターンの一例を示す。
【0027】
図5は、ビットエラーまたはスタッフエラーを発生させるデータパターンの一例を示す図である。図5に示す例では、被試験ノード1と治具ノード2で、ID値とDLC値は同じであるが、データ値が異なる。データ値の上位2ビット目のレベルが、被試験ノード1ではリセッシブであるのに対して、治具ノード2ではドミナントに設定されている。これによって、被試験ノード1において、データ領域の上位2ビット目のレベルが、送信データではリセッシブであるが、受信データではドミナントになるので、ビットエラーが発生する。
【0028】
図6は、CRCエラーを発生させるデータパターンの一例を示す図である。図6に示す例では、被試験ノード1の送信データのデータ値までの値と、治具ノード2の送信データのデータ値のうち、被試験ノード1の送信データのデータ値に対応する部分までの値は同じである。治具ノード2の送信データのデータ値のうち、被試験ノード1の送信データのCRC値に対応する部分は、任意のデータ値に設定されている。これによって、被試験ノード1がCAN伝送路から誤った値のCRC値を受信することになるので、CRCエラーが発生する。
【0029】
図7は、ACKエラーを発生させるデータパターンの一例を示す図である。図7に示す例では、被試験ノード1の送信データのCRC値までの値と、治具ノード2の送信データのデータ値のうち、被試験ノード1の送信データのCRC値に対応する部分までの値は同じである。治具ノード2の送信データのデータ値のうち、被試験ノード1の送信データのACK領域に対応するビットのレベルは、リセッシブに設定される。これによって、CAN伝送路から被試験ノード1に、ACKとして期待されるドミナントレベルの信号が返ってこないので、ACKエラーが発生する。
【0030】
図8は、フォーマットエラーを発生させるデータパターンの一例を示す図である。図8に示す例では、被試験ノード1の送信データのCRC値までの値と、治具ノード2の送信データのデータ値のうち、被試験ノード1の送信データのCRC値に対応する部分までの値は同じである。また、治具ノード2の送信データのデータ値のうち、被試験ノード1の送信データのACK領域と境界領域に対応するビットのレベルは、ドミナントに設定される。これによって、被試験ノード1は、CAN伝送路からCANの規格外のデータフレームを受信することになるので、フォーマットエラーが発生する。
【0031】
図9は、この発明の実施の形態にかかるCANのエラー検出評価方法の処理手順を示す図である。図9に示すように、まず、プロビジョニングを開始し、被試験ノード1と治具ノード2をCANケーブル3で接続するとともに、被試験ノード1に評価用端末4を接続し、治具ノード2に評価用端末5を接続する。そして、評価用端末4,5を操作して、被試験ノード1と治具ノード2の各ID値設定レジスタ41に同じID値を設定する(ステップS1、ステップS11)。
【0032】
次いで、評価用端末4,5を操作して、被試験ノード1と治具ノード2の各DLC値設定レジスタ42に同じデータ長を設定する(ステップS2、ステップS12)。次いで、評価用端末4を操作して、被試験ノード1のデータ設定レジスタ44にデータ値を設定する(ステップS3)。また、評価用端末5を操作し、治具ノード2のデータ設定レジスタ44に、発生させるエラーの種類に応じて、図5〜図8に示すように、被試験ノード1に設定したデータ値と異なるデータ値を設定する(ステップS13)。その際、治具ノード2のデータ設定レジスタ44には、被試験ノード1のデータ設定レジスタ44に設定したデータ値よりもビット数が多く、かつその上位ビットの部分が被試験ノード1のデータ設定レジスタ44のデータ値と同じになるようにする。
【0033】
また、ここまでのいずれかの段階で、治具ノード2のテストデータレングス設定レジスタ43に、テストデータ用のデータ長を設定する。このテストデータ用のデータ長は、DLC値設定レジスタ42に設定したデータ長よりも長い。また、被試験ノード1のテストモードレジスタ45に通常動作モードを選択する値を設定するとともに、治具ノード2のテストモードレジスタ45にテストモードを選択する値を設定する。
【0034】
次いで、被試験ノード1および治具ノード2で同時にパケットの送信要求を行う(ステップS4、ステップS14)。これによって、被試験ノード1および治具ノード2からCAN伝送路上へ同時にパケットが送信される(ステップS5)。ステップS4およびステップS14までの処理は、被試験ノード1および治具ノード2において、それぞれ、CPU13により制御される。
【0035】
CAN伝送路では、被試験ノード1および治具ノード2からCAN伝送路上へ同時にパケットが送信されたので、アービトレーション動作が起動する(ステップS6)。そして、ステップS3およびステップS13で設定したデータ値等に応じて、被試験ノード1側でエラーが発生する(ステップS7)。ステップS6とステップS7の処理は、CAN伝送路上で行われる動作である。被試験ノード1側でエラーが発生すると、被試験ノード1のエラー検出部22は、エラーが発生したことを検出する(ステップS8)。
【0036】
そして、被試験ノード1のエラーカウンタ部23は、エラーの検出回数をカウントするカウンタを更新する。また、被試験ノード1は、エラー処理として、エラーフレームをCAN伝送路へ送信し、他のノードへエラーの発生を報せる(ステップS9)。ステップS8とステップS9の処理は、被試験ノード1のCANコントローラ14により制御される。以上のようにして、各種のエラーを発生させ、被試験ノード1のエラー検出部22が正常に動作するか否かを評価することができる。評価終了後、治具ノード2を出荷する場合には、出荷前に、治具ノード2のテストモードレジスタ45に通常動作モードを選択する値を設定しておく。
【0037】
以上説明したように、実施の形態によれば、CANプロトコルアナライザ等の装置を用いなくても、ビットエラー、スタッフエラー、CRCエラー、ACKエラーおよびフォーマットエラーを発生させることができるので、評価環境のコストの低減を図ることができるという効果を奏する。また、評価環境の規模を小さくすることができるという効果を奏する。なお、被試験ノード1のテストデータレングス設定レジスタ43に、DLC値設定レジスタ42と同じデータ長を設定し、被試験ノード1のテストモードレジスタ45にテストモードを選択する値を設定しても、同様の効果が得られる。この場合には、被試験ノード1の評価終了後、出荷前に、被試験ノード1のテストモードレジスタ45に通常動作モードを選択する値を設定しておく。
【0038】
(付記1)同一のCAN伝送路に接続された第1のCAN通信装置および第2のCAN通信装置の各データフレームのID領域およびデータ長領域に、それぞれ、同じID値および同じデータ長を設定し、さらに、前記第1のCAN通信装置および前記第2のCAN通信装置の各データフレームのデータ領域に異なる値のデータ値を設定するステップと、前記第1のCAN通信装置および前記第2のCAN通信装置から前記CAN伝送路に、前記データ値が設定されたそれぞれのデータフレームを送信するステップと、を含むことを特徴とするCANのエラー検出評価方法。
【0039】
(付記2)同一のCAN伝送路に接続された第1のCAN通信装置および第2のCAN通信装置の各データフレームのID領域およびデータ長領域に、それぞれ、同じID値および同じデータ長を設定し、さらに、前記第1のCAN通信装置においては、データフレームのデータ領域に、前記データ長により規定される長さのデータ値を設定し、一方、前記第2のCAN通信装置においては、データフレームのデータ領域に、前記データ長により規定される長さよりも長く、かつ前記データ長により規定される長さの上位ビット部分が、前記第1のCAN通信装置のデータ領域に設定される前記データ値と同じであり、前記上位ビット部分に続く下位ビット部分のいずれかのビットの値が期待される値と異なるデータを設定するステップと、前記第1のCAN通信装置および前記第2のCAN通信装置から前記CAN伝送路に、前記データ値が設定されたそれぞれのデータフレームを送信するステップと、を含むことを特徴とするCANのエラー検出評価方法。
【0040】
(付記3)前記データ値を設定するステップでは、前記第2のCAN通信装置のデータ領域の前記下位ビット部分に、前記第1のCAN通信装置のデータフレームのCRC領域に格納されるCRC値と異なるデータ値を設定することを特徴とする付記2に記載のCANのエラー検出評価方法。
【0041】
(付記4)前記データ値を設定するステップでは、前記第2のCAN通信装置のデータ領域の前記下位ビット部分に、前記第1のCAN通信装置のデータフレームのCRC領域に格納されるCRC値と同じデータ値を設定し、さらに、前記第1のCAN通信装置のデータフレームのACK領域に対応するビットのレベルをリセッシブに設定することを特徴とする付記2に記載のCANのエラー検出評価方法。
【0042】
(付記5)前記データ値を設定するステップでは、前記第2のCAN通信装置のデータ領域の前記下位ビット部分に、前記第1のCAN通信装置のデータフレームのCRC領域に格納されるCRC値と同じデータ値を設定し、前記第1のCAN通信装置のデータフレームのACK領域に対応するビットのレベルをドミナントに設定し、さらに、前記第1のCAN通信装置のデータフレームの境界領域に対応するビットのレベルをドミナントに設定することを特徴とする付記2に記載のCANのエラー検出評価方法。
【0043】
(付記6)データフレームのID領域に設定されるID値を格納するID値設定レジスタと、データフレームのデータ長領域に設定されるデータ長を格納するDLC値設定レジスタと、データフレームのデータ領域に設定されるデータ値を格納するデータ設定レジスタと、テストデータのデータ長を格納するテストデータレングス設定レジスタと、通常動作モードおよびテストモードのいずれか一方を選択する選択値を格納するテストモードレジスタと、前記テストモードレジスタに格納されている選択値に基づいて、前記DLC値設定レジスタに格納されているデータ長および前記テストデータレングス設定レジスタに格納されているデータ長のいずれか一方を選択するセレクタ部と、前記セレクタ部により選択されたデータ長に基づいて、前記データ設定レジスタに格納されているデータ値の長さを制御するデータレングス制御部と、を備えることを特徴とするCAN通信装置。
【0044】
(付記7)前記テストモードレジスタに格納されている選択値がテストモードを選択する値である場合、前記セレクタ部は、前記テストデータレングス設定レジスタに格納されているデータ長を選択することを特徴とする付記6に記載のCAN通信装置。
【0045】
(付記8)前記テストモードレジスタに格納されている選択値が通常動作モードを選択する値である場合、前記セレクタ部は、前記DLC値設定レジスタに格納されているデータ長を選択することを特徴とする付記6に記載のCAN通信装置。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明にかかるCANのエラー検出評価方法およびCAN通信装置は、CANプロトコルを用いて通信を行うネットワークに有用であり、特に、車載ネットワークに適している。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の実施の形態にかかるCAN通信装置およびそのエラー検出評価環境の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態にかかるCAN通信装置のFPGAの構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態にかかるCAN通信装置の送信パケット生成部の構成を示す図である。
【図4】CANのデータフレームのフォーマットを示す図である。
【図5】この発明の実施の形態にかかるエラー検出評価環境においてビットエラーまたはスタッフエラーを発生させるデータパターンの一例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態にかかるエラー検出評価環境においてCRCエラーを発生させるデータパターンの一例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態にかかるエラー検出評価環境においてACKエラーを発生させるデータパターンの一例を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態にかかるエラー検出評価環境においてフォーマットエラーを発生させるデータパターンの一例を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態にかかるCANのエラー検出評価方法の処理手順を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 被試験ノード
2 治具ノード
3 CANケーブル
41 ID値設定レジスタ
42 DLC値設定レジスタ
43 テストデータレングス設定レジスタ
44 データ設定レジスタ
45 テストモードレジスタ
51 セレクタ部
52 データレングス制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一のCAN伝送路に接続された第1のCAN通信装置および第2のCAN通信装置の各データフレームのID領域およびデータ長領域に、それぞれ、同じID値および同じデータ長を設定し、さらに、前記第1のCAN通信装置および前記第2のCAN通信装置の各データフレームのデータ領域に異なる値のデータ値を設定するステップと、
前記第1のCAN通信装置および前記第2のCAN通信装置から前記CAN伝送路に、前記データ値が設定されたそれぞれのデータフレームを送信するステップと、
を含むことを特徴とするCANのエラー検出評価方法。
【請求項2】
同一のCAN伝送路に接続された第1のCAN通信装置および第2のCAN通信装置の各データフレームのID領域およびデータ長領域に、それぞれ、同じID値および同じデータ長を設定し、さらに、前記第1のCAN通信装置においては、データフレームのデータ領域に、前記データ長により規定される長さのデータ値を設定し、一方、前記第2のCAN通信装置においては、データフレームのデータ領域に、前記データ長により規定される長さよりも長く、かつ前記データ長により規定される長さの上位ビット部分が、前記第1のCAN通信装置のデータ領域に設定される前記データ値と同じであり、前記上位ビット部分に続く下位ビット部分のいずれかのビットの値が期待される値と異なるデータを設定するステップと、
前記第1のCAN通信装置および前記第2のCAN通信装置から前記CAN伝送路に、前記データ値が設定されたそれぞれのデータフレームを送信するステップと、
を含むことを特徴とするCANのエラー検出評価方法。
【請求項3】
データフレームのID領域に設定されるID値を格納するID値設定レジスタと、
データフレームのデータ長領域に設定されるデータ長を格納するDLC値設定レジスタと、
データフレームのデータ領域に設定されるデータ値を格納するデータ設定レジスタと、
テストデータのデータ長を格納するテストデータレングス設定レジスタと、
通常動作モードおよびテストモードのいずれか一方を選択する選択値を格納するテストモードレジスタと、
前記テストモードレジスタに格納されている選択値に基づいて、前記DLC値設定レジスタに格納されているデータ長および前記テストデータレングス設定レジスタに格納されているデータ長のいずれか一方を選択するセレクタ部と、
前記セレクタ部により選択されたデータ長に基づいて、前記データ設定レジスタに格納されているデータ値の長さを制御するデータレングス制御部と、
を備えることを特徴とするCAN通信装置。
【請求項4】
前記テストモードレジスタに格納されている選択値がテストモードを選択する値である場合、前記セレクタ部は、前記テストデータレングス設定レジスタに格納されているデータ長を選択することを特徴とする請求項3に記載のCAN通信装置。
【請求項5】
前記テストモードレジスタに格納されている選択値が通常動作モードを選択する値である場合、前記セレクタ部は、前記DLC値設定レジスタに格納されているデータ長を選択することを特徴とする請求項3に記載のCAN通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−312010(P2008−312010A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158914(P2007−158914)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】