説明

CCR5に対するアフコシル化抗体およびそれらの使用

CCR5に結合し、かつAsn297において糖鎖でグリコシル化されている抗体であって、該糖鎖内のフコースの量が65%またはそれ以下であることを特徴とする抗体により、抗炎症療法の特性が改善された。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCR5に対するアフコシル化抗体(afucosylated antibody)、それらを作製するための方法、該抗体を含む薬学的組成物、ならびに急性移植片拒絶および慢性移植片拒絶などの炎症状態を治療するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ケモカインおよびそれらの受容体は、白血球輸送を媒介することによって同種移植片拒絶に関与することが公知である。Panzer, U., et al. (Transplantation 78 (2004) 1341-50)は、急性ヒト同種移植片拒絶におけるCCR5陽性T細胞動員を報告し、Luckow, B., et al. (Eur. J. Immunol. 34 (2004) 2568-78)は、CCR5欠損動物におけるメタロプロテイナーゼおよび動脈硬化の移植片内(intragraft)レベルの低下を観察した。さらに、Gao, W., et al. (Transplantation 72 (2001) 1199-1205)は、CCR5特異的モノクローナル抗体で処置したマウスおよびCCR5欠損マウスにおける長期の同種移植片生着を実証した。Schroeder, C., et al., J. Immunol. 179 (2007) 2289-2299は、炎症および同種免疫が起こっている間のCCR5調節を調査するためのカニクイザル心臓同種移植モデルにおいてCCR5拮抗物質の効果を調査した。さらに、ヒト移植レシピエントコホートのレトロスペクティブ研究により、CCR5欠損患者(Δ32)が長期の同種移植片生着を示すことが明らかになった(Fischereder, M., et al., Lancet 357 (2001) 1758-1761)。
【0003】
実験モデルでは、受容体-リガンド相互作用の重複性があるため、単一のケモカインを欠損させるかまたは遮断しても、同種移植は急性拒絶から保護されない(Fischereder, M., et al., Lancet 357 (2001) 1758-1761; Gao, W., et al., Transplantation 72 (2001) 1199-1205; Hancock, W.W., et al., Curr. Opin. Immunol. 12 (2000) 511-516; Hancock, W.W., et al., Curr. Opin. Immunol. 15 (2003) 479-486)。
【0004】
WO 01/78707は、CCR5機能の拮抗物質を投与する段階を含む、移植片拒絶を抑制する方法に関する。
【0005】
モノクローナル抗体の細胞媒介性エフェクター機能は、Umana, P., et al., Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180およびUS 6,602,684に記載されているように、それらのオリゴ糖構成要素を操作することによって増強することができる。癌免疫療法において最もよく使用される抗体であるIgG1型抗体は、保存されたN結合型グリコシル化部位を各CH2ドメイン中のAsn297において有する糖タンパク質である。Asn297に結合した2つの複合型二分岐オリゴ糖は、CH2ドメインの間に埋もれて、ポリペプチド主鎖との広範囲の接触面を形成し、それらの存在は、抗体依存性細胞障害(ADCC)のようなエフェクター機能を抗体が媒介するために不可欠である(Lifely, M.R., et al., Glycobiology 5 (1995) 813-822; Jefferis, R., et al., Immunol. Rev. 163 (1998) 59-76; Wright, A.およびMorrison, S.L., Trends Biotechnol. 15 (1997) 26-32)。Umana, P., et al., Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180およびWO 99/54342は、2つに分岐したオリゴ糖の形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼであるβ(1,4) -N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(「GnTIII」)がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において過剰発現されると、抗体のインビトロでのADCC活性が有意に増大することを示した。また、N297炭水化物の組成の改変またはその除去も、FcγRおよびC1qへの結合に影響を及ぼす(Umana, P., et al., Nature Biotechnol. 17 (1999) 176-180; Davies, J., et al., Biotechnol. Bioeng. 74 (2001) 288-294; Mimura, Y., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 45539-45547; Radaev, S., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 16478-16483; Shields, R.L., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604; Shields, R.L., et al., J. Biol. Chem. 277 (2002) 26733-26740; Simmons, L.C., et al., J. Immunol. Methods 263 (2002) 133-147)。
【0006】
Iida, S., et al., Clin. Cancer Res. 12 (2006) 2879-2887では、非フコシル化抗CD20抗体の有効性が、フコシル化抗CD20抗体の添加によって阻害されたことを示している。非フコシル化抗CD20抗体およびフコシル化抗CD20抗体の1:9の混合物(10μg/ml)の有効性は、非フコシル化抗CD20抗体のみの1,000倍希釈物(0.01μg/mL)の有効性よりも劣っていた。彼らは、フコシル化した対応物を含まない非フコシル化IgG1は、高レベルでFcγRIIIaに結合することにより、ADCCに対する血漿IgGの抑制効果から逃れることができると結論を下している。Natsume, A., et al.は、J. Immunol. Methods 306 (2005) 93-103において、ヒトIgG1型抗体の複合型オリゴ糖からフコースを除去すると、抗体依存性細胞障害 (ADCC)が大幅に増大することを示している。Satoh, M., et al., Expert Opin. Biol. Ther. 6 (2006) 1161-1173では、次世代の治療用抗体として非フコシル化治療用抗体を考察している。Satohは、非フコシル化ヒトIgG1型のみからなる抗体が理想的であると考えられるという結論を下している。Kanda, Y., et al., Biotechnol. Bioeng. 94 (2006) 680-688では、フコシル化抗CD20抗体(96%フコシル化、CHO/DG44 1H5)を非フコシル化抗CD20抗体と比較した。Davies, J., et al., Biotechnol. Bioeng. 74 (2001) 288-294では、抗CD20抗体に関して、ADCCの増大はFcγRIIIへの結合の増加と相関関係があることを報告している。
【0007】
モノクローナル抗体の細胞媒介性エフェクター機能を増強するための方法は、例えば、WO 2005/018572、WO 2006/116260、WO 2006/114700、WO 2004/065540、WO 2005/011735、WO 2005/027966、WO 1997/028267、US 2006/0134709、US 2005/0054048、US 2005/0152894、WO 2003/035835、およびWO 2000/061739に記載されている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、CCR5に結合し、かつAsn297において糖鎖でグリコシル化されている抗体であって、該糖鎖内のフコースの量が65%またはそれ以下であることを特徴とする抗体を含む。
【0009】
本発明は、CCR5に結合し、かつAsn297において糖鎖でグリコシル化されている抗体であって、該糖鎖内のフコースの量が、1つの態様において5%〜65%の間であり、別の態様において20%〜40%の間であることを特徴とする抗体を含む。
【0010】
このような量のフコースを含む本発明による抗体はさらに、アフコシル化(afucosylated)とも呼ばれる。
【0011】
本発明は、CCR5に結合し、かつAsn297において糖鎖でグリコシル化されている抗体であって、FcγRIIIに対して高い結合親和性を示すことを特徴とする抗体を含む。
【0012】
1つの態様において、抗体はヒトIgG1型またはヒトIgG3型のものである。
【0013】
別の態様において、前記糖鎖内のNGNAの量は1%もしくはそれ以下であり、かつ/またはN末端α-1,3-ガラクトースの量は1%もしくはそれ以下である。
【0014】
さらなる態様において、NGNAの量は0.5%またはそれ以下であり、さらに別の態様において、0.1%またはそれ以下であり、別の態様においては検出不可能でさえある(LCMS)。
【0015】
1つの態様において、前記糖鎖内のN末端α-1,3-ガラクトースの量は0.5%またはそれ以下であり、さらなる態様において、0.1%またはそれ以下であり、さらに別の態様においては検出不可能でさえある(LCMS)。
【0016】
1つの態様において、CCR5に結合する抗体は、T細胞エピトープ除去抗体、または単一特異性四価抗体もしくは多重特異性抗体である。
【0017】
糖鎖は、CHO細胞において組換えによって発現させたCCR5結合抗体のAsn297に結合したN結合型グリカンという特徴を示す。
【0018】
本発明は、ヒトCCR5に結合し、その機能を妨害してインビトロおよびインビボにおいてCCR5+T細胞を枯渇させることを特徴とする、CCR5に結合するアフコシル化抗体を含む。
【0019】
本発明による抗体は、移植片拒絶の抑制を必要とする患者に恩恵を与える。
【0020】
抗体は、1つの態様においてモノクローナル抗体であり、別の態様においてキメラ抗体(ヒト定常鎖)もしくはヒト化抗体であり、または、さらに別の態様においてヒト抗体である。
【0021】
本発明はさらに、薬学的目的のために抗体を製剤化するのに有用な緩衝剤および/または補助剤と任意で一緒に、本発明による抗体を含む、薬学的組成物を含む。
【0022】
本発明はさらに、本発明による抗体を含む薬学的組成物も含む。
【0023】
本発明はさらに、本発明による抗体および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物も提供する。1つの態様において、薬学的組成物は、製品またはキット中に含まれてよい。本発明はさらに、移植片拒絶を治療するための薬学的組成物を製造するための本発明による抗体の使用も提供する。抗体は薬学的有効量で使用される。
【0024】
本発明はさらに、同種移植片拒絶および炎症ならびに免疫介在性疾患を予防するための薬学的組成物を製造するための本発明による抗体の使用も含む。1つの態様において、該疾患は、関節リウマチ(RA)もしくは慢性閉塞性肺疾患(COPD)、または肉芽腫性大腸炎および限局性腸炎(クローン病)である。抗体は薬学的有効量で使用される。
【0025】
本発明はさらに、CCR5に結合する抗体をコードする核酸を、該抗体を本発明による量だけフコシル化するCHO宿主細胞中で発現させる段階、および該細胞から該抗体を回収する段階を特徴とする、本発明による組換えヒト抗体を作製するための方法も含む。本発明はさらに、このような組換え法によって得ることができる抗体も含む。
【0026】
本発明はさらに、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)、また任意でマンノシダーゼII(ManII)、および抗CCR5抗体を組換えで発現することができるCHO細胞も含む。このようなCHO細胞は、GnTIII活性を有するポリペプチドおよび任意でManII活性を有するポリペプチドをコードする第1のDNA配列、CCR5に対する抗体の重鎖の少なくとも可変ドメインをコードする第2のDNA配列、ならびにCCR5に対する抗体の軽鎖の少なくとも可変ドメインをコードする第3のDNA配列で形質転換されたCHO細胞である。1つの態様において、第2のDNA配列および第3のDNA配列は、CCR5に対するヒトIgG1型抗体の重鎖および軽鎖をコードする。
【0027】
本発明はさらに、本発明による特性を示す、CCR5に対する抗体を作製するための方法であって、宿主細胞、好ましくはCHO細胞を、GnTIII活性を有するポリペプチドをコードする第1のDNA配列、CCR5に対する抗体の重鎖の少なくとも可変ドメインをコードする第2のDNA配列、およびCCR5に対する抗体の軽鎖の少なくとも可変ドメインをコードする第3のDNA配列で形質転換させる段階、1つの態様において該第1のDNA配列、第2のDNA配列、および第3のDNA配列を独立に発現する該宿主細胞を、発酵培地に該抗体を該宿主細胞が分泌する条件下で、発酵培地中で培養する段階、ならびに該発酵培地から該抗体を単離する段階を含む方法も含む。
【0028】
本発明はさらに、ヒトを含む哺乳動物において、急性および慢性の臓器移植拒絶(同種移植、異種移植)を治療または予防する方法であって、本発明によるCCR5に対する抗体を該哺乳動物に投与する段階を含む方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
(図1)CHO細胞におけるFc受容体結合。アフコシル化抗体(◆)、wt抗体(■)。
(図2)ADCC。アフコシル化抗体(■)、wt抗体(●)およびLALA変異抗体(▲)。
(図3)インビボにおけるCCR5+細胞枯渇
(図4)CD8+細胞、CD4+細胞、および単球におけるCCR5細胞発現のモニタリング。灰色:対照の非特異的モノクローナル抗体;黒色:治療したカニクイザル。
(図5)本発明による抗CCR5抗体を与えられたカニクイザルにおける長期の心臓同種移植片生着。

(図6)併用療法により、心臓レシピエントカニクイザルにおいて心臓同種移植脈管障害が予防される。

【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
「CCR5」という用語は、ヒトケモカイン受容体を示す(例えば、Swiss Prot P51681ならびにMueller, A.およびStrange, P.G., Int. J. Biochem. Cell Biol. 36 (2004) 35-38を参照されたい)。「CCR5抗体」という用語は、CCR5に対する抗体、すなわち抗CCR5抗体を意味する。
【0031】
「抗体」という用語は、本発明による特徴的な特性が保持される限りにおいて、限定されるわけではないが全長抗体、抗体断片、ヒト抗体、ヒト化抗体、および遺伝的に操作された抗体を含む様々な形態の抗体を包含する。
【0032】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部分、一般に少なくともその抗原結合部分または可変領域を含む。抗体断片の例には、ダイアボディ、単鎖抗体分子、結合体、例えば免疫毒素、および抗体断片を含む多重特異性抗体が含まれる。
【0033】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一のアミノ酸組成の抗体分子の調製物を意味する。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変フレームワーク領域および定常領域を有し、単一の結合特異性を示す抗体を意味する。
【0034】
「キメラ抗体」という用語は、1種の供給源または種に由来する可変領域、すなわち結合領域、および別の供給源または種に由来する定常領域の少なくとも一部分を含む、通常は組換えDNA技術によって調製されるモノクローナル抗体を意味する。マウス可変領域およびヒト定常領域を含むキメラ抗体が特に好ましい。このようなマウス/ヒトキメラ抗体は、マウス免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメントおよびヒト免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントを含む免疫グロブリン遺伝子を発現させた産物である。本発明によって包含される「キメラ抗体」の他の形態は、クラスまたはサブクラスが元の抗体のものから改変または変更されたものである。このような「キメラ」抗体は、「クラススイッチ抗体」とも呼ばれる。キメラ抗体を作製するための方法は、従来の組換えDNA技術および当技術分野において現在周知である遺伝子トランスフェクション技術を伴う。例えば、Morrison, S.L., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 (1984) 6851-6855、US 5,202,238、およびUS 5,204,244を参照されたい。
【0035】
「ヒト化抗体」という用語は、フレームワーク領域(FR)および/または「相補性決定領域」(CDR)が、親免疫グロブリンの特異性と比べて異なる特異性を有する免疫グロブリンのCDRを含むように改変された抗体を意味する。1つの態様において、ヒト抗体のフレームワーク領域にマウスCDRを継ぎ合わせて、「ヒト化抗体」を調製する。例えば、Riechmann, L., et al., Nature 332 (1988) 323-327;およびNeuberger, M.S., et al., Nature 314 (1985) 268-270を参照されたい。特に、CDRは、キメラ抗体および二機能性抗体の場合、本明細書において注目する抗原を認識する代表的配列に対応する。1つの態様において、該抗原は、CCR5のエピトープである。
【0036】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むと意図される。1つの態様において、可変重鎖領域が生殖系列配列DP-50(GenBank LO6618)に由来し、可変軽鎖領域が生殖系列配列L6(GenBank X01668)に由来するか、または可変重鎖領域がDP-61(GenBank M99682)に由来し、可変軽鎖領域が生殖系列配列L15(GenBank K01323)に由来する。抗体の定常領域は、ヒトIgG1型の定常領域である。このような領域はアロタイプでよく、例えば、Johnson, G.およびWu, T.T., Nucleic Acids Res. 28 (2000) 214-218ならびにその中で参照されているデータベースに記載されている。
【0037】
「組換えヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を再配列された形態で有する抗体を意味する。本発明による組換えヒト抗体は、インビボの体細胞超変異にさらされた。したがって、組換え抗体の可変重鎖領域(VH)および可変軽鎖領域(VL)のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列のVH配列およびVL配列に由来し関連してはいるものの、インビボにおいてヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在し得ない配列である。
【0038】
本明細書において使用される場合、「結合」という用語は、約10-13〜10-8M(KD)の親和性、1つの態様においては約10-13〜10-9Mの親和性でのCCR5への抗体結合を意味する。
【0039】
「核酸分子」という用語は、本明細書において使用される場合、DNA分子およびRNA分子を含むと意図される。核酸分子は一本鎖または二本鎖でよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0040】
IgG1型またはIgG3型を有するヒト定常領域は、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)およびBruggemann, M., et al., J. Exp. Med. 166 (1987) 1351-1361; Love, T.W., et al., Methods Enzymol. 178 (1989) 515-527において詳細に説明されている。SEQ ID NO: 01〜03に例を示す。
【0041】
ヒトIgG1型、IgG2型、またはIgG3型の定常領域は、Asn297においてグリコシル化されている。本発明による「Asn297」とは、Fc領域のおよそ297番目に位置するアミノ酸アスパラギンを意味する;抗体の軽微な配列変化のため、Asn297は、297番目から数アミノ酸(通常±3個以下のアミノ酸)上流または下流に、すなわち、294番目〜300番目の間に位置してもよい。
【0042】
本明細書において使用される「可変領域」(軽鎖(VL)の可変領域、重鎖(VH)の可変領域)という用語は、抗原への抗体の結合に直接関与する、軽鎖ドメインおよび重鎖ドメインのペアの各メンバーを示す。ヒト軽鎖およびヒト重鎖の可変領域は同じ一般構造を有し、配列が広範囲に渡って保存され3つの「超可変領域」(または相補性決定領域、CDR)によって連結された4つの「フレームワーク領域」(FR)をそれぞれ含む。フレームワーク領域はβシート構造を採用し、CDRはβシート構造を連結するループを形成し得る。各鎖のCDRは、フレームワーク領域によって三次元構造で維持され、他の鎖のCDRと一緒になって抗原結合部位を形成する。抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のCDR3領域は、本発明による抗体の結合特異性/親和性において特に重要であり、したがって、本発明のさらなる局面を提供する。
【0043】
「超可変領域」または「抗体の抗原結合部分」という用語は、本明細書においてされる場合、抗原結合を担っている抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」に由来するアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」領域または「FR」領域とは、本明細書において定義する超可変領域残基以外の可変ドメイン領域である。したがって、抗体の軽鎖および重鎖は、N末端からC末端に向かって、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。特に、重鎖のCDR3は、抗原結合に最も寄与し、抗体を特徴付ける領域である。CDR領域およびFR領域は、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)の標準的な定義に従って決定され、かつ/または「超可変ループ」を形成する残基である。
【0044】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定基を示す。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特異的な三次元構造特性、ならびに特異的な電荷特性を有する。
【0045】
コンフォメーショナルエピトープおよび非コンフォメーショナルエピトープは、変性剤の存在下で前者への結合は失われるが後者への結合は失われないという点で区別される。
【0046】
抗体A(DSM ACC 2683)は、CCR5のECL2ドメイン上のアミノ酸を含むエピトープに結合する(Lee, B., et al., J. Biol. Chem. 274 (1999) 9617-9626)。このエピトープは、抗体2D7によって認識されるエピトープとは異なる(2D7はECL2Aのアミノ酸K171およびE172に結合するが、ECL2Bのアミノ酸184〜189には結合しない)。抗体Aのエピトープ結合は、CCR5変異体K171AまたはE172A(glu172がalaに変異している場合)に対しては20%であることが判明している。100%のエピトープ結合は、野生型CCR5の場合と定義される。したがって、本発明のさらなる態様は、CCR5に結合し、かつ抗体Aが結合するのと同じエピトープに結合するアフコシル化抗体である。結合阻害は、固定した抗体Aおよび濃度20〜50nMのCCR5ならびに濃度100nMの検出しようとする抗体を用いたSPRアッセイ法によって検出することができる。50%またはそれ以上のシグナル減少がある場合、その抗体が抗体Aと競合することが示される。また、エピトープ結合は、Olson, W.C., et al., J. Virol. 73 (1999) 4145-4155によって説明されたエピトープマッピングのための方法に従ってCCR5のアラニン変異を用いることによって調査することもできる。75%またはそれ以上のシグナル減少がある場合、変異したアミノ酸が、該抗体のエピトープに寄与していることが示される。調査される抗体のエピトープに寄与する1つまたは複数のアミノ酸が、抗体Aのエピトープに寄与する1つまたは複数のアミノ酸と同一である場合に、同じエピトープへの結合が見出される。1つの態様において、本発明による抗体は、CCR5のECL2ドメインに結合する。
【0047】
本発明による好ましいCCR5抗体のアミノ酸配列は、WO 2006/103100およびWO 2008/037419に記載されている。
【0048】
本発明は、抗体の可変重鎖アミノ酸配列CDR3が重鎖CDR3配列SEQ ID NO: 4またはSEQ ID NO: 5より選択されることを特徴とする、CCR5に結合するアフコシル化抗体を含む。
【0049】
1つの態様において、抗体は、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 6のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 7のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 8のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 9のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 10のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 11のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 12のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 13のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 14のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 15のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 16のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 19のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 16のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 20のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 17のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 19のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 17のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 20のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 18のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 19のCDR、または重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 18のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 20のCDRを含むことを特徴とする。
【0050】
別の態様において、本発明は、重鎖可変ドメインが式

(式中、X01はLysまたはGlnであり、
X02はGlnまたはGluであり、
X03はArgまたはLysであり、
X04はLeuまたはProであり、
X05はMetまたはLysであり、
X06はIleまたはThrであり、
X07はSerまたはThrであり、
X08はIleまたはThrである)(SEQ ID NO: 14)のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、CCR5に結合するアフコシル化抗体を含む。
【0051】
1つの態様において、この抗体は、該抗体の軽鎖可変ドメインが式

(式中、X10はIleまたはAlaであり、
X11はPheまたはTyrであり、
X12はGlnまたはProであり、
X13はSerまたはAlaであり、
X14はGlnまたはLysであり、
X15はValまたはIleであり、
X16はGlnまたはAspであり、
X17はSerまたはThrであり、
X18はLeuまたはAlaであり、
X19はLysまたはThrであり、
X20はAsnまたはSerであり、
X21はLeuまたはAlaであり、
X22はGlyまたはAlaであり、
X23はAsnまたはThrであり、
X24はLeuまたはValである)(SEQ ID NO: 15)のアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0052】
1つの態様において、本発明による抗体は、該抗体がCCR5に結合し、かつ、SEQ ID NO: 14の重鎖可変ドメイン、SEQ ID NO: 15の軽鎖可変ドメイン、またはそのCCR5結合断片を含む可変ドメインの群より選択される可変重鎖ドメインまたは可変軽鎖ドメインを含むことを特徴とする。
【0053】
1つの態様において、本発明による抗体は、定常領域(軽鎖および重鎖)がヒト由来であることを特徴とする。このような定常領域(鎖)は現況技術において周知であり、例えば、Kabatによって説明されている(例えば、Johnson, G.およびWu, T.T., Nucleic Acids Res. 28 (2000) 214-218を参照されたい)。例えば、有用なヒト重鎖定常領域は、SEQ ID NO: 01またはSEQ ID NO: 02より独立に選択されるアミノ酸配列を含む。例えば、有用なヒト軽鎖定常領域は、SEQ ID NO: 3のκ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。さらなる態様において、抗体はマウス由来であり、Kabatによるマウス抗体の抗体可変配列フレームを含む(例えば、Johnson, G.およびWu, T.T., Nucleic Acids Res. 28 (2000) 214-218を参照されたい)。
【0054】
本発明による抗体は、ヒトCCR5の1つまたは複数の機能、例えば、CCR5へのリガンド結合、シグナル伝達活性(例えば、哺乳動物Gタンパク質の活性化)、細胞質ゾル遊離Ca2+濃度の急速かつ一過性の上昇の誘導、および/または細胞応答の刺激(例えば、走化性、エキソサイトーシス、もしくは白血球による炎症伝達物質放出、インテグリン活性化の刺激)を阻害する。抗体は、RANTES、MIP-1α、および/もしくはMIP-1βのヒトCCR5への結合を阻害し、かつ/または、白血球輸送、T細胞活性化、炎症伝達物質放出、および/もしくは白血球脱顆粒のようなヒトCCR5によって媒介される機能を阻害する。
【0055】
1つの態様において、本発明による抗体は、100μg/mlまでの抗体濃度でのCCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR6、およびCXCR4への結合アッセイ法においてケモカイン結合を阻害しない。
【0056】
ヒトIgG1またはIgG3のグリコシル化は、フコシル化二分岐複合型コアオリゴ糖としてAsn297で発生し、その際、グリコシル化は最高2個のGal残基で終結する。これらの構造物は、末端Gal残基の量に応じて、G0グリカン残基、G1(α-1,6-もしくはα-1,3-)グリカン残基、またはG2グリカン残基と名付けられている(Raju, T. S., Bioprocess Int., April 2003, 44-53)。抗体Fc部分のCHO型グリコシル化は、例えば、Routier, F. H., Glycoconjugate J. 14 (1997) 201-207によって説明されている。糖改変していない(non-glycomodified)CHO宿主細胞において組換えによって発現される抗体は、通常、少なくとも85%(モル%、モル百分率)の量がAsn297においてフコシル化されている。
【0057】
本発明によれば、「フコースの量」という用語は、MALDI-TOF質量分析法によって測定し、平均値として算出した、Asn297に結合した糖残基すべて(例えば、複合体構造物、ハイブリッド構造物、および高マンノース構造物)の合計に対するAsn297における糖鎖内のフコースの量を意味する(実施例8を参照されたい)。フコースの相対量は、MALDI-TOFによって測定した、N-グリコシダーゼFで処理した試料において同定された全糖構造物(例えば、それぞれ複合体構造物、ハイブリッド構造物、ならびにオリゴマンノース構造物、および高マンノース構造物)に対するフコース含有構造物の百分率である。
【0058】
本発明によるアフコシル化抗CCR5抗体は、本発明による抗体のFc領域を本発明による量だけフコシル化するために、GnTIII活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1種の核酸、また任意でManII活性を有するポリペプチドをコードする核酸を発現するように操作された糖改変宿主細胞において発現させることができる。1つの態様において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、融合ポリペプチドである。
【0059】
あるいは、US 6,946,292に従って宿主細胞のα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を低下させるかまたは消失させて、糖改変した宿主細胞を作製することもできる。抗体フコシル化の量は、例えば、発酵条件によって、またはフコシル化量の異なる少なくとも2種の抗体を組み合わせることによって、前もって決定することができる。
【0060】
本発明による抗CCR5抗体は、次の段階を含む方法によって宿主細胞において産生させることができる:(a)GnTIII活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1種のポリヌクレオチド、および任意で、ManII活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現するように操作された宿主細胞を、本発明による量の(該抗体のFc領域上に存在するオリゴ糖の)フコースを有する該抗体の産生を可能にする条件下で培養する段階;および(b)細胞または培養培地から該抗体を単離する段階。1つの態様において、GnTIII活性を有するポリペプチドは融合ポリペプチドであり、別の態様において、融合ポリペプチドはGnTIIIの触媒ドメインならびにマンノシダーゼIIの局在化ドメイン、β(1,2)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(「GnTI」)の局在化ドメイン、マルモシダーゼ(marmosidase)Iの局在化ドメイン、β(1,2)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII(「GnTII」)の局在化ドメイン、およびα(1-6)コアフコシルトランスフェラーゼの局在化ドメインからなる群より選択される、異種ゴルジ内在ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む。1つの態様において、ゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIIまたはGnTIから得られる。
【0061】
さらなる局面において、本発明は、上記の方法を用いることによって抗CCR5抗体のグリコシル化プロファイルを改変するための方法を対象としている。この局面において、本発明は、GnTIII活性を有し、かつ異種ゴルジ内在ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドを用いることによって、抗CCR5抗体のグリコシル化を改変するための方法を対象としている。1つの態様において、本発明の融合ポリペプチドは、GnTIIIの触媒ドメインを含む。別の態様において、ゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIIの局在化ドメイン、GnTIの局在化ドメイン、マンノシダーゼIの局在化ドメイン、GnTIIの局在化ドメイン、またはα(1-6)コアフコシルトランスフェラーゼの局在化ドメインより選択される。1つの態様において、ゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIIまたはGnTIから得られる。
【0062】
本発明によれば、抗CCR5抗体のこれらの改変オリゴ糖は、ハイブリッドまたは複合体でよい。1つの態様において、2つに分岐した非フコシル化オリゴ糖はハイブリッドである。別の態様において、2つに分岐した非フコシル化オリゴ糖は複合体である。
【0063】
本明細書において使用される場合、「GnTIII活性を有するポリペプチド」とは、N結合型オリゴ糖のトリマンノシルコアのβ結合型マンノシドへのβ1-4結合でのN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基の付加を触媒できるポリペプチドを意味する。これは、特定の生物学的アッセイ法で測定した場合に、β-1,4-マンノシル-糖タンパク質4-β-N-アセチルグルコサミニル-トランスフェラーゼ(EC 2.4.1.144)(国際生化学・分子生物学連合の命名法委員会(Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology)(NC-IUBMB)による)としても公知のβ(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIの活性と必ずしも同一ではないが類似した酵素活性を用量依存性の有無に関わらず示す融合タンパク質を含む。用量依存性が存在する場合、それはGnTIIIのものに同一である必要はないが、正しくは、GnTIIIと比べると、所与の活性の用量依存性に実質的に類似している(すなわち、候補ポリペプチドは、GnTIIIと比べて大きな活性または約25分の1以下の活性を示し、1つの態様において、約10分の1以下の活性を示し、さらなる態様において、約3分の1以下の活性を示す)。本明細書において使用される場合、「ゴルジ局在化ドメイン」という用語は、ゴルジ複合体内の位置にポリペプチドを係留するのを担っているゴルジ内在ポリペプチドのアミノ酸配列を意味する。一般に、局在化ドメインは、酵素のアミノ末端「尾部」を含む。
【0064】
本発明による抗体は、Fcγ受容体III(FcγRIII、CD16a)に対して高い結合親和性を示す。FcγRIIIに対する結合親和性が高いことから、CHO DG44細胞もしくはCHO K1細胞などのCHO宿主細胞において発現された参照としての野生型抗CCR5抗体(95%フコシル化)と比べて、CD16a/F158に対する結合が少なくとも10倍強化されており(実施例5を参照されたい)、または/かつ、抗体濃度100nMで固定したCD16aを用いた表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合、野生型抗CCR5抗体と比べて、CD16a/V158に対する結合が少なくとも20倍強化されていることが示される(実施例3を参照されたい)。FcγRIII結合は、現況技術による方法によって、例えば、Fc部分のアミノ酸配列または抗体のFc部分のグリコシル化を改変することによって増大させることができる。
【0065】
「CCR5への結合」という用語は、本明細書において使用される場合、インビトロのアッセイ法における、1つの態様においては、表面に抗体を結合し、表面プラズモン共鳴(SPR)によってCCR5の結合を測定する結合アッセイ法における、CCR5への抗体の結合を示す。結合とは、10-8Mまたはそれ以下、1つの態様において、10-13M〜10-9Mの結合親和性(KD)を意味する。CCR5またはFcγRIIIへの抗体の結合は、BIAcoreアッセイ法(Pharmacia Biosensor AB, Uppsala, Sweden)によって調査することができる。結合親和性は、用語ka(抗体/抗原複合体における抗体の会合速度定数)、kd(解離定数)、およびKD(kd/ka)によって定義される。本発明による抗体は、CCR5への結合に関して10-8Mまたはそれ以下のKDを示す。
【0066】
「CCR5発現細胞」という用語は、次のような細胞を意味する:
a)天然にCCR5を発現する細胞(例えば、CD4+T細胞およびCD8+T細胞、ならびに単球および他の免疫細胞)、
b)操作された組換えマウスL1.2細胞(ATCC HB204)およびCHO細胞(CHO K1-ATCC CCL-61、CHO DG44-Urlaub et al. Cell 33 (1983) 405-412)、または他の細胞株、
c)サイトカイン、HIV、酪酸ナトリウムによる刺激または他の刺激の後にCCR5を発現する細胞。
【0067】
「CCR5+」という用語は、外側の細胞膜表面にケモカイン受容体CCR5を発現および提示する細胞を示す。
【0068】
「抗体依存性細胞障害(ADCC)」という用語は、エフェクター細胞の存在下での本発明による抗体によるヒト標的細胞の溶解を意味する。1つの態様において、ADCCは、エフェクター細胞、例えば、新しく単離したPBMC、または単球もしくはナチュラルキラー(NK)細胞または持続的に増殖するNK細胞株のような、バフィーコートから精製したエフェクター細胞の存在下で、CCR5発現細胞の調製物を本発明による抗体で処理することによって測定される。
【0069】
本明細書において使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本発明のポリペプチドおよび抗原結合分子を生成するように操作できる任意の種類の細胞系を示す。1つの態様において、宿主細胞は、グリコフォームを改変した抗原結合分子の産生を可能にすることができ、そのように操作される。宿主細胞は、GnTIII活性を有する1種または複数種のポリペプチドを高レベルで発現するようにさらに操作された。1つの態様において、宿主細胞はCHO細胞である。
【0070】
宿主細胞におけるタンパク質発現のために、軽鎖および重鎖またはそれらの断片をコードする核酸を標準的な方法によって発現ベクターに挿入する。このような宿主細胞において発現が実施され、細胞(上清または溶解後の細胞)から抗体が回収される。抗体を組換えによって作製するための一般的方法は現況技術において周知であり、例えば、Makrides, S.C., Protein Expr. Purif. 17 (1999) 183-202; Geisse, S., et al., Protein Expr. Purif. 8 (1996) 271-282; Kaufman, R.J., Mol. Biotechnol. 16 (2000) 151-160; Werner, R.G., Drug Res. 48 (1998) 870-880といった総説論文に記載されている。
【0071】
抗体は、全細胞中に、細胞溶解物中に、または精製された形態で存在してよい。精製は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、および当技術分野において周知の他の技術を含む標準技術によって、他の細胞構成要素または混入物、例えば、細胞の核酸またはタンパク質を除去するために実施される。例えば、Ausubel, F., et al.編 Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York(1987)を参照されたい。
【0072】
原核細胞に適した制御配列には、例えば、プロモーター、任意でオペレーター配列、およびリボソーム結合部位が含まれる。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、およびポリアデニル化シグナルを使用することが公知である。
【0073】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係で配置されている場合、「機能的に連結」されている。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、そのポリペプチドのDNAに機能的に連結されており;プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に影響を及ぼす場合、そのコード配列に機能的に連結されており;または、リボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されている場合、コード配列に機能的に連結されている。一般に、「機能的に連結される」とは、連結されるDNA配列が隣接していていること、分泌リーダーの場合、隣接し、かつリーディングフレーム中にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは隣接していなくてもよい。連結は、簡便な制限部位におけるライゲーションによって達成される。このような部位が存在しない場合には、合成のオリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、従来の手法に従って使用される。
【0074】
モノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインA-セファロースクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーなどによって、培地から適宜分離される。モノクローナル抗体をコードするDNAおよびRNAは、従来の手順を用いて、容易に単離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAおよびRNAの供給源として役立つことができる。
【0075】
本発明の局面は、本発明による抗体を患者に投与することを特徴とする、同種移植片拒絶に罹患している患者を治療または予防するための方法、ならびに炎症および他の免疫介在性疾患を治療するための方法である。同様に、同種移植片拒絶の治療もしくは予防のため、または炎症の治療のため、または他の免疫介在性疾患の治療のための医薬を製造するための抗体の使用も、本発明の局面である。
【0076】
また、本発明の態様は、本発明による抗体を患者に投与することを特徴とする、移植片拒絶または移植片対宿主病に罹患している患者を治療するための方法である。同様に、移植片拒絶または移植片対宿主病の治療のための医薬を製造するための本発明による抗体の使用も、本発明の局面である。
【0077】
本発明の1つの局面は、本発明による抗体を含む薬学的組成物である。本発明の別の局面は、薬学的組成物を製造するための、本発明による抗体の使用である。本発明のさらなる局面は、本発明による抗体および任意で薬学的に許容される賦形剤または担体を含む薬学的組成物を製造するための方法である。1つの態様において、薬学的組成物は、本発明による抗体および免疫抑制物質の組合せを含む。
【0078】
「免疫抑制物質」という用語は、生物に投与された場合に該生物の免疫応答を低減または抑制する化合物を示す。免疫抑制物質の例は、カクロスポリン(Caclosporin)Aのようなカルシニュリン阻害剤である。したがって、1つの態様において、免疫抑制物質はカルシニュリン阻害剤である。別の態様において、免疫抑制物質はシクロスポリン(Cyclosporin)Aである。
【0079】
別の局面において、本発明は、組成物、例えば、本発明の抗体を含み、薬学的担体と合わせて調剤された薬学的組成物を提供する。
【0080】
本明細書において使用される場合、「薬学的担体」には、生理学的に適合性である任意およびすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、ならびに等張化剤および吸収遅延剤などが含まれる。1つの態様において、担体は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与、または表皮投与(例えば、注射または輸注による)に適している。
【0081】
本発明の組成物は、当技術分野において公知の様々な方法によって投与することができる。当業者には理解されるように、投与の経路および/または様式は、所望の結果に応じて異なる。
【0082】
ある種の投与経路によって本発明の化合物を投与するために、化合物の不活性化を防止するための材料で化合物をコーティングすること、または化合物の不活性化を防止するための材料と共に化合物を同時投与することが必要な場合がある。例えば、適切な担体、例えば、リポソーム、または希釈剤中に入れて、化合物を対象に投与してもよい。薬学的に許容される希釈剤には、生理食塩水および水性緩衝溶液が含まれる。
【0083】
薬学的担体には、無菌の水溶液または分散液、および無菌の注射液剤または分散剤を用時調製するための無菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質に対してこのような媒体および作用物質を使用することは、当技術分野において公知である。
【0084】
「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、本明細書において使用される場合、経腸かつ局所の投与以外の投与様式を意味し、通常は注射により、非限定的に、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、および胸骨内の注射および輸注を含む。
【0085】
本発明による組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などの補助剤も含んでよい。微生物の存在の防止は、前記の滅菌手順、ならびに様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、およびソルビン酸などを含めることの両方によって徹底することができる。また、糖および塩化ナトリウムなどの等張化剤を組成物中に含めることが望ましい場合もある。さらに、注射可能な薬剤形態の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど吸収を遅延させる作用物質を含めることによって実現することができる。
【0086】
選択された投与経路に関わらず、適切な水和型で使用され得る本発明の化合物、および/または本発明の薬学的組成物は、当業者に公知である従来の方法によって、薬学的に許容される剤形に製剤化される。
【0087】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に毒性とならずに、個々の患者、組成物、および投与様式にとって望ましい治療応答を達成するのに有効である活性成分の量を得るように変更することができる。選択される投薬量レベルは、使用される本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排出速度、治療の継続期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物、および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的健康状態、および以前の病歴、ならびに医薬分野で周知である同様の因子を含む様々な薬物動態学的因子に依存すると考えられる。
【0088】
これらの組成物は、無菌であり、かつ、注射器によって組成物を送達可能である程度に流動性でなければならない。水のほかに、1つの態様における担体は、等張性の緩衝生理食塩水である。
【0089】
適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用、分散系の場合には必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖、多価アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール、および塩化ナトリウムを組成物中に含むことが有利である。
【0090】
移植は、現況技術に従って、多数の細胞型、組織型、および器官型、例えば、膵島、角膜、骨髄、幹細胞、皮膚移植片、骨格筋、大動脈および大動脈弁、ならびに心臓、肺、腎臓、肝臓、および膵臓などの器官を用いて実施される。
【0091】
本発明は、(例えば、移植後の)GvHD(graft versus host disease)またはHvGD(host versus graft disease)に罹患している患者の治療のための本発明による抗体の使用を含む。また、本発明は、このようなGvHDおよびHvGDに罹患している患者を治療するための方法も含む。さらに、本発明は、GvHDまたはHvGDの治療のための医薬を製造するための本発明による抗体の使用も含む。
【0092】
本発明はまた、CCR5によって媒介される炎症伝達物質放出に苦しんでいる患者を治療するための、好ましくは薬学的に許容される担体と一緒にした薬学的物質を製造するために有効な量の本発明による抗体の使用も提供する。
【0093】
「移植片拒絶」という用語は、本出願内で使用される場合、移植組織に対するヒト免疫系の応答を示す。組織がドナーから宿主へと移植される場合、ドナー組織のヒト白血球抗原遺伝子は、宿主組織のものとは異なる可能性が高い。したがって、宿主の免疫系は移植組織を異物と認識し、移植片拒絶と呼ばれる免疫応答を起こす。この移植片拒絶反応は、「移植片対宿主病」(GvHD)と呼ばれる。
【0094】
「糖鎖は、CHO細胞において組換えによって発現させたCCR5結合抗体のAsn297に結合したN結合型グリカンという特徴を示す」という用語は、本発明による抗体のAsn297における糖鎖が、未改変CHO細胞において発現させた抗CCR5抗体のもの、例えば、WO 2006/103100による抗CCR5抗体とフコース残基以外は同じ構造および糖残基配列を有するということを示す。
【0095】
「NGNA」という用語は、本出願内で使用される場合、糖残基N-グリコリルノイラミン酸を示す。
【0096】
したがって、本発明は、本発明による抗体を哺乳動物に投与することを特徴とする、ヒトを含む哺乳動物における急性および慢性の臓器移植拒絶を治療または予防する方法を提供する。また、ヒトを含む哺乳動物における急性および慢性の臓器移植拒絶を治療または予防するための、本発明による抗体も提供される。さらに、本発明は、急性移植片拒絶および慢性移植片拒絶を治療するための医薬を製造するための本発明による抗体の使用も含む。
【0097】
カニクイザル5匹を心臓同種移植レシピエントとして選択した。本発明による抗体を単独で(n=2、単独療法)または治療用量のシクロスポリンAと組み合わせて(CsA、n=3、併用療法)用いて、これらのサルを治療した。この研究から、本発明による抗体が以下のように免疫抑制性であることが示された:
-単独療法の場合、未治療対照と比べて長期の移植片生着が観察された(6.4±0.4日に対して19±5.7日;p=0.034)、
-本発明による抗体とCsAの併用療法により、CsA単独療法と比べて、慢性同種移植片拒絶(慢性同種移植脈管障害(CAV))が抑制された(CAVスコア:1.9±0.4に対して0.2±0.1、p=0.024)、
-本発明による抗体とCsAの併用療法により、CsA単独療法と比べて、抗ドナー同種抗体産生が抑制された、
-本発明による抗体とCsAの併用療法により、CsA単独療法と比べて、長期の一次移植片生着が観察され、免疫抑制の証拠となった。
【0098】
「併用療法」という用語は、本発明による抗CCR5抗体および免疫抑制物質を1つの単一製剤として、または2つの別々の製剤として投与することを意味する。投与は、同時またはいずれかの順序で逐次的に行ってよく、1つの態様において、両方(またはすべての)活性物質が生物活性を同時に及ぼす時間帯がある。前記抗CCR5抗体および前記免疫抑制物質は、(例えば、持続輸注(1回は抗体のため、および最終的に免疫抑制物質のための1回)による静脈内投与(i.v.)を介して)併用療法において同時または逐次のいずれかで投与される。
【0099】
抗体が、研究者、獣医、医師、または他の臨床医が求めている組織、系、動物、またはヒトの生物学的応答または医学的応答を引き出すと考えられる、個別の化合物または組合せの量である「治療的有効量」(または単に「有効量」)で患者に投与されることは自明である。
【0100】
前記抗CCR5抗体および前記免疫抑制物質の量ならびに投与のタイミングは、治療される患者のタイプ(種、性別、年齢、体重など)および状態ならびに治療される疾患または病態の重症度に応じて変わると考えられる。疾患のタイプおよび重症度によって、約1μg/kg〜50mg/kg(1つの態様において10〜25mg/kg)の前記抗CCR5抗体および1μg/kg〜50mg/kg(1つの態様において5〜20mg/kg)の前記免疫抑制物質が、患者に両方の薬物を投与するための最初の候補投薬量である。
【0101】
したがって、本発明の1つの局面は、免疫抑制物質との併用療法において、移植片拒絶の治療のための医薬を製造するための抗CCR5抗体の使用である。さらに、本発明は、本発明による抗CCR5抗体および免疫抑制物質を用いた併用療法によって、患者の移植片拒絶を治療するための方法も含む。
【0102】
本発明の別の局面は、免疫抑制物質との併用療法において、抗ドナー同種抗体産生の治療のための医薬を製造するための抗CCR5抗体の使用である。さらに、本発明は、本発明による抗CCR5抗体および免疫抑制物質を用いた併用療法によって、患者の抗ドナー同種抗体産生を治療するための方法も含む。
【0103】
「同種抗体」という用語は、同じ種の人間に由来する外来組織に対抗して生物が生成する抗体を示す。
【0104】
本発明による抗体でCCR5を標的とすることにより、CCR5+細胞が枯渇するため、急性同種移植片拒絶を軽減するか、またはさらに予防することができる。したがって、本発明による抗体の適用により、長期の同種移植片生着および慢性拒絶の完全な予防(CAVの発病率および重症度が証拠となる)が観察された。
【0105】
したがって、本発明の局面は、同種移植片拒絶の予防または同種移植レシピエントにおける同種免疫の療法のための本発明による抗CCR5抗体の使用、同種移植片拒絶の予防または同種移植レシピエントにおける同種免疫の療法のための医薬を製造するための本発明による抗CCR5抗体の使用、ならびに、本発明による抗体を該レシピエントに投与することによる、同種移植片拒絶の予防または同種移植レシピエントにおける同種免疫の療法のための方法である。1つの態様において、本発明による抗CCR5抗体は、免疫抑制物質との併用療法において投与される。
【0106】
第1週は3〜5日毎、その後は毎週、10mg/kgの抗体単独療法で治療したカニクイザルにおいて、心臓同種移植片は、14日間および23日間生着し、これは未治療のサルより有意に長かった(MST 6.5±0.4日;n=5、p=0.034)(図5を参照されたい)。急性細胞性拒絶は、組織学的に確認された。CsAと本発明による抗CCR5抗体の併用療法を上記の用量で用いたところ、併用治療した動物3匹のどれも、観察最終期である85〜90日目の間に症候性拒絶を示さなかった。移植片の外植後、移植片には拒絶の臨床的証拠がなかったことが見出されている。
【0107】
したがって、本発明による抗CCR5抗体とCsAの併用療法による治療の間、検出可能な急性移植片拒絶の症状発現は無く、3種の移植片すべてが、約90日目に待機的に(electively)外植した際に正常な機能を有したことが見出されている。
【0108】
一方、CsA単独療法で治療した過去の類似(historical)動物8匹の内の4匹において、症候性急性同種移植片拒絶の最初の症状発現(移植後の徐脈および/または収縮性の減少、レシピエント発熱)が90日目より前に検出された(それぞれ7日目、23日目、44日目、および71日目)。これらの動物の内の3匹において、拒絶はステロイド応答性であった(Solu-Medrol(登録商標)を用いてステロイドボーラスを毎日3回投与、10mg/kg);1つの移植片は、治療を開始できる前である7日目に拒絶された。過去の類似対照の動物1匹は、中心静脈ライン感染症に起因する敗血症によって26日目に死亡した。残り3匹の過去の類似移植片は、85日〜90日目の待機的移植片外植に対して急性拒絶を起こすことなく生着した。
【0109】
したがって、本発明による抗CCR5抗体とCsAの併用療法が、長期の移植片生着および急性移植片拒絶の軽減をもたらすことが見出されている。生存期間中央値(MST)は、CsA単独療法の場合の71日に対して90日を超え(p=0.13)、急性拒絶の発生率は、CsA単独の場合の7匹中4匹に対して、本発明による抗CCR5抗体とCsAの併用療法の場合は3匹中0匹であった(p=0.2)。
【0110】
単独療法の場合の同種移植片拒絶は、国際心肺移植学会(International Society of Heart and Lung Transplantation)(ISHLT)によれば、重度の急性細胞性拒絶の典型的な特徴を示した(グレード3R、多発性心筋細胞損傷ならびに随伴する浮腫および出血を有するびまん性炎症性浸潤が認められる)。一方、本発明による抗CCR5抗体とCsAの併用療法で治療したサルの拒絶スコアは、本発明による抗CCR5抗体のみを用いた単独療法または未治療のサルと比べて、一貫して低かった(グレード0または1)。驚くべきことに、CsA単独療法で治療した移植片はすべて、外植時に中程度〜重度の心臓同種移植脈管障害(CAV重症度スコア1.9±0.4;全スコア≧1.5、N=6)を示したのに対し、本発明による抗CCR5抗体とCsAの併用療法に関連するCAVスコアは、CsA単独療法の場合と比べて有意に低かった(0.2±0.1、n=3;p=0.024、CsAに対する)(図6)。
【0111】
抗CCR5抗体単独療法(10.7mg/kg)で治療した両方の動物で、2週間以内に同種抗体生成が検出された。1つの態様において、より高用量である18〜22mg/kg(21.4mg/kg)の本発明による抗CCR5抗体をCsAとの併用療法において投与した場合、動物3匹中2匹は、ごく微量/やっと測定可能な抗ドナーIgG抗体しか生成せず、10%の陽性閾値にどれも到達せず、これらのうち1匹のみが1ヶ月の時点で一過性の低力価IgMも提示した。一方、同種抗体産生は、CsA単独療法で治療した過去の類似対照動物の7匹中6匹(IgM)および7匹中4匹(IgG)で90日以内に検出された。したがって、本発明による抗CCR5抗体を用いた併用療法により、カルシニュリン阻害剤併用療法において、心臓同種移植片に応答した同種抗体生成が減弱する。本発明の1つの態様において、CsAは、治療効果のあるトラフ値レベル(>400ng/ml)に達するように、15±10mg/kgで(すなわち、5mg/kg〜25mg/kgの用量で)筋肉内に毎日投薬された。
【0112】
したがって、本発明の別の局面は、同種抗原に対する体液性免疫を減弱させるためのカルシニュリン阻害剤療法と組み合わせた、本発明による抗CCR5抗体の使用である。
【0113】
したがって、維持治療としてのCCR5枯渇により、使用すべきCsAの用量を有意に少なくすることが可能になり得る。
【0114】
本発明による抗CCR5抗体を用いた単独療法によって延ばされた、移植片拒絶の時点の組織像を比較すると、単独療法のみでは、移植片の細胞性浸潤は予防されなかった。具体的には、多数のT細胞およびマクロファージが、抗体単独療法に付随した部分的なCCR5+細胞枯渇にも関わらず、移植片に侵入する。
【0115】
(表1)
CsA単独または本発明による抗体と組み合わせて治療したレシピエントにおける移植の結果および組織像の要約を下記の表に示す。(二次生着は、急性拒絶の最初の症状発現を治療した後に、拒絶された移植片を外植した時点を示す;>:まだ鼓動している間に外植された移植片を示す;CAV:心臓同種移植脈管障害;ISHLT:国際心肺移植学会による拒絶スコア;CsA:400ng/mlを上回るトラフ値レベルを達成するために、移植片外植の際に毎日15±10mg/mlで与えられたシクロスポリンA;抗体:-1日目、5日目、8日目、14日目、21日目、および28日目に、もしくは移植片外植まで10mg/kgで与えられた本発明による抗CCR5抗体を用いた治療(単独療法)、または-1日目、5日目、8日目、14日目、およびその後90日目まで毎週、20mg/kgで与えられた本発明による抗CCR5抗体を用いた治療(併用療法)


【0116】
抗体寄託

【0117】
以下の実施例、図、および配列リストは、本発明の理解を助けるために提供され、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲において説明される。本発明の精神から逸脱することなく、説明される手順に修正を加え得ることが理解される。
【実施例】
【0118】
材料および方法
抗体
抗体IgG1として、WO2006/103100およびWO2008/037419に記載されているCCR5に対する抗体を使用した(可変領域は、SEQ ID NO: 06〜SEQ ID NO: 13を参照されたい。CDR配列は、SEQ ID NO: 04、SEQ ID NO: 05、およびSEQ ID NO: 21〜SEQ ID NO: 35を参照されたい)。これらの抗体は、野生型抗体(WT Ab、8%アフコシル化)、アフコシル化抗体(アフコシル化Ab)、およびLALA変異抗体(WO2008/037419を参照されたい)(LALA変異Ab)として使用した。LALAという用語は、該抗体の定常領域中の234位および235位におけるロイシンからアラニンへのアミノ酸交換を示す(L234A、L235A)。
【0119】
プラスミド
この発現系は、CMVプロモーター系を含み(EP 0 323 997)、表2および表3において説明する。
【0120】
(表2)pETR3928(抗体発現ベクター)

【0121】
(表3)pETR2896(グリコシル化ベクター)

【0122】
ヒトCCR5細胞株
ヒトCCR5受容体を安定に発現するL1.2細胞株(L1.2hCCR5細胞)を、ヒトCCR5走化性アッセイ法のために使用する。10%FBS、10ユニット/mlペニシリン、10μg/mlストレプトマイシン、0.1mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、55μM 2-メルカプトエタノール、250μg/mlジェネテシン(すべてInvitrogen社製)を含むRPMI1640中でL1.2hCCR5細胞を培養する。走化性アッセイ法を始める直前に、細胞を遠心沈殿し、走化性緩衝液(Chemotaxis Buffer)(0.1%BSA(Sigma)および10mM HEPES緩衝液(Invitrogen Corp., USA)を含むハンクス平衡塩類溶液HBSS(Invitrogen))中に再懸濁する。これらの細胞を走化性アッセイ法において最終濃度5×106細胞/mlで使用する。
【0123】
カニクイザルCCR5細胞株
カニクイザルCCR5受容体を安定に発現するL1.2細胞株(L1.2cynoCCR5細胞)を、カニクイザルCCR5走化性アッセイ法のために使用する。L1.2hCCR5細胞の場合と同じ増殖培地中でL1.2cynoCCR5細胞を培養する。アッセイ法実施の前日に、5mM酪酸ナトリウム(Sigma)を含む増殖培地中に、8×105細胞/mlの濃度で細胞を播種する。走化性アッセイ法を始める直前に、細胞を遠心沈殿し、走化性緩衝液中に再懸濁する。これらの細胞を走化性アッセイ法において最終濃度5×106細胞/mlで使用する。
【0124】
リガンドの調製
CCR5リガンドであるヒトMIP1α、MIP1β、またはRANTES(R&D Systems)を走化性緩衝液中で希釈し、最終濃度10nMで使用する。LALA変異Abおよび対照のアイソタイプマウスIgG2A(BD Biosciences, USA)を走化性緩衝液中で希釈する。
【0125】
抗CCR5抗体の作製
プラスミドpETR2896を予めトランスフェクトしたグルタミン原栄養性のCHO宿主細胞またはHEK293宿主細胞(EP 0 256 055)にプラスミドpETR3928をトランスフェクトした。この細胞株を無血清培地中で最長14日間、フェドバッチ培養で培養して、様々な量でフコシル化された抗体群を得た(試料1〜4、CHO)。抗体を上清から単離し、クロマトグラフィー法によって精製した。
【0126】
WT抗体(フコシル化92%)またはLALA変異Abを、HEK293またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、CHO-DG44において組換えによって産生させる(Flintoff, W.F., et al., Somat. Cell Genet. 2 (1976) 245-261; Flintoff, W.L., et al., Mol. Cell. Biol. 2 (1982) 275-285; Urlaub, G., et al., Cell 33 (1983) 405-412; Urlaub, G., et al., Somat. Cell Mol. Genet. 12 (1986) 555-566)。CHO-DG44細胞は、MEMαマイナス培地(Gibco 22561番)、10%透析済みFCS(Gibco 26400-044番)、および2mmol/L L-グルタミン、100μMヒポキサンチン、16μMチミジン(HT補助成分)中で増殖させた。
【0127】
動物:
カニクイザル(Macaca fascicularis)(3〜7kg)は、血液型が適合し、混合リンパ球反応(MLR)が一致しないものを組にした(実際のSI範囲:6〜8)。実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)(HHS, NIH Publication 86-23, 1985)に従って、従来の条件下で動物を収容した。
【0128】
サルにおける心臓移植および免疫抑制:
以前に説明されているようにして(Schroeder. C., et al., J. Immunol. 179 (2007) 2289-2299)、レシピエント動物すべてに異所性腹腔内心臓同種移植を行った。2匹の動物は、-1日目、5日目、8日目、14日目、21日目、および28日目に1日1回静脈注射することによって、10mg/kgの抗体単独療法で治療した。他の3匹の動物には、-1日目、5日目、8日目、14日目、およびその後90日目までの毎週、20mg/kgの抗体および付加的なシクロスポリンA(CsA、Bedford Laboratories(Bedford, OH, USA)社製のジェネリック製剤)を与えた。目標のトラフ値レベル(>400ng/ml)に到達するように、手術の日から90日目まで毎日(筋肉内(IM)、15±10mg/kg)CsAを与えた。急性拒絶の症状発現を経験している動物には、3日コースのステロイド(10mg/kgボーラス、Solu-Medrol(登録商標)、Pharmacia, Kalamozoo, MI, USA)を与えて、90日間の移植片生着を達成した。移植血行再建の30分後ならびに術後5日目(単独療法のみ)、14日目、28日目、および56日目に、直視下心臓生検を実施した。埋め込み型テレメトリー(Data Sciences International, St. Paul, MN, USA)によって、少なくとも毎日、移植片の機能をモニターした。次の主徴候3種の内の2種に基づいて、臨床的な急性移植片拒絶を疑った:一貫して体温が高い(>38.5°C);移植片の心拍数の減少(毎分脈拍(bpm)120未満まで、もしくは安定なベースラインからの40bpm(約20%)を上回る持続的な急低下);または、技術的な測定時の問題に起因しない、移植片脈圧(収縮期-拡張期)の20mmHgを超える減少。移植の失敗は、テレメトリーによって収縮の減少が測定された場合と定義し、外植時に可視化することにより確認した。急性拒絶の徴候が移植失敗の前に常に起こっていた。DSIテレメトリーシステムによって体温を毎日測定し、朝一回の測定値として記録した。参照用動物には、治療を受けてない過去の類似動物(n=5)または目標のトラフ値レベル(>400ng/ml)を達成するようにCsAを投薬された過去の類似動物(CsA単独療法、n=8)のいずれかが含まれた。
【0129】
CBC解析およびFACS解析:
サルの設定を用いた自動細胞計数器(Hemavet)によって、新しく採取したEDTA-血液において全血球(CBC)アッセイ法を実施した。EDTA(100μl)中に採取した全血およびリンパ節(LN)から単離した細胞(1×106個の細胞)を、一定の間隔でCCR5発現に関して解析した。手短に言えば、FACS洗浄緩衝液(10%FCSおよび0.2%アジ化ナトリウムを添加したPBS(phosphate buffered saline))に溶かしたPerCP-Cy5.5-結合抗ヒトCD4 mAb(L200, BD Pharmingen, San Diego, CA, USA)、APC結合抗ヒトCD8α(3B5, Caltag, Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)、AlexaFluor488結合抗ヒトCD14(M5E2, BD Pharmingen, USA)、およびPE結合抗ヒトCD195(CCR5)(3A9, BD Pharmingen, USA)で、細胞を4℃で20分間染色した。赤血球は、 BD FACSLyseを用いて溶解させた。いくつかの実験において、細胞をAlexaFluor488結合抗ヒトCD183(CXCR3)(1C6, BD Pharmingen, USA)でCXCR3についても染色し、2つの例では、移植片浸潤細胞(GIL)をコラゲナーゼ消化およびフィコール(Ficoll)勾配分離によって単離し、上記のようにして染色した。前方/側方散乱分析によってリンパ球集団にゲートをかけて、破片を除外した。CellQuestソフトウェアまたはWinlistソフトウェアを用いて、データ解析および図示を行った。血液中のCD4+リンパ球またはCD8+リンパ球の内のCCR5陽性細胞の比率に、示差的解析から得られたリンパ球総数から算出したCD4およびCD8の絶対数を掛けて、血液1μl当たりのCCR5+CD4+細胞およびCCR5+CD8+細胞の絶対数を得た。
【0130】
抗ドナー同種抗体の検出:
以前に説明されているようにして(Schroeder, C., et al., 2007, 上記を参照されたい)、フローサイトメトリーによって同種抗体をレトロスペクティブに測定した。手短に言えば、保管されていた凍結ドナー脾細胞(0.5×106個の細胞)を、加熱不活性化したレシピエント血清(50μl)と共に4℃で30分間、インキュベートした。洗浄後、PEで標識したヤギ抗ヒトIgM(Fcγ特異的)抗体(Biosource, Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)、またはビオチンで標識したヤギ抗サルIgG(Fcγ特異的)抗体(Nordic, Tilburg, The Netherlands)、続いて、PEで標識したストレプトアビジン(BD Pharmingen, San Diego, CA, USA)を用いて、抗体結合を明らかにした。FITCで標識した抗ヒトCD3(BD Pharmingen, USA)を添加して、T細胞にゲートをかけた。移植前レベルを引いた(substraction)後に算出した移植後の陽性T細胞の比率として、データを表した。10%を超える増加を反応性と定義した。
【0131】
組織像:
10%ホルマリンで組織を固定し、パラフィン包埋のために常法通り処理した。パラフィン包埋した組織の切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。細胞浸潤物をISHLT基準に基づいて急性拒絶について格付けした。70日目より後に外植された鼓動している心臓におけるCAV発病率を、各時点において、関与した動脈および細動脈管(CAVスコア≧1)のパーセントとして記録した。これらの外植された心臓におけるCAV重症度を次のように採点した。グレード0、正常な動脈形態;グレード1、拡大した核および/または粘着性白血球を伴う、活性化された内皮細胞が認められる。管腔の狭小化は認められない(<10%);グレード2、独特な新生内膜肥厚、管腔の狭小化<50%;グレード3、50%を超える管腔閉塞を伴う広範囲の新生内膜増殖。採点は、治療群を知らされてない評価者3名が、外植された各心臓に関して独立に実施した。各生検材料または外植片の平均CAVスコアを次の式を用いて算出した:[(グレード0の血管の数×0)+(グレード1の血管の数×1)+(グレード2の血管の数×2)+(グレード3の血管の数×3)]/(採点した動脈管の総数)]。個々の移植片平均CAVスコアを平均して、各治療群の群平均値(±SD)を算出した。
【0132】
免疫組織化学:
次のような自動方法を用いて、免疫組織化学的染色を実施した。ホルマリン固定しパラフィン包埋した(FFPE)組織切片を脱パラフィンし、ABC方法を用いてVentana ES自動染色装置を用いて染色した(Ventana Medical Systems, Inc., Tucson, AZ, USA)。Ventana機器上に配置された試薬はすべて、Ventana社から購入した。設定は、穏やかな(mild)CC1、コンディショナー(conditioner) 1、および標準(standard)1に調整した。次の一次抗体を使用した:CD3(2GV6, Ventana, USA)、CD68(KP1, DAKO)、およびCD20(L26, DAKO, Copenhagen, Denmark)。抗体単独療法で治療した動物および未治療の対照において、細胞の数を次のようにして算出した:低度、中程度、および強度の細胞浸潤が認められる組織の面積を概算し、次いで、代表的な視野に対応する写真を10枚撮影した。次いで、視野当たりの細胞数を計数し、視野当たりの細胞数平均を算出した。組織試料が異なるブロックに分割されている場合には、ブロックすべてを別々に処理し、全ブロックの細胞数/視野を平均して、その組織試料の細胞数を得た。抗体とCsAの併用療法で治療した動物およびCsA単独療法の対照に関して、次の尺度を用いて細胞浸潤を採点した:0、細胞が無い;1、限局的な染色または低度のびまん:2、1〜3個の小塊または軽度のびまん性間質内浸潤;3、3〜10個の小塊または中程度の浸潤;4、10個を超える小塊または著しい浸潤;5、広範囲の浸潤。
【0133】
リアルタイムPCR:
心臓組織を液体窒素中で急速凍結し、-70℃で保存した。さらに解析するために、Qiagen(Valencia, CA, USA)社製のRNeasyミニキットを用いて心臓移植片から全RNAを単離した。
【0134】
薬物レベルの解析:
個々の調査時点に血清試料を採取し、抗体レベルを測定した。HPLC法によってCsA血漿レベルを測定した。
【0135】
統計学的解析:
移植片生着期間を生着期間中央値(MST)として表し、カプラン・マイヤー法を用いてグラフ表示した。ログ・ランク検定を用いて、様々な群の生着期間を比較した。別段の定めが無い限り、連続変数は、平均値+標準偏差として表し、マン・ホイットニーのノンパラメトリック検定を用いて比較した。分割表およびフィッシャーの正確確率検定を用いて、名義変数(すなわち、初期拒絶の発生率)を測定した。0.05未満のP値を統計学的に有意とみなした。統計学的解析はすべて、パーソナルコンピューター上でWindows(登録商標) XP用の統計パッケージSPSS(バージョン11.0, SPSS, Chicago, IL, USA)またはGraphPad InStat(バージョン5.1, GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて実施した。
【0136】
実施例1
CCR5への抗CCR5抗体の結合
アフコシル化抗体(Ab)およびWT抗CCR5抗体の結合能力を比較する。マウスL1.2hCCR5細胞株を標的細胞株として使用した。二次抗体として、FITC結合AffiniPure F(ab)2断片ヤギ抗ヒトIgG Fcγ特異的(Jackson ImmunoResearch Lab 109-096-098番)を使用した。抗ヒトCCR5-FITC(Becton-Dickinson, BD 555992)およびマウスIgG2a-FITCを対照抗体として使用した。RPMI1640培地+10%FCS+1%グルタミン+1%ピルビン酸ナトリウム+0.05mMβ-メルカプトエタノール+0.8mg/ml G418を細胞培養培地とした。細胞表面でhCCR5発現を誘導するために、0.2Mio〜0.5Mio細胞/mlを、1mM酪酸ナトリウム(Sigma B5887)を含む培地中でインキュベートした。酪酸ナトリウム無しでインキュベートした細胞は陰性対照としての機能を果たした。
【0137】
方法:
PBS/0.1%BSA中で希釈した0.2Mio細胞/180μl/ウェルを96丸底プレートに播き、希釈した抗体20μlを添加した。4℃で30分間インキュベーションした後、細胞をPBS/0.1%BSAで洗浄し、15μl/ウェルの希釈した二次抗体または対照を添加した。これらの細胞を4℃でさらに30分間インキュベートし、続いて2回の洗浄工程に供した。FACSCantoにおいて細胞を測定する前に、ヨウ化プロピジウムを添加した。
【0138】
結果:
WT Abおよびアフコシル化Abは、標的細胞に対して同様の結合を示し、結合は抗体濃度に依存していた。GraphPad Prism 4を用いて、両方の抗体についてEC50値を算出した。100μg/ml抗体の平均値は除外した。100μg/ml抗体の平均値は除外した。アフコシル化AbのEC50:0.1376;WT AbのEC50:0.09407。
【0139】
実施例2
細胞のFc結合
アフコシル化AbおよびWT AbのFc結合を調査した。
【0140】
細胞1個当たりCCR5分子10個以上を発現するCHO細胞株が標的細胞株となった。二次Abとして、FITC結合AffiniPure F(ab)2断片ヤギ抗ヒトIgG抗体F(ab')2断片特異的(Jackson ImmunoResearch Lab 109-096-097番)を使用した。抗ヒトCD16-FITC(Beckman Coulter PN IM0814);マウスIgG1アイソタイプ:マウスIgG1-FITCを対照として使用した。細胞培養培地は、IMDM+Glutamax+25mM HEPES(Gibco 31980)+10%FCS+HT補助成分+6μMピューロマイシンであった。チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)をT150フラスコ中で培養し、濃度が13×106細胞/フラスコに達したら、アッセイ法のために使用した。トリプシン/EDTAを用いて細胞を回収した。
【0141】
細胞培養:
培地:IMDM+Glutamax+25mM HEPES(Gibco 31980)+10%FCS+HT補助成分+6μMピューロマイシン。チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)をT150フラスコ中で培養し、濃度が13Mio細胞/フラスコに達したら、アッセイ法のために使用した。トリプシン/EDTAを用いて細胞を回収した。
【0142】
方法:
PBS/0.1%BSA中で希釈した0.2Mio細胞/180μl/ウェルを96丸底プレートに播き、希釈した抗体20μlを添加した。4℃で30分間インキュベーションした後、細胞をPBS/0.1%BSAで洗浄し、12μl/ウェルの希釈した二次抗体または対照を添加した。これらの細胞を4℃でさらに30分間インキュベートし、続いて2回の洗浄工程に供した。4℃で20分間、2%PFAで細胞を固定し、続いて洗浄工程に供した後、FACSCantoにおいてそれらを測定した(図1)。
【0143】
実施例3
FcγRIII(CD16a)に対する抗CCR5抗体の親和性の測定
His-CD16aをCM5チップの表面にアミン結合させた。測定はBIACORE(登録商標)3000機器を用いて実施した。泳動用緩衝液および希釈用緩衝液はHBS-Pであった。チップ表面をHis-CD16a完全に覆った(saturated)。アミンカップリング基を飽和させた(saturated)。分析物を緩衝液フローに一定濃度10nMで添加し、一方、阻害物質である可溶性CD16aを、濃度を漸増させながら(0〜1000nM)緩衝液フローに添加した。RU値は、抗体とCD16aとの親和性を反映する。
【0144】
(表4)

【0145】
実施例4
抗CCR5モノクローナル抗体がNK細胞上のFcγRIIIaに結合する潜在能力
本発明の抗体が、ナチュラルキラー(NK)細胞上のFcγRIIIa(CD16)に結合する能力を測定するために、末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、FcγRIIIaに対する20μg/mlのマウス阻止抗体(抗CD16、クローン3G8、RDI, Flanders, NJ)の存在または不在下で20μg/mlの抗体および対照抗体と共にインキュベートして、FcγRIIIaを介した結合を検証する。陰性対照として、FcγRIIIaに結合しないヒトIgG2およびヒトIgG4(The Binding Site)を使用する。ヒトIgG1およびヒトIgG3(The Binding Site)をFcγRIIIa結合に関する陽性対照として含める。NK細胞上で結合された抗体は、PE標識マウス抗ヒトCD56(NK細胞表面マーカー)抗体(BD Biosciences Pharmingen, San Diego, CA)をFITC標識ヤギF(ab)2抗ヒトIgG(Fc)抗体(Protos Immunoresearch, Burlingame, CA)と組み合わせて用いて、FACS解析によって検出する。最大結合(Bmax)は、抗体濃度20μg/mlで測定する。対照抗体(ヒトIgG4)は、ヒトIgG1の100%Bmaxと比べて、最大30%のBmaxを示す。したがって、「FcγRIIIa結合無しまたはADCC無し」とは、抗体濃度20μg/mlで、ヒトIgG1と比べて最大30%のBmax値を意味する。
【0146】
クロミウム51リリースアッセイ法によるADCCおよびCDCの測定
材料:
Amersham社製のクロミウム、カタログ番号CJS11;丸底ポリプロピレンプレートコスター(costar)、カタログ番号3790;Lumaplate-96(固体シンチレーターでコーティングされたポリスチレンプレート):Perkin-Elmer社製、製品番号6006633。
標的細胞:CCR5発現細胞(L1.2細胞株、実施例2を参照されたい)。
エフェクター細胞または補体血清(Complement serum)(ヒトPBMC、単離されたNK細胞)。
【0147】
方法:
1×106個の標的細胞を37℃で1時間、100μCiのクロミウム51で標識する。標識した細胞を培地で4回洗浄し、5ml中に再懸濁する(濃度:細胞200,000個/ml)。標的細胞50μlを(細胞200,000個/mlの濃度で)各ウェルに播種する。様々な濃度の試験抗体50μlを添加し、4℃で1時間インキュベートする。(所望の比率の)エフェクター細胞または所望のE:T比率の補体血清を添加し、細胞を37℃で4時間インキュベートする。
【0148】
対照:
自発的溶解の対照として、標的細胞50μlおよび培地100μlを混合し、測定した。標識した標的細胞50μl+Triton-X-100(PBS中1%)50μl+培地50μlを用いて最大溶解を測定した。インキュベーションの終了時に培養物上清50μlをLumaプレート上に添加した。結果をトップカウント(top count)で読取った。細胞障害性は、次の式:細胞障害性(%)={(試料CPM-自発的溶解CPM)/(最大溶解CPM-自発的溶解CPM)}×100を用いて算出した。
【0149】
結果を図2に示す。
【0150】
実施例5
CCR5走化性アッセイ法
ヒトCCR5を含むL1.2hCCR5細胞またはカニクイザルCCR5を含むL1.2mCCR5細胞を、10%ウシ胎児血清、1×ペニシリン/ストレプトマイシン、1×グルタミン、1×ピルビン酸ナトリウム、1×β-メルカプトエタノール、および250μg/ml G418(すべてInvitrogen社製)を含むRPMI1640中で培養する。走化性アッセイ法を始める直前に、細胞を遠心沈殿し、走化性緩衝液(Chemotaxis Buffer)(0.1%BSAおよび10mM HEPESを含むハンクス平衡塩類溶液HBSS(Invitrogen))中に再懸濁する。これらの細胞を走化性アッセイ法において最終濃度5×106細胞/mlで使用する。CCR5リガンドであるhMIP1α、hMIP1β、またはhRANTES(R&D Systems)を走化性緩衝液中で希釈し、最終濃度20nMで使用する。試験抗体または適切なアイソタイプ対照抗体をHBSS中で希釈する。ポアサイズ0.5μmの96ウェルChemoTxRシステム(Neuroprobe)において走化性を起こさせる(set up)。各抗体をCCR5リガンドの内の1種と混合し、この混合物30μlをChemoTxRシステムのボトムウェルに入れる。フィルタースクリーンをボトムウェルの上に置く。各抗体をL1.2hCCR5細胞またはL1.2mCCR5細胞と混合し、この混合物20μlをフィルター上に置く。次いで、これらのプレートを加湿チャンバー中に入れ、37℃、5%CO2で3時間インキュベートする。インキュベーション後、細胞をフィルターからこすり落とし、卓上遠心分離機を用いて2,000rpmで10分間プレートを遠心分離する。次いで、フィルターを取り除き、CyQUANT(登録商標)細胞増殖アッセイキット(Invitrogen)およびSpectra MAX GeminiXSプレートリーダー(Molecular Devices)を製造業者の取扱い説明書に従って用いて、ボトムウェルに遊走した細胞の濃度を検出する。Prism4(GraphPad)を用いてIC50を算出する。
【0151】
アッセイ法の24時間前に、2mM酪酸ナトリウムと共に8×105細胞/mlの濃度でL1.2CCR5細胞を播種した。抗体をCTX緩衝液(HBSS, 0.1%BSA, 10mM HEPES)中で希釈した。リガンドを希釈した(MIP1a MIP1b RANTES, CTX緩衝液に溶かした20nMストック溶液(2×))。細胞を洗浄し、CTX緩衝液(HBSS, 10mM HEPES, 0.1%BSA)中に1×107個を再懸濁した(2×)。深型ウェルブロックにおいて、抗体+リガンドおよび上部懸濁(top suspension)抗体+細胞を調製した。101-5 ChemoTxR(Neuroprobe)プレート上で走化性のアッセイ法を始め、加湿チャンバー中、37℃で3時間、インキュベートした。フィルター表面から細胞を洗い落とし、2,000rpmで10分間、プレートを遠心する。フィルターを取り除き、各ボトムウェルから上清10mlを採取した。凍結/解凍した後、2×CyQUANT(Invitrogen)10mlを各ウェルに添加し、蛍光プレートリーダーで結果を読取った。
【0152】
結果:
ヒトCCR5細胞の遊走は、WT Abおよびアフコシル化Abによって効果的に阻止された(表5)。
【0153】
(表5)

【0154】
実施例6
CCR5+細胞のインビボにおける枯渇
カニクイザルに、1mg/kgまたは10mg/kgのアフコシル化Abを1回静脈輸注した。血液中の表示した部分集合(CD8+T細胞およびCD4+T細胞ならびに単球)におけるCCR5+細胞の%としてデータを示した(図3)。
【0155】
実施例7
インビボにおける枯渇毒性調査
目的:CD8+細胞、CD4+細胞、および単球におけるCCR5細胞発現をモニターすること。組織におけるCCR5発現に対する治療効果を判定するために、アフコシル化Abで治療された動物においてCD8+細胞が枯渇しているかを判定すること。
●動物12匹:対照4匹、8匹には21mg/kg/日を投与
●1日目および15日目に投与
●染色用の全血:
●投与前 -6日目、投与前 1日目、2日目、4日目、8日目、15日目、16日目、18日目、22日目、29日目、36日目、43日目、50日目、57日目、64日目、71日目。
●CD8+、CD4+、CD8+CD4+、単球中のCCR5+を染色(ゲートによる)
●CD8+およびCD4+中のCXCR3+を染色
●ビーズの計数による枯渇の確認
●8日目、15日目、18日目、71日目にCCR5を染色するための脾臓、リンパ節、および骨髄
【0156】
結果を図4に示す。
【0157】
実施例8
抗体の糖構造の解析
フコースを含有するオリゴ糖構造物とフコースを含有しない(アフコース)オリゴ糖構造物の相対比を決定するために、精製した抗体材料の遊離グリカンをMALDI-Tof-質量分析によって解析した。このために、タンパク質主鎖からオリゴ糖を遊離させるために、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に溶かした5mUのN-グリコシダーゼF(Prozyme GKE-5010B番)と共に37℃で一晩、抗体試料(約50μg)をインキュベートした。続いて、NuTip-Carbonピペットチップ(Glygen社から入手:NuTip 1〜10μl、カタログ番号NT1CAR)を用いて、遊離したグリカン構造物を単離し、脱塩した。第一段階として、1M NaOH 3μl、続いて純水20μL(例えば、Baker社製のHPLC勾配グレード、4218番)、30%(v/v)酢酸3μL、再び純水20μLで洗浄することによって、オリゴ糖の結合用のNuTip-Carbonピペットチップを準備した。これを行うために、各溶液をNuTip-Carbonピペットチップ中のクロマトグラフィー材料の上に載せ、押し通した。その後、前述のN-グリコシダーゼF消化物を4〜5回上下に出し入れすることによって、NuTip-Carbonピペットチップ中の材料に、抗体10μgに対応するグリカン構造物を結合させた。NuTip-Carbonピペットチップ中の材料に結合されたグリカンを前述したように純水20μLで洗浄し、それぞれ10%アセトニトリル0.5μLおよび20%アセトニトリル2.0μLを用いて段階的に溶出させた。この段階を行うために、溶出溶液を0.5mL反応バイアルに満たし、それぞれ4〜5回上下に出し入れした。MALDI-Tof質量分析による解析のために、両方の溶出物を合一した。この測定のために、合一した溶出物0.4μLをMALDIターゲット上でSDHBマトリックス溶液(5mg/mlの濃度で20%エタノール/5mM NaCl中に溶解した2.5-ジヒドロキシ安息香酸/2-ヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸[Bruker Daltonics 209813番])1.6μLと混合し、適切に調整したBruker Ultraflex TOF/TOF機器を用いて解析した。常法通り、一回の実験につき50〜300回を記録し、合計した。得られたスペクトルを屈曲解析ソフトウェア(Bruker Daltonics)によって評価し、検出された各ピークに関して質量を決定した。続いて、算出された質量および個々の構造物(例えば、それぞれフコースを伴うかまたは伴わない、複合体、ハイブリッド、およびオリゴマンノースまたは高マンノース)に対して理論上予想される質量を比較することによって、フコースを含有する糖構造物またはアフコース(フコースを含有しない)糖構造物にこれらのピークを割り当てた。
【0158】
ハイブリッド構造物の比を決定するために、抗体試料をN-グリコシダーゼFおよびエンド-グリコシダーゼHで同時に消化した。N-グリコシダーゼFは、すべてのN結合型グリカン構造物(複合体構造物、ハイブリッド構造物、およびオリゴマンノース構造物および高マンノース構造物)をタンパク質主鎖から遊離させ、エンド-グリコシダーゼHはさらに、すべてのハイブリッド型グリカンをグリカンの還元末端の2つのGlcNAc残基の間で切断する。続いて、N-グリコシダーゼFで消化した試料について前述したのと同じ方法でこの消化物を処理し、MALDI-Tof質量分析によって解析した。N-グリコシダーゼF消化物および合一したN-グリコシダーゼF/エンドH消化物のパターンを比較することによって、特定の糖構造物のシグナルの減少の程度を用いてハイブリッド構造物の相対的含有量を推定する。
【0159】
個々のグリコール構造物のピークの高さと検出された全糖構造物のピークの高さの合計の比から、各糖構造物の相対量を算出した。アフコースの相対量は、N-グリコシダーゼFで処理した試料中で同定された全糖構造物(例えば、それぞれ複合体構造物、ハイブリッド構造物、ならびにオリゴマンノース構造物、および高マンノース構造物)に対する、フコースを欠く構造物の百分率である。表6を参照されたい。
【0160】
(表6)

【0161】
実施例9
非ヒト霊長類(カニクイザル)心臓移植モデルにおける抗CCR5抗体をベースとした免疫抑制治療計画
不適合のドナー動物から心臓移植を受けたカニクイザルにおいてCCR5+細胞を枯渇させる際のモノクローナル抗体Xの有効性を実証する。移植後4〜5日目の移植片中のCCR5+細胞の数を測定する。さらに、同種移植片生着の持続期間に基づいて測定して、モノクローナル抗体Xの免疫抑制効果を単独療法として評価する。
【0162】
動物:
不適合の雄の成体カニクイザル;体重約3〜6kg;既存の顕著な病状は無し。特に、サルレトロウイルスのような感染症に罹患していない。
N=5 第I相の移植片(A+B)
[第I相の観察結果を実証するために、今後の第II相試験もまた説明する:N=10]
【0163】
移植手順:
手順はすべて、IACUC認可プロトコールに従って実施する:
術前血液型、MLR(ABO適合性を確かめる。高応答動物=MHC不適合)。血清、リンパ球を記録する(ベースライン)。
異所性心臓移植(ドナー1匹、レシピエント1匹)、つなぎ糸(tether)配置、テレメトリー埋め込み、D0。
生検移植片(脾臓、リンパ節)D4〜5、D14、D28〜30、D60、外植D90。D90または初期の移植片外植後30日目に屠殺する。
以降の研究のために記録する同種抗体、FACS、ROレベル、細胞を得るために、D0および各生検実施日、ならびにD21、D45、D75に血液採取(細胞、血清)する。
D14にワクチンを打ち、続いて応答をモニターする。
【0164】
試験計画:
単独療法として、抗CCR5抗体は過去の類似対照(6日)よりも有意に長い(>10日)移植片生着をもたらす。拒絶が起こるまで、または90日間(どちらか最初に来た方まで)、動物を治療する。
【0165】
10mg/kgのCCR5抗体(静脈内、1週間おきに1回)を移植後最長90日間、投与する。3〜5日目に移植片生検材料および血液試料を採取し、それぞれIHCおよびFACSによって評価する。続いて、14日目、30日目までは1週間に1回、その後は隔週に血液試料を採取する。移植失敗による実験終了または90日目(どちらか最初に来た方)まで、生検材料を毎月獲得する。終了時、移植片のCAVを評価する。移植失敗が60日目より前に起こった場合、動物の状態が許すならば、さらに30日間免疫をモニターするために移植片外植後、動物を回復させる。
【0166】
実施例10
非ヒト霊長類(カニクイザル)心臓移植モデルにおける抗CCR5抗体をベースとした免疫抑制治療計画-併用療法
さらなる実験において、心臓同種移植脈管障害(CAV)の発病率および重症度を測定して、1種または複数種の他の免疫抑制物質と組み合わせた場合のモノクローナル抗体Xの免疫抑制効果を評価する。
【0167】
使用した動物および移植手順は、実施例9で説明する。
【0168】
10mg/kgのCCR5抗体(静脈内、1週間おきに1回)を移植後最長90日間、投与する。併用療法は、移植片機能損失までPIに基づいて決定される12.5mg/kgで始まる用量のシクロスポリンA(CsA)(5〜20mg/kg、「治療効果のある」トラフ値であるCsA>300を達成するためのレベルに基づいて投与される)からなる。急性拒絶(主徴候3種の内の2種に基づいて診断:移植片心拍数の減少、移植片収縮性の減少、レシピエント体温の上昇;生検によって診断を確認)は、ステロイドで治療する。4〜5日目および14日目に移植片生検材料および血液試料を採取し、それぞれIHCおよびFACSによって評価する。続いて、14日目、30日目までは1週間に1回、その後は隔週に血液試料を採取する。移植失敗による実験終了または90日目(どちらか最初に来た方)まで、生検材料を毎月獲得する。終了時、移植片のCAVを評価する。移植失敗が60日目より前に起こった場合、動物の状態が許すならば、さらに30日間免疫をモニターするために移植片外植後、動物を回復させる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCR5に結合し、かつAsn297において糖鎖でグリコシル化されている抗体であって、該糖鎖内のフコースの量が65%またはそれ以下であることを特徴とする抗体。
【請求項2】
糖鎖内のフコースの量が5%〜65%の間であることを特徴とする、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
NGNAの量が1%もしくはそれ以下であり、かつ/またはN末端α-1,3-ガラクトースの量が1%もしくはそれ以下であることを特徴とする、請求項1または2記載の抗体。
【請求項4】
NGNAの量が0.5%またはそれ以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項記載の抗体。
【請求項5】
N末端α-1,3-ガラクトースの量が0.5%またはそれ以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の抗体。
【請求項6】
抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項記載の抗体。
【請求項7】
CCR5に対する親和性が約10-13〜10-9M(KD)であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項記載の抗体。
【請求項8】
重鎖相補性決定領域(CDR)としてSEQ ID NO: 6のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 7のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 8のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 9のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 10のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 11のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 12のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 13のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 14のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 15のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 16のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 19のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 16のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 20のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 17のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 19のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 17のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 20のCDR、重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 18のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 19のCDR、または重鎖CDRとしてSEQ ID NO: 18のCDRおよび軽鎖CDRとしてSEQ ID NO: 20のCDRを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項記載の抗体。
【請求項9】
CCR5に結合し、かつAsn297において糖鎖でグリコシル化されている抗体であって、FcγRIIIに対して高い結合親和性を示すことを特徴とする抗体。
【請求項10】
薬学的組成物を製造するための、請求項1〜9のいずれか一項記載の抗体の使用。
【請求項11】
請求項1〜9記載の抗体を含む薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1〜9記載の抗体を含む薬学的組成物を製造するための方法。
【請求項13】
ヒトを含む哺乳動物において、急性および慢性の臓器移植拒絶を治療または予防する方法であって、請求項1〜9のいずれか一項記載の抗体を該哺乳動物に投与する段階を特徴とする方法。
【請求項14】
GnTIIIおよび抗CCR5抗体を組換えによって発現することができるCHO細胞。
【請求項15】
さらにManIIを組換えによって発現する、請求項14記載のCHO細胞。
【請求項16】
ヒトを含む哺乳動物における急性および慢性の臓器移植拒絶の治療または予防のための医薬を製造するための、請求項1〜9のいずれか一項記載の抗体の使用。
【請求項17】
同種移植片拒絶の治療もしくは予防のため、または炎症の治療のため、または他の免疫介在性疾患の治療のための医薬を製造するための、請求項1〜9のいずれか一項記載の抗体の使用。
【請求項18】
免疫抑制物質との併用療法において、移植片拒絶の治療のための医薬を製造するための、請求項1〜9のいずれか一項記載の抗体の使用。
【請求項19】
免疫抑制物質がカルシニュリン阻害剤であることを特徴とする、請求項18記載の使用。
【請求項20】
免疫抑制物質との併用療法において、抗ドナー同種抗体産生の治療のための医薬を製造するための、請求項1〜9のいずれか一項記載の抗体の使用。
【請求項21】
抗体が10〜25mg/kgの用量で投与されることを特徴とする、請求項17〜20のいずれか一項記載の使用。
【請求項22】
免疫抑制物質がシクロスポリンAであることを特徴とする、請求項18〜21のいずれか一項記載の使用。
【請求項23】
シクロスポリンAが5〜20mg/kgの用量で投与されることを特徴とする、請求項22記載の使用。

【公表番号】特表2011−509958(P2011−509958A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542571(P2010−542571)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000133
【国際公開番号】WO2009/090032
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】