CD151に特異的なキメラ抗体および癌の処置におけるその使用
本発明は、ヒトCD151タンパク質に特異的に結合できる新規な抗体、特に、キメラ型およびヒト型の、マウス起源のモノクローナル抗体、更にそれらの抗体のアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列に関する。本発明は更に、癌の予防または治療的処置のための医薬としてのそれらの抗体の使用およびCD151タンパク質の過剰発現に関連する疾患を診断する方法またはキットにおけるそれらの抗体の使用を含む。最後に、本発明は、抗体および/もしくは抗癌剤と組み合わされたまたは毒素および/もしくは放射性元素がコンジュゲートされたそのような抗体を含む生成物および/または組成物ならびに特定の癌の防止および/または処置におけるそれらの使用を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な抗体、特に、キメラ型およびヒト化型の、腫瘍の成長を阻害することができる、マウス起源のモノクローナル抗体ならびにそれらの抗体のアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列に関する。特定の態様では、本発明は、腫瘍細胞の増殖を阻害できる新規な抗体、誘導体化合物、または機能的フラグメントに関する。本発明は更に、癌の予防および/または治療処置のための医薬としてのならびに癌を診断する方法またはキットにおけるそれらの抗体の使用を含む。最後に、本発明は、例えば抗癌剤および/または抗体と会合しているか毒素がコンジュゲートされたそのような抗体を含む生成物および/または組成物ならびに特定の癌の防止および/または処置におけるその使用を含む。
【0002】
CD151はPETA−3またはSFA−1ともいい、テトラスパニンファミリーに属する膜タンパク質である(Boucheix and Rubinstein, 2001, Cell Mol. Life Sci. 58, 1189-1205; Hemler, 2001, J. Cell Biol. 155, 1103-1107)。ヒトでは、CD151は253個のアミノ酸を有し、4個の膜フラグメントならびに細胞外ループとも呼ばれる細胞外ドメインEC1(18アミノ酸、配列[40〜57]およびEC2(109アミノ酸、配列[113〜221])を含む。しかし、ヌクレオチド配列中、これまでにCD151の2個のバリアントが同定されており、1つは395位および409位にそれぞれヌクレオチドAおよびCを有し[非特許文献3]、もう1つは、同じ位置にヌクレオチドAおよびCの代わりにヌクレオチドGおよびTを有する[非特許文献4]。その結果、ペプチド配列中に変異が観察され、それぞれ132位および137位の残基K(Lys)およびP(Pro)が残基R(Arg)およびS(Ser)に変異している[Fitter et al, 1995, Blood 86(4), 1348-1355/ Hasegawa et al., 1996, J. Virol. 70(5), 3258-3263]。
【0003】
CD151は、例えば肺癌[Tokuhara et al, 2001, Clin. Cancer Res. 7, 4109-4114]、結腸癌[Hashida et al, 2003, Br. J. Cancer 89, 158-167]、前立腺癌[Ang et al, 2004, Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev. 13, 1717-1721]、または膵臓癌[Gesierich et al, 2005, Clin. Cancer Res. 11, 2840-2852]等の多くの癌で過剰発現している。
【0004】
CD151を発現しないノックアウトマウスならびに種々の種類の細胞においてインビトロでCD151の機能性および発現をブロックするための抗CD151抗体およびsiRNAの使用により、CD151が癌に関連するいくつかの現象、例えば細胞接着(Nishiuchi et al., 2005, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102, 1939-1944; Winterwood et al, 2006, Mol. Biol. Cell 17, 2707-2721)、細胞運動性(Kohno et al, 2002, Int. J. Cancer 97, 336-343)、細胞遊走(Yauch et al, 1998, Mol. Biol. Cell 9, 2751-2765、Testa et al, 1999, Cancer Res. 59, 3812-3820、Penas et al, 2000, J. Invest. Dermatol. 114, 1126-1135、Klosek et al, 2005, Biochem. Biophys. Res. Commun. 336, 408-416
)、細胞浸潤(Kohno et al, 2002, Int. J. Cancer 97, 336-343、Shiomi et al, 2005, Lab. Invest. 85, 1489-1506、Hong et al, 2006, J. Biol. Chem. 281, 24279-24292)、および脈管形成(Yanez-Mo et al, 1998, J. Cell Biol. 141, 791-804、Sincock et al, 1999, J. Cell Sci. 112, 833-844、Takeda et al, 2007, Blood 109, 1524-1532)に関与することが示された。
【0005】
テトラスパニンの注目すべき特徴の1つは、自身および多くの他の表面分子と会合して構造的な巨大分子複合体を形成できる能力である。それらの複合体内で、各テトラスパニンは1または複数の表面分子と特異的に会合することにより、テトラスパニンおよびパートナー分子から構成される一次複合体を形成している。テトラスパニンは特定の原形質膜マイクロドメインを組織することができ、テトラスパニンはそのマイクロドメインから機能的に関連し得るパートナー分子をリクルートすることができる。テトラスパニンを含む相互作用の集合は、「テトラスパニンネットワーク」または「テトラスパニンウェブ」と呼ばれている。
【0006】
CD151は細胞表面上で種々の膜タンパク質と相互作用する。特に、ラミニン受容体インテグリンとの、より具体的には好ましいリガンドがラミニン5であるインテグリンα3β1またはα6β4との、特定の洗剤の作用に抵抗性である非常に安定性の高い複合体が同定されている(Yauch et al, 1998, Mol. Biol. Cell 9, 2751-2765、Lammerding et al, 2003, Proc. Natl. Acad. Sci USA 100, 7616-7621)。この会合には、インテグリンおよびCD151の細胞外ドメインが関与する。EC2ループ中に位置するCD151の配列QRD[194〜196]が変異すると特定のインテグリンとの相互作用が消失するため、この配列が会合に非常に重要である(Kazarov et al, 2002, J. Cell Biol. 158, 1299-1309)。更に、CD151/インテグリンα6β4/c−Met(HGF受容体)の機能的三元複合体が腫瘍細胞中で同定されている(Klosek et al, 2005, Biochem. Biophys. Res. Commun. 336, 408-416)。干渉RNAで細胞を処理することによりCD151の発現を阻害すると、HGFにより生じる細胞の成長および遊走が阻害される。
【0007】
EC2ループが欠失してもCD151と他のテトラスパニンの会合が乱れないことが示されていることから、テトラスパニンのネットワーク形成に必要な、特定の細胞内でのCD151と他のテトラスパニンとの相互作用は、CD151の膜領域および細胞質領域に依存すると考えられる(Berditchevski, 2001, J. Cell Sci. 114, 4143-4151)。
【0008】
CD151は、種々のシグナル伝達経路の調節、例えばPI4キナーゼとの会合を介したホスホイノシチド経路の調節(Yauch et al, 1998, Mol. Biol. Cell 9, 2751-2765)、FAK、Src、p38−MAPK、およびJNKのリン酸化を介したc−Junシグナル伝達経路の調節(Hong et al, 2006, J. Biol. Chem. 281, 24279-24292)、PKCによるインテグリンのリン酸化の調節(Zhang et al, 2001, J. Biol. Chem. 276, 25005-25013)、RhoファミリーのGTPaseの活性化の調節(Shigeta et al, 2003, J. Cell Biol. 163, 165-176)により、細胞の接着、遊走、および浸潤を制御することができる。
【0009】
細胞間の同種親和性型の相互作用も、細胞運動性およびメタロプロテイナーゼMMP−9の発現の増加に関与する(Hong et al, 2006, J. Biol. Chem. 281, 24279-24292)。これらの細胞間CD151−CD151相互作用は、FAK、Src、p38−MAPK、およびJNKのリン酸化を介してc−Junの活性化を引き起こす。
【0010】
これまで、CD151タンパク質への関心にも関わらず、作製されたのは2つの治療目的の抗体、すなわちモノクローナル抗体50−6およびSFA1.2B4である。これら2つの抗体は同等な活性を有する。これらはモデル動物においてインビボで転移形成を阻害するが、インビボでの腫瘍成長に対する効果は明らかにされていない。
【0011】
CD151に対するモノクローナル抗体50−6(アイソタイプIgG1)は、ヒト類表皮癌HEp−3細胞を用いたsubtractive immunisation法によりマウスで生成された(Testa et al, 1999, Cancer Res. 59, 3812-3820)。
【0012】
抗体50−6は、CD151を過剰発現するようにトランスフェクトされたヒト子宮頸癌HeLa細胞の遊走およびHEp−3細胞の遊走ならびにbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)により起こる漿尿膜新血管新生のモデルにおける脈管形成をインビトロで阻害することができる。この抗体は、ニワトリ胚の2つのモデルにおいてHEp−3細胞の接種により誘発される転移をインビボで阻害する(Testa et al, 1999, Cancer Res. 59, 3812-3820)。これらのモデルにおいては、抗体50−6の阻害活性は、肺抽出物中のタンパク質huPA(ヒトウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター)の活性測定によって求められる。著者らによると、このアッセイは、肺の中のヒト細胞の存在を反映するものである。アッセイ後、抗体50−6によってもたらされる転移(ニワトリ胚の肺へのHEp−3細胞の内転移)の減少は、対照抗体との比較で、細胞の接種後に抗体が注射されるいわゆる「自然転移」モデルで74%、細胞と抗体が一緒に接種されるいわゆる「実験転移」モデルで57%であると推定される。著者らによると、インビボで観察される抗体50−6の抗腫瘍特性は、この抗体がインビトロでHEp−3細胞の増殖に何ら影響を与えなかったことから、細胞増殖抑制効果または細胞毒性効果に関連しないと考えられる。
【0013】
抗体50−6を産生するハイブリドーマは、参照番号CRL−2696でATCCより入手可能である(当初、参照番号50−6[PTA−227]で寄託されたハイブリドーマ)。
【0014】
抗CD151モノクローナル抗体SFA1.2B4(アイソタイプIgG1)は、ヒトCD151遺伝子でトランスフェクトされたNIH 3T3細胞を用いて腹腔内経路で免疫化した後のマウスで生成された(Hasegawa et al, 1996, J. Virol. 70, 3258-3263)。抗体SFA1.2B4はインビトロで様々なヒト腫瘍系の細胞の浸潤および運動性を阻害することができる(Kohno et al., 2002, Int. J. Cancer 97, 336-343)。この抗体は、インビボで、CD151を過剰発現するようにトランスフェクトされた結腸癌系RPMI14788および線維肉腫系HT1080により引き起こされる肺転移を阻害する(Kohno et al., 2002, Int. J. Cancer 97, 336-343)。
【0015】
他のマウス抗CD151抗体、例えばモノクローナル抗体14A2H1(Ashman et al., 1991, Br. J. Haematol. 79, 263-270;Roberts et al., 1995, Br. J. Haematol. 89, 853-860)、TS151およびTS151R(Serru et al, 1999, Biochem. J. 340, 103-111;Geary et al, 2001, Tissue Antigens 58, 141-153;Charrin et al, J. Biol. Chem. 276, 14329-14337;Chometon et al, 2006, Exp. Cell Res. 312, 983-985)等が文献中に既に記載されている。
【0016】
複数の実験研究により、テトラスパニンが転移のサプレッサーまたはプロモーターとして作用することにより転移形成において重要な役割を果たすことが示された。CD9、CD63、CD82等のテトラスパニンのトランスフェクションは癌系の転移の可能性を低減させる。これに対して、テトラスパニンCD151およびCo−029の発現は逆の効果を生じるようである。したがって、これら2つのテトラスパニンは転移のプロモーターである。これらの結果は、複数の癌(乳癌、肺癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、結腸癌、前立腺癌、黒色腫等)において、転移がある場合に原発腫瘍でCD9およびCD82の発現がより少ないことおよびこれらの発現減少からより低い生存率が予想されることを示した種々の臨床研究と一貫性を有するものである。肺癌では、CD9およびCD82の発現の複合的な減少が、これら2つの抗原の一方だけの発現が減少している場合よりも大きな転移可能性と相関していた。
【0017】
CD151の過剰発現が、肺癌、結腸癌、前立腺癌等の特定の癌の攻撃性と関連し、予後不良の要因と見なされ得ることが、複数の後向き研究により示されている(Tokuhara et al, 2001, Clin. Cancer Res. 7, 4109-4114;Hashida et al, 2003, Br. J. Cancer 89, 158-167;Ang et al, 2004, Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev. 13, 1717-1721)。これらのケースにおいて、平均生存率は、CD151を発現しない腫瘍を有する患者に比べ、CD151を発現する腫瘍を有する患者において実際に低くなっている。
【0018】
種々のヒト腫瘍系(HeLa、RPMI14788、A172、HT1080)において、対応する遺伝子のトランスフェクションによりもたらされるCD151の過剰発現は、トランスフェクト細胞の運動性、遊走、および浸潤の増加を引き起こす(Testa et al, 1999, Cancer Res. 59, 3812-3820;Kohno et al, 2002, Int. J. Cancer 97, 336-343)。これらの現象は、抗CD151抗体の存在下で阻害される。
【0019】
キメラ抗体とは、所与の種の抗体に由来する天然の可変(軽鎖および重鎖)領域を含有する抗体であって、前記所与の種と異なる種の抗体の軽鎖および重鎖の定常領域と会合している抗体を意味する。
【0020】
本発明に係るキメラ型の抗体またはそのフラグメントは、遺伝子組換え技術を用いて作製することができる。例えば、キメラ抗体は、プロモーターと、本発明に係る非ヒト、特にマウスのモノクローナル抗体の可変領域をコードする配列と、ヒト抗体の定常領域をコードする配列とを含む組換えDNAをクローニングすることによって作製することができる。このような組換え遺伝子によりコードされる本発明のキメラ抗体は、例えばマウス−ヒトキメラであり得、この抗体の特異性はマウスDNAに由来する可変領域により決まり、アイソタイプはヒトDNAに由来する定常領域により決まる。キメラ抗体の作製方法については、例えばVerhoeyn et al.(BioEssays, 8:74, 1988)を参照することができる。
【0021】
第1の態様では、本発明は、配列番号7のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号7と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する軽鎖および/または配列番号8もしくは9のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号8もしくは9と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する重鎖を含むことを特徴とする、キメラ抗体または誘導化合物(derived compound)もしくは機能的フラグメントに関する。
【0022】
配列番号8および9の2つの重鎖配列はそれぞれヒトのアイソタイプIgG1およびIgG4に対応する。
【0023】
したがって、本発明の第1の態様は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含む、キメラ抗体c203B6[IgG1]またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0024】
本発明の第2の態様は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含む、キメラ抗体c203B6[IgG4]またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0025】
別の好ましい態様では、本発明のキメラ抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号25もしくは37のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号25もしくは37の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する軽鎖および/または配列番号26、27、38、もしくは44のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号26、27、38、もしくは44のアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する重鎖を含むことを特徴とする。
【0026】
配列番号26および38の2つの重鎖配列はヒトのアイソタイプIgG1に対応し、配列番号27の重鎖はヒトのアイソタイプIgG4に対応し、配列番号44の重鎖配列はヒトのアイソタイプIgG2に対応する。
【0027】
したがって、本発明の第1の態様は、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含む、キメラ抗体c214B2[IgG1]またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0028】
本発明の第2の態様は、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含む、キメラ抗体c214B2[IgG4]またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0029】
本発明の第3の態様は、配列番号37のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含む、キメラ抗体c214B2[IgG1][TH7]またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0030】
本発明の第4の態様は、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号44のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含む、キメラ抗体c214B2[IgG2]またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0031】
本発明に係る抗体の「機能的フラグメント」とは、特に、Fv、scFv(scは「単鎖」を表す)、Fab、F(Ab’)2、Fab’、もしくはscFv−Fcフラグメント等の抗体フラグメント、または二重特異性抗体、または半減期が延長されているであろう任意のフラグメントを意味すると理解される。そのような機能的フラグメントは以下に詳細に説明される。
【0032】
本発明に係る抗体の「誘導体化合物(derivative compound)」とは、特に、ペプチドフレームワークすなわち「スキャフォールド」と、その認識能力を保存するために元の抗体のCDRの少なくとも1つと、を含む結合タンパク質を意味すると理解される。そのような誘導体化合物は当業者に周知であり、以下で更に詳細に説明される。
【0033】
より好ましくは、本発明は、遺伝子組換えまたは化学合成により得られる、特にキメラであるかヒト化された、本発明に係る抗体、その誘導体化合物、またはその機能的フラグメントを含む。
【0034】
好ましい態様によれば、本発明に係る抗体、またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つは、モノクローナル抗体からなることを特徴とする。
【0035】
「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体集団に由来する抗体と理解される。より具体的には、集団の個々の抗体は、自然に生じ得る最低限の量存在し得る少数の可能性のある変異体を除き、同一である。言い換えると、モノクローナル抗体は、ただ1つの細胞クローン(例えば、ハイブリドーマ;均質な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた真核宿主細胞、均質な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた原核宿主細胞等)の増殖により得られる均質な抗体からなり、通常、1種類の同じクラスおよびサブクラスの重鎖ならびに1種類だけの軽鎖により特徴付けられる。モノクローナル抗体は非常に特異性が高く、単一の抗原に対して作られている。更に、種々の決定基、すなわちエピトープに対して作られた種々の抗体を含むのが通例であるポリクローナル抗体標品とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原の単一のエピトープに対して作られている。
【0036】
本発明は天然型の抗体に関するものではなく、すなわち、それらは天然の環境から採取されたものではなく、天然源から出発して精製により単離または獲得することができたか、遺伝子組換えまたは化学合成により得ることができたものであり、したがって、後述するようにそれらは非天然アミノ酸を含有してもよいと理解されなければならない。
【0037】
IMGTの固有の番号付与システムは、抗原、鎖型、または種に関わらず可変ドメインを比較できるように定義されている[Lefranc M.-P., Immunology Today 18, 509 (1997);Lefranc M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999);Lefranc, M.-P., Pommie, C, Ruiz, M., Giudicelli, V., Foulquier, E., Truong, L., Thouvenin-Contet, V. and Lefranc, Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003)]。この番号付与システムにおいて、システイン23(1st−CYS)、トリプトファン41(CONSERVED TRP)、疎水性アミノ酸89、システイン104(2nd−CYS)、フェニルアラニンまたはトリプトファン118(J−PHEまたはTRP)等の保存されているアミノ酸は常に同じ位置を保持する。したがって、IMGTの固有の番号付与システムにより、スキャフォールド領域の標準化された境界が定められ(FR1−IMGT:1〜26位、FR2−IMGT:39〜55位、FR3−IMGT:66〜104位、およびFR4_IMGT:118〜128位)、また、相補性決定領域、すなわちCDRの標準化された境界が定められる(CDR1−IMGT:27〜38位、CDR2−IMGT:56〜65位、およびCDR3−IMGT:105〜117位)。「ホール(hole)」または「スペース(space)」は占有されていない位置を表すので、IMGTによるCDRの長さは非常に重要な情報になる。IMGTのシステムは、グラフィカルな2次元表示に用いられ(これはIMGTパールネックレスと呼ばれる)[Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., Immunogenetics, 53, 857-883 (2002);Kaas, Q. and Lefranc, M.-P., Current Bioinformatics, 2, 21-30 (2007)]、また、IMGT/3Dstructure−DBと呼ばれる3次元構造にも用いられる[Kaas, Q., Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., T cell receptor and MHC structural data. Nucl. Acids. Res., 32, D208-D210 (2004)]。
【0038】
本明細書において、抗体化合物またはその配列に関連する「ポリペプチド」、「ポリペプチド配列」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は相互に交換可能である。
【0039】
本発明は天然型の抗体に関するものではなく、すなわち、それらは天然の環境から採取されたものではなく、天然源から出発して精製により単離もしくは獲得され得たものまたは遺伝子組換えもしくは化学合成により得られ得たものであり、したがって、後述するようにそれらは非天然アミノ酸を含有してもよいと理解されなければならない。
【0040】
本発明において、2つの核酸またはアミノ酸配列の間の「同一性パーセンテージ」とは、最良のアラインメント(最適なアラインメント)後に得られる、比較されている2つの配列の間で同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージを意味し、このパーセンテージは完全に統計学的であり、2つの配列間の差はそれらの全長にわたってランダムに分布すると理解される。2つの核酸またはアミノ酸配列間の配列比較は通常、それらの配列を最適にアラインメントした後に比較することにより行われ、前記比較はセグメントごとに、すなわち「比較ウィンドウ」によって行うことができる。比較のための配列の最適なアラインメントは、手動で行う他に、Smith and Waterman (1981)[Ad. App. Math. 2:482]の局所的相同性アルゴリズムを用いるか、Neddleman and Wunsch (1970)[J. Mol. Biol. 48:443]の局所的相同性アルゴリズムを用いるか、Pearson and Lipman (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444]の類似性サーチ法を用いるか、それらのアルゴリズムを利用したコンピューターソフトウェア(ウィスコンシン州マディソン、サイエンスドライブ575のジェネティックス・コンピューター・グループ(Genetics Computer Group)のWisconsin Genetics Software Packageに含まれるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTAまたは比較ソフトウェアBLAST NもしくはBLAST P)を用いて行うことができる。
【0041】
2つの核酸またはアミノ酸配列間の同一性パーセンテージは、最適にアラインメントされた配列を比較することにより決定され、そらら2つの配列間での最適なアラインメントのために、比較対象の核酸またはアミノ酸配列は、参照配列に対して付加または欠失を含有してもよい。同一性パーセンテージは、2つの配列間でヌクレオチドまたはアミノ酸残基が同じである同一ポジションの数を決定し、この同一ポジションの数を比較ウィンドウ中の全ポジション数で割り、得られた結果に100を掛けて2配列間の同一性パーセンテージを得ることにより計算される。
【0042】
例えば、ウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlで利用可能なBLASTプログラム「BLAST2 sequences」(Tatusova et al., "Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences", FEMS Microbiol Lett. 174:247-250)を用いてよく、使用するパラメーターはデフォルトで与えられているものを使用し(特に、パラメーター「open gap penalty」は5、「extension gap penalty」は2;マトリックスの選択は、例えばプログラムが示唆する「BLOSUM 62」である)、比較される2つの配列間の同一性パーセンテージはプログラムによって直接算出される。
【0043】
参照アミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有するアミノ酸配列として、参照配列に対して特定の変化、特に少なくとも1つのアミノ酸の欠失、付加、もしくは置換、切断、または延長を有するアミノ酸配列が好ましい。1または複数の連続的または非連続的アミノ酸の置換の場合、置換されるアミノ酸が「同等な」アミノ酸で置換されている置換が好ましい。本発明において、「同等なアミノ酸」という表現は、以下の特に実施例中に記載するように、対応する抗体の生物学的活性を基本的に変化させずに、基本構造のアミノ酸の1つに取って代わることができる、任意のアミノ酸を意味する。
【0044】
これらの同等なアミノ酸は、置換されているアミノ酸との構造的相同性に基づいてまたは生成され得る種々の抗体間の生物学的活性比較試験の結果に基づいて決定することができる。
【0045】
非限定的な例として、以下の表1は、対応する改変抗体の生物学的活性を基本的に変化させることなく行うことができる置換の可能性を示し、当然のことながら、同じ条件下で逆の置換も可能である。
【0046】
【表1】
【0047】
前述の通り、本発明は、本発明に係る抗体に由来する任意の化合物にも同様に関する。
【0048】
より具体的には、本発明に係る抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つは、前記誘導体化合物が、元の抗体のパラトピックな認識特性が完全にまたは一部保存されるように少なくとも1つのCDRがグラフトされたペプチドスキャフォールドを含む結合タンパク質からなることを特徴とする。
【0049】
本発明に記載されているCDRの配列のうちの1または複数の配列は、免疫グロブリンの種々のタンパク質スキャフォールド上、すなわちフレームワーク上に提供することもできる。この場合、タンパク質配列は、グラフト化された1または複数のCDRのフォールディングに好ましいペプチド骨格を再創出することを可能とし、それにより、CDRのパラトピックな抗原認識特性を保存することが可能になる。
【0050】
一般的に、当業者であれば、元の抗体に由来するCDRの少なくとも1つをグラフトするタンパク質スキャフォールドの種類を決定する方法が分かるであろう。より具体的には、選択のために、そのようなスキャフォールドは以下に挙げる最大数の基準を満たさなければならないことが知られている(Skerra A., J. Mol. Recogn. 13, 2000, 167-187):
・系統発生的によく保存されていること;
・3次元構造が公知であること(例えば、結晶学、NMR分光法、または当業者に公知の任意の他の技術から);
・サイズが小さいこと;
・転写後修飾がほとんどまたは全くないこと;および/または
・産生、発現、および精製が用意であること。
【0051】
そのようなタンパク質スキャフォールドの起源は、限定されるものではないが、以下から選択される構造であり得る:フィブロネクチン、好ましくは3型フィブロネクチンの10番目のドメイン、リポカリン、アンチカリン(anticalin)(Skerra A., J. BiotechnoL, 2001, 74(4):257-75)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のプロテインAのドメインBに由来するプロテインZ、チオレドキシンA、および「アンキリンリピート」(Kohl et al, PNAS, 2003, vol. 100, No. 4, 1700-1705)、「アルマジロリピート」、「ロイシンリッチリピート」、または「テトラトリコペプチド」型の反復モチーフを有するタンパク質。
【0052】
また、例えば、以下のサソリ、昆虫、植物、軟体動物等に由来する毒素または神経型NO合成酵素のタンパク質阻害剤(PIN)に由来するスキャフォールドも挙げることができる。
【0053】
何ら限定されるものではないが、そのようなハイブリッド構造の例としては、PINのループの1つへの抗CD4抗体すなわち13B8.2のCDR−H1(重鎖)の挿入を挙げることができ、それにより得られる新規な結合タンパク質は元の抗体と同じ結合特性を保持している(Bes et al., BBRC 343, 2006, 334-344)。また、例として、ネオカルチノスタチンのループの1つへの抗リゾチームVHH抗体のCDR−H3(重鎖)のグラフト化も挙げることができる(Nicaise et al., 2004)。
【0054】
最後に、上述のように、このようなペプチドスキャフォールドは、元の抗体に由来する1〜6個のCDRを含み得る。必須ではないが、好ましくは、当業者は抗体の特異性を主に担うことが知られている重鎖に由来する少なくとも1つのCDRを選択する。目的のための公知の技術を用いた関連するCDRの選択は当業者には明らかである(Bes et al., FEBS letters 508, 2001 67-74)。
【0055】
明らかに、これらの例は何ら限定するものではなく、当業者に既知または自明の他の構造も本特許出願の保護の範囲内に含まれると見なされなければならない。
【0056】
よって、本発明は、a)系統発生的に良く保存されており、b)構造が強固であり、c)3次元分子組織が周知であり、d)サイズが小さく、且つ/またはe)安定性特性を変化させずに欠失および/または挿入により改変することができる領域を含むタンパク質から前記ペプチドスキャフォールドが選択されることを特徴とする、抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つに関する。
【0057】
好ましい態様では、本発明に係る抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つは、ペプチドスキャフォールドが以下のi〜iiiから選択されることを特徴とする:i)フィブロネクチン、好ましくは3型フィブロネクチンの10番目のドメイン、リポカリン、アンチカリン、黄色ブドウ球菌のプロテインAのドメインBに由来するプロテインZ、チオレドキシン、に由来するスキャフォールド、ii)「アンキリンリピート」、「アルマジロリピート」、「ロイシンリッチリピート」、または「テトラトリコペプチドリピート」型の反復モチーフを有するタンパク質、およびiii)神経型NO合成酵素のタンパク質阻害剤(PIN)。
【0058】
本発明の別の態様では、前述した抗体の機能的フラグメントについても同様の言及がなされる。
【0059】
より具体的には、本発明は、機能的フラグメントが、Fv、Fab、(Fab’)2、Fab’、scFv、およびscFv−Fcフラグメント、ならびに二重特異性抗体、ならびにペグ化フラグメントのような半減期が延長されているであろう任意のフラグメントから選択されることを特徴とする、抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つに関する。
【0060】
本発明に係る抗体のそのような機能的フラグメントは、例えばFv、scFv(scは単鎖を表す)、Fab、F(Ab’)2、Fab’、もしくはscFv−Fcフラグメント、または二重特異性抗体、あるいは化学修飾、例えばポリ(エチレン)グリコール等のポリ(アルキレン)グリコールの付加(「ペグ化」)(ペグ化フラグメントはFv−PEG、scFv−PEG、Fab−PEG、F(Ab’)2−PEG、またはFab’−PEGと呼ばれる)(「PEG」はPoly(Ethylene)Glycolの表記に由来)によりまたはリポソーム、マイクロスフェア、もしくはPLGA中に取り込ませることにより半減期が延長されているであろう任意のフラグメントからなり、前記フラグメントは、本発明に係る特徴的CDRの少なくとも1つを含み、特に、一般に、それが由来する抗体の活性を部分的であっても発揮することができる。
【0061】
好ましくは、前記機能的フラグメントは、それが由来する抗体の重鎖または軽鎖の可変部の部分的配列を含み、前記部分的配列は、それが由来する抗体と同じ結合特異性および十分な親和性、好ましくはそれが由来する抗体の少なくとも1/100、より好ましくは少なくとも1/10の親和性を保持するのに十分な長さである。
【0062】
そのような機能的フラグメントは、それが由来する抗体の配列からの、少なくとも5個の連続するアミノ酸、好ましくは10、15、25、50、または100個の連続するアミノ酸を含む。
【0063】
少なくとも以下を含む機能的フラグメントも好ましい:
・配列番号7に含まれる軽鎖の3つのCDRおよび配列番号7の配列からの112個の連続するアミノ酸、好ましくは115、125、175、200、または210個の連続するアミノ酸;および/または
・配列番号8または9に含まれる重鎖の3つのCDRおよび配列番号8または9の配列からの119個の連続するアミノ酸、好ましくは125、150、200、250、または300個の連続するアミノ酸。
【0064】
少なくとも以下を含む機能的フラグメントも好ましい:
・配列番号25または37に含まれる軽鎖の3つのCDRおよび配列番号25または37の配列からの108個の連続するアミノ酸、好ましくは115、125、175、200、または210個の連続するアミノ酸;および/または
・配列番号26、27、または38に含まれる重鎖の3つのCDRおよび配列番号26、27、または38の配列からの120個の連続するアミノ酸、好ましくは125、150、200、250、または300個の連続するアミノ酸。
【0065】
好ましくは、これらの機能的フラグメントは、一般にそれが得られた抗体と同じ結合特異性を有するFv、scFv、Fab、F(Ab’)2、F(Ab’)、scFv−Fc型のフラグメント、または二重特異性抗体である。本発明によれば、本発明の抗体のフラグメントは、前述した抗体から出発して、ペプシンもしくはパパイン等の酵素を用いた消化および/または化学的還元を用いたジスルフィドブリッジの切断等の方法により得ることができる。本発明に含まれる抗体フラグメントは、当業者に同様に周知である遺伝子組換え技術によって、あるいは例えばアプライドバイオシステムズ社等から供給されているような自動ペプチド合成機を用いたペプチド合成によっても得ることができる。
【0066】
別の特定の態様によれば、本発明は、マウスとは異なる種、特にヒトの抗体に由来する軽鎖および重鎖の定常領域を更に含むことを特徴とする、本発明に係るキメラ抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つに関する。
【0067】
本発明の別の態様によれば、ヒト化抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つは、ヒト抗体に由来する軽鎖および重鎖の定常領域がそれぞれラムダまたはカッパ領域およびガンマ−1、ガンマ−2、またはガンマ−4領域であることを特徴とする。
【0068】
別の態様によれば、本発明は、本発明に係るキメラモノクローナル抗体c203B6[IgG1]およびc203B6[IgG4]が由来する第1のマウスハイブリドーマ、特に2008年2月22日に番号I−3920でCentre National de Cultures de Microorganismes(CNCM)(フランス、パリのパスツール研究所)に寄託されたマウス起源のハイブリドーマに関する。前記ハイブリドーマは、免疫化したBalb/cマウス脾細胞およびSp 2O Ag 14ミエローマ細胞系の融合により得られた。
【0069】
最後に、別の態様によれば、本発明は、本発明に係るキメラモノクローナル抗体c214B2[IgG1]およびc214B2[IgG4]が由来する第2のマウスハイブリドーマ、特に2008年2月21日に番号I−3919でCentre National de Cultures de Microorganismes(CNCM)(フランス、パリのパスツール研究所)に寄託されたマウス起源のハイブリドーマに関する。前記ハイブリドーマは、免疫化したBalb/cマウス脾細胞およびSp 2O Ag 14ミエローマ細胞系の融合により得られた。
【0070】
以下の表2に、本発明に係る種々の抗体に対応する種々のアミノ酸配列を、参考のためにIMGTに従って定義されるCDR配列ならびにキメラ軽鎖および重鎖と共に要約する。
【0071】
【表2】
【0072】
本発明に係る抗体には、ヒト化抗体(Hzまたはhz)と言及される特別なキメラ型の抗体も含有される。
【0073】
ヒト化抗体とは、非ヒト起源の抗体に由来するCDR領域を含み且つ抗体分子の他の部分が1(または複数)のヒト抗体またはヒト生殖系列に由来する抗体を意味すると理解される。更に、(FRと呼ばれる)骨格のセグメントの残基の一部を、結合親和性を保存するために改変してもよい(Jones et al., Nature, 321:522-525, 1986;Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536, 1988;Riechmann et al., Nature, 332:323-327, 1988)。
【0074】
本発明に係るヒト化抗体またはそのフラグメントは、当業者に公知の技術(例えば、文献Singer et al., J. Immun. 150:2844-2857, 1992;Mountain et al, Biotechnol. Genet. Eng. Rev., 10:1-142, 1992;またはBebbington et al, Bio/Technology, 10:169-175, 1992に記載されている技術等)により作製することができる。本発明に係るそのようなヒト化抗体は、インビトロでの診断法またはインビボでの予防的および/もしくは治療的処置における使用に好ましい。他のヒト化技術、例えば、欧州特許第0451261号、同第0682040号、同第0939127号、同第0566647号、米国特許第5,530,101号、同第6,180,370号、同第5,585,089号、および同第5,693,761号の主題である、PDLに記載されている「CDRグラフト化(CDR Grafting)」の技術等も当業者に公知である。更に、米国特許第5,639,641号、同第6,054,297号、同第5,886,152号、および同第5,877,293号を挙げることができる。
【0075】
更に、本発明は前述のキメラ抗体に由来するヒト化抗体にも関する。
【0076】
好ましくは、ヒト抗体に由来する軽鎖および重鎖の定常領域は、それぞれ、ラムダまたはカッパ領域およびガンマ−1、ガンマ−2、またはガンマ−4領域である。
【0077】
より具体的には、以下の実施例に関してより明らかになるように、本出願人は、本発明に係る抗体のヒト化バリアントを複数作製した。
【0078】
別の好ましい態様では、本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号46、47、48、もしくは49のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号46、47、48、もしくは49の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する軽鎖可変ドメインおよび/または配列番号50、51、52、もしくは53のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号50、51、52、もしくは53の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する重鎖可変ドメインを含むことを特徴とする。
【0079】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号46のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖可変ドメインHz214B2VLVar1と、配列番号50のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1、配列番号51のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2、配列番号52のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3、および配列番号53のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4からなる群から選択される重鎖可変ドメインとを含むことを特徴とする。
【0080】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号47のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖可変ドメインHz214B2VLVar2と、配列番号50のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1、配列番号51のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2、配列番号52のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3、および配列番号53のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4からなる群から選択される重鎖可変ドメインとを含むことを特徴とする。
【0081】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号48のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖可変ドメインHz214B2VLVar3と、配列番号50のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1、配列番号51のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2、配列番号52のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3、および配列番号53のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4からなる群から選択される重鎖可変ドメインとを含むことを特徴とする。
【0082】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号49を含む配列を有する軽鎖可変ドメインHz214B2VLVar4と、配列番号50のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1、配列番号51のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2、配列番号52のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3、および配列番号53のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4からなる群から選択される重鎖可変ドメインとを含むことを特徴とする。
【0083】
本発明の第1の好ましい態様は、配列番号46のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン配列および配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar1VHVar1またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0084】
本発明の第2の好ましい態様は、配列番号47のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン配列および配列番号51のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar2VHVar2またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0085】
本発明の第3の好ましい態様は、配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン配列および配列番号52のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar3VHVar3またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0086】
本発明の第4の好ましい態様は、配列番号49のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン配列および配列番号53のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar4VHVar4またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0087】
別の態様では、本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号62、63、64、もしくは65のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号62、63、64、もしくは65の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する軽鎖ならびに/または配列番号66、67、68、69、70、71、72、もしくは73のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号66、67、68、69、70、71、72、もしくは73の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する重鎖を含むことを特徴とする。
【0088】
より具体的には、本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントはIgG1であり、また、配列番号62、63、64、もしくは65のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号62、63、64、もしくは65と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する軽鎖および/または配列番号66、67、68、もしくは69のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号66、67、68、もしくは69の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する重鎖を含むことを特徴とする。
【0089】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号62のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar1と、配列番号66のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G1)、配列番号67のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G1)、配列番号68のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G1)、および配列番号69のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G1)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0090】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号63のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar2と、配列番号66のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G1)、配列番号67のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G1)、配列番号68のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G1)、および配列番号69のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G1)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0091】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号64のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar3と、列番号66のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G1)、配列番号67のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G1)、配列番号68のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G1)、および配列番号69のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G1)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0092】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号65のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar4と、配列番号66のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G1)、配列番号67のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G1)、配列番号68のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G1)、および配列番号69のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G1)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0093】
本発明の第1の好ましい態様は、配列番号62のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号66のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar1VHVar1(G1)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0094】
本発明の第2の好ましい態様は、配列番号63のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号67のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar2VHVar2(G1)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0095】
本発明の第3の好ましい態様は、配列番号64のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号68のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar3VHVar3(G1)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0096】
本発明の第4の好ましい態様は、配列番号65のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号69のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar4VHVar4(G1)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0097】
本発明の第5の好ましい態様は、配列番号64のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号67のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar3VHVar2(G1)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0098】
本発明の第6の好ましい態様は、配列番号63のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号68のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar2VHVar3(G1)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0099】
より具体的には、本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントはIgG2であり、また、配列番号62、63、64、もしくは65のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号62、63、64、もしくは65の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する軽鎖および/または配列番号70、71、72、もしくは73のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号70、71、72、もしくは73の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する重鎖を含むことを特徴とする。
【0100】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号62のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar1と、配列番号70のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G2)、配列番号71のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G2)、配列番号72のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G2)、および配列番号73のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G2)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0101】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号63のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar2と、配列番号70のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G2)、配列番号71のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G2)、配列番号72のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G2)、および配列番号73のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G2)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0102】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号64のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar3と、配列番号70のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G2)、配列番号71のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G2)、配列番号72のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G2)、および配列番号73のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G2)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0103】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号65のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar4と、配列番号70のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G2)、配列番号71のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G2)、配列番号72のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G2)、および配列番号73のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G2)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0104】
本発明の第1の好ましい態様は、配列番号62のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号70のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar1VHVar1(G2)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0105】
本発明の第2の好ましい態様は、配列番号63のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号71のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar2VHVar2(G2)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0106】
本発明の第3の好ましい態様は、配列番号64のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号72のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar3VHVar3(G2)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0107】
本発明の第4の好ましい態様は、配列番号65のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号73のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar4VHVar4(G2)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0108】
本発明の第5の好ましい態様は、配列番号64のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号71のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar3VHVar2(G2)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0109】
本発明の第6の好ましい態様は、配列番号63のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号72のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar2VHVar3(G2)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0110】
以下の表3に、本発明に係る種々の抗体に対応する種々のアミノ酸配列を、参考のためにIMGTに従い定義されるCDR配列ならびに種々のヒト化軽鎖および重鎖と共に要約する。
【0111】
【表3】
【0112】
ヒンジ領域を安定化してより均質な抗体を発現させるために、Angal et al., 1993に記載されているようにIgG4由来抗体を更に改変してもよい(Ser226からProへの変化)。
【0113】
IgG1またはIgG2アイソタイプに対応する態様における抗体の更なる特徴は、ADCC(抗体依存性細胞傷害)および/またはCDC(補体依存性細胞傷害)等のエフェクター機能を有することである。
【0114】
免疫グロブリンの重鎖は、Fd領域、ヒンジ領域、およびFc領域(結晶化可能フラグメント)の3つの機能的領域に分けられる。Fd領域は、VHドメインおよびCH1ドメインを含み、軽鎖と共にFab、すなわち抗原結合性断片を形成する。Fcフラグメントは、免疫グロブリンのエフェクター機能を担い、エフェクター機能には、例えばエフェクター細胞の同族Fc受容体への補体の固定および結合が含まれる。ヒンジ領域は、IgG、IgA、およびIgDの免疫グロブリンクラスに見られ、Fc領域に対してFab部分が空間中で自由に動けるようにする柔軟なスペーサーとして働く。ヒンジドメインは構造的に多様であり、免疫グロブリンのクラスおよびサブクラス間で配列および長さのどちらも異なる。
【0115】
結晶学的研究によれば、免疫グロブリンのヒンジ領域は構造的および機能的に更に3つの領域、すなわち上側ヒンジ(upper hinge)、コア、および下側ヒンジ(lower hinge)に細分することができる(Shin et al., Immunological Reviews 130:87, 1992)。上側ヒンジはCH1のカルボキシル末端から動きを制限するヒンジ中の最初の残基まで、通常、2つの重鎖間で鎖間ジスルフィド結合を形成する最初のシステイン残基までのアミノ酸を含む。上側ヒンジ領域の長さは、抗体のセグメントの柔軟性に関連する。コアヒンジ領域は重鎖間ジスルフィドブリッジを含有する。下側ヒンジ領域は、CH2ドメインのアミノ末端をつなぎ、CH2ドメインの残基を含む。ヒトIgG1のコアヒンジ領域は、配列Cys−Pro−Pro−Cysを含有し、これはジスルフィド結合形成により二量体化した時に、軸として働くと考えられている環状オクタペプチドを生じ、柔軟性を付与する。免疫グロブリンのヒンジ領域ポリペプチド配列の構造および柔軟性により可能なコンホメーション変化は、抗体のFc部分のエフェクター機能に影響を与え得る。
【0116】
本発明の特定の態様によれば、本発明に係るキメラ抗体は、配列番号41のアミノ酸配列を含むヒンジ領域を含むことを特徴とする。
【0117】
より具体的には、キメラ抗体c214B2は、配列番号37のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および配列番号38のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む。
【0118】
更に、以下の実施例に示されるように、本発明に係る抗体は、腫瘍細胞の増殖を阻害できるという点で、これまで知られている抗体と異なる。
【0119】
前述したように、CD151タンパク質はテトラスパニンファミリーに属し、そのため、細胞外ループとも呼ばれる2個の細胞外ドメインEC1(18アミノ酸、配列[40〜57])およびEC2(109アミノ酸、配列[113〜221])を含有する。
【0120】
本発明によれば、使用される抗体は、細胞外ドメインに位置する少なくとも1つのエピトープに結合することができる。好ましくは、前記抗体は、自身をループEC1および/またはEC2に固定する。
【0121】
より具体的には、本発明の好ましい態様では、それぞれCD151タンパク質のアミノ酸40〜57および113〜221に対応する細胞外ループ1(EC1)および/または2(EC2)、好ましくはEC2、に含まれるエピトープに結合できる少なくとも1つの抗CD151抗体またはその機能的フラグメントの1つの使用が記載される。
【0122】
EC1ループ[40〜57]は18アミノ酸を含有し、理論重量は2002.2Daである。
【0123】
EC2ループ[113〜221]はN−グリコシル化部位(残基Asn159)および3個のジスルフィドブリッジを形成する6個のシステイン残基を有する。テトラスパニン、特にCD151のEC2ループの構造モデルがテトラスパニンCD81のEC2ループの3次元構造に基づいて提唱されている(Seigneuret et al., 2001, J. Biol. Chem. 276, 40055-40064)。そのモデルに基づくと、テトラスパニンは、3個のαヘリックスおよび特異的可変ドメインから構成される一般的な比較的保存されたスキャフォールドを有する。CD151では、このスキャフォールドは領域[113〜157]および[209〜221]で構成されると考えられ、可変ドメインは領域[158〜208]で構成されると考えられる。
【0124】
EC2ループの可変ドメインは特に、CD151とインテグリンファミリーのタンパク質との特異的相互作用に関与すると考えられる。定方向突然変異実験により、インテグリンα3β1またはα6β4等の特定のラミニン受容体インテグリンとのCD151の会合において、領域[193〜208]、より正確にはトリペプチドQRD[194〜196]および192位のシステイン残基の重要性が特に示された(Kazarov et al., 2002, J. Cell Biol. 158, 1299-1309)。
【0125】
更により好ましくは、本発明は、EC2領域のエピトープに結合できる少なくとも1つの抗CD151抗体またはその機能的フラグメントの1つの使用に関する。
【0126】
新規な態様では、本発明は、以下の核酸から選択されることを特徴とする単離された核酸に関する:
a)上記a)で定義された抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つをコードするDNAまたはRNA核酸;
b)上記で定義した核酸に相補的な核酸;
c)高ストリンジェンシー条件下で、配列番号16〜18、34〜36、39、40、45、54〜61、もしくは74〜85の核酸配列の少なくとも1つまたは最適なアラインメント後に前記配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する配列とハイブリダイズできる少なくとも18ヌクレオチドの核酸。
【0127】
以下の配列の群から選択される核酸配列の少なくとも1つと高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズできる少なくとも18ヌクレオチドの核酸がより好ましい:
・配列番号16の配列を起源とし、配列番号7の配列のフラグメントaa112〜218をコードする配列;
・配列番号17の配列を起源とし、配列番号8の配列のフラグメントaa119〜448をコードする配列;
・配列番号18の配列を起源とし、配列番号9の配列のフラグメントaa119〜445をコードする配列;
・配列番号34の配列を起源とし、配列番号25の配列のフラグメントaa108〜214をコードする配列;
・配列番号35の配列を起源とし、配列番号26の配列のフラグメントaa120〜449をコードする配列;および
・配列番号36の配列を起源とし、配列番号27の配列のフラグメントaa120〜446をコードする配列。
・配列番号39の配列を起源とし、配列番号37の配列のフラグメントaa108〜214をコードする配列;および
・配列番号40の配列を起源とし、配列番号38の配列のフラグメントaa120〜449をコードする配列。
・配列番号45の配列を起源とし、配列番号44の配列のフラグメントaa139〜463をコードする配列;
・配列番号74の配列を起源とし、配列番号62の配列のフラグメントaa108〜214をコードする配列;
・配列番号75の配列を起源とし、配列番号63の配列のフラグメントaa108〜214をコードする配列;
・配列番号76の配列を起源とし、配列番号64の配列のフラグメントaa108〜214をコードする配列;
・配列番号77の配列を起源とし、配列番号65の配列のフラグメントaa108〜214をコードする配列;
・配列番号78の配列を起源とし、配列番号66の配列のフラグメントaa120〜449をコードする配列;
・配列番号79の配列を起源とし、配列番号67の配列のフラグメントaa120〜449をコードする配列;
・配列番号80の配列を起源とし、配列番号68の配列のフラグメントaa120〜449をコードする配列;
・配列番号81の配列を起源とし、配列番号69の配列のフラグメントaa120〜449をコードする配列;
・配列番号82の配列を起源とし、配列番号70の配列のフラグメントaa120〜444をコードする配列;
・配列番号83の配列を起源とし、配列番号71の配列のフラグメントaa120〜444をコードする配列;
・配列番号84の配列を起源とし、配列番号72の配列のフラグメントaa120〜444をコードする配列;および
・配列番号85の配列を起源とし、配列番号73の配列のフラグメントaa120〜444をコードする配列。
【0128】
以下の表4に、本発明に係る抗体に関係する種々のヌクレオチド配列を、IMGTに従い定義されるCDR配列ならびにキメラ軽鎖および重鎖と共に要約する。
【0129】
【表4】
【0130】
以下の表5に、本発明に係る抗体に関係する種々のヌクレオチド配列を、IMGTに従い定義されるCDR配列ならびに種々のヒト化軽鎖および重鎖と共に要約する。
【0131】
【表5】
【0132】
核酸、核酸配列、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド配列、ヌクレオチド配列という用語は、本明細書において相互に交換可能に使用されており、非天然ヌクレオチドを含んでも含まなくてもよい核酸のフラグメントまたは領域を定義することを可能にする、修飾されていてもいなくてもよい、ヌクレオチドの正確な連結を意味し、これは二本鎖DNA、一本鎖DNA、および前記DNAの転写産物にも同様に対応し得ると理解される。
【0133】
また、本発明において、本発明は、天然の染色体環境にあるヌクレオチド配列、すなわち天然の状態にあるヌクレオチド配列に関するものではないと理解されなければならない。これらは、単離および/または精製された配列であり、すなわち、例えば複製することにより直接または間接的に抽出されており、そららの環境は少なくとも部分的に改変されている。また、本発明において、これらは、例えば宿主細胞を用いた遺伝子組換えにより得られるまたは化学合成により得られる単離された核酸を意味すると理解される。
【0134】
最適なアラインメント後に好ましい配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、または98%の同一性パーセンテージを有する核酸配列とは、参照配列に対して特定の改変、特に欠失、切断、延長、キメラ融合、および/または置換、特に点置換等を有する核酸配列を意味すると理解される。これらは、特に後述するように、好ましくは、遺伝暗号の縮重により参照配列と同じアミノ酸配列をコードする配列または好ましくは高ストリンジェンシー条件下で参照配列と特異的にハイブリダイズできる相補的配列である。
【0135】
高ストリンジェンシー条件下でのハイブリダイゼーションとは、DNAの2つの相補的フラグメント間でのハイブリダイゼーションを維持することができるように温度およびイオン強度の条件が選択されていることを意味する。例として、前述のポリヌクレオチドフラグメントを定義するためのハイブリダイゼーション工程の高ストリンジェンシー条件は、好ましくは以下の通りである。
【0136】
DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションは2段階で行われる:(1)5×SSC(1×SSCは、0.15M NaCl+0.015M クエン酸ナトリウムの溶液に相当)、50%ホルムアミド、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10×デンハルト液、5%硫酸デキストラン、および1%サケ精子DNAを含有するリン酸バッファー(20mM、pH7.5)中での42℃、3時間のプレハイブリダイゼーション;(2)プローブのサイズに応じた温度(すなわち、100ヌクレオチドより大きいサイズのプローブでは42℃)で20時間の適切なハイブリダイゼーション、次いで、2×SSC+2%SDS中で20℃、20分間の洗浄を2回、0.1×SSC+0.1%SDS中で20℃、20分間の洗浄を1回。最後の洗浄は、100ヌクレオチドを超えるサイズのプローブでは0.1×SSC+0.1%SDS中で60℃にて30分間行う。当業者は、上記の規定のサイズのポリヌクレオチドのための高ストリンジェンシー条件を、Sambrook et al., (1989, Molecular cloning: a laboratory manual. 2nd Ed. Cold Spring Harbor)の教示に従い、より大きいまたは小さいサイズのオリゴヌクレオチド用に適合させることができる。
【0137】
本発明は更に、本発明に係る核酸を含むベクターに関する。
【0138】
本発明は、特に、本発明に係るヌクレオチド配列を含有するクローニングおよび/または発現ベクターに関する。
【0139】
本発明に係るベクターは、好ましくは、特定の宿主細胞中でのヌクレオチド配列の発現および/または分泌を可能にするエレメントを含む。次いで、ベクターは、プロモーター、翻訳の開始および終結シグナル、ならびに適切な転写調節領域を含まなければならない。ベクターは、宿主細胞中に安定に維持することができなければならず、必要に応じて、翻訳されたタンパク質を分泌させる特定のシグナルを有してもよい。これらの種々のエレメントは、使用される細胞宿主に応じて当業者により選択および最適化される。そのために、本発明に係るヌクレオチド配列は、選択された宿主内の自己複製ベクター中に挿入してもよく、選択された宿主に組み込まれるベクターであってもよい。
【0140】
そのようなベクターは、当業者が通常用いる方法により調製され、得られたクローンは、リポフェクション、エレクトロポレーション、ヒートショック、または化学的方法等の標準的な方法により好適な宿主中に導入することができる。
【0141】
本発明に係るベクターは、例えば、プラスミドまたはウイルス起源のベクターである。これらは、本発明に係るヌクレオチド配列をクローニングまたは発現するための宿主細胞の形質転換に有用である。
【0142】
本発明はまた、本発明に係るベクターにより形質転換されたまたは本発明に係るベクターを含有する宿主細胞を含む。
【0143】
細胞宿主は、原核系から選択してもよく、真核系から選択されてもよく、例えば細菌細胞、酵母細胞、または動物細胞、特に哺乳動物細胞から選択されてよい。昆虫細胞または植物細胞を使用してもよい。
【0144】
本発明は更に、本発明に係る形質転換細胞を含む、ヒト以外の動物に関する。
【0145】
別の態様によれば、本発明は、以下の工程を含むことを特徴とする、本発明に係る抗体またはその機能的フラグメントの1つを産生する方法に関する:
a)好適な培養培地中および好適な培養条件下での本発明に係る宿主細胞の培養;および
b)前記培養培地または前記培養細胞からその結果産生された前記抗体またはその機能的フラグメントの回収。
【0146】
本発明に係る形質転換細胞は、本発明に係る組換えポリペプチドの調製方法にも使用することができる。本発明に係るベクターおよび/またはベクターで形質転換された細胞を用いることを特徴とする、組換え型の本発明に係るポリペプチドの調製方法自体も本発明に含まれる。好ましくは、本発明に係るベクターで形質転換された細胞を前記ポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養し、前記組換えペプチドを回収する。
【0147】
既に述べたように、細胞宿主は原核系から選択されてもよく、真核系から選択されてもよい。特に、そのような原核系または真核系における分泌を容易にする本発明に係るヌクレオチド配列を同定することが可能である。したがって、そのような配列を有する本発明に係るベクターは、分泌されることを意図した組換えタンパク質の産生に有利に使用することができる。実際、これらの目的の組換えタンパク質の精製は、これらが宿主細胞の内部ではなく細胞培養液の上清に存在することにより、容易になる。
【0148】
本発明に係るポリペプチドを化学合成により調製することも可能である。そのような調製方法も本発明に主題に含まれる。当業者には、化学合成の方法、例えば固相を用いた技術(特にSteward et al., 1984, Solid phase peptides synthesis, Pierce Chem. Company, Rockford, 111, 2nd Ed., (1984)参照)、部分的固相を用いた技術、フラグメントの縮合を用いた技術、または従来の溶液中での合成を用いた技術は公知である。対応する非天然アミノ酸を含有していてもよい化学合成で得られたポリペプチドも本発明に含まれる。
【0149】
本発明に係る方法により得ることができる抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントも本発明に含まれる。
【0150】
更に別の態様では、本発明は、更に二重特異性である、すなわち、CD151以外のヒトタンパク質またはヒト受容体に特異的に結合できることを特徴とする上記の抗体に関する。
【0151】
二重特異性、または二機能性の抗体は、同じ分子中で2つの異なる可変領域が組み合わされた第2世代のモノクローナル抗体を構成する(Hollinger and Bohlen, 1999, Cancer and metastasis rev. 18: 411-419)。その有用性は、新規なエフェクター機能をリクルートする能力または腫瘍細胞表面上の複数の分子を標的にする能力により、診断分野および治療分野の両方で実証されている。これらの抗体は、化学的方法(Glennie MJ et al. 1987 J. Immunol. 139, 2367-2375;Repp R. et al. 1995 J. Hemat. 377-382)または体細胞的方法(Staerz U.D. and Bevan M.J. 1986 PNAS 83, 1453-1457;Suresh M.R. et al. 1986 Method Enzymol. 121: 210-228)により得ることができ、更に、好ましくは,、ヘテロ二量体を形成させることで求める抗体の精製方法を容易化することができる遺伝子工学技術(Merchand et al. 1998 Nature Biotech. 16: 677-681)によっても得ることができる。
【0152】
これらの二重特異性抗体は、IgG全体として、二重特異性Fab’2として、Fab’PEGとして、または二重特異性抗体もしくは二重特異性scFvとして構築することができ、更に、標的の抗原それぞれに対して2つの固定部位が存在する四価の二重特異性抗体(Park et al. 2000 Mol. Imnmunol. 37(18): 1123-30)または前述のようにそのフラグメントとしても構築することができる。
【0153】
二重特異性抗体の産生および投与が2種類の特異的抗体の産生ほど面倒でないことによる経済的利点に加え、そのような二重特異性抗体の使用は、処置の毒性が低減されるという利点がある。二重特異性抗体を使用することで、実際、循環する抗体の全体量を低減することができ、その結果、潜在的な毒性を低減することができる。
【0154】
本発明の好ましい態様では、二重特異性抗体は二価または四価の抗体である。
【0155】
最後に、本発明は、医薬としての上記の抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
【0156】
本発明は更に、本発明に係る抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つからなる化合物を活性成分として含む医薬組成物に関する。好ましくは、前記抗体に、補形剤および/または薬学的に許容されるキャリアが添加される。
【0157】
更に別の態様によれば、本発明は更に、同時使用、個別使用、または時間差使用のための組合せ製品(combination product)として、少なくとも1つの他の抗体、細胞毒性(cytotoxic)/細胞増殖抑制(cytostatic)剤、細胞毒、または放射性元素を更に含む、上記医薬組成物に関する。
【0158】
「同時使用」とは、同じ1つの製剤に含有される本発明に係る組成物の2つの化合物の投与と理解される。
【0159】
「個別使用」とは、別個の製剤に含有される本発明に係る組成物の2つの化合物の同時投与として理解される。
【0160】
「時間差使用(time−staggered use)」とは、それぞれが別個の製剤に含有される本発明に係る組成物の2つの化合物の逐次投与として理解される。
【0161】
一般的に、本発明に係る組成物は、癌の処置の有効性をかなり増加させる。言い換えると、本発明に係る抗体の治療効果は、細胞毒性薬剤の投与により予想外に増強される。本発明に係る組成物によりその結果得られるもう1つの主な利点は、使用する活性成分の有効量がより少なくなることに関連し、これにより、副次的影響、特に細胞毒性薬剤の影響が現れるリスクを回避または低減することができる。更に、本発明に係るこの組成物は、予期される治療効果をより迅速に達成することを可能にするはずである。
【0162】
「抗癌治療薬剤」または「細胞毒性薬剤」は、患者に投与された時に、患者における癌の発症を処置または防止する物質として理解されるべきである。そのような薬剤の非限定的な例として、「アルキル化」剤、代謝拮抗薬、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害剤、クロマチン機能阻害剤、血管形成阻害剤、抗エストロゲン薬、抗アンドロゲン薬、または免疫調節剤を挙げることができる。
【0163】
そのような薬剤は、例えば、VIDALの腫瘍学および血液学に関する頁の「細胞毒性薬剤」の欄に記載されており、この文献に参照として記載されているそのような細胞毒性化合物が本発明において好ましい細胞毒性薬剤として挙げられる。
【0164】
「アルキル化剤」とは、細胞内の任意の分子(好ましくは核酸(例えばDNA))に共有結合するかこれをアルキル化できる任意の物質を意味する。そのようなアルキル化剤の例として、ナイトロジェンマスタード、例えばメクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン塩酸塩、ピポブロマン、プレドニムスチン第二リン酸ナトリウム(prednimustine disodium phosphate)、またはエストラムスチン;オキサゾホリン(oxazophorine)、例えばシクロホスファミド、アルトレタミン、トロホスファミド、スルホスファミド、またはイホスファミド;アジリジンまたはエチレン−イミン、例えばチオテパ、トリエチレンアミン、またはアルテトラミン(altetramine);ニトロソウレア、例えばカルムスチン、ストレプトゾシン、フォテムスチン、またはロムスチン;アルキルスルホン酸塩、例えばブスルファン、トレオスルファン、またはインプロスルファン;トリアゼン、例えばダカルバジン;および白金複合体、例えばシスプラチン、オキサリプラチン、またはカルボプラチンを挙げることができる。
【0165】
「代謝拮抗薬」とは、特定の活性、一般的にはDNA合成、を妨げることで細胞成長および/または細胞代謝をブロックする物質を意味する。代謝拮抗薬の例としては、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、5−フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、シトシンアラビノシド、6−メルカプトプリン(6−MP)、6−チオグアニン(6−TG)、クロロデオキシアデノシン、5−アザシチジン、ゲムシタビン、クラドリビン、デオキシコホルマイシン、およびペントスタチンを挙げることができる。
【0166】
「抗腫瘍抗生物質」とは、DNA、RNA、および/またはタンパク質の合成を防止または阻害できる化合物を意味する。そのような抗腫瘍抗生物質の例としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ダクチノマイシン、ミトラマイシン、プリカマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、およびプロカルバジンが含まれる。
【0167】
「有糸分裂阻害剤」は細胞周期および有糸分裂の正常な進行を防止する。一般的に、微小管阻害剤または「タキソイド」、例えばパクリタキセルおよびドセタキセルは、有糸分裂を阻害することができる。ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン等のビンカアルカロイドも有糸分裂を阻害することができる。
【0168】
「クロマチン機能阻害剤」または「トポイソメラーゼ阻害剤」とは、トポイソメラーゼI、II等のクロマチン再構築タンパク質の正常な機能を阻害する物質を意味する。そのような阻害剤の例としては、トポイソメラーゼIに対してはカンプトテシン、更にその誘導体、例えばイリノテカンまたはトポテカン、トポイソメラーゼIIに対してはエトポシド、リン酸エチポシド、およびテニポシドが含まれる。
【0169】
「血管新生阻害剤」とは、血管の成長を阻害する任意の薬物、化合物、物質、または薬剤を意味する。血管新生阻害剤の例としては、限定されるものではないが、ラゾキシン、マリマスタット、バチマスタット、プリノマスタット、タノマスタット、イロマスタット、CGS−27023A、ハロフジノン、COL−3、ネオバスタット、BMS−275291、サリドマイド、CDC 501、DMXAA、L−651582、スクアラミン、エンドスタチン、SU5416、SU6668、インターフェロン−アルファ、EMD121974、インターロイキン−12、IM862、アンジオスタチン、およびビタキシン(vitaxin)が含まれる。
【0170】
「抗エストロゲン薬」または「抗エストロゲン剤」とは、エストロゲンの作用を低減、拮抗、または阻害する任意の物質を意味する。そのような薬剤の例としては、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、イオドキシフェン、アナストロゾール、レトロゾール、およびエキセメスタンが挙げられる。
【0171】
「抗アンドロゲン薬」または「抗アンドロゲン剤」とは、アンドロゲンの作用を低減、拮抗、または阻害する任意の物質を意味する。抗アンドロゲン薬の例としては、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、スピロノラクトン、酢酸シプロテロン、フィナステリド、およびシミチジンが挙げられる。
【0172】
免疫調節物質とは免疫系を刺激する物質である。そのような免疫調節物質の例としては、インターフェロン、インターロイキン、例えばアルデスロイキン、OCT−43、デニロイキンジフリトクス、またはインターロイキン−2;腫瘍壊死因子、例えばタソネルミン;またはその他の種類の免疫調節物質、例えばレンチナン、シゾフィラン、ロキニメックス、ピドチモド、ペガデマーゼ、チモペンチン、ポリI:C、もしくはレバミソールと5−フルオロウラシルの組合せが含まれる。
【0173】
更なる詳細について、当業者はFrench Association of Teachers of Therapeutic Chemistryから刊行された"Traite de chimie therapeutique, Vol. 6, Medicaments antitumoraux et perspectives dans le traitement des cancers, ed. TEC & DOC, 2003"というタイトルのマニュアルを参照することができる。
【0174】
特に好ましい態様では、本発明に係る組合せ製品の形態の前記組成物は、前記細胞毒性薬剤が同時使用のために前記抗体に化学的に結合していることを特徴とする。
【0175】
特に好ましい態様では、本発明に係る前記組成物は、前記細胞毒性/細胞増殖抑制剤が、紡錘体の阻害剤または安定化剤、好ましくはビノレルビンおよび/またはビンフルニンおよび/またはビンクリスチンから選択されることを特徴とする。
【0176】
前記細胞毒性薬剤と本発明に係る前記抗体の間の結合を容易化するために、特に、例えばポリエチレングリコール等のポリ(アルキレン)グリコール、更にはアミノ酸等のスペーサー分子を、結合させる2つの化合物の間に導入することができ、あるいは別の態様では、本発明に係る前記抗体と反応できる機能が導入された前記細胞毒性薬剤の活性誘導体を使用することができる。これらの結合技術は当業者に周知であり、本明細書で詳細に説明しない。
【0177】
別の態様によれば、本発明は、前記抗体の少なくとも1つまたはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つが細胞毒および/または放射性元素にコンジュゲートしていることを特徴とする組成物に関する。
【0178】
好ましくは、前記毒素または前記放射性元素は、腫瘍細胞の成長または増殖を防止することができ、特に前記腫瘍細胞を完全に不活性化することができる。
【0179】
更に好ましくは、前記毒素は、腸内細菌毒素、特にシュードモナス属の外毒素Aである。
【0180】
好ましくは抗体とコンジュゲートしている、治療法に使用される放射性元素(すなわち放射性同位元素)は、ガンマ線を発する放射性同位元素、好ましくはヨウ素131、イットリウム90、金199、パラジウム100、銅67、ビスマス217、アンチモン211である。ベータ線およびアルファ線を発する放射性同位元素も治療法に用いることができる。
【0181】
本発明に係る少なくとも1つの抗体またはその機能的フラグメントとコンジュゲートしている毒素または放射性元素とは、特に2つの化合物の間の共有結合により(連結分子を導入してもよい)、前記少なくとも1つの抗体に前記毒素または前記放射性元素を結合させることができる任意の手段を意味すると理解される。
【0182】
コンジュゲートの要素の全部または一部の化学的(共有)結合、静電的結合、または非共有結合を可能にする薬剤のうち、特に、ベンゾキノン、カルボジイミド、より具体的にはEDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]−カルボジイミドヒドロクロリド)、ジマレイミド、ジチオビス−ニトロ−安息香酸(DTNB)、N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセタート(SATA)、紫外線(UV)と反応する1または複数のフェニルアジド基と共に1または複数の基を有する「架橋(bridging)」剤と呼ばれる薬剤、特に好ましくはN−[−4−(アジドサリチルアミノ)ブチル]−3’(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド(APDP)、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、および6−ヒドラジノ−ニコチンアミド(HYNIC)を挙げることができる。
【0183】
特に放射性元素のための、別の形態の結合は、二官能性イオンキレート剤の使用からなり得る。
【0184】
それらのキレーターの中でも、金属、特に放射性金属と免疫グロブリンを結合させるために開発されたEDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)に由来するキレーターを挙げることができる。したがって、リガンド−金属錯体の安定性および剛性を増大させるように炭素鎖上の種々な基をDTPAおよびその誘導体で置換することができる(Krejcarek et al. (1977); Brechbiel et al. (1991); Gansow (1991);米国特許第4,831,175号)。
【0185】
例えば、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)およびその誘導体は、遊離形態または金属イオンとの錯体の形態のいずれかで医学および生物学において長い間非常に幅広く使用されてきており、金属イオンと安定なキレートを形成し、癌療法における放射性免疫複合体の開発のための抗体等の治療上または診断上関心のあるタンパク質に結合するという顕著な特徴を有する(Meases et al., (1984);Gansow et al. (1990))。
【0186】
また、本発明に係る前記コンジュゲートを形成する前記少なくとも1つの抗体は、その機能的フラグメント、特にscFvフラグメント等のFc構成要素を欠くフラグメントから選択されることが好ましい。
【0187】
本発明は、癌の防止もしくは処置のためまたは癌の防止もしくは処置に使用するための、好ましくは癌の処置のための、本発明に係る抗体または組成物を更に含む。
【0188】
同様に、本発明は、癌の防止または処置を意図した医薬の製造における本発明に係る抗体または組成物の使用を含む。
【0189】
本発明はまた、腫瘍細胞の増殖を阻害することを目的とする医薬の製造におけるまたはそのような医薬としての、好ましくはヒト化された、本発明に係る抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つおよび/または組成物の使用に関する。一般的に、本発明は、癌を防止または処置することを意図した医薬の製造における、好ましくはヒト化された、本発明に係る抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つおよび/または組成物の使用に関する。
【0190】
防止および/または処置され得る癌の中でも、前立腺癌、骨肉腫肺癌、乳癌、子宮内膜癌、結腸癌、多発性骨髄腫または卵巣癌、膵臓癌、または任意のその他の癌が好ましい。
【0191】
好ましくは、前記癌は、前立腺癌、肺癌、結腸癌、乳癌、および/または膵臓癌から選択される癌である。
【0192】
更に別の態様では、本発明は、CD151の発現レベルに関連する疾患の診断方法における好ましくはインビトロでの本発明に係る抗体の使用に関する。より具体的には、本発明は、CD151タンパク質の異常な存在が疑われる生体サンプルから開始する、CD151タンパク質が過剰発現または低発現する疾患のインビトロでの診断方法に関し、前記方法は、前記生体サンプルを本発明に係る抗体に接触させることからなり、前記抗体は適宜標識することができる。
【0193】
好ましくは、前記診断方法におけるCD151タンパク質に関連する前記疾患は癌である。
【0194】
前記抗体またはその機能的フラグメントの1つは、検出可能および/または定量可能なシグナルを得るために標識された免疫複合体または抗体の形態であり得る。
【0195】
本発明に係る標識された抗体またはその機能的フラグメントとしては、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、α−Dガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースアミラーゼ、カルボニックアンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、リンゴ酸脱水素酵素、もしくはグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ等の酵素とまたはビオチン、ジゴキシゲニン、もしくは5−ブロモ−デオキシウリジン等の分子などがコンジュゲートされたものであり得る免疫複合体として言及される抗体が含まれる。本発明に係る抗体またはその機能的フラグメントに蛍光標識がコンジュゲートされてもよく、蛍光標識としては、特に、フルオレセインおよびその誘導体、蛍光色素、ローダミンおよびその誘導体、GFP(緑色蛍光タンパク質)、ダンシル、ウンベリフェロンが含まれる。そのようなコンジュゲートにおいて、本発明の抗体またはその機能的フラグメントは当業者に公知の方法で調製され得る。これらは、酵素または蛍光標識に直接結合してもよく、スペーサー基または連結基、例えばグルタルアルデヒド等のポリアルデヒド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、またはジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)を介して、または治療用コンジュゲートについて上記で述べたような結合剤の存在下で結合してもよい。フルオレセイン型の標識を含むコンジュゲートは、イソチオシアナートとの反応により調製することができる。
【0196】
更に、他のコンジュゲートは、ルミノール、ジオキセタン等の化学発光標識、ルシフェラーゼ、ルシフェリン等の生物発光標識、またはヨウ素123、ヨウ素125、ヨウ素126、ヨウ素133、臭素77、テクネチウム99m、インジウム111、インジウム113m、ガリウム67、ガリウム68、ルテニウム95、ルテニウム97、ルテニウム103、ルテニウム105、水銀107、水銀203、レニウム99m、レニウム101、レニウム105、スカンジウム47、テルル121m、テルル122m、テルル125m、ツリウム165、ツリウム167、ツリウム168、フッ素18、イットリウム199、ヨウ素131等の放射性標識も含み得る。放射性同位元素を抗体に前述したEDTAまたはDTPA等のキレート剤を介してまたは直接的に結合させるための既存の当業者に公知の方法を診断において放射性元素に用いることができる。したがって、クロラミンT技術による[I125]Naを用いた標識[Hunter W.M. and Greenwood F.C. (1962) Nature 194:495]またはCrockford et al.(米国特許第4424200号)の技術によるテクネチウム99mを用いた標識、またはHnatowich(米国特許第4479930号)に記載されているようにDTPAを介して固定された標識も挙げることができる。
【0197】
本発明はまた、CD151タンパク質を発現または過剰発現している細胞に生物学的活性化合物を特異的に標的化することを意図した医薬の製造における本発明に係る抗体の使用に関する。
【0198】
本発明において、生物学的活性化合物とは、細胞の活性、特にその成長、増殖、または遺伝子の転写もしくは翻訳を変化させることができる、特に阻害することができる、任意の化合物を意味すると理解される。
【0199】
本発明は更に、好ましくは標識された、特に放射標識された、本発明に係る抗体またはその機能的フラグメントの1つを含むインビボ診断試薬および医学的イメージング、特に細胞によるCD151タンパク質の発現または過剰発現に関連する癌の検出におけるその使用に関する。
【0200】
本発明は更に、医薬としての、本発明に係る、組合せ生成物の形態の組成物または抗CD151と毒素もしくは放射性元素とのコンジュゲートに関する。
【0201】
好ましくは、本発明に係る組合せ生成物の形態の前記組成物または前記コンジュゲートに、補形剤および/または薬学的に許容されるキャリアが添加される。
【0202】
本明細書中、薬学的に許容されるキャリアとは、副次的反応を生じさせずに、例えば活性化合物の投与を容易にするか、体内でのその寿命または有効性を増大させるか、溶液中へのその溶解性を増大させるか、その保存を改善することを可能にすることができる、医薬組成物に含まれる化合物または化合物の組合せを意味すると理解される。そのような薬学的に許容されるキャリアは周知であり、選択される活性化合物の投与の性質および形態に応じて当業者が適合させる。
【0203】
好ましくは、それらの化合物は、全身経路、特に静脈内経路、筋肉内、皮内、腹腔内、もしくは皮下経路、または経口経路で投与される。より好ましくは、本発明に係る抗体を含む組成物は、時間をずらして複数回に分けて投与される。
【0204】
これらの最適な投与形態、投与レジメン、および生薬形態は、患者に適した処置を確定する際に一般的に考慮される基準、例えば患者の年齢または体重、彼または彼女の全身状態の重篤度、処置の忍容性、および確かめられている副次的効果に従って決定することができる。
【0205】
したがって、本発明は、CD151を発現または過剰発現する細胞に生物学的活性化合物を特異的に標的化することを意図した医薬の製造における抗体またはその機能的フラグメントの1つの使用に関する。
【0206】
本発明のその他の特徴および利点は本明細書の以下の説明および実施例ならびに図面から明らかになるであろう。図面の説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】CD151タンパク質のヌクレオチド配列およびタンパク質配列(それぞれ配列番号37および配列番号38)を示す図である。配列上にEC1およびEC2ループを示す。
【図2】CD151タンパク質が属するテトラスパニンの構造、より具体的には2個の細胞外ループEC1およびEC2を示す図である。
【図3】A〜Eは、前立腺癌患者におけるCD151分子の発現を示す図である。各文字が患者1名の研究に対応し、各患者について、上のパネルが腫瘍に隣接する正常組織に対応し、下のパネルが腫瘍組織に対応する。
【図4】A〜Cは、肺癌患者におけるCD151分子の発現を示す図である。各文字が患者1名の研究に対応し、各患者について、上のパネルが腫瘍に隣接する正常組織に対応し、下のパネルが腫瘍組織に対応する。
【図5】A〜Dは、NIH 3T3−CD151細胞、PC3細胞、およびA549細胞の表面上でのマウス抗体203B6によるCD151の認識のフローサイトメトリーによる分析を示す図である。
【図6】A〜Dは、NIH 3T3−CD151細胞、PC3細胞、およびA549細胞の表面上でのマウス抗体214B2によるCD151の認識のフローサイトメトリーによる分析示す図である。
【図7】重鎖および軽鎖について、マウス214B2のV領域およびJ領域と最も近いマウス生殖系列とのアラインメントを示す図である。
【図8】214B2軽鎖のヒト化と種々の優先順位(Priority Ranking)を示す図である。番号1は高優先度(標的認識、CDRの提示、および全体的3次元構造に対する影響が大きいと推定される);番号2は中優先度;番号3は低優先度(標的認識、CDRの提示、および全体的3次元構造に対する影響が小さいと推定される)。
【図9】214B2重鎖のヒト化と種々の優先順位を示す図である。番号1は高優先度(標的認識、CDRの提示、および全体的3次元構造に対する影響が大きいと推定される);番号2は中優先度;番号3は低優先度(標的認識、CDRの提示、および全体的3次元構造に対する影響が小さいと推定される)。
【図10】キメラ抗体c203B6[IgG1]およびc214B2[IgG1]のウェスタンブロットによる特異性実験を示す図である。
【図11A】図11AおよびBは、マウスMab203B6および214B2のキメラ型c203B6[IgG1](A)およびc214B2[IgG1](B)による、組換えEC2への結合の阻害を示す図である。
【図11B】図11Aおよび11Bは、マウスMab203B6および214B2のキメラ型c203B6[IgG1](A)およびc214B2[IgG1](B)による、組換えEC2への結合の阻害を示す図である。
【図12A】図12Aおよび12Bは、A:c214B2[IgG1]およびB:c203B6[IgG1]を用いた、PC3へのキメラ抗体の結合を示す図である。
【図12B】図12Aおよび12Bは、A:c214B2[IgG1]およびB:c203B6[IgG1]を用いた、PC3へのキメラ抗体の結合を示す図である。
【図13】アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞系であるPC3の腫瘍成長に対するc214B2[IgG1]Mabのインビボ活性を示す図である。
【図14】PC3細胞接着に対する種々の型のMab214B2の影響を顕微鏡分析した図である。
【図15A】図15Aおよび15Bは、PC3細胞接着に対する種々の型のMab214B2の影響をATPアッセイを用いて分析した図である。各ウェル中で、0〜200000細胞/ウェルのPC3の標準曲線を用いて接着細胞の数を求めた。結果は以下のように示されている:非処理細胞を基準(100%)とし、処理細胞を基準に対する%で表す。
【図15B】図15Aおよび15Bは、PC3細胞接着に対する種々の型のMab214B2の影響をATPアッセイを用いて分析した図である。各ウェル中で、0〜200000細胞/ウェルのPC3の標準曲線を用いて接着細胞の数を求めた。結果は以下のように示されている:非処理細胞を基準(100%)とし、処理細胞を基準に対する%で表す。
【図16】214B2重鎖可変ドメインとヒト生殖系列hIGHV1−2*02およびIGHJ6*01のアミノ酸配列アラインメントを示す図である。214B2VHアミノ酸配列を、選択されたヒトアクセプターフレームワーク配列とアラインメントさせ、214B2とヒト生殖系列の間で異なる各残基に優先順位を付けた。1が最も高い優先度を示し、4が最も低い優先度を示す優先順位に従って、残基を逆突然変異させる。Var1〜Var4の配列は、構築された214B2 VHドメインのヒト化バリアントに相当し、逆突然変異させた残基が太字で示されている。バリアント1(Var1)は逆突然変異がなく、最もヒトに近いバリアントを表す。
【図17】214B2軽鎖とヒト生殖系列IGKV1D−39*01およびIGKJ2*01のアミノ酸配列アラインメントを示す図である。214B2 VLアミノ酸配列を、選択されたヒトアクセプターフレームワーク配列とアラインメントさせた。VL Var1〜Varの3配列は、構築された214B2 VLドメインのヒト化バリアントに相当し、逆突然変異させた残基が太字で示されている。バリアント1(Var1)は逆突然変異がなく、最もヒトに近いバリアントを表す。バリアント2は13個の逆変異を有し、最もマウスに近いバリアントである。バリアント3は5個の逆変異を有する。
【図18】キメラ241B2とヒト化214B2の種々のバリアントとによるマウス抗体m24B2の交差ブロッキングを示す図である。214B2のヒト化バリアント(hz214B2)が元の抗体m214B2を交差ブロックする活性を、ヒト抗原CD151の組換え細胞外ループ2(EC2)を用いたELISAにより評価した。ヒト化バリアントの活性をキメラ214B2と比較した。VHバリアント2および3の全組合せで、キメラ抗体と同様な強い活性が示された。
【図19】ビオチン化抗体m24B2の交差ブロックによるヒト化抗体hz214B2のフローサイトメトリー分析を示す図である。EC2のELISAにおいて元の抗体を交差ブロックした214B2のヒト化バリアントをフローサイトメトリーで更に評価した。ビオチン化抗体m214B2を用いてPC3細胞上のヒトCD151を検出した。この結合は、種々の濃度の214B2のヒト化バリアントでブロックされた。キメラ214B2抗体を基準として用いた。ヒト化バリアント3および4(Hz214B2VHVar3VLVar3およびHz214B2VHVar4VLVar4)が最も強い交差ブロック活性を示した(B)。
【図20】抗体c214B2(G1)、c214B2(G2)、Hz214B2VHVar3VLVar3(G1)、およびHz214B2VHVar4VLVar4(G1)の親和性のBIACore分析を示す図である。A、抗体Hz214B2VHVar3VLVar3(G1)、Hz214B2VHVar4VLVar4(G1)、およびc214B2(G1)のBIACoreのセンサーグラム。B、抗体−EC2複合体の親和定数および半減期。
【図21】PC3異種移植モデルに対する種々のアイソタイプのキメラc214B2Mabのインビボ活性を示す図である。A:c214B2[IgG4]および[IgG1](TH7)およびB:c214B2[IgG2]。
【実施例】
【0208】
実施例1:CD151分子の発現の研究
前立腺癌または肺癌の患者から得たヒト組織のサンプルにおいて、CD151タンパク質の発現を免疫組織化学(IHC)により調べた。これらの患者については、腫瘍に隣接する正常組織のスライドが利用可能であったので、正常組織に対して腫瘍組織の発現レベルを較正するために含めた。
【0209】
これらの実験では、市販の「Tissue array」型のスライドを用いる。脱パラフィン後、ペプシン(ラブビジョン社(Labvision)製、ref.AP−9007−005)を含有する酵素溶液を利用して30℃で抗原のアンマスキングを行う。この工程の後、セクションを過酸化水素(シグマ社製)の0.3%水溶液中でインキュベートすることにより内因性ペルオキシダーゼを除去する工程を行う。次いで、Ultra−V−Block(ラブビジョン社製、ref.TA−125−UB)の溶液を用いて非特異的部位を飽和させ、市販のマウス抗CD151抗体(セロテック社(Serotech)製、Ref.MCA 1856)を終濃度5μg/mlで用いて標識化を行う。マウスIgG1アイソタイプ対照抗体(ダコ・サイトメーション社(DakoCytomation)製、Ref.X0931)を陰性実験対照として用いる。Envision Dual Link可視化システム(ダコ・サイトメーション社製、Ref.K4061)を用いて標識を可視化する。参照用のDABペルオキシダーゼ基質はダコ・サイトメーション社製のS3309である。
【0210】
図3A〜3Eに示される結果は、前立腺腫瘍を発症している患者の何人かでCD151分子が過剰発現していることを示している。この過剰発現は、試験された患者の20%で非常に顕著(患者AおよびC)または中程度であり得る(患者AおよびD)。また、内皮細胞でのレベルを除き、対応する正常な前立腺組織はCD151を発現していないかまたはわずかにしか発現せず、発現していても、腺様構造に限定されているようである。患者EはCD151を発現していない腫瘍の例である。
【0211】
肺癌の場合(図4A〜4C)、正常肺組織の特定の細胞において中程度(患者A)から顕著(患者B)の発現が観察される。しかし、腫瘍組織は、非常に高密度の強く標識された細胞を示している(患者AおよびB)。患者CはCD151を発現していない腫瘍の例である。
【0212】
実施例2:抗体の作製および分泌
CD151遺伝子のトランスフェクションにより作製した、表面にヒトCD151を発現する20×106個のNIH 3T3細胞を用いて、皮下経路でBALB/cマウスを免疫化した。初回免疫は、フロイント完全アジュバントの存在下で行い、次の2回はフロイント不完全アジュバントの存在下で行った。融合の3日前に、最後の10×106個のNIH 3T3−CD151細胞の追加免疫注射を腹腔内経路で行った。次いで、Kohler and Milsteinに記載されている従来技術を用いて、マウス脾臓細胞をSP2/0−Ag14ミエローマ細胞と1/1の比率で融合させた。
【0213】
次いで、融合に得られたハイブリドーマから上清に分泌された抗体を、ELISAによりCD151の組換え細胞外ループEC2認識能について、また、フローサイトメトリーによりヒトPC3前立腺癌腫瘍系の表面に発現されているCD151について、スクリーニングした。
【0214】
ELISAでは、5μg/mlの組換え細胞外ループEC2を含むPBSで96ウェルプレートを+4℃で1晩感作させた。PBSで洗浄した後、ウェルを0.5%ゼラチンのPBS溶液で37℃、1時間、飽和させ、その後、PBSで再度洗浄した。ハイブリドーマ培養上清を希釈せずに評価する(37℃で1時間インキュベーション)。ペルオキシダーゼをコンジュゲートさせたヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(米国ジャクソン社(Jackson)製、1/5000に希釈)と37℃で1時間インキュベートし、続けてペルオキシダーゼ基質(TMB、フランス、インターキム社(Interchim)製)と周囲温度で10分間インキュベートすることで、固定されたEC2ループに結合した抗体を検出する。1Mの硫酸を添加することにより反応を停止させ、光学濃度(OD)を450nmで測定する。
【0215】
96ウェルプレート上でフローサイトメトリー分析を行う。希釈していないハイブリドーマ上清を、先にウェルに入れておいた100000個のPC3細胞に添加する。+4℃で20分間インキュベートし、洗浄した後、Alexa488標識ヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(モレキュラー・プローブ社(Molecular Probes)製、1/500に希釈)を添加する。+4℃で更に20分間インキュベートした後、細胞蛍光計(cytofluorimeter)を用いて蛍光強度(MFI)を求める。
【0216】
スクリーニングの最後に、203B6および214B2の2つのハイブリドーマが選択された(選択基準:ELISAでOD>0.5およびフローサイトメトリーでMFI>50)。これら2つのハイブリドーマについて得られた結果を以下の表6に示す。
【0217】
【表6】
【0218】
クローニング後、選択された各ハイブリドーマのクローンを増幅した。マウス抗体アイソタイプ決定キット(SBA clonotyping system、サザン・バイオテック社(Southern Biotech)製)を用いて各培養上清について産生された抗体のアイソタイプを決定し、以前に記載されている条件下でマウスNIH 3T3系および安定なトランスフェクタントNIH 3T3−CD151、次いでヒト腫瘍系の肺癌A549、前立腺癌DU145、および膵臓癌BxPC3の最終的な特徴解析をELISA(細胞外ループEC2)およびフローサイトメトリーにより行った。上清の抗体濃度は、ELISA分析では5μg/ml、フローサイトメトリー分析では10μg/mlに調整した。得られた結果を以下の表7に示す。
【0219】
【表7】
【0220】
図5A〜5Dおよび6A〜6Dは、マウス抗体203B6および214B2について得られた、フローサイトメトリーよる、NIH 3T3−CD151細胞、PC3細胞、およびA549細胞の認識プロファイルを示す図である。これらのプロファイルは、抗CD151抗体50−6(ATCC CRL−2696)を用いて得られたものに匹敵し、CD151に対するこれらの抗体の特異性を実証するものである。
【0221】
その後、これらのハイブリドーマをCNCM、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25 Rue du Docteur Roux, 75724 PARIS Cedex 15に寄託した。
【0222】
実施例3:キメラおよびヒト化抗体のクローニングおよび産生
マウス203B6および214B2Mabのキメラ型およびヒト化型を設計した。これらはヒトのCカッパおよびIgG1、IgG2、およびIgG4定常ドメインのいずれかに遺伝的に融合させた目的マウス抗体の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインに相当する。同様に、以下に記載するヒト化型はヒトIgG1/カッパまたはIgG4/カッパ分子として産生される。全ての組換えMabは、HEK293/EBNAシステムをpCEP4発現ベクター(米国、インビトロジェン社製)と用いて一過性トランスフェクションにより産生される。
【0223】
203B6および214B2Mabの軽鎖および重鎖(キメラまたはヒト化)の可変ドメインに対応する全ヌクレオチド配列は包括的遺伝子合成により合成された(ルクセンブルクのGenecust社)。これらを、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4免疫グロブリンの軽鎖(Cカッパ)または重鎖[CH1−ヒンジ−CH2−CH3]のいずれかの定常ドメインの全コード配列を有するpCEP4ベクター(米国、インビトロジェン社製)中にサブクローニングした。全てのクローニング工程はLaboratory manual(Sambrook and Russel, 2001)に記載されている従来の分子生物学的技術に従ってまたは供給業者の取扱説明書に従って行った。各遺伝子コンストラクトを、Big Dyeターミネーターサイクルシークエンシングキット(米国、アプライドバイオシステムズ社製)を用いたヌクレオチドシークエンシングにより完全に検証し、3100 Genetic Analyzer(米国、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて分析した。
【0224】
懸濁液に順応させたHEK293 EBNA細胞(米国、インビトロジェン社製)を、ルーチンに、オービタルシェーカー(回転速度110rpm)上で250mlフラスコを用いて、6mMのグルタミンが添加された50mlの無血清培地Excell 293(SAFC バイオサイエンス社(SAFC Biosciences)製)中で成長させた。水中に終濃度1mg/mlで混合して調製した25kDaの直鎖ポリエチレンイミン(PEI)(ポリサイエンス社(Polysciences)製)およびプラスミドDNA(重鎖と軽鎖のプラスミド比1:1で終濃度1.25μg/ml)を用いて、2.106細胞/mLで一過性のトランスフェクションを行った。トランスフェクションの4時間後に、培養液を1体積の新鮮な培養培地で希釈して、最終細胞密度を106細胞/mlにした。細胞生存度およびMab産生に基づいて培養プロセスをモニタリングした。典型的には、培養は4〜5日間維持された。プロテインA樹脂(米国、GEヘルスケア社製)を用いた従来のクロマトグラフィーによるアプローチを用いてMabを精製した。
【0225】
種々のMabは全て、機能的評価に適したレベルで産生される。
【0226】
実施例4:マウス抗CD151抗体214B2可変ドメインのヒト化
マウス214B2抗体の重鎖可変ドメインVHおよび軽鎖可変ドメインVLを、IMGTのライブラリーおよびツール(http://imgt.cines.fr)を用いて免疫遺伝学的に分析した。以下に記載するヒト化の戦略は、固有のIMGTの番号付与スキーム(Lefranc, 1997)に基づく。最初に、各ドメインについて選択されたマウス生殖系列を、DomainGapAlignツールを用いて、IMGT LIGM DBデータベースに対するBLASTサーチにより同定する。マウスIGKV6−20*01生殖系列は、再編成された214B2のV領域と97.9%の同一性を示し、IGKJ2*01は214B2のJ領域と完全に同一であった(図7)。重鎖について、214B2のV領域はマウスIGHVS130*01生殖系列と最も相同性が高く(図7、約96%の同一性)、J領域について、マウスIGHJ4*01は最も近いJ生殖系列遺伝子に対応している(図7、94%の同一性、1残基異なる)。多様性D生殖系列遺伝子は、マウスIGHD5−1*01に対応し、これは本質的にCDR3に対応する。
【0227】
マウス214B2Mabのヒト化の例として、CDRグラフト化による従来の戦略を以下に記載する。重鎖および軽鎖それぞれを個々にヒト化し、そのそれぞれの対応するキメラまたはヒト化物のいずれかとの共発現により評価する。
【0228】
214B2軽鎖VLのヒト化
Asn1に対応する変則的な残基が同定され、これはいくつかのマウス生殖系列V遺伝子に存在するが、ヒトには存在しない。この残基はCDR1に近接しているため、選択されたヒトV遺伝子で見られるような、この残基のGluへの改変には注意が必要であり得、評価が必要である(図8)。その他に、マウス214B2軽鎖CDRのグラフト化に最も適したヒト生殖系列のサーチから可能性のあるヒットが2つ特定された。1つ目は、マウスIGKV6−20*01に最も近い相同性を示すヒトV領域に相当し、これはヒトIGKV3−7*02生殖系列アレルである(68.4%の同一性)。しかし、そのCDR1は214B2のCDR1よりも1アミノ酸長いので、これらのCDRアンカーは結局CDR1のグラフト化に最適ではない(図8参照)。2つ目のヒトドナー生殖系列はIGKV1D−39*01であり得る。これはマウスIGKV6−20*01と64%同一であるが、CDRの長さは同じである(6:3、図8)。214B2のVLと選択されたヒトV遺伝子との間の異なる残基それぞれに推定される重要性の評価基準としては、限定されるものではないが、ベルニエゾーン(Vernier zone)中での局在、CDRアンカーに近い位置であること、同じヒト生殖系列群の別のアレル中における同じ位置に存在することが含まれる。
【0229】
IGKV6−20*01のV遺伝子を検討した結果、ベルニエゾーン内の1個の残基がm214B2およびmIGKV6−20*02のどちらとも異なっており(A84)、これは高い優先度で考慮する必要があり、マウスのままで最初保存する必要がある(図8、番号1)。その他に、2個の重要な残基がCDR1およびCDR2のアンカーであるV39およびN66に相当し、これらも高優先度に順位付けられ、マウスのままで最初保存される。3個の残基が、CDRアンカーに位置が近いため、考慮の優先度が中程度の残基として順位付けられる(図8、K24、Y68、およびH103)。残りのアミノ酸(番号3として順位付けられている)は、ヒト化重鎖の全体的コンホメーションおよびCD151の認識に対する影響が弱いと考えられ、これらはヒトの対応するアミノ酸で容易に置換することができる。
【0230】
IGKV1D−39*01のV遺伝子を考慮した結果、ベルニエゾーン内の1個の残基がm214B2およびmIGKV6−20*02のどちらとも異なっており(A84)、これは高い優先度で考慮する必要があり、マウスのままで最初保存する必要がある(図8、番号1)。その他に、2個の重要な残基がCDR1およびCDR2のアンカーであるV39およびN66に相当し、これらも高優先度に順位付けられ、マウスのままで最初保存される。5個の残基が、CDRアンカーに位置が近いため(図8、K24、S40、Y68、およびH103)またはCDR1に近いため(図8、V3)、考慮の優先度が中程度の残基として順位付けされる。残りのアミノ酸(番号3として順位付けられている)は、ヒト化重鎖の全体的コンホメーションおよびCD151の認識に対する影響が弱いと考えられ、これらはヒトの対応するアミノ酸で容易に置換することができる。
【0231】
J領域を検討した結果、ヒトIGKJ2*01遺伝子はm214BおよびmIGKJ2*01のどちらとも異なる1個の残基(G)を含有する。この領域は本質的にFR4に相当するので、最初で完全にヒト化してよい(図8)。
【0232】
IMGT−CDR3配列(GQTYSFPYT)は配列を改変せずにそのままグラフト化する。
【0233】
214B2重鎖のヒト化
マウス214B2重鎖CDRのグラフト化に最も適したヒト生殖系列のサーチから、ヒトIGHV1−2*02V遺伝子アレルに対応する好ましいヒットを1つ同定した。これはマウスIGHVS130*01生殖系列遺伝子に66%同一であり、CDRの長さが同じである。214B2_VHとIGHV1−2*02はFR中で28ヶ所で異なっていた(図9)。密接に関連するヒトIGHV1−46*03生殖系列も好適であり、これも異なる残基の数が同じであり、同様に28個中15個がFR3中に位置している。これら28個の異なる残基それぞれに推定される重要性の評価基準としては、限定されるものではないが、ベルニエゾーン中での局在、CDRアンカーに近い位置であること、同じヒト生殖系列群の別のアレル中における同じ位置に存在することが含まれる。
【0234】
IGHV1−2*02のV遺伝子を検討した結果、ベルニエゾーン内の5個の残基がm214B2およびIGHVS130*01のどちらとも異なり(I53、E55、A76、L78、V80)、これらは高い優先度で考慮する必要があり、マウスのままで最初保存する必要がある(図9、番号1)。その他に、N68およびE69が、CDR2アンカーの近くに位置するため、考慮の優先度が中程度の残基として順位付けされる(図9)。残りの21個のアミノ酸は、ヒト化重鎖の全体的コンホメーションおよびCD151の認識に対する影響が弱いと考えられ、これらはヒトの対応するアミノ酸で容易に置換することができる。
【0235】
IGHV1−46*03のV遺伝子を検討した結果、ベルニエゾーン内の7個の残基がm214B2およびIGHVS130*01のどちらとも異なり(I53、E55、N66、A76、L78、V80、A87)、これらは高い優先度で考慮する必要があり、マウスのままで最初保存する必要がある(図9、番号1)。その他に、N68およびE69が、CDR2アンカーの近くに位置するため、考慮の優先度が中程度の残基として順位付けされる(図9)。残りの19個のアミノ酸は、ヒト化重鎖の全体的コンホメーションおよびCD151の認識に対する影響が弱いと考えられ、これらはヒトの対応するアミノ酸で容易に置換することができる。
【0236】
J領域を検討した結果、ヒトIGHJ6*01遺伝子は、m214B2およびmIGHJ4*01のどちらとも異なる3個の残基を含有する。この領域は本質的にFR4に相当するので、最初で完全にヒト化してよい(図9)。
【0237】
CDR3の配列に本質的に相当する多様性D遺伝子(ARARSFYYAMDC)は改変せずにグラフト化する。
【0238】
上記の全てのアミノ酸が考慮すべき重要な位置である。これらの位置のそれぞれについてヒト対マウス残基の全組合せをヒト化プロセス中に検討する。ヒト化型の選択は、どれだけヒトのものに近いか(humanness)ならびに保存されているインビトロおよびインビボでの機能的特性に基づく。
【0239】
実施例5:ウェスタンブロットによる抗体特異性
ウェスタンブロットによりキメラ抗体c214B2[IgG1]およびc203B6[IgG1]の特異性を最初に評価した。簡潔に述べると、精製した組換え大細胞外ループEC2(2〜8μg)およびHT−29細胞ライセート(lysate)(10〜50μg)を12%アクリルアミドゲル(バイオ・ラッド社製)にローディングした。非還元条件下での電気泳動後、タンパク質をニトロセルロース膜に移し、精製された0.5μg/mlのキメラ抗体c214B2[IgG1]およびc203B6[IgG1]と、次いで、ペルオキシダーゼがコンジュゲートされたウサギポリクローナル抗ヒトIg(GEヘルスケア社製)と、更にインキュベートした。タンパク質は化学発光により検出した。c214B2[IgG1]およびc203B6[IgG1]の両方がウェスタンブロットで全長CD151を認識することができた(図10)。更に、これらは、組換えEC2ループに対する反応性により評価されるように、大きな細胞外ループに特異的であることも示された(図10)。
【0240】
実施例6:ELISAによる競合実験
キメラ抗体c214B2[IgG1]およびc203B6[IgG1]が、それらの対応するマウス型の組換えEC2ループへの結合を阻害する能力を評価するために、ELISAにより交差競合実験を更に行った。簡潔に述べると、96ウェルのELISAプレートを5μg/mlの組換えEC2を含むPBSを用いて4℃で一晩コーティングした。80ng/mlのマウスMab203B6および214B2を、種々の濃度(0.01〜20μg/ml)のそれらの対応するキメラ抗体型の存在下または非存在下にて37℃で1時間更にインキュベートした。対照実験ではマウス抗体を添加しなかった。西洋ワサビペルオキシダーゼがコンジュゲートされたポリクローナルヤギ抗マウスIgGをPBSの1/5000希釈で添加し、37℃で1時間インキュベートした。ペルオキシダーゼ基質TMBと室温で10分間インキュベートした後、1Mの硫酸を用いて反応を停止し、450nmの光学濃度を測定した。図11A〜11Bは、キメラ抗体c214B2[IgG1]およびc203B6[IgG1]がそれぞれマウス型の214B2および203B6に取って代わることができたことを示している。GraphPad Prismソフトウェアを用いて算出したIC50値は、c214B2[IgG1]およびc203B6[IgG1]についてそれぞれ0.69μg/mlおよび0.71μg/mlであった。
【0241】
実施例7:前立腺癌細胞へのキメラ抗体の結合
前立腺癌細胞PC3へのキメラ抗体c203B6[IgG1]およびc214B2[IgG1]の結合をフローサイトメトリーで評価した。簡潔に述べると、種々の濃度のc203B6[IgG1]またはc214B2[IgG1]存在下、1%BSAおよび0.01%アジ化ナトリウムを含有するPBSバッファー中、4℃で20分間、PC3細胞を1.105細胞/100μlでインキュベートした。細胞を更に洗浄し、Alexa488がコンジュゲートされたヤギ抗ヒト抗体(モレキュラー・プローブ社製、PBSで1/500希釈)と4℃で20分間インキュベートした。標識された細胞を洗浄し、遠心し、先ほどのバッファー(150μl)に再懸濁した後、Facscaliburサイトメーター(ベクトン・ディッキンソン社製)を用いて分析した。生細胞のみに対して分析を行うために、ヨウ化プロピジウムを添加した。PC3細胞の表面に発現されたCD151へのキメラ抗体c203B6[IgG1]およびc214B2[IgG1]の結合は抗体濃度に応じて増加した(図12A〜12B)。c214B2[IgG1]およびc203B6[IgG1]はそれぞれ2.5μg/mlおよび5μg/mlでプラトーに達した。このことは、PC3細胞へのこれらの抗体の結合が非常に特異的であることを示している。
【0242】
実施例8:前立腺PC3異種移植モデル上のCD151に対するキメラ抗体c214B2]IgG1]の抗腫瘍活性
組織アレイ解析法を用いて前立腺組織上でのCD151の過剰発現が以前に示されている。前立腺癌細胞がCD151標的化療法に応答性であるのかどうかを調べるために、CD151に対するキメラc214B2[IgG1]をPC3異種移植モデルにおいてインビボで試験した。PC3細胞系は、ATCCにより提供されたアンドロゲン非依存性の細胞系であり、10%FCSを添加したF12K培地中で成長させる。5百万個のPC3細胞を6週齢の雌スイスマウスに皮下移植した。移植の5日後に、腫瘍が測定可能であり、c214B2[IgG1]キメラ抗体の腹腔内注射を開始する前にマウスを6頭のグループ2つにランダム化した。1回投与当たり2mgのc214B2を負荷量として注射し、その後、1回投与当たり1mgの注射を週2回行った。腫瘍体積を週2回評価し、以下の式で算出した:π/6×長さ×幅×高さ。図13に示す結果から、図中でc214B2で参照されているc214B2[IgG1]がPC3細胞の腫瘍成長をインビボで有意に阻害することが示された。この結果は、CD151を標的化することが癌の有効な治療法であり得ることを示している。
【0243】
実施例9:TH7ヒンジ変異体の改変
ヒンジ領域が免疫グロブリンの可変ドメインの柔軟性に大きく関与することは当業者に周知である(Brekke et al., 1995;Roux et al., 1997参照)。214B2Mabのキメラ化プロセス中、マウス定常ドメインIGHG1を、ヒト起源の同等なIGHG1部分で置換した。対応するヒンジ領域のアミノ酸配は非常に多様性が高いので、マウスIgG1ヒンジに似せるために、Cys残基を1個付加し、2アミノ酸分長さを短くすることで、ヒトIgG1ヒンジ領域を改変した。
【0244】
マウスおよびヒトの野生型IgG1ヒンジ領域ならびに改変されたTH7ヒンジ領域の比較を以下に示す(IMGTの固有なCドメインの番号付に従う):
マウスIgG1ヒンジ領域 PRDCGCKP−CI−CT(配列番号43)
ヒトIgG1ヒンジ領域 PKSCDKTHTCPPCP(配列番号42)
改変したTH7ヒンジ領域 PKSCDC−H−CPPCP(配列番号41)
(下線はヒトIgG1ヒンジ領域中に導入した3個の改変部分を示す)。
【0245】
実施例10:キメラ214B2Mabおよびヒンジ改変型Mabの産生
キメラまたは改変されたヒンジ領域を含有する全ての型のMabは、一過性のトランスフェクションにより、またHEK293/EBNAシステムをpCEP4発現ベクター(米国、インビトロジェン社製)と用いることにより産生された。
【0246】
マウス由来可変ドメイン214B2 VHおよびVLに対応する全ヌクレオチド配列は包括的遺伝子合成により合成された(独、ジーンアート社(Geneart))。これらを、ヒトIgG1免疫グロブリンの定常ドメイン[CH1−ヒンジ−CH2−CH3]の全コード配列を有するpCEP4ベクター(米国、インビトロジェン社製)中にサブクローニングした。ヒンジ領域の改変は、{Nhe1I−Bcl1}制限フラグメントを所望の改変を有する同等な部分で交換することによりなされ、各{Nhe1I−Bcl1}フラグメントは包括的遺伝子合成(ドイツ、ジーンアート社)により合成された。全てのクローニング工程はLaboratory manual(Sambrook and Russel, 2001)に記載されている従来の分子生物学的技術に従ってまたは供給業者の取扱説明書に従って行った。各遺伝子コンストラクトを、Big Dyeターミネーターサイクルシークエンシングキット(米国、アプライドバイオシステムズ社製)を用いたヌクレオチドシークエンシングにより完全に検証し、3100 Genetic Analyzer(米国、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて分析した。
【0247】
懸濁液に順応させたHEK293 EBNA細胞(米国、インビトロジェン社製)を、ルーチンに、オービタルシェーカー(回転速度110rpm)上で250mlフラスコを用いて、6mMのグルタミンが添加された50mlの無血清培地Excell 293(SAFC バイオサイエンス社製)中で成長させた。水中に終濃度1mg/mlで混合して調製した25kDaの直鎖ポリエチレンイミン(PEI)(ポリサイエンス社製)およびプラスミドDNA(重鎖と軽鎖のプラスミド比1:1で終濃度1.25μg/ml)を用いて、2×106細胞/mLで一過性のトランスフェクションを行った。トランスフェクションの4時間後に、培養液を1体積の新鮮な培養培地で希釈して、最終細胞密度を106細胞/mlにした。細胞生存度およびMab産生に基づいて培養プロセスをモニタリングした。典型的には、培養は4〜5日間維持された。プロテインA樹脂(米国、GEヘルスケア社製)を用いた従来のクロマトグラフィーによるアプローチを用いてMabを精製した。
【0248】
c214B2[TH7]IgG1Mabは機能的評価に適したレベルで産生された。産生レベルは通常、1lの精製Mab当たり15〜30mgである。
【0249】
実施例11:細胞接着アッセイ
第1のアッセイ
トリプシンを用いてディッシュからPC3前立腺癌細胞を剥離させ、無血清F12k培地で3回洗浄し、同じ培地に再度懸濁した。細胞(100,000細胞/ウェル)を、1μg/mlのラミニン1でコーティングされた96ウェルプレートにプレーティングした。試験する以下の型の抗CD151Mabを終濃度10μg/mlで同時に添加した:マウスIgG1Mab m214B2、c214B2と呼ばれる非改変キメラIgG1抗体型、およびcTH7−214B2と呼ばれるTH7を改変したキメラIgG1抗体型。マウスおよびヒトのIgG1抗体をアイソタイプ対照抗体として用いた。最終的な条件は以下の通りである:100,000細胞/ウェルおよび抗体10μg/ml。37℃で1時間インキュベートした後、プレートをはたいて、無血清F12k培地で2回洗浄した。分析前に、100μlの無血清F12k培地を各ウェルに分注した。細胞接着に対する抗体の影響を評価するために、位相差顕微鏡下でウェルの写真を撮った(図14)。その後、接着した細胞の数をATPアッセイにより決定した(図15A)。
【0250】
マウス214B2抗体およびキメラTH7−214B2抗体は細胞間相互作用を変化させることができ(図14)、同等にPC3細胞接着を増加させることができたが(図15A)、非改変キメラ型の214B2(c214B2)では何ら影響が観察されず、ヒトIgG1アイソタイプ対照抗体と同様であった。
【0251】
第2のアッセイ
トリプシンを用いてディッシュからPC3前立腺癌細胞を剥離させ、無血清F12k培地で3回洗浄し、同じ培地に再度懸濁した。細胞(100,000細胞/ウェル)を、1μg/mlのラミニン1でコーティングされた96ウェルプレートにプレーティングした。試験する以下の型の抗CD151Mabを終濃度0.4μg/mlで同時に添加した:マウスIgG1Mab m214B2およびキメラIgG1−TH7、IgG4−TH7、およびIgG2抗体型。37℃で1時間インキュベートした後、プレートをはたいて、無血清F12k培地で2回洗浄した。分析前に、100μlの無血清F12k培地を各ウェルに分注した。細胞接着に対する種々の抗体の影響を評価するために、接着した細胞の数をATPアッセイにより決定した。
【0252】
種々のキメラ型の214B2が、細胞間相互作用を変えることができ、PC3細胞接着を増加させることができた(図15B)。キメラ型c214B2[IgG1−TH7]、c214B2[IgG4−TH7]、およびc214B2[IgG2]により誘導された影響は、マウス型m214B2により誘導された影響と同等であった。これらのキメラ抗体は、非処理細胞ならびに種々の対照抗体hIgG1、hIgG2、およびhIgG4で処理された細胞と比べて約40%のPC3細胞接着の増加を誘導した。
【0253】
実施例12:214B2Mabのヒト化
一般的手順
CDRグラフト化の一般的規則を適用して214B2抗CD151抗体のヒト化を行った。CDRおよびフレームワーク(FR)領域の免疫遺伝学的分析および定義を、IMGTの固有の番号付与スキームならびにIMGTのライブラリーおよびツール(Lefranc, 1997−www.imgt.org))を用いて行った。
【0254】
元の抗体のエピトープに対するヒト化バリアントの親和性を、元の抗体をヒト化抗体で交差ブロックすることにより評価した。元の抗体の濃度を一定に保ち、ヒト化抗体を段階希釈した。キメラ抗体をこれらの実験における陽性対照および基準とした。ELISAによる親和性およびフローサイトメトリーアッセイによりヒト化抗体を評価した。ELISAをベースにしたアッセイでは、ヒトCD151の第2の細胞外ドメイン(EC2)を組換えにより発現させ、6ヒスチジンタグで精製した。精製されたEC2タンパク質を用いてELISAプレートをコーティングし、HRPがコンジュゲートされた抗マウスIgG抗体を用いてマウスの元の抗体を検出することで、ヒト化抗CD151抗体の結合を間接的に測定した。ヒト化抗CD151抗体のCD151への結合を、ヒト前立腺癌細胞系PC3を用いたフローサイトメトリーにより評価した。ビオチン化された元のマウス抗CD151抗体と交差ブロックすることにより親和性を決定した。ビオチン化抗体は、フルオレセインがコンジュゲートされたストレプトアビジンを用いて検出した。BiaCore分析により親和定数(Kd)を測定した。
【0255】
これらのアッセイを用いて、組換えヒト化バージョンの抗CD151抗体の特徴を解析した。可変ドメインは、ヒトIgG1/k定常ドメインで構成され、哺乳動物用の発現ベクターpCEPにクローニングされた。組換えIgG1/κ由来抗体をHEK293細胞中で一時的に発現させた。発現培養上清を濾過し、プロテインAセファロースを用いて抗体を精製した。精製された抗体をPBSで再度緩衝化し、ELISAにより抗体濃度を決定した。
【0256】
214B2重鎖のヒト化
マウス214B2重鎖CDRのグラフト化に最適なヒト生殖系列のサーチから、ヒトIGHV1−2*02V遺伝子アレルに対応する好ましいヒットを1つ特定した。これはマウスIGHVS130*01生殖系列遺伝子と66%同一であり、CDRの長さが同じである。214B2_VHとIGHV1−2*02はFR中で28ヶ所が異なっていた。これら28個の異なる残基それぞれに推定される重要性の評価基準としては、限定されるものではないが、ベルニエゾーン中での局在、CDRアンカーに近い位置であること、同じヒト生殖系列群の別のアレル中における同じ位置に存在することが含まれる。
【0257】
IGHV1−2*02のV遺伝子を検討した結果、ベルニエゾーン内の5個の残基がm214B2およびmIGHVS130*01のどちらとも異なり(I53、E55、A76、L78、V80)、これらを高い優先度で考慮し、マウスのままで最初保存した(図16)。その他に、N67も、CDR2アンカーの近くに位置するため、高い優先度で考慮すべき残基として順位付けされる。
【0258】
J領域を検討した結果、ヒトIGHJ6*01遺伝子は、m214B2およびmIGHJ4*01のどちらとも異なる3個の残基を含む。この領域は本質的にFR4に相当するので、最初で完全にヒト化してよい。CDR3の配列に本質的に相当する多様性D遺伝子(ARARSFYYAMDC)は改変せずにグラフト化した。
【0259】
214B2軽鎖VLのヒト化
マウス214B2軽鎖CDRのグラフト化に最適なヒト生殖系列のサーチから、可能性のある2つのヒットを特定した。
【0260】
Asn1に対応する変則的な残基が同定され、これはいくつかのマウス生殖系列V遺伝子に存在するが、ヒトには存在しない。この残基はCDR1に近接しているため、選択されたヒトV遺伝子で見られるような、この残基のGluへの改変には注意が必要であり得、評価する必要がある。
【0261】
1つ目は、ヒトIGKV3D−7*01生殖系列アレルと相同性が最も近いヒトV領域に相当する。しかしそのCDR1は214B2のCDR1よりも1アミノ酸長いので、このCDRは結局CDRグラフト化に最適ではない。そこで、ヒト生殖系列IGKV1D−39*01が選択された。これはマウス生殖系列アレルIGKV6−20*01との同一性が64%であり、CDRの長さが同じである。214B2VLと選択されたヒトV遺伝子との間の異なる残基それぞれに推定される重要性の評価基準としては、限定されるものではないが、ベルニエゾーン中での局在、CDRアンカーに近い位置であること、同じヒト生殖系列群の別のアレル中における同じ位置に存在することが含まれる。
【0262】
IGKV1D−39*01のV遺伝子を検討した結果、ベルニエゾーン内の1個の残基が214B2およびmIGKV6−20*02のどちらとも異なっており(A84)、これは高い優先度で考慮する必要があり、マウスのままで最初保存する必要がある。その他に、2個の重要な残基がCDR1アンカーおよびCDR2アンカーのV39およびN66に相当する。これらも優先度が高く順位付けされ、マウスのままで最初保存される。5個の残基が、CDRアンカーに位置が近いため(K24、S40、Y68、およびH103)またはCDR1に近接するため(V3)、考慮の優先度が中程度として順位付けられる。残りのアミノ酸(番号3として順位付けられている)は、ヒト化重鎖の全体的コンホメーションおよびCD151の認識に対する影響が弱いと考えられ、これらはヒトの対応するアミノ酸で容易に置換された。
【0263】
J領域を検討した結果、ヒトIGKJ2*01遺伝子は、m214B2およびmIGKJ2*01のどちらとも異なる1個の残基(G)を含む。この領域は本質的にFR4に相当するので、最初で完全にヒト化した。
【0264】
IMGT−CDR3配列(GQTYSFPYT)は配列を改変せずにそのままグラフト化した。
【0265】
最初の一連の実験では、ELISAでヒト化抗体を試験した。VHのバリアント1、バリアント2、およびバリアント3のそれぞれを、VLの3つの異なるバリアントと組み合わせた。VHバリアント1の全てのコンストラクトはマウス抗体と競合する能力を示さない(図17、A)。これは、この抗体の抗原認識にフレームワーク中の構造的残基が重要であることを最初に示すものである。VLVar1とVHVar2またはVHVar3の組合せは、キメラ抗体と比べて、元の抗体をブロックする能力がはるかに低かった。したがって、これらのバリアントについてはその後の評価を行わなかった。抗体Hz214B2VHVar4VLVar4を含む他の全てのバリアントはキメラ抗体と同様なブロック活性を示す(図18、B、C、D)。
【0266】
全体抗原CD151への結合のモデルとしてEC2への結合を用いた。細胞表面上の抗原への親和性をフローサイトメトリーで評価した。抗体Hz214B2VHVar4VLVar4で最も高レベルの交差ブロック活性が測定された。これらの結果は、抗体214B2の結合特性を維持するために比較的多くの逆変異が必要であることを示している。
【0267】
Hz214B2VHVar4VLVar4のフレームワーク中のヒト残基の割合を計算したところ、226残基中22個の非ヒト残基が含まれており、これは90.3%のgerminality indexに等しい。
【0268】
ヒトCD151の細胞外ループ2(EC2)を用いたBIACore分析によりキメラ抗体および2つのヒト化バリアントの親和性を決定した(図20)。
【0269】
実施例13:PC3異種移植モデルに対する種々のアイソタイプのキメラc214B2Mabのインビボ活性
214B2Abのキメラコンストラクトを評価するために、胸腺欠損マウスにアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞系PC3(ATCC CRL1435)から5.106個の細胞を移植した。移植5日後に、腫瘍体積は68〜108mm3(π/6×長さ×幅×高さ)に達し、マウスを6頭のグループにランダム化した。試験するビヒクルまたは抗体を腹腔内投与した。処置されたマウスは、5日目(D5)に1頭当たり2mgの負荷量を投与され、12日目(D12)に追加注射された。腫瘍体積を週に2回評価した。
【0270】
図21Aおよび21Bに示す結果から、調べた全てのキメラ型が、PC3異種移植モデルに対して同様に大きなインビボでの効果を示すことが示された。
【0271】
【表8】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な抗体、特に、キメラ型およびヒト化型の、腫瘍の成長を阻害することができる、マウス起源のモノクローナル抗体ならびにそれらの抗体のアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列に関する。特定の態様では、本発明は、腫瘍細胞の増殖を阻害できる新規な抗体、誘導体化合物、または機能的フラグメントに関する。本発明は更に、癌の予防および/または治療処置のための医薬としてのならびに癌を診断する方法またはキットにおけるそれらの抗体の使用を含む。最後に、本発明は、例えば抗癌剤および/または抗体と会合しているか毒素がコンジュゲートされたそのような抗体を含む生成物および/または組成物ならびに特定の癌の防止および/または処置におけるその使用を含む。
【0002】
CD151はPETA−3またはSFA−1ともいい、テトラスパニンファミリーに属する膜タンパク質である(Boucheix and Rubinstein, 2001, Cell Mol. Life Sci. 58, 1189-1205; Hemler, 2001, J. Cell Biol. 155, 1103-1107)。ヒトでは、CD151は253個のアミノ酸を有し、4個の膜フラグメントならびに細胞外ループとも呼ばれる細胞外ドメインEC1(18アミノ酸、配列[40〜57]およびEC2(109アミノ酸、配列[113〜221])を含む。しかし、ヌクレオチド配列中、これまでにCD151の2個のバリアントが同定されており、1つは395位および409位にそれぞれヌクレオチドAおよびCを有し[非特許文献3]、もう1つは、同じ位置にヌクレオチドAおよびCの代わりにヌクレオチドGおよびTを有する[非特許文献4]。その結果、ペプチド配列中に変異が観察され、それぞれ132位および137位の残基K(Lys)およびP(Pro)が残基R(Arg)およびS(Ser)に変異している[Fitter et al, 1995, Blood 86(4), 1348-1355/ Hasegawa et al., 1996, J. Virol. 70(5), 3258-3263]。
【0003】
CD151は、例えば肺癌[Tokuhara et al, 2001, Clin. Cancer Res. 7, 4109-4114]、結腸癌[Hashida et al, 2003, Br. J. Cancer 89, 158-167]、前立腺癌[Ang et al, 2004, Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev. 13, 1717-1721]、または膵臓癌[Gesierich et al, 2005, Clin. Cancer Res. 11, 2840-2852]等の多くの癌で過剰発現している。
【0004】
CD151を発現しないノックアウトマウスならびに種々の種類の細胞においてインビトロでCD151の機能性および発現をブロックするための抗CD151抗体およびsiRNAの使用により、CD151が癌に関連するいくつかの現象、例えば細胞接着(Nishiuchi et al., 2005, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102, 1939-1944; Winterwood et al, 2006, Mol. Biol. Cell 17, 2707-2721)、細胞運動性(Kohno et al, 2002, Int. J. Cancer 97, 336-343)、細胞遊走(Yauch et al, 1998, Mol. Biol. Cell 9, 2751-2765、Testa et al, 1999, Cancer Res. 59, 3812-3820、Penas et al, 2000, J. Invest. Dermatol. 114, 1126-1135、Klosek et al, 2005, Biochem. Biophys. Res. Commun. 336, 408-416
)、細胞浸潤(Kohno et al, 2002, Int. J. Cancer 97, 336-343、Shiomi et al, 2005, Lab. Invest. 85, 1489-1506、Hong et al, 2006, J. Biol. Chem. 281, 24279-24292)、および脈管形成(Yanez-Mo et al, 1998, J. Cell Biol. 141, 791-804、Sincock et al, 1999, J. Cell Sci. 112, 833-844、Takeda et al, 2007, Blood 109, 1524-1532)に関与することが示された。
【0005】
テトラスパニンの注目すべき特徴の1つは、自身および多くの他の表面分子と会合して構造的な巨大分子複合体を形成できる能力である。それらの複合体内で、各テトラスパニンは1または複数の表面分子と特異的に会合することにより、テトラスパニンおよびパートナー分子から構成される一次複合体を形成している。テトラスパニンは特定の原形質膜マイクロドメインを組織することができ、テトラスパニンはそのマイクロドメインから機能的に関連し得るパートナー分子をリクルートすることができる。テトラスパニンを含む相互作用の集合は、「テトラスパニンネットワーク」または「テトラスパニンウェブ」と呼ばれている。
【0006】
CD151は細胞表面上で種々の膜タンパク質と相互作用する。特に、ラミニン受容体インテグリンとの、より具体的には好ましいリガンドがラミニン5であるインテグリンα3β1またはα6β4との、特定の洗剤の作用に抵抗性である非常に安定性の高い複合体が同定されている(Yauch et al, 1998, Mol. Biol. Cell 9, 2751-2765、Lammerding et al, 2003, Proc. Natl. Acad. Sci USA 100, 7616-7621)。この会合には、インテグリンおよびCD151の細胞外ドメインが関与する。EC2ループ中に位置するCD151の配列QRD[194〜196]が変異すると特定のインテグリンとの相互作用が消失するため、この配列が会合に非常に重要である(Kazarov et al, 2002, J. Cell Biol. 158, 1299-1309)。更に、CD151/インテグリンα6β4/c−Met(HGF受容体)の機能的三元複合体が腫瘍細胞中で同定されている(Klosek et al, 2005, Biochem. Biophys. Res. Commun. 336, 408-416)。干渉RNAで細胞を処理することによりCD151の発現を阻害すると、HGFにより生じる細胞の成長および遊走が阻害される。
【0007】
EC2ループが欠失してもCD151と他のテトラスパニンの会合が乱れないことが示されていることから、テトラスパニンのネットワーク形成に必要な、特定の細胞内でのCD151と他のテトラスパニンとの相互作用は、CD151の膜領域および細胞質領域に依存すると考えられる(Berditchevski, 2001, J. Cell Sci. 114, 4143-4151)。
【0008】
CD151は、種々のシグナル伝達経路の調節、例えばPI4キナーゼとの会合を介したホスホイノシチド経路の調節(Yauch et al, 1998, Mol. Biol. Cell 9, 2751-2765)、FAK、Src、p38−MAPK、およびJNKのリン酸化を介したc−Junシグナル伝達経路の調節(Hong et al, 2006, J. Biol. Chem. 281, 24279-24292)、PKCによるインテグリンのリン酸化の調節(Zhang et al, 2001, J. Biol. Chem. 276, 25005-25013)、RhoファミリーのGTPaseの活性化の調節(Shigeta et al, 2003, J. Cell Biol. 163, 165-176)により、細胞の接着、遊走、および浸潤を制御することができる。
【0009】
細胞間の同種親和性型の相互作用も、細胞運動性およびメタロプロテイナーゼMMP−9の発現の増加に関与する(Hong et al, 2006, J. Biol. Chem. 281, 24279-24292)。これらの細胞間CD151−CD151相互作用は、FAK、Src、p38−MAPK、およびJNKのリン酸化を介してc−Junの活性化を引き起こす。
【0010】
これまで、CD151タンパク質への関心にも関わらず、作製されたのは2つの治療目的の抗体、すなわちモノクローナル抗体50−6およびSFA1.2B4である。これら2つの抗体は同等な活性を有する。これらはモデル動物においてインビボで転移形成を阻害するが、インビボでの腫瘍成長に対する効果は明らかにされていない。
【0011】
CD151に対するモノクローナル抗体50−6(アイソタイプIgG1)は、ヒト類表皮癌HEp−3細胞を用いたsubtractive immunisation法によりマウスで生成された(Testa et al, 1999, Cancer Res. 59, 3812-3820)。
【0012】
抗体50−6は、CD151を過剰発現するようにトランスフェクトされたヒト子宮頸癌HeLa細胞の遊走およびHEp−3細胞の遊走ならびにbFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)により起こる漿尿膜新血管新生のモデルにおける脈管形成をインビトロで阻害することができる。この抗体は、ニワトリ胚の2つのモデルにおいてHEp−3細胞の接種により誘発される転移をインビボで阻害する(Testa et al, 1999, Cancer Res. 59, 3812-3820)。これらのモデルにおいては、抗体50−6の阻害活性は、肺抽出物中のタンパク質huPA(ヒトウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター)の活性測定によって求められる。著者らによると、このアッセイは、肺の中のヒト細胞の存在を反映するものである。アッセイ後、抗体50−6によってもたらされる転移(ニワトリ胚の肺へのHEp−3細胞の内転移)の減少は、対照抗体との比較で、細胞の接種後に抗体が注射されるいわゆる「自然転移」モデルで74%、細胞と抗体が一緒に接種されるいわゆる「実験転移」モデルで57%であると推定される。著者らによると、インビボで観察される抗体50−6の抗腫瘍特性は、この抗体がインビトロでHEp−3細胞の増殖に何ら影響を与えなかったことから、細胞増殖抑制効果または細胞毒性効果に関連しないと考えられる。
【0013】
抗体50−6を産生するハイブリドーマは、参照番号CRL−2696でATCCより入手可能である(当初、参照番号50−6[PTA−227]で寄託されたハイブリドーマ)。
【0014】
抗CD151モノクローナル抗体SFA1.2B4(アイソタイプIgG1)は、ヒトCD151遺伝子でトランスフェクトされたNIH 3T3細胞を用いて腹腔内経路で免疫化した後のマウスで生成された(Hasegawa et al, 1996, J. Virol. 70, 3258-3263)。抗体SFA1.2B4はインビトロで様々なヒト腫瘍系の細胞の浸潤および運動性を阻害することができる(Kohno et al., 2002, Int. J. Cancer 97, 336-343)。この抗体は、インビボで、CD151を過剰発現するようにトランスフェクトされた結腸癌系RPMI14788および線維肉腫系HT1080により引き起こされる肺転移を阻害する(Kohno et al., 2002, Int. J. Cancer 97, 336-343)。
【0015】
他のマウス抗CD151抗体、例えばモノクローナル抗体14A2H1(Ashman et al., 1991, Br. J. Haematol. 79, 263-270;Roberts et al., 1995, Br. J. Haematol. 89, 853-860)、TS151およびTS151R(Serru et al, 1999, Biochem. J. 340, 103-111;Geary et al, 2001, Tissue Antigens 58, 141-153;Charrin et al, J. Biol. Chem. 276, 14329-14337;Chometon et al, 2006, Exp. Cell Res. 312, 983-985)等が文献中に既に記載されている。
【0016】
複数の実験研究により、テトラスパニンが転移のサプレッサーまたはプロモーターとして作用することにより転移形成において重要な役割を果たすことが示された。CD9、CD63、CD82等のテトラスパニンのトランスフェクションは癌系の転移の可能性を低減させる。これに対して、テトラスパニンCD151およびCo−029の発現は逆の効果を生じるようである。したがって、これら2つのテトラスパニンは転移のプロモーターである。これらの結果は、複数の癌(乳癌、肺癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、結腸癌、前立腺癌、黒色腫等)において、転移がある場合に原発腫瘍でCD9およびCD82の発現がより少ないことおよびこれらの発現減少からより低い生存率が予想されることを示した種々の臨床研究と一貫性を有するものである。肺癌では、CD9およびCD82の発現の複合的な減少が、これら2つの抗原の一方だけの発現が減少している場合よりも大きな転移可能性と相関していた。
【0017】
CD151の過剰発現が、肺癌、結腸癌、前立腺癌等の特定の癌の攻撃性と関連し、予後不良の要因と見なされ得ることが、複数の後向き研究により示されている(Tokuhara et al, 2001, Clin. Cancer Res. 7, 4109-4114;Hashida et al, 2003, Br. J. Cancer 89, 158-167;Ang et al, 2004, Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev. 13, 1717-1721)。これらのケースにおいて、平均生存率は、CD151を発現しない腫瘍を有する患者に比べ、CD151を発現する腫瘍を有する患者において実際に低くなっている。
【0018】
種々のヒト腫瘍系(HeLa、RPMI14788、A172、HT1080)において、対応する遺伝子のトランスフェクションによりもたらされるCD151の過剰発現は、トランスフェクト細胞の運動性、遊走、および浸潤の増加を引き起こす(Testa et al, 1999, Cancer Res. 59, 3812-3820;Kohno et al, 2002, Int. J. Cancer 97, 336-343)。これらの現象は、抗CD151抗体の存在下で阻害される。
【0019】
キメラ抗体とは、所与の種の抗体に由来する天然の可変(軽鎖および重鎖)領域を含有する抗体であって、前記所与の種と異なる種の抗体の軽鎖および重鎖の定常領域と会合している抗体を意味する。
【0020】
本発明に係るキメラ型の抗体またはそのフラグメントは、遺伝子組換え技術を用いて作製することができる。例えば、キメラ抗体は、プロモーターと、本発明に係る非ヒト、特にマウスのモノクローナル抗体の可変領域をコードする配列と、ヒト抗体の定常領域をコードする配列とを含む組換えDNAをクローニングすることによって作製することができる。このような組換え遺伝子によりコードされる本発明のキメラ抗体は、例えばマウス−ヒトキメラであり得、この抗体の特異性はマウスDNAに由来する可変領域により決まり、アイソタイプはヒトDNAに由来する定常領域により決まる。キメラ抗体の作製方法については、例えばVerhoeyn et al.(BioEssays, 8:74, 1988)を参照することができる。
【0021】
第1の態様では、本発明は、配列番号7のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号7と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する軽鎖および/または配列番号8もしくは9のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号8もしくは9と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する重鎖を含むことを特徴とする、キメラ抗体または誘導化合物(derived compound)もしくは機能的フラグメントに関する。
【0022】
配列番号8および9の2つの重鎖配列はそれぞれヒトのアイソタイプIgG1およびIgG4に対応する。
【0023】
したがって、本発明の第1の態様は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含む、キメラ抗体c203B6[IgG1]またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0024】
本発明の第2の態様は、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含む、キメラ抗体c203B6[IgG4]またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0025】
別の好ましい態様では、本発明のキメラ抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号25もしくは37のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号25もしくは37の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する軽鎖および/または配列番号26、27、38、もしくは44のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号26、27、38、もしくは44のアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する重鎖を含むことを特徴とする。
【0026】
配列番号26および38の2つの重鎖配列はヒトのアイソタイプIgG1に対応し、配列番号27の重鎖はヒトのアイソタイプIgG4に対応し、配列番号44の重鎖配列はヒトのアイソタイプIgG2に対応する。
【0027】
したがって、本発明の第1の態様は、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号26のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含む、キメラ抗体c214B2[IgG1]またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0028】
本発明の第2の態様は、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号27のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含む、キメラ抗体c214B2[IgG4]またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0029】
本発明の第3の態様は、配列番号37のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含む、キメラ抗体c214B2[IgG1][TH7]またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0030】
本発明の第4の態様は、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号44のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含む、キメラ抗体c214B2[IgG2]またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0031】
本発明に係る抗体の「機能的フラグメント」とは、特に、Fv、scFv(scは「単鎖」を表す)、Fab、F(Ab’)2、Fab’、もしくはscFv−Fcフラグメント等の抗体フラグメント、または二重特異性抗体、または半減期が延長されているであろう任意のフラグメントを意味すると理解される。そのような機能的フラグメントは以下に詳細に説明される。
【0032】
本発明に係る抗体の「誘導体化合物(derivative compound)」とは、特に、ペプチドフレームワークすなわち「スキャフォールド」と、その認識能力を保存するために元の抗体のCDRの少なくとも1つと、を含む結合タンパク質を意味すると理解される。そのような誘導体化合物は当業者に周知であり、以下で更に詳細に説明される。
【0033】
より好ましくは、本発明は、遺伝子組換えまたは化学合成により得られる、特にキメラであるかヒト化された、本発明に係る抗体、その誘導体化合物、またはその機能的フラグメントを含む。
【0034】
好ましい態様によれば、本発明に係る抗体、またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つは、モノクローナル抗体からなることを特徴とする。
【0035】
「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体集団に由来する抗体と理解される。より具体的には、集団の個々の抗体は、自然に生じ得る最低限の量存在し得る少数の可能性のある変異体を除き、同一である。言い換えると、モノクローナル抗体は、ただ1つの細胞クローン(例えば、ハイブリドーマ;均質な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた真核宿主細胞、均質な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた原核宿主細胞等)の増殖により得られる均質な抗体からなり、通常、1種類の同じクラスおよびサブクラスの重鎖ならびに1種類だけの軽鎖により特徴付けられる。モノクローナル抗体は非常に特異性が高く、単一の抗原に対して作られている。更に、種々の決定基、すなわちエピトープに対して作られた種々の抗体を含むのが通例であるポリクローナル抗体標品とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原の単一のエピトープに対して作られている。
【0036】
本発明は天然型の抗体に関するものではなく、すなわち、それらは天然の環境から採取されたものではなく、天然源から出発して精製により単離または獲得することができたか、遺伝子組換えまたは化学合成により得ることができたものであり、したがって、後述するようにそれらは非天然アミノ酸を含有してもよいと理解されなければならない。
【0037】
IMGTの固有の番号付与システムは、抗原、鎖型、または種に関わらず可変ドメインを比較できるように定義されている[Lefranc M.-P., Immunology Today 18, 509 (1997);Lefranc M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999);Lefranc, M.-P., Pommie, C, Ruiz, M., Giudicelli, V., Foulquier, E., Truong, L., Thouvenin-Contet, V. and Lefranc, Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003)]。この番号付与システムにおいて、システイン23(1st−CYS)、トリプトファン41(CONSERVED TRP)、疎水性アミノ酸89、システイン104(2nd−CYS)、フェニルアラニンまたはトリプトファン118(J−PHEまたはTRP)等の保存されているアミノ酸は常に同じ位置を保持する。したがって、IMGTの固有の番号付与システムにより、スキャフォールド領域の標準化された境界が定められ(FR1−IMGT:1〜26位、FR2−IMGT:39〜55位、FR3−IMGT:66〜104位、およびFR4_IMGT:118〜128位)、また、相補性決定領域、すなわちCDRの標準化された境界が定められる(CDR1−IMGT:27〜38位、CDR2−IMGT:56〜65位、およびCDR3−IMGT:105〜117位)。「ホール(hole)」または「スペース(space)」は占有されていない位置を表すので、IMGTによるCDRの長さは非常に重要な情報になる。IMGTのシステムは、グラフィカルな2次元表示に用いられ(これはIMGTパールネックレスと呼ばれる)[Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., Immunogenetics, 53, 857-883 (2002);Kaas, Q. and Lefranc, M.-P., Current Bioinformatics, 2, 21-30 (2007)]、また、IMGT/3Dstructure−DBと呼ばれる3次元構造にも用いられる[Kaas, Q., Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., T cell receptor and MHC structural data. Nucl. Acids. Res., 32, D208-D210 (2004)]。
【0038】
本明細書において、抗体化合物またはその配列に関連する「ポリペプチド」、「ポリペプチド配列」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は相互に交換可能である。
【0039】
本発明は天然型の抗体に関するものではなく、すなわち、それらは天然の環境から採取されたものではなく、天然源から出発して精製により単離もしくは獲得され得たものまたは遺伝子組換えもしくは化学合成により得られ得たものであり、したがって、後述するようにそれらは非天然アミノ酸を含有してもよいと理解されなければならない。
【0040】
本発明において、2つの核酸またはアミノ酸配列の間の「同一性パーセンテージ」とは、最良のアラインメント(最適なアラインメント)後に得られる、比較されている2つの配列の間で同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージを意味し、このパーセンテージは完全に統計学的であり、2つの配列間の差はそれらの全長にわたってランダムに分布すると理解される。2つの核酸またはアミノ酸配列間の配列比較は通常、それらの配列を最適にアラインメントした後に比較することにより行われ、前記比較はセグメントごとに、すなわち「比較ウィンドウ」によって行うことができる。比較のための配列の最適なアラインメントは、手動で行う他に、Smith and Waterman (1981)[Ad. App. Math. 2:482]の局所的相同性アルゴリズムを用いるか、Neddleman and Wunsch (1970)[J. Mol. Biol. 48:443]の局所的相同性アルゴリズムを用いるか、Pearson and Lipman (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444]の類似性サーチ法を用いるか、それらのアルゴリズムを利用したコンピューターソフトウェア(ウィスコンシン州マディソン、サイエンスドライブ575のジェネティックス・コンピューター・グループ(Genetics Computer Group)のWisconsin Genetics Software Packageに含まれるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTAまたは比較ソフトウェアBLAST NもしくはBLAST P)を用いて行うことができる。
【0041】
2つの核酸またはアミノ酸配列間の同一性パーセンテージは、最適にアラインメントされた配列を比較することにより決定され、そらら2つの配列間での最適なアラインメントのために、比較対象の核酸またはアミノ酸配列は、参照配列に対して付加または欠失を含有してもよい。同一性パーセンテージは、2つの配列間でヌクレオチドまたはアミノ酸残基が同じである同一ポジションの数を決定し、この同一ポジションの数を比較ウィンドウ中の全ポジション数で割り、得られた結果に100を掛けて2配列間の同一性パーセンテージを得ることにより計算される。
【0042】
例えば、ウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlで利用可能なBLASTプログラム「BLAST2 sequences」(Tatusova et al., "Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences", FEMS Microbiol Lett. 174:247-250)を用いてよく、使用するパラメーターはデフォルトで与えられているものを使用し(特に、パラメーター「open gap penalty」は5、「extension gap penalty」は2;マトリックスの選択は、例えばプログラムが示唆する「BLOSUM 62」である)、比較される2つの配列間の同一性パーセンテージはプログラムによって直接算出される。
【0043】
参照アミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、および98%の同一性を有するアミノ酸配列として、参照配列に対して特定の変化、特に少なくとも1つのアミノ酸の欠失、付加、もしくは置換、切断、または延長を有するアミノ酸配列が好ましい。1または複数の連続的または非連続的アミノ酸の置換の場合、置換されるアミノ酸が「同等な」アミノ酸で置換されている置換が好ましい。本発明において、「同等なアミノ酸」という表現は、以下の特に実施例中に記載するように、対応する抗体の生物学的活性を基本的に変化させずに、基本構造のアミノ酸の1つに取って代わることができる、任意のアミノ酸を意味する。
【0044】
これらの同等なアミノ酸は、置換されているアミノ酸との構造的相同性に基づいてまたは生成され得る種々の抗体間の生物学的活性比較試験の結果に基づいて決定することができる。
【0045】
非限定的な例として、以下の表1は、対応する改変抗体の生物学的活性を基本的に変化させることなく行うことができる置換の可能性を示し、当然のことながら、同じ条件下で逆の置換も可能である。
【0046】
【表1】
【0047】
前述の通り、本発明は、本発明に係る抗体に由来する任意の化合物にも同様に関する。
【0048】
より具体的には、本発明に係る抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つは、前記誘導体化合物が、元の抗体のパラトピックな認識特性が完全にまたは一部保存されるように少なくとも1つのCDRがグラフトされたペプチドスキャフォールドを含む結合タンパク質からなることを特徴とする。
【0049】
本発明に記載されているCDRの配列のうちの1または複数の配列は、免疫グロブリンの種々のタンパク質スキャフォールド上、すなわちフレームワーク上に提供することもできる。この場合、タンパク質配列は、グラフト化された1または複数のCDRのフォールディングに好ましいペプチド骨格を再創出することを可能とし、それにより、CDRのパラトピックな抗原認識特性を保存することが可能になる。
【0050】
一般的に、当業者であれば、元の抗体に由来するCDRの少なくとも1つをグラフトするタンパク質スキャフォールドの種類を決定する方法が分かるであろう。より具体的には、選択のために、そのようなスキャフォールドは以下に挙げる最大数の基準を満たさなければならないことが知られている(Skerra A., J. Mol. Recogn. 13, 2000, 167-187):
・系統発生的によく保存されていること;
・3次元構造が公知であること(例えば、結晶学、NMR分光法、または当業者に公知の任意の他の技術から);
・サイズが小さいこと;
・転写後修飾がほとんどまたは全くないこと;および/または
・産生、発現、および精製が用意であること。
【0051】
そのようなタンパク質スキャフォールドの起源は、限定されるものではないが、以下から選択される構造であり得る:フィブロネクチン、好ましくは3型フィブロネクチンの10番目のドメイン、リポカリン、アンチカリン(anticalin)(Skerra A., J. BiotechnoL, 2001, 74(4):257-75)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のプロテインAのドメインBに由来するプロテインZ、チオレドキシンA、および「アンキリンリピート」(Kohl et al, PNAS, 2003, vol. 100, No. 4, 1700-1705)、「アルマジロリピート」、「ロイシンリッチリピート」、または「テトラトリコペプチド」型の反復モチーフを有するタンパク質。
【0052】
また、例えば、以下のサソリ、昆虫、植物、軟体動物等に由来する毒素または神経型NO合成酵素のタンパク質阻害剤(PIN)に由来するスキャフォールドも挙げることができる。
【0053】
何ら限定されるものではないが、そのようなハイブリッド構造の例としては、PINのループの1つへの抗CD4抗体すなわち13B8.2のCDR−H1(重鎖)の挿入を挙げることができ、それにより得られる新規な結合タンパク質は元の抗体と同じ結合特性を保持している(Bes et al., BBRC 343, 2006, 334-344)。また、例として、ネオカルチノスタチンのループの1つへの抗リゾチームVHH抗体のCDR−H3(重鎖)のグラフト化も挙げることができる(Nicaise et al., 2004)。
【0054】
最後に、上述のように、このようなペプチドスキャフォールドは、元の抗体に由来する1〜6個のCDRを含み得る。必須ではないが、好ましくは、当業者は抗体の特異性を主に担うことが知られている重鎖に由来する少なくとも1つのCDRを選択する。目的のための公知の技術を用いた関連するCDRの選択は当業者には明らかである(Bes et al., FEBS letters 508, 2001 67-74)。
【0055】
明らかに、これらの例は何ら限定するものではなく、当業者に既知または自明の他の構造も本特許出願の保護の範囲内に含まれると見なされなければならない。
【0056】
よって、本発明は、a)系統発生的に良く保存されており、b)構造が強固であり、c)3次元分子組織が周知であり、d)サイズが小さく、且つ/またはe)安定性特性を変化させずに欠失および/または挿入により改変することができる領域を含むタンパク質から前記ペプチドスキャフォールドが選択されることを特徴とする、抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つに関する。
【0057】
好ましい態様では、本発明に係る抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つは、ペプチドスキャフォールドが以下のi〜iiiから選択されることを特徴とする:i)フィブロネクチン、好ましくは3型フィブロネクチンの10番目のドメイン、リポカリン、アンチカリン、黄色ブドウ球菌のプロテインAのドメインBに由来するプロテインZ、チオレドキシン、に由来するスキャフォールド、ii)「アンキリンリピート」、「アルマジロリピート」、「ロイシンリッチリピート」、または「テトラトリコペプチドリピート」型の反復モチーフを有するタンパク質、およびiii)神経型NO合成酵素のタンパク質阻害剤(PIN)。
【0058】
本発明の別の態様では、前述した抗体の機能的フラグメントについても同様の言及がなされる。
【0059】
より具体的には、本発明は、機能的フラグメントが、Fv、Fab、(Fab’)2、Fab’、scFv、およびscFv−Fcフラグメント、ならびに二重特異性抗体、ならびにペグ化フラグメントのような半減期が延長されているであろう任意のフラグメントから選択されることを特徴とする、抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つに関する。
【0060】
本発明に係る抗体のそのような機能的フラグメントは、例えばFv、scFv(scは単鎖を表す)、Fab、F(Ab’)2、Fab’、もしくはscFv−Fcフラグメント、または二重特異性抗体、あるいは化学修飾、例えばポリ(エチレン)グリコール等のポリ(アルキレン)グリコールの付加(「ペグ化」)(ペグ化フラグメントはFv−PEG、scFv−PEG、Fab−PEG、F(Ab’)2−PEG、またはFab’−PEGと呼ばれる)(「PEG」はPoly(Ethylene)Glycolの表記に由来)によりまたはリポソーム、マイクロスフェア、もしくはPLGA中に取り込ませることにより半減期が延長されているであろう任意のフラグメントからなり、前記フラグメントは、本発明に係る特徴的CDRの少なくとも1つを含み、特に、一般に、それが由来する抗体の活性を部分的であっても発揮することができる。
【0061】
好ましくは、前記機能的フラグメントは、それが由来する抗体の重鎖または軽鎖の可変部の部分的配列を含み、前記部分的配列は、それが由来する抗体と同じ結合特異性および十分な親和性、好ましくはそれが由来する抗体の少なくとも1/100、より好ましくは少なくとも1/10の親和性を保持するのに十分な長さである。
【0062】
そのような機能的フラグメントは、それが由来する抗体の配列からの、少なくとも5個の連続するアミノ酸、好ましくは10、15、25、50、または100個の連続するアミノ酸を含む。
【0063】
少なくとも以下を含む機能的フラグメントも好ましい:
・配列番号7に含まれる軽鎖の3つのCDRおよび配列番号7の配列からの112個の連続するアミノ酸、好ましくは115、125、175、200、または210個の連続するアミノ酸;および/または
・配列番号8または9に含まれる重鎖の3つのCDRおよび配列番号8または9の配列からの119個の連続するアミノ酸、好ましくは125、150、200、250、または300個の連続するアミノ酸。
【0064】
少なくとも以下を含む機能的フラグメントも好ましい:
・配列番号25または37に含まれる軽鎖の3つのCDRおよび配列番号25または37の配列からの108個の連続するアミノ酸、好ましくは115、125、175、200、または210個の連続するアミノ酸;および/または
・配列番号26、27、または38に含まれる重鎖の3つのCDRおよび配列番号26、27、または38の配列からの120個の連続するアミノ酸、好ましくは125、150、200、250、または300個の連続するアミノ酸。
【0065】
好ましくは、これらの機能的フラグメントは、一般にそれが得られた抗体と同じ結合特異性を有するFv、scFv、Fab、F(Ab’)2、F(Ab’)、scFv−Fc型のフラグメント、または二重特異性抗体である。本発明によれば、本発明の抗体のフラグメントは、前述した抗体から出発して、ペプシンもしくはパパイン等の酵素を用いた消化および/または化学的還元を用いたジスルフィドブリッジの切断等の方法により得ることができる。本発明に含まれる抗体フラグメントは、当業者に同様に周知である遺伝子組換え技術によって、あるいは例えばアプライドバイオシステムズ社等から供給されているような自動ペプチド合成機を用いたペプチド合成によっても得ることができる。
【0066】
別の特定の態様によれば、本発明は、マウスとは異なる種、特にヒトの抗体に由来する軽鎖および重鎖の定常領域を更に含むことを特徴とする、本発明に係るキメラ抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つに関する。
【0067】
本発明の別の態様によれば、ヒト化抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つは、ヒト抗体に由来する軽鎖および重鎖の定常領域がそれぞれラムダまたはカッパ領域およびガンマ−1、ガンマ−2、またはガンマ−4領域であることを特徴とする。
【0068】
別の態様によれば、本発明は、本発明に係るキメラモノクローナル抗体c203B6[IgG1]およびc203B6[IgG4]が由来する第1のマウスハイブリドーマ、特に2008年2月22日に番号I−3920でCentre National de Cultures de Microorganismes(CNCM)(フランス、パリのパスツール研究所)に寄託されたマウス起源のハイブリドーマに関する。前記ハイブリドーマは、免疫化したBalb/cマウス脾細胞およびSp 2O Ag 14ミエローマ細胞系の融合により得られた。
【0069】
最後に、別の態様によれば、本発明は、本発明に係るキメラモノクローナル抗体c214B2[IgG1]およびc214B2[IgG4]が由来する第2のマウスハイブリドーマ、特に2008年2月21日に番号I−3919でCentre National de Cultures de Microorganismes(CNCM)(フランス、パリのパスツール研究所)に寄託されたマウス起源のハイブリドーマに関する。前記ハイブリドーマは、免疫化したBalb/cマウス脾細胞およびSp 2O Ag 14ミエローマ細胞系の融合により得られた。
【0070】
以下の表2に、本発明に係る種々の抗体に対応する種々のアミノ酸配列を、参考のためにIMGTに従って定義されるCDR配列ならびにキメラ軽鎖および重鎖と共に要約する。
【0071】
【表2】
【0072】
本発明に係る抗体には、ヒト化抗体(Hzまたはhz)と言及される特別なキメラ型の抗体も含有される。
【0073】
ヒト化抗体とは、非ヒト起源の抗体に由来するCDR領域を含み且つ抗体分子の他の部分が1(または複数)のヒト抗体またはヒト生殖系列に由来する抗体を意味すると理解される。更に、(FRと呼ばれる)骨格のセグメントの残基の一部を、結合親和性を保存するために改変してもよい(Jones et al., Nature, 321:522-525, 1986;Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536, 1988;Riechmann et al., Nature, 332:323-327, 1988)。
【0074】
本発明に係るヒト化抗体またはそのフラグメントは、当業者に公知の技術(例えば、文献Singer et al., J. Immun. 150:2844-2857, 1992;Mountain et al, Biotechnol. Genet. Eng. Rev., 10:1-142, 1992;またはBebbington et al, Bio/Technology, 10:169-175, 1992に記載されている技術等)により作製することができる。本発明に係るそのようなヒト化抗体は、インビトロでの診断法またはインビボでの予防的および/もしくは治療的処置における使用に好ましい。他のヒト化技術、例えば、欧州特許第0451261号、同第0682040号、同第0939127号、同第0566647号、米国特許第5,530,101号、同第6,180,370号、同第5,585,089号、および同第5,693,761号の主題である、PDLに記載されている「CDRグラフト化(CDR Grafting)」の技術等も当業者に公知である。更に、米国特許第5,639,641号、同第6,054,297号、同第5,886,152号、および同第5,877,293号を挙げることができる。
【0075】
更に、本発明は前述のキメラ抗体に由来するヒト化抗体にも関する。
【0076】
好ましくは、ヒト抗体に由来する軽鎖および重鎖の定常領域は、それぞれ、ラムダまたはカッパ領域およびガンマ−1、ガンマ−2、またはガンマ−4領域である。
【0077】
より具体的には、以下の実施例に関してより明らかになるように、本出願人は、本発明に係る抗体のヒト化バリアントを複数作製した。
【0078】
別の好ましい態様では、本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号46、47、48、もしくは49のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号46、47、48、もしくは49の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する軽鎖可変ドメインおよび/または配列番号50、51、52、もしくは53のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号50、51、52、もしくは53の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する重鎖可変ドメインを含むことを特徴とする。
【0079】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号46のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖可変ドメインHz214B2VLVar1と、配列番号50のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1、配列番号51のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2、配列番号52のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3、および配列番号53のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4からなる群から選択される重鎖可変ドメインとを含むことを特徴とする。
【0080】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号47のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖可変ドメインHz214B2VLVar2と、配列番号50のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1、配列番号51のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2、配列番号52のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3、および配列番号53のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4からなる群から選択される重鎖可変ドメインとを含むことを特徴とする。
【0081】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号48のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖可変ドメインHz214B2VLVar3と、配列番号50のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1、配列番号51のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2、配列番号52のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3、および配列番号53のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4からなる群から選択される重鎖可変ドメインとを含むことを特徴とする。
【0082】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号49を含む配列を有する軽鎖可変ドメインHz214B2VLVar4と、配列番号50のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1、配列番号51のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2、配列番号52のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3、および配列番号53のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4からなる群から選択される重鎖可変ドメインとを含むことを特徴とする。
【0083】
本発明の第1の好ましい態様は、配列番号46のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン配列および配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar1VHVar1またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0084】
本発明の第2の好ましい態様は、配列番号47のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン配列および配列番号51のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar2VHVar2またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0085】
本発明の第3の好ましい態様は、配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン配列および配列番号52のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar3VHVar3またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0086】
本発明の第4の好ましい態様は、配列番号49のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン配列および配列番号53のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar4VHVar4またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0087】
別の態様では、本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号62、63、64、もしくは65のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号62、63、64、もしくは65の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する軽鎖ならびに/または配列番号66、67、68、69、70、71、72、もしくは73のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号66、67、68、69、70、71、72、もしくは73の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する重鎖を含むことを特徴とする。
【0088】
より具体的には、本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントはIgG1であり、また、配列番号62、63、64、もしくは65のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号62、63、64、もしくは65と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する軽鎖および/または配列番号66、67、68、もしくは69のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号66、67、68、もしくは69の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する重鎖を含むことを特徴とする。
【0089】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号62のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar1と、配列番号66のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G1)、配列番号67のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G1)、配列番号68のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G1)、および配列番号69のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G1)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0090】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号63のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar2と、配列番号66のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G1)、配列番号67のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G1)、配列番号68のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G1)、および配列番号69のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G1)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0091】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号64のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar3と、列番号66のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G1)、配列番号67のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G1)、配列番号68のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G1)、および配列番号69のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G1)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0092】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号65のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar4と、配列番号66のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G1)、配列番号67のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G1)、配列番号68のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G1)、および配列番号69のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G1)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0093】
本発明の第1の好ましい態様は、配列番号62のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号66のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar1VHVar1(G1)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0094】
本発明の第2の好ましい態様は、配列番号63のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号67のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar2VHVar2(G1)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0095】
本発明の第3の好ましい態様は、配列番号64のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号68のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar3VHVar3(G1)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0096】
本発明の第4の好ましい態様は、配列番号65のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号69のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar4VHVar4(G1)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0097】
本発明の第5の好ましい態様は、配列番号64のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号67のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar3VHVar2(G1)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0098】
本発明の第6の好ましい態様は、配列番号63のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号68のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar2VHVar3(G1)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0099】
より具体的には、本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントはIgG2であり、また、配列番号62、63、64、もしくは65のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号62、63、64、もしくは65の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する軽鎖および/または配列番号70、71、72、もしくは73のアミノ酸配列を含む配列を有するか最適なアラインメント後に配列番号70、71、72、もしくは73の配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する重鎖を含むことを特徴とする。
【0100】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号62のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar1と、配列番号70のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G2)、配列番号71のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G2)、配列番号72のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G2)、および配列番号73のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G2)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0101】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号63のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar2と、配列番号70のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G2)、配列番号71のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G2)、配列番号72のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G2)、および配列番号73のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G2)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0102】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号64のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar3と、配列番号70のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G2)、配列番号71のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G2)、配列番号72のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G2)、および配列番号73のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G2)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0103】
本発明のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメントは、配列番号65のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖Hz214B2VLVar4と、配列番号70のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar1(G2)、配列番号71のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar2(G2)、配列番号72のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar3(G2)、および配列番号73のアミノ酸配列を含む配列を有するHz214B2VHVar4(G2)からなる群から選択される重鎖とを含むことを特徴とする。
【0104】
本発明の第1の好ましい態様は、配列番号62のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号70のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar1VHVar1(G2)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0105】
本発明の第2の好ましい態様は、配列番号63のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号71のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar2VHVar2(G2)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0106】
本発明の第3の好ましい態様は、配列番号64のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号72のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar3VHVar3(G2)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0107】
本発明の第4の好ましい態様は、配列番号65のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号73のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar4VHVar4(G2)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0108】
本発明の第5の好ましい態様は、配列番号64のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号71のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar3VHVar2(G2)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0109】
本発明の第6の好ましい態様は、配列番号63のアミノ酸配列を含む軽鎖配列および配列番号72のアミノ酸配列を含む重鎖配列を含むヒト化抗体Hz214B2VLVar2VHVar3(G2)またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントを開示する。
【0110】
以下の表3に、本発明に係る種々の抗体に対応する種々のアミノ酸配列を、参考のためにIMGTに従い定義されるCDR配列ならびに種々のヒト化軽鎖および重鎖と共に要約する。
【0111】
【表3】
【0112】
ヒンジ領域を安定化してより均質な抗体を発現させるために、Angal et al., 1993に記載されているようにIgG4由来抗体を更に改変してもよい(Ser226からProへの変化)。
【0113】
IgG1またはIgG2アイソタイプに対応する態様における抗体の更なる特徴は、ADCC(抗体依存性細胞傷害)および/またはCDC(補体依存性細胞傷害)等のエフェクター機能を有することである。
【0114】
免疫グロブリンの重鎖は、Fd領域、ヒンジ領域、およびFc領域(結晶化可能フラグメント)の3つの機能的領域に分けられる。Fd領域は、VHドメインおよびCH1ドメインを含み、軽鎖と共にFab、すなわち抗原結合性断片を形成する。Fcフラグメントは、免疫グロブリンのエフェクター機能を担い、エフェクター機能には、例えばエフェクター細胞の同族Fc受容体への補体の固定および結合が含まれる。ヒンジ領域は、IgG、IgA、およびIgDの免疫グロブリンクラスに見られ、Fc領域に対してFab部分が空間中で自由に動けるようにする柔軟なスペーサーとして働く。ヒンジドメインは構造的に多様であり、免疫グロブリンのクラスおよびサブクラス間で配列および長さのどちらも異なる。
【0115】
結晶学的研究によれば、免疫グロブリンのヒンジ領域は構造的および機能的に更に3つの領域、すなわち上側ヒンジ(upper hinge)、コア、および下側ヒンジ(lower hinge)に細分することができる(Shin et al., Immunological Reviews 130:87, 1992)。上側ヒンジはCH1のカルボキシル末端から動きを制限するヒンジ中の最初の残基まで、通常、2つの重鎖間で鎖間ジスルフィド結合を形成する最初のシステイン残基までのアミノ酸を含む。上側ヒンジ領域の長さは、抗体のセグメントの柔軟性に関連する。コアヒンジ領域は重鎖間ジスルフィドブリッジを含有する。下側ヒンジ領域は、CH2ドメインのアミノ末端をつなぎ、CH2ドメインの残基を含む。ヒトIgG1のコアヒンジ領域は、配列Cys−Pro−Pro−Cysを含有し、これはジスルフィド結合形成により二量体化した時に、軸として働くと考えられている環状オクタペプチドを生じ、柔軟性を付与する。免疫グロブリンのヒンジ領域ポリペプチド配列の構造および柔軟性により可能なコンホメーション変化は、抗体のFc部分のエフェクター機能に影響を与え得る。
【0116】
本発明の特定の態様によれば、本発明に係るキメラ抗体は、配列番号41のアミノ酸配列を含むヒンジ領域を含むことを特徴とする。
【0117】
より具体的には、キメラ抗体c214B2は、配列番号37のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および配列番号38のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む。
【0118】
更に、以下の実施例に示されるように、本発明に係る抗体は、腫瘍細胞の増殖を阻害できるという点で、これまで知られている抗体と異なる。
【0119】
前述したように、CD151タンパク質はテトラスパニンファミリーに属し、そのため、細胞外ループとも呼ばれる2個の細胞外ドメインEC1(18アミノ酸、配列[40〜57])およびEC2(109アミノ酸、配列[113〜221])を含有する。
【0120】
本発明によれば、使用される抗体は、細胞外ドメインに位置する少なくとも1つのエピトープに結合することができる。好ましくは、前記抗体は、自身をループEC1および/またはEC2に固定する。
【0121】
より具体的には、本発明の好ましい態様では、それぞれCD151タンパク質のアミノ酸40〜57および113〜221に対応する細胞外ループ1(EC1)および/または2(EC2)、好ましくはEC2、に含まれるエピトープに結合できる少なくとも1つの抗CD151抗体またはその機能的フラグメントの1つの使用が記載される。
【0122】
EC1ループ[40〜57]は18アミノ酸を含有し、理論重量は2002.2Daである。
【0123】
EC2ループ[113〜221]はN−グリコシル化部位(残基Asn159)および3個のジスルフィドブリッジを形成する6個のシステイン残基を有する。テトラスパニン、特にCD151のEC2ループの構造モデルがテトラスパニンCD81のEC2ループの3次元構造に基づいて提唱されている(Seigneuret et al., 2001, J. Biol. Chem. 276, 40055-40064)。そのモデルに基づくと、テトラスパニンは、3個のαヘリックスおよび特異的可変ドメインから構成される一般的な比較的保存されたスキャフォールドを有する。CD151では、このスキャフォールドは領域[113〜157]および[209〜221]で構成されると考えられ、可変ドメインは領域[158〜208]で構成されると考えられる。
【0124】
EC2ループの可変ドメインは特に、CD151とインテグリンファミリーのタンパク質との特異的相互作用に関与すると考えられる。定方向突然変異実験により、インテグリンα3β1またはα6β4等の特定のラミニン受容体インテグリンとのCD151の会合において、領域[193〜208]、より正確にはトリペプチドQRD[194〜196]および192位のシステイン残基の重要性が特に示された(Kazarov et al., 2002, J. Cell Biol. 158, 1299-1309)。
【0125】
更により好ましくは、本発明は、EC2領域のエピトープに結合できる少なくとも1つの抗CD151抗体またはその機能的フラグメントの1つの使用に関する。
【0126】
新規な態様では、本発明は、以下の核酸から選択されることを特徴とする単離された核酸に関する:
a)上記a)で定義された抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つをコードするDNAまたはRNA核酸;
b)上記で定義した核酸に相補的な核酸;
c)高ストリンジェンシー条件下で、配列番号16〜18、34〜36、39、40、45、54〜61、もしくは74〜85の核酸配列の少なくとも1つまたは最適なアラインメント後に前記配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、もしくは98%の同一性を有する配列とハイブリダイズできる少なくとも18ヌクレオチドの核酸。
【0127】
以下の配列の群から選択される核酸配列の少なくとも1つと高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズできる少なくとも18ヌクレオチドの核酸がより好ましい:
・配列番号16の配列を起源とし、配列番号7の配列のフラグメントaa112〜218をコードする配列;
・配列番号17の配列を起源とし、配列番号8の配列のフラグメントaa119〜448をコードする配列;
・配列番号18の配列を起源とし、配列番号9の配列のフラグメントaa119〜445をコードする配列;
・配列番号34の配列を起源とし、配列番号25の配列のフラグメントaa108〜214をコードする配列;
・配列番号35の配列を起源とし、配列番号26の配列のフラグメントaa120〜449をコードする配列;および
・配列番号36の配列を起源とし、配列番号27の配列のフラグメントaa120〜446をコードする配列。
・配列番号39の配列を起源とし、配列番号37の配列のフラグメントaa108〜214をコードする配列;および
・配列番号40の配列を起源とし、配列番号38の配列のフラグメントaa120〜449をコードする配列。
・配列番号45の配列を起源とし、配列番号44の配列のフラグメントaa139〜463をコードする配列;
・配列番号74の配列を起源とし、配列番号62の配列のフラグメントaa108〜214をコードする配列;
・配列番号75の配列を起源とし、配列番号63の配列のフラグメントaa108〜214をコードする配列;
・配列番号76の配列を起源とし、配列番号64の配列のフラグメントaa108〜214をコードする配列;
・配列番号77の配列を起源とし、配列番号65の配列のフラグメントaa108〜214をコードする配列;
・配列番号78の配列を起源とし、配列番号66の配列のフラグメントaa120〜449をコードする配列;
・配列番号79の配列を起源とし、配列番号67の配列のフラグメントaa120〜449をコードする配列;
・配列番号80の配列を起源とし、配列番号68の配列のフラグメントaa120〜449をコードする配列;
・配列番号81の配列を起源とし、配列番号69の配列のフラグメントaa120〜449をコードする配列;
・配列番号82の配列を起源とし、配列番号70の配列のフラグメントaa120〜444をコードする配列;
・配列番号83の配列を起源とし、配列番号71の配列のフラグメントaa120〜444をコードする配列;
・配列番号84の配列を起源とし、配列番号72の配列のフラグメントaa120〜444をコードする配列;および
・配列番号85の配列を起源とし、配列番号73の配列のフラグメントaa120〜444をコードする配列。
【0128】
以下の表4に、本発明に係る抗体に関係する種々のヌクレオチド配列を、IMGTに従い定義されるCDR配列ならびにキメラ軽鎖および重鎖と共に要約する。
【0129】
【表4】
【0130】
以下の表5に、本発明に係る抗体に関係する種々のヌクレオチド配列を、IMGTに従い定義されるCDR配列ならびに種々のヒト化軽鎖および重鎖と共に要約する。
【0131】
【表5】
【0132】
核酸、核酸配列、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド配列、ヌクレオチド配列という用語は、本明細書において相互に交換可能に使用されており、非天然ヌクレオチドを含んでも含まなくてもよい核酸のフラグメントまたは領域を定義することを可能にする、修飾されていてもいなくてもよい、ヌクレオチドの正確な連結を意味し、これは二本鎖DNA、一本鎖DNA、および前記DNAの転写産物にも同様に対応し得ると理解される。
【0133】
また、本発明において、本発明は、天然の染色体環境にあるヌクレオチド配列、すなわち天然の状態にあるヌクレオチド配列に関するものではないと理解されなければならない。これらは、単離および/または精製された配列であり、すなわち、例えば複製することにより直接または間接的に抽出されており、そららの環境は少なくとも部分的に改変されている。また、本発明において、これらは、例えば宿主細胞を用いた遺伝子組換えにより得られるまたは化学合成により得られる単離された核酸を意味すると理解される。
【0134】
最適なアラインメント後に好ましい配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%、または98%の同一性パーセンテージを有する核酸配列とは、参照配列に対して特定の改変、特に欠失、切断、延長、キメラ融合、および/または置換、特に点置換等を有する核酸配列を意味すると理解される。これらは、特に後述するように、好ましくは、遺伝暗号の縮重により参照配列と同じアミノ酸配列をコードする配列または好ましくは高ストリンジェンシー条件下で参照配列と特異的にハイブリダイズできる相補的配列である。
【0135】
高ストリンジェンシー条件下でのハイブリダイゼーションとは、DNAの2つの相補的フラグメント間でのハイブリダイゼーションを維持することができるように温度およびイオン強度の条件が選択されていることを意味する。例として、前述のポリヌクレオチドフラグメントを定義するためのハイブリダイゼーション工程の高ストリンジェンシー条件は、好ましくは以下の通りである。
【0136】
DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションは2段階で行われる:(1)5×SSC(1×SSCは、0.15M NaCl+0.015M クエン酸ナトリウムの溶液に相当)、50%ホルムアミド、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10×デンハルト液、5%硫酸デキストラン、および1%サケ精子DNAを含有するリン酸バッファー(20mM、pH7.5)中での42℃、3時間のプレハイブリダイゼーション;(2)プローブのサイズに応じた温度(すなわち、100ヌクレオチドより大きいサイズのプローブでは42℃)で20時間の適切なハイブリダイゼーション、次いで、2×SSC+2%SDS中で20℃、20分間の洗浄を2回、0.1×SSC+0.1%SDS中で20℃、20分間の洗浄を1回。最後の洗浄は、100ヌクレオチドを超えるサイズのプローブでは0.1×SSC+0.1%SDS中で60℃にて30分間行う。当業者は、上記の規定のサイズのポリヌクレオチドのための高ストリンジェンシー条件を、Sambrook et al., (1989, Molecular cloning: a laboratory manual. 2nd Ed. Cold Spring Harbor)の教示に従い、より大きいまたは小さいサイズのオリゴヌクレオチド用に適合させることができる。
【0137】
本発明は更に、本発明に係る核酸を含むベクターに関する。
【0138】
本発明は、特に、本発明に係るヌクレオチド配列を含有するクローニングおよび/または発現ベクターに関する。
【0139】
本発明に係るベクターは、好ましくは、特定の宿主細胞中でのヌクレオチド配列の発現および/または分泌を可能にするエレメントを含む。次いで、ベクターは、プロモーター、翻訳の開始および終結シグナル、ならびに適切な転写調節領域を含まなければならない。ベクターは、宿主細胞中に安定に維持することができなければならず、必要に応じて、翻訳されたタンパク質を分泌させる特定のシグナルを有してもよい。これらの種々のエレメントは、使用される細胞宿主に応じて当業者により選択および最適化される。そのために、本発明に係るヌクレオチド配列は、選択された宿主内の自己複製ベクター中に挿入してもよく、選択された宿主に組み込まれるベクターであってもよい。
【0140】
そのようなベクターは、当業者が通常用いる方法により調製され、得られたクローンは、リポフェクション、エレクトロポレーション、ヒートショック、または化学的方法等の標準的な方法により好適な宿主中に導入することができる。
【0141】
本発明に係るベクターは、例えば、プラスミドまたはウイルス起源のベクターである。これらは、本発明に係るヌクレオチド配列をクローニングまたは発現するための宿主細胞の形質転換に有用である。
【0142】
本発明はまた、本発明に係るベクターにより形質転換されたまたは本発明に係るベクターを含有する宿主細胞を含む。
【0143】
細胞宿主は、原核系から選択してもよく、真核系から選択されてもよく、例えば細菌細胞、酵母細胞、または動物細胞、特に哺乳動物細胞から選択されてよい。昆虫細胞または植物細胞を使用してもよい。
【0144】
本発明は更に、本発明に係る形質転換細胞を含む、ヒト以外の動物に関する。
【0145】
別の態様によれば、本発明は、以下の工程を含むことを特徴とする、本発明に係る抗体またはその機能的フラグメントの1つを産生する方法に関する:
a)好適な培養培地中および好適な培養条件下での本発明に係る宿主細胞の培養;および
b)前記培養培地または前記培養細胞からその結果産生された前記抗体またはその機能的フラグメントの回収。
【0146】
本発明に係る形質転換細胞は、本発明に係る組換えポリペプチドの調製方法にも使用することができる。本発明に係るベクターおよび/またはベクターで形質転換された細胞を用いることを特徴とする、組換え型の本発明に係るポリペプチドの調製方法自体も本発明に含まれる。好ましくは、本発明に係るベクターで形質転換された細胞を前記ポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養し、前記組換えペプチドを回収する。
【0147】
既に述べたように、細胞宿主は原核系から選択されてもよく、真核系から選択されてもよい。特に、そのような原核系または真核系における分泌を容易にする本発明に係るヌクレオチド配列を同定することが可能である。したがって、そのような配列を有する本発明に係るベクターは、分泌されることを意図した組換えタンパク質の産生に有利に使用することができる。実際、これらの目的の組換えタンパク質の精製は、これらが宿主細胞の内部ではなく細胞培養液の上清に存在することにより、容易になる。
【0148】
本発明に係るポリペプチドを化学合成により調製することも可能である。そのような調製方法も本発明に主題に含まれる。当業者には、化学合成の方法、例えば固相を用いた技術(特にSteward et al., 1984, Solid phase peptides synthesis, Pierce Chem. Company, Rockford, 111, 2nd Ed., (1984)参照)、部分的固相を用いた技術、フラグメントの縮合を用いた技術、または従来の溶液中での合成を用いた技術は公知である。対応する非天然アミノ酸を含有していてもよい化学合成で得られたポリペプチドも本発明に含まれる。
【0149】
本発明に係る方法により得ることができる抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントも本発明に含まれる。
【0150】
更に別の態様では、本発明は、更に二重特異性である、すなわち、CD151以外のヒトタンパク質またはヒト受容体に特異的に結合できることを特徴とする上記の抗体に関する。
【0151】
二重特異性、または二機能性の抗体は、同じ分子中で2つの異なる可変領域が組み合わされた第2世代のモノクローナル抗体を構成する(Hollinger and Bohlen, 1999, Cancer and metastasis rev. 18: 411-419)。その有用性は、新規なエフェクター機能をリクルートする能力または腫瘍細胞表面上の複数の分子を標的にする能力により、診断分野および治療分野の両方で実証されている。これらの抗体は、化学的方法(Glennie MJ et al. 1987 J. Immunol. 139, 2367-2375;Repp R. et al. 1995 J. Hemat. 377-382)または体細胞的方法(Staerz U.D. and Bevan M.J. 1986 PNAS 83, 1453-1457;Suresh M.R. et al. 1986 Method Enzymol. 121: 210-228)により得ることができ、更に、好ましくは,、ヘテロ二量体を形成させることで求める抗体の精製方法を容易化することができる遺伝子工学技術(Merchand et al. 1998 Nature Biotech. 16: 677-681)によっても得ることができる。
【0152】
これらの二重特異性抗体は、IgG全体として、二重特異性Fab’2として、Fab’PEGとして、または二重特異性抗体もしくは二重特異性scFvとして構築することができ、更に、標的の抗原それぞれに対して2つの固定部位が存在する四価の二重特異性抗体(Park et al. 2000 Mol. Imnmunol. 37(18): 1123-30)または前述のようにそのフラグメントとしても構築することができる。
【0153】
二重特異性抗体の産生および投与が2種類の特異的抗体の産生ほど面倒でないことによる経済的利点に加え、そのような二重特異性抗体の使用は、処置の毒性が低減されるという利点がある。二重特異性抗体を使用することで、実際、循環する抗体の全体量を低減することができ、その結果、潜在的な毒性を低減することができる。
【0154】
本発明の好ましい態様では、二重特異性抗体は二価または四価の抗体である。
【0155】
最後に、本発明は、医薬としての上記の抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
【0156】
本発明は更に、本発明に係る抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つからなる化合物を活性成分として含む医薬組成物に関する。好ましくは、前記抗体に、補形剤および/または薬学的に許容されるキャリアが添加される。
【0157】
更に別の態様によれば、本発明は更に、同時使用、個別使用、または時間差使用のための組合せ製品(combination product)として、少なくとも1つの他の抗体、細胞毒性(cytotoxic)/細胞増殖抑制(cytostatic)剤、細胞毒、または放射性元素を更に含む、上記医薬組成物に関する。
【0158】
「同時使用」とは、同じ1つの製剤に含有される本発明に係る組成物の2つの化合物の投与と理解される。
【0159】
「個別使用」とは、別個の製剤に含有される本発明に係る組成物の2つの化合物の同時投与として理解される。
【0160】
「時間差使用(time−staggered use)」とは、それぞれが別個の製剤に含有される本発明に係る組成物の2つの化合物の逐次投与として理解される。
【0161】
一般的に、本発明に係る組成物は、癌の処置の有効性をかなり増加させる。言い換えると、本発明に係る抗体の治療効果は、細胞毒性薬剤の投与により予想外に増強される。本発明に係る組成物によりその結果得られるもう1つの主な利点は、使用する活性成分の有効量がより少なくなることに関連し、これにより、副次的影響、特に細胞毒性薬剤の影響が現れるリスクを回避または低減することができる。更に、本発明に係るこの組成物は、予期される治療効果をより迅速に達成することを可能にするはずである。
【0162】
「抗癌治療薬剤」または「細胞毒性薬剤」は、患者に投与された時に、患者における癌の発症を処置または防止する物質として理解されるべきである。そのような薬剤の非限定的な例として、「アルキル化」剤、代謝拮抗薬、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害剤、クロマチン機能阻害剤、血管形成阻害剤、抗エストロゲン薬、抗アンドロゲン薬、または免疫調節剤を挙げることができる。
【0163】
そのような薬剤は、例えば、VIDALの腫瘍学および血液学に関する頁の「細胞毒性薬剤」の欄に記載されており、この文献に参照として記載されているそのような細胞毒性化合物が本発明において好ましい細胞毒性薬剤として挙げられる。
【0164】
「アルキル化剤」とは、細胞内の任意の分子(好ましくは核酸(例えばDNA))に共有結合するかこれをアルキル化できる任意の物質を意味する。そのようなアルキル化剤の例として、ナイトロジェンマスタード、例えばメクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン塩酸塩、ピポブロマン、プレドニムスチン第二リン酸ナトリウム(prednimustine disodium phosphate)、またはエストラムスチン;オキサゾホリン(oxazophorine)、例えばシクロホスファミド、アルトレタミン、トロホスファミド、スルホスファミド、またはイホスファミド;アジリジンまたはエチレン−イミン、例えばチオテパ、トリエチレンアミン、またはアルテトラミン(altetramine);ニトロソウレア、例えばカルムスチン、ストレプトゾシン、フォテムスチン、またはロムスチン;アルキルスルホン酸塩、例えばブスルファン、トレオスルファン、またはインプロスルファン;トリアゼン、例えばダカルバジン;および白金複合体、例えばシスプラチン、オキサリプラチン、またはカルボプラチンを挙げることができる。
【0165】
「代謝拮抗薬」とは、特定の活性、一般的にはDNA合成、を妨げることで細胞成長および/または細胞代謝をブロックする物質を意味する。代謝拮抗薬の例としては、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、5−フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、シトシンアラビノシド、6−メルカプトプリン(6−MP)、6−チオグアニン(6−TG)、クロロデオキシアデノシン、5−アザシチジン、ゲムシタビン、クラドリビン、デオキシコホルマイシン、およびペントスタチンを挙げることができる。
【0166】
「抗腫瘍抗生物質」とは、DNA、RNA、および/またはタンパク質の合成を防止または阻害できる化合物を意味する。そのような抗腫瘍抗生物質の例としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ダクチノマイシン、ミトラマイシン、プリカマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、およびプロカルバジンが含まれる。
【0167】
「有糸分裂阻害剤」は細胞周期および有糸分裂の正常な進行を防止する。一般的に、微小管阻害剤または「タキソイド」、例えばパクリタキセルおよびドセタキセルは、有糸分裂を阻害することができる。ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン等のビンカアルカロイドも有糸分裂を阻害することができる。
【0168】
「クロマチン機能阻害剤」または「トポイソメラーゼ阻害剤」とは、トポイソメラーゼI、II等のクロマチン再構築タンパク質の正常な機能を阻害する物質を意味する。そのような阻害剤の例としては、トポイソメラーゼIに対してはカンプトテシン、更にその誘導体、例えばイリノテカンまたはトポテカン、トポイソメラーゼIIに対してはエトポシド、リン酸エチポシド、およびテニポシドが含まれる。
【0169】
「血管新生阻害剤」とは、血管の成長を阻害する任意の薬物、化合物、物質、または薬剤を意味する。血管新生阻害剤の例としては、限定されるものではないが、ラゾキシン、マリマスタット、バチマスタット、プリノマスタット、タノマスタット、イロマスタット、CGS−27023A、ハロフジノン、COL−3、ネオバスタット、BMS−275291、サリドマイド、CDC 501、DMXAA、L−651582、スクアラミン、エンドスタチン、SU5416、SU6668、インターフェロン−アルファ、EMD121974、インターロイキン−12、IM862、アンジオスタチン、およびビタキシン(vitaxin)が含まれる。
【0170】
「抗エストロゲン薬」または「抗エストロゲン剤」とは、エストロゲンの作用を低減、拮抗、または阻害する任意の物質を意味する。そのような薬剤の例としては、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、イオドキシフェン、アナストロゾール、レトロゾール、およびエキセメスタンが挙げられる。
【0171】
「抗アンドロゲン薬」または「抗アンドロゲン剤」とは、アンドロゲンの作用を低減、拮抗、または阻害する任意の物質を意味する。抗アンドロゲン薬の例としては、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、スピロノラクトン、酢酸シプロテロン、フィナステリド、およびシミチジンが挙げられる。
【0172】
免疫調節物質とは免疫系を刺激する物質である。そのような免疫調節物質の例としては、インターフェロン、インターロイキン、例えばアルデスロイキン、OCT−43、デニロイキンジフリトクス、またはインターロイキン−2;腫瘍壊死因子、例えばタソネルミン;またはその他の種類の免疫調節物質、例えばレンチナン、シゾフィラン、ロキニメックス、ピドチモド、ペガデマーゼ、チモペンチン、ポリI:C、もしくはレバミソールと5−フルオロウラシルの組合せが含まれる。
【0173】
更なる詳細について、当業者はFrench Association of Teachers of Therapeutic Chemistryから刊行された"Traite de chimie therapeutique, Vol. 6, Medicaments antitumoraux et perspectives dans le traitement des cancers, ed. TEC & DOC, 2003"というタイトルのマニュアルを参照することができる。
【0174】
特に好ましい態様では、本発明に係る組合せ製品の形態の前記組成物は、前記細胞毒性薬剤が同時使用のために前記抗体に化学的に結合していることを特徴とする。
【0175】
特に好ましい態様では、本発明に係る前記組成物は、前記細胞毒性/細胞増殖抑制剤が、紡錘体の阻害剤または安定化剤、好ましくはビノレルビンおよび/またはビンフルニンおよび/またはビンクリスチンから選択されることを特徴とする。
【0176】
前記細胞毒性薬剤と本発明に係る前記抗体の間の結合を容易化するために、特に、例えばポリエチレングリコール等のポリ(アルキレン)グリコール、更にはアミノ酸等のスペーサー分子を、結合させる2つの化合物の間に導入することができ、あるいは別の態様では、本発明に係る前記抗体と反応できる機能が導入された前記細胞毒性薬剤の活性誘導体を使用することができる。これらの結合技術は当業者に周知であり、本明細書で詳細に説明しない。
【0177】
別の態様によれば、本発明は、前記抗体の少なくとも1つまたはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つが細胞毒および/または放射性元素にコンジュゲートしていることを特徴とする組成物に関する。
【0178】
好ましくは、前記毒素または前記放射性元素は、腫瘍細胞の成長または増殖を防止することができ、特に前記腫瘍細胞を完全に不活性化することができる。
【0179】
更に好ましくは、前記毒素は、腸内細菌毒素、特にシュードモナス属の外毒素Aである。
【0180】
好ましくは抗体とコンジュゲートしている、治療法に使用される放射性元素(すなわち放射性同位元素)は、ガンマ線を発する放射性同位元素、好ましくはヨウ素131、イットリウム90、金199、パラジウム100、銅67、ビスマス217、アンチモン211である。ベータ線およびアルファ線を発する放射性同位元素も治療法に用いることができる。
【0181】
本発明に係る少なくとも1つの抗体またはその機能的フラグメントとコンジュゲートしている毒素または放射性元素とは、特に2つの化合物の間の共有結合により(連結分子を導入してもよい)、前記少なくとも1つの抗体に前記毒素または前記放射性元素を結合させることができる任意の手段を意味すると理解される。
【0182】
コンジュゲートの要素の全部または一部の化学的(共有)結合、静電的結合、または非共有結合を可能にする薬剤のうち、特に、ベンゾキノン、カルボジイミド、より具体的にはEDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]−カルボジイミドヒドロクロリド)、ジマレイミド、ジチオビス−ニトロ−安息香酸(DTNB)、N−スクシンイミジルS−アセチルチオアセタート(SATA)、紫外線(UV)と反応する1または複数のフェニルアジド基と共に1または複数の基を有する「架橋(bridging)」剤と呼ばれる薬剤、特に好ましくはN−[−4−(アジドサリチルアミノ)ブチル]−3’(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド(APDP)、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、および6−ヒドラジノ−ニコチンアミド(HYNIC)を挙げることができる。
【0183】
特に放射性元素のための、別の形態の結合は、二官能性イオンキレート剤の使用からなり得る。
【0184】
それらのキレーターの中でも、金属、特に放射性金属と免疫グロブリンを結合させるために開発されたEDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)に由来するキレーターを挙げることができる。したがって、リガンド−金属錯体の安定性および剛性を増大させるように炭素鎖上の種々な基をDTPAおよびその誘導体で置換することができる(Krejcarek et al. (1977); Brechbiel et al. (1991); Gansow (1991);米国特許第4,831,175号)。
【0185】
例えば、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)およびその誘導体は、遊離形態または金属イオンとの錯体の形態のいずれかで医学および生物学において長い間非常に幅広く使用されてきており、金属イオンと安定なキレートを形成し、癌療法における放射性免疫複合体の開発のための抗体等の治療上または診断上関心のあるタンパク質に結合するという顕著な特徴を有する(Meases et al., (1984);Gansow et al. (1990))。
【0186】
また、本発明に係る前記コンジュゲートを形成する前記少なくとも1つの抗体は、その機能的フラグメント、特にscFvフラグメント等のFc構成要素を欠くフラグメントから選択されることが好ましい。
【0187】
本発明は、癌の防止もしくは処置のためまたは癌の防止もしくは処置に使用するための、好ましくは癌の処置のための、本発明に係る抗体または組成物を更に含む。
【0188】
同様に、本発明は、癌の防止または処置を意図した医薬の製造における本発明に係る抗体または組成物の使用を含む。
【0189】
本発明はまた、腫瘍細胞の増殖を阻害することを目的とする医薬の製造におけるまたはそのような医薬としての、好ましくはヒト化された、本発明に係る抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つおよび/または組成物の使用に関する。一般的に、本発明は、癌を防止または処置することを意図した医薬の製造における、好ましくはヒト化された、本発明に係る抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つおよび/または組成物の使用に関する。
【0190】
防止および/または処置され得る癌の中でも、前立腺癌、骨肉腫肺癌、乳癌、子宮内膜癌、結腸癌、多発性骨髄腫または卵巣癌、膵臓癌、または任意のその他の癌が好ましい。
【0191】
好ましくは、前記癌は、前立腺癌、肺癌、結腸癌、乳癌、および/または膵臓癌から選択される癌である。
【0192】
更に別の態様では、本発明は、CD151の発現レベルに関連する疾患の診断方法における好ましくはインビトロでの本発明に係る抗体の使用に関する。より具体的には、本発明は、CD151タンパク質の異常な存在が疑われる生体サンプルから開始する、CD151タンパク質が過剰発現または低発現する疾患のインビトロでの診断方法に関し、前記方法は、前記生体サンプルを本発明に係る抗体に接触させることからなり、前記抗体は適宜標識することができる。
【0193】
好ましくは、前記診断方法におけるCD151タンパク質に関連する前記疾患は癌である。
【0194】
前記抗体またはその機能的フラグメントの1つは、検出可能および/または定量可能なシグナルを得るために標識された免疫複合体または抗体の形態であり得る。
【0195】
本発明に係る標識された抗体またはその機能的フラグメントとしては、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、α−Dガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースアミラーゼ、カルボニックアンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、リンゴ酸脱水素酵素、もしくはグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ等の酵素とまたはビオチン、ジゴキシゲニン、もしくは5−ブロモ−デオキシウリジン等の分子などがコンジュゲートされたものであり得る免疫複合体として言及される抗体が含まれる。本発明に係る抗体またはその機能的フラグメントに蛍光標識がコンジュゲートされてもよく、蛍光標識としては、特に、フルオレセインおよびその誘導体、蛍光色素、ローダミンおよびその誘導体、GFP(緑色蛍光タンパク質)、ダンシル、ウンベリフェロンが含まれる。そのようなコンジュゲートにおいて、本発明の抗体またはその機能的フラグメントは当業者に公知の方法で調製され得る。これらは、酵素または蛍光標識に直接結合してもよく、スペーサー基または連結基、例えばグルタルアルデヒド等のポリアルデヒド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、またはジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)を介して、または治療用コンジュゲートについて上記で述べたような結合剤の存在下で結合してもよい。フルオレセイン型の標識を含むコンジュゲートは、イソチオシアナートとの反応により調製することができる。
【0196】
更に、他のコンジュゲートは、ルミノール、ジオキセタン等の化学発光標識、ルシフェラーゼ、ルシフェリン等の生物発光標識、またはヨウ素123、ヨウ素125、ヨウ素126、ヨウ素133、臭素77、テクネチウム99m、インジウム111、インジウム113m、ガリウム67、ガリウム68、ルテニウム95、ルテニウム97、ルテニウム103、ルテニウム105、水銀107、水銀203、レニウム99m、レニウム101、レニウム105、スカンジウム47、テルル121m、テルル122m、テルル125m、ツリウム165、ツリウム167、ツリウム168、フッ素18、イットリウム199、ヨウ素131等の放射性標識も含み得る。放射性同位元素を抗体に前述したEDTAまたはDTPA等のキレート剤を介してまたは直接的に結合させるための既存の当業者に公知の方法を診断において放射性元素に用いることができる。したがって、クロラミンT技術による[I125]Naを用いた標識[Hunter W.M. and Greenwood F.C. (1962) Nature 194:495]またはCrockford et al.(米国特許第4424200号)の技術によるテクネチウム99mを用いた標識、またはHnatowich(米国特許第4479930号)に記載されているようにDTPAを介して固定された標識も挙げることができる。
【0197】
本発明はまた、CD151タンパク質を発現または過剰発現している細胞に生物学的活性化合物を特異的に標的化することを意図した医薬の製造における本発明に係る抗体の使用に関する。
【0198】
本発明において、生物学的活性化合物とは、細胞の活性、特にその成長、増殖、または遺伝子の転写もしくは翻訳を変化させることができる、特に阻害することができる、任意の化合物を意味すると理解される。
【0199】
本発明は更に、好ましくは標識された、特に放射標識された、本発明に係る抗体またはその機能的フラグメントの1つを含むインビボ診断試薬および医学的イメージング、特に細胞によるCD151タンパク質の発現または過剰発現に関連する癌の検出におけるその使用に関する。
【0200】
本発明は更に、医薬としての、本発明に係る、組合せ生成物の形態の組成物または抗CD151と毒素もしくは放射性元素とのコンジュゲートに関する。
【0201】
好ましくは、本発明に係る組合せ生成物の形態の前記組成物または前記コンジュゲートに、補形剤および/または薬学的に許容されるキャリアが添加される。
【0202】
本明細書中、薬学的に許容されるキャリアとは、副次的反応を生じさせずに、例えば活性化合物の投与を容易にするか、体内でのその寿命または有効性を増大させるか、溶液中へのその溶解性を増大させるか、その保存を改善することを可能にすることができる、医薬組成物に含まれる化合物または化合物の組合せを意味すると理解される。そのような薬学的に許容されるキャリアは周知であり、選択される活性化合物の投与の性質および形態に応じて当業者が適合させる。
【0203】
好ましくは、それらの化合物は、全身経路、特に静脈内経路、筋肉内、皮内、腹腔内、もしくは皮下経路、または経口経路で投与される。より好ましくは、本発明に係る抗体を含む組成物は、時間をずらして複数回に分けて投与される。
【0204】
これらの最適な投与形態、投与レジメン、および生薬形態は、患者に適した処置を確定する際に一般的に考慮される基準、例えば患者の年齢または体重、彼または彼女の全身状態の重篤度、処置の忍容性、および確かめられている副次的効果に従って決定することができる。
【0205】
したがって、本発明は、CD151を発現または過剰発現する細胞に生物学的活性化合物を特異的に標的化することを意図した医薬の製造における抗体またはその機能的フラグメントの1つの使用に関する。
【0206】
本発明のその他の特徴および利点は本明細書の以下の説明および実施例ならびに図面から明らかになるであろう。図面の説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】CD151タンパク質のヌクレオチド配列およびタンパク質配列(それぞれ配列番号37および配列番号38)を示す図である。配列上にEC1およびEC2ループを示す。
【図2】CD151タンパク質が属するテトラスパニンの構造、より具体的には2個の細胞外ループEC1およびEC2を示す図である。
【図3】A〜Eは、前立腺癌患者におけるCD151分子の発現を示す図である。各文字が患者1名の研究に対応し、各患者について、上のパネルが腫瘍に隣接する正常組織に対応し、下のパネルが腫瘍組織に対応する。
【図4】A〜Cは、肺癌患者におけるCD151分子の発現を示す図である。各文字が患者1名の研究に対応し、各患者について、上のパネルが腫瘍に隣接する正常組織に対応し、下のパネルが腫瘍組織に対応する。
【図5】A〜Dは、NIH 3T3−CD151細胞、PC3細胞、およびA549細胞の表面上でのマウス抗体203B6によるCD151の認識のフローサイトメトリーによる分析を示す図である。
【図6】A〜Dは、NIH 3T3−CD151細胞、PC3細胞、およびA549細胞の表面上でのマウス抗体214B2によるCD151の認識のフローサイトメトリーによる分析示す図である。
【図7】重鎖および軽鎖について、マウス214B2のV領域およびJ領域と最も近いマウス生殖系列とのアラインメントを示す図である。
【図8】214B2軽鎖のヒト化と種々の優先順位(Priority Ranking)を示す図である。番号1は高優先度(標的認識、CDRの提示、および全体的3次元構造に対する影響が大きいと推定される);番号2は中優先度;番号3は低優先度(標的認識、CDRの提示、および全体的3次元構造に対する影響が小さいと推定される)。
【図9】214B2重鎖のヒト化と種々の優先順位を示す図である。番号1は高優先度(標的認識、CDRの提示、および全体的3次元構造に対する影響が大きいと推定される);番号2は中優先度;番号3は低優先度(標的認識、CDRの提示、および全体的3次元構造に対する影響が小さいと推定される)。
【図10】キメラ抗体c203B6[IgG1]およびc214B2[IgG1]のウェスタンブロットによる特異性実験を示す図である。
【図11A】図11AおよびBは、マウスMab203B6および214B2のキメラ型c203B6[IgG1](A)およびc214B2[IgG1](B)による、組換えEC2への結合の阻害を示す図である。
【図11B】図11Aおよび11Bは、マウスMab203B6および214B2のキメラ型c203B6[IgG1](A)およびc214B2[IgG1](B)による、組換えEC2への結合の阻害を示す図である。
【図12A】図12Aおよび12Bは、A:c214B2[IgG1]およびB:c203B6[IgG1]を用いた、PC3へのキメラ抗体の結合を示す図である。
【図12B】図12Aおよび12Bは、A:c214B2[IgG1]およびB:c203B6[IgG1]を用いた、PC3へのキメラ抗体の結合を示す図である。
【図13】アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞系であるPC3の腫瘍成長に対するc214B2[IgG1]Mabのインビボ活性を示す図である。
【図14】PC3細胞接着に対する種々の型のMab214B2の影響を顕微鏡分析した図である。
【図15A】図15Aおよび15Bは、PC3細胞接着に対する種々の型のMab214B2の影響をATPアッセイを用いて分析した図である。各ウェル中で、0〜200000細胞/ウェルのPC3の標準曲線を用いて接着細胞の数を求めた。結果は以下のように示されている:非処理細胞を基準(100%)とし、処理細胞を基準に対する%で表す。
【図15B】図15Aおよび15Bは、PC3細胞接着に対する種々の型のMab214B2の影響をATPアッセイを用いて分析した図である。各ウェル中で、0〜200000細胞/ウェルのPC3の標準曲線を用いて接着細胞の数を求めた。結果は以下のように示されている:非処理細胞を基準(100%)とし、処理細胞を基準に対する%で表す。
【図16】214B2重鎖可変ドメインとヒト生殖系列hIGHV1−2*02およびIGHJ6*01のアミノ酸配列アラインメントを示す図である。214B2VHアミノ酸配列を、選択されたヒトアクセプターフレームワーク配列とアラインメントさせ、214B2とヒト生殖系列の間で異なる各残基に優先順位を付けた。1が最も高い優先度を示し、4が最も低い優先度を示す優先順位に従って、残基を逆突然変異させる。Var1〜Var4の配列は、構築された214B2 VHドメインのヒト化バリアントに相当し、逆突然変異させた残基が太字で示されている。バリアント1(Var1)は逆突然変異がなく、最もヒトに近いバリアントを表す。
【図17】214B2軽鎖とヒト生殖系列IGKV1D−39*01およびIGKJ2*01のアミノ酸配列アラインメントを示す図である。214B2 VLアミノ酸配列を、選択されたヒトアクセプターフレームワーク配列とアラインメントさせた。VL Var1〜Varの3配列は、構築された214B2 VLドメインのヒト化バリアントに相当し、逆突然変異させた残基が太字で示されている。バリアント1(Var1)は逆突然変異がなく、最もヒトに近いバリアントを表す。バリアント2は13個の逆変異を有し、最もマウスに近いバリアントである。バリアント3は5個の逆変異を有する。
【図18】キメラ241B2とヒト化214B2の種々のバリアントとによるマウス抗体m24B2の交差ブロッキングを示す図である。214B2のヒト化バリアント(hz214B2)が元の抗体m214B2を交差ブロックする活性を、ヒト抗原CD151の組換え細胞外ループ2(EC2)を用いたELISAにより評価した。ヒト化バリアントの活性をキメラ214B2と比較した。VHバリアント2および3の全組合せで、キメラ抗体と同様な強い活性が示された。
【図19】ビオチン化抗体m24B2の交差ブロックによるヒト化抗体hz214B2のフローサイトメトリー分析を示す図である。EC2のELISAにおいて元の抗体を交差ブロックした214B2のヒト化バリアントをフローサイトメトリーで更に評価した。ビオチン化抗体m214B2を用いてPC3細胞上のヒトCD151を検出した。この結合は、種々の濃度の214B2のヒト化バリアントでブロックされた。キメラ214B2抗体を基準として用いた。ヒト化バリアント3および4(Hz214B2VHVar3VLVar3およびHz214B2VHVar4VLVar4)が最も強い交差ブロック活性を示した(B)。
【図20】抗体c214B2(G1)、c214B2(G2)、Hz214B2VHVar3VLVar3(G1)、およびHz214B2VHVar4VLVar4(G1)の親和性のBIACore分析を示す図である。A、抗体Hz214B2VHVar3VLVar3(G1)、Hz214B2VHVar4VLVar4(G1)、およびc214B2(G1)のBIACoreのセンサーグラム。B、抗体−EC2複合体の親和定数および半減期。
【図21】PC3異種移植モデルに対する種々のアイソタイプのキメラc214B2Mabのインビボ活性を示す図である。A:c214B2[IgG4]および[IgG1](TH7)およびB:c214B2[IgG2]。
【実施例】
【0208】
実施例1:CD151分子の発現の研究
前立腺癌または肺癌の患者から得たヒト組織のサンプルにおいて、CD151タンパク質の発現を免疫組織化学(IHC)により調べた。これらの患者については、腫瘍に隣接する正常組織のスライドが利用可能であったので、正常組織に対して腫瘍組織の発現レベルを較正するために含めた。
【0209】
これらの実験では、市販の「Tissue array」型のスライドを用いる。脱パラフィン後、ペプシン(ラブビジョン社(Labvision)製、ref.AP−9007−005)を含有する酵素溶液を利用して30℃で抗原のアンマスキングを行う。この工程の後、セクションを過酸化水素(シグマ社製)の0.3%水溶液中でインキュベートすることにより内因性ペルオキシダーゼを除去する工程を行う。次いで、Ultra−V−Block(ラブビジョン社製、ref.TA−125−UB)の溶液を用いて非特異的部位を飽和させ、市販のマウス抗CD151抗体(セロテック社(Serotech)製、Ref.MCA 1856)を終濃度5μg/mlで用いて標識化を行う。マウスIgG1アイソタイプ対照抗体(ダコ・サイトメーション社(DakoCytomation)製、Ref.X0931)を陰性実験対照として用いる。Envision Dual Link可視化システム(ダコ・サイトメーション社製、Ref.K4061)を用いて標識を可視化する。参照用のDABペルオキシダーゼ基質はダコ・サイトメーション社製のS3309である。
【0210】
図3A〜3Eに示される結果は、前立腺腫瘍を発症している患者の何人かでCD151分子が過剰発現していることを示している。この過剰発現は、試験された患者の20%で非常に顕著(患者AおよびC)または中程度であり得る(患者AおよびD)。また、内皮細胞でのレベルを除き、対応する正常な前立腺組織はCD151を発現していないかまたはわずかにしか発現せず、発現していても、腺様構造に限定されているようである。患者EはCD151を発現していない腫瘍の例である。
【0211】
肺癌の場合(図4A〜4C)、正常肺組織の特定の細胞において中程度(患者A)から顕著(患者B)の発現が観察される。しかし、腫瘍組織は、非常に高密度の強く標識された細胞を示している(患者AおよびB)。患者CはCD151を発現していない腫瘍の例である。
【0212】
実施例2:抗体の作製および分泌
CD151遺伝子のトランスフェクションにより作製した、表面にヒトCD151を発現する20×106個のNIH 3T3細胞を用いて、皮下経路でBALB/cマウスを免疫化した。初回免疫は、フロイント完全アジュバントの存在下で行い、次の2回はフロイント不完全アジュバントの存在下で行った。融合の3日前に、最後の10×106個のNIH 3T3−CD151細胞の追加免疫注射を腹腔内経路で行った。次いで、Kohler and Milsteinに記載されている従来技術を用いて、マウス脾臓細胞をSP2/0−Ag14ミエローマ細胞と1/1の比率で融合させた。
【0213】
次いで、融合に得られたハイブリドーマから上清に分泌された抗体を、ELISAによりCD151の組換え細胞外ループEC2認識能について、また、フローサイトメトリーによりヒトPC3前立腺癌腫瘍系の表面に発現されているCD151について、スクリーニングした。
【0214】
ELISAでは、5μg/mlの組換え細胞外ループEC2を含むPBSで96ウェルプレートを+4℃で1晩感作させた。PBSで洗浄した後、ウェルを0.5%ゼラチンのPBS溶液で37℃、1時間、飽和させ、その後、PBSで再度洗浄した。ハイブリドーマ培養上清を希釈せずに評価する(37℃で1時間インキュベーション)。ペルオキシダーゼをコンジュゲートさせたヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(米国ジャクソン社(Jackson)製、1/5000に希釈)と37℃で1時間インキュベートし、続けてペルオキシダーゼ基質(TMB、フランス、インターキム社(Interchim)製)と周囲温度で10分間インキュベートすることで、固定されたEC2ループに結合した抗体を検出する。1Mの硫酸を添加することにより反応を停止させ、光学濃度(OD)を450nmで測定する。
【0215】
96ウェルプレート上でフローサイトメトリー分析を行う。希釈していないハイブリドーマ上清を、先にウェルに入れておいた100000個のPC3細胞に添加する。+4℃で20分間インキュベートし、洗浄した後、Alexa488標識ヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(モレキュラー・プローブ社(Molecular Probes)製、1/500に希釈)を添加する。+4℃で更に20分間インキュベートした後、細胞蛍光計(cytofluorimeter)を用いて蛍光強度(MFI)を求める。
【0216】
スクリーニングの最後に、203B6および214B2の2つのハイブリドーマが選択された(選択基準:ELISAでOD>0.5およびフローサイトメトリーでMFI>50)。これら2つのハイブリドーマについて得られた結果を以下の表6に示す。
【0217】
【表6】
【0218】
クローニング後、選択された各ハイブリドーマのクローンを増幅した。マウス抗体アイソタイプ決定キット(SBA clonotyping system、サザン・バイオテック社(Southern Biotech)製)を用いて各培養上清について産生された抗体のアイソタイプを決定し、以前に記載されている条件下でマウスNIH 3T3系および安定なトランスフェクタントNIH 3T3−CD151、次いでヒト腫瘍系の肺癌A549、前立腺癌DU145、および膵臓癌BxPC3の最終的な特徴解析をELISA(細胞外ループEC2)およびフローサイトメトリーにより行った。上清の抗体濃度は、ELISA分析では5μg/ml、フローサイトメトリー分析では10μg/mlに調整した。得られた結果を以下の表7に示す。
【0219】
【表7】
【0220】
図5A〜5Dおよび6A〜6Dは、マウス抗体203B6および214B2について得られた、フローサイトメトリーよる、NIH 3T3−CD151細胞、PC3細胞、およびA549細胞の認識プロファイルを示す図である。これらのプロファイルは、抗CD151抗体50−6(ATCC CRL−2696)を用いて得られたものに匹敵し、CD151に対するこれらの抗体の特異性を実証するものである。
【0221】
その後、これらのハイブリドーマをCNCM、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25 Rue du Docteur Roux, 75724 PARIS Cedex 15に寄託した。
【0222】
実施例3:キメラおよびヒト化抗体のクローニングおよび産生
マウス203B6および214B2Mabのキメラ型およびヒト化型を設計した。これらはヒトのCカッパおよびIgG1、IgG2、およびIgG4定常ドメインのいずれかに遺伝的に融合させた目的マウス抗体の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインに相当する。同様に、以下に記載するヒト化型はヒトIgG1/カッパまたはIgG4/カッパ分子として産生される。全ての組換えMabは、HEK293/EBNAシステムをpCEP4発現ベクター(米国、インビトロジェン社製)と用いて一過性トランスフェクションにより産生される。
【0223】
203B6および214B2Mabの軽鎖および重鎖(キメラまたはヒト化)の可変ドメインに対応する全ヌクレオチド配列は包括的遺伝子合成により合成された(ルクセンブルクのGenecust社)。これらを、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4免疫グロブリンの軽鎖(Cカッパ)または重鎖[CH1−ヒンジ−CH2−CH3]のいずれかの定常ドメインの全コード配列を有するpCEP4ベクター(米国、インビトロジェン社製)中にサブクローニングした。全てのクローニング工程はLaboratory manual(Sambrook and Russel, 2001)に記載されている従来の分子生物学的技術に従ってまたは供給業者の取扱説明書に従って行った。各遺伝子コンストラクトを、Big Dyeターミネーターサイクルシークエンシングキット(米国、アプライドバイオシステムズ社製)を用いたヌクレオチドシークエンシングにより完全に検証し、3100 Genetic Analyzer(米国、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて分析した。
【0224】
懸濁液に順応させたHEK293 EBNA細胞(米国、インビトロジェン社製)を、ルーチンに、オービタルシェーカー(回転速度110rpm)上で250mlフラスコを用いて、6mMのグルタミンが添加された50mlの無血清培地Excell 293(SAFC バイオサイエンス社(SAFC Biosciences)製)中で成長させた。水中に終濃度1mg/mlで混合して調製した25kDaの直鎖ポリエチレンイミン(PEI)(ポリサイエンス社(Polysciences)製)およびプラスミドDNA(重鎖と軽鎖のプラスミド比1:1で終濃度1.25μg/ml)を用いて、2.106細胞/mLで一過性のトランスフェクションを行った。トランスフェクションの4時間後に、培養液を1体積の新鮮な培養培地で希釈して、最終細胞密度を106細胞/mlにした。細胞生存度およびMab産生に基づいて培養プロセスをモニタリングした。典型的には、培養は4〜5日間維持された。プロテインA樹脂(米国、GEヘルスケア社製)を用いた従来のクロマトグラフィーによるアプローチを用いてMabを精製した。
【0225】
種々のMabは全て、機能的評価に適したレベルで産生される。
【0226】
実施例4:マウス抗CD151抗体214B2可変ドメインのヒト化
マウス214B2抗体の重鎖可変ドメインVHおよび軽鎖可変ドメインVLを、IMGTのライブラリーおよびツール(http://imgt.cines.fr)を用いて免疫遺伝学的に分析した。以下に記載するヒト化の戦略は、固有のIMGTの番号付与スキーム(Lefranc, 1997)に基づく。最初に、各ドメインについて選択されたマウス生殖系列を、DomainGapAlignツールを用いて、IMGT LIGM DBデータベースに対するBLASTサーチにより同定する。マウスIGKV6−20*01生殖系列は、再編成された214B2のV領域と97.9%の同一性を示し、IGKJ2*01は214B2のJ領域と完全に同一であった(図7)。重鎖について、214B2のV領域はマウスIGHVS130*01生殖系列と最も相同性が高く(図7、約96%の同一性)、J領域について、マウスIGHJ4*01は最も近いJ生殖系列遺伝子に対応している(図7、94%の同一性、1残基異なる)。多様性D生殖系列遺伝子は、マウスIGHD5−1*01に対応し、これは本質的にCDR3に対応する。
【0227】
マウス214B2Mabのヒト化の例として、CDRグラフト化による従来の戦略を以下に記載する。重鎖および軽鎖それぞれを個々にヒト化し、そのそれぞれの対応するキメラまたはヒト化物のいずれかとの共発現により評価する。
【0228】
214B2軽鎖VLのヒト化
Asn1に対応する変則的な残基が同定され、これはいくつかのマウス生殖系列V遺伝子に存在するが、ヒトには存在しない。この残基はCDR1に近接しているため、選択されたヒトV遺伝子で見られるような、この残基のGluへの改変には注意が必要であり得、評価が必要である(図8)。その他に、マウス214B2軽鎖CDRのグラフト化に最も適したヒト生殖系列のサーチから可能性のあるヒットが2つ特定された。1つ目は、マウスIGKV6−20*01に最も近い相同性を示すヒトV領域に相当し、これはヒトIGKV3−7*02生殖系列アレルである(68.4%の同一性)。しかし、そのCDR1は214B2のCDR1よりも1アミノ酸長いので、これらのCDRアンカーは結局CDR1のグラフト化に最適ではない(図8参照)。2つ目のヒトドナー生殖系列はIGKV1D−39*01であり得る。これはマウスIGKV6−20*01と64%同一であるが、CDRの長さは同じである(6:3、図8)。214B2のVLと選択されたヒトV遺伝子との間の異なる残基それぞれに推定される重要性の評価基準としては、限定されるものではないが、ベルニエゾーン(Vernier zone)中での局在、CDRアンカーに近い位置であること、同じヒト生殖系列群の別のアレル中における同じ位置に存在することが含まれる。
【0229】
IGKV6−20*01のV遺伝子を検討した結果、ベルニエゾーン内の1個の残基がm214B2およびmIGKV6−20*02のどちらとも異なっており(A84)、これは高い優先度で考慮する必要があり、マウスのままで最初保存する必要がある(図8、番号1)。その他に、2個の重要な残基がCDR1およびCDR2のアンカーであるV39およびN66に相当し、これらも高優先度に順位付けられ、マウスのままで最初保存される。3個の残基が、CDRアンカーに位置が近いため、考慮の優先度が中程度の残基として順位付けられる(図8、K24、Y68、およびH103)。残りのアミノ酸(番号3として順位付けられている)は、ヒト化重鎖の全体的コンホメーションおよびCD151の認識に対する影響が弱いと考えられ、これらはヒトの対応するアミノ酸で容易に置換することができる。
【0230】
IGKV1D−39*01のV遺伝子を考慮した結果、ベルニエゾーン内の1個の残基がm214B2およびmIGKV6−20*02のどちらとも異なっており(A84)、これは高い優先度で考慮する必要があり、マウスのままで最初保存する必要がある(図8、番号1)。その他に、2個の重要な残基がCDR1およびCDR2のアンカーであるV39およびN66に相当し、これらも高優先度に順位付けられ、マウスのままで最初保存される。5個の残基が、CDRアンカーに位置が近いため(図8、K24、S40、Y68、およびH103)またはCDR1に近いため(図8、V3)、考慮の優先度が中程度の残基として順位付けされる。残りのアミノ酸(番号3として順位付けられている)は、ヒト化重鎖の全体的コンホメーションおよびCD151の認識に対する影響が弱いと考えられ、これらはヒトの対応するアミノ酸で容易に置換することができる。
【0231】
J領域を検討した結果、ヒトIGKJ2*01遺伝子はm214BおよびmIGKJ2*01のどちらとも異なる1個の残基(G)を含有する。この領域は本質的にFR4に相当するので、最初で完全にヒト化してよい(図8)。
【0232】
IMGT−CDR3配列(GQTYSFPYT)は配列を改変せずにそのままグラフト化する。
【0233】
214B2重鎖のヒト化
マウス214B2重鎖CDRのグラフト化に最も適したヒト生殖系列のサーチから、ヒトIGHV1−2*02V遺伝子アレルに対応する好ましいヒットを1つ同定した。これはマウスIGHVS130*01生殖系列遺伝子に66%同一であり、CDRの長さが同じである。214B2_VHとIGHV1−2*02はFR中で28ヶ所で異なっていた(図9)。密接に関連するヒトIGHV1−46*03生殖系列も好適であり、これも異なる残基の数が同じであり、同様に28個中15個がFR3中に位置している。これら28個の異なる残基それぞれに推定される重要性の評価基準としては、限定されるものではないが、ベルニエゾーン中での局在、CDRアンカーに近い位置であること、同じヒト生殖系列群の別のアレル中における同じ位置に存在することが含まれる。
【0234】
IGHV1−2*02のV遺伝子を検討した結果、ベルニエゾーン内の5個の残基がm214B2およびIGHVS130*01のどちらとも異なり(I53、E55、A76、L78、V80)、これらは高い優先度で考慮する必要があり、マウスのままで最初保存する必要がある(図9、番号1)。その他に、N68およびE69が、CDR2アンカーの近くに位置するため、考慮の優先度が中程度の残基として順位付けされる(図9)。残りの21個のアミノ酸は、ヒト化重鎖の全体的コンホメーションおよびCD151の認識に対する影響が弱いと考えられ、これらはヒトの対応するアミノ酸で容易に置換することができる。
【0235】
IGHV1−46*03のV遺伝子を検討した結果、ベルニエゾーン内の7個の残基がm214B2およびIGHVS130*01のどちらとも異なり(I53、E55、N66、A76、L78、V80、A87)、これらは高い優先度で考慮する必要があり、マウスのままで最初保存する必要がある(図9、番号1)。その他に、N68およびE69が、CDR2アンカーの近くに位置するため、考慮の優先度が中程度の残基として順位付けされる(図9)。残りの19個のアミノ酸は、ヒト化重鎖の全体的コンホメーションおよびCD151の認識に対する影響が弱いと考えられ、これらはヒトの対応するアミノ酸で容易に置換することができる。
【0236】
J領域を検討した結果、ヒトIGHJ6*01遺伝子は、m214B2およびmIGHJ4*01のどちらとも異なる3個の残基を含有する。この領域は本質的にFR4に相当するので、最初で完全にヒト化してよい(図9)。
【0237】
CDR3の配列に本質的に相当する多様性D遺伝子(ARARSFYYAMDC)は改変せずにグラフト化する。
【0238】
上記の全てのアミノ酸が考慮すべき重要な位置である。これらの位置のそれぞれについてヒト対マウス残基の全組合せをヒト化プロセス中に検討する。ヒト化型の選択は、どれだけヒトのものに近いか(humanness)ならびに保存されているインビトロおよびインビボでの機能的特性に基づく。
【0239】
実施例5:ウェスタンブロットによる抗体特異性
ウェスタンブロットによりキメラ抗体c214B2[IgG1]およびc203B6[IgG1]の特異性を最初に評価した。簡潔に述べると、精製した組換え大細胞外ループEC2(2〜8μg)およびHT−29細胞ライセート(lysate)(10〜50μg)を12%アクリルアミドゲル(バイオ・ラッド社製)にローディングした。非還元条件下での電気泳動後、タンパク質をニトロセルロース膜に移し、精製された0.5μg/mlのキメラ抗体c214B2[IgG1]およびc203B6[IgG1]と、次いで、ペルオキシダーゼがコンジュゲートされたウサギポリクローナル抗ヒトIg(GEヘルスケア社製)と、更にインキュベートした。タンパク質は化学発光により検出した。c214B2[IgG1]およびc203B6[IgG1]の両方がウェスタンブロットで全長CD151を認識することができた(図10)。更に、これらは、組換えEC2ループに対する反応性により評価されるように、大きな細胞外ループに特異的であることも示された(図10)。
【0240】
実施例6:ELISAによる競合実験
キメラ抗体c214B2[IgG1]およびc203B6[IgG1]が、それらの対応するマウス型の組換えEC2ループへの結合を阻害する能力を評価するために、ELISAにより交差競合実験を更に行った。簡潔に述べると、96ウェルのELISAプレートを5μg/mlの組換えEC2を含むPBSを用いて4℃で一晩コーティングした。80ng/mlのマウスMab203B6および214B2を、種々の濃度(0.01〜20μg/ml)のそれらの対応するキメラ抗体型の存在下または非存在下にて37℃で1時間更にインキュベートした。対照実験ではマウス抗体を添加しなかった。西洋ワサビペルオキシダーゼがコンジュゲートされたポリクローナルヤギ抗マウスIgGをPBSの1/5000希釈で添加し、37℃で1時間インキュベートした。ペルオキシダーゼ基質TMBと室温で10分間インキュベートした後、1Mの硫酸を用いて反応を停止し、450nmの光学濃度を測定した。図11A〜11Bは、キメラ抗体c214B2[IgG1]およびc203B6[IgG1]がそれぞれマウス型の214B2および203B6に取って代わることができたことを示している。GraphPad Prismソフトウェアを用いて算出したIC50値は、c214B2[IgG1]およびc203B6[IgG1]についてそれぞれ0.69μg/mlおよび0.71μg/mlであった。
【0241】
実施例7:前立腺癌細胞へのキメラ抗体の結合
前立腺癌細胞PC3へのキメラ抗体c203B6[IgG1]およびc214B2[IgG1]の結合をフローサイトメトリーで評価した。簡潔に述べると、種々の濃度のc203B6[IgG1]またはc214B2[IgG1]存在下、1%BSAおよび0.01%アジ化ナトリウムを含有するPBSバッファー中、4℃で20分間、PC3細胞を1.105細胞/100μlでインキュベートした。細胞を更に洗浄し、Alexa488がコンジュゲートされたヤギ抗ヒト抗体(モレキュラー・プローブ社製、PBSで1/500希釈)と4℃で20分間インキュベートした。標識された細胞を洗浄し、遠心し、先ほどのバッファー(150μl)に再懸濁した後、Facscaliburサイトメーター(ベクトン・ディッキンソン社製)を用いて分析した。生細胞のみに対して分析を行うために、ヨウ化プロピジウムを添加した。PC3細胞の表面に発現されたCD151へのキメラ抗体c203B6[IgG1]およびc214B2[IgG1]の結合は抗体濃度に応じて増加した(図12A〜12B)。c214B2[IgG1]およびc203B6[IgG1]はそれぞれ2.5μg/mlおよび5μg/mlでプラトーに達した。このことは、PC3細胞へのこれらの抗体の結合が非常に特異的であることを示している。
【0242】
実施例8:前立腺PC3異種移植モデル上のCD151に対するキメラ抗体c214B2]IgG1]の抗腫瘍活性
組織アレイ解析法を用いて前立腺組織上でのCD151の過剰発現が以前に示されている。前立腺癌細胞がCD151標的化療法に応答性であるのかどうかを調べるために、CD151に対するキメラc214B2[IgG1]をPC3異種移植モデルにおいてインビボで試験した。PC3細胞系は、ATCCにより提供されたアンドロゲン非依存性の細胞系であり、10%FCSを添加したF12K培地中で成長させる。5百万個のPC3細胞を6週齢の雌スイスマウスに皮下移植した。移植の5日後に、腫瘍が測定可能であり、c214B2[IgG1]キメラ抗体の腹腔内注射を開始する前にマウスを6頭のグループ2つにランダム化した。1回投与当たり2mgのc214B2を負荷量として注射し、その後、1回投与当たり1mgの注射を週2回行った。腫瘍体積を週2回評価し、以下の式で算出した:π/6×長さ×幅×高さ。図13に示す結果から、図中でc214B2で参照されているc214B2[IgG1]がPC3細胞の腫瘍成長をインビボで有意に阻害することが示された。この結果は、CD151を標的化することが癌の有効な治療法であり得ることを示している。
【0243】
実施例9:TH7ヒンジ変異体の改変
ヒンジ領域が免疫グロブリンの可変ドメインの柔軟性に大きく関与することは当業者に周知である(Brekke et al., 1995;Roux et al., 1997参照)。214B2Mabのキメラ化プロセス中、マウス定常ドメインIGHG1を、ヒト起源の同等なIGHG1部分で置換した。対応するヒンジ領域のアミノ酸配は非常に多様性が高いので、マウスIgG1ヒンジに似せるために、Cys残基を1個付加し、2アミノ酸分長さを短くすることで、ヒトIgG1ヒンジ領域を改変した。
【0244】
マウスおよびヒトの野生型IgG1ヒンジ領域ならびに改変されたTH7ヒンジ領域の比較を以下に示す(IMGTの固有なCドメインの番号付に従う):
マウスIgG1ヒンジ領域 PRDCGCKP−CI−CT(配列番号43)
ヒトIgG1ヒンジ領域 PKSCDKTHTCPPCP(配列番号42)
改変したTH7ヒンジ領域 PKSCDC−H−CPPCP(配列番号41)
(下線はヒトIgG1ヒンジ領域中に導入した3個の改変部分を示す)。
【0245】
実施例10:キメラ214B2Mabおよびヒンジ改変型Mabの産生
キメラまたは改変されたヒンジ領域を含有する全ての型のMabは、一過性のトランスフェクションにより、またHEK293/EBNAシステムをpCEP4発現ベクター(米国、インビトロジェン社製)と用いることにより産生された。
【0246】
マウス由来可変ドメイン214B2 VHおよびVLに対応する全ヌクレオチド配列は包括的遺伝子合成により合成された(独、ジーンアート社(Geneart))。これらを、ヒトIgG1免疫グロブリンの定常ドメイン[CH1−ヒンジ−CH2−CH3]の全コード配列を有するpCEP4ベクター(米国、インビトロジェン社製)中にサブクローニングした。ヒンジ領域の改変は、{Nhe1I−Bcl1}制限フラグメントを所望の改変を有する同等な部分で交換することによりなされ、各{Nhe1I−Bcl1}フラグメントは包括的遺伝子合成(ドイツ、ジーンアート社)により合成された。全てのクローニング工程はLaboratory manual(Sambrook and Russel, 2001)に記載されている従来の分子生物学的技術に従ってまたは供給業者の取扱説明書に従って行った。各遺伝子コンストラクトを、Big Dyeターミネーターサイクルシークエンシングキット(米国、アプライドバイオシステムズ社製)を用いたヌクレオチドシークエンシングにより完全に検証し、3100 Genetic Analyzer(米国、アプライドバイオシステムズ社製)を用いて分析した。
【0247】
懸濁液に順応させたHEK293 EBNA細胞(米国、インビトロジェン社製)を、ルーチンに、オービタルシェーカー(回転速度110rpm)上で250mlフラスコを用いて、6mMのグルタミンが添加された50mlの無血清培地Excell 293(SAFC バイオサイエンス社製)中で成長させた。水中に終濃度1mg/mlで混合して調製した25kDaの直鎖ポリエチレンイミン(PEI)(ポリサイエンス社製)およびプラスミドDNA(重鎖と軽鎖のプラスミド比1:1で終濃度1.25μg/ml)を用いて、2×106細胞/mLで一過性のトランスフェクションを行った。トランスフェクションの4時間後に、培養液を1体積の新鮮な培養培地で希釈して、最終細胞密度を106細胞/mlにした。細胞生存度およびMab産生に基づいて培養プロセスをモニタリングした。典型的には、培養は4〜5日間維持された。プロテインA樹脂(米国、GEヘルスケア社製)を用いた従来のクロマトグラフィーによるアプローチを用いてMabを精製した。
【0248】
c214B2[TH7]IgG1Mabは機能的評価に適したレベルで産生された。産生レベルは通常、1lの精製Mab当たり15〜30mgである。
【0249】
実施例11:細胞接着アッセイ
第1のアッセイ
トリプシンを用いてディッシュからPC3前立腺癌細胞を剥離させ、無血清F12k培地で3回洗浄し、同じ培地に再度懸濁した。細胞(100,000細胞/ウェル)を、1μg/mlのラミニン1でコーティングされた96ウェルプレートにプレーティングした。試験する以下の型の抗CD151Mabを終濃度10μg/mlで同時に添加した:マウスIgG1Mab m214B2、c214B2と呼ばれる非改変キメラIgG1抗体型、およびcTH7−214B2と呼ばれるTH7を改変したキメラIgG1抗体型。マウスおよびヒトのIgG1抗体をアイソタイプ対照抗体として用いた。最終的な条件は以下の通りである:100,000細胞/ウェルおよび抗体10μg/ml。37℃で1時間インキュベートした後、プレートをはたいて、無血清F12k培地で2回洗浄した。分析前に、100μlの無血清F12k培地を各ウェルに分注した。細胞接着に対する抗体の影響を評価するために、位相差顕微鏡下でウェルの写真を撮った(図14)。その後、接着した細胞の数をATPアッセイにより決定した(図15A)。
【0250】
マウス214B2抗体およびキメラTH7−214B2抗体は細胞間相互作用を変化させることができ(図14)、同等にPC3細胞接着を増加させることができたが(図15A)、非改変キメラ型の214B2(c214B2)では何ら影響が観察されず、ヒトIgG1アイソタイプ対照抗体と同様であった。
【0251】
第2のアッセイ
トリプシンを用いてディッシュからPC3前立腺癌細胞を剥離させ、無血清F12k培地で3回洗浄し、同じ培地に再度懸濁した。細胞(100,000細胞/ウェル)を、1μg/mlのラミニン1でコーティングされた96ウェルプレートにプレーティングした。試験する以下の型の抗CD151Mabを終濃度0.4μg/mlで同時に添加した:マウスIgG1Mab m214B2およびキメラIgG1−TH7、IgG4−TH7、およびIgG2抗体型。37℃で1時間インキュベートした後、プレートをはたいて、無血清F12k培地で2回洗浄した。分析前に、100μlの無血清F12k培地を各ウェルに分注した。細胞接着に対する種々の抗体の影響を評価するために、接着した細胞の数をATPアッセイにより決定した。
【0252】
種々のキメラ型の214B2が、細胞間相互作用を変えることができ、PC3細胞接着を増加させることができた(図15B)。キメラ型c214B2[IgG1−TH7]、c214B2[IgG4−TH7]、およびc214B2[IgG2]により誘導された影響は、マウス型m214B2により誘導された影響と同等であった。これらのキメラ抗体は、非処理細胞ならびに種々の対照抗体hIgG1、hIgG2、およびhIgG4で処理された細胞と比べて約40%のPC3細胞接着の増加を誘導した。
【0253】
実施例12:214B2Mabのヒト化
一般的手順
CDRグラフト化の一般的規則を適用して214B2抗CD151抗体のヒト化を行った。CDRおよびフレームワーク(FR)領域の免疫遺伝学的分析および定義を、IMGTの固有の番号付与スキームならびにIMGTのライブラリーおよびツール(Lefranc, 1997−www.imgt.org))を用いて行った。
【0254】
元の抗体のエピトープに対するヒト化バリアントの親和性を、元の抗体をヒト化抗体で交差ブロックすることにより評価した。元の抗体の濃度を一定に保ち、ヒト化抗体を段階希釈した。キメラ抗体をこれらの実験における陽性対照および基準とした。ELISAによる親和性およびフローサイトメトリーアッセイによりヒト化抗体を評価した。ELISAをベースにしたアッセイでは、ヒトCD151の第2の細胞外ドメイン(EC2)を組換えにより発現させ、6ヒスチジンタグで精製した。精製されたEC2タンパク質を用いてELISAプレートをコーティングし、HRPがコンジュゲートされた抗マウスIgG抗体を用いてマウスの元の抗体を検出することで、ヒト化抗CD151抗体の結合を間接的に測定した。ヒト化抗CD151抗体のCD151への結合を、ヒト前立腺癌細胞系PC3を用いたフローサイトメトリーにより評価した。ビオチン化された元のマウス抗CD151抗体と交差ブロックすることにより親和性を決定した。ビオチン化抗体は、フルオレセインがコンジュゲートされたストレプトアビジンを用いて検出した。BiaCore分析により親和定数(Kd)を測定した。
【0255】
これらのアッセイを用いて、組換えヒト化バージョンの抗CD151抗体の特徴を解析した。可変ドメインは、ヒトIgG1/k定常ドメインで構成され、哺乳動物用の発現ベクターpCEPにクローニングされた。組換えIgG1/κ由来抗体をHEK293細胞中で一時的に発現させた。発現培養上清を濾過し、プロテインAセファロースを用いて抗体を精製した。精製された抗体をPBSで再度緩衝化し、ELISAにより抗体濃度を決定した。
【0256】
214B2重鎖のヒト化
マウス214B2重鎖CDRのグラフト化に最適なヒト生殖系列のサーチから、ヒトIGHV1−2*02V遺伝子アレルに対応する好ましいヒットを1つ特定した。これはマウスIGHVS130*01生殖系列遺伝子と66%同一であり、CDRの長さが同じである。214B2_VHとIGHV1−2*02はFR中で28ヶ所が異なっていた。これら28個の異なる残基それぞれに推定される重要性の評価基準としては、限定されるものではないが、ベルニエゾーン中での局在、CDRアンカーに近い位置であること、同じヒト生殖系列群の別のアレル中における同じ位置に存在することが含まれる。
【0257】
IGHV1−2*02のV遺伝子を検討した結果、ベルニエゾーン内の5個の残基がm214B2およびmIGHVS130*01のどちらとも異なり(I53、E55、A76、L78、V80)、これらを高い優先度で考慮し、マウスのままで最初保存した(図16)。その他に、N67も、CDR2アンカーの近くに位置するため、高い優先度で考慮すべき残基として順位付けされる。
【0258】
J領域を検討した結果、ヒトIGHJ6*01遺伝子は、m214B2およびmIGHJ4*01のどちらとも異なる3個の残基を含む。この領域は本質的にFR4に相当するので、最初で完全にヒト化してよい。CDR3の配列に本質的に相当する多様性D遺伝子(ARARSFYYAMDC)は改変せずにグラフト化した。
【0259】
214B2軽鎖VLのヒト化
マウス214B2軽鎖CDRのグラフト化に最適なヒト生殖系列のサーチから、可能性のある2つのヒットを特定した。
【0260】
Asn1に対応する変則的な残基が同定され、これはいくつかのマウス生殖系列V遺伝子に存在するが、ヒトには存在しない。この残基はCDR1に近接しているため、選択されたヒトV遺伝子で見られるような、この残基のGluへの改変には注意が必要であり得、評価する必要がある。
【0261】
1つ目は、ヒトIGKV3D−7*01生殖系列アレルと相同性が最も近いヒトV領域に相当する。しかしそのCDR1は214B2のCDR1よりも1アミノ酸長いので、このCDRは結局CDRグラフト化に最適ではない。そこで、ヒト生殖系列IGKV1D−39*01が選択された。これはマウス生殖系列アレルIGKV6−20*01との同一性が64%であり、CDRの長さが同じである。214B2VLと選択されたヒトV遺伝子との間の異なる残基それぞれに推定される重要性の評価基準としては、限定されるものではないが、ベルニエゾーン中での局在、CDRアンカーに近い位置であること、同じヒト生殖系列群の別のアレル中における同じ位置に存在することが含まれる。
【0262】
IGKV1D−39*01のV遺伝子を検討した結果、ベルニエゾーン内の1個の残基が214B2およびmIGKV6−20*02のどちらとも異なっており(A84)、これは高い優先度で考慮する必要があり、マウスのままで最初保存する必要がある。その他に、2個の重要な残基がCDR1アンカーおよびCDR2アンカーのV39およびN66に相当する。これらも優先度が高く順位付けされ、マウスのままで最初保存される。5個の残基が、CDRアンカーに位置が近いため(K24、S40、Y68、およびH103)またはCDR1に近接するため(V3)、考慮の優先度が中程度として順位付けられる。残りのアミノ酸(番号3として順位付けられている)は、ヒト化重鎖の全体的コンホメーションおよびCD151の認識に対する影響が弱いと考えられ、これらはヒトの対応するアミノ酸で容易に置換された。
【0263】
J領域を検討した結果、ヒトIGKJ2*01遺伝子は、m214B2およびmIGKJ2*01のどちらとも異なる1個の残基(G)を含む。この領域は本質的にFR4に相当するので、最初で完全にヒト化した。
【0264】
IMGT−CDR3配列(GQTYSFPYT)は配列を改変せずにそのままグラフト化した。
【0265】
最初の一連の実験では、ELISAでヒト化抗体を試験した。VHのバリアント1、バリアント2、およびバリアント3のそれぞれを、VLの3つの異なるバリアントと組み合わせた。VHバリアント1の全てのコンストラクトはマウス抗体と競合する能力を示さない(図17、A)。これは、この抗体の抗原認識にフレームワーク中の構造的残基が重要であることを最初に示すものである。VLVar1とVHVar2またはVHVar3の組合せは、キメラ抗体と比べて、元の抗体をブロックする能力がはるかに低かった。したがって、これらのバリアントについてはその後の評価を行わなかった。抗体Hz214B2VHVar4VLVar4を含む他の全てのバリアントはキメラ抗体と同様なブロック活性を示す(図18、B、C、D)。
【0266】
全体抗原CD151への結合のモデルとしてEC2への結合を用いた。細胞表面上の抗原への親和性をフローサイトメトリーで評価した。抗体Hz214B2VHVar4VLVar4で最も高レベルの交差ブロック活性が測定された。これらの結果は、抗体214B2の結合特性を維持するために比較的多くの逆変異が必要であることを示している。
【0267】
Hz214B2VHVar4VLVar4のフレームワーク中のヒト残基の割合を計算したところ、226残基中22個の非ヒト残基が含まれており、これは90.3%のgerminality indexに等しい。
【0268】
ヒトCD151の細胞外ループ2(EC2)を用いたBIACore分析によりキメラ抗体および2つのヒト化バリアントの親和性を決定した(図20)。
【0269】
実施例13:PC3異種移植モデルに対する種々のアイソタイプのキメラc214B2Mabのインビボ活性
214B2Abのキメラコンストラクトを評価するために、胸腺欠損マウスにアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞系PC3(ATCC CRL1435)から5.106個の細胞を移植した。移植5日後に、腫瘍体積は68〜108mm3(π/6×長さ×幅×高さ)に達し、マウスを6頭のグループにランダム化した。試験するビヒクルまたは抗体を腹腔内投与した。処置されたマウスは、5日目(D5)に1頭当たり2mgの負荷量を投与され、12日目(D12)に追加注射された。腫瘍体積を週に2回評価した。
【0270】
図21Aおよび21Bに示す結果から、調べた全てのキメラ型が、PC3異種移植モデルに対して同様に大きなインビボでの効果を示すことが示された。
【0271】
【表8】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号7、25、もしくは37のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および/または配列番号8、9、26、27、38、もしくは44のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、キメラ抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメント。
【請求項2】
配列番号7のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および配列番号8のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項1に記載のキメラ抗体。
【請求項3】
IgG1である、請求項2に記載のキメラ抗体。
【請求項4】
配列番号7のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および配列番号9のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項1に記載のキメラ抗体。
【請求項5】
IgG4である、請求項4に記載のキメラ抗体。
【請求項6】
配列番号25または37のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および配列番号26または38のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項1に記載のキメラ抗体。
【請求項7】
IgG1である、請求項6に記載のキメラ抗体。
【請求項8】
配列番号41のアミノ酸配列を含むヒンジ領域を含む、請求項7に記載のキメラ抗体。
【請求項9】
配列番号37のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および配列番号38のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項8に記載のキメラ抗体。
【請求項10】
配列番号25のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および配列番号27のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項1に記載のキメラ抗体。
【請求項11】
IgG4である、請求項10に記載のキメラ抗体。
【請求項12】
配列番号25のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および配列番号44のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項1に記載のキメラ抗体。
【請求項13】
IgG2である、請求項12に記載のキメラ抗体。
【請求項14】
配列番号46、47、48、もしくは49のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖可変ドメインおよび/または配列番号50、51、52、もしくは53のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖可変ドメインを含む、請求項1に記載のキメラ抗体に由来するヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメント。
【請求項15】
配列番号62、63、64、もしくは65のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および/または配列番号66、67、68もしくは69のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項14に記載のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメント。
【請求項16】
IgG1である、請求項15に記載のヒト化抗体。
【請求項17】
配列番号62、63、64、もしくは65のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および/または配列番号70、71、72、もしくは73のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項14に記載のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメント。
【請求項18】
IgG2である、請求項15に記載のヒト化抗体。
【請求項19】
以下の核酸から選択される、単離された核酸:
a)請求項1〜18のいずれか一項に記載の抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つをコードするDNAまたはRNA核酸;
b)前記a)で定義される核酸に相補的な核酸;
c)配列番号16〜18、34〜36、39、40、45、54〜61、または74〜85の核酸配列の少なくとも1つと高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズできる少なくとも18ヌクレオチドの核酸。
【請求項20】
請求項19に記載の核酸を含むベクター。
【請求項21】
請求項20に記載のベクターを含む細胞宿主。
【請求項22】
請求項21に記載の細胞を含む、ヒト以外のトランスジェニック動物。
【請求項23】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の抗体またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントの1つからなる化合物を活性成分として含む、組成物。
【請求項24】
同時使用、個別使用、または時間差使用のための組合せ製品として、抗体、細胞毒性/細胞増殖抑制剤、細胞毒、または放射性元素を更に含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
医薬としての、請求項23または24の記載の組成物。
【請求項26】
癌の防止または処置を意図する医薬の製造における、請求項1〜18のいずれか一項に記載の抗体またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントの1つおよび/または請求項23〜25のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項27】
前記癌が、前立腺癌、肺癌、結腸癌、乳癌、または膵臓癌から選択される癌であること、請求項26に記載の使用。
【請求項1】
配列番号7、25、もしくは37のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および/または配列番号8、9、26、27、38、もしくは44のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、キメラ抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメント。
【請求項2】
配列番号7のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および配列番号8のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項1に記載のキメラ抗体。
【請求項3】
IgG1である、請求項2に記載のキメラ抗体。
【請求項4】
配列番号7のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および配列番号9のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項1に記載のキメラ抗体。
【請求項5】
IgG4である、請求項4に記載のキメラ抗体。
【請求項6】
配列番号25または37のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および配列番号26または38のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項1に記載のキメラ抗体。
【請求項7】
IgG1である、請求項6に記載のキメラ抗体。
【請求項8】
配列番号41のアミノ酸配列を含むヒンジ領域を含む、請求項7に記載のキメラ抗体。
【請求項9】
配列番号37のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および配列番号38のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項8に記載のキメラ抗体。
【請求項10】
配列番号25のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および配列番号27のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項1に記載のキメラ抗体。
【請求項11】
IgG4である、請求項10に記載のキメラ抗体。
【請求項12】
配列番号25のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および配列番号44のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項1に記載のキメラ抗体。
【請求項13】
IgG2である、請求項12に記載のキメラ抗体。
【請求項14】
配列番号46、47、48、もしくは49のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖可変ドメインおよび/または配列番号50、51、52、もしくは53のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖可変ドメインを含む、請求項1に記載のキメラ抗体に由来するヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメント。
【請求項15】
配列番号62、63、64、もしくは65のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および/または配列番号66、67、68もしくは69のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項14に記載のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメント。
【請求項16】
IgG1である、請求項15に記載のヒト化抗体。
【請求項17】
配列番号62、63、64、もしくは65のアミノ酸配列を含む配列を有する軽鎖および/または配列番号70、71、72、もしくは73のアミノ酸配列を含む配列を有する重鎖を含む、請求項14に記載のヒト化抗体または誘導化合物もしくは機能的フラグメント。
【請求項18】
IgG2である、請求項15に記載のヒト化抗体。
【請求項19】
以下の核酸から選択される、単離された核酸:
a)請求項1〜18のいずれか一項に記載の抗体またはその誘導体化合物もしくは機能的フラグメントの1つをコードするDNAまたはRNA核酸;
b)前記a)で定義される核酸に相補的な核酸;
c)配列番号16〜18、34〜36、39、40、45、54〜61、または74〜85の核酸配列の少なくとも1つと高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズできる少なくとも18ヌクレオチドの核酸。
【請求項20】
請求項19に記載の核酸を含むベクター。
【請求項21】
請求項20に記載のベクターを含む細胞宿主。
【請求項22】
請求項21に記載の細胞を含む、ヒト以外のトランスジェニック動物。
【請求項23】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の抗体またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントの1つからなる化合物を活性成分として含む、組成物。
【請求項24】
同時使用、個別使用、または時間差使用のための組合せ製品として、抗体、細胞毒性/細胞増殖抑制剤、細胞毒、または放射性元素を更に含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
医薬としての、請求項23または24の記載の組成物。
【請求項26】
癌の防止または処置を意図する医薬の製造における、請求項1〜18のいずれか一項に記載の抗体またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントの1つおよび/または請求項23〜25のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項27】
前記癌が、前立腺癌、肺癌、結腸癌、乳癌、または膵臓癌から選択される癌であること、請求項26に記載の使用。
【図7】
【図8】
【図9】
【図11A】
【図11B】
【図16】
【図17】
【図20】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図10】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図18】
【図19】
【図21】
【図8】
【図9】
【図11A】
【図11B】
【図16】
【図17】
【図20】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図10】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図18】
【図19】
【図21】
【公表番号】特表2013−507114(P2013−507114A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532613(P2012−532613)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065085
【国際公開番号】WO2011/042534
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(500033483)ピエール、ファーブル、メディカマン (73)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065085
【国際公開番号】WO2011/042534
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(500033483)ピエール、ファーブル、メディカマン (73)
【Fターム(参考)】
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