説明

CDMA相互相関アーチファクトを軽減し、TDMA測位ネットワークにおけるSN比を改善するシステム及び方法

時分割多重アクセス(TDMA)測位システムのための修正システムが開示される。位置受信機は、時分割多重アクセス(TDMA)スキームでパルス送出される複数の符号分割多重アクセス(CDMA)変調された測位信号を取得し、追跡し、そして復調する。位置受信機内の特殊化修正プロセッサは、受信した複数の時分割多重アクセス(TDMA)測位信号と同期して符号分割多重アクセス(CDMA)測位信号の擬似乱数(PRN)コード信号レプリカをそれぞれ内部的に生成するように構成されている。この相関システムは、符号分割多重アクセス(CDMA)相互相関アーチファクトの有害効果が存在しない、またSN比を劣化させない、従って高精度の位置解を計算可能にする距離測定を与える位置受信機を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、電波測位システムにおける精密な距離決定を生成するシステム及び方法に関する。本発明は、特定的には、擬似ランダムコード相互相関アーチファクトの軽減、及び時分割多重アクセス(TDMA)スキームでパルス送出される符号分割多重アクセス(CDMA)測位信号におけるSN比の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの電波測位システムは、複数の送信機を使用する。各送信機は、連続する独特な符号分割多重アクセス(CDMA)信号を送信する。CDMA受信機は、一般に、複数の受信機チャネルを使用してこれらの信号を追跡(track)する。各受信機は、通常、各送信機までの距離を決定するために2つまたはそれ以上の相関器を含んでいる。伝統的なCDMA受信機は、これらの連続CDMA信号に対して連続的に相関する。若干の従来技術の位置受信機は、複数の連続CDMA信号にまたがって単一の受信チャネルを順番付けする。受信機を順番付けする目的は、位置受信機ハードウェアのコスト及び電力消費を低減させることである。
【0003】
CDMAをベースとする電波測位システムの全てが、連続信号をブロードキャストするのではない。ブロードキャストされるCDMA測位信号が全て同じような信号電力で1つの位置受信機に到達することが予測される場合には、連続CDMA測位信号が典型的に使用される。しかしながら、ブロードキャストされるCDMA測位信号が異なる信号電力で受信される場合には、より高い信号電力送信機からの連続CDMA測位信号がより低い信号電力送信機から受信される信号を歪ませる。これらの条件の下でCDMA測位信号を分離するためには、CDMA分離の他に、周波数分離(いわゆる周波数分割多重アクセス(FDMA))を使用してCDMA測位信号を更に分離することができる。代替として、CDMA測位信号は、CDMA分離の他に、時分割分離(いわゆる時分割多重アクセス(TDMA))を使用して更に分離することができる。
【0004】
若干の電波測位システムは、いわゆる近/遠問題を軽減するために、CDMA測位信号を、同一周波数で、且つパルス化時分割多重アクセス(TDMA)スキームで送信する。CDMA測位信号は、2つの独特な連続CDMA測位信号を分離する特定のダイナミックレンジを有しており、このダイナミックレンジは、CDMA測位信号を生成するために使用された擬似乱数(PRN)コードの長さによって決定される。近/遠問題は、1つまたはそれ以上の連続CDMA測位信号が他の何れかのCDMA測位信号に対してこのダイナミックレンジを超えた時に、従って、位置受信機が2つのCDMA測位信号を区別できない時に発生する。更に、もし1つまたはそれ以上の連続CDMA測位信号がこのダイナミックレンジを超えれば、受信機の高周波(RF)フロントエンドは飽和するようになる。この飽和は、最も一般的には、複数のCDMA信号送信機が同一の電力レベルでブロードキャストしているが、位置受信機から異なる距離にある時にもたらされる。距離が異なると、位置受信機から見た時に自由空間電力損が変化し、近い送信機からの信号は遠い送信機からブロードキャストされる信号より強く観測されるので、近/遠という用語を用いて問題を記述するのである。
【0005】
海上無線技術委員会(The Technical Commission for Maritime:RTCM)は、CDMA測位システムのための1つの共通TDMAブロードキャストスキームを定義している。海上無線技術委員会(RTCM)ブロードキャストスキームは、全地球測位置システム(GPS)の粗取得(アクイジション)(C/A)コードの1ミリ秒の期間を、11の等しいTDMAタイムスロットに分割する。即ち、各タイムスロットは1ミリ秒の1/11の間持続する。各ミリ秒の間に、各送信機は、そのミリ秒内の1つのTDMAタイムスロットを占有する。その後のミリ秒間隔に関しては、所定の擬似ランダムシーケンスに基づいてサブミリ秒TDMAタイムスロット割当てが変化する。各送信機をTDMAブロードキャストスキーム内の特定の期間(この例においては1ミリ秒)内で表す時、この期間をTDMAサブシーケンス反復期間と名付ける。海上無線技術委員会(RTCM)ブロードキャストスキーム全体は200ミリ秒毎に完全に反復され、これを全シーケンスTDMA反復期間と名付けている。
【0006】
信号対雑音比(SN比、SNR)は、位置受信機がTDMA測位信号に対して連続的に相関する時に損なわれる。位置受信機がTDMA測位信号に対して連続的に相関している時には、相関時間の一部分は、オンパルス時間として知られる所望のTDMA測位信号を含む。オフパルス時間として知られる残余の相関時間中には、受信した測位信号は所望の信号を含まない。これらのオフパルス時間中、位置受信機は他のTDMA測位信号及び雑音に対して相関し、所望のTDMA測位信号には相関しない。オフパルス時間中の連続的な相関は、受信した信号を増加させずに、位置受信機相関プロセス中にもたらされる雑音を増大させる。所望の信号が存在しない時の相関に雑音が付加されるので、SNRが低下する。
【0007】
CDMA相互相関は、位置受信機がTDMA測位信号に対して連続的に相関している時に増加する。CDMA相互相関は、CDMAコード分離ダイナミックレンジが制限されているために、位置受信機のダイナミックレンジ内の2つまたはそれ以上のCDMA測位信号が相関プロセス内で相互に結合される場合である。相互相関の結果、所望の信号の自己相関関数に歪みがもたらされる。連続的に送信するCDMA測位システムの殆どにおいては、CDMA相互相関歪みはCDMAコード分離ダイナミックレンジに比して比較的小さい。しかしながら、TDMA測位システムにおいては、オフパルス時間中の相関が、連続信号を用いた時に予測されるよりも高いレベルまで相互相関を増加させる。これは、オフパルス時間中に、位置受信機が他のTDMA測位信号に対して相関するからである。
【0008】
従来技術の多重チャネル位置受信機は、連続的に送信されるCDMA測位信号を用いて動作するように設計されている。連続的に送信されるCDMA測位信号の例は、全地球測位システム(GPS)である。従来技術の多重チャネルGPS受信機は、複数の連続GPS測位信号に対して連続的に相関する。代替の従来技術受信機は、位置受信機のハードウェアコスト及び電力消費を低減させるために、単一チャネルアーキテクチャを使用して連続CDMA測位信号の間を順番付けする。受信機に順番付けする従来技術の例が、1984年8月28日付米国特許第4,468,793号“全地球測位システム(GPS)多重化受信機”、及び1989年7月18日付米国特許第4,8949,961号“高速順番付け復調方法及び装置”に開示されている。これらの特許は、連続CDMA測位信号を順番付けする単一チャネル受信機アーキテクチャを教示している。これらの受信機の順番付けは、受信機チャネルを減少させることによって、従って受信機のコスト及び電力消費を低減させることによって、これらの発明の目的を達成している。しかしながら、受信機に順番付けする従来技術は、TDMAブロードキャストスキームに合わせるために順番付けパターンを調整する手段を含んでなく、従って、上述した相互相関またはSNR劣化問題に対処するための手段を有していない。
【0009】
従来技術のTDMA通信受信機は、データ処理能力を増加させたTDMA通信信号をユーザ受信機へ送信する。これらの型のシステムの例が、1999年2月23日付米国特許第5,875,402号“時間同期通信システム”、1996年4月23日付米国特許第5,510,797号“SPSタイミング信号の準備”、1994年11月22日付米国特許第5,367,524号“順次データ送信方法”、及び2004年7月13日付米国特許第6,763,241号“GPS受信機を使用するデータ通信同期”に開示されている。これらの通信システムは、全地球測位システム(GPS)が提供するような外部同期技術を使用してユーザ受信機のTDMA同期を行う。GPSまたは類似の衛星をベースとする同期技術の使用は、TDMA通信受信機を衛星システムに拘束することになる。更に、外部同期手順を容易にするためには、付加的なハードウェア、即ちGPS受信機または相当品が必要になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
明らかに、(a)TDMA測位信号に関する測定データを供給するための、(b)1組の連続CDMA信号の間を任意に順番付けするための、(c)TDMA同期に関して衛星を見るための、連続的に走る複数のCDMA相関器、及び(d)TDMAタイミングを確立するだけに使用される全地球ナビゲーション衛星システム(GNSS)受信機のような付加的なハードウェアを必要としない位置受信機に対する要望が存在している。これらの制約を受けずに動作する位置受信機が高度に望ましい。また、明らかに、相互相関アーチファクトの有害な効果、及びTDMA測位ネットワークに低信号対雑音比(SNR)をもたらさない測距信号を提供できる位置受信機に対する要望も存在している。本発明は、TDMAブロードキャストスキームで測位信号を送信し、受信したTDMA測位信号に位置受信機を時間順に(即ち、入力順に)同期させ、ネットワークTDMAブロードキャストスキームと同期して、受信したTDMA測位信号に順次に相関することによってこの所望の目的を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、相互相関歪みを軽減し、TDMA測位信号内の信号対雑音比(SNR)を増加させる位置受信機アーキテクチャを提供することであり、これは、TDMA測位信号をTDMAブロードキャストスキームと同時に処理し、正確な距離測定を、従って正確に決定された位置解をもたらすことによって達成される。
【0012】
本発明のさらなる目的は、その相関プロセスをTDMAブロードキャストスキームに自律的に同期させる位置受信機アーキテクチャを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、外部同期手段を必要とせずに、その相関プロセスをTDMAブロードキャストスキームに同期させる位置受信機アーキテクチャを提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、受信機ハードウェアを効率的に使用して、コスト及び電力消費を最小にする位置受信機アーキテクチャを提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、TDMAブロードキャストスキームの送信タイムスロット内の使用可能な時間中に、擬似乱数(PRN)コード及びPRNコード位相を迅速に変更することができる擬似乱数(PRN)コードシーケンス発生器を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、連続的に走るコード及び搬送波デジタル制御発振器(DCO)を必要とせずに、連続コード及び搬送波デジタル制御発振器(DCO)カウンタ値をTDMAブロードキャストスキームで供給する位置受信機アーキテクチャを提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、連続的に走る搬送波デジタル制御発振器(DCO)を必要とせずに、連続積分された搬送波位相(ICP)測定をTDMAブロードキャストスキームで供給する位置受信機アーキテクチャを提供することである。
【0018】
本発明は、時分割多重アクセス(TDMA)ブロードキャストスキームでパルス化された符号分割多重アクセス(CDMA)変調された信号内の相互相関アーチファクトを軽減し、SN比を改善するシステム及び方法を開示する。これは、位置受信機内に実現されているいわゆるTDMA相関器エンジンを使用して達成される。TDMA相関器エンジンは、複数のTDMA送信の受信と時間順に同期する。TDMA相関器エンジンとTDMA送信の受信との同期は、いわゆるTDMAシーケンス決定手段を使用して達成される。TDMAシーケンス決定手段は、内部的に生成した信号レプリカが受信したTDMA測位信号に同期するように、TDMA相関器エンジン内において必要タイミング及びPRNコードシーケンスを決定する。TDMAシーケンス決定手段は、この同期を確立するために、TDMA送信に関連していわゆるマスターチャネルタイマーを使用する。更に、全てのTDMAタイムスロットにおいてこのTDMA相関器エンジンを迅速に再使用することは、位置受信機ハードウェア資源を効率的に利用することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
概要
既知の位置に位置する時間順に同期した複数の測位ユニットデバイスは、各送信機が指定された送信タイムスロットにその独特なCDMA測位信号をブロードキャストするように、所定の時分割多重アクセス(TDMA)で測位信号を送信する。位置受信機は、測位ユニットデバイスのネットワークからTDMA測位信号を受信し、測位ユニットデバイスネットワークに対する位置、速度、及び時間(PVT)を決定するように構成されている。一実施の形態においては、位置受信機は、任意の時点に1つの測位信号だけを受信することができる単一の受信チャネルを用いて構成されている。この単一の受信チャネルには、複数の符号分割多重アクセス(CDMA)相関器を再現するように迅速に変更できる相関器アーキテクチャが組込まれている。TDMA相関器エンジンと称するこの迅速に変更可能な相関器アーキテクチャは、TDMA測位信号の受信と同期して、TDMAパルス化CDMAコードシーケンスに相関することができる。TDMA相関器エンジンは、その後に受信される各TDMA測位信号について同一の相関器回路を再使用する。別の実施の形態においては、各チャネルがTDMA相関器エンジンを用いて構成されている多重チャネル構成が、位置受信機に同時に到達するTDMA測位信号に同時に相関する。1つのTDMA相関器エンジンを用いて構成されている位置受信機が複数の連続CDMA相関器を置換し、この位置受信機はTDMA受信シーケンスと自律的に同期するその独特な能力によって従来技術の受信機とは区別される。この同期は、測位ユニットデバイスのネットワークから受信する信号にTDMA相関器エンジンを同期させるいわゆるTDMAシーケンス決定手段を使用して達成される。
【0020】
TDMAシーケンス決定手段は、TDMAブロードキャストスキーム、測位ユニットデバイスの位置、及び測位ユニットデバイスのネットワーク時間の知識に基づく決定アルゴリズムを使用することによってTDMA相関器エンジンの同期を達成する。TDMA相関器エンジンの内部擬似乱数(PRN)コード発生器からのコード及びコード位相、並びに搬送波デジタル制御発振器(DCO)は、単一チャネル位置受信機が現在受信しているPRNコードだけに相関できるように、各測位ユニットデバイス送信のTDMAブロードキャストシーケンスに追随して同期的に更新される。決定アルゴリズムは、位置受信機の位置の変化を各測位ユニットデバイスからの伝播遅延の変化と見做し、TDMA相関器エンジンの相関器積分期間のスタート及びストップ時点を調整して測位ユニットデバイス送信の受信を最良適合させる。
【0021】
システム及び方法
時間順に同期した測位ユニットデバイスは、TDMAブロードキャストスキームでCDMA測位信号を位置受信機へ送信する。位置受信機には1つまたはそれ以上の受信チャネルが組込まれており、各受信チャネルにはTDMA相関器エンジンが組込まれている。TDMA相関器エンジンは、位置受信機内のTDMA相関器エンジンの動作を支援するために、迅速に構成可能な擬似乱数(PRN)コードシーケンス発生器、搬送波デジタル制御発振器(DCO)、チャネルマスタータイマー、及び所要の付随ミキサー、累算器、及びインタフェースを含む。TDMA相関器エンジンは、生の同相及び直角(I&Q)データサンプルを、位置受信機内の中央処理ユニット(CPU)へ供給する。位置受信機のCPUは受信チャネルを、従ってTDMA相関器エンジンを管理し、チャネルマスタータイマーに対する特定の時点に特定の相関を遂行させる。受信したTDMA測位信号と同期して行われるTDMA相関器エンジンの順番付けは、1)測位ユニットデバイス送信機の位置及び送信タイムスロット、2)位置、速度、時間(PVT)解から入手した位置受信機の位置及び時間、及び3)チャネルマスタータイマーの状態の知識、を組合わせるTDMAシーケンス決定手段によって制御される。好ましい実施の形態においては、TDMAシーケンス決定手段は、チャネルマスタータイマーに対するその後のTDMA測位信号の到着時点を予測するソフトウェアアルゴリズムを含む。代替実施の形態においては、このプロセスは、ハードウェア及びソフトウェアの両方に分配することができる。
【0022】
図1に、本発明の簡易形TDMA相関器エンジン101を示す。受信したTDMA測位信号は、高周波(RF)フロントエンドアナログ・デジタルコンバータ(ADC)から入力データサンプル102としてTDMA相関器エンジン101へ供給される。これらのデータサンプル102は、TDMA相関器エンジン101内においてTDMA相関器エンジン101の同相(I)追跡アーム103、及び直角(Q)追跡アーム104へ供給され、搬送波ミキサー105及び106においてそれぞれ搬送波DCO109の同相(I)成分107及び直角(Q)成分108と混合される。搬送波ミキサー105及び106の出力はコードミキサー110及び111へ引き渡され、PRNコードシーケンス発生器112から供給されるPRNコードチップシーケンスと混合される。コードミキサー110及び111の出力は相関値を与え、これらの値はそれぞれ累算器113及び114へ引き渡される。このプロセスによって導出されたそれぞれの累積値は、CPU116によるさらなる処理のためにデータバス115へダンプされる。搬送波DCO109及びPRNコードシーケンス発生器112は、データバス115を介してCPU116によって制御される。チャネルマスタータイマー117も設けられており、データバス115を介してTDMAシーケンス決定手段118に接続されている。チャネルマスタータイマー117は、TDMA相関器エンジン101のためのタイミング基準を発生する。積分期間スタート及びストップ時点は、TDMAシーケンス決定手段118によってマスターチャネルタイマー117に対して決定され、好ましくは、TDMA測位信号の各個々のパルスの受信の始まり及び終わりと一致させる。搬送波DCO109及びPRNコードシーケンス発生器112の更新は、チャネルマスタータイマー117が積分期間のスタート時点に到達する前に、CPU116からデータバス115を介してプログラムされる。チャネルマスタータイマー117がプログラムされた積分期間のスタート時点に到達すると、搬送波DCO109及びPRNコードシーケンス発生器112は、プログラムされた値に再構成される。搬送波DCO109及びPRNコードシーケンス発生器112の再構成が終了すると、チャネルマスタータイマー117の値が捕捉され、データバス115へダンプされる。累算器113及び114は、搬送波DCO109及びPRNコードシーケンス発生器112の更新と同期して、0または他のある名目値にリセットされる。搬送波DCO109及びPRNコードシーケンス発生器112が再構成され、累算器113及び114がリセットされると、データサンプルの累積処理か開始される。
【0023】
データサンプルが処理されると、PRNコードシーケンス発生器112は、CPU116によってプログラムされたコード位相及びコードレートに基づいて、PRNコードシーケンスブロックメモリ119から適切なPRNコードチップをロードする。順次PRNコードチップがそれぞれのコードミキサー110及び111に供給され、搬送波ミキサー105及び106出力とそれぞれ混合される。これらの相関値は、累積プロセス中の積分期間にわたって合計される。チャネルマスタータイマー117が積分期間のストップ時点に到達すると、CPU116によるさらなる処理のために、各累算器113及び114はそれらの累積値をデータバス115へダンプする。
【0024】
累積値のこのダンプと同期して、チャネルマスタータイマー117の値が捕捉され、データバス115へダンプされる。積分期間が終了すると、CPU116は、TDMA相関器エンジン101から捕捉されたチャネルマスタータイマー117の値及び累積された同相及び直角(I&Q)値を、データバスを介して読出す。好ましい実施の形態においては、TDMA相関器エンジン101の更新レートはTDMA測位信号のTDMAタイムスロットレートと同一であるが、他の選択されたレートも本発明の範囲内にあることを理解されたい。
【0025】
図1に示す簡易形TDMA相関器エンジンは、単一追跡アーム(概念的には、プロンプト(P)アーム)だけを含んでいる。付加的な追跡アームも本発明の範囲内で支援される。それらの例は、早(Early)(E)、遅(Late)(L)、及び早マイナス遅(E−L)を含み、早(E)または遅(L)アームはプロンプト(P)アームからCDMAチップの半分だけ離間して配置される。更に、早(E)及び遅(L)アームが、チップの1/4、チップの1/10、または他の好都合な、または要求される間隔のような他のチップ間隔にある追跡アームの実施の形態も支援される。更に、任意の間隔及び密度の複数の追跡アームも本発明の範囲内にあることを理解されたい。
【0026】
TDMA相関器エンジンの同期
受信したTDMA測位信号とTDMA相関器エンジンとの同期は、TDMAシーケンス決定手段によって確立される。TDMAシーケンス決定手段は、1)測位ユニットデバイス送信機の位置及び送信タイムスロット、2)位置、速度、時間(PVT)解から入手した位置受信機の位置及び時間、及び3)チャネルマスタータイマーの状態、の知識を組合わせる。TDMAシーケンス決定手段のキー機能は、TDMA測位信号の受信時点とチャネルマスタータイマーとの間の関係を確立することである。チャネルマスタータイマーとTDMA測位信号の受信時点との間のタイミング関係は、以下の諸ステップから決定される。
【0027】
1.粗タイミング関係を決定する。チャネルマスタータイマーとTDMA測位信号の受信との間の粗タイミング関係は、TDMA測位信号の中でブロードキャストされるナビゲーションデータビットから導出される。位置受信機は、各積分期間に、TDMA相関器エンジンから累積された同相及び直角(I&Q)データを問合わせる。もしナビゲーションデータビットが積分期間中に出現すれば、積分期間のスタート及びストップ時点のためのチャネルマスタータイマーの捕捉された値がCPUメモリ内に格納される。このナビゲーションデータビット移行のチャネルマスタータイマー値が確立されると、ナビゲーションデータビットストリームに問合わせてデータサブフレームの始まりを探知する。各データサブフレームは、測位ユニットデバイスネットワークタイムスタンプをデータサブフレーム内の所定の位置に含む。同期したネットワーク内の各測位ユニットデバイスは、同期データフレーミング及びタイミング情報を送信する。ナビゲーションデータの有効サブフレームがデコードされると、そのサブフレームに関連付けられたネットワークタイムスタンプを、そのサブフレームのスタートに関連付けられたチャネルマスタータイマー値に直接関係付けることができ、それによってマスターチャネルタイマーと測位ユニットデバイスネットワーク時間との間の粗時間関係を確立することができる。この関係を粗時間と定義するのは、位置受信機内の共通モード時間バイアス及び信号伝播遅延が知られていないからである。共通モード時間バイアスは、位置受信機内の時計のオフセット、並びにRF構成要素によってもたらされる全ての受信された信号に共通の位置受信機遅延、及びデジタル処理における何等かの遅延を含む。伝播遅延は、測位ユニットデバイスと位置受信機との間の伝送距離によってもたらされる、後に決定される遅延である。
【0028】
2.精タイミング関係を決定する。CPU上のソフトウェア内で走る測定追跡ループから、複数の測位ユニットデバイスに対する距離測定が導出される。測定追跡ループは、TDMA相関器エンジンから読出された累積同相及び直角(I&Q)データによって駆動される。距離測定は、位置、速度、時間(PVT)解を計算するために処理される。位置、速度、時間(PVT)解の時間成分は、共通モード時間バイアスの推定である。TDMAシーケンス決定手段は、共通モード時間バイアス推定を用いて粗時間推定を修正し、それによって位置受信機に精密なネットワーク時間を与える。
【0029】
3.TDMA測位信号の受信機への到着時点を決定する。TDMA測位信号の到着時点を決定するために、TDMAシーケンス決定手段は、マスターチャネルタイマーに対するTDMA測位信号の送信時点を確立する。送信時点は、既知のTDMAブロードキャストスキーム及び同期した位置ユニットデバイスのネットワーク時間から決定される。TDMA測位信号の送信時点が確立されると、マスターチャネルタイマーに対するTDMA測位信号の受信時点が決定される。送信時点に関連付けられたマスターチャネルタイマー値が、位置ユニットデバイスと位置受信機との間の予測される伝播遅延によって調整される。マスターチャネルタイマー値が調整された後に、TDMA測位信号の受信時点が確立される。位置ユニットデバイスの位置はナビゲーションデータビットストリームから与えられ、位置受信機の推定された位置は位置、速度、時間(PVT)解から与えられる。
【0030】
4.TDMA同期を維持するために、上述した3ステップを繰り返す。チャネルマスタータイマーに対するTDMA側距信号の受信時点の正確な予測をTDMAシーケンス決定手段が維持するために、位置、速度、時間(PVT)解が位置受信機内において絶えず更新される。
【0031】
TDMAシーケンス決定手段が上述したようにチャネルマスタータイマーとTDMA側距信号の受信との間のタイミング関係を確立した後に、TDMA相関器エンジンが同期したことが宣言される。一旦同期すると、TDMAシーケンス決定手段は、TDMA測位信号の追跡及び復調を通して同期を維持する。
【0032】
TDMA位置受信機
好ましい実施の形態においては、TDMA位置受信機は、普通のRFフロントエンド、CPU、及び1つまたはそれ以上の受信チャネルを含む。各受信チャネルは、TDMA相関器エンジンとして構成されている。高周波(RF)フロントエンドは、デジタルドメインにおいて処理するために、TDMA測位信号を中間周波数(IF)に変換する。CPUは、1つまたはそれ以上の受信チャネルの探索及び追跡機能、特に、各受信チャネルに割当てられているTDMA相関器エンジンを管理する。各受信チャネルは、IFをベースバンドへダウン変換するミキサー、CDMA測位信号を復調するTDMA相関器エンジン、及び同相及び直角(I&Q)相関累積のようなCDMAコード特定測定をCPUへ供給するインタフェースを含む。更に、受信チャネルは、共通タイマー値、カウンタの読み、及び各受信チャネルのTDMA相関器エンジンの状態に関する状態情報のような全てのチャネル動作に共通の情報、及び測定の可用性をCPUへ供給する。
【0033】
好ましい実施の形態においては、CPUは、各プログラムされた積分期間の前に、データを受信チャネルへ、次いでデータバスを介してTDMA相関器エンジンへアップロードする。プログラムされた積分期間は、TDMAシーケンス決定手段によってダイナミックに決定される。各プログラムされた積分期間の終わりに、CPUは、累積された同相及び直角(I&Q)データをデータバスから読出し、捕捉されたマスターチャネルタイマー値を積分期間のスタート及びストップのために読出す。各プログラムされた積分期間毎にデータを独立的に受信チャネルへアップロードすることにより、最小のレジスタセットでCPUと位置受信チャネルとの間のバスインタフェースを支援することができる。データを各プログラムされた積分期間毎に独立的に受信チャネルへアップロードするために、CPUは、受信チャネルデータを更新し、適切なTDMAタイムスロットレートで測定値を読まなければならない。例えば、海上無線技術委員会(RTCM)パルシングスキームにおいては、これは、約91ミリ秒毎に位置受信機内の各TDMA受信チャネルにサービスするための要求に解釈される。
【0034】
代替実施の形態においては、CPUはデータをアップロードし、累積された同相及び直角(I&Q)データをデータバスから1つのブロック(1つまたはそれ以上のプログラムされた積分間隔を組込んである)で読出す。この実施の形態は、受信チャネルにサービスする時のCPU更新レートを減少させるが、CPUとTDMA相関器エンジンとの間のバスインタフェース上のレジスタセットの増加をもたらす。例えば、海上無線技術委員会(RTCM)パルシングスキームを使用すれば、11のTDMAタイムスロット期間をプログラムすることができ、データバス内の11の分離したメモリ位置を通して測定を同時に読むことができる。このアプローチは、CPU更新レートを1ミリ秒まで減少させるが、データバス上に11の積分期間を同時に格納するためにより大きいレジスタメモリが必要になる。この実施の形態は、アーキテクチャを、11の並列バスインタフェースチャネルを有する11の並列チャネル相関器から、1つのTDMA相関器エンジンに減少させることによって、受信機を実現するのに必要なデジタルロジックの量を減少させる。しかしながら、それにも拘わらずこのアーキテクチャは、CPUとTDMA相関器エンジンとの間に11のバスインタフェースチャネルの等価要素を必要とする。以上のブロック及びパルスシングスキームは、単なる例示に過ぎず、プログラミング及び測定をプログラムブロックに集めるTDMAブロードキャストスキームまたは方法を限定する意図はない。他のブロック構成及びパルシングスキームも、本発明の範囲内にあることを理解されたい。
【0035】
好ましい実施の形態においては、コード及び搬送波追跡のための受信機測定追跡ループは、TDMAタイムスロット期間の整数倍で更新される。例えば、再度海上無線技術委員会(RTCM)パルシングスキームを使用すれば、PRN反復期間、従って可能な最速測定追跡ループ更新レートは1ミリ秒である。各TDMA測位信号は、1ミリ秒のPRN反復期間の1/11の間はパルスオンであり、次のミリ秒までは再度パルスオンになることはない。従って、TDMA測位信号の独立測定は、1ミリ秒のタイミングレベルにおいてのみ可能である。測定追跡ループは、位置受信機の動作要求に依存して、この1ミリ秒更新レートで、またはそれより遅いレートで動作する。この例示TDMAブロードキャストスキームにおいては、受信機ソフトウェアは、全ての追跡されたTDMA信号追跡ループパラメータを1ミリ秒タイマー間隔で更新する。位置受信機は、PRN反復期間中に追跡された各TDMA測位信号の測定追跡パラメータを同期的に更新することができる。代替として、追跡ループソフトウェアは、各プログラムされた積分期間に追跡ループパラメータを更新することができる。この例においては、追跡ループソフトウェアは、それぞれの積分期間、即ち1ミリ秒の1/11の完了時に各TDMA信号の追跡ループを更新する。
【0036】
TDMA相関器エンジンの構成
好ましい実施の形態においては、TDMA相関器エンジンは、TDMA送信の受信中に特定のCDMA PRNコードに対する相関プロセスを実行し、累積された同相及び直角(I&Q)データをプログラムされた積分期間毎に1回CPUへ供給するように構成されている。これにより、TDMAシーケンス決定手段によって決定された速さで相関器を再使用することが可能になる。
【0037】
例えば、本発明の一実施の形態においては、1023チップのコース(Course)/取得CDMAコードが、1.023Mチップ/秒のレートで送信される。これは、コードシーケンスの持続時間が1ミリ秒であることを表している。TDMAブロードキャストスキームは、各コードの93チップが任意の1ミリ秒期間内に各送信機から送信されるように、擬似ランダム手法で各CDMA送信機をパルスする。これは、時間順に同期している測位ユニットデバイスのネットワークに11のTDMAタイムスロットを生じさせ、各送信機からの約9%の送信デューティサイクルを表している。全てのパルスの合計が任意の1ミリ秒期間の規定されたデューティサイクルに等し限り、送信パルス期間はその持続時間を変化させることができ、またその周波数を変化させることもできる。例えば、パルスシングスキームは、所与の1ミリ秒内に20チップをパルスし、次いで100チップを休止し、次いで残余の73チップをパルスすることができる。次の1ミリ秒期間中に、100チップを休止し、40チップをパルスし、200チップを休止し、30チップを休止し、300チップを休止し、残余の23チップをパルスする。従って、TDMAタイムスロットは、可能な限り短くする(この例では20チップ)ことも、デューティサイクルが許す限り長くする(この例では93チップ:約91マイクロ秒)こともできる。従って、TDMA相関器エンジンは可変積分及びダンプ期間で動作しなければならず、この期間は現在受信されているTDMA測位信号の持続時間によって支配される。
【0038】
TDMA相関器エンジンは、受信されたTDMAタイムスロットの終わりに、CPUまたはTDMA相関器エンジンの何れかに、メモリ内の現追跡値を格納するように構成されている。追跡値は、次のプログラムされた積分期間のために迅速に初期化される。TDMA相関器エンジン内には連続追跡メカニズムは含まれていないが、追跡値のこの迅速な格納及び初期化によって、単一のTDMA相関器エンジンを使用して複数の同期TDMA測位信号を追跡する能力が得られる。先行するプログラムされた積分期間から格納された追跡値は、コード及び搬送波デジタル制御発振器(DCO)の位相及びレート、並びに積分期間のスタート及びストップのための捕捉されたマスターチャネルタイマー値を含む。次に現れる(upcoming)プログラムされた積分期間のためのコード及び搬送波DCOの位相及びレート値の予測は以下のようにして計算される。
【0039】
1.TDMAシーケンス決定手段から、次に現れるプログラムされた積分期間に関連付けられたマスターチャネルタイマー値を検索する。
【0040】
2.格納されている追跡値から、次に現れるプログラムされた積分期間のためのコード及び搬送波DCO値を予測する。この予測は、先行積分期間と次に現れるプログラムされた積分期間との間のマスタータイマー値の変化に基づくDCO位相の線形調整である。
【0041】
3.予測されたコード及び搬送波DCO値を、位置受信機追跡ループから供給される補正を用いて調整する。位置受信機追跡ループは、受信したTDMA測位信号のロックオンを維持するためにコード及び搬送波DCOの位相及びレート値を調整する。これらの調整は、受信したTDMA測位信号のロックオンを維持する予測に適用される。
【0042】
4.マスターチャネルタイマーのタイムベースの不正確さを考慮して、予測されたコード及び搬送波DCO値を更に修正する。好ましい実施の形態においては、マスターチャネルタイマーは、受信機の局部発振器(LO)に従属する。コード及び搬送波DCO位相測定誤差は、受信機の局部発振器(LO)から位置受信機に供給される位置受信機タイムベースと、同期した測位ユニットデバイスネットワークタイムベースとの間の偏差によってもたらされる。これらの受信機LOにより誘起されるコード及び搬送波DCO位相測定誤差は、複数の測位ユニットデバイスから入手される全ての測定に共通である。従って、この共通測定誤差は、他の測位ユニットデバイス依存の測定誤差から分離することができる。上述したように、位置受信機追跡ループは、共通して、測位ユニットデバイス依存の測定誤差に関連付けられた調整を行う。好ましい実施の形態においては、マスターチャネルタイマーのタイムベースの修正は、CPU上で走るソフトウェアによって管理されている数学モデルに基づく。この数学モデルは、マスターチャネルタイマーのタイムベースを測位ユニットデバイスのネットワークのタイムベースに合わせるように調整するために設けられる。代替実施の形態においては、受信機局部発振器(LO)は、測位ユニットデバイスのネットワークのタイムベースに合わせるように舵取りすることができる。
【0043】
コード位相のセッティング
コードDCOの位相は、TDMA相関器エンジンにおいて他の追跡パラメータがセットされるのと同時にセットされなければならない。伝統的な受信機は、一連の線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)を用いてコード位相をリアルタイムで決定するPRNコードを生成する。コード位相を変化させるためには、線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)を前進させるか、または一定に保持し、到来するブロードキャスト信号に対する相対コード位相を変化させるようにする。TDMA測位信号を用いると、線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)によって生成されたコード位相を、各プログラムされた積分期間毎に正しい位相にスルー(slew)させることは不可能である。それは、コード位相を変化させるのに要する時間が、典型的にTDMAタイムスロット期間内の使用可能な時間よりも遥かに長いからである。従って、本発明においては、コードDCO位相をセットするための異なる方法が必要になる。
【0044】
本発明は、到来するTDMA測位信号と同期してコードDCO値を迅速に更新する方法及びデバイスを提供する。好ましい実施の形態においては、TDMA相関器エンジンによって取得され、追跡される全てのPRNコードのPRNシーケンスが、線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)を使用して予め計算され、次いで1つまたはそれ以上の受信チャネルを実現するために使用される位置受信機デジタルロジックのメモリ内に格納される。TDMA相関器エンジンは、線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)の順番付けを必要とせずに、メモリからPRNコードシーケンスをロードする。これは、メモリ位置にアクセスするのに要する時間長以内に、コード位相を何等かの所望のコード位相オフセットにセットする能力を与える。コードシーケンスを生成し、メモリ内に格納するこの技術は、相関プロセスを遂行するのに最小セットのハードウェアだけでよいという利点を有している。
【0045】
代替実施の形態においては、TDMA相関器エンジンは、2つのPRNコード発生器を用いて構成されている。一方のPRNコード発生器は現積分期間内に受信され、現在追跡されている測位信号のために使用される。他方は、次の積分期間内に受信される次の測位信号のためにプリセットされる。このプロセスは絶えず変更され、それによってTDMA相関器エンジン内に含まれる2つのPRNコード発生器のプリセット及びスイッチングが可能になる。この実施の形態は、メモリの要求を低減させるために付加的なPRNコード発生器を必要とするという犠牲を払うが、この付加的なPRNコード発生器はTDMA相関器エンジンの迅速な再構成を容易にする。
【0046】
PRNコード発生器を正しい追跡値にプリセットするプロセスを援助するために、各独特なPRNコードシーケンス毎に追跡アーム内で最後に使用された線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)ビット値が、CPUのメモリ内に格納される。各PRNコード発生器が所定のコード及び位相値にプログラムされると、先に使用されたビット値はプリセットPRNコード発生器の線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)ビットパターン内にロードされ、線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)は端数位相オフセットを予測される値にセットするのに必要な量だけ前進させられる。代替として、線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)を、リセット間のデフォルト値にリセットすることができる。
【0047】
図2に、本発明のスイッチ式PRNシーケンス発生器を用いて構成されているTDMA相関器エンジン201を示す。TDMA測位信号の受信は、高周波(RF)フロントエンドアナログ・デジタルコンバータ(ADC)から入力データサンプル202としてTDMA相関器エンジン201へ供給される。TDMA相関器エンジン201内において、これらのデータサンプル202はTDMA相関器エンジン201の同相(I)203及び直角(Q)204両追跡アームへ供給され、搬送波ミキサー205及び206においてそれぞれ搬送波DCO209の同相(I)207及び直角(Q)208成分と混合される。搬送波ミキサー205及び206の出力はコードミキサー210及び211へ引き渡され、PRNトラックセレクタ212から供給されるPRNコードチップシーケンスと混合される。コードミキサー210及び211の出力は相関値を与え、これらの値はそれぞれ累算器213及び214へ引き渡される。このプロセスによって導出されたそれぞれの累積値は、CPU216によるさらなる処理のためにデータバス215へダンプされる。搬送波DCO209及びPRNコードプリセットセレクタ217は、データバス215を介してCPU216によって制御される。チャネルマスタータイマー218も設けられており、これはデータバス215を介してTDMAシーケンス決定手段219に接続されている。チャネルマスタータイマー218は、TDMA相関器エンジン201のためのタイミング基準を与える。積分期間スタート及びストップ時点は、マスターチャネルタイマー218に対してTDMAシーケンス決定手段219によって決定され、好ましくは、TDMA測位信号の受信の始まり及び終わりに一致させる。第1PRNコード発生器220及び第2PRNコード発生器221は、PRNコードプリセットセレクタ217を用いて構成されている。PRNトラックセレクタ212は、第1PRNコード発生器220または第2PRNコード発生器221の出力を、TDMAシーケンス決定手段219によって決定される各積分期間のスタート時点と同期して交互に選択するように構成されている。チャネルマスタータイマー218が積分期間のプログラムされたスタート時点に到達する前に、PRNコードプリセットセレクタ217は現在PRNトラックセレクタ212によって選択されていないPRNコード発生器220または221の何れかに、次の積分期間のためのPRNコードをプログラムする。単なる説明のための例では、現積分期間中に、PRNトラックセレクタ212によって第1PRNコード発生器220がコードミキサー210及び211への入力として選択される。同時に、CPU216はPRNコードプリセットセレクタ217に指令して、次の積分期間のために必要な正しいPRNコードを用いて第2PRNコード発生器221を予備構成させる。この予備構成は、PRNコードを、次の積分期間に必要な正しいスターティング位置へスルーさせるプロセスをも含む。このプロセスは、TDMAシーケンス決定手段219が次の積分期間のスタート時点を決定する度毎に交替するが、他の選択された期間も本発明の範囲内にあることを理解されたい。
【0048】
図2に示す簡易形TDMA相関器エンジンは、単一の追跡アーム(概念的には、プロンプト(P)アーム)だけを含んでいる。付加的な追跡アームも本発明の範囲内で支援される。それらの例は、早(Early)(E)、遅(Late)(L)、及び早マイナス遅(E−L)を含み、早(E)または遅(L)アームはプロンプト(P)アームからCDMAチップの半分だけ離間して配置される。更に、早(E)及び遅(L)アームが、チップの1/4、チップの1/10、または他の好都合な、または要求される間隔のような他のチップ間隔にある追跡アームの実施の形態も支援される。更に、任意の間隔及び密度の複数の追跡アームも本発明の範囲内にあることを理解されたい。
【0049】
TDMA測位信号のアクイジション
位置受信機の起動時には、位置受信機は同期した動作モードへ直接移行するのに十分な情報を有していないかも知れない。これらの場合、位置受信機は、測位ユニットデバイスの同期したネットワークからのTDMA測位信号を取得し、追跡して同期を達成する。TDMA同期プロセスを開始させるために、位置受信機は大域探知を開始し、視界内の(in-view)測位ユニットデバイスの1つから送信された単一の独特なTDMA測位信号を取得する。探索プロセスのこの段階においては、ネットワーク時間及びTDMA測位信号のTDMAブロードキャストシーケンスは未知である。従って、TDMA相関器エンジンは、単一の独特なTDMA測位信号に連続的に相関するようにプログラムされている。取得のこの段階において、位置受信機は、測位ユニットデバイスから送信され、取得したナビゲーションデータに問合わせ、測位ユニットデバイスの送信時点、及びTDMAブロードキャストシーケンスを決定する。送信されたナビゲーションデータは、視界内の他の測位ユニットデバイス及びそれらのPRNコード、及びTDMAブロードキャストシーケンス(即ち、それらの送信タイムスロット)に関する情報をも提供する。第1TDMA測位信号が取得され、ナビゲーションデータに問合わせた後に、位置受信機はナビゲーションデータから粗ネットワーク時間を決定することができる。粗ネットワーク時間と、受信したTDMA測位信号のPRNコード遅延オフセットとの組合わせは、TDMA相関器エンジンを送信された信号の受信時点に粗同期させるために必要なタイミング情報を与える。この粗同期によって、位置受信機は、受信したTDMA測位信号に対して実質的に相関する。第2の独特なTDMA測位信号を取得する前に、第1TDMA測位信号のための追跡パラメータが、CPUメモリのような位置受信機メモリ内に格納される。TDMA相関器エンジンは、第1TDMA測位信号がTDMAブロードキャストシーケンス内に次に現れた時に、先に格納したCPUメモリからの追跡情報をロードし、この次の積分期間のための追跡値を予測することによって、従って取得及び探索プロセスをバイパスすることによって、第1TDMA測位信号へスイッチバックする。
【0050】
好ましい実施の形態においては、取得した第1測位ユニットデバイス測位信号を使用して粗時間合わせが達成された後に、単一のチャネルTDMA相関器エンジンは同期動作モードに復帰する。同期モードは、第1測位ユニットデバイスから取得した情報から、視界内の全ての測位デバイスを逐次探索、取得、及び追跡する。第1測位ユニットデバイスは、全ての近傍測位ユニットデバイスのPRNコード及びTDMAタイムスロットに関する情報を、ナビゲーションデータを介して位置受信機へ引き渡す。位置受信機は、この情報を使用してその1つまたはそれ以上のTDMA相関器エンジンをネットワークTDMAブロードキャストスキームに同期させ、視界内の全ての測位ユニットデバイスを迅速に取得し、追跡する。この好ましい実施の形態においては、初期粗TDMAスロット合わせには、10マイクロ秒以内の時間で十分である。
【0051】
代替実施の形態においては、視界内の第2の独特なTDMA測位信号を取得するために、第1TDMA測位信号から入手したナビゲーションデータを使用してどのPRNコードを探索するのかを決定する。次いで、TDMA相関器エンジンは、CPUメモリ内に格納されている追跡情報を使用して、そのタイムスロット中に第1の独特なTDMA測位信号を、また残余のタイムスロット中に第2の独特なTDMA測位信号を追跡するように構成される。第2TDMA測位信号を取得し、ナビゲーションデータに問合わせた後に、第2TDMA測位信号のための追跡パラメータが位置受信機のCPUメモリ内に格納される。TDMA相関器エンジンは、第2TDMA測位信号がTDMAブロードキャストシーケンス内に出現すると、CPUメモリ内に格納されている追跡情報をロードし、この次の積分期間のための追跡値を予測することによって、従って、この場合も、取得及び探索プロセスをバイパスすることによって、第2TDMA測位信号へスイッチバックする。このプロセスは、全ての使用可能なTDMAタイムスロットを通して、または全ての使用可能なTDMA測位信号が取得され、追跡されて位置、速度、及び時間(PVT)解が計算できるようになるまで繰り返される。
【0052】
代替として、一旦第1TDMA測位信号を取得し、ナビゲーションデータに問合わせてしまえば、受信したTDMA測位信号のタイミングを確立するためには粗ネットワーク時間で十分であり、位置受信機が完全な位置、速度、及び時間(PVT)解を計算する必要はない。例えば、もし時間順に同期している測位ユニットデバイスのネットワークが全て位置受信機から10km以内にあることが分かっていれば、最大伝播遅延は約33マイクロ秒までに限られる。海上無線技術委員会(RTCM)パルシングスキームにおいては、各パルスタイムスロットは91マイクロ秒を占める。従って、この場合、最大相対伝播遅延によってTDMA測位信号の91マイクロ秒の中の多くとも33マイクロ秒が失われ、TDMA測位信号の58マイクロ秒が相関のために残される。失われた信号は信号対雑音比(SNR)を低下させることになるが、失われた信号による総合相関パワー損は2dBより小さい。位置受信機の相対位置及び時間順に同期した測位ユニットデバイスの位置の使用可能な知識を使用すれば、TDMA測位信号の到着時点が位置受信機の追跡要求に合致するのに十分な場合には、取得及び追跡プロセス中の任意の時点に完全に同期モードへの移行を行うことができる。更に、TDMA測位信号が取得され、追跡され、そしてそれらのナビゲーションデータに問合わせがなされると、ネットワークの時間及び各TDMA測位信号の受信時点の知識が洗練され、相互相関効果が更に軽減され、SNRが高められ、それによって位置受信機の性能が向上する。
【0053】
測位ユニットデバイスまでの距離が異なることは、TDMA測位信号を名目タイムスロット外に受信させる(off-nominal time-slot)多くの物理的現象例の1つに過ぎない。名目タイムスロット外受信をもたらす他の物理的現象は、測位ユニットデバイス内の同期誤差、伝播遅延を与える空中遅延、マルチパス、その他の効果を含む。上述した取得技術を使用すれば、これらの見掛け上の伝播遅延効果の如何なる組合わせも軽減することができる。
【0054】
通常は、取得プロセスは、位置、速度、及び時間(PVT)解を計算するのに十分な、独特なTDMA測位信号が取得されるまで続行される。少なくとも3つのTDMA測位信号が取得される場合には、取得プロセス中の任意の時点において位置、速度、及び時間(PVT)解を計算することができる。位置、速度、及び時間(PVT)解は、位置受信機内においていわゆる共通モード時間バイアスを推定するために必要である。共通モード時間バイアスが推定されれば、位置受信機はネットワーク時間の精密な推定を計算する。この精密なネットワーク時間推定は、ナビゲーションデータへの問合わせによって得られる粗ネットワーク時間、共通モード時間バイアス、及び測位ユニットデバイスのネットワークからの測位信号伝播遅延の組合わせである。精密なネットワーク時間によって、マスターチャネルタイマーを、今は既知となった測位ユニットデバイスのネットワーク時間と同期させることができる。
【0055】
正確な位置及び時間は、単一チャネルTDMA相関器エンジンがTDMAネットワークと時間順に同期している間に、位置受信機が位置、速度、及び時間(PVT)解を遂行することによって決定することができる。各測位信号が受信されている時に、TDMA相関器エンジンが特定のPRNコードだけを積分するので、受信した信号対雑音比(SNR)の重要な改善が得られる。換言すれば、TDMA相関器エンジンは、関心測位ユニットデバイス信号が受信されていない時には、不要な雑音及び他のPRNコードを積分しない。更に、TDMA相関器エンジンが他の測位ユニットデバイスから送信されたPRNコードを積分しないので、相互相関アーチファクトは大幅に軽減、乃至は完全に排除される。
【0056】
好ましい実施の形態においては、チャネルマスタータイマーのロールオーバー期間は完全シーケンスTDMA反復期間よりも長く、チャネルマスタータイマーの分解能は追跡コード及び搬送波DCOの分解能と同程度に精であるか、またはそれより精である。他のチャネルマスタータイマーの実施の形態も可能であるが、それらはタイマーロールオーバーを監視する付加的な要素を必要とするか、またはそれらは測定雑音を増加させる。
【0057】
時計の安定度
TDMA相関器エンジンを駆動するために使用される位置受信機の局部発振器(LO)の総合安定度は、本発明の結果として得られる測定精度の決定的なファクタである。伝統的な位置受信機は、位置受信機の局部発振器(LO)の変動を受入れるために、連続的に走るコード及び搬送波DCOカウンタを使用している。本発明においては、プログラムされたセッティング、及びチャネルマスタータイマー値に基づいてコード及び搬送波DCO値を予測する上で、位置受信機の局部発振器(LO)の安定度がキーファクタである。好ましい実施の形態においては、位置受信機の局部発振器(LO)を、マスターチャネルタイマーのための基準として使用する。
【0058】
位置受信機の局部発振器(LO)は、測定予測期間にわたって安定でなければならない。好ましい実施の形態においては、この安定時間は、おおよそTDMAサブシーケンス反復期間である。海上無線技術委員会(RTCM)パルシングスキームにおいては、TDMAサブシーケンス反復期間は1ミリ秒であり、従って位置受信機の局部発振器(LO)は測定予測時間の約1ミリ秒にわたって安定であることが必要である。位置受信機の局部発振器(LO)のために広く使用されている典型的な温度制御発振器(TCXO)は、1秒にわたって約1/109の短期間安定度を有している。1ミリ秒の期間では、1/109のずれは位置受信機の局部発振器(LO)に10-12のタイミング誤差をもたらす。これはチャネルマスタータイマーの約0.03mmの距離誤差に相当する。多くの位置受信機応用においては、0.03mmの距離誤差ならば十分である。より精密な距離測定が必要であれば、平均化または他の数学的等価技術を使用することができる。もしこれらの技術でも不十分であれば、オーブン制御発振器(OCXO)または原子時間標準のようなより高品質な位置受信機局部発振器(LO)要素を使用することができる。好ましい実施の形態においては、温度制御発振器(TCXO)を位置受信機局部発振器(LO)のために使用している。測位信号の位相推定からもたらされる予測される測定誤差は、典型的に、ブロードキャスト信号の搬送波波長の1%程度である。2.4GHzで送信する測位ユニットデバイスの場合、搬送波波長の1%は約1.2mmである。従って、位置受信機局部発振器(LO)によって誘起される誤差が予測プロセスに付加する0.03mmの測定雑音は、測位システム誤差予算のコア測定雑音よりも十分に低い。
【0059】
TDMAブロードキャストシーケンスの決定
好ましい実施の形態においては、TDMAブロードキャストシーケンスは測位ユニットデバイスのPRNコードに関連付けられ、好ましくは、代数公式、線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)、または他の何等かの普通の数学的等価を使用して、位置受信機内でリアルタイムで生成される。この実施の形態においては、位置受信機は、受信したPRNコード及びネットワーク時間を所定のTDMAブロードキャストシーケンスに関連付けることによって、送信されたTDMAブロードキャストシーケンスを決定する。これは、TDMA相関器エンジンを、第1の測位ユニットデバイスの取得に高速で同期させることを可能にする。その後のタイムスロット内に出現するその後の測位ユニットデバイスのPRNコードは、PRNコードとTDMAタイムスロットとの間の予めロードされた、または数学的に確立された関係によって決定される。代替として、TDMAブロードキャストシーケンスは、類似の数学的プロセスを通して予め決定し、位置受信機内の不揮発性メモリ内にロードすることができる。
【0060】
代替実施の形態においては、TDMAブロードキャストシーケンスは、測位ユニットデバイスから送信されるナビゲーションメッセージの中で供給され、PRNコードには特定的に関連付けられていない。この技術の実施の形態例として、第1測位ユニットデバイスの送信されたTDMAブロードキャストシーケンスは、そのナビゲーションメッセージの中に組み入れられている。第1測位ユニットデバイスの範囲内にある第2測位ユニットデバイスは、第1測位ユニットデバイスの第1TDMAブロードキャストシーケンスを含むナビゲーションデータを受信する。第2測位ユニットデバイスは、そのナビゲーションメッセージの中でTDMAブロードキャストシーケンスをブロードキャストし、このメッセージは第1測位ユニットデバイスのPRNコード及びTDMAブロードキャストシーケンスをも含む。第1及び第2両測位ユニットデバイスの範囲内にある第3測位ユニットデバイスは、第1及び第2測位デバイスからそれらのTDMAブロードキャストシーケンスを含むナビゲーションデータを受信する。第3測位ユニットデバイスは、そのTDMAブロードキャストシーケンスをナビゲーションメッセージの中でブロードキャストし、これも第1及び第2測位ユニットデバイスのTDMAブロードキャストシーケンスをそのナビゲーションメッセージ内に含む。このプロセスは、互いに視界内にある全ての測位ユニットデバイスが互いのPRNコード及びTDMAブロードキャストシーケンスをブロードキャストするまで続行される。上述した構造は、各衛星がそれ自体のための、並びに衛星星座の残余のための1組の位置情報をブロードキャストする全地球測位システム(GPS)のいわゆる暦データに類似している。この実施の形態においては、位置受信機は、少なくとも1つの測位ユニットデバイスからのナビゲーションメッセージに問合わせることによって、視界内の全ての測位ユニットデバイスのTDMAブロードキャストシーケンスを決定する。
【0061】
伝播遅延
測位ユニットデバイスと位置受信機との間の距離が増加すると、送信されたTDMA測位信号の伝播遅延もそれに応じて増加する。このため、送信されたTDMA測位信号が位置受信機の名目タイムスロット内に完全に受信されなくする。タイムスロットはネットワーク時間に対して等しくバイアスされているので、全ての測位ユニットデバイスが位置受信機から等距離にある場合にはこのようなことは起こらない。しかしながら、測位ユニットデバイスが位置受信機の位置からの距離を大きく変える場合には、TDMA測位信号の受信時点の重複が発生する。位置受信機の位置が変化すると、決定論的アルゴリズムは各測位ユニットデバイスからの伝播遅延を考慮し、測位ユニットデバイス送信の受信時点を最良適合させるようにTDMA相関器エンジンの同期を調整する。この可変修正タイミングプロセスは、積分期間のスタート及びストップ時点のダイナミックな調整を必要とする。例えば、位置受信機が、第1測位ユニットデバイスから10kmに位置し、第2測位ユニットデバイスから100mに位置しているものとする。第1測位ユニットデバイスからの伝播遅延は30マイクロ秒程度であり、第2測位ユニットデバイスからの伝播遅延は300ナノ秒程度である。もしこれら2つのデバイスが近接した91マイクロ秒TDMAタイムスロットでパルスし、第1のデバイスのパルスが第2のデバイスのパルスより先行すれば、位置受信機は約29.7マイクロ秒のパルスの重複を観測する。この情報が与えられると、位置受信機は、任意の積分期間中に受信した相関パワー値を最大にするような手法で、その積分期間のスタート及びストップ時点を調整することができる。位置受信機内において実現される正確な調整方法は、位置受信機に対する性能要求及び特定の名目外TDMA信号受信タイミングに依存しよう。
【0062】
更に、測位ユニットデバイスまでの距離は、受信したTDMA測位信号を、位置受信機に割当てられている名目タイムスロットの外側で受信させるような多くの物理的現象例の1つに過ぎない。測位ユニットデバイスの送信タイミング間の同期の欠如、信号の空中歪みまたは遅延、グラウンド効果、またはマルチパスのような他の物理的現象も、受信したTDMA測位信号を名目受信タイムスロット外に到着させる。積分期間のスタート及びストップ時点を調整する上述した技術は、これらの何れの効果をも軽減させるように適用することができる。
【0063】
多重チャネルを組み入れたTDMA相関器エンジン
上述した重複問題は、複数の受信チャネルを組込んだTDMA相関器エンジンを用いる位置受信機を設けた本発明のさらなる実施の形態によって解消することができる。2つのパルスが時間的に重複する場合、前述した近/遠制約の何れかを打破することができれば、2つのチャネルは両PRNコードを同時に追跡することができる。複数の受信チャネルを組込んだTDMA相関器エンジンは、同一TDMAタイムスロット内で送信された複数のPRNコードを追跡する能力をも与える。
【0064】
再度海上無線技術委員会(RTCM)パルシングスキームを参照する。単一チャネルTDMA相関器エンジンは、独特な時間順に同期した11の測位ユニットデバイスからのTDMA測位信号(各TDMAタイムスロット中に1つのCDMA測位信号がブロードキャストされる)を同時に追跡することができる。上述したTDMA相関器エンジンアーキテクチャを有する2チャネル位置受信機は、独特な時間順に同期した22の測位ユニットデバイスからのTDMA測位信号(各TDMAタイムスロット中に2つのCDMA測位信号がブロードキャストされる)を同時に追跡することができる。このプロセスは、任意数のチャネルを組み入れたTDMA相関器エンジンに一般化することができる。
【0065】
本明細書は、海上無線技術委員会(RTCM)パルシングスキームを、TDMA測位システムで十分に報告されているパルス化スキームの例として使用した。しかしながら、如何なるTDMAブロードキャストスキームも本発明の範囲内にあることを理解されたい。
【0066】
以上に本発明の例を説明したが、当業者には明白なように、如上の全ての、及び他の変更及び変化が本発明の範囲内に含まれることを意図していることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】TDMAシーケンス決定手段、チャネルマスタータイマー、PRNコードシーケンスブロックメモリ、及び関連要素を組込んだ本発明によるTDMA相関器エンジンを示す簡易形位置受信機チャネルの概要図である。
【図2】PRNプリセットセレクタ、PRN追跡セレクタ、及び2つのPRNコード発生器を組込んだ本発明によるTDMA相関器エンジンを示す簡易形位置受信機チャネルの代替実施の形態の概要図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDMA測位システムにおいて、正確な測位信号を、少なくとも1つの相関器を用いて構成されている位置受信機に供給する方法であって、前記位置受信機は相互相関アーチファクトを軽減し、高SN比を呈するようになっており、前記方法は、
a)前記測位信号を既知のTDMAシーケンスで送信するステップと、
b)前記位置受信機を前記測位信号の前記既知のTDMAシーケンスに時間順に同期させるステップと、
c)前記既知のTDMAシーケンスと同期して前記測位信号を順次に追跡するように、前記少なくとも1つの相関器を構成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記構成ステップは更に、前記既知のTDMAシーケンスと同期して前記測位信号の擬似乱数(PRN)コードシーケンスを複写する少なくとも1つの擬似乱数(PRN)コードシーケンス発生器を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
既知のTDMAシーケンスでブロードキャストされる複数のTDMA測位信号を順次に受信する方法であって、
a)位置受信機を展開するステップを含み、前記位置受信機は、
i)前記TDMA測位信号を受信し、解釈する手段と、
ii)前記位置受信機に通信するように結合されている少なくとも1つの相関器と、
を含み、前記各相関器は、
I.前記相関器のためのマスタータイミング基準を供給する手段と、
II.前記TDMA測位信号の受信時点と前記マスタータイミング基準との間の関係を解析し、次いで前記マスタータイミング基準に対して前記相関器の積分期間のスタート及びストップ時点を決定する手段と、
III.前記決定されたスタート及びストップ時点に応答し、前記既知のTDMAシーケンスの次のPRNコードを順次に生成する手段と、
を含み、
b)前記位置受信機において少なくとも1つの前記TDMA測位信号を受信し、前記TDMA信号の前記受信時点を決定するステップと、
c)前記決定された受信時点を前記少なくとも1つの相関器へ伝え、それによって前記TDMA測位信号の受信に同期してPRNシーケンスを生成するステップと、
を更に含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−501383(P2007−501383A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522178(P2006−522178)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001025
【国際公開番号】WO2005/013633
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(505099864)ロケイタ コーポレイション (4)
【Fターム(参考)】