説明

CH1ドメインの切断による可溶性抗体断片の発現

活性抗体断片(Fab)の発現の改善は、重鎖定常領域を切断することで達成される。Fab断片のCH1ドメインの切断は、シュードモナス・フルオレッセンスにおける可溶性の活性抗体断片の収量を増加させることができる。本発明の別の実施形態は、軽鎖および様々なC末端を有する重鎖断片(例えば、異なる長さに切断されたVH−CH1)の分泌を含む。切断されたCH1領域は、他のFabを作製するための骨格として使用することができる。また、Fab断片のκ軽鎖および/またはλ軽鎖ドメインの切断も含まれる。本発明はまた、他のペプチドまたは分子(例えば、毒素、タンパク質、ペプチド、酵素など)と融合したFab断片の発現も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、「EXPRESSION OF SOLUBLE ANTIBODY FRAGMENT BY TRUNCATION OF CH1 DOMAIN(CH1ドメインの切断による可溶性抗体断片の発現)」の名称で、2007年6月8日に出願された米国仮出願第60/942,997号の出願日の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般に可溶性活性抗体断片の生成および、より具体的には、その重鎖定常領域の切断による活性抗体断片(active antibody fragments)(Fab)の発現に関する。
【背景技術】
【0003】
天然の免疫グロブリン(natural immunoglobulins)は、酵素切断により得ることができる、Fab、(Fab’)、sub2、およびFc断片など、この様々な断片を有することが長年の間知られてきた。天然の免疫グロブリンは、一般に、各アームの末端に抗原結合部位を有するY字型分子を含む。該構造の残部、および特にYの幹は、免疫グロブリンに伴うエフェクター機能を媒介する。
【0004】
Y字型分子のアームの接合部には、ヒンジ領域として知られる領域がある。この領域には、抗体のクラスに応じて少なくとも2つの重鎖間ジスルフィド結合がある。これらのジスルフィド結合は、完全な抗体分子の2つの部分を結び付けるのに関与する。Fab断片では、ヒンジ領域は抗原バンド形成領域(antigen banding region)から酵素的に分離されている。したがって、Fab断片は軽鎖/切断された重鎖二量体を含む。
【0005】
天然の免疫グロブリンおよびこれらの断片は、診断および、より限定的には治療に使用されてきた。しかし、特に治療におけるこのような使用は、天然免疫グロブリンの多クローン性の性質(polyclonal nature)により妨げられてきた。治療薬としての免疫グロブリンの可能性の実現化に向けた重要なステップは、明確な抗原特異性を有するモノクローナル抗体の発見である。
【0006】
これまでに実施された全ての研究では、抗体分子または断片におけるヒンジ領域は、存在するとすれば、通常は抗体分子のCH1ドメインに関連するものであった。ヒンジ領域は、FabもしくはFab’断片もしくは変化した抗体分子を生成するため、またはこのような断片のC−もしくはN末端配列を変化させて組換えDNA技術による操作を容易にするために変化または変異されることが示唆されてきた。
【0007】
例えば、国際出願WO2005/003170は、少なくとも1つのエフェクター分子が付着した抗体FabまたはFab’断片を記載する。該断片は、断片における重鎖が軽鎖に共有結合されていないこと、ならびにCの鎖間システインおよびC1の鎖間システインの両方が別のアミノ酸と置換されていることを特徴とする。国際出願WO2005/003170は、重鎖が軽鎖に共有結合されていない、および2つ以上のエフェクター分子が断片に結合されている抗体FabまたはFab’断片を記載する。少なくともエフェクター分子の1つは、重鎖または軽鎖定常領域のシステインに結合される。
【0008】
Bodmerらに対する米国特許第5,677,425号および国際出願WO89/01974は、抗体分子のC1ドメインに関連するヒンジ領域で通常見出されるシステイン残基数とは異なるシステイン残基数を有するヒンジ領域を有する変化した抗体分子(altered antibody molecule)(AAM)、および組換えDNA技術によるこの生成方法を記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
活性抗体断片の発現の改善、ならびにフォールディングおよび可溶性の改善の提供が有利となろう。より多くの活性抗体断片の産生方法の提供がさらに有利となろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、重鎖定常領域の切断による活性抗体断片(active antibody fragments)(Fab)の発現の改善を含む。切断は、軽鎖とのジスルフィド結合形成に必要なシステインアミノ酸の除去を含むことができ、原核生物において小および大規模のいずれでも活性なFabの発現の改善をもたらすことができる。微生物系におけるFab断片の発現の改善は、これらの分子の使用により治療薬および診断薬の生成を改善することができる。さらに、得られた切断されたC1領域は、他のFab分子を構築するための骨格(scaffold)ツールとして使用することができる。
【0011】
本発明の1つの実施形態は、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)における可溶性活性抗体断片の収量を増大するためFab断片のC1ドメインの切断を含む。本発明の別の実施形態は、軽鎖および様々なC末端を有する重鎖断片(例えば、異なる長さに切断されたV−C1)の分泌を含む。あるいは、切断されたC1領域は、(例えば、代わりのVおよび軽鎖との組み合わせにより)他のFabを作製するための骨格として使用することができる。本発明の別の実施形態は、Fab断片のκ(カッパ)軽鎖および/またはλ(ラムダ)軽鎖ドメインの切断を含む。本発明のさらに別の実施形態は、κおよび/またはλ軽鎖(複数可)(light chain(s))の発現または分泌を含む。
【0012】
別の態様では、本発明は、他のペプチドまたは分子(例えば、毒素、タンパク質、ペプチド、酵素など)と融合したFab断片の発現を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1−1】3つのGal2 Fab変異体(pDOW1196、pDOW3716およびpDOW3717)を発現するようにデザインされたプラスミドを示す図である。
【図1−2】3つのGal2 Fab変異体(pDOW1196、pDOW3716およびpDOW3717)を発現するようにデザインされたプラスミドを示す図である。
【図1−3】3つのGal2 Fab変異体(pDOW1196、pDOW3716およびpDOW3717)を発現するようにデザインされたプラスミドを示す図である。
【図2】テストしたFab重鎖C末端のアラインメントを示す図である。
【図3−1】3つの構築物に関するFabコード領域を示す図である。
【図3−2】3つの構築物に関するFabコード領域を示す図である。
【図4−1】3つの構築物に関するFabコード領域を示す図である。
【図4−2】3つの構築物に関するFabコード領域を示す図である。
【図5−1】3つの構築物に関するFabコード領域を示す図である。
【図5−2】3つの構築物に関するFabコード領域を示す図である。
【図6】本発明の1つの実施形態による振盪フラスコ規模(shake flask scale)でのFab発現の分析を示す図である。
【図7】本発明の1つの実施形態による振盪フラスコ規模でのFab発現のウェスタン分析を示す図である。
【図8】本発明の1つの実施形態による振盪フラスコ規模のELISA分析を示す図である。
【図9】本発明の1つの実施形態に対し発酵槽規模(fermentation scale)で発現(expressed)されたGal2 Fab活性を示す図である。
【図10】本発明の1つの実施形態による反応(可溶性活性タンパク質)を例示する実験デザインの分析結果を示す図である。
【図11】本発明の1つの実施形態によるFrnE過剰発現Fab株のELISA分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書では、語句「発現ベクターが導入された培養細胞」は、ベクターを含有するように物理的に操作された細胞、および操作された細胞の子孫(progeny)もベクターを含有する場合は該子孫を含む。
【0015】
用語「アミノ末端」(または「N末端」)および「カルボキシル末端」(または「C末端」)は、ポリペプチド内の位置を表すのに本明細書で使用される。文脈が許す場合、これらの用語は、近接性または相対位置を表すのにポリペプチドの特定の配列または部分に関連して使用される。例えば、ポリペプチド内の参照配列のカルボキシル末端に位置する特定の配列は、参照配列のカルボキシル末端の近位に位置するが、完全なポリペプチドのカルボキシル末端に必ずしもあるわけではない。
【0016】
用語「抗体」は、本明細書では最も幅広い意味で使用され、具体的にはIFN−γまたはIFN−γ受容体などの対応するポリペプチドと免疫学的に反応する単一のモノクローナル抗体、免疫グロブリン鎖またはこれらの断片、ならびにこのような特性を有するポリエピトープ特異性を有する抗IFN−γおよび抗IFN−γ受容体抗体組成物を包含する。
【0017】
本明細書では用語「モノクローナル抗体」(mAb)は、実質的に均質な抗体集団から得られた抗体(上記に定義されたような)を指す。すなわち、該集団を含む個々の抗体は、少量存在し得る、天然に存在する可能性のある変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む従来の(ポリクローナル)抗体製剤とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。これらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンに汚染されないハイブリドーマ培養により合成される点で有利である。
【0018】
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、κおよびλと呼ばれる2つの明らかに異なるタイプの1つに割り当てることができる。
【0019】
用語「に対応する(corresponding to)」は、配列中のアミノ酸残基の位置に適用される場合、配列が最適に整列されている場合の複数の配列における対応する位置を意味する。
【0020】
用語「発現ベクター」は、転写を提供する別のセグメントに作動可能に連結された目的のポリペプチドをコードするセグメントを含む、直鎖または環状DNA分子を表すのに使用される。このような別のセグメントには、プロモーターおよびターミネーター配列が含まれ、1つまたは複数の複製起点、1つまたは複数の選択可能なマーカー、エンハンサーなども含めることができる。発現ベクターは一般に、プラスミドもしくはウイルスDNAから得られ、または両方のエレメントを含有してもよい。
【0021】
「免疫グロブリン」は、脊椎動物生物において抗体として機能する血清タンパク質である。「免疫グロブリン」(すなわち抗体)タンパク質の5つのクラス(IgG、IgA、IgM、IgD、およびIgE)が、高等脊椎動物において同定されている。IgGは主要なクラスを含み、通常、血漿中で見出される2番目に多いタンパク質として存在する。ヒトでは、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4に指定された4つのサブクラスからなる。IgGクラスの重鎖定常領域は、ギリシャ記号γで識別される。例えば、IgG1サブクラスの免疫グロブリンは、γ1重鎖定常領域を含有する。各免疫グロブリン重鎖は、ある種での特定のサブクラスに対し基本的に不変である定常領域タンパク質ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2、およびCH3)からなる定常領域を保有する。ヒトおよびヒト以外の免疫グロブリン鎖をコードするDNA配列は、当技術分野で知られている。例えば、Ellisonら、DNA 1:11〜18頁、1981年;Ellisonら、Nucleic Acids Res.10:4071〜4079頁、1982年;Kentenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:6661〜6665頁、1982年;Senoら、Nuc.Acids Res.11:719〜726頁、1983年;Riechmannら、Nature 332:323〜327頁、1988年;Amsterら、Nuc.Acids Res.8:2055〜2065頁、1980年;RusconiおよびKohler、Nature 314:330〜334頁、1985年;Bossら、Nuc.Acids Res.12:3791〜3806頁、1984年;Bothwellら、Nature 298:380〜382頁、1982年;van der Looら、Immunogenetics 42:333〜341頁、1995年;Karlinら、J.Mol.Evol.22:195〜208頁、1985年;Kindsvogelら、DNA 1:335〜343頁、1982年;Breinerら、Gene 18:165〜174頁、1982年;Kondoら、Eur.J.Immunol.23:245〜249頁、1993年;およびGenBank受託番号J00228参照。免疫グロブリン構造および機能の概説については、Putnam、The Plasma Proteins、第V巻、Academic Press,Inc.、49〜140頁、1987年;およびPadlan、Mol.Immunol.31:169〜217頁、1994年参照。
【0022】
用語「免疫グロブリンCH1ドメイン」または「CH1」は、野生型の免疫グロブリン重鎖CH1定常ドメインまたはこの変異体を表す。該変異体は、天然の免疫グロブリン重鎖定常ドメインに特徴的な高次構造に折り畳まれ(単一のジスルフィド結合により安定化された2つのねじれたβシート;例えば、Amzel and Poljak、Annu.Rev.Immunol.48:961〜997頁、1979年参照)、免疫グロブリン軽鎖定常ドメインと二量化することができる。
【0023】
「免疫グロブリンヒンジ」または「ヒンジ」は、可変およびCH1ドメインをつなぐ免疫グロブリン重鎖の部分である。
【0024】
用語「軽鎖<<カッパ(κ)>>または<<ラムダ(λ)>>定常領域」は、<<カッパ(κ)>>または<<ラムダ(λ)>>アイソタイプの天然の免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン、またはこの変異体を表す。該変異体は、天然の免疫グロブリン軽鎖定常ドメインに特徴的な高次構造に折り畳まれ、免疫グロブリンCH1ドメインと二量化することができる。
【0025】
ポリペプチドまたはタンパク質間の「非共有結合性会合(non-covalent associations)」には、水素結合、立体相互作用、疎水性相互作用、およびイオン相互作用が含まれる。
【0026】
「非免疫グロブリンポリペプチド」は、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの断片ではないポリペプチドである。しかし、用語「非免疫グロブリンポリペプチド」は、ポリペプチド自体が免疫グロブリンでない限り、免疫グロブリン様ドメインを含有するポリペプチドを除外しない。
【0027】
「作動可能に連結された」は、2つ以上の構成要素(entities)が意図された目的のため協調して機能するように結合されることを意味する。DNAセグメントを指す場合、該語句は、例えば、コード配列が正しいリーディングフレームに結合され、転写がプロモーター中で開始し、コードセグメント(複数可)を介してターミネーターへ進むことを示す。ポリペプチドを指す場合、「作動可能に連結され」には、共有(例えば、ジスルフィド結合による)および非共有(例えば、水素結合、疎水性相互作用、または塩橋相互作用による)結合配列の両方が含まれ、配列の所望の機能(複数可)が保持される。
【0028】
「ポリヌクレオチド」は、5’から3’末端へ読み取られるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖ポリマーである。ポリヌクレオチドにはRNAおよびDNAが含まれ、天然源(natural sources)から単離され得、インビトロで合成され得、または天然および合成分子の組み合わせから調製され得る。ポリヌクレオチドの大きさは、塩基対(base pairs)(「bp」と略される)、ヌクレオチド(nucleotides)(「nt」)、またはキロベース(kilobases)(「kb」)で表される。文脈が許す場合、後者2つの用語は、一本鎖または二本鎖であるポリヌクレオチドを表す。該用語が二本鎖分子に適用される場合は、全長を表すのに使用され、用語「塩基対(base pairs)」に等しいことが理解されるであろう。二本鎖ポリヌクレオチドの二本の鎖は長さがわずかに異なり得ること、およびこれらの末端は酵素切断の結果互い違いになり得、したがって二本鎖ポリヌクレオチド分子内のヌクレオチドの全てが対になり得るわけではないことが当業者により認識されるであろう。このような対ではない末端は、一般に20nt長を超えないであろう。
【0029】
「ポリペプチド」は、自然に生成されようと合成的に生成されようとペプチド結合により連結したアミノ酸残基のポリマーである。約10アミノ酸残基未満のポリペプチドは、一般に「ペプチド」と呼ばれる。
【0030】
用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼの結合および転写開始を提供するDNA配列を含有する遺伝子の一部を表す当技術分野で承認された意味で本明細書では使用される。プロモーター配列は、常にとは限らないが、一般に、遺伝子の5’非コード領域に見出される。
【0031】
「タンパク質」は、1つまたは複数のポリペプチド鎖を含む高分子である。タンパク質は、炭水化物基などの非ペプチド成分を含むこともできる。炭水化物および他の非ペプチド置換基は、タンパク質が生成される細胞により付加され得、細胞の種類により変化するであろう。タンパク質は、本明細書ではこのアミノ酸骨格構造に関して定義される。炭水化物基などの置換基は、通常明記されないが、それにもかかわらず存在し得る。
【0032】
「セグメント」は、特定の特質を有するより大きな分子(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)の一部である。例えば、特定のポリペプチドをコードするDNAセグメントは、5’から3’方向へ読み取った場合、特定のポリペプチドのアミノ酸配列をコードする、プラスミドまたはプラスミド断片などのより長いDNA分子の一部である。
【0033】
本発明は、重鎖定常領域(C1)の切断による活性抗体断片(Fab)の発現の改善を含む。切断は、軽鎖とのジスルフィド結合形成に必要なシステインアミノ酸の除去を含むことができ、P.フルオレッセンスなどの原核生物において小(例えば、0.5L)および大(例えば、20L発酵)スケールのいずれでも活性なFabの発現の改善をもたらすことができる。P.フルオレッセンスおよび/または他の微生物系におけるFab断片の発現の改善は、これらの分子の使用による治療薬および診断薬の生成において利点を提供することができる。Fabの可溶性発現の改善は、ハイスループット(high throughput)(HIP)フォーマットで特異抗原を認識するFabの同定を可能にすることもできる。さらに、得られた切断されたCH1領域は、他のFab分子を構築するための骨格ツールとして使用することができる。
【0034】
他の既知の方法とは対照的に、本発明は、ヒンジ領域での1つまたは複数のシステイン残基の変異に依存するものではなく、むしろ、IgG1のCH1領域を、重鎖と軽鎖との間の鎖間ジスルフィドに関与するcysの最大5アミノ酸に至るまで上流を切断することに依存する。切断されたCH1は、発現/フォールディング/可溶性の改善を提供することができ、ELISAにより測定されるようなより活性なFabを産生することができる。このCH1領域は、他の抗体断片を構築するための骨格ツールとして使用することができる。
【0035】
より具体的には、CH1領域は、重−軽鎖ジスルフィド結合に関与するシステインを欠失することにより切断される。場合により、システイン残基を超えて欠失されるアミノ酸数は変化し得る。場合により、システインのさらなる1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50および最大100アミノ酸に至るまで上流または下流を欠失することができる。切断されたCH領域は、任意の可変領域と融合させることができ、およびP.フルオレッセンスなどの原核生物、または他の適切な発現系において、より高い可溶性を有して発現される抗体断片を産生するのに適切な軽鎖と対(paired)にすることができる。
【0036】
本発明の特定の実施形態では、鎖間ジスルフィドに関与するCH1のシステイン残基が欠失され、システインの4アミノ酸上流が保持される。代替の実施形態では、システインの4アミノ酸上流を含む、CH1のより大きな領域を欠失することができる。他の原核生物系ではCH1領域の発現(別の可変領域の有無にかかわらず)を実施することができる。
【0037】
本発明のFabは、一般に、抗原に選択的に結合することができる。抗原は、任意の細胞結合抗原、例えば、細菌細胞、酵母細胞、T細胞、内皮細胞または腫瘍細胞などの細胞上の細胞表面抗原であってよく、または可溶性抗原であってよい。抗原はまた、疾患または感染中に制御されないような抗原、例えば、受容体および/またはこの対応するリガンドなどの任意の医学関連抗原であってもよい。細胞表面抗原類の特定の例には、接着分子、例えば、piインテグリン(例えば、VLA−4)などのインテグリン類、Eセレクチン、PiセレクチンまたはL−セレクチン、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD1 la、CD1 lb、CD18、CD19、CD20、CD23、CD25、CD33、CD38、CD40、CD45、CDW52、CD69、癌胎児性抗原(CEA)、ヒト乳脂肪グロブリン(HMFG1および2)、MHCクラスIおよびMHCクラスII抗原、ならびにVEGF、ならびに適切な場合、これらの受容体が含まれる。可溶性抗原には、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−12、IL−16またはIL−17などのインターロイキン類、ウイルス抗原類、例えば、呼吸器合胞体ウイルスまたはサイトメガロウイルス抗原、IgEなどの免疫グロブリン類、インターフェロンoc(interferon oc)、インターフェロン8(interferon 8)またはインターフェロン(interferon)などのインターフェロン類、腫瘍壊死因子−oc、腫瘍壊死因子−B、G−CSFまたはGM−CSFなどのコロニー刺激因子類、ならびにPDGF−oc、およびPDGF−pなどの血小板由来成長因子類、ならびに適切な場合、これらの受容体が含まれる。
【0038】
本発明の1つの態様によれば、選択された標的に対する抗体断片(Fab)のコレクションは、クローン化することができ、可変C末端を有する原核生物(例えば、P.フルオレッセンス)において発現することができる。Fabの可変領域は、一本鎖抗体から得ることができる。重鎖および軽鎖は、次いで、プラスミドプロモーター(例えば、後述されるような、プラスミドpDOW1169のPtacプロモーター)から転写された単一のオペロンとしてクローン化することができる。重鎖断片は、次いで、pbp分泌シグナル配列からVHおよびCH1までのコード領域を含むように、プラスミドから増幅することができる。CH1コード領域に続く、3つのインフレーム翻訳停止シグナル(in−frame translational stop signal)は、XbaI部位と共に操作することができる。軽鎖は、次いで、pbp分泌シグナルを含め増幅することができ、XbaIおよびXhol部位にクローン化することができる。
【0039】
本発明の別の実施形態は、軽鎖および様々なC末端を有する重鎖断片(例えば、異なる長さに切断されたV−C1)の分泌を含む。あるいは、切断されたC1領域は、(例えば、代わりのVおよび軽鎖との組み合わせにより)他のFabを作製するための骨格として使用することができる。
【0040】
別の態様では、本発明は、他のペプチドまたは分子と融合させた上述の抗体断片の発現を含む。分子は、糖アルデヒドを介する、またはより一般的には抗体断片中にある任意の利用可能なアミノ酸側鎖もしくは末端アミノ酸官能基(例えば任意の遊離アミノ、イミノ、チオール7(thiol7) ヒドロキシルまたはカルボキシル基)を介することを含む、幾つかの異なる方法により抗体断片に付着され得る。エフェクター分子の付着部位は、ランダムまたは部位特異的のいずれかであり得る。
【0041】
ランダム付着は、しばしば、リジンなどのアミノ酸を介して達成され、これが、リジンの位置により抗体断片を通じて幾つかの部位に付着するエフェクター分子をもたらす。
【0042】
システイン残基は抗体断片では比較的まれなため、分子の部位特異的付着はシステイン残基への付着により達成することができる。抗体ヒンジは、システイン残基を含有し、および抗原結合に関与している可能性のある抗体の他の領域から離れているため、部位特異的付着には一般的な領域(popular regions)である。適切なヒンジは、断片中に天然に存在するか、または組換えDNA技術を用いて作製してもよい(例えば、US 5,677,425;WO98/25971;Leongら、2001年 Cytokine、16、106〜119頁;Chapmanら、1999年 Nature Biotechnology、17、780〜783頁参照)。あるいは、部位特異的システインは、例えば表面曝露されたシステイン(複数可)を作製するため抗体断片中に設計(engineered with)され得る(US 5,219,996参照)。
【0043】
本発明による使用に適切な分子には、例えば、抗腫瘍剤、薬剤、毒素(細菌または植物起源の酵素的に活性な毒素およびこれらの断片、例えば、リシン(ricin)およびこの断片など)、生物学的に活性なタンパク質(例えば酵素、他の抗体または抗体断片)、合成のまたは天然に存在するポリマー、核酸およびこの断片(例えば、DNA、RNAおよびこの断片)、放射性核種、特に放射性ヨウ化物、放射性同位体、キレート化金属、ナノ粒子、ならびに蛍光化合物またはNMRもしくはESR分光法により検出され得る化合物などのレポーター基が含まれる。
【0044】
特定の抗腫瘍剤には、例えば、細胞毒性剤および細胞増殖抑制剤、例えばナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、メルファラン、メクロレタミン、シクロスホファミド(cyclosphophamide)、またはウラシルマスタード)およびこの誘導体、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホル−アミド、ブスルファン、またはシスプラチンなどのアルキル化剤;メトトレキサート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、フルオロ酢酸、またはフルオロクエン酸などの代謝拮抗剤、ブレオマイシン(例えば、I硫酸ブレオマイシン(I bleomycin sulphate))、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシン(例えば、マイトマイシンC)、アクチオンマイシン(actionmycin)(例えば、ダクチノマイシン)、プリカマイシン、カリカエマイシン(calichaemicin)およびこれらの誘導体、またはIエスペラミシン(I esperamicin)およびこの誘導体などの抗生物質;エトポシド、ビンクリスチンまたはビンブラスチンおよびこれらの誘導体などの分裂阻害剤;エリプチシンなどのアルカロイド;タキシン−Iまたは;タキシン−IIなどのポリオール;アンドロゲン(例えば、ドロモスタノロンまたはテストラクトン)、プロゲスチン(例えば、酢酸メゲストロールまたは酢酸メドロキシプロゲステロン)、エストロゲン(例えば、二リン酸ジメチルスチルベストロール、リン酸ポリエストラジオールまたはリン酸エストラムスチン)または抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン)などのホルモン;ミトキサントロンなどのアントラキノン、ヒドロキシウレアなどの尿素;プロカルバジンなどのヒドラジン;またはダカルバジンなどのイミダゾールが含まれる。適切なキレート化金属には、例えば、2〜8を含めた配位数を有する二価(dipositive)または三価(tripositive)金属のキレートが含まれる。
【0045】
本発明による使用に適切な分子には、タンパク質、ペプチドおよび酵素も含まれる。目的の酵素には、タンパク質分解酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、転移酵素が含まれるが、これらに限定されない。目的のタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドには、免疫グロブリン、毒素(アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、またはジフテリア毒素など)、タンパク質(インスリン、腫瘍壊死因子、oc−インターフェロン、p−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子または組織プラスミノーゲン活性化因子など)、血栓剤(thrombotic agent)もしくは抗血管新生剤(例えば、アンギオスタチンまたはエンドスタチン)、または生物反応修飾物質(リンホカイン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニーI刺激因子(G−CSF)、神経成長因子(NGF)または他の成長因子など)および免疫グロブリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
他の分子には、例えば、診断に有用な検出可能な物質が含まれ得る。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、陽電子放出金属(陽電子放出断層撮影での使用のため)、および非放射性常磁性金属イオンが含まれる。適切な酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが含まれる。適切な補欠分子族には、ストレプトアビジン、アビジンおよびビオチンが含まれる。適切な蛍光物質には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルおよびフィコエリスリンが含まれる。適切な発光物質にはルミノールが含まれる。適切な生物発光物質には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリン(acquorin)が含まれる。適切な放射性核種には、i25I、i3iI、iInおよび99Tcが含まれる。
【0047】
分子として使用するための合成のまたは天然に存在するポリマーには、例えば、場合により置換された直鎖または分枝鎖ポリアルキレン、ポリアルケニレン、もしくはポリオキシアルキレンポリマーまたは分枝もしくは非分枝多糖(例えば、ラクトース、アミロース、デキストランまたはグリコーゲンなどのホモ多糖またはヘテロ多糖)が含まれる。上述の合成ポリマーに存在し得る特定の任意選択の置換基には、1つまたは複数のヒドロキシ、メチルまたはメトキシ基が含まれる。合成ポリマーの特定の例には、場合により置換された直鎖または分枝鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)もしくはこれらの誘導体、特にメトキシポリ(エチレングリコール)I(methoxypoly(ethyleneglycol) I)またはこの誘導体などの場合により置換されたポリ(エチレングリコール)が含まれる。特に好ましいポリマーには、ポリ(エチレングリコール)または、特に、メトキシポリ(エチレングリコール)もしくはこの誘導体などの、および特に約10,000Da〜約40,000Daの範囲で分子量を有するポリアルキレンポリマーが含まれる。
【0048】
本明細書では「誘導体」は、反応性誘導体、例えばチオール選択的反応基(α−ハロカラボン酸(halocaraboxylic acid)もしくはエステル(例えば、ヨードアセトアミド)、イミド(例えば、マレイミド)、ビニルスルホンまたはジスルフィドマレイミドなど)を含むことが意図される。
【0049】
1つの例では、本発明の分子は、Fab中にある任意の利用可能なアミノ酸側鎖もしくは末端アミノ酸官能基(例えば任意の遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシルまたはカルボキシル基)を介してタンパク質に付着され得る。このようなアミノ酸は、Fabにおいて天然に存在し得、または組換えDNA方法を用いて操作して断片にし得る。
【0050】
本発明の特定の態様では、抗体断片に付着した分子の少なくとも1つはポリマー分子、好ましくはPEGまたはこの誘導体である。
【0051】
本発明はまた、抗体Fab断片中間体(例えば、CH1切断断片またはVH−CH1切断断片)を発現する宿主細胞も含む。任意の適切な宿主細胞/ベクター系は、本発明の抗体Fab中間体をコードするDNA配列の発現に使用され得る。細菌シュードモナス、大腸菌、バチルスおよび他の属の株を含む原核生物宿主細胞も、本発明内では有用な宿主細胞である。これらの宿主の形質転換方法およびこの中でクローン化された外来DNA配列の発現方法は、当技術分野でよく知られている。細菌においてポリペプチド融合物を発現させた場合、ポリペプチドは、不溶性顆粒(insoluble granules)として細胞質で保持され得、または細菌分泌配列によりペリプラズム空間に誘導され得る。タンパク質は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水で水性抽出物として細胞から回収される。目的のタンパク質を捕捉するため、抽出物は、固定化抗体またはヘパリン−セファロースカラムなどのクロマトグラフィー基質に直接適用される。分泌されたポリペプチドは、細胞の破壊(例えば、超音波処理または浸透圧ショックにより)およびタンパク質の回収により可溶型かつ機能型でペリプラズム空間から回収することができ、これにより変性およびリフォールディングの必要性を避けることができる。例えば、Luら、J.Immunol.Meth.267:213〜226頁、2002年参照。
【0052】
形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞は、選択された宿主細胞の増殖に必要な栄養素および他の成分を含有する培養培地で従来の手順により培養することができる。合成培地および複合培地を含む種々の適切な培地が当技術分野で知られており、一般に炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタミンおよびミネラルを含む。培地はまた、必要に応じて、増殖因子または血清のような成分を含有してもよい。増殖培地は、一般に、例えば、薬剤選択または必須栄養素の欠乏(発現ベクター上で運ばれるもしくは宿主細胞に同時トランスフェクトされる選択可能なマーカーにより補完される)により外因的に付加されたDNAを含有する細胞用に選択するであろう。
【0053】
本発明による抗体断片は、幾つかの疾患または障害の検出または治療に有用であり得る。このような疾患または障害には、感染性疾患、例えば、細菌感染;真菌感染;炎症性疾患/自己免疫、例えば、関節リウマチ、骨関節炎、炎症性腸疾患;癌;アレルギー性/アトピー性疾患、例えば、喘息、湿疹;先天性疾患、例えば、嚢胞性線維症、鎌状赤血球貧血;皮膚疾患、例えば、乾癬;ネクロロジックな疾患(necrologic disease)、例えば、多発性硬化症;移植、例えば、臓器移植拒絶、移植片対宿主疾患;および代謝性/特発性疾患、例えば、糖尿病の一般的な表題の下に記載されるものが含まれ得る。本発明による抗体断片は、治療および/または診断で使用するために製剤化されてよく、本発明のさらなる態様によれば、抗体断片を含む(単独でまたはペプチドもしくは分子との併用で)医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤または担体と共に提供される。
【0054】
本発明は、続く実施例においてより詳細に説明される。これらの例は、本発明の例示として意図されるものであり、これらを限定しているととらえるべきではない。
【実施例】
【0055】
[実施例1]
Fab変異体の構築
図1に示すように、プラスミドは、3つのGal2 Fab変異体(pDOW1196、pDOW3716およびpDOW3717)を発現し、それぞれがGal2軽鎖、および異なる長さのCH1領域を含有するGal2重鎖を有するようにデザインした。重鎖C末端の比較を図2に示す。プラスミドpDOW1196は、軽鎖との鎖間ジスルフィド結合に関与するシステイン残基までのN末端側の4アミノ酸が切断された、最も短いCH1領域を含有する。プラスミドpDOW3716は、鎖間ジスルフィドに必要なシステインまで伸びるCH1領域を含有し、pDOW3717は、ヒンジ領域を通じて伸びるCH1領域を含有する。リン酸結合タンパク質(pbp)シグナル配列と融合したGal2重鎖および軽鎖は、Gal2 mAB発現プラスミドpDOW2788から増幅した。各重鎖/軽鎖の組み合わせを、重鎖コード配列、これに続く3つのナンセンスコドン、およびXbaI部位、最適リボソーム結合部位およびpbp−軽鎖コード配列開始前の7つのヌクレオチド空間(nucleotide space)により、単一のオペロンとしてPtacプロモーターの後にクローン化した。得られたコード領域を図3〜5に示す。
【0056】
[実施例2]
P.フルオレッセンスにおけるGal2 Fab変異体の構築および発現
P.フルオレッセンス株DC454(ΔpyrF lsc::lacI)(Schneiderら、2005年)およびDC572(ΔpyrFΔproCΔbenAB Δmt1DYZ lsc::lacI Pmtl:frnE proC)を発現宿主として使用した。DC572は、推定ジスルフィドイソメラーゼであるfrnEホモログ(RXF08657)を過剰発現する。
【0057】
Fab発現プラスミドの構築:Fab発現プラスミドの構築には標準的なクローン化方法を使用した(Sambrookら、2001年)。プラスミドpDOW1196は以下のように構築した。Gal2 mABの重鎖領域(V.Leeら、調製での報告)は、プライマーgal2HC_5’(ACTAGTAGGAGGTAACTTATGAAACTGAAACGTTTGATGGC(SEQ ID NO:1))およびXbaI_VhCH1_R(TCTAGATCATTACTAAACGCGCTT GTCACCTTTCGTGTT(SEQ ID NO:2))を用いてpDOW2788から増幅した。PCR断片を、pCR2.1TOPO(lnvitrogen社)にクローン化し、大腸菌Top10に形質転換し、LB Soy Agar Amp100(Teknova社)で選択した。形質転換体から調製したプラスミドを配列決定によりスクリーニングし、陽性クローン化(positive cloned)を同定した。配列確定断片をSpeIおよびXbaIで制限消化し、同酵素で消化したpDOW1173にライゲートした。DC454は得られたライゲーションで形質転換し、形質転換体をM9グルコース寒天(Teknova社)上で選択し、SpeIおよびXbaIによる制限消化により挿入物(insert)をスクリーニングした。Gal2軽鎖は、プライマーXbaI_pbp_F(TCTAGAAGGAGGTAACTTATGAAACTGAAACGTTTGATG(SEQ ID NO:3))およびXhol_L_R(CTCGAGCTATCATTAGCACTCGCCGCGATTAAACGACTT(SEQ ID NO:4))を用いてpDOW2788から増幅し、得られた断片をpCR2.1TOPOにクローン化し、先述の通りに確認した。配列は、軽鎖断片がXbaIおよびXholで制限消化され、同酵素で消化したpDOW1173+Gal2重鎖断片(上述の通りに構築した)にライゲートされていることが確認された。DC454はライゲーションミックスで形質転換し、形質転換体はM9グルコース寒天(transformants were M9 glucose agar)(Teknova社)であり、XbaIおよびXholによる制限消化により挿入物をスクリーニングした。
【0058】
プラスミドpDOW1197およびpDOW1198を構築するため(それぞれ、gal2のヒンジ領域を有するおよびgal2のヒンジ領域が無いpbp−gal2重鎖を含有する)、gal2モノクローナル抗体(mAb)を含有するプラスミドpDOW2787をテンプレートに用いて、断片をPCR(Stratagene社 カタログ#600600)により増幅した。ヒンジ領領域が無いpbp−ga12重鎖は、2分間94℃、(30秒間94℃;30秒間45℃;2分間70℃)30×、10分間72℃のサイクリング条件下で、プライマーgal2HC_5’(ACTAGTAGGAGGTAACTTATGAAACTGAAACGTTTGATGGCGGCAA(SEQ ID NO:5))およびCH1_rev(CGTCTAGATTATCACTAGCACGATTTCGGCTCAAC(SEQ ID NO:6))を用いて増幅した。ヒンジ領域を有するpbp−gal2重鎖は、上述した同じ条件下で、プライマーgal2HC_5’およびCH1_ヒンジ(GCTCTAGATTACTATCAGCACGGCGGGCAGGTATGC(SEQ ID NO:7))を用いて増幅した。精製したPCR産物を、制限酵素SpeIおよびXbaIで消化し、同じ制限部位間でプラスミドpDOW1169にライゲートし、DC454(ΔpyrF lsc::lacIq1)に形質転換した。得られた形質転換体を配列決定し、ポジティブクローンをそれぞれpDOW1197およびpDOW1198と名付けた。gal2軽鎖コード領域を含有する、pDOW1196由来のXbaI−Xhol断片は、同酵素で消化した各pDOW1197およびpDOW1198にライゲートした。P.フルオレッセンスDC454をライゲーション産物により形質転換し、M9グルコース寒天上で選択し、ポジティブクローンを確認するため配列決定した。得られたプラスミドを、それぞれpDOW3716およびpDOW3717と名付けた。
【0059】
振盪フラスコ発現:各クローンを保持する(carrying)P.フルオレッセンス株DC454またはDC572を、標準的なDow 1Lスケール振盪フラスコ発現プロトコルにより分析した。1%グルコースおよび微量元素を追加した標準培地で増殖した種培養(seed cultures)は、炭素源に5%グリセロールを有する合成最少塩培地200mLを播種するのに使用した。最初の増殖期後、Ptacプロモーターによる発現を、イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)により誘導した。指示に応じて、frnEを0.5%マンニトールにより誘導した。培養物は、誘導時(I0)、および誘導後24時間(I24)で採取した。細胞密度を600nm(OD600)での光学密度により測定した。細胞密度をOD600=20に調整し、100μlアリコートを14000×gで5分間遠心分離した。上清(無細胞ブロス)を新しい微小遠心管にピペッティングし、次いで細胞ペレットおよび無細胞ブロス試料を、後の処理のため−80℃で冷凍した。
【0060】
ミニバイオリアクターでの発現:株はTDCC培養コレクションからのグリセロールストックとして供給された。グリセロールを有する600ml PS/2フォーミュラ培地(formula medium)からなる種フラスコは、株ごとに600μlの解凍したグリセロールストックを播種し、30℃、300rpmで20〜24時間インキュベートした。種フラスコの細胞密度は、典型的には可視光分光器で575nmで12〜20光学密度(O.D.)として測定した。種フラスコは、典型的には5.5〜6.8pHであった。
【0061】
500mlの小規模な発酵槽のDASGIP FedBatch Proシステムを、株の評価および実験手順のデザインに使用した。試料分析は誘導後0、8、16および24時間で採取した。試料をO.D.およびpHについて直ちに分析した。アリコート0.100gを除去し、微量遠心機で最大速度で10分間遠心分離し、上清をピペットで除去した。ペレットおよび上清(無細胞ブロスまたはCFB)を、ウェスタンブロッティングおよび/またはELISAによる分析まで−20℃で別々に保存した。
【0062】
[実施例3]
SDS−PAGE、ウェスタンおよびELISA分析
振盪フラスコ試料からの可溶性および不溶性画分を、Easy Lyse(Epicentre Technologies社)を用いて生成した。凍結ペレットを再懸濁し、溶解緩衝液で1:4に希釈し、振盪させながら室温で30分間インキュベートした。溶解物を14,000rpmで20分間(4℃)遠心分離し、上清を除去した。上清は可溶性画分として保存した。ペレット(不溶性画分)を次いで同量の溶解緩衝液で再懸濁し、上下にピペッティングして再懸濁した。無細胞ブロス試料を解凍し、そのままの濃度で使用した。試料を、β−メルカプトエタノールを含有する2×Laemmli試料緩衝液(BioRad社 カタログ#161−0737)と1:1で混合し、5分間沸騰させた後、15μLをBio−Rad Criterion 12% Criterion XTゲル(BioRad社)に添加し、推奨された1X MES緩衝液(BioRad社)で電気泳動した。製造者のプロトコルに従ってゲルをSimply Blue Safe Stain(Invitrogen社 カタログ#LC6060)で染色し、Alpha Innotech画像システムを用いて画像化した。ウェスタン分析を記載された通りに行った(RP−MB−015)。振盪フラスコ試料については、10μL 20OD標準化試料を添加した。発酵槽試料については、可溶性および不溶性画分の40×希釈10μL、またはCFB画分の20×希釈5μLを12% Bis−Trisポリアクリルアミドゲルに添加した。1:5000に希釈した抗ヒトκ軽鎖西洋ワサビペルオキシダーゼHRP複合体(Sigma社 A7164)を検出抗体として使用した。
【0063】
ELISA:西洋ワサビペルオキシダーゼ(Sigma社 A7164)に結合したヤギ抗ヒトκ抗体を、2%w/v脱脂粉乳を有するPBSからなるブロッキング溶液で1:30,000希釈で使用した。ELISAプレートのウェルに10μg/ml β−ガラクトシダーゼ溶液200μLを充填し、テストプレートを調製するため室温で一晩インキュベートした。Gal2標準は、タンパク質Aを希釈して調製し、上記ブロッキング溶液で100倍に精製し(050628B)、次いで毎回4倍希釈で7回連続希釈した。8つの標準希釈物を、調製したテストプレートのウェルを分けるため二連で移した。上述の通りに調製した発酵槽試料を、等しい4つの異なる希釈物になるまで、各希釈で5倍ずつ、別々に3回連続希釈した。希釈物を調製したテストプレートのウェルを分けるため二連で移した。完成したテストプレートを室温で2時間インキュベートし、次いでPBSTで洗浄した。κ抗体を全てのウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。プレートを次いでPBSTで洗浄した。洗浄後、比色基質TMBを全ウェルに添加し、プレートを室温で8〜10分間インキュベートした。発色の完了後、2N H2SO4を添加して反応を停止させた。プレートを、次いでUV分光測定プレートリーダーにより読み取った。
【0064】
実験の発酵デザイン:2つのファクターおよび中間点を有する完全ファクタースクリーニング計画(full-factorial screening design)をデザインし、SAS JMPソフトウェア、バージョン6.0を用いて分析した。Gal2Fab(DC536)の選択した最良の株を、10台の別々のDASGIP発酵槽に播種し、既定の2×2×2のファクター(および二連の中間点)により増殖させた。培養物は180(±18)の標的O.D.まで増殖させ、次いで以下の表に示した通りの既定条件で誘導した。実験条件の順序をJMPプログラムによりランダム化した。誘導後24時間の回収時に、試料を採取し、上述通りに分析試料を処理した。可溶性画分のELISA値を、効果としてJMP統計ファイルに記録し、効果スクリーニングモデルは、全ファクターを別々のモデルとしておよび二次交互作用として実行(run)した。
【0065】
[実施例4]
振盪フラスコ規模での変異体の発現
各プラスミドを、野生型P.フルオレッセンス(DC454)、および推定ジスルフィドイソメラーゼFrnE(DC572)を過剰発現するP.フルオレッセンス株に形質転換した。ここまでは、ジスルフィドオキシド−還元酵素ならびにイソメラーゼDsbAおよびDsbCタンパク質の過剰発現は、モノクローナル抗体、抗体断片またはテストした他のジスルフィド結合タンパク質(Retallackら、2006年a;Retallackら、2006年b;Shaoら、2006年;Coleman、Schneiderら、2007年)の可溶性の改善を示さなかった。各Fab構築物、pDOW1196(切断されたCH1)、pDOW3716(Fab)およびpDOW3717(Fab+ヒンジ)で形質転換したDC454およびDC572(表1参照)につき、小規模(振盪フラスコ)発現分析を行った。
【0066】
表1−本研究用に構築された株

プラスミド番号 DC454宿主株 DC572宿主株
pDOW1196 DC536 DC593
pDOW3716 DC589 DC591
pDOW3717 DC590 DC592

株は全て、誘導時に約15ODまで増殖した。重鎖および軽鎖遺伝子は、DC572宿主でのfrnE遺伝子と共に、増殖24時間後にそれぞれIPTGおよびマンニトールにより誘導した。光学密度がわずかに減少したpDOW3717(DC592)を保持するDC572を除いて、細胞密度は全ての株で16〜20ODに増加した。
【0067】
切断されたCH1産物の重鎖(pDOW1196)は、分泌リーダー切断(processing)無しで25.4kDa、リーダー切断有りで23kDaになると予想された。pDOW3716によりコードされた重鎖産物は、リーダー切断無しで26kDa、リーダー切断有りで23.5kDaになると予想された。pDOW3717によりコードされた重鎖産物は、リーダー切断無しで26.7kDa、リーダー切断有りで24.5kDaになると予想された。軽鎖は、リーダー切断無しで25.7 kDa、リーダー切断有りで23.3kDaになると予想された。還元SDS−PAGE分析は、図6に示した通り、pDOW1196およびpDOW3717両構築物の主として不溶性の重鎖および/または軽鎖の発現を明らかにした。frnEの過剰発現が、pDOW1196から発現された誘導不溶性タンパク質の量を減少させるように見えたのに対し、より多くの誘導不溶性タンパク質がpDOW3716またはpDOW3717を保持するfrnE過剰発現株で観察された。ウェスタン分析を、抗κ抗体を用いて軽鎖発現を検出するために実施した。図7に示した通り、還元条件下で実行された試料は主として切断された軽鎖を示したが、少量の未処理可溶性軽鎖がDC454/pDOW1196株から発現された(図7A)。非還元条件下で実行したウェスタン分析(図7B)は、軽鎖を含有する二量体が形成されたことを示した。pDOW1196含有株(切断されたCH1)では、軽鎖単量体および多量体サイズの中間体がいずれも検出された。さらに、軽鎖は、非還元条件下、pDOW1196含有株の可溶性および無細胞ブロス画分でのみ検出されたが、かなりの量(significant amount)の不溶性軽鎖がSDS−PAGEおよびウェスタン分析の両方において還元条件で検出された。しかし、不溶性軽鎖は、pDOW3716およびpDOW3717を保持する株から発現された多量体に伴って検出された(図7B)。pDOW3717(ヒンジを有するCH1)を保持する株の場合では、軽鎖は野生型宿主において不溶性タンパク質として検出された。しかし、軽鎖は、可溶性および無細胞ブロス画分、ならびにFrnE過剰発現宿主において、還元条件下での単量体および非還元条件下での多量体の両方として検出された。さらに、図7に示した通り、野生型宿主において検出されたものと比べて、FrnE過剰発現宿主における不溶性軽鎖量の増加が見られた。
【0068】
発現した活性抗体断片レベルをアッセイするためELISAを実施した。軽鎖のみまたは重鎖のみの二量体がβ−ガラクトシダーゼと結合するかどうかは不明であったが、活性は、正しくフォールディングされ、構築された重鎖−軽鎖二量体の量に対応すると仮定した。図8に図示した通り、6株各々からの可溶性および無細胞ブロス画分を、結合活性についてテストした。pDOW1196から発現された抗体断片は、pDOW3716およびpDOW3717から発現されたものより有意に高い活性を示した。FrnEの過剰発現は、pDOW1196株含有の可溶性または無細胞ブロス画分において検出された活性量に影響を与えなかった。FrnEは、pDOW3716およびpDOW3717から発現された活性なFabの量を改善したように見え、約2倍高い活性が検出された。
【0069】
[実施例5]
DASGIPミニバイオリアクターでのFab変異体の発現
野生型宿主DC454における3つの各Fab構築物からのFab発現を、DASGIPミニ発酵槽で300mL発酵規模で確認した。図9に示した通り、4つの複製物のうち3つでは、DC536(pDOW1196を保持する)が、無細胞ブロス(CFB)および/または可溶性画分においてかなりの量の活性なGal2 Fabを発現した。株DC589(pDOW3716)は、4つの反復実験のいずれにおいても、活性なFab発現をあったとしてもほとんど示さなかったのに対し、株DC590(pDOW3717)は、実施した4実験の1つにおいてかなりの活性を示した。これらの結果は、振盪フラスコ規模で観察されたものを裏づけるものであり、pDOW1196由来の切断されたFabを発現するDC536から最も多量の活性なFabが検出された。
【0070】
実験デザイン(design of experiment)の分析をDC536を用いて実施し、可溶性の活性Gal2 Fabの発現量をさらに改善するのに発酵条件を最適化し得るかどうかを判定した。テスト条件を表1に示す。図10に図示した通り、反応(可溶性の活性タンパク質)分析は、正規分布データを示した。予測された結果に対してプロットした場合、結果は全て信頼限界内にあった。可溶性の活性タンパク質の発現に対する最も顕著な影響は、IPTG濃度と誘導温度との相互作用において見られた。影響は各ボックス内の線の関係により視覚化した。平行線は、2つのグラフ化されたファクター間に影響の相互作用がないことを示す。交差する線(intersecting lines)は、2つのファクターが組み合わさって反応により大きな影響を与えることを示す。相互作用プロファイルは、ファクター「誘導pH」と「誘導温度」との間に影響の相互作用がないこと、および「IPTG濃度」と「誘導pH」との間に影響の相互作用がほんの僅かしか(very little effect)ないことを示す。「IPTG濃度」と「誘導温度」との間の相互作用は、最も高い有意性を示す。
【0071】
frnEジスルフィドイソメラーゼ(DC591、DC592、DC593)を過剰発現する3つの各株を、DASGIPミニ発酵槽で二連(in duplicate)で増殖させた。これらの株の増殖は、対照(DC536)と比較した場合、増殖期間中同程度であった。後期の誘導期間中、frnE過剰発現株においてODは減少し、細胞溶解を示唆している可能性がある。最終試料は粘性であり、試料の回収および調製中に別々に分離する難しさの原因となった。試料の粘性は、細胞ペレットよりむしろCFBにおいて幾つかのタンパク質が隔離されるのを可能にすることで、株DC593複製物からのELISA結果(図12に示された通り)の矛盾に寄与した可能性がある。しかし、全てのfrnE過剰発現株が回収時に粘性であったことから、この粘性は、株DC591/592と株DC593との間のタンパク質量の有意差を説明しそうにないことが分かった。株DC593は、2つの複製物の1つにおいて対照(DC536)よりも多くのGal2 Fabを発現した。第2のDC593複製物は、対照より少ないGal2 Fabを発現したが、ELISAで判定したように、DC591またはDC592よりも依然として多くのタンパク質を発現した(図12)。DC593複製物での多様性(variance)にかかわらず、pDOW1196由来の切断されたGal2 Fabの発現は、pDOW3716(DC589およびDC591)由来またはpDOW3717(DC590および DC592)由来の別のシステイン残基を含有するGal2 Fabの発現に比べて、明らかに可溶性の活性タンパク質(DC536およびDC593)の収量を増加させる結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性抗体断片の発現を改善する方法であって、
抗体断片(Fab)を提供するステップと、
Fabの重鎖定常領域(CH1)を切断してFab断片を形成するステップであって、軽鎖とのジスルフィド結合形成に必要なシステインアミノ酸が除去されるステップと、
原核生物においてFab断片をクローン化するステップと、
原核生物においてFab断片を発現または分泌させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
原核生物が細菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
原核生物がシュードモナス株を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項4】
原核生物がシュードモナス・フルオレッセンスを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
FabのCH1を切断するステップが、ジスルフィド結合形成に必要なシステインアミノ酸の最大100アミノ酸に至るまで上流または下流を除去するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
FabのCH1を切断するステップが、ジスルフィド結合形成に必要なシステインアミノ酸の最大5アミノ酸に至るまで上流または下流を除去するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
FabのCH1を切断するステップが、ジスルフィド結合形成に必要なシステインアミノ酸の上流4アミノ酸を除去するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
Fab断片が、プラスミドプロモーターから転写された単一のオペロンとしてクローン化される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プラスミドプロモーターが、プラスミドpDOW1169のPtacプロモーターである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
分子、ポリマー、またはペプチドをFab断片と融合させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
融合させるステップがFab断片のペグ化を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
融合させるステップが、Fab断片が発現または分泌された後に分子、ポリマー、またはペプチドをFab断片と融合させるステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
融合させるステップが、分子、ポリマー、またはペプチドをFab断片と翻訳において融合させるステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
分子が、薬剤、毒素、タンパク質、ペプチド、酵素、ポリマー、核酸、断片、およびこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
Fab断片を医薬組成物に組み込むステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
Fab断片が、ペプチドまたは分子をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
以下の作動可能に連結されたエレメント:
転写プロモーターと、
軽鎖とのジスルフィド結合形成に必要なシステインアミノ酸が除去された、切断された重鎖定常領域(CH1)を有するFab断片をコードするDNAセグメントと、
転写ターミネーターと
を含む発現ベクター。
【請求項18】
プロモーターがプラスミドpDOW1169のPtacプロモーターである、請求項17に記載の発現ベクター。
【請求項19】
プロモーターの後のリボソーム結合部位と、
切断された重鎖および軽鎖コード配列と融合させたペリプラズム分泌リーダーコード配列と
をさらに含む、請求項17に記載の発現ベクター。
【請求項20】
請求項17に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項21】
微生物を含む、請求項20に記載の宿主細胞。
【請求項22】
シュードモナス株を含む、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項23】
シュードモナス・フルオレッセンスを含む、請求項22に記載の宿主細胞。
【請求項24】
活性抗体断片の発現を改善する方法であって、
抗体断片(Fab)を提供するステップと、
Fabの重鎖定常領域(CH1)を切断してFab断片を形成するステップであって、軽鎖とのジスルフィド結合形成に必要なシステインアミノ酸が除去されるステップと、
原核生物においてFab断片をクローン化するステップと、
原核生物においてFab断片を分泌させるステップと
を含む方法。
【請求項25】
原核生物が細菌を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
原核生物がシュードモナス株を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
原核生物がシュードモナス・フルオレッセンスを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
活性抗体断片の発現を改善する方法であって、
抗体断片(Fab)を提供するステップと、
Fabのκまたはλ軽鎖を切断してFab断片を形成するステップと、
原核生物においてFab断片をクローン化するステップと、
原核生物においてFab断片を発現または分泌させるステップと
を含む方法。
【請求項29】
以下の作動可能に連結されたエレメント:
転写プロモーターと、
切断されたκ軽鎖または切断されたλ軽鎖を有するFab断片をコードするDNAセグメントと、
転写ターミネーターと
を含む発現ベクター。
【請求項30】
プロモーターの後のリボソーム結合部位と、
切断された重鎖および軽鎖コード配列と融合させたペリプラズム分泌リーダーコード配列と
をさらに含む、請求項29に記載の発現ベクター。
【請求項31】
請求項30に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−528664(P2010−528664A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511383(P2010−511383)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/066187
【国際公開番号】WO2008/151319
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】