説明

CIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法

【課題】 各構成部材の材質に適合した、簡単且つ低コストな処理方法で回収し、廃棄物の量を削減し、製造コストを低減する。
【解決手段】 CIS系薄膜太陽電池モジュール1から周辺部材を取り除く前処理(P11〜P15)により、太陽電池デバイス部2とカバーガラス4とが接着用樹脂3により接着した構造体STを取り出し、前記構造体STを加熱して前記接着用樹脂3を燃焼させて、前記構造体STからカバーガラス4を分離し(P2)、前記デバイス部2から窓層2E、バッファ層2D、光吸収層2Cを削り落とし(P3)、更に、金属裏面電極層2Bを除去して(P3)、ガラス基板2Aを取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多元化合物半導体薄膜を光吸収層として使用したヘテロ接合薄膜太陽電池から構成されるCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前記CIS系薄膜太陽電池は広範囲に実用化可能であるとみなされ、米国とドイツにおいて、近年商業化され、日本では精力的に高性能化と製造技術開発が進められている。しかしながら、該CIS系薄膜太陽電池モジュールが市場に投入されて時期が浅いこと、オフスペック品等は産業廃棄物として処理される例が一般的であることから資源リサイクルの観点での取組は極めて少ない。また、将来発生する、寿命が尽きて廃棄される該モジュールを廃棄物としてではなく資源として有効に処理、回収するための方法に関する取り組みも極めて少ない。そのような状況から、該モジュール製造工程で発生するオフスペック品からの構成部材の回収方法に関する研究開発の発表・報告は極めて少なく、これまで電気化学反応(即ち、電着法)を利用した研究例が3件(うち同一著者による2件)が公表されているのみである。これらは、何れも小面積サンプルによる検討例であり、商業化へのパイロット処理も可能としているが、実際の製品サイズのモジュールに対する処理に関する研究ではない。
【0003】
前記電気化学反応を利用した研究の2例は、何れも酸による溶解と電着法による金属の回収に関する検討であり、CIS系薄膜太陽電池モジュールからのリサイクルではなく、CIS系薄膜太陽電池デバイス部の光吸収層を構成する金属の電気化学的な回収及び再利用方法の検討であった。
【0004】
最初の研究例は、非特許文献1に示すように、硝酸溶液により、スーパーストレート構造のCIS系薄膜太陽電池を構成するすべての金属(銅、インジウム、セレン、亜鉛及びその他の金属)を溶解している。研究対象のCIS系薄膜太陽電池が、一般的なサブストレート構造ではなく、研究例の少ないスーパーストレート構造であることは、カバーカラスの分離処理がないこと、Cdの回収量が多いことからCdSバッファ層が厚いこと及びガラス基板がSnO2 透明導電膜付きガラスであることから容易に推察できる。ここでは、電極材料と直流電流を適切に選択して、構成金属を溶解した硝酸溶液から電気メッキ法により2段階で金属を回収できるとしている。即ち、カソード上に、第1段階で銅とセレンの合金を、第2段階でCdを回収している。一方、亜鉛とインジウムは硝酸溶液中に残存する。カソード電極上に析出した銅とセレンは酸化処理により、夫々CuOとSeOとして回収し、残された亜鉛やインジウムを含有する溶液、酸化物(ZnO、InO)は非鉄金属精錬メーカーへの売却を予定している。また、残された亜鉛やインジウムを含有する溶液は溶媒抽出等の方法で処理することにより、更に処理することも可能としている。
【0005】
第2の研究例は、非特許文献2に示すように、一般的に、ガラス、プラスチック、金属から構成される薄膜太陽電池が含有する金属量は0.05wt%以下とモジュール全体に占める割合が極めて微量であることから、既存の重金属回収法は実用的でなく、破壊方法も廃棄物を増加させるだけで適当でないとしてCIS系薄膜太陽電池モジュールのリサイクルに応用できるクローズド・ループの電気化学的アプローチを提案している。本研究例では、CIS系薄膜太陽電池モジュールが具体的な対象ではなく、CIS系光吸収層からの金属回収・再利用を検討している。即ち、陽極に中古又は廃棄のCIS系光吸収層を、陰極にMoが製膜されたガラス基板を使用し、印加電圧を変化させることでCIS系光吸収層を構成する銅、インジウム、セレンが夫々に対応する電圧が印加された時に電解溶液中に溶出し、陰極のMoが製膜されたガラス基板上にCIS系光吸収層形成に必要な金属プリカーサ(前駆体)となるCu−In−Se合金層を形成できると考えている。報告されている結果からは印加電圧の範囲も広く、組成範囲のバラツキ大きく、精密な組成制御が必要とされるCIS系光吸収層の作製にはこのままでは不適である。そこで、一定組成のCIS系光吸収層を作製するために、電解液組成を調整することを提案している。この提案を現実化することは微量金属の定量分析が必要であり、高精度の測定結果を得て、必要な金属を酸に溶解した状態で電解液に補充することを意味し、この方法を用いて、低コストと高速製造が要求される太陽電池の製造プロセスを作り上げることは容易ではない。また、この方法は、陰極に回収した金属プリカーサ(前駆体)となるCu−In−Se合金層からCIS系光吸収層を作製するために、アニール工程が必要であるとしている。
【0006】
前記研究例2件は、何れもCIS系光吸収層を電気化学的に溶液中に溶解し、構成金属を析出処理する方法及びCIS系薄膜太陽電池の光吸収層としては使用できるレベルにない金属プリカーサ(前駆体)となるCu−In−Se合金層の析出に関する電気化学理論又は概念を開示している。即ち、CIS系薄膜太陽電池モジュールを出発材料として、構成有価材料の回収と再使用までの閉じたシステムとしての処理方法を開示するものではなく、CIS系光吸収層のみを回収対象とした検討であり、その溶解と析出に関する議論に限定している。その他の構成材料の回収・再利用に関しては、具体的な検討は行っておらず、理論・方法の提案にとどまっている。
【0007】
また、CIS系薄膜太陽電池モジュールの構成材料の回収方法として、本出願人が出願した先行出願特許である特許文献1に開示されており、その内容としては、太陽光の入射部であるカバーガラス、EVA樹脂等の封止材(接着剤として機能する)、窓層、バッファ層、CIS系光吸収層、金属裏面電極層、ガラス基板から構成されるサブストレート構造のCIS系薄膜太陽電池モジュールを出発材料として、該モジュールから周辺部材を除去した後、先ず、CIS系薄膜太陽電池デバイス部分(窓層、バッファ層、CIS系光吸収層、金属裏面電極層、ガラス基板)を前記封止材を介してカバーガラスを設けた構造体を加熱盤(ホットプレート等)上に固定し、130〜160℃の温度範囲で加熱し、前記封止材を軟化させ、カバーガラスを水平方向に押しながらカバーガラスとCIS系薄膜太陽電池デバイス部分とを機械的に分離する方法で分離して、カバーガラスをガラス原料としてリサイクルし、その後、分離されたCIS系薄膜太陽電池デバイス部分の窓層及びバッファ層を酢酸により溶解し、溶解液はバッファ層製膜工程で再使用し、更に、残存したCIS系光吸収層と金属裏面電極層とガラス基板からなる構造体からCIS系光吸収層を機械的なスクレーピング法により金属粉として回収し、残った金属裏面電極層とガラス基板からなる構造体から硝酸により金属裏面電極層を溶解除去し、硝酸溶液から金属を回収し、残ったガラス基板を再使用することが開示されている。この回収方法は、構成部材、特に、最も付加価値が高いと見なされるCIS系光吸収層を単独に回収する方法を開示しているが、その前後に窓層及びバッファ層の除去回収、金属裏面電極層の除去回収等の処理が必要であり、多種多量な薬品を使用するために、薬品コスト、廃薬品の処理等が必要であり、極めて高コストな処理方法であるという欠点があった。
【0008】
ここ数年来、CIS系薄膜太陽電池モジュールは商業化に向けた研究開発が進み、少量ではあるが市場に登場し始めている。また、太陽電池からカドミウム、鉛のような環境負荷の高い構成材料を原則排除しようという試みが積極的に提案され実施されている。しかし、これまでに発表されたCIS系薄膜太陽電池モジュールのリサイクル技術は、CIS系光吸収層のみを回収対象として、その溶解と析出に関する電気化学的な議論に限定しており、CIS系薄膜太陽電池モジュールそのものを出発材料とした構成部品回収方法を提供していない。
【0009】
【非特許文献1】R.E.Goozner,et.al:Proc.26th IEEE Photovoltaic Specialist Conference(1997),P1161〜1163
【非特許文献2】S.Menezes:Proc.2nd WorldConference on Photovoltaic Energy Conversion(1998),P597〜600
【特許文献1】特開2004−186547公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記問題点を解消するためのもので、本発明の目的は、前記CIS系薄膜太陽電池デバイス部分であるバッファ層からカドミウムを排除し、電極部の半田材料に鉛を含まない半田材料を使用したCIS系薄膜太陽電池モジュールを出発材料として、その構成部材をその材質に適合した、簡単且つ低コストな処理方法により容易に回収し、環境型社会の形成に寄与することである。
【0011】
更に、もう一つの本発明の目的は、CIS系薄膜太陽電池モジュール製品から構成部材をその材質に適合した、簡単且つ低コストな処理方法により容易に回収し、産業廃棄物の発生量を削減することである。
【0012】
更に、もう一つの本発明の目的は、CIS系薄膜太陽電池モジュールの製造段階で発生するオフスペック品を低コストで回収処理して産業廃棄物処理費を低減しつつ、産業廃棄物の発生量を削減すると共に、前記産業廃棄物処理費の低減によりCIS系薄膜太陽電池モジュールの製造コストを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明は、ガラス基板上に、金属裏面電極層、光吸収層、バッファ層、窓層の順に積層されたCIS系薄膜太陽電池デバイス部とカバーガラスとこれらを接着する架橋されたEVA樹脂等のプラスチック樹脂製接着剤とからなる構造体を500℃以下の温度で加熱し、前記プラスチック樹脂製接着剤を燃焼させることにより、CIS系薄膜太陽電池デバイス部とカバーガラスとを分離するCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法である。
【0014】
(2)本発明は、排ガス処理設備を布設し密閉性を有する大気圧の加熱炉中で前記光吸収層の生成温度より低い温度で加熱するか、又は前記光吸収層の生成温度以上の温度範囲では光吸収層の組成変化が起こらない数分以下の短時間で加熱する前記(1)に記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法である。
【0015】
(3)本発明は、排ガス処理設備を布設し密閉性を有する加熱炉中で400〜500℃の温度範囲で加熱する前記(1)に記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法である。
【0016】
(4)本発明は、前記プラスチック樹脂製接着剤が、架橋前の厚さが200〜800μm、望ましくは、400〜600μmの範囲である前記(1)に記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法である。
【0017】
(5)本発明は、前記CIS系薄膜太陽電池デバイス部とカバーガラスとこれらを接着する架橋されたEVA樹脂等のプラスチック樹脂製接着剤とからなる構造体からカバーガラスを分離後の前記CIS系薄膜太陽電池デバイス部と燃焼したプラスチック樹脂製接着剤とからなる構造体から前記燃焼したプラスチック樹脂製接着剤、窓層、バッファ層、光吸収層をスクレーピング(削り落とし)法により機械的に削り落とすことで、微量の燃焼生成物を含む金属粉と金属裏面電極層付きガラス基板を回収する前記(1)乃至(4)の何れか1つに記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法である。
【0018】
(6)本発明は、前記金属裏面電極層付きガラス基板をサンドブラスター又はベルトサンダーにより処理することにより金属裏面電極層を除去し、ガラス基板を回収する前記(5)に記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法である。
【0019】
(7)本発明は、前記CIS系薄膜太陽電池モジュールから各構成部材を回収するCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法であって、カバーガラスと、燃焼したプラスチック樹脂製接着剤からの微量の燃焼生成物を含む、CIS系薄膜太陽電池デバイス部を構成する窓層、バッファ層及び光吸収層の金属粉と、金属裏面電極層からの金属粉と、ガラス基板とを回収する前記(1)乃至(6)の何れか1つに記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法である。
【0020】
(8)本発明は、CIS系薄膜太陽電池モジュールからその周辺部材を除去する前処理により、CIS系薄膜太陽電池デバイス部とカバーガラスとこれらを接着するEVA樹脂等のプラスチック樹脂製接着剤とからなる構造体を取り出す前記(1)乃至(7)の何れか1つに記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法である。
【0021】
(9)本発明は、前記周辺部材は、フレーム、シール材、ケーブル付き接続箱、バックシートであり、前記CIS系薄膜太陽電池デバイス部は、ガラス基板上に、金属裏面電極層、光吸収層、バッファ層、窓層の順に積層されたものである前記(8)に記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、CIS系薄膜太陽電池デバイス部分であるバッファ層からカドミウムを排除し、電極部の半田材料に鉛を含まない半田材料を使用したCIS系薄膜太陽電池モジュールを出発材料として、その構成部材をその材質に適合した、簡単且つ低コストな処理方法により容易に回収することができ、環境型社会の形成に寄与することができる。
【0023】
更に、本発明は、CIS系薄膜太陽電池モジュール製品から構成部材をその材質に適合した、簡単且つ低コストな処理方法により容易に回収し、産業廃棄物の発生量を削減することができる。
【0024】
更に、本発明は、CIS系薄膜太陽電池モジュールの製造段階で発生するオフスペック品を低コストで回収処理して産業廃棄物処理費を低減しつつ、産業廃棄物の発生量を削減すると共に、前記産業廃棄物処理費の低減によりCIS系薄膜太陽電池モジュールの製造コストを低減することすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
本発明は、CIS系薄膜太陽電池モジュールからその構成部材を回収するCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法に関するものである。CIS系薄膜太陽電池モジュール1は、図2に示す、多元化合物半導体薄膜を光吸収層として使用したヘテロ接合薄膜太陽電池、特に、Cu-III-VI2族カルコパイライト半導体、例えば、二セレン化銅インジウム(CISe)、二セレン化銅インジウム・ガリウム(CIGSe) 、二セレン・イオウ化銅インジウム・ガリウム(CIGSSe)、二イオウ化銅インジウム・ガリウム(CIGS)又は薄膜の二セレン・イオウ化銅インジウム・ガリウム(CIGSSe)層を表面層として有する二セレン化銅インジウム・ガリウム(CIGSe) のようなp形半導体の光吸収層とpnヘテロ接合を有するCIS系薄膜太陽電池デバイス部2からなるCIS系薄膜太陽電池モジュールであり、CIS系薄膜太陽電池モジュール1は、図2及び図3に示す、CIS系薄膜太陽電池デバイス部2にカバーガラス4が接着剤としての架橋されたEVA樹脂等のプラスチック樹脂3により接着された構造体STが形成され、前記構造体STの裏面に、バックシート5及びケーブル付き接続箱6が設置され、この構造体STの外周部にシール材7を介してフレーム8が取り付けられる。
【0026】
また、前記CIS系薄膜太陽電池デバイス部2は、図4に示すように、ガラス基板2A上に、金属裏面電極層2B、p形半導体の光吸収層2C、高抵抗のバッファ層2D、n形の透明導電膜からなる窓層2Eの順に積層された積層構造である。
【0027】
本発明のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法を以下に説明する。
先ず、CIS系薄膜太陽電池モジュール1からその周辺部材であるフレーム8、シール材7、ケーブル付き接続箱6、バックシート5等を除去する前処理(P11〜P15)を施して、図3に示す、CIS系薄膜太陽電池デバイス部2とカバーガラス4とが接着剤としてのEVA樹脂等のプラスチック樹脂3により接着された構造体STが取り出される。 前記前処理は、CIS系薄膜太陽電池モジュール1からフレーム8を取り外しP11、シール材7の除去P12、ケーブル付き接続箱6の取り外しP13、ワイヤーブラシ等によるバックシート5の除去P14、バスバー(銅リボン線)の引き剥がし除去P15の順に行われ、その結果、この前処理工程でフレーム8、シール材7、ケーブル付き接続箱6、バックシート5、バスバー(銅リボン線)等の構成部材が回収される。
【0028】
次に、図3に示す、前記構造体STを加熱炉中で、500℃以下の温度、望ましくは、400〜500℃の温度範囲で、加熱して、EVA樹脂3を燃焼させることにより(その大部分が分解消滅して接着力が除去され)、カバーガラス4をCIS系薄膜太陽電池デバイス部2から剥がれ易くし、前記構造体STからカバーガラス4を分離、回収する(P2)。前記EVA樹脂3の燃焼により、燃焼ガスが発生するので、前記加熱炉は排ガス処理設備を布設し密閉性を有するものを使用する。そして、前記加熱の方法は、詳細には、大気圧の中で前記光吸収層の生成温度より低い温度で加熱するか、又は前記光吸収層の生成温度以上の温度範囲では光吸収層の組成変化が起こらない数分以下の短時間で加熱する。また、前記EVA樹脂3(プラスチック樹脂製接着剤)は、架橋前の厚さが200〜800μm、望ましくは、400〜600μmの範囲である。
【0029】
次に、CIS系薄膜太陽電池デバイス部2から燃焼したEVA樹脂等のプラスチック樹脂3、窓層2E、バッファ層2D、光吸収層2Cの順に、スクレーピング(削り落とし)法により削り落とす(P3)。その結果、微量の燃焼生成物(EVA樹脂3等のプラスチック樹脂の燃焼生成物)及び窓層2E、バッファ層2D、光吸収層2Cの金属粉を回収する。
【0030】
次に、金属裏面電極層2Bを、サンドブラスター又はベルトサンダー等により除去する(P4)。その結果、ガラス基板2Aと金属裏面電極層2Bからの金属粉が、回収される(P5)。
【0031】
以上のように、本発明のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法は、前処理により、CIS系薄膜太陽電池モジュール1から簡単且つ低コストな方法によりその周辺部材を分離回収した後、CIS系薄膜太陽電池デバイス部2とカバーガラス4とが架橋されたEVA樹脂等のプラスチック樹脂3により接着された構造体STを加熱燃焼というその材質に適合した、簡単且つ低コストな処理方法により、カバーガラス4を分離回収し、CIS系薄膜太陽電池デバイス部2からスクレーピング(削り落とし)法というその材質に適合した、簡単且つ低コストな処理方法により、燃焼したEVA樹脂等のプラスチック樹脂3、窓層2E、バッファ層2D、光吸収層2Cを分離回収し、更に、金属裏面電極層2Bを、その材質に適合した、簡単且つ低コストな処理方法であるサンドブラスター又はベルトサンダー等により除去して、分離回収すると共に、残ったガラス基板2Aを回収することができる。その結果、本発明のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法は、CIS系薄膜太陽電池モジュール1を構成する各構成部材をその材質に適合した、簡単且つ低コストな処理方法により容易に分離回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法の各処理工程を示す処理工程図である。
【図2】本発明のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法の対象物であるCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成図である。
【図3】CIS系薄膜太陽電池デバイス部とカバーガラスとがEVA樹脂により接着された構造体の構成図である。
【図4】CIS系薄膜太陽電池デバイス部の構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 CIS系薄膜太陽電池モジュール
2 CIS系薄膜太陽電池デバイス部
2A ガラス基板
2B 金属裏面電極層
2C 光吸収層
2D バッファ層
2E 窓層
3 EVA樹脂
4 カバーガラス
ST 構造体
5 バックシート
6 ケーブル付き接続箱
7 シール材
8 フレーム
P11 CIS系薄膜太陽電池モジュール1からフレーム8を取り外し
P12 シール材7の除去
P13 ケーブル付き接続箱6の取り外し
P14 バックシート5の除去
P15 バスバー(銅リボン線)の引き剥がし除去
P2 EVA樹脂3を加熱炉中で燃焼させカバーガラス4を分離
P3 CIS系薄膜太陽電池デバイス部2から窓層2E、バッファ層2D、光吸収層2Cをスクレーピング法により削り落とす
P4 金属裏面電極層2Bを(サンドブラスター又はベルトサンダー等)により除去
P5 ガラス基板2A残存

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に、金属裏面電極層、光吸収層、バッファ層、窓層の順に積層されたCIS系薄膜太陽電池デバイス部とカバーガラスとこれらを接着する架橋されたEVA樹脂等のプラスチック樹脂製接着剤とからなる構造体を500℃以下の温度で加熱し、前記プラスチック樹脂製接着剤を燃焼させることにより、CIS系薄膜太陽電池デバイス部とカバーガラスとを分離することを特徴とするCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法。
【請求項2】
排ガス処理設備を布設し密閉性を有する大気圧の加熱炉中で前記光吸収層の生成温度より低い温度で加熱するか、又は前記光吸収層の生成温度以上の温度範囲では光吸収層の組成変化の起こらない数分以下の短時間で加熱することを特徴とする請求項1に記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法。
【請求項3】
排ガス処理設備を布設し密閉性を有する加熱炉中で400〜500℃の温度範囲で加熱することを特徴とする請求項1に記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法。
【請求項4】
前記プラスチック樹脂製接着剤は、架橋前の厚さが200〜800μm、望ましくは、400〜600μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法。
【請求項5】
前記CIS系薄膜太陽電池デバイス部とカバーガラスとこれらを接着する架橋されたEVA樹脂等のプラスチック樹脂製接着剤とからなる構造体からカバーガラスを分離後の前記CIS系薄膜太陽電池デバイス部と燃焼したプラスチック樹脂製接着剤とからなる構造体から前記燃焼したプラスチック樹脂製接着剤、窓層、バッファ層、光吸収層をスクレーピング(削り落とし)法により機械的に削り落とすことで、微量の燃焼生成物を含む金属粉をと金属裏面電極層付きガラス基板を回収することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法。
【請求項6】
前記金属裏面電極層付きガラス基板をサンドブラスター又はベルトサンダーにより処理することにより金属裏面電極層を除去し、ガラス基板を回収することを特徴とする請求項5に記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法。
【請求項7】
前記CIS系薄膜太陽電池モジュールから各構成部材を回収するCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法であって、カバーガラスと、燃焼したプラスチック樹脂製接着剤からの微量の燃焼生成物を含む、CIS系薄膜太陽電池デバイス部を構成する窓層、バッファ層及び光吸収層の金属粉と、金属裏面電極層からの金属粉と、ガラス基板とを回収することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1つに記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法。
【請求項8】
CIS系薄膜太陽電池モジュールからその周辺部材を除去する前処理により、CIS系薄膜太陽電池デバイス部とカバーガラスとこれらを接着するEVA樹脂等のプラスチック樹脂製接着剤とからなる構造体を取り出すことを特徴とする請求項1乃至7何れか1つに記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法。
【請求項9】
前記周辺部材は、フレーム、シール材、ケーブル付き接続箱、バックシートであり、前記CIS系薄膜太陽電池デバイス部は、ガラス基板上に、金属裏面電極層、光吸収層、バッファ層、窓層の順に積層されたものであることを特徴とする請求項8に記載のCIS系薄膜太陽電池モジュールの構成部材回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−59793(P2007−59793A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245918(P2005−245918)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電技術研究開発(先進太陽電池技術研究開発)」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】