CNSの炎症性疾患の治療のための化合物および方法
CNSにおける炎症性疾患は、少なくとも1つの細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への単核細胞の流入を低減するのに十分な量でオリゴヌクレオチドを投与することにより治療または緩和することができる。例えば、多発性硬化症は、中枢神経系への単核細胞および/または自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な用量でオリゴヌクレオチドを投与することにより治療する、または少なくとも緩和することができる。オリゴヌクレオチドは、単独で、または他の治療ストラテジーと組み合わせて用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それに限定されないが多発性硬化症などの中枢神経系(CNS)の炎症性疾患の治療および/または緩和に関し、この用途のために利用可能な化合物および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
細胞遊走は、免疫応答などのヒトの体内の多くのプロセスの中心であるが、慢性炎症の構成要素でもあり得る。CNSへの単核細胞の遊走は、CNSの炎症性疾患の病理の根底にある1つの因子であると考えられる。
【0003】
1つの例は多発性硬化症(MS)であり、これは、CNS、すなわち脳および脊髄に影響する自己免疫疾患である。MSは、脱力感、振戦および視力障害を特徴とする。他の症状は、不明瞭発語および運動障害であり、例えば患者は、足を引きずり、つまずき、頻繁に物を落とす。これらの症状は、軽度のままであるか、現れたり消えたりするか、または肢体不自由になることもある。しかし、これらは、年齢とともに進行的に悪化する傾向がある(Hafler、2004)。MSは、通常、男性よりも女性がかかりやすい。この疾患は、20歳〜40歳の年齢で最も一般的に開始するが、いずれの年齢にも発生する可能性がある。正確な原因は分かっていないが、MSは、神経細胞を取り囲む保護物質であるミエリン鞘の損傷に起因すると考えられる。これは進行性の疾患であり、損傷が時間とともに悪化することを意味する。炎症はミエリンを破壊し、多数の領域の瘢痕組織を残す(硬化症)。炎症は、体自体の免疫細胞が神経系を攻撃する場合に生じる。
【0004】
MSの病理における1つの重要なステップは、CNSへの細胞の遊走であり、ここでは、自己反応性T細胞およびB細胞が単球と一緒にCNSの炎症を媒介し、このことにより軸索の脱髄が引き起こされる。ケモカインおよびそれらの受容体は、CNSへのこれらの白血球の動員において主要な役割を演じると提案されている。つまり、ケモカイン受容体の減少は、CNSへの破壊性細胞の遊走を妨げるための効果的なストラテジーであり得る。MSの病理において記載されている重要なケモカイン受容体は、CCR5(RANTESおよびMIP−1アルファなどの走化性タンパク質の受容体)、CXCR3(IP−10およびMIGなどの走化性タンパク質の受容体)、およびCCR2(MCP1〜3などの走化性タンパク質の受容体)である(Trebst Cら、2009)。
【0005】
リンパ球をCNSの実質に侵入させることができる別のステップは、CD49d(最晩期抗原、T細胞およびB細胞において発現されるVLA−4)の、内皮細胞上のそれらの受容体への接着であり、それにより血液脳関門を通って移動する。CD49dの低減は、CNSにおける免疫細胞の移動および蓄積を低減させることができる(Steinman L、2009)。
【0006】
健常な個体において、免疫細胞は、CNS毛細血管および細静脈を通過してCNS組織に入ることができない。なぜなら、CNSの毛細血管壁は、それらが免疫細胞を通過させない非常に緊密に詰まった細胞を有するという点で、体の他の部分の血管壁とは異なるからである。CNS血管系のこの特別な特徴は、血液脳関門(BBB)と呼ばれる。血管内皮成長因子(VEGF)は、BBBの破壊を誘導し、これにより次いで、CNSの自己免疫疾患(例えばMS)の炎症性応答を憎悪させ得ると記載されている(Proescholdt MAら、2002)。VEGFの低減は、BBBの増加した血液透過性を妨げ、そのことによりCNS内への破壊性細胞の流入を低減するために効果的なストラテジーである。
【0007】
炎症は、神経インパルスを減速または遮断させ、MSの症状をもたらす。炎症の繰り返されるエピソードまたはフレアアップは、脳および脊髄のいずれの領域でも生じる可能性がある。
【0008】
それぞれの発作の位置および程度は様々であるので、症状は様々である。通常、数日、数週間またはさらには数カ月間持続するエピソードは、症状が低減している、または症状がない期間(寛解)と交互に起こる。繰り返し(再発)が一般的であるが、寛解期間がなく停止しないで進行することもある。
【0009】
MSを有すると診断された患者には、疾患の4つの臨床経過のうちの1つが予測でき、それらのそれぞれは、軽度、中程度または重度であり得る。
【0010】
1.再発寛解型
特徴:この型のMSの人は、はっきりしたフレアアップ(再発、発作、または憎悪とも呼ばれる)を経験する。これらは、神経機能の急性の悪化のエピソードである。これらの後に、疾患が進行しない部分的または完全な回復の期間(寛解)が続く。
【0011】
頻度:初期の診断時のMSの最も一般的な形態。患者のおよそ85%。
【0012】
2.一次性進行型
特徴:この型のMSの人は、明確な再発または寛解なく、発症からゆっくりであるがほぼ連続的な疾患の悪化を経験する。しかし、経時的な進行速度の変動、不定期的なプラトーおよび一時的なわずかな改善がある。
【0013】
頻度:比較的まれである。患者のおよそ10%。
【0014】
3.二次性進行型
特徴:この型のMSの人は、再発寛解型MSの初期期間と、その後の不定期的なフレアアップ、わずかな回復(寛解)またはプラトーを有する、または有さない着実に悪化する疾患経過を経験する。
【0015】
頻度:再発寛解型MSの人の50%が、「疾患修飾」薬の導入前に、初期の診断から10年以内にこの形態の疾患を発症した。これが治療により著しく遅延されるかどうかを証明するための長期データはまだ入手できていない。
【0016】
4.再発進行型
特徴:この型のMSの人は、発症から着実に悪化する疾患を経験するが、回復することがあるまたはない明確な急性再発(発作または憎悪)も有する。再発寛解型MSとは対照的に、再発と再発の間の期間は、継続的な疾患進行を特徴とする。
【0017】
頻度:比較的まれである。患者のおよそ5%。
【0018】
何が発作を引き起こすかについて、科学界での総意はない。MSの患者は、通常、健常な人よりも多数の免疫細胞を有し、このことが、免疫応答が役割を有し得ることを示唆する。最も一般的な理論は、ウイルスもしくは遺伝子欠陥、またはこれらの両方の組合せを示す。疾患への遺伝的なつながりもあるようである。MSは、他の地域よりも、北欧、米国北部、オーストラリア南部およびニュージーランドでより発症しやすい。地理学的研究は、環境因子が関与し得ることを示す。MSの家族歴を有する人およびMSの高い発生率の地域に居住する人は、この疾患の高い危険性を有する。
【0019】
インターフェロン−ベータ、グラチラマー酢酸塩およびミトキサントロンなどの薬物投与は、再発寛解型MSの人における発作の頻度および重篤度を低減することができ、将来の能力障害を低減または遅延し得る。インターフェロン−ベータおよびミトキサントロンは、二次性進行型MSの進行も減速させ得る。
【0020】
インターフェロン−ベータまたはグラチラマー酢酸塩での治療は、再発寛解型MSと診断されるとすぐに開始すべきである。ほとんどの専門家が、今では、神経系への永久的な損傷は、早い時期に、さらには症状がまだ非常に軽い間に生じ得ることに同意している。早期の治療は、この損傷のいくらかを防ぐまたは遅延させる助けとなり得る。
【0021】
しかし、インターフェロンベータ治療は、いくつかの有害事象を伴う。最も頻繁な有害事象は、インフルエンザ様症状である:体温上昇、体調不良、疲労、頭痛、筋肉痛、痙攣、めまい、毛髪菲薄化およびうつ。注射部位での紅斑、疼痛および硬結も頻繁に観察される。インターフェロン療法は、免疫抑制を引き起こし、通常と異なる方式で現れるいくつかの感染をもたらし得る。
【0022】
炎症を低減し、発作を短くするために、再発中にコルチコステロイド類を投与することもできる。コルチコステロイド類の有力な効果は、コルチゾールの過剰生成をもたらす副腎の機能不全であるクッシング病によく似る重篤な副作用をもたらし得る。可能性のある副作用のリストは長く、食欲増進および体重増加;胸部、顔、上背および胃での脂肪の沈着;腫脹および浮腫をもたらす水および塩の貯留;高血圧;糖尿病;黒および青色の斑点;創傷治癒の減速;骨粗鬆症;白内障;ざ瘡;筋力低下;皮膚菲薄化;易感染性の増加;胃潰瘍;発汗増加;気分変動;うつなどの心理的問題;ならびに副腎抑制を含む。
【0023】
2004年に、FDAは、MSの再発形態の患者の治療のためにモノクローナル抗体(ナタリズマブ、Tysabri(登録商標)、Biogen Idec Inc.、Cambridge、Massachusetts、USAおよびElan Pharmaceuticals,Inc.、Dublin、Ireland)の使用を承認した(FDA News P04−107、2004年11月23日)。
【0024】
全般的に耐容性がよいが、ナタリズマブは、場合によっては重篤な有害事象と関連する。抗体療法は一般的に費用がかかり、なかでも効力に関して改善が必要とされている。
【0025】
現在、他の状態において既に使用されているいくつかのものを含めて、多くの他のモノクローナル抗体がMSについて調査されている。これらは、オクレリズマブ(Genentech/Hoffmann−La Roche)、ダクリズマブ(Biogen Idec,Inc.)、アレムツズマブ(Campath(登録商標)、MabCampath(登録商標)、Bayer Schering,BTG、Genzyme,Millenium)およびリツキシマブ(Rituxan(登録商標)、MabThera(登録商標)、Genentech、Hoffmann−La Roche、Biogen Idec Inc.)を含む。
【0026】
WO2006/065751は、少なくとも1つのそのヌクレオチドにおいて熱不安定性置換を含むCpGオリゴヌクレオチドプロドラッグに関する。このような熱不安定性CpGオリゴヌクレオチドプロドラッグを用いる治療方法が記載されている。サイトカイン、特にインターフェロン、例えばインターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータまたはインターフェロン−ガンマの誘導が開示されている。
【0027】
WO2006/027776は、miRNA構成要素を有するAChE関連生物学的経路を調節するための方法であって、AChE関連生物学的経路を、miRNAの機能を調節できる作用物質に晒すことにより、AChE関連生物学的経路を調節することを含む方法に関する。上記の作用物質は、改変ポリヌクレオチド配列を含む。
【0028】
WO2007/095316は、全般的に、免疫賦活性核酸、その組成物および該免疫賦活性核酸を用いる方法に関する。特に、この発明は、パリンドローム含有免疫賦活性核酸および疾患の治療におけるこれらの核酸の使用に関する。
【0029】
WO2004/016805は、免疫応答を刺激するために有用な軟性または半軟性CpG免疫賦活性オリゴヌクレオチドのクラスを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】WO2006/065751
【特許文献2】WO2006/027776
【特許文献3】WO2007/095316
【特許文献4】WO2004/016805
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
まとめると、MSのための現存する療法を改善することが、効力の改善ならびに費用および有害事象の低減のために必要とされている。MSとの戦いのための新しい治療ストラテジーを開発することも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明者らは、MSを治療または緩和するための現存するアプローチが、治療の結果、治療の費用および有害事象の発生の点で不十分であることを理解した。本発明者らは、MSの治療および/または緩和のために有用な新規化合物を同定し、患者への効力が改善され有害事象が低減された治療方法を開発することに着手した。本発明の根底をなす他の課題、および本発明に付随する利点は、本明細書に参照により組み込まれる発明の説明、実施の形態および特許請求の範囲を熟読することにより、当業者に明らかになる。
【0033】
本発明者らは、驚くべきことに、特定のオリゴヌクレオチド配列が、特定の細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するために有効であることを見出した。本発明および実施形態は、本明細書に参照により組み込まれる同封の特許請求の範囲に記載されるとおりである。
【0034】
以下の詳細な説明において、以下の添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の化合物で刺激し、24時間培養したラット脾細胞におけるIFN−アルファの標準化した相対的mRNA発現を示す棒グラフである。値は、培地のみで刺激した試料の平均RQ値に対して標準化した。データは、6個の脾臓に由来する脾細胞の平均±SDとして示す。
【図2】本発明の化合物で刺激し、24時間培養したラット脾細胞におけるIFN−ベータの標準化した相対的mRNA発現を示す棒グラフである。値は、培地のみで刺激した試料の平均RQ値に対して標準化した。データは、6個の脾臓に由来する脾細胞の平均±SDとして示す。
【図3】本発明の化合物で刺激し、24時間培養したラット脾細胞におけるIL−10の標準化した相対的mRNA発現を示す棒グラフである。値は、培地のみで刺激した試料の平均RQ値に対して標準化した。データは、6個の脾臓に由来する脾細胞の平均±SDとして示す。
【図4】DAラット(n=3)の脾細胞におけるCD49dの発現(MFI)を示す棒グラフである。脾細胞(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(10μM)。本発明の化合物は、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD3発現細胞において発現されるCD49dを下方制御することができた。
【図5】DAラットのPBMCにおけるCD49dの発現(MFI)を示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(10μM)。本発明の化合物は、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD3発現細胞において発現されるCD49dを下方制御することができた。
【図6】オリゴヌクレオチドおよび媒体(PBS)の治療効果を示す、DAラット(雌)におけるMOG誘導EAEの平均臨床スコアを示すグラフである。各群の12匹のラットを全て、不完全フロイントアジュバント(IFA)中のラットMOGで第0日に免疫した。IDX9052、IDX9054、IDX0980および媒体を、1回目の発作のピークの前(第9日および第15日)、および1回目の発作のピーク中(第20日)に投与した。150μgの薬物を、100μlの総容量でs.c.投与した。
【図7】DAラットにおけるMOG誘導EAEの発生率を示すグラフである。疾患の重篤度は、IDX0980およびIDX9054で処置したラットにおいて、PBSおよびIDX9052処置群と比較して減少した。
【図8】オリゴヌクレオチドおよび媒体(PBS)の治療効果を示す、DAラットにおけるMOG−EAEの平均臨床スコアを示すグラフである。各群の16匹のラットを全て、不完全フロイントアジュバント(IFA)中のラットMOGで第0日に免疫した。IDX9054および媒体を、1回目の発作のピークの前(第9日および第15日)、および1回目の発作のピーク中(第20日)に投与した。150μgの薬物を、100μlの総容量でs.c.にて、および40μlの総容量でi.n.にて投与した。PBS処置群は、i.n.のみで処置した。
【図9】DAラットにおけるMOG−EAEの死亡率を示すグラフである。IDX0980およびIDX9054処置群の両方において、PBSおよびIDX9052処置群と比較して減少した死亡率。ラットは、疾患により死亡したか、または倫理規定に従って屠殺した。データは、第25日および第35日の両方で示す。
【図10】RRMS患者(n=9)から単離したCD3陽性細胞上のCD49dの発現を示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。オリゴヌクレオチドは、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD3陽性T細胞におけるCD49d発現を下方制御することができた。エラーバーはSEMを示し、ノンパラメトリックT検定であるウィルコクソンの符号付き順位和検定により分析した*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【図11】RRMS患者から単離したCD3陽性細胞上のCXCR3(CD183)の発現を示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。本発明の化合物は、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD3陽性T細胞上でのCXCR3発現を下方制御することができた。
【図12】RRMS患者から単離したCD19陽性細胞上のCXCR3(CD183)の発現を示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。オリゴヌクレオチドは、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD19陽性細胞上でのCXCR3発現を下方制御することができた。
【図13】RRMS患者から単離したCD14陽性細胞上のCXCR3(CD183)の発現を示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。オリゴヌクレオチドは、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD14陽性細胞上でのCXCR3発現を下方制御することができた。
【図14】RRMS患者から単離したCD14陽性細胞上のCCR5(CD195)の発現を示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。オリゴヌクレオチドは、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD14陽性細胞上でのCCR5発現を下方制御することができた。
【図15a】RRMS患者から単離したCD14陽性細胞上のCCR2(CD192)の発現を、それぞれMFI(A)または%(B)で示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。オリゴヌクレオチドは、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD14陽性細胞上でのCCR2発現を下方制御することができた。
【図15b】RRMS患者から単離したCD14陽性細胞上のCCR2(CD192)の発現を、それぞれMFI(A)または%(B)で示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。オリゴヌクレオチドは、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD14陽性細胞上でのCCR2発現を下方制御することができた。
【図16a】MCP−1およびRANTESへの細胞の遊走を示すグラフである。2名のRRMS患者の0.5×106(A)または0.250×106(B)のPBMCを、本発明の化合物IDX9045、IDX9054、IDX0980(1、10および25μM)と48時間インキュベート、または未処置のままにした。細胞を、次いで、MCP−1およびRANTESへの遊走を分析するために、QCM遊走アッセイにおいて用いた。両方の実験は、未処置の細胞と比較して、本発明の化合物で処置した細胞の遊走の低減を示した。
【図16b】MCP−1およびRANTESへの細胞の遊走を示すグラフである。2名のRRMS患者の0.5×106(A)または0.250×106(B)のPBMCを、本発明の化合物IDX9045、IDX9054、IDX0980(1、10および25μM)と48時間インキュベート、または未処置のままにした。細胞を、次いで、MCP−1およびRANTESへの遊走を分析するために、QCM遊走アッセイにおいて用いた。両方の実験は、未処置の細胞と比較して、本発明の化合物で処置した細胞の遊走の低減を示した。
【図17】RRMS患者(n=6〜11)の上清中のVEGFの発現を示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。オリゴヌクレオチドは、CBAにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、刺激細胞の上清中のVEGFを下方制御することができた。エラーバーはSEMを示し、ノンパラメトリックT検定であるウィルコクソンの符号付き順位和検定により分析した*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【図18】RRMS患者から単離したPBMCにおけるIFN−ベータの誘導を示すグラフである。異なるRRMS患者(n=6)のPBMC(2×106/ml)を、3つの異なる濃度(1、10および25μM)のオリゴヌクレオチドで刺激した。IFN−ベータ生成を48時間のインキュベーションの後に、IFN−ベータELISAキットを用いて分析した。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の記載は、本発明を行うために現在考えられる最良の形態のものである。この記載は、限定する意味で捉えられるためではなく、本発明の全般的な原理を記載する目的のためにのみなされる。本発明の範囲は、特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
【0037】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、記載される特定の化合物または記載される方法の進行ステップに限定されないことが理解される。なぜなら、そのような化合物および方法は変動し得るからである。本明細書で用いられる術語は、特定の実施形態を記載することのみを目的とし、限定することを意図しないことも理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないと明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば「配列(a sequence)」との言及は、複数のそのような配列を含み、その他同様である。
【0038】
さらに、用語「約」は、適切な場合、与えられた値の+/−2%、好ましくは数値の+/−5%および最も好ましくは+/−10%の偏差を示すために用いられる。
【0039】
「中枢神経系への自己攻撃性細胞の流入」という表現において用いられる場合の用語「流入」は、中枢神経系における自己攻撃性細胞の蓄積を意味することを意図し、単核細胞、特にT細胞、B細胞および単球の遊走、接着および移動のステップを含む。
【0040】
本発明により、特定の新規ヌクレオチド、すなわち配列番号1〜8のいずれか1つに記載の単離オリゴヌクレオチド配列が利用可能になる。配列番号、内部参照番号および配列を相関させる表1を参照されたい。
【0041】
【表1】
【0042】
上記の配列番号1〜8の配列は、本発明者らにより設計され、本発明者らが知る限りでは、以前に知られていない。配列番号10は、医薬的な使用が知られているが(以下を参照されたい)、本発明者らが知る限りでは、MSの治療における使用について以前に知られていない。
【0043】
配列番号9(IDX0150)は米国特許第6,498,147号から知られており、炎症性腸疾患の治療について第II相臨床試験において試験が成功した(Kappaproct(登録商標)、Index Pharmaceutical AB、Solna、Sweden)。配列番号10(IDX0980)は、ヒトにおける強い免疫調節オリゴヌクレオチドとして知られているので、これを当初は用いた(Kerkmannら、2005;Wikstromら、2007)。
【0044】
本発明者らにより、配列番号1〜8より選択される単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチドが利用可能になる。
【0045】
一実施形態によると、このようなオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つのヌクレオチドは、リン酸主鎖修飾を有する。好ましくは、上記のリン酸主鎖修飾は、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾である。
【0046】
本発明者らにより、配列番号1〜8のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物も利用可能になる。上記の医薬組成物は、好ましくは、生理食塩水、リポソーム、界面活性剤、粘膜付着性化合物、酵素阻害剤、胆汁酸塩、吸収促進剤、シクロデキストリンまたはそれらの組合せから選択される薬理学的に適合可能でありかつ生理的に許容され得る賦形剤または担体をさらに含む。
【0047】
本発明の別の実施形態は、多発性硬化症の治療および/または緩和のための医薬組成物の製造のための、配列番号1〜8のいずれか1つに記載の単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチドの使用である。
【0048】
別の実施形態は、多発性硬化症、特に再発寛解型多発性硬化症の治療および/または緩和のための医薬組成物の製造のための、配列番号9[IDX0150]または配列番号10[IDX0980]に記載の単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチドの使用である。
【0049】
いずれの特定の理論に結び付けられることも望まないが、本発明者らは、本発明の化合物の効果が少なくとも部分的に、少なくとも1つの細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するそれらの能力により説明できると考えている。よって、本発明の一実施形態は、配列番号1〜8または9〜10に記載のオリゴヌクレオチドの、少なくとも1つの細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量での投与を含む。
【0050】
オリゴヌクレオチドおよびそれらの使用の方法は、上記のオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への単核細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される中枢神経系の炎症性疾患の治療または緩和にも全般的に適用することができると考えられる。
【0051】
好ましくは、上記の少なくとも1つの細胞表面マーカーは、CD49d、CXCR3(CD183)、CCR2(CD192)およびCCR5(CD195)から選択される。一実施形態によると、上記のオリゴヌクレオチドは、配列番号1[IDX9045]、配列番号2[IDX9054];配列番号7[IDX9058];配列番号3[IDX9038]から選択される。好ましくは、上記のオリゴヌクレオチドは、配列番号1[IDX9045]である。別の実施形態によると、上記の少なくとも1つの細胞表面マーカーはCD49dであり、オリゴヌクレオチドは配列番号3[IDX9038]または配列番号7[IDX9058]から選択される。
【0052】
本発明者らは、しかし、これもまた特定の理論に結び付けられることを望まないが、この効果が少なくとも部分的に、VEGFの生成を低減することによる中枢神経系への自己攻撃性細胞の流入の阻害または低減により説明できるとも考えている。
【0053】
よって、本発明の別の実施形態によると、オリゴヌクレオチドは、配列番号1[IDX9045]および配列番号10[IDX0980]から選択される。
【0054】
本発明により、多発性硬化症の治療および/または緩和の方法であって、オリゴヌクレオチドが、特定の細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される方法も利用可能になる。
【0055】
好ましくは、配列番号1〜8、9および10のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物が患者に投与される。
【0056】
好ましくは、投与経路は、粘膜、皮下、筋肉内、静脈内および腹腔内投与から選択される。好ましくは、粘膜投与は、経鼻、口腔、胃、眼、直腸、泌尿生殖器および膣内投与から選択される。
【0057】
上記の方法において、細胞表面マーカーは、CD49d、CXCR3(CD183)、CCR2(CD192)およびCCR5(CD195)の少なくとも1つであり、オリゴヌクレオチドは、配列番号1[IDX9045]、配列番号2[IDX9054];配列番号7[IDX9058];配列番号3[IDX9038]から選択される。
【0058】
好ましい実施形態によると、細胞表面マーカーはCD49dであり、オリゴヌクレオチドは配列番号3[IDX9038]または配列番号7[IDX9058]から選択される。
【0059】
多発性硬化症の治療および/または緩和の方法の別の実施形態によると、上記のオリゴヌクレオチドは、VEGFの生成を低減することにより中枢神経系への自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される。この実施形態において、オリゴヌクレオチドは、好ましくは、配列番号1[IDX9045]および配列番号10[IDX0980]から選択される。
【0060】
一実施形態によると、オリゴヌクレオチドは、体重1kgあたり約1〜約2000μg、好ましくは体重1kgあたり約1〜約1000μgの量で投与される。最も好ましくは、オリゴヌクレオチドは、体重1kgあたり約1〜500μgの量で投与される。
【0061】
本発明による方法において、投与経路は、粘膜、皮下、筋肉内、静脈内および腹腔内投与から選択される。この方法の実施形態によると、粘膜投与は、経鼻、口腔、胃、眼、直腸、泌尿生殖器および膣内投与から選択される。
【0062】
経鼻投与は、本発明による方法の一実施形態を構成する。経鼻投与のために利用可能ないくつかの方法およびデバイスがある;局所または全身のいずれかの作用を有する液体および粉末の両方の製剤の単回または複数回投与。適切なデバイスまたは投与技術を用いて、CNSへの到達のために嗅球領域を標的にすることが可能である。本発明は、オリゴヌクレオチドを鼻粘膜へ投与するための特定の方法またはデバイスに限定されない。初期の動物研究は、ピペットによる単純な注入が満足に作用することを示したが、ヒトの使用のためには、信頼できる単回または複数回用量の投与のためのデバイスが好ましい。
【0063】
本発明の別の実施形態によると、オリゴヌクレオチドは、直腸注入により結腸粘膜に、例えば適切な緩衝液に懸濁されたオリゴヌクレオチドを含む水性浣腸剤の形態で投与される。
【0064】
本発明の別の実施形態によると、オリゴヌクレオチドは、肺または気道の粘膜に、適切な緩衝液に懸濁されたオリゴヌクレオチドを含むエアロゾルの吸入により、またはこれもまた適切な緩衝液に懸濁されたオリゴヌクレオチドを含む洗浄を行うことにより投与される。
【0065】
本発明のさらに別の実施形態によると、オリゴヌクレオチドは、尿道、膣のような泌尿生殖器道の粘膜に、適切な媒体に懸濁されたオリゴヌクレオチドを含む溶液、緩衝液、ゲル、軟膏、パスタなどを適用することにより投与される。
【0066】
特定の実施形態は、T細胞上の細胞表面マーカーであるCD49dに対する抗体であるTysabriの投与とともに用いるための本発明によるオリゴヌクレオチドの使用を含む。本発明によるオリゴヌクレオチドがCD49dを下方制御できることが示され、このことは、血液脳関門を通るT細胞の移動を低減し得る。よって、本発明者らにより、オリゴヌクレオチド化合物を抗CD49d抗体と一緒に用いることを含む組合せ療法が利用可能になる。このことは、抗体消費を低減することができ、これにより、上記の抗体療法に付随する費用、副作用および危険性を低減すると考えられる。よって、この実施形態において、上記の化合物は、抗体が対象とする特定の細胞表面分子の下方制御を可能にするために、抗体の投与の十分に前に投与される。
【0067】
当業者は、MSの治療へのいくつかのアプローチがあることをよく理解している。当然ながら、新しいアプローチは常に開発されており、本発明によるオリゴヌクレオチド、それらの使用および治療方法は、将来の治療と組み合わせても有用であると考えられる。本発明者らは、現在、本発明のオリゴヌクレオチド、それらの使用および治療方法が、MSのための独立型の療法として有用であると考えている。しかし、本発明のオリゴヌクレオチドが、現存するまたは将来の抗MS治療と組み合わせて有用であることは排除できない。
【0068】
オリゴヌクレオチドは、治療有効用量で投与される。「治療有効用量」の定義は、疾患および治療の状況に依存し、「治療有効用量」は、単独または他の治療との組合せで患者の状態の測定可能な改善をもたらす用量である。当業者は、経験的に、または過度の負担なく行われる実験室での実験に基づいて、治療有効用量を決定できる。治療する医師も、その人の経験に基づいて、そして疾患の性質および重篤度ならびに患者の状態を考慮して適切な用量を決定できる。
【0069】
別の実施形態は、約12、約24時間単位で分けられた2回または3回以上の別々の用量でのオリゴヌクレオチドの投与である。
【0070】
本発明は、実験部に示され、添付の図面に図示されるin vivoおよびin vitroでのデータにより支持されるように、MSの治療に有用である。
【0071】
本発明の実施形態は、多くの利点を有する。今までのところ、本発明者らにより定義される用量でのオリゴヌクレオチドの投与は、顕著な副作用を惹起していない。さらに、粘膜投与は、容易で迅速かつ痛みを伴わず、そして驚くべきことに全身効果をもたらす。この効果は、単独で、または現存するおよび将来の抗MS治療との組合せで、この疾患および関連する疾患と戦うための有望なアプローチを提案すると考えられる。
【実施例1】
【0072】
ラット脾細胞に対するオリゴヌクレオチドの影響
本発明者らは、MSの治療および/または緩和のために有益であると考えられる候補化合物を見出して確認することに着手した。これらの研究において用いた化合物は、オリゴデオキシヌクレオチドに基づく。特定のオリゴヌクレオチドを、in vitroおよびin vivo研究においてそれらの有益な効果について試験する前に、本発明者らが、オリゴヌクレオチドがラットにおいて免疫調節効果を有するかを試験することを可能にするアッセイを開発した。この目的のために、本発明者らは、ラット脾細胞に基づくアッセイを用い、ここでは、脾細胞を選択された本発明の化合物とともに特定の時間インキュベートした。インキュベーションの後に、いくつかの免疫学的に関連するマーカーについてmRNA発現を分析し(IFN−アルファ、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、IL−6、IL−10、TNF−アルファ、VEGF−A、CCL−2、CCL−3、CCL−4、CCL−5、CXCL−1、CXCL−2、CXCL−10およびTGF−ベータ1)、これを、ラットにおいて免疫調節効果を示す化合物を同定するための基準とし、さらなるラット研究において用いられる化合物の選択を可能にした。
【0073】
材料および方法
オリゴデオキシヌクレオチド:本研究において、6個の異なるオリゴヌクレオチドを、ラット由来脾細胞を用いる刺激実験のために用いた。全てのオリゴヌクレオチドを、Biomers.net(Ulm、Germany)により合成した。全てのオリゴヌクレオチドは、到着の際に、一連の異なる希釈度に滅菌水で希釈した。光学密度(OD)A260/280を、それぞれの希釈度の少なくとも5つ以上の試料で、分光光度計(SmartSpec(商標)3000、Biorad、Hercules、CA)を用いて決定した。全ての希釈度について、全ての読み取り値の平均濃度を、ストックの濃度を決定するために算出した。これらのストック溶液を全て、−20℃にて貯蔵した。異なる作業溶液を実験で用いた:1μMおよび10μMは、オリゴヌクレオチドストック溶液を滅菌水(Invitrogen、Carlsbad、CA)でさらに希釈することにより調製した。融解/凍結サイクルの反復は最小限にして、化合物の分解を制限した。
【0074】
PCRプライマー:遺伝子特異的プライマーを、Applied Biosystems Primer Expressソフトウェア(表2;Foster City、CA)を用いることにより設計した。混入ゲノムDNAの増幅/検出は、プライマーの1つをエキソン/イントロン境界を覆って構築することにより回避した。プライマーオリゴヌクレオチドは、MWG Biotech(Ebersberg、Germany)に注文した。
【0075】
ラット脾細胞調製:雌のDAラットに由来する6個の脾臓を本研究で用いた。脾臓はプールせずに、個別に扱って、変動性の程度を評価した。細胞懸濁物を、滅菌条件下で、70μmのナイロン細胞ストレーナー(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ、USA)を用いることにより調製した。次いで、細胞を完全RPMI1640(5%熱不活化FCS(Invitrogen)、2mM L−グルタミン(Sigma−Aldrich)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Invitrogen)を含有するRPMI1640中で1200rpmにて7〜10分間、4℃にて2回洗浄した。上清をデカントし、細胞を1mlの赤血球溶解緩衝液(Sigma−Aldrich)に再懸濁し、さらに2分間、室温にてインキュベートした。別の5mlの完全培地を加えた後に、上記のようにして遠心分離を行った。上清をデカントした後に、ペレットを完全培地中に再懸濁し、細胞数を、0.4%トリパンブルー色素排除(Sigma−Aldrich)で、Nikon Eclipse TE2000−S顕微鏡(Nikon、Tokyo、Japan)を用いて決定した。
【0076】
In vitro刺激:細胞を、96ウェルV底プレートに、完全RPMI1640培地中に、ウェルあたり5×105細胞に相当する10×106細胞/mlの濃度で播種した。細胞を播種した直後に、RPMI1640培地で希釈したオリゴヌクレオチドを、加えたオリゴヌクレオチドの最終濃度がそれぞれ1μMおよび10μMに到達するように加えた。インキュベーションを2連で行った。細胞を、空気中5%CO2を用いる湿潤細胞培養インキュベータ(Thermo Scientific、Waltham、MA)中で37℃にて24時間インキュベートした。インキュベーション期間の後に、細胞懸濁物をプールし、1mlの氷冷PBSに加え、その後、1200rpmにて10分間、4℃にて洗浄した。最後に、上清を除去し、その後、細胞ペレットを1%のβ−メルカプトエタノールを加えた350μlのRLT緩衝液中に溶かして溶解した。溶解細胞懸濁物を、さらに処理するまで−20℃にて凍結した。
【0077】
RT−PCR:全RNAを抽出した(Qiagen全RNA抽出キット、Qiagen、Hilden、Germany)。混入ゲノムDNAの増幅/検出を回避するために、試料を27kUのDNアーゼとともに37℃にて30分間インキュベートした。RNAを40μlのRNアーゼフリー水に溶出させた後に、5μlのRNA溶出物を用いて、分光光度計によりRNA濃度を決定した。逆転写を、0.15〜1μgの全RNA、ランダムヘキサマー(0.1μg;Invitrogen)およびsuperscript逆転写酵素(200U;Invitrogen)を用いて、製造業者のガイドラインに従って行った。得られたcDNAを滅菌脱イオン水で希釈して、cDNAストック溶液を作製した。増幅を、2ステップPCRプロトコル(95℃で10分、その後、95℃で15秒および60℃で1分を40サイクル)でSYBR−GreenI(Applied Biosystems)を用いてApplied Biosystems 7500リアルタイムPCRシステムを用いて行った。予備的実験において、プライマー対は、通常のPCRプロトコルを用いて試験した。PCR生成物は、アガロースゲルに泳動させ、全ての場合において、予測されたサイズの単一バンドに限定された。用いた全てのプライマーを表2に列挙する。
【0078】
mRNAレベルの半定量的な評価を、別々のチューブにおいてmRNAおよびハウスキーピング遺伝子であるアクチン−ガンマの増幅を用いるΔΔCt法を用いて行った。全ての試料を2連で行った。リアルタイムPCRデータ(個別のΔCt値およびRQ値)を算出し、7500リアルタイムPCRシステムSDSソフトウェアを用いて分析した。個別の値を、次いで、Excelにエクスポートした。それぞれの特定の遺伝子について、2連の試料の平均RQ値を、培地のみで刺激した試料の平均RQ値に対して標準化した。6個の個別の脾細胞集団の平均値および標準偏差を、適宜に算出した。
【0079】
【表2】
【0080】
結果
最初に、本研究の焦点は、MSにおいてそれらの保護効果が示唆されていたことから、サイトカインIFN−アルファ、IFN−ベータおよびIL−10であったので、これらの因子のみについてのグラフを含める。
【0081】
IFN−アルファ(図1)およびIFN−ベータmRNA(図2)はともに、いくつかのオリゴヌクレオチドにより誘導され、特にIDX9052、IDX9054、IDX9060およびIDX0980は、これらの遺伝子のmRNAの高いレベルを誘導した。IFN−アルファ/ベータを誘導できなかったオリゴヌクレオチドは、IDX9022およびIDX9045を含む。
【0082】
1型インターフェロンとは対照的に、強力なTh−2関連サイトカインであるIL−10は、はるかに低いレベルで誘導された。図3に示すように最高レベルのIL−10を誘導したオリゴヌクレオチドには、IDX9060およびIDX0980が含まれる。値は、培地のみで刺激した試料の平均RQ値に対して標準化した。データは、6個の脾臓に由来する脾細胞の平均±SDとして示す。
【0083】
IFN−ガンマ、CXCL−10およびVEGF−Aのパターンは、I型インターフェロンのパターンと比較してほぼ同様であり、いくつかのオリゴヌクレオチドにより中程度〜強く誘導された(データは示さず)。ほとんどのヌクレオチドが、限定された量だけのIL−6 mRNAを誘導し、試験した化合物間の差は比較的小さかった(データは示さず)。
【0084】
TNF−アルファおよびTGF−ベータのmRNAは、試験したオリゴヌクレオチドのいずれによってもほとんど影響されなかった。なぜなら、これらの分子はいずれも、その発現を著しく変化させることができなかったからである。しかし、興味深いことに、IDX9022およびIDX9045が、TGF−ベータを著しく下方制御したことが観察された(データは示さず)。
【0085】
残りのケモカインについてのデータをまとめようとすると、2つの群があることが明らかになる:オリゴヌクレオチドによる処置に対して応答する遺伝子からなる1群と、オリゴヌクレオチドとの培養後に応答しないか、または下方制御さえ示さない遺伝子からなる1群。最初の群にはMIP−1アルファ、MCP1およびCCL−5が属し、CCL−4、MIP−2およびCINCは後者の群に属する。いずれの群にも、遺伝子間の明確なオーバーラップは観察できなかった。
【0086】
結論として、本発明者らの候補薬物は、ラット細胞を刺激することができ、それにより、いくつかの免疫学的に関連するマーカー遺伝子の発現レベルを変更でさせることが明確になった。これらの結果により、ラットEAEモデルを含むさらなる研究において特定のオリゴヌクレオチドに焦点を当てるための基礎が形成された。
【実施例2】
【0087】
in vitroでのラット細胞におけるCD49d発現の低減
本発明者らは、本発明の化合物がCD49d(内皮細胞上の受容体と相互作用するリンパ球表面上の重要な分子)を低減し、それによりCNSへの細胞の移動、すなわちMS病理における重要なステップを低減できるかどうかを調べることに着手した。本発明者らは、ラットの脾細胞または血液を、本発明の化合物による刺激の際のCD49dの発現を研究するために用いた。
【0088】
材料および方法
DAラットの脾細胞(n=3)またはPBMC(n=1)を37℃にて、500μlの容量の完全RPMI培地(10%FCS、1%PenStrep、2mM L−グルタミン、10mM HEPESおよび1mMピルビン酸ナトリウムを含有)中で、48ウェルプレートにて2×106細胞/mlの濃度でインキュベートし、10μMのIDX9022、IDX9058、IDX9038、IDX0150、IDX9054およびIDX9045で処理した。
【0089】
48時間後に、200μlの細胞懸濁物を96ウェルプレート中でスピンダウンし、100μlの2%FCS(PBS中)に再懸濁し、蛍光色素複合抗CD3および抗CD49d抗体(Becton Dickinson、San Jose、California)と30分間、4℃にてインキュベートした。次いで、細胞を純粋PBS中で2回洗浄し、その後、表面抗原発現分析のためのFACSArrayバイオアナライザー(BD)を用いるFACSにより分析した。
【0090】
結果
3匹のプールしたDAラットの脾細胞は、本発明の化合物による処理の際にCD49dの下方制御を示した(図4)。この下方制御は、インキュベーションの48時間後に、IDX0150、IDX9045およびIDX9054で最も著しかった。1匹のDAラットのPBMCは、本発明の化合物による処理の際にCD49dの下方制御を示した(図5)。この下方制御は、インキュベーションの48時間後に、IDX0150およびIDX9038で最も著しかった。
【0091】
CD49d発現の減少は、本発明の化合物で処理した脾細胞およびPBMCにおいて観察された。本発明の化合物のこれらの特性は、移動のプロセス、およびそれによりCNSへの細胞の流入を、独立型または抗体療法との組合せ治療のいずれかとして低減することができた。
【実施例3】
【0092】
動物研究
本発明者らは、本発明者らの仮説を確認し、異なる候補化合物を試験するために、動物研究を依頼した。2つの研究を、DAラットにおけるMOG誘導実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を用いて行った。
【0093】
DAラットにおけるMOG誘導EAEは、ヒトにおけるその相対物である多発性硬化症と多くの特徴を共有する高い再現性を有するよく特徴づけられた実験モデルであり、それ自体で、治療の試験のための適切なモデルである(Goldら、2006、Frieseら、2006)。IFA中のMOGでの免疫化の後に、炎症性免疫細胞が脊髄および脳に浸潤することにより引き起こされるミエリンの進行性の変性により、動物は、尾部から、後肢を通って前肢まで次第に麻痺し始める。病理は、動物が部分的に回復し、次いで増大した疾患が再発する慢性再発型であり、単球およびT細胞(1型サイトカイン)ならびにB細胞(抗体)活性の両方の結果である。
【0094】
広く認められた再発/寛解型実験モデルであるため、ラットをげっ歯類の種として選択した。選択された系統は、CNS炎症に対する感受性が記録されている。一般的に、免疫されたラットの50〜80%が、用量設定された免疫化の後に再発疾患を発症する。残りのものは、遅発型慢性疾患を発症するか、または1回目の発作中に死亡する。
【0095】
試験動物:B&K、Sollentuna、SwedenのDAラット(雌、180〜250g、10〜14週齢)を用いた。動物は、試験開始前の少なくとも7日間、馴化させた。この期間中に、動物を毎日観察して、それらが研究のために適格であることを確認した。不健康の徴候、何らかの異常または極端な体重範囲を示す動物は、研究の前に交換した。
【0096】
群は、柵内および柵の間で、研究全体の環境の影響が等しくなるように分布させた。試験動物は、耳のタグにより識別した。ケージのカードは実験の番号および群コードのみを示した。
【0097】
飼育:動物は、死亡または単離により減少しない限りは1ケージあたり4匹で飼育した。ケージは、ステンレス鋼の蓋を有する通常のmakrolonプラスチックケージであった。ポプラチップを床材として用いた。ろ過した再循環していない空気を供給した。温度は20〜23℃の範囲に、相対湿度は40〜60%の範囲に保持した。温度および相対湿度はともに、毎日監視した。照明条件は、12時間の明期および12時間の暗期であった(07.00〜19.00)。
【0098】
食餌:試験動物には、通常のげっ歯類の食餌を自由に与えた(Lactamin、SwedenからのR36(照射))。配達の前に、それぞれのバッチの食餌を、種々の栄養要素ならびに化学物質および微生物の混入物について供給業者が分析した。いずれのバッチの食餌も使用のために与える前に、供給業者の分析証明書を精査して確認した。
【0099】
この食餌は、抗生物質または他の化学療法剤もしくは予防薬が添加されていなかった。試験動物には、給水管を備えたポリエチレンまたはポリカーボネートパイプを通して水を自由に与えた(都市飲用水)。
【0100】
免疫化手順:ラットを、尾部のつけ根にフロイントの不完全アジュバント(Sigma、St.Louis、USA)中の30μgのラットMOG pH3(5.2mg/mlストック)で構成されるエマルジョン0.1mlをi.d.注射することにより免疫した(第0日)。この手順は、およそ第10日から開始して、尾部から生じて前肢まで次第に達する進行性の麻痺の出現をもたらすことが知られている。
【0101】
処置期間:試験化合物および対照は、1回目の発作のピークの前に2回(すなわち第11日および第15日)と、第20日に3回目の処置(1回目の発作のピーク中)にて投与した。
【0102】
試験物質:第1の研究において、2つの本発明のオリゴヌクレオチドであるIDX9052(配列番号5)およびIDX9054(配列番号2)を、公的に利用可能であるオリゴヌクレオチドIDX0980(配列番号10)と一緒に用いた。第2の研究において、1つの本発明のオリゴヌクレオチド;IDX9054(配列番号2)を用いた。試験物質の配列は、表1に示す。
【0103】
第1の研究の試験化合物(IDX9052、IDX9054およびIDX0980)を、100μlの総容量で首にs.c.投与した。この用量を3回投与した。第2の研究の試験化合物(IDX9054)を、100μlの総容量で首にs.c.投与するか、または40μlの総容量で鼻にi.n投与した。薬物は、s.cまたはi.n.のいずれかで3回投与した。両方の研究において、PBSを媒体および対照(ブランク)の両方として用いた。投与した用量は、全ての研究において1回の免疫化あたり150μgであった。
【0104】
研究の設計:第1の研究は、それぞれ12匹の動物の4群を含んだ。全ての群を、免疫化プロトコルに従って、IFA中のラットMOGで免疫した。全ての化合物は3回免疫した。
群1:対照群:s.c.経路による媒体単独PBS
群2:s.c.経路による150μgのIDX9052の投与
群3:s.c.経路による150μgのIDX9054の投与
群4:s.c.経路による150μgのIDX0980の投与。
【0105】
1群あたりの動物の数は、観察される薬理学的影響の正確な評価を可能にする最小限の数であった。
【0106】
第2の研究は、それぞれ16匹の動物の3群を含んだ。全ての群を、免疫化プロトコルに従って、IFA中のラットMOGで免疫した。全ての化合物は3回免疫した。
群1:s.c.経路による150μgのIDX9054の投与
群2:対照群:i.n.経路による媒体単独PBS
群3:i.n.経路による150μgのIDX9054の投与
【0107】
臨床観察:動物を、処置に対する反応または健康障害の証拠について1日あたり少なくとも2回視覚的に検査した。第5日から開始して、動物を、以下のような臨床スコアにより麻痺の存在について個別に調べた:
0=疾患の徴候なし
1=尾部脱力または尾部麻痺
2=後肢不全対麻痺または不全片麻痺
3=後肢麻痺または片麻痺
4=完全麻痺(四肢対麻痺(tetraparaplegy))
5=瀕死状態または死亡
【0108】
運動失調を日常的に評価した。疾患の寛解は、少なくとも2日連続での疾患スコアの改善と定義した。再発は、少なくとも2日間持続する、少なくとも2ポイントの臨床欠陥の増加と定義した。
【0109】
臨床スコアの結果を、各群内での平均(±SEM)スコアとして表した。試験物質の効果を、媒体処置対照群のものと比較した。群同士間の臨床スコア値の差を、クラスカル−ウォリス検定と、有意な場合は、その後のペアワイズウィルコクソン検定とにより、各測定時間にて分析した。
【0110】
動物の観察は、静かな部屋で行った。臨床徴候は、処置の各群において毎日、処置を知らされていない技術者による盲検法で監視した。動物の体重も毎日監視した。
【0111】
疼痛、苦痛または瀕死の状態にあると考えられる動物を、職員の獣医師または権限が付与された者により調べ、必要であれば、過度の疼痛または苦痛を最小限にするために人道的に屠殺した。
【0112】
結果
動物の状態:第1の研究において、全ての動物は、毎日評価したところ有害な行動的または身体的影響がなく、媒体またはIDX9052、IDX9054およびIDX0980でのs.c.処置に耐容性であった。第2の研究において、全ての動物は、毎日評価したところ有害な行動的または身体的影響がなく、媒体またはIDX9054のi.nおよびs.c.処置に耐容性であったが、PBS i.n対照群の1匹の動物だけは処置の直後に死亡し、この事象は正常であるとは考えなかった。同じ群の1匹の動物は関節炎を発症し、倫理指針に従って乱切した。
【0113】
疾患の最初に、通常の付随する体重の減少があり、これは全ての研究においてその後継続した。群同士間での様々な疾患発生率および死亡率のために、群同士間での差の統計解析は有益でない。しかし、IDX9054処置群およびIDX0980処置群はともに、第1の研究においてPBS対照群よりも体重の減少がより少なく、第2の研究において、IDX9054 i.nおよびs.c処置群は、PBS i.n対照群よりも体重の減少がより少なかった。
【0114】
臨床疾患経過:第1の研究において、全てのラットの群を、疾患の臨床徴候について毎日評価した。ラットは、第10日からEAEを発症し始めた(図6)。IDX0980処置群の4匹の動物およびIDX9054処置群の3匹の動物は疾患を発症しなかったが、それ以外では全ての他の群は第16日までに100%の臨床疾患発生率に到達した(図7)。IDX0980処置群と対照群との発生率の間に有意差があった(p=0.0285)。全ての動物が、ここに示す分析に含まれる。第2の研究において、ラットは、第11日目からEAEを発症し始めた(図8)。s.cおよびi.nの両方のIDX9054処置群の5匹の動物は疾患を発症しなかったが、PBS i.n群は第26日までに100%の臨床疾患発生率に到達した。i.n対照群と比較して、IDX9054 s.c処置群とi.n処置群との発生率の間に有意差があった(p=0.02)。
【0115】
疾患の経過は、時間とともに次第に悪化する再発寛解型の経過で進展した。群のうちの全ての動物が全く同時に疾患を発症したのではなく、よってそれらの疾患の経過は、互いに完全に一致しなかったので、示された平均値の標準偏差は様々である(示さず)。
【0116】
第1の研究において、IDX9054処置群においてEAEの発症における有意差があり(p=0.0318)、対照群と比較してわずかに遅延していた。群同士間で平均疾患重篤度、累積スコアまたは平均最大スコアのいずれにも統計学的有意差はなかったが、IDX0980処置群およびIDX9054処置群の両方が、他の2つの群よりも低減された体重減少、低減された疾患重篤度および低い死亡率を有する明確な傾向があった(図9)。第2の研究において、群同士間でEAEの発症、平均疾患重篤度、累積スコアまたは平均最大スコアのいずれにも統計学的有意差はなかったが、i.n−およびs.c−IDX9054処置群の両方が、対照PBS i.n群よりも低減された体重減少、低減された疾患重篤度および低い死亡率を有する明確な傾向があった。i.n−IDX9054処置群についての累積スコアおよび平均最大スコアは、s.c−IDX9054処置群よりもわずかにより低かった。
【0117】
このMOG−EAEモデルは重度疾患モデルであり、全ての示した分析においてその後それぞれ5または4の最大スコアに割り当てられたラットは、死亡したかまたは各群における倫理規定により屠殺された。死亡率は全般的に高かったが、モデルにおいて通常生じる自然な変動を反映する。
【0118】
全ての臨床データのまとめを表3〜4に示し、統計解析のまとめをそれぞれの表の下に示す。
【0119】
【表3】
【0120】
第1の前臨床研究についてのP値
IDX0980対PBS
累積スコアp=0.2128
最大スコアp=0.2444
疾患持続期間p=0.3008
発症の日p=0.2873
発生率 p=0.0285*
【0121】
IDX9054対PBS
累積スコアp=0.3548
最大スコアp=0.4490
疾患持続期間p=0.1018
発症日p=0.0318*
発生率p=0.0641
【0122】
IDX9052対PBS
累積スコアp=0.6858
最大スコアp=0.6806
疾患持続期間p=0.3907
発症日p=0.6123
発生率p=−(ともに100%)
【0123】
【表4】
【0124】
第2の前臨床研究についてのP値
IDX9054 i.n対PBS i.n
累積スコアp=0.20
最大スコアp=0.055
疾患持続期間p=0.29
発症日p=0.17
発生率p=0.02*
【0125】
IDX9054 s.c対PBS i.n
累積スコアp=0.21
最大スコアp=0.12
疾患持続期間p=0.24
発症日p=0.16
発生率p=0.02*
【0126】
DAラットにおけるMOG誘導EAEは、高い再現性を有するよく特徴づけられた実験モデルである。これは、ヒトにおけるその相対物である多発性硬化症と多くの特徴を共有し、それ自体で、治療の試験のための適切なモデルである(Goldら、2006、Frieseら、2006)。
【0127】
IFA中のMOGでの免疫化の後に、炎症性免疫細胞が脊髄および脳に浸潤することにより引き起こされるミエリンの進行性の変性により、動物は、尾部から、後肢を通して前肢まで次第に麻痺し始める。病理は、動物が部分的に回復し、次いで増大した疾患が再発する慢性再発型であり、単球およびT細胞(1型サイトカイン)ならびにB細胞(抗体)活性の両方の結果である。
【0128】
試験物質は、in vitroでの免疫賦活活性が証明されたオリゴヌクレオチドである。これらの特定の免疫賦活プロファイルはオリゴヌクレオチドの配列により異なり、このことにより、治療対象の進行中の炎症性応答に対するin vivoでのそれらの影響の比較分析が行われる。2回のEAE動物研究の目的は、IDX9052、IDX9054およびIDX0980の影響を、DAラットにおける再発/寛解型MOG誘導EAEのモデルにおいて調べることであった。
【0129】
全ての試験オリゴヌクレオチド、または媒体単独での処置は、受容ラットにおいて有害な身体的または行動的影響を引き起こさなかった。処置は、まず疾患を正常に発症させるが、その後、進行中の炎症誘発性カスケードを抑えるために、疾患の最初の発作の直前に開始した。追加の投与は、疾患の増大および臨床疾患期の開始と同時になるように合わせた。EAEのこの最初の期間からの回復は、IDX0980処置群およびIDX9054処置群においてともにより著しく、その後の臨床発作の発症は、IDX0980処置群ではあまり著しくなかった。全ての測定したパラメータは、媒体処置群と比較して、IDX0980処置群およびIDX9054処置群の両方で低減した。
【0130】
配列番号5(IDX9052)は、ラット脾細胞におけるIFNアルファ/ベータの強力な誘導因子であるが、EAEラットモデルにおいて疾患の重篤度の低減を示さなかった。よって、IDX9054およびIDX0980での処置の際のEAEラットモデルにおいて観察された疾患の重篤度の低減は、IFNベータ生成のみとは相関し得ない。さらに、配列番号2(IDX9054)を用いて得られた結果は、この化合物が、DAラットにおけるMOG−EAEにおいてs.c.およびi.n.の両方で治療効果を有することを示す。
【実施例4】
【0131】
患者試料におけるin vitroでのCD49dの低減
本発明の化合物がCD49d発現を低減できるかどうかを調べるために、本発明者らは、RRMS患者から単離されたPBMCを、候補化合物での刺激の際のCD49dの発現を研究するために用いた。
【0132】
材料および方法
RRMS患者(n=9)のPBMCを、BD CPT vacutainer(Becton Dickinson)から得た。細胞を直ちに37℃にて500μlの容量の完全RPMI培地(10%FCS、1%PenStrep、2mM L−グルタミン、10mM HEPESおよび1mMピルビン酸ナトリウムを含有)中で、48ウェルプレートにて、2×106細胞/mlの濃度でインキュベートし、1、10および25μMのそれぞれのオリゴヌクレオチド化合物で処理した(表1)。オリゴヌクレオチドとインキュベートした細胞を48時間後に採集し、PBSで洗浄し、2%FCSを補ったPBSに再懸濁した。細胞を、異なる2組の蛍光色素複合抗体混合物;(1)抗CD3 APC、抗CD49d PEおよび(2)抗CD19 PE Cy7、抗CD49d APCで4℃にて30分間染色した。抗体は、Becton Dickinsonから購入した。染色の後に、細胞をPBSで洗浄し、その後、FACSArrayバイオアナライザー(Becton Dickinson)を用いてFACSにより分析した。
【0133】
結果
RRMS患者から単離したPBMCは、オリゴヌクレオチドでの刺激の際に用量依存的にT細胞におけるCD49dの下方制御を示した(図10)。
【0134】
細胞におけるCD49d発現の減少が、本発明の化合物で処理した、RRMS患者から単離したPBMCにおいて観察された。本発明の化合物のこれらの特性は、CNSへの細胞の移動およびそれによる流入を減少することができた。
【実施例5】
【0135】
患者試料におけるin vitroでのケモカイン受容体の低減
CNSにおける血液単核細胞(例えばT細胞、B細胞、単球)の流入は、MSの病理において重要な役割を果たす。よって、流入を遮断または低減することは、MSの治療に有益である。CCR5(CD195)、CCR2(CD192)およびCXCR3(CD183)のようなケモカイン受容体は、単核細胞において発現され、炎症部位への細胞の動員に関与する。本発明の化合物が上記のケモカイン受容体の発現を低減できるかどうかを調べるために、本発明者らは、RRMS患者から単離したPBMCを、本発明の化合物を用いて刺激した。
【0136】
材料および方法
RRMS患者(n=3)のPBMCを、BD CPT vacutainerを用いて単離した。細胞を直ちに37℃にて500μlの容量の完全RPMI培地(10%FCS、1%PenStrep、2mM L−グルタミン、10mM HEPESおよび1mMピルビン酸ナトリウムを含有)中で、48ウェルプレートにて、2×106細胞/mlの濃度でインキュベートし、1、10および25μMのそれぞれの本発明の化合物で処理した。オリゴヌクレオチドとインキュベートした細胞を48時間後に採集し、PBSで洗浄し、2%FCSを補ったPBSに再懸濁した。細胞を、異なる3組の蛍光色素複合抗体混合物;(1)抗CD3 PE−Cy−7、抗CCR5 APC−Cy7、抗CCR2 Alexa Fluor 647、抗CXCR3−PE、(2)抗CD19 PE−Cy−7、抗CCR5 APC−Cy7、抗CCR2 Alexa Fluor 647、抗CXCR3 PEおよび(3)抗CD14 PE−Cy−7、抗CCR5 APC−Cy7、抗CCR2 Alexa Fluor 647、抗CXCR3 PEで4℃にて30分間染色した。抗体は、Becton Dickinsonから購入した。PBSで洗浄した後に、細胞を、FACSarrayフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて分析した。
【0137】
結果
RRMS患者(n=3)から単離したPBMCは、本発明の化合物での刺激の後に、特にIDX9045によりT細胞(CD3陽性)におけるCXCR3の下方制御を示した(図11)。CCR5も、オリゴヌクレオチド処理の後に、特にIDX9022によりT細胞において下方制御された(データは示さず)。
【0138】
RRMS患者(n=3)から単離したPBMCは、CD19陽性細胞におけるCXCR3の下方制御を示した。この受容体の最も強力な下方制御効果を示したオリゴヌクレオチドは、IDX9038、IDX9054、IDX9058、IDX9045、IDX9004およびIDX0980であった(図12)。
【0139】
RRMS患者(n=3)から単離したPBMCは、CD14陽性細胞におけるCXCR3、CCR5およびCCR2の下方制御を示した。CXCR3、CCR5およびCCR2の最も強力な下方制御効果を示すオリゴヌクレオチドは、それぞれ図13、14ならびに15AおよびBに示す。
【0140】
T、Bおよび単球におけるケモカイン受容体(CCR5、CXCR3、CCR2)の発現の減少が、本発明の化合物で治療した、RRMS患者から単離したPBMCにおいて観察された。本発明の化合物のこれらの特性は、CNSに対するこれらの細胞の遊走の低減において重要な役割を果たすことができた。
【実施例6】
【0141】
RRMS患者から単離した白血球の走化性の低減
MCP−1およびRANTESは、炎症部位への血液単核細胞、特に単球、T細胞およびB細胞の動員のための強力なケモカインである。MCP−1およびRANTESに対する血液単核細胞の走化性は、それぞれCCR2およびCCR5受容体により主に媒介される。この研究の目的は、実施例5に示すような本発明の化合物によるCCR2およびCCR5の発現の減少が、単核細胞の遊走を実際に低減できることを示すことであった。
【0142】
材料および方法
血液単核細胞の走化性を、QCM(商標)比色走化性アッセイ(Millipore、Temecula、CA)を製造業者の使用説明に従って用いて調べた。手短に述べると、PBMCを、BD CPT vacutainerを用いてRRMS患者から単離し、実施例5に記載されるようにして1、10および25μMの本発明の化合物で処理した。48時間後に細胞を洗浄し、3μmのポアサイズを有する24ウェル細胞遊走プレートアセンブリの上部のインサートに移した(250μlの培地中に3×105細胞)。次いで、化学誘引物質MCP−1(10ng/mL)およびRANTES(10ng/mL)を含有する300μlの培地を、下部のチャンバに加えた。次いで、空気中5%CO2を用いる湿潤細胞培養インキュベータ(Thermo Scientific)中で37℃にて16時間、化学誘引物質に向かってフィルタを通って細胞が遊走できるようにした。その後、下部のチャンバの細胞、すなわち遊走した細胞を、細胞生存染料WST−1との1時間のインキュベーションと、その後のマイクロプレートリーダー(Tecan、Maennedorf、Switzerland)を用いる450nmでの吸光度の測定による定量により検出した。
【0143】
結果
本発明の化合物(IDX9045、IDX9054、IDX0980)で処置した、2名の異なるRRMS患者から単離したPBMCは、機能的遊走アッセイにおいて化学誘引物質に対して未処置の細胞よりも少ない遊走を示した(図16A〜B)。
【0144】
このことは、細胞遊走の低減が、受容体のより低い発現によることを示す。これらの結果はin vivoのシナリオも反映し、結果として中枢神経系への細胞の走化性の低下を導くという予測をする理由がある。
【実施例7】
【0145】
患者試料におけるin vitroでのVEGFの低減
MSにおける活発な病変は、血液脳関門(BBB)破壊を特徴とし、このことは、疾患の病理に血液透過性の変化が関与することを示唆する。MSの患者において、VEGFが血管透過性を誘導し、それによりCNSへの自己攻撃性細胞の流入を増加させることが報告されている(Proescholdt MAら、2002)。本発明の化合物がVEGF生成を低減できるかどうかを調べるために、本発明者らは、RRMS患者から単離されたPBMCを、本発明の化合物での刺激の際のVEGF生成を研究するために用いた。
【0146】
材料および方法
PBMCを、RRMS患者(n=6〜11)からBD CPT vacutainerを用いて単離した。細胞を直ちに37℃にて500μlの容量の完全RPMI培地中で、48ウェルプレートにて、2×106細胞/mlの濃度でインキュベートし、1、10および25μMのそれぞれの本発明の化合物で処理した。48時間後に、上清を、VEGFの存在について、細胞数測定ビーズアレイ(CBA、Becton Dickinson)を用いて分析した。
【0147】
結果
RRMS患者から単離したPBMCは、IDX9038、IDX9045、IDX9004およびIDX0980での刺激の後に、細胞上清中で著しいVEGF低減を示した(図17)が、IDX9022、IDX9058、IDX9054、IDX9060、IDX0150およびIDX9052は、細胞上清中のVEGFを低減しなかった(データは示さず)。
【0148】
VEGFの低減が、本発明の化合物で処理した細胞の細胞上清において観察された。本発明の化合物のこの特性は、BBBの血管透過性を低減し、それによりCNSへの免疫細胞の浸潤を妨げると考えられる。
【実施例8】
【0149】
患者試料におけるin vitroでのIFN−ベータの誘導
本発明者らは、RRMS患者の血液を用いて、IFN−ベータの誘導についてin vitroで異なる候補化合物を試験した。
【0150】
材料および方法
PBMCを、RRMS患者(n=6)からBD CPT vacutainerを用いて単離した。細胞を直ちに37℃にて500μlの容量の完全RPMI培地中で、48ウェルプレートにて、2×106細胞/mlの濃度でインキュベートし、1、10および25μMのそれぞれのオリゴヌクレオチド化合物で処理した。48時間後に、上清を、IFN−ベータ生成について、IFN−ベータELISAキット(Invitrogen)を用いて分析した。
【0151】
結果
RRMS患者から単離したPBMCは、IDX9058、IDX9045、IDX9004、IDX9054、IDX9060およびIDX0980で48時間後に刺激した後に、細胞上清中で著しいIFN−ベータ生成を示した(図18)。IDX9022、IDX9038およびIDX9052は、上清中で著しいIFN−ベータ生成を誘導しなかった(データは示さず)。IDX0150は、IFN−ベータ生成を全く示さなかった(データは示さず)。
【0152】
IFN−ベータ生成の増加が、本発明の化合物で処理した、RRMS患者から単離したPBMCの細胞上清において観察された。IFN−ベータ生成を惹起する本発明の化合物のこの特性は、RRMS療法において現在用いられているように、このサイトカインの既知の有益な効果により、より低い炎症に寄与し得る。
【0153】
全体として、本発明者らにより行われた実験の結果は、オリゴヌクレオチドが、中枢神経系への単核細胞の阻害または低減がCNSの炎症性疾患の治療のために有益であり得るin vivo状況において効果的であり得ることを示す。本発明の化合物のこの有益な効果は、少なくとも1つの細胞表面マーカーまたはVEGFの発現の下方制御により媒介することができる。
【0154】
本発明を、本発明者らが現在認識する最良の形態を構成するその好ましい実施形態に関して記載したが、当業者に明らかな種々の変更および改変を、本明細書に添付する特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を逸脱することなく行い得ることが理解される。
【0155】
(参照文献)
《1》
FDA News P04-107, November 23, 2004.
《2》
Friese, M A et al., The value of animal models for drug development in multiple sclerosis, Brain, 2006;129 (Pt 8):1940-52.
《3》
Gold et al., Understanding pathogenesis and therapy of multiple sclerosis via animal models: 70 years of merits and culprits in experimental autoimmune encephalomyelitis research, Brain, 2006;129 (Pt 8):1953-71.
《4》
Hafler, D A, Multiple sclerosis. J Clin Invest, 2004.
《5》
Kerkmann, M. et al., Spontaneous formation of nucleic acid-based nanoparticles is responsible for high interferon-alpha induction by CpG-A in plasmacytoid dendritic cells, J Biol Chem, 2005; 280(9):8086-93.
《6》
Wikstroem, F H et al., Structure-dependent modulation of alpha interferon production by porcine circovirus 2 oligodeoxyribonucleotide and CpG DNAs in porcine peripheral blood mononuclear cells., J Virol. 2007; 81(10):4919-27.
《7》
Proescholdt M A. et al, Vascular endothelial growth factor is expressed in multiple sclerosis plaques and can induce inflammatory lesions in experimental allergic encephalomyelitis rats., J Neuropathol Exp Neurol. 2002; 61(10):914-25
《8》
Trebst C, Ransohoff RM. Investigating chemokines and chemokine receptors in patients with multiple sclerosis: opportunities and challenges, Arch Neurol. 2001;58(12):1975-80.
《9》
Steinman L. A molecular trio in relapse and remission in multiple sclerosis, Nat Rev Immunol., 2009;9(6):440-7.
【技術分野】
【0001】
本発明は、それに限定されないが多発性硬化症などの中枢神経系(CNS)の炎症性疾患の治療および/または緩和に関し、この用途のために利用可能な化合物および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
細胞遊走は、免疫応答などのヒトの体内の多くのプロセスの中心であるが、慢性炎症の構成要素でもあり得る。CNSへの単核細胞の遊走は、CNSの炎症性疾患の病理の根底にある1つの因子であると考えられる。
【0003】
1つの例は多発性硬化症(MS)であり、これは、CNS、すなわち脳および脊髄に影響する自己免疫疾患である。MSは、脱力感、振戦および視力障害を特徴とする。他の症状は、不明瞭発語および運動障害であり、例えば患者は、足を引きずり、つまずき、頻繁に物を落とす。これらの症状は、軽度のままであるか、現れたり消えたりするか、または肢体不自由になることもある。しかし、これらは、年齢とともに進行的に悪化する傾向がある(Hafler、2004)。MSは、通常、男性よりも女性がかかりやすい。この疾患は、20歳〜40歳の年齢で最も一般的に開始するが、いずれの年齢にも発生する可能性がある。正確な原因は分かっていないが、MSは、神経細胞を取り囲む保護物質であるミエリン鞘の損傷に起因すると考えられる。これは進行性の疾患であり、損傷が時間とともに悪化することを意味する。炎症はミエリンを破壊し、多数の領域の瘢痕組織を残す(硬化症)。炎症は、体自体の免疫細胞が神経系を攻撃する場合に生じる。
【0004】
MSの病理における1つの重要なステップは、CNSへの細胞の遊走であり、ここでは、自己反応性T細胞およびB細胞が単球と一緒にCNSの炎症を媒介し、このことにより軸索の脱髄が引き起こされる。ケモカインおよびそれらの受容体は、CNSへのこれらの白血球の動員において主要な役割を演じると提案されている。つまり、ケモカイン受容体の減少は、CNSへの破壊性細胞の遊走を妨げるための効果的なストラテジーであり得る。MSの病理において記載されている重要なケモカイン受容体は、CCR5(RANTESおよびMIP−1アルファなどの走化性タンパク質の受容体)、CXCR3(IP−10およびMIGなどの走化性タンパク質の受容体)、およびCCR2(MCP1〜3などの走化性タンパク質の受容体)である(Trebst Cら、2009)。
【0005】
リンパ球をCNSの実質に侵入させることができる別のステップは、CD49d(最晩期抗原、T細胞およびB細胞において発現されるVLA−4)の、内皮細胞上のそれらの受容体への接着であり、それにより血液脳関門を通って移動する。CD49dの低減は、CNSにおける免疫細胞の移動および蓄積を低減させることができる(Steinman L、2009)。
【0006】
健常な個体において、免疫細胞は、CNS毛細血管および細静脈を通過してCNS組織に入ることができない。なぜなら、CNSの毛細血管壁は、それらが免疫細胞を通過させない非常に緊密に詰まった細胞を有するという点で、体の他の部分の血管壁とは異なるからである。CNS血管系のこの特別な特徴は、血液脳関門(BBB)と呼ばれる。血管内皮成長因子(VEGF)は、BBBの破壊を誘導し、これにより次いで、CNSの自己免疫疾患(例えばMS)の炎症性応答を憎悪させ得ると記載されている(Proescholdt MAら、2002)。VEGFの低減は、BBBの増加した血液透過性を妨げ、そのことによりCNS内への破壊性細胞の流入を低減するために効果的なストラテジーである。
【0007】
炎症は、神経インパルスを減速または遮断させ、MSの症状をもたらす。炎症の繰り返されるエピソードまたはフレアアップは、脳および脊髄のいずれの領域でも生じる可能性がある。
【0008】
それぞれの発作の位置および程度は様々であるので、症状は様々である。通常、数日、数週間またはさらには数カ月間持続するエピソードは、症状が低減している、または症状がない期間(寛解)と交互に起こる。繰り返し(再発)が一般的であるが、寛解期間がなく停止しないで進行することもある。
【0009】
MSを有すると診断された患者には、疾患の4つの臨床経過のうちの1つが予測でき、それらのそれぞれは、軽度、中程度または重度であり得る。
【0010】
1.再発寛解型
特徴:この型のMSの人は、はっきりしたフレアアップ(再発、発作、または憎悪とも呼ばれる)を経験する。これらは、神経機能の急性の悪化のエピソードである。これらの後に、疾患が進行しない部分的または完全な回復の期間(寛解)が続く。
【0011】
頻度:初期の診断時のMSの最も一般的な形態。患者のおよそ85%。
【0012】
2.一次性進行型
特徴:この型のMSの人は、明確な再発または寛解なく、発症からゆっくりであるがほぼ連続的な疾患の悪化を経験する。しかし、経時的な進行速度の変動、不定期的なプラトーおよび一時的なわずかな改善がある。
【0013】
頻度:比較的まれである。患者のおよそ10%。
【0014】
3.二次性進行型
特徴:この型のMSの人は、再発寛解型MSの初期期間と、その後の不定期的なフレアアップ、わずかな回復(寛解)またはプラトーを有する、または有さない着実に悪化する疾患経過を経験する。
【0015】
頻度:再発寛解型MSの人の50%が、「疾患修飾」薬の導入前に、初期の診断から10年以内にこの形態の疾患を発症した。これが治療により著しく遅延されるかどうかを証明するための長期データはまだ入手できていない。
【0016】
4.再発進行型
特徴:この型のMSの人は、発症から着実に悪化する疾患を経験するが、回復することがあるまたはない明確な急性再発(発作または憎悪)も有する。再発寛解型MSとは対照的に、再発と再発の間の期間は、継続的な疾患進行を特徴とする。
【0017】
頻度:比較的まれである。患者のおよそ5%。
【0018】
何が発作を引き起こすかについて、科学界での総意はない。MSの患者は、通常、健常な人よりも多数の免疫細胞を有し、このことが、免疫応答が役割を有し得ることを示唆する。最も一般的な理論は、ウイルスもしくは遺伝子欠陥、またはこれらの両方の組合せを示す。疾患への遺伝的なつながりもあるようである。MSは、他の地域よりも、北欧、米国北部、オーストラリア南部およびニュージーランドでより発症しやすい。地理学的研究は、環境因子が関与し得ることを示す。MSの家族歴を有する人およびMSの高い発生率の地域に居住する人は、この疾患の高い危険性を有する。
【0019】
インターフェロン−ベータ、グラチラマー酢酸塩およびミトキサントロンなどの薬物投与は、再発寛解型MSの人における発作の頻度および重篤度を低減することができ、将来の能力障害を低減または遅延し得る。インターフェロン−ベータおよびミトキサントロンは、二次性進行型MSの進行も減速させ得る。
【0020】
インターフェロン−ベータまたはグラチラマー酢酸塩での治療は、再発寛解型MSと診断されるとすぐに開始すべきである。ほとんどの専門家が、今では、神経系への永久的な損傷は、早い時期に、さらには症状がまだ非常に軽い間に生じ得ることに同意している。早期の治療は、この損傷のいくらかを防ぐまたは遅延させる助けとなり得る。
【0021】
しかし、インターフェロンベータ治療は、いくつかの有害事象を伴う。最も頻繁な有害事象は、インフルエンザ様症状である:体温上昇、体調不良、疲労、頭痛、筋肉痛、痙攣、めまい、毛髪菲薄化およびうつ。注射部位での紅斑、疼痛および硬結も頻繁に観察される。インターフェロン療法は、免疫抑制を引き起こし、通常と異なる方式で現れるいくつかの感染をもたらし得る。
【0022】
炎症を低減し、発作を短くするために、再発中にコルチコステロイド類を投与することもできる。コルチコステロイド類の有力な効果は、コルチゾールの過剰生成をもたらす副腎の機能不全であるクッシング病によく似る重篤な副作用をもたらし得る。可能性のある副作用のリストは長く、食欲増進および体重増加;胸部、顔、上背および胃での脂肪の沈着;腫脹および浮腫をもたらす水および塩の貯留;高血圧;糖尿病;黒および青色の斑点;創傷治癒の減速;骨粗鬆症;白内障;ざ瘡;筋力低下;皮膚菲薄化;易感染性の増加;胃潰瘍;発汗増加;気分変動;うつなどの心理的問題;ならびに副腎抑制を含む。
【0023】
2004年に、FDAは、MSの再発形態の患者の治療のためにモノクローナル抗体(ナタリズマブ、Tysabri(登録商標)、Biogen Idec Inc.、Cambridge、Massachusetts、USAおよびElan Pharmaceuticals,Inc.、Dublin、Ireland)の使用を承認した(FDA News P04−107、2004年11月23日)。
【0024】
全般的に耐容性がよいが、ナタリズマブは、場合によっては重篤な有害事象と関連する。抗体療法は一般的に費用がかかり、なかでも効力に関して改善が必要とされている。
【0025】
現在、他の状態において既に使用されているいくつかのものを含めて、多くの他のモノクローナル抗体がMSについて調査されている。これらは、オクレリズマブ(Genentech/Hoffmann−La Roche)、ダクリズマブ(Biogen Idec,Inc.)、アレムツズマブ(Campath(登録商標)、MabCampath(登録商標)、Bayer Schering,BTG、Genzyme,Millenium)およびリツキシマブ(Rituxan(登録商標)、MabThera(登録商標)、Genentech、Hoffmann−La Roche、Biogen Idec Inc.)を含む。
【0026】
WO2006/065751は、少なくとも1つのそのヌクレオチドにおいて熱不安定性置換を含むCpGオリゴヌクレオチドプロドラッグに関する。このような熱不安定性CpGオリゴヌクレオチドプロドラッグを用いる治療方法が記載されている。サイトカイン、特にインターフェロン、例えばインターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータまたはインターフェロン−ガンマの誘導が開示されている。
【0027】
WO2006/027776は、miRNA構成要素を有するAChE関連生物学的経路を調節するための方法であって、AChE関連生物学的経路を、miRNAの機能を調節できる作用物質に晒すことにより、AChE関連生物学的経路を調節することを含む方法に関する。上記の作用物質は、改変ポリヌクレオチド配列を含む。
【0028】
WO2007/095316は、全般的に、免疫賦活性核酸、その組成物および該免疫賦活性核酸を用いる方法に関する。特に、この発明は、パリンドローム含有免疫賦活性核酸および疾患の治療におけるこれらの核酸の使用に関する。
【0029】
WO2004/016805は、免疫応答を刺激するために有用な軟性または半軟性CpG免疫賦活性オリゴヌクレオチドのクラスを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】WO2006/065751
【特許文献2】WO2006/027776
【特許文献3】WO2007/095316
【特許文献4】WO2004/016805
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
まとめると、MSのための現存する療法を改善することが、効力の改善ならびに費用および有害事象の低減のために必要とされている。MSとの戦いのための新しい治療ストラテジーを開発することも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明者らは、MSを治療または緩和するための現存するアプローチが、治療の結果、治療の費用および有害事象の発生の点で不十分であることを理解した。本発明者らは、MSの治療および/または緩和のために有用な新規化合物を同定し、患者への効力が改善され有害事象が低減された治療方法を開発することに着手した。本発明の根底をなす他の課題、および本発明に付随する利点は、本明細書に参照により組み込まれる発明の説明、実施の形態および特許請求の範囲を熟読することにより、当業者に明らかになる。
【0033】
本発明者らは、驚くべきことに、特定のオリゴヌクレオチド配列が、特定の細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するために有効であることを見出した。本発明および実施形態は、本明細書に参照により組み込まれる同封の特許請求の範囲に記載されるとおりである。
【0034】
以下の詳細な説明において、以下の添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の化合物で刺激し、24時間培養したラット脾細胞におけるIFN−アルファの標準化した相対的mRNA発現を示す棒グラフである。値は、培地のみで刺激した試料の平均RQ値に対して標準化した。データは、6個の脾臓に由来する脾細胞の平均±SDとして示す。
【図2】本発明の化合物で刺激し、24時間培養したラット脾細胞におけるIFN−ベータの標準化した相対的mRNA発現を示す棒グラフである。値は、培地のみで刺激した試料の平均RQ値に対して標準化した。データは、6個の脾臓に由来する脾細胞の平均±SDとして示す。
【図3】本発明の化合物で刺激し、24時間培養したラット脾細胞におけるIL−10の標準化した相対的mRNA発現を示す棒グラフである。値は、培地のみで刺激した試料の平均RQ値に対して標準化した。データは、6個の脾臓に由来する脾細胞の平均±SDとして示す。
【図4】DAラット(n=3)の脾細胞におけるCD49dの発現(MFI)を示す棒グラフである。脾細胞(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(10μM)。本発明の化合物は、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD3発現細胞において発現されるCD49dを下方制御することができた。
【図5】DAラットのPBMCにおけるCD49dの発現(MFI)を示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(10μM)。本発明の化合物は、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD3発現細胞において発現されるCD49dを下方制御することができた。
【図6】オリゴヌクレオチドおよび媒体(PBS)の治療効果を示す、DAラット(雌)におけるMOG誘導EAEの平均臨床スコアを示すグラフである。各群の12匹のラットを全て、不完全フロイントアジュバント(IFA)中のラットMOGで第0日に免疫した。IDX9052、IDX9054、IDX0980および媒体を、1回目の発作のピークの前(第9日および第15日)、および1回目の発作のピーク中(第20日)に投与した。150μgの薬物を、100μlの総容量でs.c.投与した。
【図7】DAラットにおけるMOG誘導EAEの発生率を示すグラフである。疾患の重篤度は、IDX0980およびIDX9054で処置したラットにおいて、PBSおよびIDX9052処置群と比較して減少した。
【図8】オリゴヌクレオチドおよび媒体(PBS)の治療効果を示す、DAラットにおけるMOG−EAEの平均臨床スコアを示すグラフである。各群の16匹のラットを全て、不完全フロイントアジュバント(IFA)中のラットMOGで第0日に免疫した。IDX9054および媒体を、1回目の発作のピークの前(第9日および第15日)、および1回目の発作のピーク中(第20日)に投与した。150μgの薬物を、100μlの総容量でs.c.にて、および40μlの総容量でi.n.にて投与した。PBS処置群は、i.n.のみで処置した。
【図9】DAラットにおけるMOG−EAEの死亡率を示すグラフである。IDX0980およびIDX9054処置群の両方において、PBSおよびIDX9052処置群と比較して減少した死亡率。ラットは、疾患により死亡したか、または倫理規定に従って屠殺した。データは、第25日および第35日の両方で示す。
【図10】RRMS患者(n=9)から単離したCD3陽性細胞上のCD49dの発現を示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。オリゴヌクレオチドは、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD3陽性T細胞におけるCD49d発現を下方制御することができた。エラーバーはSEMを示し、ノンパラメトリックT検定であるウィルコクソンの符号付き順位和検定により分析した*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【図11】RRMS患者から単離したCD3陽性細胞上のCXCR3(CD183)の発現を示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。本発明の化合物は、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD3陽性T細胞上でのCXCR3発現を下方制御することができた。
【図12】RRMS患者から単離したCD19陽性細胞上のCXCR3(CD183)の発現を示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。オリゴヌクレオチドは、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD19陽性細胞上でのCXCR3発現を下方制御することができた。
【図13】RRMS患者から単離したCD14陽性細胞上のCXCR3(CD183)の発現を示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。オリゴヌクレオチドは、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD14陽性細胞上でのCXCR3発現を下方制御することができた。
【図14】RRMS患者から単離したCD14陽性細胞上のCCR5(CD195)の発現を示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。オリゴヌクレオチドは、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD14陽性細胞上でのCCR5発現を下方制御することができた。
【図15a】RRMS患者から単離したCD14陽性細胞上のCCR2(CD192)の発現を、それぞれMFI(A)または%(B)で示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。オリゴヌクレオチドは、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD14陽性細胞上でのCCR2発現を下方制御することができた。
【図15b】RRMS患者から単離したCD14陽性細胞上のCCR2(CD192)の発現を、それぞれMFI(A)または%(B)で示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。オリゴヌクレオチドは、FACSにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、CD14陽性細胞上でのCCR2発現を下方制御することができた。
【図16a】MCP−1およびRANTESへの細胞の遊走を示すグラフである。2名のRRMS患者の0.5×106(A)または0.250×106(B)のPBMCを、本発明の化合物IDX9045、IDX9054、IDX0980(1、10および25μM)と48時間インキュベート、または未処置のままにした。細胞を、次いで、MCP−1およびRANTESへの遊走を分析するために、QCM遊走アッセイにおいて用いた。両方の実験は、未処置の細胞と比較して、本発明の化合物で処置した細胞の遊走の低減を示した。
【図16b】MCP−1およびRANTESへの細胞の遊走を示すグラフである。2名のRRMS患者の0.5×106(A)または0.250×106(B)のPBMCを、本発明の化合物IDX9045、IDX9054、IDX0980(1、10および25μM)と48時間インキュベート、または未処置のままにした。細胞を、次いで、MCP−1およびRANTESへの遊走を分析するために、QCM遊走アッセイにおいて用いた。両方の実験は、未処置の細胞と比較して、本発明の化合物で処置した細胞の遊走の低減を示した。
【図17】RRMS患者(n=6〜11)の上清中のVEGFの発現を示すグラフである。PBMC(2×106/ml)を、未処置のままにするか、または薬物で刺激した(1、10および25μM)。オリゴヌクレオチドは、CBAにより分析されるように、48時間のインキュベーションの後に、刺激細胞の上清中のVEGFを下方制御することができた。エラーバーはSEMを示し、ノンパラメトリックT検定であるウィルコクソンの符号付き順位和検定により分析した*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【図18】RRMS患者から単離したPBMCにおけるIFN−ベータの誘導を示すグラフである。異なるRRMS患者(n=6)のPBMC(2×106/ml)を、3つの異なる濃度(1、10および25μM)のオリゴヌクレオチドで刺激した。IFN−ベータ生成を48時間のインキュベーションの後に、IFN−ベータELISAキットを用いて分析した。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の記載は、本発明を行うために現在考えられる最良の形態のものである。この記載は、限定する意味で捉えられるためではなく、本発明の全般的な原理を記載する目的のためにのみなされる。本発明の範囲は、特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
【0037】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、記載される特定の化合物または記載される方法の進行ステップに限定されないことが理解される。なぜなら、そのような化合物および方法は変動し得るからである。本明細書で用いられる術語は、特定の実施形態を記載することのみを目的とし、限定することを意図しないことも理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないと明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば「配列(a sequence)」との言及は、複数のそのような配列を含み、その他同様である。
【0038】
さらに、用語「約」は、適切な場合、与えられた値の+/−2%、好ましくは数値の+/−5%および最も好ましくは+/−10%の偏差を示すために用いられる。
【0039】
「中枢神経系への自己攻撃性細胞の流入」という表現において用いられる場合の用語「流入」は、中枢神経系における自己攻撃性細胞の蓄積を意味することを意図し、単核細胞、特にT細胞、B細胞および単球の遊走、接着および移動のステップを含む。
【0040】
本発明により、特定の新規ヌクレオチド、すなわち配列番号1〜8のいずれか1つに記載の単離オリゴヌクレオチド配列が利用可能になる。配列番号、内部参照番号および配列を相関させる表1を参照されたい。
【0041】
【表1】
【0042】
上記の配列番号1〜8の配列は、本発明者らにより設計され、本発明者らが知る限りでは、以前に知られていない。配列番号10は、医薬的な使用が知られているが(以下を参照されたい)、本発明者らが知る限りでは、MSの治療における使用について以前に知られていない。
【0043】
配列番号9(IDX0150)は米国特許第6,498,147号から知られており、炎症性腸疾患の治療について第II相臨床試験において試験が成功した(Kappaproct(登録商標)、Index Pharmaceutical AB、Solna、Sweden)。配列番号10(IDX0980)は、ヒトにおける強い免疫調節オリゴヌクレオチドとして知られているので、これを当初は用いた(Kerkmannら、2005;Wikstromら、2007)。
【0044】
本発明者らにより、配列番号1〜8より選択される単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチドが利用可能になる。
【0045】
一実施形態によると、このようなオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つのヌクレオチドは、リン酸主鎖修飾を有する。好ましくは、上記のリン酸主鎖修飾は、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾である。
【0046】
本発明者らにより、配列番号1〜8のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物も利用可能になる。上記の医薬組成物は、好ましくは、生理食塩水、リポソーム、界面活性剤、粘膜付着性化合物、酵素阻害剤、胆汁酸塩、吸収促進剤、シクロデキストリンまたはそれらの組合せから選択される薬理学的に適合可能でありかつ生理的に許容され得る賦形剤または担体をさらに含む。
【0047】
本発明の別の実施形態は、多発性硬化症の治療および/または緩和のための医薬組成物の製造のための、配列番号1〜8のいずれか1つに記載の単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチドの使用である。
【0048】
別の実施形態は、多発性硬化症、特に再発寛解型多発性硬化症の治療および/または緩和のための医薬組成物の製造のための、配列番号9[IDX0150]または配列番号10[IDX0980]に記載の単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチドの使用である。
【0049】
いずれの特定の理論に結び付けられることも望まないが、本発明者らは、本発明の化合物の効果が少なくとも部分的に、少なくとも1つの細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するそれらの能力により説明できると考えている。よって、本発明の一実施形態は、配列番号1〜8または9〜10に記載のオリゴヌクレオチドの、少なくとも1つの細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量での投与を含む。
【0050】
オリゴヌクレオチドおよびそれらの使用の方法は、上記のオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への単核細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される中枢神経系の炎症性疾患の治療または緩和にも全般的に適用することができると考えられる。
【0051】
好ましくは、上記の少なくとも1つの細胞表面マーカーは、CD49d、CXCR3(CD183)、CCR2(CD192)およびCCR5(CD195)から選択される。一実施形態によると、上記のオリゴヌクレオチドは、配列番号1[IDX9045]、配列番号2[IDX9054];配列番号7[IDX9058];配列番号3[IDX9038]から選択される。好ましくは、上記のオリゴヌクレオチドは、配列番号1[IDX9045]である。別の実施形態によると、上記の少なくとも1つの細胞表面マーカーはCD49dであり、オリゴヌクレオチドは配列番号3[IDX9038]または配列番号7[IDX9058]から選択される。
【0052】
本発明者らは、しかし、これもまた特定の理論に結び付けられることを望まないが、この効果が少なくとも部分的に、VEGFの生成を低減することによる中枢神経系への自己攻撃性細胞の流入の阻害または低減により説明できるとも考えている。
【0053】
よって、本発明の別の実施形態によると、オリゴヌクレオチドは、配列番号1[IDX9045]および配列番号10[IDX0980]から選択される。
【0054】
本発明により、多発性硬化症の治療および/または緩和の方法であって、オリゴヌクレオチドが、特定の細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される方法も利用可能になる。
【0055】
好ましくは、配列番号1〜8、9および10のいずれか1つに記載のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物が患者に投与される。
【0056】
好ましくは、投与経路は、粘膜、皮下、筋肉内、静脈内および腹腔内投与から選択される。好ましくは、粘膜投与は、経鼻、口腔、胃、眼、直腸、泌尿生殖器および膣内投与から選択される。
【0057】
上記の方法において、細胞表面マーカーは、CD49d、CXCR3(CD183)、CCR2(CD192)およびCCR5(CD195)の少なくとも1つであり、オリゴヌクレオチドは、配列番号1[IDX9045]、配列番号2[IDX9054];配列番号7[IDX9058];配列番号3[IDX9038]から選択される。
【0058】
好ましい実施形態によると、細胞表面マーカーはCD49dであり、オリゴヌクレオチドは配列番号3[IDX9038]または配列番号7[IDX9058]から選択される。
【0059】
多発性硬化症の治療および/または緩和の方法の別の実施形態によると、上記のオリゴヌクレオチドは、VEGFの生成を低減することにより中枢神経系への自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される。この実施形態において、オリゴヌクレオチドは、好ましくは、配列番号1[IDX9045]および配列番号10[IDX0980]から選択される。
【0060】
一実施形態によると、オリゴヌクレオチドは、体重1kgあたり約1〜約2000μg、好ましくは体重1kgあたり約1〜約1000μgの量で投与される。最も好ましくは、オリゴヌクレオチドは、体重1kgあたり約1〜500μgの量で投与される。
【0061】
本発明による方法において、投与経路は、粘膜、皮下、筋肉内、静脈内および腹腔内投与から選択される。この方法の実施形態によると、粘膜投与は、経鼻、口腔、胃、眼、直腸、泌尿生殖器および膣内投与から選択される。
【0062】
経鼻投与は、本発明による方法の一実施形態を構成する。経鼻投与のために利用可能ないくつかの方法およびデバイスがある;局所または全身のいずれかの作用を有する液体および粉末の両方の製剤の単回または複数回投与。適切なデバイスまたは投与技術を用いて、CNSへの到達のために嗅球領域を標的にすることが可能である。本発明は、オリゴヌクレオチドを鼻粘膜へ投与するための特定の方法またはデバイスに限定されない。初期の動物研究は、ピペットによる単純な注入が満足に作用することを示したが、ヒトの使用のためには、信頼できる単回または複数回用量の投与のためのデバイスが好ましい。
【0063】
本発明の別の実施形態によると、オリゴヌクレオチドは、直腸注入により結腸粘膜に、例えば適切な緩衝液に懸濁されたオリゴヌクレオチドを含む水性浣腸剤の形態で投与される。
【0064】
本発明の別の実施形態によると、オリゴヌクレオチドは、肺または気道の粘膜に、適切な緩衝液に懸濁されたオリゴヌクレオチドを含むエアロゾルの吸入により、またはこれもまた適切な緩衝液に懸濁されたオリゴヌクレオチドを含む洗浄を行うことにより投与される。
【0065】
本発明のさらに別の実施形態によると、オリゴヌクレオチドは、尿道、膣のような泌尿生殖器道の粘膜に、適切な媒体に懸濁されたオリゴヌクレオチドを含む溶液、緩衝液、ゲル、軟膏、パスタなどを適用することにより投与される。
【0066】
特定の実施形態は、T細胞上の細胞表面マーカーであるCD49dに対する抗体であるTysabriの投与とともに用いるための本発明によるオリゴヌクレオチドの使用を含む。本発明によるオリゴヌクレオチドがCD49dを下方制御できることが示され、このことは、血液脳関門を通るT細胞の移動を低減し得る。よって、本発明者らにより、オリゴヌクレオチド化合物を抗CD49d抗体と一緒に用いることを含む組合せ療法が利用可能になる。このことは、抗体消費を低減することができ、これにより、上記の抗体療法に付随する費用、副作用および危険性を低減すると考えられる。よって、この実施形態において、上記の化合物は、抗体が対象とする特定の細胞表面分子の下方制御を可能にするために、抗体の投与の十分に前に投与される。
【0067】
当業者は、MSの治療へのいくつかのアプローチがあることをよく理解している。当然ながら、新しいアプローチは常に開発されており、本発明によるオリゴヌクレオチド、それらの使用および治療方法は、将来の治療と組み合わせても有用であると考えられる。本発明者らは、現在、本発明のオリゴヌクレオチド、それらの使用および治療方法が、MSのための独立型の療法として有用であると考えている。しかし、本発明のオリゴヌクレオチドが、現存するまたは将来の抗MS治療と組み合わせて有用であることは排除できない。
【0068】
オリゴヌクレオチドは、治療有効用量で投与される。「治療有効用量」の定義は、疾患および治療の状況に依存し、「治療有効用量」は、単独または他の治療との組合せで患者の状態の測定可能な改善をもたらす用量である。当業者は、経験的に、または過度の負担なく行われる実験室での実験に基づいて、治療有効用量を決定できる。治療する医師も、その人の経験に基づいて、そして疾患の性質および重篤度ならびに患者の状態を考慮して適切な用量を決定できる。
【0069】
別の実施形態は、約12、約24時間単位で分けられた2回または3回以上の別々の用量でのオリゴヌクレオチドの投与である。
【0070】
本発明は、実験部に示され、添付の図面に図示されるin vivoおよびin vitroでのデータにより支持されるように、MSの治療に有用である。
【0071】
本発明の実施形態は、多くの利点を有する。今までのところ、本発明者らにより定義される用量でのオリゴヌクレオチドの投与は、顕著な副作用を惹起していない。さらに、粘膜投与は、容易で迅速かつ痛みを伴わず、そして驚くべきことに全身効果をもたらす。この効果は、単独で、または現存するおよび将来の抗MS治療との組合せで、この疾患および関連する疾患と戦うための有望なアプローチを提案すると考えられる。
【実施例1】
【0072】
ラット脾細胞に対するオリゴヌクレオチドの影響
本発明者らは、MSの治療および/または緩和のために有益であると考えられる候補化合物を見出して確認することに着手した。これらの研究において用いた化合物は、オリゴデオキシヌクレオチドに基づく。特定のオリゴヌクレオチドを、in vitroおよびin vivo研究においてそれらの有益な効果について試験する前に、本発明者らが、オリゴヌクレオチドがラットにおいて免疫調節効果を有するかを試験することを可能にするアッセイを開発した。この目的のために、本発明者らは、ラット脾細胞に基づくアッセイを用い、ここでは、脾細胞を選択された本発明の化合物とともに特定の時間インキュベートした。インキュベーションの後に、いくつかの免疫学的に関連するマーカーについてmRNA発現を分析し(IFN−アルファ、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、IL−6、IL−10、TNF−アルファ、VEGF−A、CCL−2、CCL−3、CCL−4、CCL−5、CXCL−1、CXCL−2、CXCL−10およびTGF−ベータ1)、これを、ラットにおいて免疫調節効果を示す化合物を同定するための基準とし、さらなるラット研究において用いられる化合物の選択を可能にした。
【0073】
材料および方法
オリゴデオキシヌクレオチド:本研究において、6個の異なるオリゴヌクレオチドを、ラット由来脾細胞を用いる刺激実験のために用いた。全てのオリゴヌクレオチドを、Biomers.net(Ulm、Germany)により合成した。全てのオリゴヌクレオチドは、到着の際に、一連の異なる希釈度に滅菌水で希釈した。光学密度(OD)A260/280を、それぞれの希釈度の少なくとも5つ以上の試料で、分光光度計(SmartSpec(商標)3000、Biorad、Hercules、CA)を用いて決定した。全ての希釈度について、全ての読み取り値の平均濃度を、ストックの濃度を決定するために算出した。これらのストック溶液を全て、−20℃にて貯蔵した。異なる作業溶液を実験で用いた:1μMおよび10μMは、オリゴヌクレオチドストック溶液を滅菌水(Invitrogen、Carlsbad、CA)でさらに希釈することにより調製した。融解/凍結サイクルの反復は最小限にして、化合物の分解を制限した。
【0074】
PCRプライマー:遺伝子特異的プライマーを、Applied Biosystems Primer Expressソフトウェア(表2;Foster City、CA)を用いることにより設計した。混入ゲノムDNAの増幅/検出は、プライマーの1つをエキソン/イントロン境界を覆って構築することにより回避した。プライマーオリゴヌクレオチドは、MWG Biotech(Ebersberg、Germany)に注文した。
【0075】
ラット脾細胞調製:雌のDAラットに由来する6個の脾臓を本研究で用いた。脾臓はプールせずに、個別に扱って、変動性の程度を評価した。細胞懸濁物を、滅菌条件下で、70μmのナイロン細胞ストレーナー(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ、USA)を用いることにより調製した。次いで、細胞を完全RPMI1640(5%熱不活化FCS(Invitrogen)、2mM L−グルタミン(Sigma−Aldrich)、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Invitrogen)を含有するRPMI1640中で1200rpmにて7〜10分間、4℃にて2回洗浄した。上清をデカントし、細胞を1mlの赤血球溶解緩衝液(Sigma−Aldrich)に再懸濁し、さらに2分間、室温にてインキュベートした。別の5mlの完全培地を加えた後に、上記のようにして遠心分離を行った。上清をデカントした後に、ペレットを完全培地中に再懸濁し、細胞数を、0.4%トリパンブルー色素排除(Sigma−Aldrich)で、Nikon Eclipse TE2000−S顕微鏡(Nikon、Tokyo、Japan)を用いて決定した。
【0076】
In vitro刺激:細胞を、96ウェルV底プレートに、完全RPMI1640培地中に、ウェルあたり5×105細胞に相当する10×106細胞/mlの濃度で播種した。細胞を播種した直後に、RPMI1640培地で希釈したオリゴヌクレオチドを、加えたオリゴヌクレオチドの最終濃度がそれぞれ1μMおよび10μMに到達するように加えた。インキュベーションを2連で行った。細胞を、空気中5%CO2を用いる湿潤細胞培養インキュベータ(Thermo Scientific、Waltham、MA)中で37℃にて24時間インキュベートした。インキュベーション期間の後に、細胞懸濁物をプールし、1mlの氷冷PBSに加え、その後、1200rpmにて10分間、4℃にて洗浄した。最後に、上清を除去し、その後、細胞ペレットを1%のβ−メルカプトエタノールを加えた350μlのRLT緩衝液中に溶かして溶解した。溶解細胞懸濁物を、さらに処理するまで−20℃にて凍結した。
【0077】
RT−PCR:全RNAを抽出した(Qiagen全RNA抽出キット、Qiagen、Hilden、Germany)。混入ゲノムDNAの増幅/検出を回避するために、試料を27kUのDNアーゼとともに37℃にて30分間インキュベートした。RNAを40μlのRNアーゼフリー水に溶出させた後に、5μlのRNA溶出物を用いて、分光光度計によりRNA濃度を決定した。逆転写を、0.15〜1μgの全RNA、ランダムヘキサマー(0.1μg;Invitrogen)およびsuperscript逆転写酵素(200U;Invitrogen)を用いて、製造業者のガイドラインに従って行った。得られたcDNAを滅菌脱イオン水で希釈して、cDNAストック溶液を作製した。増幅を、2ステップPCRプロトコル(95℃で10分、その後、95℃で15秒および60℃で1分を40サイクル)でSYBR−GreenI(Applied Biosystems)を用いてApplied Biosystems 7500リアルタイムPCRシステムを用いて行った。予備的実験において、プライマー対は、通常のPCRプロトコルを用いて試験した。PCR生成物は、アガロースゲルに泳動させ、全ての場合において、予測されたサイズの単一バンドに限定された。用いた全てのプライマーを表2に列挙する。
【0078】
mRNAレベルの半定量的な評価を、別々のチューブにおいてmRNAおよびハウスキーピング遺伝子であるアクチン−ガンマの増幅を用いるΔΔCt法を用いて行った。全ての試料を2連で行った。リアルタイムPCRデータ(個別のΔCt値およびRQ値)を算出し、7500リアルタイムPCRシステムSDSソフトウェアを用いて分析した。個別の値を、次いで、Excelにエクスポートした。それぞれの特定の遺伝子について、2連の試料の平均RQ値を、培地のみで刺激した試料の平均RQ値に対して標準化した。6個の個別の脾細胞集団の平均値および標準偏差を、適宜に算出した。
【0079】
【表2】
【0080】
結果
最初に、本研究の焦点は、MSにおいてそれらの保護効果が示唆されていたことから、サイトカインIFN−アルファ、IFN−ベータおよびIL−10であったので、これらの因子のみについてのグラフを含める。
【0081】
IFN−アルファ(図1)およびIFN−ベータmRNA(図2)はともに、いくつかのオリゴヌクレオチドにより誘導され、特にIDX9052、IDX9054、IDX9060およびIDX0980は、これらの遺伝子のmRNAの高いレベルを誘導した。IFN−アルファ/ベータを誘導できなかったオリゴヌクレオチドは、IDX9022およびIDX9045を含む。
【0082】
1型インターフェロンとは対照的に、強力なTh−2関連サイトカインであるIL−10は、はるかに低いレベルで誘導された。図3に示すように最高レベルのIL−10を誘導したオリゴヌクレオチドには、IDX9060およびIDX0980が含まれる。値は、培地のみで刺激した試料の平均RQ値に対して標準化した。データは、6個の脾臓に由来する脾細胞の平均±SDとして示す。
【0083】
IFN−ガンマ、CXCL−10およびVEGF−Aのパターンは、I型インターフェロンのパターンと比較してほぼ同様であり、いくつかのオリゴヌクレオチドにより中程度〜強く誘導された(データは示さず)。ほとんどのヌクレオチドが、限定された量だけのIL−6 mRNAを誘導し、試験した化合物間の差は比較的小さかった(データは示さず)。
【0084】
TNF−アルファおよびTGF−ベータのmRNAは、試験したオリゴヌクレオチドのいずれによってもほとんど影響されなかった。なぜなら、これらの分子はいずれも、その発現を著しく変化させることができなかったからである。しかし、興味深いことに、IDX9022およびIDX9045が、TGF−ベータを著しく下方制御したことが観察された(データは示さず)。
【0085】
残りのケモカインについてのデータをまとめようとすると、2つの群があることが明らかになる:オリゴヌクレオチドによる処置に対して応答する遺伝子からなる1群と、オリゴヌクレオチドとの培養後に応答しないか、または下方制御さえ示さない遺伝子からなる1群。最初の群にはMIP−1アルファ、MCP1およびCCL−5が属し、CCL−4、MIP−2およびCINCは後者の群に属する。いずれの群にも、遺伝子間の明確なオーバーラップは観察できなかった。
【0086】
結論として、本発明者らの候補薬物は、ラット細胞を刺激することができ、それにより、いくつかの免疫学的に関連するマーカー遺伝子の発現レベルを変更でさせることが明確になった。これらの結果により、ラットEAEモデルを含むさらなる研究において特定のオリゴヌクレオチドに焦点を当てるための基礎が形成された。
【実施例2】
【0087】
in vitroでのラット細胞におけるCD49d発現の低減
本発明者らは、本発明の化合物がCD49d(内皮細胞上の受容体と相互作用するリンパ球表面上の重要な分子)を低減し、それによりCNSへの細胞の移動、すなわちMS病理における重要なステップを低減できるかどうかを調べることに着手した。本発明者らは、ラットの脾細胞または血液を、本発明の化合物による刺激の際のCD49dの発現を研究するために用いた。
【0088】
材料および方法
DAラットの脾細胞(n=3)またはPBMC(n=1)を37℃にて、500μlの容量の完全RPMI培地(10%FCS、1%PenStrep、2mM L−グルタミン、10mM HEPESおよび1mMピルビン酸ナトリウムを含有)中で、48ウェルプレートにて2×106細胞/mlの濃度でインキュベートし、10μMのIDX9022、IDX9058、IDX9038、IDX0150、IDX9054およびIDX9045で処理した。
【0089】
48時間後に、200μlの細胞懸濁物を96ウェルプレート中でスピンダウンし、100μlの2%FCS(PBS中)に再懸濁し、蛍光色素複合抗CD3および抗CD49d抗体(Becton Dickinson、San Jose、California)と30分間、4℃にてインキュベートした。次いで、細胞を純粋PBS中で2回洗浄し、その後、表面抗原発現分析のためのFACSArrayバイオアナライザー(BD)を用いるFACSにより分析した。
【0090】
結果
3匹のプールしたDAラットの脾細胞は、本発明の化合物による処理の際にCD49dの下方制御を示した(図4)。この下方制御は、インキュベーションの48時間後に、IDX0150、IDX9045およびIDX9054で最も著しかった。1匹のDAラットのPBMCは、本発明の化合物による処理の際にCD49dの下方制御を示した(図5)。この下方制御は、インキュベーションの48時間後に、IDX0150およびIDX9038で最も著しかった。
【0091】
CD49d発現の減少は、本発明の化合物で処理した脾細胞およびPBMCにおいて観察された。本発明の化合物のこれらの特性は、移動のプロセス、およびそれによりCNSへの細胞の流入を、独立型または抗体療法との組合せ治療のいずれかとして低減することができた。
【実施例3】
【0092】
動物研究
本発明者らは、本発明者らの仮説を確認し、異なる候補化合物を試験するために、動物研究を依頼した。2つの研究を、DAラットにおけるMOG誘導実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を用いて行った。
【0093】
DAラットにおけるMOG誘導EAEは、ヒトにおけるその相対物である多発性硬化症と多くの特徴を共有する高い再現性を有するよく特徴づけられた実験モデルであり、それ自体で、治療の試験のための適切なモデルである(Goldら、2006、Frieseら、2006)。IFA中のMOGでの免疫化の後に、炎症性免疫細胞が脊髄および脳に浸潤することにより引き起こされるミエリンの進行性の変性により、動物は、尾部から、後肢を通って前肢まで次第に麻痺し始める。病理は、動物が部分的に回復し、次いで増大した疾患が再発する慢性再発型であり、単球およびT細胞(1型サイトカイン)ならびにB細胞(抗体)活性の両方の結果である。
【0094】
広く認められた再発/寛解型実験モデルであるため、ラットをげっ歯類の種として選択した。選択された系統は、CNS炎症に対する感受性が記録されている。一般的に、免疫されたラットの50〜80%が、用量設定された免疫化の後に再発疾患を発症する。残りのものは、遅発型慢性疾患を発症するか、または1回目の発作中に死亡する。
【0095】
試験動物:B&K、Sollentuna、SwedenのDAラット(雌、180〜250g、10〜14週齢)を用いた。動物は、試験開始前の少なくとも7日間、馴化させた。この期間中に、動物を毎日観察して、それらが研究のために適格であることを確認した。不健康の徴候、何らかの異常または極端な体重範囲を示す動物は、研究の前に交換した。
【0096】
群は、柵内および柵の間で、研究全体の環境の影響が等しくなるように分布させた。試験動物は、耳のタグにより識別した。ケージのカードは実験の番号および群コードのみを示した。
【0097】
飼育:動物は、死亡または単離により減少しない限りは1ケージあたり4匹で飼育した。ケージは、ステンレス鋼の蓋を有する通常のmakrolonプラスチックケージであった。ポプラチップを床材として用いた。ろ過した再循環していない空気を供給した。温度は20〜23℃の範囲に、相対湿度は40〜60%の範囲に保持した。温度および相対湿度はともに、毎日監視した。照明条件は、12時間の明期および12時間の暗期であった(07.00〜19.00)。
【0098】
食餌:試験動物には、通常のげっ歯類の食餌を自由に与えた(Lactamin、SwedenからのR36(照射))。配達の前に、それぞれのバッチの食餌を、種々の栄養要素ならびに化学物質および微生物の混入物について供給業者が分析した。いずれのバッチの食餌も使用のために与える前に、供給業者の分析証明書を精査して確認した。
【0099】
この食餌は、抗生物質または他の化学療法剤もしくは予防薬が添加されていなかった。試験動物には、給水管を備えたポリエチレンまたはポリカーボネートパイプを通して水を自由に与えた(都市飲用水)。
【0100】
免疫化手順:ラットを、尾部のつけ根にフロイントの不完全アジュバント(Sigma、St.Louis、USA)中の30μgのラットMOG pH3(5.2mg/mlストック)で構成されるエマルジョン0.1mlをi.d.注射することにより免疫した(第0日)。この手順は、およそ第10日から開始して、尾部から生じて前肢まで次第に達する進行性の麻痺の出現をもたらすことが知られている。
【0101】
処置期間:試験化合物および対照は、1回目の発作のピークの前に2回(すなわち第11日および第15日)と、第20日に3回目の処置(1回目の発作のピーク中)にて投与した。
【0102】
試験物質:第1の研究において、2つの本発明のオリゴヌクレオチドであるIDX9052(配列番号5)およびIDX9054(配列番号2)を、公的に利用可能であるオリゴヌクレオチドIDX0980(配列番号10)と一緒に用いた。第2の研究において、1つの本発明のオリゴヌクレオチド;IDX9054(配列番号2)を用いた。試験物質の配列は、表1に示す。
【0103】
第1の研究の試験化合物(IDX9052、IDX9054およびIDX0980)を、100μlの総容量で首にs.c.投与した。この用量を3回投与した。第2の研究の試験化合物(IDX9054)を、100μlの総容量で首にs.c.投与するか、または40μlの総容量で鼻にi.n投与した。薬物は、s.cまたはi.n.のいずれかで3回投与した。両方の研究において、PBSを媒体および対照(ブランク)の両方として用いた。投与した用量は、全ての研究において1回の免疫化あたり150μgであった。
【0104】
研究の設計:第1の研究は、それぞれ12匹の動物の4群を含んだ。全ての群を、免疫化プロトコルに従って、IFA中のラットMOGで免疫した。全ての化合物は3回免疫した。
群1:対照群:s.c.経路による媒体単独PBS
群2:s.c.経路による150μgのIDX9052の投与
群3:s.c.経路による150μgのIDX9054の投与
群4:s.c.経路による150μgのIDX0980の投与。
【0105】
1群あたりの動物の数は、観察される薬理学的影響の正確な評価を可能にする最小限の数であった。
【0106】
第2の研究は、それぞれ16匹の動物の3群を含んだ。全ての群を、免疫化プロトコルに従って、IFA中のラットMOGで免疫した。全ての化合物は3回免疫した。
群1:s.c.経路による150μgのIDX9054の投与
群2:対照群:i.n.経路による媒体単独PBS
群3:i.n.経路による150μgのIDX9054の投与
【0107】
臨床観察:動物を、処置に対する反応または健康障害の証拠について1日あたり少なくとも2回視覚的に検査した。第5日から開始して、動物を、以下のような臨床スコアにより麻痺の存在について個別に調べた:
0=疾患の徴候なし
1=尾部脱力または尾部麻痺
2=後肢不全対麻痺または不全片麻痺
3=後肢麻痺または片麻痺
4=完全麻痺(四肢対麻痺(tetraparaplegy))
5=瀕死状態または死亡
【0108】
運動失調を日常的に評価した。疾患の寛解は、少なくとも2日連続での疾患スコアの改善と定義した。再発は、少なくとも2日間持続する、少なくとも2ポイントの臨床欠陥の増加と定義した。
【0109】
臨床スコアの結果を、各群内での平均(±SEM)スコアとして表した。試験物質の効果を、媒体処置対照群のものと比較した。群同士間の臨床スコア値の差を、クラスカル−ウォリス検定と、有意な場合は、その後のペアワイズウィルコクソン検定とにより、各測定時間にて分析した。
【0110】
動物の観察は、静かな部屋で行った。臨床徴候は、処置の各群において毎日、処置を知らされていない技術者による盲検法で監視した。動物の体重も毎日監視した。
【0111】
疼痛、苦痛または瀕死の状態にあると考えられる動物を、職員の獣医師または権限が付与された者により調べ、必要であれば、過度の疼痛または苦痛を最小限にするために人道的に屠殺した。
【0112】
結果
動物の状態:第1の研究において、全ての動物は、毎日評価したところ有害な行動的または身体的影響がなく、媒体またはIDX9052、IDX9054およびIDX0980でのs.c.処置に耐容性であった。第2の研究において、全ての動物は、毎日評価したところ有害な行動的または身体的影響がなく、媒体またはIDX9054のi.nおよびs.c.処置に耐容性であったが、PBS i.n対照群の1匹の動物だけは処置の直後に死亡し、この事象は正常であるとは考えなかった。同じ群の1匹の動物は関節炎を発症し、倫理指針に従って乱切した。
【0113】
疾患の最初に、通常の付随する体重の減少があり、これは全ての研究においてその後継続した。群同士間での様々な疾患発生率および死亡率のために、群同士間での差の統計解析は有益でない。しかし、IDX9054処置群およびIDX0980処置群はともに、第1の研究においてPBS対照群よりも体重の減少がより少なく、第2の研究において、IDX9054 i.nおよびs.c処置群は、PBS i.n対照群よりも体重の減少がより少なかった。
【0114】
臨床疾患経過:第1の研究において、全てのラットの群を、疾患の臨床徴候について毎日評価した。ラットは、第10日からEAEを発症し始めた(図6)。IDX0980処置群の4匹の動物およびIDX9054処置群の3匹の動物は疾患を発症しなかったが、それ以外では全ての他の群は第16日までに100%の臨床疾患発生率に到達した(図7)。IDX0980処置群と対照群との発生率の間に有意差があった(p=0.0285)。全ての動物が、ここに示す分析に含まれる。第2の研究において、ラットは、第11日目からEAEを発症し始めた(図8)。s.cおよびi.nの両方のIDX9054処置群の5匹の動物は疾患を発症しなかったが、PBS i.n群は第26日までに100%の臨床疾患発生率に到達した。i.n対照群と比較して、IDX9054 s.c処置群とi.n処置群との発生率の間に有意差があった(p=0.02)。
【0115】
疾患の経過は、時間とともに次第に悪化する再発寛解型の経過で進展した。群のうちの全ての動物が全く同時に疾患を発症したのではなく、よってそれらの疾患の経過は、互いに完全に一致しなかったので、示された平均値の標準偏差は様々である(示さず)。
【0116】
第1の研究において、IDX9054処置群においてEAEの発症における有意差があり(p=0.0318)、対照群と比較してわずかに遅延していた。群同士間で平均疾患重篤度、累積スコアまたは平均最大スコアのいずれにも統計学的有意差はなかったが、IDX0980処置群およびIDX9054処置群の両方が、他の2つの群よりも低減された体重減少、低減された疾患重篤度および低い死亡率を有する明確な傾向があった(図9)。第2の研究において、群同士間でEAEの発症、平均疾患重篤度、累積スコアまたは平均最大スコアのいずれにも統計学的有意差はなかったが、i.n−およびs.c−IDX9054処置群の両方が、対照PBS i.n群よりも低減された体重減少、低減された疾患重篤度および低い死亡率を有する明確な傾向があった。i.n−IDX9054処置群についての累積スコアおよび平均最大スコアは、s.c−IDX9054処置群よりもわずかにより低かった。
【0117】
このMOG−EAEモデルは重度疾患モデルであり、全ての示した分析においてその後それぞれ5または4の最大スコアに割り当てられたラットは、死亡したかまたは各群における倫理規定により屠殺された。死亡率は全般的に高かったが、モデルにおいて通常生じる自然な変動を反映する。
【0118】
全ての臨床データのまとめを表3〜4に示し、統計解析のまとめをそれぞれの表の下に示す。
【0119】
【表3】
【0120】
第1の前臨床研究についてのP値
IDX0980対PBS
累積スコアp=0.2128
最大スコアp=0.2444
疾患持続期間p=0.3008
発症の日p=0.2873
発生率 p=0.0285*
【0121】
IDX9054対PBS
累積スコアp=0.3548
最大スコアp=0.4490
疾患持続期間p=0.1018
発症日p=0.0318*
発生率p=0.0641
【0122】
IDX9052対PBS
累積スコアp=0.6858
最大スコアp=0.6806
疾患持続期間p=0.3907
発症日p=0.6123
発生率p=−(ともに100%)
【0123】
【表4】
【0124】
第2の前臨床研究についてのP値
IDX9054 i.n対PBS i.n
累積スコアp=0.20
最大スコアp=0.055
疾患持続期間p=0.29
発症日p=0.17
発生率p=0.02*
【0125】
IDX9054 s.c対PBS i.n
累積スコアp=0.21
最大スコアp=0.12
疾患持続期間p=0.24
発症日p=0.16
発生率p=0.02*
【0126】
DAラットにおけるMOG誘導EAEは、高い再現性を有するよく特徴づけられた実験モデルである。これは、ヒトにおけるその相対物である多発性硬化症と多くの特徴を共有し、それ自体で、治療の試験のための適切なモデルである(Goldら、2006、Frieseら、2006)。
【0127】
IFA中のMOGでの免疫化の後に、炎症性免疫細胞が脊髄および脳に浸潤することにより引き起こされるミエリンの進行性の変性により、動物は、尾部から、後肢を通して前肢まで次第に麻痺し始める。病理は、動物が部分的に回復し、次いで増大した疾患が再発する慢性再発型であり、単球およびT細胞(1型サイトカイン)ならびにB細胞(抗体)活性の両方の結果である。
【0128】
試験物質は、in vitroでの免疫賦活活性が証明されたオリゴヌクレオチドである。これらの特定の免疫賦活プロファイルはオリゴヌクレオチドの配列により異なり、このことにより、治療対象の進行中の炎症性応答に対するin vivoでのそれらの影響の比較分析が行われる。2回のEAE動物研究の目的は、IDX9052、IDX9054およびIDX0980の影響を、DAラットにおける再発/寛解型MOG誘導EAEのモデルにおいて調べることであった。
【0129】
全ての試験オリゴヌクレオチド、または媒体単独での処置は、受容ラットにおいて有害な身体的または行動的影響を引き起こさなかった。処置は、まず疾患を正常に発症させるが、その後、進行中の炎症誘発性カスケードを抑えるために、疾患の最初の発作の直前に開始した。追加の投与は、疾患の増大および臨床疾患期の開始と同時になるように合わせた。EAEのこの最初の期間からの回復は、IDX0980処置群およびIDX9054処置群においてともにより著しく、その後の臨床発作の発症は、IDX0980処置群ではあまり著しくなかった。全ての測定したパラメータは、媒体処置群と比較して、IDX0980処置群およびIDX9054処置群の両方で低減した。
【0130】
配列番号5(IDX9052)は、ラット脾細胞におけるIFNアルファ/ベータの強力な誘導因子であるが、EAEラットモデルにおいて疾患の重篤度の低減を示さなかった。よって、IDX9054およびIDX0980での処置の際のEAEラットモデルにおいて観察された疾患の重篤度の低減は、IFNベータ生成のみとは相関し得ない。さらに、配列番号2(IDX9054)を用いて得られた結果は、この化合物が、DAラットにおけるMOG−EAEにおいてs.c.およびi.n.の両方で治療効果を有することを示す。
【実施例4】
【0131】
患者試料におけるin vitroでのCD49dの低減
本発明の化合物がCD49d発現を低減できるかどうかを調べるために、本発明者らは、RRMS患者から単離されたPBMCを、候補化合物での刺激の際のCD49dの発現を研究するために用いた。
【0132】
材料および方法
RRMS患者(n=9)のPBMCを、BD CPT vacutainer(Becton Dickinson)から得た。細胞を直ちに37℃にて500μlの容量の完全RPMI培地(10%FCS、1%PenStrep、2mM L−グルタミン、10mM HEPESおよび1mMピルビン酸ナトリウムを含有)中で、48ウェルプレートにて、2×106細胞/mlの濃度でインキュベートし、1、10および25μMのそれぞれのオリゴヌクレオチド化合物で処理した(表1)。オリゴヌクレオチドとインキュベートした細胞を48時間後に採集し、PBSで洗浄し、2%FCSを補ったPBSに再懸濁した。細胞を、異なる2組の蛍光色素複合抗体混合物;(1)抗CD3 APC、抗CD49d PEおよび(2)抗CD19 PE Cy7、抗CD49d APCで4℃にて30分間染色した。抗体は、Becton Dickinsonから購入した。染色の後に、細胞をPBSで洗浄し、その後、FACSArrayバイオアナライザー(Becton Dickinson)を用いてFACSにより分析した。
【0133】
結果
RRMS患者から単離したPBMCは、オリゴヌクレオチドでの刺激の際に用量依存的にT細胞におけるCD49dの下方制御を示した(図10)。
【0134】
細胞におけるCD49d発現の減少が、本発明の化合物で処理した、RRMS患者から単離したPBMCにおいて観察された。本発明の化合物のこれらの特性は、CNSへの細胞の移動およびそれによる流入を減少することができた。
【実施例5】
【0135】
患者試料におけるin vitroでのケモカイン受容体の低減
CNSにおける血液単核細胞(例えばT細胞、B細胞、単球)の流入は、MSの病理において重要な役割を果たす。よって、流入を遮断または低減することは、MSの治療に有益である。CCR5(CD195)、CCR2(CD192)およびCXCR3(CD183)のようなケモカイン受容体は、単核細胞において発現され、炎症部位への細胞の動員に関与する。本発明の化合物が上記のケモカイン受容体の発現を低減できるかどうかを調べるために、本発明者らは、RRMS患者から単離したPBMCを、本発明の化合物を用いて刺激した。
【0136】
材料および方法
RRMS患者(n=3)のPBMCを、BD CPT vacutainerを用いて単離した。細胞を直ちに37℃にて500μlの容量の完全RPMI培地(10%FCS、1%PenStrep、2mM L−グルタミン、10mM HEPESおよび1mMピルビン酸ナトリウムを含有)中で、48ウェルプレートにて、2×106細胞/mlの濃度でインキュベートし、1、10および25μMのそれぞれの本発明の化合物で処理した。オリゴヌクレオチドとインキュベートした細胞を48時間後に採集し、PBSで洗浄し、2%FCSを補ったPBSに再懸濁した。細胞を、異なる3組の蛍光色素複合抗体混合物;(1)抗CD3 PE−Cy−7、抗CCR5 APC−Cy7、抗CCR2 Alexa Fluor 647、抗CXCR3−PE、(2)抗CD19 PE−Cy−7、抗CCR5 APC−Cy7、抗CCR2 Alexa Fluor 647、抗CXCR3 PEおよび(3)抗CD14 PE−Cy−7、抗CCR5 APC−Cy7、抗CCR2 Alexa Fluor 647、抗CXCR3 PEで4℃にて30分間染色した。抗体は、Becton Dickinsonから購入した。PBSで洗浄した後に、細胞を、FACSarrayフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて分析した。
【0137】
結果
RRMS患者(n=3)から単離したPBMCは、本発明の化合物での刺激の後に、特にIDX9045によりT細胞(CD3陽性)におけるCXCR3の下方制御を示した(図11)。CCR5も、オリゴヌクレオチド処理の後に、特にIDX9022によりT細胞において下方制御された(データは示さず)。
【0138】
RRMS患者(n=3)から単離したPBMCは、CD19陽性細胞におけるCXCR3の下方制御を示した。この受容体の最も強力な下方制御効果を示したオリゴヌクレオチドは、IDX9038、IDX9054、IDX9058、IDX9045、IDX9004およびIDX0980であった(図12)。
【0139】
RRMS患者(n=3)から単離したPBMCは、CD14陽性細胞におけるCXCR3、CCR5およびCCR2の下方制御を示した。CXCR3、CCR5およびCCR2の最も強力な下方制御効果を示すオリゴヌクレオチドは、それぞれ図13、14ならびに15AおよびBに示す。
【0140】
T、Bおよび単球におけるケモカイン受容体(CCR5、CXCR3、CCR2)の発現の減少が、本発明の化合物で治療した、RRMS患者から単離したPBMCにおいて観察された。本発明の化合物のこれらの特性は、CNSに対するこれらの細胞の遊走の低減において重要な役割を果たすことができた。
【実施例6】
【0141】
RRMS患者から単離した白血球の走化性の低減
MCP−1およびRANTESは、炎症部位への血液単核細胞、特に単球、T細胞およびB細胞の動員のための強力なケモカインである。MCP−1およびRANTESに対する血液単核細胞の走化性は、それぞれCCR2およびCCR5受容体により主に媒介される。この研究の目的は、実施例5に示すような本発明の化合物によるCCR2およびCCR5の発現の減少が、単核細胞の遊走を実際に低減できることを示すことであった。
【0142】
材料および方法
血液単核細胞の走化性を、QCM(商標)比色走化性アッセイ(Millipore、Temecula、CA)を製造業者の使用説明に従って用いて調べた。手短に述べると、PBMCを、BD CPT vacutainerを用いてRRMS患者から単離し、実施例5に記載されるようにして1、10および25μMの本発明の化合物で処理した。48時間後に細胞を洗浄し、3μmのポアサイズを有する24ウェル細胞遊走プレートアセンブリの上部のインサートに移した(250μlの培地中に3×105細胞)。次いで、化学誘引物質MCP−1(10ng/mL)およびRANTES(10ng/mL)を含有する300μlの培地を、下部のチャンバに加えた。次いで、空気中5%CO2を用いる湿潤細胞培養インキュベータ(Thermo Scientific)中で37℃にて16時間、化学誘引物質に向かってフィルタを通って細胞が遊走できるようにした。その後、下部のチャンバの細胞、すなわち遊走した細胞を、細胞生存染料WST−1との1時間のインキュベーションと、その後のマイクロプレートリーダー(Tecan、Maennedorf、Switzerland)を用いる450nmでの吸光度の測定による定量により検出した。
【0143】
結果
本発明の化合物(IDX9045、IDX9054、IDX0980)で処置した、2名の異なるRRMS患者から単離したPBMCは、機能的遊走アッセイにおいて化学誘引物質に対して未処置の細胞よりも少ない遊走を示した(図16A〜B)。
【0144】
このことは、細胞遊走の低減が、受容体のより低い発現によることを示す。これらの結果はin vivoのシナリオも反映し、結果として中枢神経系への細胞の走化性の低下を導くという予測をする理由がある。
【実施例7】
【0145】
患者試料におけるin vitroでのVEGFの低減
MSにおける活発な病変は、血液脳関門(BBB)破壊を特徴とし、このことは、疾患の病理に血液透過性の変化が関与することを示唆する。MSの患者において、VEGFが血管透過性を誘導し、それによりCNSへの自己攻撃性細胞の流入を増加させることが報告されている(Proescholdt MAら、2002)。本発明の化合物がVEGF生成を低減できるかどうかを調べるために、本発明者らは、RRMS患者から単離されたPBMCを、本発明の化合物での刺激の際のVEGF生成を研究するために用いた。
【0146】
材料および方法
PBMCを、RRMS患者(n=6〜11)からBD CPT vacutainerを用いて単離した。細胞を直ちに37℃にて500μlの容量の完全RPMI培地中で、48ウェルプレートにて、2×106細胞/mlの濃度でインキュベートし、1、10および25μMのそれぞれの本発明の化合物で処理した。48時間後に、上清を、VEGFの存在について、細胞数測定ビーズアレイ(CBA、Becton Dickinson)を用いて分析した。
【0147】
結果
RRMS患者から単離したPBMCは、IDX9038、IDX9045、IDX9004およびIDX0980での刺激の後に、細胞上清中で著しいVEGF低減を示した(図17)が、IDX9022、IDX9058、IDX9054、IDX9060、IDX0150およびIDX9052は、細胞上清中のVEGFを低減しなかった(データは示さず)。
【0148】
VEGFの低減が、本発明の化合物で処理した細胞の細胞上清において観察された。本発明の化合物のこの特性は、BBBの血管透過性を低減し、それによりCNSへの免疫細胞の浸潤を妨げると考えられる。
【実施例8】
【0149】
患者試料におけるin vitroでのIFN−ベータの誘導
本発明者らは、RRMS患者の血液を用いて、IFN−ベータの誘導についてin vitroで異なる候補化合物を試験した。
【0150】
材料および方法
PBMCを、RRMS患者(n=6)からBD CPT vacutainerを用いて単離した。細胞を直ちに37℃にて500μlの容量の完全RPMI培地中で、48ウェルプレートにて、2×106細胞/mlの濃度でインキュベートし、1、10および25μMのそれぞれのオリゴヌクレオチド化合物で処理した。48時間後に、上清を、IFN−ベータ生成について、IFN−ベータELISAキット(Invitrogen)を用いて分析した。
【0151】
結果
RRMS患者から単離したPBMCは、IDX9058、IDX9045、IDX9004、IDX9054、IDX9060およびIDX0980で48時間後に刺激した後に、細胞上清中で著しいIFN−ベータ生成を示した(図18)。IDX9022、IDX9038およびIDX9052は、上清中で著しいIFN−ベータ生成を誘導しなかった(データは示さず)。IDX0150は、IFN−ベータ生成を全く示さなかった(データは示さず)。
【0152】
IFN−ベータ生成の増加が、本発明の化合物で処理した、RRMS患者から単離したPBMCの細胞上清において観察された。IFN−ベータ生成を惹起する本発明の化合物のこの特性は、RRMS療法において現在用いられているように、このサイトカインの既知の有益な効果により、より低い炎症に寄与し得る。
【0153】
全体として、本発明者らにより行われた実験の結果は、オリゴヌクレオチドが、中枢神経系への単核細胞の阻害または低減がCNSの炎症性疾患の治療のために有益であり得るin vivo状況において効果的であり得ることを示す。本発明の化合物のこの有益な効果は、少なくとも1つの細胞表面マーカーまたはVEGFの発現の下方制御により媒介することができる。
【0154】
本発明を、本発明者らが現在認識する最良の形態を構成するその好ましい実施形態に関して記載したが、当業者に明らかな種々の変更および改変を、本明細書に添付する特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を逸脱することなく行い得ることが理解される。
【0155】
(参照文献)
《1》
FDA News P04-107, November 23, 2004.
《2》
Friese, M A et al., The value of animal models for drug development in multiple sclerosis, Brain, 2006;129 (Pt 8):1940-52.
《3》
Gold et al., Understanding pathogenesis and therapy of multiple sclerosis via animal models: 70 years of merits and culprits in experimental autoimmune encephalomyelitis research, Brain, 2006;129 (Pt 8):1953-71.
《4》
Hafler, D A, Multiple sclerosis. J Clin Invest, 2004.
《5》
Kerkmann, M. et al., Spontaneous formation of nucleic acid-based nanoparticles is responsible for high interferon-alpha induction by CpG-A in plasmacytoid dendritic cells, J Biol Chem, 2005; 280(9):8086-93.
《6》
Wikstroem, F H et al., Structure-dependent modulation of alpha interferon production by porcine circovirus 2 oligodeoxyribonucleotide and CpG DNAs in porcine peripheral blood mononuclear cells., J Virol. 2007; 81(10):4919-27.
《7》
Proescholdt M A. et al, Vascular endothelial growth factor is expressed in multiple sclerosis plaques and can induce inflammatory lesions in experimental allergic encephalomyelitis rats., J Neuropathol Exp Neurol. 2002; 61(10):914-25
《8》
Trebst C, Ransohoff RM. Investigating chemokines and chemokine receptors in patients with multiple sclerosis: opportunities and challenges, Arch Neurol. 2001;58(12):1975-80.
《9》
Steinman L. A molecular trio in relapse and remission in multiple sclerosis, Nat Rev Immunol., 2009;9(6):440-7.
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1[IDX9045]、配列番号2[IDX9054]、配列番号3[IDX9038]、配列番号7[IDX9058]、配列番号6[IDX9022]、配列番号4[IDX9004]、配列番号8[IDX9060]および配列番号5[IDX9052]から選択される単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
少なくとも1つのヌクレオチドが、リン酸主鎖修飾を有する、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
リン酸主鎖修飾が、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾である、請求項2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項5】
生理食塩水、リポソーム、界面活性剤、粘膜付着性化合物、酵素阻害剤、胆汁酸塩、吸収促進剤、シクロデキストリンまたはそれらの組合せから選択される薬理学的に適合可能でありかつ生理的に許容され得る賦形剤または担体をさらに含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
多発性硬化症の治療および/または緩和のための医薬組成物の製造のための、請求項1から3のいずれか一項に記載の単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項7】
多発性硬化症の治療および/または緩和のための医薬組成物の製造のための、配列番号9[IDX0150]に記載の単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項8】
多発性硬化症の治療および/または緩和のための医薬組成物の製造のための、配列番号10[IDX0980]に記載の単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項9】
前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への単核細胞および/または自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される、請求項6から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
中枢神経系の炎症性疾患の治療および/または緩和のための医薬組成物の製造のための、請求項1から3のいずれか一項に記載の単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチドの使用であって、前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への単核細胞および/または自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される使用。
【請求項11】
前記少なくとも1つの細胞表面マーカーが、CD49d、CXCR3(CD183)、CCR2(CD192)およびCCR5(CD195)から選択される、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
オリゴヌクレオチドが、配列番号1[IDX9045]、配列番号2[IDX9054];配列番号7[IDX9058];配列番号3[IDX9038]から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
オリゴヌクレオチドが、配列番号1[IDX9045]である、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記少なくとも1つの細胞表面マーカーがCD49dであり、オリゴヌクレオチドが配列番号3[IDX9038]または配列番号7[IDX9058]から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
前記オリゴヌクレオチドが、VEGFの生成を低減することにより中枢神経系への単核細胞および/または自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される、請求項6または10に記載の使用。
【請求項16】
オリゴヌクレオチドが、配列番号1[IDX9045]および配列番号10[IDX0980]の中から選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
多発性硬化症の治療および/または緩和の方法であって、オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの特定の細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への単核細胞および/または自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される方法。
【請求項18】
請求項1から3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドが、それを必要とする患者に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
配列番号9[IDX0150]に記載のオリゴヌクレオチドが、それを必要とする患者に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
配列番号10[IDX0980]に記載のオリゴヌクレオチドが、それを必要とする患者に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
細胞表面マーカーが、CD49d、CXCR3(CD183)、CCR2(CD192)およびCCR5(CD195)の少なくとも1つである、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
オリゴヌクレオチドが、配列番号1[IDX9045]、配列番号2[IDX9054];配列番号7[IDX9058];配列番号3[IDX9038]の中から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
細胞表面マーカーがCD49dであり、オリゴヌクレオチドが配列番号3[IDX9038]または配列番号7[IDX9058]から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
多発性硬化症の治療および/または緩和の方法であって、オリゴヌクレオチドが、VEGFの生成を低減することにより中枢神経系への単核細胞および/または自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される方法。
【請求項25】
オリゴヌクレオチドが、配列番号1[IDX9045]および配列番号10[IDX0980]の中から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項4または5に記載の医薬組成物が、患者に投与される、請求項17または24に記載の方法。
【請求項27】
投与経路が、粘膜、皮下、筋肉内、静脈内および腹腔内投与から選択される、請求項17から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
粘膜投与が、経鼻、口腔、胃、眼、直腸、泌尿生殖器および膣内投与から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項1】
配列番号1[IDX9045]、配列番号2[IDX9054]、配列番号3[IDX9038]、配列番号7[IDX9058]、配列番号6[IDX9022]、配列番号4[IDX9004]、配列番号8[IDX9060]および配列番号5[IDX9052]から選択される単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
少なくとも1つのヌクレオチドが、リン酸主鎖修飾を有する、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
リン酸主鎖修飾が、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾である、請求項2に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項5】
生理食塩水、リポソーム、界面活性剤、粘膜付着性化合物、酵素阻害剤、胆汁酸塩、吸収促進剤、シクロデキストリンまたはそれらの組合せから選択される薬理学的に適合可能でありかつ生理的に許容され得る賦形剤または担体をさらに含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
多発性硬化症の治療および/または緩和のための医薬組成物の製造のための、請求項1から3のいずれか一項に記載の単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項7】
多発性硬化症の治療および/または緩和のための医薬組成物の製造のための、配列番号9[IDX0150]に記載の単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項8】
多発性硬化症の治療および/または緩和のための医薬組成物の製造のための、配列番号10[IDX0980]に記載の単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項9】
前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への単核細胞および/または自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される、請求項6から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
中枢神経系の炎症性疾患の治療および/または緩和のための医薬組成物の製造のための、請求項1から3のいずれか一項に記載の単離されかつ実質的に精製されたオリゴヌクレオチドの使用であって、前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への単核細胞および/または自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される使用。
【請求項11】
前記少なくとも1つの細胞表面マーカーが、CD49d、CXCR3(CD183)、CCR2(CD192)およびCCR5(CD195)から選択される、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
オリゴヌクレオチドが、配列番号1[IDX9045]、配列番号2[IDX9054];配列番号7[IDX9058];配列番号3[IDX9038]から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
オリゴヌクレオチドが、配列番号1[IDX9045]である、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記少なくとも1つの細胞表面マーカーがCD49dであり、オリゴヌクレオチドが配列番号3[IDX9038]または配列番号7[IDX9058]から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
前記オリゴヌクレオチドが、VEGFの生成を低減することにより中枢神経系への単核細胞および/または自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される、請求項6または10に記載の使用。
【請求項16】
オリゴヌクレオチドが、配列番号1[IDX9045]および配列番号10[IDX0980]の中から選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
多発性硬化症の治療および/または緩和の方法であって、オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの特定の細胞表面マーカーの発現を下方制御することにより中枢神経系への単核細胞および/または自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される方法。
【請求項18】
請求項1から3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドが、それを必要とする患者に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
配列番号9[IDX0150]に記載のオリゴヌクレオチドが、それを必要とする患者に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
配列番号10[IDX0980]に記載のオリゴヌクレオチドが、それを必要とする患者に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
細胞表面マーカーが、CD49d、CXCR3(CD183)、CCR2(CD192)およびCCR5(CD195)の少なくとも1つである、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
オリゴヌクレオチドが、配列番号1[IDX9045]、配列番号2[IDX9054];配列番号7[IDX9058];配列番号3[IDX9038]の中から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
細胞表面マーカーがCD49dであり、オリゴヌクレオチドが配列番号3[IDX9038]または配列番号7[IDX9058]から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
多発性硬化症の治療および/または緩和の方法であって、オリゴヌクレオチドが、VEGFの生成を低減することにより中枢神経系への単核細胞および/または自己攻撃性細胞の流入を阻害または低減するのに有効な量で投与される方法。
【請求項25】
オリゴヌクレオチドが、配列番号1[IDX9045]および配列番号10[IDX0980]の中から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項4または5に記載の医薬組成物が、患者に投与される、請求項17または24に記載の方法。
【請求項27】
投与経路が、粘膜、皮下、筋肉内、静脈内および腹腔内投与から選択される、請求項17から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
粘膜投与が、経鼻、口腔、胃、眼、直腸、泌尿生殖器および膣内投与から選択される、請求項27に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図16a】
【図16b】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図16a】
【図16b】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2012−507308(P2012−507308A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535539(P2011−535539)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051247
【国際公開番号】WO2010/053435
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(508003011)インデックス・ファーマシューティカルズ・アクチエボラーグ (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051247
【国際公開番号】WO2010/053435
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(508003011)インデックス・ファーマシューティカルズ・アクチエボラーグ (12)
【Fターム(参考)】
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