CNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラム
【課題】CNTの成長高さによらずCNTの成長速度をその場観察することが可能であり、CNTの成長条件の最適成長条件への変更が容易なCNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラムを提供すること。
【解決手段】基板が載置された容器内に炭素源を供給し、前記基板上にCNTを成長させるCNT成長手段と、前記CNTの成長高さをその場測定する観察手段とを備え、前記観察手段は、前記基板の側面の画像を捉えるための光学マイクロスコープと、前記画像をデジタルデータとして記憶するデジタルカメラと備えたCNT製造装置、及び、これを用いたCNTの製造方法、並びに、CNT製造用プログラム。
【解決手段】基板が載置された容器内に炭素源を供給し、前記基板上にCNTを成長させるCNT成長手段と、前記CNTの成長高さをその場測定する観察手段とを備え、前記観察手段は、前記基板の側面の画像を捉えるための光学マイクロスコープと、前記画像をデジタルデータとして記憶するデジタルカメラと備えたCNT製造装置、及び、これを用いたCNTの製造方法、並びに、CNT製造用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラムに関し、更に詳しくは、CNTの成長高さによらずCNTの成長速度をその場観察することが可能であり、かつ、CNTの成長速度が最適値となる最適成長条件への変更が容易なCNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)は、黒鉛の一層に相当するグラフェンシート(炭素原子が六角網目状に配列したシート)を筒状に丸めた立体構造を持つ。CNTは、1枚の円筒状グラフェンシートからなる単層CNTと、複数枚の円筒状グラフェンシートが同心円状に重なった多層CNTとがある。また、合成された未処理のCNTの先端は、通常、「キャップ」と呼ばれる半球状のグラファイト層で閉じられた構造になっている。
【0003】
CNTは、nmオーダーの直径と、μm〜cmオーダーの長さを有しており、アスペクト比が極めて大きく、先端の曲率半径が数nm〜数十nmと極めて小さいという特徴がある。CNTは、機械的にも強靱で、化学的・熱的安定性に優れ、円筒部のらせん構造に応じて金属にも半導体にもなるという特徴がある。そのため、CNTは、発光デバイス用の電子配線材料、放熱材料、繊維材料、電子放出源(面光源)、トランジスタ材料、電子顕微鏡用の電子放出源(点光源)、あるいは、SPM用の探針等への応用が期待されている。
【0004】
CNTを合成する方法には、
(1)Arや水素等の気体雰囲気中において、触媒を混ぜた炭素棒間でアーク放電を行わせ、チャンバー外壁や陰極上にCNTを堆積させるアーク法、
(2)触媒を混ぜたグラファイトの表面にYAGレーザー等の強いパルス光を当て、これにより発生した炭素の煙を電気炉で加熱し、反応管の側壁にCNTを付着させるレーザー蒸発法、
(3)触媒金属微粒子上で炭素化合物(例えば、メタン、アセチレン、ベンゼン、エタノールなど)を熱分解させる化学気相成長(CVD)法、
などが知られている。
【0005】
(1)及び(2)の合成法により得られるCNTは、いずれも完全にランダムな方向を向いて絡み合った状態になっている。また、多量のカーボンナノカプセルやアモルファス粒子等を含んでいる場合もある。一方、CNTの持つ究極の異方性を最大限に引き出すためには、多数本のCNTを基材表面に配向させることが望ましい。また、CNTを電子配線材料、放熱材料、繊維材料等に応用する場合において、高電流密度、高熱伝導性、高強度等を得るためには、CNTを基板表面に高密度に生成させることが望ましく、(3)のCVD法がこの目的に適する。
【0006】
基板表面に触媒粒子を担持させ、基板表面にほぼ垂直に高密度のCNTを生成させる場合、CNTの成長速度は、温度、圧力、ガス流量などの複数の成長条件に依存する。従来、これらの成長条件とCNTの成長速度との関係を調べる場合には、
(a) 成長条件を変化させてCNTの成長実験を行い、
(b) 実験終了後に製造装置内から基板を取り出し、CNTの成長高さを電子顕微鏡などで測定し、
(c) 測定された成長高さから成長速度を算出する
という方法が用いられていた。
しかしながら、このような方法では、条件を変更するごとに実験を行う必要がある。そのため、より高いCNT成長速度を得る条件を決定するためには、多数回の実験を行う必要がある。
また、CNTは、炭素源が触媒粒子まで拡散することによって成長が進行するので、CNTの成長速度は、CNTの成長高さ、触媒粒子の周囲の環境などに依存して変化する。しかしながら、従来の方法により得られる成長速度は、ある条件下での平均値のみであり、成長速度の経時変化を知ることができない。
【0007】
そこでこの問題を解決するために、CNTの成長高さをその場測定する方法に関し、従来から種々の提案がなされている。
これまでに報告されているその場測定法としては、具体的には、
(1) 基板表面から反射する光とCNT表面から反射する光の行程差を用いてCNTの成長高さをその場測定する光学的干渉法(非特許文献1、2)、
(2) CNTを成長させた基板に光を当て、基板を透過した光の強度から光吸収率を求め、光吸収率を用いてCNTの成長高さをその場測定する光学吸収法(非特許文献3)、
(3) 基板にスリットを設け、スリットの内周面に対して垂直にCNTを成長させ、レーザー光をこのスリットで回折させることによりCNTの成長高さをその場測定する単スリットレーザー回折法(非特許文献4)、
などが知られている。
【0008】
【非特許文献1】Nano Lett. 3(2003)863-865
【非特許文献2】Carbon 41(2003)583-585
【非特許文献3】Chem. Phys. Lett. 403(2005)320-323
【非特許文献4】Nano Lett. 4(2004)1613-1620
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光学的干渉法においては、CNTの膜厚が厚くなると、干渉振幅が減衰する。また、CNTの膜厚がさらに厚くなると、光の不透過により測定不能となる。そのため、光学的干渉法の測定限界は、数μm程度である。
光学吸収法においては、光の吸収率は、CNTの成長高さだけではなく、基板表面に成長したCNTの密度にも依存する。また、CNTの膜厚がある一定値以上になると、光吸収率が飽和する。そのため、光吸収法は、均一に成長したCNTに対してのみ適用可能であり、その測定限界は、10μm程度である。
単スリットレーザー回折法においては、測定可能な膜厚の最大値がスリットの幅で制限される。また、CNTの成長量もスリット形状の影響を受ける。
また、これらの方法は、いずれもCNTの成長量を直接観察しているのではなく、光やレーザーに生じる影響を検出する間接的な膜厚測定法である。そのため、
(1) 成長量が増えるに従い、測定誤差が生じやすくなる、
(2) 測定方法が条件振りを行うために必要な膜厚レンジを網羅していない、
(3) 試料の特殊形状が成長速度変化に影響する、
などの問題がある。
さらに、CNTの成長量をその場測定し、成長中にCNTの成長条件を変化させ、CNTを最適条件下で成長させる方法が提案された例は、従来にはない。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、CNTの成長高さによらずCNTの成長速度をその場観察することが可能なCNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラムを提供することにある。
本発明が解決しようとする課題は、CNTの成長速度が最適値となる最適成長条件への変更が容易なCNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラムを提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、測定誤差が小さく、測定可能な膜厚レンジが広く、かつ、測定に際して特殊な試料形状が不要なCNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係るCNT製造装置は、
基板が載置された容器内に炭素源を供給し、前記基板上にCNTを成長させるCNT成長手段と、
前記CNTの成長高さをその場測定する観察手段とを備え、
前記観察手段は、
前記基板の側面の画像を捉えるための光学マイクロスコープと、
前記画像をデジタルデータとして記憶するデジタルカメラと、
を備えている。
前記制御手段は、前記デジタルデータを処理して前記成長高さを算出する画像処理装置をさらに備えていても良い。
また、前記CNT製造装置は、
前記成長高さから前記CNTの成長速度を算出し、前記成長速度に基づき、前記CNTの成長条件を最適成長条件に変更する制御手段
をさらに備えていても良い。
【0012】
本発明に係るCNTの製造方法は、
本発明に係るCNT製造装置を用いて、CNTの成長高さをその場測定しながら前記CNTを成長させる第1工程と、
所定時間経過後に、一時的に前記CNTの成長条件を変更する第2工程と、
一時的に変更された前記成長条件下における前記成長高さを測定する第3工程と、
前記成長高さから成長速度を求め、前記成長速度が最適値となる最適成長条件を決定する第4工程と、
前記成長条件を前記最適成長条件に変更する第5工程と
を備えている。
【0013】
さらに、本発明に係るCNT製造用プログラムは、
コンピュータを、
CNT製造装置内で製造されているCNTの成長条件、並びに、前記成長条件下における前記CNTの成長高さ及び計測時刻をメモリに記憶させる第1手段、
前記成長高さと前記測定時刻から前記CNTの成長速度を算出し、前記メモリに記憶させる第2手段、
所定時間経過後に、前記CNT製造装置に対して、一時的に前記成長条件の変更を指示する第3手段、
一時的に変更された前記成長条件下における前記成長速度を算出し、前記メモリに記憶させる第4手段、
前記第4手段において算出された前記成長速度が最適値となる最適成長条件を決定する第5手段、
前記成長条件の前記最適成長条件への変更を前記CNT製造装置に指示する第6手段、
として機能させるためのものからなる。
【発明の効果】
【0014】
光学マイクロスコープ及びデジタルカメラを用いて基板の側面の画像を捉えると、CNTの成長量によらず、CNTの成長高さを高精度で測定することができる。また、CNTの成長を開始してから所定時間が経過したところで、観察手段によりCNTの成長高さをその場観察しながら、一時的に成長条件を変更すると、成長条件の変更に伴うCNT成長高さの変化を正確に測定することができる。そのため、CNTを成長させながら、時々刻々変化するCNTの成長速度を知ることができ、CNT製造装置への最適成長条件のフィードバックが容易化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
図1に、本発明の一実施の形態に係るCNT製造装置の概略構成図を示す。
本発明に係るCNT製造装置は、CVD装置(CNT成長手段)と、観察装置(観察手段)と、プログラマブルコントローラー(制御手段)とを備えている。
【0016】
CVD装置は、基板が載置された容器内に炭素源を供給し、基板上にCNTを成長させるためのものである。
基板上に成長したCNTは、光学マイクロスコープで直接観察するので、基板を収容する容器には、光を透過する材料(例えば、石英ガラス管など)が用いらる。また、基板は、耐熱性の高い材料(例えば、Taワイヤーなど)を用いて、ステージから離れた位置に固定されている。基板は、ステージ上に直接載せても良いが、基板をステージから離れた位置に固定すると、基板の側面を観察するのが容易化する。さらに、基板の上方には光照射手段(図示せず)が設けられ、基板の上面に光を照射するようになっている。光照射手段は、必ずしも必要ではないが、基板上に光を照射すると、特に光量が不足する高倍率下における観察が容易化する。光源としては、ハロゲンランプ、キセノンランプ、赤外線ランプなどがある。
【0017】
その他、CVD装置には、図示はしないが、
(1) 容器内を所定の温度に維持するためのヒータ、
(2) 容器内を所定の圧力に維持するための排気及びバルブ装置、
(3) 容器内に炭素源を供給するための炭素源供給装置、
(4) 容器内に還元ガスを供給するための還元ガス供給装置、
(5) 容器内に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給装置、
(5) 容器内に各種ガスを供給するためのキャリアガス供給装置、
などが設けられている。
また、光学マイクロスコープによる基板の観察を容易化するために、基板の背面(光学マイクロスコープの反対側)に光を反射する材料(例えば、アルミナなどの耐熱性セラミックス、Si基板など)からなる反射板を設けても良い。
【0018】
観察装置は、光学マイクロスコープと、デジタルカメラと、画像処理装置とモニターとを備えている。
光学マイクロスコープは、基板の側面の画像を捉えるためのものである。光学マイクロスコープには、焦点距離が極めて長く、高倍率(例えば、1000倍)での観察が可能なマイクロスコープを用いる。
デジタルカメラは、光学マイクロスコープが捉えた基板の側面の画像を、固体撮像素子及び電磁気録媒体を用いてデジタルデータとして記憶するためのものである。デジタルカメラは、静止画のみを撮影可能なものでも良く、あるいは、動画を撮影可能なものでも良い。図1に示す例においては、デジタルカメラとしてCCDカメラが用いられている。
画像処理装置は、デジタルカメラにより記憶されたデジタルデータを処理して、CNTの成長高さを算出するためのものである。画像処理装置としては、極めて短い時間間隔で画像を処理することが可能なリアルタイム画像処理装置が好ましい。画像処理装置を用いたCNTの成長高さの算出方法は、特に限定されるものではないが、基板、CNT及び背景の濃度差から画像に含まれるCNTの面積(S)を求め、これを画像に含まれるCNTの横幅(L)で除して成長高さ(S/L)とする方法が好ましい。この方法は、CNTの成長高さの平均値を正確に算出できるという利点がある。なお、デジタルカメラに内蔵されているモニタ又は図1に示すような外付けのモニタに画像を表示させ、作業者が画像から、直接、成長高さを読み取る場合には、画像処理装置を省略することができる。
モニタは、デジタルカメラで撮影された画像を表示するためのものである。モニタは、必ずしも必要ではないが、モニタがあると、作業者がCNTの成長過程を視認できるという利点がある。また、CNTの成長が安定期にあるときは、作業者がモニタからCNTの成長高さを直接、定規などで読み取り、手動でCVD装置を操作することもできる。
【0019】
プログラマブルコントローラーは、画像処理装置で算出されたCNTの成長高さからCNTの成長速度を算出し、算出された成長速度に基づき、CNTの成長条件を最適成長条件に変更するためのものである。CNT成長の安定期においては、プログラマブルコントローラーによる制御は必ずしも必要ではなく、作業者が手動でCVD装置を制御することもできる。しかしながら、プログラマブルコントローラーを用いると、成膜初期などの不安定期においても、精密な条件制御を行うことができるという利点がある。
プログラマブルコントローラは、具体的には、
(1) CNTの成長中に、CVD装置(CNT成長手段)に対して一時的にCNTの成長条件の変更を指示する成長条件変更手段、
(2) 一時的に変更されたCNTの成長条件下においてCNTの成長高さを測定し、測定された成長高さを用いてCNTの成長速度を算出する成長速度算出手段、
(3) CNTの成長速度が最適値となる最適成長条件を決定する最適条件決定手段、
(4) CVD装置(CNT成長手段)に対し、成長条件の最適成長条件への変更を指示する変更手段、
を備えているものが好ましい。
【0020】
CNTの成長速度に影響を及ぼす成長条件としては、具体的には、CNT成長温度、容器内圧力、炭素源流量、還元ガス流量、酸化剤ガス流量、キャリアガス流量、これらのガスのガス流量比などがある。CNTの成長速度に及ぼす各成長条件の一般的な影響は、以下の通りである。
(1) CNT成長温度: CNT成長温度が低すぎると、CNTの成長速度は低下する。同様に、CNT成長温度が高すぎると、CNTの成長速度は低下する。
(2) 容器内圧力: 容器内圧力が低すぎると、容器内の炭素源濃度が低下するので、CNTの成長速度は低下する。一方、容器内圧力が高すぎると、CNTの成長速度は飽和する傾向にある。
(3) 炭素源流量: 炭素源流量が多くなるほど、CNTの成長速度は増加する。一方、炭素源流量が過剰になると、アモルファスカーボンの生成量が増大するので、CNTの成長速度は低下する。
(4) 還元ガス流量: 還元ガス流量が多くなるほど、基板表面に担持させる触媒の酸化が抑制されるので、CNTの成長速度は増加する。一方、還元ガス流量が過剰になると、容器内の炭素源濃度が低下するので、CNTの成長速度は低下する。
(5) 酸化剤ガス流量: 酸化剤ガス流量が多くなるほど、副生するアモルファスカーボンが除去されるので、CNTの成長速度は増加する。一方、酸化剤ガス流量が過剰になると、触媒が失活し、あるいは、CNT自身が酸化する。
(6) キャリアガス流量: キャリアガスは、炭素源ガス、還元ガス、又は、酸化剤ガスを触媒に効率よく供給するためのものであり、Ar、Heなどの不活性ガスが用いられる。キャリアガス流量が低すぎると、各種ガスの触媒付近での循環、供給が悪くなり、成長速度が低下する場合がある。一方、キャリアガス流量が多すぎると、炭素源濃度が低下し、成長速度も低下する。
(7) ガス流量比: 上述した各種ガスの混合比には、成長速度が最大となる適正値が存在する。
【0021】
次に、本発明に係るCNTの製造方法について説明する。
本発明に係るCNTの製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程と、第5工程とを備えている。
第1工程は、本発明に係るCNT製造装置を用いて、CNTの成長高さをその場測定しながらCNTを成長させる工程である。上述したように、まず、光学マイクロスコープで基板の側面の画像を捉え、デジタルカメラを用いて画像をデジタルデータとして記憶する。記憶させた画像をモニタに表示させ、モニタから成長高さを直接、読み取る。あるいは、画像処理装置を備えている場合には、画像処理装置でデジタルデータを処理し、CNTの成長高さを算出する。この場合、成長高さの計測間隔は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。
【0022】
第2工程は、所定時間経過後に、一時的にCNTの成長条件を変更する工程である。
CNTの成長条件の一時的な変更を行う時間間隔は、任意に選択することができる。この場合、時間間隔は、CNTの成長過程全体を通して一定であっても良く、あるいは、CNTの成長段階に応じて時間間隔を変えても良い。
CNTの成長条件の一時的な変更は、作業者が手動で行っても良く、あるいは、制御装置を用いて自動制御しても良い。制御装置を用いて成長条件の変更を行うと、成膜初期のような不安定期においても精密な条件制御を行うことができるという利点がある。
【0023】
一時的にCNTの成長条件を変更する場合、まず、上述した複数の成長条件に優先順位を付ける。優先順位の付け方は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。一般に、成長速度に与える影響が大きい成長条件ほど、高い優先順位を付けるのが好ましい。また、優先順位は、CNTの成長過程全体を通して常に同一であっても良く、あるいは、CNTの成長段階に応じて優先順位が異なっていても良い。
次に、優先順位が1位である成長条件を一時的に変化させる。成長条件は、ステップ状に変化させても良く、あるいは、連続的に変化させても良い。この場合、ステップ状に変化させる場合の変更幅又は連続的に変化させる場合の変更速度は、目的に応じて任意に選択することができる。
優先順位が2位以下である成長条件の変更は、優先順位がそれより上位である成長条件を変更させてもCNTの成長速度が予め定められた値(最適値)に到達しない場合に行われる。優先順位が2位以下である成長条件を変更する場合、それより上位の成長条件は、通常、最適値に最接近した条件に固定されるが、これに限定されるものではない。
【0024】
第3工程は、一時的に変更されたCNTの成長条件下におけるCNTの成長高さを測定する工程である。
CNTの成長高さは、作業者がモニターの画面から直接読み取っても良く、あるいは、画像処理装置から出力されるデータを制御装置に読み込ませても良い。成長高さは、上述したように画像に占めるCNTの領域の面積及び横幅から算出しても良く、あるいは、数カ所のCNTの高さを直接、モニタで読み取り、平均値を算出しても良い。
【0025】
第4工程は、測定された成長高さから成長速度を求め、成長速度が最適値となる最適成長条件を決定する工程である。
成長速度の算出は、作業者が計算により行っても良く、あるいは、制御装置に計算させても良い。
CNTの成長速度の「最適値」は、目的に応じて任意に定義することができる。
最適値の定義としては、具体的には、
(1) 成長条件によらず、常に一定の成長速度を最適値とするもの、
(2) 一時的な条件変更を行った時点における最大の成長速度を最適値とするもの、
(3) CNTの成長段階に応じて、異なる成長速度を最適値とするもの(例えば、成長初期は、一定の成長速度に保ち、成長後期は、最大の成長速度に保つ場合)、
などがある。
優先順位が1位である成長条件のみの変更で成長速度が最適値となる場合は、この時の成長条件を最適成長条件と決定する。一方、優先順位が1位である成長条件のみの変更で成長速度が最適値とならない場合には、優先順位が2位以下である成長条件を順次変更し、成長速度が最適値となったところで、この時の成長条件を最適成長条件と決定する。
【0026】
第5工程は、CNT製造装置の成長条件を第4工程で決定された最適成長条件に変更する工程である。
成長条件の最適成長条件への変更は、作業者が手動により行っても良く、あるいは、制御装置により自動制御しても良い。
成長条件が最適成長条件に変更された後、その条件下においてCNTの成長が続行される。上述した成長条件の一時的変更から最適成長条件への変更にいたる工程(第2〜第5工程)は、CNTの製造過程全体を通じて1回だけ行っても良く、あるいは、複数回繰り返しても良い。
【0027】
次に、本発明に係るCNT製造用プログラムについて説明する。
本発明に係るCNT製造用プログラムは、コンピュータを、
CNT製造装置内で製造されているCNTの成長条件、並びに、前記成長条件下における前記CNTの成長高さ及び測定時刻をメモリに記憶させる第1手段、
前記CNTの成長高さと前記測定時刻から前記CNTの成長速度を算出し、前記メモリに記憶させる第2手段、
所定時間経過後に、前記CNT製造装置に対して、一時的に前記CNTの成長条件の変更を指示する第3手段、
一時的に変更された前記CNTの成長条件下における前記CNTの成長速度を算出し、前記メモリに記憶させる第4手段、
前記第4手段において算出された前記CNTの成長速度が最適値となる最適成長条件を決定する第5手段、
前記成長条件の前記最適成長条件への変更を前記CNT製造装置に指示する第6手段、
として機能させるためのものである。図2に、そのフローチャートの一例を示す。
【0028】
まず、ステップ1(以下、「S1」という)において、CNT製造装置内で製造されているCNTの現在の成長条件下におけるCNTの成長高さ、及び、成長高さの計測時刻を測定し、メモリに記憶させる。この場合、現時点におけるCNTの成長条件も同時にメモリに記憶させておく。成長高さ及び計測時刻の測定間隔は、目的に応じて任意に選択することができる。
次に、S2において、現時点における成長速度を算出する。成長速度は、現時点における成長高さ(HN)及び計測時刻(tN)、並びに、それより以前に測定された成長高さ(HN-n)及び計測時刻(tN-n)を用いて、次の(a)式により算出することができる。
成長速度=(HN−HN-n)/(tN−tN-n) ・・・(a)
(a)式において、nは、成長速度の算出間隔を表す。nは、目的に応じて任意に選択することができる。例えば、成長高さを1秒間隔で測定し、成長速度は30秒間隔で算出することができる。一般に、nが小さいと、値のバラツキが大きくなるが、タイムラグが小さくなる。一方、nが大きいと、値が安定化するが、タイムラグが生じる。
【0029】
次に、S3において、成長条件の一時的な変更が行われているか否かが判断される。成長条件の一時的な変更が行われていない場合(S3:NO)には、S4に進み、そこで所定時間が経過したか否かが判断される。所定時間が経過していない場合(S4:NO)には、S1に戻り、所定時間が経過するまで、S1〜S4の各ステップが繰り返される。すなわち、現時点における成長条件が維持されたまま、CNTの成長が続行される。
【0030】
一方、所定時間が経過した場合(S4:YES)には、S5に進む。S5において、一時的に変更する成長条件の選択が可能か否かが判断される。所定時間が経過した直後は、すべての成長条件を選択することが可能である(S5:YES)ので、S6に進み、ここで優先順位が最上位である成長条件(例えば、成長温度)を選択する。次いで、S7において、CNT製造装置に対し、選択された成長条件を予め定められた変化幅(例えば、5℃づつ)又は変化速度(例えば、1℃/min)で一時的に増加又は減少させるよう指示する。
次に、S1に戻り、一時的に変更された成長条件下における成長高さ及び計測時刻を測定し、S2において、成長高さ及び計測時刻から成長速度を算出し、メモリに記憶させる。次に、S3に進み、成長条件の一時的な変更が行われているか否かが判断される。この時点では、成長条件の一時的な変更が行われている(S3:YES)ので、S8に進む。
【0031】
S8においては、S2において算出された成長速度が最適値か否かが判断される。成長速度が最適値である場合(S8:YES)には、S9において、最適値に対応する成長条件を最適成長条件として選択(成長条件の決定)し、メモリに記憶させる。また、成長条件の最適成長条件への変更をCNT製造装置に指示する。さらに、S10において、成長条件の一時的変更を解除し、S1に戻る。そして、再度、所定時間が経過するまで、S1〜S4の各ステップを繰り返す。
【0032】
一方、S8において、成長速度が最適値でない場合(S8:NO)には、S11に進み、そこで、直前の成長条件下における成長速度に比べて、成長速度が最適値に接近したか否かが判断される。成長速度が最適値に接近した場合(S11:YES)には、現在選択されている成長条件の増減のみで最適値に到達する可能性がある。そこで、この場合にはS7に進み、選択された成長条件を予め定められた変化幅又は変化速度で、再度、増減させる。そして、成長速度が最適値に到達するまで、S1〜S3、S8、S11、S7の各ステップを繰り返す。
【0033】
優先順位が1位である成長条件を増減させても、成長速度が最適値とならず(S8:NO)、かつ、成長速度がこれ以上最適値に接近しないとき(S11:NO)には、S12に進み、最適値に最も接近した条件(次善値)を選択し、メモリに記憶させる。また、成長条件の次善値への変更をCNT製造装置に指示する。
次に、S5に進み、再度、成長条件選択が可能か否かが判断される。この時点では、1つ目の成長条件を増減させただけであり、優先順位が2番目以降の成長条件を選択することが可能である(S5:YES)ので、S6に進み、そこで、優先順位が2位である成長条件を選択する。
以下、同様にして、成長速度が最適値に達する(S8:YES)まで、あるいは、選択可能な成長条件がなくなる(S5:NO)まで、S7、S1〜S3、S8、S11〜S12、S5の各ステップを繰り返す。
【0034】
成長速度が最適値に到達しない(S8:NO)にもかかわらず、選択可能な成長条件がなくなった場合(S11:NO、S5:NO)には、S13に進む。S13においては、一連の成長条件の一時的な変更操作により、変更前に比べて成長速度が最適値に接近したか否かが判断される。成長速度の「最適値」の定義によっては、成長過程全体を通じて、成長条件を最適値に保つのが困難な場合がある。例えば、成長速度が常に一定になるように制御する場合である。一時的な成長条件の変更によって、変更前に比べて成長速度が最適値に接近した場合(S13:YES)は、成長条件の変更によって成長速度を最適値にすることはできないが、最適値に近づけることができる可能性がある。この場合には、S14に進み、そこで成長条件変更を解除する。さらに、S1に戻り、一時的な成長条件の変更によって成長条件が最適値に接近しなくなるまで、上述した各ステップを繰り返す。
一方、成長条件の一時的な変更が、成長速度を最適値から遠ざける方向にのみ作用する場合(S13:NO)には、成長条件の一時的変更を終了させる。
【0035】
次に、本発明に係るCNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラムの作用について説明する。
従来、CNTの成長高さの測定は、温度、圧力、ガス流量などの成長条件を種々変化させてCNT成長実験を行い、電子顕微鏡などで後からCNT成長高さを測定し、成長速度を算出していた。
しかしながら、このような方法により得られる成長速度は、CNTの成長過程全体の平均値に過ぎない。そのため、ある特定の条件下における成長速度の経時変化を知るためには、図3(a)に示すように、成長時間のみを変えた複数回の実験を行う必要がある。また、成長条件を変えてCNTの成長実験を行った場合、図3(b)に示すように、実験ごとのバラツキの影響と、成長条件の影響の区別が困難な場合がある。そのため、成長条件の変化に伴う成長速度の正確な変化を捉えるためには、多数回の実験を行う必要がある。また、複数ある成長条件の最適値を見出すためには、さらに数多くの実験を繰り返す必要がある。
さらに、成長速度の極大値が得られる条件が刻々と変化する場合、CNTの成長を開始した時点において成長条件を最適化しても、時間の経過とともに最適条件からのずれが生じ、CNTの成長速度が急速に低下する。
【0036】
この問題を解決するために、CNTの成長高さをその場観察することも考えられる。しかしながら、従来知られているその場観察法は、いずれも間接的な膜厚測定法であるため、測定誤差が生じやすい。また、測定可能な膜厚レンジが限られている、試料の特殊形状が成長速度に影響を与える、などの問題がある。
【0037】
これに対し、光学マイクロスコープ及びデジタルカメラを用いて基板の側面の画像を捉えると、図4(a)に示すように、1回の実験でCNTの成長高さの経時変化を測定することができる。しかも、基板の断面を直接、捉えているので、測定可能な膜厚レンジに事実上、制限がない。また、CNTの密度の影響を受けず、特殊な形状の試料も必要としない。そのため、CNTの成長量によらず、CNTの成長高さを高精度で測定することができる。また、画像処理装置を用いて画像を処理すると、CNTの成長高さをさらに高精度で測定することができる。
また、図4(b)に示すように、CNTの成長を開始してから所定時間が経過したところで、観察手段によりCNTの成長高さをその場観察しながら、一時的に成長条件を変更すると、成長条件の変更に伴うCNT成長高さの変化を正確に測定することができる。そのため、CNTを成長させながら、時々刻々変化するCNTの成長速度を知ることができ、CNT製造装置への最適成長条件のフィードバックが容易化する。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
[1. 実験方法]
図1に示すCNT製造装置を用いて、CNTの成長実験を行った。基板には、Fe−Ti−O触媒粒子を担持させたSi基板を用いた。成長条件は、水素流量:45sccm、アセチレン流量:10sccm、温度:710℃、圧力:266Paとした。その際、CNTの成長の様子を光学マイクロスコープ及びCCDカメラで観察した。得られた画像から画像処理装置を用いてCNT成長高さ(膜厚)をその場測定し、成長速度を随時算出した。
【0039】
[2. 結果]
図5に、CCDカメラで撮影された基板の断面写真を示す。図5より、時間の経過とともにCNTの成長高さが増大していることがわかる。なお、「成長時間:0min」とは、容器内温度が所定の温度に達した時刻をいう。「成長時間:0min」でもわずかにCNTの成長が認められるのは、昇温途中でCNTの成長が開始するためである。
図6に、CNT膜厚及び成長速度の経時変化を示す。光学マイクロスコープ及びCCDカメラを用いることにより、CNT膜厚を1μm単位で、成長速度を1μm/min単位で測定することができた。
なお、CNTの膜厚が測定視野より厚くなった場合には、光学マイクロスコープの倍率を落とす、又は、CNTの先端部のみの画像からその変化を追跡する、等の方法により、膜厚変化を測定することができた。
【0040】
(実施例2)
[1. 実験方法]
CNTを成長させる過程で、温度、圧力、又は、C2H2/H2流量比を一時的に変化させた以外は、実施例1と同一条件下でCNTを成長させ、CNTの成長高さ(膜厚)をその場観察した。
【0041】
[2. 結果]
図7に、温度を690℃〜740℃の範囲で周期的に変化させたときの成長速度の変化を示す。図7より、成長速度に及ぼす温度の影響が大きいことがわかる。温度のピークの位置は、成長速度のピークの位置から若干ずれており、成長速度を極大にするための最適温度があることがわかった。成長時間の経過(すなわち、CNTの成長量の増大)に伴い、成長速度に及ぼす温度の影響は、次第に小さくなった。
図8に、圧力を150〜800Paの範囲でステップ状に変化させたときの成長速度の変化を示す。図8より、成長速度に及ぼす圧力の影響が大きいことがわかる。特に成膜初期においては、圧力を変化させることにより、成長速度を大幅に変化させることができた。一方、成長時間の経過(すなわち、CNTの成長量の増大)に伴い、成長速度に及ぼす圧力の影響は次第に小さくなった。
図9に、C2H2/H2流量比を0.1〜0.75の範囲でステップ状に変化させたときの成長速度の変化を示す。図9より、成長速度に及ぼすC2H2/H2流量比の影響が大きいことがわかる。CNTの成長中にC2H2/H2流量比を増加させることにより、成長速度を大幅に上昇させることができた。
【0042】
(実施例3、比較例1)
[1. 実験方法]
温度710℃でCNTの成長を開始してから、7分後、12分後、18分後、及び、24分後に温度を5℃上昇させた以外は、実施例1と同一条件下でCNTを成長させ、CNTの成長高さをその場観察した(実施例3)。
また、比較として、温度を710℃で一定に保った以外は、実施例3と同一条件下でCNTを成長させ、CNTの成長高さをその場観察した(比較例1)。
【0043】
[2. 結果]
図10に、CNT膜厚及び成長速度の経時変化を示す。図10より、CNTの成長中に成長温度を上昇させることにより、成長速度の低下を緩和できることがわかる。一定の成長温度で成長させた場合(比較例1)、30分経過後のCNT膜厚は、250μmであった。一方、成長温度を調節した場合(実施例3)、30分経過後のCNT膜厚は、300μmに達しており、同一の成長時間でより長尺のCNTを作製することができた。
【0044】
(実施例4)
[1. 実験方法]
CNTの成長中に成長速度の変化を検出しながら、C2H2ガス流量のみをプログラムにより自動調節し、成長速度の一定保持を試みた。なお、C2H2ガス流量以外の成長条件は、実施例1と同一とした。
[2. 結果]
図11に、成長速度及びC2H2/H2流量比の経時変化を示す。図11より、成長時間の経過とともにC2H2/H2流量比(すなわち、C2H2ガス流量)を上昇させることにより、成長速度をほぼ一定に保持できることがわかった。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば、基板表面に成長したCNTの密度が均一になりやすい系においては、光学マイクロスコープ及びデジタルカメラを用いたその場観察法に代えて、高精度電子天秤を用いて成長中の基板の重量変化を測定し、重量変化からCNTの成長高さを算出しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るCNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラムは、電子顕微鏡などに用いられる電子放出源(点光源)、半導体の配線材料、放熱材料、繊維材料、走査型トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡、磁気力顕微鏡、走査型近接場光学顕微鏡などの走査型プローブ顕微鏡に用いられる探針等に用いられるCNTの製造装置、製造方法、及び、CNT製造用プログラムとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るCNT製造装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係るCNT製造用プログラムのフローチャートの一例である。
【図3】従来のCNT成長速度の評価方法を示す模式図である。
【図4】本発明を用いたCNT成長速度の評価方法を示す模式図である。
【図5】本発明に係るCNT製造装置を用いて基板表面にCNTを成長させ、所定時間経過後(図5(a):0分、図5(b):10分、図5(c)20分、図5(d):30分)に、光学マイクロスコープ及びCCDカメラで撮影した基板の側面の写真である。
【図6】成長条件を一定に保った場合のCNT膜厚と成長速度の経時変化を示す図である。
【図7】成長温度を周期的に変化させた場合の成長速度の経時変化を示す図である。
【図8】圧力をステップ状に変化させた場合の成長速度の経時変化を示す図である。
【図9】C2H2/H2流量比をステップ状に変化させた場合の成長速度の経時変化を示す図である。
【図10】CNTの成長過程で成長温度を調節した場合、及び、温度を一定に保った場合のCNT膜厚と成長速度の経時変化を示す図である。
【図11】C2H2/H2流量比を自動制御した場合の成長速度の経時変化を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、CNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラムに関し、更に詳しくは、CNTの成長高さによらずCNTの成長速度をその場観察することが可能であり、かつ、CNTの成長速度が最適値となる最適成長条件への変更が容易なCNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)は、黒鉛の一層に相当するグラフェンシート(炭素原子が六角網目状に配列したシート)を筒状に丸めた立体構造を持つ。CNTは、1枚の円筒状グラフェンシートからなる単層CNTと、複数枚の円筒状グラフェンシートが同心円状に重なった多層CNTとがある。また、合成された未処理のCNTの先端は、通常、「キャップ」と呼ばれる半球状のグラファイト層で閉じられた構造になっている。
【0003】
CNTは、nmオーダーの直径と、μm〜cmオーダーの長さを有しており、アスペクト比が極めて大きく、先端の曲率半径が数nm〜数十nmと極めて小さいという特徴がある。CNTは、機械的にも強靱で、化学的・熱的安定性に優れ、円筒部のらせん構造に応じて金属にも半導体にもなるという特徴がある。そのため、CNTは、発光デバイス用の電子配線材料、放熱材料、繊維材料、電子放出源(面光源)、トランジスタ材料、電子顕微鏡用の電子放出源(点光源)、あるいは、SPM用の探針等への応用が期待されている。
【0004】
CNTを合成する方法には、
(1)Arや水素等の気体雰囲気中において、触媒を混ぜた炭素棒間でアーク放電を行わせ、チャンバー外壁や陰極上にCNTを堆積させるアーク法、
(2)触媒を混ぜたグラファイトの表面にYAGレーザー等の強いパルス光を当て、これにより発生した炭素の煙を電気炉で加熱し、反応管の側壁にCNTを付着させるレーザー蒸発法、
(3)触媒金属微粒子上で炭素化合物(例えば、メタン、アセチレン、ベンゼン、エタノールなど)を熱分解させる化学気相成長(CVD)法、
などが知られている。
【0005】
(1)及び(2)の合成法により得られるCNTは、いずれも完全にランダムな方向を向いて絡み合った状態になっている。また、多量のカーボンナノカプセルやアモルファス粒子等を含んでいる場合もある。一方、CNTの持つ究極の異方性を最大限に引き出すためには、多数本のCNTを基材表面に配向させることが望ましい。また、CNTを電子配線材料、放熱材料、繊維材料等に応用する場合において、高電流密度、高熱伝導性、高強度等を得るためには、CNTを基板表面に高密度に生成させることが望ましく、(3)のCVD法がこの目的に適する。
【0006】
基板表面に触媒粒子を担持させ、基板表面にほぼ垂直に高密度のCNTを生成させる場合、CNTの成長速度は、温度、圧力、ガス流量などの複数の成長条件に依存する。従来、これらの成長条件とCNTの成長速度との関係を調べる場合には、
(a) 成長条件を変化させてCNTの成長実験を行い、
(b) 実験終了後に製造装置内から基板を取り出し、CNTの成長高さを電子顕微鏡などで測定し、
(c) 測定された成長高さから成長速度を算出する
という方法が用いられていた。
しかしながら、このような方法では、条件を変更するごとに実験を行う必要がある。そのため、より高いCNT成長速度を得る条件を決定するためには、多数回の実験を行う必要がある。
また、CNTは、炭素源が触媒粒子まで拡散することによって成長が進行するので、CNTの成長速度は、CNTの成長高さ、触媒粒子の周囲の環境などに依存して変化する。しかしながら、従来の方法により得られる成長速度は、ある条件下での平均値のみであり、成長速度の経時変化を知ることができない。
【0007】
そこでこの問題を解決するために、CNTの成長高さをその場測定する方法に関し、従来から種々の提案がなされている。
これまでに報告されているその場測定法としては、具体的には、
(1) 基板表面から反射する光とCNT表面から反射する光の行程差を用いてCNTの成長高さをその場測定する光学的干渉法(非特許文献1、2)、
(2) CNTを成長させた基板に光を当て、基板を透過した光の強度から光吸収率を求め、光吸収率を用いてCNTの成長高さをその場測定する光学吸収法(非特許文献3)、
(3) 基板にスリットを設け、スリットの内周面に対して垂直にCNTを成長させ、レーザー光をこのスリットで回折させることによりCNTの成長高さをその場測定する単スリットレーザー回折法(非特許文献4)、
などが知られている。
【0008】
【非特許文献1】Nano Lett. 3(2003)863-865
【非特許文献2】Carbon 41(2003)583-585
【非特許文献3】Chem. Phys. Lett. 403(2005)320-323
【非特許文献4】Nano Lett. 4(2004)1613-1620
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光学的干渉法においては、CNTの膜厚が厚くなると、干渉振幅が減衰する。また、CNTの膜厚がさらに厚くなると、光の不透過により測定不能となる。そのため、光学的干渉法の測定限界は、数μm程度である。
光学吸収法においては、光の吸収率は、CNTの成長高さだけではなく、基板表面に成長したCNTの密度にも依存する。また、CNTの膜厚がある一定値以上になると、光吸収率が飽和する。そのため、光吸収法は、均一に成長したCNTに対してのみ適用可能であり、その測定限界は、10μm程度である。
単スリットレーザー回折法においては、測定可能な膜厚の最大値がスリットの幅で制限される。また、CNTの成長量もスリット形状の影響を受ける。
また、これらの方法は、いずれもCNTの成長量を直接観察しているのではなく、光やレーザーに生じる影響を検出する間接的な膜厚測定法である。そのため、
(1) 成長量が増えるに従い、測定誤差が生じやすくなる、
(2) 測定方法が条件振りを行うために必要な膜厚レンジを網羅していない、
(3) 試料の特殊形状が成長速度変化に影響する、
などの問題がある。
さらに、CNTの成長量をその場測定し、成長中にCNTの成長条件を変化させ、CNTを最適条件下で成長させる方法が提案された例は、従来にはない。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、CNTの成長高さによらずCNTの成長速度をその場観察することが可能なCNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラムを提供することにある。
本発明が解決しようとする課題は、CNTの成長速度が最適値となる最適成長条件への変更が容易なCNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラムを提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、測定誤差が小さく、測定可能な膜厚レンジが広く、かつ、測定に際して特殊な試料形状が不要なCNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係るCNT製造装置は、
基板が載置された容器内に炭素源を供給し、前記基板上にCNTを成長させるCNT成長手段と、
前記CNTの成長高さをその場測定する観察手段とを備え、
前記観察手段は、
前記基板の側面の画像を捉えるための光学マイクロスコープと、
前記画像をデジタルデータとして記憶するデジタルカメラと、
を備えている。
前記制御手段は、前記デジタルデータを処理して前記成長高さを算出する画像処理装置をさらに備えていても良い。
また、前記CNT製造装置は、
前記成長高さから前記CNTの成長速度を算出し、前記成長速度に基づき、前記CNTの成長条件を最適成長条件に変更する制御手段
をさらに備えていても良い。
【0012】
本発明に係るCNTの製造方法は、
本発明に係るCNT製造装置を用いて、CNTの成長高さをその場測定しながら前記CNTを成長させる第1工程と、
所定時間経過後に、一時的に前記CNTの成長条件を変更する第2工程と、
一時的に変更された前記成長条件下における前記成長高さを測定する第3工程と、
前記成長高さから成長速度を求め、前記成長速度が最適値となる最適成長条件を決定する第4工程と、
前記成長条件を前記最適成長条件に変更する第5工程と
を備えている。
【0013】
さらに、本発明に係るCNT製造用プログラムは、
コンピュータを、
CNT製造装置内で製造されているCNTの成長条件、並びに、前記成長条件下における前記CNTの成長高さ及び計測時刻をメモリに記憶させる第1手段、
前記成長高さと前記測定時刻から前記CNTの成長速度を算出し、前記メモリに記憶させる第2手段、
所定時間経過後に、前記CNT製造装置に対して、一時的に前記成長条件の変更を指示する第3手段、
一時的に変更された前記成長条件下における前記成長速度を算出し、前記メモリに記憶させる第4手段、
前記第4手段において算出された前記成長速度が最適値となる最適成長条件を決定する第5手段、
前記成長条件の前記最適成長条件への変更を前記CNT製造装置に指示する第6手段、
として機能させるためのものからなる。
【発明の効果】
【0014】
光学マイクロスコープ及びデジタルカメラを用いて基板の側面の画像を捉えると、CNTの成長量によらず、CNTの成長高さを高精度で測定することができる。また、CNTの成長を開始してから所定時間が経過したところで、観察手段によりCNTの成長高さをその場観察しながら、一時的に成長条件を変更すると、成長条件の変更に伴うCNT成長高さの変化を正確に測定することができる。そのため、CNTを成長させながら、時々刻々変化するCNTの成長速度を知ることができ、CNT製造装置への最適成長条件のフィードバックが容易化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
図1に、本発明の一実施の形態に係るCNT製造装置の概略構成図を示す。
本発明に係るCNT製造装置は、CVD装置(CNT成長手段)と、観察装置(観察手段)と、プログラマブルコントローラー(制御手段)とを備えている。
【0016】
CVD装置は、基板が載置された容器内に炭素源を供給し、基板上にCNTを成長させるためのものである。
基板上に成長したCNTは、光学マイクロスコープで直接観察するので、基板を収容する容器には、光を透過する材料(例えば、石英ガラス管など)が用いらる。また、基板は、耐熱性の高い材料(例えば、Taワイヤーなど)を用いて、ステージから離れた位置に固定されている。基板は、ステージ上に直接載せても良いが、基板をステージから離れた位置に固定すると、基板の側面を観察するのが容易化する。さらに、基板の上方には光照射手段(図示せず)が設けられ、基板の上面に光を照射するようになっている。光照射手段は、必ずしも必要ではないが、基板上に光を照射すると、特に光量が不足する高倍率下における観察が容易化する。光源としては、ハロゲンランプ、キセノンランプ、赤外線ランプなどがある。
【0017】
その他、CVD装置には、図示はしないが、
(1) 容器内を所定の温度に維持するためのヒータ、
(2) 容器内を所定の圧力に維持するための排気及びバルブ装置、
(3) 容器内に炭素源を供給するための炭素源供給装置、
(4) 容器内に還元ガスを供給するための還元ガス供給装置、
(5) 容器内に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給装置、
(5) 容器内に各種ガスを供給するためのキャリアガス供給装置、
などが設けられている。
また、光学マイクロスコープによる基板の観察を容易化するために、基板の背面(光学マイクロスコープの反対側)に光を反射する材料(例えば、アルミナなどの耐熱性セラミックス、Si基板など)からなる反射板を設けても良い。
【0018】
観察装置は、光学マイクロスコープと、デジタルカメラと、画像処理装置とモニターとを備えている。
光学マイクロスコープは、基板の側面の画像を捉えるためのものである。光学マイクロスコープには、焦点距離が極めて長く、高倍率(例えば、1000倍)での観察が可能なマイクロスコープを用いる。
デジタルカメラは、光学マイクロスコープが捉えた基板の側面の画像を、固体撮像素子及び電磁気録媒体を用いてデジタルデータとして記憶するためのものである。デジタルカメラは、静止画のみを撮影可能なものでも良く、あるいは、動画を撮影可能なものでも良い。図1に示す例においては、デジタルカメラとしてCCDカメラが用いられている。
画像処理装置は、デジタルカメラにより記憶されたデジタルデータを処理して、CNTの成長高さを算出するためのものである。画像処理装置としては、極めて短い時間間隔で画像を処理することが可能なリアルタイム画像処理装置が好ましい。画像処理装置を用いたCNTの成長高さの算出方法は、特に限定されるものではないが、基板、CNT及び背景の濃度差から画像に含まれるCNTの面積(S)を求め、これを画像に含まれるCNTの横幅(L)で除して成長高さ(S/L)とする方法が好ましい。この方法は、CNTの成長高さの平均値を正確に算出できるという利点がある。なお、デジタルカメラに内蔵されているモニタ又は図1に示すような外付けのモニタに画像を表示させ、作業者が画像から、直接、成長高さを読み取る場合には、画像処理装置を省略することができる。
モニタは、デジタルカメラで撮影された画像を表示するためのものである。モニタは、必ずしも必要ではないが、モニタがあると、作業者がCNTの成長過程を視認できるという利点がある。また、CNTの成長が安定期にあるときは、作業者がモニタからCNTの成長高さを直接、定規などで読み取り、手動でCVD装置を操作することもできる。
【0019】
プログラマブルコントローラーは、画像処理装置で算出されたCNTの成長高さからCNTの成長速度を算出し、算出された成長速度に基づき、CNTの成長条件を最適成長条件に変更するためのものである。CNT成長の安定期においては、プログラマブルコントローラーによる制御は必ずしも必要ではなく、作業者が手動でCVD装置を制御することもできる。しかしながら、プログラマブルコントローラーを用いると、成膜初期などの不安定期においても、精密な条件制御を行うことができるという利点がある。
プログラマブルコントローラは、具体的には、
(1) CNTの成長中に、CVD装置(CNT成長手段)に対して一時的にCNTの成長条件の変更を指示する成長条件変更手段、
(2) 一時的に変更されたCNTの成長条件下においてCNTの成長高さを測定し、測定された成長高さを用いてCNTの成長速度を算出する成長速度算出手段、
(3) CNTの成長速度が最適値となる最適成長条件を決定する最適条件決定手段、
(4) CVD装置(CNT成長手段)に対し、成長条件の最適成長条件への変更を指示する変更手段、
を備えているものが好ましい。
【0020】
CNTの成長速度に影響を及ぼす成長条件としては、具体的には、CNT成長温度、容器内圧力、炭素源流量、還元ガス流量、酸化剤ガス流量、キャリアガス流量、これらのガスのガス流量比などがある。CNTの成長速度に及ぼす各成長条件の一般的な影響は、以下の通りである。
(1) CNT成長温度: CNT成長温度が低すぎると、CNTの成長速度は低下する。同様に、CNT成長温度が高すぎると、CNTの成長速度は低下する。
(2) 容器内圧力: 容器内圧力が低すぎると、容器内の炭素源濃度が低下するので、CNTの成長速度は低下する。一方、容器内圧力が高すぎると、CNTの成長速度は飽和する傾向にある。
(3) 炭素源流量: 炭素源流量が多くなるほど、CNTの成長速度は増加する。一方、炭素源流量が過剰になると、アモルファスカーボンの生成量が増大するので、CNTの成長速度は低下する。
(4) 還元ガス流量: 還元ガス流量が多くなるほど、基板表面に担持させる触媒の酸化が抑制されるので、CNTの成長速度は増加する。一方、還元ガス流量が過剰になると、容器内の炭素源濃度が低下するので、CNTの成長速度は低下する。
(5) 酸化剤ガス流量: 酸化剤ガス流量が多くなるほど、副生するアモルファスカーボンが除去されるので、CNTの成長速度は増加する。一方、酸化剤ガス流量が過剰になると、触媒が失活し、あるいは、CNT自身が酸化する。
(6) キャリアガス流量: キャリアガスは、炭素源ガス、還元ガス、又は、酸化剤ガスを触媒に効率よく供給するためのものであり、Ar、Heなどの不活性ガスが用いられる。キャリアガス流量が低すぎると、各種ガスの触媒付近での循環、供給が悪くなり、成長速度が低下する場合がある。一方、キャリアガス流量が多すぎると、炭素源濃度が低下し、成長速度も低下する。
(7) ガス流量比: 上述した各種ガスの混合比には、成長速度が最大となる適正値が存在する。
【0021】
次に、本発明に係るCNTの製造方法について説明する。
本発明に係るCNTの製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程と、第5工程とを備えている。
第1工程は、本発明に係るCNT製造装置を用いて、CNTの成長高さをその場測定しながらCNTを成長させる工程である。上述したように、まず、光学マイクロスコープで基板の側面の画像を捉え、デジタルカメラを用いて画像をデジタルデータとして記憶する。記憶させた画像をモニタに表示させ、モニタから成長高さを直接、読み取る。あるいは、画像処理装置を備えている場合には、画像処理装置でデジタルデータを処理し、CNTの成長高さを算出する。この場合、成長高さの計測間隔は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。
【0022】
第2工程は、所定時間経過後に、一時的にCNTの成長条件を変更する工程である。
CNTの成長条件の一時的な変更を行う時間間隔は、任意に選択することができる。この場合、時間間隔は、CNTの成長過程全体を通して一定であっても良く、あるいは、CNTの成長段階に応じて時間間隔を変えても良い。
CNTの成長条件の一時的な変更は、作業者が手動で行っても良く、あるいは、制御装置を用いて自動制御しても良い。制御装置を用いて成長条件の変更を行うと、成膜初期のような不安定期においても精密な条件制御を行うことができるという利点がある。
【0023】
一時的にCNTの成長条件を変更する場合、まず、上述した複数の成長条件に優先順位を付ける。優先順位の付け方は、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。一般に、成長速度に与える影響が大きい成長条件ほど、高い優先順位を付けるのが好ましい。また、優先順位は、CNTの成長過程全体を通して常に同一であっても良く、あるいは、CNTの成長段階に応じて優先順位が異なっていても良い。
次に、優先順位が1位である成長条件を一時的に変化させる。成長条件は、ステップ状に変化させても良く、あるいは、連続的に変化させても良い。この場合、ステップ状に変化させる場合の変更幅又は連続的に変化させる場合の変更速度は、目的に応じて任意に選択することができる。
優先順位が2位以下である成長条件の変更は、優先順位がそれより上位である成長条件を変更させてもCNTの成長速度が予め定められた値(最適値)に到達しない場合に行われる。優先順位が2位以下である成長条件を変更する場合、それより上位の成長条件は、通常、最適値に最接近した条件に固定されるが、これに限定されるものではない。
【0024】
第3工程は、一時的に変更されたCNTの成長条件下におけるCNTの成長高さを測定する工程である。
CNTの成長高さは、作業者がモニターの画面から直接読み取っても良く、あるいは、画像処理装置から出力されるデータを制御装置に読み込ませても良い。成長高さは、上述したように画像に占めるCNTの領域の面積及び横幅から算出しても良く、あるいは、数カ所のCNTの高さを直接、モニタで読み取り、平均値を算出しても良い。
【0025】
第4工程は、測定された成長高さから成長速度を求め、成長速度が最適値となる最適成長条件を決定する工程である。
成長速度の算出は、作業者が計算により行っても良く、あるいは、制御装置に計算させても良い。
CNTの成長速度の「最適値」は、目的に応じて任意に定義することができる。
最適値の定義としては、具体的には、
(1) 成長条件によらず、常に一定の成長速度を最適値とするもの、
(2) 一時的な条件変更を行った時点における最大の成長速度を最適値とするもの、
(3) CNTの成長段階に応じて、異なる成長速度を最適値とするもの(例えば、成長初期は、一定の成長速度に保ち、成長後期は、最大の成長速度に保つ場合)、
などがある。
優先順位が1位である成長条件のみの変更で成長速度が最適値となる場合は、この時の成長条件を最適成長条件と決定する。一方、優先順位が1位である成長条件のみの変更で成長速度が最適値とならない場合には、優先順位が2位以下である成長条件を順次変更し、成長速度が最適値となったところで、この時の成長条件を最適成長条件と決定する。
【0026】
第5工程は、CNT製造装置の成長条件を第4工程で決定された最適成長条件に変更する工程である。
成長条件の最適成長条件への変更は、作業者が手動により行っても良く、あるいは、制御装置により自動制御しても良い。
成長条件が最適成長条件に変更された後、その条件下においてCNTの成長が続行される。上述した成長条件の一時的変更から最適成長条件への変更にいたる工程(第2〜第5工程)は、CNTの製造過程全体を通じて1回だけ行っても良く、あるいは、複数回繰り返しても良い。
【0027】
次に、本発明に係るCNT製造用プログラムについて説明する。
本発明に係るCNT製造用プログラムは、コンピュータを、
CNT製造装置内で製造されているCNTの成長条件、並びに、前記成長条件下における前記CNTの成長高さ及び測定時刻をメモリに記憶させる第1手段、
前記CNTの成長高さと前記測定時刻から前記CNTの成長速度を算出し、前記メモリに記憶させる第2手段、
所定時間経過後に、前記CNT製造装置に対して、一時的に前記CNTの成長条件の変更を指示する第3手段、
一時的に変更された前記CNTの成長条件下における前記CNTの成長速度を算出し、前記メモリに記憶させる第4手段、
前記第4手段において算出された前記CNTの成長速度が最適値となる最適成長条件を決定する第5手段、
前記成長条件の前記最適成長条件への変更を前記CNT製造装置に指示する第6手段、
として機能させるためのものである。図2に、そのフローチャートの一例を示す。
【0028】
まず、ステップ1(以下、「S1」という)において、CNT製造装置内で製造されているCNTの現在の成長条件下におけるCNTの成長高さ、及び、成長高さの計測時刻を測定し、メモリに記憶させる。この場合、現時点におけるCNTの成長条件も同時にメモリに記憶させておく。成長高さ及び計測時刻の測定間隔は、目的に応じて任意に選択することができる。
次に、S2において、現時点における成長速度を算出する。成長速度は、現時点における成長高さ(HN)及び計測時刻(tN)、並びに、それより以前に測定された成長高さ(HN-n)及び計測時刻(tN-n)を用いて、次の(a)式により算出することができる。
成長速度=(HN−HN-n)/(tN−tN-n) ・・・(a)
(a)式において、nは、成長速度の算出間隔を表す。nは、目的に応じて任意に選択することができる。例えば、成長高さを1秒間隔で測定し、成長速度は30秒間隔で算出することができる。一般に、nが小さいと、値のバラツキが大きくなるが、タイムラグが小さくなる。一方、nが大きいと、値が安定化するが、タイムラグが生じる。
【0029】
次に、S3において、成長条件の一時的な変更が行われているか否かが判断される。成長条件の一時的な変更が行われていない場合(S3:NO)には、S4に進み、そこで所定時間が経過したか否かが判断される。所定時間が経過していない場合(S4:NO)には、S1に戻り、所定時間が経過するまで、S1〜S4の各ステップが繰り返される。すなわち、現時点における成長条件が維持されたまま、CNTの成長が続行される。
【0030】
一方、所定時間が経過した場合(S4:YES)には、S5に進む。S5において、一時的に変更する成長条件の選択が可能か否かが判断される。所定時間が経過した直後は、すべての成長条件を選択することが可能である(S5:YES)ので、S6に進み、ここで優先順位が最上位である成長条件(例えば、成長温度)を選択する。次いで、S7において、CNT製造装置に対し、選択された成長条件を予め定められた変化幅(例えば、5℃づつ)又は変化速度(例えば、1℃/min)で一時的に増加又は減少させるよう指示する。
次に、S1に戻り、一時的に変更された成長条件下における成長高さ及び計測時刻を測定し、S2において、成長高さ及び計測時刻から成長速度を算出し、メモリに記憶させる。次に、S3に進み、成長条件の一時的な変更が行われているか否かが判断される。この時点では、成長条件の一時的な変更が行われている(S3:YES)ので、S8に進む。
【0031】
S8においては、S2において算出された成長速度が最適値か否かが判断される。成長速度が最適値である場合(S8:YES)には、S9において、最適値に対応する成長条件を最適成長条件として選択(成長条件の決定)し、メモリに記憶させる。また、成長条件の最適成長条件への変更をCNT製造装置に指示する。さらに、S10において、成長条件の一時的変更を解除し、S1に戻る。そして、再度、所定時間が経過するまで、S1〜S4の各ステップを繰り返す。
【0032】
一方、S8において、成長速度が最適値でない場合(S8:NO)には、S11に進み、そこで、直前の成長条件下における成長速度に比べて、成長速度が最適値に接近したか否かが判断される。成長速度が最適値に接近した場合(S11:YES)には、現在選択されている成長条件の増減のみで最適値に到達する可能性がある。そこで、この場合にはS7に進み、選択された成長条件を予め定められた変化幅又は変化速度で、再度、増減させる。そして、成長速度が最適値に到達するまで、S1〜S3、S8、S11、S7の各ステップを繰り返す。
【0033】
優先順位が1位である成長条件を増減させても、成長速度が最適値とならず(S8:NO)、かつ、成長速度がこれ以上最適値に接近しないとき(S11:NO)には、S12に進み、最適値に最も接近した条件(次善値)を選択し、メモリに記憶させる。また、成長条件の次善値への変更をCNT製造装置に指示する。
次に、S5に進み、再度、成長条件選択が可能か否かが判断される。この時点では、1つ目の成長条件を増減させただけであり、優先順位が2番目以降の成長条件を選択することが可能である(S5:YES)ので、S6に進み、そこで、優先順位が2位である成長条件を選択する。
以下、同様にして、成長速度が最適値に達する(S8:YES)まで、あるいは、選択可能な成長条件がなくなる(S5:NO)まで、S7、S1〜S3、S8、S11〜S12、S5の各ステップを繰り返す。
【0034】
成長速度が最適値に到達しない(S8:NO)にもかかわらず、選択可能な成長条件がなくなった場合(S11:NO、S5:NO)には、S13に進む。S13においては、一連の成長条件の一時的な変更操作により、変更前に比べて成長速度が最適値に接近したか否かが判断される。成長速度の「最適値」の定義によっては、成長過程全体を通じて、成長条件を最適値に保つのが困難な場合がある。例えば、成長速度が常に一定になるように制御する場合である。一時的な成長条件の変更によって、変更前に比べて成長速度が最適値に接近した場合(S13:YES)は、成長条件の変更によって成長速度を最適値にすることはできないが、最適値に近づけることができる可能性がある。この場合には、S14に進み、そこで成長条件変更を解除する。さらに、S1に戻り、一時的な成長条件の変更によって成長条件が最適値に接近しなくなるまで、上述した各ステップを繰り返す。
一方、成長条件の一時的な変更が、成長速度を最適値から遠ざける方向にのみ作用する場合(S13:NO)には、成長条件の一時的変更を終了させる。
【0035】
次に、本発明に係るCNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラムの作用について説明する。
従来、CNTの成長高さの測定は、温度、圧力、ガス流量などの成長条件を種々変化させてCNT成長実験を行い、電子顕微鏡などで後からCNT成長高さを測定し、成長速度を算出していた。
しかしながら、このような方法により得られる成長速度は、CNTの成長過程全体の平均値に過ぎない。そのため、ある特定の条件下における成長速度の経時変化を知るためには、図3(a)に示すように、成長時間のみを変えた複数回の実験を行う必要がある。また、成長条件を変えてCNTの成長実験を行った場合、図3(b)に示すように、実験ごとのバラツキの影響と、成長条件の影響の区別が困難な場合がある。そのため、成長条件の変化に伴う成長速度の正確な変化を捉えるためには、多数回の実験を行う必要がある。また、複数ある成長条件の最適値を見出すためには、さらに数多くの実験を繰り返す必要がある。
さらに、成長速度の極大値が得られる条件が刻々と変化する場合、CNTの成長を開始した時点において成長条件を最適化しても、時間の経過とともに最適条件からのずれが生じ、CNTの成長速度が急速に低下する。
【0036】
この問題を解決するために、CNTの成長高さをその場観察することも考えられる。しかしながら、従来知られているその場観察法は、いずれも間接的な膜厚測定法であるため、測定誤差が生じやすい。また、測定可能な膜厚レンジが限られている、試料の特殊形状が成長速度に影響を与える、などの問題がある。
【0037】
これに対し、光学マイクロスコープ及びデジタルカメラを用いて基板の側面の画像を捉えると、図4(a)に示すように、1回の実験でCNTの成長高さの経時変化を測定することができる。しかも、基板の断面を直接、捉えているので、測定可能な膜厚レンジに事実上、制限がない。また、CNTの密度の影響を受けず、特殊な形状の試料も必要としない。そのため、CNTの成長量によらず、CNTの成長高さを高精度で測定することができる。また、画像処理装置を用いて画像を処理すると、CNTの成長高さをさらに高精度で測定することができる。
また、図4(b)に示すように、CNTの成長を開始してから所定時間が経過したところで、観察手段によりCNTの成長高さをその場観察しながら、一時的に成長条件を変更すると、成長条件の変更に伴うCNT成長高さの変化を正確に測定することができる。そのため、CNTを成長させながら、時々刻々変化するCNTの成長速度を知ることができ、CNT製造装置への最適成長条件のフィードバックが容易化する。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
[1. 実験方法]
図1に示すCNT製造装置を用いて、CNTの成長実験を行った。基板には、Fe−Ti−O触媒粒子を担持させたSi基板を用いた。成長条件は、水素流量:45sccm、アセチレン流量:10sccm、温度:710℃、圧力:266Paとした。その際、CNTの成長の様子を光学マイクロスコープ及びCCDカメラで観察した。得られた画像から画像処理装置を用いてCNT成長高さ(膜厚)をその場測定し、成長速度を随時算出した。
【0039】
[2. 結果]
図5に、CCDカメラで撮影された基板の断面写真を示す。図5より、時間の経過とともにCNTの成長高さが増大していることがわかる。なお、「成長時間:0min」とは、容器内温度が所定の温度に達した時刻をいう。「成長時間:0min」でもわずかにCNTの成長が認められるのは、昇温途中でCNTの成長が開始するためである。
図6に、CNT膜厚及び成長速度の経時変化を示す。光学マイクロスコープ及びCCDカメラを用いることにより、CNT膜厚を1μm単位で、成長速度を1μm/min単位で測定することができた。
なお、CNTの膜厚が測定視野より厚くなった場合には、光学マイクロスコープの倍率を落とす、又は、CNTの先端部のみの画像からその変化を追跡する、等の方法により、膜厚変化を測定することができた。
【0040】
(実施例2)
[1. 実験方法]
CNTを成長させる過程で、温度、圧力、又は、C2H2/H2流量比を一時的に変化させた以外は、実施例1と同一条件下でCNTを成長させ、CNTの成長高さ(膜厚)をその場観察した。
【0041】
[2. 結果]
図7に、温度を690℃〜740℃の範囲で周期的に変化させたときの成長速度の変化を示す。図7より、成長速度に及ぼす温度の影響が大きいことがわかる。温度のピークの位置は、成長速度のピークの位置から若干ずれており、成長速度を極大にするための最適温度があることがわかった。成長時間の経過(すなわち、CNTの成長量の増大)に伴い、成長速度に及ぼす温度の影響は、次第に小さくなった。
図8に、圧力を150〜800Paの範囲でステップ状に変化させたときの成長速度の変化を示す。図8より、成長速度に及ぼす圧力の影響が大きいことがわかる。特に成膜初期においては、圧力を変化させることにより、成長速度を大幅に変化させることができた。一方、成長時間の経過(すなわち、CNTの成長量の増大)に伴い、成長速度に及ぼす圧力の影響は次第に小さくなった。
図9に、C2H2/H2流量比を0.1〜0.75の範囲でステップ状に変化させたときの成長速度の変化を示す。図9より、成長速度に及ぼすC2H2/H2流量比の影響が大きいことがわかる。CNTの成長中にC2H2/H2流量比を増加させることにより、成長速度を大幅に上昇させることができた。
【0042】
(実施例3、比較例1)
[1. 実験方法]
温度710℃でCNTの成長を開始してから、7分後、12分後、18分後、及び、24分後に温度を5℃上昇させた以外は、実施例1と同一条件下でCNTを成長させ、CNTの成長高さをその場観察した(実施例3)。
また、比較として、温度を710℃で一定に保った以外は、実施例3と同一条件下でCNTを成長させ、CNTの成長高さをその場観察した(比較例1)。
【0043】
[2. 結果]
図10に、CNT膜厚及び成長速度の経時変化を示す。図10より、CNTの成長中に成長温度を上昇させることにより、成長速度の低下を緩和できることがわかる。一定の成長温度で成長させた場合(比較例1)、30分経過後のCNT膜厚は、250μmであった。一方、成長温度を調節した場合(実施例3)、30分経過後のCNT膜厚は、300μmに達しており、同一の成長時間でより長尺のCNTを作製することができた。
【0044】
(実施例4)
[1. 実験方法]
CNTの成長中に成長速度の変化を検出しながら、C2H2ガス流量のみをプログラムにより自動調節し、成長速度の一定保持を試みた。なお、C2H2ガス流量以外の成長条件は、実施例1と同一とした。
[2. 結果]
図11に、成長速度及びC2H2/H2流量比の経時変化を示す。図11より、成長時間の経過とともにC2H2/H2流量比(すなわち、C2H2ガス流量)を上昇させることにより、成長速度をほぼ一定に保持できることがわかった。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば、基板表面に成長したCNTの密度が均一になりやすい系においては、光学マイクロスコープ及びデジタルカメラを用いたその場観察法に代えて、高精度電子天秤を用いて成長中の基板の重量変化を測定し、重量変化からCNTの成長高さを算出しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るCNT製造装置、CNTの製造方法、及び、CNT製造用プログラムは、電子顕微鏡などに用いられる電子放出源(点光源)、半導体の配線材料、放熱材料、繊維材料、走査型トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡、磁気力顕微鏡、走査型近接場光学顕微鏡などの走査型プローブ顕微鏡に用いられる探針等に用いられるCNTの製造装置、製造方法、及び、CNT製造用プログラムとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るCNT製造装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係るCNT製造用プログラムのフローチャートの一例である。
【図3】従来のCNT成長速度の評価方法を示す模式図である。
【図4】本発明を用いたCNT成長速度の評価方法を示す模式図である。
【図5】本発明に係るCNT製造装置を用いて基板表面にCNTを成長させ、所定時間経過後(図5(a):0分、図5(b):10分、図5(c)20分、図5(d):30分)に、光学マイクロスコープ及びCCDカメラで撮影した基板の側面の写真である。
【図6】成長条件を一定に保った場合のCNT膜厚と成長速度の経時変化を示す図である。
【図7】成長温度を周期的に変化させた場合の成長速度の経時変化を示す図である。
【図8】圧力をステップ状に変化させた場合の成長速度の経時変化を示す図である。
【図9】C2H2/H2流量比をステップ状に変化させた場合の成長速度の経時変化を示す図である。
【図10】CNTの成長過程で成長温度を調節した場合、及び、温度を一定に保った場合のCNT膜厚と成長速度の経時変化を示す図である。
【図11】C2H2/H2流量比を自動制御した場合の成長速度の経時変化を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置された容器内に炭素源を供給し、前記基板上にCNTを成長させるCNT成長手段と、
前記CNTの成長高さをその場測定する観察手段とを備え、
前記観察手段は、
前記基板の側面の画像を捉えるための光学マイクロスコープと、
前記画像をデジタルデータとして記憶するデジタルカメラと、
を備えたCNT製造装置。
【請求項2】
前記観察手段は、前記デジタルデータを処理して前記成長高さを算出する画像処理装置をさらに備えた請求項1に記載のCNT製造装置。
【請求項3】
前記成長高さから前記CNTの成長速度を算出し、前記成長速度に基づき、前記CNTの成長条件を最適成長条件に変更する制御手段
をさらに備えた請求項1又は2に記載のCNT製造装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記CNTの成長中に、前記CNT成長手段に対して一時的に前記成長条件の変更を指示する成長条件変更手段と、
一時的に変更された前記成長条件下において前記成長高さを測定し、前記成長高さを用いて前記成長速度を算出する成長速度算出手段と、
前記成長速度が最適値となる前記最適成長条件を決定する最適条件決定手段と、
前記CNT成長手段に対し、前記成長条件の前記最適成長条件への変更を指示する変更手段と
を備えている請求項3に記載のCNT製造装置。
【請求項5】
前記成長条件は、CNT成長温度、容器内圧力、炭素源流量、還元ガス流量、キャリアガス流量、酸化剤ガス流量、又は、ガス流量比である請求項3又は4に記載のCNT製造装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかに記載のCNT製造装置を用いて、CNTの成長高さをその場測定しながら前記CNTを成長させる第1工程と、
所定時間経過後に、一時的に前記CNTの成長条件を変更する第2工程と、
一時的に変更された前記成長条件下における前記成長高さを測定する第3工程と、
前記成長高さから成長速度を求め、前記成長速度が最適値となる最適成長条件を決定する第4工程と、
前記成長条件を前記最適成長条件に変更する第5工程と
を備えたCNTの製造方法。
【請求項7】
前記成長条件は、CNT成長温度、容器内圧力、炭素源流量、還元ガス流量、キャリアガス流量、酸化剤ガス流量、又は、ガス流量比である請求項6に記載のCNTの製造方法。
【請求項8】
前記第2工程から前記第5工程までを複数回繰り返す請求項6又は7に記載のCNTの製造方法。
【請求項9】
コンピュータを、
CNT製造装置内で製造されているCNTの成長条件、並びに、前記成長条件下における前記CNTの成長高さ及び計測時刻をメモリに記憶させる第1手段、
前記成長高さと前記測定時刻から前記CNTの成長速度を算出し、前記メモリに記憶させる第2手段、
所定時間経過後に、前記CNT製造装置に対して、一時的に前記成長条件の変更を指示する第3手段、
一時的に変更された前記成長条件下における前記成長速度を算出し、前記メモリに記憶させる第4手段、
前記第4手段において算出された前記成長速度が最適値となる最適成長条件を決定する第5手段、
前記成長条件の前記最適成長条件への変更を前記CNT製造装置に指示する第6手段、
として機能させるためのCNT製造用プログラム。
【請求項1】
基板が載置された容器内に炭素源を供給し、前記基板上にCNTを成長させるCNT成長手段と、
前記CNTの成長高さをその場測定する観察手段とを備え、
前記観察手段は、
前記基板の側面の画像を捉えるための光学マイクロスコープと、
前記画像をデジタルデータとして記憶するデジタルカメラと、
を備えたCNT製造装置。
【請求項2】
前記観察手段は、前記デジタルデータを処理して前記成長高さを算出する画像処理装置をさらに備えた請求項1に記載のCNT製造装置。
【請求項3】
前記成長高さから前記CNTの成長速度を算出し、前記成長速度に基づき、前記CNTの成長条件を最適成長条件に変更する制御手段
をさらに備えた請求項1又は2に記載のCNT製造装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記CNTの成長中に、前記CNT成長手段に対して一時的に前記成長条件の変更を指示する成長条件変更手段と、
一時的に変更された前記成長条件下において前記成長高さを測定し、前記成長高さを用いて前記成長速度を算出する成長速度算出手段と、
前記成長速度が最適値となる前記最適成長条件を決定する最適条件決定手段と、
前記CNT成長手段に対し、前記成長条件の前記最適成長条件への変更を指示する変更手段と
を備えている請求項3に記載のCNT製造装置。
【請求項5】
前記成長条件は、CNT成長温度、容器内圧力、炭素源流量、還元ガス流量、キャリアガス流量、酸化剤ガス流量、又は、ガス流量比である請求項3又は4に記載のCNT製造装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかに記載のCNT製造装置を用いて、CNTの成長高さをその場測定しながら前記CNTを成長させる第1工程と、
所定時間経過後に、一時的に前記CNTの成長条件を変更する第2工程と、
一時的に変更された前記成長条件下における前記成長高さを測定する第3工程と、
前記成長高さから成長速度を求め、前記成長速度が最適値となる最適成長条件を決定する第4工程と、
前記成長条件を前記最適成長条件に変更する第5工程と
を備えたCNTの製造方法。
【請求項7】
前記成長条件は、CNT成長温度、容器内圧力、炭素源流量、還元ガス流量、キャリアガス流量、酸化剤ガス流量、又は、ガス流量比である請求項6に記載のCNTの製造方法。
【請求項8】
前記第2工程から前記第5工程までを複数回繰り返す請求項6又は7に記載のCNTの製造方法。
【請求項9】
コンピュータを、
CNT製造装置内で製造されているCNTの成長条件、並びに、前記成長条件下における前記CNTの成長高さ及び計測時刻をメモリに記憶させる第1手段、
前記成長高さと前記測定時刻から前記CNTの成長速度を算出し、前記メモリに記憶させる第2手段、
所定時間経過後に、前記CNT製造装置に対して、一時的に前記成長条件の変更を指示する第3手段、
一時的に変更された前記成長条件下における前記成長速度を算出し、前記メモリに記憶させる第4手段、
前記第4手段において算出された前記成長速度が最適値となる最適成長条件を決定する第5手段、
前記成長条件の前記最適成長条件への変更を前記CNT製造装置に指示する第6手段、
として機能させるためのCNT製造用プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−74658(P2008−74658A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255166(P2006−255166)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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