説明

CO2を用いるウエットエンドにおける見積もりおよび制御

CO添加を利用するウエットエンドプロセスにおいて、CO添加を制御するための方法を開示する。本方法は、製紙組成物とCOとを合わせて、CO富化製紙組成物を生成すること、前記製紙組成物または前記CO富化製紙組成物のいずれかの少なくとも1つの電気的性質を測定するまたは見積もること、および予め選択された範囲の値内に前記少なくとも1つの電気的性質を保つようにCO添加の速度を制御することを包含する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本開示は、CO添加を利用するウエットエンドプロセスにおいてCO添加を制御するための方法に関する。
【0002】
関連技術
CO添加を利用するウエットエンドプロセスにおいてCO添加を制御するための方法を開示する。本出願の譲受人であるエアリキッドは、現在、ウエットエンドプロセスにおけるCO添加についての係属中の特許出願を有する。
【0003】
紙加工において、工業競争、原料の変化、環境配慮およびより大きな消費者の要求のために、ウエットエンドにおける化学のより高いレベルの知識および理解が、商業的な成功にとって重要である。ゼータ電位(zeta potential)(ZP)が、最終的な紙質製作における重要な性質であることが発見されている。
【0004】
ゼータ電位が、パルプのフロキュレーション、歩留まりおよび水切れ特性に関連することにより、抄紙機プロセスの操作性において重要な役割を演じることが、長く理解されている(N.ヴァンデルホーク(N.Vanderhoek)の「動電学測定を通じた抄紙機の最適化(Optimizing Paper Machine Performance Through Electrokinetic Measurement)」、APPITA、47巻、No.5、397〜405ページ、1994)。ウエットエンド安定度は、機械効率を得るに鍵となる部分である。T.ミヤナシ等は、これらの現象におけるゼータ電位の効果を研究し、ゼータ電位は、より良いフロキュレーションおよび水切れ添加物を提供するために制御されるべきであると結論付けた。抄紙機を最適化するウエットエンド化学は、平衡状態で操作されず、化学的添加の程度が重要である(T.ミヤナシ(T.Miyanashi)およびS.モテギ(S.Motegi)、「ゼータ電位を制御することによる微小粒子についてのフロキュレーションおよび水切れの最適化(Optimizing Flocculation and Drainage for Microparticle by Controlling Zeta Potential)」、TAPPI ジャーナル、262〜270ページ、1997年1月)。
【0005】
抄紙機のより良い性能の要求は、より良い歩留まり向上剤の開発の引き金となった。これは、これら新しい、ウエットエンド添加物の効果のより良い理解、並びに最適の抄紙機を得るための添加、および総体的なウエットエンド操作性能を実時間で制御することを可能にすることの必要を明確にした。これらの目的を達成するための第1段階は、利用できる実時間情報に依存する。それ自身を実時間変化に適合させるプロセスを提供することが望ましい。ウエットエンドプロセスにおいて、繊維特性、化学添加物および水性質は連続的に変化し得、従って、これら変化を、それが実時間で起こった際に検出することが望ましい。
【0006】
上記したように、エアリキードは、COを用いてセルロース繊維のゼータ電位を変化させることができる技術を開発してきた(M.ミュゲ(M.Muguet)およびJ.M.ドゥリゴール(J.M.deRigaurd)、「紙貯蔵の物理化学的挙動を改善することによる紙製品製造のためのプロセスに対する改善(Improvements to Processes for Manufacturing Paper Products by Improving the Physico-Chemical Behavior of the Paper Stock)」、国際公開第WO 03/074788 A2号)。エアリキードは、また、このような技術に関する係属中の特許出願、Serie 6052を有し、これは、シリアル番号第60/414,876号を有する2002年、9月30日の米国仮出願として、およびシリアル番号第10/656,857号を有する2003年9月6日の米国非仮出願として記録された。出願人は、これによって、本明細書中に完全に示したものとして、これら開示の全体を本明細書の一部として本願に明確に援用する。
【0007】
一般的に、プロセス制御において、数学的モデルが、入力パラメータを、制御されたシステムの出力変化と相関させるために必要とされる。歩留まり、水切れ、ウエットエンド添加物による形成のようなウエットエンドパラメータを制御するために、添加物パラメータをゼータ電位とカチオン要求量に相関させる数学的モデルが、まず必要とされる。続いて、ゼータ電位、カチオン要求量、および高分子添加物の架橋形成能のようなフロキュレーションに影響を与えるパラメータを相関させる数学的モデルが必要とされる。通常、これら入力−出力関係は知られていないために、数学的制御モデルまたはシミレーションモデル(F.オナベ)のいずれかを作成することは容易ではない(F.オナベ(F.Onabe)、測定および制御(MEASUREMENT AND CONTROL)、12章)。W.スコットは、これらは、非線形の、相互作用関係であると説明する(W.スコット(W.Scott)、ウエットエンド化学の原理(PRINCIPLES OF WET END CHEMISTRY)、TAPPI出版、ジョージア州アトランタ、1996)。ワング,H等は、ウエットエンド化学物質と生じる紙の性質との関係をモデル化するニューラルネットワークを述べる(H.ワング(H.Wang)、B.オイバンデ(B.Oyebande)、「製紙にけるウエットエンド化学プロセスへのニューラルネットワークの適用について(On the Application of Neural Networks Modeling to a Wet End Chemical Process in Paper Making)」、制御アプリケーションにおけるIEEE会議(IEEE Conference on Control Applications)、1995年予稿集、IEEE、ニュージャージー、ピスカタウェイ(Piscataway)、米国、657〜662ページ、1995年)。
【0008】
ウエットエンドにおける実時間制御最適化スキームを実行するために、利用できる実時間測定を行うことが有用である。吸着プロセスの有効性についての即時のフィードバック測定の一般的な欠如は重大な欠点であり、これは、個々のパラメータを制御することにより入力妨害を最小化するミルプラクティスへと導く。pH、イオン要求量、濃度(Cy)、流量等のような殆どのこれらパラメータは、典型的に制御される。しかしながら、オンライン機器の欠如のために制御されないこれらの性質は、課題を与える。例えば、ZP測定は、一般的にオフラインで測定される。殆どのミルはオンラインZP分析計を欠いており、従って、オンラインZP制御または最適化を達成することは不可能である。
【0009】
従って、本発明に先んずる紙処理方法に関する問題は、それらは、ウエットエンドへの制御されたCO添加により、紙製造におけるウエットエンド化学の性能をより厳密に制御する方法を提供しないということである。
【0010】
本発明に先んずる、紙処理方法に関するさらに他の問題は、それらは、紙製造においてウエットエンド化学の性能を改善するために、測定されない性質の制御を可能にする、ウエットエンド中への制御されたCO添加を提供しないということである。
【0011】
本発明に先んずる、紙処理方法に関するなおさらなる問題は、それらは、データの改善を促進する、システムに対する妨害の指標を提供することにより、測定されない性質のより信頼できる制御を可能にする、ウエットエンド中へのCO添加についての制御メカニズムを提供しないということである。
【0012】
本発明は、これらの問題を克服しようと努力する一方で、同時に、紙製造のウエットエンド中へのCO添加を制御するための、費用効率の高い、簡単に用いられるメカニズムを提供する。
【0013】
本発明の概要
CO添加を利用するウエットエンドプロセスにおけるCO添加を制御するための方法を開示する。製紙組成物とCOとを合わせて、CO富化製紙組成物を生成する。製紙組成物の、またはCO富化製紙組成物のいずれかの少なくとも1つの電気的性質は、測定されるか、または見積もられる。予め選択された範囲の値内に上記少なくとも1つの電気的性質を保つためのCOの添加の速度が、制御される。
【0014】
1つの態様において、電気的性質は、ZP、CDおよびイオン濃度、または任意のこれらの等価物から成る群から選択され、流量、CD、ZP、イオン濃度、Cy、pH、導電度およびアルカリ度から成る群から選択される製紙組成物またはCO富化製紙組成物のいずれかの少なくとも1つの性質を測定すること、およびモデルを用いることにより見積もられる。好ましくは、ZPが見積もられる。従って、測定される性質は、製紙組成物またはCO富化製紙組成物のいずれかから測定され得、好ましくは、製紙組成物から測定される。同様に、見積もられた電気的性質は、製紙組成物またはCO富化製紙組成物のいずれかから見積もられ得、好ましくは、CO富化製紙組成物から見積もられる。
【0015】
種々の制御スキームが、予め選択された範囲の値内に少なくとも1つの電気的性質を維持することにより、CO添加をより良く制御するために用いられる。
【0016】
従って、ウエットエンドへのCO添加を制御することにより、紙製造におけるウエットエンド化学の性能をより厳密に制御するための方法を提供することが、本発明の目的である。
【0017】
測定されない性質の制御を可能にし、それにより紙製造におけるウエットエンド化学の性能を改善するウエットエンド中へのCO添加のための制御メカニズムを提供することが本発明のさらなる目的である。
【0018】
データの改善を促進する、システムに対する妨害の指標を提供することにより、測定されない性質のより信頼出来る制御を可能にし、従って、紙製造におけるウエットエンド化学のよりよい性能を可能にする、ウエットエンド中へのCO添加についての制御メカニズムを提供することが、本発明のさらに他の目的である。
【0019】
これらの、および本発明の他の目的は、以下に続く本発明の記載から明らかであろう。
【0020】
以下に続く詳細な説明において、以下の図面について言及する。
【0021】
好ましい態様の記載
高度制御装置を用いるCO注入によってウエットエンドプロセスにおけるパラメータを即時に制御するためのシステムおよび方法を提供する。高度制御装置の設計は、所望される設定値を保ち、望ましくないウエットエンド妨害の影響を除く。ウエットエンドにおける妨害の影響をモデル化し、およびそれらのオンライン測定を、COの添加を補整するために用いる。本開示は、多変数高度制御装置とCOガスを用いて、ウエットエンドにおけるパラメータを制御する効果的な方法を提供する。
【0022】
上記したように、エアリキッドは、COを用いてセルロース繊維のゼータ電位を変えることができる技術を開発してきた(M.ミュゲ(M.Muguet)およびJ.M.ドゥリゴール(J.M.deRigaurd)「紙貯蔵の物理化学的挙動を改善することによる紙製品を製造するためのプロセスについての改善(Improvements to Processes for Manufacturing Paper Products by Improving the Physico-Chemical Behavior of the Paper Stock)」国際公開WO 03/074788 A2号)。エアリキッドは、また、このような技術に関する係属中の特許出願、Serie6052(2002年9月30日に米国仮出願として記録されシリアル番号第60/414,876号を有する、および2003年9月6日に米国非仮出願として記録されシリアル番号第10/656,857号を有する)を有する。これにより、出願人は、本明細書中に完全に述べたものとして、これら開示の全てを本明細書の一部として本願に明確に援用する。
【0023】
本開示は、これに適合する制御方法に関する。
【0024】
水におけるアルカリ度は、炭素種の釣り合いのため、COの添加をしても変化しないままである。しかしながら、CaCOの存在下でCOを加えた場合、アルカリ度は、炭素水酸塩の過剰な生成のために変化する。
【0025】
COの利用によって、ウエットエンドプロセスの効率を改善することが証明されている。本出願の設計は、COにより引き起こされる相互作用とこれら相互作用の程度の十分な知識を必要とする。この知識は、水化学の平衡分析により理論的に扱われる。プロセスの効率を維持するために、意図した明細書の下にプロセスを実行し続け、主な妨害を除く制御システムを設計することが役立つ。最も重大な妨害は、補給水における濃度の変化、温度、圧力、濃度、または他の化学的添加の変化に帰することがある。これら変動を除くことができる制御システムの設計のために、制御された変数における動的効果、およびCO供給とのその動的関係を知ることが役立つ。これら関係は、利用できるプロセス知識、ミルにおける動的試験、または理論的モデルのいずれかから得られる。
【0026】
ガス状のCOおよびCaCOを含む水溶液系における最も重要な種の動的モデル化と、そのゼータ電位(ZP)および電荷要求量(Charge Demand)(CD)に対する効果が行われ得る。動的モデルは、一定のアルカリ度を仮定した。
【0027】
CO−CaCO系は、平衡状態条件においては十分に研究されているが、この研究は、動的(動力学的)条件については限られている。この系の動的モデル化を調べる場合、物質移動および表面反応のような、重要な役割を演じる様々なパラメータを考慮する必要がある。CO−CaCOが操作のために選ばれる操作条件は、どの程度速く平衡状態に達するか、およびモデルを基礎とする制御システムを設計する場合に、考慮する価値があるかを明らかにする。炭酸カルシウム表面積および物質移動係数のようなシステムの具体的な変数と供に、COの分圧、温度のような種々の操作条件の最も重要な効果をここに示す。
【0028】
提案されるモデルの妥当性検査は、アルカリ度および[Ca2+]のオフライン測定を必要とし、これは煩雑であり時間がかかる。これらオフライン測定を予測する導電度測定を用いる可能性を、このため考察する。
【0029】
モデル展開
平衡
CO−CaCO系における種の動的挙動は、種々の変数に依存する。動的挙動は、常微分方程式(ordinary differential equation)(ODE)の形態で示され得、これは、その解を得るために初期状態を必要とする。pHのようないくつかの初期状態は、典型的な(バッチ)実験において知られており、測定される。しかしながら、[CO−2]のような他の初期条件は、知られておらず、ほとんど測定されない。平衡研究は、状態が平衡に達するため変化しないということを前提とすると、任意の所定の条件についての任意の成分の値の見積もりを提供することができる。そして、平衡計算を、ODEについての初期条件として用いることができる。同様に、平衡研究を、動的方程式の最終答と定常状態答を比較するために用いることができる。定常状態において、ODEの答は、新しい操作条件における平衡状態と一致すべきである。
【0030】
物質移動速度kxは、変数の時間応答に影響を与えるが、最終定常状態値または平衡値には影響を与えない。一方、pCO(COの分圧(partial pressure))は、平衡値に直接的に影響する。従って、実験に基づく平衡状態パラメータに達するpCOの値は、可能であるならば、見出され、または厳密に観察されなければならない。平衡条件に達する操作pCOを見出すために、平衡問題を解明する。
【0031】
スタム&モーガン(Stumm&Morgan)(スタム,W.(stumm,W.)およびモーガン,J.J.(Morgan, J.J.)「水化学:自然水における化学平衡および速度(Aquatic Chemistry: Chemical Equilibria and Rates in Natural Waters)」ジョンウイリー&サン(John Wiley & Sons)、第3版、1996)による168ページの例によると、マットラブ(Matlab)プログラムが、以下に定義される一連の非線形代数方程式を解くために用いられる。すなわち、
【数1】

【0032】
平衡定数は、文献に報告される。
【0033】
温度依存性平衡定数についての相互関係(スタム&モーガン)。
【表1A】

【表1B】

温度と平衡定数の依存関係
スタム&モーガンは、温度依存性相関を報告する。
【0034】
式(1)〜(6)は、所定のCO分圧、pCOにおける水中でのCO−CaCOの平衡方程式を記述する。これらの式は、異なる条件に適するように異なる手順で処理され得る。例えば、カルシウムが平衡でない場合、式(5)は適用できず、[Ca+2]が、速度方程式から見積もられる。
【0035】
動力学(速度)
平衡研究は、定常状態条件または、操作条件に基づく総合的な変化を決定する。一方で、動力学研究もまた、変化が生じる速度を決定する。プロセス制御デザインは、両方の結果、つまり、変化の程度と変化の速度に依存する。一定のアルカリ度についてのガス相からバルク液体(bulk liquid)へのCOの交換が、拡散方程式として示される。
【数2】

【0036】
ここで、
=全炭素種、M=[HCO3*]+[HCO]+[CO−2]、
klx=物質移動係数、分−1
pCO=ガス中のCO分圧、atm、
H=ヘンリーの平衡定数、
Alk=アルカリ度、M(モルHCO3/L)。
【0037】
式(7)は、[CO3−−]の濃度が無視でき、C>>Alkの場合に成立する。これは、圧力が大気中でCOの分圧よりも著しく高い場合に起こる。殆ど大気圧の圧力については、式(7)は成立せず、用いられうる操作条件は、COに富む状態にあると仮定される。
【0038】
アルカリ度が一定でない場合、[HCO3*]に変換されるCOモルの移動の速度は、
【数3】

【0039】
となり、総合的な炭素種の速度は、
【数4】

【0040】
となる。
【0041】
pHの時間依存性の変化を見積もるために、以下の関係から出発する。すなわち、
【数5】

【0042】
これは、以下のように書き換えら得る。すなわち、
【数6】

【0043】
式(11)における時間に関して導関数を求めると、この式は、時間依存性アルカリ度を考慮するとより複雑であることがわかる。
【数7】

【0044】
これは、以下
【数8】

【0045】
となる。
【0046】
式(13)の計算は、式(9)またはRCO2に依存し、また、dAlk/dtにも依存する。現在までに、dAlk/dtについての解析的な表現式は見出されていない。
【0047】
1つの暫定的な表現式は、CaCOの存在下、系中にCOが添加された際の、単純化されたプロトンバランス表現式から導かれ得る。
【数9】

【0048】
例え、式(14)がプロトンバランスについての平衡方程式であっても、これを、全ての時間でのカルシウムイオンとアルカリ度の間のだいたい正確な関係として用いることができる。従って、両辺において時間の導関数を求めると、
【数10】

【0049】
式(13)および(15)の実行は、実行問題(implementation problem)を提供し、数値的な理由のために、結果はこの時点ではうまくいかない。式(13)および(15)を同時に解く場合に、水素プロトン濃度は、非現実的となる。従って、単純化を示す。
【0050】
炭酸反応のようなプロトン移動反応は、ミリ秒未満の半減期で、通常、非常に早いことが知られている。これは、水素プロトンまたはアルカリ度を見積もるためのODE式で表す必要は必ずしもないことを示唆する。代わりに、速度制限式としてODEにおいて解かれる時、化学種の残りは、適切な平衡方程式を解くことで決定され得る。
【0051】
式(9)、(13)および(15)は、対応して、C、pH、およびAlkの動力学的方程式を述べる。プルーマー等により得られたカルシウム溶解動力学は、以下の式、すなわち
【数11】

【0052】
を有する(プルーマー,L.N.(Plummer, L.N.)、ウイッグレー,T.M.(Wigley, T.M.)およびパーハースト,D.L.(Parhurst, D.L.)「5°〜60°、および0.0〜1.0ATM COにおけるCO−水系における方解石溶解の動力学(the Kinetics of calcite dissolution in CO2-water system at 5° to 60° and 0.0 to 1.0 ATM CO2)」、アメリカンジャーナルオブサイエンス(American Journal of Science)、278巻、179〜216ページ、1978年2月)。活動度係数aは濃度に等しい。25℃において、パラメータは、以下、
Ca,1=5.115e−02;
Ca,2=3.4247e−05;
Ca,3=1.1919e−07;
Ca,4=4.55e−02
である。
【0053】
Caの単位は、ミリモル/(秒−1cm)である。定数kCa,iは、温度依存性であり、kCa,4は、逆反応である。RCaをモルと分−1に変換することに加えて、動力学的表現式は、方解石粒子の全表面積に依存する。質量の単位ごとの表面積として定義される、粒子の面積をaとして示すと、モル/分におけるカルシウム溶解を与える。すなわち、
【数12】

【0054】
生成物[CaCO3]Vは、反応器中のCaCO3の全グラム数に対応する。プルーマーは、最大90cm/grまでの研磨した方解石粒子の範囲を報告する。
【0055】
CO移動とカルシウム溶解の速度表現は、全速度に影響する現象である。従って、CO−CaCO系における全ての種の時間依存性値を確認するために、CO移動およびカルシウム溶解のODEを解いた際の若干の増加分は、[Ca+2]および全炭素種Cに戻され得る。その後、以下の代数方程式が、アルカリ度、[HCO3−]、および水素プロトン[H]を見出すために解かれる。すなわち、
【数13】

【0056】
ひとたびこれらの式を解くと、新しい値が、ODEの次の増加分を解くために用いられる。
【0057】
CO−CaCOの動的モデル化は、次に、2つのODE(式(9)および(17))、および代数方程式(式(18)から(22))の連立解として定義される。すべてのこれらの式は、数値的シミュレーションの前に明示される必要のある様々なパラメータを有する。これらパラメータは、温度、物質移動係数、CO分圧、および炭酸カルシウム表面積である。
【0058】
動力学的定数および平衡定数の全ては、温度依存性である。動力学的パラメータの温度依存性は、従前の報告(CRC200343)において示されており、T=25℃以上で示されている。平衡定数の温度依存性は、付録Aに示される。
【0059】
実験
一連の実験を行った。実験では、1.3LのDI水中で、8.125grのCaCO(パルプ中の20%PCCに相当する)を用いた。2つのタイプのCaCOを用いた。すなわち、ALBACAR HO PCC(スペシャリティーミネラルズ社(Specialty Minerals, Inc))、および試薬等級CaCO(フィッシャーサイエンティフィック(Fisher Scientific))である。CaCO原液を、24時間撹拌し、大気中のCOとの平衡に到達させた。初期サンプル(0時間)を、原液から取りだした。1.3Lの原液を反応器中に入れ、撹拌を1500rpmに設定した。COの添加の開始時に測時を開始した。COの全量は、2.5%Cyスラリー、または2.6e−04KgCO/Lを前提すると、10.256Kg/トンであった。COの添加を約40秒で完了した。添加は、リアクタヘッド(reactor head)において一定のpCO圧力を得るように行われた。ほぼ10ミリリットルのサンプルを取りだし、即座に、0.02マイクロメーターフィルタを用いてろ過した。同様の条件を用いるいくつかの実験を、より多くのサンプルを取るために行った。導電度、pH、アルカリ度およびカルシウム濃度を、各サンプルから測定した。
【0060】
実験結果
表1は、AlBACAR PCCを用いて、〜24℃で得られた実験結果を示す。顕著に、カルシウムの濃度とアルカリ度が急速に増加し、数分で平衡値に達する。
【表1】

【0061】
式(6)に示したプロトンバランスから、および炭酸塩の濃度[CO3−−]はこのpHでは無視できるために、関係2[Ca+2]〜=Alkを、満足する必要がある(スタム&モーガン)。表1に示される実験結果より、この関係を満足しないことが見受けられ得る。これらの結果は、カルシウム溶解平衡と比べて非常により高い値のアルカリ度を示す。これら結果は、ALBACA PCCは、CO−CaCO平衡に影響を与える若干の化学物質を含有し得るという指摘を与える。
【0062】
表2は、試薬等級のCaCOを用いる実験結果を示す。ALBACARのように、カルシウムの濃度とアルカリ度は、平衡に向かって非常に急速に増加する。この挙動におけるより徹底的な説明を、追って示すこととする。平衡に関して興味深いことは、平衡のカルシウムとアルカリ度の間の関係が、関係2[Ca+2]〜=Alkを満たすにはるかにより近いという事実である。1分目のサンプルを除けば、実験値は、解析表現式から5%の平均誤差を有する。1分におけるより高い誤差は、実験におけるこのような早い段階において代表サンプルを取ることの困難さに帰着する。
【表2】

【0063】
実験中にろ過されたサンプルのpH変化は、0時サンプルと最終サンプルの間では非常に小さいことが認められた。ろ過前のサンプルのpH測定は、平衡解析から予期されるものにより近かった。
【0064】
表2に示される結果を、平衡と動的モデルを比較するためのこの研究の残りの部分に用いる。
【0065】
結果の平衡解析
平衡方程式は、CO−CaCO系の目標の定常状態を決定することを可能にする。この情報を用いて、どの定常状態値が、実験において、および動的モデルシミュレーションにおいて予測されるかを予め見出すことができる。
【0066】
生ずる問題とその結果の妥当性を確証するための第1段階は、スタム&モーガンによる186ページにおける問題を再現することから成った。問題は、大気圧存在化(10−3.5atm=3.16e−04atm)で、CO−CaCO系における平衡濃度を決定する。この問題の解法を、非線形代数方程式求解コマンド(solver command)を用いるマットラブ(マスワーク社(Mathworks, Inc))において実行した。(1)から(6)までの一連の式を解くマットラブにおいて得られた結果は、[Ca]=4.636e−04M;Alk=9.2721e−04M、およびpH=8.3048である。2[Ca2+]〜=Alkであることも特筆する。
【0067】
CaCOを用いて得られた実験結果と、平衡方程式を比較するために、COの分圧が必要とされる。この圧力は、信頼できるものではなく、実験的に入手できるものではなかった。いくつかの早期測定は、実験の開始時におけるCOの分圧は、0.43psig付近であり、0.02atmに相当したが、これは連続的に低下し、その記録も信頼できないということを示した。さらに、式(3)で示されるような、平衡における系に対する分圧特性は、一定であると仮定する。これは、系がバッチ反応器であり、変数が時間と伴に変化するような実験装置における場合ではない。しかしながら、平衡方程式を立てるために、同じ実験平衡条件に達する特徴的なCO2分圧を見出す必要がある。表3は、CO分圧の範囲に渡って、式(1)から(6)までを解いた場合に得られる一連の結果を示す。
【表3】

【0068】
表3に示される平衡方程式から得られた平衡結果(補外を伴う)、および表2からの実験結果を比較すると、実験結果に合う平衡状態は以下、すなわち、
ケースA:25℃における理論的な平衡
i. Alk=5e−03mol HCO/L=250mg CaCO/L=250ppmCaCO
ii. [Ca]=2.5e−03mol Ca/L=100mgCa/L、
iii. pCO2=10−1.049atm=〜0.09atm、
iV. pH=6.5(マットラブ)、6.9−7.0PHREEQ
であることが得られた。
【0069】
ALBACAR HO(スペシャリティーミネラルズ社)を用いる実験結果は、適合する平衡指標はpHであることを示唆した。しかし、7.3の平衡pHに達するCOの分圧は、実験値よりも低い理論的なアルカリ度を得る。この場合の理論的平衡状態を、ケースBとして分類し、以下に示す。この点において、結果における差異が、用いたPCC(ALBACAR HO、スペシャリティーミネラルズ社)中の未知の成分による可能性があることが疑われた。
【0070】
ケースB:最終平衡実験結果(12/12/03)
i.pH=7.3
ii.[Ca]=106ppm=2.7e−03M
iii.CaCO3=6e−03mol[HCO3]/LのところのAlk〜=300ppm
iv.初期pCO〜0.4psig(+/−0.2psig)=2.72e−02atm。
【0071】
たとえ、理論的な場合および実験的な場合における平衡pH値が同じでも、カルシウム濃度とアルカリ度濃度は、有意に外れる。実験のカルシウム濃度は、理論値のほぼ2倍になる。理論的平衡カルシウム濃度は、定数KSOに依存する。実験の誤差の他に、この不一致の1つの可能性は、用いたCaCOが、純粋でないか、異なるということである。実験結果に基づき、および前式のいくつかを組み合わせることで、次式を得ることができる。
【数14】

【0072】
式(5)に代入することで、実験のカルシウム濃度(2.65e−03M)を用いる平衡定数KSOを得る。
【数15】

【0073】
SOにおけるこの結果は、文献に報告されたもののほぼ2倍である。この新しいKSO、および21℃における他の定数についての平衡ソフトウエアを走らせると、以下の結果が得られる。
【0074】
ケースC:新しいKSOを用いる理論結果
i.pH=7.3061
ii.pCO=10−1.985atm=1.0351e−02atm
iii.[Ca]=2.2e−03M=89.75ppm
iv.Alk=4.5e−03M=274.5ppm。
【0075】
予測された平衡カルシウム濃度は、今回は、実験濃度により近いが、アルカリ度見積もりは、負の影響を受ける。結果のまとめを以下の表に示す。
【表4A】

表は、化学等級のCaCO3を用いる実験結果は、カルシウムとアルカリ度の関係を一貫して満たすことを示す(ケースE)。従って、実験からの動的実験データは、これらを動的モデルと比較するために用いられ得る。pCOのような全ての一連の操作条件は、平衡計算から用いられ得る(ケースA)。
【0076】
結果の動力学的(速度)解析
式(9)における物質移動速度kxは、ガス状のCOが液体に変換される速度を定義する。これは、物理的性質と装置設計に依存する。いくつかの相関が、文献において、具体的な設計と操作条件について見出され得る。出版された文献に基づくと、ガスが撹拌機の近くで通気される撹拌されたタンクにおける、典型的な物質移動速度は、0.2分−1の単位である。この数字を、次のシミュレーションのための基準として用いた。
【0077】
表2に示される実験結果は、分圧が0.09atmの場合の平衡条件であることが見出された。この圧力は、名目上の操作圧力として用いられ得る。
【0078】
最終的に、表面積は、式(16)に従って溶解速度を決定するために必要とされる。ALBACAR OH(スペシャリティーミネラルズ社)の表面積は、11.5m/gr(11.5e+04cm/gr)に等しく、〜1.6マイクロメーターの平均直径サイズを有することが見出された。一方で、フィッシャー製のCaCO3は、30〜50マイクロメーターの平均直径を有する。これは、10cm/grの範囲の表面積を示す。プルーマー等によるカルシウム溶解論文において報告された炭酸カルシウムの最大の表面積が、90cm/grであり、これは、CRCにおいて試験された炭酸カルシウムと比較して、数単位の大きさでより小さいことを特筆する。カルシウム溶解および全ての動力学における表面積の結果を追って示す。
【0079】
動的モデル試験
以下の名目上の操作条件を用いる。すなわち、
i.pCO=0.09atm、
ii.kx=0.2分−1
iii.T=25℃、
iv.a=炭酸カルシウム表面積=10cm/gr。
【0080】
一連の条件を、条件セットAとして分類する。
【0081】
初期状態は、大気CO分圧(10−3.5atm)との平衡に相当する。すなわち、pH=8.96;Alk=3.3e−04モルHCO/L;[Ca+2]=1.65e−04モルCa/L:C=3.45e−04モル/Lである。この報告中では、全てのアルカリ度はモル/Lで表現され、これは[HCO3−]/Lを意味し、およびカルシウムは、モル/Lで表現され、これはモルCa/Lを意味する。
【0082】
表4は、実験値と比較される条件セットAを用いるシミュレーションモデルを示す。モデルの定常状態予測は、名目上のpCOの分圧が、0.09atmから0.07atmへと低下した場合に、実験値と適合する。この差異は、平衡方程式で解くために動的モデルを離散化する際の正確さの喪失に帰着する。さらに、表4に示された解は、これがいくつかの「障害発見法(troubleshooting)」を必要とするために、得るのが難しかった。ODE(式(9)および(17))を解く際に、dCa/dtの解は、平衡において得られ得る値よりも高い[Ca2+]に帰着していることが認められた。この系のdCa/dtの動的な解は、平衡よりもより高い濃度においては解くことができない。定常状態下では、dCa/dtは、平衡予測と等しくなるのみであるべきである。この問題は、式(16)における動力学的表現式は、炭酸カルシウム表面積が、プルーマー等が用いたもの(90cm/gr)よりも有意により高い場合に、カルシウム溶解を過剰に予測することを結論するに導く。
【0083】
カルシウム表面積が高い(〜10cm/grおよびより上)場合に、カルシウム溶解はとても速いので、これは殆ど即座に平衡に近づき、これは、この反応をプロトン移動反応と同じくらい速くする。速いカルシウム溶解は、式(5)により与えられるような平衡方程式を用いる、任意の具体的な時間においてカルシウムを計算し、同時に他のプロトン移動反応と伴に計算することを示唆する。従って、高い表面積について、ただ1つの異なる方程式が、各時間間隔(dC/dt)において解かれる。ひとたびCが、各サンプル間隔において式(9)から知られると、以下の式が、平衡カルシウム濃度を見出すために解かれる。
【数16】

【0084】
これらの式を、Cの関数としてのみ[Ca2+]を得るために組み合わすことができる。
【数17】

【0085】
式(29)を解くのはより速い。これは、連立非線形代数方程式を解く場合のように、初期値を繰り返すことを必要としないからである。表4におけるシミュレーション結果は、動力学的予測が平衡よりもより高い場合(これは、起こり得るとは考えられない)の、平衡からのカルシウム計算を示す。
【0086】
温度およびpCOの分圧は、溶解の速度に影響を与えるが、また、平衡条件にも影響を与える。この点において、実験結果による平衡(定常状態)結果を保つ限りは、速度の変化に関心を払うのみでよい。本目的を達成できる唯一の利用できるパラメータは、物質移動係数である。実験は、非常に速い速度(1500rpm)で行われたが、物質移動係数は知られていない。物質移動係数が、0.2分−1から2.0分−1へと増加する場合には、COは、バルク(bulk)へとより速く変換され、プロトン移動反応が、より初期から起こる。
【0087】
表5は、より高い物質移動係数を用いるシミュレーション結果を示す。実験結果は、シミュレーションとのはるかにより良い一致を有することが見受けられ得る。
【0088】
結論として、CO−CaCO系の動的モデル化は、CRCにおいて得られる実験結果を示すことが明らかになった。しかしながら、良好なモデル化結果を得るためには、炭酸カルシウムの性質と伴に、分圧および物質移動係数のような正しい操作条件の知識が、最良のモデル表現を得るためには考慮される必要があることを強調しなければならない。実験例は、モデル化のいくつかの重要な特徴を示すことを可能にした。続いて、モデル化問題のより詳細な説明を示す。
【表4】

【表5】

【0089】
表面積
カルシウム溶解動力学は、表面積により制御され、これは、表面積の重要性へと導く。高い表面積の炭酸カルシウムについては、良好な近似は、カルシウム速度予測を無視し、代わりに平衡方程式を用いることであることが既に示された。それでもやはり、表面積が小さい場合におけるカルシウム溶解のより深い洞察を示す。ここより、いくつかのシミュレーションを、以下の条件セットBにおいて定義される条件を用いて示す。
【0090】
条件セットB:
i.pCO=0.025atm、
ii.kx=0.2分−1
iii.T=25℃、
iv.a=1e+05cm/gr。
【0091】
表4および表5は、カルシウム表面積が、有意に高く(10cm/gr+)、これは溶解をとても速くするため、平衡にほぼ即座に到達し、カルシウムが、平衡方程式から計算されることを仮定するシミュレーションを示す。表6は、表面積がより小さく、カルシウム溶解が、プルーマー等により報告された動力学的方程式により述べられる場合のシミュレーションを示す。
【表6】

【0092】
一般的に、最も低い表面積(90cm/gr)は、平衡に到達するに数単位の程度でより長い時間を要することが見受けられ得る。9e+04cm/grのシミュレートされる最も高い表面積は、平衡方程式と動力学方程式を組み合わせて実行される。シミュレーションの開始時と、約5分に至るまで、速度予測は、平衡よりもより高く、これは起こり得ず、従って、平衡予測を報告する。5分後には、速度予測は平衡よりも低くなり、従って、プルーマー等の速度予測をプロットする。1つのモデルと他のモデルの間の切替えは、シミュレーションにおける急増部として示される、いくつかの数値的な矛盾を引き起こす。
【0093】
表面積がpHに対して有する効果を述べる。高い表面積は、カルシウム溶解を高め、およびプロトン移動方程式は、より低い[H]濃度(高いpH)とつり合っている。一方で、表面積が小さい場合には、カルシウム溶解は非常に遅く、[H]のようなプロトン移動種についての平衡濃度は、カルシウムが殆ど無い場合と類似する。この理由のために、表6は、事実上カルシウムが存在せず、溶解するCaCOが存在しない場合のシミュレーションを示す。CaCOが存在しない場合、アルカリ度およびカルシウムは一定のままであり、pHは、より低い定常状態値へと迅速に低下する。
【0094】
表7は、表6のpHのより詳細な表を示す。表面積が初期時に小さい場合に、系は、カルシウム溶解が全く無く、pHが迅速に低下するかのような挙動を示すことがより明らかに見て取れる。カルシウム濃度が増加し始める場合、pHは、CaCOとの対応する平衡に向かって上昇し始める。
【表7】

【0095】
物質移動係数
物質移動係数は、定常状態条件または平衡条件に影響を与えない。炭酸カルシウム表面積として、どれくらい速く平衡に到達するかのみに影響を与える。プロセス制御の観点から、これら変数は、プロセスの時定数に対して影響を与え、増加はしない。表8は、全ての変数における物質移動係数の差異の効果を示す。
【表8】

【0096】
温度
平衡状態に影響を与える1つの要因は、系の温度である。全ての平衡定数と動力学的定数は温度依存性であり、全ての変化は、全ての濃度に影響を与える。表9は、異なる温度における一組のシミュレーションを示す。示される最も高い温度(50℃)は、より低いカルシウム溶解に向かう反応を促進する。付録における平衡定数の値は、温度が、異なる傾向で、定数K、KおよびKに影響を及ぼすことを示す。
【0097】
温度に関する変数の感度に関して、表9は、温度は、pHよりも、濃度により大きい影響を与えることを示す。しかしながら、pHにおけるわずかな変化は、[H]濃度変化において大きな変化を示す(対数的な関係のため)。ミル中でわずかな温度変化が起こる場合に、大きな性能変化は、COを用いる場合には予測されない。
【表9】

【0098】
CO分圧
表10は、CO−CaCO系におけるCO分圧の影響を示す。分圧の増加は、COの移動、pH低下およびカルシウム溶解を促進する。分圧は、また、定常状態条件(平衡)に直接影響を与える。温度、CO分圧における変化が相対的に小さければ小さいほど、pHを含む全ての変数に対する効果は、より大きい。これは、最終操作条件を特徴づける、最も重要な処理変数として残る。
【表10】

【0099】
導電度
ALBACAR OH(スペシャリティーミネラルズ社)を用いる実験中、オンライン導電度測定を記録した。表11は、ALBACAR PCC(スペシャリティーミネラルズ社)を用いるCO−CaCO実験の1つのオンライン導電度測定を示す。導電度は、電流を流す水溶液の能力の単位である。この能力は、イオンの存在、その全濃度、移動度および原子価、および測定の温度に依存する。導電度を計算するための一般的な理論的方法は、クレッセリ等により示される(クレッセリL.S.(Clesceri, L.S.)グリンバーグA.E.(Greenberg, A.E.)およびイートンA.D.(Eaton, A.D.)、「水および廃水の調査のための標準方法(Standard Methods for the Examination of Water and Wastewater)」、第20版、APHA、AWWA、WEF)。まず、無限希釈導電度を計算する。
【数18】

【0100】
式中、
│zi│=i価イオン(i-th ion)の変化の絶対値、
mMi=i価イオンのミリモル濃度、
+i、□−i=i価イオンの当量導電度。
【0101】
モル単位におけるイオン強度、ISを計算する。
【数19】

【0102】
一価のイオン活量係数yを、20から30℃の温度に渡る、IS<=0.5Mについてのデービス式(Devies equation)を用いて計算する。
【数20】

【0103】
最終的に、導電度を次の通り計算する。
【数21】

【0104】
水溶液における当量イオン導電度を、ランゲの化学便覧を含む、異なる出所から知ることができる(ディーンJ.A.(Dean, J.A.)「ランゲの化学便覧(Lange’s Handbook of Chemistry)」、マックグローヒル(McGraw-Hill)、13版)。溶液におけるイオンのモル濃度の関数として、導電度を計算するための式は、導電度測定に基づくイオン濃度を「逆算」するために用いられる。DI水が実験において用いられているため、2つの主成分、すなわち、[Ca2+]および[HCO3]のみが、溶液中で見出され得ることが知られている。しかしながら、同じ導電度を生じ得る無限数のイオン濃度の組み合わせが存在する。このため、さらなる関係が必要とされる。興味の対象となるpHの範囲に渡るCO−CaCOにおけるプロトンバランス式が、次の通り単純化される。
【数22】

【0105】
続いて、[Ca+2]および[HCO3]イオンの濃度を計算するための最適化問題が用いられ、次の通り定義される。
【数23】

【0106】
従って、式(32)は正しい。逆算を、目的因数(objective factor)Jを最小化することにより解く。この因数は、測定されたまたは実験的な導電度Kexpの平方誤差、および式(kcalc)から計算された導電度の見積もりから成る。解は、問題の最小化であり得、プロトンバランス式を満たす。この問題を、条件付き多変数関数の最小化を伴うマットラブにおいて数値的に解く。
【0107】
表12は、ALBACAR PCC(スペシャリティーミネラルズ社)を用いる実験の、実験オンライン導電度測定、並びにオフライン[Ca2+]測定およびアルカリ度測定を示す。サンプル採取が難しいために不正確と考えられ得る初めのオフラインサンプルは別として、導電度測定からのカルシウム予測は、オフライン実験測定を非常にぴったりと合致する。一方、アルカリ度は、より大きい見積もり誤差を有する。最大誤差は、40ユニットまでである。
【表11】

【表12】

【0108】
表13は、化学薬品等級CaCO3を用いる実験の[Ca2+]とアルカリ度の見積もりを示す。カルシウム見積もりは、先の場合と同じくらいほぼ良好である。一方、アルカリ度は、よりわずかな予測誤差を有する。これは、この実験は、予測されるものにより近いイオンから成ることを示唆する。ALBACARを用いる実験は、導電度に影響を与える若干の成分またはイオンを含有し得、式(32)から外れ得る。まとめると、導電度測定は、CO−CaCO系における最も重要なイオンの発生を予測する可能性を有するということを言うことができる。
【表13】

【0109】
述べた好ましい態様において、CO−CaCO系における種の速度の決定に役立つ現象は、CO移動およびカルシウム溶解である。他の反応は、迅速に起こるプロトン移動反応であり、アルカリ度を含む平衡において考慮され得る。本開示は、速度式の全ての積分段階において計算され、アップデートされるプロトン移動反応の計算を示す。
【0110】
カルシウム溶解を、カルシウム表面積が有意に大きい(10cm/grを超える)場合に、平衡方程式を用いて計算することができる。この報告の実験において用いられるCaCOは、高い表面積と、カルシウムの平衡計算を考慮した最も良い予想結果を有する。COの供給に伴うアルカリ度の増加は、pHに大きな影響を与え、従って、カルシウム溶解にも大きな影響を与える。
【0111】
アルカリ度が、時間依存様式で計算された場合、CO−CaCO系は、CO分圧、温度、物質移動速度係数および炭酸カルシウム表面積における種々の条件についてシミュレートされた。炭酸カルシウム表面積が大きい場合に、系の速度を制御する最も重要な因子は、物質移動係数である。表面積が小さい(大きい粒子直径)場合に、系の時定数は、より遅いカルシウム溶解速度のために、劇的に増加し得る。
【0112】
物質移動係数と粒子表面積とは異なって、系の温度とCO分圧は、平衡(定常状態)条件に影響を与える。分圧は、温度に比べて、平衡条件により大きい影響を与え、従って、COの十分に制御された操作を有することが重要である。
【0113】
最終的に、導電度測定を、CO−CaCO系のカルシウムおよびアルカリ度を予測するために用いることができる。より詳細な展開が、他のイオン種が存在する場合に必要とされ得る。
【0114】
ここで図1を参照すると、具体的な製紙プロセスに適応する制御された方法の態様を示す模式図を示す。混合チェスト1は、COの調節された入口流、および繊維流7のような製紙組成物を受け取り、出口繊維流のようなCO富化製紙組成物を提供する。例えば、流量、CD(電荷要求量)、ZP(ゼータ電位)、イオン濃度、Cy(濃度(consistency))、pH、導電度およびアルカリ度のような繊維流の性質を、繊維流が混合チェストに到達する前にオンライン測定し、測定2をもたらす。同時に、出口繊維流のオンライン性質を装置3により測定し、上記した同じ一連の性質から選択することができる。高度な制御装置、この場合にはフィードフォワード制御装置が、入口流の測定を用いること、および制御装置出力6を加えることにより、フィードバック制御装置を補償する。生じる制御装置出力は、所望のウエットエンド性質を保つ一方で、入口繊維流における変化を最小化する入口COを操作するために用いられる。
【0115】
いくつかの性質を、ZP、CDおよびイオン濃度のような電気的性質として述べることができる。イオンは、1以上の電子を得たまたは失った原子または分子であるために、それは、正味の負電荷または正電荷を有する。例えば、溶融プラズマは非常に高温であるため、実質的に、全ての電子が原子から奪われ、それらの核の陽子の数と等しい正味の正電荷を有するイオンを生成する。イオン濃度は、単位体積ごとのこのようなイオンの量に関する。従って、電荷を有するイオンの濃度と直接的な結びつきが存在する。
【0116】
しかしながら、溶液中に混合された、濃度[A]と[B]を有する2つの異なるイオンAとBが存在する場合に、さらに総電荷が存在し、例えば、溶液中の導電度メーターを用いるこの電荷の測定は、[A]と[B]の区別と測定ができない。この開示は、個々に、[A]と[B]を別々に区別し、および測定することを予測する。本明細書中で用いられるイオン濃度は、所望する場合にこの操作を行うことを予測することが一般的に示される。
【0117】
図2は、フィードフォワード制御装置についてのブロック図を示す。これは、妨害と、この場合にはゼータ電位(ZP)であるウエットエンド測定との間の数学的関係GL、および入口COと同じウエットエンド測定との間の関係Gpを必要とする。高度な制御装置設計は、フィードフォワード制御装置Fと、フィードバック制御装置Gcとの間の数学的関係の発見から成る。
【0118】
この態様は、ウエットエンドのパルプミル中で、添加物の制御された添加により紙の性質を制御するために適用できる。さらに明確には、この態様は、混合チェスト中のウエットエンドにおけるCOの添加を考察する。ゼータ電位、電荷要求量、アルカリ度、pH等のような、入口繊維流および出口繊維流における最も重要な変数の測定は、実時間で得られ、集められ、データ取得システムに利用される。伝達関数の形態における、または任意の時間依存性形態における数学的な関係は、CO添加および所望するウエットエンド性質、またはゼータ電位または電荷要求量のような制御された変数を関連づけるために利用される。加えて、同様の関係が、入口繊維流の考えられる変数または妨害と、制御された変数との間で利用される。所望される制御された変数と、出口繊維流における実時間測定との間の変化を最小化するに役立つ、任意のフィードバック制御装置を用いる。
【0119】
加えて、入口繊維流からの利用できる実時間測定は、フィードフォワード制御装置、モデル予測制御(model predictive control)(MPC)、または任意の高度な制御装置のような、予測制御装置を設計するために用いられる。フィードフォワード制御装置は、フィードバック制御装置の出力に協調するように修整する。フィードバックシグナルおよびフィードフォワードシグナルを加算し、混合タンク中へのCO流を制御する直線比例制御に送る。
【0120】
図3は、基準化された工程変化と電荷要求量妨害に応答するフィードフォワード制御の性能を示す。フィードバック制御装置は、設定値変化に問題なく応じ、フィードフォワード制御装置のために、妨害はほぼ即座に除かれ、所望する設定値にプラントを戻すことを理解することができる。
【0121】
他の好ましい態様を示す図4は、調節されたCOの入口流7を供給する、混合チェスト11を示す。繊維流のいくつかの性質は、測定12により、混合チェストに進む前にオンラインで測定される。同時に、出口繊維流のいくつかのオンライン性質は13により測定される。全ての利用できるオンライン測定は、実時間モデル15、およびカルマンフィルタ16のようなオブザーバーまたは最適推定器を用いて、感知できない変数または常態を算出するために用いられる。
【0122】
カルマンフィルタオブザーバーは、実時間モデル15に頼る、モデルに基づくオブザーバーとして通常知られる。ニューラルネットワークのようなデータ駆動型オブザーバーは、実時間モデルを必要としないが、処理されるより大量のデータを必要とする。オブザーバーは感知できない変数を実時間で見積もり、およびこの情報を、感知できない変数を所望の設定値へと変化させる入口のCOを操作する制御装置18へと送る。
【0123】
この態様は、ペーパーミルのウエットエンドの制御および最適化に適用され得る。意図した制御変数が測定されない、または実時間で得られない場合に、ウエットエンドを実時間で制御することが意図される。利用できるオンライン測定12および13は、観測方程式(observation equation)と呼ばれるものの変数または状態を制御することに関係がある。観測方程式は、推定器またはオブザーバー6の一部である。観測方程式は、装置に若干のノイズがあること、および取得の速度が変化することを推定することができる。ここで、推定器により用いられる情報は、長い時間間隔で得られるオフライン情報を用いることもできる。
【0124】
観測方程式は、オブザーバーに関係があり、状態方程式である。状態方程式は、観測方程式に沿った評価アルゴリズムに適するモデル15の変形である。状態方程式は、また、モデルの不正確さに応答する、いくつかのモデルを不確実に含む。いくつかの評価アルゴリズムが存在するが、最も一般的なものの1つは、最適推測器としてのカルマンフィルタ(カルマン,R.E.)予測である。KF推定器は、利用できる測定と利用できるモデルを用いて、感知できない変数を推定する実時間推定器である。KF推定器は、プロセスモデル15に依存し、従って、これはモデルに基づくオブザーバーと呼ばれる。
【0125】
モデルが利用できない場合に、ニューラルネットワークのようなデータに基づく推定器を用いることができ、これはより大量のデータを必要とする。実時間最適見積もり14は、見積もりと利用者が定義した設定値を比較し、誤差に基づく制御出力を計算する制御装置18により必要とされるプロセス変数測定となる。制御出力は、反応器中へのCOの添加を変える直線比例バルブに送られる。
【0126】
CO添加を利用するウエットエンドプロセスにおけるCO添加を制御するための方法を開示する。製紙組成物とCOとを合わせて、CO富化製紙組成物を生成する。製紙組成物またはCO富化製紙組成物のいずれかの少なくとも1つの電気的性質が、測定されまたは見積もられる。予め選択した範囲の値内に少なくとも1つの電気的性質を保つためのCO添加の速度を制御する。
【0127】
1つの好ましい態様において、電気的性質は、ZP、CDおよびイオン濃度、またはそれらの等価物から成る群から選択され、流量、CD、ZP、イオン濃度、Cy、pH、導電度およびアルカリ度から成る群から選択される製紙組成物またはCO富化製紙組成物のいずれかの少なくとも1つの性質を測定すること、およびモデルを用いることにより見積もられる。好ましくは、ZPが見積もられる。従って、測定される性質は、製紙組成物またはCO富化製紙組成物のいずれかから測定され得、好ましくは、製紙組成物から測定される。同様に、見積もられた電気的性質は、製紙組成物またはCO富化製紙組成物のいずれかについて見積もられ、好ましくは、CO富化製紙組成物について見積もられる。
【0128】
他の好ましい態様において、CO添加を利用するウエットエンドプロセスにおけるCO添加を制御するための方法は、より洗練された制御を含む。製紙組成物およびCOとは合わされ、CO富化製紙組成物を生成する。製紙組成物の少なくとも1つの性質を測定しまたは見積もり、製紙組成物データを生じさせる。製紙組成物の性質データを、製紙組成物出力成分を生じる高度な制御装置へと提供する。
【0129】
CO富化製紙組成物の少なくとも1つの性質を測定しまたは見積もり、CO富化製紙組成物の性質データを生じさせる。CO富化製紙組成物の性質データを、出口制御装置出力成分を生じるフィードバック制御装置へと提供する。フィードバック制御装置は、入口制御装置出力成分と出口制御装置出力成分を解析することにより補償される。COの入口流は、予め選択された範囲の値内にCO富化製紙組成物の少なくとも1つの性質を保つように制御される。
【0130】
製紙組成物の少なくとも1つの性質は、好ましくは、流量、ZP、CD、イオン濃度、Cy、pH、導電度およびアルカリ度から成る群から選択される。CO富化製紙組成物の少なくとも1つの性質は、好ましくは、ZP、CDおよびイオン濃度から成る群から選択され、最も好ましくはZPである。最も好ましくは、高度な制御装置は、フィードフォワード制御装置を包含する。
【0131】
この態様の代替において、高度制御装置は、フィードフォワード制御装置、および予測的な制御または推論的な制御のいずれかを用いるフィードフォワード制御装置を包含する。
【0132】
さらに他の好ましい態様において、CO添加を利用するウエットエンドプロセスにおけるCO添加を制御するための方法は、いくぶん異なる制御を含む。製紙組成物とCOとを合わせ、CO富化製紙組成物を生成する。流量、ZP、CD、イオン濃度、Cy、pH、導電度およびアルカリ度から成る群から選択される製紙組成物の少なくとも1つの性質のオンライン測定が成され、製紙組成物の性質データを生じ、オブザーバーに伝える。流量、ZP、CD、イオン濃度、Cy、pH、導電度およびアルカリ度から成る群から選択されるCO富化製紙組成物の少なくとも1つの性質のオンライン測定が成され、CO富化製紙組成物データを生じる。これらデータを、ZP、CDおよびイオン濃度から成る群から選択されるCO富化製紙組成物の少なくとも1つの見積もられた電気的性質を生じるオブザーバーに提供する。オブザーバーは、製紙組成物の性質データ、CO富化製紙組成物の性質データ、および見積もられた電気的性質データを、制御装置へと伝え、制御装置は、予め選択された範囲の値内にCO富化製紙組成物の少なくとも1つの電気的性質を保つようにCOの入口流を制御する。
【0133】
オブザーバーはモデルを含むことができ、モデルにより示される不正確さを解析することにより、および測定における予想される誤差を解析することにより、見積もられた電気的性質をさらに精緻にすることができる。製紙組成物の性質データ、CO富化製紙組成物の性質データ、および見積もられた電気的性質データは、ソフトウエアセンサ中に取り込まれ得る。見積もられた電気的性質データを、設定値を評価し、実時間閉ループ制御を実行するために用いることができる。
【0134】
上記した全ての態様において、プロセス中の具体的な位置でCOを注入することにより、ウエットエンドにおける化学的性質を制御するためにCOを利用するウエットエントプロセスにおいて、CO注入を、双方とも製紙組成物に存在し得る液体または繊維に対して所望される性質を付与するように制御することができる。これらは、繊維または液体の性質を用いること、およびプロセス妨害を除くことで達成され得る。
【0135】
例えば、ウエットエンドの少なくとも1つの地点において、COを、繊維流に、または後に繊維と混合する繊維を含まない液体のいずれかに、直接的に注入することができる。あるいは、COをタンク中に注入することができる。制御された注入は、測定がオフラインである場合には手動、または測定がオンラインである場合には自動のいずれかである。
【0136】
手動制御は、オフラインサンプルを取り出し、性質をこれらのサンプルから測定する。その後、COをいくつかの方法に基づいて、手動で調節する。手動制御の方法は、CO注入、測定および所望される設定値間の多変数の線形または非線形回帰に基づく。
【0137】
自動制御は、フィードバック、フィードフォワード、組み合わせ、または高度制御装置のいずれかであり得る。フィードバック制御は、繊維流とCOリッチ流(純粋なCOまたはCOと混合された水)を混合した後のプロセスの少なくとも1つの測定を受け取る。フィードフォワードは、CO(純粋なCOまたはCOと混合された水)を注入する前のプロセスの少なくとも1つの測定を受け取り、プロセスが影響を受ける前にCOを調節する。高度制御装置は、フィードフォワードおよびフィードバックの組み合わせ、または限られないが、カスケード制御、適応制御、最適制御、ローバスト制御、ニューラルネットワーク制御装置、ファジイ制御、モデル予測制御等のような高度制御装置のいずれかである。高度制御装置は、ウエットエンドにおける所望される化学的性質を保つようにCOを調節する一方で、全ての妨害を除き、またはウエットエンドにおける化学添加物の使用を最小化する。
【0138】
ウエットにおけるCO制御装置により保たれる化学的性質は、限られないが、ZP(ゼータ電位)、CD(電荷要求量)、pH、イオン濃度等である。CO制御装置により除くことができる妨害は、限られないが、損紙再循環、入口電荷要求量における変化、入口ZPにおける変化、pHにおける変化、温度、濃度等である。CO制御装置は、内因的、または外因的のいずれかであり得るプロセスの性質を利用する。内因的情報は、少なくとも1つの、限られないが、pH、導電度、CD、イオン濃度等であり得る。外因的情報は、少なくとも、限られないが、流量、体積等であり得る。
【0139】
制御装置により利用されるオンライン性質は、測定され得るか、測定できない。測定される性質は、少なくとも1つの、限られないが、pH、導電度、温度、流量、CD、ZP等で有り得る。測定できないまたは感知できない性質は、少なくとも1つの、限られないが、CD、ZP、イオン濃度等であり得る。測定できないまたは感知できない性質を、オンラインで見積もり、オブザーバーまたは推定器を用いるCO制御装置により利用することができる。オブザーバーまたは推定器は、例えば、カルマンフィルタまたはニューラルネットワークにより提供されるアルゴリズムに基づく、測定できないまたは観測されない性質を予測することができる。オブザーバーは、基本モデル、経験的モデル、または発見的モデルのいずれかからのプロセス知識を利用する。
【0140】
上記した態様において、イオン濃度は、[H+]、[OH−]、[Ca+2]、[Na+]、[HCO3−]、[CO3−−]等に由来し得ることをさらに特筆する。
【0141】
さらに上記した態様において、自動制御を行うための少なくとも3つの方法がある。すなわち、製紙組成物における性質を用いること、CO富化製紙組成物の性質を用いること、および双方の性質を用いることである。第1の場合に、典型的なフィードフォワード、または推論的制御若しくは予測的な制御であり得るフィードフォワードを用いることが望まれる。第2の場合においては、典型的なフィードバックが、適応制御、モデル予測的制御、ローバスト制御、最適制御、ニューラルネットワーク制御、ファジイ制御、動的マトリックス制御等を用いる場合に進歩的になる。第3の場合については、双方の方法の組み合わせを用いることができる。
【0142】
本発明の上述の明細書を、これについてのいくつかの好ましい態様に関して記載したが、多くの詳細を説明の目的で示し、当業者には、本発明が、さらなる態様を受入れる余地があり、本明細書中に記載したいくつかの詳細は、本発明の基本原理を逸脱することなく、相当に変化し得ることは明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】具体的な製紙プロセスに適合する制御方法の態様を示す模式図。
【図2】制御方法の他の態様を示す模式図。
【図3】規準化された工程変化および電荷要求量妨害に応答するフィードフォワード制御装置の予測される実行を示す模式図。
【図4】具体的な製紙プロセスに適合する制御方法の他の態様を示す模式図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO添加を利用するウエットエンドプロセスにおいて、
製紙組成物とCO2とを合わせてCO2富化製紙組成物を生成すること、
前記製紙組成物または前記CO2富化製紙組成物のいずれかの少なくとも1つの電気的性質を測定するまたは見積もること、および
予め選択した範囲の値内に前記少なくとも1つの電気的性質を保つようにCO2の添加の速度を制御すること
の組み合わせを包含する前記CO添加を制御するための方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電気的性質が、ZP、CDおよびイオン濃度から成る群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気的性質が、前記製紙組成物または前記CO富化製紙組成物のいずれかの少なくとも1つの性質を測定すること、およびZPを見積もることにより見積もられる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電気的性質が、ZPである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電気的性質が、CDである請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記電気的性質が、イオン濃度である請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの性質が、流量、CD、ZP、イオン濃度、Cy、pH、導電度およびアルカリ度から成る群から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの性質が、流量、CD、イオン濃度、Cy、pH、導電度およびアルカリ度から成る群から選択される請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの性質が、流量、ZP、イオン濃度、Cy、pH、導電度およびアルカリ度から成る群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの性質が、流量、CD、ZP、Cy、pH、導電度およびアルカリ度から成る群から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの電気的性質が、前記製紙組成物中で見積もられる請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの電気的性質が、前記CO富化製紙組成物中で測定される請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの電気的性質が、前記製紙組成物中で見積もられる請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの電気的性質が、前記製紙組成物中で見積もられる請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの電気的性質が、前記CO富化製紙組成物中で測定される請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの電気的性質が、前記CO富化製紙組成物中で測定される請求項12に記載の方法。
【請求項17】
CO添加を利用するウエットエンドプロセスにおいて、
製紙組成物とCOとを合わせて、CO富化製紙組成物を生成すること、
前記製紙組成物の少なくとも1つの性質を測定するまたは見積もること、製紙組成物の性質データを生じさせること、および前記製紙組成物の性質データを、前記製紙組成物の性質データを受け取り、製紙組成物出力成分を生じるように構成され配置された高度制御装置に提供すること、
前記CO富化製紙組成物の少なくとも1つの性質を測定するまたは見積もること、CO富化製紙組成物の性質データを生じさせること、および前記CO富化製紙組成物の性質データを、前記CO富化製紙組成物の性質データを受け取り、出口制御装置出力成分を生じるように構成され配置されたフィードバック制御装置に提供すること、
入口制御装置出力成分と、前記出口制御装置出力成分を解析することによりフィードバック制御装置を補償すること、および
予め選択した範囲の値内に前記CO富化製紙組成物の少なくとも1つの性質を保つように前記COの入口流を制御すること
の組み合わせを包含する前記CO添加を制御するための方法。
【請求項18】
前記製紙組成物の前記少なくとも1つの性質が、流量、ZP、CD、イオン濃度、Cy、pH、導電度およびアルカリ度から成る群から選択される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記CO富化組成物の前記少なくとも1つの性質が、ZP、CDおよびイオン濃度から成る群から選択される請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記CO富化組成物の前記少なくとも1つの性質が、ZP、CDおよびイオン濃度から成る群から選択される請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記高度制御装置が、フィードフォワード制御装置を包含する請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記製紙組成物の前記少なくとも1つの性質が、流量、ZP、CD、イオン濃度、Cy、pH、導電度およびアルカリ度から成る群から選択され、および前記CO富化製紙組成物の前記少なくとも1つの性質が、ZPおよびCDから成る群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
CO添加を利用するウエットエンドプロセスにおいて、
製紙組成物とCOを合わせて、CO富化製紙組成物を生成すること、
流量、ZP、CD、Cy、pH、導電度、イオン濃度およびアルカリ度から成る群から選択される、前期製紙組成物の少なくとも1つの性質を測定するまたは見積もること、製紙組成物の性質データを生じさせること、および前記製紙組成物の性質データを、前記製紙組成物の性質データを受け取り、入口制御装置出力成分を生じるように構成され配置された高度制御装置に提供すること、
ZP、CD、および塩イオン濃度から成る群から選択される、前期CO富化製紙組成物の少なくとも1つの性質を測定するまたは見積もること、CO富化製紙組成物の性質データを生じさせること、および前記CO富化製紙組成物の性質データを、前記CO富化製紙組成物の性質データを受け取り、出口制御装置出力成分を生じるように構成され配置されたフィードバック制御装置に提供すること、
前記入口制御装置出力成分と前記出口制御装置出力成分を解析することにより、前記フィードバック制御装置を補償すること、および
予め選択された範囲の値内に前記CO富化製紙組成物の前記少なくとも1つの性質を保つように前記COの入口流を制御すること
の組み合わせを包含する前記CO添加を制御するための方法。
【請求項24】
前記高度制御装置が、フィードフォワード制御装置を包含する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記フィードフォワード制御装置が、予測的制御を用いる請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記フィードフォワード制御装置が、推論的制御を用いる請求項24に記載の方法。
【請求項27】
CO添加を利用するウエットエンドプロセスにおいて、
製紙組成物とCOとを合わせて、CO富化製紙組成物を生成すること、
流量、ZP、CD、イオン濃度、Cy、pH、導電度およびアルカリ度から成る群から選択される、前記製紙組成物の少なくとも1つの性質をオンライン測定すること、製紙組成物の性質データを生じさせること、および前記製紙組成物の性質データをオブザーバーに提供すること、
流量、ZP、CD、イオン濃度、Cy、pH、導電度およびアルカリ度から成る群から選択される、前記CO富化製紙組成物の少なくとも1つの性質をオンライン測定すること、CO富化製紙組成物の性質データを生じさせること、および前記CO富化製紙組成物の性質データを前記オブザーバーに提供すること、
前記オブザーバーが、前記製紙組成物の性質データおよび前記CO富化製紙組成物の性質データを受け取ること、ZP、CDおよびイオン濃度から成る群から選択される、前記CO富化製紙組成物の少なくとも1つの見積もられた電気的性質を生じさせること、前記オブザーバーが、前記少なくとも1つの電気的性質についての見積もられた電気的性質データを生じさせること、および前記製紙組成物の性質データ、前記CO富化製紙組成物の性質データ、および前記見積もられた電気的性質データを、制御装置に伝えること、および
前記制御装置が、予め選択された範囲の値内に前記CO富化製紙組成物の少なくとも1つの電気的性質を保つように前記COの入口流を制御すること
の組み合わせを包含する前記CO添加を制御するための方法。
【請求項28】
前記オブザーバーが、モデルを含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記製紙組成物の性質データ、前記CO富化製紙組成物の性質データ、および前記見積もられた電気的性質データが、ソフトウエアセンサ中に取り込まれる請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記製紙組成物の性質データ、前記CO富化製紙組成物の性質データ、および前記見積もられた電気的性質データが、ソフトウエアセンサ中に取り込まれる請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記オブザーバーが、前記モデルにより示される不正確さを解析することにより、前記見積もられた電気的性質をさらに精緻にする請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記オブザーバーが、測定において予想される誤差を解析することにより、前記見積もられた電気的性質をさらに精緻にする請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記オブザーバーが、前記モデルにより示される不正確さを解析することにより、および測定において予想される誤差を解析することにより、前記見積もられた電気的性質をさらに精緻にする請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記オブザーバーが、前記モデルにより示される不正確さを解析することにより、前記見積もられた電気的性質をさらに精緻にする請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記オブザーバーが、測定において予想される誤差を解析することにより、前記見積もられた電気的性質をさらに精緻にする請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記オブザーバーが、前記モデルにより示される不正確さを解析することにより、および測定において予想される誤差を解析することにより、前記見積もられた電気的性質データをさらに精緻にする請求項30に記載の方法。
【請求項37】
設定値を評価し、および実時間閉ループ制御を実行するために、前記見積もられた電気的性質データを用いることをさらに包含する請求項28に記載の方法。
【請求項38】
設定値を評価し、および実時間閉ループ制御を実行するために、前記見積もられた電気的性質データを用いることをさらに包含する請求項30に記載の方法。
【請求項39】
設定値を評価し、および実時間閉ループ制御を実行するために、前記見積もられた電気的性質データを用いることをさらに包含する請求項36に記載の方法。
【請求項40】
CO添加を利用するウエットエンドプロセスにおいて、
製紙組成物とCOとを合わせて、CO富化製紙組成物を生成すること、
流量、ZP、CD、イオン濃度、Cy、pH、導電度およびアルカリ度から成る群から選択される、前期製紙組成物の少なくとも1つの性質をオンライン測定すること、製紙組成物の性質データを生じさせること、および前記製紙組成物の性質データをオブザーバーに提供すること、
流量、ZP、CD、イオン濃度、Cy、pH、導電度およびアルカリ度から成る群から選択される、前期CO富化製紙組成物の少なくとも1つの性質をオンライン測定すること、CO富化製紙組成物の性質データを生じさせること、および前記CO富化製紙組成物の性質データを前記オブザーバーに提供すること、
前記オブザーバーが、前記製紙組成物の性質データおよび前記CO富化製紙組成物の性質データを受け取ること、ZP、CDおよびイオン濃度から成る群から選択される前記CO富化製紙組成物の少なくとも1つの見積もられた電気的性質を生じさせるためにモデルを用いること、
前記オブザーバーが、前記モデルにより示される不正確さを解析することにより、および測定において予想される誤差を解析することにより、前記少なくとも1つの電気的性質についての見積もりを精緻にすること、
前記オブザーバーが、前記製紙組成物の性質データ、前記CO富化製紙組成物の性質データ、および前記精緻にされた見積もられた電気的性質データを、制御装置に伝えること、および
前記制御装置が、予め選択された範囲の値内に前記CO富化製紙組成物の前記少なくとも1つの電気的性質を保つように前記CO入口流を制御すること
の組み合わせを包含する前記CO添加を制御するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−527798(P2006−527798A)
【公表日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516541(P2006−516541)
【出願日】平成16年6月11日(2004.6.11)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001950
【国際公開番号】WO2004/113614
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・ア・ディレクトワール・エ・コンセイユ・ドゥ・スールベイランス・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】