説明

CO2インキュベータのオゾン滅菌方法およびオゾン滅菌装置

【課題】COインキュベータの滅菌を確実にし、送り込まれたオゾンガスの外部への漏れがなく、しかも庫内でのオゾンの均等循環を可能とし、しかもオゾン濃度を常時連続的に管理可能とする装置と方法の提供。
【解決手段】COインキュベータ11を滅菌テント1で気密に覆い、外部からCOインキュベータ11内にオゾンガスを送り込んで循環させる第一次滅菌手段と、循環オゾンガスを順次外部に排出して滅菌テント1内を循環させる第二次滅菌手段と滅菌テント1内の循環オゾンガスを外部に取り出して中和消失させる手段とからなる滅菌装置と、それを用いる滅菌方法。これにより最小限の規模でインキュベータ11の全体を覆うことが可能、しかも内部に送り込んだオゾンガスが漏れても滅菌テント1内にとどまるために危険がなく、内部のみならず外面の滅菌をも実施することができるために、使用の前後における滅菌を略完全に実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種細胞の保存や培養に用いられるインキュベータの滅菌装置に関し、インキュベータの完全な滅菌を可能にするとともに、滅菌に際してのインキュベータ内保管物質の安全、および滅菌ガスの漏出による危険を防止することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
従来医療分野における手術用医療器具や医薬品容器の滅菌手段として、手術用医療器具や医薬品容器の使用の前後においてアルコールで払拭し、あるいは140℃程度の高温滅菌を施し、あるいはUV照射により滅菌することが知られている。また手術用医療器具や医薬品容器を滅菌するための滅菌室内にプロパンガスを混入させた有毒な酸化エチレンガスなどのエチレンオキシド、あるいはホルマリンガスを用いることも知られている。
【0003】
しかし滅菌室内にプロパンガスを混入させた有毒な酸化エチレンガスやホルマリンガスを用いる場合には、滅菌後に残留ガスを除去するための洗浄装置を別途必要とし、また洗浄装置を用いたとしても有害な残留ガスの完全な除去が困難であるなどの問題があるために、最近では経時的に自動消滅する性質のオゾンガスを用い、滅菌対象物を収納した圧力容器内を減圧し、オゾン発生装置と上記の圧力容器内とを循環するようにしたオゾンガスを上記の圧力容器内に噴出させることにより滅菌対象物を滅菌し、滅菌後に圧力容器外に除去するようにしたもの(特開平9−271512号公報参照)が開発された。
【0004】
また医療器具等の滅菌対象物を収容した滅菌装置内にオゾンラインと滅菌フィルターを設けたエアレーションラインとをそれぞれ接続し、エアレーションラインの滅菌フィルター上流側とオゾンライン間にバイパスラインを接続することにより、バイパスラインを介してオゾンガスを直接に滅菌フィルター側に流して滅菌処理するようにしたもの(特開2001−340432号公報参照)も知られている。
【0005】
さらに各種の細胞や菌類等の微生物の培養をするためのインキュベータのチャンバー内を滅菌するために、チャンバーとの間に三方切替弁11を介してCOボンベを接続するとともに、チャンバーの所要位置に、中間にガス循環用ポンプ、COセンサ、Oセンサ、オゾンセンサを介在させた循環ラインを接続し、該循環ライン途中の三方切替弁16にオゾン分解装置を備えた排気ラインを接続することにより、培養終了時に三方切替弁11をオゾン発生装置がチャンバー内に連通するように切り替えてオゾンガスをチャンバー内に導入・充満させてチャンバー内面および内部雰囲気を滅菌した後につぎの培養を行わせるようにしたもの(特開2004−267064号公報参照)も知られている。
【0006】
さらに部屋単位でクリーンルームを構成し、その室内全体にわたりオゾンガスを充満させて滅菌することも知られている。
【特許文献1】特開平9−271512号公報
【特許文献2】特開2001−340432号公報
【特許文献3】特開2004−267064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら各種の細胞や菌類等の微生物の培養をするためのCOインキュベータの場合においては、培養終了時毎にCOインキュベータ内の完全な滅菌をおこなう必要がある。とくに細胞の培養をおこなう場合においては培養前にCOインキュベータの庫内の無菌状態を確認する必要があり、一般的には例えば庫内に寒天培地を入れて一定時間静置した後に菌の有無を確認する作業を必要とする。
【0008】
この場合に前記した特許文献3のようなオゾンガス循環による滅菌手段、すなわちCOインキュベータの外部に三方切替弁を介してCOボンベを接続するとともに、これとは別に中間にガス循環用ポンプ、COセンサ、Oセンサ、オゾンセンサを介在させた循環ラインを接続し、しかも該循環ライン途中の三方切替弁16にオゾン分解装置を備えた排気ラインを接続することにより、培養終了時に三方切替弁11をオゾン発生装置がチャンバー内に連通するように切り替えてオゾンガスをチャンバー内に導入・充満させてチャンバー内面および内部雰囲気を滅菌した後につぎの培養を行わせるようにした場合においては、つぎのような問題が生じ易い。
【0009】
つまり現在使用されているCOインキュベータは完全な気密構造ではないために、経時的に自動消滅する性質があるとはいえ、培養室内からCOインキュベータの外部にオゾンガスが漏れ出して危険であること、またオゾンがCOインキュベータ内の隅々まで均等に行きわたらないこともあり、COインキュベータ内の滅菌の機能が必ずしも十分とはいえない。またCOインキュベータを使用する場合に、事前にインキュベータの外面をアルコールやエタノールを浸み込ませた布片や不織布などにより丁寧に払拭する必要があり、COインキュベータを用いる際においては細心の注意を払って、インキュベータの内外部にわたる完全な滅菌を施す必要がある。
【0010】
さらに部屋単位でクリーンルームを構成し、その室内全体にわたりオゾンガスを充満させて滅菌するためには多量のオゾンガスを必要とするばかりでなく、作業員におよぼす危険性、とくにクリーンルーム内の作業員の存否確認が難しく、また室外へのガス漏れのおそれもあり、しかもクリーンルーム内に設置された各種の機器類の酸化が危惧されるなど、あまり有効な手段ではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明においては、COインキュベータの完全無菌化を可能にし、とくにCOインキュベータ内に送り込んだオゾンの外部への漏れがなく、しかも庫内でのオゾンの均等循環を可能とし、またオゾン濃度を常時連続的に管理可能とし、さらにオゾン滅菌作業後のオゾンガスを取り出して中和消失させるだけでなく、滅菌作業後のCOインキュベータの残存菌の有無を十分に確認する手段を備えるようにしたものである。
【0012】
具体的には、COインキュベータを気密に覆う滅菌テントを介し、外部からCOインキュベータ内にオゾンガスを送り込んで内部循環させる第一次滅菌手段と、COインキュベータ内を循環するオゾンガスを順次排出して滅菌テント内を循環させる第二次滅菌手段と、滅菌テント内の循環オゾンガスを外部に取り出して中和消失させる手段とからなるCOインキュベータのオゾン滅菌方法に関し、またオゾン測定器によりオゾンガス残留濃度を測定した後、サンプリングボックス内で残存汚染菌の有無を確認するようにしたCOインキュベータのオゾン滅菌方法に関する。
【0013】
また本発明は、COインキュベータを気密に覆う滅菌テントと、外部からCOインキュベータ内にオゾンガスを送り込んで内部循環させることにより第一次滅菌を施すオゾンガス発生装置と、COインキュベータ内の循環オゾンガスを順次排出して滅菌テント内を循環させる第二次滅菌手段と、滅菌テント内の循環オゾンガスを外部に取り出して中和消失させる手段とからなるCOインキュベータのオゾン滅菌装置に関し、またオゾン測定器によりオゾンガス残留濃度を測定した後、サンプリングボックス内で残存汚染菌の有無を確認できるようにしたCOインキュベータのオゾン滅菌装置に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のCOインキュベータのオゾン滅菌方法および装置は、COインキュベータの全体を気密に覆う滅菌テントによりCOインキュベータを覆うとともに、滅菌テント内に連通させた一方のチューブ接続部を介してCOインキュベータ内にオゾンガスを圧送循環させてCOインキュベータ内の第一次滅菌をおこなうとともに、次いでCOインキュベータ内のオゾンガスを滅菌テント内に排出循環させてCOインキュベータの外周面について第二次滅菌するようにしたために、既設の部屋単位でクリーンルームを構成し、その室内全体にわたりオゾンガスを充満させて滅菌する場合に比して最小限の規模で、しかも比較的少量のオゾンガスによりCOインキュベータの全体を完全に滅菌することができる。
【0015】
しかも第一次滅菌時にCOインキュベータ内に送り込んだオゾンガスが漏れても滅菌テント内にとどまるために危険がなく、またCOインキュベータの内部のみならず第二次滅菌としてCOインキュベータの外面の滅菌をも実施することができるために、COインキュベータの使用の前後における滅菌を略完全に実施することができる。
【0016】
またCOインキュベータの内外を滅菌した後オゾンガスを滅菌テント外に排出し中和させる手段と、COインキュベータ内のオゾンガス濃度を測定する手段、および第一次滅菌前、又は第二次滅菌後の循環オゾンガス排出後に、外部からCOインキュベータ内に無菌エアを送り込んでCOインキュベータの内外部の残存汚染菌を検出する手段を有するために、排出オゾンを速やかに中和して消失させることができるばかりでなく、COインキュベータの内外における完全無菌化を実現することができる。
【0017】
またCOインキュベータ内に圧送したオゾンガスの濃度を常時監視することができ、これによってCOインキュベータ内のオゾンガス濃度を常にチェックして必要に応じてオゾンガスを追送し、あるいは濃度を下げるなどのオゾンガス濃度の微細な調整、およびCOインキュベータの使用前、あるいは滅菌作業完了後の残存菌の確認が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下において本発明の内容を図1以下にあらわした実施例をもとに説明をする。図において、1はCOインキュベータの全体を気密に覆う滅菌テント、14および9はチューブ接続部、18はオゾン供給源、20は濾過フィルターであってエアーポンプ21とともに無菌エア供給源を構成している。さらに23はオゾンガス濃度を測定するためのオゾン測定器、26はオゾン中和手段である活性炭フィルター、28はオゾンガス濃度を測定するためのオゾン濃度測定器、30はサンプリングボックスをそれぞれあらわしている。
【0019】
滅菌テント1は、厚手のポリエチレン、塩化ビニールその他の樹脂をはじめとし、オゾンガスを透過させない機能を有したシートをもって、COインキュベータの全体を、正面部2、左右の両側面部3(図では反対側の側面部の表示を省略している)、天井部4、背面部(図示省略)等により余裕をもって気密に覆うことができる形態および大きさの小部屋状に構成される。
【0020】
滅菌テント1の大きさについては、上記したようにCOインキュベータの全体をいくぶん余裕をもって気密に覆うことができる小部屋状の大きさでよいが、COインキュベータの全体積に対し、あまり余裕がない容積であると、COインキュベータの外面との間の隙間が少なくなりオゾンガスの循環性が十分に得られないのでCOインキュベータの全体積に対し、少なくとも1.3倍以上の容積を備えるのが好ましい。
【0021】
また滅菌テント1の容積がCOインキュベータの全体積に比してあまり大き過ぎてもオゾンガスの使用量が増大してコスト高となるばかりでなく滅菌作業の効率が低下し、また設置面積が増大するところから、本発明者らの種々の実験結果によればせいぜいCOインキュベータの全体積の4倍以下であるのが好ましく、さらに3倍以下であればより一層好ましいことが明らかとなった。なお滅菌テント1の正面部2、左右の側面部3、および背面部の各裾部分はCOインキュベータ11の設置されている床面に気密に接するように構成される必要がある。
【0022】
なおこの場合に、必要であれば図示しない気密ファスナー〔例えば「アクアシール」(YKK(株))(以下同じ)〕により上記した正面部2、左右の側面部3、および背面部の各裾部分に接続される底面シートを用いることができ、この場合にはあらかじめ底面シートを床面上に敷設した状態で、その上にCOインキュベータ11を設置する必要がある。
【0023】
さらに滅菌テント1の正面部2は床面近くの部分を残して左右両側端近くの切り込みにより開口部5を形成し、上端近くの部分を残し、左右両側端近くの切り込み縁7からこれにつづく下部水平切り込み縁に沿って取り付けた気密ファスナー7aにより正面部2の開口部5を開放し、もしくは閉塞可能にする正面部開閉シート6が設けられている。また図1において10は紐や細いロープ状のものを引き通して滅菌テント1の全体をCOインキュベータ11の天面より浮上させるべく吊るためのブラケットをあらわしている。
【0024】
さらに該正面部開閉シート6の下方部には、該正面部開閉シート6を気密ファスナー7aにより閉じた際に、COインキュベータ11の正面側の開閉扉12および操作盤13の下方部に正面側に突出させて取り付けられたところの、COインキュベータ11の内部に連通するチューブ接続部14a・14bに合致してチューブ接続部14a・14bの突出先端部を気密に滅菌テント1の外方に突出させることができる気密穴8a・8bが形成されている。なおこの気密穴8a・8bには、好ましくはチューブ接続部14a・14bの外周面に圧接可能なパッキン部材を嵌装させてもよい。
【0025】
なおCOインキュベータ11の下部に、一端を内部に連通させて取り付けたチューブ接続部14a・14bについては、チューブ接続部14a又は14bのいずれか一方だけでよいが、チューブ接続部の接続部分に破損等の不具合を生じた場合に備えて本実施例においては予備のチューブ接続部が備えられ、通常使用されているチューブ接続部9a以外の予備の接続部9bについてはその開口部において密栓してある。
【0026】
また滅菌テント1の正面部2の上端部近くには一端を滅菌テント1の内部に連通させたチューブ接続部9a・9bが外方に向けて突出されている。この場合に通常使用されるチューブ接続部は9a又は9bのいずれか一方だけでよいが、チューブ接続部の接続部分に破損等の不具合を生じた場合に備えて予備のチューブ接続部が備えられ、通常使用されているチューブ接続部9a以外の予備の接続部9bについてはその開口部において密栓してある。なお12aはCOインキュベータ11の正面側開閉扉12の上方に形成したところのCOインキュベータ11内に通じる排気孔をあらわしている。
【0027】
一方チューブ接続部14aにはチューブ15が接続され、このチューブ15の途中には三方弁16および17を介してオゾン供給源18が取り付けられている。なお本実施例ではオゾン供給源として汎用のオゾン発生器(例えばエコデザイン(株)「ED−OG−AP1」)が用いられている。また途中の三方弁16にはチューブ19を介して濾過フィルター20およびエアポンプ21が取り付けられ、この濾過フィルター20およびエアーポンプ21により無菌エア供給源を構成している。
【0028】
なお上記した濾過フィルター20については、本実施例においてはMillipore製のMillex-FG(ポアサイズ:0.22μm)のものが使用される。また三方弁17にはチューブ22を介してオゾン濃度を測定するためのオゾン測定器23が取り付けられている。なおこの場合のオゾン測定器23としては例えばNKサイエンティフックの「UVー100」が用いられる。
【0029】
さらにチューブ接続部9aにはチューブ24を介してオゾン中和手段である活性炭フィルター26が設けられている。またチューブ24の途中には三方弁25および31が介在され、一方の三方弁25にはチューブ27を介してオゾン濃度を測定するためのオゾン測定器(ポンプ内蔵)28が取り付けられ、また他方の三方弁31にはチューブ29を介してサンプリングボックス30が取り付けられている。
【0030】
サンプリングボックス30は、COインキュベータ11の内外部を循環したガス内に残存菌が混入しているか否かをテストすることによりCOインキュベータ11の開閉扉12を開閉したり、あるいは別途滅菌確認手段を設置するなどの手法を必要とせずにCOインキュベータ11の内部および外部の無菌化を安全かつ確実に確認するための装置である。
【0031】
ここで用いられるサンプリングボックス30については、具体例を挙げればチューブ29と接続した小さな有蓋の箱内を、あらかじめアルコールを含ませた脱脂綿により拭くなどの方法により滅菌して無菌空間とした箱内に、寒天等の培地、あるいは液体培地、フィルム状の培地等、無菌の培地を備えておき、チューブ29よりサンプリングボックス30内に設置されている無菌の培地に排気ガスを吹き付けることにより、排出循環ガス中に残存菌が残留していた場合には菌が培地に付着する。この培地を一定時間観察することにより菌が付着している場合には菌の繁殖が確認され、また菌の繁殖がみられない場合には残存菌が存在しないことが確認できる。
【0032】
COインキュベータ11の使用に際し、あるいは使用後においてCOインキュベータ11内の滅菌を実施する場合においては、滅菌テント1をもってCOインキュベータを気密に覆い、COインキュベータ11内にオゾンガスを入れて一定時間滅菌をおこなうとともに、その後COインキュベータ内のオゾンガスをCO滅菌テント1内に排出してインキュベータの外周部に循環させてCOインキュベータの内外部を共に十分に滅菌するとともに、その後無菌エアを送り込んでオゾンガスを強制排出・消滅させた後に無菌テストを実施することを可能にしたものである。
【0033】
上記した実施例の構成において、以下に滅菌作業の具体的な手順をあらわす。なおこの場合に予めCOインキュベータ11の全体を滅菌テント1をもって気密に覆う必要がある。
【0034】
〔無菌テスト〕
COインキュベータ11の使用に際し、図2に示したように、三方弁16を操作し、三方弁17側を閉止するとともに、チューブ19をチューブ15に連通させた状態にて、エアポンプ21を起動させて大気を吸気し、これを濾過フィルター20を通して無菌化したエアをチューブ接続部14aからCOインキュベータ11内に送り込んでCOインキュベータ11内に無菌エアを十分に循環させる。
【0035】
さらに無菌化したエアを送り続けると、COインキュベータ11内に循環していたエアが上方の排気孔12aから順次排出されて滅菌テント1の内部(COインキュベータ11の外面)を循環する。その後三方弁25を操作してチューブ27側を遮断するとともに、三方弁31を操作して活性炭フィルター26側のチューブ24を閉鎖し、チューブ29をチューブ24に連通させた状態において、COインキュベータ11の上方のチューブ接続部9aから排出されたエアをチューブ24およびチューブ29を介し、サンプリングボックス30内に排気して排気ガス中の菌の存在の有無を確認する。なおこの無菌テストはCOインキュベータ11の使用後において実施する場合も同様である。
【0036】
〔滅菌操作〕
滅菌操作については、図3において三方弁16および17を操作してチューブ19との連絡を遮断するとともに、オゾン発生器18をチューブ15を介してCOインキュベータ11のチューブ接続部14aに連通させた後、オゾン発生器18を作動させて発生したオゾンをCOインキュベータ11の下部よりCOインキュベータ11内に送り込み、内部を十分に循環させる(第一次滅菌)。
【0037】
オゾンをさらに送り続けることにより、COインキュベータ11内のオゾンガス圧が次第に高まり、図4にあらわしたように自動的に上方の排気孔12aから順次排出されて滅菌テント1の内部(COインキュベータ11の外面)を循環する(第二次滅菌)。この第一次滅菌と第二次滅菌とによりCOインキュベータ11の内部と外周面の両方の滅菌作業がおこなわれる。
【0038】
上記の滅菌過程において必要に応じてオゾンの濃度を測定することもできる。この場合には三方弁17を介してチューブ15をチューブ22とも連絡させてチューブ15を通過するオゾンガスをチューブ22を介してオゾン測定器23に導き、チューブ15を流れるオゾンの濃度を測定し、濃度が不足または過剰であればオゾン発生器18の稼動を加減して調整することができる。
【0039】
オゾン滅菌操作には主にCT値が用いられ、オゾン濃度はPPM×minであらわすことができる。滅菌作業の完了に至る想定オゾン濃度については、例えばCT:10,000以上に設定し、CT値:10,000を超えたら滅菌完了とみる。なおこの場合に使用される滅菌測定手段としては、例えばケミカルインジケータ(例えばオゾンインジケータ)が用いられ、これをCOインキュベータ11の内部複数個所に設置して逐次確認することができる。
【0040】
なお滅菌測定手段としては、このほかにもバイオロジカルインジケータを用いることができるが、この場合においては使用に際して湿度を上げる必要があり、またCT値を確認する際にいちいちCOインキュベータ11の内部から外部に取り出す必要があるために、その際の菌の付着が疑われる場合もあるのであまり好ましくはない。
【0041】
〔オゾン排出〕
オゾンの排出は図5にあらわしたように、三方弁16を操作して三方弁17側を遮断するとともに、チューブ19をチューブ15に連通させ、エアポンプ21を起動させて吸気エアを濾過フィルター20を通過させることにより無菌化したエアを下部のチューブ接続部14aからCOインキュベータ11内に圧送する。
【0042】
さらに無菌化エアを注入し続けると無菌化エアはCOインキュベータ11内に残存するオゾンガスを伴って順次自動的に上方の排気孔12aから滅菌テント1内に排出され、滅菌テント1内を循環して滅菌テント1内の残存オゾンガスをも伴って順次上方のチューブ接続部9aより外部に排出され、これを継続することにより次第にCOインキュベータ11内および滅菌テント1内の残存オゾンガスが排出されていく。
【0043】
なおこの過程において、随時三方弁25を介して連通されてるチューブ27により排出ガスをオゾン測定器28内に導くことによりオゾン濃度を測定してオゾンガスの残存量を測定することができ、これによってオゾンガスの濃度が外気と同等になったときにオゾンガスの排出を確認することができる。
【0044】
無菌エアの注入により順次排出されるCOインキュベータ11内および滅菌テント1内の残存オゾンガスは、三方弁25および31を通過してチューブ24により活性炭フィルター26内に送り込まれ、ここで中和された後排出される。
【0045】
〔滅菌確認検査〕
COインキュベータ11の使用後においては使用前の無菌テストと同様の手法により滅菌の確認作業をおこなう。すなわち、上記した図2のように、三方弁16を操作して三方弁17方向のチューブ15を遮断し、さらに三方弁25を操作してオゾン測定器28方向のチューブ27を遮断するとともに、三方弁31を操作して活性炭フィルター26方向のチューブ24を遮断した状態とし、この状態においてエアポンプ21により吸気したエアを濾過フィルター20を介して無菌化したエアを継続的にチューブ19および15を介して下部のチューブ接続部14aよりCOインキュベータ11の内部および外部(滅菌テント1内)に循環させ、さらに滅菌テント1の上方のチューブ接続部9aより外部に排出させ、チューブ24および29を介してサンプリングボックス30内に送り込み、排気ガス中の菌の存在の有無を確認する(図5参照)。
【0046】
なお、上記した〔無菌テスト〕〔滅菌操作〕〔オゾン排出〕〔滅菌確認検査〕の各作業時における三方弁16・17・25・31の操作についてはその都度手作業により実行し、あるいは特に図示はしないが、予め決められたパターンによる電子的記憶回路に従って電気的に作動させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施例であるCOインキュベータのオゾン滅菌手段として用いられる滅菌テントの概略をあらわした全体斜視図。
【図2】図1の滅菌テントを中心とした本発明のCOインキュベータのオゾン滅菌システム全体の概略をあらわした説明図(無菌テストおよび滅菌確認検査時)。
【図3】図1の滅菌テントを中心とした本発明のCOインキュベータのオゾン滅菌システム全体の概略をあらわした説明図(COインキュベータ内の第一次滅菌)。
【図4】図1の滅菌テントを中心とした本発明のCOインキュベータ内オゾン滅菌システム全体の概略をあらわした説明図〔COインキュベータ内部(第一次)および外部(第二次)滅菌〕。
【図5】図1の滅菌テントを中心とした本発明のCOインキュベータのオゾン滅菌システム全体の概略をあらわした説明図(オゾン排出)。
【符号の説明】
【0048】
1 滅菌テント
2 正面部
3 左右の両側面部
4 天井部
5 開口部
6 正面部開閉シート
7 切り込み縁
7a 気密ファスナー
8a 気密穴
8b 気密穴
9a チューブ接続部
9b チューブ接続部
10 ブラケット
11 COインキュベータ
12 開閉扉
12a 排気孔
13 操作盤
14a チューブ接続部
14b チューブ接続部
15 チューブ
16 三方弁
17 三方弁
18 オゾン発生器
19 チューブ
20 濾過フィルター
21 エアポンプ
22 チューブ
23 オゾン測定器
24 チューブ
25 三方弁
26 活性炭フィルター
27 チューブ
28 オゾン測定器
29 チューブ
30 サンプリングボックス
31 三方弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
COインキュベータを気密に覆った滅菌テントを介し、外部からCOインキュベータ内にオゾンガスを送り込んで内部循環させる第一次滅菌手段と、COインキュベータ内を循環するオゾンガスを順次排出して滅菌テント内を循環させる第二次滅菌手段と、滅菌テント内の循環オゾンガスを外部に取り出して中和消失させる手段とからなるCOインキュベータのオゾン滅菌方法。
【請求項2】
外部からCOインキュベータ内に無菌エアを送り込んでCOインキュベータ内および滅菌テント内の残存ガスを排出し、オゾン測定器によりオゾンガス残留濃度を測定してオゾン排出確認後、サンプリングボックス内で残存汚染菌の有無を確認するようにした請求項1に記載のCOインキュベータのオゾン滅菌方法。
【請求項3】
サンプリングボックス内での残存汚染菌の有無確認がCOインキュベータ内からの排出ガスを無菌空間内に設置された培地に吹き付けて菌の増殖の有無を確認するものであるところの請求項2に記載のオゾン滅菌方法。
【請求項4】
COインキュベータを覆う滅菌テントの大きさが、COインキュベータの全体積の4倍以下の容量であるところの請求項1〜3の何れか1に記載のオゾン滅菌方法。
【請求項5】
COインキュベータを気密に覆う滅菌テントと、外部からCOインキュベータ内にオゾンガスを送り込んで内部循環させることにより第一次滅菌を施すオゾンガス発生装置と、COインキュベータ内の循環オゾンガスを順次排出して滅菌テント内を循環させる第二次滅菌手段と、滅菌テント内の循環オゾンガスを外部に取り出して中和消失させる手段とからなるCOインキュベータのオゾン滅菌装置。
【請求項6】
外部からCOインキュベータ内に無菌エアを送り込んでCOインキュベータ内および滅菌テント内の残存ガスを排出させる手段と、該排出残存ガスのオゾン残留濃度を測定するオゾン測定器と、排出残存ガスの残存汚染菌の有無を確認するサンプリングボックスとを備えたCOインキュベータのオゾン滅菌装置。
【請求項7】
サンプリングボックス内での残存汚染菌の有無確認がCOインキュベータ内からの排出ガスを無菌空間内に設置された培地に吹き付けて菌の増殖の有無を確認するものであるところの請求項6に記載のオゾン滅菌装置。
【請求項8】
COインキュベータを覆う滅菌テントの大きさが、COインキュベータの全体積の4倍以下の容量であるところの請求項5〜7の何れか1に記載のオゾン滅菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−57376(P2010−57376A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223623(P2008−223623)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(501005092)株式会社リンフォテック (7)
【Fターム(参考)】