説明

CYP1B1に特異的な抗体

【課題】本発明は、腫瘍の診断及び治療、特に腫瘍特異的チトクロームP450 CYP1B1に特異的な抗体に関する。
【解決手段】チトクロームP450 CYP1B1に特異的に結合できる抗体、及びそれらの調製方法が開示され、特にアミノ酸配列VNQWSVNHDPVKWPN若しくはPExFDPARFLDKDGy[式中、xはDまたはNであり、yはLまたはFである]より成るペプチド、またはその抗原性断片に結合する抗体が開示される。上記抗体は、乳ガン、前立腺ガン、大腸ガン、肝臓ガン、及び卵巣ガンを含む、増大したCYP1B1発現と結びついたガンの診断または治療において使用できる。上記CYP1B1タンパク質に対する抗体の結合を検出する工程は、抗体捕獲アッセイ、二抗体サンドイッチアッセイ、または抗原捕獲アッセイを使用して実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍の診断及び治療、特に腫瘍特異的チトクロームP450 CYP1B1に特異的な抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
チトクロームP450(P450)CYP1B1は、CYP1遺伝子ファミリーの最近同定されたサブファミリーの唯一の周知のメンバーである。ヒトCYP1B1は、ジオキシンにさらすことによって引き起こされる遺伝子の特異的な発現を同定するための一連の調査の一部として、ジオキシン処理されたケラチノサイト細胞系からもともと単離された(Sutter等, 1994)。ヒトCYP1B1遺伝子は、12kbに亘る染色体2P22-21に位置し、3個のエキソンと2個のイントロンよりなる(Tang等, 1996)。mRNAは5.2kbであり、543アミノ酸のタンパク質をコードする(Sutter等, 1994)。これは、mRNAサイズ及びアミノ酸数の両者の観点で最も周知のヒトP450遺伝子であり、構造的に最も単純でもある。核酸及びアミノ酸配列の分析の両者により、CYP1B1はCYP1A1及びCYP1A2と約40%のみのホモロジーを有することが示されている。CYP1ファミリーの存在するメンバーとの低い度合いの相同性は、このP450が単一のメンバーであるCYP1B1のみを今日まで含む新規なCYP1サブファミリーに分類することを生じた。実際、ヒトDNAのハイブリダイゼーション実験により、CYP1B1遺伝子ファミリーにはたった一つのみのメンバーが存在することが示唆される(Sutter等, 1994)。CYP1B1遺伝子は、平面芳香族炭化水素を含むAhレセプターのリガンドによって転写的に活性化され(Sutter等, 1994; Hakkola等, 1997)、CYP1B1遺伝子の転写を誘導するためのこれらのAhレセプターのアゴニストの中で最も強力なものは、ジオキシンであるようである(Hakkola等, 1997)。
【0003】
このP450のオルトローガスな形態もまた、マウス胚線維芽細胞(Savas等, 1994; Shen等, 1994)及び成体ラット副腎皮質(Bhattachryya等, 1995; Walker等, 1995)から由来するベンズアントラセン誘導性細胞から単離されている。CYP1B1のヒト、マウス及びラット形態の間で核酸及びアミノ酸配列のホモロジーの両者の高い度合い(80%より大きい)が存在するが、CYP1B1の組織特異的発現、調節及び代謝特性に関しては、かなりの種間差異が存在するようである(Savas等, 1994; Sutter等, 1994; Bhattacharyya等, 1995; Savas等, 1997)。
【0004】
乳ガンは、女性に影響する最も一般的なガンであり、エストロゲン依存性の腫瘍である。酵母(S. cerevisiae)において発現したヒトCYP1B1は、17β-エストラジオールを4-ヒドロキシエストラジオールに変換する4-ヒドロキシル化に向けた高い特異的な活性を示し(Hayes等, 1996)、実際にヒトCYP1B1は、17β-エストラジオールの最も有効な4-ヒドロキシラーゼであると解される。対照的にマウスCYP1B1は、エストラジオールヒドロキシラーゼとして機能しないようであり(savas等, 1997)、CYP1B1の代謝能力の種間差異を示す。Liehr及びRicci(1996)は、乳ガンミクロソームにおいて17β-エストラジオールの顕著なレベルの4-ヒドロキシル化が存在することを示した。彼らは、正常な乳房組織に存在する非常に低いレベルのみの4-ヒドロキシル化と比較して、乳ガンから調製されたミクロソームにおいて17β-エストラジオールの顕著に高い4-ヒドロキシル化を示した。免疫応答性CYP1B1タンパク質(Murray等, 1997)及びCYP1B1 mRNA(McKay等, 1995)の両者が乳ガンにおいて同定されており、CYP1B1が乳ガンにおいて発現されるチトクロームP450の主要な形態であることを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Bailey等, Cancer Res., 58: 5038-5041, 1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Murray等(1997)におけるCYP1B1の初期の免疫組織化学的な研究により、乳ガンを含むヒトのガンのいくつかのタイプにおける増大したCYP1B1発現が示され、CYP1B1に対するポリクローナル抗体を使用して実施された。本発明は、この領域のさらなる発展に関し、さらにヒトCYP1B1に特異的な抗体、特に免疫原としてCYP1B1アミノ酸配列に基づく合成ペプチドを使用して生産されたモノクローナル抗体に関する。ここに記載された研究は、免疫組織化学と、一連の原発性ヒト乳ガンにおける免疫組織化学によるCYP1B1の発現の調査における上記抗体の使用を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、第一の特徴点として本発明は、チトクロームP450 CYP1B1に特異的に結合する抗体の調製方法に関し、上記方法は、アミノ酸配列VNQWSVNHDPVKWPN若しくはPExFDPARFLDKDGy[式中、xはDまたはNであり、yはLまたはFである]より成るペプチド、またはその抗原性断片を使用して上記抗体を生産することを含む。
典型的にこれらのペプチド配列内の抗原性断片は、3から10アミノ酸、より典型的には3から6アミノ酸よりなる。
【0008】
さらなる特徴点として本発明は、上記の方法によってハイブリドーマを得て抗体を生産する方法を提供し、上記方法は、上記抗体を生産するハイブリドーマを培養し、かくして生産された抗体を単離することを含む。上記方法は、ラベル、毒素、薬剤または輸送分子のようなエフェクター分子に対して抗体を接合するさらなる工程を含んでもよい。
【0009】
さらなる特徴点として本発明は、チトクロームP450 CYP1B1に対して特異的に結合可能な抗体を提供し、ここで上記抗体は、アミノ酸配列VNQWSVNHDPVKWPN若しくはPExFDPARFLDKDGy[式中、xはDまたはNであり、yはLまたはFである]内に含まれるチトクロームP450 CYP1B1中のエピトープを認識する。
【0010】
好ましくは上記抗体は、上記アミノ酸配列由来の3から10アミノ酸の間のエピトープ、より好ましくは上記アミノ酸配列由来の3から6アミノ酸の間のエピトープを認識する。
【0011】
好ましい抗体は、例えば以下の工程によって入手可能なモノクローナル抗体である:
(a)免疫原性キャリアーに接合した上記ペプチドで動物を免疫化する工程;
(b)上記動物を殺傷し、上記動物から得られた脾臓細胞をミエローマ細胞と融合して、一つ以上のハイブリドーマを生産する工程;並びに
(c)上記ペプチドを結合可能な抗体について上記ハイブリドーマをスクリーニングする工程。
【0012】
上記抗体は、ラベル、毒素、薬剤若しくはプロドラッグ、酵素または輸送分子のようなエフェクターに接合されてもよい。
【0013】
さらなる特徴点として本発明は、医薬的治療の方法における使用のための上記抗体を提供する。
【0014】
さらなる特徴点として本発明は、ガンの治療のための医薬の調製のためのこれらの抗体の使用を提供する。
【0015】
さらなる特徴点として本発明は、アミノ酸配列VNQWSVNHDPVKWPN若しくはPExFDPARFLDKDGy[式中、xはDまたはNであり、yはLまたはFである]より必須になるペプチドを提供する。
【0016】
さらなる特徴点として本発明は、患者から得たサンプル中に存在するガン細胞を検出するアッセイ方法を提供し、上記方法は、患者から得た組織サンプルを上記抗体と接触させる工程、及び上記組織サンプル中のガン細胞の存在の指標として、上記サンプル中に存在するCYP1B1タンパク質に対する抗体の結合を検出する工程を含む。
【0017】
例として、CYP1B1タンパク質に対する上記抗体の結合を検出する工程は、抗体捕獲アッセイ、二抗体サンドイッチアッセイ、または抗原捕獲アッセイを使用して実施される。
【0018】
好ましくは上記方法は、乳ガン、大腸ガン、前立腺ガン、肝臓ガンまたは卵巣ガンの診断または予後において補助するために使用される。
【0019】
本発明の各種のさらなる特徴点及び実施態様は、本開示に照らして当業者に明らかであろう。本発明の特定の特徴点及び実施態様は、実施例に照らし、及び以下の図面を参考にして説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、CYP1B1に対する特異性を示すモノクローナル抗体(5D3)での発現したCYP1B1のイムノブロットを示す図である。レーン1:発現したCYP1B1(10μgのミクロソームタンパク質、0.86pmolのCYP1B1);レーン2:発現したCYP1A1(10μgのミクロソームタンパク質、0.53pmolのCYP1A1);レーン3:ベクターのみを含むコントロールリンパ芽細胞ミクロソーム(10μgのミクロソームタンパク質;レーン4:正常なヒト肝ミクロソーム(10μgのミクロソームタンパク質)。分子量マーカーは、キロドルトン単位で右側に示される。
【図2】図2は、モノクローナル抗体5D3を使用するCYP1B1の最小検出可能量を表すイムノブロットを示す図である。レーン1からレーン6にかけて、発現したCYP1B1の減少した量を表す。レーン1:0.86pmolのCYP1B1;レーン2:0.43pmolのCYP1B1;レーン3:0.21pmolのCYP1B1;レーン4:0.1pmolのCYP1B1;レーン5;0.05pmolのCYP1B1;レーン6;0.025pmolのCYP1B1。分子量マーカーは、キロドルトン単位で右側に示される。
【図3】図3は、各種の正常ヒト組織から調製されたミクロソームのCYP1B1のイムノブロットを示す図である。レーン1:発現したCYP1B1(0.86pmolのCYP1B1に相当する10μgのミクロソームタンパク質);レーン2:肝臓;レーン3:腎臓;レーン4:肺;レーン5:膵臓;レーン6:副腎皮質;レーン7:脳(髄質);レーン8:胃;レーン9:空腸;レーン10:大腸;レーン11;乳房;レーン12:卵巣(正常なヒトの組織のレーン当たりに乗せたミクロソームタンパク質は30μg)。分子量マーカーは、キロドルトン単位で右側に示される。
【図4】モノクローナル抗体5D3を使用する乳ガンにおけるCYP1B1の免疫組織化学的説明を示す図である。A:第3段階の侵襲性管ガンにおけるCYP1B1の局在を示す。腫瘍細胞におけるCYP1B1に対する強力な免疫応答性が存在する。B:乳ガン細胞における強力な免疫反応性を示す侵襲性小葉ガンにおけるCYP1B1の局在を示す;C:一次CYP1B1モノクローナル抗体を免疫組織化学的な方法でTBSによって置換した場合、第3段階の侵襲性小葉ガンにおいて免疫応答性は存在しない。スケールバーは60μmを表す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
抗体
ここに提供される記載に基づいて、当業者は、当該技術分野で標準的な方法を使用して、CYP1B1を特異的に結合可能なさなる抗体を得ることができる。抗体の生産する方法は、上記タンパク質またはその断片で動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヤギ、ヒツジまたはサル)を免疫化することを含む。抗体は、当該技術分野で周知の各種の方法のいずれかを使用して免疫化された動物から得られ、好ましくは興味ある抗原に対する抗体の結合を使用してスクリーニングされてもよい。例えば、ウエスタンブロッティング法または免役沈降を使用してもよい(Armitage等, Nature 357: 80-82, 1992)。動物からの抗体の単離、及び/または抗体生産細胞の単離は、動物を殺傷する工程を伴ってもよい。
【0022】
実施例において示されるペプチドでの動物の免疫化の代替法または補足法として、タンパク質に特異的な抗体は、発現されたイムノグロブリン可変ドメインの組換え的に生産されたライブラリーから得られてもよく、例えばその表面に機能的なイムノグロブリン結合ドメインを展示するラムダバクテリオファージまたは繊維状バクテリオファージを使用してもよい;例えばWO92/01047を参照。上記ライブラリーは天然であってもよく、つまり上記タンパク質(または断片)のいずれかで免役化されていない生物から得られた配列から構築されてもよく、または興味ある抗原にさらされている生物から得られた配列を使用して構築されたものでもよい。
【0023】
本出願において、用語、「抗体」は、必要とされる特異性、特にCYP1B1に対して特異的に結合する特性を有する結合ドメインを有するいずれかの結合物質を包含するものとして定義され、それは好ましくは、CYP1B1と約40%のホモロジーを有するCYP1A1及びCYP1A2のような関連タンパク質、または非関連タンパク質に対して実質的に結合しない。用語、「抗体」は、抗体断片、誘導体、機能的同等物、及び抗体のホモローグを含み、合成分子並びに抗原またはエピトープを結合可能な抗体の形状を模倣した形状を有する分子を含む。好ましくは上記抗体は、3から10の間、より好ましくは3から6の間のアミノ酸よりなるエピトープのような、ペプチドDまたはEのアミノ酸配列内のエピトープに対して結合する。好ましい抗体は、Scathcard分析によって測定すると、10-6mol-1以上、より好ましくは10-8mol-1以上の結合アフィニティーを有して、CYP1B1に結合する(Antibodies, A Laboratory Manual, Harlow及びLane編, Cold Spring Harbor, 1988参照)。
【0024】
抗原または他の結合パートナーを結合可能な抗体断片の例は、VL、VH、C1及びCH1ドメインより成るFab断片;VH及びCH1ドメインより成るFd断片;抗体の単一の腕のVL及びVHドメインより成るFv断片;VHドメインより成るdAb断片;単離されたCDR領域及びF(ab')2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合された二つのFab断片を含む二価断片である。一本鎖Fv断片もまた含まれる。
【0025】
本発明に従ったモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマは、遺伝学的なミューテーションまたは他の変化を受けてもよい。モノクローナル抗体が、元々も抗体の特異性を維持した他の抗体またはキメラ分子を生産するために組換えDNA法の技術を受けることができることは、当業者にさらに理解されよう。上記技術は、抗体のイムノグロブリン可変領域または相補性決定領域(CDR)をコードするDNAを、異なるイムノグロブリンの定常領域または定常領域プラスフレームワーク領域に導入することを含んでもよい。例えばEP 0 184 187 A、GB 2 188 638 AまたはEP 0 239 400 Aを参照。キメラ抗体のクローニング及び発現は、EP 0 120 694 A及びEP 0 125 023 Aに記載されている。
【0026】
一つの実施態様として、本発明の抗体はヒト化される。非ヒト(例えば齧歯類)抗体のヒト化形態は、キメライムノグロブリン、イムノグロブリン鎖若しくはその断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2のような)、または非ヒトイムノグロブリンから由来する最小の配列を含む抗体の他の抗原結合サブ配列である。ヒト化抗体は、受容者の相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、アフィニティー及び能力を有するマウス、ラットまたはウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)由来の残基によって置換されたヒトイムノグロブリン(受容者抗体)を含む。ある場合、ヒトイムノグロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト抗体はまた、受容者抗体及びインポートされたCDRまたはフレームワーク配列のいずれにも見出されない残基を含んでもよい。一般的にヒト化抗体は、非ヒトイムノグロブリンのものに相当する全て若しくは実質的に全てのCDR、または全て若しくは実質的に全てのFR領域が、ヒトイムノグロブリンコンセンサス配列のものである、少なくても一つ、典型的には二つの可変領域の実質的に全てを含むであろう。ヒト化抗体は任意に、典型的にはヒトイムノグロブリンのものである、イムノグロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含むであろう。例えばJones等, Nature, 321: 522-525, 1986; Riechmann等, Nature, 332: 323-329, 1988;及びPresta, Curr Op Struct. Biol., 2: 593-596, 1992参照。
【0027】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野で周知である。一般的にヒト化抗体は、非ヒトであるソースから導入された一つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート」残基と称され、典型的に「インポート」可変ドメインから由来する。ヒト化は、齧歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の相当する配列で置換することによって、Jones等, Nature, 321: 522-525, 1986;Riechmann等, Nature, 332: 323-327, 1988;Verhoeyen等, Science, 239: 1534-1536, 1988に開示された方法に引き続いて必須に実施できる。従って、上記「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変ドメインより実質的に小さいものが、非ヒト種から由来する相当する配列によって置換されている、キメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際に、ヒト化抗体は、いくつかのCDR残基及びもしかしたらいくつかFR残基が、齧歯類抗体中の類似する部位から由来する残基によって置換された、典型的にヒト抗体である。
【0028】
二特異性抗体は、少なくとも二つの異なる抗原に対する結合特異性を有する、モノクローナルの、好ましくはヒトまたはヒト化抗体である。この場合、結合特異性の一方はCYP1B1に対するものであり、他方はいずれかの他の抗原に対するものである。二特異性抗体を調製する方法は、当該技術分野で周知である。伝統的に、二特異性抗体の組換え生産は、二つの重鎖が異なる特性を有する、二つのイムノグロブリン重鎖/軽鎖ペアの共発現に基づく;Milstein及びCuello, Nature, 305: 537-539, 1983参照。イムノグロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな分類のため、これらのハイブリドーマ(クアッドローマ)は、10種の異なる抗体分子の可能性を有する混合物を生産し、その中で一つのみが正確な二特異性構造を有する。正確な分子の精製は、通常アフィニティークロマトグラフィー工程を伴う。
【0029】
所望な結合特性を有する抗体を生産可能なハイブリドーマは、本発明の範囲内にあり、抗体(抗体断片を含む)をコードする核酸を含み、その発現が可能である真核生物または原核生物宿主細胞も同様である。本発明はまた、抗体が生産され、好ましくは分泌される条件の下で、抗体を生産可能な細胞を生育させることを含む、抗体の生産方法を提供する。
【0030】
本発明の抗体は、当該技術分野で周知の方法を使用して、ラベル、毒素、薬剤、または輸送分子のようなエフェクター分子に結合また接合できる。診断用途のため、上記抗体は典型的にラベルに結合される。サンプルに対する抗体の反応性は、いずれかの適切な手段によって測定されてもよい。個々のレポーター分子でのタグ化は、一つの可能性を示す。上記レポーター分子は、検出可能で好ましくは測定可能なシグナルを直接的または間接的に生産してもよい。レポーター分子の結合は、直接的または間接的でもよく、例えばペプチド結合を介するような共有結合または非共有結合であってもよい。ペプチド結合を介する結合は、抗体とレポーター分子をコードする遺伝子融合物の組換え発現の結果として達成されてもよい。
【0031】
一つの好ましい態様は、各抗体と、スペクトル的に単離される吸収または放射特性を有する個々の蛍光分子、燐光色素またはレーザー色素の共有結合によって達成される。適切に蛍光分子には、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリスリン、及びテキサスレッドが含まれる。適切な発光色素には、ジアミノベンジジンが含まれる。
他のレポーターには、着色した磁性またはパラ磁性のラテックスビーズのようなマクロ分子状コロイド粒子または粒子状材料、及び検出可能なシグナルの視覚的観察、電気的検出若しくはさもなければ記録を、直接または間接に生じることができる生物学的または化学的活性剤が含まれる。これらの分子は、例えば着色を形成若しくは変化させる、または電気特性をの変化を生じる反応を触媒する酵素であってもよい。それらは、エネルギー状態の間の電気的遷移が、特徴的なスペクトルの吸収または放射を引き起こすように、分子的に励起可能であってもよい。それらは、バイオセンサーと接合して使用される化学的分子を含んでもよい。ビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプタビジン及びアルカリホスファターゼ検出系が使用されてもよい。
【0032】
アッセイ
患者から得られたサンプル中のCYP1B1のようなマーカーの存在または量を測定する方法は、当該技術分野で周知であり、例えばアッセイにおいてCYP1B1の存在または量を測定することを補助するための、結合剤及び/または検出剤としてここで開示される抗体を使用するために、当業者に容易に応用される。上記アッセイの結果は、続いて臨床医が、患者がガンのようなCYP1B1発現(過剰発現または縮小発現)と関連する疾患に罹患しているかまたは該疾患にかかる危険があるかを決定することを可能にできる。上記アッセイの結果は、続いて臨床医が、上記疾患の治療を最適化することを可能にし、適切な治療及び/または予防的治療を提供し、最も有益であると思われるものを標的化することによって治療の流れを可能にすることを許容できる。
【0033】
好ましい実施態様として、CYP1B1の存在または量は、ガン、特に乳ガン、前立腺ガン、大腸ガン、肝臓ガン、または卵巣ガンの診断において使用される。
【0034】
上記方法は典型的に、血液、血清、組織、血清、尿または他の適切な体液のような、患者から得た生物学的サンプルを使用する。好ましい患者サンプルは、膀胱、脳、乳房、大腸、結合組織、腎臓、肺、リンパ節、食道、炭層、皮膚、胃、精巣及び子宮から選択される組織である。
【0035】
上記抗体は、他の分子より好んでCYP1B1に特異的に結合することが可能な結合部位を有するため、結合剤として使用できる。アッセイのいくつかのフォーマットにおいて、上記結合剤は、アッセイの間の操作を簡便にするために、例えば所定の空間的に分離された位置で固相の支持体に固定化される。上記サンプルは一般的に、サンプル中の分析物を上記結合剤に結合させる適切な条件下で、上記結合剤と接触する。次いで、上記結合剤の結合部位の断片的な占有が、分析物の直接的若しくは間接的にラベリングによって、またはサンプル中の分析物の存在若しくは量の指標として機能する検出剤若しくは試薬を使用することによって測定できる。
【0036】
別の実施態様として、本発明の抗体は、当該技術分野で周知の方法を使用して検出可能である、例えば放射性活性、蛍光性または西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素ラベルで、上記抗体を直接または間接にラベリングすることによって、生物学的サンプル中のCYP1B1を検出するための検出剤として使用できる。直接的にラベルされた検出剤は、該試薬と会合したまたは該試薬に結合したラベルを有する。間接的にラベルされた検出剤は、ラベルされた種(例えば検出剤に結合可能なラベル化抗体)に結合可能であってもよく、または検出可能な結果を生ずるさらなる種に対して作用してもよい。かくして放射性活性ラベルは、シンチレーションカウンターまたは他の放射線計数装置を使用して検出でき、蛍光ラベルは、レーザー及び共焦点顕微鏡を使用して検出でき、並びに酵素ラベルは、典型的に発色の変化を生じる基質に対する酵素ラベルの作用によって検出できる。さらなる実施態様として、検出剤は、その検出を可能にするようにタグ化され、例えば分析物を検出するためのPCR反応において増幅できるヌクレオチド配列に結合される。他のラベルは当業者に周知であり、以下で議論される。検出剤は、それが結合剤の占有される結合部位に対して分析物と競合する競合的方法、またはラベル化検出剤が結合剤によって結合された分析物、若しくは占有される結合部位に結合する非競合的方法において使用できる。両者の方法は、分析物によって占有された結合部位の数の指標を提供し、それ故例えば周知の濃度の分析物を含むサンプルを使用して得られたスタンダードと比較して、サンプル中の分析物の濃度を提供する。別の実施態様として、分析物は、結合剤を含む支持体に適用される前に、タグ化できる。
【0037】
医薬用途
本発明の抗体は、診断用途または治療用途のための組成物中に処方できる。この場合上記抗体は、単離された形態及び/または精製形態で提供され、典型的に少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%の活性成分として組成物中に存在する。しかしながら上記組成物は、不活性キャリアー物質または他の製薬学的及び生理学的に許容可能な賦形剤を含んでもよい。以下に記載されるように、本発明に従った組成物は、開示された抗体に加えて、抗腫瘍剤のような一つ以上のための治療用途の分子を含んでもよい。好ましい実施態様として、上記抗体は、CYP1B1を発現する細胞に対してエフェクターを標的なするために、抗腫瘍薬剤またはプロドラッグであるエフェクターに結合される。
【0038】
患者に与えられる本発明の抗体の投与は、好ましくは「予防上の有効量」または「治療上の有効量」(この場合予防は治療と解されてもよい)で存在し、これは患者に利益を示すのに十分な量である。投与される実際の量、投与の割合及びタイムコースは、治療されるものの性質及びひどさに依存するであろう。例えば投与量の等の決定といった治療の処方箋は、一般的な実施者及び他の医療の医者の責任の範囲内にある。
【0039】
組成物は、単独でまたは他の治療と組み合わせて、治療される疾患に依存して同時的にまたは連続して投与されてもよい。
【0040】
本発明に従った製薬組成物、及び本発明に従った使用のための製薬組成物は、活性成分に加えて、当業者に周知の製薬学的に許容可能な賦形剤、キャリアー、バッファー、安定剤または他の物質を含んでもよい。上記物質は非毒性であるべきであり、活性成分の効力を妨げないものであるべきである。キャリアーまたは他の物質の正確な性質は、経口かまたは皮膚、皮下若しくは静脈内といった注射によるのかという投与の経路に依存するであろう。
【0041】
経口投与のための製薬組成物は、錠剤、カプセル、パウダー若しくは液体形態で存在してもよい。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバントのような固体のキャリアーを含んでもよい。気体製薬組成物は一般的に、水、ワセリン、動物若しくは植物油、鉱油若しくは合成油のような液体のキャリアーを含む。生理食塩水溶液、デキストロース若しくは他のサッカリド溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールのようなグリコールが含まれてもよい。
【0042】
静脈内、皮膚若しくは皮下注射、または疾患部位での注射のために、活性成分は、病原体を含まず、適切なpH、等張性及び安定性を有する全身で許容可能な水溶液の形態で存在するであろう。当業者は、例えば塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、乳酸化リンガー注射液のような等張性ビヒクルを使用して、適切な溶液を調製可能である。防腐剤、安定剤、バッファー、抗酸化剤、及び/または他の添加剤が、必要に合わせて含まれてもよい。
【0043】
上述の方法及びプロトコールの例は、Remington's Pharmaceutical Science, 第16版, Osol, A,(編), 1980に見出すことができる。
【0044】
上記試薬は、腫瘍部位または他の所望の部位に局所的な態様で投与されてもよく、あるいは腫瘍または他の細胞を標的化する態様で輸送されてもよい。
【0045】
本発明の抗体は、CYP1B1を発現する細胞または身体の領域に治療を標的化するために使用できる。治療の標的化は、とりわけCYP1B1を発現または展示する細胞に、薬剤またはプロドラッグのいずれかの活性剤を輸送するために使用されてもよい。例えば試薬が許容不可能に毒性である場合、または試薬がさもないとあまりに高い投与量を必要とする場合、または試薬がさもないと標的細胞に侵入できない場合といった各種の理由のため、標的化は望ましいであろう。上記試薬は、治療される細胞中で生産される、または上記細胞に標的化される活性化剤によって活性形態に変換するために、前駆体形態で投与されてもよい。このタイプのアプローチは、場合によりADEPTとして周知であり、これは本発明の細胞特異的抗体に対する接合によって、細胞に対して活性化剤を標的化することを含む。
【実施例】
【0046】
P450配列整列、ペプチド選択及び免疫化
ヒトCYP1A1とCYP1A2アミノ酸配列と、ヒトCYP1B1アミノ酸配列との構造的ホモロジーモデリングと配列整列の組み合わせに基づき、CYP1B1タンパク質のC末端側3分の1に位置する148アミノ酸部分が、CYP1B1タンパク質の外側部分に位置するであろうアミノ酸の領域を含むと予測された。CYP1B1タンパク質のこの部分に相当する14または15のアミノ酸残基のペプチドを、University of Aberdeen Protein Facilityにおいて合成した。CYP1B1タンパク質上の個々のペプチド配列及びアミノ酸位置は、表1に示される。右側の欄は、免疫反応を生産するペプチド断片を示す(ペプチドD及びE)。
【0047】
【表1】

【0048】
次いで個々のペプチドを、以前に記載されたように(Duncan等, 1992)グルタルアルデヒドを使用してオボアルブミンに接合し、各ペプチド接合物を免疫原として使用した。フロイント不完全アジュバントと混合した個々のペプチド接合物を、BALB/cマウス内に腹膜内で注射し、最初の免疫化の後の2−4週で、同じペプチド接合物でマウスを再免疫化した。各ペプチド接合物に対する免疫応答の存在を、イムノブロッティングによって発現されたCYP1B1の認識について、各マウスから得た血清(第二の免疫化の後10日で得られた)を試験することによって測定した。CYP1B1の認識が最大である血清を有するマウスに、適切なペプチド接合物での最終免疫化を与え、モノクローナル抗体の生産として使用した。
【0049】
CYP1B1に対するモノクローナル抗体
ペプチド接合物での最終免疫化の4日後、マウスを殺傷し、その脾臓を単離し、脾臓細胞をマウスミエローマ細胞(Ag8.653)と融合した。生成したハイブリドーマクローンを、ウシ血清アルブミン(BSA)と接合した関連ペプチドを使用して、固相酵素免疫検定法(ELISA)によって抗体生産に対してスクリーニングした。BSA接合物を、50mM 炭酸/二炭酸ナトリウムバッファー、pH9.6中で4℃で一晩インキュベーションすることによってELISAプレートに結合し、以前に記載されたようにELISAを実施した(Duncan等, 1992; Murray等, 1998b)。ELISAによって強力にポジティブであるハイブリドーマクローンを、二度サブクローン化し、発現したCYP1B1、発現したCYP1A1、コントロールミクロソーム、及びヒト肝ミクロソームを使用するイムノブロッティングによってさらに試験した。製造者の説明書に従って実施するIsostripキット(Roche Diagnostics, Lewes, Sussex, UK)を使用して、モノクローナル抗体を単離した。
【0050】
組織
正常な組織(肝臓、腎臓、肺、膵臓、副腎皮質、脳、胃、空腸、大腸、乳房及び卵巣)のサンプルを、診断のためDepartment of Pathology, University of Aberdeenに寄託された新鮮な未固定組織サンプルから得た。組織のサンプルを液体窒素中で凍結し、ミクロソームの調製の前に−75℃で貯蔵した。原発性乳ガンのサンプル(n=61)を、診断のためDepartment of Pathology, University of Aberdeenに寄託された乳房組織のサンプルから得た。乳房組織の全てのサンプルを、最終的な治療の前に診断プロトコールとして実施する触知可能な乳房の針コア生検標本から得た。コア生検標本を、室温で10%中性緩衝ホルマリン中で固定し、ワックス中に従来通り埋め込んだ。
【0051】
乳ガンの診断を、標準的な組織病理学的基準を使用してヘマトキシリンとエオシンで染色した切片で実施した。Elston及びEllis(1991)に記載された基準に従って腫瘍を段階化し、乳ガンのエストロゲンレセプター状態を、以前に記載されたようにエストロゲンレセプタータンパク質に対する免疫組織化学によって評価した(King等, 1997)。リンパ節状態を、組織病理学的調査のため寄託された後腋窩リンパ節から評価した。乳ガンの臨床的病理学的特徴は、表2に記載される。
【0052】
【表2】

【0053】
発現したCYP1B1及びCYP1A1
発現したヒトCYP1B1、発現したCYP1A1を含むヒトリンパ芽細胞、またはベクターのみを含むコントロールリンパ芽細胞から調製されたミクロソームを、Gentest Corp. Woburn, Maから得た。
【0054】
ミクロソームの調製
組織の凍結サンプルを、1.15% KClを含む0.01M Tris-HClpH7.4中で氷上で解凍した。解凍した組織サンプルを、結合組織と脂肪を含まないように解剖し、外科用メスを使用して均一に切断し、Polytron PT3000ホモゲナイザー(Kinematica AG, Switzerland)を使用して、0.25Mスクロースと15%グリセロールを含む0.01M Tris-HCl中で均質化した。ホモゲネートを、Centrikon T-124遠心機(Kontron Instruments, Cumbernauld, UK)を使用して4℃で20分15000gで遠心分子した。次いで生成した上清を、Centrikon T-1160遠心機(Kontron Instruments)を使用して4℃で1時間180,000g(44,000rpm)で遠心分離した。遠心分離の後に得られたペレットを、15%グリセロールと1mM EDTA(Sigma-Aldrich Co. Poole, Dorset, UK)を含む0.1M Tris-HCl中に再懸濁し、4℃で1時間180,000g(44,000rpm)で再び遠心分離した。最終ミクロソームペレットを、15%グリセロールと1mM EDTAを含む0.1M Tris-HCl中に再懸濁し、ミクロソームサンプルを使用前に−75℃で貯蔵した。ミクロソームの各サンプルのタンパク質濃度を、Bradford法(Bradford, 1976)を使用して測定した。ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich)を、タンパク質スタンダードとして使用した。
【0055】
イムノブロッティング
ミクロソームタンパク質のサンプルを、Hoefer SE600垂直ゲル電気泳動ゲル(Amersham Pharmacia Biotech, Little Chalfont, Bucks, UK)を使用して10%ポリアクリルアミドゲルで一定電流で電気泳動により分離し、Hoefer TE42ブロッティングシステム(Amersham Pharmacia Biotech)を使用して電気ブロットによりニトロセルロース(Hybond ECL, Amersham Pharmacia Biotech)に18時間一定電流でトランスファーした。電気泳動トランスファーの後、非特異的タンパク質結合部位を、0.05% Tween 20(Sigma)を含む10mMリン酸緩衝生理食塩水中の2%ノンファットミルク(marvel, Premier Beverages, Stafford, UK)より成る洗浄バッファー中で、室温で60分ニトロセルロース膜にインキュベーションによりブロックした。次いでニトロセルロース膜を、免疫マウス血清(1/250)またはCYP1B1モノクローナル抗体(1/100)、及び西洋ワサビペルオキシダーゼに接合したヤギ抗マウスイムノグロブリン(1/2000; Bio-Rad, Hemel Hempstead, UK)と共に連続的にインキュベートした。各抗体とのインキュベーションに引き続き、膜を洗浄バッファーで5回10分間洗浄し、非結合二次抗体の除去の後、膜を10mMリン酸緩衝生理食塩水で5回10分間さらに洗浄した。次いで西洋ワサビペルオキシダーゼを、以前に記載されたように実施する(McKay等, 1995; Murray等, 1997)、普及した化学発光法を使用して発光させた(ECL plus, Amersham Pharmacia Biotech)。略記すると、ニトロセルロース膜を、4mlの検出試薬1(lumigen PS-3, Amersham Pharmacia Biotech)及び100μlの検出試薬2(luminol PS-3, Amersham Pharmacia Biotech)より成る溶液中に、室温で5分インキュベートし、乾燥してブロットし、透明なプラスチックフィルムに包み、X線フィルムにさらす(Amersham Pharmacia Biotech)。
【0056】
免疫組織化学
CYP1B1の免疫組織化学的検出を、触媒化シグナル増幅法を使用して実施した(King等, 1997)。この研究において我々は、内因性ビオチンによるいずれかの考慮される妨害を避けるため、我々の以前の研究で使用した(King等, 1997)ビオチン化チラミドよりむしろフルオレセインチラミドを使用した。切片(4μmの厚さ)を、アミノエチルプロポキシシランコート化スライド上で切断し、次いでキシレン中で脱ワックス化し、100%エタノール、95%エタノール中で再水和し、150mM NaClを含む0.05M Tris-HCl pH7.6(TBS)中で洗浄した。内因性ペルオキシダーゼを、90mMメタノールと3ml過酸化水素より成る溶液を使用して阻害した。ある実験では、フルパワー(800W)で操作するマイクロ波(ProlineTM, Proline, UK)で20分、0.01Mクエン酸バッファーpH6.0中に切片をマイクロ波処理することによって、抗原の回復を実施し、別の実験では抗原の回復は実施しなかった。抗原の回復工程の後、切片を室温に冷却し、一次モノクローナル抗CYP1B1抗体を適用した。
【0057】
一次抗体を、室温で60分各種の希釈(希釈しないものから1/160まで)で組織培養上清として適用した。一次抗体中でのインキュベーションの後、切片を5分間3回連続してTBS中で洗浄し、次いでペルオキシダーゼ接合ウサギ抗マウスイムノグロブリン(4%正常ヒト血清を含むTBSで1/100, Dako, High Wycombe, UK)を、室温で30分適用した。次いで切片を、TBS及び0.5% Tween 20を含むTBS(TNTバッファー)中で洗浄した。次いで切片をTNTバッファーでさらに洗浄し、フルオレセインチラミド(NEN, Hounslow, Middlesex, UK)を、室温で10分間適用した。次いで切片をTNTバッファー中でさらに洗浄し、引き続き室温で30分モノクローナルマウス抗フルオレセイン(1/20, Dako)を適用した。TNTバッファー中でのさらなる洗浄の後、ペルオキシダーゼ接合ウサギ抗マウスイムノグロブリン(4%正常ヒト血清を含むTBS中で1/100)を、室温で30分適用した。TBS中で洗浄した後、結合ペルオキシダーゼの部位を、ジアミノベンジジン及び過酸化水素を含む溶液(Liquid DAB plus, Dako)を使用して発色生産的に示した。ペルオキシダーゼ基質溶液中で室温で10分切片をインキュベートした後、氷冷水中でスライドを洗浄することによって反応を停止し、酵素反応産物を0.5%硫酸銅を使用して検出した。次いでスライドを氷冷水中で洗浄し、ヘマトキシリンでカウンター染色し、アルコールで脱水し、キシレンで清浄化し、合成マウンティング媒体に乗せた(DPX, BDH, Poole, Dorset, UK)。二人の独立の観察者による明視野光学顕微鏡を使用して切片を観察し、イムノグロブリンの存在または非存在、及びその配置と局在と強度を確立した。もしいずれかの腫瘍細胞が免疫染色を示すのであれば、腫瘍はポジティブとして考慮され、もし腫瘍細胞における免疫染色が完全に存在しなければ、腫瘍はネガティブとして分類される。
【0058】
ポジティブコントロール組織は、CYP1B1に対するポリクローナル抗体でのイムノブロッティング及び免疫組織化学の両者によって、我々が以前にCYP1B1を含むことを示した乳ガンの切片である(Murray等, 1997)。一次モノクローナル抗体の代わりに使用されたネガティブコントロールは、TBS及び組織培養培地である。一つの実験において、抗体は、免疫組織化学を実施する前にモノクローナル抗体に対する免疫原として使用されたペプチド(ペプチドE, 10nmolのペプチド/抗体のml)で予備吸収された液相である。
【0059】
卵巣ガンにおけるCYP1B1の局在
CYP1B1に対するモノクローナル抗体でのCYP1B1の免疫組織化学的検出を、チラミンシグナル増幅法を使用して実施した。免疫反応性の部位を、ジアミノベンジジン及び過酸化水素での発色生産により示した(Liquid DAB plus, Dako Ltd High Wycombe, Bucks, UK)。ティ不コントロール組織は、CYP1B1を含む乳ガンの切片であり、ネガティブコントロールは、一次モノクローナル抗体の代わりにTris緩衝食塩水(TNS)を使用した。CYP1B1の存在または非存在、並びにその配置、強度、及び細胞局在を調べるために、二人の独立の観察者による明視野光学顕微鏡を使用して、切片を調べた。腫瘍中のCYP1B1の免疫反応を、強、中、弱またはネガティブとして評価した。5%より多い細胞でCYP1B1免疫反応を示す腫瘍を、ポジティブとして考慮した。
【0060】
結果
CYP1B1に対するモノクローナル抗体の開発
ペプチド接合物で注射したマウスから得た血清の免疫応答を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動と、抗原として発現したCYP1B1を使用するイムノブロットによって評価した。異なるペプチドで注射したマウスの血清は、可変的な免疫応答を示した(上記表1)。ペプチドD及びEで注射されたマウスの血清は両者とも、CYP1B1の認識を示し、ポジティブな免疫応答を生ずると判断された。ペプチドEで注射されたマウスから得た血清は、ペプチドDよりも発現したヒトCYP1B1のわずかに強力な認識を与えた。しかしながら、ペプチドA及びB並びにペプチドFからJで注射されたマウスから得た血清は、CYP1B1の明らかな認識を示さず、有意な免疫応答は生じないと考慮された。それ故ペプチドEで注射されたマウスを、CYP1B1に対するモノクローナル抗体を開発するために選択した。モノクローナル抗体を開発するために使用されるペプチド配列は、対応するラットCYP1B1及びマウスCYP1B1配列と高い度合いの相同性を示し、15のアミノ残基の中で13が同一である。
【0061】
ペプチドE
ヒトCYP1B1 PENFDPARFLDKDGL
ラットCYP1B1 PEDFDPARFLDKDGF
マウスCYP1B1 PEDFDPARFLDKDGF
** ***********
【0062】
全ての3種のP450に共通のアミノ酸残基は、星印で示される
【0063】
ペプチドEで免疫化されたマウスから、5種のモノクローナル抗体を開発した。個々の抗体は、5C4、5D3、5D9、5E2及び5G7と名付けられ、アイソタイプは全ての抗体がIgG1κサブタイプであることを示した。全てのモノクローナル抗体は、イムノブロッティングにより発現されたヒトCYP1B1の予想される分子量に相当する52kDaの分子サイズの単一の免疫応答性バンドを認識し、発現されたヒトCYP1A1、またはベクターのみのコントロールミクロソーム若しくはヒト肝ミクロソームに存在するいずれのタンパク質も認識しなかった(図1)。発現されたCYP1B1の連続的な希釈により、イムノブロッティングによる最小の検出可能なCYP1B1の量は、発現されたCYP1B1の0.05pmolであった(図2)。CYP1B1は、腎臓、胃、小腸、大腸及び肺を含む正常な成人ヒト組織の範囲から調製されたミクロソームのイムノブロッティングによっては同定されなかった(図3)。
【0064】
ポジティブコントロールとして使用された乳ガンのホルマリン固定化ワックス埋没切片に対する免疫組織化学により、3種のモノクローナル抗体(5D3、5E2及び5G7)は強力な染色を示す一方で、2種の抗体(5C4,5D9)は免疫反応性を示さないことが明らかとなった。ポジティブな免疫反応性を示すモノクローナル抗体は全て、最適な免疫組織化学的結果のために抗原回復工程を必要とし、全ての3種の抗体は、免疫組織化学的染色の局在と配置の同一のパターンを示した。それ故モノクローナル抗体の1種のみ(5D3)が、乳ガンの後の免疫組織化学的研究のために使用された。免疫組織化学を実施する前のペプチドEでの抗CYP1B1抗体の液相予備インキュベーションにより、免疫反応性はほぼ完全に失われた。
【0065】
CYP1B1免疫反応性は、乳ガンの場合47(77%)で同定され、14の場合(23%)で検出可能なCYP1B1免疫反応性が存在しなかった。CYP1B1免疫反応性が存在する各場合で、この免疫反応性は、腫瘍細胞の細胞質に局在した。免疫反応性の強度は、10(16.4%)の場合で強く、12(19.7%)の場合で中程度で、25(41%)の場合で弱い免疫反応性が存在した。異なるグレードのCYP1B1の存在、乳ガンの組織学的タイプ、リンパ節状態が、表3−5に要約される。
【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
個々の生検に存在する場合、間質細胞または結合組織、並びにリンパ球及びプラズマ細胞を含むその後の細胞タイプにおいて、CYP1B1免疫応答性は存在しなかった。CYP1B1の存在は、エストロゲンレセプタータンパク質の存在と関連し(表6,χ=8.54;p=0.03)、その一方で、CYP1B1の存在と、腫瘍の組織学的タイプ、腫瘍のグレード、またはリンパ節転移の存在の有無の間には関係が存在しなかった。
【0070】
【表6】

【0071】
原発性大腸ガンにおけるCYP1B1の発現
次いで、80の原発生大腸ガンと、原発生大腸ガンからの14の肝臓転移におけるCYP1B1の発現を調べるために、上記抗体を使用した。試験された14の肝臓転移のうち13が、CYP1B1の発現を示した。
【0072】
【表7】

【0073】
【表8】

【0074】
卵巣ガンにおけるCYP1B1の局在
CYP1B1免疫反応性を、原発性卵巣ガンの多数(153/167;92%)において同定し、腫瘍細胞の細胞膜に特異的に局在していた。正常な卵巣組織サンプルのいずれにも、検出可能なCYP1B1発現は存在しなかった。卵巣ガンの高いパーセンテージにおいて、強力な(85/167;50.9%)または中程度の(36/167;23.4%)CYP1B1に対する免疫反応性が存在した。さらにCYP1B1の存在は、転移沈着物の多数(18/48;37.5%)で観察され、高い割合で中程度(22/48;45.8%)から強力な(18/48;37.5%)反応性を示した。同様なレベルのCYP1B1の発現が、原発性腫瘍及び転移性腫瘍の両者において異なる組織学的サブタイプについて示された。原発性卵巣腫瘍及び転移性沈着物が入手可能である場合、CYP1B1発現についての有意な相関関係(p=0.02Spearman相関テスト)が観察された。
【0075】
議論
CYP1B1は、乳ガンを含む各種の腫瘍において増大した発現を示し(Murray等, 1997)、乳ガンにおける上昇したCYP1B1関連4-エストラジオールヒドロキシラーゼ活性が存在する(Liehr及びRicci等, 1996)。CYP1B1はまた、多環式芳香族炭化水素及び複素環式アミンを含む推定の各種のヒト発ガン物質を代謝することが可能である(Shimada等, 1996; Crespi等, 1997)。かくしてCYP1B1は、抗ガン剤に対する潜在的な標的として、及び腫瘍バイオマーカーとして、腫瘍の形成及び進行において重要な役割を有する可能性が存する。腫瘍の個々のタイプにおけるCYP1B1の存在に初期の研究は、CYP1B1のポリクローナル抗体を使用して実施され、各腫瘍タイプについて少量のみの腫瘍サンプルが研究された(Murray等, 1997)。腫瘍マーカーとしてのCYP1B1の可能性(腫瘍形成及び進行)をより完全に評価するために、ホルマリンに固定されワックスに埋め込まれた組織切片におけるCYP1B1を特異的に認識する、ここに開示されたモノクローナル抗体が必要とされ、またよりたくさんの研究される腫瘍が必要とされる。本研究は、CYP1B1に対する上記モノクローナル抗体の開発を記載し、それらがイムノブロッティング及び免疫組織化学によってCYP1B1を感度よく且つ特異的に検出することを示し、さらに原発性乳ガン、前立腺ガン及び卵巣ガンのシリーズにおけるCYP1B1の存在を調査するためのこれらの抗体を使用する。
【0076】
CYP1B1に対するモノクローナル抗体を開発するために使用されるストラテジーは、CYP1B1タンパク質の外部表面に位置し、それ故免疫原性と考えられるCYP1B1の領域を同定するための、構造的分子モデリングと配列整列の組み合わせである。ヘム結合領域を包含するCYP1B1タンパク質のC末端3分の1に位置する領域が同定され、14または15アミノ酸配列より成るペプチドが合成されてキャリアータンパク質に接合された。各ペプチドをマウスに注射し、CYP1B1に対する各ペプチドの免疫反応性が、発現したCYP1B1を含むヒトリンパ芽細胞から調製されたミクロソーム、及びベクターのみを含むミクロソームを使用するイムノブロッティングによって評価された。ペプチドD及びEで免疫化されたマウスから得た血清のみがCYP1B1の認識を示し、他のペプチドの全てがCYP1B1に対する有意な免疫反応性を示さなかった。ペプチドEで免疫化されたマウスは、CYP1B1に対するモノクローナル抗体の開発のために選択された。モノクローナル抗体の生産のために使用されたペプチド配列は、ラットCYP1B1及びマウスCYP1B1と高い度合いの相同性(15アミノ酸のうち13アミノ酸が同一)を示し、上記モノクローナル抗体はまた、ラットCYP1B1及びマウスCYP1B1をも認識するものと予想できた。全てのモノクローナル抗体はCYP1B1に対して特異的であり、CYP1A1若しくはCYP1A2、及びCYP1遺伝子ファミリーの他の周知のメンバーのそれぞれを認識しなかった。さらに上記抗体は、ヒト肝ミクロソームのいずれの他のタンパク質をも認識しなかった。CYP1A2が肝臓において構成的に発現されるP450の主要な形態の一つであるため、ヒト肝ミクロソームは、CYP1A2についてのソースとして使用され、肝ミクロソームはまた、P450のいくつかの他の形態についてのソースとして機能し、CYP1B1に対する抗体の特異性を確認するために、広範なスクリーニングを提供した。
【0077】
本研究では、各種の正常なヒト組織におけるイムノブロッティングによってCYP1B1を検出することができなかった。正常なヒト肝臓及び一定範囲の肝臓外組織の両者におけるCYP1B1タンパク質の非存在は、CYP1B1タンパク質が検出されないという以前の免疫組織学的研究と一致する(Murray等, 1997)。この研究において、比較的高量のミクロソームタンパク質(30μg)がレーン当たり乗せられ、研究された正常組織における非常に低レベルのCYP1B1を検出可能であると思われるため、好感度の化学発光検出システムが使用された。
【0078】
本研究のさらなる主要な目的は、免疫組織化学において使用可能であり、ホルマリン固定化ワックス埋め込み組織切片に対して有効な、CYP1B1に対する抗体を開発することであった。全てのモノクローナル抗体を、比較的高レベルのCYP1B1を含むためにイムノブロットによって以前に示されてる(Murray等, 1997)乳ガンのホルマリン固定化ワックス埋め込み切片を使用して、免疫組織化学によって評価し、モノクローナル抗体のうち3種が、免疫組織化学によって有効にCYP1B1を検出することが見出された。免疫組織化学でポジティブを生ずる3種の抗体は全て、免疫反応性の同一のパターン及び強度を生じたため、抗体の1種のみをCYP1B1発現を調査するために使用した。
【0079】
本研究は、乳ガンの77%がCYP1B1を含み、各種用のにおいてCYP1B1が腫瘍細胞に特異的に局在することを見出した。乳ガンにおける高頻度のCYP1B1の発現は、少数の乳ガンの以前の研究と同様であり、CYP1B1が乳ガンに存在するチトクロームP450の主要な形態であるという主張を支持するであろう(McKay等, 1995; Murray等, 1997)。CYP1B1は、乳ガンの全ての組織学的タイプで見出され、CYP1B1の存在は、乳ガンのいずれかの特定の組織学的タイプ、及びリンパ節転移の存在の有無とは関連しないが、CYP1B1の発現は、エストロゲンレセプタータンパク質の存在と相関した。これは、乳ガンにおけるアミノ酸432でのCYP1B1の多型(バリン/ロイシン)と、エストロゲンレセプターの状態との間の相関関係が最近記載されているため興味深い(Bailey等, 1998)。エストロゲンレセプター複合体と、CYP1B1の転写調節に関与する(Schmidt及びBradfield, 1996)アリール炭化水素レセプター複合体(Wang等, 1998)の間の「クロストーク」についての可能性もまた存在する。
【0080】
CYP1B1は、エストラジオールの特異的なC4ヒドロキシラーゼ(Hayes等, 1996)として機能し、エストロゲン代謝において関与しているため、乳ガン細胞におけるCYP1B1の存在は、エストラジオールの腫瘍内代謝に有意に寄与しているようである。乳ガンにおけるCYP1B1の存在はまた、CYP1B1によって特異的に活性化される薬剤に対する分子標的を提供する。
【0081】
ホルマリン固定化ワックス埋め込み切片において有効であるCYP1B1に対するモノクローナル抗体の開発は、異なる腫瘍タイプ及び関連する予備新形成病変におけるCYP1B1発現を調査するために有用なはずである。上記抗体は、ガンの診断のために使用できる。上記抗体はまた、in vivo診断試験における免疫化学的な基準として、及びCYP1B1タンパク質及びその分解産物に標的化した治療薬として開発することもできる。
【0082】
ここに引用された参考文献は、参考として明白に取り込まれる。
[参考文献]



【特許請求の範囲】
【請求項1】
チトクロームP450 CYP1B1に特異的に結合する抗体の調製方法であって、アミノ酸配列VNQWSVNHDPVKWPN若しくはPExFDPARFLDKDGy[式中、xはDまたはNであり、yはLまたはFである]より成るペプチド、またはその抗原性断片を使用して上記抗体を生産することを含む方法。
【請求項2】
上記ペプチドが、3から10アミノ酸より成る、請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記ペプチドが、3から6アミノ酸より成る、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
上記ペプチドが、免疫原性キャリアーに接合される、請求項1から3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
上記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1から4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
上記モノクローナル抗体が、以下の工程:
(a)免疫原性キャリアーに接合した上記ペプチドで動物を免疫化する工程;
(b)上記動物を殺傷し、上記動物から得られた脾臓細胞をミエローマ細胞と融合して、一つ以上のハイブリドーマを生産する工程;並びに
(c)上記ペプチドを結合可能な抗体について上記ハイブリドーマをスクリーニングする工程;
を含む方法によって入手可能なものである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法によってハイブリドーマを得ることによって抗体を生産する方法であって、工程(c)で見出されたハイブリドーマを培養し、かくして生産された上記抗体を単離することを含む方法。
【請求項8】
エフェクターに対して上記抗体を接合することをさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
上記エフェクターが、ラベル、毒素、薬剤若しくはプロドラッグ、酵素、または輸送分子である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
チトクロームP450 CYP1B1に特異的に結合することが可能な抗体であって、アミノ酸配列VNQWSVNHDPVKWPN若しくはPExFDPARFLDKDGy[式中、xはDまたはNであり、yはLまたはFである]内に含まれる、チトクロームP450 CYP1B1タンパク中のエピトープを認識する抗体。
【請求項11】
上記アミノ酸配列から得られる3から10の間のアミノ酸のエピトープを認識する、請求項10記載の抗体。
【請求項12】
上記アミノ酸配列から得られる3から6の間のアミノ酸のエピトープを認識する、請求項10記載の抗体。
【請求項13】
モノクローナル抗体である、請求項10から12のいずれか一項記載の抗体。
【請求項14】
ヒト化されている、請求項10から12のいずれか一項記載の抗体。
【請求項15】
モノクローナル抗体であり、以下の工程:
(a)免疫原性キャリアーに接合した上記ペプチドで動物を免疫化する工程;
(b)上記動物を殺傷し、上記動物から得られた脾臓細胞をミエローマ細胞と融合して、一つ以上のハイブリドーマを生産する工程;並びに
(c)上記ペプチドを結合可能な抗体について上記ハイブリドーマをスクリーニングする工程;
によって入手可能なものである、請求項13記載の抗体。
【請求項16】
エフェクターに接合されている、請求項10から15のいずれか一項記載の抗体。
【請求項17】
上記エフェクターが、ラベル、毒素、薬剤若しくはプロドラッグ、酵素、または輸送分子である、請求項16記載の抗体。
【請求項18】
医学的治療の方法における使用のための、請求項10から17のいずれか一項記載の抗体。
【請求項19】
ガンの治療のための医薬の調製のための、請求項10から17のいずれか一項記載の抗体の使用。
【請求項20】
必須にアミノ酸配列VNQWSVNHDPVKWPN若しくはPExFDPARFLDKDGy[式中、xはDまたはNであり、yはLまたはFである]より成るペプチド。
【請求項21】
患者から得たサンプル中に存在するガン細胞を検出するためのアッセイ方法であって、請求項10から17のいずれか一項記載の抗体と、患者から得た組織サンプルを接触させる工程と、及び組織サンプル中のガン細胞の存在の指標として、サンプル中に存在するCYP1B1タンパク質に対する抗体の結合を検出する工程とを含む方法。
【請求項22】
上記CYP1B1タンパク質に対する抗体の結合を検出する工程が、抗体捕獲アッセイ、二抗体サンドイッチアッセイ、または抗原捕獲アッセイを使用して実施される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
上記CYP1B1タンパク質に対して特異的な抗体が、固相の支持体ベースのイムノアッセイに固定化されている、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
上記ガンが、乳ガン、大腸ガン、前立腺ガン、肝臓ガン、または卵巣ガンである、請求項21から23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
上記組織サンプルが、膀胱、脳、乳房、大腸、結合組織、腎臓、肺、リンパ節、食道、卵巣、皮膚、胃、精巣、及び子宮から選択される、請求項21から24のいずれか一項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−157363(P2011−157363A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45394(P2011−45394)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【分割の表示】特願2000−606633(P2000−606633)の分割
【原出願日】平成12年3月20日(2000.3.20)
【出願人】(501366786)ザ・ユニバーシティ・コート・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・アバディーン (1)
【Fターム(参考)】