説明

Cu(In,Ga)Se2単結晶パウダーの製造方法、およびそのパウダーを含む単粒子膜太陽電池

【課題】 本発明は、太陽電池における使用に向け、パウダー粒子の特性を改善する全般的な方法を目的とし、さらに、できるだけ高い効率要因を備えた単粒子膜太陽電池を製造することもまた目的とする。
【解決手段】 本発明において、この目的は、Cu(In,Ga)Se化合物から成るパウダーの本願製造方法によって達成され、前記方法は以下のステップから構成され、準化学量論的に少量のCuとCuIn及び/又はCuGa合金を形成するためにCuとIn、及び/又はCuとGaとを合金にするステップと、
CuInおよび/又はCuGa合金から成るパウダーを製造するステップと、
そのパウダーにKIあるいはNaIとSeを加えるステップと、
溶融物がCu(In,Ga)Seに再結晶し、同時に、パウダー粒子が生成されるまで、混合物を加熱するステップと、
粒子の成長を中断するために溶融物を冷却するステップと、である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Cu(In,Ga)Se合成物から成る単結晶のパウダーの製造方法に関する。本発明は、さらに、その方法で製造されたパウダーの使用に関する。このようなパウダーは、太陽電池の中で使用される単粒子膜の製造に特に適している。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、半導体物質から成る、CuInSeのパウダー粒子が製造される単結晶のパウダー製造の為の一般的方法が記載されている。この方法で、半導体物質の成分は化学量論の組成の中で溶かされ、フラックス剤が加えられ、また、パウダーが結晶化してパウダー粒子が生成する温度で、フラックス剤が溶融される。NaCl、Se、As、ヒ素化物またはセレン酸はフラックス剤として使用することが知られている。
【特許文献1】国際公開第99/67449号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、太陽電池における使用に向け、パウダー粒子の特性を改善する全般的な方法を目的としている。
さらに、できるだけ高い効率要因を備えた単粒子膜太陽電池を製造することもまた本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この方法の条件において、この目的は、Cu(In,Ga)Se2化合物から成るパウダーの本願製造方法によって達成され、前記方法は以下のステップから構成されている。
準化学量論的に少量のCuとCuIn及び/又はCuGa合金を形成するためにCuとIn、及び/又はCuとGaとを合金にすること、
CuInおよび/又はCuGa合金から成るパウダーを製造すること、
そのパウダーにKIあるいはNaIとSeを加えること、
溶融物がCu(In,Ga)Seに再結晶し、同時に、パウダー粒子が生成されるまで、混合物を加熱すること、
粒子の成長を中断するために溶融物を冷却することである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の方法によれば、この方法で製造された粒子が、公知の最先端技術で製造されたものと比較して、相当に光起電力特性を改善した驚くべき結果をもたらす。
【0006】
本発明による方法によって製造されたパウダーを使用する太陽電池は、相当に高い効率要因を達成した。
【0007】
これは次の理由によると思われる:
公知の最先端技術による方法で、準備されるべきCuInSeに関する化学量論的量のCuの使用により、Cuの含有量の高いパウダー粒子が形成されうるという問題が生じると思われる。
これらの粒子において、化学量論のCuInSeの中への位相偏析および金属のCuSe成分から成る位相が生じると思われ、これにより異質の位相は、太陽電池の特性を著しく害し、粒子表面で蓄積する傾向がある。つまり、例えば、セルのp−n接触での短絡回路が生じうる。
【0008】
さらに、公知の方法で、製造過程に形成されるCuSe位相は、粒子上に沈積される傾向がある。KCN溶液でこれらの位相を洗浄できることが知られている。しかしながら、この溶液は粒子自体を攻撃する。
【0009】
対照的に、本発明の方法で製造される化合物における準化学量論的量のCuを使用することにより、Cu含有量の高い粒子構造の大部分は抑えられ、主にCu含有量の低いパウダー粒子が形成され、これは効率の高い太陽電池の製造に適していると思われる。
【0010】
さらに、粒子の製造中に成形された2成分から成るCuSe位相が、本発明によって使用されるフラックス剤KIとNaI中に残り、それらが粒子に沈積しないと思われる。
【0011】
これは、特に溶融物が非常に急速に冷却される場合、すなわち、焼入れが行われる場合であると考えられる。本発明による方法の他の利点は、フラックス剤が水で溶かすことができるということである。これは粒子自体を攻撃しない。
【0012】
したがって、溶融物が冷めた後、本発明による方法の好ましいインプリメンテーションで、KIかNaIが水で溶かされることにより、冷まされた溶融物から取り除かれる。
又、使用されるInのモル量とGaのモル量の和に対する使用されるCuのモル量の比率が、0.8と1の間に位置することは非常に有効である。
【0013】
InとGaのモル量に対するCuのモル量のこの比率を有するパウダー粒子は特に効率の高い太陽電池を製造するために使用できることが判明した。
【0014】
さらに、それは、使用されるInのモル量に対するGaのモル量の比率が0と0.43の間に位置するようにも使用される。
この情況では、0.43の比率はInとGaのモル量に比べてほぼ30%のGa留分に相当する。
【0015】
Cu(In,Ga)Se半導体化合物のバンド・ギャップ・エネルギーは、用いられるGaの量に対する用いられるInの量の割合により変わる。In:Gaの比率が取りうる値において、半導体物質のバンド・ギャップ・エネルギーは、要求された目的に容易にあわせられる。
【0016】
さらに、本発明の範囲内で、有利な太陽電池を作成することができる。
【0017】
特に、これは、後部接触、単粒子膜、少なくとも1つの半導体層および正面の接触を構成する、単粒子膜が本発明によって製造されたパウダーを含むことを特徴とする単粒子膜太陽電池である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
少数の、より良いインプリメンテーションの方法および、太陽電池パウダーのより良い実施形態を以下に詳細に示す。
【0019】
第一に、CuとIn及び/又はCuとGaは合金にされ、それによって、一方で使用されるCuのモル量と他方で使用されるInとGaのモル量は低含有量のCuを有するCuIn合金およびCuGa合金を成形するように選択される。そのCu:(In+Ga)の比率は、太陽電池に使われるパウダー粒子の製造において、特に有効であることが証明されており、すなわち、使用されるInのモル量と使用されるGaのモル量との和に対して使用されるCuのモル量の比率は1と1:1.2の間にある。
【0020】
使用されるInのモル量に対する使用されるGaのモル量との比率はむしろ0と0.43の間にある。この情況では、0.43の比率はInとGaのモル量に比べてほぼ30%のGa留分に相当する。本発明による方法において、好ましくは、それらCu(In,Ga)Se2化合物はそのInのモル量に対するGaのモル比が、化合物CuInSeとCuGa0.3In0.7Seの間にあるように製造される。
【0021】
その後、この合金はパウダーにされ、製造されるCu(In,Ga)Seパウダー粒子の粒径は、CuInおよび/又はCuGa合金で作られてたパウダーの粒径に依ることがわかっている。従って、パウダーは特定のサイズの粒子を含むべく系統的に粉砕される。
【0022】
CuIn合金およびCuGa合金から成るパウダーは、それに入れられることになっている物質のうちのどれにも反応しない物質で作られているアンプルへ充填される。例えば、アンプルは石英ガラスで作られる。
Seは、製造されることになっているCu(In,Ga)Se化合物中の化学量論の元素の画分に相当する量でパウダーに加えられる。
【0023】
更に、KIかNaIのいずれかはフラックス剤として加え、これによって続いて成形される溶融物中のフラックス剤の留分は一般的に約40vol.%になる。しかしながら、一般的に、溶融物中のフラックス剤の留分を10vol.%と90vol.%の間にすることが可能です。
【0024】
アンプルは脱気され、前記の内容物とともに、650°Cと810°C[1202°Fと1490°F]の間の温度で熱せられる。Cu(In,Ga)Seは加熱過程に成形される。
【0025】
前記温度範囲内に温度が到達すると、すぐにCu(In,Ga)Seは再結晶し、同時に、粒子は成長する。
【0026】
フラックス剤がこの温度で溶融すれば、その結果、粒子間のスペースは、伝達媒体として働く液状物で満たされる。
【0027】
溶融物は一定の保持時間、プリセット温度で一定にしておかれる。必要な粒径によって、5分から100時間の間の保持時間が必要とされる。一般的には、約30時間である。
【0028】
粒子の成長は溶融物を冷ますことにより中断される。ここで、溶融物を非常に急速に、例えば、わずか数秒の内に急冷することは非常に有用である。
成形したいかなる2成分から成るCuSe位相もフラックス剤に残るので、前記の「急冷」が必要と考えられる。
冷却がゆっくり行われる場合、CuSe位相が、太陽電池でのその使用の点から、生成されたパウダーの特性を著しく害して、Cu(In,Ga)Se結晶上に沈積されるという危険が恐らく存在する。
【0029】
この方法の最後の過程で、フラックス剤は水で溶かすことにより取り除かれる。その後、単結晶のパウダー粒子はアンプルから取り出すことができる。
保持時間と同様に加熱及び冷却中の時間以上の適温コースと保持時間中維持される温度は予備実験の中で決定される。
【0030】
前述の方法を使用すると、その個々の粒子は平均で0.1μmから0.1mmの直径を持っているパウダーを製造することができます。パウダー内の粒度分布は、D=A・t1/n・exp(−E/kT)のラインに沿ってガウスの分配に相当します。ここでDは粒径であり、tは保持時間であり、また、Tは溶融物の温度である;kは、通常、ボルツマン定数を表わす。パラメーターA、nおよびEは、使用された出発物質、フラックス剤および特定の成長プロセスに依存する。それについて、ここではあまり記述しない。KIがフラックス剤として使用される場合、Eはおよそ0.25eVである。この場合、nに見合う値は3と4の間になる。
【0031】
平均の粒径および粒度分布の正確な形は、保持時間、溶融物の温度、および使用されたCuInとCuGaの合金のパウダー粒径に依存する。さらに、平均の粒径および粒度分布はフラックス剤の選択に影響される。
【0032】
本発明による方法で製造される粒子はP伝導性で、非常によい電気伝導率を示す。製造されたCu(In,Ga)Seパウダー粒子の電気抵抗は100Ωから10kΩまでの範囲にあり、選択されたCu:Ga比率、Cu:(In+Ga)比率および溶融物の温度に依存する。これは、2MΩcmから10kΩcmの比電気率抵抗に相当する。
【0033】
本発明による方法を使用することによって、その粒子が非常に均質の組成を示す単結晶のパウダーを製造することが可能になる。
このパウダーは、太陽電池の中で使用される単粒子膜の製造には特に望ましく、本発明による方法で作られたこのパウダーを使用することで、非常に高効率の太陽電池を作ることができる。
【0034】
特に、本発明による方法で製造されたこのパウダーの可能な適用目的を考慮して、さらに、CuInおよび/又はCuGaから成るパウダーに、Seに加えてSを加え、フラックス剤と一緒にそれを溶かすことが、基本的に可能である。同じ理由で、Seは、完全にSと取り替えることができる。
従って、この方法は、広範囲のCuIn1−xGaSe化合物を製造することを可能にする。これらの半導体化合物は、1.04eVと2.5eVの間の一連のバンド・ギャップ・エネルギーをカバーする。
【0035】
これらの方法で製造されたパウダーは太陽電池において非常に有利に使用することができることがわかった。これらのパウダーが使用された太陽電池は平均以上に高い効率を示した。
本発明によって製造されたパウダーが使用される太陽電池は、好ましくはパウダーで作られた単粒子膜が組み込まれた太陽電池である。
単粒子薄膜を製造するために、パウダー粒子は、むしろ重合体薄膜、特にポリウレタン基質へ埋め込まれる。
【0036】
単粒子膜太陽電池は、通常4層から成る。
後部接触は一般にはガラス基質上に適用される金属の層である。好ましくは、これはまた電気伝導性の接着剤であってもよい。
Cu(In,Ga)Se結晶を含んでいる薄膜は、この後部接触上に吸収器層として用いられ、この薄膜は通常、薄い、N伝導性のCdS半導体層でカバーされる。
その後、正面の接触はこのCdS層の上に適用され、また、それは、通常透明な、電気伝導性の酸化物、例えばZnO:Al合金から成る。
さらに、CdS層と正面の接触の間に内在するZnOで作られた別の半導体層を組込むことは非常に望ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu(In,Ga)Se化合物から成るパウダーの製造方法であって、
準化学量論的に少量のCuを含む、CuIn及び/又はCuGa合金を形成するためのCuとIn、及び/又はCuとGaの合金化、
CuInおよび/又はCuGa合金から成るパウダーの製造、
該パウダーにKIあるいはNaIのいずれかとSeの添加、
溶融物においてCu(In,Ga)Seが再結晶し、パウダー粒子が生成されるまでの、混合物の加熱、
該粒子の成長を中断するための該溶融物の冷却、
を含むことを特徴とするCu(In,Ga)Se化合物から成るパウダーの製造方法。
【請求項2】
冷却後、水による溶解で、KIあるいはNaIが取り除かれることを特徴とする請求項1に記載のCu(In,Ga)Se化合物から成るパウダーの製造方法。
【請求項3】
使用されるInとGaのモル量の和に対する、使用されるCuのモル量の比率が、0.8から1であることを特徴とする請求項1または2に記載のCu(In,Ga)Se化合物から成るパウダーの製造方法。
【請求項4】
使用されるInのモル量に対するGaのモル量の比率が0から0.43であることを特徴とする請求項1、2もしくは3に記載のCu(In,Ga)Se化合物から成るパウダーの製造方法。
【請求項5】
後部接触と、単粒子膜と、少なくとも1つの半導体層と、前面接触とからなる単粒子膜太陽電池であって、
該単粒子膜が請求項1から4のいずれか一項に記載の方法により製造されることを特徴とする単粒子細胞膜太陽電池。

【公表番号】特表2007−521221(P2007−521221A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545956(P2006−545956)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013568
【国際公開番号】WO2005/064046
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(504353682)ショイテン グラースグループ (7)
【Fターム(参考)】